JP7480765B2 - 負極および電池 - Google Patents

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Description

本開示は、負極および電池に関する。
近年、パソコン、携帯電話等の電子機器の急速な普及に伴い、その電源として用いられる電池の開発が進められている。また、自動車産業界においても、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)に用いられる電池の開発が進められている。種々の電池の中でも、リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いという利点を有する。
リチウムイオン二次電池に代表される電池は、通常、正極と、負極と、正極および負極の間に配置された電解質層とを有する。負極は、例えば、負極集電体と、負極集電体上に配置された負極活物質層(負極層)とを有する。例えば特許文献1には、硫化物系固体電解質を含む全固体二次電池用負極層が開示されている。特許文献1では、第1負極活物質層が、リチウム金属および無機負極活物質(例えばフッ化リチウム)を含むリチウム金属複合体を含むことが開示されている。また、特許文献2には、負極の反応として金属リチウムの析出-溶解反応を利用した全固体電池が開示されている。特許文献2では、負極層が、負極活物質として、金属リチウムと金属マグネシウムとのβ単相の合金を含むことが開示されている。
特開2021-077640号公報 特開2020-184513号公報
充放電に伴う容量低下が少ない電池が求められている。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、容量保持率が良好な負極を提供することを主目的とする。
本開示においては、負極集電体と、上記負極集電体上に配置された負極活物質層と、を有する負極であって、上記負極活物質層は、Li元素およびドープ元素を含むLi複合体を含有するLi複合体層を有し、上記Li複合体層において、上記負極集電体側とは反対側の第1表面における上記ドープ元素の濃度をCとし、上記負極集電体側の第2表面における上記ドープ元素の濃度をCとした場合に、上記Cが上記Cより大きい、負極を提供する。
本開示によれば、Li元素およびドープ元素を含むLi複合体を用い、さらに、ドープ元素の濃度がC>Cの関係を有することで、容量保持率が良好な負極となる。
上記開示においては、上記第2表面から上記第1表面に向かう方向において、上記Li複合体層における上記ドープ元素の濃度が、段階的または連続的に小さくなってもよい。
上記開示においては、上記Cが0atm%より大きくてもよい。
上記開示においては、上記Cに対する上記Cの割合(C/C)が、1.25以上、100以下であってもよい。
上記開示においては、上記Cが0atm%であってもよい。
上記開示においては、上記Li複合体層が、上記ドープ元素として、Mg、Al、Zn、Ag、Au、Si、Sn、In、Bi、PdおよびRhの少なくとも一種を含有していてもよい。
また、本開示においては、正極集電体および正極活物質層を有する正極と、負極集電体および負極活物質層を有する負極と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に配置された電解質層と、を有する電池であって、上記負極が、上述した負極である、電池を提供する。
本開示によれば、上述した負極を用いることで、サイクル特性が良好な電池となる。
本開示における負極は、容量保持率が良好であるという効果を奏する。
本開示における負極を説明する説明図である。 本開示におけるLi複合体層を説明する説明図である。 本開示におけるLi複合体層を説明する説明図である。 本開示におけるLi複合体層を説明する説明図である。 本開示におけるLi複合体層を説明する説明図である。 本開示におけるLi複合体層を説明する説明図である。 本開示における電池を例示する概略断面図である。 実施例13で得られた負極に対する、SEM-EDX測定の結果である。
以下、本開示における負極および電池について、詳細に説明する。本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
A.負極
図1(a)は、本開示における負極を例示する概略断面図である。図1(a)に示す負極10は、負極集電体1と、負極集電体1上に配置された負極活物質層2と、を有する。負極活物質層2は、Li元素およびドープ元素を含むLi複合体を含有するLi複合体層21を有する。図1(b)は、図1(a)におけるドープ元素の濃度分布を例示するグラフである。図1(a)、(b)に示すように、Li複合体層21において、負極集電体1側とは反対側の第1表面Sにおけるドープ元素の濃度をCとし、負極集電体1側の第2表面Sにおけるドープ元素の濃度をCとする。本開示においては、CがCより大きい。
本開示によれば、Li元素およびドープ元素を含むLi複合体を用い、さらに、ドープ元素の濃度がC>Cの関係を有することで、容量保持率が良好な負極となる。本発明者は、当初、Li複合体層におけるドープ元素の濃度分布が均一であること(例えばC=C)が、容量保持率の観点において、好ましいことを予想した。その理由は、ドープ元素の濃度分布が不均一であると、濃度が異なる組成の界面(結晶構造が僅かに異なる界面)が、充放電に伴う体積変化による亀裂の発生起点になり、Liの滑落または孤立が生じると推測されたためである。
これに対して、意外にも、ドープ元素の濃度をC>Cに設定することで、容量保持率の向上が確認された。その理由は、負極集電体側の表面におけるドープ元素の濃度Cを高くし、負極集電体とは反対側の表面におけるドープ元素の濃度Cを低くすることで、充放電に伴うLiの体積変化によって生じる応力が緩和され、亀裂の発生が抑制されたためであると推測される。また、後述する実施例に記載するように、ドープ元素の濃度をC>Cに設定することで、電池抵抗の低減が確認された。その理由は、負極集電体側の表面におけるドープ元素の濃度Cを高くし、負極集電体とは反対側の表面におけるドープ元素の濃度Cを低くすることで、Liイオンの拡散速度が向上したためであると推測される。
1.負極活物質層
本開示における負極活物質層は、Li元素およびドープ元素を含むLi複合体を含有するLi複合体層を有する。ドープ元素は、通常、Li元素以外の元素であり、かつ、金属Liと固溶体(例えば、侵入型固溶体または置換型固溶体)または金属間化合物を形成可能な元素である。すなわち、Li複合体は、通常、Li元素およびドープ元素を含有する固溶体、または、Li元素およびドープ元素を含有する金属間化合物である。ドープ元素は、典型的には金属元素であり、Li複合体は、典型的にはLi合金である。
ドープ元素としては、例えば、Mg、Al、Zn、Ag、Au、Si、Sn、In、Bi、Pd、Rhが挙げられる。Li複合体は、ドープ元素を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。Li複合体は、Li元素およびドープ元素のみを含有していてもよく、Li元素およびドープ元素に加えて、他の元素(金属Liと固溶体または金属間化合物を形成しない元素)を含有していてもよい。Li複合体における、Li元素およびドープ元素の合計の割合は、例えば75atm%以上であり、85atm%以上であってもよく、95atm%以上であってもよい。
図1(a)、(b)に示すように、Li複合体層21において、負極集電体1側とは反対側の第1表面Sにおけるドープ元素の濃度をCとし、負極集電体1側の第2表面Sにおけるドープ元素の濃度をCとする。ドープ元素の濃度は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)による測定で求めることができる。
精度を高める観点から、第1表面Sを含む所定の領域におけるドープ元素の平均濃度から、Cを算出することが好ましい。具体的には、図2に示すように、第1表面Sを含む所定の領域21xにおけるドープ元素の平均濃度を測定することが好ましい。例えばLi複合体層21の厚さが4μm以上である場合、領域21xは、例えば、第1表面Sから2μmまでの領域である。同様に、精度を高める観点から、第2表面Sを含む所定の領域におけるドープ元素の平均濃度から、Cを算出することが好ましい。具体的には、図2に示すように、第2表面Sを含む所定の領域21yにおけるドープ元素の平均濃度を測定することが好ましい。例えばLi複合体層21の厚さが4μm以上である場合、領域21yは、例えば、第2表面Sから2μmまでの領域である。
は、0atm%であってもよく、0atm%より大きくてもよい。後者の場合、Cは、例えば0.005atm%以上であり、0.01atm%以上であってもよく、0.1atm%以上であってもよく、1atm%以上であってもよい。一方、Cは、例えば80atm%以下であり、70atm%以下であってもよい。
は、Cより大きい。Cは、例えば0.5atm%以上であり、1atm%以上であってもよく、5atm%以上であってもよい。一方、Cは、100atm%であってもよく、100atm%より小さくてもよい。後者の場合、Cは、例えば95atm%以下であり、90atm%以下であってもよく、85atm%以下であってもよい。
が0atm%より大きい場合、Cに対するCの割合(C/C)は、例えば1.03以上であり、1.05以上であってもよく、1.08以上であってもよく、1.25以上であってもよい。C/Cが1.25以上である場合、容量保持率が特に高くなる。一方、C/Cは、例えば1000以下であり、700以下であってもよく、200以下であってもよく、100以下であってもよい。C/Cが100以下である場合、容量保持率が特に高くなる。
第2表面から第1表面に向かう方向において、Li複合体層におけるドープ元素の濃度が、段階的に小さくなっていてもよい。例えば図3(a)に示すLi複合体層21は、第1表面Sを含む第1領域21aと、第2表面Sを含む第2領域21bとを有し、第1領域21aおよび第2領域21bは、境界Bで接している。第1領域21aおよび第2領域21bの間に界面(固/固界面)は存在せず、両者は連続的に形成されている。また、図3(b)に示すように、第1領域21aにおけるドープ元素の濃度は、Cで均一ある。同様に、第2領域21bにおけるドープ元素の濃度は、Cで均一ある。図3においては、第2表面Sから第1表面Sに向かう方向において、Li複合体層21におけるドープ元素の濃度が、段階的に小さくなっている。なお、図3では、境界Bにおいてドープ元素の濃度が段階的(急激)に変化しているが、ドープ元素の濃度は、境界Bの近傍において連続的に変化していてもよい。
図3では、第2表面Sから第1表面Sに向かう方向において、ドープ元素の濃度が、CおよびCの2段階で、段階的に小さくなっている。本開示においては、第2表面から第1表面に向かう方向において、ドープ元素の濃度が、3段階以上で、段階的に小さくなっていてもよい。例えば、第2表面から第1表面に向かう方向において、ドープ元素の濃度が、C、C、Cの順に段階的に小さくなっていてもよい。この場合、Cは、C<C<Cを満たす。
第2表面から第1表面に向かう方向において、Li複合体層におけるドープ元素の濃度が、連続的に小さくなっていてもよい。例えば図1(b)に示すように、第2表面Sから第1表面Sに向かう方向において、ドープ元素の濃度が、CからCまで連続的に小さくなっていてもよい。また、図1(b)では、CからCまで、ドープ元素の濃度が直線的に小さくなっている。これに対して、図4(a)、(b)に示すように、CからCまで、ドープ元素の濃度が曲線的に小さくなっていてもよい。
上述したように、Cは、0atm%であってもよい。例えば図5(a)に示すLi複合体層21は、第3領域21cを有する。第3領域21cは第1表面Sを含み、第3領域21cにおけるドープ元素の濃度は0atm%である。第3領域21cは、Li元素のみを含む層であることが好ましい。第3領域21cの厚さは、例えば100nm以上であり、1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。図5(a)に示すLi複合体層21は、第3領域21cと、Li複合体を含有する第4領域21dとを有し、第3領域21cおよび第4領域21dは、境界Bで接している。第3領域21cおよび第4領域21dの間に界面(固/固界面)は存在せず、両者は連続的に形成されている。
図5(a)、(b)に示すように、境界Bにおけるドープ元素の濃度をCとする。Cは、通常、0atm%より大きい。Cの値の好ましい範囲については、上述したCの値の好ましい範囲と同様である。また、Cに対するCの割合(C/C)の好ましい範囲については、上述したC/Cの値の好ましい範囲と同様である。第2表面から境界Bに向かう方向において、Li複合体層におけるドープ元素の濃度が、段階的または連続的に小さくなっていることが好ましい。第2表面から境界Bに向かう方向において、ドープ元素の濃度が、2段階で、段階的に小さくなっていてもよく、3段階以上で、段階的に小さくなっていてもよい。また、第2表面から境界Bに向かう方向において、ドープ元素の濃度が、連続的に小さくなる場合、CからCまで、ドープ元素の濃度が直線的に小さくなっていてもよく、曲線的に小さくなっていてもよい。
本開示におけるLi複合体層は、複数の部材を積層した積層体であってもよい。図6(a)に示すLi複合体層21は、第1表面Sを有する第1部材21αと、第2表面Sを有する第2部材21βとを有し、第1部材21αおよび第2部材21βは、界面Iで接している。また、図6(b)に示すように、第1部材21αにおけるドープ元素の濃度は、Cで均一ある。同様に、第2部材21βにドープ元素の濃度は、Cで均一ある。図6においては、第2表面Sから第1表面Sに向かう方向において、Li複合体層21におけるドープ元素の濃度が、段階的に小さくなっている。また、特に図示しないが、Li複合体層は、第1表面を有する第1部材と、第2表面Sを有する第2部材と、第1部材および第2部材の間に配置された、1または2以上の第3部材とを有していてもよい。
Li複合体層の形状としては、例えば、箔状(膜状)が挙げられる。Li複合体層は、箔状(膜状)のLi複合体を有する層であることが好ましい。Li複合体層は、Li複合体の蒸着層であってもよい。また、Li複合体層は、通常、粒子状のLi複合体を含有する層ではない。
Li複合体層の厚さは、特に限定されないが、例えば1μm以上であり、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。一方、Li複合体層の厚さは、例えば1000μm以下であり、500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよい。Li複合体層の形成方法は、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法が挙げられる。
本開示における負極活物質層は、Li複合体層のみを含有していてもよく、Li複合体層に加えて、充放電容量に寄与する他の層をさらに含有していてもよい。
2.負極集電体
本開示における負極集電体は、負極活物質層の集電を行う。負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボンが挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状が挙げられる。負極集電体は、例えば、負極活物質層を基準として電解質層とは反対側に配置される。
3.負極
本開示における負極は、上述した負極活物質層および負極集電体を有する。負極は、電池に用いられることが好ましい。
B.電池
図7は、本開示における電池を例示する概略断面図である。図7に示す電池100は、正極集電体11および正極活物質層12を有する正極20と、負極集電体1および負極活物質層2を有する負極10と、正極活物質層12および負極活物質層2の間に配置された電解質層30と、を有する。負極10は、上記「A.負極」に記載した負極である。
本開示によれば、上述した負極を用いることで、サイクル特性が良好な電池となる。
1.負極
本開示における負極については、上記「A.負極」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。負極におけるLi複合体層と、電解質層とは接触していてもよい。また、負極におけるLi複合体層と、電解質層との間に、Li析出層が配置されていてもよい。Li析出層は、充電により析出したLi層である。
2.正極
本開示における正極は、正極集電体および正極活物質層を有する。正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する。正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等の岩塩層状型活物質、LiMn、LiTi12、Li(Ni0.5Mn1.5)O等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO等のオリビン型活物質が挙げられる。
正極活物質層は、電解質、導電材およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。電解質の詳細については、「3.電解質層」において後述する。導電材としては、例えば炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)等の粒子状炭素材料、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の繊維状炭素材料が挙げられる。バインダーとしては、例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素含有バインダーが挙げられる。また、正極活物質層の厚さは、例えば、0.1μm以上、1000μm以下である。
正極集電体は、正極活物質層の集電を行う。正極集電体の材料としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボンが挙げられる。正極集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状が挙げられる。正極集電体は、例えば、正極活物質層を基準として電解質層とは反対側に配置される。
3.電解質層
本開示における電解質層は、少なくとも電解質を含有する。電解質としては、例えば、液体電解質(電解液)、ゲル電解質、固体電解質が挙げられる。中でも、本開示における電池は、電解質層が液体電解質(電解液)を含有する液電池であることが好ましい。後述する実施例に記載するように、電池抵抗の低減に有効だからである。
電解液は、例えば、リチウム塩および溶媒を有する。リチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO、LiAsF等の無機リチウム塩;LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiC(SOCF等の有機リチウム塩が挙げられる。溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が挙げられる。
ゲル電解質は、通常、電解液にポリマーを添加することにより得られる。ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドが挙げられる。固体電解質としては、例えば、ポリマー電解質等の有機固体電解質;硫化物固体電解質、酸化物固体電解質等の無機固体電解質が挙げられる。また、電解質層の厚さは、例えば、0.1μm以上1000μm以下である。電解質層は、セパレータを有していてもよい。
4.電池
本開示における電池は、典型的にはリチウムイオン二次電池である。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
[実施例1]
(負極の作製)
真空蒸着法を用いて、負極集電体(Cu箔)上に、Li元素およびMg元素(ドープ元素)を含有するLi複合体層を形成した。具体的には、Li金属を配置した坩堝と、Mg金属を配置した坩堝とを用意し、これらの坩堝に電子ビーム加熱を行った。電子ビーム加熱により、LiおよびMgを真空蒸着装置内に揮発させ、Cu箔の表面上に蒸着させ、Li複合体層(厚さ40μm)を形成した。この際、所望のLi複合体層(第2表面におけるMg元素の濃度Cが30atm%であり、かつ、第1表面におけるMg元素の濃度Cが20atm%であるLi複合体層)が得られるように、蒸着条件を調整した。具体的には、Li元素の濃度およびMg元素の濃度を、坩堝の温度(すなわち、元素の揮発速度)を制御することで調整した。このようにして、負極集電体およびLi複合体層を有する負極を得た。
(正極の作製)
正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、導電材(アセチレンブラック)およびバインダー(ポリフッ化ビニリデン)と、分散剤とを、正極活物質:導電材:バインダー:分散剤=80:8:2:0.2の重量比で秤量した。これらの材料を、N-メチルピロリドンとともに混合して、正極スラリーを得た。得られた正極スラリーを、正極集電体(Al箔)上に塗工し、乾燥することにより、正極を得た。
(電池の作製)
電解液として、支持塩(LiPF)を、非水溶媒(ECおよびDMCを同体積で混合した混合溶媒)に、濃度が1Mとなるように溶解させた溶液を準備した。また、セパレータとして、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)の三層構造の多孔質フィルムを準備した。これらの部材と、上述した負極および正極とを用いて、捲回型の電池を作製した。
[比較例1]
Mg金属を用いないこと以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。得られた負極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
[比較例2]
第2表面におけるMg元素の濃度Cが20atm%であり、かつ、第1表面におけるMg元素の濃度Cが30atm%であるLi複合体層が得られるように、蒸着条件を調整したこと以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。得られた負極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
[評価]
(容量保持率)
実施例1および比較例1、2で得られた電池を用いて、200サイクル後の容量保持率を測定した。充放電条件は、定電流充放電、電流レート1C、電圧範囲3.3V~4.2V、環境温度60℃とした。1サイクル目の放電容量に対する、200サイクル目の放電容量の割合を、容量保持率とした。その結果を表1に示す。
(電池抵抗)
実施例1および比較例1、2で得られた電池に対して、電池抵抗の測定を行った。具体的には、電池の開回路電圧(OCV)を3.70Vに調整し、その後、環境温度-5℃、電流レート5C、放電時間8秒間の条件で放電した。この放電による電圧降下ΔVを取得し、以下の式を用いて電池抵抗を算出した。
電池抵抗=ΔV/(5Cの電流値)
その結果を表1に示す。なお、表1における電池抵抗の値は、比較例1の電池抵抗を1.00とした場合の相対値である。
表1に示すように、実施例1は、比較例1、2に比べて、容量保持率が高かった。これは、Li複合体層がLi元素に加えてドープ元素を含有し、さらに、ドープ元素の濃度がC>Cの関係を有することで、充放電に伴うLiの体積変化によって生じる応力が緩和され、亀裂の発生が抑制されたためであると推測される。また、実施例1は、比較例1、2に比べて、電池抵抗が低かった。これは、Li複合体層が、Li元素に加えてドープ元素を含有し、さらに、ドープ元素の濃度がC>Cの関係を有することで、Liイオンがドープ元素を介してスムーズに伝導したため(Liキャリア濃度が向上したため)であると推測される。
[実施例2~13]
およびCを、表2に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。得られた負極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
[評価]
実施例2~13で得られた電池を用いて、上記と同様に、容量保持率および電池抵抗を求めた。その結果を表2に示す。なお、表2における電池抵抗の値は、比較例1の電池抵抗を1.00とした場合の相対値である。
表2に示すように、実施例2~13では、容量保持率および電池抵抗が良好であった。特に、実施例4~11では、80%以上の高い容量保持率が得られた。同様に、実施例4~11では、電池抵抗が特に低かった。また、実施例13で得られた負極の断面を、SEM-EDXで観察した。その結果を図8に示す。図8に示すように、Li複合体層において、ドープ元素の濃度がC>Cの関係を有することが確認された。
[実施例14~23]
ドープ元素を、表3に示す元素に変更したこと以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。得られた負極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
[評価]
実施例14~23で得られた電池を用いて、上記と同様に、容量保持率および電池抵抗を求めた。その結果を表3に示す。なお、表3における電池抵抗の値は、比較例1の電池抵抗を1.00とした場合の相対値である。
表3に示すように、実施例14~23では、実施例1と同様に、容量保持率および電池抵抗が良好であった。すなわち、ドープ元素として、Mg元素以外の元素を用いても、同様の効果が得られることが確認された。
[実施例24]
およびCを、表4に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。得られた負極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
[評価]
実施例24で得られた電池を用いて、上記と同様に、容量保持率および電池抵抗を求めた。その結果を表4に示す。なお、表4における電池抵抗の値は、比較例1の電池抵抗を1.00とした場合の相対値である。
表4に示すように、実施例24では、実施例1と同様に、容量保持率および電池抵抗が良好であった。すなわち、Cが0atm%であっても、同様の効果が得られることが確認された。
1…負極集電体
2…負極活物質層
10…負極
11…正極集電体
12…正極活物質層
20…正極
21…Li複合体層
30…電解質層
100…電池

Claims (7)

  1. 負極集電体と、前記負極集電体上に配置された負極活物質層と、を有する負極であって、
    前記負極活物質層は、Li元素およびドープ元素を含むLi複合体を含有するLi複合体層を有し、
    前記Li複合体層において、前記負極集電体側とは反対側の第1表面における前記ドープ元素の濃度をCとし、前記負極集電体側の第2表面における前記ドープ元素の濃度をCとした場合に、前記Cが前記Cより大きい、負極。
  2. 前記第2表面から前記第1表面に向かう方向において、前記Li複合体層における前記ドープ元素の濃度が、段階的または連続的に小さくなる、請求項1に記載の負極。
  3. 前記Cが0atm%より大きい、請求項1または請求項2に記載の負極。
  4. 前記Cに対する前記Cの割合(C/C)が、1.25以上、100以下である、請求項3に記載の負極。
  5. 前記Cが0atm%である、請求項1または請求項2に記載の負極。
  6. 前記Li複合体層が、前記ドープ元素として、Mg、Al、Zn、Ag、Au、Si、Sn、In、Bi、PdおよびRhの少なくとも一種を含有する、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の負極。
  7. 正極集電体および正極活物質層を有する正極と、
    負極集電体および負極活物質層を有する負極と、
    前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に配置された電解質層と、
    を有する電池であって、
    前記負極が、請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の負極である、電池。
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