以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
[実施形態1]
(Vリブドベルト)
図1は、実施形態1に係るVリブドベルトB(ゴム繊維複合体)を示す。実施形態1に係るVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動用のベルト伝動装置等に用いられるエンドレスの伝動ベルトである。実施形態1に係るVリブドベルトBは、例えば、ベルト長さが700〜3000mm、ベルト幅が10〜36mm、及びベルト厚さが4.0〜5.0mmである。
実施形態1に係るVリブドベルトBは、ベルト外周側の接着ゴム層11とベルト内周側のプーリ接触部分を構成する圧縮ゴム層12との二重層に構成されたゴム製のVリブドベルト本体10を備えている。Vリブドベルト本体10における接着ゴム層11のベルト外周側には背面補強布13が貼設されている。また、接着ゴム層11の厚さ方向の中間部には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配された心線14が埋設されている。
接着ゴム層11は、断面横長矩形の帯状に構成されており、その厚さが例えば1.0〜2.5mmである。接着ゴム層11は、ゴム成分に種々のゴム配合物が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧してゴム成分を架橋させたゴム組成物で形成されている。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とする。ゴム成分におけるエチレン−α−オレフィンエラストマーの含有量は50質量%よりも多く、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。なお、ゴム成分は、エチレン−α−オレフィンエラストマー以外に、例えば、クロロプレンゴムや水素化ニトリルゴム等を含んでいてもよい。
エチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(以下「EPDM」という。)、エチレン−プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン−ブテンコポリマー(EDM)、エチレン−オクテンコポリマー(EOM)等が挙げられる。これらのうちEPDMが好ましい。ゴム成分は、上記のうち1種のエチレン−α−オレフィンエラストマーのみが含まれていても、また、2種以上のエチレン−α−オレフィンエラストマーが含まれていても、どちらでもよい。
エチレン−α−オレフィンエラストマーのエチレン含量は、好ましくは48質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
EPDMの場合、ジエン成分としては、例えば、エチリデンノボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等が挙げられる。これらのうちエチリデンノボルネンが好ましい。ジエン成分含量は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上であり、また、好ましくは13質量%以下、より好ましくは11質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
エチレン−α−オレフィンエラストマーのムーニー粘度は、好ましくは10ML1+4(125℃)以上、より好ましくは15ML1+4(125℃)以上であり、また、好ましくは100ML1+4(125℃)以下、より好ましくは80ML1+4(125℃)以下である。ムーニー粘度は、JISK6300に基づいて測定される。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物は、有機過酸化物により架橋されている。つまり、接着ゴム層11の形成前の未架橋ゴム組成物には、架橋剤として有機過酸化物が配合されている。
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルペロキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペロキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物は、上記のうち1種が配合されていても、また、2種以上が配合されていても、どちらでもよい。接着ゴム層11の形成前の未架橋ゴム組成物における有機過酸化物の含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.7質量%以上であり、また、好ましくは6.5質量%以下、より好ましくは5.5質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物は、硫黄によっても架橋されていてもよい。つまり、接着ゴム層11の形成前の未架橋ゴム組成物には、架橋剤として有機過酸化物に加えて硫黄が配合されていてもよい。
接着ゴム層11の形成前の未架橋ゴム組成物における硫黄の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、また、好ましくは1.7質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.2質量%以下である。接着ゴム層11の形成前の未架橋ゴム組成物における硫黄の含有量の有機過酸化物の含有量に対する比(硫黄の含有量/有機過酸化物の含有量)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上であり、また、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.3以下である。接着ゴム層11の形成前の未架橋ゴム組成物における硫黄の含有量は、有機過酸化物の含有量よりも多いことが好ましい。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物には、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合されている。
チオカルボニル基を有する加硫促進剤としては、N,N’−ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素(TMU)、N,N’−ジエチルチオ尿素(DEU)などのチオウレア系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)などのチウラム系加硫促進剤;ピペリジニウムペンタメチレンジチオカルバメート(PPDC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEDC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEPDC)、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZnPDC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(NaBDC)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(CuMDC)、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄(FeMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TeEDC)などのジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤;イソプロピルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸塩系加硫促進剤等が挙げられる。チオカルボニル基を有する加硫促進剤は、これらのうちチウラム系加硫促進剤又はジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤を含むことが好ましく、チウラム系加硫促進剤を含むことがより好ましい。チオカルボニル基を有する加硫促進剤は、上記のうち1種が配合されていても、また、2種以上が配合されていても、どちらでもよい。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物におけるチオカルボニル基を有する加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上であり、また、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下である。接着ゴム層11の形成前の未架橋ゴム組成物におけるチオカルボニル基を有する加硫促進剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは2.2質量%以下、より好ましくは1.9質量%以下、更に好ましくは1.7質量%以下である。接着ゴム層11の形成前の未架橋ゴム組成物におけるチオカルボニル基を有する加硫促進剤の含有量は、有機過酸化物の含有量以下であることが好ましく、それよりも少ないことがより好ましい。接着ゴム層11の形成前の未架橋ゴム組成物におけるチオカルボニル基を有する加硫促進剤の含有量の有機過酸化物の含有量に対する比(チオカルボニル基を有する加硫促進剤の含有量/有機過酸化物の含有量)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下である。架橋剤として硫黄が配合される場合、接着ゴム層11の形成前の未架橋ゴム組成物におけるチオカルボニル基を有する加硫促進剤の含有量の硫黄の含有量に対する比(チオカルボニル基を有する加硫促進剤の含有量/硫黄の含有量)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは6.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.0以下である。接着ゴム層11の形成前の未架橋ゴム組成物におけるチオカルボニル基を有する加硫促進剤の含有量は、硫黄の含有量以下であることが好ましく、それよりも少ないことがより好ましい。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物には、チオカルボニル基を有する加硫促進剤のみが配合されていてもよく、また、それ以外の加硫促進剤が併用して配合されていてもよい。チオカルボニル基を有する加硫促進剤以外の加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド−アンモニア系加硫促進剤、アルデヒド−アミン系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤等が挙げられる。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物に配合されるその他のゴム配合物としては、例えば、カーボンブラックなどの補強材、軟化剤、加硫促進助剤、加工助剤、老化防止剤、共架橋剤等が挙げられる。
圧縮ゴム層12は、複数のVリブ15がベルト内周側に垂下するように設けられている。複数のVリブ15は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形の突条に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。各Vリブ15は、例えば、リブ高さが2.0〜3.0mm、基端間の幅が1.0〜3.6mmである。Vリブ数は例えば3〜6個である(図1では6個)。
圧縮ゴム層12は、ゴム成分に種々のゴム配合物が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤によりゴム成分を架橋させたゴム組成物で形成されている。
圧縮ゴム層12を形成するゴム組成物は、有機過酸化物を架橋剤として架橋したものであっても、また、硫黄を架橋剤として架橋したものであっても、更に、有機過酸化物及び硫黄架橋剤を架橋剤として併用して架橋したものであっても、いずれでもよい。
圧縮ゴム層12を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー(EPDM、EPRなど)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。圧縮ゴム層12を形成するゴム組成物のゴム成分は、接着ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分と同一であることが好ましい。
圧縮ゴム層12を形成するゴム組成物に配合されるゴム配合物としては、例えば、カーボンブラックなどの補強材、軟化剤、加硫促進助剤、加工助剤、老化防止剤、共架橋剤、架橋剤、加硫促進剤等が挙げられる。
圧縮ゴム層12を形成するゴム組成物には、ナイロン短繊維等の短繊維が配合されていてもよい。その場合、短繊維が圧縮ゴム層12にベルト幅方向に配向するように含まれていることが好ましく、また、短繊維が圧縮ゴム層12の表面から突出するように設けられていることが好ましい。なお、圧縮ゴム層12を形成するゴム組成物に短繊維を配合した構成ではなく、圧縮ゴム層12の表面に短繊維を植毛等により付着させた構成であってもよい。
背面補強布13は、例えば、綿、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の糸で形成された織布、編物、不織布等の布材で構成されている。背面補強布13の厚さは例えば0.4〜1.5mmである。
背面補強布13には、Vリブドベルト本体10との接着のための接着処理が施されている。そのため、図2に示すように、背面補強布13と接着ゴム層11との間には補強布接着層16が介設されている。補強布接着層16は、図3Aに示すように、背面補強布13側から後述のRFL処理によるRFL層16a、後述のソーキング処理によるソーキングゴム層16b、及び後述のコーティング処理によるコーティングゴム層16cが順に積層されて背面補強布13の表面を被覆し、そして、コーティングゴム層16cが接着ゴム層11に接触していてもよい。補強布接着層16は、図3Bに示すように、背面補強布13側からRFL層16a及びソーキングゴム層16bが順に積層されて背面補強布13の表面を被覆し、そして、ソーキングゴム層16bが接着ゴム層11に接触していてもよい。補強布接着層16は、図3Cに示すように、背面補強布13側からRFL層16a及びコーティングゴム層16cが順に積層されて背面補強布13の表面を被覆し、そして、コーティングゴム層16cが接着ゴム層11に接触していてもよい。補強布接着層16は、図3Dに示すように、RFL層16aで構成され、そして、RFL層16aが接着ゴム層11に接触していてもよい。なお、補強布接着層16は、背面補強布13とRFL層16aとの間に、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂からなるプライマー層を有していてもよい。
ソーキングゴム層16b及びコーティングゴム層16cは、接着ゴム層11と同様、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されていてもよい。
心線14は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維等で形成された撚り糸で構成されている。心線の直径は例えば0.5〜2.5mmであり、ベルト横断面における相互に隣接する心線14中心間の寸法は例えば0.05〜0.20mmである。
心線14にも、Vリブドベルト本体10との接着のための接着処理が施されている。そのため、図4に示すように、心線14と接着ゴム層11との間には心線接着層17が介設されている。心線接着層17は、図5Aに示すように、心線14側から後述のRFL処理によるRFL層17a、及び後述のゴム糊処理による糊ゴム層17bが順に積層されて心線14の表面を被覆し、そして、糊ゴム層17bが接着ゴム層11に接触していてもよい。心線接着層17は、図5Bに示すように、RFL層17aで構成され、そして、RFL層17aが接着ゴム層11に接触していてもよい。心線14の接着ゴム層11への高い接着性能を得る観点からは、図5Bに示すようにRFL層17aが接着ゴム層11に接触していることが好ましい。なお、心線接着層17は、心線14とRFL層17aとの間に、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂からなるプライマー層を有していてもよい。
糊ゴム層17bは、接着ゴム層11と同様、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されていてもよい。
以上の構成の実施形態1に係るVリブドベルトBによれば、接着処理が施された繊維部材の背面補強布13及び心線14が、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されたゴム部材の接着ゴム層11に接触しているので、背面補強布13及び心線14の接着ゴム層11への高い接着性能を得ることができ、その結果、高い耐久性を得ることができる。
(自動車の補機駆動ベルト伝動装置)
図6は、実施形態1に係るVリブドベルトBを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置20のプーリレイアウトを示す。この補機駆動ベルト伝動装置20は、VリブドベルトBが4つのリブプーリ及び2つの平プーリの6つのプーリに巻き掛けられて動力を伝達するサーペンタインドライブ方式のものである。
この補機駆動ベルト伝動装置20では、最上位置にリブプーリのパワーステアリングプーリ21が設けられ、そのパワーステアリングプーリ21の右斜め下方にはリブプーリのACジェネレータプーリ22が設けられている。また、パワーステアリングプーリ21の左斜め下方には平プーリのテンショナプーリ23が設けられており、そのテンショナプーリ23の下方には平プーリのウォーターポンププーリ24が設けられている。更に、テンショナプーリ23及びウォーターポンププーリ24の左斜め下方にはリブプーリのクランクシャフトプーリ25が設けられており、ウォーターポンププーリ24及びクランクシャフトプーリ25の右斜め下方にはリブプーリのエアコンプーリ26が設けられている。これらのプーリは、例えば、金属のプレス加工品や鋳物、ナイロン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂成形品で構成されており、また、プーリ径がφ50〜150mmである。
そして、この補機駆動ベルト伝動装置20では、VリブドベルトBは、Vリブ15側が接触するようにパワーステアリングプーリ21に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面が接触するようにテンショナプーリ23に巻き掛けられた後、Vリブ15側が接触するようにクランクシャフトプーリ25及びエアコンプーリ26に順に巻き掛けられ、更に、ベルト背面が接触するようにウォーターポンププーリ24に巻き掛けられ、そして、Vリブ15側が接触するようにACジェネレータプーリ22に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ21に戻るように設けられている。プーリ間で掛け渡されるVリブドベルトBの長さであるベルトスパン長は例えば50〜300mmである。プーリ間で生じ得るミスアライメントは0〜2°である。
(VリブドベルトBの製造方法)
実施形態1に係るVリブドベルトBの製造方法について図7〜11に基づいて説明する。
実施形態1に係るVリブドベルトBの製造方法は、準備工程、成形工程、架橋工程、研削工程、及び幅切工程を有する。
<準備工程>
−ゴム−
ゴム成分にゴム配合物を配合してニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して接着ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’を作製する。このとき、ゴム成分としてエチレン−α−オレフィンエラストマーを主体としたものを用い、架橋剤として有機過酸化物及びチオカルボニル基を有する加硫促進剤を用いる。同様に、圧縮ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’も作製する。圧縮ゴム層12に短繊維を含める場合には、この未架橋ゴムシート12’に短繊維を配合すればよい。
−背面補強布−
背面補強布13’に対して接着処理を施す。具体的には、背面補強布13’を、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL処理、RFL処理後に低粘度のソーキング剤に浸漬して乾燥させるソーキング処理、及びRFL処理後又はソーキング処理後にVリブドベルト本体10側となる表面、つまり、接着ゴム層11と接触する表面に高粘度のコーティング剤をコーティングして乾燥させるコーティング処理のうちRFL処理を含む1種又は2種以上の接着処理を施す。なお、プライマー層を設ける場合には、RFL処理前に背面補強布13’をエポキシやイソシアネートのプライマー溶液に浸漬して加熱するプライマー処理を施す。また、RFL処理に代えて、RF水溶液に浸漬して加熱するRF処理を施してもよく、RFL処理に加えて、RFL処理前若しくは処理後に、RF水溶液に浸漬して加熱するRF処理を施してもよい。
RFL処理で用いるRFL水溶液は、レゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物にラテックス(L)を混合した混合水溶液である。RFL水溶液の固形分濃度は例えば3.0〜30質量%である。RFL水溶液におけるレゾルシン(R)のホルマリン(F)に対するモル比は、例えばR/F=1/0.8〜1/4である。RFL水溶液におけるレゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物(RF)のラテックス(L)に対する固形分質量比は、例えばRF/L=1/0〜1/30である。なお、RF/L=1/0の場合とは、RF水溶液によるRF処理である。
ラテックス(L)としては、例えば、ビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP−SBR)ラテックス、クロロプレンゴム(CR)ラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)ラテックス、2,3−ジクロロブタジエン重合体ゴム(2,3−DCB)ラテックス、ニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス、水素添加アクリロニトリルブタジエンメタクリル酸三元共重合体(X−NBR)ラテックス等が挙げられる。これらのうちビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP−SBR)ラテックスが好ましい。ラテックス(L)は、上記のうち1種が用いられていても、また、2種以上が用いられていても、どちらでもよい。
RFL処理における背面補強布13’のRFL水溶液への浸漬時間は例えば0.5〜10秒であり、浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は例えば100〜180℃及び加熱時間は例えば30〜600秒である。RFL処理は、1回行っても、また、複数回行っても、どちらでもよい。RFL処理後、背面補強布13’の表面全体がRFL層16aで被覆されるが、そのRFL層16aの付着量は、背面補強布13’の100質量部に対して例えば1〜40質量部である。
ソーキング処理で用いるソーキング剤は、ゴム成分にゴム配合物を配合してニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をトルエンやメチルエチルケトン等の溶剤に溶解させた溶液である。ソーキング剤の固形分濃度は例えば5〜20質量%である。ソーキング剤に含まれる未架橋ゴム組成物は、接着ゴム層11と同様、ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とすることが好ましく、また、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、架橋剤として有機過酸化物が配合されると共にチオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合されていることがより好ましい。
ソーキング処理におけるRFL処理後の背面補強布13’のソーキング剤への浸漬時間は例えば1〜30秒であり、浸漬後の乾燥温度(乾燥炉設定温度)は例えば60〜150℃及び乾燥時間は例えば10〜420秒である。ソーキング処理は、1回行っても、また、複数回行っても、どちらでもよい。ソーキング処理後、背面補強布13’の表面全体がソーキングゴム層16bで被覆されるが、そのソーキングゴム層16bの付着量は、背面補強布13’の100質量部に対して例えば5〜100質量部である。
コーティング処理で用いるコーティング剤は、ゴム成分にゴム配合物を配合してニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をトルエンやメチルエチルケトン等の溶剤に溶解させた粘稠物である。コーティング剤の固形分濃度は例えば10〜50質量%である。コーティング剤に含まれる未架橋ゴム組成物は、接着ゴム層11と同様、ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とすることが好ましく、また、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、架橋剤として有機過酸化物が配合されると共にチオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合されていることがより好ましい。
コーティング処理におけるRFL処理後又はソーキング処理後の背面補強布13’へのコーティング剤のコーティング方法としては、例えば、ナイフコーティング法及びロールコーティング法が挙げられる。コーティング後の乾燥温度(乾燥炉設定温度)は例えば60〜150℃及び乾燥時間は例えば10〜600秒である。コーティング処理は、1回行っても、また、複数回行っても、どちらでもよい。コーティング処理後、背面補強布13’のVリブドベルト本体10側となる表面がコーティングゴム層16cで被覆されるが、コーティングゴム層16cの付着量は、背面補強布13’の100質量部に対して例えば10〜250質量部である。
−心線−
心線14’に対して接着処理を施す。具体的には、心線14’を、RFL水溶液に浸漬して加熱するRFL処理、及びRFL処理後の心線14’をゴム糊に浸漬して乾燥させるゴム糊処理のうちRFL処理を含む1種又は2種の接着処理を施す。なお、プライマー層を設ける場合には、RFL処理前に心線14’をエポキシやイソシアネートのプライマー溶液に浸漬して加熱するプライマー処理を施す。
RFL処理で用いるRFL水溶液は、背面補強布13’に対するRFL処理と同様、レゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物にラテックス(L)を混合した混合水溶液である。RFL水溶液の固形分濃度は例えば1〜30質量%である。レゾルシン(R)とホルマリン(F)とのモル比は、例えばR/F=1/0.8〜1/4である。レゾルシンとホルマリンとの初期縮合物(RF)とラテックス(L)との固形分質量比は、例えばRF/L=1/1〜1/30である。
ラテックス(L)としては、例えば、例えば、ビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP−SBR)ラテックス、クロロプレンゴム(CR)ラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)ラテックス、2,3−ジクロロブタジエン重合体ゴム(2,3−DCB)ラテックス、ニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス、水素添加アクリロニトリルブタジエンメタクリル酸三元共重合体(X−NBR)ラテックス等が挙げられる。これらのうちビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP−SBR)ラテックスが好ましい。ラテックス(L)は、上記のうち1種が用いられていても、また、2種以上が用いられていても、どちらでもよい。
RFL処理における心線14’のRFL水溶液への浸漬時間は例えば0.5〜5秒であり、浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は例えば150〜260℃及び加熱時間は例えば15〜300秒である。RFL処理は、1回行っても、また、複数回行っても、どちらでもよい。RFL処理後、背面補強布13’の表面全体がRFL層16aで被覆される。心線14’の100質量部に対するRFL層16aの付着量は例えば0.5〜15質量部である。
ゴム糊処理で用いるゴム糊は、ゴム成分にゴム配合物を配合してニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をトルエンやメチルエチルケトン等の溶剤に溶解させた溶液である。ゴム糊の固形分濃度は例えば5〜50質量%である。ゴム糊に含まれる未架橋ゴム組成物は、接着ゴム層11と同様、ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とすることが好ましく、また、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、架橋剤として有機過酸化物が配合されると共にチオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合されていることがより好ましい。
ゴム糊処理におけるRFL処理後の心線14’のゴム糊への浸漬時間は例えば0.5〜5秒であり、浸漬後の乾燥温度(乾燥炉設定温度)は例えば40〜180℃及び乾燥時間は例えば15〜300秒である。ゴム糊処理は、1回行っても、また、複数回行っても、どちらでもよい。ゴム糊処理後、心線14’の表面全体が糊ゴム層17bで被覆される。心線14’の100質量部に対する糊ゴム層17bの付着量は例えば0.5〜70質量部である。
<成形工程>
次いで、図7に示すように、円筒型31の外周上に、接着処理を施した背面補強布13’、及び接着ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’を順に巻き付けて積層し、その上に接着処理を施した心線14’を円筒型31に対して螺旋状に一定の張力を付与して巻き付け、更にその上に接着ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’及び圧縮ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層することによりベルト形成用成形体B’を成形する。このとき、接着ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’については、その引出方向である列理方向がベルト長さ方向に対応するように巻き付け、圧縮ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’については、その列理方向に直交する反列理方向がベルト長さ方向に対応するように巻き付ける。
<架橋工程>
次いで、図8に示すように、ベルト形成用成形体B’にゴムスリーブ32を被せ、それを加硫缶内に配置して密閉すると共に、加硫缶内に高温及び高圧の蒸気を充填して所定時間だけ保持する。このとき、有機過酸化物により未架橋ゴムシート11’,12’の架橋が進行して一体化すると共に背面補強布13’及び心線14’と複合化し、図9に示すように、最終的に、円筒状のベルトスラブSが成型される。
<研削工程>
続いて、加硫缶内から蒸気を排出して密閉を解き、円筒型31上に成型されたベルトスラブSを型抜きし、図10に示すように、ベルトスラブSを一対のスラブ掛け渡し軸33間に掛け渡すと共に、ベルトスラブSの外周面に対し、周方向に延びるVリブ形状溝が外周面の軸方向に連設された研削砥石34を回転させながら当接させ、また、ベルトスラブSも一対のスラブ掛け渡し軸33間で回転させることにより、その外周面を全周に渡って研削する。このとき、図11に示すように、ベルトスラブSの外周面にはVリブ15が形成される。なお、ベルトスラブSは、必要に応じて長さ方向に分割して研削を行ってもよい。
<幅切工程>
そして、研削によりVリブ15を形成したベルトスラブSを所定幅に幅切りして表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが得られる。
以上のようにして得られる実施形態1に係るVリブドベルトBは、接着処理としてRFL処理、ソーキング処理、及びコーティング処理のうちRFL処理を含む1種又は2種以上が施された繊維部材の背面補強布13が、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されたゴム部材の接着ゴム層11に接触し、それによってゴム部材の接着ゴム層11と繊維部材の背面補強布13とが複合した構造を含むゴム繊維複合体に構成されている。
また、実施形態1に係るVリブドベルトBは、接着処理としてRFL処理及びゴム糊処理のうちRFL処理を含む1種又は2種が施された繊維部材の心線14が、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されたゴム部材の接着ゴム層11に接触し、それによってゴム部材の接着ゴム層11と繊維部材の心線14とが複合した構造を含むゴム繊維複合体に構成されている。
[実施形態2]
実施形態2に係るVリブドベルトB(ゴム繊維複合体)は、外観構成が実施形態1と同一である。以下では、実施形態2に係るVリブドベルトBについて、実施形態1と同一図面及び同一符号を用いて説明する。
実施形態2に係るVリブドベルトBでは、接着ゴム層11は、ゴム成分に種々のゴム配合物が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤によりゴム成分を架橋させたゴム組成物で形成されている。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物は、有機過酸化物を架橋剤として架橋したものであっても、また、硫黄を架橋剤として架橋したものであっても、更に、有機過酸化物及び硫黄架橋剤を架橋剤として併用して架橋したものであっても、いずれでもよい。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー(EPDM、EPRなど)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物に配合されるゴム配合物としては、例えば、カーボンブラックなどの補強材、軟化剤、加硫促進助剤、加工助剤、老化防止剤、共架橋剤、架橋剤、加硫促進剤等が挙げられる。
背面補強布13には、Vリブドベルト本体10との接着のための接着処理が施されている。そのため、図2に示すように、背面補強布13と接着ゴム層11との間には補強布接着層16が介設されている。補強布接着層16は、図3Aに示すように、背面補強布13側からRFL処理によるRFL層16a、ソーキング処理によるソーキングゴム層16b、及びコーティング処理によるコーティングゴム層16cが順に積層されて背面補強布13の表面を被覆し、そのため、RFL層16aがソーキングゴム層16bに接触していてもよい。補強布接着層16は、図3Bに示すように、背面補強布13側からRFL層16a及びソーキングゴム層16bが順に積層されて背面補強布13の表面を被覆し、そのため、RFL層16aがソーキングゴム層16bに接触していてもよい。なお、補強布接着層16は、背面補強布13とRFL層16aとの間に、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂からなるプライマー層を有していてもよい。
ソーキングゴム層16bは、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されている。ソーキングゴム層16bを形成するゴム組成物は、実施形態1における接着ゴム層11を形成するゴム組成物と同様の構成を有する。
コーティングゴム層16cは、ソーキングゴム層16bと同様、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されていてもよい。
心線14にも、Vリブドベルト本体10との接着のための接着処理が施されている。そのため、図4に示すように、心線14と接着ゴム層11との間には心線接着層17が介設されている。心線接着層17は、図5Aに示すように、心線14側からRFL処理によるRFL層17a、及びゴム糊処理による糊ゴム層17bが順に積層されて心線14の表面を被覆していてもよい。心線接着層17は、図5Bに示すように、RFL層17aで構成されていてもよい。なお、心線接着層17は、心線14とRFL層17aとの間に、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂からなるプライマー層を有していてもよい。
糊ゴム層17bは、ソーキングゴム層16bと同様、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されていてもよい。
実施形態2に係るVリブドベルトBの製造において、背面補強布13’のソーキング処理で用いるソーキング剤は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体としたゴム成分に、架橋剤として有機過酸化物及びチオカルボニル基を有する加硫促進剤を含むゴム配合物を配合してニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をトルエンやメチルエチルケトン等の溶剤に溶解させた溶液である。
以上のようにして得られる実施形態2に係るVリブドベルトBは、ゴム部材の接着ゴム層11と接着処理としてRFL処理が施された繊維部材の背面補強布13との間に、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されたソーキングゴム層16bを有し、それによって接着処理が施された繊維部材の背面補強布13が、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物に接触し、且つゴム部材の接着ゴム層11と繊維部材の背面補強布13とが複合した構造を含むゴム繊維複合体に構成されている。
その他の構成、作用効果は実施形態1と同一である。
[実施形態3]
実施形態3に係るVリブドベルトB(ゴム繊維複合体)は、外観構成が実施形態1と同一である。以下では、実施形態3に係るVリブドベルトBについて、実施形態1と同一図面及び同一符号を用いて説明する。
実施形態3に係るVリブドベルトBでは、接着ゴム層11は、ゴム成分に種々のゴム配合物が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤によりゴム成分を架橋させたゴム組成物で形成されている。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物は、有機過酸化物を架橋剤として架橋したものであっても、また、硫黄を架橋剤として架橋したものであっても、更に、有機過酸化物及び硫黄架橋剤を架橋剤として併用して架橋したものであっても、いずれでもよい。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー(EPDM、EPRなど)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物に配合されるゴム配合物としては、例えば、カーボンブラックなどの補強材、軟化剤、加硫促進助剤、加工助剤、老化防止剤、共架橋剤、架橋剤、加硫促進剤等が挙げられる。
背面補強布13には、Vリブドベルト本体10との接着のための接着処理が施されている。そのため、図2に示すように、背面補強布13と接着ゴム層11との間には補強布接着層16が介設されている。補強布接着層16は、図3Aに示すように、背面補強布13側からRFL処理によるRFL層16a、ソーキング処理によるソーキングゴム層16b、及びコーティング処理によるコーティングゴム層16cが順に積層されて背面補強布13の表面を被覆し、そのため、ソーキングゴム層16bがコーティングゴム層16cに接触していてもよい。補強布接着層16は、図3Cに示すように、背面補強布13側からRFL層16a及びコーティングゴム層16cが順に積層されて背面補強布13の表面を被覆し、そのため、RFL層16aがコーティングゴム層16cに接触していてもよい。なお、補強布接着層16は、背面補強布13とRFL層16aとの間に、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂からなるプライマー層を有していてもよい。
コーティングゴム層16cは、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されている。コーティングゴム層16cを形成するゴム組成物は、実施形態1における接着ゴム層11を形成するゴム組成物と同様の構成を有する。
心線14にも、Vリブドベルト本体10との接着のための接着処理が施されている。そのため、図4に示すように、心線14と接着ゴム層11との間には心線接着層17が介設されている。心線接着層17は、図5Aに示すように、心線14側からRFL処理によるRFL層17a、及びゴム糊処理による糊ゴム層17bが順に積層されて心線14の表面を被覆していてもよい。心線接着層17は、図5Bに示すように、RFL層17aで構成されていてもよい。なお、心線接着層17は、心線14とRFL層17aとの間に、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂からなるプライマー層を有していてもよい。
糊ゴム層17bは、コーティングゴム層16cと同様、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されていてもよい。
実施形態3に係るVリブドベルトBの製造において、背面補強布13’のコーティング処理で用いるコーティング剤は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体としたゴム成分に、架橋剤として有機過酸化物及びチオカルボニル基を有する加硫促進剤を含むゴム配合物を配合してニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をトルエンやメチルエチルケトン等の溶剤に溶解させた粘稠物である。
以上のようにして得られる実施形態3に係るVリブドベルトBは、ゴム部材の接着ゴム層11と接着処理としてRFL処理又はRFL処理及びソーキング処理が施された繊維部材の背面補強布13との間に、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されたコーティングゴム層16cを有し、それによって接着処理が施された繊維部材の背面補強布13が、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物に接触し、且つゴム部材の接着ゴム層11と繊維部材の背面補強布13とが複合した構造を含むゴム繊維複合体に構成されている。
その他の構成、作用効果は実施形態1と同一である。
[実施形態4]
実施形態4に係るVリブドベルトB(ゴム繊維複合体)は、外観構成が実施形態1と同一である。以下では、実施形態4に係るVリブドベルトBについて、実施形態1と同一図面及び同一符号を用いて説明する。
実施形態4に係るVリブドベルトBでは、接着ゴム層11は、ゴム成分に種々のゴム配合物が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤によりゴム成分を架橋させたゴム組成物で形成されている。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物は、有機過酸化物を架橋剤として架橋したものであっても、また、硫黄を架橋剤として架橋したものであっても、更に、有機過酸化物及び硫黄架橋剤を架橋剤として併用して架橋したものであっても、いずれでもよい。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー(EPDM、EPRなど)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。
接着ゴム層11を形成するゴム組成物に配合されるゴム配合物としては、例えば、カーボンブラックなどの補強材、軟化剤、加硫促進助剤、加工助剤、老化防止剤、共架橋剤、架橋剤、加硫促進剤等が挙げられる。
心線14には、Vリブドベルト本体10との接着のための接着処理が施されている。そのため、図4に示すように、心線14と接着ゴム層11との間には心線接着層17が介設されている。心線接着層17は、図5Aに示すように、心線14側からRFL処理によるRFL層17a、及びゴム糊処理による糊ゴム層17bが順に積層されて心線13の表面を被覆し、そのため、RFL層17aが糊ゴム層17bに接触している。なお、心線接着層17は、心線14とRFL層17aとの間に、エポキシ樹脂やイソシアネート樹脂からなるプライマー層を有していてもよい。
糊ゴム層17bは、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されている。糊ゴム層17bを形成するゴム組成物は、実施形態1における接着ゴム層11を形成するゴム組成物と同様の構成を有する。
実施形態4に係るVリブドベルトBの製造において、心線14’のゴム糊処理で用いるゴム糊は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体としたゴム成分に、架橋剤として有機過酸化物及びチオカルボニル基を有する加硫促進剤を含むゴム配合物を配合してニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をトルエンやメチルエチルケトン等の溶剤に溶解させた溶液である。
以上のようにして得られる実施形態4に係るVリブドベルトBは、ゴム部材の接着ゴム層11と接着処理としてRFL処理が施された繊維部材の心線14との間に、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物で形成されたゴム部材の糊ゴム層17bを有し、それによって接着処理が施された繊維部材の心線14が、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物に接触し、且つゴム部材の接着ゴム層11と繊維部材の心線14とが複合した構造を含むゴム繊維複合体に構成されている。
その他の構成、作用効果は実施形態1と同一である。
[その他の実施形態]
上記実施形態1〜4では、VリブドベルトBを事例としたが、ゴム部材と接着処理が施された繊維部材とが複合した構造を含むゴム繊維複合体を構成する伝動ベルトであれば、特にこれらに限定されるものではなく、例えば、図12Aに示すようなローエッジ型のVベルトBであってもよく、図12Bに示すようなラップドVベルトBであってもよく、図12Cに示すような平ベルトBであってもよく、図12Dに示すような歯付ベルトBであってもよい。また、ゴム部材と接着処理が施された繊維部材とが複合した構造を含むゴム繊維複合体を構成するものであれば、伝動ベルトに限定されず、タイヤ、ホース等であってもよい。
[試験評価1]
(Vリブドベルト)
上記実施形態1と同様の方法により次の実施例1-1〜1-4及び比較例1-1〜1-4のVリブドベルトを作製した。なお、それぞれにおける接着ゴム層用の未架橋ゴムシートの配合について表1にも示す。
<実施例1-1>
接着ゴム層用の未架橋ゴムシートとして、EPDM(JSR社製 商品名:EP33 エチレン含量:52質量%、エチリデンノボルネン(ジエン成分)含量:8.1質量%、ムーニー粘度:28ML1+4(125℃))をゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対し、補強材のカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストSO)40質量部、補強材のシリカ(エボニック社製 商品名:ウルトラジルVN3)40質量部、軟化剤のプロセスオイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)15質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛(白水化学社製 酸化亜鉛3種)5質量部、加工助剤のステアリン酸(新日本理化社製 ステアリン酸S50)1質量部、ベンズイミダゾール系老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラックMB)2質量部、共架橋剤(精工化学社製 商品名:ハイクロスM)2質量部、架橋剤の有機過酸化物(日油社製 商品名:ペロキシモンF40、純度40質量%)4.3質量部、架橋剤の硫黄(日本乾溜工業社製 商品名:セイミOT)2質量部、及びチオカルボニル基を有するチウラム系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーTET)1質量部を配合してバンバリーミキサーで混練後、カレンダロールで圧延したものを用いた。この接着ゴム層用の未架橋ゴムシートにおいて、有機過酸化物の含有量は0.81質量%、硫黄の含有量は0.94質量%、及びチウラム系加硫促進剤の含有量は0.47質量%であり、また、硫黄の含有量/有機過酸化物の含有量は1.16、チウラム系加硫促進剤の含有量/有機過酸化物の含有量は0.58、及びチウラム系加硫促進剤の含有量/硫黄の含有量は0.5である。
圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシートとして、EPDM(JSR社製 商品名:EP22 エチレン含量:54質量%、エチリデンノボルネン(ジエン成分)含量:4.5質量%、ムーニー粘度:27ML1+4(125℃))をゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対し、補強材のカーボンブラック(三菱化学社製 商品名:ダイヤブラックH)65質量部、軟化剤のプロセスオイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)10質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛(白水化学社製 酸化亜鉛3種)5質量部、加工助剤のステアリン酸(新日本理化社製 ステアリン酸S50)1質量部、ベンズイミダゾール系老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラックMB)2質量部、架橋剤の硫黄(日本乾溜工業社製 商品名:セイミOT)2質量部、チオカルボニル基を有するチウラム系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーTET)1質量部、及びナイロン短繊維(旭化成社製 ナイロン6,6 タイプT−5)を配合してバンバリーミキサーで混練後、カレンダロールで圧延したものを用いた。なお、圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシートでは、接着ゴム層用の未架橋ゴムシートよりも、ゴム成分のEPDMのエチレン含量が高く、且つそのエチリデンノボルネン(ジエン成分)含量及びムーニー粘度が低く、また、接着ゴム層用の未架橋ゴムシートとは異なり、架橋剤として硫黄のみが配合され、有機過酸化物が配合されていない一方、接着ゴム層用の未架橋ゴムシートと同様のチオカルボニル基を有するチウラム系加硫促進剤が配合されている。
背面補強布として綿/ポリエステル混紡繊維製の織布を用いた。背面補強布には、RFL処理、ソーキング処理、及びコーティング処理からなる接着処理を施した。
RFL処理では、RFL水溶液として、レゾルシン(R)と37質量%ホルムアルデヒド水溶液(F:ホルマリン)とを混合・攪拌したものに、水酸化ナトリウム水溶液を加えて更に攪拌した後、そこに水を加えて熟成したRF水溶液に、ラテックス(L)のビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP−SBR)ラテックス(JSR社製 商品名:JSR−0652)を混合したものを用いた。RFL水溶液は、レゾルシン(R)のホルマリン(F)に対するモル比がR/F=1/2、レゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物(RF)のラテックス(L)に対する固形分質量比がRF/L=1/6、及び固形分濃度が15質量%であった。RFL処理における背面補強布のRFL水溶液への浸漬時間は6秒、浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は150℃及び加熱時間は300秒とした。背面補強布の100質量部に対するRFL層の付着量は13質量部であった。
ソーキング処理では、ソーキング剤として、EPDM(DOW CHEMICAL社製 商品名:Nordel IP4640 エチレン含量:55質量%、エチリデンノボルネン(ジエン成分)含量:4.9質量%、ムーニー粘度:40ML1+4(125℃))をゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対し、補強材のカーボンブラック(三菱化学社製 商品名:ダイヤブラックH)40質量部、補強材のシリカ(エボニック社製 商品名:ウルトラジルVN3)40質量部、軟化剤のプロセスオイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)5質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛(白水化学社製 酸化亜鉛3種)5質量部、加工助剤のステアリン酸(新日本理化社製 ステアリン酸S50)1質量部、ベンズイミダゾール系老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラックMB)2質量部、架橋剤の硫黄(細井化学工業社製 商品名:オイルサルファー)2質量部、及びチオカルボニル基を有するチウラム系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーTET)1質量部を配合してバンバリーミキサーで混練した未架橋ゴム組成物をトルエンに溶解させたものを用いた。ソーキング剤の固形分濃度は15質量%であった。ソーキング処理における背面補強布のソーキング処理剤への浸漬時間は6秒、浸漬後の乾燥温度(乾燥炉設定温度)は130℃及び乾燥時間は100秒とした。背面補強布の100質量部に対するソーキングゴム層の付着量は16質量部であった。
コーティング処理では、コーティング剤として、EPDM(DOW CHEMICAL社製 商品名:Nordel IP4640)をゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対し、補強材のカーボンブラック(三菱化学社製 商品名:ダイヤブラックH)40質量部、補強材のシリカ(エボニック社製 商品名:ウルトラジルVN3)40質量部、軟化剤のプロセスオイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)5質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛(白水化学社製 酸化亜鉛3種)5質量部、加工助剤のステアリン酸(新日本理化社製 ステアリン酸S50)1質量部、ベンズイミダゾール系老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラックMB)2質量部、架橋剤の硫黄(細井化学工業社製 商品名:オイルサルファー)2質量部、及びチオカルボニル基を有するチウラム系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーTET)1質量部を配合してバンバリーミキサーで混練した未架橋ゴム組成物をトルエンに溶解させたものを用いた。コーティング剤の固形分濃度は30質量%であった。背面補強布へのコーティング処理剤のコーティングはナイフコーティング法によって行った。コーティング後の乾燥温度(乾燥炉設定温度)は130℃及び乾燥時間は100秒とした。背面補強布の100質量部に対するコーティングゴム層の付着量は27質量部であった。
心線としてポリエステル繊維製の撚り糸を用いた。心線には、プライマー処理及びRFL処理からなる接着処理を施した。
プライマー処理では、プライマー溶液として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(住化バイエルウレタン社製 商品名:スミジュール44V20)をトルエンに溶解させた固形分濃度が13質量%の溶液を用いた。心線のプライマー溶液への浸漬時間は3秒、浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は220℃及び加熱時間は80秒とした。心線の100質量部に対するプライマー層の付着量は6質量部であった。
RFL処理では、RFL水溶液として、レゾルシン(R)と37質量%ホルムアルデヒド水溶液(F:ホルマリン)とを混合・攪拌したものに、水酸化ナトリウム水溶液を加えて更に攪拌した後、そこに水を加えて熟成したRF水溶液に、ラテックス(L)のビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP−SBR)ラテックス(JSR社製 商品名:JSR−0652)を混合したものを用いた。RFL水溶液は、レゾルシン(R)のホルマリン(F)に対するモル比がR/F=1/2、レゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物(RF)のラテックス(L)に対する固形分質量比がRF/L=1/6、及び固形分濃度が20質量%であった。心線のRFL水溶液への浸漬時間は3秒、浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は240℃及び加熱時間は80秒とした。心線の100質量部に対するRFL層の付着量は5質量部であった。
実施例1-1のVリブドベルトは、ベルト長さが1115mm、ベルト幅が10.68mm(リブ数3個)、ベルト厚さが4.3mm、及びVリブ高さが2.0mmであった。
<実施例1-2>
接着ゴム層用の未架橋ゴムシートについて、チウラム系加硫促進剤の代わりに、チオカルボニル基を有するジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーEZ)を配合した以外は実施例1-1と同一構成のVリブドベルトを実施例1-2とした。
この接着ゴム層用の未架橋ゴムシートにおいて、有機過酸化物の含有量は0.81質量%、硫黄の含有量は0.94質量%、及びチウラム系加硫促進剤の含有量は0.47質量%であり、また、硫黄の含有量/有機過酸化物の含有量は1.16、チウラム系加硫促進剤の含有量/有機過酸化物の含有量は0.58、及びチウラム系加硫促進剤の含有量/硫黄の含有量は0.5である。
<実施例1-3>
接着ゴム層用の未架橋ゴムシートについて、硫黄の配合量をゴム成分100質量部に対して1質量部とした以外は実施例1-1と同一構成のVリブドベルトを実施例1-3とした。
この接着ゴム層用の未架橋ゴムシートにおいて、有機過酸化物の含有量は0.81質量%、硫黄の含有量は0.47質量%、及びチウラム系加硫促進剤の含有量は0.47質量%であり、また、硫黄の含有量/有機過酸化物の含有量は0.58、チウラム系加硫促進剤の含有量/有機過酸化物の含有量は0.58、及びチウラム系加硫促進剤の含有量/硫黄の含有量は1である。
<実施例1-4>
接着ゴム層用の未架橋ゴムシートについて、硫黄を配合していない以外は実施例1-1と同一構成のVリブドベルトを実施例1-4とした。
この接着ゴム層用の未架橋ゴムシートにおいて、有機過酸化物の含有量は0.82質量%、及びチウラム系加硫促進剤の含有量は0.48質量%であり、また、チウラム系加硫促進剤の含有量/有機過酸化物の含有量は0.59である。
<比較例1-1>
接着ゴム層用の未架橋ゴムシートについて、硫黄及びチウラム系加硫促進剤を配合していない以外は実施例1-1と同一構成のVリブドベルトを比較例1-1とした。
<比較例1-2>
接着ゴム層用の未架橋ゴムシートについて、有機過酸化物を配合していない以外は実施例1-1と同一構成のVリブドベルトを比較例1-2とした。
<比較例1-3>
接着ゴム層用の未架橋ゴムシートについて、チウラム系加硫促進剤の代わりに、チオカルボニル基を有さないグアニジン系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーDT)を配合した以外は実施例1-1と同一構成のVリブドベルトを比較例1-3とした。
<比較例1-4>
接着ゴム層用の未架橋ゴムシートについて、チウラム系加硫促進剤の代わりに、チオカルボニル基を有さないスルフェンアミド系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーCZ−G)を配合した以外は実施例1-1と同一構成のVリブドベルトを比較例1-4とした。
(試験評価方法)
<心線の剥離接着力>
実施例1-1〜1-4及び比較例1-1〜1-4のそれぞれにおける接着ゴム層用の未架橋ゴムシート及び心線を用い、図13に示すような板状ゴム41の表層に7本の心線42が間隔をおいて平行に延びるように埋設された接着試験用試験片40をプレス成型した。なお、プレス成型条件は、温度160℃、圧力2.9MPa、及び時間30分とした。
各接着試験用試験片40について、引張試験機の一方のチャックに板状ゴム41を固定すると共に、他方のチャックに板状ゴム41に埋設された7本の心線42のうち1本置きに配置された3本の心線42を板状ゴム41に対して90°の角度をなす方向に引き出して固定し、剥離スピードを50mm/minとして板状ゴム41から3本の心線42を100mm剥離した。そして、剥離長さ10〜100mmの間のピーク値の平均を剥離接着力とした。また、その剥離状態を目視にて観察した。
<ベルト走行試験>
図14はベルト試験走行機50のプーリレイアウトを示す。
このベルト走行試験機50は、各々、プーリ径が120mmのリブプーリである大径従動プーリ51及び駆動プーリ52が上下に間隔をおいて設けられ、また、それらの上下方向中間にプーリ径が85mmの平プーリであるアイドラプーリ53が設けられ、更に、アイドラプーリ53の右側方にプーリ径が45mmのリブプーリである小径従動プーリ54が設けられている。アイドラプーリ53はVリブドベルトBの巻き掛け角度が120°となるように、また、小径従動プーリ54はVリブドベルトBの巻き掛け角度が90°となるようにそれぞれ位置付けられている。大径従動プーリ51には8.9kWに相当する回転負荷が付与されている。小径従動プーリ54は、VリブドベルトBにベルト張力を負荷できるように横方向に可動に構成されている。そして、以上の構成のベルト走行試験機50には、VリブドベルトBは、Vリブ側が大径従動プーリ51、駆動プーリ52、及び小径従動プーリ54に接触し、且つ背面側がアイドラプーリ53に接触するように巻き掛けられる。
実施例1-1〜1-4及び比較例1-1〜1-4のそれぞれのVリブドベルトBについて、上記ベルト走行試験機50にセットし、また、ベルト張力が負荷されるように小径従動プーリ54に側方に588Nのデッドウェイトを負荷し、そして、雰囲気温度120℃の下、駆動プーリ52を4900rpmの回転数で回転させてベルト走行させた。最長走行時間を150時間とし、150時間以内に破損したものについては、走行寿命及び破損モードを確認した。
(試験評価結果)
表2及び3は試験結果を示す。
表2及び3によれば、接着ゴム層が、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合されて有機過酸化物により架橋されたEPDMのゴム組成物で形成された実施例1-1〜1-4は、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合されていない比較例1-1、有機過酸化物により架橋されていない比較例1-2、並びにチオカルボニル基を有する加硫促進剤以外の加硫促進剤が配合された比較例1-3及び1-4と比較すると、心線の接着ゴム層への接着力が高く、また、ベルト走行の耐久性が高いことが分かる。
[試験評価2]
(Vリブドベルト)
上記実施形態1と同様の方法により次の実施例2-1〜2-4及び比較例2-1〜2-4のVリブドベルトを作製した。なお、それぞれにおける心線のゴム糊処理で用いるゴム糊に含まれる未架橋ゴム組成物の配合について表4にも示す。
<実施例2-1>
心線としてポリエステル繊維製の撚り糸を用いた。心線には、プライマー処理、RFL処理、及びゴム糊処理からなる接着処理を施した。
プライマー処理では、プライマー溶液として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(住化バイエルウレタン社製 商品名:スミジュール44V20)をトルエンに溶解させた固形分濃度が13質量%の溶液を用いた。心線のプライマー溶液への浸漬時間は3秒、浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は220℃及び加熱時間は80秒とした。心線の100質量部に対するプライマー層の付着量は5質量部であった。
RFL処理では、RFL水溶液として、レゾルシン(R)と37質量%ホルムアルデヒド水溶液(F:ホルマリン)とを混合・攪拌したものに、水酸化ナトリウム水溶液を加えて更に攪拌した後、そこに水を加えて熟成したRF水溶液に、ラテックス(L)のビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP−SBR)ラテックス(JSR社製 商品名:JSR−0652)を混合したものを用いた。RFL水溶液は、レゾルシン(R)のホルマリン(F)に対するモル比がR/F=1/2、レゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物(RF)のラテックス(L)に対する固形分質量比がRF/L=1/6、及び固形分濃度が20質量%であった。心線のRFL水溶液への浸漬時間は3秒、浸漬後の加熱温度(加熱炉設定温度)は240℃及び加熱時間は80秒とした。心線の100質量部に対するRFL層の付着量は5質量部であった。
ゴム糊処理では、ゴム糊として、EPDM(DOW CHEMICAL社製 商品名:Nordel IP4640)をゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対し、補強材のカーボンブラック(三菱化学社製 商品名:ダイヤブラックH)40質量部、補強材のシリカ(エボニック社製 商品名:ウルトラジルVN3)40質量部、軟化剤のプロセスオイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)5質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛(白水化学社製 酸化亜鉛3種)5質量部、加工助剤のステアリン酸(新日本理化社製 ステアリン酸S50)1質量部、ベンズイミダゾール系老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラックMB)2質量部、共架橋剤(精工化学社製 商品名:ハイクロスM)2質量部、架橋剤の有機過酸化物(日油社製 商品名:ペロキシモンF40、純度40質量%)4.3質量部、架橋剤の硫黄(細井化学工業社製 商品名:オイルサルファー)2質量部、及びチオカルボニル基を有するチウラム系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーTET)1質量部を配合してバンバリーミキサーで混練した未架橋ゴム組成物をトルエンに溶解させたものを用いた。ゴム糊の固形分濃度は20質量%であった。このゴム糊の固形分において、有機過酸化物の含有量は0.85質量%、硫黄の含有量は0.99質量%、及びチウラム系加硫促進剤の含有量は0.50質量%であり、また、硫黄の含有量/有機過酸化物の含有量は1.16、チウラム系加硫促進剤の含有量/有機過酸化物の含有量は0.59、及びチウラム系加硫促進剤の含有量/硫黄の含有量は0.51である。ゴム糊処理における心線のゴム糊への浸漬時間は6秒、浸漬後の乾燥温度(乾燥炉設定温度)は60℃及び乾燥時間は80秒とした。心線の100質量部に対する糊ゴム層の付着量は7質量部であった。
接着ゴム層用の未架橋ゴムシートとして、EPDM(JSR社製 商品名:EP33)をゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対し、補強材のカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストSO)40質量部、補強材のシリカ(エボニック社製 商品名:ウルトラジルVN3)40質量部、軟化剤のプロセスオイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)15質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛(白水化学社製 酸化亜鉛3種)5質量部、加工助剤のステアリン酸(新日本理化社製 ステアリン酸S50)1質量部、ベンズイミダゾール系老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラックMB)2質量部、架橋剤の硫黄(日本乾溜工業社製 商品名:セイミOT)2質量部、及びチオカルボニル基を有するチウラム系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーTET)1質量部を配合してバンバリーミキサーで混練後、カレンダロールで圧延したものを用いた。
圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシート及び背面補強布は実施例1-1と同一構成のものを用いた。
実施例2-1のVリブドベルトは、ベルト長さが1115mm、ベルト幅が10.68mm(リブ数3個)、ベルト厚さが4.3mm、及びVリブ高さが2.0mmであった。
<実施例2-2>
心線のゴム糊処理に用いるゴム糊について、チウラム系加硫促進剤の代わりに、チオカルボニル基を有するジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーEZ)を配合した以外は実施例2-1と同一構成のVリブドベルトを実施例2-2とした。
このゴム糊の固形分において、有機過酸化物の含有量は0.85質量%、硫黄の含有量は0.99質量%、及びチウラム系加硫促進剤の含有量は0.50質量%であり、また、硫黄の含有量/有機過酸化物の含有量は1.16、チウラム系加硫促進剤の含有量/有機過酸化物の含有量は0.59、及びチウラム系加硫促進剤の含有量/硫黄の含有量は0.51である。
<実施例2-3>
心線のゴム糊処理に用いるゴム糊について、硫黄の配合量をゴム成分100質量部に対して1質量部とした以外は実施例2-1と同一構成のVリブドベルトを実施例2-3とした。
このゴム糊の固形分において、有機過酸化物の含有量は0.85質量%、硫黄の含有量は0.50質量%、及びチウラム系加硫促進剤の含有量は0.50質量%であり、また、硫黄の含有量/有機過酸化物の含有量は0.59、チウラム系加硫促進剤の含有量/有機過酸化物の含有量は0.59、及びチウラム系加硫促進剤の含有量/硫黄の含有量は1である。
<実施例2-4>
心線のゴム糊処理に用いるゴム糊について、硫黄を配合していない以外は実施例2-1と同一構成のVリブドベルトを実施例2-4とした。
このゴム糊の固形分において、有機過酸化物の含有量は0.86質量%、及びチウラム系加硫促進剤の含有量は0.50質量%であり、また、チウラム系加硫促進剤の含有量/有機過酸化物の含有量は0.58である。
<比較例2-1>
心線のゴム糊処理に用いるゴム糊について、硫黄及びチウラム系加硫促進剤を配合していない以外は実施例2-1と同一構成のVリブドベルトを比較例2-1とした。
<比較例2-2>
心線のゴム糊処理に用いるゴム糊について、有機過酸化物を配合していない以外は実施例2-1と同一構成のVリブドベルトを比較例2-2とした。
<比較例2-3>
心線のゴム糊処理に用いるゴム糊について、チウラム系加硫促進剤の代わりに、チオカルボニル基を有さないグアニジン系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーDT)を配合した以外は実施例2-1と同一構成のVリブドベルトを比較例2-3とした。
<比較例2-4>
心線のゴム糊処理に用いるゴム糊について、チウラム系加硫促進剤の代わりに、チオカルボニル基を有さないスルフェンアミド系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーCZ−G)を配合した以外は実施例2-1と同一構成のVリブドベルトを比較例2-4とした。
(試験評価方法)
<心線の剥離接着試験>
実施例2-1〜2-4及び比較例2-1〜2-4のそれぞれにおける接着処理を施した心線及び接着ゴム層用の未架橋ゴムシートを用い、試験評価1と同様の心線の剥離接着試験を行った。
また、硫黄架橋系の接着ゴム層用の未架橋ゴムシートの代わりに、EPDM(JSR社製 商品名:EP33)をゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対し、補強材のカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストSO)40質量部、補強材のシリカ(エボニック社製 商品名:ウルトラジルVN3)40質量部、軟化剤のプロセスオイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)15質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛(白水化学社製 酸化亜鉛3種)5質量部、加工助剤のステアリン酸(新日本理化社製 ステアリン酸S50)1質量部、ベンズイミダゾール系老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラックMB)2質量部、共架橋剤(精工化学社製 商品名:ハイクロスM)2質量部、及び架橋剤の有機過酸化物(日油社製 商品名:ペロキシモンF40、純度40質量%)4.3質量部を配合してバンバリーミキサーで混練後、カレンダロールで圧延した有機過酸化物架橋系の未架橋ゴムシートを用いて同様の心線の剥離接着試験を行った。
<ベルト走行試験>
実施例2-1〜2-4及び比較例2-1〜2-4のそれぞれのVリブドベルトBについて、試験評価1と同様のベルト走行試験を行った。
(試験評価結果)
表5及び6は試験結果を示す。
表5及び6によれば、心線の糊ゴム層が、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合されて有機過酸化物により架橋されたEPDMのゴム組成物で形成された実施例2-1〜2-4は、チオカルボニル基を有する加硫促進剤が配合されていない比較例2-1、有機過酸化物により架橋されていない比較例2-2、並びにチオカルボニル基を有する加硫促進剤以外の加硫促進剤が配合された比較例2-3及び2-4と比較すると、硫黄加硫系及び有機過酸化物加硫系のいずれのゴム組成物への接着力も高く、また、ベルト走行の耐久性が高いことが分かる。
本発明は、ゴム部材と接着処理が施された繊維部材とが複合した構造を含むゴム繊維複合体であって、前記接着処理が施された繊維部材は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チウラム系加硫促進剤が配合され、且つ有機過酸化物により架橋されたゴム組成物に接触している。
本発明は、ゴム部材と接着処理が施された繊維部材とが複合した構造を含むゴム繊維複合体の製造方法であって、前記接着処理が施された繊維部材を、エチレン−α−オレフィンエラストマーを主体とするゴム成分に、チウラム系加硫促進剤及び有機過酸化物が配合された未架橋ゴム組成物に接触させ、前記未架橋ゴム組成物を前記有機過酸化物により架橋させるものである。