JP2006138355A - 伝動ベルト - Google Patents

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Abstract

【課題】くり返し屈曲やエンジン周りの加熱条件での走行に対する動的接着性、耐熱接着性に優れ、かつ耐熱性、耐摩耗性、異音防止性にも優れる伝動ベルトを提供する。
【解決手段】ベルト長手方向に沿って心線2が埋設された接着ゴム層3と、上記接着ゴム層の内側に積層された圧縮ゴム層5とが加硫接着された伝動ベルトであって、上記接着ゴム層及び上記圧縮ゴム層は、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物を用いて形成されるものであり、上記接着ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量は、上記圧縮ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量以上であり、上記接着ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量は3.5〜10質量%であり、かつ、上記圧縮ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量は0〜6質量%である伝動ベルト。
【選択図】図3

Description

本発明は、伝動ベルトに関する。
一般的に、伝動ベルトは、圧縮ゴム層と接着ゴム層を有し、この接着ゴム層内に繊維心線が接着されて埋設されており、ベルトの上面、下面又は側面を含む全周面は、必要に応じて、ゴム引き帆布が接着されているものである。従来から、このような伝動ベルトにおいて、圧縮ゴム層にはクロロプレンゴムや、水素化ニトリルゴムとクロロスルホン化ポリエチレンゴムとの混合物が通常用いられているが、近年環境保護の観点から、伝動ベルトの素材のゴムにも脱塩素化の要請があり、圧縮ゴム層と共に、接着ゴム層にも、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)等のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムを用いることが試みられている。
特許文献1には、接着ゴム層としてエチレン−α−オレフィンエラストマーを用いた硫黄架橋可能なゴム組成物の加硫物を使用し、また圧縮ゴム層としてエチレン−α−オレフィンエラストマーを用いた有機過酸化物架橋可能なゴム組成物の架橋物を使用することにより、耐熱性や耐久性が改善された動力伝動用ベルトが開示されている。
特許文献2には、エチレン−α−オレフィンエラストマーに共架橋剤としてN,N′−m−フェニレンジマレイミドを特定量添加することにより、耐熱性や耐粘着摩耗性等を改善し、耐久性を向上したゴム組成物及びこれを用いた伝動ベルトが開示されている。
しかし、これらの伝動ベルトは、動的接着性及び耐熱接着性や、耐熱性、耐摩耗性、異音防止性の点で不充分であるという問題がある。また、接着ゴム層と圧縮ゴム層とがそれぞれ異種の架橋系で架橋されている場合、接着ゴム層と圧縮ゴム層との界面接着性が弱く不安定で、耐久性等が劣るといった問題もある。
特許文献3には、クロロスルホン化ポリエチレン又はアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンのゴムラテックスをラテックス成分として含むレゾルシン−ホルマリン−ラテックス接着剤組成物にて心線を接着処理することによって、心線と接着ゴム層の間に優れた動的接着力を付与した圧縮ゴム層と接着ゴム層とが共にエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムからなる伝動ベルトが開示されている。
しかし、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)は、主鎖が2重結合を有さないため、極性が低く、また反応性が小さく、通常の配合においては難接着性である。このため、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス接着剤とゴム層の界面で接着力の低下が起こりやすいといった問題がある。また、耐熱性、耐摩耗性、異音防止性が不充分な場合もある。
特開平11−193849号公報 特開平11−349752号公報 特開2001−003991号公報
本発明は、上記現状を鑑みて、伝動ベルトのくり返し屈曲やエンジン周りの加熱条件での走行に対する動的接着性、耐熱接着性に優れ、かつ耐熱性、耐摩耗性、異音防止性にも優れる伝動ベルトを提供することを目的とする。
本発明は、ベルト長手方向に沿って心線が埋設された接着ゴム層と、上記接着ゴム層の内側に積層された圧縮ゴム層とが加硫接着された伝動ベルトであって、上記接着ゴム層及び上記圧縮ゴム層は、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物を用いて形成されるものであり、上記接着ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量は、上記圧縮ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量以上であり、上記接着ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量は3.5〜10質量%であり、かつ、上記圧縮ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量は0〜6質量%であることを特徴とする伝動ベルトである。
上記接着ゴム層及び上記圧縮ゴム層は、共に過酸化物又は硫黄により架橋されていることが好ましい。
上記接着ゴム層は、共架橋剤を含有し、過酸化物により架橋されていることが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の伝動ベルトは、接着ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量が、圧縮ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量以上であり、接着ゴム層及び圧縮ゴム層がそれぞれ特定量の上記ジエンを含有することを特徴とするものである。このため、本発明の伝動ベルトは、接着ゴム層と心線との接着性や接着ゴム層と圧縮ゴム層との接着性に優れる。また、本発明の伝動ベルトは、圧縮ゴム層のジエン含有量が比較的少ないため、優れた耐熱性、耐摩耗性、異音防止性を有する。
本発明は、ベルト長手方向に沿って心線が埋設された接着ゴム層と、上記接着ゴム層の内側に積層された圧縮ゴム層とが加硫接着された伝動ベルトであって、上記接着ゴム層及び上記圧縮ゴム層は、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物(エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムと、必要に応じてその他の成分とからなる配合物)を用いて形成されるものである。
上記エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムとしては、エチレンを除くα−オレフィンとエチレンとジエン(非共役ジエン)との共重合体からなるゴム、それらの一部ハロゲン置換物、又はこれらの2種以上の混合物が用いられ、上記エチレンを除くα−オレフィンとしては、好ましくは、プロピレン、ブテン、ヘキセン及びオクテンから選ばれる少なくとも1種が用いられる。なかでも、好ましいエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(以下、EPDMともいう)であるが、これらのハロゲン置換物や、他のゴムをブレンドしたものでも良い。
上記エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)の市販品としては、例えば、X−3012P、3085(商品名、三井化学社製)、EP21、EP65(商品名、JSR社製)、5754、582F(商品名、住友化学社製)等を挙げることができる。
上記接着ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量は、上記圧縮ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量以上である。
本発明では、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量を多くすることにより、架橋時の反応性を高め、心線と接着ゴム層との接着力や接着ゴム層と圧縮ゴム層との接着力を向上させることができることを見出すとともに、ジエン含有量を多くすると、耐熱性の低下が生じ、長時間の伝動ベルトの走行中において、圧縮ゴム層の発熱による劣化が生じること、プーリとの接触時に異音が発生しやすいこと、等の不具合が発生することを見出した。このため、本発明の伝動ベルトでは、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムを接着ゴム層及び圧縮ゴム層中の成分として使用し、かつ、圧縮ゴム層ではジエン含有量が比較的少ない量のものを使用している。そして、この結果、本発明では、心線と接着ゴム層との間や、接着ゴム層と圧縮ゴム層との間に優れた接着力を付与することができ、更に、優れた耐熱性、耐異音性、低表面エネルギー性も付与することができる。
上記接着ゴム層に含まれるエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムにおいて、上記ジエンの含有量は、上記エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムを構成するエチレン、α−オレフィン及びジエンの合計量100質量%中に、3.5〜10質量%である。3.5質量%未満であると、充分な接着性が得られないおそれがある。10質量%を超えると、耐熱性が低下し、ベルト走行時に異音が発生するおそれがある。
上記圧縮ゴム層に含まれるエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムにおいて、上記ジエンの含有量は、上記エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムを構成するエチレン、α−オレフィン及びジエンの合計量100質量%中に、0〜6質量%である。6質量%を超えると、耐熱性の低下が起こり、ベルト走行時に異音が発生したりするおそれがあり、特に圧縮ゴム層においては長時間の走行に対して発熱による劣化が激しくなるおそれがある。なお、0質量%の場合のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムは、ジエンが含まれないエチレン−α−オレフィンゴムである。
上記接着ゴム層、圧縮ゴム層に含まれるエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムにおいて、上記エチレンの含有量は、上記エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムを構成するエチレン、α−オレフィン及びジエンの合計量100質量%中に、50〜80質量%であることが好ましく、上記α−オレフィンの含有量は、20〜50質量%であることが好ましい。
上記エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムは、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が20〜120のものが好ましく用いられる。
上記ジエン成分としては、通常、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン又はエチリデンノルボルネン等の非共役ジエンが適宜に用いられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また圧縮ゴム層についてはジエン成分が含まれていないエチレン−プロピレン系ゴム(EPR)も選択可能である。
上記接着ゴム層における心線としては、ポリエステル心線、ナイロン心線、ビニロン心線、アラミド心線等が好適に用いられるが、なかでも、上記ポリエステル心線としてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等が、上記ナイロン心線としては6,6−ナイロン(ポリヘキサメチレンアジパミド)、6ナイロンが好適に用いられる。上記アラミド心線としてはコポリパラフェニレン・3,4′オキシジフェニレン・テレフタルアミドやポリパラフェニレンテレフタルアミドやポリメタフェニレンイソフタルアミド等が好適に用いられる。これらの心線は、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス接着剤組成物(以下、RFL接着剤ということがある。)等で接着処理されて、上記接着ゴム層内に埋設されていることが好ましい。RFL処理を行うことにより、心線と接着ゴム層との接着性が良好になる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記RFL処理で用いるRFL接着剤は、通常、レゾルシンとホルマリンとをレゾルシン/ホルマリンのモル比1/3〜3/1にて塩基性触媒の存在下に縮合させて、レゾルシン−ホルマリン樹脂(レゾルシン−ホルマリン初期縮合物、以下、RFともいう。)の5〜80質量%濃度の水溶液を調製し、これとゴムラテックスを混合することによって調製することができる。上記RFL接着剤の固形分濃度は、通常、10〜50質量%の範囲である。ラテックスのゴム成分としてはクロロスルホン化ポリエチレンあるいはアルキル化クロロスルホン化ポリエチレン等が用いられる。
上記RFL処理としては、上述のRFL接着剤に上記心線を含浸し、乾燥させた後更にピリジル基又はカルボキシル基を含むカルボキシル変性ビニルピリジンラテックス等を含むRFL接着剤に通して2層のRFL層を形成したり、2種類以上のラテックスを混合したRFL接着剤を用いたりすることもできる。また、これらの方法に限ることなくエポキシ又はイソシアネート化合物で前処理を行った後に、上記のRFL接着剤で処理する方法等もある。上記前処理とは、イソシアネート化合物又はエポキシ化合物を含む溶液にポリエステル心線を浸漬した後、必要に応じて、加熱乾燥させる方法等が挙げられる。
本発明の伝動ベルトにおいて、上記接着ゴム層及び圧縮ゴム層は、共に過酸化物又は硫黄により架橋されているものであることが好ましい。
上記接着ゴム層や圧縮ゴム層の架橋には、硫黄架橋又は過酸化物架橋のどちらでもよいが、接着ゴム層及び圧縮ゴム層共に同種の架橋系を用いることが好ましい。同種の架橋系を用いることで接着ゴム層と圧縮ゴム層との界面接着性が向上し、安定性がよくなる。異種の架橋系を用いると、親和性、架橋形態、架橋速度の差等により走行時の局部的な荷重等を受け、層の界面での破壊等が生じたりするおそれがあるので避けることが望ましい。
過酸化物架橋剤としては、特に限定されるものではないが、通常の有機過酸化物が使用され、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、2,5−ジメチル−2,5−モノ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等を挙げることができる。上記有機過酸化物は、単独もしくは混合物として、通常エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム100g(固形分)に対して0.005〜0.02gの範囲で使用される。
上記過酸化物架橋の場合はまた、架橋助剤(共架橋剤)を配合してもよい。架橋助剤を配合することによって、架橋度を上げて接着力を更に安定させ、粘着摩耗性等の問題を防止することができる。上記架橋助剤としては、TIAC、TAC、1,2ポリブタジエン、不飽和カルボン酸の金属塩、オキシム類、グアニジン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、硫黄等通常パーオキサイド架橋に用いるものを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硫黄加硫の場合、硫黄の添加量は、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム100質量部に対して0.5〜3.0質量部であることが好ましい。
硫黄加硫の場合はまた、加硫促進剤を配合してもよい。加硫促進剤を配合することによって、加硫度を上げて粘着摩耗等の問題を防止することができる。上記加硫促進剤としては、一般的に加硫促進剤として使用されるものであればよく、例えば、トリメチルチオ尿素(TMU)、N−オキシジエチレンベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド(OBS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEDC)、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾリルジスルフィド等を挙げることができる。
本発明の伝動ベルトにおいて、上記圧縮ゴム層には、ナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、綿、アラミド等からなる短繊維を混入させてもよい。上記短繊維を含有すると、上記圧縮ゴム層の耐側圧性が向上するとともに、プーリと接する面になる圧縮ゴム層の表面に短繊維を突出させ、圧縮ゴム層の摩擦係数を低下させて、ベルト走行時の騒音を軽減することができる。また、短繊維表面には通常接着処理が施される。
本発明において、圧縮ゴム層や接着ゴム層を形成するためのエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物は、上述した成分と共に、必要に応じて、カーボンブラック、シリカ、ガラス繊維、セラミックス繊維等の増強剤、炭酸カルシウム、タルク等の充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤等の通常のゴム工業で用いられる種々の薬剤を含有していてもよい。
上記圧縮ゴム層や接着ゴム層を形成するためのエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物は、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムを、必要に応じて、上述したような薬剤と共に、ロール、バンバリー等、通常の混合手段を用いて均一に混合することによって得ることができる。
上記接着ゴム層と、上記圧縮ゴム層とは、加硫接着されたものである。上記加硫接着の方法は、特に限定されず、従来公知の方法によって行うことができる。
本発明の伝動ベルトは、ベルト長手方向に沿って心線が埋設された接着ゴム層とその内側に積層された圧縮ゴム層を接着一体化したもので、例えば、Vリブドベルト、ローエッジVベルト及び平ベルトが挙げられる。
本発明の伝動ベルトの例を、図1〜図3を用いて説明する。
図1は、Vリブドベルトの一例の横断面図(ベルト長手方向に直角な面)を示し、ベルトの上面は、単層又は複数層のゴム引き帆布層1が形成されており、この内側に隣接して、接着ゴム層3が積層されている。この接着ゴム層には、繊維コードからなる複数の低伸度の心線2が間隔を置いてベルト長手方向に延びるように埋設されている。更に、この接着ゴム層の内側に隣接して、圧縮ゴム層5が積層されている。この圧縮ゴム層は、ベルト長手方向に延びるように相互に間隔を有するリブ4に形成されている。多くの場合、圧縮ゴム層5には、その耐側圧性を高めるために、ベルトの幅方向に配向して短繊維6が分散されている。
図2は、ローエッジタイプVベルトの一例の横断面図を示し、ベルトの上面は、上記と同様に、単層又は複数層のゴム引き帆布層1が形成されており、必要に応じて、上ゴム層7が積層され、この内側に隣接して、上記と同様に心線2が埋設された接着ゴム層3が積層され、更に、この内側に隣接して、圧縮ゴム層5が積層されている。多くの場合、圧縮ゴム層5には、その耐側圧性を高めるために、ベルトの幅方向に配向して短繊維6が分散されている。圧縮ゴム層の内側に隣接して通常、単層又は複数層のゴム引き帆布層1が積層されている。
図3は、平ベルトの一例の横断面図を示し、上記と同様、ゴム引き帆布層1、接着ゴム層3及び圧縮ゴム層5が積層されている。
本発明による伝動ベルトは、従来より知られている通常の方法によって製造することができる。例えば、Vリブドベルトに例をとれば、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周面に1枚又は複数枚のゴムコート帆布と接着ゴム層のための未加硫シートを巻き付けた後、この上にポリエステル心線を螺旋状にスピニングし、更に、その上に接着ゴム層のための未加硫シートを巻き付けた後、圧縮ゴム層のための未加硫シートを巻き付けて積層体とし、これを加硫缶中にて加熱加圧し、加硫して、環状物を得る。次に、この環状物を駆動ロールと従動ロールとの間に掛け渡して、所定の張力の下で走行させながら、これに研削ホイールにて表面に複数のリブを形成する。この後、この環状物を更に別の駆動ロールと従動ロールとの間に掛け渡して走行させながら、所定の幅に裁断すれば、製品としてのVリブドベルトを得ることができる。
本発明は、ベルト長手方向に沿って心線が埋設された接着ゴム層と、上記接着ゴム層の内側に積層された圧縮ゴム層とが加硫接着された伝動ベルトであって、上記接着ゴム層及び上記圧縮ゴム層は、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物を用いて形成されるものであり、上記接着ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量は、上記圧縮ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量以上であり、接着ゴム層及び圧縮ゴム層がそれぞれ特定量の上記ジエンを含有するものである。このため、上記伝動ベルトは、接着ゴム層と心線との接着性や接着ゴム層と圧縮ゴム層との接着性(動的接着性、耐熱接着性)に優れ、かつ耐熱性、耐摩耗性、異音防止性にも優れる。
本発明の伝動ベルトは、上述した構成よりなるので、接着ゴム層と心線又は圧縮ゴム層との動的接着性、耐熱接着性に優れ、かつ耐熱性、耐摩耗性、異音防止性にも優れる。従って、自動車用補機(ダイナモ、エヤコン、パワステ等)の駆動用等の伝動用ベルトとして好適に適用することができる。
以下に本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
(実施例1〜11、比較例1〜3)
接着ゴム層と圧縮ゴム層の製造
接着ゴム層を表1に示すゴム配合物から調製し、バンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延し、接着ゴム層用ゴム配合物未加硫シートを作成した。圧縮ゴム層は、表2に示すゴム配合物から調製し、同様に圧縮ゴム層用ゴム配合物未加硫シートを作成した。なお、用いた市販品は、以下のとおりである。
エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM):「X−3012P」(ジエン含量3.5質量%、三井化学社製)、「3085」(ジエン含量4.5質量%、三井化学社製)、「582F」(ジエン含量6.0質量%、住友化学社製)、「EP21」(ジエン含量6.0質量%、JSR社製)、「EP65」(ジエン含量9.0質量%、JSR社製)、「5754」(ジエン含量7.0質量%、住友化学社製)
エチレン−α−オレフィン種:「エンゲージ8180」(エチレン−オクテン、ジエン含量0質量%、デュポンダウエラストマー社製)
1)HAFカーボン(三菱化学社製)
2)シリカ:「トクシールGu」、トクヤマ社製
3)パラフィンオイル:「サンフレックス2280」、日本サン化学社製
4)加硫剤:オイル硫黄、細井化学社製
5)加硫助剤:ステアリン酸、花王社製
6)加硫助剤:酸化亜鉛、堺化学工業社製
7)粘着付与剤:「石油樹脂クイントンA−100」、日本ゼオン社製
8)短繊維:綿粉
9)短繊維:66ナイロン繊維、6de×1mm
Figure 2006138355
Figure 2006138355
RFL接着剤組成物の製造
レゾルシン7.31質量部とホルマリン(37質量%濃度)10.77質量部とを混合、攪拌し、これに水酸化ナトリウム水溶液(固形分0.33質量部)を加えて、攪拌し、この後、水160.91質量部を加え、5時間熟成して、レゾルシン・ホルマリン樹脂(レゾルシン−ホルマリン初期縮合物)(これをRFという)R/F比(レゾルシン/ホルマリンモル比)=0.5の水溶液を調製した。このRF水溶液にクロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)ラテックス(固形分40%)をRF/L比(RF/ラテックスモル比)が0.25になるよう(ラテックス固形分量あわせて45.2質量部)加え、更に水を加え、固形分が20%になるように調整した。その後、攪拌し12時間熟成して、RFL接着剤組成物を調製した。
心線及びその接着処理
ポリエステル心線(ポリエステルコード、1000デニール、/2×3、上撚り9.5T/10cm(Z)、下撚り2.19T/10cm、帝人社製)をイソシアネートのトルエン溶液(イソシアネー卜固形分20質量%)に浸漬した後、240℃で40秒間加熱乾燥して、前処理を施した。
次に、このように前処理したポリエステル心線を、上述のRFL接着剤組成物に浸漬し、200℃で80秒間加熱乾燥させ、次いで、このように処理したポリエステル心線を接着ゴムと同じエチレン−プロピレン−ジエンゴムをトルエンに溶解してなる接着溶液に浸漬した後、60℃で40秒間加熱乾操して、ポリエステル心線に接着処理を施した。
ポリエステル心線と接着ゴム層との接着力の測定
上述のように処理したポリエステル心線を上記接着ゴム層用ゴム配合物未加硫シートの間に挟み、これらを面圧3920kPa、温度160℃で35分間、加圧加熱し、プレス加硫した。このようにして得られた接着物におけるポリエステル心線の接着力を測定した。
伝動ベルトの作製
帆布と上記接着ゴム層用ゴム配合物未加硫シートを、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周辺に巻き付けた後、この上に上述の接着処理済みのポリエステル心線を螺旋状にスピニングした。更に、その上に上記接着ゴム層用ゴム配合物未加硫シートを巻き付けた後、圧縮ゴム層用ゴム配合物未加硫シートを巻き付けて積層体とし、これを内庄6kgf/cm、外圧9kgf/cm、温度165℃、時間35分間、加硫缶中にて加熱加圧し、蒸気加硫して、環状物を得た。次いで、この環状物を駆動ロールと従動ロールとからなる第1の駆動システムに取り付けて、所定の張力の下で走行させながら、これに研削ホイールにて表面に複数のリブを形成し、この後、この環状物を更に別の駆動ロールと従動ロールとからなる第2の駆動システムに取り付けて、走行させながら、所定の幅に裁断して、リブ数3、周長さ1000mmの製品としてのVリブドベルトを得た。なお、各Vリブドベルトの製造に用いた接着ゴム層用ゴム配合物未加硫シートと圧縮ゴム層用ゴム配合物未加硫シートについては、表3に示す通りである。
伝動ベルトの走行試験
上述のようにして得られたVリブドベルトを、図4に示すように駆動プーリ11(直径120mm)と従動プーリ12(直径120mm)とこれらのプーリの間に配置したアイドラープーリ13(直径70mm)とテンションプーリ14(直径55mm)とからなるベルト駆動システムに取り付けた。但し、アイドラープーリにはベルト背面を係合させた。
温度130℃の雰囲気温度の下で、従動プーリの負荷を16馬力とし、テンションプーリの初張力を85kgfとし、駆動プーリを回転数4900rpmで駆動して、ベルトを走行させ、ベルトから心線が露出するか、又はゴム層に割れを生じるまでの走行時間をベルトの動的寿命として、上記ベルトの耐久性等を評価した。またベルト走行時に異音が発生するか否かを評価した。結果を表3に示す。
Figure 2006138355
表3より、実施例の伝動ベルトは、心線の接着力が良好で、長時間の走行においてもベルトの破壊等が起こることなく、耐久性に優れ、かつベルト走行時に異音が生じなかったが、比較例の伝動ベルトは、心線の接着力が良好でなかったり、ベルト寿命が短く破壊が見られたり、またベルト走行時に異音が生じた。
本発明の伝動ベルトは、自動車用補機(ダイナモ、エヤコン、パワステ等)の駆動用等の伝動用ベルトに好適に適用することができる。
Vリブドベルトの一例の横断面図(ベルト長手方向に直角な面)である。 ローエッジタイプVベルトの一例の横断面図である。 平ベルトの一例の横断面図である。 伝動ベルトの走行試験の様子を示した図である。
符号の説明
1 ゴム引き帆布層
2 心線
3 接着ゴム層
4 リブ
5 圧縮ゴム層
6 短繊維
7 上ゴム層
11 駆動プーリ
12 従動プーリ
13 アイドラープーリ
14 テンションプーリ

Claims (3)

  1. ベルト長手方向に沿って心線が埋設された接着ゴム層と、前記接着ゴム層の内側に積層された圧縮ゴム層とが加硫接着された伝動ベルトであって、
    前記接着ゴム層及び前記圧縮ゴム層は、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物を用いて形成されるものであり、
    前記接着ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量は、前記圧縮ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量以上であり、
    前記接着ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量は3.5〜10質量%であり、かつ、
    前記圧縮ゴム層のエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム中のジエン含有量は0〜6質量%である
    ことを特徴とする伝動ベルト。
  2. 接着ゴム層及び圧縮ゴム層は、共に過酸化物又は硫黄により架橋されている請求項1記載の伝動ベルト。
  3. 接着ゴム層は、共架橋剤を含有し、過酸化物により架橋されている請求項1記載の伝動ベルト。
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