図1は、本発明の実施の第1形態である画像形成装置1の構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述のトナー像形成手段2)の構成を拡大して示す断面図である。図3は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述の二次転写手段4、加熱手段5および定着液付与手段6)の構成を拡大して示す断面図である。図4は、定着ローラ39の構成を概略的に示す断面図である。
画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、中間転写手段3と、二次転写手段4と、加熱手段5と、定着液付与手段6と、記録媒体供給手段7とを含んで構成される。
トナー像形成手段2は、作像ユニット10y,10m,10c,10bを含み、これらは、各色成分の画像情報に対応する静電潜像を形成し、該静電潜像を現像して、各色のトナー像を形成するものである。すなわち、作像ユニット10yはイエローの画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10mはマゼンタの画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10cはシアンの画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10bはブラックの画像情報に対応するトナー像を形成する。作像ユニット10y,10m,10c,10bは、中間転写ベルト21の移動方向(副走査方向)、すなわち矢符29の方向の上流側からこの順番で一列に配列される。
作像ユニット10yは、感光体ドラム11yと、帯電ローラ12yと、光走査ユニット13と、現像装置14yと、ドラムクリーナ15yとを含んで構成される。
感光体ドラム11yは、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない円筒状、円柱状または薄膜シート状(好ましくは円筒状)の導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含んで構成される。感光体ドラム11yには、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、導電性基体であるアルミニウム素管と、アルミニウム素管の表面に形成される有機感光層とを含む、GND電位に接続される直径30mmの感光体ドラムが挙げられる。有機感光層は、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層して形成される。有機感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質とを1つの層に含むものであってもよい。有機感光層の層厚は、たとえば、20μmである。また有機感光層と感光体ドラムとの間に下地層を設けてもよい。さらに、有機感光層の表面に保護層を設けてもよい。本実施の形態では、感光体ドラムは、時計周りの方向に周速度100mm/sで回転駆動する。
帯電ローラ12yは、感光体ドラム11yの表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電ローラ12yに代えて、ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、スコロトロンといったコロナ帯電器などが使用できる。
光走査ユニット13は、帯電状態にある感光体ドラム11yの表面にイエローの画像情報に対応するレーザ光13yを照射し、感光体ドラム11yの表面に、イエローの画像情報に対応する静電潜像を形成する。レーザ光13yの光源には、半導体レーザなどが用いられる。
現像装置14yは、感光体ドラム11y表面に圧接し、図示しない固定磁極を内包しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられ、イエロートナー16yを感光体ドラム11y表面の静電潜像に供給する現像ローラ17yと、現像ローラ17yの表面に当接するように設けられ、現像ローラ17y表面のイエロートナー層を均一化(層規制)する現像ブレード18yと、イエロートナー16yを貯留するトナー貯留容器19yと、トナー貯留容器19yの内部に、互いに圧接しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられる撹拌ローラ20a,20bであって、撹拌ローラ20aが現像ローラ17yの表面に圧接しかつ現像ローラ17y表面にイエロートナー16yを供給する撹拌ローラ20a,20bとを含んで構成される。現像ローラ17yは、感光体ドラム11yに圧接(接触)する現像ニップ部において、感光体ドラム11yの回転駆動方向と同じ方向に回転駆動する。したがって、軸線回りの回転駆動方向としては、逆方向になる。本実施の形態では、現像ローラ17yの周速度は感光体ドラム11yに対して1.5倍の150mm/sである。トナー貯留容器19y中のイエロートナー16yは、撹拌ローラ20a,20bによって現像ローラ17y表面に供給され、現像ブレード18yにより層厚を均一化された後、電位差などを利用して感光体ドラム11y表面の静電潜像にほぼ選択的に供給され、イエローの画像情報に対応するトナー像が形成される。なお、本実施の形態では、イエロートナー16yと磁性キャリアとを混合した2成分現像剤が用いられる。また本実施の形態では、感光体ドラム11yと現像ローラ17y、現像ローラ17yと現像ブレード18yおよび現像ローラ17yと撹拌ローラ20aがそれぞれ圧接するように設けられるけれども、それに限定されず、それぞれが僅かな間隔を開けて離隔するように設けても良い。
ドラムクリーナ15yは、後述するように、感光体ドラム11y表面のイエロートナー像が中間転写ベルト21に中間転写された後に、該表面に残存するイエロートナーを除去、回収する。
作像ユニット10yによれば、感光体ドラム11yをその軸線回りに回転駆動させながら、まず帯電ローラ12yにより感光体ドラム11yの表面をたとえば−600Vに帯電する。次に、帯電状態にある感光体ドラム11yの表面に、光走査ユニット13からイエローの画像情報に対応する信号光13yを照射し、イエローの画像情報に対応する露光電位−70Vの静電潜像を形成する。次いで、感光体ドラム11yの表面に、現像ローラ17y表面に担持されるイエロートナー層が接触する。現像ローラ17yには現像電位として−240Vの直流電圧が印加されており、電位差により、静電潜像にイエロートナー16yが付着して現像され、感光体ドラム11yの表面にイエローのトナー像が形成される。このイエロートナー像は、後述するように、感光体ドラム11yの表面に圧接し、矢符29の方向に駆動する中間転写ベルト21に中間転写される。感光体ドラム11yの表面に残留するイエロートナー16yはドラムクリーナ15yにより除去され、回収される。以後、同様のイエロートナー像作成動作が繰り返し実行される。
作像ユニット10m,10c,10bは、それぞれマゼンタトナー16m、シアントナー16cまたはブラックトナー16bを使用する以外は、作像ユニット10yに類似の構造を有するので、同一の参照符号を付し、さらに各参照符号の末尾に、マゼンタを示す「m」、シアンを示す「c」またはブラックを示す「b」を付し、説明を省略する。
なお、各色のトナー16y,16m,16c,16bは、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有し、着色剤の種類が異なる以外は、類似の組成を有する。結着樹脂としては、後述する定着液9により軟化または膨潤する樹脂であれば特に制限されず、たとえば、ポリスチレン、スチレンの置換体の単独重合体、スチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。このような結着樹脂の中でも、カラートナー用としては、保存性、耐久性、後述する定着液9による軟化または膨潤制御などの点から、軟化点が100〜150℃、ガラス転移点が50〜80℃の結着樹脂が好ましく、ポリエステルが特に好ましい。ポリエステルは入手容易な有機溶剤により軟化および/または膨潤しやすく、軟化または膨潤した状態で透明になる。したがって、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が重ね合わされた多色トナー像を定着液9にて定着すると、結着樹脂であるポリエステル自体は透明化するので、減法混色により充分な発色が得られる。また、熱定着用のトナーに用いられる結着樹脂よりも軟化点(分子量)および硬度の高い樹脂を用いても、定着液9による定着が可能である。軟化点および硬度の高い樹脂を用いれば、現像の際の負荷による劣化が防止され、長期間にわたって画質の劣化が少ない画像が得られる。
着色剤としては、従来から電子写真方式の画像形成技術において用いられるトナー用顔料および染料を使用できるけれども、定着液9による滲みを防止するために、定着液9に溶解しない顔料が好ましく、ニグロシン染料などの染料は好ましくない。顔料の具体例としては、たとえば、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料などの有機系顔料、カーボンブラック、酸化チタン、モリブデンレッド、クロムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ベルリンブルーなどの無機系顔料、アルミニウム粉などの金属粉などが挙げられる。顔料は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
離型剤としては各種ワックスを使用できる。ワックスとしては、定着液9により軟化または膨潤するものであれば特に制限なく使用できる。ワックスの具体例としては、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。
トナーは、結着樹脂、着色剤および離型剤の他に、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤、導電剤などの一般的なトナー用添加剤の1種または2種以上を含有することができる。
トナーの体積平均粒径は、特に制限されないけれども、好ましくは2〜7μmである。このような小粒径トナーを用いると、単位面積当りのトナーの表面積が大きくなり、定着液9との接触面積が増加して定着し易くなる。これによって、定着液9の使用量の低減化を図り得るとともに、トナー像の記録媒体8への定着および定着後の乾燥を短時間で実施できる。また、トナーの体積平均粒径が適度に小さい場合には、記録媒体8に対する被覆率が高くなるので、低付着量での高画質化およびトナー消費量の低減化を達成でき、ひいては定着液9の消費量のさらなる低減化を達成できる。
トナーの体積平均粒径が2μm未満では、トナーの流動性が低下し、現像動作の際に、トナーの供給、撹拌および帯電が不充分になり、トナー量の不足、逆極性トナーの増加などが起こり、高画質の画像が得られないおそれがある。一方、体積平均粒径が7μmを超えると、トナー粒子の中心まで軟化および/または膨潤し難い大粒径のトナー粒子が多くなるので、画像の記録媒体8への定着性が低下するとともに、画像の発色が悪くなり、特にOHPシートへの定着の場合には、画像が暗くなる。
トナー自体の軟化点およびガラス転移点は特に制限されないけれども、軟化点が100〜130℃、ガラス転移点が50〜80℃であることが好ましい。このような軟化点の高いトナーは、現像時の負荷に対する耐久性を向上させるには好ましいけれども、熱定着方式では充分に定着および発色しない。ところが、本発明では、定着液9を用いて化学的にトナーを軟化および/または膨潤させるので、定着および発色が充分で、高品位な画像が得られる。なお、トナーが複数の結着樹脂を含む場合には、トナーが複数の軟化点または複数のガラス転移点を示すことがある。その場合、トナーの軟化点またはガラス転移点とは、複数あるうちの最も低い軟化点またはガラス転移点の温度を示すものとする。
トナーは、公知の方法に従って製造できる。たとえば、結着樹脂に離型剤、着色剤などを分散して粉砕する方法、結着樹脂のモノマー溶液中に離型剤、着色剤などを分散させ、その後結着樹脂のモノマーを重合させる方法などが挙げられる。いずれの方法においても、トナーの表面積を大きくするために、トナーの形状が球形よりも不定形になるように調整するのが好ましい。これによって、トナーは定着液9と接触し易くなるので、定着液9の使用量を減らし、トナー像の定着および乾燥を短時間で実施できる。
各色のトナー16y,16m,16c,16bは、そのまま1成分現像剤として用いてもよく、またはキャリアと混合して2成分現像剤として用いもよい。
本実施の形態で用いられる各色のトナー16y,16m,16c,16bは、顔料以外は次に示す同じ構成を有する。このトナーは、ガラス転移点60℃、軟化点120℃、体積平均粒径6μmであり、負帯電性の絶縁性非磁性トナーである。このトナーを用いて、X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4の画像濃度を得るには、5g/m2のトナー量が必要である。このトナーは、ガラス転移点60℃かつ軟化点120℃のポリエステル(結着樹脂)、ガラス転移点50℃かつ軟化点70℃の低分子ポリエチレンワックス(離型剤)および各色の顔料を含み、ワックス含有量がトナー全量の7重量%、顔料含有量がトナー全量の12重量%および残部が結着樹脂のポリエステルである。このトナーに含まれる低分子ポリエチレンワックスは、結着樹脂のポリエステルよりもガラス転移点および軟化点が低いワックスである。このようなワックスを用いれば、結着樹脂のガラス転移点よりも低い温度下でも、トナー同士の付着力、トナーと中間転写ベルト21または記録媒体8との付着力が増加するので、液状物である定着液9を付与する際に、定着液9によるトナーの流れ、凝集などが発生するのを抑制できる。さらに、トナー中のワックスが軟化すると、ワックスが存在する箇所からトナー内部に定着液9が浸透し易くなる。したがって、定着液9の付与時に短時間でトナー全体が軟化および/または膨潤し、記録媒体8への転写時に充分な定着強度が得られ、トナー像の重ね合わせによる発色も充分になる。
中間転写手段3は、中間転写ベルト21と、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと、支持ローラ25,26,27と、ベルトクリーナ28とを含んで構成される。
中間転写ベルト21は、支持ローラ25,26,27の間に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルトであり、感光体ドラム11y,11m,11c,11bとほぼ同じ周速度で矢符29の方向に回転する。中間転写ベルト21には、たとえば、厚さ100μmのポリイミドフィルムの表面に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)とPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)とを8:2(重量比)の割合で含むフッ素樹脂組成物からなる厚さ20μmの被覆層を設けたものが挙げられる。ポリイミドフィルムおよび被覆層中には、中間転写ベルト21としての電気抵抗値を調整するために、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトカーボンなどの導電材が配合される。被覆層表面が、トナー像担持面21aになる。なお、中間転写ベルト21は前記材質のものに限定されず、定着液9を浸透しないものであれば特に制限なく使用できる。たとえば、導電性を付与したポリカーボネート、フッ素ゴムなどのフィルムに、PTFEおよび/またはPFAからなる被覆層を設けたものでもよい。
中間転写ベルト21のトナー像担持面21aは、感光体ドラム11y,11m,11c,11bにこの順番で圧接する。中間転写ベルト21の感光体ドラム11y,11m,11c,11bに圧接する位置が、各色成分のトナー像の中間転写位置である。中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11y,11m,11c,11bに対向する位置に、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bが配置される。
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bは、それぞれ、中間転写ベルト21におけるトナー像担持面21aの反対面に圧接し、かつ図示しない駆動手段によりその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、たとえば、金属製軸体と、該金属製軸体の表面に被覆される導電性層とを含んで構成される。軸体は、たとえば、ステンレス鋼などの金属により形成される。軸体の直径は特に制限されないけれども、好ましくは8〜10mmである。導電性層は、導電性弾性体などにより形成される。導電性弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、カーボンブラックなどの導電性制御剤を含む、EPDM、発泡EPDM、発泡ウレタンなどが挙げられる。導電性層によって、中間転写ベルト21に高電圧が均一に印加される。
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bには、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの表面に形成されるトナー像を中間転写ベルト21上に転写するために、トナーの帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム11y,11m,11c,11bに形成されるイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色成分のトナー像が中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに順次重ね合わさって転写され、多色トナー像が形成される。但し、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの色成分の一部のみの画像情報が入力される場合には、作像ユニット10y,10m,10c,10bのうち、入力される画像情報の色成分に対応する作像ユニットのみにおいてトナー像が形成される。
支持ローラ25,26,27には、たとえば、直径30mmで、肉厚が1mmのアルミニウム製円筒体が用いられる。中間転写ベルト21を介して、後述する2次転写ローラ30に圧接する支持ローラ26は、電気的に接地される。
ベルトクリーナ28は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上のトナー像を後述の2次転写手段4において記録媒体8に転写した後に、トナー像担持面21a上に残存するトナーを除去する部材であり、中間転写ベルト21を介して支持ローラ27に対向するように設けられ、図示しない加圧手段により、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに圧接し、トナー像担持面21a上の残存トナーなどを掻き取るクリーニングブレード28aと、クリーニングブレード28aに掻き取られるトナーなどを貯留するトナー貯留容器28bとを含んで構成される。クリーニングブレード28aには、たとえば、弾性を有するゴム材料(たとえば、ウレタンゴム)などからなるブレードを使用できる。
中間転写手段3によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11b上に形成される各色のトナー像が、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aの所定位置に重ね合わされて転写され、トナー像が形成される。このトナー像が2次転写手段4において記録媒体8に転写された後、トナー像担持面21a上の残存トナー、オフセットトナー、紙粉などがベルトクリーナ28により除去され、トナー像担持面21aには再度トナー像が転写される。
2次転写手段4は、中間転写ベルト21を介して支持ローラ26に圧接しかつ軸線方向に回転駆動可能に設けられる2次転写ローラ30を含んで構成される。2次転写ローラ30には、たとえば、直径10mmの芯金の外周に、厚さ4mmのウレタンゴム層を設けたローラ状部材が用いられる。ウレタンゴム層には、導電性を付与するために、カーボンなどの導電剤が配合される。また、2次転写ローラ30は、たとえば、1N/cmの線圧で支持ローラ26に押圧される。中間転写ベルト21上のトナー像を、2次転写ローラ30により記録媒体8に転写する際に、2次転写ローラ30の芯金にはたとえば+1kVの電圧が印加される。
2次転写手段4によれば、多色トナー像を担持する中間転写ベルト21が、2次転写ローラ30と支持ローラ26との圧接部に搬送されるのに同期して、後述する記録媒体供給手段7から記録媒体8が送給され、中間転写ベルト21上の多色トナー像が記録媒体8の表面に押圧により転写される。多色トナー像が転写された記録媒体8は、加熱手段5に搬送される。
加熱手段5は、多色トナー像が転写された記録媒体8を後述の定着液付与手段6に向けて搬送する搬送ベルト31と、加熱ローラ32と、テンションローラ34と、温度センサ35とを含んで構成される。
搬送ベルト31は、加熱ローラ32とテンションローラ34との間に張架されてループ状の搬送経路を形成する無端ベルトであり、矢符46の方向に回転駆動する。搬送ベルト31には、たとえば、導電剤を混入して導電性を付与した厚さ100μmのポリイミドフィルムの少なくとも一方の表面に、PTFEからなる厚さ10μmの表面層を設けたものを使用できる。
加熱ローラ32は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その内部に加熱手段33を有するローラ状部材であり、搬送ベルト31を加熱する機能と、駆動ローラとしての機能とを有する。加熱ローラ32には、たとえば、アルミニウムなどの金属からなる中空ロールが使用できる。加熱手段33には、ハロゲンランプなどが用いられる。この加熱ローラ32の働きにより、搬送ベルト31ひいては搬送ベルト31の表面に担持されるトナー像が、好ましくは、該トナー像を構成するトナーのガラス転移点よりもやや低い温度に加熱される。たとえば、トナーのガラス転移点が60℃のときは、55〜58℃程度が好ましく、56℃が特に好ましい。なお、トナー像を55〜58℃に加熱するには、搬送ベルト31の表面温度を70℃に保つのがよい。
テンションローラ34は、搬送ベルト31が弛緩しないように、搬送ベルト31に所定の張力を付与する。テンションローラ34には、たとえば、金属製軸体と、金属製軸体の表面に形成される被覆層とを含んで構成されるローラ状部材が用いられる。また、金属製軸体のみからなるものでもよい。金属製軸体の材料には、たとえばステンレス鋼が使用され、被覆層の材料にはたとえばフッ素ゴムが使用される。また、金属製の中空ローラでも良い。
温度センサ35は、搬送ベルト31の表面温度を検知するために、搬送ベルト31に接するかまたは近接するように設けられる。温度センサ35による検知結果は、画像形成装置1の全動作を制御する図示しないCPUに送られ、CPUはその検知結果に基づいて、加熱ヒータ33に電圧を印加する図示しない電源に制御信号を送り、加熱ヒータ33の発熱量を制御する。
本実施の形態では、搬送ベルト31の表面温度を70℃に保持することによって、搬送ベルト31に載置される記録媒体8上のトナー像の温度を、トナーのガラス転移点(60℃)よりも低い温度に設定する。しかしながら、それに限定されることなく、たとえば、搬送ベルト31の表面温度を80℃に保持し、記録媒体8上のトナー像の温度をガラス転移点(60℃)よりも高くしてもよい。これによって、定着液9の付与前にトナーがある程度軟化し、トナー同士およびトナーと記録媒体8との付着力が増加し、定着液9の付与時の、定着液9によるトナーの移動、凝集などを防止できる。また、搬送ベルト31の表面温度を140℃に保持し、記録媒体8上のトナー像の温度をトナーの軟化点(120℃)よりも高い温度にしてもよい。これによって、トナーが充分に軟化し、トナー同士およびトナーと記録媒体8との付着力が一層増加し、定着液9の付与時の、定着液9によるトナーの移動、凝集などをさらに防止できる。なお、ここで挙げた例は、あくまでもガラス転移点が60℃または軟化点が120℃であるトナーを用いる場合であり、トナーのガラス転移点または軟化点に応じて、搬送ベルト31の表面温度を適宜変更できる。
加熱手段5によれば、未定着のトナー像を担持する記録媒体8が搬送ベルト31上に載置され、加熱ローラ32により加熱を受けながら、矢符46の方向に搬送され、定着液付与手段6に送給される。
本実施の形態では、加熱手段5として、加熱ヒータ33を内蔵する加熱ローラ32を用いるけれども、それに限定されず、ローラ形態、固定の板状形態など、接触加熱方式の加熱手段を使用でき、さらに赤外線ヒータなどの非接触加熱方式の加熱手段を使用できる。
定着液付与手段6は、定着ローラ39の表面に定着液9を供給する定着液供給手段36と、図示しない駆動手段により矢符54の方向に回転駆動可能に設けられ、記録媒体8のトナー像担持面における少なくとも画像形成領域全面に定着液9を付与する定着ローラ39と、定着ローラ39に圧接しかつ定着ローラ39の回転に従動して矢符55の方向に回転駆動可能に設けられる加圧ローラ40とを含んで構成される。
定着液供給手段36は、定着ローラ39を臨んで開口部を有し、定着液9を貯留する定着液溜48と、一部が定着液溜48の開口部から外方に向けて突出して定着ローラ39に圧接し、一部が定着液溜48に貯留される定着液9中に浸漬しかつ図示しない駆動手段により矢符50の方向に回転駆動可能に設けられる定着液供給ローラ49と、定着液供給ローラ49の表面に圧接しかつ図示しない駆動手段により矢符52の方向に回転駆動可能に設けられ、定着液供給ローラ49の表面に付着する定着液9を適量に規制する規制ローラ51と、一端を定着液溜48に固定されかつ他端が規制ローラ51の表面に圧接するように設けられる板状部材であって、規制ローラ51表面の定着液9を除去する除去ブレード53と、定着液9を貯留する定着液貯留槽37と、定着液貯留槽37内の定着液9を定着液溜48に送給する供給管38とを含んで構成される。なお、定着液供給ローラ49と規制ローラ51とは、たとえば、単一のギア列により駆動され、一定の周速比で回転する。
定着液溜48には、定着液9の消費状況に応じて、定着液貯留槽37から供給菅38を介して、定着液溜48における定着液9の液面高さが一定になるように、定着液9が補充供給される。
定着供給ローラ49には、芯金と、芯金の表面に形成される弾性層とを含むローラ状部材が用いられる。ここで弾性層を構成する材料としては、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどの、後述する定着液9の溶媒成分との親和性が高く、定着液9に接触すると膨潤する弾性材料が好ましい。これらの中でも、シリコンゴムおよびフッ素ゴムは、表面エネルギが小さく、トナーを付着し難いので、好ましく使用できる。定着液供給ローラ49は、その回転方向が、定着ローラ39との圧接部において、定着ローラ39と同方向である。また、定着液供給ローラ49の周速度は定着ローラ39の周速度とほぼ等しく設定される。本実施の形態では、定着液供給ローラ49には、外径が20mmで、表面に厚さ3mmかつ硬度20度(JIS−A)のシリコンゴム層を有するローラが使用できる。また本実施の形態では、定着液供給ローラ49の定着ローラ39に対する押圧力は1N/cmに設定される。
規制ローラ51には、たとえば、金属製ローラが用いられる。本実施の形態では、外径12mmのステンレス鋼製ローラである。また本実施の形態では、規制ローラ51は、定着液供給ローラ49の周速度に対して1/2の周速度で、定着液供給ローラ49との圧接部で表面が定着液供給ローラ49の表面が移動する方向と逆方向に移動し、すなわち矢符52の方向に回転する。
除去ブレード53には、たとえば、金属製の板状部材が用いられる。本実施の形態では、厚さ50μmのステンレス鋼製の板が用いられる。除去ブレード53は、その先端が規制ローラ51の表面に圧接し、規制ローラ51表面に付着する定着液9を除去する。
定着液供給手段36によれば、まず、定着液供給ローラ49が定着液溜48の定着液9中を回転することにより、定着液供給ローラ49の表面に定着液9が付着する。この定着液9は、規制ローラ51によりほぼ一定の厚さを有する薄層に形成される。本実施の形態では、定着液供給ローラ49の表面に、約16g/m2の割合で定着液層が形成される。この定着液層が、定着液供給ローラ49と定着ローラ39との圧接部において、定着ローラ39上に移行する。このとき、定着液供給ローラ49上の定着液9のほぼ1/2が定着ローラ39の表面に移行する。したがって、本実施の形態では、定着ローラ39上には8g/m2の割合で定着液層が形成される。この定着液層が、トナー像を担持し、加熱状態で搬送される記録媒体8のトナー像担持面に接触し、定着液9が記録媒体8の少なくともトナー像形成領域に付与される。
定着ローラ39には、金属製の芯金39aの表面に、弾性層39bおよび表面層39cを順次積層してなるローラ状部材が使用される。弾性層39bには公知の弾性材料を使用できるけれども、たとえば、EPDMゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴムなどの、定着液9によって膨潤することがなくかつローラ形状に対する適合性の良いゴム類が好ましい。弾性層39bを定着液9により膨張しない材料で構成することによって、定着ローラ39の外径変化ひいては記録媒体8の搬送速度の変化を防止できる。このようなゴム類は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。表面層39cには、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。このようなフッ素樹脂は、後述する組成を有する定着液9の溶媒成分との親和性が高いので、定着ローラ39表面において定着液9を薄層として保持できる。これによって、少量の使用で、定着ローラ39表面の広い範囲に定着液9を付与できるので、定着液9の消費量を低減化できるとともに、余分な定着液9が未定着のトナーを押し流し、画像を乱すのを防止できる。その結果、定着ローラ39に付着するトナーが画像面に付着するオフセット現象の発生を長期間にわたって防止でき、少量の定着液9で長期間にわたって、画質が高い水準で安定した画像を得ることができる。上記のフッ素樹脂の中でも、PTFEが好ましい。PTFEは、主鎖を構成する炭素原子の結合鎖に全てフッ素原子が結合するので、トナーが付着し難く、定着液9の溶媒成分との親和性が高く、定着液9の消費量の低減化および定着ローラ39へのトナーの付着防止には最も有効である。
本実施の形態では、定着ローラ39には、芯金39aの表面に、硬度20度(JIS−A)のEPDMゴムからなる厚さ3mmの弾性層39bおよびPFAからなる厚さ80μmの表層39cを設けてなる外径30mmのローラが使用される。
本実施の形態では、記録媒体8に定着液9を付与するために、記録媒体8に接触しながら定着液9を付与する接触方式の付与手段を用いるけれども、それに限定されず、超音波振動子、気体流などにより発生する微小液滴の噴霧、インクジェットヘッドに用いられる微小ノズルアレイなどの非接触方式の付与手段を用いることもできる。
加圧ローラ40には、定着ローラ39と同様に、芯金と、芯金の表面に形成される弾性層と、弾性層の表面に形成される表面層とを有するローラ状部材が使用される。本実施の形態では、芯金と、硬度50度(JIS−A)のEPDMゴムからなる厚さ3mmの弾性層と、PFAからなる厚さ80μmの表層とからなる外径30mmのローラが使用される。また本実施の形態では、加圧ローラ40の定着ローラ39に対する押圧力は、10N/cmである。
定着液9は、トナーを軟化および/または膨潤させる液状物である。定着液9の好ましい具体例として、トナーを軟化および/または膨潤させる作用を有する有機化合物(以後「トナー定着用有機化合物」と称す)と、トナー定着用有機化合物を溶解または分散できる溶媒成分とを含む。トナー定着用有機化合物としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、ジメチルエーテルなどのエーテル類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのカルボン酸と、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類とから形成されるエステル類などが挙げられる。これらの中でも、エーテル類およびエステル類が好ましく、エステル類が特に好ましい。エーテル類の中では、ジエチルエーテルが特に好ましい。エステル類の中では、酢酸エチル、酢酸メチル、蟻酸メチル、蟻酸エチルなどがさらに好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。トナー定着用有機化合物は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。トナー定着用有機化合物は、常温での揮発性を有するとともに、ポリエステルなどのトナー用結着樹脂を軟化および/または膨潤させる作用に優れる。
トナー定着用有機化合物の定着液9における含有量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは定着液9全量の1〜50重量%、さらに好ましくは定着液9全量の5〜50重量%、特に好ましくは定着液9全量の10〜40重量%である。1重量%未満では、トナーの軟化および/または膨潤作用が不充分になり、トナー像の記録媒体8への定着強度が低下するおそれがある。また、50重量%を超えると、相対的に溶媒成分の含有量が減少することによって、定着液9のトナー像に対する浸透性が低下し、トナー像の表層のみが軟化および/または膨潤するので、トナー像の記録媒体8に対する定着強度が低下するおそれがある。
溶媒成分としては、トナー定着用有機化合物を溶解または分散し得る液体成分であれば特に制限されないけれども、トナー像への浸透性などを考慮すると、ハイドロフルオロエーテルが好ましい。ハイドロフルオロエーテルは表面張力および粘度が小さいので、トナー粒子間、トナーと記録媒体8との接触面などに良く浸透する。このため、トナー定着用有機化合物が、ハイドロフルオロエーテルとともにトナー粒子間、トナーと記録媒体8との接触面などに運ばれ、トナーを瞬時に軟化および/または膨潤させ得る。また、ハイドロフルオロエーテルは、蒸発潜熱が小さいので、室温でも短時間で揮発し、記録媒体8の乾燥が速くなる。
ハイドロフルオロエーテルとしては公知のものを使用でき、たとえば、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル(C3F9OCH3)、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル(C3F9OC2H5)、1,1,2,2−テトラフルオロエチル 2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(CHF2CF2OCH2CF3)などが挙げられる。ハイドロフルオロエーテルは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
ハイドロフルオロエーテルの定着液9における含有量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは定着液9全量の50〜99重量%、さらに好ましくは定着液9全量の50〜95重量%、特に好ましくは定着液9全量の60〜90重量%である。50重量%未満では、定着液9のトナー像に対する浸透性が低下し、トナー像の表層を構成するトナーのみが軟化および/または膨潤するに留まり、トナー像の記録媒体8に対する定着強度が低くなるおそれがある。一方、99重量%を超えると、相対的にトナー定着用有機化合物の含有量が少なくなり、定着液9のトナーに対する軟化・膨潤作用が低下し、トナー像の記録媒体8に対する定着強度が不充分になるおそれがある。
定着液9には、トナー定着用有機化合物および溶媒成分のほかに、たとえば、離型剤、界面活性剤などを添加できる。
離型剤は、たとえば、次のような働きを有する。すなわち、記録媒体8上のトナー像に定着ローラ39を介して定着液9を付与すると、トナー像を構成するトナーは軟化および/または膨潤する。軟化および/または膨潤したトナー像は、記録媒体8上で固化するまで半溶融状態にあり、粘着性を示す。このため、記録媒体8上のトナー像が記録媒体8に定着されずに定着ローラ39側に付着するオフセット現象が発生する可能性がある。オフセット現象が発生すると、著しい画像劣化を避け得ない。定着液9に離型剤を添加すると、トナー像の粘着性を緩和でき、半溶融状態にあるトナー像でもオフセット現象を起こす可能性が一層低減化される。離型剤としては、シリコーンオイル、エステルオイル、液状ポリエーテル、スピンドルオイル、マシンオイル、シリンダオイルなどを使用できる。これらの中でも、耐熱性および化学的安定性に優れ、離型効果およびトナー像の粘着性を抑制する効果が高いことから、シリコーンオイルが好ましく、粘度0.0001〜0.0005m2/s(100〜500cSt、25℃)のシリコーンオイルが好ましい。このような粘度範囲を有するシリコーンオイルは市販されており、たとえば、商品名:KF96、信越化学工業(株)製などが挙げられる。離型剤の定着液9における含有量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは定着液9全量の5〜20重量%、さらに好ましくは定着液9全量の10〜15重量%である。この範囲で離型剤を添加することにより、オフセット現象の発生が一層抑制され、高画質画像が得られる。離型剤の含有量が5重量%未満では、離型剤を添加する効果が充分に発揮されず、オフセット現象の一層の低減化が得られない。一方20重量%を超えると、定着液9の本来の役割であるトナー像を構成するトナーの軟化・溶融を充分に行えず、また定着液9の乾燥に時間を要する傾向が現れるおそれがある。
界面活性剤は、たとえば、定着液9のトナーに対する濡れ性を向上させる働き、トナー定着用有機化合物を溶媒成分中に分散させる働き、定着液9の溶媒成分が水性でありかつ油分である離型剤を添加する場合に、離型剤を溶媒中に分散させる働きなどを有する。界面活性剤としては公知のものを使用でき、たとえば、脂肪酸誘導体硫酸エステル塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、四級アンモニウム塩、複素環アミンなどの陽イオン界面活性剤、アミノ酸エステル、アミノ酸などの両性イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。
定着手段6によれば、搬送ベルト31に載置されて加熱状態で搬送される未定着トナー像を担持した記録媒体8が定着ローラ39と加圧ローラ40との間の定着ニップ部を通過する際に、定着液供給手段36から定着ローラ39を介して記録媒体8のトナー像担持面の少なくともトナー像形成領域に定着液9が付与され、トナー像を構成するトナーが軟化および/または膨潤するとともに、記録媒体8が加圧ローラ40によって加圧されるので、トナー像が記録媒体8に定着され、画像が形成される。画像が形成された記録媒体8は、排紙ローラ56a,56bにより、画像形成装置1の外部に設けられる排紙トレイ41に排出される。
記録媒体供給手段7は、記録媒体8を貯留する記録媒体カセット42と、記録媒体8を搬送路Pに1枚ずつ送給するピックアップローラ43と、中間転写ベルト21上のトナー像が2次転写ローラ30と支持ローラ26との圧接部に搬送されるのに同期して、2次転写ローラ30と支持ローラ26との圧接部に記録媒体8を送給する一対のレジストローラ44a,44bとを含んで構成される。
記録媒体供給手段7によれば、記録媒体カセット42内に貯留される記録媒体8が、ピックアップローラ43により1枚ずつ搬送路Pに送給され、さらに、レジストローラ44a,44bにより、2次転写ローラ30と支持ローラ26との圧接部に送給される。
画像形成装置1によれば、トナー像形成手段2により中間転写ベルト21上に形成される多色トナー像が、2次転写ローラ30と支持ローラ26との圧接部において、記録媒体8に転写され、記録媒体8の多色トナー像には、定着ローラ39から定着液9が接触付与され、多色トナー像が記録媒体8上に定着し、画像が形成される。
本実施の形態によれば、トナー像を担持する記録媒体8に定着液9を付与する前に加熱するので、定着液9を含まない分、被加熱体である記録媒体8の熱容量が小さい。このため、少ない熱量で記録媒体8ひいてはトナー像の温度を上昇させ得る。また、定着液9の付与時に、トナー像および記録媒体8が加熱状態にあるので、付与される定着液9が速やかにトナー像に拡散、浸透し、トナーの軟化および/または膨潤が瞬時にかつ広範囲で生じ、定着液9の付与による未定着トナーの流動、凝集などを防止できる。さらに、トナー像に接触する定着液9の液温も上昇し、短時間で充分な定着強度が発現する。さらに、トナーの軟化および/または膨潤後の残余の定着液9は短時間で揮発するので、記録媒体8乾燥も速い。これらの利点により、画像形成装置1の単位時間当たりの出力枚数であるスループットが向上する。
図5は、本発明の実施の第2形態である画像形成装置60の要部の構成を模式的に示す側面図である。画像形成装置60は、画像形成装置1に類似し、同一の構造を有する部分は図示および説明を省略する。また、図5に図示する部分のうち、対応する部分については同一の参照符号を付し、説明を省略する。
画像形成装置60は、画像形成装置1における加圧ローラ40を用いることなく、加熱手段61において、搬送ベルト31を張架する2つのローラの一方を加熱ローラ32とし、さらに加熱ローラ32と定着ローラ39とを、搬送ベルト31を介して圧接させ、加熱ローラ32を加圧ローラとしても機能させることを特徴とし、それ以外の構成は画像形成装置1と同一である。
すなわち、画像形成装置60は、トナー像形成手段2(不図示。ただし感光体ドラム11y,11mを除く)、中間転写手段3(中間転写ローラ22c,22bおよび支持ローラ25は不図示)と、二次転写手段4と、加熱手段61と、定着液付与手段6cと、記録媒体供給手段7(不図示)とを含んで構成される。
加熱手段61は、駆動ローラ34aと加熱ローラ32との間に張架されて、矢符46の方向に回転駆動する搬送ベルト31と、搬送ベルト31を駆動させる駆動ローラ34aと、搬送ベルト31およびその上に載置される記録媒体8を加熱する加熱ローラ32と、加熱ローラ32の表面温度を検知する温度センサ35とを含んで構成される。
搬送ベルト31は、加熱ローラ32により加熱された状態にあるので、その上に載置されて搬送される未定着のトナー像を担持する記録媒体8が加熱される。
駆動ローラ34aは、図示しない駆動手段により回転駆動可能に支持され、その矢符58方向の駆動によって搬送ベルト31を矢符46の方向に回転駆動させる。
加熱ローラ32は、搬送ベルト31を介して定着ローラ39に圧接し、加熱ローラ32と定着ローラ39との圧接部に搬送される記録媒体8をその未定着トナー像担持面の裏側から加熱するとともに、定着ローラ39と相互に作用し合ってトナー像の記録媒体8への定着を促す。加熱ローラ32の表面温度(加熱温度)は特に制限されず、使用するトナーのガラス転移点、軟化点などを考慮して適宜決定すればよい。本実施の形態では、ガラス転移点が60℃のトナーを用いるので、加熱ローラ32の表面温度を70℃とし、加熱ローラ32と定着ローラ39との圧接部における接触開始部の温度が、60℃(トナーのガラス転移点)よりも若干低くなるように設定される。なお、本実施の形態では、加熱ローラ32は搬送ベルト31に所定の張力を付与するテンションローラとしての機能をも有する。
温度センサ35は、加熱ローラ32の表面温度を一定にするために、加熱ローラ32に接触するかまたは近接する位置に設けられる。
本実施の形態では、加熱ローラ32の表面温度を70℃に設定するけれども、それに制限されない。たとえば、加熱ローラ32の表面温度を80℃とし、加熱ローラ32と定着ローラ39との圧接部における接触開始部の温度がトナーのガラス転移点(60℃)よりも高くなるように設定してもよい。これにより、定着液9を付与する前にトナーが軟化し、トナー同士およびトナーと記録媒体8との付着力が増加し、定着液9付与時の、定着液9によるトナーの移動・凝集を防止できる。
本実施の形態では、加熱ローラ32の表面温度を140℃とし、加熱ローラ32と定着ローラ39との圧接部における接触開始部の温度がトナーのガラス軟化点(120℃)よりも高くなるように設定してもよい。これにより、定着液9の付与前にトナーが充分に軟化し、トナー同士およびトナーと記録媒体8との付着力がさらに増加し、定着液9付与時の、定着液9によるトナーの移動・凝集を一層防止できる。
また本実施の形態では、定着ローラ39の表面層39cにフッ素樹脂を用い、定着液9の溶媒成分としてハイドロフルオロエーテルを用いるけれども、この組み合わせに限定されず、定着液9の薄層をトナー像に均一に付与できる、定着ローラ39の表面層39cと定着液9の溶媒成分との組み合わせであればよい。
加熱手段61によれば、トナー像を担持する記録媒体8が搬送ベルト31上に載置され、加熱下に、加熱ローラ32と定着ローラ39との圧接部に搬送される。この圧接部において、記録媒体8は、トナー像担持面に定着液9を付与され、それと同時に加熱ローラ32による加熱を受ける。これによって、記録媒体8にトナー像が定着し、画像が形成される。画像が形成された記録媒体8は、排紙ローラ56a,56bにより画像形成装置60の外部に排出される。
定着液付与手段6cは、画像形成装置1の定着液付与手段6において、加圧ローラ40が加熱ローラ32に変更される以外は、同様の構成を有する。加熱ローラ32への変更による作用は前述したとおりである。
この構成を採ることによって、定着液9の付与によるトナーおよび記録媒体8の温度低下を補う熱量が、定着液9の付与と同時に供給される。その結果、定着液9の付与直後のトナー、記録媒体8および定着液9の温度が高くなり、定着液9の拡散、浸透が速くなって、トナーの軟化および/または膨潤が広範囲で瞬時に起こり、短時間で充分な定着強度を得ることができる。さらに、塗布後の定着液9の温度が上昇するので、定着液9を短時間で乾燥させ得る。これらの利点から、画像形成装置における単位時間当たりの出力枚数であるスループットが一層向上する。
図6は、本発明の実施の第3形態である画像形成装置62の要部の構成を模式的に示す側面図である。図7は、図6に示す画像形成装置62の要部を拡大して示す側面図である。
画像形成装置62は、画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。また、同一部分については図示および説明を省略する。
画像形成装置62は、加熱手段である加熱ローラ32aおよび定着液付与手段6aが、感光体ドラム11y,11m,11c,11bから中間転写ベルト66へのトナー像の中間転写位置よりも中間転写ベルト66の回転駆動方向(矢符29の方向)下流側から、転写定着手段64によるトナー像の記録媒体8への転写定着位置よりも中間転写ベルト66の回転駆動方向(矢符29の方向)上流側までの間において、中間転写ベルト66に接するように設けられることを特徴とする。加熱ローラ32aは、画像形成装置1における支持ローラ25に代えて用いられる。
また、画像形成装置62は、中間転写ベルト66上で加熱されかつ定着液9aを付与されるトナー像が、転写定着手段64により記録媒体8に転写と同時に定着されることを特徴とする。
すなわち画像形成装置62は、トナー像形成手段2(不図示。ただし感光体ドラム11y,11m,11c,11bを除く)と、中間転写手段63と、定着液付与手段6aと、転写定着手段64と、搬送手段65と、記録媒体供給手段7(不図示。レジストローラ44a,44bを除く)とを含んで構成される。
中間転写手段63は、中間転写ベルト66と、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと、加熱ローラ32aと、支持ローラ26,27と、温度センサ35と、図示しないベルトクリーナとを含んで構成される。画像形成装置1における中間転写手段3との相違点は、中間転写手段3における支持ローラ25が加熱ローラ32aに置き換えられ、中間転写ベルト66およびその上に担持されるトナー像が加熱される点である。
中間転写ベルト66には、厚さ100μmのポリイミドフィルムに、厚さ500μmのシリコンゴム層およびPTFEとPFAとを8:2(重量比)の割合で含有するフッ素樹脂組成物からなる厚さ20μmの表面被覆層を順次積層した無端ベルトが用いられる。中間転写ベルト66を構成する材料には、電気抵抗値を調節するために、カーボンなどの導電剤が配合される。
加熱ローラ32aは、軸線回りに回転駆動可能に設けられ、支持ローラ26,27とともに中間転写ベルト66を張架しながら回転し、かつ中間転写ベルト66を加熱する機能を有する。加熱ローラ32aは、金属製の円筒体と、該円筒体の内部に設けられる加熱ヒータなどの加熱手段33とを含んで構成される。本実施の形態では、外径30mm、肉厚1mmのステンレス鋼製パイプの内部に、ハロゲンランプが配置されるローラが用いられる。
温度センサ35は、中間転写ベルト66の温度を検知するために、中間転写ベルト66の回転方向、すなわち矢符29の方向において、加熱ローラ32aと中間転写ベルト66との接触位置よりも下流側に、中間転写ベルト66に接するかまたは近接するように設けられる。温度センサ35による検知結果は、画像形成装置62の全動作を制御する図示しないCPUに入力され、CPUは入力される検知結果に基づいて、加熱ヒータ33に電圧を印加する図示しない電源に信号を送り、加熱ヒータ33による発熱を調整し、中間転写ベルト66の温度が一定になるように制御する。本実施の形態では、中間転写ベルト66の温度が、ここで使用されるトナーのガラス転移点(60℃)よりも若干低い温度になるように設定される。
中間転写手段63によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11bから中間転写ベルト66のトナー像担持面66aに重ね合わせて転写されるトナー像を、中間転写ベルト66の回転に伴い、加熱ローラ32aによる加熱および定着液付与手段6aによる定着液9aの付与を施した後、転写定着手段64に送給する。
定着液付与手段6aは、中間転写ベルト66のトナー像担持面66aに定着液9aを付与する定着液供給手段36aと、図示しない定着液貯留槽と、図示しない定着液供給管とを含んで構成される。
定着液供給手段36aは、定着液9aを貯留する定着液溜48と、中間転写ベルト66に圧接し、その一部が定着液溜48に貯留される定着液9a中に浸漬しかつ図示しない駆動手段により矢符50の方向に回転駆動可能なように、定着液溜48の開口部に設けられる定着液供給ローラ49aと、定着液供給ローラ49aの表面に圧接しかつ図示しない駆動手段により矢符52の方向に回転駆動可能に設けられ、定着液供給ローラ49aの表面に付着する定着液9aを適量に規制する規制ローラ51と、一端を定着液溜48に固定されかつ他端が規制ローラ51の表面に圧接するように設けられ、規制ローラ51表面の定着液9aを除去する除去ブレード53aとを含んで構成される。なお、定着液供給ローラ49aと規制ローラ51とは、たとえば、単一のギア列により駆動され、一定の周速比で回転する。
定着液溜48は、画像形成装置1の定着液供給手段36における定着液溜48と同じ構成である。
定着液供給ローラ49aには、芯金と、芯金の表面に形成される弾性層と、弾性層の表面に形成される親水性層とを含むローラが用いられる。弾性層には、たとえば、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが用いられる。親水性層には、たとえば、親水性処理を施したPTFEなどが用いられる。さらに、定着液供給ローラ49aは、少なくともその表面層が、後述する定着液9aとの濡れ性が良好な材料を含んで構成することができる。該材料としては特に制限はないけれども、たとえば、アルミニウムなどの金属、親水性樹脂、親水性ゴム材料などが挙げられる。このような親水性の表面層を設けることによって、定着液9aを薄い層として保持することができ、少量の定着液9aでも広い範囲に付与できるので、定着液9aの消費量を低減化できるとともに、過剰な定着液9aが未定着のトナーを押し流して画像を乱すのを防止できる。
本実施の形態では、径12mmの芯金に弾性を有するシリコンゴムからなる弾性層を設けて外径20mmのローラを得、さらに弾性層の表面に親水性処理を施したPTFEからなる厚さ10μmの親水性層を設けたローラが、定着液供給ローラ49aとして用いられる。また本実施の形態では、定着液供給ローラ49aは、0.5N/cmの圧力で中間転写ベルト66に圧接される。さらに定着液供給ローラ49は、中間転写ベルト66の回転速度に対して2%遅い速度で回転する。
規制ローラ51は、画像形成装置1の定着液供給手段36における規制ローラ51と同じ構成である。
除去ブレード53aには、厚さ40μmのステンレス鋼製の板が用いられる。
定着液9aは、溶媒成分として水を用い、水とトナー定着用有機化合物とを含む組成物が用いられる。ここで、トナー定着用有機化合物としては、先に例示したものの中から、水に溶解または分散可能なものを選択して使用すればよい。定着液9aにおける水の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは定着液9a全量の20重量%以上、さらに好ましくは20〜95重量%、特に好ましくは30〜90重量%であり、残部がトナー定着用有機化合物である。定着液9aには、トナー定着用有機化合物の水中での分散性を向上させるために、適量の界面活性剤を添加できる。界面活性剤としては、たとえば、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩などの高級アルコール硫酸エステル塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸金属塩、脂肪酸誘導体硫酸エステル塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、四級アンモニウム塩、複素環アミンなどの陽イオン界面活性剤、アミノ酸エステル、アミノ酸などの両性イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。さらに定着液9aには、分散助剤の適量を添加できる。分散助剤としては、たとえば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、モノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。このような定着液9aは、中間転写ベルト66に浸透しない。
定着液供給手段36aによれば、まず、定着液供給ローラ49aが定着液溜48の定着液9a中を回転することにより、定着液供給ローラ49aの表面に定着液9aが付着し、定着液9aの層が形成される。この層は規制ローラ51によりほぼ一定の厚さを有する薄層に規制される。この定着液層が、定着液供給ローラ49aと中間転写ベルト66との圧接部において、中間転写ベルト66のトナー像担持面66a上に移行する。このとき、定着液供給ローラ49a上の定着液9aのほぼ1/2がトナー像担持面66aの表面に移行する。
定着液付与手段6aによれば、中間転写手段63により、中間転写ベルト66上で加熱状態にあるトナー像に、定着液9aを付与する。中間転写ベルト66上のトナー像は、加熱および定着液9aの付与を受けて、軟化および/または膨潤する。
転写定着手段64は、中間転写ベルト66を介して、矢符71の方向に回転駆動可能に設けられる支持ローラ26に対向し、かつ矢符72の方向に回転駆動可能に設けられる加圧ローラ40を含んで構成される。
加圧ローラ40は、画像形成装置1の定着液付与手段6における加圧ローラ40と同一の構成を有する。加圧ローラ40は、中間転写ベルト66に対して、5N/cmの圧力で圧接される。また加圧ローラ40には電圧は印加されない。
転写定着手段64によれば、軟化および/または膨潤状態にあるトナー像を担持する中間転写ベルト66が、支持ローラ26と加圧ローラ40との圧接部に移動し、それに同期して、図示しない記録媒体供給手段により支持ローラ26と加圧ローラ40との圧接部に記録媒体8が搬送され、中間転写ベルト66のトナー像担持部分と記録媒体8とが重ね合わせられて押圧される。このトナー像は、軟化および/または膨潤状態にあるので、押圧によって記録媒体8に付着する。このとき、記録媒体8が紙類である場合には、トナー像は紙繊維に強く入り込み、それと同時にトナー粒子同士が融合し、トナー像の表面が平滑になる。その結果、減法混色による発色性と表面の光沢性に優れる高品位なカラー画像が得られる。本実施の形態では、中間転写ベルト66の表面に、トナーとの付着力が小さいフッ素樹脂層を設けるので、トナー像はほぼ全量が記録媒体8に転写される。また、中間転写ベルト66は、フッ素樹脂層の下に弾性層を有するので、記録媒体8表面の凹凸に従って変形するので、記録媒体8の凹部にもトナー像を接触させることができ、均一な転写定着像が得られる。
搬送手段65は、図示しない駆動手段により軸線回りに回転駆動可能に設けられる駆動ローラ68と、テンションローラ69と、駆動ローラ68およびテンションローラ69により張架されて回転駆動する無端状ベルトである搬送ベルト70とを含んで構成される。搬送手段65によれば、転写定着手段64において、トナー像が転写定着され、画像が形成された記録媒体8を、画像形成装置62の外部に排出するために搬送する。搬送手段65により搬送される記録媒体8は、排紙ローラ56a,56bを介して画像形成装置62の外部に設けられる図示しない排紙トレイに排出される。
画像形成装置62によれば、中間転写ベルト66に転写されたトナー像が加熱および定着液9aの付与を受けて軟化および/または膨潤状態になり、記録媒体8に転写定着される。
本実施の形態では、定着液9aが浸透しない中間転写ベルト66に定着液9aを付与するので、付与した定着液9aの大部分をトナー像のみに付着させることができる。これによって、定着液9aの使用量を低減化できる。
また本実施の形態では、中間転写ベルト66上のトナー像に定着液9aを付与する構成を採るので、定着液供給ローラ49aの表面に紙を構成する繊維などの紙粉が付着せず、定着液溜48内の定着液9aに紙粉が混入することがない。この結果、除去ブレード53aへの紙粉の噛み込みに起因する、定着液供給ローラ49a上での定着液層の不均一化が生じないので、高品位の画像が長期間にわたって安定的に得られる。
また本実施の形態では、粘度の低い水溶液または水分散液形態の定着液9aを用いるので、定着液9aがトナー粒子間およびトナー粒子と中間転写ベルト66との界面に速やかに浸透し、トナーを瞬時に軟化および/または膨潤させることができる。さらに、定着液溜48内の定着液9aを加熱する手段を設けることによって、トナー像を記録媒体8に転写定着した後に、記録媒体8上に残る定着液9aを室温でも短時間で乾燥させることができる。
図8は、本発明の実施の第4形態である画像形成装置75の要部の構成を模式的に示す側面図である。
画像形成装置75は、画像形成装置62に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。また、同一部分については図示および説明を省略する。
画像形成装置75は、温度センサ35が、加熱ローラ32aに接するかまたは近接するように配置され、かつ、定着液供給手段36aの定着液供給ローラ49aが中間転写ベルト66を介して加熱ローラ32aに対向し、定着液供給ローラ49aが中間転写ベルト66に圧接するように定着液供給手段36aが配置される以外は、画像形成装置62と同一の構成を有する。
すなわち、画像形成装置75において、中間転写手段63aは、支持ローラ26,27と、加熱ローラ32aと、支持ローラ26,27および加熱ローラ32aに張架されて回転駆動する中間転写ベルト66と、中間転写ベルト66に感光体ドラム11y,11m,11c,11b上のトナー像を転写する中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと、加熱ローラ32aの表面に接するかまたは近接するように配置され、加熱ローラ32aの表面温度を検知する温度センサ35とを含んで構成される。
また、定着液付与手段6aの定着液供給手段36aにおいては、定着液供給ローラ49aが、中間転写ベルト66を介して加熱ローラ32aと対向する位置で、中間転写ベルト66に圧接する。
中間転写手段63aおよび定着液付与手段6aによれば、中間転写ベルト66のトナー像担持面66aに担持されるトナー像は、加熱ローラ32aに加熱されながら、中間転写ベルト66と定着液供給ローラ49aとの圧接部に搬送される。本実施の形態では、加熱ローラ32aの温度を70℃とし、中間転写ベルト66と定着液供給ローラ49aとの接触開始部における中間転写ベルト66およびトナー像の温度が、トナー像を構成するトナーのガラス転移点(ここでは60℃)よりも若干低い温度になるように設定される。この圧接部において、トナー像は加熱を受けながら定着液9aを付与され、トナーの軟化および/または膨潤が起こる。
画像形成装置75によれば、中間転写ベルト66の上で、加熱を受けながら定着液9aを付与されて軟化および/または膨潤したトナー像は、そのまま転写定着手段64に搬送され、記録媒体8上に転写定着され、記録媒体8上に画像が形成される。この記録媒体8は、搬送手段65により画像形成装置75の外部に排出される。
この構成を採ることによって、定着液9aを付与する際に起こる中間転写ベルト66、その上に担持されるトナー像および定着液9aの温度低下を補う熱量を、温度低下と同時に、中間転写ベルト66およびトナー像に供給できる。このように、定着液9aの付与直後に、中間転写ベルト66、その上のトナー像および定着液9aの温度低下を防止できるので、付与直後の定着液9aが速やかにトナー像中に拡散、浸透し、トナーの軟化および/または膨潤が瞬時に広範囲に起こる。このため、トナー像が転写定着手段64で記録媒体8に押圧されると、記録媒体8に強固に付着し、高い定着強度が実現される。さらに、付与後の定着液9a自体の温度が加熱ローラ32aによる加熱によって上昇するので、付与後または転写定着後に定着液9aを短時間で乾燥できる。これらの効果によって、画像形成装置75における単位時間当たりの出力枚数であるスループットがさらに向上する。
本実施の形態では、加熱ローラ32aの表面温度を70℃、定着液9aが付与される直前のトナー像の温度をトナーのガラス転移点(60℃)よりも若干低い温度に設定するけれども、それに限定されない。たとえば、加熱ローラ32aの表面温度を80℃、定着液9aが付与される直前のトナー像の温度を、トナーのガラス転移点(60℃)よりも高くかつ軟化点(ここでは120℃)よりも低い温度にしても良い。この場合には、定着液9aの付与前に、トナー像を構成するトナーが軟化し、トナー同士およびトナーと中間転写ベルト66との付着力が高まるので、定着液9a付与の液流によるトナーの移動、凝集などを防止できる。また、たとえば、加熱ローラ32aの表面温度を150℃、定着液9aが付与される直前のトナー像の温度を、トナーの軟化点(120℃)よりも高い温度にしてもよい。この場合には、定着液9aを付与する前に、トナー像の軟化がさらに進み、トナー同士およびトナーと中間転写媒体66との付着力が一層高まるので、定着液9a付与時のトナーの移動、凝集などを防止できる。
図9は、本発明の実施の第5形態である画像形成装置76の要部の構成を模式的に示す側面図である。
画像形成装置76は、画像形成装置62に類似し、図示した部分のうち対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。また、同一部分については図示および説明を省略する。
画像形成装置76は、加熱ローラ32aが、画像形成装置62における支持ローラ26の位置において、支持ローラ26と同様に、中間転写ベルト66を介して加圧ローラ40に対向し、かつ中間転写ベルト66に圧接するように設けられ、温度センサ35が加熱ローラ32aの表面に接するかまたは近接するように設けられ、画像形成装置62において加熱ローラ32aが設けられる位置には支持ローラ25が設けられることを特徴とする。
さらに画像形成装置76の定着液供給手段36bにおいて、定着液溜48中には、定着液9aを一定の温度に保持するために、図示しない温度制御手段が設けられる。
すなわち、画像形成装置76は、トナー像形成手段2(感光体ドラム11bを除いて不図示)と、中間転写手段63b(中間転写ローラ22b、中間転写ベルト66、支持ローラ25および加熱ローラ32aを除いて不図示)と、定着液付与手段6aと、転写定着手段77と、搬送手段65(不図示)と、記録媒体供給手段7(不図示)とを含んで構成される。
中間転写手段63bは、支持ローラ25と、矢符71の方向に回転駆動可能に設けられる加熱ローラ32aと、支持ローラ27(不図示)と、支持ローラ25,27および加熱ローラ32aに張架されて回転駆動する中間転写ベルト66と、中間転写ベルト66に感光体ドラム11y,11m,11c,11b(一部不図示)上のトナー像を転写する中間転写ローラ22y,22m,22c,22b(一部不図示)と、加熱ローラ32aの表面に接するかまたは近接するように配置され、加熱ローラ32aの表面温度を検知する温度センサ35とを含んで構成される。中間転写手段63bによれば、中間転写ベルト66のトナー像担持面66a上に、感光体ドラム11y,11m,11c,11b上の各色のトナー像が重ね合わせて転写され、1つのトナー像が形成される。このトナー像は中間転写ベルト66の回転駆動に従って搬送される。
加熱ローラ32aにはその表面温度を検知する温度センサ35を設けることが非常に容易であり、それによって、中間転写ベルト66およびトナー像を一定温度に加熱することができ、ひいては一定の条件下に定着液9aの付与およびトナー像の記録媒体8への転写定着を実施できるので、高品位画像を常に得ることができる。これに対し、記録媒体8の中でも、記録紙に定着液9aを塗布する場合には、記録紙の種類(厚さ、液体の浸透性など)により、付与条件(付与量、付与時の液温、付与速度など)を変更する必要がある。さらに、温度センサなどの設置も容易ではない。
定着液付与手段6bは、定着液供給手段36bと、定着液9aを貯留する図示しない定着液貯留槽と、定着液貯留槽の定着液9aを定着液供給手段36bに供給する図示しない定着液供給管とを含んで構成される。定着液供給手段36bは、定着液溜48内に、図示しない温度制御手段が設けられる以外は、画像形成装置62における定着液供給手段36aと同一の構成を有する。温度制御手段は、定着液9aの液温を一定温度に保持するために設けられるものであり、定着液9aの液温を検知する温度センサと、ヒータとを含んで構成される。温度センサによる検知結果は、画像形成装置76の全動作を制御する図示しないCPUに入力され、CPUは検知結果に基づいて制御信号を発し、ヒータに電圧を印加する図示しない電源の出力を制御する。温度制御手段によって、定着液9aをトナー像に付与する際に、トナー像の温度が転写定着に支障を来たすほど低下するのを防止できる。ひいては、転写定着時に、加熱による軟化と、定着液9aによる軟化および/または膨潤とが相俟って、トナー像が記録媒体8に対して強固に付着し、高い定着強度が得られる。定着液9aの保温温度は定着液9aが沸騰しない温度であれば特に制限されないけれども、熱量消費量を考慮すると、好ましくは35〜45℃である。本実施の形態では、定着液溜48内の定着液9aの液温は、40℃に保持される。定着液付与手段6bによれば、中間転写ベルト66のトナー像担持面66aに担持されるトナー像に、接触方式により、約40℃に加温された定着液9aが付与され、該トナー像を構成するトナーを軟化および/または膨潤させる。本実施の形態では、定着液9aを浸透しないトナー像担持体である中間転写ベルト66に定着液9aを付与するので、トナー像に作用しないでトナー像担持体内部に吸収される定着液9aがなくなるので、定着液9aのロスが少ない。したがって、定着液9a消費量の低減化が図れる。さらに、トナー像にほぼ一定量の定着液9aが付与された状態で転写定着が行われるので、一定の転写定着条件下に支障を来たすことなく転写定着を行い得る。
転写定着手段77は、中間転写ベルト66を介して加熱ローラ32aに対向し、中間転写ベルト66に圧接し、かつ矢符72の方向に回転駆動可能に設けられる加圧ローラ40を含んで構成される。転写定着手段77によれば、定着液9aにより軟化および/または膨潤したトナー像が、中間転写ベルト66に担持された状態で、加熱ローラ32aと加圧ローラ40との圧接部に搬送される。該圧接部においては、トナー像担持面66aの反対側から、加熱ローラ32aによる加熱を受ける。それと同時に、トナー像の搬送に同期して記録媒体供給手段7から供給される記録媒体8に重ねあわされて押圧され、トナー像が記録媒体8に転写定着され、画像が形成される。すなわち、本実施の形態では、中間転写ベルト66において、トナー像担持面66aとは反対側の面から加熱を行い、定着液9aの付与面から記録媒体8に転写する構成を採る。中間転写ベルト66において、トナー像担持面66aは加熱により溶融し易い材料により構成されるけれども、その反対側の面は加熱により溶融し難い材料で構成される。この反対側の面にトナー像を担持させて記録媒体8への転写定着を行うと、トナー像と記録媒体8との付着力が不足することがある。したがって、トナー像担持面66aにトナー像を担持させ、これに定着液9aを付与し、補助的に加熱することによって、トナー像と記録媒体8との付着力を充分に高め、記録媒体8に対する定着強度の高い定着画像が得られる。
また、本実施の形態では、加熱ローラ32aの表面温度を75℃とし、定着液9aが付与されたトナー像と記録媒体8との接触開始部における中間転写ベルト66およびトナー像の温度が、トナーのガラス転移点(本実施形態では60℃)よりも若干低い温度(好ましくは2〜5℃低い温度)になるように設定する。
画像が形成された記録媒体8は、搬送手段65により搬送され、排紙ローラ56a,56bを介して画像形成装置76の外部に設けられる排紙トレイ41に排出される。
画像形成装置76によれば、中間転写ベルト66のトナー像担持面66aに担持されるトナー像にまず定着液9aが付与され、トナー像を構成するトナーの軟化および/または膨潤が起こる。次いで、このトナー像は加熱下で転写定着され、記録媒体8上に画像が形成される。
本実施の形態では、加熱ローラ32aの表面温度を70℃とし、トナー像と記録媒体8との接触開始部における中間転写ベルト66およびトナー像の温度が、トナーのガラス転移点(60℃)よりも若干低い温度になるように設定するけれども、これに限定されず、温度設定を適宜変更できる。たとえば、加熱ローラ32aの表面温度を80℃とし、トナー像と記録媒体8との接触開始部における中間転写ベルト66およびトナー像の温度を、トナーのガラス転移点(60℃)よりも高い温度にしてもよい。この場合には、転写定着時に、トナーが熱によって軟化するので、トナーの軟化および/または膨潤のために付与される定着液9aの付与量を低減化できる。また、定着液9aを付与するので、熱転写方式に比べて、転写定着時の設定温度を低くし、熱量の消費を削減し、転写定着時の設定温度までの昇温時間、すなわちウォームアップ時間が短縮される。
さらに、転写定着時までトナー像および定着液9aの温度低下を防止でき、ひいてはトナーの軟化状態を確実に保持できる。したがって、トナー像の記録媒体8に対する定着強度を充分に確保でき、中間転写ベルト66上に転写されずにトナーが残留するのを一層少なくできる。
さらに、転写定着後の記録媒体8の温度が高くなるので、定着液9aの乾燥をさらに早めることができる。これによって、画像形成装置76の単位時間当たりの出力枚数であるスループットがさらに向上する。
また本実施の形態では、加熱ローラ32aの表面温度を140℃とし、トナー像と記録媒体8との接触開始部における中間転写ベルト66およびトナー像の温度を、トナーの軟化点(120℃)よりも高い温度にしてもよい。この場合には、加熱ローラ32aの表面温度を80℃にした場合と同様の効果が、さらに向上する。
図10は、本発明の実施の第6形態である画像形成装置78の要部の構成を模式的に示す側面図である。画像形成装置78は、画像形成装置1,62に類似の構造を有し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。また、同一部分については、図示および説明を省略する。
画像形成装置78は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに形成される多色トナー像を転写定着ローラ80に転写し、転写定着ローラ80上で多色トナー像を加熱しながら、該多色トナー像に定着液9aを接触付与してトナーを軟化および/または膨潤させ、記録媒体8に転写し、多色トナー像の記録媒体8への転写および定着を同時に行うことを特徴とする。
画像形成装置78は、図示しないトナー像形成手段と、図示しない中間転写手段と、転写定着手段79と、搬送手段65と、記録媒体供給手段7とを含んで構成される。
トナー像形成手段は、画像形成装置1におけるトナー像形成手段2に類似の構造を有する。ただし、中間転写ベルト21の送り方向を矢符82の方向、すなわち画像形成装置1における送り方向とは反転させることに伴い、矢符82の方向の上流側から作像ユニット10y,10m,10c,10bが配置される。それに伴い、各作像ユニット内の各部材の回転駆動方向も逆回転になる。作像ユニット10y,10m,10c,10bの配置は、画像形成装置1におけるのとは逆になる。
中間転写手段も、画像形成装置1における中間転写手段3と類似の構造を有する。ただし、前述のように、中間転写ベルト21の送り方向を矢符82の方向に変更するので、ベルトクリーナ28が支持ローラ27ではなく、中間転写ベルト21を介して支持ローラ25に対向し、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに当接するように設けられる。
転写定着手段79は、内部に加熱ヒータ33を有しかつ図示しない駆動手段により矢符84の方向に回転駆動可能に設けられる転写定着ローラ80と、転写定着ローラ80の回転駆動方向上流側から順に設けられる、転写定着ローラ80に定着液9aを付与する定着液付与手段6a、加圧ローラ40、クリーニング手段81および温度センサ35とを含んで構成される。なお、転写定着ローラ80の回転駆動方向において、温度センサ35の下流側では、転写定着ローラ80が中間転写ベルト21を介して支持ローラ26と対向し、かつ中間転写ベルト21に圧接する。
転写定着ローラ80には、金属製の芯金の表面に、弾性層および表面層を順次形成したローラ状部材が用いられる。本実施の形態では、転写定着ローラ80として、厚さ1mmの炭素鋼からなる芯金に、体積抵抗108〜109Ω・cmのシリコンゴムからなる厚さ3mmの弾性層を設け、さらにPFAからなる厚さ20μmの表面層を設けてなる外径30mmのロールが用いられる。転写定着ローラ80には、トナーの帯電電位とは逆電位の電圧、たとえば+1kVの電圧が印加され、静電的にトナーを引き付けて転写するように構成される。転写定着ローラ80の内部に設けられる加熱ヒータ33には、たとえば、ハロゲンランプからなる加熱ヒータが用いられる。加熱ヒータ33は、転写定着ローラ80の表面温度を検知する温度センサ35の検知結果に基づいて、画像形成装置78の全動作を制御するCPUから発せられる信号によって、転写定着ローラ80の全表面温度が均一になるように制御される。
転写定着ローラ80と中間転写ベルト21との間には図示しない電圧印加手段により転写電界が印加され、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに形成されるトナー像が静電的に転写定着ローラ80に転写される。転写定着ローラ80に転写されるトナー像は、転写定着ローラ80の内部の加熱ヒータ33により加熱され、定着液9aの付与に供される。
定着液付与手段6aは、画像形成装置62における定着液付与手段6aと同一の構成を有する。定着液付与手段6aによれば、まず、定着液供給ローラ49aが定着液溜48の定着液9a中を回転することにより、定着液供給ローラ49aの表面に定着液9aが付着する。この定着液9aは、規制ローラ51によりほぼ一定の厚さを有する薄層に形成され、定着液供給ローラ49aと転写定着ローラ80との圧接部において、転写定着ローラ80上のトナー像に付与される。トナー像は、転写定着ローラ80との接触面から加熱され、外周側から定着液9aを付与され、トナー像を構成するトナーは加熱された状態で軟化および/または膨潤する。一方、規制ローラ51の表面に付着する余分な定着液9aは、除去ブレード53aにより、規制ローラ51の表面から除去される。
このように、本実施の形態では、中間転写ベルト21とは別のトナー像担持体(転写定着ローラ80)上でトナー像に定着液9aを付与するので、中間転写ベルト21に定着液9aが付着し難いという利点がある。また、中間転写ベルト21上ではなく、転写定着ローラ80上でトナー像を加熱するので、中間転写ベルト21の温度が上昇し難い。このため、トナー像形成手段の構成部材の温度上昇、トナー像形成過程中での定着液9aによるトナーの変質などが防止され、長期間にわたって安定的に高品位の画像を得る事ができる。
また本実施の形態では、トナー像は、一方の面(転写定着ローラ80表面=トナー像の下層部)から加熱され、かつ他方の面(転写定着ローラ80の外周側=トナー像の最外層部)から定着液9aの付与を受ける。すなわち、トナー像は転写定着ローラ80の表面に接する側から加熱され、かつ定着液供給ローラ49aの表面に臨む側から定着液9aの付与を受ける。したがって、トナー像を構成するトナー全体が記録媒体8に対して充分な付着力を示す程度に軟化および/または膨潤し、記録媒体8への定着強度の高い画像が得られる。加熱だけでは、トナー像の転写定着ローラ80に接する部分(トナー像の下層部)ではトナーが充分軟化するけれども、トナーの大部分は熱伝導性の低い結着樹脂であるため、トナー像の最外層部では温度が上がり難く、トナーが充分に軟化せず、記録媒体8に対する付着力が不充分になるおそれがある。そのため、トナー像の最外層側から定着液9aを付与することにより、トナー像を構成するトナー全体が充分に軟化および/または膨潤し、トナー像の記録媒体8に対する付着力を高めることができる。これによって、定着画像を折り曲げても、定着画像が剥離しない、定着強度の高い画像が得られる。
本実施の形態では、加圧ローラ40は10N/cmの線圧で転写定着ローラ80に圧接する。転写定着ローラ80上の、加熱されかつ定着液9aを付与されてトナーが軟化および/または膨潤した状態にあるトナー像が、加圧ローラ40と転写定着ローラ80との圧接部に搬送されるのに同期して、記録媒体供給手段7から記録媒体8が送給され、加圧ローラ40による押圧を受けて、トナー像が記録媒体8に転写および定着され、画像が形成される。
クリーニング手段81は、トナー像を記録媒体8に転写した後の転写定着ローラ80の表面に残存するトナー、定着液9a、紙粉などを除去し、清浄化する。
温度センサ35は、転写定着ローラ80の表面温度を検知する。検知結果は、画像形成装置78の全動作を制御するCPUに入力され、CPUは検知結果に基づいて、加熱ヒータ33に電圧を印加する図示しない電源に制御信号を送り、加熱ヒータ33による発熱の度合いを調整する。
転写定着手段79によれば、中間転写ベルト21上のトナー像を転写定着ローラ80の表面に転写し、転写定着ローラ80上で加熱下にトナー像に定着液9aを付与してトナーを充分に軟化および/または膨潤させた後に、記録媒体8に転写定着し、画像を形成する。
搬送手段65は、画像形成装置62における搬送手段65と同一である。
記録媒体供給手段7は、画像形成装置1における記録媒体供給手段7と同一である。
画像形成装置78によれば、トナー像形成手段により中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに形成されるトナー像が、転写定着ローラ80に転写され、転写定着ローラ80上で加熱され、さらに加熱下に定着液9aを付与された後、記録媒体8に転写定着され、画像が形成される。画像が形成された記録媒体8は搬送手段65により搬送され、排紙ローラ56a,56bを介して画像形成装置78の外部に排出される。
本実施の形態では、転写定着ローラ80上のトナー像に対する、定着液9aの単位面積当たりの付与量は、トナー像の温度に関係なく一定としたけれども、それに限定されず、トナー像の温度に応じて定着液9aの付与量を変更してもよい。
定着液9aの付与量の制御は、定着液供給手段36aにおいて、たとえば、定着液供給ローラ49と規制ローラ51との周速比、特に規制ローラ51の回転速度を可変にすることによって実施できる。たとえば、規制ローラ51の回転速度を上げると、定着液供給ローラ49a上の定着液9aの量が低減され、定着液9aのトナー像への付与量を減らすことができる。本構成では、規制ローラ51の定着液供給ローラ49aへの周速比が0.4のとき、定着液9aのトナー像へ付与量が10g/m2、周速比が0.5のとき、付与量が8g/m2、周速比が0.6のとき、付与量が6g/m2である。
付与量の制御についてさらに具体的に説明する。たとえば、転写定着ローラ80の表面温度を140℃に設定し、画像形成装置78の起動直後であって転写定着ローラ80の表面温度が上昇中の場合には、規制ローラ51の定着液供給ローラ49aに対する周速比を0.4にして付与量を通常よりも多くする。そして、転写定着ローラ80の表面温度が140℃に達し、一定になった場合には、周速比を0.5とし、付与量を少なくすればよい。
また、転写定着ローラ80の表面温度を150℃に設定し、たとえば、転写定着ローラ80の表面温度が120〜140℃の範囲では、トナー像に対する定着液9aの付与量を10g/m2とし、140℃以上の範囲では付与量を8g/m2とするようにしてもよい。表面温度の変化に伴う段階的な付与量の制御を行えば、ウォームアップ中でも、トナー像が一層確実に記録媒体8に定着する。
これらの構成では、装置起動時から転写定着ローラ80の表面温度か所定温度に達するまでの、トナーの熱的な定着作用が弱いウォームアップ中でも、定着液9aを多めに塗布するので、充分な定着強度を有する定着画像が得られる。したがって、待機時間がなく、クイックスタートが可能な画像形成装置が得られる。
トナー像への定着液9aの付与量制御は、規制ローラ51の定着液供給ローラ49aに対する周速比を変更するだけでなく、たとえば、定着液供給ローラ49aの表面に弾性ブレードを押圧し、その押圧力を変更することによっても実施できる。
図11は、本発明の実施の第7形態である画像形成装置85の要部の構成を模式的に示す側面図である。
画像形成装置85は、画像形成装置78に類似の構造を有し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。また、同一部分については、図示および説明を省略する。
画像形成装置85は、中間転写ベルト21から転写定着ローラ80に転写されるトナー像を、転写定着ローラ80内部に設けられる加熱ヒータ33によって加熱した状態で、定着液9aを付与するに際し、定着液供給手段87として、ノズルアレイ88を用いることを特徴とする。
画像形成装置85において、転写定着手段86は、内部に加熱ヒータ33を有する転写定着ローラ80と、転写定着ローラ80の回転駆動方向上流側から順に設けられる、定着液供給手段87、加圧ローラ40、クリーニング手段81および温度センサ35とを含んで構成される。
定着液供給手段87は、ノズルアレイ88を含んで構成される。ノズルアレイ88は、電気的な制御信号に応じて、定着液9aの微小液滴を転写定着ローラ80のトナー像担持面に向けて飛翔させる微小ノズル(不図示)を、複数配列した装置である。微小ノズルの配列ピッチは、微小ノズルから吐出される定着液9aの微小液滴が、転写定着ローラ80表面の少なくともトナー像担持領域を隙間無く被覆するように設定される。また、ノズルアレイ88においては、微小液滴の直径を適宜変更することができる。液滴径を制御することにより、付与液滴数の密度(ドット数)が制御され、定着液9aの付与量をたとえば1〜10g/m2の範囲で制御できる。
ノズルアレイ88を用いれば、転写定着ローラ80上のトナー付着量に応じて、定着液9aの付与量を制御できる。たとえば、表面温度が140℃に設定される転写定着ローラ80の表面に定着液9aを付与する場合、画像信号により判定されるトナーの付着量が8g/m2以上の部分のみに、付与量4g/m2で定着液9aが付与される。このトナー付着量(8g/m2)は、設定温度140℃の転写定着ローラ80でもトナー像を記録媒体8に転写できるトナー付着量の上限であり、これ以上の付着量では定着強度が不充分な定着画像が得られるおそれがあるので、定着液9aを付与することによってそれを解消する。
このような構成を採ることによって、定着液9aを付与する部分が限定されるので、定着液9aの消費量を低減化できる。トナーの大部分を占めるのは熱伝導性の低い結着樹脂であるため、トナー付着量が多い部分では、トナー像の最外層部は温度が上がり難く、トナーが充分に軟化せず、記録媒体8に対する付着力が不充分になるおそれがある。付着力の低下を定着液9aの付与により補い、トナー像全体を構成するトナーが充分に軟化および/または膨潤させ、トナー像の記録媒体8に対する付着力を高めることができる。また、トナー像に定着液9aを付与する場合、トナー像の記録媒体8に付着する面に定着液9aが付与されることになるので、単に加熱する場合に比べて付着力の増加が大きく、定着画像を折り曲げても、定着画像が剥離しない、定着強度の高い画像が得られる。なお、トナー付着量の少ない部分では、トナー像の最外層部でも温度が充分に上昇するので、定着液9aを付与しなくても、記録媒体8に対する充分な定着強度を確保できる。
本実施の形態では、転写定着ローラ80上のトナー像に対する、定着液9aの単位面積当たりの付与量は、トナー像の温度に関係なく一定としたけれども、それに限定されず、トナー像の温度に応じて定着液9aの付与量を変更してもよい。
たとえば、転写定着ローラ80の表面温度を140℃に設定し、転写定着ローラ80の表面温度が140℃に上昇中の場合には、付与量を1g/m2だけ増加させ、140℃に達している場合には、付与量を1g/m2だけ減少させればよい。
また、転写定着ローラ80の表面温度を140℃に設定し、転写定着ローラ80の表面温度が140℃に上昇中の場合には、トナー付着量が8g/m2未満の部分にも定着液9aを2g/m2の割合で付与し、140℃に達している場合には、トナー付着量が8g/m2以上の部分にのみ定着液9aを付与することもできる。
これらの構成によれば、装置起動時から転写定着ローラ80の表面温度が所定温度に達するまでのウォームアップ期間中でも、定着液9aを多めに塗布することによって、充分な定着強度を有する定着画像が得られる。したがって、待機時間がなく、クイックスタートが可能な画像形成装置が得られる。
図12は、本発明の実施の第8形態である画像形成装置90の要部の構成を模式的に示す断面図である。
画像形成装置90は、画像形成装置78に類似の構造を有し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略し、同一部分については図示および説明を省略する。
画像形成装置90は、その転写定着手段79aが、加圧ローラ40aの表面温度を検知するために、加圧ローラ40aの表面に接するかまたは近接するように設けられる温度センサ35aと、加圧ローラ40aの内部に温度センサ35aからの温度検出信号にもとづいて加圧ローラ40aを所定の設定温度となるように加熱動作が制御される加熱ヒータ(ヒータランプ)33とを含む以外は、画像形成装置78と同一の構成を有する。加圧ローラ40aの温度を検知する温度センサ35aが設けられることが特徴である。
画像形成装置90の転写定着手段79aは、内部に加熱ヒータ33を有する転写定着ローラ80と、転写定着ローラ80の回転駆動方向上流側から順に設けられる、定着液付与手段6a、内部に加熱ヒータ33を有する加圧ローラ40a、クリーニング手段81および温度センサ35と、加圧ローラ40a表面に接するかまたは近接するように設けられる温度センサ35aとを含んで構成される。
温度センサ35aによる、加圧ローラ40aの表面温度の検出結果は、検出出力として、画像形成装置90の全動作を制御するCPUに送られ、CPUは検出出力に応じて定着液付与手段6aに制御信号を送り、定着液供給手段36aによる定着液9aの付与量を制御する。付与量の制御は、たとえば、定着液供給手段36aにおいて、定着液供給ローラ49aに対する規制ローラ51の周速比を調整することによって実施できる。画像形成装置90では、加圧ローラ40aの表面温度に応じて、転写定着ローラ80上のトナー像への定着液9aの付与量を制御する。
温度センサ35aを用いる定着液9aの付与量の制御は、たとえば、次のようにして実施される。加圧ローラ40aの表面温度をたとえば70℃に設定し、画像形成装置90の起動直後で加圧ローラ40aの表面温度が70℃に達せず、上昇中の場合には、規制ローラ51の定着液供給ローラ49aに対する周速比を0.4に調整し、定着液9aの付与量を増加させる。そして、加圧ローラ40aの表面温度が70℃に達した場合は、周速比を0.5とし、周速比0.4の場合よりも定着液9aの付与量を少なくすればよい。すなわち、起動直後では、加圧ローラ40aの表面温度が設定温度に達していないので、転写定着ローラ80との圧接部における熱的な定着作用が不充分になるけれども、定着液9aを多めに付与することによって、熱的な定着作用が弱いウォームアップ期間でも充分な定着強度を有する定着画像が得られる。したがって、待機時間がなく、クイックスタートが可能な画像形成装置が得られる。
定着液9aの付与量の制御は、加圧ローラ40aの表面温度に応じて段階的に実施してもよい。たとえば、加圧ローラ40aの表面温度を90℃に設定し、表面温度が50℃以下では付与量を10g/m2、50〜70℃の範囲では付与量を9g/m2、70〜90℃の範囲では付与量を8g/m2、90℃以上では6g/m2とすれば、表面温度に関係なく、定着強度の高い定着画像が得られる。
本実施の形態によれば、加圧部材(加圧ローラ40a)の表面温度に応じて、トナー像への定着液9aの付与量を適宜選択することによって、画像形成装置90の起動直後で、加圧部材の表面温度が所定の温度に達しないウォームアップ期間中でも、充分な定着強度を有する定着画像が得られる。また、加圧部材の表面温度を高く設定するほど、定着液9aの付与量を低減化できるので、定着液9aの消費量を少なくすることができる。
本発明の画像形成装置において、トナーを軟化および/または膨潤させる定着液34を用いるけれども、それに限定されず、公知の接着成分、粘着成分などを含む定着液を用いることもできる。接着成分の具体例としては、たとえば、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、SBRゴムなどの高分子エラストマーを主成分とするゴム系接着剤、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリル樹脂などの親水性合成樹脂を水中に分散させてなるエマルジョン接着剤などが挙げられる。この構成を採ることによって、トナーと記録媒体8との付着力が、トナーの軟化および/または膨潤だけではなく、接着成分または粘着成分によっても付与されるので、付着力を高め、トナー像の記録媒体8への定着強度を向上させ得る。
本発明の画像形成装置において、各ローラに用いられる材料、層構造、寸法などは、前述のものに限定されず、この電子写真方式の画像形成分野で常用されるものをそのまままたは適宜変更して用いることができる。ローラに代えて、ベルトなどの無端状部材を用いることもできる。また、中間転写ベルト、搬送ベルトなどは無端状部材とされるけれども、ローラ形態にすることもできる。
本発明の画像形成装置は、各実施の形態において、タンデム方式のカラー画像形成装置として示すけれども、それに限定されず、たとえば、中間転写ベルトが1回回転する毎に1色の画像を重ね合わせる、いわゆる4回転方式のカラー画像形成装置とすることもできる。また、カラー画像形成装置に限定されず、単色画像形成装置とすることもできる。
このような本発明の画像形成装置は、たとえば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの2種以上の複合機として使用される。