JP2006169044A - 単結晶の製造方法およびアニールウェーハの製造方法 - Google Patents

単結晶の製造方法およびアニールウェーハの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】所望の品質のウェーハ製品を大量かつ安定的に低コストで製造するための単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】チョクラルスキー法によってチャンバ内で同一のルツボ中の原料融液4から複数本の単結晶3を引き上げるマルチプリング法であって、原料融液4から単結晶3を引き上げた後、ヒーター7の電源を落とさずに残りの原料融液4に多結晶原料を追加投入して融解した後、次の単結晶3を引き上げ、これを繰り返して複数の単結晶3の引き上げを行う単結晶の製造方法において、単結晶3の直胴部を成長させるときの引上げ速度Vと固液界面近傍の引上げ軸方向の結晶温度勾配Gとの比をV/Gとした場合、それぞれの引上げ単結晶3のV/Gを所定値に制御するために、操業開始からの経過時間に応じて、前記引上げ速度V等の引上げ条件を単結晶を引き上げる前に、事前に修正を加えて、所望の欠陥領域を有する単結晶3を育成する単結晶の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、メモリーやCPUなど半導体デバイスの基板として用いられるシリコンウェーハ等を切り出すシリコン等の単結晶の製造方法に関する。
近年、半導体集積回路ではその集積度が著しく向上し、性能・信頼性・歩留まりが高い集積回路を得るためには、機械的な精度および電気的な特性の両方についてより優れていることが要請されるようになってきている。それに伴い半導体集積回路等のデバイスを作製するために用いられるシリコンウェーハの品質に対し、より厳しい条件が課せられるようになり、結晶品質のより優れたシリコンウェーハを製造することが求められるようになった。また、半導体集積回路の世界的波及と需要の拡大により、シリコンウェーハは、多様な形で、高品質のものが大量かつ安定的に要求されるに至った。
シリコンウェーハをシリコン等の半導体の多結晶材料から得る方法として、多結晶材料をルツボ中でいったん融解し、種結晶を原料融液から引き上げることによりシリコン単結晶を得るチョクラルスキー法(Czochralski Method、以下CZ法と略す。引上げ法ともいう。)がある。このCZ法によって育成されたシリコン単結晶が、スライスされ、ラッピング、面取り、研磨等を施されることにより、シリコンウェーハが作製される。このシリコンウェーハの品質を向上させる方法の中に、酸化膜耐圧特性やデバイスの特性を悪化させる単結晶成長起因のGrown−in欠陥の密度とサイズを低減する方法があるが、まず、Grown−in欠陥の形成について説明する。
単結晶成長起因のGrown−in欠陥の原因となる点欠陥には、原子空孔型の点欠陥であるVacancyと、格子間シリコン型の点欠陥であるInterstitialとがある。この点欠陥の飽和濃度は温度の関数であり、単結晶育成中の温度の低下に伴い、過飽和状態となる。この過飽和状態では対消滅や外方拡散・坂道拡散などが起こり、過飽和状態を緩和する方向に進む。その結果、VacancyかInterstitialかの一方が優勢な過飽和の点欠陥として残る。単結晶の直胴部を成長させるときの引上げ速度Vと固液界面近傍の引上げ軸方向の結晶温度勾配Gとの比V/Gが大きいとVacancyが過剰な状態となりやすく、逆にV/Gが小さいとInterstitialが過剰な状態になりやすいことが知られている。この過剰な濃度がある程度以上となれば、これらが凝集し、単結晶の成長中にこれらの点欠陥の2次欠陥であるGrown−in欠陥が形成される。Vacancyが優勢な場合、2次欠陥であるGrown−in欠陥としてはCOPやFPDなどとして観察されるボイド欠陥や酸化処理後にOSFとして観察される欠陥などが知られており、酸化膜特性を劣化させる。一方でInterstitialが優勢な場合、転位ループなどとして観察される2次欠陥であるGrown−in欠陥を形成し、リーク等の重大な不良を起してしまう。
これらのGrown−in欠陥が発生しない様にコントロールする技術に、特許文献1、特許文献2などで開示されている無欠陥結晶の製造技術があるが、過剰な点欠陥の濃度を可能な限り低くするため、単結晶の直胴部を成長させるときの引上げ速度Vと固液界面近傍の引上げ軸方向の結晶温度勾配Gとの比V/Gを非常に限定された範囲にコントロールしている。このため引上げ速度Vの範囲が非常に狭い範囲に限定され、実際には不良品などが多発して歩留り・生産性を大きく低下させるものであった。そこで、特許文献3では、CZ法における制御幅を広く改善して制御し易い成長条件下でシリコン単結晶を製造しながら、結晶欠陥を少なくする技術を提供している。
しかし、これらの技術によっても、少数の単結晶製造装置で、連続して多くのシリコン単結晶を製造した場合、同じ条件で引き上げたはずのシリコン単結晶の品質にばらつきが生じるため、高品質のシリコンウェーハが大量かつ安定的に要求される今日のウェーハ製品の需要に、低コストで対応することは困難である。このようなシリコン単結晶の品質のばらつきが生じる原因には、次のものがある。
単結晶の固液界面近傍における引上げ軸方向の結晶温度勾配Gは、単結晶の製造装置の中に導入されるヒーターや熱シールドなど(HZ:Hot Zone)から構成される熱環境によって決定される。しかしながら時間の経過とともに、原料であるシリコンと石英ルツボから発生する酸素とが反応して形成されるシリコン酸化物が、単結晶の製造装置のチャンバなどの低温部に付着していく。チャンバ部は放射熱を吸収している部分であり、これが酸化物で覆われると熱吸収力が弱まりGが小さくなってしまう傾向にある。従って時間の経過に伴いGの低下が発生すると、V/Gが増大し、Grown−in欠陥サイズの増大といった結果となり、引き上げられるシリコン単結晶の品質にばらつきが生じることとなる。
そこで、特許文献4では、単結晶の絞り部の作製に消費したヒーター電力の平均値を算出し、これに基づいて、単結晶の直胴部を成長させるときの引上げ速度Vを修正することにより、装置の個体差や、製造されるシリコン単結晶のバッチ毎の、ヒーター等の劣化によって生じる時系列的変動因子に対応する技術を提供している。しかし、単結晶育成中のGは徐々に小さくなっていくため、所望の品質のシリコン単結晶を大量かつ安定的に製造する場合、単結晶の絞り部の作製に消費したヒーター電力の平均値に基づいて直胴部における引上げ速度Vを一律に一定量修正するだけでは、不十分であった。
また、以上のような単結晶育成段階のみでの制御で、高品質の無欠陥ウェーハを得るのは、上記のように困難であり非常に高コストとなるため、単結晶の成長を制御しやすい低コストな条件で行い、シリコン単結晶から切り出した後のウェーハに高温熱処理等を施して、ウェーハ表面近傍の欠陥を消滅または所望の欠陥密度に制御することが多い。その特徴を最も生かしたウェーハが、表面無欠陥層(Denuded Zone、DZ)を持つウェーハであり、その優位性はほぼ証明されている。
シリコン単結晶から切り出した後のシリコンウェーハを処理することにより表面近傍を無欠陥化するものとして、(a)シリコンウェーハを高温で熱処理することで表層に無欠陥層を形成するアニールウェーハ(特許文献5)、(b)シリコンウェーハをサブストレートとして用いその上に無欠陥層をエピタキシャル成長させるエピウェーハがある。一般的に、これらに用いられるシリコンウェーハには結晶成長時に形成されるGrown−in欠陥が存在する。これらの中で、エピウェーハは高コストであるため製造コストの面でアニールウェーハが優位であるが、アニール用のウェーハの特徴として非常に重要なことは、熱処理により表層近傍の欠陥が消滅または所望の欠陥密度に制御しやすいようにGrown−in欠陥のサイズが小さく消えやすい状況になっていることであり、そのためには、単結晶育成段階で、V/Gをある程度小さくし、かつV/Gのばらつきを小さく制御することが必要である。
すなわち、前記のようにV/Gによって最終的に優勢となる点欠陥の種類が変化し、V/Gが大きいときはVacancy、小さいときはInterstitialであることを示したが、Vacancy領域の中でもV/Gの数値が小さいほうが最終的に導入されるVacancy濃度が少なくなる。導入されるVacancy濃度が少なければ、これが凝集することで形成されるGrown−in欠陥のサイズも小さくなる。しかし、V/Gが小さくなる方向は、単結晶の直胴部を成長させるときの引上げ速度Vが小さくなる方向でもあるため、一般的にコストが高くなる方向である。従って、ウェーハを作製した後に施す熱処理によって欠陥を消滅させることができる最大限のV/Gを用いることがコストを抑える鍵となる。この値は熱処理条件に依存するものである。
また、単結晶の育成時に窒素をドープすることによっても、Grown−in欠陥サイズを小さくできることが知られており、アニール用のウェーハは、単結晶育成時に窒素がドープされることが多い。さらに、アニールを実施する際に、表面欠陥を消滅または所望の欠陥密度に制御させると同時にウェーハ内部に内部微小欠陥(Bulk Micro Defects、以下BMDと略す)を形成することで、デバイス工程での重金属汚染物質を捕獲する能力(ゲッタリング能力)を持たせることがある。
このBMDを形成する際にも窒素ドープの方が形成されやすいことが知られている。従って、アニール用のウェーハを切り出すために育成する結晶に窒素をドープすることは、Grown−in欠陥を小さくし、BMDを形成しやすくするという2点においてメリットがある (特許文献6) 。しかしながら、窒素をドープしたアニールウェーハ用のシリコン単結晶の育成では、窒素濃度が偏析によって決まるため、結晶軸方向の窒素濃度が異なる。さらに、同じ窒素濃度であってもGの違いによりGrown−in欠陥の形成に及ぼす影響が異なるので、窒素をドープして品質が均一なものを大量かつ安定的に得るには、大きな困難が伴う。
ドープされた窒素の濃度や、抵抗制御用のリンやボロン等のドーパントの偏析による抵抗値の変動等を一定範囲内に抑えて、CZ法により同じ品質の単結晶棒を大量に得る方法としてマルチプリング法がある。ここで、マルチプリング法とは、単結晶を引き上げた後、ヒーター電源を落とさずに残りのシリコン融液に多結晶原料を追加投入して、次の単結晶を引上げ、これを繰り返して複数の単結晶を引き上げる方法をいう(特許文献7)。これにより、1バッチで同品質の結晶棒を全く同じ条件で、何本も引き上げることができ、均一なものを大量に得ることができるため、上記困難を克服するための利用価値があると考えられる。
特開平8−330316号公報 特開平11−79889号公報 特開平11−147786号公報 特開2003―327494号公報 特開2002−184779号公報 特開2002―353225号公報 国際公開第WO02/014587号パンフレット
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、所望の品質のウェーハ製品を大量かつ安定的に低コストで製造するための単結晶の製造方法と、これを用いたアニールウェーハの製造方法を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明によれば、チョクラルスキー法によってチャンバ内で同一のルツボ中の原料融液から複数本の単結晶を引き上げるマルチプリング法であって、原料融液から単結晶を引き上げた後、ヒーター電源を落とさずに残りの原料融液に多結晶原料を追加投入して融解した後、次の単結晶を引き上げ、これを繰り返して複数の単結晶の引き上げを行う単結晶の製造方法において、単結晶の直胴部を成長させるときの引上げ速度Vと固液界面近傍の引上げ軸方向の結晶温度勾配Gとの比をV/Gとした場合、それぞれの引上げ単結晶のV/Gを所定値に制御するために、操業開始からの経過時間に応じて、少なくとも、前記引上げ速度V、前記チャンバ内に導入する不活性ガスの流量、前記チャンバ内の圧力、前記原料融液の融液面と前記チャンバ内で前記原料融液面に対向配置された遮熱部材との距離のうちいずれか一つ以上の引上げ条件を単結晶の引上げを開始する前に、事前に修正を加えて、所望の欠陥領域を有する単結晶を育成することを特徴とする単結晶の製造方法が提供される(請求項1)。
このように、短時間で多くの単結晶を得ることができる低コストなマルチプリング法を用いて、操業開始からの経過時間に応じて単結晶のV/Gを所定値に制御するために引上げ速度V等の引上げ条件を単結晶の引上げを開始する前に、事前に修正を加えることにより、所望の品質の単結晶を大量かつ安定的に低コストで製造できる。操業開始からの経過時間として、例えば、ヒーター電源を入れてからの経過時間を基準とすることができ、それぞれの引上げ単結晶のV/Gを所定値に制御するために経過時間に応じて引上げ速度V等の引上げ条件に修正を加えることにより、同一バッチ内における操業時間の経過に伴う結晶温度勾配Gの低下等に柔軟に対応することができ、所望の品質の単結晶を育成することができる。
このとき、前記引き上げる複数本の単結晶のうち、少なくとも2本以上の同じ品種の単結晶を引き上げる場合に、前記V/Gが同じ所定値となるように、該単結晶の引上げが何本目であるかに応じて、それぞれの単結晶の前記引上げ条件を単結晶の引上げを開始する前に、事前に修正を加えることが好ましい(請求項2)。
このように、単結晶の引上げが何本目であるかに応じて、前記引上げ条件を単結晶の引上げを開始する前に、事前に修正を加えて前記V/Gを所定値とする方法は、引上げ条件の設定方法が簡素であり、低コストで行うことができる。
また、前記引上げ条件の修正は、前記各引き上げ条件のパターンを経過時間に基づいて予め複数用意しておき、経過時間に応じて当該引上げ単結晶の最適な引き上げ条件のパターンを選択することにより行うことが好ましい(請求項3)。
このように、引き上げ条件の修正は、各引上げ条件のパターンを経過時間に基づいて予め複数用意しておき、経過時間に応じて最適な引き上げ条件のパターンを選択する方法が簡単かつ確実であり、低コストで行うことが可能である。
さらに、前記単結晶に窒素をドープしたシリコン単結晶を引き上げることができる(請求項4)。
本発明は、単結晶に窒素をドープしたことにより生ずる時間経過によるV/Gのばらつきに対して、特に効果的に抑制することができるので、単結晶に窒素をドープすることにより、Grown−in欠陥を小さくし、BMDを形成しやすくした均一で高品質の窒素ドープアニールウェーハを製造することができる。
また、本発明によれば、このような単結晶の製造方法により製造されたシリコン単結晶からシリコンウェーハを切り出して、水素、アルゴンまたはこれらの混合ガスである非酸化性の雰囲気で1100℃〜1400℃、5min〜600minの熱処理を施すことによりアニールウェーハを製造することを特徴とするアニールウェーハの製造方法が提供される(請求項5)。
このようにシリコンウェーハを切り出して熱処理をすることにより、ウェーハ表面のGrown−in欠陥を消滅させ、BMDを形成させることができる。熱処理の温度を1100℃以上とし、熱処理時間を5min以上とすることにより、ウェーハ表面近傍におけるGrown−in欠陥の消滅効果を高く保つことができ、熱処理の温度を1400℃以下とし、熱処理時間を600min以下とすることにより、熱処理によるウェーハ製品への金属汚染や熱処理炉の耐久性の問題、および処理時間が長くなること等により生じるコストを小さくすることができる。熱処理の温度と熱処理時間は、熱処理するウェーハの状態に応じて必要とされるGrown−in欠陥の消滅効果と熱処理に必要なコストを考慮することにより、最適な条件を選択することが可能である。このように、本発明は、複数の要因がかかわるために単純な一律の引上げ条件の修正では不十分な、窒素ドープアニール用のシリコン単結晶の品質を均一にする場合において特に有効である。
さらに、本発明によれば、前記アニールウェーハは、表面から深さ5μmまでの表面近傍において、20nm以上のサイズの表面近傍欠陥の平均密度が20/cm以下で、結晶軸方向における前記アニールウェーハの表面から深さ5μmまでの表面近傍において、20nm以上のサイズの表面近傍欠陥の密度のばらつきσが平均値の100%以下となるものとすることができる(請求項6)。
このように、本発明によれば、引き上げたシリコン単結晶から切り出されたウェーハを熱処理して得られるウェーハ製品の表面近傍欠陥のばらつきを、一定の規格内に正確に制御することが可能である。なお、本発明によれば、一つの単結晶から得られる結晶軸方向におけるアニールウェーハの表面近傍欠陥の密度のばらつきのみならず、同じマルチプリング法で得られた別の単結晶から得られるウェーハ製品も含めたアニールウェーハの表面近傍欠陥の密度のばらつきを、一定の規格内に正確に制御することが可能である。
このように、本発明により、ウェーハ製品の歩留り、生産性を向上させることができ、品質が一定であるウェーハ製品の需要増大に低コストで対応することが可能となった。
本発明者らは、同一品質の単結晶棒を大量に得るべく、マルチプリング法で、同一バッチ内で同一の引上げ条件で、V/Gを制御して同一品種の結晶を複数本引き上げた。ところが、得られた各結晶棒の品質が近年要求される均一性を必ずしも満足していないことを見出した。すなわち、例えばマルチプリング法で、1本の単結晶棒を引き上げた後、ルツボ内に原料を追加し、全く同じ融液量に戻して次の単結晶棒を引き上げる場合、同じ品種の結晶を引き上げるのであれば、全く同じ条件でV/Gを制御して単結晶を引き上げることが常識であった。
ところが、こうして引き上げられたシリコン単結晶を切り出してウェーハを作製して、例えばアルゴン雰囲気にて1200℃で1時間の熱処理を施し、表面近傍の欠陥密度測定装置:M0601三井金属社製にてウェーハ全面に渡る表面近傍(表面から深さ約5μmまで)における20nm以上のサイズの欠陥の平均密度を求めたところ、ばらつきが大きく要求される規格内に入らないものが出てくることが判った。これは、全く同じ引上げ条件で単結晶を引き上げていることから、V/Gも同じになると仮定していたことに誤りがあり、複数本の単結晶棒間で実際のV/G値に相違があることによるものであることがわかった。
そこで、本発明者らは、マルチプリング法において、操業開始からの経過時間により引上げ条件を単結晶の引上げを開始する前に、事前に修正を加えることにより、現実の複数の単結晶棒のV/Gを所定値にすることができることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明では、チョクラルスキー法によってチャンバ内で同一のルツボ中の原料融液から複数本の単結晶を引き上げるマルチプリング法を用いるが、まず、図1により、使用する単結晶の製造装置の概略について説明する。
この単結晶の製造装置は、メインチャンバ1の内部には黒鉛ルツボ6に嵌合された石英ルツボ5が回転軸を介して設置されており、モータにより所望の回転速度で回転される。黒鉛ルツボ6を囲むようにヒーター7が設けられており、ヒーター7によって、石英ルツボ5内に収容された原料シリコン多結晶が溶融されて原料融液4とされる。また、断熱部材8が設けられており、ヒーター7からの輻射熱がメインチャンバ1等の金属性の器具に直接当たるのを防いでいる。原料融液4の融液面上では遮熱部材12が、融液面に所定間隔で対向配置され、原料融液面からの輻射熱を遮断している。このルツボ中に種結晶を浸漬した後、原料融液4から棒状の単結晶3が引き上げられる。ルツボは結晶成長軸方向に昇降可能であり、単結晶の成長が進行して減少した原料融液4の液面下降分を補うように、成長中にルツボを上昇させることにより、原料融液4の融液面の高さは常に一定に保たれる。
さらに、単結晶育成時にパージガスとしてアルゴンガス等の不活性ガスが、ガス導入口10から導入され、引き上げ中の単結晶3とガス整流筒11との間を通過した後、遮熱部材12と原料融液4の融液面との間を通過し、ガス流出口9から流出している。導入するガスの流量と、ポンプや弁によるガスの排出量を制御することにより、引上げ中のチャンバ内の圧力が制御される。また、原料融液4の融液面と遮熱部材12との間の距離は、ルツボを結晶成長軸による液面低下分とは異なる速度で押し上げることによって原料融液面の高さを結晶成長軸方向で上昇・下降させたり、また駆動手段によってガス整流筒11を昇降させて遮熱部材12の位置を上下に移動させたりすることによって容易かつ高精度で変更させることができる。
この単結晶の製造装置により、同一のルツボ中の原料融液4から複数本のシリコン単結晶を引き上げるマルチプリング法を行う。具体的には、原料融液4からシリコン単結晶を引き上げた後、ヒーター7の電源を落とさずに残りの原料融液4に多結晶原料を追加投入して融解して元の融液量に戻した後、次のシリコン単結晶を引き上げ、これを繰り返して複数のシリコン単結晶の引き上げを行う。その際、それぞれの引上げ単結晶のV/Gを所定値に制御するために、操業開始からの経過時間に応じて、引上げ条件を単結晶を引上げる前に、事前に修正を加えて所望の欠陥領域を有するシリコン単結晶を育成する。ここで、操業開始の基準時間は、例えば、ヒーター7による加熱開始時とすることができる。
ここで操業開始からの経過時間に応じて低下してしまう結晶温度勾配Gの低下分に応じて次の単結晶の直胴部を成長させるときの引上げ速度Vを低下させてV/Gを所定値に制御することが可能である。特にシリコン単結晶の育成中に結晶が有転位化した場合は、ヒーター7に供給する電力を増加させ、それまで成長した結晶を融液に浸漬させて再溶融する必要があり、操業開始から所定のシリコン単結晶の引上げ終了までの予定時間にずれが生じることがあるが、操業開始からの経過時間に応じて、引上げ速度Vを修正してV/Gを所定値に制御することにより、対応することが可能である。
また、操業開始からの経過時間に応じて低下しようとするGを、アルゴンガス等の不活性ガスの流量や、チャンバ内の圧力、原料融液4の融液面と前記チャンバ内で前記原料融液面に対向配置された遮熱部材12との距離などの引上げ速度V以外の引上げ条件に修正を加えることにより、Gを所定値に保つことを通じてV/Gを所定値に保ち、所望の欠陥領域を有する単結晶を育成することが可能である。
さらに、操業開始からの経過時間に応じて、引上げ速度V、不活性ガスの流量、チャンバ内の圧力、および原料融液4の融液面と遮熱部材12との距離のいずれか2つ以上の引上げ条件を組み合わせて、経過時間に応じてV/Gを所定値に制御することにより、所望の欠陥領域を有する単結晶の品質の精度を上げることも可能となる。
引き上げる複数の単結晶のうち、少なくとも2本以上の同じ品種の単結晶を引き上げる場合には、V/Gが同じ所定値となるように、該単結晶の引上げが何本目になるかに応じて、それぞれの単結晶の前記引上げ条件に修正を加えることが可能であり、これにより引上げ条件の修正が簡易化され、コスト削減になる。このような簡易な方法によっても、従来のように一律に同じ条件として引き上げる場合より格段に単結晶の品質の均一性を高めることができる。
前記引上げ条件の修正は、前記各引き上げ条件のパターンを経過時間に基づいて予め複数用意しておき、経過時間に応じて当該引上げ単結晶の最適な引き上げ条件のパターンを選択することにより行うことが、簡単かつ確実であり、低コストである。例えば、予め、実験等を通じて、経過時間に基づいて複数のパターンをコンピュータ等の中に入力しておき、経過時間に応じて当該引上げ単結晶の最適な引き上げ条件のパターンをプログラムの実行等によって選択することにより、V/Gが所定値となるように制御する。
ここで、各条件のV/Gとの関係は装置ごとに計算あるいは実測できるので経過時間に従い、各条件を予め求めたV/Gとの関係に基づいて修正することができる。図8〜図10に一例として、チャンバ内に導入する不活性ガスの流量、チャンバ内の圧力、原料融液の融液面と前記原料融液面に対向配置された遮熱部材との距離と、結晶温度勾配Gとの関係を示すグラフを示しておく。
上記のように、操業開始からの経過時間に応じてこれらの条件に修正を加えることにより、結晶温度勾配Gを制御することを通じてV/Gを所定値に制御して、所望の欠陥領域を有する単結晶を育成することにより、品質の精度を上げることが可能である。さらに、引上げ速度Vをできる限り大きくしておく一方で、経過時間に応じた上記の条件の少なくとも一つに修正を加えて結晶温度勾配Gを制御することにより、V/Gを所定値に制御することで、所望の欠陥領域を有し、品質が一定であるシリコン単結晶をより低コストで、より大量かつ安定的に生産することが可能となる。
上記のような引上げ条件で育成された単結晶は均質な欠陥サイズを有しており、この単結晶から切り出したウェーハに、水素、アルゴンまたはこれらの混合ガスである非酸化性の雰囲気で1100℃〜1400℃、5min〜600minという熱処理を、前記ウェーハの状態に応じて必要とされるGrown−in欠陥の消滅効果を考慮して施す。なお、熱処理時間および熱処理温度の上限値は、熱処理によるウェーハ製品への金属汚染や熱処理炉の耐久性の問題、および処理時間が長くなること等により生じるコストが考慮されて設定された参考値であり、熱処理時間および熱処理温度の下限値は、Grown−in欠陥の消滅効果を考慮した参考値である。
このとき、アニールウェーハの表面近傍欠陥の密度が所望の密度に対して外れていた場合は、表面近傍欠陥の密度レベル及び操業開始からの経過時間を考慮して、チャンバ内に導入する不活性ガスの流量、チャンバ内の圧力、原料融液の融液面と前記原料融液面に対向配置された遮熱部材との距離のうち、いずれか一つ以上の引上げ条件に修正を加えることにより、経過時間に応じた最適な操業条件に変更する。
これにより、表面近傍における表面近傍欠陥の密度のばらつきσを平均値の100%以下に抑制したシリコンウェーハを得ることができる。その結果、製造時間の経過にかかわらず製品の表面近傍欠陥の密度のばらつきを一定の規格内に正確に制御することが可能となり、ウェーハ製品の歩留り、生産性を向上させることができる。このように、本発明は、マルチプリングにより1バッチで品質のそろった製品を大量に製造できるので、複数の要因がかかわるために単純な一律の引上げ条件の修正では不十分な、窒素ドープアニール用のシリコン単結晶において特に有効である。
(実施例1)
図1に示した単結晶の製造装置に直径55cmのルツボを装備して、CZ法を用いて直径20cmのシリコン単結晶を育成するため、まず、ルツボへシリコン多結晶原料を120kgチャージし、育成するシリコン単結晶の窒素濃度が3×1013atoms/cmとなるように窒素をドープした。そして、シリコン多結晶原料をヒーター加熱により溶融し、直胴部が100cmで直径が20cmであるシリコン単結晶を育成した。次いで、1本目を引上げ単結晶と同重量の原料多結晶をルツボに追加チャージしてマルチプリング法により、同一品種の結晶の引上げを繰り返した。
このとき図2に示すように、ヒーター加熱を開始してからの時間に応じて3つの単結晶の引上げ条件を用意した。ヒーター加熱を開始してからの時間が35時間以下(1本目)ではパターン1の引上げ速度、35時間から70時間(2本目)ではパターン2の引上げ速度、70時間以上(3本目)ではパターン3の引上げ速度を用いてシリコン単結晶を育成した。これらのシリコン単結晶から切り出すことにより、ウェーハを作製してアルゴン雰囲気にて1200℃、1時間の熱処理を施し、表面近傍の欠陥密度測定装置:M0601三井金属社製にてウェーハ全面に渡る表面近傍(表面から深さ約5μmまで)における20nm以上のサイズの表面近傍欠陥の平均密度を求めた。
その結果、図3に示すようにパターン1(1本目)、パターン2(2本目)、パターン3(3本目)のどの場合にも単結晶の長さ方向に均質な表面近傍欠陥の密度が得られ、さらに、これらのヒストグラムを図4に示すが、表面近傍欠陥の密度の平均値が3.85/cm、ばらつきの標準偏差σは平均値の57%であった。このように、本発明によって、シリコン単結晶の引上げの操業開始からの経過時間にかかわらず、引き上げたシリコン単結晶から得られるウェーハ製品の表面近傍欠陥のにおける表面近傍欠陥の密度のばらつきを低減し、規格内に正確に制御することが可能となった。
(実施例2)
次に、シリコン単結晶育成時においてパージガスとして、ガス導入口10から導入され、引き上げ中の単結晶3とガス整流筒11との間を通過した後、遮熱部材12と原料融液4の融液面との間を通過し、ガス流出口9から流出している不活性ガスであるアルゴンガスの流量を、時間の経過に合せて変化させたパターン2´を用意して、ヒーター加熱を開始して35時間から70時間(2本目)においてこのパターン2´(ガス流量を1本目より15%アップした)を用いることとし、それ以外の条件を実施例1と同様として評価を行った。その結果、図5に示すように、表面近傍における表面近傍欠陥の密度が単結晶の長さ方向に向かって均一な分布が得られ、表面近傍欠陥の密度の平均値が2.65/cm、ばらつきの標準偏差σは平均値の60%となり、図3(b)の実施例1と同様の効果が得られた。
(比較例1)
実施例1に対して、ヒーター加熱を開始してからの時間が35時間から70時間(2本目)であるときに1本目と同じパターン1を用いて単結晶の育成を行い、それ以外の条件を実施例1と同様として評価を行った。その結果、図6に示すように、図3(a)に示す実施例1のパターン1:35時間以下や、図3(b)に示す実施例1のパターン2:35時間から70時間に比較して均一性が損なわれたことがわかる。さらに、ヒーター加熱を開始してからの時間の経過にかかわらず、全てのシリコン単結晶で同一のパターン1を用いてシリコン単結晶を育成し、それ以外の条件は実施例1と同様の評価を行った場合のヒストグラムを図7に示す。その結果、表面近傍欠陥の密度の平均値が4.97/cm、ばらつきの標準偏差σは平均値の112%であった。
このように、シリコン単結晶の製造の操業開始からの経過時間に応じて、引上げ単結晶のV/Gを所定値に制御するために引上げ条件の修正を行わないと、引き上げたシリコン単結晶から得られるウェーハ製品の表面近傍における表面近傍欠陥の密度のばらつきが大きくなり、規格内に制御することが困難である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
本発明において用いる単結晶の製造装置の概略図である。 実施例1で用いた単結晶の引上げ速度Vのパターンである。 実施例1で得られたウェーハの表面近傍における表面近傍欠陥の密度の結晶軸方向分布を表した図である。 実施例1で得られたウェーハの表面近傍における表面近傍欠陥の密度分布を表したヒストグラム図である。 実施例2で得られたウェーハの表面近傍における表面近傍欠陥の密度の結晶軸方向分布を表した図である。 比較例1で得られたウェーハの表面近傍における表面近傍欠陥の密度の結晶軸方向分布を表した図である。 比較例1で得られたウェーハの表面近傍における表面近傍欠陥の密度分布を表したヒストグラム図である。 不活性ガス流量と結晶温度勾配Gとの関係の一例を示すグラフである。 チャンバ内の圧力と結晶温度勾配Gとの関係の一例を示すグラフである。 原料融液の融液面と前記原料融液面に対向配置された遮熱部材との距離と、結晶温度勾配Gとの関係の一例を示すグラフである。
符号の説明
1…メインチャンバ、 2…引上げチャンバ、 3…単結晶、 4…原料融液、
5…石英ルツボ、 6…黒鉛ルツボ、 7…ヒーター、 8…断熱部材、
9…ガス流出口、 10…ガス導入口、 11…ガス整流筒、 12…遮熱部材。

Claims (6)

  1. チョクラルスキー法によってチャンバ内で同一のルツボ中の原料融液から複数本の単結晶を引き上げるマルチプリング法であって、原料融液から単結晶を引き上げた後、ヒーター電源を落とさずに残りの原料融液に多結晶原料を追加投入して融解した後、次の単結晶を引き上げ、これを繰り返して複数の単結晶の引き上げを行う単結晶の製造方法において、単結晶の直胴部を成長させるときの引上げ速度Vと固液界面近傍の引上げ軸方向の結晶温度勾配Gとの比をV/Gとした場合、それぞれの引上げ単結晶のV/Gを所定値に制御するために、操業開始からの経過時間に応じて、少なくとも、前記引上げ速度V、前記チャンバ内に導入する不活性ガスの流量、前記チャンバ内の圧力、前記原料融液の融液面と前記チャンバ内で前記原料融液面に対向配置された遮熱部材との距離のうちいずれか一つ以上の引上げ条件を単結晶の引上げを開始する前に、事前に修正を加えて、所望の欠陥領域を有する単結晶を育成することを特徴とする単結晶の製造方法。
  2. 前記引き上げる複数本の単結晶のうち、少なくとも2本以上の同じ品種の単結晶を引き上げる場合に、前記V/Gが同じ所定値となるように、該単結晶の引上げが何本目であるかに応じて、それぞれの単結晶の前記引上げ条件を単結晶の引上げを開始する前に、事前に修正を加えることを特徴とする請求項1に記載の単結晶の製造方法。
  3. 前記引上げ条件の修正は、前記各引き上げ条件のパターンを経過時間に基づいて予め複数用意しておき、経過時間に応じて当該引上げ単結晶の最適な引き上げ条件のパターンを選択することにより行うことを特徴とする請求項1または2に記載の単結晶の製造方法。
  4. 前記単結晶に窒素をドープしたシリコン単結晶を引き上げることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の単結晶の製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の単結晶の製造方法により製造されたシリコン単結晶からシリコンウェーハを切り出して、水素、アルゴンまたはこれらの混合ガスである非酸化性の雰囲気で1100℃〜1400℃、5min〜600minの熱処理を施すことによりアニールウェーハを製造することを特徴とするアニールウェーハの製造方法。
  6. 前記アニールウェーハは、表面から深さ5μmまでの表面近傍において、20nm以上のサイズの表面近傍欠陥の平均密度が20/cm以下で、結晶軸方向における前記アニールウェーハの表面から深さ5μmまでの表面近傍において、20以上のサイズの表面近傍欠陥の密度のばらつきσが平均値の100%以下となることを特徴とする請求項5に記載のアニールウェーハの製造方法。
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