JP2006134363A - 磁気ランダムアクセスメモリ - Google Patents

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JP2006134363A JP2002220161A JP2002220161A JP2006134363A JP 2006134363 A JP2006134363 A JP 2006134363A JP 2002220161 A JP2002220161 A JP 2002220161A JP 2002220161 A JP2002220161 A JP 2002220161A JP 2006134363 A JP2006134363 A JP 2006134363A
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Naohiko Sugibayashi
直彦 杉林
Yuji Honda
雄士 本田
Noboru Sakimura
昇 崎村
Hisao Matsudera
久雄 松寺
Atsushi Kamijo
敦 上條
Kenichi Shimura
健一 志村
Kaoru Mori
馨 森
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Abstract

【課題】選択セルの選択性を向上し,MRAMの書き込み動作を安定化する技術を提供する。
【解決手段】MRAMは,複数の書き込みワード線3と複数のビット線5とが交差する位置のそれぞれに設けられた複数のメモリセル2と,複数のメモリセル2のそれぞれに対応して設けられた複数の積層フェリ構造体30とを備えている。書き込み動作時,選択の書き込みワード線に流れる書き込み電流Iと選択のビット線5に流れる書き込み電流Iとにより選択セルに対応する積層フェリ構造体30に印加の合成磁場Hxyと,合成磁場Hxyにより選択磁性体構造体に誘起の磁化Mxyと,書き込み電流Iにより第1非選択セルに対応する積層フェリ構造体30に印加の磁場Hと,磁場Hにより非選択セルに対応する積層フェリ構造体30に誘起の磁化Mとは,Mxy/Hxy≠M/Hを満足する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)に関する。本発明は,特に,MRAMの書き込み動作時のメモリセルの選択性を向上するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ランダムアクセスメモリ(Magnetic Random Access Memory:以下、「MRAM」という。)は,高速書き込みが可能であり,且つ,大きな書き換え回数を有する不揮発性メモリとして注目を集めている。
【0003】
図26は,米国特許公報(No.5,640,343)に開示されている,典型的なMRAMを示す。典型的なMRAMは,メモリセル101が行列に配列されたメモリセルアレイを含む。メモリセル101は,x軸方向(ワード線方向)に延設されているワード線102と,y軸方向(ビット線方向)に延設されているビット線103との間に介設される。
【0004】
各メモリセル101は,図27に示されているように,強磁性体で形成されたピン層104及びフリー層105と,ピン層104とフリー層105との間に介設された非磁性のスペーサ層106とにより構成される磁気抵抗素子(スピンバルブ)とを含む。メモリセル101に所望のバイアスを印加するために,ピン層104は,ダイオード107に接合されることがある。非磁性のスペーサ層106が極めて薄い絶縁体である場合,該磁気抵抗素子は,MTJ(Magnetic Tunnel Junction)と呼ばれることがある。強磁性体で形成されるピン層104とフリー層105とは,いずれも,自発磁化(残留磁化)を有する。ピン層104の自発磁化は,+x方向に固定され,フリー層105の自発磁化は,+x方向または−x方向に自在に反転可能である。フリー層105には,異方性が与えられ,その自発磁化がx軸方向に向きやすいように形成されている。
【0005】
メモリセル101は,1ビットのデータを,フリー層105の自発磁化の方向として記憶する。メモリセル101は,ピン層104の自発磁化とフリー層105の自発磁化とが平行である”平行”状態と,ピン層104の自発磁化とフリー層105の自発磁化とが反平行である”反平行”状態の2つの状態を取り得る。メモリセル101は,”平行”状態と,”反平行”状態とのうちの一方を”0”に,他方を”1”に対応付けることにより,1ビットのデータを記憶する。
【0006】
メモリセル101からのデータの読み出しは,磁気抵抗効果によるメモリセル101の抵抗の変化を検知することによって行われる。ピン層104及びフリー層105の自発磁化の方向は,磁気抵抗効果により,メモリセル101の抵抗に影響を及ぼす。ピン層104とフリー層105との自発磁化の向きが平行である場合には,メモリセル101の抵抗は,第1値Rとなり(図27(b)),反平行である場合には,メモリセル101の抵抗は,第2値R+ΔRになる(図27(a))。ゆえに,メモリセル101の抵抗を検知することにより,選択セルに記憶されているデータを検知することができる。
【0007】
メモリセル101のうちの所望の選択セルへのデータの書き込みは,以下の過程によって行われる。図26を参照して,ワード線102のうち,選択セルを交差するワード線が,選択ワード線として選ばれ,ビット線103のうち,選択セルを交差するビット線が,選択ビット線として選ばれる。選択ワード線と選択ビット線とに電流が流され,選択ワード線が発生する磁場と,選択ビット線が発生する磁場との合成磁場により,選択セルのフリー層105の自発磁化が,所望の向きに向けられる。
【0008】
選択ビット線が発生する磁場と選択ワード線が発生する磁場とは,その役割が異なっている。選択ビット線が発生する磁場は,選択セルのフリー層105の自発磁化の向きを決定する。y軸方向に延伸する選択ビット線に電流が流れると,+x方向又は−x方向に磁場が発生し,該磁場により,選択セルのフリー層105の自発磁化の向きは,+x方向又は−x方向に反転される。選択ビット線が交差しないメモリセル101には,フリー層105の自発磁化を反転させる向きの磁場が印加されず,従って,選択ビット線が交差しないフリー層105の自発磁化の向きは保存される。
【0009】
一方,選択ワード線が発生する磁場は,選択セルのフリー層105の自発磁化の反転を容易化する役割を果たす。選択ワード線が発生する磁場の向きは,+y方向又は−y方向であり,フリー層105の自発磁化が向き得る方向と垂直な方向であるから,選択ワード線が発生する磁場は,直接的に,フリー層105の自発磁化の向きを決定するものではない。しかし,フリー層105を構成する強磁性体は,自発磁化の方向と垂直な方向への磁場の印加により,該自発磁化が反転しやすくなるという性質を有している。選択ワード線が発生する磁場は,フリー層105の自発磁化と垂直な方向であり,従って,選択セルのフリー層105の抗磁力を小さくする。
【0010】
一方,選択ビット線が交差するメモリセル101のうち,選択されない非選択セル(ビット線選択ワード線非選択セル)には,選択ワード線が発生する磁場は印加されないから,非選択セルのフリー層105の抗磁力は小さくならない。これは,選択セルと非選択セルとで,フリー層105の抗磁力に差があることを意味する。選択セルと非選択セルとの抗磁力の差は,選択セルに選択的にデータを書き込むことを可能にする。
【0011】
図28は,以上に説明された,選択セルへの選択的なデータ書き込みの原理を示すグラフである。フリー層105の抗磁力は,アステロイドカーブ(磁化反転磁場曲線)と呼ばれる特性を示す。アステロイドカーブの外側の領域にある磁場を印加することは,該磁場が抗磁力を超え,従って,フリー層105の自発磁化が反転されることを意味する。図28のアステロイドカーブは,選択ビット線と選択ワード線とによってx軸及びy軸の両方に45°の方向を向く合成磁場がフリー層105に印加されると,フリー層105の自発磁化は最も容易に反転されることを示している。
【0012】
選択ビット線と選択ワード線とに流れる電流は,選択ビット線と選択ワード線とがそれぞれ発生する磁場の合成磁場が,アステロイドカーブの外側の領域にあり,且つ,選択ビット線と選択ワード線とのそれぞれが単独で発生する磁場が,アステロイドカーブの外側の領域にあるように選択される。選択ビット線と選択ワード線とに流れる電流をこのように選択することにより,選択セルに選択的にデータを書き込むことが可能である。
【0013】
上述されたMRAMのデータの書き込み動作における技術的課題の一つは,消費電力である。上述のように,MRAMのデータの書き込みは,電流によって発生する磁界を用いて自発磁化を反転することによって行われるため,比較的に大きな電流が必要である。この大きな電流は,MRAMのデータの書き込み動作時の消費電力を増大させる。
【0014】
データの書き込み動作時の消費電力を減少するためのMRAMが,公開特許公報(特開2001−273760号公報)に開示されている。当該MRAMは,書き込みを行う電流線の上面,或いは,下面に高透磁率材料からなる高透磁率層を備えている。該高透磁率層は,電流線が発生する磁場をメモリセルに集中させ,データの書き込み時の消費電力を効果的に抑制する。
【0015】
データの書き込み動作時の消費電力を減少するための他のMRAMが,公開特許公報(特開2002−110938号公報)に開示されている。この公報に記載のMRAMは,ワード線の上面及び側面と,ビット線の底面及び側面とに磁性膜を備えている。該磁性膜は,高飽和磁化ソフト磁性材料,又は,金属−非金属ナノグラニュラ材料で形成される。該磁性膜は,磁場をメモリセルに有効に作用させ,データの書き込み時の消費電力を効果的に抑制する。
【0016】
MRAMのデータの書き込み動作における他の技術的課題は,選択セルの選択性である。既述のように,MRAMでは,選択ビット線と選択ワード線とに流れる書き込み電流の大きさをフリー層のアステロイドカーブの形状に合わせて最適に選択することにより,選択セルへの選択的な書き込みが実現されている。従って,選択ビット線と選択ワード線とに流れる書き込み電流と,フリー層のアステロイドカーブとは,高精度に調整される必要がある。しかし,製造工程のバラツキやMRAMの使用環境の変化に起因して,選択ビット線と選択ワード線とに流れる書き込み電流やアステロイドカーブがある程度変動することは避け難い。この変動は,選択セルの選択性を劣化させ,データの書き込み時に,所望でないデータを非選択セルに書き込むような誤動作を発生させることがある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は,選択セルの選択性を向上し,MRAMの書き込み動作を安定化することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
以下に,[発明の実施の形態]で使用される番号・符号を用いて,課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は,[特許請求の範囲]の記載と[発明の実施の形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されている。但し,付加された番号・符号は,[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0019】
本発明による磁気ランダムアクセスメモリは,第1方向(x軸方向)に延伸するように設けられた複数の第1信号線(3,43)と,第1方向(x軸方向)に実質的に垂直な第2方向(y軸方向)に延伸するように設けられた複数の第2信号線(5,44)と,記憶されるデータに応じて磁化方向が反転される自発磁化を有する磁気抵抗素子(7,45)をそれぞれに含み,前記複数の第1信号線(3,43)と前記複数の第2信号線(5,44)とが交差する位置のそれぞれに設けられた複数のメモリセル(2,42)と,前記複数のメモリセル(2,42)のそれぞれに対応して設けられ,誘起される磁化によって,対応する前記メモリセル(2,42)に含まれる前記磁気抵抗素子(7,45)に磁場を印加する複数の磁性体構造体(30,55)とを備えている。前記複数のメモリセル(2,42)のうち,前記複数の第1信号線(3,43)のうちから選択された第1選択信号線と前記複数の第2信号線(5,44)のうちから選択された第2選択信号線とが交差する交点に対応して設けられているメモリセル(2,42)を選択セルと定義し,前記複数の磁性体構造体(30,55)のうち,前記選択セルに対応する磁性体構造体を選択磁性体構造体と定義し,前記第1選択信号線が交差する前記複数のメモリセル(2,42)のうち,前記選択セル以外のメモリセル(2,42)を,第1非選択セルと定義し,前記複数の磁性体構造体(30,55)のうち,前記第1非選択セルに対応する磁性体構造体を,第1非選択磁性体構造体としたとき,書き込み動作のときに前記第1選択信号線に流れる第1書き込み電流(I)と,前記書き込み動作のときに前記第2選択信号線に流れる第2書き込み電流(I)とによって前記選択磁性体構造体に印加される合成磁場Hxyと,前記合成磁場Hxyにより前記選択磁性体構造体に誘起される磁化Mxyと,前記書き込み動作のときに,前記第1書き込み電流(I)によって前記第1非選択磁性体構造体に印加される磁場Hと,前記磁場Hにより前記第1非選択磁性体構造体に誘起される磁化Mとは,下記関係:
xy/Hxy≠M/H
を満足する。この関係を満足することにより,前記選択磁性体構造体が選択セルに印加する磁場と,前記第1非選択磁選択構造体が前記第1非選択セルに印加する磁場との差が増大される。これにより,選択セルに含まれる磁気抵抗素子に印加される磁場と,第1非選択セルに含まれる磁気抵抗素子に印加される磁場との差が増大され,第1非選択セルに対する選択セルの選択性が向上する。
【0020】
前記第2選択信号線が交差する前記複数のメモリセル(2,42)のうち,前記選択セル以外のメモリセルを,第2非選択セルとし,前記複数の磁性体構造体(30,55)のうち,前記第2非選択セルに対応するものを第2非選択磁選択構造体としたとき,前記合成磁場Hxyと,前記磁化Mxyと,前記書き込み動作のときに,前記第2書き込み電流(I)によって前記第2非選択磁選択構造体に印加される磁場Hと,前記磁場Hにより前記第2非選択磁性体構造体に誘起される磁化Mとは,下記関係:
xy/Hxy≠M/H
を満足することが好ましい。これにより,選択セルに含まれる磁気抵抗素子に印加される磁場と,第2非選択セルに含まれる磁気抵抗素子に印加される磁場との差が増大され,第2非選択セルに対する選択セルの選択性が向上する。
【0021】
より具体的には,前記複数の磁性体構造体(30,55)が,前記第1書き込み電流(I)と前記第2書き込み電流(I)とによって前記選択セルに含まれる前記磁気抵抗素子(7,45)に印加される磁場と,前記第1書き込み電流(I)によって前記第1非選択セルに含まれる前記磁気抵抗素子(7,45)に印加される磁場とが強化されるような方向に前記磁化Mxyと前記磁場Mとが誘起されるような位置に配置される場合,前記磁場H,前記合成磁場Hxy,前記磁化M,及び前記磁化Mxyは,
xy/Hxy>M/H
を満足することが好ましい。これにより,選択セルに含まれる磁気抵抗素子に印加される磁場は,第1非選択セルに含まれる磁気抵抗素子に印加される磁場と比較して,選択的に顕著に強化され,第1非選択セルに対する選択セルの選択性が向上する。
【0022】
前記第1信号線(3,43)と前記第2信号線(5,44)とが,前記複数の磁性体構造体(30,55)と前記複数のメモリセル(2,42)との間に位置する場合,前記複数の磁性体構造体(30,55)は,前記選択セルに含まれる前記磁気抵抗素子(7,45)に印加される磁場と,前記第1非選択セルに含まれる前記磁気抵抗素子(7,45)に印加される磁場とを強化するから,前記磁場H,前記合成磁場Hxy,前記磁化M,及び前記磁化Mxyは,上述の通り,
xy/Hxy>M/H
を満足することが好ましい。
【0023】
この場合,前記合成磁場Hxyと,前記磁化Mxyと,前記書き込み動作のときに前記第2書き込み電流(I)によって第2非選択磁選択構造体に印加される磁場Hと,前記磁場Hにより第2非選択磁選択構造体に誘起される磁化Mとは,
xy/Hxy>M/H
を満足することが好ましい。これにより,選択セルに含まれる磁気抵抗素子に印加される磁場は,第2非選択セルに含まれる磁気抵抗素子に印加される磁場と比較して,選択的に顕著に強化され,選択セルの選択性が一層に向上する。
【0024】
また,前記第1書き込み電流(I)と前記第2書き込み電流(I)とによって前記選択セルに含まれる前記磁気抵抗素子(45)に印加される磁場と,前記第1書き込み電流(I)によって前記第1非選択セルに含まれる前記磁気抵抗素子(45)に印加される磁場とが弱められるような方向に前記磁化Mxyと前記磁場Mとが誘起されるような位置に前記複数の磁性体構造体(55)が配置される場合には,前記磁場H,前記合成磁場Hxy,前記磁化M,及び前記磁化Mxyは,
xy/Hxy<M/H
を満足することが好ましい。これにより,第1非選択セルに含まれる磁気抵抗素子(45)に印加される磁場は,選択セルに含まれる磁気抵抗素子(45)に印加される磁場と比較して,選択的に顕著に弱められ,第1非選択セルに対する選択セルの選択性が向上する。
【0025】
前記複数の磁性体構造体(55)と前記複数のメモリセル(42)とが前記第1信号線(43)と前記第2信号線(44)との間に位置する場合,磁性体構造体(55)は,前記選択セルに含まれる前記磁気抵抗素子(45)に印加される磁場と,前記第1書き込み電流(I)によって前記第1非選択セルに含まれる前記磁気抵抗素子(45)に印加される磁場とを弱めるから,前記磁場H,前記合成磁場Hxy,前記磁化M,及び前記磁化Mxyは,
xy/Hxy<M/H
を満足することが好ましい。
【0026】
この場合,前記合成磁場Hxyと,前記磁化Mxyと,前記書き込み動作のときに,前記第2書き込み電流(I)によって前記第2非選択磁選択構造体に印加される磁場Hと,前記磁場Hにより前記第2非選択磁選択構造体に誘起される磁化Mとは,
xy/Hxy<M/H
を満足することが好ましい。これにより,第2非選択セルに含まれる磁気抵抗素子(45)に印加される磁場は,選択セルに含まれる磁気抵抗素子(45)に印加される磁場と比較して顕著に弱められ,選択セルの選択性が一層に向上する。
【0027】
前記複数の磁性体構造体(30,55)のそれぞれは,強磁性体で形成される第1磁性層(31)と,強磁性体で形成される第2磁性層(33)と,前記第1磁性層(31)と第2磁性層(33)との間に介設され,第1磁性層(31)と第2磁性層(33)とが反強磁性的に結合するような膜厚を有する非磁性層(32)を含む積層フェリ構造体(30,55)であることが好ましい。このとき,積層フェリ構造体(30,55)の全体としての磁気モーメントは,前記積層フェリ構造体(30,55)に外部磁場が印加されないとき,実質的に0である,即ち,積層フェリ構造体(30,55)の全体としての残留磁化は,実質的に0であることが好ましい。積層フェリ構造体(30,55)の全体としての残留磁化は,実質的に0であることは,磁気抵抗素子(7,45)にオフセット磁場が発生することを抑制し,MRAMの動作を効果的に安定化する。
【0028】
前記複数の磁性体構造体(30,55)が積層フェリ構造体(30,55)である場合,前記合成磁場Hxyを前記合成磁場Hxyの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H xyよりも大きくし, 前記磁場Hを,前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H よりも小さくすることにより,
xy/Hxy>M/H
を満足させるMRAMが実現される。
【0029】
更に,前記複数の磁性体構造体(30,55)が積層フェリ構造体(30,55)である場合,前記合成磁場Hxyを,前記合成磁場Hxyの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H xyよりも大きくし,前記磁場Hを,前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H よりも小さくし,前記磁場Hを,前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H よりも小さくすることにより,
xy/Hxy>M/H
xy/Hxy>M/H
を満足するMRAMが実現される。
【0030】
この場合,前記磁気抵抗素子(7,45)には,前記磁気抵抗素子(7,45)が有する自発磁化の方向が,前記第1方向(x軸方向)に実質的に一致するように異方性が与えられ,積層フェリ構造体(30,55)には,前記第1磁性層(31)と前記第2磁性層(33)とが有する自発磁化の方向が,前記第1方向(x軸方向)と垂直でない第3方向に向くように異方性が与えられることが好適である。このような磁気抵抗素子(7,45)及び積層フェリ構造体(30,55)は,第1書き込み電流(I)及び第2書き込み電流(I)を,前記合成磁場Hxyが前記合成磁場Hxyの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H xyよりも大きく,前記磁場Hが前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H よりも小さく,且つ,前記磁場Hが前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H より小さくなるように選択することを容易にする。
【0031】
前記第1方向(x軸方向)と前記第3方向とがなす角は,実質的に,45°であることが好ましい。
【0032】
前記合成磁場Hxyの方向は,前記第3方向に対して実質的に垂直であることが好ましい。前記第3方向に対して実質的に垂直な方向は,積層フェリ構造体(30,55)の困難軸方向に一致するから,前記合成磁場Hxyの方向は,前記第3方向に対して実質的に垂直であるとき,前記合成磁場Hxyの方向における閾値磁場H xyは,実質的に0になる。従って,前記合成磁場Hxyが,前記合成磁場Hxyの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H xyよりも大きくなることが保証される。更に,前記磁場Hと前記磁場Hとの方向は,積層フェリ構造体(30,55)の容易軸方向に一致するから,閾値磁場H と閾値磁場H とが最大になる。従って,前記磁場H及び前記磁場Hを,それぞれ,閾値磁場H 及び閾値磁場H よりも小さくすることが容易になる。
【0033】
更に,前記複数の磁性体構造体(55)が積層フェリ構造体(55)である場合,前記合成磁場Hxyを,前記合成磁場Hxyの方向における前記積層フェリ構造体(55)の閾値磁場H xyよりも小さく,前記磁場Hを,前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体(55)の閾値磁場H よりも大きくすることにより,
xy/Hxy<M/H
を満足させるMRAMが実現される。
【0034】
この場合,磁気抵抗素子(45)には,前記磁気抵抗素子(45)が有する自発磁化の方向が,前記第1方向(x軸方向)に実質的に一致するように異方性が与えられ,積層フェリ構造体(55)には,前記第1磁性層(31)と前記第2磁性層(33)とが有する自発磁化の方向が前記第1方向(x軸方向)に実質的に一致するように異方性が与えられることが好ましい。磁気抵抗素子(45)には,製造工程の間に,第1方向に自発分極を向けるための磁場の印加がなされる。このとき,磁気抵抗素子(45)と積層フェリ構造体(55)とに与えられる異方性の方向が一致することにより,磁気抵抗素子(45)の自発分極の向きをそろえる磁場の印加により,積層フェリ構造体(55)にも所望の異方性が与えられ,好適な積層フェリ構造体(55)の特性を得ることを可能にする。
【0035】
前記複数の磁性体構造体(30,55)のそれぞれが,積層フェリ構造体(30,55)である場合,前記合成磁場Hxyを,前記合成磁場Hxyの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H xyよりも小さく,前記磁場Hを,前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H よりも大きく,且つ,前記磁場Hを,前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H よりも大きくすることにより,
xy/Hxy<M/H
xy/Hxy<M/H
を満足させるMRAMが実現される。
【0036】
この場合,前記磁気抵抗素子(45)には,前記磁気抵抗素子(45)が有する自発磁化の方向が,前記第1方向(x軸方向)に実質的に一致するように異方性が与えられ,前記積層フェリ構造体(55)には,前記第1磁性層(31)と前記第2磁性層(33)とが有する自発磁化の方向が,前記第1方向(x軸方向)と垂直でない第3方向に向くように異方性が与えられることが好ましい。これは,前記合成磁場Hxyを,閾値磁場H xyよりも小さく,前記磁場Hを,閾値磁場H よりも大きく,且つ,前記磁場Hを,閾値磁場H よりも大きくすることを容易にする。第1書き込み電流(I)及び第2書き込み電流(I)を,条件:
xy/Hxy<M/H
xy/Hxy<M/H
を満足させるように選択することが容易になる。
【0037】
前記第1方向(x軸方向)と前記第3方向とがなす角は,実質的に,45°であることが好適である。
【0038】
また,前記合成磁場Hxyの方向は,前記第3方向と実質的に同一であることが好適である。前記第3方向は,積層フェリ構造体(30,55)の容易軸方向であるから,前記合成磁場Hxyの方向は,前記合成磁場Hxyの方向における閾値磁場H xyは,最大になる。従って,前記合成磁場Hxyの方向を,前記第3方向と実質的に同一にすることにより,前記合成磁場Hxyが,前記合成磁場Hxyの方向における前記積層フェリ構造体(30,55)の閾値磁場H xyより小さくすることが容易になる。更に,前記磁場Hと前記磁場Hとの方向は,積層フェリ構造体(30,55)の困難軸方向に一致するから,閾値磁場H と閾値磁場H とが実質的に0になる。従って,前記磁場H及び前記磁場Hが,それぞれ,閾値磁場H 及び閾値磁場H よりも大きくなることが保証される。ゆえに,第1書き込み電流(I)及び第2書き込み電流(I)を,条件:
xy/Hxy<M/H
xy/Hxy<M/H
を満足するように選択することが容易になる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下,添付図面を参照しながら,本発明によるMRAMの実施の一形態を説明する。
【0040】
(実施の第1形態)
実施の第1形態のMRAMは,図1に示されているように,メモリセル2が行列に配置されたメモリセルアレイ1を備えている。メモリセルアレイ1には,x軸方向に延伸する書き込みワード線3と,書き込みワード線3に平行して設けられた読み出しワード線4と,y軸方向に延伸するビット線5とが配設されている。x軸方向とy軸方向とは,実質的に垂直である。本明細書において,x軸方向は,x軸の正の方向(+x方向)と,x軸の負の方向(−x方向)との両方を含み,y軸方向は,y軸の正の方向(+y方向)と,y軸の負の方向(−y方向)との両方を含む意味で使用されていることに留意されたい。メモリセル2は,書き込みワード線3とビット線5とが交差する交点にそれぞれ対応して設けられる。
【0041】
メモリセル2は,MOSトランジスタ6と磁気抵抗素子(スピンバルブ)7とを含む。MOSトランジスタ6は,磁気抵抗素子7と接地端子14との間に介設されている。MOSトランジスタ6は,読み出し動作時に,磁気抵抗素子7を接地端子14に接続するために使用される。磁気抵抗素子7は,反転可能な自発磁化を有しており,その自発磁化の方向に応じてデータを保持する。磁気抵抗素子7は,MOSトランジスタ6とビット線5の間に介設されている。磁気抵抗素子7の構造の詳細は,後述される。
【0042】
書き込みワード線3は,書き込みXセレクタ8に接続されている。書き込みXセレクタ8は,書き込み動作時に,書き込みワード線3のうちから選択書き込みワード線を選択する。書き込みXセレクタ8は,X側電流源回路9に接続されている。X側電流源回路9は,書き込み電流Iを生成し,生成した書き込み電流Iを書き込みXセレクタ8を介して選択書き込みワード線に供給する。
【0043】
読み出しワード線4は,読み出しXセレクタ10に接続されている。読み出しXセレクタ10は,読み出し動作時に読み出しワード線4のうちから選択読み出しワード線を選択し,選択読み出しワード線を”High”電位にする。選択読み出しワード線に接続されているMOSトランジスタ6は活性化され,活性化されたMOSトランジスタ6は,磁気抵抗素子7を接地端子14に接続する。磁気抵抗素子7が接地端子14に電気的に接続されている状態で,ビット線5に電圧が印加されると,磁気抵抗素子7に検知電流が流れる。該検知電流から,磁気抵抗素子7の抵抗が検知され,該抵抗から,メモリセル2のデータが判別される。
【0044】
ビット線5は,Yセレクタ11に接続されている。Yセレクタ11は,書き込み動作時,及び読み出し動作時に,複数のビット線5のうちから選択ビット線を選択する。Yセレクタ11は,Y側電流源回路12とセンスアンプ13とに接続されている。Y側電流源回路12は,書き込み電流Iを生成し,選択ビット線に書き込み電流Iを供給する。センスアンプ13は,読み出し動作時に選択ビット線に接続され,磁気抵抗素子7を流れる電流からメモリセル2に記憶されているデータを判別する。
【0045】
図2は,メモリセル2の構造を示す断面図である。MOSトランジスタ6は,半導体基板21の表面部に形成される。MOSトランジスタ6のソース6aは,コンタクト22を介して,接地電位を有する接地線23に接続されている。接地線23は,既述の接地端子14として使用される。MOSトランジスタ6のゲート6bは,既述の読み出しワード線4として使用される。MOSトランジスタ6のドレイン6cは,コンタクト24を介して,y軸方向に延伸する引き出し配線層25に接続されている。磁気抵抗素子7は,引き出し配線層25の上に形成される。
【0046】
図3は,磁気抵抗素子7の構造を詳細に示す拡大断面図である。磁気抵抗素子7は,ピン層26と絶縁バリア27とフリー層28とを含む。ピン層26は,引き出し配線層25の上に形成され,絶縁バリア層27は,ピン層26の上に形成され,フリー層28は,絶縁バリア層27の上に形成される。ピン層26とフリー層28とは,いずれも強磁性体で形成され,それぞれに自発磁化を有している。ピン層26の自発磁化は,+x方向に固定されている。フリー層28の自発磁化は,反転可能であり,+x方向と−x方向との2つの方向を向くことができる。メモリセル2に記憶されるデータは,フリー層28の自発磁化の方向として記憶される。ピン層26とフリー層28との間に介設される絶縁バリア27は,絶縁体で形成される。絶縁バリア27の膜厚は,膜厚方向(z軸方向)にトンネル電流が流れる程度に薄い。
【0047】
図6は,メモリセル2の上面図である。図6に示されているように,磁気抵抗素子7は,半導体基板21に垂直な方向からみたとき,実質的に楕円形である。磁気抵抗素子7の長軸は,x軸方向に平行である。このような構造は,磁気抵抗素子7に,ピン層26及びフリー層27の自発磁化の方向がx軸方向になるような異方性を与える。
【0048】
図2に示されているように,磁気抵抗素子7は,コンタクト29を介してビット線5に接続される。既述の通り,ビット線5は,y軸方向に延伸するように設けられている。
【0049】
ビット線5の上面側には,書き込みワード線3が形成されている。ビット線5と書き込みワード線3とは,層間絶縁膜によって分離される。既述の通り,書き込みワード線3は,x軸方向に延伸するように設けられている。
【0050】
書き込みワード線3の上には,積層フェリ構造体30が形成されている。積層フェリ構造体30は,メモリセル2に一対一に対応して設けられる。後述されるように,積層フェリ構造体30のそれぞれは,それが対応するメモリセル2に含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場を強める作用をする。
【0051】
図4は,積層フェリ構造体30の構造を示している。積層フェリ構造体30は,積層フェリ構造を有しており,図4(a)に示されているように,第1磁性層31と,非磁性スペーサ層32と,第2磁性層33とを含む。第1磁性層31と第2磁性層33とは,いずれも,強磁性体で形成され,第1磁性層31と第2磁性層33との間に介設される非磁性スペーサ層32は,非磁性体で形成される。
【0052】
図6に示されているように,積層フェリ構造体30は,半導体基板21に垂直な方向からみたとき,実質的に円形であり,積層フェリ構造体30は,x−y平面内において等方的な形状を有している。このような構造は,積層フェリ構造体30の磁場−磁化特性をx−y平面内において等方的にする。
【0053】
図4(a)を参照して,積層フェリ構造体30の非磁性スペーサ層32の膜厚tは,第1磁性層31と第2磁性層33とが反強磁性的に結合するように定められる。従って,積層フェリ構造体30に磁場が印加されてない状態では,図4(c)に示されているように,第1磁性層31と第3磁性層33とは,互いに逆の方向の自発分極を有しており,この状態では,積層フェリ構造体30全体の磁化は実質的に0である。即ち,積層フェリ構造体30に磁場が印加されてない状態において,積層フェリ構造体30は,実質的に,磁気モーメントを有しない。
【0054】
第1磁性層31と第2磁性層33とが反強磁性的に結合し,積層フェリ構造体30が全体として磁気モーメントを有しないことは,磁気抵抗素子7のオフセット磁場を小さくする点で好ましい。積層フェリ構造体30が全体として磁気モーメントを有する場合,磁気モーメントが発生する磁場が磁気抵抗素子7に印加される。従って,選択書き込みワード線及び選択ビット線に書き込み電流I,Iが印加されていない状態でも,磁気抵抗素子7には,該磁気モーメントが発生する磁場が印加される。この磁場は,磁気抵抗素子7のフリー層28の自発磁化が反転される反転磁場(抗磁力)を非対称化し,磁気抵抗素子7がオフセット磁場を有する原因となる。磁気抵抗素子7におけるオフセット磁場の存在は,書き込み電流I及びIを増大し,メモリセル2の動作余裕を減少させる点で好ましくない。積層フェリ構造体30が磁気モーメントを有しないことは,磁気抵抗素子7におけるオフセット磁場の発生を効果的に防止する。
【0055】
図5は,第1磁性層31と第2磁性層33との間の結合係数を示すグラフである。結合係数は,第1磁性層31と第2磁性層33とが反強磁性的に結合する場合に正であるように定義されている。非磁性スペーサ層32の膜厚tが0に極めて近い場合,第1磁性層31と第2磁性層33との間の結合係数は,負であり,第1磁性層31と第2磁性層33とが強磁性的に結合する強磁性領域にある。膜厚tが0から増加すると,ある膜厚で結合係数は正になり,第1磁性層31と第2磁性層33とは,反強磁性的に結合するようになる。更に,結合係数は,ある膜厚で極大値をとる。更に膜厚が増加されると,結合係数は,減衰しながら振動する。非磁性スペーサ層32の膜厚tは,第1磁性層31と第2磁性層33との間の結合係数が正であるように定められる。非磁性スペーサ層32の膜厚tのバラツキに対して,第1磁性層31と第2磁性層33との間の反強磁性的な結合が安定であるように,非磁性スペーサ層32の膜厚tは,実質的に,結合係数が極大となるように膜厚を定めることが好適である。
【0056】
図4(b)は,好適な積層フェリ構造体30の構造を示している。好適な積層フェリ構造体30では,第1磁性層31は,NiFe層31aとCoFe層31bとを含み,第2磁性層33は,CoFe層33aとNiFe層33bとを含む。非磁性スペーサ層32は,Ru層で形成される。NiFe層31aの上には,CoFe層31bが形成され,CoFe層31bの上には,Ru層32が形成される。Ru層32の上には,CoFe層33aが形成され,CoFe層33aの上には,NiFe層33bが形成される。
【0057】
このような積層フェリ構造体30の構造は,積層フェリ構造体30の特性の調節が容易であり,従って設計が容易という利点を有している。積層フェリ構造体30の磁化の大きさは,NiFe層31aとNiFe層33bとの厚さによって独立的に決定できる。更に,第1磁性層31と第2磁性層33との間の結合定数はRu層32の厚さによって独立に決定できる。このように,積層フェリ構造体30は,その特性を,NiFe層31a,NiFe層33b及びRu層32の厚さによって自在に決定できる。
【0058】
図7は,このような構造を有する積層フェリ構造体30の磁場−磁化特性を示す。図7(b)は,積層フェリ構造体30の理想的な磁場−磁化特性を示す。積層フェリ構造体30の磁場−磁化特性は,閾値磁場Hより外部磁場が大きい領域と,小さい領域とで,その振る舞いが異なる。閾値磁場Hとは,第1磁性層31と第2磁性層33との間の反強磁性的な結合が実質的に完全に崩れる磁場である。
【0059】
積層フェリ構造体30の全体の磁化Mは,理想的には,外部磁場Hが閾値磁場H未満であるとき極めて小さい。磁化Mは,閾値磁場Hにおいて不連続的に増加し,外部磁場Hが閾値磁場Hを超える領域では,磁化Mは外部磁場Hに対して線形的に増加する。積層フェリ構造体30が,かかる磁場−磁化特性を示すのは,閾値磁場H未満では,第1磁性層31と第2磁性層33との間の反強磁性的な結合によって磁化Mが小さい一方,外部磁場Hが閾値磁場Hを超えると第1磁性層31と第2磁性層33との間の反強磁性結合が強磁性的結合に変化し,積層フェリ構造体30に外部磁場にほぼ比例した磁化Mが発生するためである。
【0060】
しかし,現実には,積層フェリ構造体30は,しばしば,図7(a)に示されているような特性を示す。即ち,積層フェリ構造体30は,外部磁場Hが閾値磁場H未満の領域において,磁場Hに対して磁化Mが非線形的に増加する,下に凸の磁場−磁化特性を示し,外部磁場Hが閾値磁場Hを超える領域では,積層フェリ構造体30の磁化Mは,磁場Hに対して線形的に増加する磁場−磁化特性を示す。特に,図6に示されているような等方的な形状を有する積層フェリ構造体30は,内部に小さな磁区を有しているため,この磁区が発生する磁化により,閾値磁場H未満の領域において図7(a)に示すような非線形的な特性を示す傾向が強い。
【0061】
図7(a),図7(b)のいずれの場合であっても,閾値磁場Hを境界として,積層フェリ構造体30の磁場−磁化特性は,その振る舞いが変わる。後述されるように,このような積層フェリ構造体30の磁場−磁化特性は,メモリセル2の選択性の向上において重要な役割を果たす。
【0062】
閾値磁場Hの調節は,第1磁性層31と第2磁性層33との間の結合係数を調節することにより調節可能である。以下では,磁場の大きさが閾値磁場H未満である領域を非線形磁化領域と呼び,磁場の大きさが閾値磁場Hを超える領域を線形磁化領域と呼ぶ。非線型磁化領域の任意の磁場HNLと,線形磁化領域の任意の磁場Hとを積層フェリ構造体30にそれぞれ印加したときに,積層フェリ構造体30に誘起される磁化MNLと磁化Mとは,下記関係を満足する:
/H>MNL/HNL. …(1)
式(1)は,線形磁化領域における実効的な磁化率χ(=M/H)が,非線形磁化領域における実効的な磁化率χNL(=MNL/HNL)よりも大きいことを意味している。
【0063】
実施の第1形態のMRAMでは,上述の特性を有する積層フェリ構造体30の作用により,書き込み先である選択セルの磁気抵抗素子7に印加される磁場が選択的に大きく増加され,これにより選択セルの選択性が向上されている。以下,その詳細が説明される。
【0064】
図1を参照して,実施の第1形態のMRAMの書き込み動作は,選択セルの選択で開始される。書き込みXセレクタ8により,書き込みワード線3のうちから選択書き込みワード線が選択され,Yセレクタ11により,ビット線5のうちから選択ビット線が選択される。メモリセル2のうち,選択書き込みワード線と選択ビット線との両方が交差するメモリセルが,選択セルとして選択される。以下では,メモリセル2のうち,選択ビット線は交差するが,選択書き込みワード線は交差しない非選択セルは,ビット線選択ワード線非選択セルと記載され,選択書き込みワード線は交差するが,選択ビット線は交差しない非選択セルは,ワード線選択ビット線非選択セルと記載される。
【0065】
選択書き込みワード線と選択ビット線の選択の後,選択書き込みワード線には,X側電流源回路9によって書き込み電流Iが+x方向に流れ,選択ビット線には,Y側電流源回路12によって,書き込み電流Iが+y方向,又は−y方向に流れる。書き込み電流Iの向きは,選択セルに書き込まれるデータに応じて定められる。流れる
【0066】
図2を参照して,+x方向に流れる書き込み電流Iにより,ワード線選択ビット線非選択セルの磁気抵抗素子7には,+y方向の磁場H1yが印加される。更に,+y方向(又は−y方向)に流れる書き込み電流Iにより,ビット線選択ワード線非選択セルの磁気抵抗素子7には,−x方向(又は+x方向)の磁場H1xが印加される。更に,選択セルの磁気抵抗素子7には,上述の磁場H1xと磁場H1yとの合成磁場H1xyが印加される。
【0067】
書き込みワード線3とビット線5とが,積層フェリ構造体30と磁気抵抗素子7との間に位置する場合,上述の積層フェリ構造体30は,書き込み電流I及び書き込み電流Iが流されたときにワード線選択ビット線非選択セル,ビット線選択ワード線非選択セル,及び選択セルの磁気抵抗素子7に印加される磁場を強める作用を有する。例えば,図9を参照して,ワード線選択ビット線非選択セルについて考察する。
【0068】
選択書き込みワード線に+x方向に流れる書き込み電流Iは,図9に示されているように,ワード線選択ビット線非選択セルの磁気抵抗素子7に,+y方向の磁場H1yを印加する。更に,書き込み電流Iは,ワード線選択ビット線非選択セルに対応して設けられた積層フェリ構造体30に−y方向の磁場H2yを印加する。磁場H2yの印加により,積層フェリ構造体30には,−y方向に磁場Mが誘起される。積層フェリ構造体30に誘起される磁化Mは,ワード線選択ビット線非選択セルの磁気抵抗素子7に磁場H3yを印加する。選択書き込みワード線が磁気抵抗素子7と積層フェリ構造体30との間に位置する場合,磁場H3yは磁場H1yと同じく+y方向である。従って,積層フェリ構造体30は,選択書き込みワード線に書き込み電流Iが流されたときに,ワード線選択ビット線非選択セルの磁気抵抗素子7に印加される磁場を強める作用がある。
【0069】
同様の考察により,ビット線選択ワード線非選択セル,及び選択セルにそれぞれ対応して設けられる積層フェリ構造体30は,該ビット線選択ワード線非選択セル,及び該選択セルの磁気抵抗素子7に印加される磁場を強める作用があることは明らかである。
【0070】
このように,積層フェリ構造体30は,磁気抵抗素子7に印加される磁場を強化する作用を有するが,実施の第1形態のMRAMでは,上述された積層フェリ構造体30の磁場−磁化特性を利用して,選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場が,選択的に顕著に強められる。このような動作は,選択セルの選択性を効果的に高める。以下では,積層フェリ構造体30の磁場−磁化特性を利用した,選択セルの選択性の向上の詳細が説明される。
【0071】
以下の説明において,図8(a)に示されているように,選択書き込みワード線及び選択ビット線にそれぞれ流れる書き込み電流I,Iにより,選択セルに対応する積層フェリ構造体30に印加される磁場をH2xyとする。更に,図8(b)に示されているように,選択ビット線に流れる書き込み電流Iにより,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体30に印加される磁場をH2xとする。更に,図8(c)に示されているように,選択書き込みワード線に流れる書き込み電流Iにより,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体30に印加される磁場をH2yとする。磁場H2xyは,磁場H2xと磁場H2yとの合成磁場である。
【0072】
選択セルの選択性の向上は,書き込み電流I,I,及び閾値磁場Hを,図8に示されているように,以下の条件:
2xy>H
2x<H, …(2)
2y<H
を満足するように選択することによって達成されている。即ち,書き込み電流I,Iは,選択セルに対応する積層フェリ構造体30に印加される合成磁場H2xyが線形磁化領域にあり,ビット線選択ワード線非選択セル及びワード線選択ビット線非選択セルにそれぞれ対応する積層フェリ構造体30に印加される磁場H2x,及び磁場H2yが非線型領域にあるように選択される。
【0073】
磁場H2xyが線形磁化領域にあり,且つ,磁場H2x,及び磁場H2yが非線型領域にあるから,式(1)を参照して,
xy/H2xy>M/H2x
xy/H2xy>M/H2y. …(3)
ここで,Mxyは,磁場H2xyを印加したときに選択セルに対応する積層フェリ構造体30に誘起される磁化であり,Mは,磁場H2x ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体30に誘起される磁化であり,Mは,磁場H2yワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体30に誘起される磁化である。
【0074】
式(3)は,選択セルに対応する積層フェリ構造体30の実効的な磁化率χxy(=Mxy/H2xy)が,ビット線選択ワード線非選択セル及びワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体30の実効的な磁化率χ(=M/H2x),χ(=M/H2y)と異なり,大きいことを意味している。
【0075】
積層フェリ構造体30が磁気抵抗素子7に印加する磁場は,積層フェリ構造体30に誘起される磁化の大きさに比例するから,式(3)から,下記式:
3xy/H2xy>H3x/H2x
3xy/H2xy>H3y/H2y, …(4)
即ち,
3xy/H3x>H2xy/H2x
3xy/H3y>H2xy/H2y. …(4)’
が得られる。ここで,H3xyは,選択セルに対応する積層フェリ構造体30が,選択セルの磁気抵抗素子7に印加する磁場であり,H3xは,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体30が該ビット線選択ワード線非選択セルの磁気抵抗素子7に印加する磁場であり,H3yは,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体30が該ワード線選択ビット線非選択セルの磁気抵抗素子7に印加する磁場である。
【0076】
式(4)’は,選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場は,ワード線選択ビット線非選択セル及び該ビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に比べて,顕著に強化されることを意味している。例えば,磁場H2xと磁場H2yとの大きさが等しく,従って,磁場H3xと磁場H3yとが等しい場合を考える。磁場H2xと磁場H2yとの合成磁場である磁場H2xyは,磁場H2x(H2y)の√2倍である。一方,式(4)’から,
3xy>√2H3x(√2H3y), …(5)
である。即ち,選択セルに対応する積層フェリ構造体30が,選択セルの磁気抵抗素子7に印加する磁場H3xyは,ワード線選択ビット線非選択セル(及びビット線選択ワード線非選択セル)に対応する積層フェリ構造体30が,ワード線選択ビット線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加する磁場H3xの√2倍よりも大きい。
【0077】
式(5)は,選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場は,ワード線選択ビット線非選択セル及びビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場に比較して,顕著に強化されることを意味している(図10参照)。選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場が選択的に顕著に強化されることにより,選択セルの選択性が向上されている。
【0078】
このように実施の第1形態では,選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場は,ワード線選択ビット線非選択セル及びビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子7と比較して,選択的に顕著に強化される。選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場が,選択的に強化されることにより,選択セルの選択性が効果的に向上されている。
【0079】
本実施の形態において,積層フェリ構造体30の代わりに,反強磁性体膜で形成された磁性体構造体をメモリセル2のそれぞれに対応して設けることによっても,理論的には同様の効果が得られるはずである。但し,現実的には,反強磁性体の閾値磁場Hが極めて大きいため,選択セルに対応する磁性体構造体に印加される合成磁場H2xyを,閾値磁場Hよりも大きくすることは困難である。積層フェリ構造体30の使用は,上述の作用による選択セルの選択性の向上を現実に可能にする点で好ましい。
【0080】
(実施の第2形態)
図11は,本発明によるMRAMの実施の第2形態を示す。実施の第2形態のMRAMは,メモリセルにトランジスタが含まれない,所謂,クロスポイントセルアレイを含む構成を有する。
【0081】
実施の第2形態のMRAMは,メモリセル42が行列に配置されたクロスポイントセルアレイ41を備えている。クロスポイントセルアレイ41には,x軸方向に延伸するワード線43と,y軸方向に延伸するビット線44とが配設されている。メモリセル2は,ワード線43とビット線44とが交差する交点にそれぞれ対応して設けられる。
【0082】
メモリセル42は,磁気抵抗素子45を含む。磁気抵抗素子45は,反転可能な自発磁化を有しており,その自発磁化の方向に応じてデータを保持する。磁気抵抗素子45のそれぞれは,一のワード線43とビット線44の間に介設されている。
【0083】
ワード線43は,Xセレクタ46に接続されている。Xセレクタ46は,書き込み動作時,及び読み出し動作時に,ワード線43のうちから選択ワード線を選択する。Xセレクタ46は,X側電流源回路47に接続されている。X側電流源回路47は,書き込み電流Iを生成して,選択書き込みワード線に供給する。
【0084】
ビット線44は,Yセレクタ48に接続されている。Yセレクタ48は,書き込み動作時,及び読み出し動作時に,複数のビット線44のうちから選択ビット線を選択する。Yセレクタ48は,Y側電流源回路49とセンスアンプ50とに接続されている。Y側電流源回路49は,書き込み電流Iを生成し,生成した書き込み電流Iを選択ビット線に供給する。センスアンプ50は,読み出し動作時に選択ビット線に接続され,磁気抵抗素子45を流れる電流からメモリセル42に記憶されているデータを判別する。
【0085】
図12は,メモリセル42の構造を示す断面図である。基板51の上に,層間絶縁膜52が形成される。層間絶縁膜52の上には,ビット線44が形成される。既述の通り,ビット線44は,y軸方向に延伸する。ビット線44は,コンタクト53を介して,各メモリセル42の磁気抵抗素子45に接続される。
【0086】
磁気抵抗素子45は,図3に示されている磁気抵抗素子7と同一の断面構造を有している。即ち,磁気抵抗素子45は,+x方向に固定された自発磁化を有するピン層26と,+x方向及び−x方向に反転可能な自発磁化を有するフリー層27と,ピン層27とフリー層27との間に介設されている絶縁バリア28を備えている。
【0087】
図13に示されているように,磁気抵抗素子45は,基板51に垂直な方向からみたとき,実質的に楕円形である。磁気抵抗素子45の長軸は,x軸方向に平行である。このような構造は,磁気抵抗素子45に,ピン層26及びフリー層27の自発磁化の方向がx軸方向になるような異方性を与える。
【0088】
図12に示されているように,磁気抵抗素子45は,コンタクト54を介して,積層フェリ構造体55に接続されている。積層フェリ構造体55は,コンタクト56を介して,ワード線43に接続されている。既述の通り,ワード線43は,x軸方向に延設されている。
【0089】
積層フェリ構造体55は,図4(a),(b)に示されている積層フェリ構造体30と同一の断面構造を有している。積層フェリ構造体55は,第1磁性層31と,第2磁性層33と,第1磁性層31と第2磁性層33との間に介設されている非磁性スペーサ層32とを含む。非磁性スペーサ層32の膜厚は,第1磁性層31と第2磁性層33とが反強磁性的に結合するように選択される。
【0090】
但し,図13に示されているように,積層フェリ構造体55の平面構造は,積層フェリ構造体30の平面構造と異なる。積層フェリ構造体55は,基板51に垂直な方向からみたとき,実質的に楕円形であり,積層フェリ構造体55の長軸は,x軸方向に平行である。
【0091】
積層フェリ構造体55の形状の異方性は,積層フェリ構造体55の磁場−磁化特性に異方性を与える。積層フェリ構造体55の形状の異方性は,積層フェリ構造体55の第1磁性層31と第2磁性層33とがそれぞれに有する自発磁化の方向をx軸方向に向きやすくし,y軸方向には向きにくくする。但し,第1磁性層31と第2磁性層33とは,反強磁性的に結合されているため,第1磁性層31と第2磁性層33との自発磁化は,互いに反平行(anti-parallel)である。自発磁化が向きやすい方向は,容易軸方向と呼ばれ,自発磁化が向きにくい方向は,困難軸方向と呼ばれる。実施の第2形態では,容易軸方向は,x軸方向であり,困難軸方向は,y軸方向である。
【0092】
図14(a)〜(c)は,積層フェリ構造体55の磁場−磁化特性を示す。図14(a)に示されているように,困難軸方向(y軸方向)に外部磁場Hhardが印加される場合,積層フェリ構造体55は,外部磁場Hhardに対して線形的な磁場−磁化特性を示す。
【0093】
一方,図14(b)に示されているように,容易軸方向(x軸方向)に外部磁場Heasyが印加される場合,積層フェリ構造体55は,外部磁場Heasyが閾値磁場Hを超えるか否かに応じて,異なる振る舞いを示す。外部磁場Heasyが閾値磁場H未満である場合,積層フェリ構造体55の内部の反強磁性的な結合が壊れないために磁化が誘起されにくく,積層フェリ構造体55の磁場は実質的に0になる。一方,閾値磁場Hにおいて積層フェリ構造体55の磁化は不連続的に増加し,外部磁場Heasyが閾値磁場Hを超えている領域では,積層フェリ構造体55の磁化は,外部磁場Heasyに対して線形的に増加する。
【0094】
図14(b)は,積層フェリ構造体55の理想的な特性を示している。しかし,積層フェリ構造体55の異方性を高くすることにより,このような理想的な特性に近い特性を積層フェリ構造体55に与えることが可能である。
【0095】
困難軸方向と容易軸方向との間の方向(中間方向)に,外部磁場Hmidが印加される場合,図14(c)に示されているように,積層フェリ構造体55は,図14(a)と図14(b)とに示されている磁場−磁化特性とが折衷された磁場−磁化特性を示す。中間方向に閾値磁場Hより小さい外部磁場Hmidが印加される場合,積層フェリ構造体55は,微少に,且つ,外部磁場Hmidに対して線形的に磁化が誘起される。閾値磁場H midにおいて,積層フェリ構造体55の磁化は,不連続的に増大し,外部磁場Hmidが閾値磁場H midを超えている領域では,積層フェリ構造体55の磁化は,外部磁場Hmidに対して線形的に増加する。閾値磁場H midを超えている領域における積層フェリ構造体55の磁化の増加率は,閾値磁場H mid未満の領域における積層フェリ構造体55の磁化の増加率よりも大きい。
【0096】
中間方向の磁場−磁化特性の閾値磁場Hは,容易軸方向の磁場−磁化特性の閾値磁場Hよりも小さくなる。中間方向の磁場−磁化特性の閾値磁場Hは,外部磁場の方向が,容易軸方向から離れるほど小さくなる。従って,外部磁場Hmidに対する閾値磁場Hの軌跡(H曲線)は,図16(a)〜(c)に示されているような形状になる。
【0097】
実施の第1形態と同様に,磁場が閾値磁場Hよりも大きい領域が,線形磁化領域と定義され,磁場が閾値磁場Hよりも小さい領域が,非線形磁化領域と定義される。但し,困難軸方向に磁場が印加される場合には,磁場の大きさに関わらず磁化が磁場に対して線形的に増加するから,困難軸方向についての閾値磁場Hは,0であるとされる。即ち,困難軸方向については,任意の大きさの磁場が線形磁化領域にある。
【0098】
実施の第2形態では,上述の特性を有する積層フェリ構造体55の作用により,選択セルの選択性が向上されている。以下,その詳細が説明される。
【0099】
図11を参照して,実施の第2形態のMRAMの書き込み動作は,選択セルの選択で開始される。Xセレクタ46により,ワード線43のうちから選択ワード線が選択され,Yセレクタ48により,ビット線44のうちから選択ビット線が選択される。メモリセル42のうち,選択ワード線と選択ビット線との両方が交差するメモリセルが,選択セルとして選択される。実施の第1形態と同様に,メモリセル42のうち,選択ビット線は交差するが,選択ワード線は交差しない非選択セルは,ビット線選択ワード線非選択セルと記載され,選択ワード線は交差するが,選択ビット線は交差しない非選択セルは,ワード線選択ビット線非選択セルと記載される。
【0100】
選択ワード線と選択ビット線の選択の後,選択ワード線には,X側電流源回路47によって書き込み電流Iが+x方向に流され,選択ビット線には,Y側電流源回路49によって書き込み電流Iが+y方向,又は−y方向に流される。書き込み電流Iの向きは,選択セルに書き込まれるデータに応じて定められる。
【0101】
図12を参照して,+x方向に流れる書き込み電流Iにより,ワード線選択ビット線非選択セルの磁気抵抗素子45には,+y方向の磁場H1yが印加される。更に,+y方向(又は−y方向)に流れる書き込み電流Iにより,ビット線選択ワード線非選択セルの磁気抵抗素子45には,−x方向(又は+x方向)の磁場H1xが印加される。更に,選択セルの磁気抵抗素子45には,上述の磁場H1xと磁場H1yとの合成磁場H1xyが印加される。
【0102】
磁気抵抗素子45と積層フェリ構造体55とが,ワード線43とビット線44との間に位置するため,積層フェリ構造体55は,書き込み電流I及び書き込み電Iが流されたときにワード線選択ビット線非選択セル,ビット線選択ワード線非選択セル,及び選択セルの磁気抵抗素子45に印加される磁場を弱める作用を有する。例えば,図15を参照して,ワード線選択ビット線非選択セルについて考察する。
【0103】
選択ワード線に+x方向に流れる書き込み電流Iは,図15に示されているように,ワード線選択ビット線非選択セルの磁気抵抗素子45に,+y方向の磁場H1yを印加する。更に,書き込み電流Iは,ワード線選択ビット線非選択セルに対応して設けられた積層フェリ構造体55に+y方向の磁場H2yを印加する。磁場H2yの印加により,積層フェリ構造体55には,+y方向に磁場Mが誘起される。積層フェリ構造体55に誘起される磁化Mは,ワード線選択ビット線非選択セルの磁気抵抗素子45に磁場H3yを印加する。磁気抵抗素子45と積層フェリ構造体55とが,選択ワード線の同一の側に位置する場合,磁場H3yは磁場H1yと反対の−y方向である。従って,積層フェリ構造体55は,選択ワード線に書き込み電流Iが流されたときに,ワード線選択ビット線非選択セルの磁気抵抗素子45に印加される磁場を弱める作用がある。
【0104】
同様の考察により,ビット線選択ワード線非選択セル,及び選択セルにそれぞれ対応して設けられる積層フェリ構造体55が,該ビット線選択ワード線非選択セル,及び該選択セルの磁気抵抗素子45に印加される磁場を弱める作用を有することが理解される。
【0105】
実施の第2形態のMRAMでは,上述された積層フェリ構造体55の磁場−磁化特性を利用して,ワード線選択ビット線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場が,選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場と比較して,顕著に弱められる。このような動作は,ワード線選択ビット線非選択セルに対する選択セルの選択性を効果的に高める。以下では,積層フェリ構造体55の磁場−磁化特性を利用した,選択セルの選択性の向上の詳細が説明される。
【0106】
図14(a)〜(c)を参照して,実施の第2形態では,選択セルに対応する積層フェリ構造体55と,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55と,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55とは,互いに異なる磁場−磁化特性を有している。
【0107】
選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,選択ビット線に流れる書き込み電流Iによって生成されるx軸方向(容易軸方向)の磁場H2xと,選択ワード線に流れる書き込み電流Iによって生成されるy軸方向(困難軸方向)の磁場H2yとの合成磁場H2xyが印加される。従って,選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,中間方向に磁場が印加されることになる。ゆえに,選択セルに対応する積層フェリ構造体55は,図14(c)に示された磁場−磁化特性を有する。
【0108】
一方,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,y軸方向(困難軸方向)の磁場H2yのみが印加されるから,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55は,図14(a)に示された磁場−磁化特性を有する。
【0109】
更に,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,x軸方向(容易軸方向)の磁場H2xのみが印加されるから,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55は,図14(b)に示された磁場−磁化特性を有する。
【0110】
かかる特性を積層フェリ構造体55が有する場合,書き込み電流I,Iの大きさを,下記条件を満足するように定めることにより,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55のみに大きな磁化を誘起させることが可能である。
2x<H easy, …(6−1)
2xy<H mid. …(6−2)
ここで,H easyは,容易軸方向についての閾値であり,H midは,合成磁場H2xyの方向(中間方向)についての閾値である。
【0111】
ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,困難軸方向(y軸方向)に磁場H2yが印加される。即ち,図16(b)に示されているように,磁場H2yは,線形磁化領域にある。従って,図14(a)から理解されるように,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,磁場H2yに対して線形的に増加する磁化Mが誘起される。
【0112】
一方,式(6−1)に示されているように,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,閾値磁場H easyより小さい磁場H2xが容易軸方向(x軸方向)に印加される。即ち,図16(c)に示されているように,磁場H2xは,非線形磁化領域にある。従って,図14(b)から理解されるように,選択セルに対応する積層フェリ構造体55に誘起される磁化Mは,極めて小さい。
【0113】
更に,式(6−2)に示されているように,選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,閾値磁場H midより小さい磁場H2xyが中間方向に印加される。即ち,図16(a)に示されているように,磁場H2xyは,非線形磁化領域にある。従って,選択セルに対応する積層フェリ構造体55に誘起される磁化Mxyは,極めて小さい。
【0114】
以上の考察から,式(6−1),(6−2)を満足することにより,下記式:
/H2y≫M/H2x(≒0),
/H2y≫Mxy/H2xy(≒0), …(7)
が成立することが理解される。式(7)は,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55の実効的な磁化率χ(=M/H2y)が,選択セル及びビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55の実効的な磁化率χxy(=Mxy/H2xy),χ(=M/H2x)より,顕著に大きいことを意味している。
【0115】
積層フェリ構造体55が磁気抵抗素子45に印加する磁場は,積層フェリ構造体55に誘起される磁化の大きさに比例するから,式(7)は,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55は,選択セル及びビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55よりも顕著に大きな磁場を磁気抵抗素子45に印加することを意味している。
【0116】
既述のように,積層フェリ構造体55により磁気抵抗素子45に印加される磁場は,書き込み電流I,Iにより磁気抵抗素子45に印加される磁場を弱める方向に働くから,図17に示されているように,ワード線選択ビット線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS1は,選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場Hよりも顕著に弱められる。これにより,ワード線選択ビット線非選択セルに対する選択セルの選択性が効果的に向上されている。但し,上記の選択性の向上の原理から理解されるように,実施の第2形態のMRAMでは,ビット線選択ワード線非選択セルに対する選択セルの選択性は,向上されない。
【0117】
以上に説明されているように,実施の第2形態のMRAMでは,ワード線選択ビット線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場が,選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場に比べて,顕著に弱められる。これにより,ワード線選択ビット線非選択セルに対する選択セルの選択性が向上されている。
【0118】
実施の第2形態において,積層フェリ構造体55の長軸をy軸方向に平行にすることにより,ビット線選択ワード線非選択セルに対する選択セルの選択性の変わりに,ワード線選択ビット線非選択セルに対する選択セルの選択性を向上することも可能である。
【0119】
但し,本実施の形態のように,積層フェリ構造体55の長軸をx軸方向に平行にすることが好ましい。上述されているように,磁気抵抗素子45のピン層26とフリー層28との自発磁化は,x軸方向に向けられる。ピン層26とフリー層28との自発磁化をx軸方向に向けるのは,MRAMの製造工程の途中で,外部磁場をx軸方向に印加することによって行われる。x軸方向への外部磁場の印加は,積層フェリ構造体55にx軸方向の異方性を与え,積層フェリ構造体55の容易軸方向の磁場−磁化特性を,図14(b)に示されている理想的な特性に近づける。これは,ワード線選択ビット線非選択セルに対する選択セルの選択性を向上する上で極めて好適である。
【0120】
(実施の第3形態)
実施の第3形態のMRAMは,図18及び図19に示されているように,磁気抵抗素子45と積層フェリ構造体55の配置が変更される。図18に示されているように,メモリセル42の断面構造において,磁気抵抗素子45と積層フェリ構造体55との位置が交換される。更に,図19に示されているように,平面構造において実質的に楕円形である積層フェリ構造体55の長軸は,x軸に対して角θだけ傾けられる。θは,典型的には,45°である。実施の第3形態のMRAMの他の部分の構造は,実施の第2形態と同一である。実施の第3形態のMRAMの等価回路は,図11に示されている実施の第2形態のMRAMの等価回路と同一である。
【0121】
図20に示されているように,積層フェリ構造体55がx軸に対してθだけ傾けられていることにより,積層フェリ構造体55の容易軸方向及び困難軸方向も角θだけ傾けられる。積層フェリ構造体55の容易軸方向は,+x方向に対して角θをなす方向であり,積層フェリ構造体55の困難軸方向は,+y方向に対して角θをなす方向である。ここで,図20に示されているHは,+x方向の磁場であり,Hは,+y方向の磁場であり,Heasyは,容易軸方向の磁場であり,Hhardは,困難軸方向の磁場である。積層フェリ構造体55は,容易軸方向に磁場が印加されたとき,閾値磁場Hが最も大きくなり,困難軸方向に磁場が印加されたとき,閾値磁場Hは,実質的に0である。実施の第2形態と同様,積層フェリ構造体55は,図14(a)〜(c)に示されているように容易軸方向,困難軸方向,及び中間方向に対して異なる磁場−磁化特性を示す。
【0122】
このような積層フェリ構造体55の特性を利用して,実施の第3形態のMRAMの書き込み動作では,ワード線選択ビット線非選択セルとビット線選択ワード線非選択セルとの両方に対する選択セルの選択性が向上される。
【0123】
実施の第3形態のMRAMでは,下記のいずれかの条件を満たすように,選択ワード線及び選択ビット線に,それぞれ書き込み電流I,及びIが流される。
(a)選択ワード線には,+x方向の書き込み電流Iが流され,選択ビット線には,+y方向の書き込み電流Iが流される。
(b)選択ワード線には,−x方向の書き込み電流Iが流され,選択ビット線には,−y方向の書き込み電流Iが流される。
条件(a),(b)のいずれが選択されるかは,書き込まれるデータに応じて決定される。本実施の形態では,選択セルに”0”を書き込む場合に,条件(a)が選択され,選択セルに”1”を書き込む場合に,条件(b)が選択されるとする。
【0124】
書き込み電流I及び書き込み電流Iが流れることにより,ワード線選択ビット線非選択セル,ビット線選択ワード線非選択セル,及び選択セルに含まれる磁気抵抗素子45には,磁場が印加される。
【0125】
実施の第2形態で考察されているように,磁気抵抗素子45と積層フェリ構造体55とが,ワード線43とビット線44との間に位置するため,積層フェリ構造体55は,書き込み電流I及び書き込み電Iが流されたときにワード線選択ビット線非選択セル,ビット線選択ワード線非選択セル,及び選択セルの磁気抵抗素子45に印加される磁場を弱める作用を有する。
【0126】
実施の第3形態のMRAMでは,上述された積層フェリ構造体55の磁場−磁化特性を利用して,ワード線選択ビット線非選択セル及びビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場が,選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場に比べて,顕著に弱められる。このような動作は,ワード線選択ビット線非選択セル及びビット線選択ワード線非選択セルの両方に対する選択セルの選択性を効果的に高める。以下では,積層フェリ構造体55の磁場−磁化特性を利用した,選択セルの選択性の向上の詳細が説明される。
【0127】
以下では,選択セルに”0”を書き込む場合について考察される。選択セルに”0”を書き込む場合には,+x方向の書き込み電流Iにより,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に,+y方向に磁場H2yが印加される。図20(b)に示されているように,磁場H2yは,容易軸方向と困難軸方向の間の中間方向を向く。
【0128】
更に,+y方向の書き込み電流Iにより,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55は,+x方向に磁場H2xが印加される。図20(c)に示されているように,磁場H2xは,容易軸方向と困難軸方向の間の中間方向を向く。
【0129】
選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,+x方向の磁場H2xと+y方向の磁場H2yの合成磁場H2xyが印加される。書き込み電流Iと書き込み電流Iの大きさは,選択セルに対応する磁気抵抗素子55に印加される合成磁場H2xyの方向と,磁気抵抗素子55の容易軸方向とが実質的に一致するように,即ち,合成磁場H2xyが,実質的に,x軸方向と角θをなす方向に向くように決定される。
【0130】
このように書き込み電流Iと書き込み電流Iの大きさが決定される場合,図20(a)に示されているように,選択セルに対応する積層フェリ構造体55には容易軸方向に向く合成磁場H2xyが印加される。従って,選択セルに対応する積層フェリ構造体55は,図14(b)に示された磁場−磁化特性を示す。
【0131】
一方,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,中間方向の磁場H2yのみが印加される。従って,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55は,図14(c)に示された磁場−磁化特性を示す。
【0132】
同様に,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,中間方向の磁場H2xのみが印加される。従って,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55は,図14(c)に示された磁場−磁化特性を示す。
【0133】
このとき,選択セルの選択性を向上するために,書き込み電流Iと書き込み電流Iとは,下記条件を満足するように決定される。
2x>H , …(8−1)
2y>H , …(8−2)
2xy<H easy. …(8−3)
ここで,H easyは,容易軸方向についての閾値であり,H は,磁場H2xの方向(中間方向)についての閾値であり,H は,磁場H2yの方向(中間方向)についての閾値である。合成磁場H2xyの大きさは,磁場H2x及び磁場H2yの大きさより大きいが,容易軸方向についての閾値磁場H easyは,中間方向についての閾値磁場H ,H よりも大きいため,式(8−1)〜(8−3)を満足するように書き込み電流Iと書き込み電流Iとを決定することは可能である。
【0134】
式(8−1)によれば,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,閾値磁場H より大きい磁場H2xが中間方向に印加される。即ち,図20(c)に示されているように,磁場H2xは,線形磁化領域にある。従って,図14(c)から理解されるように,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,磁場H2xに対して線形的に増加する磁化Mが生成される。
【0135】
同様に,式(8−2)によれば,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,閾値磁場H より大きい磁場H2yが中間方向に印加される。即ち,図20(b)に示されているように,磁場H2xは,線形磁化領域にある。従って,図14(c)から理解されるように,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,磁場H2yに対して線形的に増加する磁化Mが誘起される。
【0136】
一方,式(8−3)に示されているように,選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,閾値磁場H eaxyより小さい合成磁場H2xyが容易軸方向に印加される。即ち,図20(a)に示されているように,合成磁場H2xyは,非線型磁化領域にある。従って,選択セルに対応する積層フェリ構造体55に誘起される磁化Mxyは,極めて小さい。
【0137】
以上の考察から,式(8−1)〜(8−3)を満足することにより,下記式:
/H2x≫Mxy/H2xy(≒0),
/H2y≫Mxy/H2xy(≒0), …(9)
が成立することが理解される。式(9)は,ビット線選択ワード線非選択セルとワード線選択ビット線非選択セルとにそれぞれ対応する積層フェリ構造体55の実効的な磁化率χ(=M/H2x),χ(=M/H2y)が,選択セルに対応する積層フェリ構造体55の実効的な磁化率χxy(=Mxy/H2xy)よりも顕著に大きいことを意味している。
【0138】
積層フェリ構造体55が磁気抵抗素子45に印加する磁場は,積層フェリ構造体55に誘起される磁化の大きさに比例するから,式(9)は,ビット線選択ワード線非選択セルとワード線選択ビット線非選択セルとにそれぞれ対応する積層フェリ構造体55は,選択セルに対応する積層フェリ構造体55よりも顕著に大きな磁場を磁気抵抗素子45に印加することを意味している。
【0139】
既述のように,積層フェリ構造体55により磁気抵抗素子45に印加される磁場は,書き込み電流I,Iにより磁気抵抗素子45に印加される磁場を弱める方向に働くから,図21(a)に示されているように,ワード線選択ビット線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS1と,ビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS2とは,選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場Hに比べて,顕著に弱められる。
【0140】
選択セルに”0”を書き込む場合についても,選択セルに”0”を書き込む場合と同様の考察により,図21(b)に示されているように,ワード線選択ビット線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS1と,ビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS2とは,選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場Hに比べて,顕著に弱められることが理解される。
【0141】
以上に説明されているように,実施の第3形態では,ワード線選択ビット線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS1と,ビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS2とが,選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場Hに比べて,顕著に弱められる。これにより,選択セルの選択性が効果的に向上されている。
【0142】
実施の第3形態において,選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される合成磁場H2xyの方向は,容易軸方向に完全に一致することを要求されない。合成磁場H2xyの方向は,中間方向に向くことも可能である。但し,合成磁場H2xyの方向は,磁場H2x及び磁場H2yの方向よりも,容易軸方向に近いことが要求される。更に,合成磁場H2xyは,式(8−3)の代わりに,
2xy<H xy, …(8−3)’
を満足することが要求される。ここで,H xyは,あ,は合成磁場H2xyの方向における積層フェリ構造体55の閾値である。式(8−3)は,合成磁場H2xyが非線型磁化領域にあり,従って,選択セルに対応する積層フェリ構造体55に誘起される磁化Mxyが小さいことを意味している。
【0143】
(実施の第4形態)
図22は,実施の第4形態のMRAMの断面構造を示す。実施の第4形態のMRAMは,実施の第1形態と同様に,各メモリセル2にMOSトランジスタ6が設けられた構造を有しており,実施の第4形態のMRAMの等価回路は,図1に示されている実施の第1形態のMRAMと同一である。
【0144】
実施の第4形態のMRAMと実施の第1形態のMRAMとの違いは,図2に示された実施の第1形態のMRAMの積層フェリ構造体30が,実施の第2形態及び第3形態の積層フェリ構造体55に置換されている点にある。実施の第1形態の積層フェリ構造体30がxy平面において等方的な特性を有しているのに対し,実施の第4形態で使用される積層フェリ構造体55は,図23に示されているように,xy平面において実質的に楕円形であり,xy平面において異方的な特性を有している。実施の第3形態と同様に,積層フェリ構造体55の長軸は,x軸に対して角θだけ傾けられている。θは,典型的には,45°である。積層フェリ構造体55がx軸に対してθだけ傾けられていることにより,積層フェリ構造体55の容易軸方向及び困難軸方向も角θだけ傾けられる。積層フェリ構造体55の容易軸方向は,+x方向に対して角θをなす方向であり,積層フェリ構造体55の困難軸方向は,+y方向に対して角θをなす方向である。
【0145】
実施の第4形態のMRAMでは,積層フェリ構造体55の特性を利用して,選択セルの磁気抵抗素子7に印加される磁場が選択的に強化され,これにより,選択セルの選択性が向上される。以下,その詳細が説明される。
【0146】
実施の第4形態のMRAMのデータの書き込みは,実施の第1形態と同様に,選択書き込みワード線に書き込み電流Iを,選択ビット線に書き込み電流Iを流すことによって行われる。書き込み電流I,書き込み電流Iを流すことにより,選択セル,ワード線選択ビット線非選択セル,及びビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子7には,磁場が印加される。
【0147】
書き込み電流I及び書き込み電流Iを流すことにより,積層フェリ構造体55には磁場が印加され,磁化が誘起される。実施の第4形態のMRAMでは,実施の第1形態と同様に,書き込みワード線3とビット線5とが積層フェリ構造体55と磁気抵抗素子7との間に位置するから,積層フェリ構造体55に誘起される磁化は,磁気抵抗素子7に印加される磁場を強化する役割を果たす。
【0148】
図24(a)は,選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される合成磁場H2xyを示し,図24(b)は,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される磁場H2xを示し,図24(c)は,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される磁場H2yを示している。合成磁場H2xyは,磁場H2xと磁場H2yとの合成磁場である。
【0149】
図24(a)に示されているように,書き込み電流Iと書き込み電流Iとの大きさは,選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される合成磁場H2xyが積層フェリ構造体55の困難軸方向に実質的に一致するように定められている。困難軸方向では閾値磁場Hは0であるから,合成磁場H2xyは,線形磁化領域にある。選択セルに対応する積層フェリ構造体55は,図14(a)に示されている磁化−磁場特性を示し,選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,合成磁場H2xyによって比較的に大きな磁化Mxyが誘起される。
【0150】
更に,書き込み電流Iと書き込み電流Iとの大きさは,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される磁場H2xと,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される磁場H2yとが下記条件:
2x<H , …(10−1)
2y<H , …(10−2)
を満足するように選択される。ここで,H は,磁場H2xの方向(中間方向)についての閾値であり,H は,磁場H2yの方向(中間方向)についての閾値である。
【0151】
式(10−1)によれば,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,閾値磁場H より小さい磁場H2xが中間方向に印加される。即ち,図24(b)に示されているように,磁場H2xは,非線形磁化領域にある。従って,図14(c)から理解されるように,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に誘起される磁化Mは,極めて小さい。
【0152】
同様に,式(10−2)によれば,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55には,閾値磁場H より小さい磁場H2yが中間方向に印加される。即ち,図24(c)に示されているように,磁場H2yは,非線形磁化領域にある。従って,図14(c)から理解されるように,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に誘起される磁化Mは,極めて小さい。
【0153】
以上の考察から,式(10−1),(10−2)を満足することにより,下記式:
xy/H2xy≫M/H2x(≒0),
xy/H2xy≫M/H2y(≒0), …(11)
が成立することが理解される。式(11)は,選択セルに対応する積層フェリ構造体55の実効的な磁化率χxy(=Mxy/H2xy)が,ビット線選択ワード線非選択セルとワード線選択ビット線非選択セルとにそれぞれ対応する積層フェリ構造体55の実効的な磁化率χ(=M/H2x),χ(=M/H2y)よりも顕著に大きいことを意味している。
【0154】
積層フェリ構造体55が磁気抵抗素子7に印加する磁場は,積層フェリ構造体55に誘起される磁化の大きさに比例するから,式(11)は,選択セルに対応する積層フェリ構造体55は,ビット線選択ワード線非選択セルとワード線選択ビット線非選択セルとにそれぞれ対応する積層フェリ構造体55よりも,顕著に大きな磁場を磁気抵抗素子7に印加することを意味している。
【0155】
既述のように,積層フェリ構造体55により磁気抵抗素子7に印加される磁場は,書き込み電流I,Iにより磁気抵抗素子7に印加される磁場を強める方向に生成される。従って,図24に示されているように,選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場Hは,ワード線選択ビット線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場HUS1とビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場HUS2とに比べて,顕著に強化される。これにより,選択セルの選択性が効果的に向上されている。
【0156】
【発明の効果】
本発明により,選択セルの選択性を向上し,MRAMの書き込み動作を安定化する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は,本発明による実施の第1形態のMRAMの等価回路を示す。
【図2】図2は,実施の第1形態のMRAMのメモリセルの断面図である。
【図3】図3は,磁気抵抗素子7を示す。
【図4】図4は,積層フェリ構造体30を示す。
【図5】図5は,第1磁性層31と第2磁性層33との間の結合定数を示す。
【図6】図6は,磁気抵抗素子7と積層フェリ構造体30との構造を示す平面図である。
【図7】図7は,積層フェリ構造体30の特性を示す。
【図8】図8(a)は,選択セルに対応する積層フェリ構造体30に印加される合成磁場H2xyを示し,図8(b)は,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体30に印加される磁場H2xを示し,図8(c)は,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体30に印加される合成磁場H2yを示す。
【図9】図9は,磁気抵抗素子7に作用する磁場H1y,H2y,及びH3yを示す。
【図10】図10は,選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場Hと,ワード線選択ビット線非選択セル,及びビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場HUSを示す。
【図11】図11は,本発明による実施の第2形態のMRAMの等価回路を示す。
【図12】図12は,実施の第2形態のMRAMのメモリセルの断面図である。
【図13】図13は,実施の第2形態における磁気抵抗素子45と積層フェリ構造体55との配置を示す平面図である。
【図14】図14(a)は,積層フェリ構造体55の困難軸方向の磁場−磁化特性を示し,図14(b)は,積層フェリ構造体55の容易軸方向の磁場−磁化特性を示し,図14(c)は,積層フェリ構造体55の中間方向の磁場−磁化特性を示す。
【図15】図15は,磁気抵抗素子45に作用する磁場H1y,H2y,及びH3yを示す。
【図16】図16(a)は,選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される合成磁場H2xyを示し,図16(b)は,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される磁場H2yを示し,図16(c)は,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される合成磁場H2xを示す。
【図17】図17は,選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場Hと,ワード線選択ビット線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS1と,ビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS2とを示す。
【図18】図18は,実施の第3形態のMRAMのメモリセル42の断面図である。
【図19】図19は,実施の第3形態における磁気抵抗素子45と積層フェリ構造体55との配置を示す。
【図20】図20(a)は,実施の第3形態において,選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される合成磁場H2xyを示し,図20(b)は,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される合成磁場H2yを示し,図20(c)は,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される合成磁場H2xを示す。
【図21】図21(a)は,”0”書き込み時に,選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場Hと,ワード線選択ビット線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS1と,ビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS2とを示し,図21(b)は,”1”書き込み時に,選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場Hと,ワード線選択ビット線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS1と,ビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子45に印加される磁場HUS2とを示す。
【図22】図22は,実施の第4形態のMRAMのメモリセル2の断面図である。
【図23】図23は,実施の第4形態における磁気抵抗素子7と積層フェリ構造体55との配置を示す平面図である。
【図24】図24(a)は,実施の第4形態において,選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される合成磁場H2xyを示し,図23(b)は,ビット線選択ワード線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される合成磁場H2xを示し,図23(c)は,ワード線選択ビット線非選択セルに対応する積層フェリ構造体55に印加される合成磁場H2yを示す。
【図25】図25は,実施の第4形態において,選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場Hと,ワード線選択ビット線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場HUS1と,ビット線選択ワード線非選択セルに含まれる磁気抵抗素子7に印加される磁場HUS2とを示す。
【図26】図26は,従来のMRAMを示す。
【図27】図27は,従来のMRAMのメモリセルの構造を示す断面図である。
【図28】図28は,従来のMRAMの選択セルへの書き込みの原理を示す説明図である。
【符号の説明】
1:メモリセルアレイ
2:メモリセル
3:書き込みワード線
4:読み出しワード線
5:ビット線
6:MOSトランジスタ
7:磁気抵抗素子
8:書き込みXセレクタ
9:X側電流源回路
10:読み出しXセレクタ
11:Yセレクタ
12:Y側電流源回路
13:センスアンプ
14:接地端子
21:基板
22:コンタクト
23:接地線
24:コンタクト
25:引き出し配線層
26:ピン層
27:絶縁バリア
28:フリー層
29:コンタクト
30:積層フェリ構造体
31:第1磁性層
31a:NiFe層
31b:CoFe層
32:非磁性スペーサ層(Ru層)
33:第2磁性層
33a:CoFe層
33b:NiFe層
41:クロスポイントセルアレイ
42:メモリセル
43:ワード線
44:ビット線
45:磁気抵抗素子
46:Xセレクタ
47:X側電流源回路
48:Yセレクタ
49:Y側電流源回路
50:センスアンプ
51:基板
52:層間絶縁膜
53,54:コンタクト
55:積層フェリ構造体
56〜58:コンタクト

Claims (21)

  1. 第1方向に延伸するように設けられた複数の第1信号線と,前記第1方向に実質的に垂直な第2方向に延伸するように設けられた複数の第2信号線と,
    記憶されるデータに応じて磁化方向が反転される自発磁化を有する磁気抵抗素子をそれぞれに含み,前記複数の第1信号線と前記複数の第2信号線とが交差する位置のそれぞれに設けられた複数のメモリセルと,
    前記複数のメモリセルのそれぞれに対応して設けられ,誘起される磁化によって,対応する前記メモリセルに含まれる前記磁気抵抗素子に磁場を印加する複数の磁性体構造体
    とを備え,
    前記複数のメモリセルのうち,前記複数の第1信号線のうちから選択された第1選択信号線と,前記複数の第2信号線のうちから選択された第2選択信号線とが交差する交点に対応して設けられているメモリセルを選択セルとし,
    前記複数の磁性体構造体のうち,前記選択セルに対応する磁性体構造体を選択磁性体構造体とし,
    前記第1選択信号線が交差する前記複数のメモリセルのうち,前記選択セル以外のメモリセルを,第1非選択セルとし,
    前記複数の磁性体構造体のうち,前記第1非選択セルに対応する磁性体構造体を,第1非選択磁性体構造体としたとき,
    書き込み動作のときに前記第1選択信号線に流れる第1書き込み電流と,前記書き込み動作のときに前記第2選択信号線に流れる第2書き込み電流とによって前記選択磁性体構造体に印加される合成磁場Hxyと,前記合成磁場Hxyにより前記選択磁性体構造体に誘起される磁化Mxyと,前記書き込み動作のときに,前記第1書き込み電流によって前記第1非選択磁性体構造体に印加される磁場Hと,前記磁場Hにより前記第1非選択磁性体構造体に誘起される磁化Mとは,下記関係:
    xy/Hxy≠M/H
    を満足する
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  2. 請求項1に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記第2選択信号線が交差する前記複数のメモリセルのうち,前記選択セル以外のメモリセルを,第2非選択セルとし,
    前記複数の磁性体構造体のうち,前記第2非選択セルに対応する磁性体構造体を第2非選択磁性体構造体としたとき,
    前記合成磁場Hxyと,前記磁化Mxyと,前記書き込み動作のときに,前記第2書き込み電流によって前記第2非選択磁性体構造体に印加される磁場Hと,前記磁場Hにより前記第2非選択磁性体構造体に誘起される磁化Mとは,
    下記関係:
    xy/Hxy≠M/H
    を満足する
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  3. 請求項1に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記複数の磁性体構造体は,前記第1書き込み電流と前記第2書き込み電流とによって前記選択セルに含まれる前記磁気抵抗素子に印加される磁場と,前記第1書き込み電流によって前記第1非選択セルに含まれる前記磁気抵抗素子に印加される磁場とが強化されるような方向に前記磁化Mxyと前記磁場Mとが誘起されるような位置に配置され,
    前記磁場H,前記合成磁場Hxy,前記磁化M,及び前記磁化Mxyは,
    xy/Hxy>M/H
    を満足する
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  4. 請求項1に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記第1信号線と前記第2信号線とは,前記複数の磁性体構造体と前記複数のメモリセルとの間に位置し,
    前記磁場H,前記合成磁場Hxy,前記磁化M,及び前記磁化Mxyは,
    xy/Hxy>M/H
    を満足する
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  5. 請求項4に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記第2選択信号線が交差する前記複数のメモリセルのうち,前記選択セル以外のメモリセルを,第2非選択セルとし,
    前記複数の磁性体構造体のうち,前記第2非選択セルに対応するものを第2非選択磁性体構造体としたとき,
    前記合成磁場Hxyと,前記磁化Mxyと,前記書き込み動作のときに前記第2書き込み電流によって前記第2非選択磁性体構造体に印加される磁場Hと,前記磁場Hにより前記第2非選択磁性体構造体に誘起される磁化Mとは,
    xy/Hxy>M/H
    を満足する
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  6. 請求項1に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記複数の磁性体構造体は,前記第1書き込み電流と前記第2書き込み電流とによって前記選択セルに含まれる前記磁気抵抗素子に印加される磁場と,前記第1書き込み電流によって前記第1非選択セルに含まれる前記磁気抵抗素子に印加される磁場とが弱められるような方向に前記磁化Mxyと前記磁場Mとが誘起されるような位置に配置され,
    前記磁場H,前記合成磁場Hxy,前記磁化M,及び前記磁化Mxyは,
    xy/Hxy<M/H
    を満足する
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  7. 請求項1に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記複数の磁性体構造体と前記複数のメモリセルとは,前記第1信号線と前記第2信号線との間に位置し,
    前記磁場H,前記合成磁場Hxy,前記磁化M,及び前記磁化Mxyは,
    xy/Hxy<M/H
    を満足する
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  8. 請求項7に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記第2選択信号線が交差する前記複数のメモリセルのうち,前記選択セル以外のメモリセルを,第2非選択セルとし,
    前記複数の磁性体構造体のうち,前記第2非選択セルに対応するものを第2非選択磁選択構造体としたとき,
    前記合成磁場Hxyと,前記磁化Mxyと,前記書き込み動作のときに,前記第2書き込み電流によって前記第2非選択磁選択構造体に印加される磁場Hと,前記磁場Hにより前記第2非選択磁選択構造体に誘起される磁化Mとは,
    xy/Hxy<M/H
    を満足する
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  9. 請求項1から請求項8に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記複数の磁性体構造体のそれぞれは,強磁性体で形成される第1磁性層と,強磁性体で形成される第2磁性層と,前記第1磁性層と第2磁性層との間に介設され,前記第1磁性層と第2磁性層とが反強磁性的に結合するような膜厚を有する非磁性層を含む積層フェリ構造体である
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  10. 請求項9に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記積層フェリ構造体の全体としての磁気モーメントは,前記積層フェリ構造体に外部磁場が印加されないとき,実質的に0である
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  11. 請求項3又は請求項4に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記複数の磁性体構造体のそれぞれは,強磁性体で形成される第1磁性層と,強磁性体で形成される第2磁性層と,前記第1磁性層と第2磁性層との間に介設され,前記第1磁性層と第2磁性層とが反強磁性的に結合するような膜厚を有する非磁性層を含む積層フェリ構造体であり,
    前記合成磁場Hxyは,前記合成磁場Hxyの方向における前記積層フェリ構造体の閾値磁場H xyよりも大きく,
    前記磁場Hは,前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体の閾値磁場H よりも小さい
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  12. 請求項5に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記複数の磁性体構造体のそれぞれは,強磁性体で形成される第1磁性層と,強磁性体で形成される第2磁性層と,前記第1磁性層と第2磁性層との間に介設され,前記第1磁性層と第2磁性層とが反強磁性的に結合するような膜厚を有する非磁性層を含む積層フェリ構造体であり,
    前記合成磁場Hxyは,前記合成磁場Hxyの方向における前記積層フェリ構造体の閾値磁場H xyよりも大きく,
    前記磁場Hは,前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体の閾値磁場H よりも小さく,
    前記磁場Hは,前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体の閾値磁場H よりも小さい
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  13. 請求項12に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記磁気抵抗素子には,前記磁気抵抗素子が有する自発磁化の方向が,前記第1方向に実質的に一致するように異方性が与えられ,
    前記積層フェリ構造体には,前記第1磁性層と前記第2磁性層とが有する自発磁化の方向が,前記第1方向と垂直でない第3方向に向くように異方性が与えられた
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  14. 請求項13に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記前記第1方向と前記第3方向とがなす角は,実質的に,45°である
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  15. 請求項13に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記合成磁場Hxyの方向は,前記第3方向に対して実質的に垂直である
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  16. 請求項6又は請求項7に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記複数の磁性体構造体のそれぞれは,強磁性体で形成される第1磁性層と,強磁性体で形成される第2磁性層と,前記第1磁性層と第2磁性層との間に介設され,前記第1磁性層と第2磁性層とが反強磁性的に結合するような膜厚を有する非磁性層を含む積層フェリ構造体であり,
    前記合成磁場Hxyは,前記合成磁場Hxyの方向における前記積層フェリ構造体の閾値磁場H xyよりも小さく,
    前記磁場Hは,前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体の閾値磁場H よりも大きい
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  17. 請求項16に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記磁気抵抗素子には,前記磁気抵抗素子が有する自発磁化の方向が,前記第1方向に実質的に一致するように異方性が与えられ,
    前記積層フェリ構造体には,前記第1磁性層と前記第2磁性層とが有する自発磁化の方向が前記第1方向に実質的に一致するように異方性が与えられた
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  18. 請求項8に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記複数の磁性体構造体のそれぞれは,強磁性体で形成される第1磁性層と,強磁性体で形成される第2磁性層と,前記第1磁性層と第2磁性層との間に介設され,前記第1磁性層と第2磁性層とが反強磁性的に結合するような膜厚を有する非磁性層を含む積層フェリ構造体であり,
    前記合成磁場Hxyは,前記合成磁場Hxyの方向における前記積層フェリ構造体の閾値磁場H xyよりも小さく,
    前記磁場Hは,前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体の閾値磁場H よりも大きく,
    前記磁場Hは,前記磁場Hの方向における前記積層フェリ構造体の閾値磁場H よりも大きい
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  19. 請求項18に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記磁気抵抗素子には,前記磁気抵抗素子が有する自発磁化の方向が,前記第1方向に実質的に一致するように異方性が与えられ,
    前記積層フェリ構造体には,前記第1磁性層と前記第2磁性層とが有する自発磁化の方向が,前記第1方向と垂直でない第3方向に向くように異方性が与えられた
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  20. 請求項19に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記前記第1方向と前記第3方向とがなす角は,実質的に,45°である
    磁気ランダムアクセスメモリ。
  21. 請求項19に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
    前記合成磁場Hxyの方向は,前記第3方向と実質的に同一である
    磁気ランダムアクセスメモリ。
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