JPH09241425A - 生分解性のフィルム又はシ−ト及びこれらフィルム又はシ−トの加工品 - Google Patents

生分解性のフィルム又はシ−ト及びこれらフィルム又はシ−トの加工品

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JPH09241425A
JPH09241425A JP7307396A JP7307396A JPH09241425A JP H09241425 A JPH09241425 A JP H09241425A JP 7307396 A JP7307396 A JP 7307396A JP 7307396 A JP7307396 A JP 7307396A JP H09241425 A JPH09241425 A JP H09241425A
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cellulose acetate
plasticizer
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潤 高木
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滋憲 寺田
Hiroya Kobayashi
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は酢酸セルロ−スを主成分とし、溶融
押出性、耐湿性、低臭気性、生分解性に優れ、更に透明
性も良好な生分解性フィルム又はシ−トを提供するもの
である。 【解決手段】 アセチル基置換度が2.3〜2.7の酢
酸セルロ−スと生分解性可塑剤とを主要組成分とするフ
ィルム又はシ−トであって、そのフィルム又はシ−トの
23℃、0%RHにおける引張り弾性率が100kg/
mm2 以上であり、かつ23℃、60%RHにおける引
張り弾性率が23℃、0%RHにおける引張り弾性率の
80%以上である生分解性フィルム又はシ−ト。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、包装材料分野等に
広く利用することが可能な生分解性のフィルム又はシ−
ト、これらのフィルム又はシ−トを用いた生分解性の多
層フィルム又はシ−ト及びこれらのフィルム又はシ−ト
からなる熱成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリス
チレン、ポリ塩化ビニル等からなるプラスチックフィル
ム又はシ−ト及びこれらの熱成形品 (以上をまとめて、
単にフィルムまたはフィルム製品と記すことがある)
は、我が国において毎年数百万トンが製造されており、
食品包装をはじめ産業上のあらゆる分野で使用されてい
る。そしてそれらがもたらす利便性、経済性は、我々の
日常生活や、もっと広い意味での経済活動に不可欠のも
のとなっている。ところが、一方でこれらプラスチック
フィルム製品は、一部で回収、再利用が行われているも
のの、本来の目的である包装等の使命を果たした後に
は、直ちに廃棄物となるケ−スが多い。フィルム製品
は、廃棄物として埋め立て処分されることが多いが、そ
の安定性と嵩高さのために埋立地の短命化を引き起こ
し、また、自然環境中に散逸した場合には、自然の景観
や野生動植物の生活環境を損なうといった問題を惹起し
ている。
【0003】そこで、今日注目を集めているのは、生分
解性プラスチック材料である。生分解性プラスチック
は、土壌中や水中で、加水分解や生分解により、徐々に
崩壊、分解が進行し、最終的に微生物の作用により無害
な分解物となることが知られている。実用化され始めて
いる生分解性プラスチックは、脂肪族ポリエステル、変
性PVA、でんぷん変性体、及びこれらのブレンド体に
大別される。脂肪族ポリエステルとしては、微生物産出
系重合体としてポリ (ヒドロキシ酪酸/吉草酸) が、合
成系重合体としてポリカプロラクトンや脂肪族ジカルボ
ン酸と脂肪族ジオ−ルの縮合体が、そして、半合成系重
合体としてポリ乳酸が、それぞれ代表的に知られてい
る。これらの生分解性プラスチックは各々に固有の特徴
を有し、その特徴に応じた用途展開が考えられている。
【0004】一方、1922年頃イギリスで上市された酢酸
セルロ−スが、古くはReese によってInd.Eng.Chem.,4
9,89(1957) に開示されているように、生分解性である
ことが知られている。酢酸セルロ−スは、今日ではたば
こフィルタ−や写真ベ−スフィルム等に広く利用されて
いるが、その開発の歴史は、むしろ加水分解性や生分解
性をいかに防止するかに注力されてきており、生分解性
を機能として積極的に利用しようとする試みは、最近に
なってようやく検討され始めたところである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】生分解性材料としての
酢酸セルロ−スは、特開平4-142344号公報や特開平6-49
275号公報に開示されているが、これらは汎用プラスチ
ック原料またはそのフィルム製品と比較して、工業生産
する上で、また広く包装材料として利用する上で、さら
には新しい機能としての生分解性という点において、い
くつかの問題点を有していた。これらは、汎用プラスチ
ック原料と比較して溶融押出特性が著しく劣っていた
り、フィルムに加工した後に空気中の湿度の影響で弾性
率が低下し品質が安定しなかったり、酢酸臭がひどく被
包装物に臭い移りを生じたり、生分解速度が非常に遅か
ったりと、生分解性の原料またはフィルム製品として実
用上満足すべきものとは言い難かった。また、酢酸セル
ロ−スシ−トの熱成形品はこれまでほとんど実用化され
ていなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このよう
な現状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定の酢酸セル
ロ−スと特定の可塑剤を用い、材料全体の性質を示す指
標を特定の範囲に調整し、さらには必要に応じ特定の加
工法を採用することにより、溶融押出性、耐湿性、低臭
気性、生分解性、そして透明性等その他の特性に優れた
生分解性のフィルム又はシ−ト、更にこれらのフィル
ム、シ−トを用いた生分解性の多層フィルム又はシ−
ト、並びに熱成形品が得られることを見出し本発明を完
成した。
【0007】本発明の第1の要旨とするところは、アセ
チル基置換度が2.3 〜2.7 の酢酸セルロ−スと生分解性
可塑剤とを主要組成分とするフィルム又はシ−トであっ
て、そのフィルム又はシ−トの23℃、0 %RH (相対湿
度) における引張り弾性率が100 kg/mm2 以上であり、
かつ23℃、60%RHにおける引張り弾性率が23℃、0 %RH
(相対湿度) における引張り弾性率の80%以上であるこ
とを特徴とする生分解性のフィルム又はシ−トに存す
る。
【0008】本発明のもう一つの要旨とするところは、
上記第1の要旨の発明のフィルム又はシ−トを内層と
し、生分解性の脂肪族ポリエステル層を外層とする生分
解性の多層フィルム又はシ−トに存する。本発明の更に
別の発明における要旨とするところは、上記第1の発明
及びその発明のもう一つの発明におけるフィルム又はシ
−トから熱成形された成形品に存する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。本
発明における酢酸セルロ−スは、精製コットンリンタ−
又は高純度の木材パルプを原料とし、混酸法、メチレン
クロライド法、ベンゼン法と呼ばれる良く知られた工業
的な製造法のいずれかによって製造される。混酸法が最
も広く行われているが、これはセルロ−スを出発原料に
以下の〜の工程を経て酢酸セルロ−スを得るもので
ある。 水分率を5 %以下にする乾燥工程、 酢酸を湿潤
させる前処理工程、酢酸、無水酢酸及び硫酸による酢
化、すなわちアセチル化工程、 追加した水と触媒硫
酸の作用で脱アセチル化する熟成 (加水、加水分解) 工
程、 洗浄安定化を行なう沈澱、精製工程、 脱
水、乾燥工程。所望のアセチル化度の酢酸セルロ−スを
得るには、酢化工程で水酸基がすべてアセチル化された
三酢酸セルロ−スの脱アセチル化を行なう熟成工程にお
いて、加水分解の条件を調整すれば良い。
【0010】本発明においては、酢酸セルロ−スのアセ
チル基置換度を2.3 〜2.7 の範囲にすることが重要であ
る。かかる範囲を下回る場合には、フィルム、シ−トに
加工した後に空気中の湿度の影響で弾性率が低下し品質
が安定せず、逆に上回る場合には、生分解速度が極めて
遅くなり実際上生分解性とは言い難い。重合度は、原料
セルロ−スの重合度とその後の工程での重合度低下の度
合いによって決まるが、酢酸セルロ−スの平均重合度と
して80〜400の範囲が好ましい。かかる範囲を下回ると
物性が発現されず、上回ると後述する可塑剤を添加して
も溶融成形性が劣る。
【0011】酢酸セルロ−スは融点が280 〜290 ℃で分
解温度より高く、また溶融粘度も高いので、溶融押出が
困難である。そこで、融点と溶融粘度を下げ溶融押出を
可能ならしめるために、可塑剤を添加する必要がある。
酢酸セルロ−スの可塑剤としては、ジメチルフタレ−
ト、ジエチルフタレ−ト、ジブチルフタレ−ト、ジメト
キシエチルフタレ−ト等のフタル酸エステル系可塑剤、
エチルフタリルエチルグリコレ−ト、メチルフタリルエ
チルグリコレ−ト、ブチルフタリルブチルグリコレ−ト
等のフタリルグリコレ−ト系可塑剤、トリクレジルフォ
スフェ−ト、トリフェニルフォスフェ−ト等の燐酸エス
テル系可塑剤その他o−p−トルエンエチルスルフォン
アミド等が、相溶性が良好なため使用されているが、こ
れらは生分解性がなく、本発明における生分解性材料の
主要成分としては好ましくない。
【0012】本発明において、好適な生分解性の可塑剤
として使用できるものを挙げると、下記(1) の一般式で
示される化合物及び下記(2)に示す化合物であり、これ
らは1種類又は2種類以上組合わせて使用できる。
【0013】 (1) H5 3(OH)3-n (OOCCH3)n 0<n ≦3 (2) グリセリンアルキレ−ト (アルキ基は炭素数2 〜2
0、水酸基の残基があってもよい) 、例えばグリセリン
トリプロピオネ−ト、グリセリントリブチレ−ト;エチ
レングリコ−ルアルキレ−ト (アルキル基は炭素数1 〜
20、水酸基の残基があってもよい) 例えばエチレングリ
コ−ルジアセテ−ト;エチレン繰り返し単位が5 以下の
ポリエチレングリコ−ルアルキレ−ト (アルキル基は炭
素数1 〜20、水酸基の残基があってもよい) 例えばジエ
チレングリコ−ルモノアセテ−ト、ジエチレングリコ−
ルジアセテ−ト;脂肪族モノカルボン酸アルキルエステ
ル (アルキル基は炭素数1 〜20) 例えばステアリン酸ブ
チル;脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル (アルキル
基は炭素数1 〜20、カルボキシル基の残基があってもよ
い) 、例えばジ(2- エチルヘキシル) アジペ−ト、ジ(2
- エチルヘキシル) アゼレ−ト;脂肪族トリカルボン酸
アルキルエステル (アルキル基は炭素数1 〜20、カルボ
キシル基の残基があってもよい) 例えばクエン酸トリメ
チルエステル;重量平均分子量2 万以下の低分子量脂肪
族ポリエステル、例えばコハク酸とエチレングリコ−ル
/プロピレングリコ−ル縮合体 [大日本インキ (株) よ
りポリサイザ−の商品名で販売されている] 。
【0014】上記(1) の式で表わされるものはグリセリ
ンのモノ−、ジ−、トリ−アセテ−トであり、これらは
混合物でもよい。本発明のフィルムにおいてはトリアセ
チンと呼ばれるトリアセテ−ト又はトリアセテ−トを主
体とするものが、相溶性(可塑化効果)や、弾性率湿度依
存性の点から好ましい。
【0015】上記の可塑剤は、単体でも生分解性を有
し、酢酸セルロ−スに任意の割合で添加しても、組成物
の生分解性を阻害することがないが、可塑剤の添加量
は、酢酸セルロ−スと可塑剤の合計量に対し、5 〜50重
量%の範囲にすることが好ましい。かかる範囲を下回る
場合には、融点や溶融粘度の低下が不十分で溶融押出性
が発現せず、上回る場合は、溶融粘度が下がり過ぎた
り、相溶性の低下から可塑剤が分離したりして、押出し
たシ−トの平面性や外観を保持して引き取ることが困難
になる。しかしながら、押出適性に関しては、可塑剤添
加量のみならず、酢酸セルロ−スの重合度も関係するの
で、この両者の作用の加算として溶融粘度を一つの指標
とする。本発明においては、220 ℃で剪断速度100 秒-1
で測定したときの溶融粘度が、(1.0〜100)×103 ポイズ
であることが重要である。かかる範囲外では、上述した
理由等により、押出温度を調整しても、押出適性が得ら
れない。
【0016】酢酸セルロ−スと可塑剤の組成物に対し、
さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で他の高分子材
料、特に生分解性プラスチックをブレンドしても構わな
い。また、成形加工性やフィルム製品の物性を調整する
目的で、可塑剤、滑剤、無機フィラ−、安定剤、紫外線
吸収剤、難燃剤、防曇剤、防黴剤、顔料、蛍光剤等の添
加剤、改質剤を添加することも可能である。本発明にお
いては、このような酢酸セルロ−ス組成物 (以下単に酢
酸セルロ−スと記すことがある) を溶融押出して、シ−
トやフィルム形態にする。酢酸セルロ−スのフィルム
は、溶液法 (流延法、湿式法に同じ) によって作られる
のが一般的であるが、溶液法では、後述するような熱成
形等に好適な比較的厚いシートを作ることができず、ま
たフィルムやシート成形時に同時に積層品を得ることが
できない。さらには、製造コスト上も不利である。
【0017】押出機は通常プラスチックの押出しに用い
られる任意の型のものを採用することができる。可塑剤
を添加したりポリマ−ブレンドを行なう場合には、単軸
押出機よりも、同方向2 軸押出機のほうが好ましい。押
出機の設定温度は酢酸セルロ−スの溶融粘度により適宜
決められるが、180〜240 ℃の範囲が望ましい。かかる
範囲外では、本発明の規定する溶融粘度を得るのが困難
であるばかりか、相分離や熱分解を起こすことがある。
押出機中で溶融された酢酸セルロ−スは、Tダイ、Iダ
イ、丸ダイ等から押出され、フィルムやシ−トに成形さ
れる。丸ダイから押出した場合は、続いてインフレ−シ
ョンを行ない、さらに流れ方向に1カ所以上をスリット
して、いわゆるインフレ−ションフィルムを得る。いず
れの場合も、ロ−ル法、テンタ−法あるいはチュブラ−
法によって、必要に応じ1 軸または2 軸延伸しても良い
が、PETに代表される他材料に見られるような延伸に
よる機械物性等の改良効果はそれほど大きくはない。薄
肉化等を目的に延伸を行なう場合には、フィルム温度10
0 〜150 ℃、延伸倍率2.5 倍以内で操作する。フィルム
やシ−トの厚みは、5 μm 〜1 mmの範囲であり、用途に
応じて決められる。
【0018】このようにして得られたフィルムやシ−ト
は、生分解性でありながら、透明で、引張り弾性率が10
0 kg/mm2(23℃、0 %RH測定) 以上の剛性 (腰) を持つ
ポリプロピレン様の材料として、一般包装材を中心に広
い分野で利用することができる。従来の酢酸セルロ−ス
フィルムは、実用上大きな欠点があった。すなわち、大
気中の水分を吸着して、その結果水が可塑剤として働
き、フィルムの弾性率が経時的に低下、もしくは湿度に
応じて変化するため、品質が安定しないというものであ
る。そのために、使用できる用途が限定されていた。本
発明の酢酸セルロ−スは、アセチル基置換度を規定した
ため、吸着水による弾性率低下は殆んどなく、23℃、60
%RHにおける引張り弾性率が、23℃、0 %RHにおける引
張り弾性率の80%以上を発現することができる。
【0019】しかしながら、本発明の酢酸セルロ−スフ
ィルムも問題点を有している。製造工程で残存した、あ
るいはフィルム押出工程やフィルム製品になってから加
水分解により生成した酢酸の臭気があるということであ
る。溶液法では、加工時の熱履歴が少なく新たに生成す
る酢酸が少ないばかりか、原料由来の酢酸も溶液中に溶
解するため、フィルム製品の酢酸臭は比較的少ない。反
対に溶融押出法では顕著である。酢酸臭は不快な匂いで
あるため、僅かであってもフィルム製品に存在すること
は実用上好ましくない。そこで、本発明においては、こ
の酢酸臭を防止するために、酢酸セルロ−スフィルムあ
るいはシ−トを内層とし、脂肪族ポリエステルを外層と
する2種3層を基本とする多層生分解性フィルムあるいは
シ−トとする。脂肪族ポリエステルは、アルキレン結合
とエステル結合を基本骨格として持つものであれば特に
限定されない。生分解性に実質的な影響を与えない範囲
で、ウレタン結合、アミド結合、エ−テル結合等を導入
することもできる。
【0020】具体的には、まず脂肪族ジオ−ルと脂肪族
ジカルボン酸を縮合して得られる重合体が挙げられる。
脂肪族ジオ−ルとしては、エチレングリコ−ル、1,4-ブ
タンジオ−ル及び1,4-シクロヘキサンジメタノ−ル等が
代表的に挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、コ
ハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびド
デカン二酸等が代表的に挙げられる。これらの中から、
それぞれ1種類以上選んで縮合重合した後、必要に応じ
てイソシアネ−ト化合物等の分子鎖延長剤を追加して重
量平均分子量50000 以上にジャンプアップした重合体
は、通常60〜110℃の融解温度とポリエチレンに似た比
較的優れた基本物性を持つ。次に、環状ラクトン類を有
機金属触媒を用い開環重合した一連の脂肪族ポリエステ
ルがある。単量体としては、ε−カプロラクトン、δ−
バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、β
−プロピオラクトン、ピバロラクトン、β−ブチロラク
トン、γ−ブチロラクトン等が代表的に挙げられ、場合
によってはラクチドやグリコリドを含め、これらから1
種類以上選ばれて重量平均分子量が30000 以上になるよ
うに条件を調整して重合される。
【0021】さらに、ポリ乳酸に代表されるα−ヒドロ
キシカルボン酸の重合体がある。乳酸としては、L −乳
酸、D ー乳酸が挙げられ、他のヒドロキシカルボン酸と
しては、グリコ−ル酸、3 −ヒドロキシ酪酸、4 −ヒド
ロキシ酪酸、3 −ヒドロキシ吉草酸、4 −ヒドロキシ吉
草酸、6 −ヒドロキシカプロン酸などが代表的に挙げら
れる。これらの重合法としては、縮合重合法、環状二量
体からの開環重合法など、公知のいずれの方法を採用す
ることも可能である。重合体の重量平均分子量としては
60000 から1000000 の範囲が好ましい。さらに、他の合
成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキ
シラン類、例えば無水コハク酸とエチレンオキサイドや
プロピレンオキサイド又はアリルグリシジルエ−テルと
の重合体や、エチレンと環状ケテンアセタ−ルである2
−メチレン−1,3 −ジオキソランや2 −メチレン−1,3
−ジオキセパンとのラジカル重合体等が挙げられる。
【0022】また、アルカリゲネスユ−トロファスを始
めとする菌体内でアセチルコエンチ−ムA (アセチルC
oA) により生合成される脂肪族ポリエステルが知られ
ている。この脂肪族ポリエステルは、主にポリ−β−ヒ
ドロキシ酪酸 (ポリ3 HB)であるが、プラスチックと
しての実用特性を向上させるために、発酵プロセスを工
夫し、通常吉草酸ユニット (HV) を共重合し、ポリ(3
HB−Co−3 HV)の共重合体にすることが工業的に
有利である。HV共重合比は一般的に0 〜40%であり、
この範囲で融解温度は130 〜165 ℃である。HVの代わ
りに4 HBを共重合したり、さらに長鎖のヒドロキシア
ルカノエ−トを共重合する検討も行なわれているが、い
ずれも本発明の脂肪族ポリエステルとして用いることが
できる。
【0023】酢酸セルロ−スフィルムと脂肪族ポリエス
テルフィルムを積層する方法としては、通常積層フィル
ムを作るための任意の方法を採用することができる。例
えば、複数の押出機を一つの口金に連結し、いわゆる共
押出ししたり、巻き出した酢酸セルロ−スフィルム上に
脂肪族ポリエステルフィルムをコ−ティングしたり、適
温にある複数種のフィルムをロ−ルやプレス機などで熱
圧着したり、あるいは接着剤を使ってフィルム同志を貼
り合わせたりする方法が代表的に挙げられる。いわゆる
ドライラミネ−ションやウエットラミネ−ションを行な
う場合の接着剤としては、ビニル系、アクリル系、ポリ
アミド系、ポリエステル系、ゴム系、ウレタン系等が一
般的に用いられるが、接着剤も生分解性にする場合に
は、でんぷん、アミロ−ス、アミロペクチン等の多糖類
や、膠、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、コラ−ゲン等の
蛋白質類やポリペプチド類、未加硫天然ゴム、あるいは
低分子量脂肪族ポリエステル等が好ましく採用される。
このように2 種3 層を基本とする積層フィルムとするこ
とで、内層の酢酸セルロ−ス層の酢酸臭は脂肪族ポリエ
ステル層に遮断され、フィルム全体として酢酸臭が実質
的にしなくなる。また、積層化することで、酢酸臭がし
なくなるばかりか、延伸性やインフレ−ション適性等の
加工性や、表面滑性、ヒ−トシ−ル性、印刷適性等の表
面特性も改良されるので、より広い用途展開が可能にな
る。
【0024】次に、酢酸セルロ−スフィルムあるいはシ
−ト (本節では単にシ−トと記す)からの熱成形品につ
いて説明する。酢酸セルロ−スシ−トからの熱成形品は
これまで殆んど実用化されていない。この原因は、熱成
形品の用途においては製品の剛性が要求されるが、酢酸
セルロ−スは吸水により弾性率の低下が起こり適性な剛
性を保持できないことにある。また、可塑剤が無添加の
系においては、ガラス転移温度が150℃以上で汎用樹脂
に比べて著しく高く、従って、汎用の真空/圧空成形機
では加工できないことも関係していた。本発明の酢酸セ
ルロ−スは、吸水による弾性率の低下が起こり難く、ま
た、可塑剤の添加によりガラス転移温度も80〜130 ℃に
低下しているので、熱成形の加工及び用途展開が容易で
ある。
【0025】熱成形に適したシ−トの厚みは、特に限定
されるものではないが、用途上からは50μm 〜1 mmが好
ましく使用される。熱成形の方法としては、シ−トを熱
成形するあらゆる既知の方法、例えば、真空成形、圧空
成形、真空圧空成形、雄雌型成形、プラグアシスト真空
成形、CD(Cuspation Dilation:先端拡張) 成形等から
任意に採用することができる。成形時のシ−ト温度は、
シ−トのガラス転移温度に依存して、80〜170 ℃の温度
範囲で決められ、一方金型温度は80℃以下が好ましい。
原料の特性上深絞り成形はやや困難であるが、面積成形
倍率が4倍以下なら容易に成形が可能である。
【0026】
【実施例】以下に実施例を示すが、これらにより本発明
は何等制限を受けるものではない。なお、実施例中に示
す測定値は次に示すような条件で測定を行ない算出し
た。 (1) アセチル基置換度 JIS L1013 に基づき、アルカリで鹸化し生成する酢酸を
滴定して酢酸セルロ−スの酢化度を求め、アセチル基置
換度を算出した。セルロ−スの水酸基が全くアセチル基
に置換されていなければアセチル基置換度は0 、全て置
換されていれば3.0(酢化度62.5%) である。 (2) 溶融粘度 (株) 島津製作所製フロ−テスタ−CFT-500Cに1 mmφ×1
0 mmLのノズルを取り付け、試料を220 ℃で5 分間予熱
後、定加重で押出して、剪断速度100 秒-1の時の見掛け
粘度 (ポイズ:poise) を本発明における溶融粘度とし
た。
【0027】(3) 引張り弾性率及び引張り弾性率の湿度
依存性 試料を幅5 mmの短冊状に切り出し、23℃で調湿された雰
囲気に2 日間靜置後、東洋精機 (株) 製テンシロンII型
機を用い、チャック間25 mm 、引張り速度5 mm/分で引
張り試験を行ない、得られた応力−歪み曲線より降伏強
度の1 /2 の強伸度を求め、強度を伸度で除すことで弾
性率を算出した。単位は、kg/mm2 である。弾性率の湿
度依存性は、23℃、60%RHにおける引張り弾性率を23
℃、0 %RHにおける引張り弾性率で除して百分率 (%)
とした。
【0028】(4) 生分解性 厚み100 μm のフィルム試料を幅25 mm ×長さ130 mmの
短冊状に切り出し、生分解性プラスチック研究会(BPS)
の土中フィ−ルドテスト法に準拠して、滋賀県長浜市川
崎町の土中に埋設した。5 カ月放置後、掘り起こし、各
試料の重量保持率 (%) の測定を行なった。重量保持率
(%) とは、掘り起こした試料中の目に見える小片を可
能な限り回収して重量測定したものを、埋設前のフィル
ム試料の重量で除した百分率(%)である。従って重量減
少部分は微細粉、分子レベルまでの分解物、水と二酸化
炭素に変わったものの合計である。
【0029】実施例1〜2及び比較例1〜2 平均重合度が100 〜300 の範囲にあり、アセチル基置換
度を2.1 〜2.9 まで変化させた各種酢酸セルロ−スに対
し、可塑剤として、トリアセチンを酢酸セルロ−スとト
リアセチンの合計重量に対し30重量%添加し、40 mm φ
同方向2 軸押出機を用い、220 ℃設定でペレット化し
た。これらのペレットを40 mm φ単軸押出機を用い220
℃設定で、Tダイ押出して、厚み100 μm のフィルムを
得た。アセチル基置換度が低いほど押出性が悪い傾向に
あったが、いずれもフィルム化が可能であった。これら
フィルムの引張り弾性率と生分解性を評価した結果を表
1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】実施例3〜6及び比較例3〜4 平均重合度180 、アセチル基置換度2.4 の酢酸セルロ−
スに対し、各種可塑剤を酢酸セルロ−スと可塑剤の合計
重量に対して30重量%の割合で添加し、実施例1と同様
の方法でフィルムを得た。いずれの原料からもフィルム
化が可能であった。これらフィルムの生分解性を評価し
た結果を表2に示す。なお、表2の実施例6で使用した
可塑剤の低分子量脂肪族ポリエステルは、大日本インキ
(株) 製のポリサイザ−W1000(分子量1000) である。
【0032】
【表2】
【0033】実施例7〜9及び比較例5〜7 平均重合度180 、アセチル基置換度2.6 の酢酸セルロ−
スに対し、トリアセチンを酢酸セルロ−スとトリアセチ
ンの合計量に対して表3に記載の割合で添加し、ヘンシ
ェルミキサ−で撹拌して顆粒中に浸透させた後、40 mm
φ単軸押出機で、Tダイ押出して、厚み100 μm のフィ
ルムを得た時の押出性を溶融粘度と共に評価した結果を
表3に示す。押出性及びフィルム成形性については、22
0 ℃設定で評価して、不良の場合は、不具合が改善され
る方向に温度設定を変更した。
【0034】
【表3】
【0035】実施例10〜11及び比較例8 平均重合度180 、アセチル基置換度2.6 の酢酸セルロ−
スに対し、可塑剤としてトリアセチンを酢酸セルロ−ス
とトリアセチンの合計量に対して30重量%の割合で添加
し、40 mm φ同方向2 軸押出機を用いペレット化した。
次に、50 mm φ単軸エクストル−ダ−からの溶融物が内
層に、30 mm φ単軸エクストル−ダ−からの溶融物が両
外層になるように、2 種3 層Tダイ口金を用い、共押出
を行なった。外層/内層/外層の厚み比を1 /8 /1 に
なるよう調整し、全体で厚み100 μm のフィルムを得
た。内層として、上記酢酸セルロ−スを、外層として、
脂肪族ポリエステルである昭和高分子 (株) 製ビオノ−
レ1010 (融解温度=114 ℃) 、及び、 (株) ゼネカ製バ
イオポ−ルD300G(融解温度=162 ℃) を用いた。
【0036】なお、上記ビオノ−レ1010は、コハク酸と
1,4 −ブタンジオ−ルとの共重合体をヘキサメチレンジ
イソシアネ−トで鎖延長した化合物であり、バイオポ−
ルD300G は、3 −ヒドロキシ酪酸と3 −ヒドロキシ吉草
酸との共重合体に可塑剤と核剤を添加した組成物であ
る。また比較例8として、この装置を用いて、内外層と
も上記酢酸セルロ−スである実質単層のフィルムも得
た。これらのフィルムのフィルム表面の臭気 (酢酸臭)
と生分解性を評価した結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】実施例12 平均重合度が180 、アセチル基置換度2.6 の酢酸セルロ
−スに対し、可塑剤としてトリアセチンを酢酸セルロ−
スとトリアセチンの合計量に対して30重量%の割合で添
加し、40 mm φ同方向2 軸押出機を用いペレット化し
た。更に、40 mmφ単軸押出機で、Tダイ押出して、厚
み450 μm のシ−トを採取し、100 mm×100 mmに切り出
したシ−トをアルミ製の金型をセットしたCDK (株)
製圧空成形機FKS-03-410を用い、125 ℃に熱板加熱した
後、空気圧1.5 kg/cm2 、金型温度45℃で圧空成形し、
良好な成形品を得ることができた。なお、この成形品は
開放上縁が一辺5 cmの正方形、高さ3 cmで、底面方向に
向ってすぼまっているカップ様の形状をなす容器であ
る。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、特定の酢酸セルロ−ス
と特定の可塑剤を用い、材料全体の性質を示す指標を特
定の範囲に調整し、溶融押出性、耐湿性、低臭気性、生
分解性、そして透明性も良好な生分解性フィルム又はシ
−トを得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 71/02 LQE C08L 71/02 LQE (72)発明者 小林 博也 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アセチル基置換度が2.3〜2.7の酢
    酸セルロ−スと生分解性可塑剤とを主要組成分とするフ
    ィルム又はシ−トであって、そのフィルム又はシ−トの
    23℃、0%RHにおける引張り弾性率が100kg/
    mm2 以上であり、かつ23℃、60%RHにおける引
    張り弾性率が23℃、0%RHにおける引張り弾性率の
    80%以上であることを特徴とする生分解性のフィルム
    又はシ−ト。
  2. 【請求項2】 生分解性可塑剤は、下記(1)の一般式
    で表わされる化合物及び下記(2)に記載される化合物
    からなる群から選ばれた1種又は2種以上の組合わせか
    らなることを特徴とする請求項1記載の生分解性のフィ
    ルム又はシ−ト。 (1)H5 3(OH)3-n(OOCCH3)n 0<n ≦3 (2)グリセリンアルキレ−ト(アルキル基は炭素数2
    〜20、水酸基の残基があってもよい)、エチレングリ
    コ−ルアルキレ−ト(アルキル基は炭素数1〜20、水
    酸基の残基があってもよい)、エチレン繰り返し単位が
    5以下のポリエチレングリコ−ルアルキレ−ト(アルキ
    ル基は炭素数1〜20、水酸基の残基があってもよ
    い)、脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(アルキ
    ル基は炭素数1〜20)、脂肪族ジカルボン酸アルキル
    エステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル
    基の残基があってもよい)、脂肪族トリカルボン酸アル
    キルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキ
    シル基の残基があってもよい)、重量平均分子量2万以
    下の低分子量脂肪族ポリエステル。
  3. 【請求項3】 生分解性可塑剤は、酢酸セルロ−スと生
    分解性可塑剤との合計重量に対し、5〜50重量%の割
    合で酢酸セルロ−スに配合されることを特徴とする請求
    項1又は2記載の生分解性のフィルム又はシ−ト。
  4. 【請求項4】 220℃、剪断速度100秒-1で測定し
    たときの溶融粘度が(1.0〜100)×103 ポイズ
    であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか
    の項に記載の生分解性のフィルム又はシ−ト。
  5. 【請求項5】 溶融押出して得られたものであることを
    特徴とする請求項1から4までのいずれかの項に記載の
    生分解性のフィルム又はシ−ト。
  6. 【請求項6】 請求項1から5までのいずれかの項に記
    載の生分解性のフィルム又はシ−トを内層とし、生分解
    性の脂肪族ポリエステル層を外層とすることを特徴とす
    る生分解性の多層フィルム又はシ−ト。
  7. 【請求項7】 請求項1から5までのいずれかの項に記
    載の生分解性のフィルム又はシ−トから熱成形されてな
    ることを特徴とする成形品。
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