JP2006124231A - セメント系成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 少なくともセメントと、水と、スチレンを含有する油性物質と、乳化剤と、重合開始剤とを含むセメント含有W/Oエマルジョン組成物を、成形硬化してなるセメント系成形体において、重合開始剤として、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートの中から選ばれる一種、又は二種以上を混合したものを用いている。
【選択図】 なし
Description
この方法により得られる成形体は、油性物質に、分子中に重合性二重結合を有する化合物であるスチレンが用いられているので、養生硬化時に、セメントが水和反応によって硬化すると同時にスチレンが重合反応してマトリックスを形成することにより強固な性質を示すものである。
しかしながら、養生硬化前の成形されたセメント含有W/Oエマルジョン組成物中のスチレンは、養生硬化時に全て重合硬化するのではなく、いくらかの量のスチレンは未反応のまま残ってしまうために、重合の反応効率を高める必要があった。
このように、セメントが十分に水和される限られた養生条件のもとで残存スチレン量を低減化したセメント系成形体を得ることはとても困難であった。
本発明に係るセメント系成形体は、セメントと、水と、油性物質と、乳化剤と、重合開始剤とを原料とし、これらを混合攪拌してセメント含有W/Oエマルジョンを組成し、該W/Oエマルジョン組成物を板状等に成形した後、硬化養生して得られたものである。
なお、スチレン以外の油性物質としては、分子中に重合性二重結合を有する化合物である、α−メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマーや、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルや、アクリロニトリル、また分子中に重合性二重結合を2個以上有する、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等を用いることが可能である。特に、スチレンと、重合性二重結合を2個以上有する油性物質を併用するのが残存スチレン量を低減する上で好ましい。
特に、上記の一種、又は二種以上が混合された重合開始剤が、セメント含有W/Oエマルジョン組成物中に、油性物質中に含まれるスチレンと重合開始剤との重量比が100:0.2〜10となるように含有されていることが好ましい。
これにより、養生硬化の工程を従来と同様の加熱条件で行えることから、セメントの水和反応を十分に進行させて硬化させることができると共に、残存スチレン量を低減化することが可能となる。
なお、本発明に係るセメント系成形体は、上記の製造方法に限定されるものではなく、例えば、水と油性物質と乳化剤によりW/Oエマルジョンを組成した後、その中にセメントを混合して成形することであっても良い。
<水>
水道水
<無機充填材>
ポルトランドセメント
<油性物質>
スチレンモノマーとトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)とを重量比100:1で混合したものを使用した。
<乳化剤>
ソルビタンモノオレート(HLB価=4.0)
<重合開始剤>
(1)t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名パーキュア−HO、純度50%)
(2)1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂社製、商品名パーヘキサTMH、純度84%)
(3)t−ブチルハイドロパーオキサイド(日本油脂社製、商品名パーブチルH−69、純度69%)
(4)t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名パーキュア−O、純度50%)
(5)t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(日本油脂社製、商品名パーブチルI、純度95%)
(なお、実施例で使用する重合開始剤としては、上記記載の重合開始剤が括弧内の純度で含まれた市販品を使用している。以下の実施例及び比較例では、これらの市販品の使用量を記載している。)
<繊維>
ポリプロピレン繊維
(測定方法)
下記の実施例及び比較例で成形された成形体の芯部のサンプル(5×15×90mm)を、120ccガラス製サンプル管に入れ密封し、容器を60℃で2時間加熱した後、サンプル管内のガスを一定量抜き取り、ガスクロマトグラフにより分析を行い、成形体1cm3から揮発された残存スチレンの量を求める。
スチレンモノマーとTMPTとが重量比100:1で混合された油性物質3.2重量部に、乳化剤としてのソルビタンモノオレートを0.8重量部溶解させた溶液に、更に重合開始剤である重合開始剤(1)を、スチレンモノマーと重合開始剤(1)との重量比が100:1となるように溶解させたビニルモノマー溶液(VMS)を調整し、水40重量部、セメント100重量部、ビニルモノマー溶液(VMS)4.03重量部、補強繊維2.0重量部を二軸の混練装置に投入し、毎分200回転で攪拌混合して、セメント含有W/Oエマルジョン組成物を得た。次いで、得られたセメント含有W/Oエマルジョン組成物を板状に押出成形した後、蒸気養生硬化する。養生硬化は、全工程を相対湿度98%の下で、先ず1時間かけて20℃から45℃に加熱した後、45℃に保ったまま4時間放置し、次いで、13時間かけて45℃から85℃に加熱した後、85℃で5時間放置することによって行う。この蒸気養生硬化によりセメント系成形体が得られる。
得られたセメント系成形体の残存するスチレン量を上記方法により測定した。測定結果を下記の表1に示す。
実施例2では重合開始剤(2)、実施例3では重合開始剤(3)、実施例4では重合開始剤(4)、実施例5では重合開始剤(5)を、実施例1と同じ量だけ油性物質中に溶解させた以外は、実施例1と同様の原材料によりセメント含有W/Oエマルジョンを組成し、同様の工程によって蒸気養生硬化してセメント系成形体をつくったものである。測定結果を同じく表1に示す。
実施例6では、重合開始剤(1)と重合開始剤(2)を1:1で混合した重合開始剤を使用している。この混合重合開始剤を、油性物質中に含まれるスチレンモノマーとこの重合開始剤との重量比が100:2となるように油性物質中に溶解させた以外は、実施例1と同様の原料によりセメント含有W/Oエマルジョンを組成し、同様の工程によって蒸気養生硬化してセメント系成形体をつくったものである。測定結果を同じく表1に示す。
重合開始剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂社製、商品名パーブチルZ、純度98%)を用いている以外は、実施例1と同様の原材料によりセメント含有W/Oエマルジョンを組成し、該W/Oエマルジョンを実施例1と同様の工程で蒸気養生硬化してセメント系成形体をつくったものである。測定結果を同じく表1に示す。
特に、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(実施例1)、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(実施例2)、t−ブチルハイドロパーオキサイド(実施例3)、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(実施例4)を用いた場合には、比較例の残存スチレン量よりも50%以上低減化することができることから好ましく、この中でも、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(実施例2)は比較例に比べて90%も残存スチレン量を低減化することができ特に好ましい。
Claims (3)
- 少なくともセメントと、水と、スチレンを含有する油性物質と、乳化剤と、重合開始剤とを含むセメント含有W/Oエマルジョン組成物を、成形硬化してなるセメント系成形体において、
前記重合開始剤として、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートの中から選ばれる一種、又は二種以上を混合したものを用いていることを特徴とするセメント系成形体。 - 前記W/Oエマルジョン組成物中には、前記油性物質中のスチレンと前記重合開始剤とが100:0.2〜10の重量比で含有されていることを特徴とする請求項1記載のセメント系成形体。
- 前記スチレンが、前記油性物質の50〜100重量%含有されていることを特徴とする請求項1又は2記載のセメント系成形体。
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