JP2006159600A - 生分解性印刷膜材 - Google Patents

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Abstract

【課題】
この発明は、生分解性を有し、高い記録特性と柔軟性に優れた生分解性印刷膜材を提供するものである。
【解決手段】
この発明の生分解性印刷膜材は、生分解性能を有する繊維布帛の少なくとも片面に、無機物および吸水性樹脂を含有する生分解性樹脂組成物からなるインク受理層が積層されてなることを特徴とする生分解性印刷膜材であり、無機物としてシリカが生分解性樹脂組成物中に生分解性樹脂に対し20〜80重量%含まれており、また、吸水性樹脂が生分解性樹脂似たいし20〜70重量%含まれている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、好適にはインクジェットにより印刷され、ポップ、ポスターおよび大型垂れ幕に使用される生分解性印刷膜材に関するものであり、高い印刷適性と柔軟性があり、使用後の廃棄が土中埋設などによって可能な生分解性を有する地球環境に優しい印刷基材として好適に用いられる生分解性印刷膜材に関するものである。
インクジェット印刷は、インクを細かいジェット流として印刷基材に印刷する方法で、昨今の技術革新もあり、銀塩写真並の画像・画質および印刷速度とも向上し、CD−ROMなどの表面に印刷できるなど用途も急速に拡大しつつあり、印刷方法のスタンダードになりつつある。インクジェット印刷に用いられる印刷基材としては、天然紙や合成紙などの紙、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどからなる樹脂フィルム、およびポリプロピレン繊維やポリエステル繊維などからなる不織布(特許文献1)などが知られている。紙以外の印刷基材では、印刷基材自体にインクを吸着する能力が少ないので、鮮明な画質を出すことが難しい。そのため、カチオン樹脂や無機物などを使ったインク受理層を形成した印刷基材も知られている。このような印刷基材は、使用期間が短く廃棄されるものであり、また、紙などの木材を原料にしたものは、森林の減少など地球環境にも悪影響を与える。特に、ポリ塩化ビニルや合成樹脂製品を使用した印刷基材は、産業廃棄物としてのゴミの問題があり、そのなかでもポリ塩化ビニル製品は、焼却時に有害ガスが発生するなど、いずれにしても地球環境に配慮した構成にはなっていない。また、インク受理層として、一般的に多く使われている4級アンモニウム塩型カチオン樹脂は、生分解性がなく、生分解性のシート状物に付着させても、インク受理層は分解せず、生分解性のある印刷基材としては不十分であった。
特開2003−96687号公報
本発明の目的は、かかる従来技術の背景に鑑み、生分解性を有し、高い記録特性と柔軟性に優れた生分解性印刷膜材を提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、本発明の生分解性印刷膜材は、生分解性能を有する繊維布帛の少なくとも片面に、無機物および吸水性樹脂を含有する生分解性樹脂組成物からなるインク受理層が積層されてなることを特徴とする生分解性印刷膜材である。
本発明の生分解性印刷膜材の好ましい態様によれば、上記の無機物はシリカであり、そのシリカが生分解性樹脂に対し20〜80重量%含まれており、上記の生分解性樹脂組成物において、吸水性樹脂が生分解性樹脂に対し20〜70重量%含まれており、そして、生分解性可塑剤が生分解性樹脂に対し10〜50重量%含まれている。
本発明の生分解性印刷膜材の好ましい態様によれば、上記の生分解性樹脂組成物の繊維布帛への付着量は20〜100g/mである。
本発明の生分解性印刷膜材の好ましい態様によれば、上記の繊維布帛を構成する繊維が、脂肪酸アミドを0.1〜5wt%含有しており、また、上記の繊維布帛を構成する繊維中のトータルカルボキシル末端濃度は10当量/t以下である。
本発明の生分解性印刷膜材の好ましい態様によれば、上記の繊維布帛はポリカルボジイミド化合物が添加されたポリ乳酸繊維からなり、色調の指標であるb値は7以下である。
本発明の生分解性印刷膜材の好ましい態様によれば、上記の繊維布帛または生分解性印刷膜材はカレンダー加工されている。
本発明の生分解性印刷膜材の好ましい態様によれば、本発明の生分解性印刷膜材はインクジェット印刷用基材として好適に用いられる。
本発明によれば、生分解性を有し、高い記録特性と柔軟性に優れた生分解性印刷膜材が得られる。この生分解性印刷膜材を使用することで、生分解性を有するため廃棄に際しては環境負荷とならず、柔軟性が有るためあらゆる形状の構造物に設置することができるという、垂れ幕やポスターなどの広告媒体に適した印刷基材が得られる。
本発明者らは、生分解性を有し、高い記録特性と柔軟性を持つ生分解性印刷膜材について鋭意検討し、生分解性能を有する繊維布帛の少なくとも片面に、生分解性樹脂からなる膜を積層したインクジェット印刷用基材とし、さらに前記の生分解性樹脂に無機物および吸水性樹脂を添加してみたところ、意外にもかかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
本発明で用いられる生分解性を有する繊維布帛を構成する素材としては、綿や麻で代表される天然繊維、天然皮革および木材などの天然物や、“グリーンプラ”(生分解性プラチック研究会、登録商標)に定義される基準を遵守しているものが挙げられる。これらの素材のなかでも、埋め立てて土中で分解可能であり、さらにはコンポスト化が可能であるポリ乳酸が好ましい。
ポリ乳酸からなる繊維は、植物由来の乳酸を原料として重合してポリ乳酸樹脂となし、ついで繊維化されるものであり、繊維状態では、融点は170℃前後であり120℃程度の熱水にも耐えることから、織物等の繊維布帛となしてかつ種々の処理を付与することができる。そして、ポリ乳酸からなる繊維は、生分解性を有し、土中や水中での加水分解・微生物分解を経へて水と炭酸ガスに還元されることから、地球環境への負荷を増加させることなくライフサイクルを形成することができる。また、ポリ乳酸繊維の比重は1.2から1.3であり、ポリエステル繊維より軽く、基布としての繊維布帛の軽量化と言う点でも有利である。ポリ乳酸繊維の引っ張り強度は5000N/cm程度であって十分な強度を有している。ポリ乳酸繊維は、溶融紡糸で繊維化されるが、ポリ乳酸繊維の強度は、400mN/dtexと、繊維としては比較的強い。融点は175℃で、比較的低いが、印刷用基布としては問題ない。吸湿率は0.5%であり、疎水性を示し、屋外用宣伝媒体としての使用に適している。
また、繊維布帛の種類としては、織物、編物および不織布から選ばれた少なくとも1種を好ましく使用することができるが、これらの中でも、強力や寸法安定性、記録特性向上より表面が平滑なものが良いことから織物が好ましく使用される。織物の組織としては、平織り、綾織り、朱子織り、蜂巣、畝織、斜子織、二重組織、パイル組織、からみ組織および紋織組織などがあるが、上記の理由から平織りが好ましい。織物の製織手段については、エアージェット、ウォータージェットおよびレピア等種類を問わない。
本発明のインクジェット印刷用基材に好適な生分解性印刷膜材の構成は、インクジェットプリンターから吐出されるインクを吸収するインク受理層が印刷面側に設置されており、生分解性印刷膜材としての機械特性を保持するためにインク受理層の下に繊維布帛が設置されている。インク受理層としては、インクを早く吸収し、印刷後手に触れたり、紙に押さえつけても転写しないことやインクを適切に吸収することで鮮やかな色彩を表現することが必要である。また、生分解性印刷膜材として使用するに当たり、強力や耐久性、フレキシブルなどの特性が必要である。
生分解性を有すことから、インク受理層としては、生分解性樹脂を用いることが必要である。一般的にインク受理剤として4級アンモニウム塩型カチオン樹脂が用いられるが、この4級アンモニウム塩型カチオン樹脂は生分解性能がないため、この4級アンモニウム塩型カチオン樹脂をインク受理層として積層した印刷基材を廃棄し、土中に埋没した場合、インク受理層がゴミとして残り、結果として地球環境負荷の低減にはならない。生分解性樹脂としては、生分解性を有していれば特に限定することはなく、例えば、酢酸ビニル、化学合成系脂肪族ポリエステル樹脂およびポリ乳酸などが使用され、また、これらの樹脂を混合して使用することもできる。
本発明の生分解性印刷膜材には、生分解性樹脂中に無機物と吸水性樹脂が含まれていることが必要である。それは、高い記録特性を発現させるためであり、その要求特性としては、インクの吸収速度、吸収量、にじみ防止、インクの裏抜け防止、記録濃度および画像鮮明性などが挙げられる。これらの性能は、インクジェット印刷のインクが、そのほとんど水性インクで構成されていることから、水分を吸水し、インク成分(染料、顔料)を保持することでその性能を発現することができる。
本発明で用いられる無機物としては、酸化チタンやシリカなどの金属酸化物の他に、アルミナ、セラミックス、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化鉄、タルク、酸化アルミニウムなどが挙げられるが、このなかでも水分の吸水性能が優れ、インク成分を保持することができる、多孔質のシリカが好ましく、用いられる。
多孔質のシリカは、その孔の中にインク成分を保持することができるため、にじみを防止することができる。また、多孔質のシリカは、その孔が多く表面積が大きくなり、水分を多く含むことができるので、吸収速度と吸収量を向上させることが可能である。
多孔質については、簡易BET法(一点BET法)という指標があり、窒素ガスの吸着量から算出する方法があり、本発明では比表面積が100[m/g]以上であることが好ましく、例えば、比表面積が300[m/g]程度の多孔質のシリカを用いることができる。
また、吸収速度と吸収量を向上させるために、生分解性樹脂中に吸水性樹脂を添加することが必要である。吸水性樹脂は、シリカなどに比べインク成分の保持性能は低いが、吸収速度、吸収量とも大幅に優れているため、印刷後他の物に付着することもなくなる。また、吸水性樹脂としては、吸水性能を有する重合体であれば特に限定するものではないが、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、アクリル酸・アクリル酸ソーダの共重合体および変性アルキレンオキサイドとうが挙げられ、特に性能が良いものとしてアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物が好ましく用いられる。
本発明において吸水性とは、吸水性樹脂1gに対して10倍以上の水重量を吸収できるものが好ましい。また、本発明で用いられる吸水性樹脂の粒径は、凝集や脱落を避ける意図から、好ましくは20〜30μmである。
無機物として好ましいシリカは、生分解性樹脂組成物中に生分解性樹脂に対して20〜70重量%含まれていることが好ましい。上述印刷適性を向上させるためにシリカ等の無機物を添加することが必要であるが、その添加量が20重量%より少ないと、吸収性能が劣り、また、70重量%より多くなるとクラックが発生し品位が悪化したり、バインダー樹脂である生分解性樹脂がシリカを保持できなくなり、シリカの脱落が発生し、脱落したシリカによりノズル詰まりなどの問題が発生するので、添加量は20〜70重量%が適性量であり、さらに好ましい添加量は30〜50重量%である。
また、シリカの平均粒子径(レーザー法)は、好ましくは1〜6μmであり、より好ましくは1.5〜4.0μmである。粒子径が小さ過ぎると表面積が小さく吸収量が少なくなるため記録特性が劣る傾向がある。また、粒子径が大き過ぎると、凝集しやすくクラックが発生し表面品位が落ちることがあり、シリカの脱落の原因にもなる。
また、吸水性樹脂は、生分解性樹脂組成物中に生分解性樹脂に対して10〜50重量%含まれていることが好ましい。添加量が10重量%より少ないと吸収速度と吸収量が共に劣るため記録特性が悪くなり、また添加量が50重量%より多いと、吸水性樹脂は水を吸水すると膨潤するため、表面品位が悪化するのと押さえると水を放出するので再付着が発生することがある。また、吸水性樹脂の平均粒径は10〜50μmであることが好ましい。平均粒径が10μmより小さいと吸収量が少なくなるため記録特性が悪くなることがある。また、それより細かい粒径の吸水性樹脂を作ることは困難であるので10μm以上が好ましい。また、通常吸水性樹脂の平均粒径は350μm以上のものが多いが、平均粒径が50μmより大きいと前述のとおり、吸水により膨潤するため粒径が表面品位が悪化する傾向を示す。
繊維布帛に対する生分解性樹脂組成物の付着量は、20〜100g/mであることが好ましい。付着量が20g/mより少ないと、シリカや吸水樹脂の絶対量が少なくなり記録特性が劣ることがある。また、バインダー樹脂としての生分解性樹脂の量も少なくなるため、シリカや吸水性樹脂を保持できなくなり、脱落が発生することがある。また、付着量が100g/mより多くなると生分解性樹脂の量が多くなり、風合いとして硬くなるたり、ごわごわ感がでるため垂れ幕などの用途に使えなくなったり、硬くなることで、繊維布帛の柔軟性に樹脂が追従しなくなるため剥離などの問題が発生することがある。
さらに好ましくは、JIS L 1092 5.1(1998年)で規定する耐水度試験A法(低圧法)における静水圧法に基づいて測定したとき、1000mmHO以上になるために、生分解性樹脂組成物の付着量は40g/m〜80g/mであることが好ましい。
繊維布帛に対する生分解性樹脂組成物からなるインク受理層の積層方法としては、コーティング法やディッピング法などで生分解性樹脂組成物を塗布し、好ましくは100〜130℃の温度範囲で乾燥して固化させる方法が好ましい。コーティング加工法としては一般に用いる加工法を採用することができ、ナイフコーティング、キスコーティング、コンマコーティングおよびグラビアコーティング等公知の加工方法が用いられる。
本発明で用いられる生分解性樹脂組成物において、柔軟性と接着力向上の点から、可塑剤が、生分解性樹脂に対し10〜50重量%含まれていることが好ましい。該可塑剤は地球環境の点から、生分解性能を有し、土中に埋没しても環境に影響のでないために、生分解性可塑剤であるこが好ましい。生分解性可塑剤としては、生分解性能を有していれば特に限定することはないが、柔軟性効果が高い点から、アジピン酸エステルが好ましい。
生分解性可塑剤は、風合いが硬くなり、繊維布帛の柔軟性に追従できず樹脂が剥離したり、樹脂層にクラックを生じるなどの問題が発生することを防止する。また、柔軟性が欠けると加工性や、取り扱い性が困難になったり、曲線部分に使用できないなどの制約が生じる。このことから生分解性樹脂組成物において、生分解性可塑剤は生分解性樹脂に対し10〜50重量%部含まれていることが好ましい。添加量が10重量%より少ないと上述のような問題が発生し、また、添加量が50重量%より多いと可塑剤が樹脂表面に移行し、ブリードするためタックや可塑剤そのものが表面に出てくるため記録特性を悪化させることがある。
記録特性を向上させるために、繊維布帛または生分解性印刷膜材は、カレンダー加工されていることが好ましい。表面を平滑にすることで、印刷用紙のようにきめ細かい表現をすることができる。カレンダー条件としては、80〜110℃の温度に加熱したローラーで3〜80トン/cmの加重を掛けることが好ましい。カレンダー加工を行う機械としては、2本以上のローラーにて繊維布帛または生分解性印刷膜材を圧縮するものであれば特に限定することはない。
本発明で好ましく用いられるポリ乳酸とは、乳酸やラクチド等のオリゴマーを重合したものを言い、L体あるいはD体の光学純度は90%以上になると、融点が高く好ましい。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸やラクチド以外の成分を共重合していてもよく、ポリ乳酸以外のポリマーや粒子、難燃剤および帯電防止剤等の添加物を含有していても良い。ただし、バイオマス利用や生分解性の観点から、ポリマーとして乳酸モノマーは50重量%以上とすることが重要である。乳酸モノマーは好ましくは75重量%以上、より好ましくは96重量%以上である。また、ポリ乳酸ポリマーの分子量は、力学特性と成形性のバランスの点から、重量平均分子量で5万〜50万であることが好ましい。
本発明で用いられるポリ乳酸には、ポリカルボジイミド化合物が添加されていることが好ましい。ここで言うポリカルボジイミド化合物は、ジイソシアネート化合物を重合したものが好適に用いられるが、中でも4,4‘−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドの重合体やテトラメチルキシリレンカルボジイミドの重合体やその末端をポリエチレングリコール等で封鎖したポリカルボジイミド化合物が好ましく用いられる。これは、ポリ乳酸ポリマーおよび/またはそれに含まれるオリゴマーの反応活性末端をポリカルボジイミド化合物で封鎖することにより、ポリマー中の反応活性末端を不活性化しポリ乳酸の加水分解を抑制するものである。この反応活性末端には水酸基とカルボキシル基があるが、カルボジイミド化合物はカルボキシル基の封鎖性に優れている。
また、本発明者らは、ポリ乳酸中でのポリカルボジイミド化合物の挙動を詳細に検討した結果、反応活性末端と反応していない、すなわち未反応のフリーポリカルボジイミド化合物が、製糸性や色調不良に悪影響を与えていることを見いだした。より具体的には、フリーのポリカルボジイミド化合物は、ポリ乳酸の成形加工や紡糸の温度である200〜250℃の温度で急激に熱劣化することが、上記問題点の原因であることを突き止めたものである。このことから、ポリカルボジイミド化合物が添加されたポリ乳酸繊維の製糸性や色調を向上させるためには、ポリカルボジイミド化合物の添加量および/または混練や溶融紡糸時の温度と滞留時間の選定が重要である。
ポリカルボジイミド化合物の添加量は、ポリ乳酸の重量に対して決めるよりもカルボキシル末端量に対して決めることが重要である。さらに、ラクチド等の残存オリゴマーも加水分解によりカルボキシル末端を生じることから、ポリマーのカルボキシル末端だけでなく残存オリゴマーやモノマー由来のものも併せたトータルカルボキシル末端量をまず調べることが重要である。そして、ポリカルボジイミド化合物の添加量をそれの2倍当量以下とすると、フリーのポリカルボジイミド化合物を減じることと、カルボキシル末端封鎖を高率で行うことを両立できる。ポリカルボジイミド化合物の添加量は、より好ましくはトータルカルボキシル末端量の1.5倍当量以下である。
また、末端封鎖により、トータルカルボキシル末端濃度は、ポリ乳酸全体に対し10当量/t以下であることが好ましく、耐加水分解性を飛躍的に向上させることができる。
一方、溶融紡糸時のポリカルボジイミド化合物の200〜250℃の温度での滞留時間は20分以下とすることが好ましく、ポリカルボジイミド化合物の熱劣化を抑制することができる。ポリカルボジイミド化合物の滞留時間は、より好ましくは10分以下である。
このため、ポリカルボジイミド化合物の添加方法も工夫することが好ましく、予めポリカルボジイミド化合物を添加したポリ乳酸チップを作製するよりも、紡糸時にポリ乳酸にポリカルボジイミド化合物を直接添加することが好ましい。例えば、紡糸時、ポリ乳酸ポリマーの溶融部でポリカルボジイミド化合物を添加したり、別々に溶融したポリカルボジイミド化合物とポリ乳酸をパック内で静止混練器等により混練する方法がある。
本発明で用いられる生分解性能を有する繊維である耐加水分解性に優れたポリ乳酸繊維では、黄味の色調を指標であるb値は7以下であることが好ましく、これにより、衣料用途等の色調が重要な用途にも使用可能となる。b値は好ましくは5以下である。
ポリ乳酸繊維のb値改善については、ポリエチレンテレフタレート等で用いられているように、酢酸コバルト等の青味付け化合物を併用することももちろん可能であるが、これらをあまり多量に用いると染色時に色が濁りポリ乳酸繊維の特徴である鮮明な発色性が損なわれたり、糸切れの原因となることもあるため、併用するにしても添加量はポリ乳酸重量に対し500ppm以下とすることが好ましい。
本発明において耐加水分解性は、繊維の粘度保持率や強度保持率で評価することが可能である。本発明においては、サンプル30gと水300gを圧力容器に入れ、130℃の温度で60分間熱水処理前後の繊維の粘度保持率は、75%以上であることが好ましい。粘度保持率は、より好ましくは85%以上である。また、熱水処理前後の繊維の強度保持率は70%以上であることが好ましい。強度保持率は、より好ましくは85%以上である。
耐加水分解性に優れたポリ乳酸繊維では、工程通過性や製品の力学的強度を十分高く保つためには、強度は2.0cN/dtex以上とすることが好ましい。強度は好ましくは3.5cN/dtex以上である。また、本発明で用いられるポリ乳酸繊維の伸度は15〜70%であることが好ましく、繊維製品にする際の工程通過性が向上する。伸度は、より好ましくは25〜50%である。
本発明で用いられる繊維では、沸収が0〜20%であることが好ましく、繊維および繊維製品の寸法安定性が良い。沸収は、より好ましくは3〜10%である。
本発明で用いられる耐加水分解性に優れたポリ乳酸繊維の断面形状は、丸断面、中空断面、三葉断面等の多葉断面およびその他の異形断面についても自由に選択することが可能である。また、繊維の形態は、長繊維、短繊維等特に制限はなく、長繊維の場合はマルチフィラメントでもモノフィラメントであっても良い。
繊維布帛を構成する繊維が、繊維全体に対して脂肪酸アミドを0.1〜5wt%含有していることが好ましい。特に好ましい脂肪酸アミドとしては、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪酸モノアミドが挙げられる。脂肪酸アミドの含有量を0.1wt%以上とすることで、繊維の表面摩擦係数が低減し、繊維製品に要求される耐摩耗性と繰り返し使用での耐久性と柔軟性を付与することができる。さらに、繊維布帛の加工工程での裁断カッターや高速のミシン針による繊維布帛の融着を抑制し、工程通過性を向上させることができる。また、脂肪酸アミドの含有量を5wt%以下とすることで、脂肪酸アミドを微分散することができ、繊維の物性斑や染色斑が発生するのを防ぐことができる。脂肪酸アミドの含有量は、より好ましくは0.5〜3wt%である。
本発明では、該脂肪酸アミドが単一で含有させても良く、また複数の成分が混合されていても良い。脂肪酸アミドが混合されている場合には、その混合物が繊維全体に対して0.1〜5wt%含有していれば良い。
本発明で用いられる脂肪酸ビスアミドとしては、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族系ビスアミド等の1分子中にアミド結合を2つ有する化合物を指し、例えば、メチレンビスカプリル酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスイソステアリン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、およびヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
また、本発明でいうアルキル置換型の脂肪酸モノアミドとは、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置き換えた構造の化合物を指し、例えば、N−ラウリルラウリン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ベヘニルベヘニン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、およびN−オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。該アルキル基は、その構造中にヒドロキシル基等の置換基が導入されていても良く、例えば、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、N−ステアリル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、およびN−オレイル12ヒドロキシステアリン酸アミド等も本発明のアルキル置換型の脂肪酸モノアミドに含まれる。
本発明では、脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドが好ましく用いられるが、これらの化合物は、通常の脂肪酸モノアミドに比べてアミドの反応性が低く、溶融成形時においてポリ乳酸との反応が起こりにくい。また、高分子量のものが多いため、一般に耐熱性が良く、昇華しにくいという特徴がある。特に、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いためポリ乳酸と反応しにくく、また、高分子量であるため耐熱性が良く、昇華しにくいことから、より好ましい滑剤として用いることができる。
また、本発明で好ましく用いられるポリ乳酸繊維は、平滑剤を含有する紡糸油剤が付与されていることが好ましい。平滑剤としては、繊維と金属、プラスチックなどとの摩擦係数を低減させるものとして、例えば、脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、エーテルエステル、シリコーン、鉱物油等が好ましく用いられる。また、これらの平滑剤は、単一成分で用いても良いし、複数の成分を混合して用いても良い。特に、ポリ乳酸繊維に適した平滑剤としては、脂肪酸エステルや鉱物油が好ましく用いられる。また、ポリエーテル系の平滑剤は、耐熱性には優れているが、繊維と金属の摩擦係数を上げる場合があるため、避けることが好ましい。摩擦係数を下げることで、垂れ幕などの用途して使用したときに、壁や金属製の柱などに設置されることも想定でき、これらものとの摩擦を下げることにより耐久性を向上させることができる。
本発明で用いられる脂肪酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルオレート、イソプロピルミリステート、オクチルパルミテート、オレイルラウレート、オレイルオレート、イソトリデシルステアレート等の一価のアルコールと一価のカルボン酸のエステル、ジオクチルセバケート、ジオレイルアジペート等の一価のアルコールと多価のカルボン酸のエステル、エチレングリコールジオレート、トリメチロールプロパントリカプリレート、グリセリントリオレート等の多価のアルコールと一価のカルボン酸のエステル、およびウリル(EO)nオクタノエート等のアルキレンオキサイド付加エステル等が挙げられる。
ポリ乳酸繊維に、上記のような平滑剤を含有させた油剤を付与することによって、紡糸および延伸工程での糸切れや、毛羽の発生、ローラーへの巻き付きを抑制することができる。また、従来のポリ乳酸繊維では工程通過性が悪かった仮撚加工についても、糸とツイスターの間の摩擦力が減少し、糸切れが抑制されることによって、工程通過性良く実施できる。さらに、製編織工程では、糸と金属、或いは糸同士の摩擦が少なくなり、毛羽の発生を抑制することによって品位の高い繊維製品を得ることもできる。
本発明では、油剤を構成する成分は平滑剤に加えて、油剤を水に乳化させ、低粘度化して糸条への付着、浸透性を向上させる乳化剤、また必要に応じて帯電防止剤、イオン性界面活性剤、集束剤、防錆剤、防腐剤、および酸化防止剤を適宜配合したものを使用することができる。平滑剤の油剤全体に対する含有量は、好ましくは30〜95重量%である。平滑剤の油剤全体に対する含有量を30重量%以上とすることで、繊維の表面摩擦係数が大幅に低減し、繊維および繊維製品の工程通過性や品位を向上させることができる。また、含有量を95重量%以下とすることで、油剤の水への分散性を良くし、これを繊維に塗布した際の油剤の付着斑を抑制することができる。平滑剤の油剤全体に対する含有量は、より好ましくは55〜75重量%である。
本発明の生分解性印刷膜材は、垂れ幕やポスター、看板などの広告媒体として好適に使用することができる。
以下、本発明の生分解性印刷膜材について実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は、以下の方法を用いた。
1.トータルカルボキシル末端濃度
特開2001−261797号公報記載のように、秤量したサンプルを含水率5%に調整したo−クレゾールに溶解し、ジクロロメタンを適量添加した後、0.02規定のKOHメタノール溶液で滴定し、求めた。このとき、乳酸2量体であるラクチド等のオリゴマーは加水分解しカルボキシル末端を生じるため、ポリマーのカルボキシル末端およびモノマー由来のカルボキシル末端とオリゴマー由来のカルボキシル末端の両方を合計したカルボキシル末端濃度が求まる。
2.色調(b値)
繊維サンプルをアルミプレートに密に巻き付け、スガ試験機株式会社製SMカラーコンピューターSM−3でb値を測定した。
3.熱水処理前後の強度保持率(RT)
サンプル30gと水300gを圧力容器に入れ、130℃の温度で60分間熱水処理を行った。以下の式によりRTを求めた。なお、熱水処理前のポリ乳酸繊維の強度および熱水処理後のポリ乳酸繊維の強度は筒編みより糸をほぐして測定を行った。
RT(%)=(熱水処理後サンプルの強度/熱水処理前の強度)×100(%)
4.もみ試験
JIS K 6404−5(1999年)に規定されるスコットもみ試験、荷重500gで100回を実施した。樹脂に剥離が生じたものについては×、生じなかったものについては○として表示した。
5.吸収速度
インクジェットプリンターにて印刷した生分解性印刷膜材を、印刷後、20℃×40%RH雰囲気内で6秒間乾燥させ、白色のコピー用紙に荷重500gで押しつけて、コピー用紙にインクが付いたものを×、付かなかったもの○と表示した。
6.発色性
インクジェットプリンターにより、各印刷インクを用いて印刷 し、印字濃度を評価した。印字濃度が、非常に濃いものを「◎」、濃いものを「○」、やや薄いものを「△」、薄いものを「×」と表示した。
7.総合評価
もみ試験、吸水速度および発色性の評価において「○」が3つ以上のものを印刷基材として印刷適性に優れているとして「○」とし、その中でも発色性において「◎」のものを特に優れているとして「◎」と表示し、上記3つの性能において「○」が2つあるものを印刷基材としては不適正であるが改善の余地がありとして「△」と表示し、「○」が1つ以下のものは、印刷基材に不適正として「×」とした。
[製造例1](ポリ乳酸の製造)
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)を存在させて、チッソ雰囲気下180℃の温度で140分間重合を行い、ポリ乳酸(P1とする)を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は、13.5万であった。得られたポリ乳酸のηは7.5であり、カルボキシル末端濃度は35当量/tであった。
[製造例2](EBAを1wt%含有したポリ乳酸の製造)
上記のポリ乳酸(P1)とエチレンビスステアリン酸アミド(EBAとする)[日本油脂社製「アルフローH−50S」(登録商標)]を乾燥した後、P1:EBA=99:1(重量比)となるように加熱溶融したEBAを計量して連続的にP1に添加しながら、シリンダー温度220℃の2軸混練押し出し機に供給し、EBAを4重量%含有したポリ乳酸(P2とする)を得た。得られたポリ乳酸のηは7.5であり、カルボキシル末端濃度は35当量/tであった。
(実施例1〜6、比較例1〜2)
ポリカルボジイミド化合物として、日清紡社製の熱可塑性ポリカルボジイミド“カルボジライト”(登録商標)HMV−8CA(カルボジイミド1当量/カルボジイミド278g)を用いた。ポリ乳酸P1とポリカルボジイミド化合物を、それぞれ220℃と120℃で別々に溶融し紡糸パックに導き、紡糸パック内の静止混練器(東レエンジニアリング(株)社製“ハイミキサー” (登録商標)10段)で混練を行い、そのまま紡糸を行った。このとき、ポリカルボジイミド化合物の添加量はカルボキシル末端量に対し1.0倍当量(ポリ乳酸に対して1.0wt%)とした。また、紡糸機でのポリカルボジイミド化合物の滞留時間は5分間であり、紡糸温度は220℃とした。
そして、紡出した糸条をチムニーにより25℃の冷却風で冷却固化させた後、集束給油ガイドにより脂肪酸エステルを主体とする繊維用油剤を塗布し、交絡ガイドにより糸条に交絡を付与した。溶融紡糸性は全く問題が無く、100kg巻き取りでの糸切れはゼロであった。その後、周速3000m/分の非加熱の第1引き取りローラーで引き取った後、非加熱の第2引き取りローラーを介し巻き取った。この糸条を第1ホットローラー温度90℃で予熱した後、1.45倍に延伸し、第2ホットローラーで130℃の温度で熱セットを行い、コールドローラーを介し巻き取り、560dtex、36フィラメント、丸断面の延伸糸を得た。ここでの延伸性にも全く問題が無く、100kg巻き取りでの糸切れはゼロであった。
この延伸糸を経糸および緯糸に用いて、ウォータージェットルームにて平織物(織り密度:経48本/インチ、緯32本/インチ、目付180g/m)を作製した。次いで、得られた平織物を精練剤2g/Lの浴槽内にて60℃の温度で1分間精練した後、ピンテンター式熱処理機にて130℃の温度で1分間処理しセットした。得られた平織物は、しなやかでソフトでありながら、ポリ乳酸繊維特有の機械的なきしみ感が少ない優れた風合いを示した。
この平織物(繊維布帛)に、100℃の温度で線圧30トンのカレンダー加工を施し、その片面に、下記に示す生分解性樹脂組成物であるコーティング剤をナイフコーターにてコーティングし、130℃の温度で2分間乾燥した。得られた生分解性印刷膜材の樹脂面に、インクジェットプリンターを用いて画像を印刷した。得られた繊維のトータルカルボキシル末端濃度は、5当量/t以下であり、色調b値は4.3〜4.6であった。得られた生分解性印刷膜材の特性を表1に示す。
[コーティング剤]
ポリ乳酸樹脂(ミヨシ油脂(株)製)に対して、シリカ(富士シリシア(株)製、サイリシア310P(登録商標))、吸水性樹脂(住友精化(株)製、アクアキープ(登録商標))、生分解性可塑剤(大八化学工業(株)製、DAIFATTY−101(登録商標))、ビオノーレ(昭和高分子(株)製、脂肪族ポリエステル)を表1の添加量で混合した液を作製した。ビオノーレについては、60重量%添加した。
(実施例7〜10)
実施例1において、ポリ乳酸(P1)をポリ乳酸(P2)に変え、添加剤の添加量等を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして生分解性印刷膜材を得た。繊維のトータルカルボキシル末端濃度は、5当量/t以下であり、色調b値は4.3〜4.5であった。結果を表1に示す。
(比較例3〜4)
ポリ乳酸(P2)を紡糸温度220℃で紡糸した。紡出した糸条をチムニーにより25℃の温度の冷却風で冷却固化させた後、集束給油ガイドにより脂肪酸エステルを主体とする繊維用油剤を塗布し、交絡ガイドにより糸条に交絡を付与した。溶融紡糸性には全く問題が無く、100kg巻き取りでの糸切れはゼロであった。その後、周速3000m/分の非加熱の第1引き取りローラーで引き取った後、非加熱の第2引き取りローラーを介し巻き取った。この糸条を第1ホットローラー温度90℃で予熱した後、1.45倍に延伸し、第2ホットローラーで130℃の温度で熱セットを行い、コールドローラーを介し巻き取り、560dtex、36フィラメント、丸断面の延伸糸を得た。ここでの延伸性にも全く問題が無く、100kg巻き取りでの糸切れはゼロであった。得られた繊維のトータルカルボキシル末端濃度は、40当量/tで、色調b値は3.3〜3.5であった。
以下、表1のように添加剤を含まないポリ乳酸樹脂(ミヨシ油脂(株)製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして生分解性印刷膜材を得た。結果を表1に示す。
(比較例5〜6)
ポリエステルスパン糸の20番双糸(東レ株式会社製)を経糸に用い、ポリエステルスパン糸の10番単糸を緯糸に使用して、経糸/緯糸密度が54/48本/インチの平織物を製織し(重量220g/m)、得られた平織物をワックス系撥水剤(ダイガードD−23D(登録商標)、大京化学(株)製、固形分40%)の処理液にパッド(絞り率80%)し、120℃の温度で2分乾燥させて処理繊維布帛を得た。得られた繊維布帛の片面に、実施例1で用いた生分解性樹脂組成物を同様にコーティングして、生分解性印刷膜材を得た。結果を表1に示す。
(実施例11〜14、比較例7〜8)
実施例1と同様の方法によって繊維布帛を得た。この繊維布帛の片面に、実施例1と同様にして、下記に示す生分解性樹脂組成物であるコーティング剤をコーティングして、生分解性印刷膜材を得た。繊維のトータルカルボキシル末端濃度は、5当量/t以下で、色調b値は4.3〜4.6であった。結果を表1に示す。
[コーティング剤]
ポリ乳酸樹脂(ミヨシ油脂(株)製)に対して、シリカ(富士シリシア(株)製、サイリシア310P(登録商標))、吸水性樹脂(住友精化(株)製、アクアキープ(登録商標))、生分解性可塑剤(大八化学工業(株)製、DAIFATTY−101(登録商標))を表1の添加量で混合した液を作製した。
ただし、比較例7〜8では、表1のとおりシリカと吸水性樹脂は添加せず、ポリ乳酸樹脂のみを用いた。
(比較例9〜10)
実施例1と同様にして繊維布帛を得た。この繊維布帛にカレンダー加工を施し、その片面に、下記に示す樹脂組成物であるコーティング剤をナイフコーターにてコーティングし、130℃の温度で2分間乾燥した。得られた膜材にインクジェットプリンターを用いて画像を印刷した。得られた繊維のトータルカルボキシル末端濃度は、5当量/t以下で、色調b値は4.3〜4.6であった。結果を表1に示す。
[コーティング剤]
ポリ乳酸樹脂(ミヨシ油脂(株)製)に対して4級アンモニウム塩型カチオン樹脂を混合した液を作製した。
Figure 2006159600
表1から明らかなように、実施例1〜14の生分解性印刷膜材は、シリカと吸水性樹脂が生分解性樹脂に含まれているため、記録特性が優れており、また、生分解性可塑剤も含まれているため柔軟でインク受理層(樹脂)と繊維布帛との接着性も優れていた。それに対し、比較例1〜2、7〜14は、シリカと吸水樹脂が含まれておらず、記録特性に劣っていた。また、比較例9〜10は、ポリ乳酸繊維ではなく、ポリエステル繊維を使い、比較例13〜14は、シリカや吸水樹脂の代わりにインク吸着体として4級アンモニウム塩型カチオン樹脂を使っており、全体の25%以上が生分解性が無く、地球環境に優しいとは言えない。
本発明の生分解性印刷膜材は、生分解性を有し、高い記録特性と柔軟性に優れており、インクジェット印刷用基材として有用である。この生分解性印刷膜材を使用することで、生分解性を有するため廃棄に際しては環境負荷とならず、柔軟性が有るためあらゆる形状の構造物に設置することができるという、垂れ幕やポスターなどの広告媒体に適した印刷基材が得られる。

Claims (10)

  1. 生分解性能を有する繊維布帛の少なくとも片面に、無機物および吸水性樹脂を含有する生分解性樹脂組成物からなるインク受理層が積層されてなることを特徴とする生分解性印刷膜材。
  2. 無機物がシリカであり、該シリカが生分解性樹脂に対し20〜80重量%含まれている請求項1記載の生分解性印刷膜材。
  3. 吸水性樹脂が生分解性樹脂に対し20〜70重量%含まれている請求項1または2記載の生分解性印刷膜材。
  4. 生分解性樹脂組成物の付着量が20〜100g/mである請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性印刷膜材。
  5. 生分解性可塑剤が生分解性樹脂に対し10〜50重量%含まれている請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性印刷膜材。
  6. 繊維布帛を構成する繊維が、脂肪酸アミドを0.1〜5wt%含有している請求項1〜5のいずれかに記載の生分解性印刷膜材。
  7. 繊維布帛または生分解性印刷膜材が、カレンダー加工されている請求項1〜6のいずれかに記載の生分解性印刷膜材。
  8. 繊維布帛を構成する繊維中のトータルカルボキシル末端濃度が10当量/t以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の生分解性印刷膜。
  9. 繊維布帛が、ポリカルボジイミド化合物が添加されたポリ乳酸繊維からなり、色調の指標であるb値が7以下である請求項1〜8のいずれかに記載の生分解性印刷膜。
  10. インクジェット印刷用基材として用いられる請求項1〜9のいずれかに記載の生分解性印刷膜。
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