JP2006166780A - 鮮魚食感改良用油脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
鮮魚の魚肉、特にマグロ赤身肉の風味や食感を改良できる鮮魚食感改良用油脂組成物、さらに、鮮魚食感改良用油脂組成物により処理され食感が改良されたマグロ赤身肉を提供する。
【解決手段】
油脂成分100質量部に対して、グリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステル0.05〜3質量部およびジグリセリン脂肪酸エステル0.05〜3質量部を含む鮮魚食感改良用油脂組成物。さらに、油脂成分100質量部に対して、酢10〜20質量部を含む鮮魚食感改良用油脂組成物。鮮魚食感改良用油脂組成物により処理されたマグロ赤身肉。

Description

本発明は、鮮魚の魚肉、特にマグロ赤身肉の風味や食感を改良できる鮮魚食感改良用油脂組成物、さらに、鮮魚食感改良用油脂組成物により処理され食感が改良されたマグロ赤身肉に関する。
近年、トロと呼ばれる脂肪分の多いマグロ肉は、刺身、寿司種用に需要が極めて多いのに対し、脂肪分の少なく水気の多い赤身肉の需要は少ない。こうした赤身肉を有効利用するため、トロ風味に加工することが要求されている。
例えば、魚肉の加工方法としては、魚肉に対して油脂又は油中水滴型エマルジョンを注入する方法が知られている(特許文献1)。さらに、グリセリンの重合度が5のポリグリセリンの不飽和脂肪酸エステルを含む乳化油脂を魚肉にコーティングする方法が知られている(特許文献2)。
特開昭60−41467号公報 特開2003−61572号公報
しかし、魚肉に対して油脂又は油中水滴型エマルジョンを注入する方法は、魚肉の繊維組織に油脂が拡散できず、また、油脂が魚肉中で固化する際に粗大結晶になりやすく、良好な舌触りを与えないという問題がある。
また、特許文献2に開示されたコーティング組成物を用いても、魚肉の内部へ入りにくく、油脂添加による旨味が十分に発揮できず食感が改良されない。さらに、これをコーティングした魚肉を用いてバーナーで炙り、いわゆる炙りを作製した場合、表面が堅く、良好な食感が得られない。
本発明の目的は、脂肪分の少なく水気の多い魚肉の食感を、油性感あるジューシーな食感に改良する鮮魚食感改良用油脂組成物を提供することにある。
さらに、脂肪分の少なく水気の多い魚肉の食感を油性感あるジューシーな食感に改良でき、炙りとしたときに表面が軟らかい食感となる鮮魚食感改良用油脂組成物を提供することにある。
そして、本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物により処理し、刺身、寿司種、ネギトロ、炙りなどとして食したときトロ風味の食感を有するマグロ赤身肉を提供することを目的とする。
本発明において第1の発明は、油脂成分100質量部に対して、グリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステル0.05〜3質量部およびジグリセリン脂肪酸エステル0.05〜3質量部を含む鮮魚食感改良用油脂組成物である。
第2の発明は、さらに、油脂成分100質量部に対して、酢10〜20質量部を含む第1の発明の鮮魚食感改良用油脂組成物である。
第3の発明は、第1又は第2の発明の鮮魚食感改良用油脂組成物により処理されたマグロ赤身肉である。
本発明の第1の発明によれば、脂肪分が少なく水気の多い魚肉の食感を、油性感あるジューシーな食感に改良する鮮魚食感改良用油脂組成物が提供される。本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物によって、マグロ赤身肉を処理するとトロ風味の食感のマグロ赤身肉、ネギトロなどが得られる。
第2の発明によれば、脂肪分が少なく水気の多い魚肉の食感を油性感あるジューシーな食感に改良でき、炙りとしたときに表面が軟らかい食感となる鮮魚食感改良用油脂組成物が提供される。本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物によって、マグロ赤身肉を処理するとトロ風味の食感のマグロ赤身肉の炙りなどが得られる。
第3の発明によれば、刺身、寿司種、ネギトロ、炙りなどとして食したときトロ風味の食感を有するマグロ赤身肉が得られる。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物は、油脂、グリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルおよびジグリセリン脂肪酸エステルを含む油脂組成物である。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物は、鮮魚及び鮮魚加工品の一般に使用することができる。マグロ赤身肉、サーモン、はまち、ブリ、エンガワ等の寿司種等の鮮魚の使用に好適である。さらに魚肉加工食品であるかまぼこ、ちくわ、はんぺん等にも使用できる。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物に使用する油脂成分としては、一般に使用される食用動植物油脂を使用できる。例えば、大豆油、菜種油、米油、コーン油、綿実油、ひまわり油などの植物性油脂やマグロ油又はマグロ精製油等が挙げられる。これらの中から1種又は2種以上を混合したものを使用できる。
本発明において、使用する油脂は、常温で液状であることが好ましい。鮮魚用食感改良剤が流動状の物性となり、使用に適している。なお、本発明の目的を損なわない範囲で油溶性の各種調味料や各種フレーバー等の添加した油脂を使用することができる。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物は、グリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルおよびジグリセリン脂肪酸エステルを併用することを特徴とする。グリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルを単独で使用すると、鮮魚肉の表面に均一に油脂をコーティングすることができるが、油っぽい食感となり、例えば、マグロ赤身肉においてトロ風味の食感を与えることができない。ジグリセリン脂肪酸エステルを併用することにより、ジューシーな食感に改良でき、マグロ赤身肉においてはトロ風味の食感を与えることができる。
グリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、ヘキサグリセリンモノパルミレート、ヘキサグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノラウレート等が挙げられる。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは、市販されており、例えば、SYグリスターPS−5S(阪本薬品製)、SYグリスターMO−5S(阪本薬品製)、SYグリスターMS−5S(阪本薬品製)、サンソフトQ−17S(太陽化学製)、サンソフトQ−18S(太陽化学製)、SYグリスターML−750(阪本薬品製)を挙げることができる。
本発明においては、HLB12以上でありグリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用することが好ましい。この場合、水中油滴型エマルジョンの形態とする際に、より安定性の高いエマルジョンが得られる。また、鮮魚食感改良用油脂組成物が酢を含む場合でも安定なエマルジョンを得ることができる。
ジグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの重合度が2のポリグリセリン脂肪酸エステルである。ジグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノオレエートが挙げられる。これらのジグリセリン脂肪酸エステルも、市販されており、例えば、サンソフトQ−18B(太陽化学製)、ポエムDOV−100C(理研ビタミン製)を挙げることができる。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物において、グリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は油脂成分100質量部に対して0.05〜3質量部、好ましくは0.5〜2質量部である。0.05質量部未満では、鮮魚の表面に油脂組成物を均一にコーティングすることが難しくなる。また、併用する他の乳化剤にもよるが安定な水中油滴型エマルジョンを作製することが難しくなる。3質量部を超えると、鮮魚食感改良用油脂組成物により処理した魚肉において、乳化剤の味がして食味が悪くなるおそれがある。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物において、ジグリセリン脂肪酸エステルの含有量は油脂成分100質量部に対して0.05〜3質量部、好ましくは0.5〜2質量部である。0.05質量部未満では、油性感あるジューシーな食感に改良することが難しくなる。3質量部を超えると、鮮魚食感改良用油脂組成物により処理した魚肉において、乳化剤の味がして食味が悪くなるおそれがある。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物において、グリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステル1質量部に対して、ジグリセリン脂肪酸エステルを0.01〜100質量部含むとき、特に酢を含む鮮魚食感改良用油脂組成物の乳化安定性が向上するので好ましい。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物において、さらに酢を含有させると、魚肉への油脂成分の浸透性を高め、例えば、炙りとしたときに、表面が硬くならず、軟らかい食感を維持することができる。
酢としては、醸造酢及び合成酢を使用することができる。醸造酢としては、穀物酢、米酢、果実酢(リンゴ酢、ブドウ酢)などの酢が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物において、酢の含有量は油脂成分100質量部に対して10〜20質量部であることが好ましい。10重量部未満の場合、マグロ赤身肉の炙りなどにおいて酢による食感改良効果が弱くなる。20質量部より多い場合、酢自体による酸味が極めて強すぎるため、全体的な食味のバランスを損ねてしまう。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物において、本発明の目的を損なわない範囲で任意の原材料として、砂糖、食塩、増粘多糖類、澱粉、香辛料、着色料、香料、グルタミン酸塩、酸化防止剤等を添加しても構わない。例えば、増粘多糖類としては、キサンタンガム、ローストビーンガム、ジェランガム、ネイティブジェランガム、寒天、カラギナン等が挙げられ、これらを単独でも2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
ここで、卵黄又は全卵を使用すると、マグロ赤身肉のトロ風味にさらにコクを与えるので好ましい。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物において、卵黄又は全卵の含有量を3〜8質量%とすることが好ましい。8質量%を超えると、炙りを作製する際に表面に変性固形物(焦げ)が発生しやすくなる。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物は、これに鮮魚を漬け込んだり、鮮魚の表面に刷毛塗りしたりして使用することができる。
本発明において、鮮魚食感改良用油脂組成物の使用量は、魚肉100質量部当たり、3〜25質量部がよく、好ましくは5〜15質量部である。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物の形態は、ショートニング、水中油滴型エマルジョンが挙げられる
ショートニングの製造方法は、例えば、油脂成分に、グリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルおよびジグリセリン脂肪酸エステル、その他の成分を混合することにより製造することができる。その他の成分としてはグリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルおよびジグリセリン脂肪酸エステル、その他ビタミンEなど酸化防止剤が所定量配合され製造される。
水中油滴型エマルジョンの製造方法は、例えば、水にグリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルを溶解し、ここに、あらかじめジグリセリン脂肪酸エステルを溶解した油脂成分を加え、乳化機にて、乳化して調整することができる。水には、例えば酢、全卵、液糖、醤油(白醤油等)、みりん風調味料等の成分を加えてもよい。
例えば、油脂成分(40〜70質量部)、卵黄又は全卵(3.0〜8.0質量部)、酢(10〜20質量部)、グリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステル(油脂成分100重量部に対して0.05〜3質量部)、ジグリセリン脂肪酸エステル(油脂成分100重量部に対して0.05〜3質量部)、増粘多糖類(0.03〜0.3質量部)、水(残部)からなる水中油滴型エマルジョン形状の鮮魚食感改良用油脂組成物は、マグロ赤身肉の食感改良に好適である。すなわち、魚肉組織に対する酢および乳化剤の作用、さらに連続相が水であることにより、マグロ赤肉中に油脂を均一に浸透させることができ、油脂が肉組織中に分散する結果、マグロ赤身肉にジューシーな食感を与えトロ風味を感じさせる。また卵黄又は全卵の配合量を3〜8質量%にすることで、加熱による変性固形物(焦げ)を生じさせることなく、食感にコクを与えることができる。
本発明に係る鮮魚食感改良用油脂組成物は、例えば、漬け込み、刷毛塗り、練り込み等により、マグロ赤身肉を処理し、刺身、寿司種、ネギトロとして食することができる。さらに、これをバーナー等により表面を焼くことによって炙りを作製すると、トロ風味の食感のマグロ赤身肉の炙りなどが得られる。本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物の使用量は、マグロ魚肉100質量部当たり、3〜25質量部がよく、好ましくは5〜15質量部がよい。
本発明の実施様態を実施例及び比較例を挙げながら、本発明を詳細に説明する。
但し、「%」は、「質量%」を意味する。
実施例1
70℃に加熱したナタネ油100質量部にデカグリセリンモノラウレート(阪本薬品株式社製 SYグリスターML−750)を0.05質量部、ジグリセリンモノオレエート(理研ビタミン株式会社製 ポエムDOV−100C)を3質量部混合し、完全に溶解させてから20℃まで急冷して鮮魚食感改良用油脂組成物を得た。この油脂組成物とマグロ赤身肉との親和性、食感を評価するために、油脂組成物中にあらかじめマグロ赤身肉を約2cm(幅)×約7cm(長さ)×約0.5cm(厚さ)にカットしたメバチマグロ赤身肉を3時間漬け込んだ。そして、網の上に30分放置して余分な油脂組成物を取り除き、鮮魚食感改良用油脂組成物により処理されたマグロ赤身肉について評価した。結果を表1−1に示す。
実施例2〜9及び比較例1〜6
表1−1及び表1−2における組成にて、実施例1と同様にして鮮魚食感改良用油脂組成物を得、処理されたマグロ赤身肉について評価した。
Figure 2006166780
表1−1及び1−2において使用した原料を下記に示す。
デカグリセリンモノラウレート:SYグリスターML−750(阪本薬品株式会社製)
デカグリセリンモノステアレート:サンソフトQ-18S(太陽化学株式会社製)
デカグリセリンモノオレエート:サンソフトQ-17S(太陽化学株式会社製)
ヘキサグリセリンモノラウレート:SYグリスターMOー7S(阪本薬品株式会社製)
ペンタグリセリンモノラウレート:サンソフトA-121E(太陽化学株式会社製)
ジグリセリンモノオレート:ポエムDOC−100V(理研ビタミン株式会社製)
(1)マグロ赤身肉との親和性は目視にて観察し以下の基準にて評価した。
○:油滴が均一で全体に油がのっている状態。
△:部分的に油がのっている状態。
×:油滴が不均一で油が全くのっていない状態。
(2)食感は食して以下の基準にて評価した。
○:トロ風味がする。
△:ジューシーであるが、乳化剤によって風味が悪い。
×:水っぽく、赤身肉の風味と変わらない。
表1−1及び1−2に示す結果より、本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物はマグロ赤身肉との親和性がよく、表面に均一に油をのらせ、マグロ赤身肉の食感をトロ風味に改良できることがわかる。油をそのまま使用した場合(比較例1)に比べて油のりが改良され、グリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステルをそれぞれ単独で使用した場合(比較例2、3)に比べて、食感が改良される。
実施例10
酢(10質量部)、デカグリセリンモノラウレート(1質量部、阪本薬品株式会社社製 SYグリスターML−750)、水(28.5質量部)を混合し、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)にて5,000rpm、10分間の攪拌条件で、充分に混合攪拌した。得られた水相原料混合物をTKホモミキサーで10,000rpmの攪拌条件で攪拌しながら、これにあらかじめジグリセリンモノオレエート(0.5質量部、理研ビタミン株式会社製 ポエムDOV−100C)を溶解したナタネ油(60質量部)からなる油相原料をを添加し、その後15分間、乳化して鮮魚食感改良用油脂組成物を得た。この油脂組成物とマグロ赤身肉との親和性、食感を評価するために、油脂組成物中にあらかじめマグロ赤身肉を約2cm(幅)×約7cm(長さ)×約0.5cm(厚さ)にカットしたメバチマグロ赤身肉を3時間漬け込んだ。そして、網の上に30分放置して余分な油脂組成物を取り除き、鮮魚食感改良用油脂組成物により処理されたマグロ赤身肉について評価した。また、炙りは、マグロ赤身肉体を取り出したものを、ガスバーナーの炎でマグロ赤身肉表面に焦げ目をつけ、この食感を評価した。結果を表2に示す。
実施例8及び比較例6〜7
表2における組成にて、実施例7と同様にして鮮魚食感改良用油脂組成物を得、処理されたマグロ赤身肉について評価した。
Figure 2006166780
(1)乳化剤の安定性は以下の基準で判断した。
良好:油分の部分分離のないもの、
やや良好:少し分離のあるもの、
不良:明瞭な油分分離を生じているもの。
(2)マグロ赤身肉との親和性は目視にて観察し以下の基準にて評価した。
○:油滴が均一で全体に油がのっている状態。
△:部分的に油がのっている状態。
×:油滴が不均一で油が全くのっていない状態。
(3)食感は食して以下の基準にて評価した。
○:トロ風味がして美味である。
△:味が薄く、ややおいしさに欠ける。
×:酸味が強すぎて、おいしくない。
(4)炙りの軟らかさについては以下の基準で判断した。
○:トロのように軟らかい。
△:やや軟らかさに欠ける。
×:油性感が少なくパサパサして、おいしくない。
表2に示す実施例の結果より、酢を含有する本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物は、マグロ赤身肉との親和性がよく、表面に均一に油をのらせ、マグロ赤身肉の食感をトロ風味に改良できることがわかる。さらに、炙りにおいて、マグロ赤身肉の表面をトロのように軟らかくできることがわかる。
酢の含有量が少ない場合(比較例7)では炙りにおいて表面を軟らかくできず、多い場合(比較例8)では食味において酸味が強くなるので、使用に適さなくなることがわかる。
実施例13
表3に示す組成で、酢、全卵、デカグリセリンモノラウレート、増粘多糖類、醤油、みりん風調味料及び他の調味料を混合し、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)にて5,000rpm、10分間の攪拌条件で、充分に混合攪拌した。得られた水相原料混合物に、あらかじめジグリセリンモノオレエートを溶解したナタネ油からなる油相原料を徐々にTKホモミキサー添加し、10,000rpm、15分間の攪拌条件で乳化して鮮魚食感改良用油脂組成物を得た。次に、油脂組成物中にあらかじめマグロ赤身肉を約2cm(幅)×約7cm(長さ)×約0.5cm(厚さ)にカットしたメバチマグロ赤身肉を3時間漬け込んだ。そして、網の上に30分放置して余分な油脂組成物を取り除き、ガスバーナーの炎でマグロ赤身肉表面に焦げ目をつけ、炙りを作製した。鮮魚食感改良用油脂組成物の粘度(流動性)、漬け込み時の作業性、マグロ赤身肉との親和性、作製された炙りの外観及び食感(ジューシーな食感)、全体の風味について評価した。なお粘度については、ブルックフィールド粘度計(ブルックフィールド社製)を用い、300ml溶ビーカーに試料を入れて、ローターNo.3、10℃、回転数6rpmの条件で測定した。
Figure 2006166780
表3において使用した原料を以下に示す。
米酢(春駒、キューピー株式会社製)、加糖凍結全卵(イフジ産業株式会社製)、みりん風調味料味付け一番(メルシャン株式会社製)、白醤油(キノエネ醤油株式会社製)、オリゴトース(三菱化学フーズ株式会社製)、デカグリセリンモノラウレート(SYグリスターML−750、阪本薬品株式会社製)、ジグリセリンモノオレエート(ポエムDOV−100C、理研ビタミン株式会社製)、サンエース(キサンタンガム、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)
比較例9
約2cm(幅)×約7cm(長さ)×約0.5cm(厚さ)にマグロ赤身肉をカットしたものを、ガスバーナー等の炎でマグロ赤身肉表面に焦げ目をつけた。実施例9と同様に粘度(流動性)、漬け込み時の作業性、マグロ赤身肉との親和性、作製された炙りの外観及び食感(ジューシーな食感)、全体の食感を評価した。結果を表4に示す。
比較例10
約2cm(幅)×約7cm(長さ)×約0.5cm(厚さ)にマグロ赤身肉をカットし、マグロ赤身肉の切り身が隠れるくらいのナタネ油中に3時間漬け込んだ。その後、ナタネ油の入った容器から、マグロ赤身肉体を取り出して得られたものを、ガスバーナー等の炎でマグロ赤身肉表面に焦げ目をつけた。実施例9と同様に粘度(流動性)、漬け込み時の作業性、マグロ赤身肉との親和性、作製された炙りの外観及び食感(ジューシーな食感)、全体の食感を評価した。結果を表4に示す。
比較例11
約2cm(幅)×約7cm(長さ)×約0.5cm(厚さ)にマグロ赤身肉をカットし、マグロ赤身肉の切り身を市販のマヨネーズに3時間漬け込んだ。その後、マヨネーズの入った容器から、マグロ赤身肉体を取り出して得られたものを、ガスバーナー等の炎でマグロ赤身肉表面に焦げ目をつけた。実施例9と同様に粘度(流動性)、漬け込み時の作業性、マグロ赤身肉との親和性、作製された炙りの外観及び食感(ジューシーな食感)、全体の食感を評価した。結果を表4に示す。
Figure 2006166780
(官能評価)
表4における食感の評価は、男5名女性5名計10名のパネラーにより評価法にて官能評価した。
評価法は個々のパネラーによる評価点の合計を、全パネラーの人数で除した平均評価点で決定するものである。
個々のパネラーは試食したとき、その評価を5段階に分け、「好ましい」を5点、「どちらかといえば好ましい」を4点、「どちらともいえない」を3点、「どちらかといえば好ましくない」を2点、「好ましくない」を1点と評価しすべての項目の合計点を総合評価点として表4に示す。
表4に示すように本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物は、漬け込み時の作業性に問題ない流動性を有しており、炙りも外観上も綺麗な仕上がりにすることができた。また、よりジューシーな食感を与え、全体的なバランスに優れていた。
実施例14
メバチマグロの赤身肉1kgを常温で挽肉機(株式会社ボニ−製、SE100型、目皿の口径9.6ミリ)によって粉砕した。得られた粉々状粉砕肉に、実施例9で作製した鮮魚食感改良用油脂組成物100gを加え、常温で混合機(墨水交易株式会社製、ホバートミキサー)を用いて練り合わせた。練り合わせた製品を寿司種としてネギトロ風にした。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物は、練り合わせ時の作業性に問題ない流動性を有しており、外観の色合い的にもかすかな白黄色になるため優れており、食感の面でも味にコクがあり、全体的なバランスに優れたネギトロに仕上げることができた。
本発明の鮮魚食感改良用油脂組成物により処理されたマグロ赤身肉は、風味や食感に優れた製品であることがわかる。

Claims (3)

  1. 油脂成分100質量部に対して、グリセリンの重合度が6〜10のポリグリセリン脂肪酸エステル0.05〜3質量部およびジグリセリン脂肪酸エステル0.05〜3質量部を含む鮮魚食感改良用油脂組成物。
  2. さらに、油脂成分100質量部に対して、酢10〜20質量部を含む請求項1に記載の鮮魚食感改良用油脂組成物。
  3. 請求項1又は請求項2の鮮魚食感改良用油脂組成物により処理されたマグロ赤身肉。
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