JP2006193735A - 繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形体にした場合に、機械的強度の低下が少なく、外観に優れた成形体が得られる繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物とそのペレット、および、前記樹脂組成物またはペレットからなる成形体を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン樹脂20〜95重量%と、重量平均繊維長が2〜100mmであり、平均繊維径が20〜30μmであるガラス繊維80〜5重量%を含有する繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物、ペレット、および、その成形体。
また、ポリプロピレン樹脂99.9〜60重量%と、変性ポリオレフィン樹脂0.1〜40重量%とを含有する樹脂混合物と、前記の樹脂混合物100重量部に対して、重量平均繊維長が2〜100mmであり、平均繊維径が20〜30μmであるガラス繊維5〜400重量部を含有する繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物、ペレット、および、その成形体。
【選択図】なし

Description

本発明は、繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物とそのペレット、および、前記樹脂組成物またはペレットからなる成形体に関するものである。さらに詳細には、成形体にした場合に、機械的強度の低下が少なく、外観に優れた成形体が得られる繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物とそのペレット、および、前記樹脂組成物またはペレットからなり、機械的強度の低下が少なく、外観に優れた成形体に関するものである。
従来から、ポリプロピレン樹脂の剛性や衝撃強度等の機械的強度を向上させる手段として、フィラーやガラス繊維等を配合することが知られている。
例えば、“界面制御と複合材料設計”(井出文雄著、シグマ出版(1995年発行))の第6章には、ガラス繊維を用いて、機械的強度が強化されたポリプロピレン樹脂組成物が記載されている。
また、特開平3−121146号公報には、機械的強度等の向上した成形用ポリオレフィン樹脂組成物として、ポリオレフィンと変性オレフィン系重合体からなる樹脂成分と、強化用繊維を含有してなり、該繊維は樹脂中において、少なくとも2mm以上の長さを有する繊維強化成形用ポリオレフィン樹脂組成物が記載されている。
特開平3−121146号公報 界面制御と複合材料設計(井出文雄著、シグマ出版(1995年発行))第6章
しかし、上記の刊行物(“界面制御と複合材料設計”)または特許公報(特開平3−121146号公報)に記載されている繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物、または、その樹脂組成物から得られるペレットからなる成形体の外観については、さらなる改良が望まれていた。
かかる状況の下、本発明の目的は、成形体にした場合に、機械的強度の低下が少なく、外観に優れた成形体が得られる繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物とそのペレット、および、前記樹脂組成物またはペレットからなり、機械的強度の低下が少なく、外観に優れた成形体を提供することにある。
本発明者等は、かかる実状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
ポリプロピレン樹脂(成分(A))20〜95重量%と、重量平均繊維長が2〜100mmであり、平均繊維径が20〜30μmであるガラス繊維(成分(B))80〜5重量%を含有する繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物(ただし、繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物の全量を100重量%とする)に係るものである。
また、本発明は、
ポリプロピレン樹脂(成分(A))99.9〜60重量%と、変性ポリオレフィン樹脂(成分(C))0.1〜40重量%とを含有する樹脂混合物(D)と(ただし、樹脂混合物(D)の全量を100重量%とする)、前記の樹脂混合物(D)100重量部に対して、重量平均繊維長が2〜100mmであり、平均繊維径が20〜30μmであるガラス繊維(成分(B))5〜400重量部を含有する繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物に係るものである。
そして、本発明は、上記の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットに係るものであり、さらに、本発明は、上記の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物からなる成形体、または、そのペレットからなる成形体に係るものである。
本発明によれば、成形体にした場合に、機械的強度の低下が少なく、外観に優れた成形体が得られる繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物とそのペレット、および、前記樹脂組成物またはペレットからなり、機械的強度の低下が少なく、外観に優れた成形体を得ることができる。
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(成分(A))としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(成分(A))は、衝撃強度および剛性等の機械的強度の観点から、それぞれの一部または全てが不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されていても良い。なお、ポリプロピレン樹脂(成分(A))の変性に用いられる不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、後述する変性ポリオレフィン樹脂(成分(C))に用いられる不飽和カルボン酸またはその誘導体と同様のものが挙げられる。
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(成分(A))の製造方法としては、溶液重合法、スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等によって製造する方法が挙げられる。また、これらの重合法を単独で用いる方法であっても良く、少なくとも2種を組み合わせた方法であっても良い。
そして、ポリプロピレン(成分(A))の製造方法としては、例えば、“新ポリマー製造プロセス”(佐伯康治編集、工業調査会(1994年発行))、特開平4−323207号公報、特開昭61−287917号公報等に記載されている重合法が挙げられる。
ポリプロピレン樹脂(成分(A))の製造に用いられる触媒としては、マルチサイト触媒やシングルサイト触媒が挙げられる。マルチサイト触媒として、好ましくは、チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられ、また、シングルサイト触媒として、好ましくは、メタロセン錯体が挙げられる。
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(成分(A))のメルトフローレート(MFR)は、成形体中におけるガラス繊維(成分(B))の分散性の低下、成形体の外観不良や衝撃強度の低下を防止するという観点から、好ましくは1〜500g/10分であり、より好ましくは5〜300g/10分であり、さらに好ましくは10〜200g/10分であり、一層好ましくは50〜150g/10分である。なお、MFRは、A.S.T.M.D1238に従い、230℃、21.2N荷重で測定した値である。
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(成分(A))がプロピレン単独重合体の場合、アイソタクチックペンタッド分率は、好ましくは0.95〜1.0であり、より好ましくは0.96〜1.0であり、さらに好ましくは0.97〜1.0である。アイソタクチックペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,第6巻,第925頁(1973年)に発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定されるプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、NMR吸収ピークの帰属に関しては、その後発刊されたMacromolecules,第8巻,第687頁(1975年)に基づいて行うものである。
また、本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(成分(A))がプロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレンブロック共重合体の場合、前記プロピレン単独重合体部のアイソタクチックペンタッド分率は、好ましくは0.95〜1.0、より好ましくは0.96〜1.0であり、さらに好ましくは0.97〜1.0である。
本発明で用いられるガラス繊維(成分(B))としては、Eガラス(Electrical glass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)および耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸してフィラメント状の繊維にしたものが挙げられる。本発明で用いられるガラス繊維(成分(B))は、補強効果の観点から、好ましくはEガラスを溶融紡糸してフィラメント状の繊維にしたものが挙げられる。
本発明で用いられるガラス繊維(成分(B))の重量平均繊維長は、2〜100mmである。繊維(成分(B))の重量平均繊維長として、剛性や衝撃強度等の機械的強度の向上や、製造及び成形のしやすさの観点から、好ましくは3〜50mmであり、より好ましくは3〜30mmである。なお、繊維(成分(B))の重量平均繊維長は、本発明のポリプロピレン樹脂組成物中における長さであり、特開2002−5924号公報に記載されている方法によって、測定することができる。
本発明で用いられるガラス繊維(成分(B))の平均繊維径は、剛性や衝撃強度等の機械的強度の向上や、得られる成形体外観や製造及び成形のしやすさの観点から、20〜30μmであり、好ましくは20〜27μmであり、さらに好ましくは20〜25μmである。
本発明で用いられるガラス繊維(B)の平均繊維径の標準偏差は、機械的強度の向上や、得られる成形体外観や製造及び成形のしやすさの観点から、好ましくは1.5〜3.5μmであり、より好ましくは1.5〜3.0μmであり、さらに好ましくは1.6〜2.5μmであり、一層好ましくは1.6〜2.0μmである。
平均繊維径の標準偏差は、ガラス繊維のSEM観察写真(倍率:200倍以上)を、画像解析装置で解析することにより算出する。解析をするのに必要なデータの数は300以上である。
本発明で用いられるガラス繊維(成分(B))の番手(1,000m当りの重量)は、製造のしやすさの観点から、好ましくは1000〜5000g/kmであり、より好ましくは1000〜3000g/kmであり、さらに好ましくは1800〜2500g/kmである。
本発明で用いられるガラス繊維(成分(B))を収束するために収束剤を用いてもよい。収束剤としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、澱粉、植物油等が挙げられる。さらに、繊維(成分(B))には、酸変性ポリオレフィン樹脂、表面処理剤、パラフィンワックス等の潤滑剤を配合してもよい。
本発明で用いられるガラス繊維(成分(B))とポリプロピレン樹脂との濡れ性や接着性等を改良するために、ガラス繊維(成分(B))を表面処理剤で予め処理しても良い。この表面処理剤としては、例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、クロム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、ボラン系カップリング剤等が挙げられ、好ましくはシラン系カップリング剤またはチタネート系カップリング剤であり、さらに好ましくはシラン系カップリング剤である。
前記のシラン系カップリング剤としては、例えば、トリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、好ましくはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン類である。
本発明で用いられるガラス繊維(成分(B))を、前記の表面処理剤で処理する方法としては、従来から慣用されている方法、例えば、水溶液法、有機溶媒法、スプレー法等が挙げられる。
本発明で用いられる変性ポリオレフィン樹脂(成分(C))は、
(1)本発明で用いられる成分(A)(ポリプロピレン樹脂)とは異なるオレフィンの単独重合体、少なくと二種のオレフィンの共重合体、または、オレフィンを単独重合した後に少なくとも2種のオレフィンの共重合部をブロック的に重合して得られるブロック共重合体に、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をグラフト重合したもの、
(2)少なくとも1種のオレフィンと、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を共重合したもの
である。
本発明で用いられる変性ポリオレフィン樹脂(成分(C))の製造方法としては、例えば、“実用 ポリマーアロイ設計”(井出文雄著、工業調査会(1996))、Prog. Polym. Sci.,24,81−142(1999)、特開2002−308947号公報等に例示されている方法を用いることができ、溶液法、バルク法、溶融混練法のいずれの方法を用いてもよい。また、これらの方法を組み合わせて製造してもよい。
変性ポリオレフィン樹脂(成分(C))に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記の不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル化合物、アミド化合物、イミド化合物、金属塩等が挙げられ、その具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。また、クエン酸やリンゴ酸のように、ポリプロピレンにグラフトする工程で脱水して不飽和カルボン酸を生じるものを用いてもよい。
不飽和カルボン酸および/またはその誘導体として、好ましくはアクリル酸のグリシジルエステル、メタクリル酸のグリシジルエステル、無水マレイン酸である。
本発明で用いられる変性ポリオレフィン樹脂(成分(C))として、好ましくは、
(1)エチレンおよび/またはプロピレンに由来する単位をポリマーの主な構成単位とするポリオレフィン樹脂に、無水マレイン酸をグラフト重合することによって得られる変性ポリオレフィン樹脂、
(2)エチレンおよび/またはプロピレンを主な成分とするオレフィンと、メタクリル酸グリシジルエステルまたは無水マレイン酸とを共重合することによって得られる変性ポリオレフィン樹脂
である。
また、本発明で用いられる変性ポリオレフィン樹脂(成分(C))として、好ましくは、衝撃強度、疲労特性、剛性等の機械的強度の観点から、ポリマーの構成単位として、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体に由来する単位を0.1〜10重量%含有する変性ポリオレフィン樹脂である(ただし、変性ポリオレフィン樹脂の全量を100重量%とする)。特に、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を用いて、ランダム共重合あるいはブロック共重合によって得られる変性ポリオレフィン樹脂の場合には、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体に由来する単位の含有量は3〜10重量%が好ましく、グラフト重合によって得られる変性ポリオレフィン樹脂の場合には、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体に由来する単位の含有量は0.1〜10重量%が好ましい。
本発明の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物が、ポリプロピレン樹脂(成分(A))とガラス繊維(成分(B))を含有する場合、成分(A)と成分(B)のそれぞれの含有量は、成分(A)が20〜95重量%であり、成分(B)が80〜5重量%である。ただし、繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物の全量を100重量%とする。剛性や衝撃強度等の機械的強度の向上や、製造および成形のしやすさの観点から、好ましくは、成分(A)が30〜90重量%であり、成分(B)が70〜10重量%であり、より好ましくは、成分(A)が40〜90重量%であり、成分(B)が60〜10重量%であり、さらに好ましくは、成分(A)が50〜90重量%であり、成分(B)が50〜10重量%である。
本発明の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物が、ポリプロピレン樹脂(成分(A))とガラス繊維(成分(B))と変性ポリオレフィン樹脂(成分(C))を含有する場合、ポリプロピレン樹脂(成分(A))と変性ポリオレフィン樹脂(成分(C))とを含有する樹脂混合物(D)に含有される成分(A)と成分(C)のそれぞれの含有量は、成分(A)が99.9〜60重量%であり、成分(C)が0.1〜40重量%である。ただし、樹脂混合物(D)の全量を100重量%とする。好ましくは、剛性や衝撃強度等の機械的強度の向上や、疲労特性の観点から、成分(A)が99.5〜70重量%であり、成分(C)が0.5〜30重量%であり、より好ましくは、成分(A)が99〜80重量%であり、成分(C)が1〜20重量%である。
そして、本発明の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物に含有されるガラス繊維(成分(B))の含有量は、前記樹脂混合物(D)100重量部に対して、5〜400重量部であり、剛性や衝撃強度等の機械的強度の向上や、製造及び成形のしやすさの観点から、好ましくは、10〜300重量部であり、より好ましくは、10〜200重量部であり、さらに好ましくは10〜100重量部である。
また、本発明の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物には、必要に応じて、一般にポリプロピレン樹脂に添加される公知の物質、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤等の安定剤、気泡防止剤、難燃剤、難燃助剤、分散剤、帯電防止剤、滑剤、シリカ等のアンチブロッキング剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤、造核剤や結晶化促進剤等を配合しても良い。
また、ガラスフレーク、マイカ、ガラス粉、ガラスビーズ、タルク、クレー、アルミナ、カーボンブラック、ウォルスナイト等の板状、粉粒状の無機化合物や、ウィスカー等を配合してもよい。
本発明の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法としては、プルトルージョン成形法が用いられる。プルトルージョン成形法は、基本的には連続した繊維束を引きながら樹脂を含浸させる方法であり、例えば、
(1)樹脂のエマルジョン、サスペンジョンあるいは溶液を入れた含浸液の中に繊維束を通し、樹脂を含浸させる方法、
(2)樹脂の粉末を繊維束に吹き付けたのち、または、粉末を入れた槽の中に繊維束を通し繊維に樹脂を付着させたのち、樹脂を溶融して含浸させる方法、
(3)クロスヘッドの中に繊維束を通しながら、押出機等からクロスヘッドに樹脂を供給し含浸させる方法
等が挙げられ、好ましくは、上記(3)のクロスヘッドを用いる方法であり、より好ましくは、特開平3−272830号公報等に記載されているクロスヘッドを用いる方法である。
また、上記のプルトルージョン成形法において、樹脂の含浸操作は1段で行なってもよく、2段以上に分けて行ってもよい。また、プルトルージョン成形法によって製造されたペレットと溶融混練法によって製造されたペレットをブレンドしても構わない。
本発明の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物の形状としては、例えば、ストランド状、シート状、平板状、ストランドを適当な長さに裁断したペレット状等の形状が挙げられ、好ましくは、成形加工操作が容易な射出成形へ適用するという観点から、長さ2〜50mmのペレット状である。
本発明のペレットは、本発明の組成物から得られるペレットであり、射出成形に適用した場合、射出成形性が損なわれることなく、優れた強度が保持された成形体を得るという観点から、プルトルージョン法で製造され、ペレットの長さが2〜50mmであることが好ましい。
本発明の成形体とは、本発明の組成物またはそのペレットから得られる成形体である。成形方法としては、射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト成形法等が挙げられる
本発明の成形体は、機械的強度、耐久性および良好な外観が必要とされるフェンダー、オーバーフェンダー、グリルガード、カウルルーバー、ホイールキャップ、サイドプロテクター、サイドモール、サイドロアスカート、フロントグリル、サイドステップ、ルーフレール、リアスポイラー、バンパー等の外装部品や、耐熱剛性の要求されるインパネロア、トリム等の内装部品や、バンパービーム、クーリングファン、ファンシュラウド、ランプハウジング、カーヒーターケース、ヒューズボックス、エアクリーナーケース等のエンジン内の部品等の自動車用プラスチック部品に使用することができる。
また、電動工具、カメラ、ビデオカメラ、電子レンジ、電気釜、ポット、掃除機、パーソナルコンピューター、複写機、プリンター、FDD、CRTの機械ハウジング等の各種電気製品の部品、ポンプケーシング等の各種機械の部品、タンク、パイプ、建築用型枠等の構造物等の部品に使用することができる。
以下、実施例および比較例によって、本発明を説明する。実施例または比較例で用いた評価用サンプルの製造方法を以下に示した。
(1)ガラス繊維強化ペレットの製造方法
特開平3−121146号公報に記載されている方法によって、ガラス繊維強化ペレットを製造した。なお、含浸温度は270℃、引取速度は13m/分で行った。
(2)評価用サンプルの製造方法
下記の日本製鋼所製成形機を用いて、下記の条件で、上記(1)で得られたガラス繊維強化ペレットを射出成形して、評価用サンプルを製造した。
なお、白斑指数測定用サンプルとしては、150mm×150mm、3mm厚の平板を成形し、評価した。なお、原料配合時に、ガラス繊維強化ペレット100重量部に対して、顔料マスターバッチ(カーボンブラック濃度14重量%)を1重量部添加し、黒色に着色した。
日本製鋼所製成形機
型締力 :150t
スクリュー :長繊維深溝スクリュー
スクリュー径 :46mm
スクリューL/D:20.3
成形条件
シリンダー温度:250℃
金型温度 :50℃
背圧 :0MPa
実施例および比較例における評価方法を以下に示した。
(1)曲げ弾性率(単位:MPa)
A.S.T.M D790に従って、下記条件で測定した。
測定温度 :23℃
サンプル厚み:3.2mm
スパン :50mm
引張速度 :2mm/分
(2)曲げ強度(単位:MPa)
A.S.T.M D790に従って、下記条件で測定した。
測定温度 :23℃
サンプル厚み:3.2mm
スパン :50mm
引張速度 :2mm/分
(3)IZOD衝撃強度(単位:KJ/m2
A.S.T.M D256に従って、下記条件で測定した。
測定温度 :23℃
サンプル厚み:3.2mm[Vノッチあり]
(4)白斑指数
EPSON社製スキャナーGT−9600を用い、階調256段階、解像度50dpi,露出20、ガンマ50、ハイライト61、シャドウ60、しきい値110の条件で、上記(2)で得られた平板10枚の画像をコンピューターに取り込んだ(解析面積2186cm2)。取り込んだ画像を旭エンジニアリング社製高精細画像解析ソフト(IP−1000PC)の粒子解析機能を用い、白斑点の面積を算出した。白斑指数は、比較例1の白斑点の面積を100としたときの各サンプルの面積の割合を指数化した。
(5)残存重量平均繊維長
特開2002−5924号公報に記載されている方法によって、白斑指数測定用に成形した平板を用い、重量平均繊維長を測定した。
(6)ガラス繊維(B)の平均繊維径の標準偏差
SEMによりガラス繊維の写真(倍率:200倍)を撮影した。得られた写真を、画像処理装置(ニレコ社製「ルーゼックスAP」)を用いて解析し、平均繊維径およびその標準偏差を算出した。なお、解析のn数は、300であった。
比較例1
特開平3−121146号公報に記載されている方法によって、表1に記載した組成で、ガラス繊維の含有量が40重量%であり、ペレット長が9mmのガラス繊維強化ペレットを作成した。用いたポリプロピレン樹脂は、プロピレン単独重合体(MFR=80g/10分)であり、用いたガラス繊維は、平均繊維径16μm、平均繊維径の標準偏差1.5μm、番手2235g/km、集束本数2000本であり、用いた変性ポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(MFR=60g/10分、無水マレイン酸グラフト量=0.6重量%)であった。さらに得られたガラス繊維強化ペレットを射出成形した。得られたサンプルの曲げ弾性率、曲げ強度、IZOD衝撃強度、白斑指数、残存重量平均繊維長を表1に示した。なお、用いた無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂は、特開2002−308947公報に記載された方法によって作成した。
比較例2
比較例1において用いたガラス繊維を、平均繊維径19μm、平均繊維径の標準偏差1.7μm、番手3100g/km、集束本数4000本に変更した以外は、比較例1と同様にして評価した。なお、用いたガラス繊維の収束剤は、変更しなかった。
比較例3
比較例1において用いたガラス繊維を、平均繊維径19μm、平均繊維径の標準偏差1.5μm、番手1550g/km、集束本数2000本に変更した以外は、比較例1と同様にして評価した。なお、用いたガラス繊維の収束剤は、変更しなかった。
実施例1
比較例1において用いたガラス繊維を、平均繊維径23μm、平均繊維径の標準偏差1.9μm、番手2060g/km,集束本数2000本に変更した以外は、比較例1と同様にして評価した。なお、用いたガラス繊維の収束剤は、変更しなかった。
比較例4
特開平3−121146号公報に記載されている方法によって、表1に記載した組成で、ガラス繊維の含有量が40重量%であり、ペレット長が9mmのガラス繊維強化ペレットを作成した。用いたポリプロピレン樹脂は、プロピレン単独重合体(MFR=80g/10分)であり、用いたガラス繊維は、平均繊維径17μm、平均繊維径の標準偏差2.1μm、番手2310g/km、集束本数4000本であり、用いた変性ポリオレフィン樹脂は、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(MFR=60g/10分、無水マレイン酸グラフト量=0.6重量%)であった。さらに得られたガラス繊維強化ペレットを射出成形した。得られたサンプルの曲げ弾性率、曲げ強度、IZOD衝撃強度、白斑指数、残存重量平均繊維長を表1に示した。なお、用いた無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂は、特開2002−308947公報に記載された方法によって作成した。
比較例5
比較例4で用いられたペレット長が9mmのガラス繊維強化ペレットを、さらに二軸押出機で溶融混練してペレット化した、得られたペレットを射出成形し、比較例3と同様にして評価した。なお、溶融混練に用いた二軸押出機は、(株)テクノベル社製二軸押出機(型式:KZW15−45MG、同方向回転型、15mmφ、L/D=45)であり、混練温度は220℃であった。
実施例2
比較例4において用いたガラス繊維を、平均繊維径23μm、平均繊維径の標準偏差2.5μm、番手2310g/km、集束本数2000本に変更した以外は、比較例3と同様にして評価した。なお、用いたガラス繊維の収束剤は、変更しなかった。
Figure 2006193735
A−1:プロピレン単独重合体(MFR=80g/10分)
B−1:ガラス繊維
(平均繊維径22μm、平均繊維径の標準偏差1.9μm、番手2060g/km)
収束剤は、B−3と同じ。
B−2:ガラス繊維
(平均繊維径23μm、平均繊維径の標準偏差2.5μm、番手2310g/km)
収束剤は、B−6と同じ。
B−3:ガラス繊維
(平均繊維径16μm、平均繊維径の標準偏差1.5μm、番手2235g/km)
B−4:ガラス繊維
(平均繊維径19μm、平均繊維径の標準偏差1.7μm、番手3100g/km)
収束剤は、B−3と同じ。
B−5:ガラス繊維
(平均繊維径19μm、平均繊維径の標準偏差1.5μm、番手1550g/km)
収束剤は、B−3と同じ。
B−6:ガラス繊維
(平均繊維径17μm、平均繊維径の標準偏差2.2μm、番手2330g/km)
C−1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂
(MFR=60g/10分、マレイン酸グラフト量=0.6重量%)
本発明の要件を満足する実施例1および2は、成形体の機械的強度の低下が少なく、成形体の外観に優れていることが分かる。
これに対して、本発明の要件であるガラス繊維(成分(B))の平均繊維径を満足しない比較例1、2、3および4は、成形体の外観が不充分なものであることが分かる。また、本発明の要件であるガラス繊維(成分(B))の重量平均繊維繊維長を満足しない比較例5は、機械的強度が不充分であることが分かる。

Claims (5)

  1. ポリプロピレン樹脂(成分(A))20〜95重量%と、重量平均繊維長が2〜100mmであり、平均繊維径が20〜30μmであるガラス繊維(成分(B))80〜5重量%を含有する繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物(ただし、繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物の全量を100重量%とする)。
  2. ポリプロピレン樹脂(成分(A))99.9〜60重量%と、変性ポリオレフィン樹脂(成分(C))0.1〜40重量%とを含有する樹脂混合物(D)と(ただし、樹脂混合物(D)の全量を100重量%とする)、前記の樹脂混合物(D)100重量部に対して、重量平均繊維長が2〜100mmであり、平均繊維径が20〜30μmであるガラス繊維(成分(B))5〜400重量部を含有する繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物。
  3. ポリプロピレン樹脂(成分(A))が、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリプロピレン樹脂である請求項1または2に記載の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物からなるペレットであって、前記のペレット中において、ガラス繊維(成分(B))が互いに平行な状態で配列している繊維強化ポリプロピレン樹脂樹脂組成物ペレット。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物または請求項4記載の繊維強化ポリプロピレン樹脂組成物ペレットからなる成形体であって、前記の成形体中において、ガラス繊維(成分(B))の重量平均繊維長が1〜50mmである成形体。
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