JP2006128067A - 非水電解質二次電池用負極及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用負極及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された高性能の非水電解質二次電池を安定して効率的に実現し得る非水電解質二次電池用負極を提供する。
【解決手段】Si中に元素Zが非平衡的に存在した相の、一般式SiZで表される化合物を主成分とする活物質薄膜を有する非水電解質二次電池用負極。一般式SiZにおいて、Zは、B、C及びNの少なくとも1種の元素。Mは、Siと元素Z以外の特定の元素。xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Si(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値。yは、0≦y≦0.50の範囲の数。
【選択図】なし

Description

本発明は、Si中に元素Zが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする活物質薄膜を有する非水電解質二次電池用負極であって、上記化合物が一般式SiZ(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表されることを特徴とする非水電解質二次電池用負極及びその製造方法、並びにこの非水電解質二次電池用負極を用いた非水電解質二次電池に関する。
(1)元素Zは、B、C及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素である。
(2)元素MはSiと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族から選ばれる少なくとも1種の元素である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Si(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
(4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
詳しくは、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された非水電解質二次電池用負極及びその製造方法と、この非水電解質二次電池用負極を用いた非水電解質二次電池に関する。
近年、電子機器の小型化に伴い、高容量の二次電池が必要になってきている。特に、ニッケル・カドミウム、ニッケル・水素電池に比べ、よりエネルギー密度の高い非水溶媒系リチウム二次電池が注目されてきている。リチウム二次電池の高容量化についても、従来、広く検討されていたが、近年、電池に要求される性能も高度化してきており、更なる高容量化が必要とされている。
リチウム二次電池の負極材料としては、これまで黒鉛などが検討されている。黒鉛はサイクル特性に優れ、電極膨張が小さく、且つ、安価であるために使用されてきた。しかしながら、黒鉛からなる負極材料は理論容量が372mAh/gという限界があり、更なる高容量化は期待出来ない。そこで、近年は黒鉛負極の代わりに理論容量が大きなリチウムと合金を形成するSi、Sn、Al等の合金系負極の検討がなされている。特にSiは容量が高く、負極としての適用が数多く試みられている。しかしながら、Si系負極はリチウムとの反応時に体積膨張が大きく、Siが微粉化したり、集電体から剥離しやすく、且つ、電解液との反応性が高く、サイクル特性が悪いという欠点がある。このため、合金系負極の高容量を活かしつつ、電解液との反応性が抑制された、サイクル特性に優れた、電極膨張の小さい負極の実現が求められている。
こうした中で、特許文献1には、Si等を蒸着やスパッタ法で銅箔基板状へ成膜することにより、電気抵抗が低く集電性が高く、高電圧、高容量で充放電特性に優れたリチウム二次電池を得ることが記載されている。
また、特許文献2には、Li中にSiとCが原子レベルで混合された薄膜負極や、LiシートにSiCを複合化した負極とすることにより、デンドライトの発生を抑制し、高容量でサイクル特性に優れたリチウム二次電池を得ることが記載されている。
また、特許文献3には、微結晶又は非晶質シリコン薄膜の少なくとも表面に、周期律表4,5,6周期のIIIa、IVa、Va、VIa、VIIa、VIII、Ib、IIb族の元素の少なくとも1種を含むことにより、サイクル特性が向上した電極を得ることが記載されている。
また、特許文献4には、微結晶又は非晶質シリコン薄膜に、C,O,N,Ar,Fから選ばれる少なくとも1種を、不純物として添加することにより、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を得ることが記載されている。
また、特許文献5には、硼素化物SiB(n=3.2〜6.6)粒子を負極とすることで、安全で、高容量、高電圧なリチウム二次電池を得ることが記載されている。
特開平11−135115号公報 特開平7−302588号公報 特開2003−7295号公報 WO01/56099号公報 特開平8−138744号公報
近年の電池に対する更なる高容量化の必要性の増大に伴い、高容量であるSi系負極材の活用が望まれているが、Si系負極材では以下のような課題がある。
(1) 電解液との反応に伴う不可逆容量が増加し、正極活物質中のリチウムを消費し、結果として電池容量が低下する。
(2) リチウムの挿入・脱離による膨張・収縮に伴うSi微粉化や集電体からの剥離が生じ、サイクル特性が悪化する。
(3) サイクル中に電解液との反応により、充放電可能な活物質量が減少し、サイクル特性が悪化する。
(4) サイクル中にリチウムの挿入による電極膨張が蓄積し、電池体積の増加、つまり体積当たりの電池容量の低下を招く。
従って、リチウム二次電池の更なる高容量化においては、Si系活物質を用いることによる高容量化だけでなく、電解液との反応を抑制し、初期及びサイクル中の充放電効率の向上、サイクル特性の向上、サイクル後の電極膨張の増加を抑制することが強く求められている。
しかしながら、特許文献1で、Siを蒸着法やスパッタ法で成膜した負極の場合、充放電に伴う電極膨張の蓄積を抑えることが難しく、体積当たりの電池容量が低下する問題や、サイクル特性が低下する問題がある。
また、特許文献2においては、Li組成が70〜99.9モル%と高い負極であるため、LiとSi、CをプラズマCVDで成膜した負極や、LiシートとSiC粒子を複合化した負極であっても、SiとCの含有量が少ないために電解液との反応抑制が不十分であり、サイクル特性が悪く、且つ、金属Liが主成分であるために安全性に大きな課題がある。
また、特許文献3のように、Si薄膜の少なくとも表面に、周期律表4,5,6周期のIIIa、IVa、Va、VIa、VIIa、VIII、Ib、IIb族の内の少なくとも1種を含むことで、Si薄膜よりもサイクル特性を改善することはできるが、添加元素にB,C,Nを含まないために、Siの充放電に伴う電極膨張の蓄積や電解液との反応性を抑制し難く、サイクル特性を更に改善するには不十分である。
また、特許文献4のように、Si薄膜にC,O,N,Ar,Fの内の少なくとも1種を添加することで、Si薄膜よりもサイクル特性は改善できるが、不純物にC,Nを用いても、ドープ量が後述する本発明の添加量に比べ2〜3原子%と少ないために、Siの充放電に伴う電極膨張の蓄積や電解液との反応性を抑制し難く、サイクル特性を更に改善するには不十分である。
また、特許文献5においては、SiBを含む硼素化物粒子を負極に用いることで、1500mAh/gの容量を得ているが、Bの含有量が多いため更なる高容量化は期待できず、且つ、活物質が粒子状であるために、サイクル中のSi部分の膨張収縮に伴う集電体との導電パス切れが起こりやすく、サイクル劣化を更に改善するには不十分である。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたものである。
即ち、本発明は、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された非水電解質二次電池用負極及びその製造方法と、この非水電解質二次電池用負極を用いた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、Siを含む薄膜負極について鋭意検討した結果、サイクル中にSiと電解液が反応することで劣化が進行することが明らかとなり、電解液との反応性に富むSiに、
(i) B、C、及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素Zを、
(ii) 非平衡的に特定範囲の濃度で、
存在させると、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiaZp(式中a,pは整数)等の形成がほとんど無いか、又は、形成されても非常に少ないものとなり、後述するSiの活量を効果的に低下させ、電解液との反応性を抑制し、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された高性能の非水電解質二次電池を安定して効率的に実現し得ることを見出し、本発明を完成させた。
ここで、活量について説明する。
一般に、活量とは、一種の熱力学濃度である。物質量n、n、、、、、からなる多成分系について、成分iの化学ポテンシャルをμ、純物質の化学ポテンシャルをμ とすると、
μ−μ =RTlog a
で定義されるaを活量と呼ぶ。
また、活量aiと濃度ciの比γi
ai/ci=γi
を活量係数と呼ぶ。
例えば、溶媒と溶質からなるある系を熱力学的な溶液として考えた場合に、活量係数は、系を理想溶液と考えた場合のある成分の化学ポテンシャルと、系を実在溶液と考えた場合のある成分の真の化学ポテンシャルとの差に対応する量である。(1)ある成分iが溶質である実在溶液の場合、溶質の濃度が低くなると、系は成分iが溶質の理想溶液に近づき、活量係数は1に近づいていく。反対に、(2)ある成分iが溶媒である実在溶液の場合、溶媒の濃度が高くなると、系は成分iが溶媒の理想溶液に近づき、活量係数は1に近づいていく。また、成分iの化学ポテンシャルが、実在溶液の方が理想溶液よりも安定なときはγi<1となる。
本発明においては、成分iはSiであり、溶媒とみなされるSi中に、溶質とみなされる元素Zを含むことで溶媒Siの活量aiが低下し、γi<1となり、元素Zを含有したSi化合物(固溶体:実在溶液と見なす)の方がSi(理想溶液と見なす)よりも安定となり、この結果、電解液との反応性が抑制されていると考えられる。
但し、Siと元素Zの平衡的に存在する化合物Si等を形成すると、Siの活量を効率的に低下させることができないので、元素ZはSi中に非平衡的に存在することが重要となる。
即ち、本発明の要旨は、Si中に元素Zが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする活物質薄膜を有する非水電解質二次電池用負極であって、上記化合物が一般式SiZ(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表されることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項1)。
(1)元素Zは、B、C及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素である。
(2)元素MはSiと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族から選ばれる少なくとも1種の元素である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Si(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
(4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
なお、本発明におけるSiに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Siは、Siと元素Zの相図(例えば、ASM International社出版の「Desk Handbooks Phase Diagrams for Binary Alloys」)に記載されており、本発明では、このSiのZ濃度(p/(a+p))に対して、上述のZ濃度比Q(Z)を設定してxを定義する。
ここで言う、平衡的に存在する化合物とは、前記相図等に線図の頂として記載されている化合物Si(式中a,pは整数)等の定比化合物のことであり、例えば、ZがBである場合には、SiB、SiB、SiBなどが定比化合物として知られており、これらは平衡的に存在する化合物である。また、定比化合物の混合物も、やはり平衡的に存在する化合物と考えられる。従って、ZがBである場合には、SiBが本発明のSiに相当する。
また、例えば、ZがCである場合には、SiCが安定な化合物として知られており、本発明に於いてはこの化合物を平衡的に存在する化合物とする。従って、ZがCである場合には、SiCが本発明のSiに相当する。
また、例えば、ZがNである場合には、Siが最も安定な化合物として知られているが、Si、SiNも定比化合物として存在することが知られており、本発明に於いてはこれらの全ての化合物を平衡的に存在する化合物とする。従って、ZがNである場合には、SiNが本発明のSiに相当する。
一方、非平衡に存在する化合物とは、平衡的に存在する化合物以外の化合物を指す。非平衡に存在する化合物の場合には、特定の定比化合物を形成せず、Si原子とZ原子がマクロに見ると均一に分散している。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極において、集電体と、該集電体から連続的に成膜された前記活物質薄膜からなることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項2)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極において、前記一般式SiZにおいて、元素ZがCであり、xは0.053≦x≦0.70の範囲の数であり、前記活物質薄膜は、元素CがSi薄膜中に均一に分布している活物質薄膜であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項3)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項3に記載の非水電解質二次電池用負極において、前記活物質薄膜のラマンスペクトル分析によるラマンRC値が0.0以上、2.0以下であり、且つ、ラマンRSC値が0.0以上、0.25以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項4)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項3又は請求項4に記載の非水電解質二次電池用負極において、前記活物質薄膜のラマンスペクトル分析によるラマンRS値が0.40以上、0.75以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項5)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極において、前記一般式SiZにおいて、元素ZがCで、元素Mが酸素であり、x、yは、それぞれ0.053≦x≦0.70、0<y≦0.50の範囲の数であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項6)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極において、充放電を行った後に、前記活物質薄膜の赤外分光光度計を用いた赤外透過光分析によるIRsc値が0.9以上、3.0以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項7)。
ここで、充放電を行った後とは、電池を組み立てて最初の充放電後でも良いし、複数の充放電サイクルを終えた後でも良く、いずれの場合も上記のIRsc値を得ることを特徴とする。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極において、前記一般式SiZにおいて、元素ZがNであり、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiがSiNであり、且つ一般式SiNのxは、前記Z濃度比Q(Z)が0.15〜0.85となる値であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項8)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項8に記載の非水電解質二次電池用負極において、前記活物質薄膜は、元素NがSi薄膜中に均一に分布している活物質薄膜であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項9)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項8又は請求項9に記載の非水電解質二次電池用負極において、前記活物質薄膜のラマンスペクトル分析によるラマンRSN値が0.0以上、0.9以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項10)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極において、前記活物質薄膜のラマンスペクトル分析によるラマンRS値が0.4以上、1.0以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項11)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項8ないし請求項11のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極において、前記活物質薄膜のX線回折によるXIsz値が0.00以上、1.10以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項12)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極において、前記一般式SiZにおいて元素ZがBであり、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiがSiBであり、且つ、一般式SiBのxは、前記Z濃度比Q(Z)が0.30〜0.85となる値であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項13)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項13に記載の非水電解質二次電池用負極において、前記活物質薄膜は、元素BがSi薄膜中に均一に分布している活物質薄膜であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項14)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項13又は請求項14に記載の非水電解質二次電池用負極において、前記活物質薄膜のX線回折によるXIsz値が0.00以上、0.90以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極、に存する(請求項15)。
なお、本発明における活物質薄膜のラマンスペクトル分析によるラマンRC値、ラマンRSC値、ラマンRS値とは、以下のラマン測定方法によるラマンスペクトル分析から求められ、各々、次のように定義される。
[ラマン測定方法]
ラマン分光器(例えば、日本分光社製「ラマン分光器」)を用い、本発明の非水電解質二次電池用負極を測定セルにセットし、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら測定を行う。測定したラマンスペクトルのバックグラウンド補正を行うことで、ラマンRC値、RSC値、RS値を求める。なお、バックグラウンド補正は、ピーク終始点を直線で結び、バックグラウンドを求め、その値をピーク強度から差し引くことで行う。
ここでラマン測定条件は次の通りであり、スムージング処理は、コンボリューション15ポイントの単純平均とする。
アルゴンイオンレーザー波長:514.5nm
試料上のレーザーパワー:15〜40mW
分解能:10〜20cm−1
測定範囲:200cm−1〜1900cm−1
<ラマンRC値>
1300cm−1〜1600cm−1付近に現れるピークcのピーク強度Ic、300cm−1〜500cm−1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RC(RC=Ic/Ias)を算出し、薄膜負極のラマンRC値と定義する。
ここで、ピークcとピークasは、それぞれ炭素とシリコン由来によるピークと考えられ、従って、ラマンRC値は炭素の量を反映したものであり、ラマンRC値が2.0以下であるということは、炭素が殆ど検出されないことを意味する。
<ラマンRSC値>
650cm−1〜850cm−1付近に現れるピークscのピーク強度Isc、300cm−1〜500cm−1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RSC(RSC=Isc/Ias)を算出し、薄膜負極のラマンRSC値と定義する。
ここで、ピークscとピークasは、それぞれSiCとシリコン由来によるピークと考えられ、従ってラマンRSC値はSiCの量を反映したものであり、ラマンRSC値が0.25以下であるということは、SiCが殆ど検出されないことを意味する。
<ラマンRS値>
520cm−1の強度Is、300cm−1〜500cm−1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RS(RS=Is/Ias)を算出し、薄膜負極のラマンRS値と定義する。
ラマンRS値は、Siの状態を反映したものである。
また、本発明における活物質薄膜の赤外透過光分析によるIRsc値とは、以下の赤外分光光度計による赤外透過光測定から求められ、次のように定義される。
[赤外分光光度計による赤外透過光分析測定方法]
赤外分光光度計(例えば、サーモエレクトロン社製「Magna560」)を用い、充放電を行った後の非水電解質二次電池用負極の活物質薄膜を集電体から剥離し、測定セルにセットし、透過法により測定を行う。測定は、窓材がダイヤモンド製の透過測定用サンプルフォルダーを用い、不活性雰囲気下にて行う。測定した赤外線吸収スペクトルのバックグラウンド補正を行うことで、IRsc値を求める。なお、バックグラウンド補正は、2000〜4000cm−1の範囲における最小値を結んだ直線を延長し、バックグラウンドを求め、その値を各強度から差し引くことで行う。
1600cm−1における透過光強度Isc、1650cm−1における透過光強度Iacoを測定し、その強度比IRsc(IRsc=Isc/Iaco)を算出し、充放電後のIRsc値と定義する。
詳細は不明であるが、IscはSi由来の皮膜、Iacoはアルキル炭酸リチウム由来による皮膜と考えられ、従って、IRscは活物質薄膜中の皮膜(固体電解質界面:SEI)の状態と量比を反映したものであり、IRsc値が0.9以上であるということは、アルキル炭酸リチウム由来の皮膜とSi由来の皮膜で構成されていることを意味する。
また、本発明における活物質薄膜のラマンスペクトル分析によるラマンRSN値とは、以下のラマン測定方法によるラマンスペクトル分析から求められ、各々、次のように定義される。
[ラマン測定方法]
前述記載の方法を用いる。
<ラマンRSN値>
700cm−1〜1000cm−1付近に現れるピークsnのピーク強度Isn、300cm−1〜500cm−1付近に現れるピークasのピーク強度Iasを測定し、その強度比RSN(RSN=Isn/Ias)を算出し、薄膜負極のラマンRSN値と定義する。
ここで、ピークsnとピークasは、それぞれ窒化珪素とシリコン由来によるピークと考えられ、従ってラマンRSN値は窒化珪素の量を反映したものであり、ラマンRSN値が0.9以下であるということは、窒化珪素が殆ど検出されないことを意味する。
また、本発明における活物質薄膜のX線回折によるXIsz値とは、以下のX線回折測定方法によるX線回折から求められ、次のように定義される。
[X線回折測定方法]
X線回折測定における活物質薄膜のXIsz値は、例えば、本発明の薄膜負極の活物質薄膜側を照射面にセットし、X線回折装置(例えば、リガク社製「X線回折装置」)を用いて測定することができ、測定条件については後述の実施例において示す通りである。
XIsz値の定義は次の通りである。
<XIsz値>
Si等の平衡的に存在する化合物のメインピークの角度のピーク強度Iszと、2θが28.4度のピーク強度Isを測定し、その強度比XIsz(XIsz=Isz/Is)を算出し、活物質薄膜のXIszと定義する。
ここで、元素ZがNの場合、2θが例えば27.1度のピーク(Isz)と28.4度のピーク(Is)は、SiとSi由来によるピークと考えられ、XIsz値が1.20以下であるということは、平衡的に存在する化合物Siが殆ど検出されないことを意味する。
また、元素ZがBの場合、2θが例えば33.4度のピーク(Isz)と28.4度のピーク(Is)は、SiBとSi由来によるピークと考えられ、XIsz値が0.90以下であるということは、平衡的に存在する化合物SiBが殆ど検出されないことを意味する。
また、本発明の別の要旨は、集電体と、該集電体上に成膜された、一般式SiZ(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表される化合物を主成分とする活物質薄膜とで構成される非水電解質二次電池用負極を製造する方法であって、蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源として、Si、元素Z、及び元素Mを含むものを用い、Siと元素Zと元素Mとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、集電体基板上に1〜30μmの厚さに成膜することを特徴とする非水電解質二次電池用負極の製造方法、に存する(請求項16)。
(1)元素Zは、B、C及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素である。
(2)元素MはSiと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族から選ばれる少なくとも1種の元素である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Si(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
(4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
また、本発明の別の要旨は、集電体と、該集電体上に成膜された、一般式SiZ(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表される化合物を主成分とする活物質薄膜とで構成される非水電解質二次電池用負極を製造する方法であって、蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源として、Si、及び元素Zを含むものを用い、Siと元素Zとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、集電体基板上に1〜30μmの厚さに成膜することを特徴とする非水電解質二次電池用負極の製造方法、に存する(請求項17)。
(1)元素Zは、B、C及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素である。
(2)元素MはSiと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族から選ばれる少なくとも1種の元素である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Si(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
(4)yは、y=0又はy≒0である。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項16に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法において、前記一般式SiZにおいて、元素ZがCで、0.053≦x≦0.70、0<y≦0.50であり、蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源として、Si、C、及び元素Mを含むものを用い、SiとCと元素Mとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、集電体基板上に1〜30μmの厚さに成膜することを特徴とする非水電解質二次電池用負極の製造方法、に存する(請求項18)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項17に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法において、前記一般式SiZにおいて、元素ZがCで、0.053≦x≦0.70、y=0又はy≒0であり、蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源として、Si、及びCを含むものを用い、SiとCとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、集電体基板上に1〜30μmの厚さに成膜することを特徴とする非水電解質二次電池用負極の製造方法、に存する(請求項19)。
また、本発明の別の要旨は、集電体と、該集電体上に成膜された、一般式SiC(式中、x,yは、それぞれ0.053≦x≦0.70、0<y≦0.50の範囲の数である)で示される化合物を主成分とする活物質薄膜とで構成される非水電解質二次電池用負極を製造する方法であって、蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源として、Si及びCを含むものを用い、成膜ガス中の酸素濃度が0.0001〜0.125%である雰囲気下にて、SiとCとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、集電体基板上に1〜30μmの厚さに成膜することを特徴とする非水電解質二次電池用負極の製造方法、に存する(請求項20)。
また、本発明の別の要旨は、集電体と、該集電体上に成膜された、一般式SiZ(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表される化合物を主成分とする活物質薄膜とで構成される非水電解質二次電池用負極を製造する方法であって、蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源として、Siを含むものを用い、成膜ガス中の窒素濃度が1〜22%である雰囲気下にて、SiとNとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、集電体基板上に1〜30μmの厚さに成膜することを特徴とする非水電解質二次電池用負極の製造方法、に存する(請求項21)。
(1)元素Zは、Nである。
(2)元素MはSiとN以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族から選ばれる少なくとも1種の元素である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiNのN濃度50原子%に対して、下記式で算出されるN濃度比Q(N)が0.15〜0.85となる値である。
Q(N)=[x/(1+x)]/0.5)
(4)yは、y=0又はy≒0である。
また、本発明の別の要旨は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える非水電解質二次電池において、該負極が、上述の本発明の非水電解質二次電池電極用負極、或いは、上述の本発明の非水電解質二次電池電極用負極の製造方法により製造された非水電解質二次電池電極用負極であることを特徴とする非水電解質二次電池、に存する(請求項22,23)。
また、本発明の別の要旨は、上記請求項22又に請求項23に記載の非水電解質二次電池において、分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステル化合物を含有する非水系電解液を用いることを特徴とする非水電解質二次電池、に存する(請求項24)。
本発明によれば、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された高性能の非水電解質二次電池を安定して効率的に実現することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
[1]非水電解質二次電池電極用負極
本発明の非水電解質二次電池電極用負極は、Si中に元素Zが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする活物質薄膜を有する非水電解質二次電池用負極であって、上記化合物が一般式SiZ(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表されることを特徴とする非水電解質二次電池用負極である。
(1)元素Zは、B、C及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素である。
(2)元素MはSiと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族から選ばれる少なくとも1種の元素である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Si(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
(4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
以下において、Si中に元素Zが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする活物質薄膜を有する本発明の非水電解質二次電池用負極を、「本発明の薄膜負極」と称す場合がある。
このような本発明の薄膜負極は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、ならびに電解質を備えたリチウム二次電池などの非水電解質二次電池における負極として極めて有用である。例えば、本発明の薄膜負極を使用し、通常使用されるリチウム二次電池用の金属カルコゲナイド系正極及びカーボネート系溶媒を主体とする有機電解液を組み合わせて構成した非水電解質二次電池は、容量が大きく、初期サイクルに認められる不可逆容量が小さく、またサイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制され、高温下での放置における電池の保存性及び信頼性も高く、高効率放電特性及び低温における放電特性に極めて優れたものである。
[活物質薄膜]
本発明に係る活物質薄膜は、Si中に元素Zが非平衡的に存在した相の化合物であって、一般式SiZ(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表される化合物を主成分とするものである。
(1)元素Zは、B、C及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素である。
(2)元素MはSiと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族から選ばれる少なくとも1種の元素である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Si(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
(4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
(膜厚)
活物質薄膜の膜厚は、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、また通常30μm以下、好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。活物質薄膜の膜厚がこの範囲を下回ると、本発明の薄膜負極の1枚当たりの容量が小さく、大容量の電池を得るには数多くの負極が必要となり、従って、併せて必要な正極、セパレータ、薄膜負極自体の集電体の総容積が大きくなり、電池容積当たりに充填できる負極活物質量が実質的に減少し、電池容量を大きくすることが困難になる。一方、この範囲を上回ると、充放電に伴う膨張・収縮で、活物質薄膜が集電体基板から剥離する虞があり、サイクル特性が悪化する可能性がある。
なお、この活物質薄膜は後述の製造方法に記述されるように、気相から成膜するのが好ましい。
(元素Z)
化合物SiZにおける元素Zは、B、C及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素であり、好ましくは、C及びN元素である。元素Zは、2種以上の複数の元素を同時に用いても良い。
なお、元素ZにB、C、Nを用いる理由は、
(i) Siよりも高融点化合物を形成しうる
且つ、
(ii) Siよりも共有結合半径が小さい
からである。
B、C及びNは、具体的にはSiB、SiC、Si等のSiよりも高融点である平衡的に存在する化合物を形成しうる。高融点化合物は一般的に生成の自由エネルギーが負で大きい安定な化合物である。このため、高融点化合物はSiの活量を効果的に低下させることができ、電解液との反応性を抑制する。
更に、元素B、C及びNは、Siの共有結合原子半径よりも小さいので、詳細は不明であるが、SiZ化合物中に平衡的に存在する化合物を形成し難く、高濃度で元素Zをより均質に分布させる事に有効と考えられ、Siの活量をより効果的に低下させることができ、電解液との反応性を抑制する。
Cu、Ni等の元素のように、CuSi、NiSi等の平衡的に存在しうる化合物がSiよりも低融点である場合は、Siの活量が効果的に低下せず、電解液との反応性を抑制することが難しい。このため、後述のごとく、サイクル特性が改善されない。
SiZ化合物中に平衡的に存在する化合物が主成分となる場合には、後述のごとく、Siの活量が低下せず、電解液との反応性を抑制できなくなりサイクル特性が悪化するなどの虞がある。
元素ZにC及びNを用いる方が、Bを用いるよりも更に優れている。これは、元素Zが充電時にLiと反応した場合、C及びNはBに比べて体積変化が小さく、Siの導電パス切れに悪影響を及ぼさないことによると考えられる。
(元素M)
元素Mは、Siと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族の元素から選ばれる元素の1種又は2以上であり、好ましくは、Cu、Ni、O元素であり、更に好ましくはO元素である。
(組成)
活物質薄膜の組成において、SiZのxは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Si(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が通常0.10以上、好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.30以上、特に好ましくは0.40以上で、通常0.95以下、好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.75以下、特に好ましくは0.60以下となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
Z濃度比Q(Z)がこの範囲を下回ると、Siの活量を下げる効果が小さく電解液との反応性を抑制できず、電極膨張が大きくなり、好ましいサイクル特性が得られ難い。Z濃度比Q(Z)がこの範囲を上回ると、平衡的に存在する安定な化合物Si等を形成し、元素Zを増やしてもSiの活量は低下せず、電解液との反応性を抑制できない虞がある。Si等は導電性が低いために、このような化合物が形成されると活物質薄膜の導電性が悪化し、リチウムのドープ、脱ドープが困難となり、充放電ができなくなる虞がある。Z濃度比Q(Z)がこの範囲を大きく上回ると、Siを含むことによる高容量化の効果が得られ難く、好ましい電池特性が得られ難い。Z濃度比Q(Z)が1の場合、Siは安定な化合物Siとなっていることを意味し、好ましくない。
元素Zに2種以上の複数の元素を同時に用いる場合、複数の元素のそれぞれのSi基準の元素Z濃度に対してZ濃度比Q(Z)を求め、その合計値をZ濃度比Q(Z)と見なす。
yは通常0以上、また、通常0.50以下、好ましくは0.30以下、更に好ましくは0.15以下、特に好ましくは0.10以下である。yがこの範囲を上回ると、元素Mの存在量が多くなりSiと元素Zを含む効果が得られず好ましくない。
ただし、元素ZがC以外の場合、y=0又はy≒0であることが好ましい。本発明において、y≒0とは、本発明に係る活物質薄膜の成膜工程等で元素Mが不可避的に含まれる場合をさし、例えば、yは0.08未満である。
活物質薄膜の組成は、例えば、後述の実施例に示す如く、X線光電子分光器(例えば、アルバック・ファイ社製「ESCA」)を用い、薄膜負極を活物質薄膜側を上にしてその表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、Arスパッタを行いながらデプスプロファイル測定を行い、Si、元素Z、元素Mの原子濃度をそれぞれ算出することにより求めることができる。
<元素ZがCの場合の組成>
元素ZがCの場合、前記Z濃度比Q(Z)(C濃度比Q(C)と称す場合がある。)は、通常0.10、好ましくは0.113以上、更に好ましくは0.182以上、また、通常0.824以下、好ましくは0.667以下である。元素ZがCの場合、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物はSiCである。
上記C濃度比Q(C)は、SiCに当てはめると、xが通常0.053以上、好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.10以上、また、通常0.70以下、好ましくは0.50以下に相当する。
C濃度比Q(C)がこの範囲を下回ると、Siの活量を下げる効果が小さく電解液との反応性を抑制できず、電極膨張が大きくなり、好ましいサイクル特性が得られ難い。C濃度比Q(C)が、この範囲を上回ると、平衡的に存在する安定な化合物SiCを形成し、活物質薄膜の導電性が悪化し、リチウムのドープ、脱ドープが困難となり、充放電ができなくなる虞がある。
元素ZがCの場合、一般式SiCにおいて、yは通常0以上、通常0.70以下、好ましくは0.50以下、更に好ましくは0.30以下である。yがこの範囲を上回ると、元素Mの存在量が多くなりSiとCを含む効果が得られず好ましくない。
元素ZがCで、且つ元素MがOの場合、一般式SiCにおいて、yは通常0より大きく、また、通常0.50以下、好ましくは0.30以下、更に好ましくは0.15以下、特に好ましくは0.10以下である。yがこの範囲を上回ると、酸素の存在量が多くなり放電容量と初期充放電効率の低下を招く虞があり好ましくない。
<元素ZがNの場合の組成>
元素ZがNの場合、前記Z濃度比Q(Z)(N濃度比Q(N)と称す場合がある。)は、通常0.15以上、好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.40以上、通常0.85以下、好ましくは0.70以下、更に好ましくは0.60以下である。元素ZがNの場合、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物はSiNである。
N濃度比Q(N)がこの範囲を下回ると、Siの活量を下げる効果が小さく電解液との反応性を抑制できず、電極膨張が大きくなり、好ましいサイクル特性が得られ難い。N濃度比Q(N)がこの範囲を上回ると、平衡的に存在する安定な化合物Siを形成し、活物質薄膜の導電性が悪化し、リチウムのドープ、脱ドープが困難となり、充放電ができなくなる虞がある。
元素ZがNの場合、一般式SiZにおいて、好ましくはy=0又はy≒0である。
<元素ZがBの場合の組成>
元素ZがBの場合、前記Z濃度比Q(Z)(B濃度比Q(B)と称す場合がある。)は、通常0.30以上、好ましくは0.40以上、更に好ましくは0.50以上、通常0.85以下、好ましくは0.70以下である。元素ZがBの場合、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物はSiBである。
B濃度比Q(B)がこの範囲を下回ると、Siの活量を下げる効果が小さく電解液との反応性を抑制できず、電極膨張が大きくなり、好ましいサイクル特性が得られ難い。B濃度比Q(B)が、この範囲を上回ると、平衡的に存在する安定な化合物SiB、SiB等を形成し、Bを増やしてもSiの活量は低下せず、電解液との反応性を抑制できない虞がある。
元素ZがBの場合、一般式SiZにおいて、好ましくはy=0又はy≒0である。
(Si中の元素Zの存在状態)
活物質薄膜中のSi中の元素Zの存在状態は、前述したX線回折測定において、XIsz値が通常2.5以下、好ましくは2.0以下である。XIsz値がこの範囲以下であれば、元素ZがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とし、Si等の平衡的に存在する化合物は主成分でないと定義し、好ましい。XIsz値がこの範囲を上回る場合、即ち、Si等の平衡的に存在する化合物の相が主成分となる場合には、Siの活量が低下せず、電解液との反応性を抑制できなくなりサイクル特性が悪化する虞がある。また、Si等は導電性が低いために、活物質薄膜の導電性を悪化させ、リチウムのドープ、脱ドープが困難となり、充放電ができなくなる虞があり、好ましくない。XIsz値の下限値は通常0.00以上である。
(Siの膜厚方向の分布)
活物質薄膜のSiの膜厚方向の重量濃度分布は、以下に記すEPMA測定において、Siの重量濃度の平均値に対する、最大値、又は最小値と平均値の差(絶対値)が通常40%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下である。最大値、又は最小値と平均値の差(絶対値)がこの範囲を上回ると、充放電に伴う膨張・収縮が局所的に起きるため、サイクルの進行に伴い膜厚方向で導電性が悪化する虞がある。最大値、又は最小値と平均値の差(絶対値)がこの範囲以下であれば、実質的に集電体から連続的に成膜されていることを意味し、好ましい。
活物質薄膜のSiの膜厚方向の重量濃度分布は、例えば、次のようにして求められる。
薄膜負極を活物質薄膜側を上にして、活物質薄膜の断面が平坦になるように試料台に載せて、電子プローブマイクロアナライザー(JEOL社製「JXA−8100」)を用い、集電体から活物質薄膜表面までの元素の分析を行い、測定した元素の総和を100%に換算し直し、Siの膜厚方向の重量濃度分布を求める。
(元素Zの分布状態)
化合物SiZにおける元素Zは、例えば、原子、若しくは分子、或いはクラスター等、1μm以下の大きさのレベルで存在する。元素Zの分布状態は、好ましくは、活物質薄膜中の膜厚方向、及び、面内方向(膜厚方向に対して垂直な方向)に均一に分布しており、更に好ましくは、活物質薄膜の面内方向に均一に分布していて、且つ、活物質薄膜の膜厚方向において表面に向かって元素Zの濃度勾配が高くなるように傾斜している。元素Zの分布が活物質薄膜の面内方向において不均一で、局所的に存在している場合、Siの充放電に伴う膨張・収縮が元素Zの存在しないSi部分で集中的に起きるため、サイクルの進行に伴い導電性が悪化する虞がある。元素Zの分散状態は、後述の実施例に示す如く、EPMA等で確認できる。
元素Zは、集電体から連続的に成膜されていることが好ましい。元素Zが、連続的に成膜されているということは、上述のSiと同様、EPMA測定において、Zの重量濃度の平均値に対する、最大値、又は最小値と平均値の差(絶対値)が通常40%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下であることをさす。
(元素Mの分布状態)
化合物SiZにおける元素Mの活物質薄膜中の分布状態には特に制限はなく、均一に分布していても、均一に分布していなくても、どちらでも良い。
(構造)
本発明の薄膜負極中に成膜された活物質薄膜の構造としては、例えば、柱状構造、層状構造等が挙げられる。
(ラマンRC値、ラマンRSC値、ラマンRS値、ラマンRSN値)
元素ZがCの場合、本発明の薄膜負極の活物質薄膜について、ラマン法により測定したラマンRC値は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.5以下である。ラマンRC値がこの範囲を上回ると、Siを含むことによる高容量化の効果が得られ難く、好ましい電池特性が得られ難い。ラマンRC値の下限値は測定上の関係から、通常0.0以上である。
元素ZがCの場合、ラマン法により測定したラマンRSC値は、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.20以下である。ラマンRSC値がこの範囲を上回ると、導電性が悪化し、リチウムのドープ、脱ドープが困難となり充放電ができなくなる虞がある。ラマンRSC値の下限値は測定上の関係から、通常0.0以上である。
ラマン法により測定したラマンRS値は、元素ZがCの場合、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.50以上で、好ましくは0.75以下、より好ましくは0.65以下である。ラマン法により測定したラマンRS値は、元素ZがNの場合、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.50以上で、好ましくは1.00以下、より好ましくは0.9以下である。ラマンRS値がこの範囲を下回ると、サイクル特性が悪化する可能性がある。ラマンRS値がこの範囲を上回ると、充放電できない可能性がある。
元素ZがNの場合、ラマン法により測定したラマンRSN値は、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。ラマンRSN値がこの範囲を上回ると、導電性が悪化し、リチウムのドープ、脱ドープが困難となり充放電ができなくなる虞がある。ラマンRSN値の下限値は測定上の関係から、通常0.0以上である。
(X線回折によるXIsz値)
本発明の薄膜負極の活物質薄膜について、X線回折により測定したXIsz値は、次の通りである。元素ZがCの場合、特に制限されないが、好ましくは1.20以下、更に好ましくは0.70以下である。元素ZがNの場合、好ましくは1.10以下、更に好ましくは1.00以下である。元素ZがBの場合、好ましくは0.90以下、更に好ましくは0.80以下である。XIsz値がこの範囲を上回る場合、即ち、元素ZがCの場合は炭化珪素、Nの場合は窒化珪素、Bの場合はホウ化珪素の生成が多い場合には、活物質の単位重量当たりの放電容量が小さくなる虞があり好ましくない。XIsz値の下限値は通常0.00以上である。
<元素ZがCの場合のXIsz値>
2θが35.7度のピーク強度Isz、28.4度のピーク強度Isを測定し、その強度比XIsz(XIsz=Isz/Is)を算出し、活物質薄膜のXIszと定義する。
ここで、2θが35.7度のピークはSiCに由来のピーク、28.4度のピークはシリコン由来のピークと考えられ、XIsz値が1.20以下であるということは、SiCが殆ど検出されないことを意味する。
<元素ZがNの場合のXIsz値>
2θが70.2度のピーク強度Isz、28.4度のピーク強度Isを測定し、その強度比XIsz(XIsz=Isz/Is)を算出し、活物質薄膜のXIszと定義する。
ここで、2θが27.1度のピークはSi由来のピーク、28.4度のピークはシリコン由来のピークと考えられ、XIsz値が1.10以下であるということは、Siが殆ど検出されないことを意味する。
<元素ZがBの場合のXIsz値>
2θが33.4度のピーク強度Isz、28.4度のピーク強度Isを測定し、その強度比XIsz(XIsz=Isz/Is)を算出し、活物質薄膜のXIszと定義する。
ここで、2θが33.4度のピークはSiB又はSiB由来のピーク、28.4度のピークはシリコン由来のピークと考えられ、XIsz値が0.90以下であるということは、SiB又はSiBが殆ど検出されないことを意味する。
(IRsc値)
元素ZがCの場合、充放電を行った後の本発明の薄膜負極の活物質薄膜について、赤外透過光分析により測定したIRsc値は、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.1以上、特に好ましくは1.2以上である。IRsc値がこの範囲を下回ると、サイクル中にSiを含む活物質薄膜と電解液が反応し、実質的に充放電可能な活物質量が徐々に減少し、好ましいサイクル特性が得られ難い。IRsc値の上限値は3.0程度である。
[集電体]
以下、集電体について詳細に説明する。
(材質)
集電体の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス等が挙げられ、中でも薄膜に加工しやすく、安価な銅が好ましい。銅箔には、圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
圧延法により作製した銅箔からなる集電体は、銅結晶が圧延方向に並んでいるため、負極を密に丸めても、鋭角に丸めても割れにくく、小型の円筒状電池に好適に用いることができる。電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られるものである。上記の圧延銅箔の表面に、電解法により銅を析出させていても良い。銅箔の片面又は両面には、粗面化処理や表面処理(例えば、厚さが数nm〜1μm程度までのクロメート処理、Ti等の下地処理など)がなされていても良い。
(厚さ)
銅箔等よりなる集電体基板は、薄い方が薄い薄膜負極を製造することができ、同じ収納容積の電池容器内に、より広い表面積の薄膜負極を詰めることができる点で好ましいが、過度に薄いと、強度が不足し、電池製造時の捲回等で銅箔が切断する恐れがある。このため、銅箔等よりなる集電体基板は、10〜70μm程度の厚さであることが好ましい。銅箔の両面に活物質薄膜を形成する場合は、銅箔は更に薄い方が良いが、充電・放電に伴う活物質薄膜の膨張・収縮による銅箔の亀裂発生を回避する観点から、この場合において、銅箔の更に好ましい厚さは8〜35μmである。
集電体として銅箔以外の金属箔を使用する場合には、それぞれの金属箔に応じて、好適な厚さのものを使用することができるが、その厚さはおおむね10〜70μm程度の範囲内である。
(物性)
集電体基板には、更に次のような物性が望まれる。
(1) 平均表面粗さ(Ra)
JISB0601−1994に記載の方法で規定される集電体基板の活物質薄膜形成面の平均表面粗さ(Ra)は、特に制限されないが、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.15μm以上であり、通常1.5μm以下、好ましくは1.3μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。
集電体基板の平均表面粗さ(Ra)を上記した下限と上限の間の範囲内とすることにより、良好な充放電サイクル特性が期待できる。上記下限値以上とすることにより、活物質薄膜との界面の面積が大きくなり、活物質薄膜との密着性が向上する。平均表面粗さ(Ra)の上限値は特に制限されるものではないが、平均表面粗さ(Ra)が1.5μmを超えるものは電池として実用的な厚みの箔としては一般に入手しにくいため、1.5μm以下のものが好ましい。
(2) 引張強度
集電体基板の引張強度は、特に制限されないが、通常100N/mm以上、好ましくは250N/mm以上、更に好ましくは400N/mm以上、特に好ましくは500N/mm以上である。
引張強度とは、試験片が破断に至るまでに要した最大引張力を、試験片の断面積で割ったものである。本発明における引張強度は、伸び率と同様な装置及び方法で測定される。引張強度が高い集電体基板であれば、充電・放電に伴う活物質薄膜の膨張・収縮による集電体基板の亀裂を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる。
(3) 0.2%耐力
集電体基板の0.2%耐力は、特に制限されないが、通常30N/mm以上、好ましくは150N/mm以上、特に好ましくは300N/mm以上である。
0.2%耐力とは、0.2%の塑性(永久)歪みを与えるに必要な負荷の大きさであり、この大きさの負荷を加えた後に除荷しても0.2%変形している事を意味している。本発明における0.2%耐力は、伸び率と同様な装置及び方法で測定される。0.2%耐力が高い集電体基板であれば、充電・放電に伴う活物質薄膜の膨張・収縮による集電体基板の塑性変形を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる。
[製造方法]
本発明の薄膜負極の製造方法には特に制限はないが、例えば、以下に挙げる製造法などによって製造することができる。
(製造法1)
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源に、下記(i)〜(vii)のいずれか一つを用い、Siと元素Zと元素M(ただし、y=0又はy≒0のときは、Siと元素Z)を同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のいずれか1以上の手法にて、前述の集電体基板上に1〜30μmの厚さ、好ましくは活物質薄膜の膜厚の項で記述した厚さに成膜する。
(i)Si、元素Z、及び元素Mの組成物(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及び元素Zの組成物)
(ii)Si、元素Z、及び元素Mの混合物(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及び元素Zの混合物)
(iii)Si、元素Z、及び元素Mそれぞれの単独体(各々の単独体は、それぞれの元素を含むガスでも良い。)(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及び元素Zのそれぞれの単独体)
(iv)Si及び元素Zの組成物或いは混合物と、元素Mの単独体(Mを含むガスでも良い)
(v)Si、元素Z、及び元素Mを含むガス(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及び元素Zを含むガス)
(vi)Siの単独体と、元素Z及び元素Mの組成物或いは混合物
(vii)Si及び元素Mの組成物或いは混合物と、元素Zの単独体(元素Zを含むガスでも良い)
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源(以下適宜、「原料」と記す場合がある)のSi単独体原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi等を用いることができる。Z原料としては、B,C及びN元素を用いることができる。元素Zは、前記項目を満足する元素であれば、2種以上の複数の元素を同時に用いることもできる。
原料のうち、(i)Si、元素Z、及び元素Mの組成物(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及び元素Zの組成物)としては、Si、元素Z、及び元素M、或いは、Si、及び元素Zを組み合わせた単一の化合物を用いても良く、又は、複数の化合物として用いても良い。
これらSi、Z原料、M原料の形態は、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられる。
一般式SiZにおいて、y≠0で元素Mを含む場合、元素Mは、Siと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上を、好ましくは、Cu、Ni、O元素を、更に好ましくはO元素を用いることができる。
活物質薄膜は、以下に詳述される
A:スパッタリング
B:真空蒸着
C:CVD
D:イオンプレーティング
E:溶射法(フレーム溶射法、プラズマ溶射法)
の少なくとも1つによって形成され得る。
A.スパッタリング
スパッタリングでは、減圧下で、プラズマを利用して上記原料よりなるターゲットから発せられた活物質材料を集電体基板に衝突、堆積させて薄膜を形成する。スパッタリングによると、形成した活物質薄膜と集電体基板との界面状態が良好であり、集電体に対する活物質薄膜の密着性も高い。
ターゲットに対するスパッタ電圧の印加方法としては、直流電圧、交流電圧のいずれも用いることができる。その際、集電体基板に実質的に負のバイアス電圧を印加して、プラズマからのイオンの衝突エネルギーを制御することも可能である。
薄膜形成を開始する前のチャンバー内の到達真空度は、不純物の混入を防ぐため、通常0.1Pa以下である。
スパッタガスとしては、Ne、Ar、Kr、Xe等の不活性ガスが用いられる。中でも、アルゴンガスが、スパッタ効率などの点で好ましく用いられる。化合物SiZ中の元素ZがNの場合、前記不活性ガス中に微量の窒素ガスとして共存させることが製造上好ましい。通常、スパッタガス圧は0.05〜70Pa程度である。
スパッタリングにより活物質薄膜を形成する際の集電体基板は、水冷やヒーター等により温度を制御することもできる。集電体基板の温度範囲としては、通常室温〜900℃であるが、150℃以下が好ましい。
スパッタリングによる活物質薄膜の形成における成膜速度は、通常0.01〜0.5μm/分である。
活物質薄膜形成前に、逆スパッタや、その他のプラズマ処理などの前処理により、集電体基板表面をエッチングすることができる。このような前処理は、集電体基板としての銅箔表面の汚染物や酸化膜の除去、活物質薄膜の密着性の向上に有効である。
B.真空蒸着
真空蒸着では、活物質となる上記原料を溶融・蒸発させて、集電体基板上に堆積させる。真空蒸着は、スパッタリングに比べて高い成膜速度で薄膜を形成できる。真空蒸着は、スパッタリングに比べて、所定膜厚の活物質薄膜の形成時間の短縮を図る観点から製造コスト面で有利に活用することができる。その具体的な方法としては、誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム加熱蒸着法などを挙げることができる。誘導加熱法では黒鉛等の蒸着坩堝を誘導電流により、抵抗加熱法では蒸着ボートなど通電した加熱電流により、電子ビーム加熱蒸着では電子ビームにより、それぞれ蒸着材料を加熱溶融し、蒸発させて成膜する。
真空蒸着の雰囲気としては、一般的に真空下が用いられる。化合物SiZ中の元素ZがNの場合、微量の窒素ガスを不活性ガスと一緒に導入しながら減圧にし、真空下で同時にSiZを形成することも可能である。
薄膜形成を開始する前のチャンバー内の到達真空度は、不純物の混入を防ぐため、通常0.1Pa以下である。
真空蒸着により活物質薄膜を形成する際の集電体基板は、ヒーター等により温度を制御することもできる。集電体基板の温度範囲としては、通常室温〜900℃であるが、150℃以下が好ましい。
真空蒸着による活物質薄膜の形成における成膜速度は、通常0.1〜50μm/分である。
スパッタリングの場合と同様に、集電体基板上に活物質薄膜を堆積させる前に、イオンガンなどでイオン照射をすることにより集電体基板表面にエッチング処理を施しても良い。このようなエッチング処理により、基板と活物質薄膜との密着性を更に高めることができる。薄膜を形成する間に、集電体基板にイオンを衝突させることにより、集電体基板に対する活物質薄膜の密着性を更に向上させることもできる。
C.CVD(Chemical Vapor Deposition)
CVDでは、活物質となる上記原料を気相化学反応により集電体基板上に堆積させる。一般にCVDは、反応室内の化合物気体をガス流入によって制御するために高純度で多様な材料が合成できる特徴を持っており、その具体的な方法としては、熱CVD、プラズマCVD、光CVD、cat−CVDなどを挙げることができる。熱CVDでは、蒸気圧の高いハロゲン化合物の原料ガスをキャリヤガスや反応ガスとともに、1000℃前後に加熱した反応容器内に導入し、熱化学反応を起こさせ薄膜を形成する。プラズマCVDは、熱エネルギーの代わりにプラズマを用いる。光CVDは、熱エネルギーの代わりに光エネルギーを用いる。cat−CVDは、触媒化学気相成長法のことであり、原料ガスと加熱触媒との接触分解反応を応用することにより薄膜を形成する。
CVDで用いられるSi源としてはSiH、SiCl等であり、Z源としてはNH、N、BCl、CH、C、C等である。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
D.イオンプレーティング
イオンプレーティングでは、活物質となる上記原料を溶融・蒸発させ、プラズマ下で蒸発粒子をイオン化及び励起することで、集電体基板上に強固に成膜させる。具体的には、原料を溶融・蒸発させる方法としては、誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム加熱蒸着法等を挙げることができ、イオン化及び励起する方法としては、活性化反応蒸着法、多陰極熱電子照射法、高周波励起法、HCD法、クラスターイオンビーム法、マルチアーク法等を挙げることができる。また、前記原料を蒸発させる方法とイオン化及び励起する方法は適選組み合わせて行なうことができる。
E.溶射法
溶射法では、活物質となる上記原料を加熱により溶融若しくは軟化させ、微粒子状にして加速し集電体基板上に粒子を凝固・堆積させる。その具体的な方法としては、フレーム溶射法、アーク溶射法、直流プラズマ溶射法、RFプラズマ溶射法、レーザー溶射法等を挙げることができる。
蒸着法の高い成膜速度の利点と、スパッタリングの集電体基板への強い成膜密着性の利点を利用し、例えば、スパッタリングにより第1の薄膜層を形成し、その後蒸着法により高速に第2の薄膜層を形成することにより、集電体基板との密着性が良好になる界面領域を形成すると共に、高い成膜速度で活物質薄膜を形成することができる。このような成膜方法のハイブリッドな組合せ手法により、充放電容量が高く、且つ充放電サイクル特性に優れた薄膜負極を効率的に製造することができる。
スパッタリングと蒸着法を組み合わせて活物質薄膜を形成することは、減圧雰囲気を保ちつつ連続的に行われることが好ましい。これは、大気に暴露することなく連続的に第1の薄膜層と第2の薄膜層とを形成することによって、不純物の混入を防止できるからである。例えば、同一の真空環境の中で、集電体基板を移動させながら、スパッタ及び蒸着を順次行うような薄膜形成装置を用いることが好ましい。
集電体基板の両面に活物質薄膜を形成する場合、集電体基板の一方の面に対する活物質薄膜層(上記第1の薄膜層と第2の薄膜層の組み合せであっても良い。)の形成と、集電体基板の他方の面に対する活物質薄膜層(上記第1の薄膜層と第2の薄膜層の組み合せであっても良い。)の形成とは、減圧雰囲気を保持したまま連続して行うことが好ましい。
(製造法2)
一般式SiZにおいて、元素ZがCである場合の製造方法について以下に述べる。
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源に、下記(i)〜(vii)のいずれか一つを用い、SiとCと元素M(ただし、y=0又はy≒0のときは、SiとC)を同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のいずれか1以上の手法にて、前述の集電体基板上に1〜30μmの厚さ、好ましくは活物質薄膜の膜厚の項で記述した厚さに成膜する。
(i)Si、C、及び元素Mの組成物(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及びCの組成物)
(ii)Si、C、及び元素Mの混合物(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及びCの混合物)
(iii)Si、C、及び元素Mそれぞれの単独体(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及びCのそれぞれの単独体)
(iv)Si及びCの組成物或いは混合物と、元素Mの単独体(Mを含むガスでも良い)
(v)Si、C、及び元素Mを含むガス(ただし、y=0又はy≒0のときはSi及びCを含むガス)
(vi)Si単独体と、C及び元素Mの組成物或いは混合物
(vii)Si及び元素Mの組成物或いは混合物と、C単独体
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源(以下適宜、「原料」と記す場合がある)のSi原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi等を用いることができる。C原料としては、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料を用いることができる。M原料としては、通常Siと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族の元素であり、好ましくは、Cu、Ni、O元素、特に好ましくはO元素を用いることができる。
原料のうち、(i)Si、C、及び元素Mの組成物としては、Si、C、及び元素Mを組み合わせた単一の化合物を用いても良く、又は、複数の化合物として用いても良い。
また、これらSi、C、M原料の形態は、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられる。
また、元素Mは、SiやCの窒化物や酸化物として用いても良いが、常温で気体として存在するO等の場合、Si、C成膜中に原料ガスO等として共存させることが製造上好ましい。
成膜には、A:スパッタリング、B:真空蒸着、C:CVDが採用される。
A.スパッタリング
スパッタガスとしては、Ne、Ar、Kr、Xe等の不活性ガスが用いられる。中でも、アルゴンガスが、スパッタ効率などの点で好ましく用いられる。一般式SiC中のM元素がOの場合、前記不活性ガス中にそれぞれ微量の酸素ガスを共存させることが製造上好ましい。通常、スパッタガス圧は0.05〜70Pa程度である。
B.真空蒸着
真空蒸着の雰囲気としては、一般的に真空下が用いられる。また、一般式SiC中の元素MがOの場合、それぞれ微量の酸素ガスを不活性ガスと一緒に導入しながら減圧にし、真空下で同時にSi/C/Mを形成することも可能である。
C.CVD
CVDで用いられる原料ガスは、元素Si源としてはSiH、SiCl等であり、元素C源としてはCH、C、C等である。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
(製造法3)
一般式SiZにおいて、元素ZがCで元素MがOである場合の製造方法について以下に述べる。
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源に、下記(I)〜(IV)のいずれか一つを用い、成膜ガス中(真空中で成膜する時は、残存ガス中)の酸素濃度が0.0001〜0.125%である雰囲気下にて、SiとCを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のいずれか1以上の手法にて、前述の集電体基板上に1〜30μmの厚さ、好ましくは活物質薄膜の膜厚の項で記述した厚さにする。
(I)Si、及びCの組成物
(II)Si、及びCの混合物
(III)Si、及びCそれぞれの単独体
(IV)Si、及びCを含むガス
原料である蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源のSi原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi等を用いることができる。C原料としては、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料を用いることができる。成膜ガス中の酸素としては、酸素等のO元素含有ガスを単独又は不活性ガスとの組み合せで用いる。
これらSi、C原料の形態は、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられる。また、酸素ガスは、Si、C成膜中に原料ガスとして共存させることが製造上好ましい。
成膜法としては、前述の製造法1と同様な成膜法を用いる。
蒸着、スパッタ、又は溶射時の成膜ガス中(真空中で成膜する時は、残存ガス中)の酸素濃度は通常0.0001%以上で、通常0.125%以下、好ましくは0.100%以下、更に好ましくは0.020%以下である。成膜ガス中に含まれる酸素濃度がこの範囲を上回ると、Si/C/O薄膜中の元素O量が多くなり、電解液との反応性が増し、充放電効率の低下を招く虞があり好ましくない。酸素濃度が少な過ぎるとSi/C/O薄膜を成膜し得ない。
成膜ガス中の酸素濃度は、例えば、四極子マスフィルタを用い、成膜ガスのマススペクトルを分析することで求めることができる。酸素ガスが共存しているアルゴンガスを成膜ガスとして用いる場合には、そのアルゴンガスを酸素分析計で測定することで求めることもできる。
(製造法4)
一般式SiZにおいて、元素ZがNで、y=0又はy≒0である場合の製造方法
について以下に述べる。
蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源に、下記(I)〜(IV)のいずれか一つを用い、成膜ガス中(真空中で成膜する時は、残存ガス中)の窒素濃度が1〜22%である雰囲気下にて、SiとNを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のいずれか1以上の手法にて、前述の集電体基板上に1〜30μmの厚さ、好ましくは活物質薄膜の膜厚の項で記述した厚さにする。
(I)Si単独体
(II)Siを含む組成物
(III)Siを含む混合物
(IV)Siを含むガス
原料である蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源のSi単独体原料としては、例えば結晶性Si、アモルファスSi等を用いることができる。成膜ガス中のNとしては、窒素等のN元素含有ガスを単独又は不活性ガスとの組み合せで用いる。
これらSi等の形態は、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられる。窒素ガスは、Si成膜中に原料ガスとして共存させることが製造上好ましい。
成膜法としては、前述の製造法1と同様な成膜法を用いることができる。
蒸着、スパッタ、又は溶射時の成膜ガス中(真空中で成膜する時は、残存ガス中)の窒素濃度は通常1%以上で、通常22%以下、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下である。成膜ガス中に含まれる窒素濃度この範囲を上回ると、SiN薄膜中の元素N量が多くなり、充放電に関与しない窒化珪素が生成し、放電容量の低下を招く虞があり好ましくない。窒素濃度が少な過ぎるとNを含有したSiN薄膜を成膜し得なく、且つ、サイクル特性の低下を招き好ましくない。
成膜ガス中の窒素濃度は、例えば、四極子マスフィルタを用い、成膜ガスのマススペクトルを分析することにより求められる。
[2]非水電解質二次電池
本発明の非水電解質二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える非水電解質二次電池において、負極として本発明の薄膜負極ないし本発明の方法により製造された薄膜負極を用いたものである。
本発明の非水電解質二次電池を構成する正極、電解質等の電池構成上必要な、負極以外の部材の選択については特に制限されない。以下において、本発明の非水電解質二次電池を構成する負極以外の部材の材料等を例示するが、使用し得る材料はこれらの具体例に限定されるものではない。
正極は、集電体基板上に、正極活物質と、結着及び増粘効果を有する有機物(結着剤)を含有する活物質層を形成してなる。正極は、通常、正極活物質と結着及び増粘効果を有する有機物を水あるいは有機溶媒中に分散させたスラリー状のものを、集電体基板上に薄く塗布した後、乾燥する工程、続いて所定の厚み及び密度まで圧密するプレス工程により形成される。
正極活物質材料には、リチウムを吸蔵・放出できる機能を有している限り特に制限はない。例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物材料;二酸化マンガン等の遷移金属酸化物材料;フッ化黒鉛等の炭素質材料などを使用することができる。具体的には、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24及びこれらの非定比化合物、MnO2、TiS2、FeS2、Nb34、Mo34、CoS2、V25、P25、CrO3、V33、TeO2、GeO2等を用いることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
正極活物質層には、正極用導電剤を用いることができる。正極用導電剤は、用いる正極活物質材料の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でも良い。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。こ
れらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラックが特に好ましい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、正極活物質材料に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、正極活物質材料に対して2〜15重量%が特に好ましい。
正極活物質層の形成に用いられる結着及び増粘効果を有する有機物としては、特に制限はなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであっても良い。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体を挙げることができ、これらの材料を単独又は混合物として用いることができる。これらの材料の中でより好ましい材料はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
正極活物質層には、前述の導電剤の他、更にフィラー、分散剤、イオン伝導体、圧力増強剤及びその他の各種添加剤を配合することができる。フィラーは、構成された電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、活物質層中の含有量として0〜30重量%が好ましい。
正極活物質スラリーの調製には、水系溶媒又は有機溶媒が分散媒として用いられる。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類等の添加剤を水に対して、30重量%以下程度まで添加することもできる。
有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
正極活物質、結着剤である結着及び増粘効果を有する有機物及び必要に応じて配合される正極用導電剤、その他フィラー等をこれらの溶媒に混合して正極活物質スラリーを調製し、これを正極用集電体基板に所定の厚みとなるように塗布することにより正極活物質層が形成される。
正極活物質スラリー中の正極活物質の濃度の上限は通常70重量%以下、好ましくは55重量%以下であり、下限は通常30重量%以上、好ましくは40重量%以上である。正極活物質の濃度がこの上限を超えると正極活物質スラリー中の正極活物質が凝集しやすくなり、下限を下回ると正極活物質スラリーの保存中に正極活物質が沈降しやすくなる。
正極活物質スラリー中の結着剤の濃度の上限は通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下であり、下限は通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量以上である。結着剤の濃度がこの上限を超えると得られる正極の内部抵抗が大きくなり、下限を下回ると正極活物質層の結着性に劣るものとなる。
正極用集電体基板には、例えば、電解液中での陽極酸化によって表面に不動態皮膜を形成する弁金属又はその合金を用いるのが好ましい。弁金属としては、周期表4族、5族、13族に属する金属及びこれらの合金を例示することができる。具体的には、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta及びこれらの金属を含む合金などを例示することができ、Al、Ti、Ta及びこれらの金属を含む合金を好ましく使用することができる。特にAl及びその合金は軽量であるためエネルギー密度が高くて望ましい。正極用集電体基板の厚みは特に限定されないが通常1〜50μm程度である。
電解質としては、電解液や固体電解質など、任意の電解質を用いることができる。電解質とはイオン導電体すべてのことをいい、電解液及び固体電解質は共に電解質に含まれるものとする。
電解液としては、例えば、非水系溶媒に溶質を溶解したものを用いることができる。溶質としては、アルカリ金属塩や4級アンモニウム塩などを用いることができる。具体的には、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(CF3CF2SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(CF3SO23等が好ましく用いられる。これらの溶質は、1種類を選択して使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
電解液中のこれらの溶質の含有量は、0.2mol/L以上、特に0.5mol/L以上で、2mol/L以下、特に1.5mol/L以下であることが好ましい。
非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル化合物;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル;クラウンエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネートなどを用いることができる。これらの中でも、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含有する非水溶媒が好ましい。
これらの溶媒は1種類を選択して使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
本発明に係る非水系電解液は、分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルや従来公知の過充電防止剤、脱酸剤、脱水剤などの種々の助剤を含有していても良い。
分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、ビニレンカーボネート系化合物、ビニルエチレンカーボネート系化合物、メチレンエチレンカーボネート系化合物等が挙げられる。
ビニレンカーボネート系化合物としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート等が挙げられる。
ビニルエチレンカーボネート系化合物としては、例えば、ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−エチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−n−プロピル−4−ビニルエチレンカーボネート、5−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
メチレンエチレンカーボネート系化合物としては、例えば、メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジメチル−5−メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジエチル−5−メチレンエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのうち、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、特にビニレンカーボネートが好ましい。
これらは1種を単独で用いても、2種類以上を併用しても良い。
非水系電解液が分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステル化合物を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上であり、通常8重量%以下、好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルを電解液に含有させることにより、電池のサイクル特性を向上させることができる。その理由は明かではないが、負極の表面に安定な保護被膜を形成することができるためと推測される。ただし、その含有量が少ないとこの特性が十分に向上しない。しかし、含有量が多すぎると高温保存時にガス発生量が増大する傾向にあるので、電解液中の含有量は上記の範囲にするのが好ましい。
過充電防止剤としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール及び2,6−ジフルオロアニソ−ル等の含フッ素アニソール化合物などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種類以上併用しても良い。
非水系電解液中における過充電防止剤の割合は、通常0.1〜5重量%である。過充電防止剤を含有させることにより、過充電等のときの電池の破裂・発火を抑制することができる。
他の助剤としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン及びテトラメチルチウラムモノスルフィド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いても良く、2種類以上併用して用いても良い。
非水系電解液中におけるこれらの助剤の割合は、通常0.1〜5重量%である。これらの助剤を含有することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
非水系電解液は、電解液中に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状又は、ゴム状、或いは固体シート状の固体電解質としても良い。有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
非水電解質二次電池用負極には、電解質、負極、及び正極の他に、更に必要に応じて、外缶、セパレータ、ガスケット、封口板、セルケースなどを用いることもできる。
セパレータの材質や形状は特に制限されない。セパレータは正極と負極が物理的に接触しないように分離するものであり、イオン透過性が高く、電気抵抗が低いものであるのが好ましい。セパレータは電解液に対して安定で保液性が優れた材料の中から選択するのが好ましい。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布が挙げられる。
本発明の非水電解質二次電池の形状は特に制限されず、例えば、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等にすることができる。
電解質、負極及び正極を少なくとも有する本発明の非水電解質二次電池を製造する方法は特に限定されず、通常採用されている方法の中から適宜選択することができる。
本発明の非水電解質二次電池の製造方法の一例を挙げると、外缶上に負極を乗せ、その上に電解液とセパレータを設け、更に負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット及び封口板と共にかしめて電池を組み立てる方法が挙げられる。
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
ターゲット材として、SiとCの混合物(SiとCの面積比が大凡100対9の円板)を用いた。集電体基板として平均表面粗さ(Ra)が0.2μm、引張強度が280N/mm、0.2%耐力が220N/mmで、厚さが18μmである電解銅箔を用いた。直流スパッタ装置(島津製作所社製「HSM−52」)にて45分間活物質薄膜の成膜を行って、薄膜負極を得た。
集電体基板は水冷されたホルダーに取り付け、約25℃に維持し、チャンバーを予め4×10-4Paまで真空引き後、高純度アルゴンガスをチャンバー内に40sccm流し、メインバルブの開度を調整して1.6Paの雰囲気としてから、電力密度4.7W/cm、堆積速度(成膜速度)約1.8nm/sec(0.108μm/分)で成膜を行った。このスパッタガスの酸素濃度は0.0010%であった。
薄膜形成前に、電解銅箔表面の酸化膜を除去する目的で、逆スパッタを行い基板表面のエッチングをした。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は5μmであった(Fig.1a,Fig.2a参照)。
下記の方法に従ってXPSにて薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Cは24原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.49に相当した。原子濃度比はSi/C/O=1.00/0.33/0.04であった。
下記の方法に従ってラマン測定にて薄膜のラマン値を求めたところ、RC=0.05、RSC=scピーク検出されず、RS=0.55であった。
下記の方法に従って薄膜のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.38であった。
下記の方法に従って電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)にて、薄膜中におけるSiの膜厚方向の重量濃度分布を測定したところ、Fig.1bに示すように、Siの最大値、又は最小値と平均値の差(絶対値)が25%以内であり、Siは実質的に集電体から連続に成膜されていた。また、薄膜中の元素Cの分布を測定したところ、Fig.2cに示すように、Si薄膜中に元素Cは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
以下の実施例及び比較例において、薄膜負極の分析及び測定方法は、特記しない限り、実施例1におけると同様であることは留意(note)されなければならない。
<XPS測定>
X線光電子分光法測定としては、X線光電子分光器(アルバック・ファイ社製「ESCA」)を用い、薄膜負極の表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、Arスパッタを行いながらデプスプロファイル測定を実施した。濃度一定になった深さ(例えば、200nm)での、Si2p(90〜110eV)とC1s(280〜300eV)とO1s(525〜545eV)のスペクトルを得た。得られたC1sのピークトップを284.5eVとして帯電補正し、Si2p、C1s及びO1sのスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、Si、C及びOの原子濃度をそれぞれ算出した。算出されたSiとCとOの原子濃度から、原始濃度比Si/C/O(Si原子濃度/C原子濃度/O原子濃度)を算出し、薄膜の組成値Si/C/Oと定義する。
<ラマン測定>
ラマン分光器(日本分光社製「ラマン分光器」)を用い、薄膜負極を測定セルへセットし、測定はセル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射させながらラマン測定を行った。
ラマン測定条件は次のとおりである。
アルゴンイオンレーザー波長:514.5nm
試料上のレーザーパワー:15〜40mW
分解能:10〜20cm-1
測定範囲:200cm-1〜1900cm-1
スムージング処理:単純平均、コンボリューション15ポイント
<X線回折測定>
リガク社製「RINT2000PC」を用い、薄膜負極を測定セルへセットし、Out-of-Plane法にて、2θ=10〜70度の範囲でX線回析を行った。バックグラウンドの補正は、2θ=15〜20度付近と、40〜45度付近を直線で結び行った。
<EPMA測定>
EPMAによる膜厚方向の重量濃度分布、又は薄膜断面の分布分析としては、電子プローブマイクロアナライザー(JEOL社製「JXA−8100」)を用い、樹脂包埋を行わずにミクロトームで断面作成した薄膜負極について、集電体から薄膜表面までの元素分析を行った。膜厚方向の重量濃度分布を求める時は、測定した元素の総和を100%に換算し直した値を用いて、Siの膜厚方向の重量濃度分布を求めた。
上記で製造された薄膜負極を用いて、下記の方法に従ってリチウム二次電池を作製し、この電池について、下記方法で放電容量、充放電効率、サイクル特性(A)、50サイクル時充放電効率、及びサイクル後の電極膨張率の評価を行い、結果を表2に示した。
<リチウム二次電池作製方法>
上記方法で作製した薄膜負極を10mmφに打ち抜き、110℃で真空乾燥した後、グローブボックスへ移し、アルゴン雰囲気下で、電解液とセパーレータと対極とを用いてコイン電池(リチウム二次電池)を作製した。電解液としてはエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3/7(重量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6電解液とを用いた。セパレータとしてポリエチレンセパレータとを用いた。対極としてリチウム金属対極を用いた。
<放電容量評価>
1.23mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して10mVまで充電し、更に、10mVの一定電圧で電流値が0.123mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、1.23mA/cm2の電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行なう充放電サイクルを5サイクル繰り返し、3〜5サイクル目の放電の平均値を放電容量とした。重量当りの放電容量とする場合は、活物質重量は負極重量から同面積に打ち抜いた銅箔の重量を差し引くことで求め、以下にの式で計算した。
放電容量(mAh/g)
=3〜5サイクル目の平均放電容量(mAh)/活物質重量(g)
活物質重量(g)=負極重量(g)−同面積の銅箔重量(g)
<充放電効率評価>
放電容量の測定時に、以下の式で計算した。
充放電効率(%)={初回放電容量(mAh)/初回充電容量(mAh)}×100
<サイクル特性(A)評価>
上述の放電容量の測定方法に従い、この充放電サイクルを50回繰り返し、以下の式でサイクル維持率(A)を計算した。
サイクル維持率(A)(%)
={50サイクル後の放電容量(mAh)/3〜5サイクルの平均放電容量
(mAh)}×100
<50サイクル時の充放電効率評価>
上述のサイクル特性(A)の測定方法に従い、この充放電サイクルを50回繰り返し、以下の式で50サイクル時の充放電効率を計算した。
50サイクル時の充放電効率(%)
={50回時の放電容量(mAh)/50回時の充電容量(mAh)}×100
<サイクル後の電極膨張率測定>
上述のサイクル特性(A)の測定後(50サイクル後)、放電状態のコイン電池をアルゴングローブボックス中で短絡させないように解体し、電極を取り出して、脱水したジメチルエーテル溶媒で洗浄、乾燥後、SEM観察にてサイクル後放電時の電極の厚み(銅箔除く)を測定した。電池作製前の電極の厚み(銅箔除く)を基準として、次式に基づいてサイクル後の電極膨張率を求めた。
サイクル後の電極膨張率(倍)=(サイクル後の電極厚み/充放電前の電極厚み)
下記の方法に従って、上述のサイクル特性(A)の測定後の負極を取り出し、活物質薄膜を剥離して赤外透過光測定を行ったところ、表2に示す通り、サイクル後IRsc=1.5であった。同様な方法で未充放電の薄膜負極について赤外透過光測定を行ったところ、IRsc=0.3であり、Fig.3に示すように1600〜1650cm−1付近の吸収は殆ど見られなかった。
<赤外透過光測定>
赤外分光光度計(サーモエレクトロン社製「Magna560」)を用い、充放電を行った後の薄膜負極から活物質薄膜を剥離して測定セルにセットし、透過法により赤外透過光測定を行った。
活物質薄膜は、上記のサイクル特性(A)の測定後(50サイクル後)、放電状態のコイン電池をアルゴングローブボックス中で短絡させないように解体し、電極を取り出して、脱水したジメチルエーテル溶媒で洗浄、乾燥後、集電体銅箔から剥離して測定に用いた。
バックグラウンドの補正は、Fig.3に示すように、2000〜4000cm−1の範囲における最小値を結んだ直線を延長し、バックグラウンドを求め、その値を各強度から差し引くことで行った。
[実施例2]
ターゲット材のSiとCの面積比を100対2に変えた以外は、実施例1と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約2.3nm/secで40分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は5μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Cは6原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.13に相当した。原子濃度比はSi/C/O=1.00/0.07/0.08であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず、RSC=scピーク検出されず、RS=0.45であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.15であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布、及び、元素Cの分布を測定したところ、実施例1と同様にSiは実質的に集電体から連続に成膜されおり、且つ、Si薄膜中に元素Cは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[実施例3]
ターゲット材にSi粒子とC粒子の混合物を焼結したものを用いた以外は、実施例1と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約1.7nm/secで45分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は5μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Cは30原子%含有されており、SiC中の元素の濃度に対するC濃度比Q(C)は0.63に相当した。原子濃度比はSi/C/O=1.00/0.45/0.06であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RC=0.09、RSC=0.13、RS=0.59であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.60であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布、及び、元素Cの分布を測定したところ、実施例1と同様にSiは実質的に集電体から連続に成膜されおり、且つ、Si薄膜中に元素Cは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[実施例4]
約20μmのSi粒子と黒鉛を重量比で8対2の割合で混合して、ペレットを作成し蒸着源とし、集電体基板として平均表面粗さ(Ra)が0.2μm、引張強度が280N/mm、0.2%耐力が220N/mmで、厚さが18μmである電解銅箔を用い、ULVAC社製「EX−400装置」にて電子ビーム加熱蒸着を行って、薄膜負極を作製した。この時、チャンバーを予め9×10-5Paまで真空引き後、エミッション電流60mAで、堆積速度約5nm/secで15分間成膜を行った。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は4μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Cは18原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.43に相当した。原子濃度比はSi/C/O=1/0.28/0.26であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RC=0.10、RSC=0.15、RS=0.60であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.38であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布、及び、元素Cの分布を測定したところ、実施例1と同様にSiは実質的に集電体から連続に成膜されおり、且つ、Si薄膜中に元素Cは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[実施例5]
成膜時の高純度アルゴンガス流量を90sccmとし、メインバルブの開度を調整して5.3Paの雰囲気とした以外は、実施例2と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約1.5nm/secで50分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は5μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Cは22原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.57に相当した。原子濃度比でSi/C/O=1/0.40/0.42であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RC=0.11、RSC=0.17、RS=0.68であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.73であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布、及び、元素Cの分布を測定したところ、実施例1と同様にSiは実質的に集電体から連続に成膜されおり、且つ、Si薄膜中に元素Cは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[実施例6]
ターゲット材としてSiを用い、集電体基板として平均表面粗さ(Ra)が0.2μm、引張強度が280N/mm、0.2%耐力が220N/mmで、厚さが18μmである電解銅箔を用い、直流スパッタ装置(島津製作所社製「HSM−52」)にて28分間活物質薄膜の成膜を行って、薄膜負極を得た。
この時、集電体基板は水冷されたホルダーに取り付け、約25℃に維持し、チャンバーを予め4×10-4Paまで真空引き後、メインバルブの開度を調整しながら、チャンバー内に高純度窒素ガスを流して圧力を0.16Paにし、続いて高純度アルゴンガスを流して圧力を1.6Paの雰囲気としてから、電力密度7.1W/cm、堆積速度(成膜速度)約4nm/sec(0.24μm/分)で成膜を行った。この時スパッタガスの窒素濃度は10%であった。
なお、薄膜形成前に、電解銅箔表面の酸化膜を除去する目的で、逆スパッタを行い基板表面のエッチングをした。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は6μmであった(Fig.4a参照)。
下記の方法に従ってXPSにて薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Nは33原子%含有されており、SiN中の元素Nの濃度に対するN濃度比Q(N)は0.68に相当した。原子濃度比はSi/N/O=1.00/0.51/0.02であった。
実施例1におけると同様のラマン測定にて薄膜のラマン値を求めたところ、RSN=0.44、RS=0.72であった。
下記の方法に従って薄膜のX線回折測定を行ったところ、Si等の明確なピークは検出されずXIsz=0.91であった。
実施例1と同様のEPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布を測定したところ、Fig.4bに示すように、Siの最大値、又は最小値と平均値の差(絶対値)が25%以内であり、Siは実質的に集電体から連続に成膜されていた。
薄膜中の元素Nの分布を測定したところ、実施例1の元素Cと同様にSi薄膜中に元素Nは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
<XPS測定>
X線光電子分光法測定としては、X線光電子分光器(アルバック・ファイ社製「ESCA」)を用い、薄膜負極の表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、Arスパッタを行いながらデプスプロファイル測定を実施した。濃度一定になった深さ(例えば、200nm)での、Si2p(90〜110eV)とN1s(394〜414eV)とO1s(525〜545eV)のスペクトルを得た。不純物等として若干検出されるC1sのピークトップを284.5eVとして帯電補正し、Si2p、N1s、O1sのスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、Si、N、Oの原子濃度をそれぞれ算出した。得られたそのSiとNとOの原子濃度から、Si基準の元素Z濃度、原子濃度比Si/N/O(Si原子濃度/N原子濃度/O原子濃度)を算出した。
<X線回折測定>
X線回折測定としては、2θ=10〜90度の範囲を測定した以外は、実施例1と同じ方法で行った。バックグラウンドの補正は、2θ=10〜20度付近と、50〜70度付近を直線で結び行った。
[実施例7]
チャンバー内に高純度窒素ガスを流した時の圧力を0.24Paに変えた以外は、実施例6と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約3nm/secで30分間成膜した。スパッタガスの窒素濃度は15%であった。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は6μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Nは41原子%含有されており、SiN中の元素N濃度に対するN濃度比Q(N)は0.82に相当した。原子濃度比はSi/N/O=1.00/0.70/0.02であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RSN=0.69、RS=0.79であった。また、薄膜のX線回折測定を行ったところ、Si等の明確なピークは検出されずXIsz=0.94であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布、及び、元素Nの分布を測定したところ、実施例6と同様にSiは実質的に集電体から連続に成膜されおり、且つ、Si薄膜中に元素Nは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[実施例8]
チャンバー内に高純度窒素ガスを流した時の圧力を0.08Paに変えた以外は、実施例6と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約4nm/secで27分間成膜した。スパッタガスの窒素濃度は5%であった。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は6μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Nは20原子%含有されており、SiN中の元素N濃度に対するN濃度比Q(N)は0.43に相当した。原子濃度比はSi/N/O=1.00/0.27/0.06であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RSN=0.17、RS=0.57であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、Si等の明確なピークは検出されずXIsz=0.94であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布、及び、元素Nの分布を測定したところ、実施例1と同様にSiは実質的に集電体から連続に成膜されおり、且つ、Si薄膜中に元素Nは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[実施例9]
ターゲット材として、SiとNの混合物(Si円板上に、SiとSiの面積比が大凡100対100となるように、Siのチップを貼り付けたもの)を用い、チャンバー内に高純度アルゴンガスのみを流して圧力を1.6Paの雰囲気にした以外は、実施例6と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約4nm/secで25分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は6μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Nは20原子%含有されており、SiN中の元素N濃度に対するN濃度比Q(N)は0.42に相当した。原子濃度比はSi/N/O=1.00/0.26/0.06であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RSN=0.15、RS=0.55であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、Si等の明確なピークは検出されずXIsz=0.95であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布、及び、元素Nの分布を測定したところ、実施例6と同様にSiは実質的に集電体から連続に成膜されおり、且つ、Si薄膜中に元素Nは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[実施例10]
ターゲット材として、SiとBの混合物(Si円板上に、SiとBの面積比が大凡100対8となるように、Bのチップを貼り付けたもの)を用い、チャンバー内に高純度アルゴンガスのみを流して圧力を1.6Paの雰囲気にした以外は、実施例6と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約3nm/secで28分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は5μmであった(Fig.5a参照)。
実施例6と同様な方法で薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Bは35原子%含有されており、SiB中の元素Bの濃度に対するB濃度比Q(B)は0.47に相当した。原子濃度比はSi/B/O=1.00/0.54/0.02であった。
下記の方法に従って薄膜のX線回折測定を行ったところ、SiB等の明確なピークは検出されずXIsz=0.46であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布を測定したところ、Fig.5bに示すように、Siの最大値、又は最小値と平均値の差(絶対値)が25%以内であり、Siは実質的に集電体から連続に成膜されていた。
薄膜中の元素Bの分布を測定したところ、実施例1の元素Cと同様にSi薄膜中に元素Bは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
<X線回折測定>
X線回折測定としては、2θ=10〜90度の範囲を測定した以外は、実施例1と同じ方法で行った。バックグラウンドの補正は、2θ=10〜20度付近と、60〜70度付近を直線で結び行った。
[実施例11]
ターゲット材として、Si円板上に、SiとBの面積比が大凡100対10となるようにしたものを用いた以外は、実施例10と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約3nm/secで36分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は6μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Bは42原子%含有されており、SiB中の元素B濃度に対するB濃度比Q(B)は0.57に相当した。原子濃度比はSi/B/O=1.00/0.74/0.02であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、SiB等の明確なピークは検出されずXIsz=0.46であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布、及び、元素Bの分布を測定したところ、実施例10と同様にSiは実質的に集電体から連続に成膜されおり、且つ、Si薄膜中に元素Bは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[実施例12]
ターゲット材として、Si円板上に、SiとBの面積比が大凡100対12となるようにしたものを用いた以外は、実施例10と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約3nm/secで42分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は6μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Bは53原子%含有されており、SiB中の元素B濃度に対するB濃度比Q(B)は、0.71に相当した。原子濃度比はSi/B/O=1.00/1.15/0.02であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、SiB等の明確なピークは検出されずXIsz=0.64であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布、及び、元素Bの分布を測定したところ、実施例10と同様にSiは実質的に集電体から連続に成膜されおり、且つ、Si薄膜中に元素Bは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[実施例13]
ターゲット材として、SiとCの混合物(SiとCの面積比が大凡100対9の円板)を用いた以外は、実施例8と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。、この時、堆積速度は約3nm/secで35分間成膜した。スパッタガスの窒素濃度は5%であった。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は6μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Cが6原子%、元素Nが19原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.16に、SiN中の元素N濃度に対するN濃度比Q(N)は0.42に相当し、それらの合計値であるZ濃度比Q(C+N)は0.58であった。原子濃度比はSi/C及びN/O=1.00/0.09/0.27/0.06であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず、RSC=scピーク検出されず、RSN=0.16、RS=0.56であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、SiC、Si等の明確なピークは検出されずXIsz=0.14(SiC基準)、若しくは0.92(Si基準)であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布、及び、元素C及びNの分布を測定したところ、実施例1と同様にSiは実質的に集電体から連続に成膜されおり、且つ、Si薄膜中に元素C及びNは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[実施例14]
破砕Siを蒸着源とし、集電体基板として平均表面粗さ(Ra)が0.2μm、引張強度が400N/mm、0.2%耐力が380N/mmで、厚さが18μmである粗面化した圧延銅箔を用い、ULVAC社製「DRP−40E装置」にて電子ビーム加熱蒸着式イオンプレーティングを行って、薄膜負極を作製した。
この時、チャンバーを予め2×10-3Paまで真空引き後、バルブの開度を調整しながら、チャンバー内に高純度窒素ガスを流して圧力を0.05Paの雰囲気とした。その後、Siを蒸発させる電子ビーム加熱条件として電圧10kV、電流140mAで、窒素をイオン化させるRF方式条件としてコイル出力200Wで、基板のバイアス電圧−0.5kV、電流10mA、堆積速度約2nm/secで35分間成膜を行った。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は4μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Nは18原子%含有されており、SiN中の元素N濃度に対するN濃度比Q(N)は0.37に相当した。原子濃度比はSi/N/O=1.00/0.23/0.08であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RSN=0.13、RS=0.55であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、Si等の明確なピークは検出されずXIsz=0.94であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布、及び、元素Nの分布を測定したところ、実施例6と同様にSiは実質的に集電体から連続に成膜されおり、且つ、Si薄膜中に元素Nは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[実施例15]
破砕Siを蒸着源とし、集電体基板として平均表面粗さ(Ra)が0.2μm、引張強度が400N/mm、0.2%耐力が380N/mmで、厚さが18μmである粗面化した圧延銅箔を用い、セキスイメディカル電子社製「MU−1700D高周波誘導加熱装置」と、アリオス社製「MP201イオン銃装置」を組み合わせた装置にて、高周波誘導加熱蒸着式イオンプレーティングを行って、薄膜負極を作製した。
この時、チャンバーを予め7×10-4Paまで真空引き後、バルブの開度を調整しながら、チャンバー内に高純度窒素ガスを流して圧力を0.1Paの雰囲気とした。その後、Siを蒸発させる高周波誘導加熱条件として電流12Aで、窒素をイオン化させる条件として出力150W、イオン加速電圧12kVで、基板のバイアス電圧−0.5kVにて、堆積速度約20nm/secで5分間成膜を行った。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は5μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Nは23原子%含有されており、SiN中の元素N濃度に対するN濃度比Q(N)は0.48に相当した。原子濃度比はSi/N/O=1.00/0.32/0.07であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RSN=0.23、RS=0.61であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、Si等の明確なピークは検出されずXIsz=0.92であった。
EPMAで薄膜中のSiの膜厚方向の重量濃度分布、及び、元素Nの分布を測定したところ、実施例6と同様にSiは実質的に集電体から連続に成膜されおり、且つ、Si薄膜中に元素Nは1μm以下の大きさで均一に分布していた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例1]
ターゲット材にSiを用いた以外は、実施例1と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は5μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素C及びNは含有されておらず、原子濃度比はSi/O=1.00/0.02であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず、RSC=scピーク検出されず、RS=0.30、RSN=0.09であった。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例2]
蒸着源にSiOを用い、集電体基板として平均表面粗さ(Ra)が0.2μmで、厚さが18μmである電解銅箔を用い、ULVAC社製「VPC−260F装置」にて抵抗加熱蒸着を行った。この時、チャンバーを予め3×10-3Paまで真空引き後、155Aの電流を流し、堆積速度約10nm/secで成膜を行って、薄膜負極を作製した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は6μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素C及びNは含有されておらず、原子濃度比はSi/O=1.00/1.33であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RC=0.17、RSC=0.06、RS=1.09、RSN=0.10であった。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例3]
ターゲット材を、SiとNiの混合物(Si円板上に、SiとNiの面積比が大凡100対4となるように、Niのチップを貼りつけたもの)に変えた以外は、実施例10と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約5nm/secで25分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は6μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Niは25原子%含有されており、NiSi中の元素Ni濃度に対するNi濃度比Q(Ni)は0.79に相当した。原子濃度比はSi/Ni/O=1.00/0.35/0.06であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず、RSC=0.04、RS=0.28、RSN=0.07であった。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例4]
ターゲット材を、SiとCuの混合物(Si円板上に、SiとCuの面積比が大凡100対3となるようにCuのチップを貼り付けたもの)に変えた以外は、実施例10と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約5nm/secで25分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄
膜の膜厚は6μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Cuは26原子%含有されており、CuSi中の元素Cu濃度に対するCu濃度比Q(Cu)は0.35に相当した。原子濃度比はSi/Cu/O=1.00/0.36/0.03であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず、RSC=scピーク検出されず、RS=0.34、RSN=0.09であった。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例5]
ターゲット材を、SiとCoの混合物(Si円板上に、SiとCoの面積比が大凡100対4となるようにCoのチップを貼り付けたもの)に変えた以外は、実施例10と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約5nm/secで25分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は6μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Coは18原子%含有されており、CoSi中の元素Co濃度に対するCo濃度比Q(Co)は0.54に相当した。原子濃度比はSi/Co/O=1.00/0.22/0.01であった。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例6]
成膜時の高純度アルゴンガス中の酸素濃度を0.150%に変えた以外は、実施例2と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約0.6nm/secで140分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は5μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Cは27原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.81に相当した。原子濃度比はSi/C/O=1.00/0.68/0.83であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RC=2.69、RSC=0.35、RS=0.84であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、XIsz=0.77であった。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例7]
ターゲット材にSi粒子とSiO粒子とC粒子の混合物を焼結したものを用いた以外は、実施例1と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約1nm/secで80分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は5μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Cは69原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は1.55に相当した。原子濃度比はSi/C/O=1.00/3.45/0.55であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RC=27.7、RSC=1.05、RS=0.38であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、XIsz=0.42であった。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例8]
ターゲット材のSiとCの面積比を100対1に変えた以外は、実施例2と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約2nm/secで40分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は5μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Cは3原子%含有されており、SiC中の元素C濃度に対するC濃度比Q(C)は0.06に相当した。原子濃度比はSi/C/O=1.00/0.03/0.06であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RC=cピーク検出されず、RSC=scピーク検出されず、RS=0.41であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、SiCの明確なピークは検出されずXIsz=0.13であった。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例9]
チャンバー内に高純度窒素ガスを流した時の圧力を0.4Paに変えた以外は、実施例6と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約3nm/secで40分間成膜した。スパッタガスの窒素濃度は25%であった。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は7μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Nは53原子%含有されており、SiN中の元素N濃度に対するN濃度比Q(N)は1.07に相当した。原子濃度比はSi/N/O=1.00/1.15/0.02であった。
薄膜のラマンスペクトル分析をしたところ、ラマンピークは得られなかった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、XIsz=1.18であった。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例10]
チャンバー内に高純度窒素ガスを流した時の圧力を3.2×10-3Paに変えた以外は、実施例6と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約3nm/secで28分間成膜した。スパッタガスの窒素濃度は0.2%であった。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は5μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Nは1原子%含有されており、SiN中の元素N濃度に対するN濃度比Q(N)は0.02に相当した。原子濃度比はSi/N/O=1.00/0.01/0.01であった。
薄膜のラマン値を求めたところ、RSN=0.08、RS=0.31であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、XIsz=0.98であった。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例11]
ターゲット材として、SiとBの面積比が大凡100対17の円板を用いた以外は、実施例10と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約2nm/secで50分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は6μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Bは73原子%含有されており、SiB中の元素B濃度に対するB濃度比Q(B)は0.98に相当した。原子濃度比はSi/B/O=1.00/2.81/0.04であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、XIsz=1.10であった。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例12]
ターゲット材として、SiとBの面積比が大凡100対1の円板を用いた以外は、実施例10と同様にして活物質薄膜を成膜して薄膜負極を作製した。この時、堆積速度は約4nm/secで25分間成膜した。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、成膜された薄膜の膜厚は5μmであった。
薄膜の組成分析をしたところ、薄膜中に元素Bは4.5原子%含有されており、SiB中の元素N濃度に対するB濃度比Q(B)は、0.06に相当した。原子濃度比はSi/B/O=1.00/0.05/0.02であった。
薄膜のX線回折測定を行ったところ、XIsz=0.10であった。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
[比較例13]
ターゲット材にSiを用い、比較例1と同様な方法でSi薄膜を4.5μm成膜した。更に、ターゲット材にCを用い、このSi活物質薄膜の上にC薄膜を0.5μm成膜した。
この薄膜の組成を堆積した重量比から算出したところ、原子濃度比で表すとSi/C=1.00/0.26であった。
得られた薄膜負極の薄膜の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から、Si薄膜表面はカーボン層で覆われており、SiとCが二層構造になっていた。
この薄膜負極を用いて実施例1と同様にしてコイン電池の作製及び評価を行い、結果を表2に示した。
Figure 2006128067
Figure 2006128067
表1,2より次のことが分かる。
比較例1の負極の活物質薄膜は、集電体から連続的に成膜されたSi薄膜であるが、薄膜中に元素Zが存在せず本発明の規定範囲外であり、その結果、良いサイクル特性が得られず、且つ、サイクル後の電極膨張率が大きかった。
比較例2の負極の活物質薄膜は、元素OがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とする、集電体から連続的に成膜されたSiO薄膜であるが、薄膜中に元素Zに相当する物が存在せず本発明の規定範囲外であり、その結果、充放電効率が低く、高容量な電池特性を得ることはできなかった。
比較例3の負極の活物質薄膜は、元素NiがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とする、集電体から連続的に成膜されたSi/Ni薄膜であるが、薄膜中に元素Zに相当する物が存在せず、本発明の規定範囲外であり、その結果、良いサイクル特性が得られなかった。
比較例4の負極の活物質薄膜は、元素CuがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とする、集電体から連続的に成膜されたSi/Cu薄膜であるが、薄膜中に元素Zに相当する物が存在せず、本発明の規定範囲外であり、その結果、良いサイクル特性が得られなかった。
比較例5の負極の活物質薄膜は、元素CoがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とする、集電体から連続的に成膜されたSi/Co薄膜であるが、薄膜中に元素Zに相当する物が存在せず、本発明の規定範囲外であり、その結果、良いサイクル特性が得られなかった。
比較例6の負極の活物質薄膜は、元素CがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とする、集電体から連続的に成膜されたSi/C/O薄膜であるが、薄膜中の元素O量が本発明の規定範囲を上回っており、その結果、Siを含有している効果が現れず、Cのみが充放電し、且つ、O量が多い為に充放電効率が低く、高容量な電池特性を得ることはできなかった。
比較例7の負極の活物質薄膜は、元素CがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とする、集電体から連続的に成膜されたSi/C/O薄膜であるが、薄膜中の元素C量が本発明の規定範囲を大きく上回っており、その結果、Siを含有している効果が現れず、Cのみが充放電し、充放電効率が低く、高容量な電池特性を得ることはできなかった。
比較例8の負極の活物質薄膜は、元素CがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とする、集電体から連続的に成膜されたSi/C/O薄膜であるが、薄膜中の元素C量が本発明の規定範囲を下回っており、その結果、Cを含有している効果が少なく、電極膨張が大きくなり、良いサイクル特性が得られなかった。
比較例9の負極の活物質薄膜は、元素NがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とする、集電体から連続的に成膜されたSi/N薄膜であるが、薄膜中の元素N量が本発明の規定範囲を上回っており、一部Siが形成され、充放電しなかった。
比較例10の負極の活物質薄膜は、元素NがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とする、集電体から連続的に成膜されたSi/N薄膜であるが、薄膜中の元素N量が本発明の規定範囲を下回っており、その結果、電極膨張が大きくなり、良いサイクル特性が得られなかった。
比較例11の負極の活物質薄膜は、元素BがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とする、集電体から連続的に成膜されたSi/B薄膜であるが、薄膜中の元素B量が本発明の規定範囲を上回っており、その結果、良いサイクル特性が得られなかった。
比較例12の負極の活物質薄膜は、元素BがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とする、集電体から連続的に成膜されたSi/B薄膜であるが、薄膜中の元素B量が本発明の規定範囲を下回っており、その結果、電極膨張が大きくなり、良いサイクル特性が得られなかった。
比較例13の負極の活物質薄膜は、原子濃度比が本発明の範囲内である元素CとSiからなるが、CがSi薄膜表面に存在しているためにCの分布が不均一であり、その結果、電極膨張が大きくなり、良いサイクル特性が得られなかった。
これらに対して、実施例1〜15の本発明の薄膜負極の活物質薄膜は、元素ZがSi中に非平衡的に存在した相を主成分とする、特定の化合物SiZからなり、且つ、該元素Zは、B、C及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素であり、全てが本発明の規定範囲を満たしている。そして、このような薄膜負極を用いると、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑えられた高性能の電池が得られる。
[実施例16]
実施例1で成膜した薄膜負極を用いて、下記の方法に従ってビニレンカーボネート(VC)を添加した電解液でリチウム二次電池を作製した。この電池について、下記のサイクル特性(B)の評価を行った。その結果、120サイクル後のサイクル維持率(B)は77%であった。
<リチウム二次電池作製方法>
作製した薄膜負極を10mmφに打ち抜き、85℃で真空乾燥した後、グローブボックスへ移し、アルゴン雰囲気下で、電解液とセパレータと対極を用いてコイン電池(リチウム二次電池)を作製した。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3/7(重量比)にVCを2重量%添加した混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6電解液を用いた。セパレータとしてはガラス不織布セパレータを用いた。対極としてはリチウムコバルト正極を用いた。
<サイクル特性(B)評価>
1.53mA/cm2の電流密度でリチウムコバルト正極に対して4.2Vまで充電し、更に、4.2Vの一定電圧で電流値が0.255mA/cmになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、1.53mA/cm2の電流密度でリチウムコバルト正極に対して2.5Vまで放電を行う充放電サイクルを120回繰り返し、以下の式でサイクル維持率(B)を計算した。
サイクル維持率(B)(%)
={120サイクル後の放電容量(mAh)/3サイクルの放電容量
(mAh)}×100
[実施例17]
電解液をエチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=3/7(重量比)の混合液とし、VCを添加しなかったこと以外は、実施例16と同様にしてコイン電池を作製し、同様にサイクル特性(B)の評価を行った。その結果、120サイクル後のサイクル維持率(B)は67%であった。
実施例16,17の結果を表3に示す。表3より、本発明に係る薄膜負極に対して分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステル化合物を含有する非水系電解液を用いることにより、電池のサイクル特性を向上させることができることが分かる。
Figure 2006128067
Si中に元素Zが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする活物質薄膜を有する非水電解質二次電池用負極であって、上記化合物が一般式SiZ(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表されることを特徴とする本発明の薄膜負極を用いることにより、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された、優れた非水電解質二次電池を実現することができるため、本発明の非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池は、非水電解質二次電池が適用される電子機器等の各種の分野において好適に利用可能である。
(1)元素Zは、B、C及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素である。
(2)元素MはSiと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族から選ばれる少なくとも1種の元素である。
(3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Si(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
(4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
(a)図は、実施例1で得られた薄膜負極のSEM写真であり、(b)図は、同EPMA測定から得られた膜厚方向の元素の総和を100%に換算し直した重量濃度分布である。 (a)図は、実施例1で得られた薄膜負極のSEM写真であり、(b)図、(c)図は、同EPMA測定から得られたSiとCの分布図である。 実施例1で得られた薄膜負極の活物質薄膜の赤外透過光測定データを示す模式図である。 (a)図は、実施例6で得られた薄膜負極のSEM写真であり、(b)図は、同EPMA測定から得られた膜厚方向の元素の総和を100%に換算し直した重量濃度分布である。 (a)図は、実施例10で得られた薄膜負極のSEM写真であり、(b)図は、同EPMA測定から得られた膜厚方向の元素の総和を100%に換算し直した重量濃度分布である。

Claims (24)

  1. Si中に元素Zが非平衡的に存在した相の化合物を主成分とする活物質薄膜を有する非水電解質二次電池用負極であって、
    上記化合物が一般式SiZ(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表されることを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
    (1)元素Zは、B、C及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素である。
    (2)元素MはSiと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族から選ばれる少なくとも1種の元素である。
    (3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Si(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
    Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
    (4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
  2. 集電体と、該集電体から連続的に成膜された前記活物質薄膜とを有することを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
  3. 前記一般式SiZにおいて、元素ZがCであり、xは0.053≦x≦0.70の範囲の数であり、前記活物質薄膜は、元素CがSi薄膜中に均一に分布している活物質薄膜であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極。
  4. 前記活物質薄膜のラマンスペクトル分析によるラマンRC値が0.0以上、2.0以下であり、且つ、ラマンRSC値が0.0以上、0.25以下であることを特徴とする請求項3記載の非水電解質二次電池用負極。
  5. 前記活物質薄膜のラマンスペクトル分析によるラマンRS値が0.40以上、0.75以下であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の非水電解質二次電池用負極。
  6. 前記一般式SiZにおいて、元素ZがCで、元素Mが酸素であり、x、yは、それぞれ0.053≦x≦0.70、0<y≦0.50の範囲の数であることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
  7. 充放電を行った後に、前記活物質薄膜の赤外分光光度計を用いた赤外透過光分析によるIRsc値が0.9以上、3.0以下であることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
  8. 前記一般式SiZにおいて、元素ZがNであり、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiがSiNであり、且つ一般式SiNのxは、前記Z濃度比Q(Z)が0.15〜0.85となる値であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極。
  9. 前記活物質薄膜は、元素NがSi薄膜中に均一に分布している活物質薄膜であることを特徴とする請求項8に記載の非水電解質二次電池用負極。
  10. 前記活物質薄膜のラマンスペクトル分析によるラマンRSN値が0.0以上、0.9以下であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の非水電解質二次電池用負極。
  11. 前記活物質薄膜のラマンスペクトル分析によるラマンRS値が0.4以上、1.0以下であることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
  12. 前記活物質薄膜のX線回折によるXIsz値が0.00以上、1.10以下であることを特徴とする請求項8ないし請求項11のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
  13. 前記一般式SiZにおいて元素ZがBであり、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiがSiBであり、且つ、一般式SiBのxは、前記Z濃度比Q(Z)が0.30〜0.85となる値であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極。
  14. 前記活物質薄膜は、元素BがSi薄膜中に均一に分布している活物質薄膜であることを特徴とする請求項13に記載の非水電解質二次電池用負極。
  15. 前記活物質薄膜のX線回折によるXIsz値が0.00以上、0.90以下であることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の非水電解質二次電池用負極。
  16. 集電体と、該集電体上に成膜された、一般式SiZ(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表される化合物を主成分とする活物質薄膜とで構成される非水電解質二次電池用負極を製造する方法であって、
    蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源として、Si、元素Z、及び元素Mを含むものを用い、
    Siと元素Zと元素Mとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、集電体基板上に1〜30μmの厚さに成膜することを特徴とする非水電解質二次電池用負極の製造方法。
    (1)元素Zは、B、C及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素である。
    (2)元素MはSiと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族から選ばれる少なくとも1種の元素である。
    (3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Si(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
    Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
    (4)yは、0≦y≦0.50の範囲の数である。
  17. 集電体と、該集電体上に成膜された、一般式SiZ(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表される化合物を主成分とする活物質薄膜とで構成される非水電解質二次電池用負極を製造する方法であって、
    蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源として、Si、及び元素Zを含むものを用い、
    Siと元素Zとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、集電体基板上に1〜30μmの厚さに成膜することを特徴とする非水電解質二次電池用負極の製造方法。
    (1)元素Zは、B、C及びNよりなる群の中から選択される少なくとも1種の元素である。
    (2)元素MはSiと元素Z以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族から選ばれる少なくとも1種の元素である。
    (3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物Si(式中a、pは整数)のZ濃度(p/(a+p))に対して、下記式で算出されるZ濃度比Q(Z)が0.10〜0.95となる値である。
    Q(Z)=[x/(1+x)]/[p/(a+p)]
    (4)yは、y=0又はy≒0である。
  18. 前記一般式SiZにおいて、元素ZがCで、0.053≦x≦0.70、0<y≦0.50であり、
    蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源として、Si、C、及び元素Mを含むものを用い、
    SiとCと元素Mとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、集電体基板上に1〜30μmの厚さに成膜することを特徴とする請求項16に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法。
  19. 前記一般式SiZにおいて、元素ZがCで、0.053≦x≦0.70、y=0又はy≒0であり、
    蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源として、Si、及びCを含むものを用い、
    SiとCとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、集電体基板上に1〜30μmの厚さに成膜することを特徴とする請求項17に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法。
  20. 集電体と、該集電体上に成膜された、一般式SiC(式中、x,yは、それぞれ0.053≦x≦0.70、0<y≦0.50の範囲の数である)で示される化合物を主成分とする活物質薄膜とで構成される非水電解質二次電池用負極を製造する方法であって、
    蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源として、Si及びCを含むものを用い、
    成膜ガス中の酸素濃度が0.0001〜0.125%である雰囲気下にて、SiとCとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、集電体基板上に1〜30μmの厚さに成膜することを特徴とする非水電解質二次電池用負極の製造方法。
  21. 集電体と、該集電体上に成膜された、一般式SiZ(式中Z、M、x、yは下記条件の通り)で表される化合物を主成分とする活物質薄膜とで構成される非水電解質二次電池用負極を製造する方法であって、
    蒸着源、スパッタ源、若しくは溶射源として、Siを含むものを用い、
    成膜ガス中の窒素濃度が1〜22%である雰囲気下にて、SiとNとを同時に、蒸着法、スパッタ法、及び溶射法のうちのいずれか1以上の手法にて、集電体基板上に1〜30μmの厚さに成膜することを特徴とする非水電解質二次電池用負極の製造方法。
    (1)元素Zは、Nである。
    (2)元素MはSiとN以外の周期表2族、4族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族、及び16族から選ばれる少なくとも1種の元素である。
    (3)xは、Siに最も近い組成で平衡的に存在する化合物SiNのN濃度50原子%に対して、下記式で算出されるN濃度比Q(N)が0.15〜0.85となる値である。
    Q(N)=[x/(1+x)]/0.5)
    (4)yは、y=0又はy≒0である。
  22. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える非水電解質二次電池において、該負極が、請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極であることを特徴とする非水電解質二次電池。
  23. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える非水電解質二次電池において、該負極が、請求項16ないし請求項21のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法により製造された非水電解質二次電池用負極であることを特徴とする非水電解質二次電池。
  24. 分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステル化合物を含有する非水系電解液を用いたことを特徴とする請求項22又は請求項23に記載の非水電解質二次電池。
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