JP2006169398A - 摺動特性に優れた透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物およびそれを用いた成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 摺動性、帯電防止性、透明性に優れ、かつ不純物の少ないゴム強化スチレン系樹脂をベースとする透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物の提供。
【解決手段】ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル、シアン化ビニルおよび(メタ)アクリル酸エステルの中から選ばれた1種以上を重合したグラフト重合体(a−1)または該グラフト重合体(a−1)と芳香族ビニル、シアン化ビニルおよび(メタ)アクリル酸エステルの中から選ばれた1種以上を重合した(共)重合体(a−2)からなるゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対し、ポリエーテルエステルアミド(B)3〜50重量部および摺動剤(C)0.1〜30重量部を配合してなる樹脂組成物であって、周期律表第1属及び/又は第2属の金属含有量が250ppm以下であり、樹脂成形品(3mm厚み)とした時の全光線透過率が50%以上である透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物および成形品。
【選択図】なし
【解決手段】ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル、シアン化ビニルおよび(メタ)アクリル酸エステルの中から選ばれた1種以上を重合したグラフト重合体(a−1)または該グラフト重合体(a−1)と芳香族ビニル、シアン化ビニルおよび(メタ)アクリル酸エステルの中から選ばれた1種以上を重合した(共)重合体(a−2)からなるゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対し、ポリエーテルエステルアミド(B)3〜50重量部および摺動剤(C)0.1〜30重量部を配合してなる樹脂組成物であって、周期律表第1属及び/又は第2属の金属含有量が250ppm以下であり、樹脂成形品(3mm厚み)とした時の全光線透過率が50%以上である透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物および成形品。
【選択図】なし
Description
本発明は、摺動性、帯電防止性、透明性に優れ、かつ不純物の少ない透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物およびそれを用いた成形品に関する。
HIPS、ABSなどの名称にて製造・販売されているゴム強化スチレン系樹脂は、外観、機械的特性ならびに成形加工性に優れ、車両部品、電気製品など種々の分野にて利用されている。
しかしながら、このようなゴム強化スチレン系樹脂は一般的に不透明であるが、製品によってはPMMAやポリカーボネート樹脂のような透明性が要求される場合がある。このような要求に対しては、例えば特開平4−180907号公報(特許文献1)に記載されているように、樹脂を構成する各構成成分の組成割合を調整することによりゴム強化スチレン系樹脂においても透明性を得ることが知られている。
しかしながら、このようなゴム強化スチレン系樹脂は一般的に不透明であるが、製品によってはPMMAやポリカーボネート樹脂のような透明性が要求される場合がある。このような要求に対しては、例えば特開平4−180907号公報(特許文献1)に記載されているように、樹脂を構成する各構成成分の組成割合を調整することによりゴム強化スチレン系樹脂においても透明性を得ることが知られている。
更なる市場ニーズとして、ゲーム機やパチンコ部品、OA機器、家電製品、電気・電子分野用途においてはこのような透明性のみならず、帯電防止性が必要とされる場合がある。しかしながら、ゴム強化スチレン系樹脂は表面固有抵抗値が高く容易に帯電するため、埃などが付着し製品の外観を損ねたり、電気・電子分野製品では静電気による障害を招くなどの欠点を有している。そこで、透明性を保持したまま帯電防止性を付与した材料が望まれており、特開平8−120147号公報(特許文献2)では、透明性と帯電防止性を付与した材料が提案されているが、このような手法では十分な透明性を併せ持った材料が得られないという欠点がある。
さらに電気・電子分野における用途においては、部品との摩擦あるいは樹脂同士の摩擦により樹脂表面が削れ、その樹脂粉が、電気・電子製品の障害を誘発するなどの問題があるため、透明性を保持したまま摺動性を付与した材料が求められている。
その中でも特に、半導体分野における用途においては、樹脂に含まれる金属イオンなどの不純物が汚染源となり、半導体製造プロセスにおいて悪影響を及ぼすことが懸念されるため、わずかな不純物も含まない材料が求められている。
その中でも特に、半導体分野における用途においては、樹脂に含まれる金属イオンなどの不純物が汚染源となり、半導体製造プロセスにおいて悪影響を及ぼすことが懸念されるため、わずかな不純物も含まない材料が求められている。
特開平2003−20378号公報(特許文献3)では透明性と摺動性を付与した材料が提案されているが、不純物が多いため半導体分野での使用は困難である。
さらに特開2003−147152号公報(特許文献4)では特定のポリエーテルエステルアミドを使用してなる透明帯電防止性樹脂組成物が記載されているが、摺動性が十分ではなく、摺動性が要求される分野での使用は困難である。
また、シリコーンやフッ素樹脂などを添加することによって、摺動性を付与させることが一般的に知られているが、これらの添加により透明性を損なう上に、これらが不純物となり、同様に半導体製造プロセスにおいて悪影響を及ぼすことが懸念されるという問題が発生する。
特開平4−180907号公報
特開平8−120147号公報
特開2003−20378号公報
特開2003−147152号公報
さらに特開2003−147152号公報(特許文献4)では特定のポリエーテルエステルアミドを使用してなる透明帯電防止性樹脂組成物が記載されているが、摺動性が十分ではなく、摺動性が要求される分野での使用は困難である。
また、シリコーンやフッ素樹脂などを添加することによって、摺動性を付与させることが一般的に知られているが、これらの添加により透明性を損なう上に、これらが不純物となり、同様に半導体製造プロセスにおいて悪影響を及ぼすことが懸念されるという問題が発生する。
本発明は、摺動性、帯電防止性、透明性に優れ、かつ不純物の少ないゴム強化スチレン系樹脂をベースとする透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物およびそれを用いた成形品を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、かかる課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定のゴム強化スチレン系樹脂と、特定の摺動剤を混ぜ合わせることにより、透明性を保持しながら、摺動性、帯電防止性に優れ、かつ不純物の少ない透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に達したものである。
本発明の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物は、透明性、帯電防止性、摺動性に優れ、かつ不純物の少ないものであり、摺動性が要求され、かつ透明性と帯電防止性さらには低不純物の必要とされる用途に好適に使用できるという効果を奏する。
すなわち、本発明は、
(1)ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の中から選ばれた1種以上の単量体を重合してなるグラフト重合体(a−1)または該グラフト重合体(a−1)と芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の中から選ばれた1種以上の単量体を重合してなる(共)重合体(a−2)からなるゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対し、ポリエーテルエステルアミド(B)3〜50重量部および摺動剤(C)0.1〜30重量部を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、かつ周期律表第1属および/または第2属の金属含有量が250ppm以下であり、樹脂成形品(3mm厚み)とした時の全光線透過率が50%以上である摺動特性に優れた透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物、
(2)摺動剤(C)が官能基変性スチレン系樹脂である(1)記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物、
(3)摺動剤(C)がα,β−不飽和カルボン酸変性スチレン系樹脂である(1)又は(2)記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物、
(4)グラフト重合体(a−1)を構成するゴム状重合体の重量平均粒子径が0.05〜2.0μ、ゴム強化スチレン系樹脂(A)のアセトン可溶分の固有粘度が0.2〜0.8dl/gである(1)〜(3)何れかに記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物、
(5)ポリエーテルエステルアミド(B)の屈折率が1.40〜1.60である(1)〜(4)何れかに記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物、
(6)少なくとも屈折率の異なる(屈折率差が0.01以上)2種以上のポリエーテルエステルアミド(B)からなる(1)〜(5)何れかに記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物、
(7)(1)〜(6)記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を提供するものである。
(1)ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の中から選ばれた1種以上の単量体を重合してなるグラフト重合体(a−1)または該グラフト重合体(a−1)と芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の中から選ばれた1種以上の単量体を重合してなる(共)重合体(a−2)からなるゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対し、ポリエーテルエステルアミド(B)3〜50重量部および摺動剤(C)0.1〜30重量部を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、かつ周期律表第1属および/または第2属の金属含有量が250ppm以下であり、樹脂成形品(3mm厚み)とした時の全光線透過率が50%以上である摺動特性に優れた透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物、
(2)摺動剤(C)が官能基変性スチレン系樹脂である(1)記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物、
(3)摺動剤(C)がα,β−不飽和カルボン酸変性スチレン系樹脂である(1)又は(2)記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物、
(4)グラフト重合体(a−1)を構成するゴム状重合体の重量平均粒子径が0.05〜2.0μ、ゴム強化スチレン系樹脂(A)のアセトン可溶分の固有粘度が0.2〜0.8dl/gである(1)〜(3)何れかに記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物、
(5)ポリエーテルエステルアミド(B)の屈折率が1.40〜1.60である(1)〜(4)何れかに記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物、
(6)少なくとも屈折率の異なる(屈折率差が0.01以上)2種以上のポリエーテルエステルアミド(B)からなる(1)〜(5)何れかに記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物、
(7)(1)〜(6)記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を提供するものである。
以下に、本発明の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物につき詳細に説明する。
本発明において使用されるゴム強化スチレン系樹脂(A)とは、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の中から選ばれた1種以上の単量体を重合してなるグラフト重合体(a−1)または該グラフト重合体(a−1)と芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の中から選ばれた1種以上の単量体を重合してなる(共)重合体(a−2)からなるゴム強化スチレン系樹脂である。
本発明において使用されるゴム強化スチレン系樹脂(A)とは、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の中から選ばれた1種以上の単量体を重合してなるグラフト重合体(a−1)または該グラフト重合体(a−1)と芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の中から選ばれた1種以上の単量体を重合してなる(共)重合体(a−2)からなるゴム強化スチレン系樹脂である。
ゴム強化スチレン系樹脂(A)におけるグラフト重合体(a−1)を構成するゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、イソプレン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレン共重合体、ポリクロロプレンなどのジエン系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン(エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等)共重合体などのエチレン−プロピレン系ゴム、ポリブチルアクリレートなどのアクリル系ゴムなどが挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。
グラフト重合体(a−1)または(共)重合体(a−2)を構成する芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等が挙げられ、一種または二種以上用いることができる。シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、一種または二種以上用いることができる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等が挙げられ、一種または二種以上用いることができる。
また、本発明においては、上記芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体と共に必要に応じて他の共重合可能な単量体、例えばN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸等を使用することも可能である。
また、本発明においては、上記芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体と共に必要に応じて他の共重合可能な単量体、例えばN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸等を使用することも可能である。
本発明で用いるグラフト重合体(a−1)を構成するゴム状重合体の重量平均粒子径については0.05〜2.0μ、またゴム強化スチレン系樹脂(A)のアセトン可溶分の固有粘度(30℃、ジメチルホルムアミド溶媒)は0.2〜0.8dl/gの範囲にあることが好ましい。
ここで、グラフト重合体(a−1)を構成するゴム状重合体の重量平均粒子径が0.05μ未満では耐衝撃性に劣り、また2.0μを超えると透明性が低下する。
また、ゴム強化スチレン系樹脂(A)のアセトン可溶分の固有粘度が0.2dl/g未満では耐衝撃性に劣り、また0.8dl/gを超えると成形加工性が低下する。
ここで、グラフト重合体(a−1)を構成するゴム状重合体の重量平均粒子径が0.05μ未満では耐衝撃性に劣り、また2.0μを超えると透明性が低下する。
また、ゴム強化スチレン系樹脂(A)のアセトン可溶分の固有粘度が0.2dl/g未満では耐衝撃性に劣り、また0.8dl/gを超えると成形加工性が低下する。
また、本発明において使用されるポリエーテルエステルアミド(B)としては、炭素数6以上のアミノカルボン酸、炭素数6以上のラクタムおよびジアミンとジカルボン酸とから得られる炭素数6以上のナイロン塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド系化合物およびジカルボン酸から誘導される両末端カルボキシル基を含有するポリアミドとポリオキシアルキレングリコールおよび/またはビスフェノール類のエチレンオキシド付加物からなるポリエーテルジオールとを重縮合させて得られる化合物等が挙げられ、分子量、構造および/または組成の異なる2種以上用いることができる。
特に本発明においては、ポリエーテルエステルアミド(B)として少なくとも屈折率の異なる(屈折率差が0.01以上)2種以上を併用することが望ましい。屈折率の異なる2種以上のポリエーテルエステルアミドを併用することであらゆる屈折率を有するゴム強化スチレン系樹脂の透明性を損なうことなく対応でき、且つ耐衝撃性が良好になる。また、屈折率の異なる2種以上のポリエーテルエステルアミドの混合割合には特に制限はないが、例えば2種の場合には99/1〜1/99(重量比)の範囲であることが好ましい。
特に本発明においては、ポリエーテルエステルアミド(B)として少なくとも屈折率の異なる(屈折率差が0.01以上)2種以上を併用することが望ましい。屈折率の異なる2種以上のポリエーテルエステルアミドを併用することであらゆる屈折率を有するゴム強化スチレン系樹脂の透明性を損なうことなく対応でき、且つ耐衝撃性が良好になる。また、屈折率の異なる2種以上のポリエーテルエステルアミドの混合割合には特に制限はないが、例えば2種の場合には99/1〜1/99(重量比)の範囲であることが好ましい。
上記ポリエーテルエステルアミド(B)の使用割合については、ゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対して3〜50重量部であることが好ましい。ポリエーテルエステルアミド(B)が3重量部未満では十分な帯電防止性が得られず、また50重量部を超えると耐熱性及び透明性が低下する傾向にある。
また、上記ポリエーテルエステルアミド(B)の屈折率は、30℃以下の使用環境下において1.40〜1.60であることが好ましい。ポリエーテルエステルアミド(B)の屈折率が1.40未満または1.60以上ではゴム強化スチレン系樹脂(A)の屈折率と異なるため透明性が低下する傾向にある。
本発明は、上記特定のゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対し、ポリエーテルエステルアミド(B)3〜50重量部および摺動剤(C)0.1〜30重量部を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、且つ樹脂成形品(3mm厚み)とした時の全光線透過率が50%以上である透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物である。該樹脂成形品の全光線透過率を50%以上とするには、(A)におけるゴム状重合体と単量体の種類およびその使用割合、グラフト重合体(a−1)の重量平均粒子径、グラフト率、(A)のアセトン可溶分の固有粘度、さらにこれら特定のゴム強化スチレン系樹脂(A)と使用するポリエーテルエステルアミド(B)の種類、更には組み合せて使用する摺動剤(C)の種類およびその使用割合によって設定することができる。
摺動剤(C)としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、高級脂肪酸エステル、さらにはガラス、マイカ等が挙げられるが、特に官能基変性スチレン系樹脂、具体的にはα、β−不飽和カルボン酸、エポキシ基含有単量体、アミド基含有単量体、アミノ基含有単量体、オキサゾリン基含有単量体、水酸基含有単量体等の官能基含有単量体が共重合された官能基変性スチレン系樹脂が好ましく、さらにこれらのうちα、β−不飽和カルボン酸が共重合されたα、β−不飽和カルボン酸変性スチレン系樹脂が最も好ましい。
上記のα、β−不飽和カルボン酸変性スチレン系樹脂としては、前述した芳香族ビニル系単量体と必要に応じてシアン化ビニル系単量体および他の共重合可能な単量体の1種または2種以上と更に必須成分としてα、β−不飽和カルボン酸を共重合せしめることにより得られる共重合体樹脂である。
上記のα、β−不飽和カルボン酸変性スチレン系樹脂としては、前述した芳香族ビニル系単量体と必要に応じてシアン化ビニル系単量体および他の共重合可能な単量体の1種または2種以上と更に必須成分としてα、β−不飽和カルボン酸を共重合せしめることにより得られる共重合体樹脂である。
ここでα、β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アニコット酸等が挙げられ、一種または二種以上用いることができる。特にアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。
α、β−不飽和カルボン酸変性スチレン系樹脂における各単量体の組成比率は、芳香族ビニル系単量体20〜99.5重量%、シアン化ビニル系単量体および他の共重合可能な単量体0〜60重量%、α、β−不飽和カルボン酸0.5〜20重量%であることが好ましい。α、β−不飽和カルボン酸が0.5重量%未満では最終樹脂組成物が表層剥離を起こし、20重量%を超えると加工性が低下する傾向にある。最終組成物の耐表層剥離性および耐衝撃性、加工性のバランス面より、スチレン系単量体40〜90重量%、シアン化ビニル系単量体および他の共重合可能な単量体の1種または2種以上10〜50重量%、α、β−不飽和カルボン酸1〜10重量%が特に好ましい。
なお、これら単量体の具体例としては前記ゴム強化スチレン系樹脂(A)の項で述べたものと同一のものを使用することができる。
また、本発明における官能基変性スチレン系樹脂は、必要に応じてゴム強化されていてもよく、例えばゴム強化スチレン系樹脂(A)の項で述べられたゴム質重合体の存在下で前記各単量体を重合されたものを使用することを何ら妨げるものではない。
なお、これら単量体の具体例としては前記ゴム強化スチレン系樹脂(A)の項で述べたものと同一のものを使用することができる。
また、本発明における官能基変性スチレン系樹脂は、必要に応じてゴム強化されていてもよく、例えばゴム強化スチレン系樹脂(A)の項で述べられたゴム質重合体の存在下で前記各単量体を重合されたものを使用することを何ら妨げるものではない。
官能基変性スチレン系樹脂の製造方法には特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせの方法により得ることができる。
上記の摺動剤(C)の配合比率としては、ゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対して0.1〜30重量部であることが好ましい。摺動剤(C)が0.1重量部未満では十分な摺動特性が得られず、また30重量部を超えると剛性及び透明性が低下する傾向にある。
本発明の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物は、周期律表第1属および/または第2属の金属含有量が250ppm以下であることが必要である。該金属含有量が250ppmを超えると、これらが汚染源となり、該樹脂組成物からなる成形品を半導体製造プロセスにおいて使用する際に悪影響を及ぼすことが懸念されるという問題が発生する。
本発明における各成分の混合方法には特に制限はなく、押出機、バンバリーミキサー、ロール、ニーダー等を用いて混合することができる。
また、本発明の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物には、公知の添加剤、例えば酸化防止剤〔2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2、2−メチレンビス−(4−エチル−6−t−メチルフェノール)、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、ジラウリルチオジプロピオネート、トリス(ジ−ノニルフェニル)ホスファイト等が例示される。〕、紫外線吸収剤〔p−t−ブチルフェニルサリシレート、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が例示される。〕、滑剤〔パラフィンワックス、ステアリン酸、硬化油、ステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、n−ブチルステアレート、ケトンワックス、オクチルアルコール、ラウリルアルコール、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド等が例示される。〕、着色剤〔例えば酸化チタン、カーボンブラック〕等を必要に応じて添加することができる。なお、これら添加剤についても、本発明にて規定する金属を含まないもしくは本発明に悪影響を与えない程度の添加剤を使用することが望ましい。
さらに、本発明においてはポリカーボネート、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリオキシメチレン、ポリエチレン等の他の熱可塑性樹脂を必要に応じて透明性を保持する範囲内にて混合することができる。
本発明をさらに具体的に説明するために以下に実施例及び比較例を挙げて説明する。しかし、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。
〔実施例〕
〔実施例〕
−ゴム強化スチレン系樹脂(A)−
グラフト重合体(a−1−1):窒素置換した反応器にポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径0.30μ、ゲル含有量85%)50部(固形分)、水150部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.1部、硫酸第2鉄0.001部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を入れ、60℃に加熱後、アクリロニトリル3部、スチレン12部、メタクリル酸メチル35部およびキュメンハイドロパーオキサイド0.2部からなる混合物を3時間に亘り連続的に添加し、更に60℃で2時間重合した。その後、塩析・脱水・乾燥後、グラフト共重合体(a−1−1)を得た。得られたグラフト共重合体のグラフト率およびアセトン可溶成分の固有粘度はそれぞれ52%および0.50dl/gであった。
グラフト重合体(a−1−1):窒素置換した反応器にポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径0.30μ、ゲル含有量85%)50部(固形分)、水150部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.1部、硫酸第2鉄0.001部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を入れ、60℃に加熱後、アクリロニトリル3部、スチレン12部、メタクリル酸メチル35部およびキュメンハイドロパーオキサイド0.2部からなる混合物を3時間に亘り連続的に添加し、更に60℃で2時間重合した。その後、塩析・脱水・乾燥後、グラフト共重合体(a−1−1)を得た。得られたグラフト共重合体のグラフト率およびアセトン可溶成分の固有粘度はそれぞれ52%および0.50dl/gであった。
グラフト重合体(a−1−2):ポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径0.50μ、ゲル含有量90%)20部、アクリロニトリル5部、スチレン19部、メタクリル酸メチル56部、およびナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部、キュメンハイドロパーオキサイド0.3部に変更した以外は(a−1−1)と同様にして、グラフト共重合体(a−1−2)を得た。得られたグラフト共重合体のグラフト率およびアセトン可溶成分の固有粘度は、それぞれ60%および0.45dl/gであった。
グラフト重合体(a−1−3):窒素置換した反応器にポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径0.35μ、ゲル含有量90%)50部(固形分)、水150部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.1部、硫酸第2鉄0.001部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を入れ、60℃に加熱後、アクリロニトリル15部、スチレン35部およびキュメンハイドロパーオキサイド0.2部からなる混合物を3時間に亘り連続的に添加し、更に60℃で2時間重合した。その後、塩析・脱水・乾燥後、グラフト共重合体(a−1−1)を得た。得られたグラフト共重合体のグラフト率およびアセトン可溶成分の固有粘度はそれぞれ55%および0.52dl/gであった。
共重合体(a−2):容積が20リットルの完全混合型反応槽1基からなる連続的重合装置を用い、スチレン24重量部、メタクリル酸メチル66重量部、エチルベンゼン10重量部、t−ドデシルメルカプタン0.2重量部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)0.015重量部からなる重合原料をプランジャーポンプを用いて13kg/hで連続的に該反応槽に供給して重合を行い、重合温度を調節して反応槽出口における重合転化率を50.5重量%にした。このときの重合温度は150℃であり、また反応槽の攪拌数は150rpmに調整した。重合に続いて、反応槽から連続的に抜き出された重合液を脱揮発分装置に供給した後、押出機を経て固有粘度0.48の共重合体(a−2)を得た。重合体(a−2)の屈折率は1.52であった。
−ポリエーテルエステルアミド(B)−
B−1:ペレスタット
NC6321(三洋化成工業株式会社製 屈折率:1.516)
B−2:ペレスタット
NC7530(三洋化成工業株式会社製 屈折率:1.536)
B−1:ペレスタット
NC6321(三洋化成工業株式会社製 屈折率:1.516)
B−2:ペレスタット
NC7530(三洋化成工業株式会社製 屈折率:1.536)
− 摺動剤(C) −
C−1:スチレン70重量部、アクリロニトリル25重量部、およびアクリル酸5重量部を公知の乳化重合法により重合した。その後、得られた重合体ラテックスを塩析・脱水・乾燥処理し、官能基変性スチレン系樹脂(C−1)を得た。
C−2:ジメチルシリコーンオイル (東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製 粘度1000cps)
C−3:ポリフロン (ダイキン工業株式会社製 ルブロン L−5F)
C−1:スチレン70重量部、アクリロニトリル25重量部、およびアクリル酸5重量部を公知の乳化重合法により重合した。その後、得られた重合体ラテックスを塩析・脱水・乾燥処理し、官能基変性スチレン系樹脂(C−1)を得た。
C−2:ジメチルシリコーンオイル (東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製 粘度1000cps)
C−3:ポリフロン (ダイキン工業株式会社製 ルブロン L−5F)
〔実施例1〜4、比較例1〜7〕
上記各成分につき、表1に示された配合割合で混合し、40mm二軸押出機を用いて220℃で溶融混練し、ペレットを得た。
また、得られたペレットにつき東芝機械製IS−90B射出成形機を用い、シリンダー設定温度220℃にて各試験片を作成し、次の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
なお、実施例及び比較例にて使用するゴム強化スチレン系樹脂の固有粘度については、上記の混合とは別に、表1に示した割合にてグラフト重合体および共重合体を押出機にて混合した後、アセトン可溶成分を抽出し、固有粘度を測定した。
上記各成分につき、表1に示された配合割合で混合し、40mm二軸押出機を用いて220℃で溶融混練し、ペレットを得た。
また、得られたペレットにつき東芝機械製IS−90B射出成形機を用い、シリンダー設定温度220℃にて各試験片を作成し、次の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
なお、実施例及び比較例にて使用するゴム強化スチレン系樹脂の固有粘度については、上記の混合とは別に、表1に示した割合にてグラフト重合体および共重合体を押出機にて混合した後、アセトン可溶成分を抽出し、固有粘度を測定した。
全光線透過率:厚さ3mmの試験片を用いて、(株)村上色彩技術研究所製反射・透過率計HM−150で測定した。
摺動性:厚さ3mm、900×900mmの角試験片を用い、磨耗試験機(株式会社東洋精機製作所製ロータリーアブレージョンテスタ型式T)にて磨耗減量を測定した。試験回数:3000回(60rpm)、単位:mg。
耐衝撃性:厚さ3mm、900×900mmの角試験片を用い、落球衝撃試験機にて衝撃強度を評価した。衝撃値の計算は1/2法にて求めた。評価に用いた球の重量は1000gである。単位:kgf・cm。
成形加工性:ASTM D−1238に準じてメルトフローレイトを測定した。
220℃×10kg、単位:g/10min。
220℃×10kg、単位:g/10min。
帯電防止性:厚さ3mmの射出成形された角試験片を用い、1ヶ月間23℃、湿度50%RH下で状態調整し、水洗処理後の表面固有抵抗値を東亞電子工業(株)製ウルトラメガオームメーターSN8210にて測定した。単位:Ω。
含有金属量:マイクロウェーブ湿化灰化法にて試料溶解後、ICPより定量した。周期律表第1属および/または第2属の金属含有量の合計を求めた。単位:ppm。
上記のとおり、本発明の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物は、透明性、帯電防止性、摺動性に優れ、かつ不純物の少ないものであり、摺動性と低不純物性が要求され、かつ透明性と帯電防止性の必要とされる電気・電子分野にて好適に使用することができる。
Claims (7)
- ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の中から選ばれた1種以上の単量体を重合してなるグラフト重合体(a−1)または該グラフト重合体(a−1)と芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の中から選ばれた1種以上の単量体を重合してなる(共)重合体(a−2)からなるゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対し、ポリエーテルエステルアミド(B)3〜50重量部および摺動剤(C)0.1〜30重量部を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、かつ周期律表第1属および/または第2属の金属含有量が250ppm以下であり、樹脂成形品(3mm厚み)とした時の全光線透過率が50%以上である摺動特性に優れた透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物。
- 摺動剤(C)が官能基変性スチレン系樹脂である請求項1記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物。
- 摺動剤(C)がα,β−不飽和カルボン酸変性スチレン系樹脂である請求項1又は2記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物。
- グラフト重合体(a−1)を構成するゴム状重合体の重量平均粒子径が0.05〜2.0μ、ゴム強化スチレン系樹脂(A)のアセトン可溶分の固有粘度が0.2〜0.8dl/gである請求項1〜3何れかに記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物。
- ポリエーテルエステルアミド(B)の屈折率が1.40〜1.60である請求項1〜4何れかに記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物。
- 少なくとも屈折率の異なる(屈折率差が0.01以上)2種以上のポリエーテルエステルアミド(B)からなる請求項1〜5何れかに記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜6何れかに記載の透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
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JP2007051233A (ja) * | 2005-08-19 | 2007-03-01 | Daicel Polymer Ltd | 帯電防止性及び透明性を有する熱可塑性樹脂組成物 |
WO2009038038A1 (ja) | 2007-09-19 | 2009-03-26 | Fujifilm Corporation | アセチレン化合物、その塩、その縮合物、及びその組成物 |
Citations (2)
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JPS63312342A (ja) * | 1987-06-16 | 1988-12-20 | Toray Ind Inc | 熱可塑性樹脂組成物 |
JP2004323710A (ja) * | 2003-04-25 | 2004-11-18 | Nippon A & L Kk | 耐暗所変色性に優れた透明持続性帯電防止熱可塑性樹脂組成物 |
-
2004
- 2004-12-16 JP JP2004364624A patent/JP2006169398A/ja active Pending
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