JP2006182197A - 車体前部構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 設計上の制約の少ないカウルパネルを用いて左右のサスペンションタワーの剛性を高めることができる車体前部構造を得る。
【解決手段】 車体前部構造10は、車幅方向に長手とされると共に該車幅方向に沿う立壁12Bを有しボルト14によって車体に対し取り外し可能に固定されたカウルフロントパネル12と、それぞれ車幅方向に長手とされ車幅方向外端がサスペンションタワー24に固定されると共に車幅方向内端が立壁12Bに固定された左右一対のブレース34、36とを備えて構成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車体におけるカウルパネルの取付部、サスペンションタワーを含む車体前部構造に関する。
自動車車体の前部を構成するカウルフロントパネルを、サスペンションタワー及びダッシュフロントパネルにそれぞれボルト・ナットにて分離可能に結合した技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、カウルフロントパネルを分離可能とすることで、例えばブレーキブースタ等の部品の良好な組み付け作業性が確保される。
特開平11−115810号公報
しかしながら、上記の如き従来の技術では、カウルフロントパネルが左右のサスペンションタワー間を前後方向の全幅に亘り架け渡すように連結するため、エンジンルーム内のスペース確保や歩行者保護対策等を行う上でさまざまな制約があり、適用される車種に制限があった。
本発明は、上記事実を考慮して、設計上の制約の少ないカウルパネルを用いて左右のサスペンションタワーの剛性を高めることができる車体前部構造を得ることが目的である。
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車体前部構造は、車幅方向に長手とされると共に該車幅方向に沿う立壁を有し、車体に対し取り外し可能に固定されたカウルパネルと、それぞれ車幅方向に長手とされ、車幅方向外端がサスペンションタワーに固定されると共に車幅方向内端が前記立壁に固定された左右一対の補強部材と、を備えている。
請求項1記載の車体前部構造では、それぞれ車幅方向に長手とされた左右一対の補強部材は、それぞれの車幅方向内端を立壁に固定すると共に車幅方向外端をサスペンションタワーに固定することで、立壁の車幅方向中間部と左右の補強部材とが左右のサスペンションタワーの間で直線的に配置されている。換言すれば、立壁の車幅方向中間部と左右の補強部材とが左右のサスペンションタワーを直線的に架け渡している。これにより、左右のサスペンションタワーの左右方向の剛性が確保される。
また、カウルパネルは車体に対し取り外し可能に固定されるため、カウルパネルの取り付け前に車体(エンジンルーム内に)に部品を組み付けることができ、作業性が良好である。しかも、補強部材がサスペンションタワーとカウルパネルとを連結するため、単一のカウルで左右のサスペンションタワーを架け渡す構成と比較して、カウルの形状、大きさ等に対する制約が少ない。
このように、請求項1記載の車体前部構造では、設計上の制約の少ないカウルパネルを用いて左右のサスペンションタワーの剛性を高めることができる。なお、立壁の車幅方向中間部と左右の補強部材とは、左右のサスペンションタワー間の空間内で直線的に配置される(正面視及び平面視の双方で左右のサスペンションタワー間を直線的に架け渡す部分を有する)ことが望ましいが、例えばサスペンションタワーの後方にオフセットして配置されても良い。
請求項2記載の発明に係る車体前部構造は、請求項1記載の車体前部構造において、前記一対の補強部材は、それぞれ前記カウルパネルが前記車体に固定される前に該カウルパネルに固着されており、前記サスペンションタワーの頂部に取り外し可能に固定される。
請求項2記載の車体前部構造では、各補強部材が固定されているカウルパネルを車体に対し取り外し可能に固定されると共に、各補強部材をサスペンションタワー(車体)に取り外し可能に固定されている。すなわち、カウルパネルと各補強部材とがサブアセンブリ化されており、一体の部品として取り扱うことができる。このため、カウルパネル及び補強部材の取り付け及び取り外し作業性が良好である。
上記目的を達成するために請求項3記載の発明に係る車体前部構造は、車幅方向に長手とされ、車体に対し取り外し可能に固定されるカウルパネルと、それぞれ前記カウルパネルが前記車体に固定される前に該カウルパネルに固定されており、左右の相異なるサスペンションタワーに取り外し可能に固定される左右一対の補強部材と、を備えている。
請求項3記載の車体前部構造では、左右一対の補強部材が予め固定されているカウルパネルを車体に対し取り外し可能に固定されると共に、各補強部材をサスペンションタワー(車体)に取り外し可能に固定されている。カウルパネルを介して左右一対の補強部材にて連結されている左右のサスペンションタワーは、補強部材を設けない構成と比較して左右方向の剛性が確保される。
ここで、カウルパネルと、該カウルパネルを介して左右のサスペンションタワーを連結する補強部材とが別部材にて構成されているため、これらの機能を一部材にて果たす構成と比較して、例えばカウルパネルの形状や配置に対する制約が少ない。そして、カウルパネル及び各補強部材は、取り付け及び取り外しに際しては一部材として取り扱うことができ、取り付け及び取り外し作業性が良好である。
このように、請求項3記載の車体前部構造では、設計上の制約の少ないカウルパネルを用いて左右のサスペンションタワーの剛性を高めることができる。
請求項4記載の発明に係る車体前部構造は、請求項2又は請求項3記載の車体前部構造において、前記カウルパネル及び補強部材は、それぞれ締結手段によって車体又はサスペンションタワーに取り外し可能に固定される。
請求項4記載の車体前部構造では、左右一対の補強部材が予め固定されているカウルパネルは、該カウルパネルと車体とを固定する締結手段、及びサスペンションタワーと補強部材とを固定する締結手段とを用いて、該車体(サスペンションタワー)に所要強度で確実に固定されている。
請求項5記載の発明に係る車体前部構造は、請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の車体前部構造において、前記補強部材は、前記サスペンションタワーに固定されるサスペンション部品と共通の締結手段によって該サスペンションタワーの頂部に固定される。
請求項5記載の車体前部構造では、補強部材がサスペンションタワーに対しサスペンションの部品と共締めされているため、補強部材を設けることによる組付工数の増加が抑制される。
以上説明したように本発明に係る車体前部構造は、設計上の制約の少ないカウルパネルを用いて左右のサスペンションタワーの剛性を高めることができるという優れた効果を有する。
本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造10について、図1乃至図7に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印RE、矢印UP、矢印LO、矢印RI、及び矢印LEは、それぞれ車体前部構造10が適用された自動車車体Sの前方向(進行方向)、後方向、上方向、下方向、右方向、及び左方向を示しており、以下単に上下前後右左を示す場合は上記各矢印方向に対応している。
図1には車体前部構造10が斜視図にて示されている。また、図2には車体前部構造10が平面図にて示されており、図3には車体前部構造10が正面図にて示されている。これらの図に示される如く、車体前部構造10では、車体Sの前部に本発明におけるカウルパネルとしてのカウルフロントパネル12が、溶接構造ではなく、締結手段を構成するボルト14によって車体Sに取り外し可能に固定されている。以下、具体的に説明する。
図1に示される如く、車体Sは、車幅方向に長手とされエンジンルームEと車室Cとの間に配置されたカウル部16を備えている。カウル部16は、エンジンルームEの後部上端の近傍で、左右のフロントピラー18の前下端を架け渡すように配置されている。このカウル部16には、フロントウインドシールドガラス20の前下端が固着されるようになっている。また、左右のフロントピラー18の前下端にはエプロン部22の後端が連結されており、車体Sにおける各エプロン部22の下方における車幅方向内側にはそれぞれサスペンションタワー24が設けられている。これらのサスペンションタワー24は、カウル部16の前方に配置されている。各サスペンションタワー24は、それぞれの頂部24Aにおいて前輪用のサスペンションを支持するようになっている。
図6に示される如く、カウル部16は、ダッシュパネル26の上端に固着されたカウルインナパネル28と、カウルインナパネル28の前側に固着されたカウルアウタパネル30とで、車幅方向の各部において閉断面とされた(空気取入口等の各種開口部の設置部を除く)閉断面部16Aを有する。この閉断面部16A(カウルインナパネル28又はカウルアウタパネル30)の前下端にカウルフロントパネル12の後端が固定されており、カウルフロントパネル12は、閉断面部16Aを後壁として上方に開口するオープンカウル部16Bを形成している。
カウル部16を構成するカウルインナパネル28及びカウルアウタパネル30は、それぞれフロントピラー18、エプロン部22、サスペンションタワー24、ダッシュパネル26等と共に、エンジン、変速装置、補器類等の各種部品がエンジンルームE内等に組み付けられる前に、スポット溶接等によって互いに接合されて車体Sを構成している。
一方、カウルフロントパネル12は、上記の通りボルト14によって車体Sに取り外し可能に取り付けらている。具体的には、図5に示される如くカウルインナパネル28の前下端の下面にはボルト14とで締結手段を成すウェルドナット32が設けられており、このウェルドナット32にカウルフロントパネル12を上側から貫通したボルト14を螺合することで、カウルフロントパネル12が車体Sに固定される構成である。図1及び図2に示される如く、本実施形態では、ボルト14(ウェルドナット32)は、カウルフロントパネル12の長手方向両端近傍を含む4箇所に設けられ、4つのボルト14は、車幅方向に沿って略等間隔に配置されている。
この車体Sに対する固定状態で、図2に示される如く、カウルフロントパネル12の車幅方向中間部は、平面視でその前部を左右のサスペンションタワー24間に位置させている。一方、カウルフロントパネル12の車幅方向両端部は、それぞれサスペンションタワー24の頂部24Aの後側に回り込んでいる。具体的には、カウルフロントパネル12は、底部12Aと、底部12Aの前端から立ち上げられた立壁としての前壁12B(図2にハッチングを施して示す壁部)とを含んで構成されて、上記通り閉断面部16Aを後壁としてオープンカウル部16Bを形成している。前壁12Bは、上端が下端よりも前方に位置するように傾斜しており、かつ車幅方向の各部において傾斜角が変化したり適宜湾曲したりして形成されている。この前壁12Bは、その上端は略全長に亘り左右のサスペンションタワー24の頂部24Aの後端よりも前側(主に左右のサスペンションタワー24間)に位置し、その下端は略全長に亘り左右のサスペンションタワー24(頂部24A)よりも後側に位置している。これにより、オープンカウル部16Bは、流入した雨水等を左右両端におけるサスペンションタワー24の後方部分から排水することができる構成になっている。
そして、カウルフロントパネル12の車幅方向中間部における前壁12Bの上縁からは、張出部12Cが前方に延設されている。張出部12Cは、その大部分(実質的に全部)が平面視で左右のサスペンションタワー24間に位置している。また、張出部12Cの前縁からは張出立壁12Dが立設されており、張出立壁12Dの左右両端は、張出部12Cよりも車幅方向外側に位置する前壁12Bに連続している。この立壁相当部分の上端からは、車幅方向略全幅に亘る前フランジ12Eが前方に延設されている。
そして、この車体前部構造10は、カウルフロントパネル12における左右のサスペンションタワー24間に位置する車幅方向中間部と、左右のサスペンションタワー24とにそれぞれ固定された補強部材としての一対のブレース34、36を備えている。各ブレース34、36は、それぞれ車幅方向に長手とされており、カウルフロントパネル12の前壁12Bの上部(左右のサスペンションタワー24間に位置する部分)にスポット溶接にて固着された固着部34A、36Aを有している。図3に示す「×」は、スポット溶接箇所(正面視で現れる部分)を示している。したがって、カウルフロントパネル12と各ブレース34、36は、車体Sへの組付前に一体化(サブアセンブリ化)されている。
図2に示される如く、各ブレース34、36の固着部34A、36Aの上端からは、フランジ部34B、34Cが前方に延設されている。この実施形態では、図2に「×」印にて示される如く、フランジ部34B、34Cにおける張出部12Cの下側に位置する部分が、該張出部12Cにスポット溶接にて固着されている。そして、各フランジ部34B、36Bの前端における車幅方向外端近傍部分は、対応するサスペンションタワー24の頂部24Aに締結手段としてのボルト38及びナット40によって、取り外し可能に固定されるようになっている。
具体的には、各フランジ部34B、36Bの前端における車幅方向外端近傍部分には、図2に示される如く、それぞれボルト貫通孔34C、36Cが設けられている。そして、図4に示される如く、例えば前輪サスペンションのスプリング受け等のサスペンション部品Pに固着されたボルト38が、頂部24A及びボルト貫通孔34Cを貫通した状態で、該ボルト38にナット40を螺合することで、ブレース34がサスペンションタワー24に固定される構成である。また、図5に示される同様の構造によって、ブレース36がサスペンションタワー24の固定されるようになっている。したがって、この実施形態では、各ブレース34、36は、サスペンション部品Pと共にサスペンションタワー24に共締めされる構成とされている。なお、図4乃至図6には、カウル部16の前部を上方から覆うエンジンフードHの後端部が示されている。
また、各ブレース34、36は、それぞれのフランジ部34B、36Bの前縁から立設された車幅方向に沿うブレース立壁34D、36Dを有し、曲げ及びねじりに対する剛性が高い構成とされている。各ブレース立壁34D、36Dの車幅方向外端は、頂部24A上のボルト38近傍に位置している。右側のブレース立壁34Dの車幅方向内端は、図1に示す点Xであり、カウルフロントパネル12の張出立壁12Dの前面に突き当たるように位置している。一方、左側のブレース立壁36Dの車幅方向内端は、図2に示す点Yであり、この部分で図3に示される如く張出立壁12Dの前側にスポット溶接によって固着されている。
以上により、車体前部構造10では、図2に示される如く、それぞれ車幅方向に長手とされたカウルフロントパネル12の前壁12Bと、各ブレース34、36とが、車幅方向に沿って直線的に配置されている。特に、車体前部構造10では、前壁12B(の上部)と各ブレース34、36とが平面視で左右のサスペンションタワー24間の空間内で直線的かつ連続的に配置されている。
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
上記構成の車体前部構造10が適用された車体Sを有する自動車を製造する際には、カウル部16の閉断面部16A、、フロントピラー18、エプロン部22、左右のサスペンションタワー24を含む溶接構造の溶接構造の車体Sに、各ブレース34、36がサブアセンブリ化されたカウルフロントパネル12を取り付ける前に、該車体SのエンジンルームE内にエンジン、変速装置、補器類、ブレーキブースタ、空調装置等を組み付け、また各種ホース類や配線類の配索を行う。
その後、カウルフロントパネル12を車体Sに対し位置決めし、各ボルト14をウェルドナット32に螺合すると共に、サスペンション部品40の取り付けに伴ってナット40をボルト38に螺合することで、カウルフロントパネル12が車体Sに固定され、オープンカウル部16Bを有するカウル部16が形成される。さらに、オープンカウル部16Bの下方に配置された部品の点検や交換などの際には、上記ボルト14、38、ナット32、40による締結を解除してカウルフロントパネル12を車体Sから取り外す。この状態で、各種点検、部品交換等を行い、その後は上記組付の場合と同様にカウルフロントパネル12を車体Sに固定する。
このようにカウルフロントパネル12が各種部品の取付後に車体Sに取り付けることができるため、各種部品の組付作業性が向上する。また、カウルフロントパネル12が車体Sに対し取り外し可能であるため、点検や修理の作業性が向上する。すなわち、図13に第1比較例として示されるカウルフロントパネル12が各種部品の組付前に溶接される構造では、該カウルフロントパネル12がエンジンルームEへのアクセスを阻害するが、本実施形態に係る車体前部構造10では、上記の通り組付、修理等の作業性が良好である。なお、第1比較例、及び以下に示す他の比較例では、説明の便宜上、車体支持構造の構成部品等と同様の機能を有する部品等には同一の符号を付している。
また、車体前部構造10では、上記の通り部材自体で高剛性とされた左右のブレース34、36がカウルフロントパネル12の前壁12Bに固着されて該前壁12Bとで左右のサスペンションタワー24間に直線的に配置されているため、換言すれば、車幅方向に略沿う直線的に配置された状態で固着された左右のブレース34、36とカウルフロントパネル12の車幅方向中間部とが左右のサスペンションタワー24の頂部24A間を架け渡すため、該左右のサスペンションタワー24の左右方向の剛性が向上する。
例えば、図14に示す第2比較例として示されるブレース34、36を備えない構成では、左右のサスペンションタワー24周辺の取付剛性が低下するが、本実施形態に係る車体前部構造10では、図7に示される如く第2比較例と比較して剛性値が2倍以上に向上した。また、本実施形態に係る車体前部構造10では、上記した溶接構造の第1比較例(カウルフロントパネル12、エプロン部22、サスペンションタワー24を互いに連結する補強部材100を有する構造)を基準として(剛性値を100%として)比較しても、剛性値が略13%向上している。この剛性値は、図15に第3比較例として示されるパフォーマンスロッド102にて左右のサスペンションタワー24間を架け渡した構造と同等とされている(図示省略)。
さらに、車体前部構造10では、カウルフロントパネル12自体の形状、該カウルフロントパネル12を車体Sに取り付ける作業が簡素化されている。すなわち、ブレース34、36を備えない第2比較例では、カウルフロントパネル12の前部を車体Sに固定するために、エプロン部22上に張り出すボルト座104を設ける必要があり、この座面の確保が困難であった。このため、カウルフロントパネル12自体の製品歩留まりが悪く、またボルト締結本数が多い(第2比較例では8本)ために、取り付け作業性に改善の余地がある。これに対して本実施形態に係る車体前部構造10では、カウルフロントパネル12の前側に配置され車体Sへの固定機能を有するブレース34、36を、カウルフロントパネル12に溶接にてサブアセンブリ化する構成であるため、カウルフロントパネル12の形状が簡単で歩留まりが良い。また、サブアセンブリ化されたカウルフロントパネル12とブレース34、36とで、ボルト締結部がバランス良く配置され、ボルト締結本数の削減(計6本)が図られた。しかも、ブレース34、36はサスペンション部品Pと共締めされるため、カウルフロントパネル12の固定のためにのみ必要なボルト締結の作業工数は半減(計4本)されている。
また同様に、車体前部構造10では、第3比較例の如くパフォーマンスロッド102を設ける構成と比較しても、ボルト締結工数が削減されることは言うまでもない。しかも、ブレース34、36は軽量(本実施形態では、それぞれ170g、220g)であり、パフォーマンスロッド102(第3比較例では1800g)を設ける構成と比較して大幅に軽量化が図られる。しかも、エンジンルームE内のスペースの有効活用の観点、エンジンフードHの後端又はカウル部16に衝突する歩行者保護等の観点から、パフォーマンスロッド102の設置可否や配置(エンジンフードとの距離)には制限があり、パフォーマンスロッド102を設けることで車体を大型化してしまう場合があるが、車体前部構造10では、図4乃至図6に示される如くブレース34、36は、サスペンションタワー24の頂部24Aの後端に連結され、また各上縁がカウルフロントパネル12の上縁よりも十分低位であるため、車体Sを大型化することもなく、所要の歩行者保護性能を確保することができる。
また、第3比較例のような配置の制約は、開示した従来技術(カウルフロントパネル自体でサスペンションタワー間を架け渡す技術)においても問題となる。また、この技術では、カウルフロントパネルの前壁が左右のサスペンションタワーを架け渡すため、オープンカウル部に侵入した雨水等の排出経路を確保するために特別の対策を必要とする(制約が生じる)。車体前部構造10では、オープンカウル部16Bに侵入した雨水は、上記の通りサスペンションタワーの後方においてカウルフロントパネル12の左右両端から排出され、特別な対策を必要としない。
以上説明したように、本実施形態に係る車体前部構造10では、互いに別部材であるカウルフロントパネル12と、カウルフロントパネル12と左右のサスペンションタワー24とを連結するブレース34、36とをサブアセンブリ化しているため、換言すれば、カウルフロントパネル12とブレース34、36とで機能を分担しているため、第1乃至第3比較例又はカウルフロントパネル12が左右のサスペンションタワーを直接的に架け渡す構成と比較して、各種の制約が少なく設計の自由度を高めることができる。しかも、カウルフロントパネル12とブレース34、36とがサブアセンブリ化されているため、組付時や取り外し時の作業性が良好である。そして、それぞれ車幅方向に長手とされた一対のブレース34、36が車幅方向に長手の前壁12Bと対応するサスペンションタワー24とを略一直線上で連結するため、サスペンションタワー24の左右方向の剛性が大幅に向上した。
このように、本実施の形態に係る車体前部構造10では、設計上の制約の少ないカウルフロントパネル12を用いて左右のサスペンションタワー24の剛性を高めることができる。より具体的には車体前部構造10では、エンジンルームE内への各種部品の組付性を向上する機能と左右のサスペンションタワー24の剛性を向上する機能とを両立しながら、カウルフロントパネル12自体の形状自由度(排水性や歩行者保護性)や取付性が確保される。
次に本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付してその説明・図示を省略する場合がある。
図8には、本発明の第2の実施形態に係る車体前部構造50を構成する左側のブレース52が斜め後方から見た斜視図にて示されている。この図に示される如く、車体前部構造50は、サスペンションタワー24の頂部24Aにおけるボルト38を貫通させる貫通孔の配置が車体前部構造10とは異なる。このため、頂部24Aに1点で共締めされるブレース52は、ブレース36とは形状が異なっており、ブレース36よりも車幅方向外側においてにてサスペンションタワー24に固定されている。図示は省略するが、右側のサスペンションタワー24も左側と同様に貫通孔の配置が車体前部構造10とは異なっており、右側のブレースの形状もこれに対応して異なっている。車体前部構造50の他の構成は、車体前部構造10と同様である。したがって、第2の実施形態に係る車体前部構造50によっても第1の実施形態に係る車体前部構造10と同様の効果を得ることができる。なお、52A、52B、52C、52Dは、それぞれブレース52の固着部、フランジ部、ボルト貫通孔、ブレース立壁である。
図9には、本発明の第3の実施形態に係る車体前部構造55を構成する左側のブレース56が斜め後方から見た斜視図にて示されている。この図に示される如く、車体前部構造55は、サスペンションタワー24の頂部24Aにおけるボルト38を貫通させる貫通孔の配置が車体前部構造50と同じに構成されている。そして、ブレース56は、サスペンションタワー24の頂部24Aに2点で共締めされる(2つのボルト貫通孔56Cを有する)点で、1点で共締めされるブレース36、52とは異なる。車体前部構造55の他の構成は、車体前部構造10と同様である。したがって、第3の実施形態に係る車体前部構造55によっても第1の実施形態に係る車体前部構造10と同様の効果を得ることができる。なお、共締めの点数が増加しても自動車全体としてのボルト締め工数は増加することはない。また、図示しない右側のブレースを2点で共締めする構成としても良い。なお、56A、56B、56Dは、それぞれブレース56の固着部、フランジ部、ブレース立壁である。
図10には、本発明の第4の実施形態に係る車体前部構造60を構成する左側のブレース62が斜め後方から見た斜視図にて示されている。この図に示される如く、車体前部構造60は、サスペンションタワー24の頂部24Aにおけるボルト38を貫通させる貫通孔の配置が車体前部構造50と同じに構成されている。そして、ブレース62は、サスペンションタワー24の頂部24Aに1点で共締めされると共にエプロン部22にも図示しないボルト及びウェルドナットにて締結される点で、サスペンションタワー24にのみ締結されるブレース36、52、56とは異なる。すなわち、ブレース62のフランジ部62Bは、車幅方向外端がエプロン部22上に載置されるようになっており、該部分にぼろと貫通孔62Cが追加されている。車体前部構造60の他の構成は、車体前部構造10と同様である。したがって、第4の実施形態に係る車体前部構造60によっても第1の実施形態に係る車体前部構造10と同様の効果を得ることができる。また、図示しない右側のブレースを1点で共締めされると共にエプロン部22にも図示しないボルト及びウェルドナットにて締結される構成としても良い。なお、62A、62Dは、それぞれブレース62の固着部、ブレース立壁である。
図11には、本発明の第5の実施形態に係る車体前部構造65を構成する左側のブレース66が斜め後方から見た斜視図にて示されている。この図に示される如く、車体前部構造65は、サスペンションタワー24の頂部24Aにおけるボルト38を貫通させる貫通孔の配置が車体前部構造50と同じに構成されている。そして、ブレース66は、サスペンションタワー24の頂部24Aに3点で共締めされる点で、ブレース36、52、56、62とは異なる。ブレース66は、そのフランジ部66Bにおける車幅方向外端がサスペンションタワー24の頂部24Aを覆う大型ブレースとされており、ブレース立壁66Dは車幅方向内端が外端よりも後方に位置して張出立壁12Dに固着されている。また、図示しない右側のブレースは、ブレース66と略左右対称に形成されている。このため、車体前部構造65では、左右のサスペンションタワー24間で直線的に配置される左右のブレース立壁66Bと張出立壁12Dとによって、サスペンションタワー24の左右方向の剛性が一層向上する。車体前部構造65の他の構成は、車体前部構造10と同様である。したがって、第5の実施形態に係る車体前部構造65によっても第1の実施形態に係る車体前部構造10と基本的に同様の効果を得ることができるが、ブレース66が大型であることによって車体前部構造10と比較すると制約が多くなる。なお、62A、62Cは、それぞれブレース62の固着部、ボルト貫通孔である。
図12には、本発明の第6及び図7の実施形態に係る車体前部構造70、75が斜め下方から見た斜視図にて示されている。この第6及び第7の実施形態では、ブレースの車幅方向の寸法を基本寸法に対し拡大するとこで、サスペンションタワー24の左右方向の剛性を一層向上している。具体的には、図12(A)には基本構成として上記第3の実施形態に係る車体前部構造55が示されている。この基本構成と比較して、図12(B)に示す車体前部構造70のブレース72は、その固着部72A、フランジ部72Bの寸法がブレース56の固着部56A、フランジ部56Bと同等とされているが、ブレース立壁72Dがブレース56のブレース立壁56Dよりも車幅方向に長い構成とされている。また、ブレース立壁72Dは、車幅方向内端でブレース立壁56Dよりも高くなる構成とされている。これにより、車体前部構造70では、車体前部構造55よりもサスペンションタワー24の左右方向の剛性が高い。
さらに、図12(C)に示す車体前部構造75のブレース76は、その固着部76A、フランジ部76B、及びブレース立壁76Dがそれぞれブレース72の固着部72A、フランジ部72B、及びブレース立壁72Dよりも車幅方向に長い構成とされている。これにより、車体前部構造75では、車体前部構造70よりもサスペンションタワー24の左右方向の剛性が高い。なお、72Cはブレース72のボルト貫通孔を示し、76Cはブレース76のボルト貫通孔を示す。
以上説明したように、本発明では、補強部材としてのブレースの寸法によってサスペンションタワー24の剛性を調整して設定することが可能である。また、剛性向上に伴う重量増加がわずかである。第6及び第7の実施形態に係る車体前部構造70、75は、ブレースの寸法を除き車体前部構造55と同様に構成されており、車体前部構造55すなわち車体前部構造10と同様の効果を得ることができる。
本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造の斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造の平面図である。 本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造の正面図である。 図3の4−4線に沿う断面図である。 図3の5−5線に沿う断面図である。 図3の6−6線に沿う断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る車体前部構造と比較例とのサスペンションタワーの剛性を比較するグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る車体前部構造の一部を示す斜視図である。 本発明の第3の実施形態に係る車体前部構造の一部を示す斜視図である。 本発明の第4の実施形態に係る車体前部構造の一部を示す斜視図である。 本発明の第5の実施形態に係る車体前部構造の一部を示す斜視図である。 本発明の車体前部構造を適用してサスペンションタワーの剛性を向上する構成を示す図であって、(A)は基本構成を示す斜視図、(B)は第1の剛性向上構成である第6の実施形態に係る車体前部構造を示す斜視図、(C)は第2の剛性向上構成である第7の実施形態に係る車体前部構造を示す斜視図である。 本発明の実施形態の第1比較例に係る車体前部構造を示す平面図である。 本発明の実施形態の第2比較例に係る車体前部構造を示す平面図である。 本発明の実施形態の第3比較例に係る車体前部構造を示す平面図である。
符号の説明
10 車体前部構造
12 カウルフロントパネル
12B 前壁(立壁)
14 ボルト(締結手段)
16 カウル部
24 サスペンションタワー
24A 頂部(締結手段)
32 ウェルドナット
34 ブレース(補強部材)
36 ブレース(補強部材)
38 ボルト(締結手段)
40 ナット(締結手段)
50・55・60・65・70・75 車体前部構造
52・56・62・66・72・76 ブレース
S 車体
P サスペンション部品

Claims (5)

  1. 車幅方向に長手とされると共に該車幅方向に沿う立壁を有し、車体に対し取り外し可能に固定されたカウルパネルと、
    それぞれ車幅方向に長手とされ、車幅方向外端がサスペンションタワーに固定されると共に車幅方向内端が前記立壁に固定された左右一対の補強部材と、
    を備えた車体前部構造。
  2. 前記一対の補強部材は、それぞれ前記カウルパネルが前記車体に固定される前に該カウルパネルに固着されており、前記サスペンションタワーの頂部に取り外し可能に固定される請求項1記載の車体前部構造。
  3. 車幅方向に長手とされ、車体に対し取り外し可能に固定されるカウルパネルと、
    それぞれ前記カウルパネルが前記車体に固定される前に該カウルパネルに固定されており、左右の相異なるサスペンションタワーに取り外し可能に固定される左右一対の補強部材と、
    を備えた車体前部構造。
  4. 前記カウルパネル及び補強部材は、それぞれ締結手段によって車体又はサスペンションタワーに取り外し可能に固定される請求項2又は請求項3記載の車体前部構造。
  5. 前記補強部材は、前記サスペンションタワーに固定されるサスペンション部品と共通の締結手段によって該サスペンションタワーの頂部に固定される請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の車体前部構造。
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