JP2012209202A - 非水電解質二次電池用負極材及びその製造方法、負極並びに非水系二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用負極材及びその製造方法、負極並びに非水系二次電池 Download PDF

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Abstract


【課題】放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された高性能の非水電解質二次電池用負極材(粒子)を提供する。
【解決手段】下記条件(1)〜(6)を満たすSiと元素Zと元素Mからなる化合物SiZxMyを含有する非水電解質二次電池用負極材。
(1)元素Zは、C及びNの少なくとも一方である。
(2)xの範囲が0.01≦x≦0.18である。
(3)元素MがSiと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上である。
(4)yの範囲は、0.01≦y≦0.35である。
(5)平均粒径(D50)が50nm以上20μm以下である。
(6)非晶質構造である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池用負極材及びその負極材を用いた非水電解質二次電池用負極、並びにこの非水電解質二次電池用負極を用いた非水電解質二次電池に関する。
近年、電子機器の小型化に伴い、高容量の二次電池が必要になってきている。特に、ニッケル・カドミウム、ニッケル・水素電池に比べ、よりエネルギ−密度の高い非水溶媒系リチウム二次電池が注目されてきている。リチウム二次電池の高容量化についても、従来、広く検討されていたが、近年、電池に要求される性能も高度化してきており、更なる高容量化が必要とされている。
リチウム二次電池の負極材料としては、これまで黒鉛などが検討されている。黒鉛はサイクル特性に優れ、電極膨張が小さく、且つ、安価であるために使用されてきた。しかしながら、黒鉛からなる負極材料は理論容量が372mAh/gという限界があり、更なる高容量化は期待出来ない。そこで、近年は黒鉛負極の代わりに理論容量が大きなリチウムと合金を形成するSi、Sn、Al等の合金系負極の検討がなされている。特にSiは容量が高く、負極としての適用が数多く試みられている。しかしながら、Si系負極はリチウムとの反応時に体積膨張が大きく、Siが微粉化したり、集電体から剥離しやすく、且つ、電解液との反応性が高く、サイクル特性が悪いという欠点がある。このため、合金系負極の高容量を活かしつつ、電解液との反応性が抑制された、サイクル特性に優れた、電極膨張の小さい負極の実現が求められている。
特許文献1には、非晶質Si粒子を用いると、粒子内が均質となり、充放電に伴う化学反応がムラなく起こり、充放電反応が進行しても不均質化が起こりにくく、従って微粉化や集電体からの剥離が抑制され、サイクル特性に優れた負極材を得ることが記載されている。
特許文献2には、酸化珪素粉末を窒素ガス中で加熱し、部分的に窒化させ、SiNxOy粉末とすることで、高容量でサイクル特性に優れたリチウム二次電池を得ることが記載されている。
特許文献3には、Si等を蒸着やスパッタ法で銅箔基板状へ成膜した薄膜電極を用いることにより、電気抵抗が低く集電性が高く、高電圧、高容量で充放電特性に優れたリチウム二次電池を得ることが記載されている。
特許文献4には、Si中に元素Zが非平衡的に存在した相の化合物を、少なくとも粒子表面に有する粉末状のSiZxMyで表される組成で含んでおり、 元素Zは、C及びNの少なくとも一方であり、元素Mは、Siと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上であることを特徴とする負極材を得ることが記載されている。
特開2008−123814号公報 特開2002−356314号公報 特開平11−135115号公報 国際公開第2006/123601号公報
しかしながら本発明者らの検討によると、近年の電池に対する更なる高容量化の必要性の増大に伴い、高容量であるSi系負極材の活用が望まれているが、Si系負極材では以下のような課題がある。電解液との反応に伴う不可逆容量が増加し、正極活物質中のリチウムを消費し、結果として電池容量が低下する。リチウムの挿入・脱離による膨張・収縮に伴うSi微粉化や集電体からの剥離が生じ、サイクル特性が悪化する。サイクル中に、Si微粉化に伴う新面生成により、電解液との反応が進行、充放電可能な活物質量が減少し、サイクル特性が悪化する。そして、サイクル中にリチウムの挿入による電極膨張が蓄積し、電池体積の増加、つまり体積当たりの電池容量の低下を招く。
従って、リチウム二次電池の更なる高容量化においては、Si系活物質を用いることによる高容量化だけでなく、電解液との反応を抑制し、初期及びサイクル中の充放電効率の向上、サイクル特性の向上、サイクル後の電極膨張の増加を抑制することが強く求められている。
しかしながら、特許文献1に開示される非晶質Si粒子の場合、Si−Si結合であるため、充放電に伴うSiの体積膨張が大きく、活物質割れ・微粉化を十分に抑えることが難しい。かつ表面での電解液との反応性も依然として存在し、サイクル特性を改善するには不十分である。
特許文献2においては、SiOZを原料に用いて部分窒化酸化珪素粉末SiNxOyを得ているが、Liと反応可能な酸素の含有量が多く、初期充放電効率が低くなり、電池容量を高く出来ない課題がある。
特許文献3においては、Siを蒸着法やスパッタ法で成膜することで、集電体との導電パス切れを抑制し、充放電特性を改良しているが、Siの電解液との反応性は抑制されておらず、サイクル特性が不十分であり、且つ、成膜速度の遅いスパッタ法等で成膜しているため生産性に課題もある。
特許文献4では、SiZxMyで表される組成の範囲は0.05<x<0.91と広く記載されているものの、実質的なxの範囲は0.18以上であり、更に平均粒径と組成の選択性については何ら重要性を述べていない、そして、発明者らの検討によると、特許文献4に開示されている製造方法で得られた負極材では電池特性において不十分であり、更なる製造方法の工夫による平均粒径と組成割合の最適化が必要であった。
そこで、本発明は、かかる背景技術に鑑みてなされたものであり、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された非水電解質二次電池を提供し得る非水電解質二次電池用負極材及び非水電解質二次電池用負極と、これらを用いた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、Siを含有する非水電解質二次電池用負極材の中でも、特に下記条件を満たす化合物SiZxMy(粒子)を含む非水電解質二次電池用負極材(粒子)を製造することに成功し、それを用いることにより、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制されたリチウムイオン二次電池を得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の趣旨は、下記条件(1)〜(6)を満たすSiと元素Zと元素Mからなる化合物SiZxMyを含有する非水電解質二次電池用負極材に存する。
(1)元素Zは、C及びNの少なくとも一方である。
(2)xの範囲が0.01≦x≦0.18である。
(3)元素MがSiと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上である。
(4)yの範囲は、0.01≦y≦0.35である。
(5)平均粒径(D50)が50nm以上20μm以下である。
(6)非晶質構造である。
本発明の非水電解質二次電池用負極材(粒子)は、負極材の膨張を抑制し、これにより、膨張収縮に伴う活物質割れ、電極内のクラック発生により導電パス切れを抑制する効果がある。また同時に、電解液との反応性に富むSi中にC及び/又はNよりなる元素Zを特定量分布させ特定の平均粒径をもたせることにより、Siの活量を効果的に低下させ、電解液との反応性を抑制し、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制された高性能の非水電解質二次電池を提供することができる。また、本発明の非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池は、非水電解質二次電池が適用される電子機器等の各種の分野において好適に利用可能である。
SiC0.120.15粒子のTEM像(明視野)を示した図 SiC0.120.15粒子のTEM像(暗視野)を示した図
以下、本発明の内容を詳細に述べる。なお、以下に記載する発明構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨をこえない限り、これらの形態に特定されるものではない。
[1]非水電解質二次電池用負極材
本発明の非水電解質二次電池用負極材は、下記条件(1)〜(6)を満たすSiと元素Zと元素Mからなる化合物SiZxMyを含有する非水電解質二次電池用負極材である。(1)元素Zは、C及びNの少なくとも一方である。
(2)xの範囲が0.01≦x≦0.18である。
(3)元素MがSiと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上である。
(4)yの範囲は、0.01≦y≦0.35である。
(5)平均粒径(D50)が50nm以上20μm以下である。
(6)非晶質構造である。
以下において、本発明の化合物SiZxMyを含む粉末状の負極材を「本発明の負極材粒子」と称す場合がある。本発明の負極材粒子を負極活物質として用い、集電体上に負極活物質を含む層を設けたものが「負極」である。
このような本発明の負極材粒子は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、ならびに電解質を備えたリチウム二次電池などの非水電解質二次電池における負極活物質として極めて有用である。例えば、負極活物質として本発明の負極材粒子を使用し、通常使用されるリチウム二次電池用の金属カルコゲナイド系正極及びカーボネート系溶媒を主体とする有機電解液を組み合わせて構成した非水電解質二次電池は、容量が大きく、初期サイクルに認められる不可逆容量が小さく、またサイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制され、高温下での放置における電池の保存性及び信頼性も高く、高効率放電特性及び低温における放電特性に極めて優れたものである。
[化合物SiZxMy]
本発明における化合物SiZxMyは、粒子であり、下記条件(1)〜(6)を満たせば特に制限はない。
(1)元素Zは、C及びNの少なくとも一方である。
(2)xの範囲が0.01≦x≦0.18である。
(3)元素MがSiと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上である。
(4)yの範囲は、0.01≦y≦0.35である。
(5)平均粒径(D50)が50nm以上20μm以下である。
(6)非晶質構造である。
<化合物SiZxMyの元素Z>
化合物SiZxMyにおける元素Zは、C及びNの少なくとも一方であり、好ましくはCである。
元素ZにC,N元素を用いる理由は、Si−Si結合よりも強固なSi−Z結合を導入することにより、充放電に伴う活物質の体積膨張を抑制し、それに伴う活物質割れ、導電パス切れを抑制することが可能となる。同時に、C,N元素は、Siに最も近い組成で平衡的に存在し、かつSiよりも高融点であるSiaZp(式中a、pは整数)を形成しうる元素であり、かつ、この高融点化合物は一般的に生成の自由エネルギ−が負で大きい安定な化合物であるために、Siよりも高融点であればSi負極材粒子表面の活量を効果的に低下させることができ、電解液との反応性を抑制するからである。
<化合物SiZxMyの元素M>
化合物SiZxMyの元素Mは、Siと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上であり、好ましくは、周期表4族、5族、6族、8族、9族、10族、11族、13族及び16族より選ばれる1種又は2種以上の元素であり、より好ましくは、Ti、Zr、V、Cr、W、B、O元素であり、更に好ましくは、Si−Si結合よりも強固なSi−M結合を有するという点で、Ti、Zr、W、O元素である。この中でもSiZxMyの製造過程で本化合物中に取り込みやすいという点でO元素が特に好ましい。
<化合物SiZxMyの組成>
化合物SiZxMyにおいて、SiZxMyのxは0.01≦x≦0.18であり、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.04以上、特に好ましくは0.05以上である。また、好ましくは0.17以下、より好ましくは0.16以下、更に好ましくは0.15以下である。
一方yの範囲は、0.01≦y≦0.35であり、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.04以上、特に好ましくは0.05以上である。また、好ましくは0.34以下、より好ましくは0.33以下、更に好ましくは0.32以下、特に好ましくは0.31以下である。
Siに対するx及び/又はyの含有量が大きくなると、放電容量が低下し、一方、x及び/又はyの含有量が上記範囲を下回ると、本発明の負極材粒子の粒子を含む電極層の膨張が大きくなり、導電パス切れが発生し、かつ表面の活量を下げる効果が小さく電解液との反応性を抑制できず、好ましいサイクル特性が得られ難い場合もある。
また、化合物SiZxMyにおいて、x+yは、通常0.02以上であり、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.08以上、特に好ましくは 0.1以上である。また、好ましくは0.52以下、より好ましくは0.50以下、更に好ましくは0.48以下、特に好ましくは0.46下である。x+yが大きすぎると容量が低下し、小さすぎると
非晶質構造をとらない為、充放電に伴う体積膨張による劣化を防ぎにくい傾向がある。
化合物SiZxMyのx、y組成は、下記の元素分析法により、試料中のSi、Z、Mの割合(mass%)を測定し、その値を原子%に換算し、更にSiを1とした時のZ、Mの原子濃度比に換算して、x、y組成を求める。
[元素分析測定方法]
Si分析は、原料をアルカリに溶解後、酸溶解溶液をICP−AESにて測定をおこなう。酸素分析は、酸素窒素分析装置、ON分析計(不活性ガス雰囲気下インパルス炉加熱抽出−IR,TCD検出)、LECO社酸素窒素分析装置TC600)、炭素分析は、炭素硫黄分析装置 CS分析計(高周波炉燃焼−IR検出法、LECO社製 炭素硫黄分析装置 CS600)を用いて測定できる。
[化合物SiZxMyの構造]
本発明の化合物SiZxMyの構造としてはSi粉末粒子中に元素Z、Mが分散したSiZxMy組成であり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では結晶性のドメインが確認できない非晶質な状態、つまり非晶質構造が存在することが確認できる(図1、図2を参照)。
<化合物SiZxMyの非晶質状態>
化合物SiZxMyの非晶質状態は、以下のX線回折測定方法により求められ、次のように定義することもできる。
SiZxMyで表される微粒子において、X線回折で測定されるSi(111)面の半値幅が、通常6度以上であり、好ましくは6.2度以上、より好ましくは6.4度以上、更に好ましくは6.6度以上、特に好ましくは6.8度以上である。半値幅が小さすぎると結晶性が高いことを意味しており、充放電時の体積膨張に伴うサイクル劣化を避けることが困難になる傾向がある。また、通常20度以下である。
また、結晶子サイズについては、上記半値幅を使い、シェラーの式に基づいて計算される値である。非晶質であることは、結晶子サイズがより小さい値を持つことになる。当該結晶子サイズは、通常1.36nm以下であり、好ましくは1.32nm以下、より好ましくは1.28以下、更に好ましくは1.24以下、特に好ましくは1.20以下である。また、ラマン分光測定法によっても、次のように定義することができる。SiZxMyであらわされる微粒子において、ラマン分光で測定されるラマンシフトが250cm−1〜500cm−1の範囲である。
[X線回折測定方法]
X線回折測定における化合物SiZxMyのSi(111)面の半値幅は、例えば、本発明の化合物SiZxMyを照射面にセットし、例えばX線回折装置(PANalytical社製「X‘PertPro MPD」)を用いて測定される。測定条件は、集中法
光学系にて、2θ=5〜70度の範囲の測定を行う。バックグラウンドの補正は、カーブフィッティング法により行う。バックグランド補正後、2θが28.4度のSi(111)面相当のピークに対してカーブフィッティングを行い、そのピークの半値幅を求め、外部標準による補正をおこなった後の値を、化合物SiZxMyの半値幅とする。
ここで用いられる半値幅の定義は次の通りである。
2θが28.4度のSi(111)面相当のピーク強度を測定し、そのピーク強度の半分に相当するピーク幅を半値幅W補正前とする。外部標準として、単結晶シリコンのSi(111)面(2θ=28.4度)の半値幅W標準を測定し、SiZxMyの半値幅W(SiZxMy)=W補正前−W標準で計算される。
[ラマン分光測定法]
ラマン分光器(例えば、Thermo Fisher Scientific社 Nicolet Almega XR」)を用い、本発明の化合物SiZxMyを測定セルにセ
ットし、励起波長532nm(分解能10cm−1)のレーザー光を照射し測定を行う。測定したラマンスペクトルのバックグラウンド補正を行う。なお、バックグラウンド補正は、ピーク終始点を直線で結び、バックグラウンドを求め、その値をピーク強度から差し
引く。
<化合物SiZxMy中の元素Z、Mの分布状態>
本発明の化合物SiZxMyにおける元素Zは、例えば、原子、若しくは分子、或いはクラスタ−等、5nm以下の大きさのレベルで存在し、元素Z、Mの分布状態は、好ましくはSiZxMy中で均一である。本発明の化合物SiZxMyの表面のSiZxMy層における元素Zの分布が不均一で、元素Zが局所的に存在している場合、本発明の化合物SiZxMyの体積膨張を緩和させることが難しい。また負極材の活量を均一に下げられないため、電解液との反応性を抑制できず、好ましいサイクル特性が得られ難い場合もある。なお、分散状態は、後述の実施例に示す如く、TEM測定等で確認できる。
<平均粒径(D50)>
体積基準の平均粒径(D50)としては、イオン交換水を分散媒としてレーザー回折式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製「LA−920」)にて、体積基準の平均粒径(D50)を測定した値を用いることができる。後述の実施例では、この方法により体積基準の平均粒径(D50)を求める。
本発明の化合物SiZxMyの平均粒径(D50)は、50nm以上、好ましくは80nm以上、また20μm以下、好ましくは18μm以下である。化合物SiZxMyの平均粒径(D50)がこの範囲を下回ると、粒径が小さすぎるため、化合物SiZxMy粒子間の導電パスや、化合物SiZxMy粒子と後述の導電剤や負極材Aとの間の導電パスが取り難くなり、サイクル特性が悪化する虞がある。一方、この範囲を上回ると、体積膨張による活物質割れが顕著であり、導電パス切れを引き起こす。また、後述の如く塗布により集電体上に負極活物質層を製造する時に電極層のムラが生じる傾向がある。
[製造方法]
本発明の化合物SiZxMyは、以下に挙げる製造法などによって製造することができる。
<原料>
化合物SiZxMyの原料のうち、Si原料としては、例えば結晶性Si、多結晶Si、アモルファスSi、シリコン化合物(窒化珪素、炭化珪素等)等を用いることができる。好ましくは結晶性Si、多結晶Si,アモルファスSiであり、これらは1600〜2
500℃で蒸気圧も持つため原料として好ましい。
元素Zの原料としては、C,N元素の原料を別々に、又は同時に用いることができる。例えば、C元素の原料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素、コ−クス、炭化物等である。これらの中でも、純度が高く、コストが安いものを用いることが好ましく、例えば天然黒鉛、コ−クスなどである。
N元素の原料としては、窒化物等が挙げられる。また、原料がガスの場合、C元素の原料としては、Cを含むガス(CH、C、C等)を、N元素の原料としては、Nを含むガス(NH、N等)を用いることができる。これらの中でも、比較的安価であるものが好ましく、Cの場合、CH、Nの場合、Nである。
また、これら元素Mの原料としては、固体であれば、例えば粉末状、顆粒状、ペレット状、塊状、板状等として用いられ、あるいはM原料からなるガスを用いることが好ましい。具体的には、安価であり、簡便に導入可能なHO、O2、CO,COなどが好ましく、CO,COがより好ましい。
固体状の元素Mの原料としては、SiO、SiO、Si−Ti合金、Si−Zr合金、Si−W合金が挙げられ、これらの中でも、好ましくはSiO、SiOである。これらは、1600〜2300℃で蒸気圧も持つため原料として適している。
Si及び元素Zを組み合わせた単一の化合物(若しくは元素)を原料として用いても良く、複数の化合物として用いても良い。これらの中でも、好ましくは窒化珪素、炭化珪素等である。また、Si、元素Z、及び元素Mを組み合わせた単一の化合物を用いても良く、複数の化合物として用いても良い。
<プロセス>
本発明の化合物SiZxMyを製造するにおいて、特に制限はないが、以下の製造プロセスが好ましい。
一例として、真空下でSi原料を溶融化後、蒸発・気化させ、対向する冷却部に急冷凝結させる方法があげられる。
具体的には以下の工程である。
工程(1)真空下でSi原料を溶融化させる。
工程(2)溶融化させたSi原料を蒸発、気化させる。
工程(3)元素Mを導入しながら、気化したSi原料を対向する冷却部に急冷凝結させる。
工程(4)対向する冷却部に付着した化合物SiZxMyを粒子にする。
・工程(1)について
真空度は、通常5x10−2torr以下、好ましくは8x10−2torr以下、より好ましくは1x10−3torr以下である。真空度が低すぎると、プラズマが発生し、工程(2)でおこなう蒸着が不可となる傾向がある。
溶融化する温度は、通常1430℃以上、好ましい1440℃以上、より好ましくは1450℃以上、更に好ましくは1460℃以上である。また、通常1500℃以下、好ましくは1490℃以下、より好ましくは1480℃以下である。温度が低すぎると、Siが溶融されず、温度が高すぎると、蒸発気化する傾向がある。
この際、元素Zの原料を溶融化する前にあらかじめ導入することが好ましい。具体的には、Si原料と同時に元素Zを混合する方法、C元素であれば、原料として混合する方法の他に、Si原料を溶融する際に用いる黒鉛坩堝をC元素源として用いる等の方法を用いて導入する。
・工程(2)について
真空度は、通常5x10−2torr以下、好ましくは8x10−2torr以下、より好ましくは1x10−3torr以下である。真空度が低すぎると、プラズマが発生し、蒸着が不可となる傾向がある
溶融化させたSi原料を蒸発、気化させる温度は、通常1500℃以上、好ましくは1520℃以上、より好ましくは1540℃以上、更に好ましくは1560℃以上である。また、通常3000℃以下、好ましくは2900℃以下、より好ましくは2800℃以下である。温度が低すぎるとSiの蒸発気化速度が十分でなくなる傾向があり、温度が高すぎると、気化したSi原料の凝固する速度が速く、組成制御が困難になる傾向がある。
・工程(3)について
Si原料を急冷凝結させる際の冷却速度は、通常500℃/秒以上であり、好ましくは600℃/秒以上、より好ましく700℃/秒以上、更に好ましくは800℃/秒以上、特に好ましくは1000℃/秒以上である。急冷速度が遅すぎると、結晶化が進行し、充放電に伴うサイクル劣化を防ぎにくくなる傾向がある。
また、気化したSi原料を急冷凝結させるときの雰囲気ガスとして、HO、O、CO又はCOガスが含まれていることが好ましい。これらの1種類以上同時に使用しても
構わない。
雰囲気ガス中に、HO、O、CO又はCOガスが含まれていると、SiZxMy組成のMの原料が酸素の場合、その酸素含有量を制御することが可能となるためである。この中でもCO及び/またはCOガスが好ましい。
導入するガス量は、通常1SCCM以上であり、好ましくは2SCCM以上、より好ましくは3SCCM以上、更に好ましくは4SCCM以上、特に好ましくは、5SCCM以上である。また好ましくは500SCCM以下であり、より好ましくは400SCCM以下、更に好ましくは300SCCM以下、特に好ましくは200SCCM以下である。ガス量が少なすぎると、元素MをSiZxMy化合物中に取り込むことができにくくなり、一方ガス量が多すぎると、M成分が多く含有されることになり、電池容量の低下を招く傾向がある。
上記の他に、Si,及び元素Zを含む原料を用いて、溶融後、急冷凝固する方法として、例えば板材や線材や粉末を形成後に、更に粉砕する方法が挙げられる。
板材を急冷凝固によって製造する方法としては、ロール法(ロールスピニング法、双ロールスピニング法)、直接鋳造圧延法、メルトドラッグ法等が挙げられる。また、線材を急冷凝固によって製造する方法としては、回転液中紡糸法等が挙げられる。更にまた、粉末を急冷凝固によって製造する方法としては、遠心噴霧法、回転液噴霧法、回転電極法、ガス噴霧スプラット法、メルトエクストラクション法、メルトスピニング法等が挙げられる。
対向する冷却部の材質としては、銅、ステンレス等があげられ、この中でも銅が冷却速度の点で好ましい。
工程(3)で得られた化合物SiZxMyは、薄片・粉末物の形状を示している。
上述した工程(1)〜(3)を経ることが、特定の非結晶構造をもつ化合物SiZxMyを製造するために重要な工程である。
・工程(4)について
対向する冷却部に付着した化合物SiZxMyを上記平均粒径(D50)に粉砕できれば粉砕条件や粉砕に用いる装置について特に制限はない。
例えば、粗粉砕機としてはジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コ−ンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としてはボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル等が挙げられる。
この中でもボールミル、振動ミル等であれば、粉砕時間が短く、処理速度の観点から好ましい。
粉砕速度は、装置の種類、大きさによって変わるが、例えば、ボールミルの場合、通常50rpm以上、好ましい100rpm以上、より好ましくは150rpm以上、更に好ましくは200rpm以上である。また、通常2500以下、好ましくは2300以下、より好ましくは2000以下である。速度が速すぎると、粒径の制御が難しくなる傾向があり、速度が遅すぎると処理速度が遅くなる傾向がある。
粉砕時間は、通常30秒以上、好ましい1分以上、より好ましくは1分30秒以上、更に好ましくは2分以上である。また、通常3時間以下、好ましくは2.5時間以下、より好ましくは2時間以下である。粉砕時間が短すぎると粒径制御が難しくなる傾向があり、粉砕時間が長すぎると、生産性が低下する傾向がある。
振動ミルの場合、粉砕速度は、通常50rpm以上、好ましい100rpm以上、より好ましくは150rpm以上、更に好ましくは200rpm以上である。また、通常2500rpm以下、好ましくは2300rpm以下、より好ましくは2000rpm以下で
ある。速度が速すぎると、粒径の制御が難しくなる傾向があり、速度が遅すぎると処理速度が遅くなる傾向がある。
粉砕時間は、通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは1分30秒以上、更に好ましくは2分以上である。また、通常3時間以下、好ましくは2.5時間以下、より好ましくは2時間以下である。粉砕時間が短すぎると粒径制御が難しくなる傾向があり、粉砕時間が長すぎると、生産性が低下する傾向がある。
また、必要に応じて分級処理を行ってもよい。
分級処理の条件としては、上記粒径になるように、目開きが、通常53μm以下、好ましくは45μm以下、より好ましくは38μm以下である。
分級処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、乾式篩い分けの場合:回転式篩い、動揺式篩い、旋動式篩い、振動式篩い等を用いることができ、乾式気流式分級の場合:重力式分級機、慣性力式分級機、遠心力式分級機(クラシファイア、サイクロン等)等を用いることができ、湿式篩い分けの場合:機械的湿式分級機、水力分級機、沈降分級機、遠心式湿式分級機等を用いることができる。
[非水電解質二次電池用負極材]
本発明の非水電解質二次電池用負極材は、上述した化合物SiZxMyが少なくとも含有されていればよく、一種又は二種以上を、他の一種又は二種以上の炭素材料と混合しても良い。
上述の化合物SiZxMyに炭素材料を混合する場合、化合物SiZxMyと炭素材料の総量に対する化合物SiZxMyの混合割合は、特に制限はないが、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、また、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下の範囲である。化合物SiZxMyの混合割合が、前記範囲を下回ると、化合物SiZxMyの効果が現れ難い傾向がある。一方、前記範囲を上回ると、炭素材料の特性が現れ難い傾向がある。
炭素材料としては、特に制限はないが、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質被覆黒鉛、非晶質炭素の中から選ばれる材料を用いる。これらの材料は、何れかを一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせ及び組成で併用しても良い。
天然黒鉛としては、例えば、高純度化した鱗片状黒鉛や球形化した黒鉛を用いることができる。天然黒鉛の体積基準平均粒径は、通常3μm以上、好ましくは5μm以上、また、通常40μm以下、好ましくは30μm以下の範囲である。天然黒鉛のBET比表面積は、通常1m/g以上、好ましくは、1.5m/g以上、また、通常10m/g以下、好ましくは8m/g以下の範囲である。
人造黒鉛としては、炭素材料を黒鉛化した粒子等が挙げられ、例えば、単一の黒鉛前駆体粒子を粉状のまま焼成、黒鉛化した粒子などを用いることができる。
非晶質被覆黒鉛としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛に非晶質前駆対を被覆、焼成した粒子や、天然黒鉛や人造黒鉛に非晶質をCVDにより被覆した粒子を用いることができる。
非晶質炭素としては、例えば、樹脂を焼成した粒子、タール・ピッチを焼成した粒子、バルクメソフェーズを焼成した粒子や、黒鉛化可能なバインダーを不融化処理し、焼成した粒子を用いることができる。
化合物SiZxMyと炭素材料との混合に用いる装置としては、特に制限はないが、例えば、回転型混合機の場合:円筒型混合機、双子円筒型混合機、二重円錐型混合機、正立方型混合機、鍬形混合機、固定型混合機の場合:螺旋型混合機、リボン型混合機、Muller型混合機、Helical Flight型混合機、Pugmill型混合機、流
動化型混合機、ボールミル、振動ボールミル、ジェットミル、ハイブリダイザー、メカノフュージョン等を用いることができる。
[非水電解質二次電池用負極]
本発明の非水電解質二次電池用負極は、負極活物質として本発明の負極材粒子を用いたものであり、一般的には、集電体上に本発明の負極材粒子層を導電性が確保されるように設けてなるものである。
このような本発明の負極は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備えたリチウム二次電池などの非水電解質二次電池における負極として極めて有用である。例えば、本発明の負極を使用し、通常使用されるリチウム二次電池用の金属カルコゲナイド系正極及びカーボネート系溶媒を主体とする有機電解液を組み合わせて構成した非水電解質二次電池は、容量が大きく、初期サイクルに認められる不可逆容量が小さく、またサイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑制され、高温下での放置における電池の保存性及び信頼性も高く、高効率放電特性及び低温における放電特性に極めて優れたものである。
[集電体]
集電体としては、例えば、金属円柱、金属コイル、金属板、金属箔膜、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱などが用いられる。この中でも特に金属箔膜が、現在工業化製品に使用されているために好ましい。なお、金属薄膜は適宣メッシュ状にして用いても良い。
金属箔膜の厚さは、特に限定はされないが、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、更に好ましくは20μm以下である。上記範囲よりも薄い金属箔膜の場合、集電体として必要な強度が不足する場合もある。
また、集電体に用いられる金属としては、具体的には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、鉄、チタン、アルミニウム等が挙げられる。この中でも、好ましくは銅及びニッケルが挙げられ、更に好ましくは銅が挙げられる。これは、負極活物質を結着させることが容易で、工業的に、形、大きさ等の加工が容易なためである。
[負極の物性]
<充填密度>
負極の充填密度は、特に制限されないが、通常0.5g/cm以上、好ましくは0.6g/cm以上、また通常2.5g/cm以下、好ましくは2.3g/cm以下である。負極の充填密度がこの範囲を下回ると、高容量の電池を得難い場合もある。一方、この範囲を上回ると電極中の気孔量が少なくなる虞があり、好ましい電池特性を得難い場合がある。
なお、負極の充填密度としては、集電体を除く負極重量を、負極面積と負極厚みで除して求めた値を用いることができる。
<空隙率>
負極の空隙率は、特に制限されないが、通常10%以上、好ましくは20%以上、また通常50%以下、好ましくは40%以下である。負極の空隙率がこの範囲を下回ると、負極中の気孔が少なく電解液が浸透し難くなり、好ましい電池特性を得難い場合もある。一方、この範囲を上回ると、負極中の気孔が多く電極強度が弱くなりすぎて、好ましい電池特性を得難い場合もある。
なお、負極の空隙率としては、負極の水銀ポロシメ−タによる細孔分布測定によって得られる全細孔容積を、集電体を除いた負極材活物質層の見掛け体積で割った値の百分率を用いることができる。
[負極の構造及び製造方法]
負極の構造及びその製造方法としては特に制限はないが、例えば、負極の構造としてはA:本発明の負極材粒子と、必要に応じて用いられる導電剤と、結着及び増粘効果を有する有機物(以下「結着剤」と称す。)を集電体上に塗布した構造
B:本発明の負極材粒子が導電性物質と複合化した粒子と、結着剤を集電体上に塗布した構造
C:本発明の負極材粒子が、焼結剤により集電体と一体に焼結された構造
D:本発明の負極材粒子が、低融点金属と結合することにより集電体と一体化した構造
E:本発明の負極材粒子が、バインダー成分無しに集電体と一体化した構造
などが挙げられる。以下に、A〜Eの負極の構造及びその製造方法について説明する。
A:負極材粒子と必要に応じ用いられる導電剤と、結着剤を集電体上に塗布した構造
この構造は、本発明の負極材粒子に、負極材A及び/又は導電剤と結着剤を含有する負極材粒子(負極活物質ともいう)層を集電体上に形成してなる。
<導電剤>
負極活物質層には、導電剤を含んでもよい。導電剤は、用いる負極活物質の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でも良い。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノファイバー、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、銅等の金属粉末類などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、アセチレンブラック、VGCFが特に好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
導電剤の添加量は、特に限定されないが、負極活物質に対して、1〜30重量%が好ましく、特に1〜15重量%が好ましい。
<結着剤>
結着剤としては、後述する液体溶媒に対して安定な高分子が好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、セルロ−ス等の樹脂系高分子、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム又はエチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマ−状高分子、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、又はプロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等の軟質樹脂状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。また共重合体であっても良い。
上記のイオン伝導性を有する高分子組成物としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物や、ポリエーテル化合物の架橋体高分子や、ポリエピークロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、又はポリアクリロニトリル等の高分子化合物に、リチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩かを複合させた高分子、あるいはこれにプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の高い誘電率又はイオン−双極子相互作用力かを有する有機化合物を配合した高分子を用いることができる。
具体的には、通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳
香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸、又はセルロ−ス及びその誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース)等の樹脂系高分子、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、又はエチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテル化合物の架橋体高分子が挙げられ、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリエチレンオキシドが挙げられ、更に好ましくは、ポリエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、又はポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。これらは、現在工業的に一般に使用されており、扱い易いため好適である。熱硬化性樹脂の場合、樹脂前駆体を用いても良い。
この構造の負極は、本発明の負極材粒子と、負極材A及び/又は導電剤と、結着剤を分散中に分散させたスラリー状のものを、集電体基板上に薄く塗布・乾燥する工程、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレス工程により製造される。更に、熱硬化性樹脂の場合、Ar、N、air雰囲気下、所定の硬化温度で硬化させる工程が加わり、それがプレス前であってもプレス後であってもよい。
負極活物質、必要に応じて用いられる導電剤と結着剤を混合して集電体上に塗布する際の負極活物質スラリーの調製には、水系溶媒又は有機溶媒が分散媒として用いられる。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類等の添加剤を水に対して、30重量%以下程度まで添加することもできる。
有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。
負極活物質、結着剤及び必要に応じて配合される導電剤をこれらの溶媒に混合して負極活物質スラリーを調製し、これを負極用集電体基板に所定の厚みとなるように塗布することにより負極活物質層が形成されるが、この負極活物質スラリー中の負極活物質の濃度の上限は通常60重量%以下、好ましくは50重量%以下であり、下限は通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上である。負極活物質の濃度がこの上限を超えると負極活物質スラリー中の負極活物質が凝集しやすくなり、下限を下回ると負極活物質スラリーの保存中に負極活物質が沈降しやすくなる。
負極活物質スラリー中の結着剤の濃度の上限は通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下であり、下限は通常1重量%以上、好ましくは2重量以上である。結着剤の濃度がこの上限を超えると得られる負極の内部抵抗が大きくなり、下限を下回ると負極活物質層の結着性に劣るものとなる場合もある。
B:負極活物質が導電性物質と複合化した粒子と、結着剤を集電体上に塗布した構造
この構造は、本発明の負極材粒子と導電性物質が複合化した粒子と結着剤を含有する活物質層を集電体上に形成してなり、通常、複合化粒子と結着剤を水あるいは上述の(A)におけると同様な有機溶媒中に分散させたスラリー状のものを、集電体基板上に薄く塗布・乾燥する工程、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレス工程により形成される。この場合も、Aと同様に、導電剤を入れても構わない。
<導電性物質>
導電性物質には、導電性を有する酸化物や炭素、黒鉛、カーボンブラック、銅、アルミニウム、錫などの金属類等が用いられる。例えば、酸化物としてはIn2O3、ZnO、SnO2、SiOx等、炭素としてはCVD炭素等、黒鉛としては天然黒鉛、人造黒鉛、VGCF、カーボンナノファイバー等が挙げられる。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛、球形化黒鉛等)、人造黒鉛(メソカーボンマイクロビーズ等)のグラファイト類、ピッチや樹脂等を焼成した非晶質炭素類、黒鉛と非晶質炭素を複合化した多相構造材料類、が挙げられる。負極材粒子表面への被覆方法は、熱処理(熱分解)、ボールミル等のメカノケミカル処理などが用いられる。
<複合化粒子>
複合化した粒子は、メカノケミカル法、CVD法、炭素前駆体との焼成法等により、本発明の負極材粒子と導電性物質を混合、複合化することで得られる。
メカノケミカル法による混合、複合化する方法としては、例えば、ボールミル、振動ミル、遊星ボールミル、メカノフュージョン(ホソカワミクロン製)、ハイブリダイザー、マイクロス(奈良機械製作所製)等の装置を用いることができる。
CVD法としては、例えば、炭化水素系ガスを原料とし、負極材粒子表面に膜状、及び/又は繊維状の熱分解炭素(黒鉛)を形成し、複合化する方法が挙げられる。尚、CVD処理前にNi等の触媒をあらかじめ負極材粒子表面に担持しても良い。
炭素前駆体との焼成法としては、負極材粒子と導電性物質と石油ピッチ、石炭ピッチやコールタールピッチ類や、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、セルロース類などの樹脂類を原料とした炭素前駆体を混合し、更に600〜1300℃程度の温度で焼成することで複合化する方法が挙げられる。
複合化粒子の構造としては、例えば、導電性物質のマトリックス中に負極材粒子の微粒子が包埋されている構造や、負極材粒子の表面を導電性物質が被覆している構造や、負極材粒子の表面に繊維状の導電性物質が生成している構造などが挙げられる。
複合化粒子中の導電性物質の含有割合は多過ぎると負極活物質量が減少し、放電容量が小さくなる虞があり、少な過ぎると導電性物質を複合化して導電性を改善した効果が現れ難い場合もあることから、複合粒子中の本発明の負極材粒子の含有量が通常50重量%以上、特に70重量%以上で、通常99重量%以下、特に97重量%以下となるようにすることが好ましい。
<繊維状の熱分解炭素>
繊維状の熱分解炭素としては、気相成膜成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンナノチューブ(CNT)などを用いることができる。CNFの構造としては、ヘリングボン、プレ−トレット、チューブラー型などがあり、CNTの構造としては、単層(SWNT)、多層(MWNT)などが挙げられる。
繊維状の熱分解炭素のBET比表面積は、特に限定されないが、通常は300m/g以下、好ましくは200m/g以下、更に好ましくは100m/g以下の範囲である。BET比表面積の値がこの上限を上回ると、負極とした時に繊維状の熱分解炭素が電解液と反応し、初期充放電効率が小さくなり、好ましい電池が得られ難い虞がある。また、繊維状の熱分解炭素のBET比表面積は、通常10m/g程度以上である。BET比表面積の測定方法は上述の方法を用いることができる。
VCGF、CNFの繊維状の熱分解炭素の結晶子面間隔d002は、特に限定されないが、通常は0.350nm以下、好ましくは0.342nm以下、更に好ましくは0.338nm以下の範囲である。d002がこの上限を上回ると、負極とした時に繊維状の熱
分解炭素が電解液と反応し、初期充放電効率が小さくなり、好ましい電池が得られ難い虞がある。また、繊維状の熱分解炭素のd002は、測定原理上0.3345nm以上である。結晶子面間隔d002を求めるX線回折測定方法は上述の方法などを用いることができる。
C:負極活物質が、焼結剤により集電体と一体に焼結された構造
この構造は、本発明の負極材粒子と焼結剤を含有する活物質層を集電体上に形成してなり、通常、負極活物質と焼結性有する物質を分散、混合させたものを、集電体基板上に薄く塗布(若しくは成型)・乾燥、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレスし、熱処理工程により焼結させて製造される。
<焼結剤>
焼結剤には、酸化物、炭化物、窒化物等の前駆体や、炭素前駆体を用いる。例えば、酸化物前駆体としては、有機ジルコニウム化合物、有機チタニウム化合物等が、炭素前駆体としては、石炭ピッチ、石油ピッチやコールタールピッチ類を熱処理(酸化)し、軟化点、揮発分を調整した物(大阪化成社製TGP3500)などが挙げられる。
焼結剤の使用量は多過ぎると負極活物質量が減少し、放電容量が小さくなる虞があり、少な過ぎると負極活物質間や負極活物質と集電体間の結着力が低下し、負極として強度不足となり、負極活物質の剥離等が生じる虞があるので、本発明の負極材粒子に対して、通常3重量%以上、好ましくは5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
D:負極活物質が、低融点金属と結合することにより集電体と一体化した構造
この構造は、本発明の負極材粒子と低融点金属が結合した活物質層を集電体上に形成してなり、通常、負極活物質と低融点金属を分散、混合させたものを、集電体基板上に薄く塗布(若しくは成型)・乾燥、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレスし、熱処理工程により製造される。
<低融点金属>
低融点金属には、はんだ、ろう等を用いる。例えば、はんだとしては、Sn−Pb合金、Bi−Inを添加した低融点はんだ、Ag,Sb,Cu添加はんだなどが挙げられる。低融点金属の使用量は多過ぎると負極活物質量が減少し、放電容量が小さくなる虞があり、少な過ぎると負極活物質間や負極活物質と集電体間の結着力が低下し、負極として強度不足となり、負極活物質の剥離等が生じる虞があるので、本発明の負極材粒子に対して、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、通常60重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
E:負極活物質が、バインダー成分無しに集電体と一体化した構造
この構造は、バインダー成分無しに本発明の負極材粒子を活物質層として集電体上に形成してなり、通常、負極活物質を集電体基板上に真空下で高速衝突させる常温衝撃固化等によりバインダー成分無しに集電体と一体化する方法により製造される。より具体的には、本発明の負極材粒子を、エアロゾルデポジション法にて、集電体上へ直接成膜する方法が挙げられる。
[3]非水電解質二次電池
本発明の非水電解質二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える非水電解質二次電池において、負極として本発明の負極を用いたものである。本発明の非水電解質二次電池を構成する正極、電解質等の電池構成上必要な、負極以外の部材の選択については特に制限されない。以下において、本発明の非水電解質二次電池を構成する負極以外の部材の材料等を例示するが、使用し得る材料はこれらの具体例に限定されるものではない。
[正極]
正極は、集電体基板上に、正極活物質と、結着及び増粘効果を有する有機物(結着剤)を含有する活物質層を形成してなり、通常、正極活物質と結着剤を水あるいは有機溶媒中に分散させたスラリー状のものを、集電体基板上に薄く塗布・乾燥する工程、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレス工程により形成される。
<正極活物質>
正極活物質には、リチウムを吸蔵・放出できる機能を有している限り特に制限はないが、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リン酸鉄リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物材料;Li2MnO3−LiMO2(M:Ni、Co、Mnなどの金属)固溶体材料;二酸化マンガン等の遷移金属酸化物材料;フッ化黒鉛等の炭素質材料などを使用することができる。具体的には、LiFeO2
、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiFePO4及びこれらの非定比化合物、MnO2、TiS2、FeS2、Nb3S4、Mo3S4、CoS2、V2O5、P2O5、CrO3、V3O3、TeO2、GeO2等を用いることができる。これらは1種を単独で用いても
良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
<導電剤>
正極活物質層には、正極用導電剤を用いることができる。正極用導電剤は、用いる正極活物質の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でも良い。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サ−マルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ−類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などを単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラックが特に好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
導電剤の添加量は、特に限定されないが、正極活物質に対して1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、2〜15重量%が特に好ましい。
<結着剤>
正極活物質層の形成に用いられる結着剤としては、特に制限はなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであっても良い。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン・ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン・ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン・テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン・テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン・パーフルオロメチルビニルエーテル・テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体又は前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン・メタクリル酸共重合体又は前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na+)イオン架橋体を挙げることができ、これらの材料を単独又は混合物として用いることができる。これらの材料の中でより好まし
い材料はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
<その他の添加剤>
正極活物質層には、前述の導電剤の他、更にフィラー、分散剤、イオン伝導体、圧力増強剤及びその他の各種添加剤を配合することができる。フィラーは、構成された電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、活物質層中の含有量として0〜30重量%が好ましい。
<溶媒>
正極活物質スラリーの調製には、水系溶媒又は有機溶媒が分散媒として用いられる。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類等の添加剤を水に対して、30重量%以下程度まで添加することもできる。
有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。
正極活物質、結着剤である結着及び増粘効果を有する有機物及び必要に応じて配合される正極用導電剤、その他フィラー等をこれらの溶媒に混合して正極活物質スラリーを調製し、これを正極用集電体基板に所定の厚みとなるように塗布することにより正極活物質層が形成される。
なお、この正極活物質スラリー中の正極活物質の濃度の上限は通常70重量%以下、好ましくは55重量%以下であり、下限は通常30重量%以上、好ましくは40重量%以上である。正極活物質の濃度がこの上限を超えると正極活物質スラリー中の正極活物質が凝集しやすくなり、下限を下回ると正極活物質スラリーの保存中に正極活物質が沈降しやすくなる場合もある。
また、正極活物質スラリー中の結着剤の濃度の上限は通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下であり、下限は通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量以上である。結着剤の濃度がこの上限を超えると得られる正極の内部抵抗が大きくなり、下限を下回ると正極活物質層の結着性に劣るものとなる場合もある。
<集電体>
正極用集電体としては、例えば、電解液中での陽極酸化によって表面に不動態皮膜を形成する弁金属又はその合金を用いるのが好ましい。弁金属としては、周期表4族、5族、13族に属する金属及びこれらの合金を例示することができる。具体的には、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta及びこれらの金属を含む合金などを例示することができ、Al、Ti、Ta及びこれらの金属を含む合金を好ましく使用することができる。特にAl及びその合金は軽量であるためエネルギ−密度が高くて望ましい。正極用集電体の厚みは特に限定されないが通常1〜50μm程度である。
[電解質]
電解質としては、電解液や固体電解質など、任意の電解質を用いることができる。なおここで電解質とはイオン導電体すべてのことをいい、電解液及び固体電解質は共に電解質に含まれるものとする。
電解液としては、例えば、非水系溶媒に溶質を溶解したものを用いることができる。溶質としては、アルカリ金属塩や4級アンモニウム塩などを用いることができる。具体的には、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO等が好ましく用いられる。これらの溶質は、1種類を選択して使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
電解液中のこれらの溶質の含有量は、0.2mol/L以上、特に0.5mol/L以上で、2mol/L以下、特に1.5mol/L以下であることが好ましい。
非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル化合物;1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル;クラウンエーテル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネートなどを用いることができる。これらの中でも、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含有する非水溶媒が好ましい。これらの溶媒は1種類を選択して使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明に係る非水系電解液は、分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルや従来公知の過充電防止剤、脱酸剤、脱水剤などの種々の助剤を含有していてもよい。
分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、例えば、ビニレンカーボネート系化合物、ビニルエチレンカーボネート系化合物、メチレンエチレンカーボネート系化合物等が挙げられる。
ビニレンカーボネート系化合物としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート等が挙げられる。
ビニルエチレンカーボネート系化合物としては、例えば、ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−エチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−n−プロピル−4−ビニルエチレンカーボネート、5−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
メチレンエチレンカーボネート系化合物としては、例えば、メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジメチル−5−メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジエチル−5−メチレンエチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのうち、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、特にビニレンカーボネートが好ましい。
これらは1種を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
非水系電解液が分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステル化合物を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上であり、通常8重量%以下、好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
分子内に不飽和結合を有する環状炭酸エステルを電解液に含有させることにより、電池のサイクル特性を向上させることができる。その理由は明かではないが、負極の表面に安定な保護被膜を形成することができるためと推測される。ただし、その含有量が少ないと
この特性が十分に向上しない。しかし、含有量が多すぎると高温保存時にガス発生量が増大する傾向にあるので、電解液中の含有量は上記の範囲にするのが好ましい。
過充電防止剤としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、タ−フェニル、タ−フェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の
前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソールおよび2,6−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
非水系電解液中における過充電防止剤の割合は、通常0.1〜5重量%である。過充電防止剤を含有させることにより、過充電等のときに電池の破裂・発火を抑制することができる。
他の助剤としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、エリスリタンカーボネート、スピロービス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シートラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物およびフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホンおよびテトラメチルチウラムモノスルフィド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびN−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上併用して用いてもよい。
非水系電解液中におけるこれらの助剤の割合は、通常0.1〜5重量%である。これらの助剤を含有することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
非水系電解液は、電解液中に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状または、ゴム状、或いは固体シート状の固体電解質としてもよい。この場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピークロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω−メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート−co−メチルメタクリレート)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
[その他の構成部材]
非水電解質二次電池用負極には、電解質、負極、及び正極の他に、更に必要に応じて、外缶、セパレータ、ガスケット、封口板、セルケ−スなどを用いることもできる。
セパレータの材質や形状は特に制限されない。セパレータは正極と負極が物理的に接触しないように分離するものであり、イオン透過性が高く、電気抵抗が低いものであるのが好ましい。セパレータは電解液に対して安定で保液性が優れた材料の中から選択するのが
好ましい。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布が挙げられる。
[非水電解質二次電池の形状]
本発明の非水電解質二次電池の形状は特に制限されず、例えば、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダ−タイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等にすることができる。
[非水電解質二次電池の製造方法]
電解質、負極及び正極を少なくとも有する本発明の非水電解質二次電池を製造する方法は、特に限定されず通常採用されている方法の中から適宜選択することができる。
本発明の非水電解質二次電池の製造方法の一例を挙げると、外缶上に負極を乗せ、その上に電解液とセパレータを設け、さらに負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット、封口板と共にかしめて電池を組み立てる方法が挙げられる。
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例における物性についての測定方法は以下の通りである。
・平均粒径(D50)
体積基準の平均粒径(D50)は、イオン交換水を分散媒として、負極材粒子数10mgを分散後、レーザー回折式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製「LA−920」)にて、体積基準の平均粒径(D50)を測定した。
・X線回折による半値幅
X線回折測定における負極材粒子のSi(111)面の半値幅は、本発明の負極材粒子を照射面にセットし、X線回折装置(PANalytical社製「X‘PertPro
MPD」)を用いて測定した。測定条件は、負極材粒子を測定セルへセットし、集中法
光学系にて、2θ=5〜70度の範囲の測定を行った。バックグラウンドの補正は、カーブフィッティング法により行った。
バックグランド補正後、2θが28.4度のSi(111)面相当のピークに対してカーブフィッティングを行い、そのピークの半値幅を求め、外部標準による補正をおこなった後の値を、負極材粒子の半値幅とした。
・結晶子サイズ
結晶子サイズは、上記で求めた半値幅から、以下のシェラーの式を用いて計算した。ここでは、定数Kは0.9を採用した。
シェラー(scherrer)の式
D=(Kλ)/(βcosθ)
λは測定X線波長(Å)
βは半値幅(rad)
θは回折線のブラッグ角(rad)
・負極材粒子の組成分析
負極材粒子の組成は、負極材粒子をアルカリに溶解後、酸溶解溶液をICP−AESにて測定をおこないSi含有量を測定した。酸素含有量は、酸素窒素分析装置、ON分析計(不活性ガス雰囲気下インパルス炉加熱抽出−IR,TCD検出)、LECO社酸素窒素分析装置TC600)、炭素含有量は、炭素硫黄分析装置 CS分析計(高周波炉燃焼−IR検出法、LECO社製 炭素硫黄分析装置 CS600)を用いて測定し、それぞれ、負極材粒子に含まれる重量割合(mass%)を測定し、その値を原子%に直し、更にSi
を1とした時のZ、Mの原子濃度比に換算して、x、y組成を求めた。
[実施例1]
Si原料を、黒鉛ルツボに導入し、高周波誘導加熱装置(SKメディカル電子)により、真空度3x10−5torr、1850℃溶融・気化させ、蒸発したSi原子を対向する冷却銅板に急冷凝縮させた。 銅板を取り出し後に、得られた凝縮物は簡単に銅板から
剥離し薄片・粉状物、約1.2gの薄片が得られた。得られた薄片・粉状物を瑪瑙乳鉢で粉砕後、遊星ボールミル(フリッチュ P−7型)を用い、500rpm、3分粉砕、目開き38μmの篩にて分級し負極材粒子とした。
得られた負極材粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図1、図2に示す。図に示されるように、結晶構造に相当する格子像は見られず、非晶質構造であることが確認された。
粒度分布計(堀場製作所製「LA−920」)で、前述の方法に従って負極材粒子の
体積基準の平均粒径(D50)を測定したところ1.6μmであった。
前記の方法に従って元素分析計により負極材粒子の組成分析をしたところ、粉末中に元素Cは8.6原子%、元素Oは11.8原子%であった。これを原子濃度比で表すとSi:C:O=1.00:0.11:0.15であった。
前記の方法に従って負極材粒子のX線回折による半値幅の定量を行ったところ、9.2度であった。また結晶子サイズは、0.9nmであり、長距離秩序を有しない、非晶質状態であることが確認された。
<リチウム二次電池用負極の作製方法>
上記方法で作製した負極材粒子0.7g、導電材であるアセチレンブラック(HS−100)0.1g、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸NMP溶液1.08g(固形分濃度18.6wt%)、およびNMP約1.5gを加えて混合した。こうして得られた混合物を、厚み10μmの銅箔上に塗布後、90℃で50分予備乾燥をした。当該電極を、ロールプレス機によりプレス後、窒素気流下、350℃、1時間熱処理を加え、前記ポリ
アミック酸からポリイミドへの硬化をおこなった。更に、直径12.5mmφに打ち抜き、評価用の負極とした。
<リチウム二次電池の作製方法>
得られた負極をアルゴン雰囲気下のグロ−ブボックスへ移し、電解液としてフルオロエチレンカーボネート(FEC)/ジメチルカーボネート(DMC)=8/2(重量比)の混合液を溶媒とした1mol/L−LiPF6電解液と、セパレータとしてポリエチレン
セパレータと、対極としてリチウム金属対極とを用い、コイン電池(リチウム二次電池)を作製した。
<放電容量評価>
1サイクル目の充放電条件は、0.33mA/cmの電流密度でリチウム対極に対し
て5mVまで充電し、更に、5mVの一定電圧で電流値が0.07mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.33mA/cmの電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行なった。2サイクル目以降の充電条件は、1.3mA/cmの電流密度でリチウム対極に対して5mVまで充電し、更に、5mVの一定電圧で電流値が0.26mAになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、1.3mA/cmの電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行なった。放電容量は、3サイクル目の値を採用し、重量当りの放電容量とする場合は、活物質重量は負極重量から同面積に打ち抜いた銅箔の重量を差し引くことで求め、サイクル維持率、充放電効率は、以下に従って計算した。
<サイクル特性(A)評価>
上述の放電容量の測定方法に従い、この充放電サイクルを40回繰り返し、以下に従ってサイクル維持率(A)を計算した。
サイクル維持率(A)(%)
={40サイクル後の放電容量(mAh/g)/3サイクルの平均放電容量(mAh/g)}×100
<40サイクル時の充放電効率評価>
上述のサイクル特性(A)の測定方法に従い、この充放電サイクルを40回繰り返し、40サイクル時の充放電効率を計算した。
40サイクル時の充放電効率(%)
={40回時の放電容量(mAh/g)/40回時の充電容量(mAh/g)}×100
<サイクル後の電極膨張率測定>
上述のサイクル特性(A)の測定後(20サイクル後)、放電状態のコイン電池をアルゴングロ−ブボックス中で短絡させないように解体し、電極を取り出して、脱水したジメチルエーテル溶媒で洗浄、乾燥後、SEM観察にてサイクル後放電時の電極の厚み(銅箔除く)を測定した。電池作製前の電極の厚み(銅箔除く)を基準として、次式に基づいてサイクル後の電極膨張率を求めた。
サイクル後の電極膨張率(倍)=(サイクル後の電極厚み/充放電前の電極厚み)
ここで用いた負極粉末の物性値を表1、電池評価結果を表2及び表3に示した。
[実施例2]
真空度を3x10−3torrに変更した以外は、実施例1と同様に実施し、2.4gの薄片・粉状物を得た。
実施例1同様、篩・粉砕後、粒度を測定したところ、平均粒径(D50)は2.4μmであった。
実施例1と同様に負極材粒子の組成分析をしたところ、粉末中に元素Cは12.6原子
%、元素Oは7.8原子%であった。また、原子濃度比で表すとSi:C:O=1.00:0.16:0.10であった。
前記の方法に従って負極材粒子のX線回折による半値幅の定量を行ったところ、8.5度であった。また結晶子サイズは、1.0nmであり、長距離秩序を有しない、非晶質状態であることが確認された。
この負極材粒子を用いて実施例1と同様にして、負極及びコイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を物性値と共に、表1、表3に示した。
[実施例3]
黒鉛ルツボのサイズを大きくした以外は、実施例1と同様に実施し、1.3gの薄片・粉状物を得た。
実施例1同様、篩・粉砕後、粒度を測定したところ、平均粒径(D50)は1.2μmであった。
実施例1と同様に負極材粒子の組成分析をしたところ、粉末中に元素Cは8.8原子%
、元素Oは4.3原子%であった。また、原子濃度比で表すとSi:C:O=1.00:0.10:0.05であった。
前記の方法に従って負極材粒子のX線回折による半値幅の定量を行ったところ、6.9度であった。また結晶子サイズは、1.2nmであり、長距離秩序を有しない、非晶質状
態であることが確認された
この負極材粒子を用いて実施例1と同様にして、負極及びコイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を物性値と共に、表1、表3に示した。
[実施例4]
Siの溶融・気化温度を1950℃に変更した以外は、実施例1と同様に実施し、2.5gの薄片・粉状物を得た。
得られた薄片・粉状物を瑪瑙乳鉢で粉砕後、遊星ボールミル)を用い、500rpm、30分粉砕、目開き38μmの篩にて分級し負極材粒子とした。
実施例1同様、篩・粉砕後、平均粒径(D50)を測定したところ、平均粒径(D50)は0.6μmであった。
実施例1と同様に負極材粒子の組成分析をしたところ、粉末中に元素Cは13.6原子
%、元素Oは3.0原子%であった。また、原子濃度比で表すとSi:C:O=1.00:0.16:0.04であった。
前記の方法に従って負極材粒子のX線回折による半値幅の定量を行ったところ、8.2度であった。また結晶子サイズは、1.0nmであり、長距離秩序を有しない、非晶質状態であることが確認された
この負極材粒子0.5gに、黒鉛0.1g、SiOを0.1g添加した以外は、実施例1と同様にして、負極及びコイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を物性値と共に、表1、表3に示した
[実施例5]
真空チャンバ−内に微量のCOガスを導入した以外は、実施例1と同様に実施し、0.2gの薄片・粉状物を得た。
実施例1と同様に負極材粒子の組成分析をしたところ、粉末中に元素Cは8.8原子%
、元素Oは22.1原子%であった。また、原子濃度比で表すとSi:C:O=1.00:0.13:0.32であった。
前記の方法に従って負極材粒子のX線回折による半値幅の定量を行ったところ、9.9度であった。また結晶子サイズは、0.8nmであり、長距離秩序を有しない、非晶質状態であることが確認された。
[比較例1]
市販のSi粒子について、実施例1と同様にして粒度分布計でこのSi粉末の平均粒径(D50)を測定したところ1.8μmであった。
実施例1と同様にしてSi粉末の組成分析をしたところ、粉末中に元素C、Nは含有されておらず、検出限界以下であった。
前記の方法に従って負極材粒子のX線回折による半値幅の定量を行ったところ、0.1度であった。また結晶子サイズは、100nm以上であり、長距離秩序を有する、つまり結晶性が高いことが確認された。
このSi粉末を用いて実施例1と同様にして、負極及びコイン電池の作製、並びに評価を行った。 また、実施1と同様に、充放電サイクル後のSEM観察を実施し、サイクル後の電極膨張率を求めた。上記結果を、物性値と共に、表1、表2及び表3に示した。
[比較例2]
実施例2と同様の条件で実施し、1.0gの薄片・粉状物を得た。
得られた薄片・粉状物を瑪瑙乳鉢で粉砕後、遊星ボールミルによる粉砕は実施せず、目開き38μmの篩にて分級し負極材粒子とした。
実施例1同様、粒度を測定したところ、平均粒径(D50)は22μmであった。
実施例1と同様に負極材粒子の組成分析をしたところ、粉末中に元素Cは13.6原子
%、元素Oは3.0原子%であった。また、原子濃度比で表すとSi:C:O=1.00:0.16:0.04であった。
前記の方法に従って負極材粒子のX線回折による半値幅の定量を行ったところ、8.2度であった。また結晶子サイズは、1.0nmであり、長距離秩序を有しない、非晶質状態であることが確認された
このSi粉末を用いて実施例1と同様にして、負極及びコイン電池の作製、並びに評価を行い、結果を物性値と共に、表1、表3に示した。
表1〜表3より次のことが分かる。
比較例1の負極材粒子は、Si粉末であるが、C,Oの組成が規定範囲外であり、その結果、良いサイクル特性が得られず、且つ、サイクル後の電極膨張率が大きかった。
比較例2の負極材粒子は、SiZxMy粉末であり、その組成はSi:C:O=1.00:0.16:0.10と、本発明の規定範囲内ではあるが、粒径が22μmと規定範囲外となっており、その結果、良いサイクル特性が得られなかった。
これらに対して、実施例1〜5の本発明の負極材粒子は、表1に示すように、Siと元素Zと元素Mからなる化合物SiZxMyで表され、該元素Zは、C及び/又はNよりなる元素、MはOからなる元素であり、かつ非晶質構造を特徴とし、全てが本発明の規定範囲を満たしている。そして、表2に示すように、SiにC及び/又はNよりなる元素、MはOからなる元素を有する粒子は、Si−C結合、Si−O結合を有しており、Si−Si結合より強固な結合であるため、充放電後の電極膨張が抑制されていることがわかった。
また、実施例1から4及び比較例1から表3に示すように、化合物SiZxMyで表されるような非晶質構造を有する実施例1から4の負極材粒子と、結晶である比較例1のSi粒子を比較すると、実施例1から4の負極材粒子では、40サイクル後、十分容量は維持されているが、結晶Si粒子の場合、サイクル維持率が3%であり、容量劣化が激しいことがわかった。実施例1から4のような負極材粒子を用いると、放電容量が高く、初期及びサイクル中の充放電効率が高く、サイクル特性に優れ、サイクル後の電極膨張が抑えられた高性能の電池が得られることがわかった。
本発明の炭素材料は、非水系二次電池用の炭素材料として用いることにより、高容量、且つ充放電負荷特性の良好な非水系二次電池用負極材を提供することができる。また、当該材料の製造方法によれば、その工程数が少ない故、安定して効率的且つ安価に製造することができる。

Claims (10)

  1. 下記条件(1)〜(6)を満たすSiと元素Zと元素Mからなる化合物SiZxMyを含有する非水電解質二次電池用負極材。
    (1)元素Zは、C及びNの少なくとも一方である。
    (2)xの範囲が0.01≦x≦0.18である。
    (3)元素MがSiと元素Z以外の元素から選ばれる元素の1種又は2種以上である。
    (4)yの範囲は、0.01≦y≦0.35である。
    (5)平均粒径(D50)が50nm以上20μm以下である。
    (6)非晶質構造である。
  2. 前記化合物SiZxMyで表される微粒子において、X線回折で測定されるSi(111)面の半値幅が、6度以上であることを特徴とする、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極材。
  3. 前記化合物SiZxMyで表される微粒子の結晶子サイズが、0.1nmから5nmの範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極材。
  4. ラマン分光法で測定されたラマンシフトが250cm−1〜500cm−1の範囲であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の非水電解質二次電池用負極材。
  5. Siと元素Zと元素Mからなる化合物SiZxMyを含有する非水電解質二次電池用負極材を製造するにおいて、Si原料を溶融化後、蒸発・気化させ、対向する冷却部に急冷凝結させる際に、元素Mとなる原料を導入することを特徴する非水電解質二次電池用負極材の製造方法
  6. 急冷凝結の速度が、500℃/秒以上であることを特徴とする請求項5に記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
  7. 元素Mとなる原料が、CO及び/またはCOガスであることを特徴とする請求項5又は6に記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
  8. 請求項5〜7いずれかに記載の製造方法によって得られる非水電解質二次電池用負極材。
  9. 集電体と、該集電体上に形成された負極材とを備えると共に、該負極材が、請求項1〜4、8のいずれか1項に記載の負極材を含有することを特徴とする、非水系二次電池用負極。
  10. リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えると共に、該負極が、請求項9に記載の非水系二次電池用負極であることを特徴とする、非水系二次電池。
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