JP2006187188A - 圧電アクチュエータ及び液体吐出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】焼成反りが小さく、駆動電極を高密度に配列した場合でも、不要な圧電振動を抑制し、変位のばらつきを低減した圧電アクチュエータ及び液体吐出装置を提供する。
【解決手段】振動板2上に設けられた複数のコモン電極4aと、4aを覆うように該振動板2の上に設けられた圧電セラミック層5と、5の上に、コモン電極4aの各々と対向するように5の上に設けた複数の駆動電極6aと、5の表面に、6aの各々にそれぞれ隣接するように設けられた複数の接地端子4d及び電圧端子6dと、を具備し、各接地端子4dと各コモン電極4aとをビア電極4cを介し電気的接続し、各電圧端子6dと各駆動電極6aとをそれぞれ電気的接続して、コモン電極4aと駆動電極6aの間に電圧印加させて、コモン電極4a、駆動電極6a及びこれらに挟持される圧電セラミック層5によって構成される変位素子7が、変位することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】振動板2上に設けられた複数のコモン電極4aと、4aを覆うように該振動板2の上に設けられた圧電セラミック層5と、5の上に、コモン電極4aの各々と対向するように5の上に設けた複数の駆動電極6aと、5の表面に、6aの各々にそれぞれ隣接するように設けられた複数の接地端子4d及び電圧端子6dと、を具備し、各接地端子4dと各コモン電極4aとをビア電極4cを介し電気的接続し、各電圧端子6dと各駆動電極6aとをそれぞれ電気的接続して、コモン電極4aと駆動電極6aの間に電圧印加させて、コモン電極4a、駆動電極6a及びこれらに挟持される圧電セラミック層5によって構成される変位素子7が、変位することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、圧電アクチュエータ及び液体吐出装置に関するもので、微細な変位を発生させることにより、各種デバイスの位置決めや液体の加圧などに用いられる圧電アクチュエータ、特にインクジェットヘッドに利用される圧電アクチュエータ及び液体吐出装置に関するものである。
近年、インクジェットプリンタやインクジェットプロッタなどの、インクジェット記録方式を利用した記録装置が、コンシューマ向けの小型プリンタだけでなく、例えば電子回路の形成や液晶ディスプレイ用のカラーフィルタの製造、有機ELディスプレイの製造といった工業用途にも、広く利用されている。
インクジェット方式の記録装置においては、インクジェットヘッドを主操作方向に移動させると共に、記録紙や基板等を、上記主走査方向と交差する副走査方向に移動させながら、記録情報に応じてインクジェットヘッドを駆動させて、当該インクジェットヘッドのノズル開口から断続的にインク滴を吐出させることにより記録が行われる。例えば、小型プリンタの場合は記録紙等の表面に文字や画像が記録され、工業用の記録装置の場合は基板等の表面に電子回路、液晶ディスプレイのカラーフィルタ、有機ELディスプレイの発光セル等が形成される。
かかるインクジェット方式の記録装置には、液体を吐出させるための液体吐出装置が、印刷ヘッドとして搭載されており、この種の印刷ヘッドには、インクが充填されたインク流路内に加圧手段としてのヒーターを備え、ヒーターによりインクを加熱、沸騰させ、インク流路内に発生する気泡によってインクを加圧し、インク吐出孔より、インク滴として吐出させるサーマルヘッド方式と、インクが充填されるインク流路の一部の壁を変位素子によって屈曲変位させ、機械的にインク流路内のインクを加圧し、インク吐出孔よりインク滴として吐出させる圧電方式が一般的に知られている。
圧電方式を利用したインクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドは、例えば、図6(a)に示したように、アクチュエータ51が、流路部材53の上に設けられた構造を有する(例えば、特許文献1、2参照)。流路部材53は、複数のインク加圧室53aが隔壁53bによって仕切られ、インク加圧室53aはアクチュエータ51に当接するように並設されている。
圧電アクチュエータ51は、振動板52上に、共通電極54、圧電セラミック層55及び駆動電極56がこの順に積層され、駆動電極56と、該駆動電極に対向する共有電極54の対向部位と、該対向部位と前記駆動電極56とで挟持される挟持部位とで形成される圧電変位部57が複数形成されている。また、駆動電極56は、図6(b)に示したように、圧電セラミック層55の表面にマトリックス状に配置され、インク加圧室53aの直上に駆動電極56が配置している。
駆動電極56は、図6(b)に示したように、インク加圧室53aの上に配置された変位電極56aと、変位電極56aと接続し、且つ外部配線と接続するための引出電極56bとからなり、外部配線接続基板からの外部配線が接続される(不図示)。また、共通電極54も、外部配線回路と接続するための接続端子59に電気的に接続している。
上記のような印刷ヘッドは、共通電極54と所定の駆動電極56との間に電圧を印加して該表面電極56直下の圧電セラミック層55を変位させることにより、変位領域57aが対応するインク加圧室53aの方向に凸になるように変形し、インク加圧室53a内のインクを加圧して、流路部材53の底面に開口したインク吐出口58よりインク滴を吐出することができる。
特開平11−34321号公報
特開平11−34323号公報
しかしながら、このような圧電アクチュエータ51に通電する際には、共通電極54と所定の変位電極56aとの間に電圧を印加すると、変位電極56aに接続する引出電極56bと共通電極54の間にも電界が発生し、変位素子57の外部において圧電セラミック層55の変位による伸縮変形が発生し、内部応力を発生させる。この内部応力によって変位素子57の変位量にばらつきが生じ、インク吐出量にばらつきを生じさせるという問題があった。
特に、近年ではインクジェトヘッドのドット密度の高密度化に伴って、駆動電極が高集積化され、隣接する駆動電極の間隔が狭まっているので、上記問題がより顕著になる傾向にある。
また、共通電極は、振動板表面を覆うように形成されているため、焼成時の収縮量が大きく、圧電アクチュエータに反りが発生しやすいという問題があった。
本発明の目的は、焼成反りが小さく、駆動電極を高密度に配列した場合であっても、不要な圧電振動を抑制し、変位量のばらつきを低減した圧電アクチュエータ及び液体吐出装置を提供することにある。
本発明の圧電アクチュエータは、振動板と、該振動板上に設けられた複数のコモン電極と、該複数のコモン電極を覆うように前記振動板の上に設けられた圧電セラミック層と、該圧電セラミック層の上に、前記複数のコモン電極の各々と対向するように圧電セラミック層の上に設けられた複数の駆動電極と、前記圧セラミック層の表面に、前記駆動電極の各々にそれぞれ隣接するように設けられた複数の接地端子及び複数の電圧端子と、を具備し、各接地端子と各コモン電極とをビア電極を介してそれぞれ電気的に接続するとともに、各電圧端子と各駆動電極とをそれぞれ電気的に接続してなり、前記コモン電極と前記駆動電極の間に電圧を印加することによって、前記コモン電極、前記駆動電極及びこれらに挟持される圧電セラミック層によって構成される変位素子を変位させることを特徴とする。
また、本発明の他のアクチュエータは、振動板と、該振動板上に設けられた圧電セラミック層と、該圧電セラミック層の内部及び表面に設けられたコモン電極及び駆動電極と、を具備し、前記コモン電極と駆動電極とを交互に、且つ対向するように配置し、前記前記複数のコモン電極と前記接地端子とをビア電極を介して電気的に接続するとともに、前記複数の駆動電極と前記電圧端子とをビア電極を介して電気的に接続してなり、前記コモン電極と前記駆動電極の間に電圧を印加することによって、前記コモン電極、前記駆動電極及びこれらに挟持される圧電セラミック層によって構成される変位素子を変位させることを特徴とする。
特に、前記コモン電極が前記駆動電極と略同一であることが好ましい。
前記振動板が前記圧電セラミック層と略同一組成であることが好ましい。
前記振動板が補強部材を内設することを特徴とすることが好ましい。
前記補強部材が金属層からなり、振動板の主面と略同一の形状であることが好ましい。
前記金属層が前記コモン電極と電気的に接続してなることが好ましい。
本発明のインクジェットヘッドは、上記の圧電アクチュエータを、液体吐出口を有する複数の液体加圧室が配列された流路部材上に、前記液体加圧室と前記駆動電極との位置を揃えて取り付けたことを特徴とするものである。
本発明の圧電アクチュエータは、共通電極を廃して変位素子毎の個別の電極とし、表面に設けられた外部接続端子に電気的に接続することで、容易に外部と電気的な接続ができ、且つ駆動電極を高密度に配列しも、不要な圧電振動を防止し、隣接する変位素子への圧電振動に与える影響を抑制できるため、変位量のばらつきを低減した圧電アクチュエータを実現することができる。
また、振動板の主面一面に形成された共通電極ではなく、小さく、且つそれぞれ独立して形成された個別の電極としたため、焼成時の反りを改善することができる。
以下、本発明の一実施形態にかかる圧電アクチュエータについて図面を参照して詳細に説明する。図1(a)は、本実施形態にかかる圧電アクチュエータを示す平面図であり、図1(b)はそのA−A’線における断面図である。
図1(a)及び(b)に示したように、圧電アクチュエータ1は、振動板2上に、コモン電極4a、圧電セラミック層5及び駆動電極6aがこの順に積層され、駆動電極6aが圧電セラミック層5の表面に2次元的かつ規則的に複数配列されており、コモン電極4aと駆動電極6aとは同数で、かつ圧電セラミック層5を介して対向するように配置する。
コモン電極4aには、コモン接続部4bが接続されており、コモン接続部4bはビア電極4cの一端と電気的に接続し、ビア電極4cの他端は圧電セラミック層5表面に設けられた接地端子4dと電気的に接続している。そして、接地端子4dは、外部配線回路(不図示)に接続されている。即ち、コモン電極4aは、コモン接続部4b、ビア電極4c及び接地端子4dを介して外部配線回路に電気的に接続している。
また、駆動電極6aには、接地端子4dと重ならない位置に電圧接続部6bが設けられ、電圧接続部6bは、電圧端子6dと電気的に接続し、電圧端子6dは、外部配線回路(不図示)に接続されている。即ち、駆動電極6aは、電圧接続部6b及び電圧端子6dを介して外部配線回路に電気的に接続している。
コモン電極4a及び駆動電極6aで挟持される圧電セラミック層5の挟持部位5aと、コモン電極4aと、駆動電極6aと、で変位素子7が形成される。この変位素子7は、コモン電極4a及び駆動電極6aとの間に電圧を印加することによって、変位することができる。
本発明によれば、コモン接続部4bが駆動電極6aに対向しないこと、及びコモン接続部4bと電圧接続部6bがお互いに対向しないことが重要である。このような配置にすることにより、駆動電極6a及びコモン電極4aの間に電圧を印加しても、コモン電極4aや電圧接続部6bには圧電セラミックス5を挟んで対向する電極が配置していないので、これらの部分は圧電振動せず伸縮変形しないので、不要振動を抑制し、クロストークを低減して圧電アクチュエータ1の変位量ばらつきを低減することができる。
なお、電圧接続部6bは、コモン電極4aに対向しないようにコモン電極4aと駆動電極6aとが略同一の形状であることが望ましいが、駆動電極6aの位置がずれても所望の面積領域を分極し活性化することが可能であることから、コモン電極4aが駆動電極6aと略相似形状で、コモン電極4aがわずかに駆動電極6aよりも大きいことが好ましい。
コモン電極4aが駆動電極6aと略同一であることが好ましい。これにより、積層による電極の位置ずれを吸収でき、静電容量のばらつきを抑制することが容易になる。ここで、略同一とは、一方の電極がわずかに大きい場合又は両電極4a、6aとが同じ大きさであり、しかも両電極4a、6aは略相似形であることを意味している。
また、コモン電極4aを駆動電極6aよりもわずかに大きくした場合、コモン電極4aと電圧接続部6bとの間で対向する部位が生じるが、この領域をできるだけ小さくすることが好ましい。
具体的には、例えば、コモン電極4aと駆動電極6aとが端部の位置を揃える(図2(a)参照)、電圧接続部6bと対向する位置のコモン電極4aを除去するようにコモン電極4aの側面を形成し(図2(b)参照)、或いは電圧接続部6bの幅を小さくする(図2(c)参照)等の手法を採用できる。
また、コモン電極4aを駆動電極6aよりもわずかに小さくした場合には、コモン接続部4bと駆動電極6aとの間で対向する部位が生じるが、図2の場合と同様に、この領域をできるだけ小さくすることが好ましい。
このように、駆動電極6aがコモン電極4aの外側にはみ出さないように、即ち駆動電極6aがコモン電極4aの内側に投影されるようにこれらを配置することにより、電圧端子6d及び接地端子4cに当設する部位の圧電セラミック層5には電界はかからないので、これらの部分が圧電振動するのを防止することができる。よって、駆動電極6aを高密度に配置しても、隣接する駆動電極6aの下部の圧電セラミック層5における圧電振動に影響を与えて所望の圧電振動を妨げることがないので、集積度が高くても変位量ばらつきを小さく抑えることができる。
駆動電極6aとコモン電極4aとの間に電圧を印加することによって、駆動電極6a直下の圧電セラミック層5に圧電振動を発生させることができる。
振動板2は、一層からなるセラミック層であっても、また、複数のセラミック層の積層体であっても良く、また、内部に電極等の配線回路層を形成していても良い。例えば、PT、PZT等の圧電体、アルミナや窒化アルミニウム等のセラミックスを用いることができる。これらの中でも、熱膨張係数の差を小さくするため、圧電セラミック層5に使用される圧電体と略同一材料を用いることが好ましい。一般に、振動板2は、コモン電極4a、圧電セラミック層5などと同時に焼成して得ることができる。
コモン電極4aと駆動電極6aとは相似形状であり、駆動電極6aがコモン電極4aよりもわずかに小さくし、駆動電極6aをコモン電極4aに投影した場合の投影図形が、コモン電極4aの周縁からはみ出さないように配置することが好ましい。これにより、駆動電極6aの位置が多少ずれても、所望の面積領域を分極し活性化することができる。
コモン電極4aの表面積は、駆動電極6aの表面積の1.05〜1.5倍程度、特に、1.1〜1.44倍程度であるのが好ましい。電圧接続部6bに通電しても、コモン電極4aと電圧接続部6bとの間の圧電セラミック層5の圧電振動が十分小さく、圧電アクチュエータ1の変位量にばらつきを小さく維持することができる。
圧電アクチュエータ1の厚みZは、変位量を大きくするという点で、100μm以下、特に80μm以下、更には50μm以下であるのが好ましい。一方、厚みZの下限値は、取扱中や作動中に破損しない程度の機械的強度を有するように、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、さらに好ましくは30μm以上であるのがよい。
また圧電セラミック層5の厚みは、低電圧化という点で、好ましくは30μm以下にするのがよく、取扱中や作動中に破損しない程度の機械的強度を有するように、より好ましくは10〜20μmの範囲であるのがよい。
コモン電極4a、コモン接続部4bの厚みは0.5μm以上、好ましくは1μm以上であるのがよい。これにより、圧電アクチュエータ1の剛性を向上させて反り変形の抑制効果を高めることができる。駆動電極6a及び14aの厚みは2μm以下、好ましくは1μm以下であるのがよく、接地端子4dの厚みは5μm以上、好ましくは10μm以上であるのがよい。
圧電セラミック層5には、例えばチタン酸ジルコン酸鉛化合物(PbZrTiO3系化合物(PZT系))、チタン酸鉛化合物、チタン酸バリウム化合物などのペロブスカイト結晶構造型の圧電材料(圧電セラミック)を好適に用いることができる。これらのうち、大きな変位を得られるという点で、PZT系化合物を用いるのが好ましい。
また、振動板2には種々のセラミックや金属あるいはこれらの複合体を用いることができるが、前記圧電セラミック層5との接合強度を高めかつ熱膨張係数差を小さくできるという点で、振動板2にも圧電セラミック層5と同一材料を使用することが望ましい。圧電セラミック層5、振動板2はそれぞれ1層で構成されていてもよく、複数の層から構成されていてもよい。
駆動電極6a及び電圧接続部6bは同一材料により形成されるのが好ましい。例えばAu、Ag、Cu、Cr、Pd、Ptなどの金属またはこれらのうち少なくとも1種以上を主成分とする合金などを用いるのが好ましく、薄層化しても高い導電性が得られるという点で、特にAuを用いるのがより好ましい。
コモン電極4a及びコモン接続部4bは同一材料により形成されるのが好ましい。例えばAu、Ag、Cu,Cr、Pd、Ptなどの金属またはこれらのうち少なくとも1種以上を主成分とする合金などを用いるのが好ましく、密着強度を高めるという点で、特にAg−Pd合金に、さらに、圧電セラミック層5と同じ材料(例えばペロブスカイト結晶構造型の圧電セラミック)を微量添加して用いるのがより好ましい。
ビア電極4c、接地端子4d、電圧端子6dとしては、例えばAu、Ag、Cu、Cr、Pd、Ptなどの金属またはこれらの少なくとも1種以上を主成分とする合金などを用いることができ、好ましくはAuまたはAgを主成分とする金属(若しくは合金)であるのがよい。
また、図3は、本発明の他の圧電アクチュエータの構造を示す断面図である。
図3によれば、本発明の圧電アクチュエータ11は、振動板12上に、コモン電極14a、圧電セラミック層15a、駆動電極16e、圧電セラミック層15b、コモン電極14e、圧電セラミック層15c、及び駆動電極16aがこの順に積層されている。
コモン電極14a、駆動電極16e、コモン電極14e及び駆動電極16aがそれぞれ対向するように配置し、コモン電極14a、14eはコモン接続部14b、ビア電極14cを介して接地端子14dに電気的に接続しており、コモン電極14a及びコモン電極14eは同電位となっている。また、駆動電極16a、16eは電圧接続部16b、ビア電極16cを介して電圧端子16dに電気的に接続しており、駆動電極16a及び駆動電極16eは同電位となっている。
なお、振動板12の厚みは任意に設定でき、圧電セラミック層15a、15b、15cの厚みもそれぞれ任意の厚みに設定できる。また、駆動電極6aは、圧電セラミック層15cの表面に2次元的かつ規則的に、即ちマトリックス状に複数配列されているのは言うまでもない。
このような構成を有する圧電アクチュエータ11は、駆動電極16a、16eを高密度に配列した場合であっても、不要な圧電振動を抑制し、変位量のばらつきを低減した圧電アクチュエータ及び液体吐出装置を実現するとともに、図1に比べてさらに大きな変位量を実現することが可能となる。
また、図5は、本発明の他の圧電アクチュエータの構造を示すものであり、図5(a)は平面図であり、図5(b)はそのC−C’線における断面図である。なお、共通する構成については同一番号を付与し、説明を省略する場合がある。
図5(b)によれば、本発明の圧電アクチュエータ1において、振動板2が補強部材2cを内接することが好ましい。これにより、焼成後の取り扱い等において圧電アクチュエータ1が破壊されにくくなる。このような構造にするには、例えば、セラミック層2a、補強部材2cおよびセラミック層2bをこの順に積層して焼成することができる。この場合にも、セラミック層2a、2bには圧電セラミック層5と同一材料を使用することが望ましい。
また、図5(b)のように、補強部材2cを金属層として形成し、振動板2の主面と略同一の形状であることが好ましい。これは、金属層を補強部材2cとすることで強度を高めるとともに、変形もし易くすることができる。図5の場合には、セラミック層2a、2bおよび金属層を同一形状とすれば良い。このような所謂全面ベタ層でも良いが、金属層が外部に露出しないように、金属層がセラミック層2aよりもわずかに小さい面積となるように金属層2cを形成することも可能である。
上記の金属層は、コモン電極4aと電気的に接続してなることが好ましい。これにより、金属層への不要な電荷の帯電を防止でき、より安定した変位を得ることができる。
上記の金属層の厚みは0.5μm以上、特に1μm以上が、圧電アクチュエータ1をより安定して取り扱うことができ、脆性を改善する点で好ましい。
なお、本発明によれば、補強部材は図3のような前記コモン電極と駆動電極とを交互に、且つ対向するように配置した圧電アクチュエータにおいても、同様の効果を奏することができる。
次に本発明の圧電アクチュエータの製造方法を、図1の圧電アクチュエータ1を作製する場合を例として説明する。
まず、チタン酸ジルコン酸鉛化合物、チタン酸鉛化合物、チタン酸バリウム化合物などの圧電セラミックスを主成分とする原料粉体を準備し、これらを混合してスラリーを作製する。得られたスラリーを用いて、グリーンシートを作製する。グリーンシートの作製方法は、ドクターブレード法、ロールコータ等の周知のテープ成形方法を採用することができる。
得られたグリーンシートのうち、1枚又は複数積層してなり、焼成後に振動板となるグリーンシートの主面に、導体ペーストの塗布層を形成し、焼成後にコモン電極4a及びコモン接続部4bとなる金属パターンを形成する。金属パターンの形成方法は、スクリーン印刷法等を例示することができるが、他の公知の手法を採用することも可能である。
一方、焼成後に圧電セラミック層となる他のグリーンシートにビア導体を充填するためのビアホールを形成する。ビアホールの穿孔方法は、パンチング、レーザー加工等の周知の手法を採用することができる。得られたビアホールには所望のビア導体を充填する。
なお、ビアホールへのビア導体の充填は、焼成前であっても、焼成後であっても良い。即ち、焼成前にビア導体を充填し、グリーンシートと同時に焼成することもできるが、ビア導体を形成する前に焼成し、焼結体のビアホールに導体ペーストを充填して加熱処理を行ってビア導体を形成することもできる。
次に、これらのグリーンシートを積層し、密着させて積層成形体を得る。さらに、この積層成形体を所定の形状に切断した後、900〜1100℃程度で焼成してコモン電極及びビア電極を内蔵する積層圧電体を作製する。
この積層圧電体の表面に、スクリーン印刷法等の方法により導体ペーストを印刷して、駆動電極6a及び電圧接続部6bとなる金属パターンを形成し、600〜850℃程度で熱処理する。最後に、接地端子4d、電圧端子6dとなる金属パターンをスクリーン印刷により形成し、600〜850℃程度で熱処理する。これにより圧電アクチュエータ1を得ることができる。なお、接地端子4d、駆動電極6a、電圧接続部6b及び電圧端子6dは同一の導体ペーストを使用する等の方法により、1回の熱処理で作製することも可能である。
なお、図3のような圧電アクチュエータを作製する場合には、上記の手法に準じ、所望のグリーンシートの積層構造を採用すればよい。
次に、本発明のインクジェットヘッドについて説明する。図4に、本発明のインクジェットヘッドの断面図を示した。なお、図4においては、説明の重複をさけるため、同一の符号を付与した。
図4によれば、本発明のインクジェットヘッド21は、圧電アクチュエータ1を流路部材23aの上に設け、圧電アクチュエータ1の上に外部回路と接続するためのフレキシブル配線回路26に接続している。
流路部材23は、隔壁23bによってインク加圧室23aを複数形成するとともに、各インク加圧室23aにはインク吐出口28が連通している。流路部材23は、厚み30〜100μm程度の薄板を積層して作製できる。各薄板は、エッチングや金型による打ち抜き等の方法によって形成された微細な溝や孔を具備しており、複数の薄板を積層することによって、各薄板に形成された溝や孔が、インク加圧室23a、インク吐出口28及びインク流路(不図示)等を構成するように、組み合わせることができる。このような薄板の材料としては、例えばステンレス板、アルミニウム板、モリブデン板などの金属材料、シリコン等の半導体材料、又はアルミナや炭化珪素等のセラミックス材料などで形成することもできる。これらの中でも、導電性を有し、安価で精密加工のできる金属材料を用いることが好ましい。
次に、変位素子7とインク加圧室23aとの位置がそれぞれ揃うように、即ち、コモン電極4a及び駆動電極6aがインク加圧室23aの真上に配置するように、例えばエポキシ樹脂などで圧電アクチュエータ1と流路部材23を接合する。さらに、圧電アクチュエータ1に対して、外部回路に接続するためにフレキシブル配線基板26が配設され、フレキシブル配線基板26を構成する個別端子25a及び25bが、接地端子4d及び電圧端子6dとそれぞれ接続されている。
本発明のインクジェットヘッドは、駆動電極とコモン電極が対向しないため、不要な伸縮変形による不要振動の発生を抑制することができ、不要振動の影響によるインク吐出量のばらつきを低減することができる。従って、インク加圧室を高密度に配置するような流路部材を用いる場合であっても、クロストークを抑制し、インク吐出量のばらつきを提言し、安定したインク吐出性能を得ることができる。
まず、図1に示した圧電アクチュエータを作製した。即ち、平均粒径が0.5μmのPbZrTiO3系粉末を、バインダ及び有機溶剤とともに混合して圧電材料のスラリーを調合し、しかる後に、得られたスラリーを用いてロールコータ法にて厚み25μmのグリーンシートを作製した。
一方、Ag−Pd粉末を、混合比が質量比でAg:Pd=7:3となるように配合し、有機粘結剤と溶媒とを所定量混合して導電性ペーストを調製した。
次に、得られたグリーンシートのうち、第一のグリーンシートの表面に導電性ペーストをスクリーン印刷により印刷して、コモン電極、コモン接続部となる金属パターンをそれぞれ形成した。
第一のグリーンシートと異なる第二のグリーンシートの所定位置に、ビアホールを打ち抜きにより形成した。
第一のグリーンシート上に、第二のグリーンシートを積層し、加熱加圧して母体積層体を形成し、この母体積層体を切断して積層体を形成し、酸素雰囲気中、1000℃、2時間の焼成を行い圧電アクチュエータ本体を形成した。
次に、この圧電アクチュエータ本体の一方の表面にAuを主成分とする金属ペーストをスクリーン印刷して750℃で焼付けを行って駆動電極、電圧接続部を形成した。
さらに、Agを主成分とする金属ペーストをビアホールに充填してビア電極を形成した後、同じ導体ペーストをスクリーン印刷して600℃で焼付けを行って接地端子を作製した。
次に、この圧電アクチュエータ本体を流路部材にエポキシ系接着剤にて接合し、図4に示したインクジェットヘッドを得た。
圧電アクチュエータの変位量は、コモン電極と駆動電極との間に25Vの直流電圧を印加し、室温にて周波数10kHzのsin波形で駆動した際の、変位量をレーザードップラー振動計により測定した。
特定の駆動電極(以下、中心駆動電極と言う)のみに電圧を印加して、その駆動電極を具備する変位素子(以下、中心変位素子と言う)の変位量を測定したところ、その変位量は105nmであった。
次に、中心駆動電極に隣接する2つの駆動電圧(以下、隣接駆動電極と言う)にも電圧を印加して、中心変位素子と2つの隣接駆動電極を具備する隣接変位素子を同時に駆動させたところ、中心変位素子の変位量は3%低下した。
さらに、中心駆動電極と4つの隣接駆動電極とに電圧を印加して、中心変位素子と4つの隣接変位素子を同時に駆動させたところ、中心変位素子の変位量は4%低下した。
このように、中心変位素子と隣接変位素子を同時に駆動する場合の変位量の低下が4%以下と小さいため、隣接の変位素子が駆動されない変位素子と隣接の変位素子が駆動される変位素子とでの変位量の差が小さいため、吐出ばらつきを小さくすることができる。
(比較例)
コモン電極を振動板の主面に、該主面を覆うようにコモン電極を形成したほかは、実施例1と同様にしてインクジェットヘッドを作製し、実施例1と同じ評価を行った。なお、焼成時に反りが発生した。その反り量は、実施例1の焼成時の反り量に対して約2.5倍であった。
コモン電極を振動板の主面に、該主面を覆うようにコモン電極を形成したほかは、実施例1と同様にしてインクジェットヘッドを作製し、実施例1と同じ評価を行った。なお、焼成時に反りが発生した。その反り量は、実施例1の焼成時の反り量に対して約2.5倍であった。
特定の駆動電極(以下、中心駆動電極と言う)のみに電圧を印加して、その駆動電極を具備する変位素子(以下、中心変位素子と言う)の変位量を測定したところ、その変位量は103nmであった。
次に、中心駆動電極に隣接する2つの駆動電圧(以下、隣接駆動電極と言う)にも電圧を印加して、中心変位素子と2つの隣接駆動電極を具備する隣接変位素子を同時に駆動させたところ、中心変位素子の変位量は11%低下した。
さらに、中心駆動電極と4つの隣接駆動電極とに電圧を印加して、中心変位素子と4つの隣接変位素子を同時に駆動させたところ、中心変位素子の変位量は17%低下した。
このように、中心変位素子と隣接変位素子を同時に駆動する場合の変位量の低下が11%以上と大きいため、隣接の変位素子が駆動されない変位素子と隣接の変位素子が駆動される変位素子とでの変位量の差が大きくなり、吐出ばらつきが無視できなくなり、その結果、印画品質が低下した。
1、11・・・圧電アクチュエータ
2、12・・・振動板
2a、2b・・・セラミック層
2c・・・補強部材
4a、14a、14e・・・コモン電極
4b、14b・・・コモン接続部
4c、14c、16c・・・ビア電極
4d、14d・・・接地端子
5・・・圧電セラミック層
6a、16a、16e・・・駆動電極
6b、16b・・・電圧接続部
6d、16d・・・電圧端子
7・・・変位素子
Z・・・圧電アクチュエータの厚み
2、12・・・振動板
2a、2b・・・セラミック層
2c・・・補強部材
4a、14a、14e・・・コモン電極
4b、14b・・・コモン接続部
4c、14c、16c・・・ビア電極
4d、14d・・・接地端子
5・・・圧電セラミック層
6a、16a、16e・・・駆動電極
6b、16b・・・電圧接続部
6d、16d・・・電圧端子
7・・・変位素子
Z・・・圧電アクチュエータの厚み
Claims (8)
- 振動板と、該振動板上に設けられた複数のコモン電極と、該複数のコモン電極を覆うように前記振動板の上に設けられた圧電セラミック層と、該圧電セラミック層の上に、前記複数のコモン電極の各々と対向するように圧電セラミック層の上に設けられた複数の駆動電極と、前記圧セラミック層の表面に、前記駆動電極の各々にそれぞれ隣接するように設けられた複数の接地端子及び複数の電圧端子と、を具備し、各接地端子と各コモン電極とをビア電極を介してそれぞれ電気的に接続するとともに、各電圧端子と各駆動電極とをそれぞれ電気的に接続してなり、前記コモン電極と前記駆動電極の間に電圧を印加することによって、前記コモン電極、前記駆動電極及びこれらに挟持される圧電セラミック層によって構成される変位素子を変位させることを特徴とする圧電アクチュエータ。
- 振動板と、該振動板上に設けられた圧電セラミック層と、該圧電セラミック層の内部及び表面に設けられたコモン電極及び駆動電極と、を具備し、前記コモン電極と駆動電極とを交互に、且つ対向するように配置し、前記前記複数のコモン電極と前記接地端子とをビア電極を介して電気的に接続するとともに、前記複数の駆動電極と前記電圧端子とをビア電極を介して電気的に接続してなり、前記コモン電極と前記駆動電極の間に電圧を印加することによって、前記コモン電極、前記駆動電極及びこれらに挟持される圧電セラミック層によって構成される変位素子を変位させることを特徴とする圧電アクチュエータ。
- 前記コモン電極が前記駆動電極と略同一であることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電アクチュエータ。
- 前記振動板が前記圧電セラミック層と略同一組成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
- 前記振動板が補強部材を内設することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
- 前記補強部材が金属層からなり、振動板の主面と略同一の形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
- 前記金属層が前記コモン電極と電気的に接続してなることを特徴とする請求項6記載の圧電アクチュエータ。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の圧電アクチュエータを、液体吐出口を有する複数の液体加圧室が配列された流路部材上に、前記液体加圧室と前記駆動電極との位置を揃えて取り付けたことを特徴とする液体吐出装置。
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- 2005-07-12 JP JP2005202704A patent/JP2006187188A/ja active Pending
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