JP2009084759A - ポリ乳酸短繊維およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
耐磨耗性・耐加水分解性に優れた高品位のポリ乳酸短繊維を提供する。
【解決手段】
脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型モノアミドを0.1〜1.5重量%含有し、カルボジイミド化合物でカルボキシル基末端が封鎖されており且つ失透糸の存在率が0〜10%であることを特徴とするポリ乳酸短繊維およびその製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐摩耗性および耐加水分解性に優れ、且つ高強度で高品位のポリ乳酸短繊維に関するものである。
近年、地球規模での環境に対する意識が高まる中で、生分解性を有するポリ乳酸が注目を浴びている。ポリ乳酸は植物から抽出したでんぷんを発酵することにより得られる乳酸を原料としたポリマーであり、バイオマス利用の生分解性ポリマーの中では、力学特性、耐熱性、コストのバランスが最も優れている。そして、これを利用した樹脂製品、繊維、フィルム、シート等の開発が急ピッチで行われている。
ポリ乳酸の開発としては、生分解性を活用した農業資材や土木資材が先行しているが、それに続く大型の用途として衣料用途、カーテン、カーペットといったインテリア用途、車両内装用途、産業資材への応用も期待されている。このような用途には、ポリ乳酸を繊維となし利用することが好適である。繊維形態として、長繊維も用いられるが、特に、短繊維が、それを不織布や紡績糸となし利用されることが多い。ポリ乳酸繊維の開発については、長繊維が先行しており、所望の機能を有するための技術が各種提案されているが、短繊維については、長繊維と同様の機能を有するものは、必ずしも得られていなかった。
ポリ乳酸繊維は表面摩擦係数が高いため、耐摩耗性が悪いという欠点があり、衣料、インテリア、車両内装用途等の耐摩耗性が要求される用途への展開が進んでいなかった。このポリ乳酸繊維の高摩擦係数はポリマー基質によるものであり、ポリ乳酸繊維では必然的に起こる問題であると考えられる。
このようなポリマー基質の摩擦係数を緩和させるために、樹脂製品やフィルム、シート等の分野では、ポリマーに滑剤を添加する場合がある。しかしながら、繊維の分野においては、滑剤のブレンド斑、熱分解、ブリードアウト等により繊維の物性斑や染色斑等により製品品質の低下が発生するため、これまでこのような添加剤を用いられることは避けられる傾向にあった。
滑剤を添加した繊維については、例えば、ポリ乳酸繊維に一般式RCONH(但しRはアルキル基)で表される脂肪酸モノアミドを添加し、撥水性を与えることによって加水分解速度を抑制することを目的とするものであるが(特許文献1参照)、本発明の目的である滑り性の向上については意図していない。
また、ポリ乳酸繊維は生分解性繊維として注目を集めているが、生分解性であるためがため製品寿命が短く、用途展開に制約があった。
この問題を解決するため、特許文献2では、ポリカルボジイミド化合物を添加して耐加水分解性を向上させたポリ乳酸樹脂・フィルムが記載されている。しかし、ポリカルボジイミド化合物はポリ乳酸への分散性が低く、また耐熱性に劣るためゲル化しやすく、耐加水分解性が不充分であるばかりか、製糸安定性が不安定であり工業的な繊維生産に適用が困難であった。また、特許文献3では、カルボジイミド化合物等の所謂末端封鎖剤でポリ乳酸の末端カルボキシル基を封鎖する手法が提案されている、この場合、確かにポリ乳酸の耐加水分解性は向上するが、得られるポリ乳酸繊維は成形加工時における末端封鎖剤の熱劣化により黄色着色が生じ、衣料用を中心とした染色用途への展開には大きな制約が生じているのが実状であった。ポリ乳酸の耐加水分解性を高めつつ、成形加工時における黄色着色を抑制するため、カルボジイミド化合物でポリ乳酸の末端カルボキシル基を封鎖するとともに、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型モノアミドを所定量含有させる技術が提案されている(特許文献4参照)。
しかし、特許文献4に開示される技術は、長繊維を意図しているため、その技術を短繊維の製造に適用しても所望の強度・伸度を安定して発現しないことがあった。
このため、産業資材用途などの高品位が要求される用途への展開に制限があった。
ポリ乳酸繊維において強度を高めるためにいくつかの試みが検討されている。例えば、特許文献5では多段延伸による高品位のマルチフィラメントの製造方法に関する技術が開示されているが、これは総繊度の小さいフィラメント状にて延伸する長繊維の製造技術を基本に設計されており、例えば総繊度が10〜100ktexのトウ状で延伸を行う短繊維の製造について同様の技術を適用しても高品位の高強度ポリ乳酸短繊維を得ることは不可能である。また、特許文献4では、延伸温度を高温化することで高品位・高強度のポリ乳酸繊維の製造技術について開示されているが、これもフィラメント状にて延伸する長繊維の製造技術を基本に設計されているに過ぎない。短繊維の製造においてローラーによる加熱は熱ムラが著しいため、一般的に液浴延伸が採用されている。従って、特許文献3で提案する延伸温度を得るためには、有機溶媒を使用する必要が有り、これは安全・環境・コストなど様々な面で問題が多い。これらのように一般的な短繊維の製造設備で安定して強度・伸度を高めたポリ乳酸繊維を得る現実的な技術が見出されていないのが現状である。
特開平8−183898号公報 特開平11−80522号公報 特開2002−180328号公報 特開2004−277931号公報 特開2000−248426公報 特開2000−136435公報
本発明は、上記の問題点を克服し、耐磨耗性・耐加水分解性に優れた高品位のポリ乳酸短繊維を提供することを目的とする。
本発明のポリ乳酸短繊維は、上記の課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型モノアミドを0.1〜1.5重量%含有し、カルボジイミド化合物でカルボキシル基末端が封鎖されており且つ失透糸の存在率が0〜10%であることを特徴とするポリ乳酸短繊維である。
また、本発明のポリ乳酸短繊維の製造方法は、上記の課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型モノアミドを0.1〜1.5重量%含有し、カルボジイミド化合物でカルボキシル基末端が封鎖されてなるポリ乳酸組成物を溶融紡糸して、総繊度が10〜100ktexのトウを得、該トウを80〜95℃の液浴中にて延伸し、その後機械捲縮を付与して所定の繊維長に切断するポリ乳酸短繊維の製造方法であって、無機粒子もしくは有機系滑剤を前記ポリ乳酸組成物中に練り混むか、または、脂肪族エステル、多価アルコールエステル、エーテルエステル、ポリエーテルおよびシリコーンからなる群から選ばれる少なくとも1種の油剤成分を前記トウに付与することを特徴とするポリ乳酸短繊維の製造方法である。
本発明のポリ乳酸短繊維により、耐加水分解性および耐摩耗性に優れ、且つ高品位のポリ乳酸短繊維とすることができる。このようなポリ乳酸短繊維は、多くの用途に展開で、用途展開幅を大きく拡大することができる。
また、本発明のポリ乳酸短繊維の製造方法により、前記したようなポリ乳酸短繊維を再現性良く安定して製造することができる。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明でいうポリ乳酸とは、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものをいい、L体あるいはD体の光学純度が90%以上であると、融点が高く好ましい。L体あるいはD体の光学純度はより好ましくは97%以上である。また、ポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合してよい。共重合する成分としては、ポリエチレングリコールなどのポリエーテル、ポリブチレンサクシネートやポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル、ポリエチレンイソフタレートなどの芳香族ポリエステル、およびヒドロキシカルボン酸、ラクトン、ジカルボン酸、ジオールなどのエステル結合形成性の単量体が挙げられる。
発明で用いられるポリ乳酸の製造方法は、特に限定されるものではない。具体的には、特開平6−65360号公報に開示されている製造方法がある。すなわち、乳酸を有機溶剤および触媒の存在下、そのまま脱水重合する直接脱水縮合法である。また、特開平7−173266号公報に開示されている少なくとも2種類のホモポリマーを重合触媒存在下、共重合ならびエステル交換反応させる方法がある。さらには、米国特許第2,703,316号明細書に開示されている方法がある。すなわち、乳酸をいったん脱水し、環状二量体とした後に、開環重合する間接重合法である。
本発明に用いられるポリ乳酸は、融点が130℃以上であることが好ましい。融点が130℃より低い場合には、製糸時、特に紡糸時に単糸間の融着が著しく、更に延伸不良など発生するなど製品の品位が損なわれるおそれがある。融点は、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは160℃以上である。
本発明でいう脂肪族ビスアミドは、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族系脂肪参ビスアミド等の1分子中にアミド結合を2つ有する化合物を指し、例えば、メチレンビスカプリル酸アミド、メチレンビスカプリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスイソステアリン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、p−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N′−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N′−ジステアリルテレフタル酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。また、本発明でいうアルキル置換型のモノアミドとは、飽和脂肪酸モノアミドや不飽和脂肪酸モノアミド等のアミド水素をアルキル基で置き換えた構造の化合物を指し、例えば、N−ラウリルラウリン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ヘベニルヘベニン酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド等が挙げられる。該アルキル基は、その構造中にヒドロキシル基等の置換基が導入されていても良く、例えば、メチロースステアリン酸アミド、N−ステアリル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド等も本発明のアルキル置換型の脂肪酸アミドに含むものとする。
本発明では脂肪酸ビスアミドやアルキル置換型の脂肪酸モノアミドを用いるが、これらの化合物は、通常の脂肪酸モノアミドに比べてアミドの反応性が低く、溶融成形時においてポリ乳酸との反応が起こりにくい。また、高分子量のものが多いため、一般的に耐熱性が良く、昇華しにくいという特徴がある。特に、脂肪酸ビスアミドは、アミドの反応性がさらに低いためポリ乳酸と反応しにくく、また、高分子量であるため耐熱性が良く、昇華しにくいことから、より好ましい滑剤として用いることができる。このような滑材としては、例えばエチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
本発明における脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型のモノアミド(以下、総称として脂肪酸アミドと略す)の短繊維全体に対する含有量は0.1〜1.5wt%が好ましい。より好ましくは0.5〜1.0wt%である。該脂肪酸アミドの含有量が0.1wt%以下であると目的に対して十分な効果が現れず、1.5wt%以上では短繊維の滑り性は向上するが、効果が大きすぎるため短繊維の絡合性悪化による操業性の不良ならび捲縮の均一性劣化などの品位低下を招く。脂肪酸アミドは単一成分でも良いし、また複数の成分が混合されていても良い。
本発明でいうカルボジイミド化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、モノカルボジイミドとしては、N,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジ−tert.−ブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。また、ポリカルボジイミド化合物としては、特開平11−80522号広報記載のようにジイソシアネート化合物を重合したものが好適に用いられるが、中でも4,4′−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドの重合体やテトラメチルキシリレンカルボジイミドの重合体やその末端をポリエチレングリコール等で封鎖したものが好ましく用いられる。また、これらのカルボジイミド化合物は単一でも良いし、2種類以上の化合物を併用しても良い。
本発明におけるカルボジイミド化合物の短繊維全体に対する含有量は特に限定されないが、ポリ乳酸ポリマーの末端基濃度が10当量/ton以下となるようにカルボジイミド化合物を含有させれば、ポリ乳酸短繊維の耐加水分解性を飛躍的に向上させることができ好ましい。
このように、本発明のポリ乳酸短繊維は、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型モノアミドを0.1〜1.5重量%含有し、カルボジイミド化合物でカルボキシル基末端が封鎖されているため、耐加水分解性に優れるばかりか、耐摩耗性に優れている。
本発明のポリ乳酸短繊維は、高強度なものとするため、失透糸の存在率を低減させる必要がある。ポリ乳酸短繊維では繊維が透明さを失う失透繊維と呼ばれる延伸異常糸が発生しやすく、失透繊維は正常な繊維に比べて、強度・伸度が低い。従って、失透繊維が混入するとポリ乳酸短繊維の品位は著しく低下する。
本発明のポリ乳酸短繊維において、失透糸の存在率は具体的には0〜10%とする必要があり、好ましくは0〜5%とする。失透糸の存在率が10%を超えると、高次加工において糸切れ・毛羽が多発し安定した加工が困難になる。
失透糸の発生メカニズムを詳細に調査した結果、過剰な延伸応力による構造破壊が原因であることを見出した。すなわち、繊維の失透化は該構造破壊によって形成される繊維表面の凹凸や繊維内部のボイドやクラックが原因であり、失等糸は構造破壊が起きているため強度が低いのである。従って、基本的には延伸応力を緩和させることによって失透糸発現は抑制することができ、長繊維においてはこのような考えに基づくと考えられる改善策も提案されているが、これらはフィラメント状で延伸する長繊維の製造方法に関するものであり、総繊度の大きなトウ状で延伸を行う短繊維の製造では、同様の改善策を施しても十分な効果は得られない。発明者らが調査した結果、短繊維ではトウ状にて延伸するため繊維の絡まり・摩擦によって局所的な応力集中が発生し、これにより失透糸が発生することを突きとめた。これを改善させるために繊維の表面摩擦を低減させることが重要である。
本発明のポリ乳酸短繊維を得るためには、脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型モノアミドを0.1〜1.5重量%含有し、カルボジイミド化合物でカルボキシル基末端が封鎖されてなるポリ乳酸組成物を溶融紡糸して、総繊度が10〜100ktexのトウを得、そのトウを80〜95℃の温浴中にて延伸し、その後捲縮を付与して所定の繊維長に切断するのであるが、その際、延伸に供するトウの表面摩擦が低減されているようにするのである。延伸に供するトウの表面摩擦を低減する方法としては、具体的には、酸化チタン、カーボンブラックなどの無機粒子、または脂肪族ビスアミド、アルカリ置換型モノアミドなどの有機系滑剤をポリ乳酸組成物中へ練り混むか、または、脂肪族エステル、多価アルコールエステル、エーテルエステル、ポリエーテル、シリコーンなどの油剤成分を延伸に供する前にトウに付与するのである。これらは単独で用いられても良いし、複合的に用いられても良い。 延伸に供するトウの延伸に供するトウの表面摩擦は小さいほうが、延伸における繊維の絡まり・摩擦による局所的な応力集中が発生しにくく、失透糸の発生を抑制できるが、あまりに小さすぎると、得られる短繊維において繊維−繊維静摩擦係数が小さくなりすぎ、短繊維間の絡合性が悪化し、安定した品質の紡績糸を得られなくなることがある。なお、延伸に供するトウにおける表面摩擦は、短繊維における繊維−繊維静摩擦係数にも反映されやすく、延伸に供するトウにおける表面摩擦が小さければ、短繊維における繊維−繊維静摩擦係数も小さくなり、延伸に供するトウにおける表面摩擦が大きければ、短繊維における繊維−繊維静摩擦係数も大きくなる。具体的には、本発明のポリ乳酸短繊維では、通常、繊維−繊維静摩擦係数が0.2〜0.35、好ましくは0.2〜0.25とされる。かかる条件を満足するためには、無機粒子を練り混む場合には、粒径0.1〜1.0μmのものをポリ乳酸組成物中に0.5〜3.0重量%程度練り混めばよいし、有機系滑剤を練り混む場合には、ポリ乳酸組成物中に0.1〜1.5重量%程度練り混めばよいし、トウに油剤成分を付与する場合には、繊維重量当り0.3〜1.0重量%付与すればよい。
延伸に供するトウの総繊度は10〜100ktex、好ましくは20〜80ktexとする。10ktex未満では生産効率が悪く、100ktexを超えると、繊維の相互作用が強力なため、失透糸改善の効果が十分ではなくなる。
また、延伸時の液浴の温度は80〜95℃、好ましくは85〜90℃とする。80℃未満では延伸時にかかる応力が大きいため、繊維全体が失透化してしまうし、95℃を超えると、浴液に水を用いる場合に沸点に近いため温度制御が困難であると共に、一部沸騰による気泡が温浴中に発生し、均一な延伸を阻害する。
延伸後には、スタッファーボックスなどを用いて、例えば6〜15山/25mm程度の機械捲縮を付与して、所定の、例えば10〜76mmの繊維長になるように、ECカッターなどを用いて切断することにより、ポリ乳酸短繊維を得る。
本発明のポリ乳酸短繊維は、衛生材料、土木資材、農業資材、生活資材、工業資材、中入れ綿用途、衣料用途、インテリア用途に好ましく用いられる。
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。なお、本実施例で用いた特性の測定方法は次の通りである。
[繊度]
JIS L−1015(1999年)に示される方法により繊度(dtex)の測定を行った。
[強度]
JIS L−1015(1999年)に示される方法により強度(cN/dtex)の測定を行った。
[カルボキシル基末端量]
特開2001−261797号公報記載のように、秤量したサンプルを含水率5%に調整したo−クレゾールに溶解し、ジクロロメタンを適量添加した後、0.02規定の水酸化カリウムメタノール溶液で滴定し、求めた。
[失透糸の存在率]
本実施例において短繊維の失透の判定は下記(1)に示す方法で確認した。しかし失透糸は下記(2)、(3)に示すように肉眼の他、実体顕微鏡、電子顕微鏡等でも観察可能であり、肉眼での判定が難しい場合には観察する短繊維の状態(無機酸化物量、繊度や原着糸等)によって適時観察方法を変更すればよい。
(1)肉眼での確認
ポリ乳酸短繊維を同方向に重なり合わないように黒色の画用紙上に置いて観察する。判断基準は短繊維の一部にでも失透があれば、失透糸とする。水準に関しては、製造した短繊維からランダムに5点から採取し、各点の20本の短繊維を確認する(5点×20本 = 100水準)。
(2)実体顕微鏡での確認
ポリ乳酸短繊維を同方向に重なり合わないように試料台に置き、実体顕微鏡(ニコン実体顕微鏡HFX型)を用いて観察する。それぞれの短繊維に対し、ランダムに10点観察を行い、失透(白化)している領域があるか観察する。1点でも失透部があれば失透糸とする。尚、観察倍率は繊維の繊度によって適時変更することができる。水準に関しては、製造した短繊維からランダムに5点から採取し、各点の20本の短繊維を確認する(5点×20本 = 100水準)。
(3)電子顕微鏡での観察
ポリ乳酸短繊維を同方向に重なり合わないように配置し、金または銀にて蒸着する。作製したサンプルをSEM(トプコン株式会社製 ABT−55)にて観察した。それぞれの短繊維に対し、ランダムに10点観察を行い、繊維表面が凹凸状であれば失透領域であり、その短繊維は失透糸と判断する。尚、観察倍率は繊維の繊度によって適時変更することができる。水準に関しては、製造した短繊維からランダムに5点から採取し、各点の20本の短繊維を確認する(5点×20本 = 100水準)。
失透糸の存在率(%)=(失透糸本数)/(全短繊維数;100本)×100
[繊維−繊維静摩擦係数]
JIS L−1015(1999年)に示される方法により繊維−繊維静摩擦係数の測定を行った。
(実施例1)
融点170℃であるポリ乳酸チップ[ネイチャーワークス社;6201D]と脂肪酸ビスアミドであるエチレンビスステアリン酸アミド(EBA)[日本油脂社;アルフローH−50S]とポリカルボジイミド化合物(PCI)[日清紡績社;カルボジライトHMV−8CA]をそれぞれ個別に乾燥させた後、80:10:10の重量比になるように混合し、220℃にて溶融混練ならびチップ化し、マスターチップを作製した。前記と同様のポリ乳酸チップと作製したマスターチップとを重量比90:10(EBA1.0%、PCI1.0%含有)で混合し、エクストルーダー型紡糸機にて、紡糸温度230℃にて溶融紡糸し、この紡糸糸条を冷却させ、脂肪酸エステル系であるイソトリデシルステアレート/オクチルパルミテート複合油剤成分を繊維に対し0.5重量%付与し、収束した後、1000m/分で引き取り、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を収束して80ktexとして、90℃の温水浴中で4.0倍に延伸した後、スタッファーボックスで10山/25mmの機械捲縮を付与し、145℃×10分間熱処理後、アルキルエステル系油剤成分を繊維に対し0.5重量%になるようにスプレー方式にて付与し、繊維長51mmに切断し、ポリ乳酸短繊維を得た。得られた短繊維の特性などを表1に示す。
(実施例2)
実施例1で用いたものと同様のポリ乳酸チップとEBAとPCIをそれぞれ個別に乾燥させた後、87:3:10の重量比になるように混合し、220℃にて溶融混練ならびチップ化し、マスターチップを作製した。前記と同様のポリ乳酸チップと作製したマスターチップとを重量比90:10(EBA0.3%、PCI1.0%含有)で混合し、エクストルーダー型紡糸機にて、紡糸温度230℃にて溶融紡糸し、この紡糸糸条を冷却させ、シリコーン系油剤成分であるメチルジメトキシジアミノシランを繊維に対し0.5重量%付与し、収束した後、1000m/分で引き取り、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を収束して80ktexとして、90℃の温水浴中で4.0倍に延伸した後、スタッファーボックスで12山/25mmの機械捲縮を付与し、145℃×10分間熱処理後、アルキルフォスフェート系油剤成分を繊維に対し0.5重量%になるようにスプレー方式にて付与し、繊維長51mmに切断し、ポリ乳酸短繊維を得た。得られた短繊維の特性などを表1に示す。
(比較例1)
ポリ乳酸チップを乾燥させ、その後エクストルーダー型紡糸機にて、紡糸温度230℃にて溶融紡糸し、この紡糸糸条を冷却させ、ノニオン系油剤成分であるエタノールアミンを繊維に対し0.5重量%付与し・収束した後、1000m/分で引き取り、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を収束して80ktexとして、90℃の温水浴中で4.0倍に延伸した後、スタッファーボックスで10山/25mmの機械捲縮を付与し、145℃×10分間熱処理後、アルキルエステル系油剤成分を繊維に対し0.5重量%になるようにスプレー方式にて付与し、繊維長51mmに切断し、ポリ乳酸短繊維を得た。得られた短繊維の特性などを表1に示す。
(比較例2)
実施例1で用いたものと同様のポリ乳酸チップとEBAをそれぞれ個別に乾燥させた後、90:10の重量比になるように混合し、220℃にて溶融混練ならびチップ化し、マスターチップを作製した。前記と同様のポリ乳酸チップと作製したマスターチップとを重量比90:10(EBA1.0%含有)で混合し、エクストルーダー型紡糸機にて、紡糸温度230℃にて溶融紡糸し、この紡糸糸条を冷却させ、脂肪酸エステル系であるイソトリデシルステアレート/オクチルパルミテート複合油剤成分を繊維に対し0.5重量%付与し、収束した後、1000m/分で引き取り、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を収束して120ktexとして、90℃の温水浴中で4.0倍に延伸した後、スタッファーボックスで10山/25mmの機械捲縮を付与し、145℃×10分間熱処理後、アルキルエステル系油剤成分を繊維に対し0.5重量%になるようにスプレー方式にて付与し、繊維長51mmに切断し、ポリ乳酸短繊維を得た。得られた短繊維の特性などを表1に示す。
(比較例3)
実施例1で用いたものと同様のポリ乳酸チップとEBAをそれぞれ個別に乾燥させた後、90:10の重量比になるように混合し、220℃にて溶融混練ならびチップ化し、マスターチップを作製した。前記と同様のポリ乳酸チップと作製したマスターチップとを重量比90:10(EBA1.0%含有)で混合し、エクストルーダー型紡糸機にて、紡糸温度230℃にて溶融紡糸し、この紡糸糸条を冷却させ、脂肪酸エステル系であるイソトリデシルステアレート/オクチルパルミテート複合油剤成分を繊維に対し0.5重量%付与し、収束した後、1000m/分で引き取り、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を収束して40ktexとして、70℃の液浴中で4.0倍に延伸した後、スタッファーボックスで12山/25mm機械捲縮を付与し、145℃×10分間熱処理後、アルキルエステル/アルキルフォスフェート系複合油剤成分を繊維に対し0.5重量%になるようにスプレー方式にて付与し、繊維長51mmに切断し、ポリ乳酸短繊維を得た。得られた短繊維の特性などを表1に示す。
Figure 2009084759

Claims (4)

  1. 脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型モノアミドを0.1〜1.5重量%含有し、カルボジイミド化合物でカルボキシル基末端が封鎖されており且つ失透糸の存在率が0〜10%であることを特徴とするポリ乳酸短繊維。
  2. 繊維−繊維静摩擦係数が0.2〜0.35である請求項1記載のポリ乳酸短繊維。
  3. カルボキシル基末端量が10当量/ton以下である請求項1または2記載のポリ乳酸短繊維。
  4. 脂肪酸ビスアミドおよび/またはアルキル置換型モノアミドを0.1〜1.5重量%含有し、カルボジイミド化合物でカルボキシル基末端が封鎖されてなるポリ乳酸組成物を溶融紡糸して、総繊度が10〜100ktexのトウを得、該トウを80〜95℃の液浴中にて延伸し、その後機械捲縮を付与して所定の繊維長に切断するポリ乳酸短繊維の製造方法であって、無機粒子もしくは有機系滑剤を前記ポリ乳酸組成物中に練り混むか、または、脂肪族エステル、多価アルコールエステル、エーテルエステル、ポリエーテルおよびシリコーンからなる群から選ばれる少なくとも1種の油剤成分を前記トウに付与することを特徴とするポリ乳酸短繊維の製造方法。
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