JP2006170444A - シリンダ・ピストン装置及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

【課題】比較的低コストで防食特性を向上させ，高い生産性をもって製造可能なシリンダ・ピストン装置を提案する。
【解決手段】ガススプリング等のシリンダ・ピストン装置（１３）は，外面に表面保護層を具えるシリンダと，シリンダ内で軸線方向に変位可能としたピストンとを具え，ピストンロッド（８）がシリンダ（１）のピストンロッド出口側端面（３’）で端面開口部を貫通してシリンダ（１）から突出する。表面保護層の防食性及び耐久性を向上するため，表面保護層として粉末コーティング（７）層を設けるも，ピストンロッド出口端面（３’）側のシリンダ（１）の端部領域（６）では粉末コーティング処理を施さない。
【選択図】図４

Description

本発明は，ガススプリング等のシリンダ・ピストン装置，特に，外面に表面保護層を設けたシリンダと，シリンダ内で軸線方向に変位可能とされたピストンとを具え，そのピストンロッドがシリンダのピストンロッド出口端面で端面開口部をシール状態で貫通してシリンダ外に突出するシリンダ・ピストン装置に関するものである。本発明は，さらに，そのようなシリンダ・ピストン装置の製造方法に関するものである。

上述した構成を有するシリンダ・ピストン装置は本出願人のウェブサイト http://www.stabilus.com （非特許文献１）に開示されており，既知である。このようなシリンダ・ピストン装置において，シリンダにプラスチック等から構成した収縮シースを表面保護層として設けることがある。収縮シースは，所要に応じて，収縮シースでカバーされるシリンダの表面に対して接着剤を用いて接着することが可能である。収縮シースは，シリンダにおけるピストンロッド出口側端面の一部を包囲する構成とすることができる。収縮シースを具える表面保護層の場合，腐食作用の不均一性を防止するにはコスト増が不可避的である。
本出願人のウェブサイト http://www.stabilus.com

本発明の課題は，比較的低コストで防食特性を向上させ，高い生産性をもって容易に製造可能なシリンダ・ピストン装置を提案することにある。

この課題を解決するため，本発明に係るシリンダ・ピストン装置は，シリンダの外面に設ける表面保護層を，ピストンロッド出口の端面側に位置するシリンダの端部領域を除外して施してなることを特徴とするものである。

本発明により表面保護層を局部的に施したシリンダは，表面保護層が施されなかった端部領域を有するため，その端部領域について更に機械加工を行うことができ，また，端部領域において表面保護層が損傷する恐れがない利点を有する。シリンダにおけるピストンロッド出口側端面の閉鎖及び密封は，シリンダ・ピストン装置の高い信頼度を確保しつつ低コストで実行可能である。

シリンダの外面に施す表面保護層は，粉末コーティング層，又はスプレー塗膜層，又は浸漬塗膜層を具えることができる。

特に粉末塗膜層を具える粉末コーティングにより，表面保護層は極めて優れた耐食性を恒久的に維持する。本発明により達成される表面保護層の優れた耐食性に加えて，機械的影響，特に衝撃力，打撃力，摩擦力等に起因してシリンダ・ピストン装置が損傷をこうむるリスクが大幅に低下する。更に，本発明に係るシリンダ・ピストン装置は，オイル，脂肪及び広範な化学物質に対して特に高い抵抗性を有する。これにより，シリンダ・ピストン装置全体として表面保護層の耐久性を大幅に向上することが可能である。

本発明は，ピストンの一側にピストンロッドを有するシリンダ・ピストン装置のみならず，両側にピストンロッドを有するシリンダ・ピストン装置にも適用可能である。後者の場合，シリンダの両端面はピストンロッド出口側端面として構成され，粉末コーティングを施さない端部領域が両側に配置されることとなる。

本発明の有利な実施形態において、シリンダは外面全体にベースコーティング層を具え，そのベースコーティング上に表面保護層，好適には粉末コーティング層を配置する。ベースコーティング層は表面保護層のための付着補助材及び／又はシリンダの防食材として機能する。これにより表面保護層，特に粉末コーティングの耐久性が更に改善され，表面保護層が施されないシリンダの端部領域における腐食を低減することも可能である。ベースコーティング層は，シリンダの外面以外にも，内面の少なくとも一部に施すことも可能である。

本発明の実施形態において，粉末コーティング層等の表面保護層が施されないシリンダの端部領域を防錆油で浸漬状態に維持するのが有利であり，これにとりシリンダ・ピストン装置の耐食性を付加的かつ容易に高めることが可能である。

本発明の有利な実施形態においては，表面保護層が施されないシリンダの端部領域をカバーする保護キャップを設ける。この場合には，端部領域を機械的損傷や腐食等の環境的影響に対して確実に保護することが可能である。

保護キャップをシリンダ上の確実に保持するために，保護キャップを接着等によりシリンダに結合することが考えられる。しかし，本発明の有利な一実施形態においては，保護キャップをゴム状弾性材料から構成することにより，保護キャップをシリンダ上に極めて容易に固定することができる。更に，このような保護キャップによってシリンダの確実なシールも達成される。

本発明の有利な実施形態において，基本的に例えば金属材料で構成することのできる保護キャップをプラスチック製とすれば，更なるコストダウンを達成することが可能である。

本発明の他の有利な実施形態において，シリンダは，半径方向内向きのカラーをピストンロッド出口側端面に具える。これによりシリンダの機械的に安定した恒久的結合が実現する。同時に，カラーによりピストンロッド出口のための端面開口部を形成することが可能である。

本発明の有利な実施形態において，特に，シリンダ内に配置される部品を保持するため，粉末コーティング層等の表面保護層が施されないシリンダの端部領域に半径方向内向きの溝，すなわちシリンダの軸線方向に向けて凹んだ溝を設ける。表面保護層が施されない端部領域に溝を配置することにより，溝加工による表面保護層，特に粉末コーティング層の損傷を簡単かつ確実に防止することが可能である。溝はシリンダの全周に亘って形成することができるが，例えば間隙を介在させて並列した短い溝部分をもって構成することも可能である。

本発明の有利な一実施形態において，カラー及び／又は溝によりシリンダの端面開口部を密封するためのピストンロッドシール及び／又はピストンロッドガイドを軸線方向に支持する。この場合，シリンダ・ピストン装置の高い部品集約度，確実なシール機能及び優れた機械的安定性を実現することが可能である。

本発明に係るシリンダ・ピストン装置を高い生産性をもって製造するため，本発明に係る製造方法は，開放端面を有するシリンダを形成し，該シリンダに，開放端面側に位置する端部領域を除外して，コーティング法，好適には粉末コーティング法で表面保護層を施すことを特徴とする。表面保護層は，スプレー塗膜層又は浸漬塗膜層で構成することも可能である。

本発明による製造方法は，高いプロセス信頼性を有するものであり，特に，上述した本発明に係るシリンダ・ピストン装置を製造するのに適している。湿式塗膜コーティング法に比べて，粉末コーティング法はプロセス信頼性が高く，コスト面で有利であり，プロセス時間が短く，消費エネルギが少ない。本発明による方法は，機械化して，又は少なくとも十分に自動化して実施するのが特に有利である。本発明の方法により製造されたシリンダ・ピストン装置は，長期に亘って優れた防食性能を維持する。粉末コーティング層等の表面保護層をシリンダの開放端面領域でシリンダに施すことにより，ガススプリングとして構成することのできるシリンダ・ピストン装置におけるシリンダ内に配置すべき部品及びガス等の圧力流体を，通常は粉末塗膜層等に対する熱処理工程を含むコーティング法，例えば粉末コーティング法を実行した後にシリンダ内に挿入又は充填することができ，過度の温度負荷による部品やシリンダ全体の損傷を防止できる点で有利である。粉末コーティング法は，通常は静電表面コーティング法である。すなわち，粉末を荷電し，荷電粒子を接地されたシリンダ表面に搬送する。粉末粒子が表面に沈積し，電気的に表面に付着する。粉末層が層厚を電気的に自己制御しながら形成され，熱処理される。粉末は，例えば，スプレーガンを用いて，高圧のコロナ法又は粉末粒子の摩擦を利用するトリボカイネティック法によりの荷電する。

基本的には，コーティング法によりコーティング層，例えば粉末コーティング層を，シリンダの端部領域が除外されるようシリンダ表面に正確に形成することが考えられる。しかし，本発明の有利な実施形態において，シリンダの開放端面側の端部領域を，コーティング法による表面保護層の形成段階でマスクすることにより，コーティング法を著しく容易に適用することが可能である。

本発明の実施形態において，コーティング法，特に粉末コーティング法の実行前に，シリンダの外面全体にベースコーティングを施すのが有利である。

本発明の有利な実施形態において，コーティング法の実行後に，ピストン及びピストンロッドをシリンダ内に導入し，シリンダに圧力流体を充填する。これにより，コーティング工程の間に生じ得るピストン及び／又はピストンロッドの損傷を防止することが可能である。同様に，圧力流体，特に圧力流体として使用されるガスの過熱等に起因するシリンダの損傷を防止することができ，更にはピストンロッドシール又はピストンロッドガイド等，シリンダ内に配置した部品の損傷も防止することが可能である。

本発明の有利な実施形態においては，次の工程として，シリンダに開放端面で半径方向内向きのカラーを形成し，及び／又はコーティング法による表面保護層が施されないシリンダの端部領域に半径方向内向きの溝を形成する。これにより，保持部材及び／又は支持部材を，簡単に，低コストで，しかも高いプロセス信頼性をもって形成することが可能である。

本発明の有利な実施形態において，最終工程として，コーティング法による表面保護層が施されないシリンダの端部領域に防錆油を塗布すると共に，該端部領域に保護キャップを装着する。これにより，製造すべきシリンダ・ピストン装置の耐食性を簡単に，低コストで，しかも容易に自動化可能なプロセスで一層向上させることが可能である。

以下，本発明を図示の好適な実施形態について更に具体的に説明する。図中，機能的に対応する構成要素は同一の参照数字を付して表す。

図１は，本発明に係るシリンダ・ピストン装置のための金属製シリンダ１を示す側面図である。シリンダ１は円筒形状に形成され，閉鎖端面２及び開放端面３を有する。シリンダ１は閉鎖端面２でボルト４を具える。このボルト４は，シリンダ・ピストン装置を他の部材にねじ固定するものである。

本発明に係るシリンダ・ピストン装置を製造するために，先ずシリンダ１を洗浄する。防食層としてのベースコーティング層をシリンダ１の外面５全体に塗布し，乾燥して固着させる。

図２に示したように，開放端面３側に位置するシリンダ１の端部領域６をマスクする。粉末コーティング層７を含む表面保護層を粉末コーティング法によりシリンダ１に被着し，熱処理を行う。前記端部領域６はマスクされているために粉末コーティング法の適用が除外され，したがって粉末コーティング層は施されない。その結果，シリンダ１の外面は，開放端面３側の端部領域６におけるベースコーティング層と，シリンダ１の残余領域における粉末コーティング層７とで構成される。

ピストン，ピストンロッド８（図３参照），ピストンロッドガイド及びピストンロッドシールを含む構成部品をシリンダ１内に挿入する。更に，圧力流体，好適にはガスを一次圧力下でシリンダ１に充填する。構成部品の挿入及び圧力流体の充填は，安全に行われる。例えば，シリンダ１に対する粉末コーティング法の枠内で生じるような熱衝撃の影響が及ぼされないからである。すなわち，シリンダ１の破壊につながりかねない構成部品の損傷や，圧力流体の不所望の膨張の懸念を一挙に払拭することが可能である。

粉末コーティング法の適用除外とされたシリンダの端部領域６に，シリンダの中心軸線９に向けて半径方向内向きに凹んだ周設溝１０を形成する。溝１０は，シリンダ１内に配置したピストンロッドガイド及び／又はピストンロッドシールを軸線方向で支持するものである。

更に，シリンダ１の開放端面３（図２参照）に半径方向内向きのカラーを形成する。カラー１１は，一方ではシリンダ１を端部側で遮断し，ピストンロッドガイド及び／又はピストンロッドシールを軸線方向に支持する。他方において，シリンダの軸線９に向けたカラー１１の縁部がシリンダ１の端面開口部を形成する。この端面開口部を通じてピストンロッド８はシリンダ１の内部から引き出される。本来的に開放した端面は，ピストンロッド出口側端面３’となる。

粉末コーティング法の適用除外とされたシリンダの端部領域６は粉末コーティングが施されないため，溝の形成段階やガタツキの発生時においても粉末コーティング層の剥離や捲れの恐れはない。

最後に，粉末コーティング法の適用除外とされたシリンダ１の端部領域６に防錆油を塗布し，図４に示すように，ゴム状弾性プラスチックで構成された保護キャップ１２を装着する。保護キャップ１２は，ベースコーティング層を機械的磨耗から保護する。以上の要領でシリンダ・ピストン装置１３を完全に製造することが可能である。

本発明に係るシリンダ・ピストン装置のシリンダを示す側面図である。 図１のシリンダに粉末コーティングを施した状態を示す側面図である。 図２のシリンダにピストンロッドを組み込んだ状態を示す側面図である。 図３のシリンダに保護キャップを装着した状態を示す側面図である。

符号の説明

１ シリンダ
２ 端面
３，３’ 端面
４ ボルト
５ 表面
６ 端部領域
７ 粉末コーティング層
８ ピストンロッド
９ 中心軸線
１０ 溝
１１ カラー
１２ 保護キャップ
１３ シリンダ・ピストン装置

Claims (16)

1. ガススプリング等のシリンダ・ピストン装置であって，特に，外面に表面保護層を設けたシリンダと，シリンダ内で軸線方向に変位可能とされたピストンとを具え，そのピストンロッドがシリンダのピストンロッド出口端面で端面開口部をシール状態で貫通してシリンダ外に突出するシリンダ・ピストン装置において，前記表面保護層を，ピストンロッド出口端面（３'）側に位置するシリンダ（１）の端部領域（６）を除外して施してなることを特徴とするシリンダ・ピストン装置。
2. 請求項１記載の装置において，前記表面保護層が，粉末コーティング層（７），スプレー塗膜層又は浸漬塗膜層を具えることを特徴とするシリンダ・ピストン装置。
3. 請求項１又は２に記載の装置において，前記シリンダ（１）が外面（５）全体にベースコーティング層を具え，該ベースコーティング層上に前記表面保護層，好適には粉末コーティング層（７）を配置したことを特徴とするシリンダ・ピストン装置。
4. 請求項１〜３の何れか一項に記載の装置において，前記表面保護層が施されていないシリンダ（１）の端部領域（６）を，防錆油で浸漬状態に維持することを特徴とするシリンダ・ピストン装置。
5. 請求項１〜４の何れか一項に記載の装置において，前記表面保護層が施されていないシリンダ（１）の端部領域に保護キャップ（１２）を配置したことを特徴とするシリンダ・ピストン装置。
6. 請求項５記載の装置において，前記保護キャップ（１２）をゴム状弾性材料で構成したことを特徴とするシリンダ・ピストン装置。
7. 請求項５又は６に記載の装置において，前記保護キャップ（１２）をプラスチック材料で構成したことを特徴とするシリンダ・ピストン装置。
8. 請求項１〜７の何れか一項に記載の装置において，前記シリンダ（１）のピストンロッド出口側端面（３’）に半径方向内向きのカラー（１１）を配置したことを特徴とするシリンダ・ピストン装置。
9. 請求項１〜８の何れか一項に記載の装置において，粉末コーティングが施されていない前記シリンダ（１）の端部領域（６）に，半径方向内向きの溝（１０）を設けたことを特徴とするシリンダ・ピストン装置。
10. 請求項８及び／又は９に記載の装置において，前記カラー（１１）及び／又は溝（１０）により，シリンダ（１）の端面開口部を密封するためのピストンロッドシール部材及び／又はピストンロッドガイドを軸線方向に支持することを特徴とするシリンダ・ピストン装置。
11. シリンダと，シリンダ内で軸線方向に変位可能としたピストンとを具え，そのピストンロッドがシリンダのピストンロッド出口側端面で端面開口部をシール状態で貫通してシリンダ外に突出するシリンダ・ピストン装置の製造方法であって，前記シリンダ（１）を，開放端面（３）を有する形状に形成し，該シリンダ（１）に，開放端面（３）側に位置する端部領域（６）を除外して，コーティング法，好適には粉末コーティング法で表面保護層を施すことを特徴とする製造方法。
12. 請求項１１記載の製造方法において，シリンダ（１）の開放端面（３）側に位置する前記端部領域（６）をコーティング法による表面保護層の形成段階でマスクすることを特徴とする製造方法。
13. 請求項１１又は１２に記載の製造方法において，コーティング法による表面保護層の形成前に，シリンダ（１）の外面（５）全体にベースコーティング層を施すことを特徴とする製造方法。
14. 請求項１１〜１３の何れか一項に記載の製造方法において，コーティング法による表面保護層の形成後に，ピストン及びピストンロッド（８）をシリンダ（１）内に組み込み，シリンダ（１）に圧力流体を充填することを特徴とする製造方法。
15. 請求項１４記載の製造方法において，次の工程として，シリンダ（１）に開放端面（３）で半径方向内向きのカラーを形成し，及び／又は半径方向の内向きの溝（１０）をコーティング法による表面保護層が施されないシリンダ（１）の端部領域に形成することを特徴とする製造方法。
16. 請求項１１〜１５の何れか一項に記載の製造方法において，最終工程として，コーティング法による表面保護層が施されないシリンダ（１）の端部領域（６）に防錆油を塗布すると共に，該端部領域（６）に保護キャップ（１２）を装着することを特徴とする製造方法。

Images