JP2006152275A - 蓄熱断熱体 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた蓄熱性・断熱性を示すため、外気温度の変化に対し空間温度の変動が少なく快適な環境を維持することができ、省エネルギー化を図ることができる蓄熱断熱体を提供する。
【解決手段】本発明の蓄熱断熱体は、特定の結晶性ビニルモノマーを重合して得られるカプセル壁に潜熱蓄熱材を内包させた蓄熱性マイクロカプセルを含有する蓄熱体と、熱伝導率が0.1W/(m・K)未満の断熱体とが積層されたことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、高い蓄熱性・断熱性を有する蓄熱断熱体に関する。
熱エネルギーを制御する技術として、蓄熱技術、断熱技術等があり、昨今のエネルギー問題を解決する技術の一つとして着目されている。
蓄熱技術は、太陽熱、地熱等の自然エネルギーや、冷暖房器具等からの熱を蓄え有効利用する技術であり、断熱技術は、外からの熱を断ち、内からの熱を逃がさないように保温する技術である。
このような蓄熱技術と断熱技術を利用したものとして、例えば住宅分野では、安価な夜間電力を使用して、熱を蓄え、多目的な熱源として利用し、日中の電力消費を抑え、かつ、外気温度の影響を遮断し、室内温度の変動を和らげることのできる省エネルギー化住宅に用いられる材料等が挙げられる。
例えば、特許文献1には、屋外側に断熱材層、室内側に潜熱蓄熱材からなる蓄熱材層を組み合わせてなる躯体構造が記載されており、外気温の変化に対し室温の変動を少なくし、快適な室内環境を維持することで、冷暖房に要するエネルギーの省エネルギー化を図っている。ここで用いられている蓄熱材層としては、潜熱蓄熱材をマイクロカプセル化したものであり、カプセル壁としてメラミンホルマリン樹脂を用いたマイクロカプセルが開示されている。
特開2003−34993号公報
しかしカプセル壁に用いられているメラミンホルマリン樹脂は、硬い性質を有する反面、脆いという性質を有する。したがって、カプセルを混練、攪拌した場合、カプセル壁が破砕しやすく、潜熱蓄熱材が漏洩しやすいという問題があった。したがって、このような蓄熱用マイクロカプセルを、蓄熱材層へ適用する場合、その製造過程において、マイクロカプセルが破砕してしまうことがあり、優れた蓄熱性を有する蓄熱材層を得ることは困難な場合があった。
さらに、メラミンホルマリン樹脂の製造には、ホルムアルデヒド等の物質を使用するため、環境に対し好ましいものでもない。
また、潜熱蓄熱材をマイクロカプセル化する方法としては、特許文献2等が挙げられる。
特許文献2では、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン誘導体等の熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁に、相転移自在な有機化合物(潜熱蓄熱材)を内包した蓄熱用マイクロカプセルが開示されている。カプセル壁に用いられている熱可塑性樹脂としては、メチル(メタ)アクリレート等の炭素数10以下の(メタ)アクリルモノマーが用いられている。(段落0008記載)
しかし、このようなポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン誘導体等の熱可塑性樹脂を用いた場合、得られたカプセル壁は、潜熱蓄熱材によって可塑化され易く、マイクロカプセル同士が融着・凝集するという問題があった。したがって、このような蓄熱用マイクロカプセルを、特許文献1のような蓄熱材層へ適用する場合、その製造過程において、マイクロカプセル同士が融着・凝集し、優れた蓄熱性を有する蓄熱材層を得ることは困難な場合があった。
特開2001−181611号公報
本発明は上記課題を解決するために、鋭意検討をした結果、特定の蓄熱性マイクロカプセルを用いることによって、カプセル壁が破砕することなく、カプセル壁が蓄熱材によって可塑化され難く、カプセル同士の融着・凝集が防止できるため、蓄熱体の製造が簡便であり、このような蓄熱体と断熱体が積層された蓄熱断熱体が、優れた蓄熱性・断熱性を有し、外気温度の変化に対し空間温度の変動が少なく快適な環境を維持でき、省エネルギー化を図ることができることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
下記の特徴を有する蓄熱性マイクロカプセルを含有する蓄熱体と、熱伝導率が0.1W/(m・K)未満の断熱体とが積層されたことを特徴とする蓄熱断熱体。
蓄熱性マイクロカプセル:カプセルに潜熱蓄熱材が内包されており、該カプセルのカプセル壁が、下記の化学式1で示される結晶性ビニルモノマーを主成分とするモノマーを重合して得られる重合体から形成されたもの
(化学式1)
Figure 2006152275
(Rは水素(−H)またはメチル基(−CH)、Xはエステル結合(−COO−)、エーテル結合(−O−)またはアミド結合(−CONH−)、Rは炭素数12以上の直鎖アルキル基)
本発明の蓄熱断熱体は、優れた蓄熱性・断熱性を有し、外気温度の変化に対し空間温度の変動が少なく快適な環境を維持でき、省エネルギー化を図ることができる。
以下、本発明を、実施するための最良の形態とともに詳細に説明する。
本発明の蓄熱断熱体は、蓄熱体と断熱体が積層されたものである。
(蓄熱体)
本発明の蓄熱体は、カプセルに潜熱蓄熱材が内包されており、該カプセルのカプセル壁が、下記の化学式1で示される結晶性ビニルモノマーを主成分とするモノマーを重合して得られる重合体から形成された蓄熱性マイクロカプセルを含有するものである。
(化学式1)
Figure 2006152275
(Rは水素(−H)またはメチル基(−CH)、Xはエステル結合(−COO−)、エーテル結合(−O−)またはアミド結合(−CONH−)、Rは炭素数12以上(好ましくは12以上36以下、さらに好ましくは18以上36以下)の直鎖アルキル基)
本発明における蓄熱体は、このような蓄熱性マイクロカプセルが含有されていることにより、優れた蓄熱性を有するものである。
本発明に用いる蓄熱性マイクロカプセルについて詳細に説明する。
本発明に用いる蓄熱性マイクロカプセルは、カプセルに潜熱蓄熱材が内包されており、該カプセルのカプセル壁が、化学式1で示される結晶性ビニルモノマーを主成分とするモノマーを重合して得られる重合体から形成されたものである。
このような結晶性ビニルモノマーを用いることにより、後述する潜熱蓄熱材によって、カプセル壁が可塑化され難く、カプセル同士が融着・凝集されにくい。かつ、ビニル系のモノマーを用いているため、柔軟性があり、カプセルを混練、攪拌する場合、カプセル壁が破砕することなく、潜熱蓄熱材が漏洩することもない。そのため、本発明に用いる蓄熱性マイクロカプセルは、水等の溶媒に分散させて用いる場合は分散安定性に優れ取扱いが容易であり、固形微粉末として使用する場合も取扱いが容易である。
また、炭素数12以上(好ましくは12以上36以下、さらに好ましくは18以上36以下)の直鎖アルキル基を有する結晶性ビニルモノマーを使用しているため、潜熱蓄熱材との相溶性に優れている。そのため、カプセルに高含有量の潜熱蓄熱材を内包することができ、優れた蓄熱性を示すことができる。また、カプセル壁が可塑化され難く、カプセル同士が凝集し難いマイクロカプセルを得ることができる。本発明では、特に、炭素数が18以上36以下である場合、上記効果が得られやすく好ましい。
炭素数12未満の直鎖アルキル基を有するビニルモノマーを用いた場合、カプセル壁が可塑化されるおそれがあり、カプセル同士が融着・凝集する場合がある。また、メラミン等のモノマーを用いた場合、柔軟性に劣るおそれがあり、カプセルを混練、攪拌する場合、カプセル壁が破砕し、潜熱蓄熱材が漏洩する場合がある。
結晶性ビニルモノマーとしては、化学式1を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系ビニルモノマー;
ビニルラウリレート、ビニルミリステート、ビニルパルミテート、ビニルステアレート等のビニルエステル系ビニルモノマー;
ラウリルビニルエーテル、ミリスチルビニルエーテル、パルミチルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル系ビニルモノマー;
等が挙げられる。
本発明では、特に、アルキル基の炭素数が18以上36以下の結晶性ビニルモノマーを用いることが好ましく、例えば、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系ビニルモノマーが好ましい。アルキル基の炭素数が12以上36以下の結晶性ビニルモノマーの含有量としては、本発明の効果を損なわない程度であれば特に限定されないが、カプセル壁を構成するモノマー全量に対し、50重量%以上、さらには70重量%以上、さらには100重量%であることが好ましい。
本発明では、さらに、カプセル壁を構成するモノマーとして、架橋性モノマーを用いることが好ましい。架橋性モノマーを用いることにより、カプセル壁に架橋ネットワークが形成され、カプセル壁がより強靭となり、混錬・攪拌による安定性に優れ、カプセル同士が凝集され難くなる。さらにカプセル壁の結晶化温度以上の領域における安定性を向上させることができる。
架橋性モノマーとしては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、ビニレン基から選ばれる1種以上の不飽和炭化水素基を2個以上有するモノマーが挙げられ、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)クリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレンジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシー1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラブロモピスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリストールテトラアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
架橋性モノマーとしては、特に、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレンジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリストールテトラアクリレートから選ばれる1種以上を用いることが好ましく、このなかでも特に、ポリエチレングリコールジメタクリレートのエチレンオキサイド付加数が4以上のものが好ましい。
このような架橋性モノマーは、親水性が高く、カプセル粒子表面で効率良く架橋するため、得られたカプセルは優れた貯蔵安定性を示すことができる。疎水性が高い架橋性モノマーを用いた場合、架橋性モノマーがカプセル粒子内部に取りこまれた状態で架橋するため、貯蔵安定性を有するカプセルを得ることは、難しい場合がある。
架橋性モノマーの含有量としては、本発明の効果を損なわない程度であれば特に限定されず、カプセル壁を構成するモノマー全量に対し、0.1重量%以上30重量%以下であることが好ましく、さらには0.3重量%以上20重量%以下、さらには0.5重量%以上重量10%以下であることが好ましい。
さらに本発明では、カプセル壁として、上記結晶性ビニルモノマー、架橋性モノマーのほかに、本発明の効果を損なわない程度で必要に応じ、他のモノマーを共重合することもできる。
このようなモノマーとしては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、N−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの低級アルキル基含有(メタ)アクリルモノマー;
(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー;
アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノ−N−ブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、N−tブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等などのアミン含有(メタ)アクリルモノマー;
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクロイルピロリジン、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−N−プロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミド含有(メタ)アクリルモノマー;
アクリロニトリルなどのニトリル基含有(メタ)アクリルモノマー;
グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリルモノマー;
ジアセトン(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、アセトニルアクリレート、ジアセトンメタクリルアミド、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、2ーヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、及びブタンジオールアクリレートアセチルアセテートなどのカルボニル基含有モノマー;
メタクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;
プロピレン−1,3−ジヒドラジン及びブチレン−1,4−ジヒドラジンなどのヒドラジノ基含有モノマー;
2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー;
スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系モノマー;
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル等が挙げられる。
結晶性ビニルモノマーの含有量としては、本発明の効果を損なわないて程度であれば特に限定されず、カプセル壁を構成するモノマー全量に対し、50重量%以上、さらには70重量%以上であることが好ましい。
また、本発明では、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーが含まれていることが好ましい。カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーの含有量としては、カプセル壁を構成するモノマー全量に対し、0.1重量%以上10重量%以下、さらには0.2重量%以上5重量%以下であることが好ましい。
上記モノマーを重合して得られるカプセル壁の結晶化温度は、25〜90℃、さらには40℃〜90℃、さらには45〜70℃であることが好ましい。このような結晶化温度であれば、実用レベルで本発明の効果が得られるため好ましい。結晶化温度が低すぎると、常温で軟化し、カプセル同士が融着・凝集する場合がある。
なお、結晶化温度は、示差走査熱量計(DSC220CU:セイコーインスツルメンツ株式会社製)にて、昇温速度10℃/分で測定した値である。
本発明に用いる潜熱蓄熱材としては、無機潜熱蓄熱材、有機潜熱蓄熱材等特に限定されないが、本発明では特に、有機潜熱蓄熱材を用いることが好ましい。有機潜熱蓄熱材を用いた場合、結晶性ビニルモノマーとの相溶性に優れるため、カプセル内に高含有量の有機潜熱蓄熱材を内包することができ、用途に応じた相変化温度の設定が容易であり、長期に亘り蓄熱性能が持続するため、好ましい。
また、有機潜熱蓄熱材は、沸点が高く揮発しにくいため、長期に亘り蓄熱性能を持続することができ、好ましい。さらに、有機潜熱蓄熱材を用いた場合、用途に応じた相変化温度の設定が容易であり、例えば相変化温度の異なる2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合することで、容易に相変化温度の設定が可能となる。
有機潜熱蓄熱材としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、脂肪酸トリグリセリド等が挙げられ、これらの蓄熱材のうち1種または2種以上を用いることができる。
脂肪族炭化水素としては、例えば、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素を用いることができ、具体的には、n−デカン(融点−30℃)、n−ウンデカン(融点−25℃)、n−ドデカン(融点−8℃)、n−トリデカン(融点−5℃)、n−テトラデカン(融点8℃)、n−ヘキサデカン(融点17℃)、n−ヘプタデカン(融点22℃)、n−オクタデカン(融点28℃)、n−ノナデカン(融点32℃)、エイコサン(融点36℃)、ドコサン(融点44℃)、およびこれらの混合物で構成されるn−パラフィンやパラフィンワックス等が挙げられる。
長鎖アルコールとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖アルコールを用いることができ、具体的には、ラウリルアルコール(融点24℃)、ミリスチルアルコール(融点38℃)等が挙げられる。
長鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸を用いることができ、具体的には、オクタン酸(融点17℃)、デカン酸(融点32℃)、ドデカン酸(融点44℃)、テトラデカン酸(融点50℃)、ヘキサデカン酸(融点63℃)、オクタデカン酸(融点70℃)等の脂肪酸等が挙げられる。
長鎖脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ラウリン酸メチル(融点5℃)、ミリスチン酸メチル(融点19℃)、パルミチン酸メチル(融点30℃)、ステアリン酸メチル(融点38℃)、ステアリン酸ブチル(融点25℃)、アラキジン酸メチル(融点45℃)等が挙げられる。
脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
本発明では潜熱蓄熱材として、特に、脂肪族炭化水素、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステルが、潜熱量が高く、本発明の結晶性ビニルモノマーとの相溶性により優れ、カプセル内に高含有量の潜熱蓄熱材を内包することができるため、好ましい。
本発明では、特に、炭素数15〜22の脂肪族炭化水素、炭素数15〜22の長鎖脂肪酸、炭素数15〜22の長鎖脂肪酸エステルから選ばれる1種以上を用いることが好ましく、このような潜熱蓄熱材は、潜熱量が高く、実用温度領域に相変化温度を有するため、様々な用途に使用しやすい。
また、2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合して使用する場合は、相溶化剤を用いることが好ましい。相溶化剤を用いることにより、有機潜熱蓄熱材どうしの相溶性をより向上させることができる。
相溶化剤としては、例えば、脂肪酸トリグリセリド等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合し用いることができる。
脂肪酸トリグリセリドは、上述したように、有機潜熱蓄熱材としても用いられる物質である。このような脂肪酸トリグリセリドは、特に有機潜熱蓄熱材同士の相溶性を、より向上させることができるとともに、優れた蓄熱性を有するため好ましい。脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
相溶化剤の混合比は、通常潜熱蓄熱材100重量部に対し、0.1重量部から30重量部(好ましくは0.5重量部から10重量部)程度とすればよい。
さらに、潜熱蓄熱材には、粘性調整剤、熱伝導性物質等を混合して用いることができる。
粘性調整剤としては、例えば、粘土鉱物等が挙げられ、特に、有機処理された層状の粘土鉱物を用いることが好ましい。
潜熱蓄熱材と有機処理された層状の粘土鉱物を混合することにより、有機処理された層状の粘土鉱物の層間に、潜熱蓄熱材が入り込む。有機処理された層状の粘土鉱物は、有機処理されたものであるため、潜熱蓄熱材が有機処理された層状の粘土鉱物の層間に入り込みやすく、また潜熱蓄熱材が有機処理された層状の粘土鉱物の層間に保持されやすい構造となっている。
このような有機処理された層状の粘土鉱物と潜熱蓄熱材を混合することにより、結果として、潜熱蓄熱材の粘度を上昇させ、カプセル内に潜熱蓄熱材を担持し、より保持し続けることができる。
さらに有機処理された層状の粘土鉱物は、潜熱蓄熱材として有機潜熱蓄熱材を用いた場合、有機潜熱蓄熱材とほとんど反応することがなく、有機潜熱蓄熱材の融点やその他の各種物性に影響を与えないため、蓄熱材としての性能を効率よく発揮することができ、相変化温度(融点)の設定が容易であるため、好ましい。
有機処理された層状の粘土鉱物の底面間隔は、13.0〜30.0Å(好ましくは15.0〜26.0Å)程度であることが好ましい。このような範囲であることにより、潜熱蓄熱材が、有機処理された層状の粘土鉱物の層間により入り込みやい。なお、底面間隔はX線回折パターンにおける(001)反射から算出される値である。
潜熱蓄熱材と有機処理された層状の粘土鉱物混合時の粘度は、0.5〜20.0Pa・s程度とすればよい。なお、粘度は、B型回転粘度計を用い、温度23℃、相対湿度50%RHで測定した値である。
また、潜熱蓄熱材と有機処理された層状の粘土鉱物混合時のTI値は、4.0〜9.0程度とすればよい。なお、TI値は、B型回転粘度計を用い、下記式1により求められる値である。
TI値=η1/η2 (式1)
(但し、η1:2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)、η2:20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
このような粘度、TI値とすることによって、カプセル内に潜熱蓄熱材が担持されやすく、かつ、カプセル内に潜熱蓄熱材が保持されやすい。
有機処理された層状粘土鉱物としては、例えば、スメクタイト、バーミキュライト、カオリナイト、アロフェン、雲母、タルク、ハロイサイト、セピオライト等が挙げられる。また、膨潤性フッ素雲母、膨潤性合成マイカ等も利用できる。
有機処理としては、例えば、層状粘土鉱物の層間に存在する陽イオンを長鎖アルキルアンモニウムイオン等でイオン交換(インターカレート)すること等が挙げられる。
本発明では、特に、スメクタイト、バーミキュライトが有機処理されやすい点から、好適に用いられる。さらに、スメクタイトの中でも、特に、モンモリロナイトが好適に用いられ、本発明では、特に、有機処理されたモンモリロナイトを好適に用いることができる。
具体的に、有機処理されたモンモリロナイトとしては、
ホージュン社製のエスベン、エスベン C、エスベン E、エスベン W、エスベン P、エスベン WX、エスベン NX、エスベン NZ、エスベン N-400、オルガナイト、オルガナイトーD、オルガナイトーT(商品名)
ズードケミー触媒社製のTIXOGEL MP、TIXOGEL VP、TIXOGEL VP、TIXOGEL MP、TIXOGEL EZ 100、MP 100、TIXOGEL UN、TIXOGEL DS、TIXOGEL VP−A、TIXOGEL VZ、TIXOGEL PE、TIXOGEL MP 250、TIXOGEL MPZ(商品名)
エレメンティスジャパン社製のBENTONE 34、38、52、500、1000、128、27、SD−1、SD−3(商品名)
等が挙げられる。
有機処理された層状粘土鉱物の混合比は、通常潜熱蓄熱材100重量部に対し、0.5重量部から50重量部(好ましくは1重量部から30重量部、より好ましくは3重量部から15重量部)程度とすればよい。
さらに、潜熱蓄熱材には、熱伝導性物質を混合することもできる。熱伝導性物質を混合することにより、蓄熱性マイクロカプセル内の熱の移動をスムーズにし、潜熱蓄熱材の熱効率性を向上させ、より優れた蓄熱性能を得ることができる。
熱伝導性物質としては、例えば、銅、鉄、亜鉛、ベリリウム、マグネシウム、コバルト、ニッケル、チタン、ジルコニウム、モブリデン、タングステン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ等の金属およびそれらの合金、あるいはこれらの金属を含む金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属リン化物等の金属化合物、また、鱗状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛、繊維状黒鉛等の黒鉛等が挙げられ、これらを1種または2種以上を混合して用いることができる。
熱伝導性物質の熱伝導率としては、1W/(m・K)以上、さらには3W/(m・K)以上、さらには5W/(m・K)以上であることが好ましい。このような熱伝導率を有する熱伝導性物質を混合することにより、より効率よく蓄熱材の熱効率性を向上させることができる。
また、熱伝導性物質は、微粒子として用いることが好ましく、平均粒子径は、1〜100μm、さらには5〜50μmであることが好ましい。
潜熱蓄熱材と熱伝導性物質の混合比は、通常潜熱蓄熱材100重量部に対し、5重量部から200重量部(好ましくは10重量部から80重量部、より好ましくは20重量部から60重量部)程度とすればよい。
本発明における蓄熱性マイクロカプセルの製造は、特に限定されず、公知の方法で製造すればよい。本発明では、結晶性ビニルモノマー(必要に応じ、架橋性モノマー、他のモノマー)と潜熱蓄熱材等を均一に混合し、重合を行うことによって、潜熱蓄熱材を内包した蓄熱性マイクロカプセルを、簡便に製造することができる。
重合方法としては、エマルション重合、ミニエマルション重合、マイクロエマルション重合、ソープフリーエマルション重合、分散重合、シード重合、シード分散重合、フィード重合、懸濁重合等特に限定されない。
このような重合では、上記結晶性ビニルモノマー(必要に応じ、他のモノマー等)と潜熱蓄熱材と、公知の開始剤、界面活性剤、分散剤、溶媒、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、架橋剤、pH調整剤、連鎖移動剤等を混合して得ることができる。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等特に限定されず、用いることができる。
例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンイソデシル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、
ラウリルトリアルキルアンモニウム塩、ステアリルトリアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、第1級〜第3級アミン塩、ラウリルピリジニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、或は、ラウリルアミンアセテート等のカチオン性界面活性剤、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、
カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸型、イミダゾリン誘導体型等の両性界面活性剤等が挙げられる。
開始剤としては、水溶性重合開始剤、油溶性重合開始剤等が挙げられ、特に限定されることなく、使用することができる。
例えば、水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩開始剤等が挙げられる。
例えば、油溶性重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、デカノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2、2'-アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
また、レドックス開始剤、光重合開始剤、反応性開始剤等を用いることができる。
本発明における蓄熱性マイクロカプセルは、特に、次のような方法で製造することが好ましい。
(i)(1)化学式1で示される結晶性ビニルモノマーを主成分とするモノマーと、潜熱蓄熱材等とを均一に混合し、該モノマーの重合体の結晶化温度よりも高い温度で、乳化重合を行う工程、
(2)重合後、該重合体の結晶化温度よりも低い温度まで冷却する工程、
または、
(ii)(1)化学式1で示される結晶性ビニルモノマーを主成分とするモノマーと、潜熱蓄熱材等とを混合し、液滴の平均粒子径が0.01μm〜20μmとなるように分散させ、該モノマーの重合体の結晶化温度よりも高い温度で、懸濁重合を行う工程、
(2)重合後、該重合体の結晶化温度よりも低い温度まで冷却する工程、
等が挙げられる。
(i)のような製造方法では、まず、(1)結晶性ビニルモノマー(必要により、架橋性モノマー、その他のモノマー)、水溶性重合開始剤、潜熱蓄熱材、界面活性剤、水を混合し、該モノマーの重合体の結晶化温度よりも高い温度で、乳化重合を行う。次に(2)重合後、該重合体の結晶化温度よりも低い温度まで冷却して製造することができる。
具体的には、結晶性ビニルモノマー(必要により、架橋性モノマー、その他のモノマー)を含む全単量体100重量部に対し、水溶性重合開始剤0.01〜10重量部(好ましくは0.1〜5重量部)、潜熱蓄熱材50〜250重量部(好ましくは100〜230重量部)、界面活性剤0.01〜10重量部(好ましくは0.05〜8重量部)、水40〜800重量部(好ましくは80〜400重量部)を均一に混合する。
このような状態で乳化重合することにより、カプセルの平均粒子径が0.01μm〜20μm(好ましくは、0.1〜10μm)であり水分散安定性、長期的な貯蔵安定性に優れ、取扱易いマイクロカプセルを形成することができる。平均粒子径が20μmより大きくなると、マイクロカプセルの水分散安定性が劣ってくる。
さらに重合後、該重合体の結晶化温度よりも低い温度まで冷却する。このような温度まで冷却することにより、カプセル壁を形成する重合体が相変化して結晶化するため、混錬・攪拌時の安定性に優れたマイクロカプセルの水分散液体を得ることができる。
マイクロカプセルの水分散液体の固形分としては、20重量%以上80重量%以下、さらには30重量%以上70重量%以下であることが好ましい。
このような製造方法では、モノマーを重合して得られる重合体がカプセルの最外壁を形成し、そのカプセル内に潜熱蓄熱材が内包された蓄熱性マイクロカプセルを、一般的な乳化重合法で簡便に製造することができる。特に、本発明で用いる結晶性ビニルモノマーが、潜熱蓄熱材との相溶性に優れ、乳化重合前は結晶性ビニルモノマーと潜熱蓄熱材とを均一に混合でき、乳化重合後に得られるカプセルには高含有量の潜熱蓄熱材を内包することができ、優れた蓄熱性を有するマイクロカプセルを製造することができる。
また、乳化重合の際は、該モノマーを重合して得られる重合体の結晶化温度よりも高い温度で、乳化重合することが好ましい。このような温度で乳化重合することにより、重合時には非晶性の重合体(カプセル壁)を形成し、潜熱蓄熱材がカプセルに内包されやすい。さらに、重合後は、該重合体の結晶化温度よりも低い温度まで冷却することにより、重合体が相変化して結晶化し、カプセルの最外壁であるカプセル壁を形成し、内包された潜熱蓄熱材がカプセルから漏れ出すことのない、蓄熱性マイクロカプセルを得ることができる。
このような相変化機構により、高含有量の潜熱蓄熱材がカプセルに内包されているにもかかわらず、潜熱蓄熱材がカプセルから漏れ出すことのない、蓄熱性マイクロカプセルを得ることができる。また、このような蓄熱性マイクロカプセルは、最外壁がモノマーを重合して得られる重合体であれば特に限定されず、カプセル内は、潜熱蓄熱材をコア、重合体をシェルとするコアシェル状でもよいし、潜熱蓄熱材が多数分散したポーラス状でもよいし、あるいはゲル状でもよい。
(ii)のような製造方法では、まず、(1)結晶性ビニルモノマー(必要により、架橋性モノマー、その他のモノマー)、油溶性重合開始剤、潜熱蓄熱材、界面活性剤、水を混合し、該モノマーの重合体の結晶化温度よりも高い温度で、懸濁重合を行う。次に(2)重合後、該重合体の結晶化温度よりも低い温度まで冷却して製造することができる。
具体的には、結晶性ビニルモノマー(必要により、架橋性モノマー、その他のモノマー)を含む全単量体100重量部に対し、油溶性重合開始剤0.01〜10重量部(好ましくは0.1〜5重量部)、潜熱蓄熱材50〜250重量部(好ましくは100〜230重量部)、界面活性剤0.01〜10重量部(好ましくは0.05〜8重量部)、水40〜800重量部(好ましくは80〜400重量部)を混合し、液滴の平均粒子径が0.01μm〜20μm(好ましくは、0.1〜10μm)となるように分散させる。
分散させる方法としては、特に限定されないが、公知の高せん断力を付与する装置等を用いて分散させればよい。
このような状態で懸濁重合することにより、カプセルの平均粒子径が0.01μm〜20μm(好ましくは、0.1〜10μm)であり水分散安定性、長期的な貯蔵安定性に優れ、取扱易いマイクロカプセルを形成することができる。平均粒子径が20μmより大きくなると、マイクロカプセルの水分散安定性が劣ってくる。
なお、マイクロカプセルの粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製:マイクロトラック粒度分析計UPA150)を用いて測定した値である。
さらに重合後、該重合体の結晶化温度よりも低い温度まで冷却する。このような温度まで冷却することにより、カプセル壁を形成する重合体が相変化して結晶化するため、混錬・攪拌時の安定性に優れたマイクロカプセルの水分散液体を得ることができる。
マイクロカプセルの水分散液体の固形分としては、20重量%以上80重量%以下、さらには30重量%以上70重量%以下であることが好ましい。
このような製造方法では、結晶性ビニルモノマーが潜熱蓄熱材との相溶性に優れているため、結晶性ビニルモノマーと潜熱蓄熱材が均一に混合でき、懸濁重合後に得られるカプセル内に効果的に潜熱蓄熱材を内包することができ、優れた蓄熱性を有するマイクロカプセルを製造することができる。
また、懸濁重合の際、該モノマーを重合して得られる重合体の結晶化温度よりも高い温度で、懸濁重合することが好ましい。このような温度で懸濁重合することにより、重合時には非晶性の重合体(カプセル壁)を形成し、潜熱蓄熱材がカプセルに内包され易い。さらに、重合後は、該重合体の結晶化温度よりも低い温度まで冷却することにより、重合体が相変化して結晶化し、均一なカプセル壁を形成し、内包された潜熱蓄熱材が漏れ出すことのないマイクロカプセルを得ることができる。このような相変化機構により、高含有量の潜熱蓄熱材がカプセルに内包されているにも関わらず、潜熱蓄熱材がカプセルから漏れ出すことのなく、安定性に優れるマイクロカプセルを得ることができる。
(i)、(ii)における(1)の工程では、結晶性ビニルモノマーを用いることにより、潜熱蓄熱材によって、カプセル壁が可塑化され難く、カプセル同士が融着・凝集しにくい。かつ、ビニル系のモノマーを用いているため、メラミン等よりも柔軟性があり、カプセルを混練、攪拌する場合、カプセル壁が破砕することなく、潜熱蓄熱材が漏洩することもない。そのため、蓄熱性マイクロカプセルは、水等の溶媒に分散させて用いる場合は取扱いが容易であり、固形微粉末として使用する場合も回収が容易であり取扱い易い。
また、炭素数12以上(好ましくは炭素数12以上36以下、さらに好ましくは炭素数18以上36以下)の直鎖アルキル基を有する結晶性ビニルモノマーを使用しているため、蓄熱材との相溶性に優れている。よって、カプセルに高含有量の潜熱蓄熱材を内包することができ、優れた蓄熱性を示すことができる。
また、(i)、(ii)における(2)の工程では、該重合体の結晶化温度よりも低い温度まで冷却することを特徴とする。
冷却する方法としては、特に限定されないが、公知の冷却装置や、冷却物質を用いてもよいし、また結晶化温度にもよるが、結晶化温度が室温より高ければ、室温で自然冷却することもできる。
このようにして得られた蓄熱性マイクロカプセルは、蓄熱性マイクロカプセル分散液として使用することもできるし、エマルション液から蓄熱性マイクロカプセルを取り出し、固形微粉末として用いることもできる。
蓄熱性マイクロカプセルを固形微粉末として用いる場合は、第(3)の工程として、重合体の結晶化温度よりも低い温度で、回収することが好ましい。本発明における回収工程とは、分離工程、乾燥工程、分級工程等を含むもので、このような回収工程により固形微粉末のマイクロカプセルが得られるものである。本発明では、重合体の結晶化温度よりも低い温度で回収することにより、重合体が結晶性を維持したまま回収でき、潜熱蓄熱材がカプセルから漏れ出すことがない上に、カプセル壁が破粋することなく、また、カプセル同士の融着・凝集を防止することもできる。そのため、マイクロカプセルを固形微粉末として回収することが容易であり、高収率で固形微粉末を得ることができる。回収工程としては、重合体の結晶化温度よりも低い温度であれば、公知の方法を採用すればよい。
また、得られたマイクロカプセル固形微粉末は、再度、水等の溶媒に分散させて用いることもできる。
本発明に用いる蓄熱性マイクロカプセルは、高含有率で潜熱蓄熱材を内包することが可能である。具体的には、蓄熱性マイクロカプセル全体量に対し、通常30重量%以上、さらには40重量%以上70重量%以下、さらには50重量%以上70重量%以下内包することができる。このような含有量であることにより、優れた蓄熱性を示すこともできる。
かつ、蓄熱性マイクロカプセルは、カプセル壁が結晶性であるため、カプセル内に内包された有機潜熱蓄熱材によってカプセル壁が可塑化され難く、カプセル同士の融着・凝集を防止することができる。
さらに本発明で用いる結晶性ビニルモノマーから形成されるカプセル壁は、カプセル壁自体が蓄熱性を有している。そのため、潜熱蓄熱材の蓄熱性とカプセル壁の蓄熱性により、より優れた蓄熱性を示すことができる。
潜熱蓄熱材の内包量が30重量%未満の場合、十分な蓄熱性を有するマイクロカプセルが得られにくくなる。また潜熱蓄熱材の内包量が多すぎる場合、カプセル壁の結晶性が低下し、静置時および攪拌時にカプセル同士の凝集が見られ、長期的な貯蔵安定性が得られにくい。
本発明における蓄熱体は、このような蓄熱性マイクロカプセルが含有されているものであれば特に限定されないが、例えば、蓄熱性マイクロカプセルと結合剤等を混練したスラリーを成型する方法、浸漬法、減圧・加圧注入法等により含浸させる方法、ケーシング・ラミネートする方法、あるいはこれらを組み合わせた方法等で製造することができる。
また、蓄熱性マイクロカプセルと結合剤等を混練したスラリーを材料に塗付積層する方法や、蓄熱性マイクロカプセルと結合剤等を混練したスラリーや、蓄熱性マイクロカプセルを水に分散させた水分散体をケースに流し込みケーシングする方法等により製造することもできる。
本発明の蓄熱性マイクロカプセルは、混練、攪拌したとしてもカプセル壁が破砕し難くいため、潜熱蓄熱材が漏れ出すことがなく、簡便に製造することができる。
具体的に、蓄熱性マイクロカプセルと結合剤等を混練したスラリーを材料に塗付積層する方法では、まず、蓄熱性マイクロカプセルと結合剤等を、公知の方法で混練・攪拌を行い、蓄熱性マイクロカプセルを分散させる。この際、蓄熱性マイクロカプセルをより均一に分散させるため、せん断速度等を上昇させることができる。本発明の蓄熱性マイクロカプセルは、ある程度せん断速度等を上昇させたとしても、カプセル壁が破砕し難くいため、安定して分散を行うことができる。
また得られたスラリーは、刷毛、ローラー、こて、スプレー等で塗付積層すればよい。この際にも、蓄熱性マイクロカプセルには、せん断応力等の力が加えられるが、カプセル壁が破砕し難く、潜熱蓄熱材が漏れ出すことはない。
結合剤としては、有機結合剤、無機結合剤等が挙げられる。
このような結合剤としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の溶剤可溶型樹脂、NAD型樹脂、水可溶型樹脂、水分散型樹脂、無溶剤型樹脂等、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機結合剤、
ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色セメント、焼石膏、コロイダルシリカ、水溶性珪酸アルカリ金属塩等の無機結合剤等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
本発明では、特に有機結合剤を用いることが好ましく、有機結合剤のうち1液タイプ、2液タイプのいずれも使用することができるが、2液タイプがより好ましい。2液タイプを使用することにより、速やかに反応が進行し、高強度の蓄熱体が成型され、かつ、蓄熱性マイクロカプセルが均一に分散した蓄熱体が得られやすいため好ましい。
2液タイプとしては、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とイミド基、ヒドロキシル基とアルデヒド基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボキシル基とアジリジン基等の架橋反応を利用したもの等が挙げられる。特に、ヒドロキシル基とイソシアネート基の架橋反応を利用したものが、速やかに反応が進行し、かつ、蓄熱性マイクロカプセルがより均一に分散した蓄熱体が得られやすいため好ましい。
蓄熱性マイクロカプセルと結合剤の混合比率は、結合剤の固形分100重量部に対し、0.1重量部〜2000重量部(好ましくは、1重量部〜1500重量部、さらに好ましくは5重量部〜1000重量部)程度である。
また、結合剤の他に、溶剤、着色顔料、骨材、粘性調整剤、造膜助剤、緩衝剤、分散剤、架橋剤、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、防藻剤、湿潤剤、難燃剤、発泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、たれ防止剤、凍結防止剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維類、香料、化学物質吸着剤、光触媒、吸放湿性粉粒体等の各種添加剤を混練することもできる。
このうち、着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料、蓄光顔料、蛍光顔料等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
骨材としては、例えば、自然石、自然石の粉砕物等の天然骨材、及び着色骨材等の人工骨材から選ばれる少なくとも1種以上を好適に使用することができる。
具体的には、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、寒水石、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、石灰石、珪石、珪砂、砕石、雲母、珪質頁岩、砂利、及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、ゴム粒、金属粒等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、貝殻、珊瑚、木材、炭、活性炭、コンクリート、モルタル、プラスチック、ゴム等の粉砕物を使用することもできる。これらに着色を施したものも使用することができる。骨材の粒子径は通常0.5μm〜5mm(好ましくは1μm〜3mm)とすればよい。
着色顔料、骨材等を適宜使用することにより、成形体に美観性を付与することができ、例えば、住宅等の建築物の壁材、天井材、床材等の内・外装材の材料として用いる場合に有利である。
着色顔料、骨材等の混合比率は、特に限定されないが、着色顔料は、結合剤(固形分)100重量部に対し、10重量部〜1000重量部、好ましくは30〜800重量部である。骨材は、結合剤(固形分)100重量部に対し、50重量部〜4000重量部、好ましくは100〜2000重量部である。
蓄熱体の成型においては、このようなスラリーを、公知の方法でシート化し蓄熱体を成型してもよいし、あるいは、断熱体の上に塗付積層して蓄熱体を成型してもよい。本発明では、特定のカプセル壁を有する蓄熱性マイクロカプセルを用いているため、成型時に、カプセル壁が破砕することなく、また、カプセル同士の融着・凝集することなく、スラリーにカプセルが効率よく分散するため、優れた蓄熱性を有する蓄熱体を、簡便に製造することができる。
また、浸漬法、減圧・加圧注入法等により含浸させる方法においては、下記に示す材料に蓄熱性マイクロカプセルを含浸させればよい。
材料としては、例えば、コンクリート、石膏ボード、モルタル、スレート板等の無機材料、
ガラス繊維、パルプ繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維等の合成繊維、綿、木綿、石綿、麻、ヤシ、コルク、ケナフ等の天然繊維等の繊維材料、
アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機材料、
松、ラワン、ブナ、ヒノキ、合板等の木質材料、その他、紙、合成紙、セラミックペーパー等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
また、ケーシング・ラミネートする方法においては、蓄熱性マイクロカプセルを蓄熱体形成材料からなるケースやラミネートフィルムを用いて、蓄熱体を製造すればよい。
例えば、蓄熱性マイクロカプセルを水等の溶媒に分散させたものや蓄熱性マイクロカプセルの固体微粉末、及び、蓄熱性マイクロカプセルと結合剤を混練したスラリー等をケースに注入したり、ラミネートして得ることができる。
蓄熱体形成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、クロム、タングステン、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、銀、金等からなる金属板、金属箔等の金属材料、
ガラス繊維、パルプ繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維等の合成繊維、綿、木綿、石綿、麻、ヤシ、コルク、ケナフ等の天然繊維等の繊維材料、
アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等の合成ゴム等の有機材料、
松、ラワン、ブナ、ヒノキ、合板等の木質材料、その他、紙、合成紙、セラミックペーパー等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
蓄熱性マイクロカプセルを用いて蓄熱体を製造する場合、上記に一例を示したが、いずれの場合もカプセル壁が破砕することなく、カプセル壁が潜熱蓄熱材によって可塑化され難く、カプセル同士の融着・凝集が防止できるため、取扱い易く、簡便に蓄熱体を製造することができる。
蓄熱体における蓄熱性マイクロカプセルの含有量としては、蓄熱体の全体量に対し、10重量%以上、さらには20重量%以上70重量%以下であることが好ましい。このような範囲であることにより、優れた蓄熱性を有することができる。
また、蓄熱体の厚さは、特に限定されないが、通常0.5mm〜30mm、さらには1mm〜20mm程度が好ましい。
(断熱体)
本発明における断熱体は、熱伝導率が0.1W/(m・K)未満(より好ましくは0.08W/(m・K)以下、さらに好ましくは0.05W/(m・K)以下)のものであれば特に限定されず用いることができる。このような熱伝導率を有することにより、優れた断熱性を示すことができる。
このような断熱体としては、例えば、ポリスチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、アクリル樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体、発泡ゴム、グラスウール、ロックウール、発泡セラミック等、あるいはこれらの複合体等が挙げられる。また、市販の断熱体を使用してもよい。
断熱体の厚さは、特に限定されないが、通常1〜30mm、さらには2〜20mm程度が好ましい。
(蓄熱断熱体)
本発明の蓄熱断熱体は、特に限定されず、公知の方法により、蓄熱体と断熱体を積層すればよい。
例えば、予め製造しておいた蓄熱体と断熱体を公知の接着剤や接着テープ等で貼着する方法、予め製造しておいた断熱体に蓄熱性マイクロカプセルと結合剤を混練したスラリーを塗付積層する方法、予め製造しておいた蓄熱体に断熱体形成成分を塗付し、発泡させる方法等が挙げられる。
スラリーや、断熱体形成成分を塗付する場合は、スプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り、流し込み等の公知の方法で塗付することにより形成することができる。
また蓄熱断熱体は、蓄熱体・断熱体の2層からなるものでもよいし、断熱体・蓄熱体・断熱体、蓄熱体・断熱体・蓄熱体等の3層、またはそれ以上の多層構造体でもよい。また、断熱体、蓄熱体は、それぞれ1種でもよいし、2種以上を用いてもよい。3層以上の場合でも、上記積層方法と同様の方法で積層すればよい。
蓄熱断熱体の形状は、特に限定されないが、シート状、ボード状であることが好ましい。シート状、ボード状である場合、蓄熱断熱体の厚さは、用途により適宜設定すればよいが、各蓄熱体が通常0.5〜30mm(好ましくは、1〜20mm)程度、各断熱体が通常1〜30mm(好ましくは、2〜20mm)程度とすればよい。
本発明の蓄熱断熱体は、特にフレキシブル性を有するものが好ましい。本発明では、フレキシブル性を有する蓄熱体とフレキシブル性を有する断熱体を適宜選択して積層すればよい。フレキシブル性を有することにより、湾曲した部位や凹凸を有する部位であっても、隙間無く、該蓄熱断熱体を積層することができ、気密性に優れ、より蓄熱・断熱性能を向上させることができる。
本発明の蓄熱断熱体は、主として、住宅等の建築物の内壁材、外壁材、天井材、床材等の内・外装材、車輌等の内装材として好適に用いることができる。さらに、本発明の蓄熱断熱体は、車輌等の内装材、機械・機器等の工業製品、熱電変換システム、冷蔵・冷凍庫、浴槽・浴室、クーラーボックス、保温シート、電気製品、OA機器、プラント、タンク、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具、日用雑貨等にも適用できる。また各種基材に貼り合わせて使用することもできる。
本発明では、使用する用途に合わせて、潜熱蓄熱材を適宜設定することができる。例えば、建築物の内・外装材として使用する場合は、潜熱蓄熱材の融点が15℃〜30℃付近のものを使用すればよい。この他、車輌等の内装材として用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が15℃〜30℃付近のものを、冷蔵庫として用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が−10℃〜5℃付近のものを、冷凍庫として用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が−30℃〜−10℃付近のものを、それぞれ使用すればよい。
本発明では、さらに、蓄熱体面側に、熱伝導率が10.0W/(m・K)以上(好ましくは20.0W/(m・K)以上、さらに好ましくは100W/(m・K)以上)の熱伝導体を積層することが好ましい。熱伝導体を積層することにより、熱の移動速度が速く、蓄熱体の熱効率性が向上するため好ましい。
10.0W/(m・K)以上の熱伝導率を有する材料としては、例えば、銅、アルミニウム、鉄、真鍮、亜鉛、マグネシウム、ニッケル等の金属材料からなる鋼板等、あるいはこれらの金属材料を含む塗膜またはシート等が挙げられる。本発明では、特に、アルミニウム板を好適に用いることができる。
熱伝導体の厚さとしては、特に限定されないが、通常5〜1000μm程度であることが好ましい。
なお、本発明における熱伝導率は、熱伝導率計(京都電子工業株式会社製、Kemtherm.QTM−D3(商品名))を用いて測定した値である。
また、本発明では、空間内表面側に、何らかの表面材を設けることもできる。
表面材としては、けい酸カルシウムボード、石膏ボード等の無機系ボード、松、ラワン、ブナ、ヒノキ、合板等の木質材料、塗り材料、シート材料、壁紙等を用いることができ、これらのうち1種または2種以上を積層して用いることができる。
塗り材料としては、通常建築物の塗装に使用されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、JIS K 5663「合成樹脂エマルションペイント」等に規定されるものが好適に使用できる。塗り材料の乾燥膜厚としては、特に限定されないが、200μm以下であることが好ましい。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
(蓄熱性マイクロカプセルの製造)
−蓄熱性マイクロカプセルA−
ステアリルアクリレート40重量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート3重量部、ミリスチン酸メチル(相変化温度20℃、潜熱量190kJ/kg)60重量部を均一に混合し、さらに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、過流酸カリウム1重量部、水100重量部を加えプレ乳化液を作製した。次に、重合槽内を脱気し、窒素雰囲気下、80℃で、3時間乳化重合を行い、2時間熟成した。その後、重合槽を室温(25℃)まで冷却し、水に分散した蓄熱性マイクロカプセルA(平均粒径1.1μm)を得た。
この蓄熱性マイクロカプセルを水相から分離し、小型粉砕機で解砕洗浄し、35℃の乾燥器中で3時間乾燥し、分級(100メッシュ)を行い、固形粉末状の蓄熱性マイクロカプセルAを得た。この時、水相からの分離が簡便であり、粉砕時にはマイクロカプセルから蓄熱材が漏れ出すことがなく、得られたマイクロカプセルは、ほぼ100メッシュ以下のサイズで回収できた。
さらに、DSC220CU(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、示差走査熱量測定(DSC測定)により、得られた蓄熱性マイクロカプセルAの相変化温度(℃)、潜熱量(kJ/kg)、カプセル壁の結晶化温度(℃)を測定した。測定条件としては、アルミニウムをリファレンスとし、昇温温度10℃/min、−20〜60℃の温度領域で測定した。
測定の結果、蓄熱性マイクロカプセルAの相変化温度(℃)は18.6℃、潜熱量(kJ/kg)は118kJ/kg、カプセル壁の結晶化温度(℃)は45℃であった。
なお、平均粒径はマイクロトラック粒度分析計UPA150(日機装株式会社製)を用いて測定した。
−蓄熱性マイクロカプセルB−
ステアリルアクリレート35重量部、メチルメタクリレート15重量部、N,N’−メチレンビスアクリルアミド2重量部、n−ヘキサデカン50重量部を均一に混合し、さらに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3重量部、過流酸カリウム1重量部、水100重量部を加えプレ乳化液を作製した。このプレ乳化液の50重量部を重合槽に投入し、重合槽内を脱気、窒素雰囲気下した後、残りのプレ乳化液156重量部を3時間かけて滴下しながら、80℃で3時間乳化重合を行い、2時間熟成した。重合後、重合槽を室温(25℃)まで冷却し、水に分散した蓄熱性マイクロカプセルB(平均粒径1.0μm)を得た。
このマイクロカプセルを水層から分離し、小型粉砕機で解砕洗浄し、35℃の乾燥器中で3時間乾燥し、分級(100メッシュ)を行い、固形粉末状のマイクロカプセルBを得た。この時、水層からの分離が簡便であり、粉砕時にはマイクロカプセルから蓄熱材が漏れ出すことがなく、得られたマイクロカプセルは、ほぼ100メッシュ以下のサイズで回収できた。
さらに、蓄熱性マイクロカプセルAと同様の方法で、得られたマイクロカプセルの相変化温度(℃)、潜熱量(kJ/kg)、カプセル壁の結晶化温度(℃)を測定した。
測定の結果、マイクロカプセルBの相変化温度(℃)は18℃、潜熱量(kJ/kg)は122kJ/kg、マイクロカプセル壁の結晶化温度(℃)は49℃であった。
−蓄熱性マイクロカプセルC−
ステアリルアクリレート100重量部、n−ヘキサデカン150重量部、ベンゾイルパーオキサイド2.5重量部を均一に混合し、さらに、ポリオキシエチレンオレイルエーテルアンモニウム塩4重量部、ポリオキシエチレンステアリルエーテル2重量部、ベンゾイルパーオキサイド2.5重量部、イオン交換水250重量部を加え、ホモジナイザー(Heidoph製:ホモジナイザーDIAX900)を用いて攪拌速度15000rpmで攪拌を行い、懸濁液を作製した。
この懸濁液の平均粒子径を電子顕微鏡により観察した結果、平均粒子径は5.5μmであった。
作製した懸濁液を、脱気、窒素雰囲気下にした重合槽に投入し、80℃で3時間懸濁重合を行い、水に分散した蓄熱性マイクロカプセルC(平均粒子径:6.1μm、固形分50重量%)を得た。
この蓄熱性マイクロカプセルを水相から分離し、小型粉砕機で解砕洗浄し、35℃の乾燥器中で3時間乾燥し、分級(100メッシュ)を行い、固形粉末状の蓄熱性マイクロカプセルCを得た。この時、水相からの分離が簡便であり、粉砕時にはマイクロカプセルから蓄熱材が漏れ出すことがなく、得られたマイクロカプセルは、ほぼ100メッシュ以下のサイズで回収できた。
さらに、蓄熱性マイクロカプセルAと同様の方法で、得られたマイクロカプセルの相変化温度(℃)、潜熱量(kJ/kg)、カプセル壁の結晶化温度(℃)を測定した。
測定の結果、蓄熱性マイクロカプセルCの相変化温度(℃)は18℃、潜熱量(kJ/kg)は125kJ/kg、カプセル壁の結晶化温度(℃)は50℃であった。
−蓄熱性マイクロカプセルD−
ベヘニルアクリレート100重量部、n−ヘキサデカン150重量部、ベンゾイルパーオキサイド2.5重量部を均一に混合し、さらに、ポリオキシエチレンオレイルエーテルアンモニウム塩4重量部、ポリオキシエチレンステアリルエーテル2重量部、ベンゾイルパーオキサイド2.5重量部、イオン交換水250重量部を加え、ホモジナイザー(Heidoph製:ホモジナイザーDIAX900)を用いて攪拌速度15000rpmで攪拌を行い、懸濁液を作製した。
この懸濁液の平均粒子径を電子顕微鏡により観察した結果、平均粒子径は5.0μmであった。
作製した懸濁液を、脱気、窒素雰囲気下にした重合槽に投入し、80℃で3時間懸濁重合を行い、水に分散した蓄熱性マイクロカプセルD(平均粒子径:5.8μm、固形分50重量%)を得た。
この蓄熱性マイクロカプセルを水相から分離し、小型粉砕機で解砕洗浄し、35℃の乾燥器中で3時間乾燥し、分級(100メッシュ)を行い、固形粉末状の蓄熱性マイクロカプセルDを得た。この時、水相からの分離が簡便であり、粉砕時にはマイクロカプセルから蓄熱材が漏れ出すことがなく、得られたマイクロカプセルは、ほぼ100メッシュ以下のサイズで回収できた。
さらに、蓄熱性マイクロカプセルAと同様の方法で、得られたマイクロカプセルの相変化温度(℃)、潜熱量(kJ/kg)、カプセル壁の結晶化温度(℃)を測定した。
測定の結果、蓄熱性マイクロカプセルDの相変化温度(℃)は18℃、潜熱量(kJ/kg)は131kJ/kg、カプセル壁の結晶化温度(℃)は60℃であった。
−蓄熱性マイクロカプセルE−
ステアリルアクリレート100重量部、n−ヘキサデカン150重量部、ベンゾイルパーオキサイド2.5重量部を均一に混合し、さらに、ポリオキシエチレンオレイルエーテルアンモニウム塩4重量部、ポリオキシエチレンステアリルエーテル2重量部、2−2‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.5重量部、イオン交換水250重量部を加え、ホモジナイザー(Heidoph製:ホモジナイザーDIAX900)を用いて攪拌速度15000rpmで攪拌を行い、懸濁液を作製した。
この懸濁液の平均粒子径を電子顕微鏡により観察した結果、平均粒子径は6.0μmであった。
作製した懸濁液を、脱気、窒素雰囲気下にした重合槽に投入し、80℃で3時間懸濁重合を行い、水に分散した蓄熱性マイクロカプセルE(平均粒子径:6.5μm、固形分50重量%)を得た。
この蓄熱性マイクロカプセルを水相から分離し、小型粉砕機で解砕洗浄し、35℃の乾燥器中で3時間乾燥し、分級(100メッシュ)を行い、固形粉末状の蓄熱性マイクロカプセルEを得た。この時、水相からの分離が簡便であり、粉砕時にはマイクロカプセルから蓄熱材が漏れ出すことがなく、得られたマイクロカプセルは、ほぼ100メッシュ以下のサイズで回収できた。
さらに、蓄熱性マイクロカプセルAと同様の方法で、得られたマイクロカプセルの相変化温度(℃)、潜熱量(kJ/kg)、カプセル壁の結晶化温度(℃)を測定した。
測定の結果、蓄熱性マイクロカプセルEの相変化温度(℃)は18℃、潜熱量(kJ/kg)は122kJ/kg、カプセル壁の結晶化温度(℃)は50℃であった。
−蓄熱性マイクロカプセルF−
ステアリルアクリレート100重量部、エチレングリコールジメタクリレート5.0重量部、n−ヘキサデカン150重量部、ベンゾイルパーオキサイド2.5重量部を均一に混合し、さらに、ポリオキシエチレンオレイルエーテルアンモニウム塩4重量部、ポリオキシエチレンステアリルエーテル2重量部、ベンゾイルパーオキサイド2.5重量部、イオン交換水250重量部を加え、ホモジナイザー(Heidoph製:ホモジナイザーDIAX900)を用いて攪拌速度15000rpmで攪拌を行い、懸濁液を作製した。
この懸濁液の平均粒子径を電子顕微鏡により観察した結果、平均粒子径は6.2μmであった。
作製した懸濁液を、脱気、窒素雰囲気下にした重合槽に投入し、80℃で3時間懸濁重合を行い、水に分散した蓄熱性マイクロカプセルF(平均粒子径:6.8μm、固形分50重量%)を得た。
この蓄熱性マイクロカプセルを水相から分離し、小型粉砕機で解砕洗浄し、35℃の乾燥器中で3時間乾燥し、分級(100メッシュ)を行い、固形粉末状の蓄熱性マイクロカプセルFを得た。この時、水相からの分離が簡便であり、粉砕時にはマイクロカプセルから蓄熱材が漏れ出すことがなく、得られたマイクロカプセルは、ほぼ100メッシュ以下のサイズで回収できた。
さらに、蓄熱性マイクロカプセルAと同様の方法で、得られたマイクロカプセルの相変化温度(℃)、潜熱量(kJ/kg)、カプセル壁の結晶化温度(℃)を測定した。
測定の結果、蓄熱性マイクロカプセルFの相変化温度(℃)は18℃、潜熱量(kJ/kg)は130kJ/kg、カプセル壁の結晶化温度(℃)は50℃であった。
−蓄熱性マイクロカプセルG−
メチルメタクリレート50重量部、ポリエチレングリコールジメタクリレート3重量部、ミリスチン酸メチル50重量部を均一に混合し、さらに、ドデシル硫酸ナトリウム3重量部、過流酸アンモニウム1重量部、水100重量部を加え、重合槽で混合し、プレ乳化液を作製した。次に重合槽内を脱気し、窒素雰囲気下、80℃で、3時間重合を行い、2時間熟成した。その後、重合槽を室温(25℃)まで冷却し、水に分散した蓄熱性マイクロカプセルG(平均粒径1.0μm)を得た。
このマイクロカプセルの固形粉末を回収するため、遠心分離機を用いてマイクロカプセルを水相から分離し、小型粉砕機で解砕洗浄し、35℃の乾燥器中で10時間乾燥したが、マイクロカプセル同士が凝集したため、100メッシュ以下のサイズの固形粉末として回収することはできなかった。よって、蓄熱体への適用が困難であった。
−蓄熱性マイクロカプセルH−
pHを4に調製した5%のスチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液を重合槽に投入し、ミリスチン酸メチルを攪拌しながら添加し、乳化した。次いで、メラミンに40%ホルムアルデヒド水溶液を加えて調製したメラミン−ホルムアルデヒドの縮合物の水溶液を入れ、重合槽を70℃まで昇温し、重合を開始させた。3時間重合を行った後、重合槽を室温まで冷却して水に分散した蓄熱性マイクロカプセルH(平均粒径3.0μm)を得た。
このマイクロカプセルの固形粉末を回収するため、遠心分離機を用いてマイクロカプセルを水相から分離し、小型粉砕機で粉砕洗浄を行ったが、粉砕時にマイクロカプセルが破砕し、蓄熱材が漏洩した。よって、蓄熱体への適用が困難であった。
(実施例1)
蓄熱性マイクロカプセルA60重量部、下記に示すヒドロキシル基含有化合物33重量部、イソシアネート基含有化合物7重量部を均一に混合し、反応促進剤0.1重量部を加え、十分攪拌した。攪拌後、型枠(270mm×170mm、厚さ5mm)中に流し込み、35℃で120分硬化させ、型枠から取り外し、厚さ5mmの蓄熱体を得た。攪拌の際、蓄熱性マイクロカプセルAは、カプセル壁が粉砕することなく、簡便に蓄熱体が製造できた。なおNCO/OH比率は1.0であった。得られた蓄熱体について、次の試験を行った。
・ヒドロキシル基含有化合物:無溶剤ポリエステルポリオール:2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオールとアジピン酸の重縮合物、水酸基価58mgKOH/g、分子量2000
・イソシアネート基含有化合物:HMDI系ポリイソシアネート(イソシアヌレート型)、NCO%23.0%(固形分100%)
・反応促進剤:ジブチル錫ジラウレート
<蓄熱材漏れ評価試験>
得られた蓄熱体を、10℃または40℃の雰囲気下で72時間放置した後、温度23℃、湿度50%(以下、「標準状態」ともいう。)環境下に移し、蓄熱体からの蓄熱材の漏れを観察した。評価は次の通りである。結果は表1に示す。
◎:漏れがみられなかった
○:漏れがほとんどみられなかった
×:漏れがみられた
<蓄熱物性試験>
DSC220CU(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、示差走査熱量測定(DSC測定)により、得られた蓄熱体の相変化温度(℃)および潜熱量(kJ/kg)を測定した。測定条件としては、アルミニウムをリファレンスとし、昇温温度10℃/miN、−20〜60℃の温度領域で測定した。結果は表1に示す。
さらに、得られた蓄熱体と、ポリエチレンフォーム(270mm×170mm、厚さ5mm、熱伝導率0.03W/(m・K))を接着剤により積層し、試験体を得た。得られた試験体について、次の試験を行った。
<蓄熱断熱性能評価試験>
25mmのポリスチレンフォームで作製した外寸330mm×330mm×225mmの簡易ボックス内の4側面に、蓄熱体面がボックス内側になるように試験体を設置し、さらに5mmのけい酸カルシムボードを表面材として設置した。下面にはけい酸カルシムボードのみを設置し、上面はポリスチレンフォームのみとした。また、温度測定のため、ボックス内部空間の中心に熱電対を設置した。
この試験体ボックスを恒温器内に設置し、恒温器内の温度を外気温度、試験体ボックス内の温度を室内温度と見立て、次の実験を行った。
冬場の暖房運転を想定し、20℃で設定した恒温器内にボックス上面を開放した状態で、3時間保持し、その後、ボックスの上面を塞ぎ、恒温器内温度を5℃に降温してからの、ボックス内部空間温度変化を経時的に測定した。結果を図1に示す。
また、図1には、実施例1の試験体の替わり(蓄熱断熱体)に、10mmのポリエチレンフォームのみを用いて蓄熱断熱性能評価試験を行った結果も同時に示す(比較例1)。
図1に示すように、蓄熱断熱体を適用した場合には、外気温度の影響を受け難く、ポリエチレンフォームのみ(比較例1)と比較して、室内温度の変動が少なく、蓄熱性・断熱性に優れた結果が得られた。
(実施例2)
蓄熱性マイクロカプセルAを蓄熱性マイクロカプセルBに替えた以外は、実施例1と同様の方法で、蓄熱体を製造した。また、得られた蓄熱体について、実施例1と同様の蓄熱材漏れ評価試験、蓄熱物性試験を行った。結果は表1に示す。
(実施例3)
蓄熱性マイクロカプセルAを蓄熱性マイクロカプセルCに替えた以外は、実施例1と同様の方法で、蓄熱体を製造した。また、得られた蓄熱体について、実施例1と同様の蓄熱材漏れ評価試験、蓄熱物性試験を行った。結果は表1に示す。
(実施例4)
蓄熱性マイクロカプセルAを蓄熱性マイクロカプセルDに替えた以外は、実施例1と同様の方法で、蓄熱体を製造した。また、得られた蓄熱体について、実施例1と同様の蓄熱材漏れ評価試験、蓄熱物性試験を行った。結果は表1に示す。
(実施例5)
蓄熱性マイクロカプセルAを蓄熱性マイクロカプセルEに替えた以外は、実施例1と同様の方法で、蓄熱体を製造した。また、得られた蓄熱体について、実施例1と同様の蓄熱材漏れ評価試験、蓄熱物性試験を行った。結果は表1に示す。
(実施例6)
蓄熱性マイクロカプセルAを蓄熱性マイクロカプセルFに替えた以外は、実施例1と同様の方法で、蓄熱体を製造した。また、得られた蓄熱体について、実施例1と同様の蓄熱材漏れ評価試験、蓄熱物性試験を行った。結果は表1に示す。
(比較例1)
実施例で得られた蓄熱断熱体の替わりに、ポリエチレンフォーム(熱伝導率0.03W/(m・K)、厚み5mm)のみを用いて、実施例1と同様の蓄熱断熱性能評価試験を行った。結果は、図1に示す。
Figure 2006152275
本発明の蓄熱断熱体は、主として、住宅等の建築物の内壁材、外壁材、天井材、床材等の内・外装材、車輌等の内装材として好適に用いられる。さらに、本発明の蓄熱断熱体は、機械・機器等の工業製品、熱電変換システム、冷蔵・冷凍庫、浴槽・浴室、クーラーボックス、保温シート、電気製品、OA機器、プラント、タンク、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具、日用雑貨等にも適用できる。
実施例1及びポリエチレンフォームのみ(比較例1)の蓄熱断熱性能評価試験図である。

Claims (1)

  1. 下記の特徴を有する蓄熱性マイクロカプセルを含有する蓄熱体と、熱伝導率が0.1W/(m・K)未満の断熱体とが積層されたことを特徴とする蓄熱断熱体。
    蓄熱性マイクロカプセル:カプセルに潜熱蓄熱材が内包されており、該カプセルのカプセル壁が、下記の化学式1で示される結晶性ビニルモノマーを主成分とするモノマーを重合して得られる重合体から形成されたもの
    (化学式1)
    Figure 2006152275
    (Rは水素(−H)またはメチル基(−CH)、Xはエステル結合(−COO−)、エーテル結合(−O−)またはアミド結合(−CONH−)、Rは炭素数12以上の直鎖アルキル基)

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