JP2006188555A - 光学フィルムの製造方法および光学フィルム - Google Patents

光学フィルムの製造方法および光学フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】 乾燥速度が速く、残留する溶媒量が低減できる光学フィルムの製造方法を提供すること。また、光学特性に優れ、延伸することにより、正の波長依存性を有する光学フィルムを提供すること。
【解決手段】 (A)環状オレフィン系重合体、
(B)酸無水物基を有するビニル系重合体 および
(C)沸点が110℃未満の有機溶剤2種以上
を含有する熱可塑性樹脂組成物を用いて、溶液流延法により成形することを特徴とする、光学フィルムの製造方法および当該製造方法から得られる光学フィルムを提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、特定の熱可塑性樹脂と2種以上の混合溶剤を用いた光学フィルムの製造方法と、それから得られる光学フィルムに関する。
環状オレフィン系開環(共)重合体は、主鎖構造の剛直性に起因してガラス転移温度が高く、主鎖構造に嵩高い基が存在するために非晶性で光線透過率が高く、しかも複屈折の異方性が小さいことにより低複屈折性を示すなどの特長を有しており、耐熱性、透明性、光学特性に優れた透明熱可塑性樹脂として注目されている。
上記の特徴を利用して、例えば、光ディスク、光学レンズ、光ファイバー、透明プラスチック基盤、低誘電材料、位相差板、偏光板の保護フィルム、液晶表示素子用基板などの電子・光学材料、光半導体封止などの封止材料などの分野において、環状オレフィン系樹脂を応用することが検討されている。
環状オレフィン系樹脂は、さらに延伸配向させると透過光に均一で安定した位相差を与える位相差フィルムとなる。しかしながら、一般的に位相差フィルムは、延伸配向させて得られる透過光に位相差(複屈折)を与える機能が、透過光の波長が長波長になるにつれて透過光の位相差(複屈折)の絶対値が小さくなるという特性(以下、「負の波長依存性」ともいう)を有する。このため、例えば反射型・半透過型の液晶ディスプレイや光ディスク用ピックアップなどにおいて必要とされる、可視光領域(400〜800nm)全てにおいて1/4波長の位相差を透過光に与える機能(本発明において、位相差とはレターデーション(Retardation)を意味する)を有する位相差フィルムを得ることが非常に困難であった。また、例えば液晶プロジェクターにおいて必要とされる、1/2波長の位相差を透過光に与える機能を有する位相差フィルムを得るには、従来の環状オレフィン系樹脂では、フィルムを積層させる必要があった。フィルムの積層では、貼り合わせ、切り出し、接着などの工程が複雑化するだけでなく、得られる光学フィルムの膜厚が大きくなり、近年求められている位相差フィルムの薄膜化が困難であった。
この課題を解決するためには、波長が長波長になるにつれて透過光の位相差の絶対値が大きくなる特性(以下、「正の波長依存性」ともいう)を示す光学用フィルムが必要である。この正の波長依存性を示す光学用フィルムとしては、特許文献1、2および非特許文献1において、特定のセルロースアセテート系樹脂からなる位相差フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなる位相差フィルム、環状オレフィン系樹脂とスチレン系樹脂とを有する熱可塑性樹脂組成物からなる位相差フィルム等が提案されている。
しかしながら、セルロースアセテート系樹脂からなるフィルムでは、吸水による特性変化や耐熱性等の点において問題があり、ポリカーボネート系では、ガラス転移温度が高く、高温での延伸加工が必要になるだけでなく、フィルムの光弾性係数が大きいいために応力による光学ひずみが生じる。また、環状オレフィン系樹脂とスチレン系樹脂とを含有する熱可塑性樹脂組成物では、透明性、相溶性を確保するために、フィルム成形の際に沸点が高いトルエンを溶剤として用いる必要があり、フィルムの乾燥時間が非常に長くなるために生産性が極端に低下し、容易に透明度の高いフィルムを得ることが困難である。また、トルエンなどの沸点が高い溶剤を用いるために、得られるフィルムに溶剤が残留し、光学特性が低減するという問題も生じる。
特開2000−137116号公報 特開2001−337222号公報 高分子論文集、Vol.61、No1、89-94(2004)
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、環状オレフィン系重合体とビニル系重合体とを含有する熱可塑性樹脂組成物を、特定の数種の溶媒を用いて、透明性、相溶性を保持しつつ製膜することにより、従来報告されている溶剤(トルエン)に比べ乾燥速度が格段に向上するだけでなく、残留する溶媒量が低減できる光学フィルムの製造方法を提供するものである。また、この製法で得られるフィルムは光学特性に優れ、延伸することにより、正の波長依存性を有する光学フィルムを得ることができる。
本発明の光学フィルムの製造方法は、
(A)環状オレフィン系重合体、
(B)酸無水物基を有するビニル系重合体 および
(C)沸点が110℃未満の有機溶剤2種以上
を含有する熱可塑性樹脂組成物を用いて、溶液流延法により成形することを特徴とする。
熱可塑性樹脂組成物における(A)環状オレフィン系重合体と(B)ビニル系重合体との含有割合は、(A)環状オレフィン系重合体100重量部に対して(B)ビニル系重合体20〜200重量部であることが好ましい。
(C)沸点が110℃未満の有機溶剤は、シクロオレフィン類と、極性基含有溶剤およびハロゲン系溶剤から選ばれる少なくとも1種とを含有することが好ましい。
本発明の光学フィルムは、
(A)環状オレフィン系重合体および
(B)酸無水物基を有するビニル系重合体
を含有してなり、
波長550nmにおける位相差Re(550)と、波長400nmにおける位相差Re(400)との比:Re(400)/Re(550)が1.0〜0.1の範囲にあり、波長550nmにおける位相差Re(550)と、波長800nmにおける位相差Re(800)との比:Re(800)/Re(550)が1.5〜1.0の範囲にあることを特徴とする。
本発明によれば、良好な相溶性、透明性を保持したまま、フィルムの製膜時の乾燥速度を向上させフィルムの生産性を飛躍的に向上させることができる。また、本発明の製造方法により得られたフィルムは、延伸配向した場合に得られる透過光の位相差の波長依存性が長波長になるにつれて大きくなる性質(正の波長分散性)を示し、均一性や安定性等の光学特性、他材料との密着性や接着性が良好である光学フィルムを提供することができる。
従って、本発明の光学フィルムを位相差フィルムとして使用すると、400〜800nmの波長領域において一定の位相差を示すλ板を一枚の位相差フィルムで実現できる。また、本発明の光学フィルムは、光拡散機能、透明導電性、反射防止機能等の機能を有する光学フィルムとしても有用である。
本発明によると、正の波長依存性を有し、光学特性に優れたフィルムを、生産性よく製造することが可能になる。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、(A)環状オレフィン系重合体、(B)酸無水物基を有するビニル系重合体 および(C)沸点が110℃未満の有機溶剤2種以上を含有する。
(A)環状オレフィン系重合体:
本発明に用いられる環状オレフィン系重合体(A)としては、下記(i)〜(iv)に示す重合体が挙げられる。
(i)下記式(I)で表される単量体(以下「特定単量体」ともいう)の開環重合体
(ii)特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体、
(iii)前記(i)または(ii)の開環重合体の水素添加重合体、
(iv)上記特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体
が挙げられる。
これらの中では、(iii)の開環重合体の水素添加物が好ましい。
Figure 2006188555
(式中、sおよびtは、それぞれ独立に0または1であり、但し、これらの少なくとも一方は1であり、nおよびmは、それぞれ独立に0〜2の整数である。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;および極性基よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表し、RとR、および/またはRとR10は、一体化して炭化水素基を形成してもよく、RまたはRと、RまたはR10とは、相互に結合して、炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい)を形成してもよい。)
上記ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;および極性基よりなる群から選ばれる原子もしくは基、および極性基としては、上記式(I)〜(III)中のR1〜R5と同様の原子もしくは基が挙げられる。
(A)環状オレフィン系重合体は、後述する(B)ビニル系重合体との相溶性の観点から極性基を有することが好ましい。
特定単量体の具体例としては、次のような化合物が挙げられる。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(1−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン 8−〈4−フェニルフェノキシ〉カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
8−メチル−8−(1−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
8−メチル−8−(2−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
8−メチル−8−〈4−フェニルフェノキシ〉カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン
ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン
ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−フェニル−5―メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−n−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−(2−シクロヘキセニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−n−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−n−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−イソプロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−(1−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−(2−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−(2−ナフチル)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−(4−ビフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−(4−ビフェニル)−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−アミノメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−トリメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−トリn-プロポキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−トリn-ブトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−クロロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−シクロヘセニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。
これらの化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの特定単量体のうち、上記式(I)におけるR〜R10のうちの少なくとも1つが、下記式(i)
−(CH2COOR15 (i)
(式中、aは通常、0〜5の整数、R15は炭素数1〜15の炭化水素基である。)
で表される特定の極性基である上記特定単量体が、得られる熱可塑性樹脂組成物および光学フィルムの耐熱性と耐湿(水)性とが良好なバランスを保つ点で好ましい。
上記式(i)において、aの値が小さいほど、また、Rの炭素数が小さいほど、得られる熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が高くなり、耐熱性が向上する点で好ましい。すなわち、aは通常、0〜5の整数であるが、好ましくは0または1であり、また、R15は通常、炭素数1〜15の炭化水素基であるが、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基が望ましい。
さらに、上記式(I)において、上記式(i)で表される極性基が結合した炭素原子にさらにアルキル基が結合している上記特定単量体は、得られる熱可塑性樹脂組成物および光学フィルムの耐熱性と耐湿(水)性とが良好なバランスを保つ点で好ましい。このアルキル基の炭素数は1〜5であることが好ましく、さらに好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
このような特定単量体のうち、得られる熱可塑性樹脂組成物および光学フィルムが耐熱性に優れる点で、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−3−ドデセン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−3−ドデセン、8−メチル−8−ブトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−3−ドデセンが好ましく、また、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−3−ドデセンと5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンとを併用して用いることが好ましい。特に、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−3−ドデセンを単独で用いるか、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−3−ドデセンと5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンとを併用して用いると、ビニル系重合体(A)との相溶性に優れた環状オレフィン系重合体が得られる点で好ましい。
このような特定単量体を開環重合して得られる環状オレフィン系重合体としては、例えば下記一般式(II)で表される構造単位を有する重合体が挙げられる。
Figure 2006188555
(式(II)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、m、n、sおよびtは、上記式(I)の定義と同義である。また、Xは式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基であり、複数存在するXは同一または異なる。)。
本発明では、前記一般式(II)において、n=0であり、mが0または1であり、かつ、R〜R10のうち少なくとも一つが、式:−(CH2)COOR16(式中、R16は炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、pは0〜10の整数である。)で表される基である構造単位を含む重合体であることが好ましい。
<共重合性単量体>
上記特定単量体は単独で開環重合してもよいが、さらに、上記特定単量体と他の共重合性単量体と開環共重合させてもよい。
上記共重合性単量体として、具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。シクロオレフィンの炭素数は、4〜20が好ましく、さらに好ましくは5〜12である。また、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの、主鎖に炭素−炭素間二重結合を含む不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下で、上記特定単量体を開環重合させてもよい。この場合、得られる開環共重合体およびその水素添加共重合体は、耐衝撃性の大きい熱可塑性樹脂組成物の原料として有用である。
<開環重合体>
上記一般式(II)で表される開環重合体は、開環重合触媒の存在下、必要に応じて分子量調節剤および開環重合用溶媒を用いて、上記特定単量体、および必要に応じて共重合性単量体を、従来公知の方法で開環重合させることにより得ることができる。
また、上記特定単量体と上記共重合性単量体とを共重合させる場合、上記特定単量体と上記共重合性単量体との合計100重量%に対して、上記特定単量体を通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、かつ100重量%未満、上記共重合性単量体を、0重量%を超えて、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下の割合で共重合させることが望ましい。
本発明で用いる開環重合体としては、特定単量体の単独重合体、または2種以上の特定単量体の共重合体が最も好ましい
<開環重合触媒>
本発明に用いられる開環重合用の触媒としては、Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K.J.IVIN,J.C.MOL, Academic Press 1997)に記載されている触媒が好ましく用いられる。
このような触媒としては、たとえば、(a)W、Mo、Re、VおよびTiの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Cd、Hg、B、Al、Si、Sn、Pbなどの化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなるメタセシス重合触媒が挙げられる。この触媒は、触媒の活性を高めるために、後述の添加剤(c)が添加されたものであってもよい。また、その他の触媒として(d)助触媒を用いない周期表第4族〜8族遷移金属−カルベン錯体やメタラシクロブタン錯体などからなるメタセシス触媒が挙げられる。
上記(a)成分として適当なW、Mo、Re、VおよびTiの化合物の代表例としては、WCl6、MoCl5、ReOCl3、VOCl3、TiCl4など特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
上記(b)成分としては、n−C49Li、(C253Al、(C252AlCl、(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサン、LiHなど特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。
添加剤である(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができ、さらに特開平1−240517号公報に示される化合物を使用することができる。
上記触媒(d)の代表例としては、W(=N−2,6−C63 iPr2)(=CH tBu)(O tBu)2、Mo(=N−2,6−C63 iPr2)(=CH tBu)(O tBu)2、Ru(=CHCH=CPh2)(PPh3)2Cl2、Ru(=CHPh)(PC611)2Cl2などが挙げられる。
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と、全単量体(ノルボルネン系単量体(Im)、(IIm)および他の共重合可能な単量体。以下、同じ)とのモル比で「(a)成分:全単量体」が、通常1:500〜1:500000となる範囲、好ましくは1:1,000〜1:100,000となる範囲であるのが望ましい。(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で「(a):(b)」が1:1〜1:100、好ましくは1:2〜1:50の範囲であるのが望ましい。また、このメタセシス触媒に上記(c)添加剤を添加する場合、(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で「(c):(a)」が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲であるのが望ましい。また、触媒(d)の使用量は、(d)成分と全単量体とのモル比で「(d)成分:全単量体」が、通常1:50〜1:100000となる範囲、好ましくは1:100〜1:50000となる範囲であるのが望ましい。
<分子量調節剤>
開環(共)重合体の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。ここに、好適な分子量調節剤としては、たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類;スチレン類;アリル酢酸などを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。分子量調節剤の使用量としては、開環(共)重合反応に供される全単量体1モルに対して0.001〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルであるのが望ましい。
<開環(共)重合反応用溶媒>
開環(共)重合反応において用いられる溶媒、すなわち、ノルボルネン系単量体、メタセシス触媒および分子量調節剤を溶解する溶媒としては、たとえば、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどの環状炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサンなどのエーテル類;N,N−11ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどを挙げることができ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。本発明では、これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
溶媒の使用量としては、「溶媒:全単量体(重量比)」が、通常0.5:1〜20:1となる量とされ、好ましくは0.5:1〜10:1となる量であるのが望ましい。
<水素添加反応>
上記開環重合反応により得られた開環重合体は、そのまま、(A)環状オレフィン系重合体として使用することもできるが、この開環重合体は、分子内にオレフィン性不飽和結合を有しており、耐熱着色などの問題が発生することがある。このため、上記オレフィン性不飽和結合に水素添加した水素添加重合体を用いることが好ましい。
ただし、本発明でいう水素添加物とは、上記のオレフィン性不飽和基が水素添加されたものであり、ノルボルネン系単量体に基づく側鎖の芳香環は実質的に水素添加されていないものである。
このような製造方法では、水素添加反応は、特定単量体もしくは他の単量体に基づく側鎖の芳香環が実質的に水素添加されない条件で行われる必要がある。このため通常は、開環(共)重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜30MPa、好ましくは2〜20MPa、更に好ましくは3〜18MPaで水素を作用させることによって行うのが望ましい。
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、公知の不均一系触媒および均一系触媒をいずれも用いることができる。不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は粉末でも粒状でもよい。また、この水素添加反応触媒は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
これらの水素添加触媒は、特定単量体もしくは他の単量体に基づく側鎖の芳香環が実質的に水素添加されないようにするために、その添加量を調整する必要があるが、通常は、「開環(共)重合体:水素添加触媒(重量比)」が、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用するのが望ましい。
また、オレフィン性不飽和結合の水素添加率は、通常50%以上、好ましく70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
このように、開環重合体に水素添加することにより、得られる水素添加重合体は優れた熱安定性を有し、成形加工時や製品使用時の加熱によってその特性が劣化することを防止できる。
<飽和共重合体>
本発明では、(A)環状オレフィン系重合体として、上記開環重合体およびその水素添加重合体の他に、上記特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体を使用することができる。上記特定単量体と不飽和二重結合含有化合物とは、これらの合計量100重量%に対して、上記特定単量体を通常60〜90重量%、好ましくは70〜90重量%、より好ましくは80〜90重量%、不飽和二重結合含有化合物を通常10〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%の割合で共重合させることが望ましい。
上記不飽和二重結合含有化合物としては、たとえば、エチレン、プロピレン、ブテンなどの炭素数2〜12、好ましくは2〜8のオレフィン系化合物を挙げることができる。
上記特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との共重合反応に用いられる触媒としては、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が挙げられる。バナジウム化合物としては、VO(OR)abまたはV(OR)cd(ただし、Rは炭化水素基、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4)で表されるバナジウム化合物、あるいはこれらの電子供与体付加物が挙げられる。電子供与体としてはアルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸または無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物、アルコキシシラン等の含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアナート等の含窒素電子供与体などが挙げられる。上記有機アルミニウム化合物としては、アルミニウム−炭素結合またはアルミニウム−水素結合を少なくとも1つ有する化合物から選ばれた少なくとも1種の有機アルミニウム化合物が挙げられる。上記触媒におけるバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物との割合は、バナジウム原子に対するアルミニウム原子の比(Al/V)で、通常2以上、好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜20である。
上記共重合反応に用いられる溶媒としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素およびそのハロゲン誘導体を挙げることができる。これらのうち、シクロヘキサンが好ましい。
<環状オレフィン系重合体>
本発明に用いられる(A)環状オレフィン系重合体は、30℃のクロロベンゼン溶液(濃度0.5g/100ml)中で測定した固有粘度(ηinh)が0.2〜5.0dl/gであることが好ましい。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常8,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜800,000、さらに好ましくは20,000〜500,000であり、重量平均分子量(Mw)は、通常10,000〜3,000,000、好ましくは20,000〜2,000,000、さらに好ましくは30,000〜1,000,000であることが望ましい。
分子量が小さすぎると、得られる成形品やフィルムの強度が低くなることがある。分子量が大きすぎると、溶液粘度が高くなりすぎて本発明に用いる可塑性樹脂組成物の生産性や加工性が悪化することがある。
また、(A)環状オレフィン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.5〜10、好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜5であることが望ましい。
(A)環状オレフィン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、通常100〜250℃であり、好ましくは110〜220℃、さらに好ましくは115〜200℃である。Tgが低すぎると、熱変形温度が低くなるため、耐熱性に問題が生じるおそれがあり、また、得られる成形品やフィルムの温度による光学特性の変化が大きくなるという問題が生じることがある。一方、Tgが高すぎると、加工温度を高くする必要があり、これにより熱可塑性樹脂組成物が熱劣化することがある。
(B)ビニル系重合体:
本発明に用いられる(B)ビニル系重合体は、酸無水物基を有することを特徴とする。好ましい構造としては、
(B−1)下記式(III−1)で表される構造単位(以下、「構造単位(III−1)」ともいう)と、(B−2)下記式(III−2)で表される構造単位(以下、「構造単位(III−2)」ともいう)および下記式(III−3)で表される構造単位(以下、「構造単位(III−3)」ともいう)から選ばれる少なくとも一種とを有する共重合体(以下、「特定ビニル系重合体」ともいう)が挙げられる。
Figure 2006188555
(式中、R11〜R14は、相互に独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を表し、R12は全て同一の原子または基であっても、個々異なる原子または基であってもよい。また、R13またはR14とは、相互に結合して、炭素環等を形成してもよい。)
上記式におけるR11〜R14としては、上記式(I)および(II)におけるR1〜R10について説明した各原子または基が挙げられるが、特に好ましいものとしては水素原子およびメチル基が挙げられ、中でも水素原子が好ましい。
<ビニル系単量体>
構造単位(III−1)は、芳香族ビニル系単量体から得られる構造単位である。当該芳香族ビニル系単量体の具体例としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのアルキル置換スチレン類;4−クロロスチレン、4−ブロモスチレンなどのハロゲン置換スチレン類;p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン、2−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3,4−ジヒドロキシスチレンなどのヒドロキシスチレン類;ビニルベンジルアルコール類;p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレンなどのアルコキシ置換スチレン類;3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸などのビニル安息香酸類;メチル−4−ビニルベンゾエート、エチル−4−ビニルベンゾエートなどのビニル安息香酸エステル類;4−ビニルベンジルアセテート;4−アセトキシスチレン;2−ブチルアミドスチレン、4−メチルアミドスチレン、p−スルホンアミドスチレンなどのアミドスチレン類;3−アミノスチレン、4−アミノスチレン、2−イソプロペニルアニリン、ビニルベンジルジメチルアミンなどのアミノスチレン類;3−ニトロスチレン、4−ニトロスチレンなどのニトロスチレン類;3−シアノスチレン、4−シアノスチレンなどのシアノスチレン類;ビニルフェニルアセトニトリル;フェニルスチレンなどのアリールスチレン類などが挙げられる。これらの単量体は、二種以上を共重合成分として用いてもよい。これらのうち、工業的に入手が容易で、かつ安価な点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
構造単位(III−2)を与える単量体としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸、3−メチル−シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸、4−メチル−シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸等が挙げられる。
また、構造単位(III−3)を与える単量体としては、無水イタコン酸が挙げられる。
また、特定ビニル系重合体は、構造単位(III−1)〜(III−3)以外の、その他の構造単位を有するものであってもよい。その他の構造単位を与える単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類;N−フェニルマレイミドなどのマレイミド単量体が挙げられる。
<ラジカル重合開始剤>
本発明に用いられる(B)ビニル系重合体をラジカル重合で合成する場合、フリーラジカルを発生する公知の有機過酸化物、またはアゾビス系のラジカル重合開始剤を用いることができる。
有機過酸化物としては、ジアセチルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジイソブチロイルパーオキサイド、ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサオド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、ビス{4−(m−トルオイル)ベンゾイル}パーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;
メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;
過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α−クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;
ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド類;
t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオドデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシm−トルオイルベンゾエート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのパーオキシエステル類;
1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ピバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンなどのパーオキシケタール類;
t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネートなどのパーオキシモノカーボネート類;
ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;
その他、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明に用いられる有機過酸化物はこれらの例示化合物に限定されるものではない。
アゾビス系ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−{1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル}プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−{2−(1−ヒドロキシブチル)}プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェート・ジハイドレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−{1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル}プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドキシム)、ジメチル2,2’−アゾビスブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)などが挙げられるが、本発明に用いられるアゾビス系ラジカル重合開始剤はこれらの例示化合物に限定されるものではない。
<触媒>
ビニル系単量体の共重合反応には、触媒が用いられてもよい。この触媒は、特に限定されず、たとえば、公知のアニオン重合触媒、配位アニオン重合触媒、カチオン重合触媒などが挙げられる。
<ビニル系重合体>
本発明に用いられる(B)ビニル系重合体は、上記重合開始剤や触媒の存在下で、上記ビニル系単量体を、塊状重合法、溶液重合法、沈殿重合法、乳化重合法、懸濁重合法または塊状−懸濁重合法などの従来公知の方法で共重合させることによって得られる。
このようにして得られる(B)ビニル系重合体のうち、上述した特定ビニル系重合体において、全構造単位の合計100重量%に対して、構造単位(III−1)の割合は、通常50〜99重量%、好ましくは60〜99重量%、より好ましくは80〜99重量%であり、構造単位(III−2)と構造単位(III−3)の合計割合は、通常1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは1〜20重量%である。構造単位(III−1)の割合が上記範囲にあると、得られる位相差フィルムの光学特性(波長分散性、および位相差発現性の調整)の点で好ましい。また、構造単位(III−2)と構造単位(III−3)の合計割合が上記範囲にあると、環状オレフィン系重合体との相溶性、耐熱性(ガラス転移温度)という点で好ましい。
(B)ビニル系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、通常3,000〜500,000、好ましくは5,000〜250,000、さらに好ましくは10,000〜100,000であり、重量平均分子量(Mw)は、通常500〜1,000,000、好ましくは5,000〜800,000、さらに好ましくは20,000〜500,000である。分子量が小さすぎると、得られるフィルムの強度が低くなることがあり、分子量が大きすぎると、溶液粘度が高くなりすぎて本発明に係る熱可塑性樹脂組成物の生産性や加工性が悪化することがある。
また、(B)ビニル系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.0〜10、好ましくは1.2〜5、さらに好ましくは1.2〜4である。
(C)有機溶剤:
本発明の光学フィルムの製造方法は、上述した(A)環状オレフィン系重合体、(B)ビニル系重合体および(C)沸点が110℃未満、好ましくは35〜100℃である有機溶剤を2種以上含有する熱可塑性樹脂組成物を用いて溶液流延法(溶剤キャスト法)によりフィルムを成形することにより、乾燥速度を向上させて生産性を良くし、残留溶剤の少ないフィルムを得ることができるものである。すなわち、(C)有機溶剤は、特定沸点の有機溶剤2種以上からなる混合溶剤を、キャスト溶剤として用いるものである。なお、本発明における沸点は、1気圧における沸点である。
(C)有機溶剤としては、下記に示す溶剤の組み合わせが、透明性、相溶性の保持および乾燥速度の向上の点から、好ましい。
(1)炭化水素系溶剤とエステル系溶剤との混合溶媒
(2)炭化水素系溶剤とケトン系溶剤との混合溶媒
(3)炭化水素系溶剤と、エーテル基含有溶剤との混合溶剤
(4)炭化水素系溶剤と、ハロゲン系溶剤との混合溶剤
(5)炭化水素系溶剤と、エステル系溶剤と、ハロゲン系溶剤との3種混合溶剤
(6)炭化水素系溶剤と、ケトン系溶剤と、ハロゲン系溶剤との3種混合溶剤
(7)炭化水素系溶剤と、エーテル系溶剤と、ハロゲン系溶剤との3種混合溶剤
上記炭化水素系溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステルが好ましいものとして挙げられる。またケトン基含有溶剤としては、アセトン、ブタノン、シクロペンタノン等が挙げられる。
また、エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、1,3−ジオキシラン等が挙げられる。
さらに、ハロゲン系溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、塩化プロパン、塩化ブタン等が挙げられる。
具体的な組み合わせとしては、シクロヘキサンと酢酸エチル、シクロヘキサンとブタノン、シクロヘキサンとアセトン、シクロヘキサンとテトラヒドロフラン、シクロヘキサンと塩化メチレン、シクロペンタンと酢酸エチル、シクロペンタンとブタノン、シクロペンタンとテトラヒドロフラン、シクロペンタンと塩化メチレン、シクロへキサンと酢酸エチルと塩化メチレン、シクロペンタンと酢酸エチルと塩化メチレン、シクロペンタンとアセトンと塩化メチレン等の組み合わせが特に好ましいものとして挙げられる。
混合溶剤中の炭化水素系溶剤が占める割合は、好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20〜90重量%、特に好ましくは25〜90重量%、最も好ましくは30〜80重量%である。また、各溶剤の沸点の差は、好ましくは50℃未満、さらに好ましくは40℃未満、特に好ましくは30℃未満である。
(C)有機溶剤における、2種の溶剤を混合したときのSP値(溶解度パラメーター)は、通常15〜20(MPa1/2)、好ましくは16〜20(MPa1/2)、さらに好ましくは17〜20(MPa1/2)、特に好ましくは17〜19(MPa1/2)の範囲である。上記範囲のSP値を有する混合溶剤を使用すれば、フィルムの透明性、相溶性が保持でき、良好な光学フィルムを得ることができる。なお、各溶剤のSP値は、POLYMER HANDBOOK THIRD EDITTION,VII/526に記載されているデータを用いる。
なお、混合溶剤のSP値はその重量比から求めることができ、例えば2種の有機溶剤を混合する場合は、各溶剤の重量分率をW1およびW2、また、SP値をSP1およびSP2とすると混合溶剤のSP値は下記式:
混合溶剤のSP値=W1・SP1+W2・SP2
により求めることができる。
また、(A)環状オレフィン系重合体と(B)ビニル系重合体との混合物のSP値と、混合溶剤のSP値との差は、好ましくは7以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは3以下の範囲である。
なお、(A)環状オレフィン系重合体と(B)ビニル系重合体、およびこれらの混合物(以下、まとめて「重合体」ともいう)のSP値の測定方法は、下記の通りである。
重合体の極限粘度[η]を、溶解度パラメーターの異なる各種有機溶媒中で測定する。各種溶媒としては、四塩化炭素、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トリクロロエチレン、クロロホルム、メチルエチルケトン、ベンズアルデヒド、クロロベンゼン、メチレンクロライド、アセトン、シクロヘキサンなど極性溶媒から非極性溶媒まで一般に入手可能な溶剤を用いる。極限粘度は、30℃の条件下で、ウベローデ粘度管を用い、重合体の0.16〜1.6g/dlの濃度(C)範囲での各種溶媒における比粘度(ηsp)を測定し、各溶媒における粘度数(ηsp/C)を濃度C=0に外挿して求める。溶解度パラメーターの等しい溶媒は重合体を最も膨潤させ、溶媒中での重合体鎖の占める体積が大きくなることにより極限粘度が最大になることから、極限粘度と用いた溶媒の溶解度パラメーターとの関連から、最も極限粘度が大きくなる溶解度パラメーターの値を求め、その値を重合体の溶解度パラメーターとして算出する。
熱可塑性樹脂組成物:
本発明に用いる熱可塑性樹脂組成物における(A)環状オレフィン系重合体と(B)ビニル系重合体(B)との割合は、(A)環状オレフィン系重合体100重量部に対して、(B)ビニル系重合体が、通常20〜200重量部、好ましくは30〜80重量部、より好ましくは35〜60重量部である。(B)ビニル系重合体の配合量が上記下限未満になると、得られる位相差フィルムが正の波長分散性を発現しなくなる可能性があり、また上記上限を超えると、得られる位相差フィルムの位相差発現性が低下したり、負の位相差になったりする可能性がある。
なお、本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、本発明の光学フィルムの製造方法において、溶液流延法(溶剤キャスト法)に用いられるフィルム形成液として用いられるものであり、当該熱可塑性樹脂組成物の濃度は、通常0.1〜90重量%であり、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは10〜35重量%である。この濃度が低すぎると、所望の厚みを有するフィルムを得ることが困難となるとともに、乾燥により溶媒を除去する際に溶媒の蒸発に伴って発泡等が生じやすく、表面平滑性が良好なフィルムを得ることが困難となることがある。一方、上記濃度が高すぎると、フィルム形成液の粘度が高くなりすぎるため、厚みや表面状態が均一なフィルムを得ることが困難となることがある。
また、熱可塑性樹脂組成物の粘度は、室温で、通常1〜1,000,000(mPa・s)、好ましくは10〜100,000(mPa・s)、さらに好ましくは100〜100,000(mPa・s)、特に好ましくは1,000〜30,000(mPa・s)である。
本発明に用いる熱可塑性樹脂組成物は、たとえば、(A)環状オレフィン系重合体を(C)有機溶剤(混合溶剤)に溶解した溶液に、(B)ビニル系重合体を添加、混合する方法により製造することができる。組成物を調製する際の温度は、室温でもそれより高温でもよく、十分に撹拌することにより、(A)環状オレフィン系重合体および(B)ビニル系重合体(B)が均一に溶解または分散する温度であればよい。
上記熱可塑性樹脂組成物は、耐熱劣化性や耐光性の改良のために下記に示す酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加しても良い。
酸化防止剤:
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジエチルフェニルメタン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−(β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが挙げられる。
紫外線吸収剤:
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]〕などが挙げられる。
これらの添加剤の添加量は、本樹脂組成物100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部である。
さらに、上記熱可塑性樹脂組成物には、加工性を向上させる目的で滑剤などの添加剤を添加することもできる。
また、上記熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、染料、顔料等の着色剤を適宜添加することができ、これにより、着色されたフィルムを得ることができる。また、フィラーを添加し均一化したものであってもよい。当該フィラーとしては、金、銀等の金属、SiO2、TiO2、ZnO2、Al23等の金属酸化物、ガラス、石英などの無機フィラーや、熱硬化性樹脂の硬化物を微細化した有機フィラー等を任意に使用することもできる。
また、得られるフィルムの表面平滑性を向上させるために、熱可塑性樹脂組成物にレベリング剤を添加してもよい。レベリング剤としては、一般的なものであれは種々のものを用いることができ、たとえば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
光学フィルムの製造方法:
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、(A)環状オレフィン系重合体および(B)ビニル系重合体を(C)有機溶剤(混合溶剤)に溶解または分散した後、溶液流延法(溶剤キャスト法)によってフィルムを形成して製造する方法である。
具体的な方法としては、上述した熱可塑性樹脂組成物をフィルム形成液として、適当なキャリヤー上に注ぐか、または塗布することによって流延し、これによりキャリヤー上にフィルム形成液の液層を形成する。上記キャリヤーとしては、金属ドラム、スチールベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等よりなるポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレン製ベルトなどを用いることができる。
キャリヤーとしてポリエステルフィルムを使用する場合、表面処理されたフィルムを使用してもよい。表面処理の方法としては、一般的に行われている親水化処理方法、たとえば、ポリエステルフィルムの表面に、アクリル系樹脂やスルホン酸塩基含有樹脂をコーティングまたはラミネートすることにより、これらの樹脂よりなる層を形成する方法、あるいは、コロナ放電処理等によりフィルム表面の親水性を向上させる方法等が挙げられる。
また、キャリヤーとして、たとえば、金属ドラム、スチールベルト、ポリエステルフィルム等の表面にサンドマット処理やエンボス処理を施して凹凸を形成したものを用いることにより、得られるフィルムの表面に、キャリヤーの表面の凹凸が転写され、これにより、光拡散機能を有するフィルムを製造することができる。もちろん、フィルムに直接サンドマット処理を施すことにより、当該フィルムに光拡散機能を付与することも可能である。
フィルム形成液を塗布する方法としては、ダイスやコーターを使用する方法、スプレー法、刷毛塗り法、ロールコート法、スピンコート法、ディッピング法などが挙げられる。
また、フィルム形成液を繰り返し塗布することにより、得られるフィルムの厚みや表面平滑性を制御することができる。
このようにしてキャリヤー上に形成した液層に対して、乾燥等による溶媒の除去処理を行う。乾燥方法としては、一般的に用いられる乾燥処理法、たとえば、多数のローラーによって乾燥炉中を通過させる方法を利用することができるが、乾燥工程において溶媒の蒸発に伴って気泡が発生すると、得られるフィルムの特性を著しく低下させるので、これを回避するために、乾燥工程を2段以上の複数工程とし、各工程における温度あるいは風量を制御することが好ましい。
その後、乾燥して得られる膜をキャリヤーから剥離させることにより、本発明に係る光学フィルムを得ることができる。
このようにして得られたフィルムは、残留溶媒量が、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1.5重量%以下である。フィルム中の残留溶媒量が上記上限を超えると、フィルム使用時において寸法の経時変化が大きくなり好ましくない。また、残留溶媒によりガラス転移温度が低くなり、耐熱性も低下することがあるため好ましくない。
この光学フィルムを位相差フィルムの原反フィルムとして用いる場合には、フィルム中の残留溶媒量を上記範囲内で適宜調節することが特に必要となる場合がある。具体的には、延伸配向処理によってフィルムに位相差を安定して均一に発現させるために、フィルム中の残留溶媒量を通常10〜0.1重量%、好ましくは5〜0.1重量%、さらに好ましくは2〜0.1重量%にすることが望ましい。フィルム中に微量の溶媒を残留させることにより、延伸配向処理が容易になる、あるいは位相差発現性の制御が容易になることがある。
上記光学フィルムの厚みは、通常0.1〜3,000μm、好ましくは0.1〜1,000μm、さらに好ましくは1〜500μm、最も好ましくは5〜300μmである。フィルムが薄すぎると、フィルムの取扱い性が低下することがあり、厚すぎると、ロール状に巻き取ることが困難になることがある。
上記光学フィルムの厚み分布は、平均値に対して通常±20%以内、好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。また、1cmあたりの厚みの変動率は、通常10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。フィルムの厚み分布を上記の範囲内に制御することにより、上記光学フィルムを延伸配向したフィルムにおいて、位相差ムラの発生を防止することができる。
位相差フィルム:
本発明に係る位相差フィルムは、上記方法によって得た本発明の光学フィルムをさらに延伸加工することにより得ることができ、具体的には、公知の一軸延伸法、二軸延伸法、Z軸延伸法により製造することができる。すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、円周の速度の異なるロールを利用する縦一軸延伸法等あるいは横一軸と縦一軸を組み合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法等を用いることができる。
一軸延伸法の場合、延伸速度は通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分である。
また、二軸延伸法の場合、同時2方向に延伸を行う場合や一軸延伸後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸処理する場合がある。この時、屈折率楕円体の形状を制御するための2つの延伸軸の交わり角度は、所望する特性により決定されるため特に限定はされないが、通常は120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであってもよく、異なっていてもよく、通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
延伸加工温度は、特に限定されるものではないが、本発明に用いる樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を基準として、通常はTg±30℃、好ましくはTg±15℃、さらに好ましくはTg−5℃〜Tg+15℃の範囲である。前記範囲内とすることで、位相差ムラの発生を抑えることが可能となり、また、屈折率楕円体の制御が容易になることから好ましい。
延伸倍率は、所望する特性により決定されるため特に限定はされないが、通常は1.01〜10倍、好ましくは1.03〜5倍、さらに好ましくは1.03〜3倍である。延伸倍率が10倍以上の場合、位相差の制御が困難になる場合がある。
延伸したフィルムは、そのまま冷却してもよいが、樹脂組成物のTgを基準として、Tg−20℃〜Tgの温度雰囲気下に少なくとも10秒以上、好ましくは30秒〜60分間、さらに好ましくは1分〜60分間保持してヒートセットすることが好ましい。これにより、透過光の位相差の経時変化が少なく安定した位相差フィルムが得られる。
なお、延伸加工を施さない本発明の光学フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常5%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
また、本発明の位相差フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
寸法収縮率を上記範囲内にするためには、本発明中の特定単量体の選択やその他の共重合性単量体の選択に加え、キャスト方法や延伸方法の条件を調整することも有力な手段である。
上記のようにして延伸したフィルムは、延伸により分子が配向し透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差は、延伸倍率、延伸温度あるいはフィルムの厚さ等により制御することができる。例えば、延伸前のフィルムの厚さが同じである場合、延伸倍率が大きいフィルムほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。一方、延伸倍率が同じである場合、延伸前のフィルムの厚さが厚いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸前のフィルムの厚さを変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。また、上記延伸加工温度範囲においては、延伸温度が低いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸温度を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。
上記のように延伸して得た位相差フィルムが透過光に与える位相差の値は、その用途により決定されるものであり特に限定はされないが、液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはレーザー光学系の波長板に使用する場合は、通常は1〜10,000nm、好ましくは10〜2,000nm、さらに好ましくは15〜1,000nmである。
また、位相差フィルムを透過した光の位相差は均一性が高いことが好ましく、波長550nmにおける位相差のバラツキは、通常±20%以下であり、好ましくは±10%以下、さらに好ましくは±5%以下である。すなわち、波長550nmにおける位相差は、通常平均値に対して±20%以下であり、好ましくは±10%以下、さらに好ましくは±5%以下の範囲内にある。位相差のバラツキが±20%を超えると、液晶表示素子等に用いた場合、色ムラ等が発生し、ディスプレイ本体の性能が悪化する場合がある。
さらに、本発明に係る位相差フィルムは、正の波長分散性を有することが好ましく、波長550nmでの位相差Re(550)と波長400nmでの位相差Re(400)との比:Re(400)/Re(550)が1.0〜0.5、好ましくは0.8〜0.6、さらに好ましくは0.75〜0.65の範囲にあり、かつ、前記位相差Re(550)と波長800nmでの位相差Re(800)の比:Re(800)/Re(550)が1.5〜1.0、好ましくは1.5〜1.2、さらに好ましくは1.5〜1.3の範囲にあることが望ましい。当該波長分散性の調整は、樹脂組成比、延伸条件(延伸温度、倍率、速度)により行うことができる。
本発明の位相差フィルムは単独でまたは透明基板等に貼り合わせて、位相差フィルムあるいは位相差板として用いることができる。また、上記位相差フィルムあるいは位相差板を他のフィルム、シート、基板に積層して使用することができる。積層する場合には、粘着剤や接着剤を用いることができる。これらの粘着剤、接着剤としては、透明性に優れたものが好ましく、具体例としては天然ゴム、合成ゴム、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、ポリビニルエーテル、アクリル系、変性ポリオレフィン系、及びこれらにイソシアナートなどの硬化剤を添加した硬化型粘着剤、ポリウレタン系樹脂溶液とポリイソシアナート系樹脂溶液を混合するドライラミネート用接着剤、合成ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
また、上記の位相差フィルム及び位相差板は、他のフィルムシート、基板などとの積層の作業性を向上させるために、あらかじめ、粘着剤層、又は接着剤層を積層することができる。積層する場合には、粘着剤や接着剤としては前述のような粘着剤あるいは接着剤を用いることができる。
透明導電層を有する光学フィルム:
本発明の光学フィルムは、その少なくとも片面に透明導電層を積層した、透明導電層を有する光学フィルムであることも好ましい。透明導電層を形成するための材料としては、Sn、In、Ti、Pb、Au、Pt、Ag等の金属、またはそれらの酸化物が一般的に使用され、金属単体を基板上に形成したときは、必要に応じてその後酸化することもできる。当初から酸化物層として付着形成させる方法もあるが、最初は金属単体または低級酸化物の形態で被膜を形成し、しかるのち、加熱酸化、陽極酸化あるいは液相酸化等の酸化処理を施して透明化することもできる。これらの透明導電層は、他の透明導電層を有するシート、フィルムなどを接着したり、プラズマ重合法、スパッタリング法、真空蒸着法、メッキ、イオンプレーティング法、スプレー法、電解析出法などによって本発明の光学用フィルム上に直接形成される。これらの透明導電膜の厚さは、所望する特性により決定され特に限定はされないが、通常は10〜10,000オングストローム、好ましくは50〜5,000オングストロームである。
本発明の光学フィルムに直接透明導電層を形成する場合、当該フィルムと透明導電層との間に必要に応じて接着層及びアンカーコート層を形成してもよい。この接着層としては、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリブタジエン、フェノール樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱樹脂を例示することができる。またアンカーコート層としては、エポキシジアクリレート、ウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレート等のいわゆるアクリルプレポリマーなどを成分として含むものが用いられる。硬化の方法は公知の手法を用いることができ、例えばUV硬化や熱硬化などが用いられる。
透明導電層を有する本発明の光学フィルムは、偏光フィルムと組み合わせて、積層体とすることができる。透明導電層を有する本発明の光学用フィルムと、偏光フィルムとの組み合わせ方法は、特に限定されず、偏光膜の両面に保護フィルムが積層されてなる偏光フィルムの少なくとも片面に、透明導電層を有する本発明の光学用フィルムを、その透明導電性層形成面と反対側面上に適当な接着剤あるいは粘着剤を介して積層してもよいし、偏光膜の保護フィルムの代わりに、透明導電層を有する本発明の光学用フィルムを使用し、その透明導電性層形成面と反対側面上に適当な接着剤あるいは粘着剤を介して偏光膜に積層してもよい。もちろん、透明導電層を有さない本発明の光学フィルムを、偏光フィルムの保護フィルムとして用いることも可能である。この場合、上述した本発明に係る位相差フィルムを保護フィルムとして用いると、保護フィルムが位相差フィルムとしての機能を有するため、偏光フィルムにあらためて位相差フィルムを貼り合わせる必要が無くなる利点がある。
また、透明導電層を有する光学フィルムには、必要に応じて酸素や水蒸気の透過を小さくする目的のために、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルアルコール等のガスバリア性材料を、少なくともフィルムの一方の面に積層することもできる。さらにフィルムの耐傷性及び耐熱性を向上させる目的で、ガスバリア層の上にハードコート層が積層されていてもよい。ハードコート剤としては、有機シリコン系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの有機ハードコート材料、又は二酸化ケイ素などの無機系ハードコート材料を用いることができる。このうち、有機シリコン系樹脂、アクリル樹脂などのハードコート材料が好ましい。有機シリコン系樹脂の中には、各種官能基を持ったものが使用されるが、エポキシ基を持ったものが好ましい。
反射防止層を有する光学フィルム:
本発明の光学フィルムは、反射防止層を有する光学フィルムであることも好ましい。すなわち、本発明の光学フィルムには、少なくともその片面に反射防止層を積層することができる。反射防止層の形成方法としては、たとえば、フッ素系共重合体を含む組成物の溶液をバーコーターやグラビアコーターなどを用いてコーティングする方法がある。反射防止層の厚みは、通常は0.01〜50μm、好ましくは0.1〜30μm、さらに好ましくは0.5〜20μmである。0.01m未満であると反射防止効果が発揮できず、50μmを超えると塗膜の厚みにムラが生じやすくなり外観などが悪化する場合があり好ましくない。
また、反射防止層を有する本発明の光学フィルムには、公知のハードコート層や防汚層が積層されていてもよい。また、上記の透明導電層が積層されていてもよい。さらに、透過光に位相差を与える機能を有していてもよく、光拡散機能を有していてもよい。
反射防止層を有する本発明の光学フィルムは、上記のように複数の機能を有することにより、たとえば液晶表示素子に用いた場合、反射防止フィルムが位相差フィルム、光拡散フィルム、偏光板保護フィルムあるいは電極基板(透明導電層)の幾つかを兼用することとなり、従来よりもその部品点数を低減することが可能となる。
本発明の光学フィルムは、たとえば、携帯電話、ディジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイ等の各種液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。また、CD、CD−R、MD、MO、DVD等の光ディスクの記録・再生装置に使用される波長板としても有用である。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、特に断りのない限り、「重量部」および「重量%」を意味する。また、以下の実施例、比較例において、各種測定および評価は以下のようにして行った。
分子量測定(Mw、Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC、東ソー株式会社製、商品名:HLC−8020/カラム4本:東ソー株式会社製、商品名:TSK gel G7000HxL、TSK gel GMHxL、TSK gel GMHxL、TSK gel G2000xL)を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、前記Mnは、数平均分子量である。
ガラス転移温度(Tg)
セイコーインスツルメンツ社製、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気、昇温速度:20℃/分の条件で測定した。
全光線透過率、ヘイズ
スガ試験機社製ヘイズメーター:HGM−2DP型を使用して測定した。
残留溶媒量
サンプルを塩化メチレンに溶解し、得られた溶液を、島津製作所製:GC−7Aガスクロマトグラフィー装置を用いて分析し、溶媒のピーク面積値から残留溶媒量を求めた。
透過光の位相差および波長分散性
得られたフィルムを恒温槽付き引っ張り試験機(インストロン社製、MODEL5567型)を使用してガラス転移温度+10℃の温度で5分間保持した後、1軸延伸を行った。延伸設定倍率は、2倍で行った。得られた延伸フィルムについて、王子計測機器社製KOBRA−21ADH、並びにKOBRA−CCDを用いて、透過光の位相差測定を行った。
<合成例1>
下記式(A)で表される8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン50g、分子量調節剤の1−へキセン2.3gおよびトルエン100gを、窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウム(0.6モル/L)のトルエン溶液0.09ml、メタノール変性WCl6のトルエン溶液(0.025モル/L)0.29mlを加え、80℃で3時間反応させることにより重合体を得た。次いで、得られた開環共重合体溶液をオートクレーブに入れ、さらにトルエンを100g加えた。水添触媒であるRuHCl(CO)[P(C6H5)]3をモノマー仕込み量に対して2500ppm添加し、水素ガス圧を9−10MPaとし、 160−165℃にて3時間の反応を行った。反応終了後、多量のメタノール溶液に沈殿させることにより水素添加物を得た。得られた開環重合体の水素添加物(樹脂(P))は、ガラス転移温度(Tg)=167℃、重量平均分子量(Mw)=13.5×104、分子量分布(Mw/Mn)=3.06であった。
Figure 2006188555
下記実施例で使用した各溶剤の沸点およびSP値を表1に示す。なお、沸点は常圧における沸点の値を示した。
Figure 2006188555
注):POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION, VII/526参照
実施例1
スチレン−無水マレイン酸共重合体(共重合比:スチレン/無水マレイン酸=90−92/8−10(重量比)、Mw=207,350、Mn=103,980、Tg=118℃、NOVA Chemicals社製「ダイラークD232」、以下同じ)0.35gおよび合成例1で得られた樹脂P0.65gに、シクロヘキサン/テトラヒドロフラン混合溶剤(30重量%/70重量%)を3.0g添加、溶解した。このポリマー溶液(溶液濃度25重量%)をキャスト製膜することにより、8cm×8cmのサイズの透明なフィルムPF−1を得た。溶剤乾燥温度は120℃とした。得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、フィルム膜厚を測定した。また、用いた混合溶剤のSP値を算出した。結果を表2に示す。
実施例2〜6、比較例1〜2
キャスト溶剤として、表2または表3に記載の溶剤の組み合わせ、混合比にした以外は実施例1と同様にしてポリマー溶液を得、フィルムを得た。得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、フィルム膜厚を測定した。また、用いた混合溶剤のSP値を算出した。結果を表2および表3に併せて示す。
Figure 2006188555
Figure 2006188555
評価例
実施例6における溶剤乾燥速度と、比較例1における溶剤乾燥速度とを比較した。残留溶剤は、いずれも乾燥温度120℃においてフィルム重量の経時変化を測定し、フィルムを真空下で120℃、4日間乾燥したフィルムの重量を、残留溶媒を含まないフィルムの基準重量としてフィルムの残留溶媒量を算出し、フィルム中の残留溶媒量が5重量%になるまでの時間を測定した。その結果、実施例6においては約30分間、比較例1においては約250分間を要した。
実施例7、比較例3
実施例6で得られたフィルムPF−6、比較例1で得られたフィルムPF−1をそれぞれ用いて、延伸処理を行い、延伸フィルムを得て評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 2006188555
d:フィルム厚みを示す。

Claims (7)

  1. (A)環状オレフィン系重合体、
    (B)酸無水物基を有するビニル系重合体 および
    (C)沸点が110℃未満の有機溶剤2種以上
    を含有する熱可塑性樹脂組成物を用いて、溶液流延法により成形することを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
  2. 熱可塑性樹脂組成物における(A)環状オレフィン系重合体と(B)ビニル系重合体との含有割合が、(A)環状オレフィン系重合体100重量部に対して(B)ビニル系重合体20〜200重量部である、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. (A)環状オレフィン系重合体が、下記式(II)で表される構造単位を有することを特徴とする、請求項1乃至2に記載の光学フィルムの製造方法。
    Figure 2006188555
    (式(II)中、m、n、sおよびtは、それぞれ独立に0〜2の整数であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;および極性基よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表す。R、R8、R9、R10は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、窒素原子、イオウ原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;および極性基よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表し、互いに結合してヘテロ原子を有してもよい単環または多環の基を形成してもよく、R7とR8、または、R9とR10は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよい。RまたはRと、RまたはR10とは、相互に結合して、炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい)を形成してもよい。またXは、式:−CH=CH−で表される基または、式:−CH2−CH2−で表される基であり、複数存在するXは、同一または、異なる。)
  4. (B)ビニル系重合体が、
    (B−1)下記式(III−1)で表される構造単位と、
    (B−2)下記式(III−2)で表される構造単位および下記式(III−3)で表される構造単位から選ばれる少なくとも一種
    とを有する共重合体であることを特徴とする、請求項1乃至3に記載の光学フィルムの製造方法。
    Figure 2006188555
    (式中、R11〜R14は、相互に独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基を表し、R12は全て同一の原子または基であっても、個々異なる原子または基であってもよい。また、R13またはR14とは、相互に結合して、炭素環等を形成してもよい。)
  5. (C)沸点が110℃未満の有機溶剤が、シクロオレフィン類と、極性基含有溶剤およびハロゲン系溶剤から選ばれる少なくとも1種とを含有する、請求項1乃至4に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 請求項1乃至5に記載の製造方法で得られる光学フィルム。
  7. 波長550nmにおける位相差Re(550)と、波長400nmにおける位相差Re(400)との比:Re(400)/Re(550)が1.0〜0.1の範囲にあり、波長550nmにおける位相差Re(550)と、波長800nmにおける位相差Re(800)との比:Re(800)/Re(550)が1.5〜1.0の範囲にあることを特徴とする、請求項6に記載の位相差フィルム。

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