JP2006108591A - 希土類焼結磁石及びその製造方法 - Google Patents

希土類焼結磁石及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 R−T−B系希土類焼結磁石の磁気特性のさらなる向上を図る。また、希土類焼結磁石の割れの発生を防止し、良好な製造歩留まりを実現可能とする。
【解決手段】 R(Rは希土類元素の少なくとも1種である。ただし希土類元素はYを含む概念である。)、T(Tは遷移金属元素の少なくとも1種である。)及びBを主成分とする原料合金粉末を成形して成形体を得、成形体を焼結する希土類焼結磁石の製造方法であって、充填密度を1.8g/cm〜2.3g/cmとして金型内に充填した原料合金粉末にパルス磁場を少なくとも1回印加した後、原料合金粉末を圧縮することにより、成形を行う。
【選択図】 図4

Description

本発明は、R(Rは希土類元素の少なくとも1種である。ただし希土類元素はYを含む概念である。)、T(Tは遷移金属元素の少なくとも1種である。)Bを主成分とする希土類焼結磁石及びその製造方法に関する。
例えばハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)のディスク状媒体(ハードディスク)回転用スピンドルモータやボイスコイルモータ、携帯電話のバイブレータ用モータ、プリンタ用モータといった各種モータの内部には、様々な形状の磁石が組み込まれており、例えば磁石粉末を樹脂で固めて成形したボンド磁石、磁石粉末を成形し焼結してなる焼結磁石等が幅広く使用されている。中でも、高磁気特性の実現が可能なことから、Nd−Fe−B系、Sm−Co系等の希土類焼結磁石の需要が高く、その製造技術等について活発な研究が行われている。
HDD用スピンドルモータ等に使用されるリング状焼結磁石の製造方法としては、いわゆる磁場中成形が知られており、例えば、R−T−B系磁石合金粉末を2.3〜3.0g/cmの充填密度となるように金型内に給粉・充填し、ラジアル方向に磁界を印加しながら所定の圧粉体密度及び寸法のラジアル異方性リング圧粉体を成形し、その後焼結するR−T−B系ラジアル異方性リング状焼結磁石の製造方法が提案されている(例えば特許文献1等参照)。特許文献1の方法によれば、磁気特性とリング内周面の軸方向の割れを低減して製造歩留まりを向上することとの両立を鑑みて、2.3〜3.0g/cmの充填密度が良いとされる。また、表面に多極異方性を有するR−Fe−B系の円筒状永久磁石を製造する方法として、成形時にパルス磁場を印加して強磁性粉末を配向させ、加圧成形する方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
特開平11−54352号公報 特公平8−28293号公報
ところで、応用製品の高性能化に伴い、用いられる磁石にもさらなる高性能が要求される。また、今後例えば1インチに満たない規格のHDD用スピンドルモータ等、超小型の応用製品への磁石の組み込みが予想されるが、磁石サイズが小さくなるほど発生する磁界が弱くなるという不都合がある。このような状況を考えると、既存の希土類焼結磁石の特性では未だ不十分であり、磁気特性をさらに向上させる技術が強く要請されている。
前述のような極めて高い磁気特性が求められる状況にあっては、前記特許文献1及び特許文献2の発明で得られる磁石の磁気特性もやはり十分なものではなく、さらなる改善が求められている。
本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、R−T−B系希土類焼結磁石の磁気特性のさらなる向上を図ることが可能な希土類焼結磁石及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、希土類焼結磁石の割れの発生を防止し、良好な製造歩留まりを得ることが可能な希土類焼結磁石及びその製造方法を提供することを目的とする。
前述の特許文献1においては、静磁場等を用いて磁場を連続的に印加しながら磁石合金粉末を圧縮しているが、この場合、充填密度を低くしていくにつれて配向性が高くなり、磁気特性が向上していく傾向がある。このことは、例えば特許文献1の段落番号〔0027〕における「…2.3g/cm未満ではラジアル配向磁界により十分に配向する…」との記載や、段落番号〔0040〕における「…従来法では磁気特性は高いが、圧環強度が非常に低く…」との記載から示唆される。ただし充填密度を低くしすぎると、配向性が高くなりすぎてひずみが生じ、焼結後に割れ易くなる。このような理由から、充填密度を2.3g/cm以上に定めている。
しかしながら、本発明者が長期にわたり検討を行なった結果、パルス磁場を採用し充填密度を変化させたときの磁気特性は、特許文献1に記載されるように連続的な磁場を採用した場合とは全く異なる挙動を示すことがわかってきた。パルス磁場の場合、充填密度を低くしていくにつれて磁気特性(総磁束)が向上していき、極めて高い磁気特性が実現されるが、さらに充填密度を低くしていくと磁気特性が低下していく傾向を示していた。したがって、パルス磁場の場合、特許文献1の発明とは異なる理由から充填密度を特定の範囲内に規定する必要があり、その充填密度範囲は特許文献1で良いとされる範囲とは異なることが明らかとなった。
本発明に係る希土類焼結磁石の製造方法は、このような知見に基づいて完成されたものであり、R(Rは希土類元素の少なくとも1種である。ただし希土類元素はYを含む概念である。)、T(Tは遷移金属元素の少なくとも1種である。)及びBを主成分とする原料合金粉末を成形して成形体を得、前記成形体を焼結する希土類焼結磁石の製造方法であって、充填密度を1.8g/cm〜2.3g/cmとして金型内に充填した前記原料合金粉末に少なくとも1回のパルス磁場を印加した後、前記原料合金粉末を圧縮することにより、前記成形を行うことを特徴とする。また、本発明に係る希土類焼結磁石は、R(Rは希土類元素の少なくとも1種である。ただし希土類元素はYを含む概念である。)、T(Tは遷移金属元素の少なくとも1種である。)及びBを主成分とする原料合金粉末を充填密度が1.8g/cm〜2.3g/cmとなるように金型内に充填した状態で少なくとも1回のパルス磁場を印加した後、圧縮することにより成形体を成形し、前記成形体を焼結してなることを特徴とする。
磁場中成形により得られる成形体の配向性は、基本的には、磁場による原料合金粉末の配向制御と圧縮による原料合金粉末の配向の乱れとのバランスによって決まり、例えば充填密度をある程度低くすると、原料合金粉末の配向制御が容易となるため配向性が向上し、その結果磁気特性が向上する。例えば特許文献1に記載されるように、圧縮中に磁場を印加し続ける場合、圧縮により乱れた原料合金粉末の配向が磁場によって逐次修正されるため、充填密度を低くするほど磁気特性が向上していくと考えられる。
パルス磁場の場合も、ある程度は充填密度を低くしていくことによって原料合金粉末が充分に配向し磁気特性が向上する。ところが、ある充填密度で磁気特性は最大値をとり、充填密度をさらに低くしていくと逆に磁気特性が低下していくという傾向を示す。パルス磁場の場合、圧縮中に磁場を印加しない(原料合金粉末を配向させない)時間が必ず含まれるので、圧縮による配向の乱れは全く修正されないか、又は圧縮中に磁場を印加し続ける場合に比べてわずかしか修正されず、その結果、配向性の低い成形体が成形される。これが、充填密度が低すぎると磁気特性が低下していく理由と考えられる。したがって、パルス磁場の場合、高い磁気特性を確保する点から充填密度に下限を設ける必要があり、その値は1.8g/cmである。なお、充填密度が高すぎると、パルス磁場の印加による原料合金粉末の配向制御が不十分となり、逆に磁気特性が低下する。このため、充填密度を2.3g/cm以下とする。
ところで希土類焼結磁石においては、焼結後に割れが生じ易く、製造歩留まりの低下が問題になることが多い。本発明で対象となる希土類焼結磁石も例外ではなく、比較的高価な材料であるR−T−B系を主成分としていることもあって、製造歩留まり向上に対する要請が非常に強い。
このような製造歩留まりの問題を考えると、本発明に係る希土類焼結磁石の製造方法は、前記構成に加え、前記パルス磁場の印加により前記成形体を極異方配向させること、又は、前記希土類焼結磁石の平面形状がリング状であり、外径7mm以上11mm以下であることが好ましい。また、本発明に係る希土類焼結磁石は、前記構成に加え、前記成形体は前記パルス磁場の印加により極異方配向されること、又は、前記希土類焼結磁石の平面形状がリング状であり、外径7mm以上11mm以下であることが好ましい。
本発明では、前述のように、パルス磁場の印加に、ラジアル配向とは異なる配向である極異方配向とすること、又は磁石サイズを超小型形状(外径11mm以下)とすることを組み合わせることによって、低い充填密度(2.3g/cm未満)であっても、特許文献1で問題となるような磁石の割れは生じなかった。
なお、特許文献1においては、充填密度の規定に加え、配向の一例としてパルス磁場の記載があるが、静磁場と同列に扱われており、磁場の印加パターンが異なると充填密度に対する磁気特性の挙動が異なってくることを認識していない。当然ながら、パルス磁場としたときに最大の磁気特性が得られる充填密度がどのようなものになるかを示唆する記載はない。さらに特許文献1では、充填密度を2.3g/cm未満とすると割れが発生してしまう。この理由は、磁場の印加パターンが連続的であるため配向が高くなりすぎてひずみが大きくなったためである。また、成形体をラジアル配向としていること、及び磁石のサイズが外径56.5mmと大型であることも、割れの発生に大きく影響していると考えられる。
また、パルス磁場を印加しながらR−Fe−B合金粉末を加圧成形し極異方配向させる方法については特許文献2に開示されているが、充填密度の規定及びパルス磁場に特異的な充填密度と磁気特性との関係を示唆する記載はない。また、特許文献2では、外径20mm程度の大型の磁石を対象としているが、大型磁石は割れ易く、製造歩留まりの低下が著しい。
本発明に係る希土類焼結磁石の製造方法によれば、パルス磁場を採用するとともに原料合金粉末の充填密度を特定の範囲内とすることで、配向性の高い成形体が得られ、これを焼結することによって高い磁気特性を示す希土類焼結磁石を製造することができる。また、本発明によれば、前記希土類焼結磁石の製造方法を適用することにより、高い磁気特性を示し、例えばHDD用スピンドルモータ等の高性能な応用製品への組み込みが可能な希土類焼結磁石を提供することができる。さらに、本発明によれば、成形体を極異方配向とするか、又は磁石サイズを外径11mm以下に小型化することで、磁石の割れの発生が防止され、高磁気特性と良好な製造歩留まりとの両立を図ることができる。
以下、本発明を適用した希土類焼結磁石及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。先ず、製造対象となる希土類焼結磁石について説明する。図1及び図2に示す希土類焼結磁石1は、例えばリング状であり、磁場中成形時に極異方配向した後、焼結後に配向方向に略一致するように極異方着磁することにより、外周面に多数の磁極が形成されている。
希土類焼結磁石1は、希土類元素(ただし、希土類元素はYを含む概念である。)R、遷移金属元素T及びホウ素Bを主成分とする。このような希土類焼結磁石1は、例えばボンド磁石等に比べて磁気特性が非常に高く、小型化、薄型化した際に磁気特性を確保する上で有利である。希土類焼結磁石の組成は、前記元素を主成分とするものであれば特に限定されず、用途等に応じて任意に選択すればよい。ここで、希土類元素Rとは、具体的にはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuのことをいい、これらから1種又は2種以上を用いることができる。中でも、資源的に豊富で比較的安価であることから、希土類元素Rとしての主成分をNdとすることが好ましい。また、遷移金属元素Tは、従来から用いられている遷移金属元素をいずれも用いることができ、例えばFe、Co、Ni等から1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、焼結性の点からFe、Coが好ましく、特に磁気特性の点からFeを主体とすることが好ましい。また、本発明の希土類焼結磁石1は、希土類元素R、遷移金属元素T及びBのほか、保磁力等の特性改善を目的として、例えばAl等の元素を添加してもよい。また、本発明の希土類焼結磁石1には、これらの元素の他、不可避的不純物又は微量添加物として、例えば炭素や酸素等が含有されていてもよい。
希土類焼結磁石1は、磁場中成形によりラジアル配向、極異方配向等に配向され、焼結後に着磁されたものである。希土類焼結磁石1は、成形時に極異方配向され、焼結後に成形時の磁化の方向と略一致するように着磁したものであることが好ましい。極異方配向は、ラジアル配向に比べて高い磁気特性が得られる点で有利である。特に、希土類焼結磁石1の寸法を例えば外径11mm以下の超小型のリング状とする場合、高い磁気特性を得るためには極異方配向の採用が重要である。ラジアル配向では内径部分を磁極の一つとして磁場中成形する必要があるが、前述のサイズでは内側の磁極が小さすぎ飽和しやすいので、充分に配向させ得る磁場をかけることができず、また、着磁の際に極異方配向ほど配向方向と着磁磁場を一致させることができないためである。
また、焼結後の磁石の割れを防止し製造歩留まりの向上を図る目的のためには、希土類焼結磁石1は磁場中成形により極異方配向され、焼結後に成形時の磁化の方向と略一致するように着磁したものであることが重要である。極異方配向とラジアル配向とでは配向方向が異なるために焼結時のひずみ方が異なり、配向性が高くラジアル配向では割れが発生するような場合でも、極異方配向ではひずみの程度が小さく割れに至らない。つまり、極異方配向は、ラジアル配向に比べ割れの発生が低減され、歩留まりの点で有利である。
本発明を適用した希土類焼結磁石1は、外径11mm以下の超小型形状とすることが好ましい。外径11mm以下の超小型形状とした場合、ある特定の充填密度としたときに磁気特性のピークが現れるといったパルス磁場に特異的な傾向が顕著に現れ、本発明の効果を有効に得られる。また、例えば1インチ規格以下のハードディスクドライブ(HDD)用スピンドルモータに組み込む点でも、希土類焼結磁石1の外径は11mm以下であることが好ましい。ただし、十分な強度及び磁気特性を確保するためには、外径は7mm以上であることが好ましい。
また、焼結後の磁石の割れを防止し製造歩留まりの向上を図るうえでも、希土類焼結磁石1の外径寸法を前述の超小型形状とすることが有効である。希土類焼結磁石1の外径を前記のように超小型化することによって、充填密度を低くした場合でも割れの発生を確実に防止することができる。
なお、ハードディスクドライブが1インチ規格以下であるとは、ハードディスク外径が1インチ(25.4mm)以下である場合、及びハードディスク外径は1インチを超えるもののハードディスクドライブがハードディスク外径1インチ以下の規格を採用している場合の両方を意味する。
また、小型のHDDへの搭載を考えると、希土類焼結磁石1の厚さは1mm以下の超薄型であることが好ましい。例えば厚さ3mm以下のHDD用スピンドルモータへの組み込みを想定すると、前述のように1mm以下と極限まで薄型化を図る必要がある。ただし、十分な強度及び磁気特性を確保するためには、希土類焼結磁石1の厚さは0.4mm以上であることが必要となる。
また、希土類焼結磁石1の内径は、5mm以上8mm以下であることが好ましい。例えば前述のように外径寸法が非常に小さく且つ厚さの非常に薄い希土類焼結磁石において充分な強度及び磁気特性を確保し、また、1インチ規格以下のHDD用スピンドルモータへの組み込みを可能とするには、希土類焼結磁石の内径寸法を前記範囲内とすることが重要である。希土類焼結磁石1の内径寸法が前記範囲未満であると、径内へのベアリング等の配置が困難となり、逆に、内径寸法が前記範囲を上回ると、磁気特性の低下を招くおそれがある。また、焼結後の磁石の割れを確実に防止し良好な製造歩留まりを得るうえでも、希土類焼結磁石1の内径寸法を前記範囲内とすることが重要である。
希土類焼結磁石1の外周面に形成される磁極の数は、8〜24とすることが好ましい。例えば超小型のHDD用スピンドルモータには高い静粛性が要求されるが、磁極数を8以上とすることにより、モータ回転音の発生や振動の発生を確実に抑え、静粛性の高いモータを実現することができる。ただし、例えば外径11mm以下のように磁石寸法が極めて小さい場合、磁極数を増やしすぎると、十分な配向及び着磁可能とする金型の実現が難しくなることから、磁極数を24以下とすることが好ましい。さらに、焼結後の磁石の割れを確実に防止する点でも、磁極数を前記範囲内とすることが有効である。磁極数を8〜24とすることによって、割れの発生がさらに低く抑えられ、良好な製造歩留まりが実現される。
希土類焼結磁石1は、HDDのハードディスクを回転駆動するためのスピンドルモータ、プリンタ用モータ等の各種モータ等、希土類焼結磁石が用いられるあらゆる機器に使用可能である。特に、本発明の希土類焼結磁石1は、例えば携帯電話やデジタルカメラ等の携帯型電子機器へ搭載されるHDDであって、0.85インチ規格等の1インチ規格に満たない超小型HDD用のスピンドルモータに用いることが極めて有効である。
以下、本発明を適用した希土類焼結磁石の製造方法について説明する。先ず、希土類焼結磁石の原料合金粉末を製造する。原料合金粉末の製造方法は特に限定されないが、例えば、原料を合金化し、これを粉砕する方法、還元拡散法によって得られた合金粉末を粉砕する方法等により製造することができる。なお、以下では、原料を合金化し、これを粉砕する方法を例に挙げて説明する。原料合金の酸化防止のため、焼結後までの各工程は、ほとんどの工程を真空中、あるいは不活性ガス雰囲気中(窒素ガス雰囲気中、Arガス雰囲気中等)で行うことが好ましい。
先ず、原料を合金化する。この合金化工程では、原料となる金属、あるいは合金を磁石組成に応じて配合し、不活性ガス、例えばAr雰囲気中で溶解し、鋳造することにより合金化する。鋳造法としては、溶融した高温の液体金属を回転ロール上に供給し、合金薄板を連続的に鋳造するストリップキャスト法(連続鋳造法)等が挙げられる。
次に、合金化した原料を粗粉砕する。この粗粉砕工程では、先に鋳造した原料合金の薄板、又は母合金インゴット等を、粒径数百μm程度になるまで粉砕する。粉砕手段としては、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用いることができる。粗粉砕性を向上させるために、水素を吸蔵させて脆化させた後、粗粉砕を行うことが効果的である。
次に、粗粉砕した原料に対し、さらに微粉砕処理を行ない、原料合金粉末を得る。微粉砕は、例えば気流式粉砕機等を使用して行われる。微粉砕の際の条件は、用いる気流式粉砕機に応じて適宜設定すればよく、原料合金粉末を平均粒径が1〜10μm程度、例えば3〜6μmとなるまで微粉砕する。気流式粉砕機としては、ジェットミル等が好適である。ジェットミルは、高圧の不活性ガス(例えば窒素ガス)を狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粉体の粒子を加速し、粉体の粒子同士の衝突や、衝突板あるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。ジェットミルは、一般的に、流動層を利用するジェットミル、渦流を利用するジェットミル、衝突板を用いるジェットミル等に分類される。
なお、前述の粗粉砕工程の終了後、及び/又は微粉砕工程の終了後、原料合金粉末に粉砕助剤を添加してもよい。粉砕助剤としては、例えば脂肪酸系化合物等の潤滑剤を使用することができるが、特に、脂肪酸アミドを粉砕助剤として用いることで、良好な磁気特性、特に高配向性で高い磁化を有する磁石を得ることができる。
次に、得られた原料合金粉末を金型の成型空間内に給粉及び充填して磁場中成形する。成形工程では、乾式成形法を用いてもよく、湿式成形法を用いてもよいが、希土類を含む合金粉末に対しては、通常、乾式成形法を用いる。磁場中成形工程では、例えば図3に示すような成形用金型を用いることができる。この成形用金型は、内周面の断面形状が略円形である型枠11と、型枠11の内周面に沿って設けられたスリーブ12とを有する。スリーブ12の内周面の断面形状は略多角形とされ、図3では例えば12角形状となっている。型枠11は磁性体から構成され、スリーブ12は非磁性体から構成される。スリーブ12の内側には、円柱状のコアロッド13が設けられ、スリーブ12の内周面が成形空間14の外周面を構成し、コアロッド13の外周面が成形空間14の内周面を構成している。成形空間14の形状及び寸法は、焼結後の形状及び寸法が最終形状に近くなるよう、成形体の焼結時の収縮及び変形を考慮して定めることが好ましい。型枠11、スリーブ12、コアロッド13等の材料は、通常の希土類焼結磁石の製造に用いられる成形用金型と同様の材料を使用でき、特に限定されない。
型枠11内には溝15が設けられ、隣接する2つの溝の間に、スリーブ12の内周面、すなわち成形空間14の多角形の頂点が存在する。溝15内にはコイル16が設けられる。コイル16に所定の電流を流すと、成形空間14内には、これらのコイル16を中心として前記多角形の頂点付近が磁極となるような円弧状の磁束が存在することになる。
本発明の成形工程では、成形用金型の成形空間14に原料合金粉末を充填し、コイル16に電流を流してパルス磁場を少なくとも1回印加した後、成形空間14に上下方向から上パンチ及び下パンチを嵌入させることにより原料合金粉末を所定の密度まで圧縮し、成形体を成形する。パルス磁場は、圧縮中に磁場を印加し続ける場合に比べ、磁場印加用コイルの発熱及び絶縁破壊を抑えることができる。
また、本発明では、原料合金粉末の充填密度を1.8g/cm〜2.3g/cmとする必要がある。そして、充填密度を前記範囲内とした原料合金粉末に少なくとも1回のパルス磁場を印加した後、原料合金粉末を圧縮し成形する。パルス磁場の印加と、前記特定範囲の充填密度とを組み合わせたとき、磁場による原料合金粉末の配向制御が良好となり且つ圧縮による配向の乱れが小さく、両者のバランスがとれ、極めて高い磁気特性を得ることができる。充填密度が1.8g/cm未満であると、原料合金粉末の圧縮率が大きく配向の乱れが大きくなるため、磁気特性が低下する。逆に、充填密度を2.3g/cmより高くすると、パルス磁場の印加による原料合金粉末の配向制御が不十分となり、磁気特性が低下する。原料合金粉末の充填密度のより好ましい範囲は、2.0g/cm〜2.2g/cmである。
なお、原料合金粉末の充填密度は、例えば成形後に測定した成形体の重量を、金型の成形空間の体積で除して求めることができる。
パルス磁場を印加する際、磁場印加用コイルに流すコイル電流を例えば1500A以上とするような磁場強度とし、持続時間を例えば0.1m秒〜0.3m秒とし、また、成形時の圧力を例えば3MPa〜300MPaとする。得られる成形体の密度は、4.0g/cm〜4.4g/cmとすることが好ましい。成形体の密度が4.0g/cm未満であると成形体強度が不十分となり、逆に4.4g/cmを上回ると過大な圧力がかかり金型の破損等を引き起こすおそれがある。
金型の成型空間への原料合金粉末の給粉及び充填は、例えば金型の上面を往復移動するフィーダーボックス等により行う。例えば外径11mm以下の小型形状とする場合等、多くの場合前述の範囲の充填密度を自然に実現することは極めて難しいため、例えばフィーダーボックスの往復移動回数や移動速度等を変化させて給粉時間を変えること等により、充填密度を前述の範囲内となるよう制御する。また、充填密度の制御は、金型への振動の付与、磁場吸引、成形空間に給粉した後の原料合金粉末を予備的に圧縮すること、フィーダーボックスの往復移動と金型の下パンチの引き下げとの繰り返しにより徐々に原料合金粉末を引き込むこと等によっても実現される。
パルス磁場の印加の仕方としては、充填密度を1.8g/cm〜2.3g/cmとした状態でパルス磁場を少なくとも1回印加し、且つ圧縮中はパルス磁場を印加しない場合、及び充填密度を1.8g/cm〜2.3g/cmとしてパルス磁場を1回印加した後、圧縮中もパルス磁場を1回以上印加する場合の両方を含む。圧縮中にパルス磁場を例えば多重に印加すると、圧縮中に磁場を印加し続けるパターンに近づくため、配向性の低減の程度が小さくなり、磁気特性が向上する。反面、焼結後に割れが発生し易くなるおそれがあるが、例えば外径寸法を7mm以上11mm以下の小型形状とするか、又は後述のように配向状態を極異方配向とすれば、焼結後の割れの発生はほとんど認められず、良好な製造歩留まりが維持されることが本発明者の検討によって確認されている。また、磁極数や内径寸法の最適化も割れ防止に有効である。
また、成形体を極異方配向することで、ラジアル配向に比べ割れの発生を低減し、製造歩留まりを向上できる。本発明で規定する1.8g/cm〜2.3g/cmという充填密度は、例えば特許文献1のように圧縮中に磁場を印加し続ける場合、割れ易いため使用上問題のある値である。しかしながら、本発明ではパルス磁場を採用し、さらに極異方配向を組み合わせることで、1.8g/cm〜2.3g/cmという低い充填密度でも割れの発生はほとんど観察されず、極めて高い製造歩留まりが実現される。また、極異方配向はラジアル配向に比べ強い磁気特性が得られる点でも有利である。
成形体の外周形状は、真円に近い形状でもよいが、外周形状が焼結後に磁極に対応する位置を頂点とする略多角形状とすることが好ましい。図3に示す成形用金型を用いて得られる成形体は、焼結時の径方向での収縮率が多角形の頂点付近で大きく、また、多角形の辺の中央付近で小さいことから、焼結することで、真円に近い理想的な外周形状の焼結体を得ることができる。したがって、焼結後の研削加工が不要となるか、又は研削加工代が少なくて済み、製造コスト低減が可能となる。また、略多角形状の頂点付近に磁束が集中するため、同じ強度の配向用磁場を印加した場合でも、希土類焼結磁石の表面磁束密度が高くなるような配向状態を得ることができる。さらに、配向用磁場強度を上げると焼結時に割れ易いという不都合があるが、成形体を略多角形状とすることで、前述の理由から配向用磁場強度を下げられるので、焼結時の割れを抑制して歩留まりを高めることができる。逆に、歩留まりを従来と同等とし、配向用磁場強度を高めることで、表面磁束密度のさらなる向上も可能である。
成形体は、焼結後に最終製品に近い形状となるように厚さを薄くしてもよいが、量産時の生産効率を考慮すると、1つの成形体から多数個の磁石を得られるように長尺状の円筒形状とすることが好ましい。
次に、得られた成形体を真空中、又は窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整すればよい。また、焼結後、焼結体を急冷することが好ましい。さらに、焼結体に時効処理を施すことが好ましい。
焼結後、必要に応じて焼結体を機械的に加工する。焼結体の機械的な加工としては、例えばリング状の焼結体の外周面、内周面及び上下の両主面の研磨等が挙げられる。また、長尺の円筒形状の焼結体の場合等、必要に応じて焼結体を所望の厚さにスライスする。また、得られた希土類焼結磁石の酸化を抑えるために、例えばめっき被膜や樹脂被膜等で希土類焼結磁石を表面処理してもよい。
次に、得られた焼結体に着磁用磁場を印加して着磁を行なう。着磁用磁場の方向は、強い磁力を得られることから、磁場中成形時の磁化の方向と略一致させることが好ましい。以上のように磁場中成形時の条件を前述のように最適化することで、高い磁気特性を実現し、例えばHDD用スピンドルモータに組み込むことで、性能や静粛性に優れたモータを実現することが可能な希土類焼結磁石が得られる。
なお、ここまで希土類焼結磁石として平面形状がリング形状の希土類焼結磁石を例に挙げて説明してきたが、本発明は例えば平板状、曲面を有する板状、扇形状、円柱状、異形状等、あらゆる形状の希土類焼結磁石及びその製造方法に適用可能であることは言うまでもない。また、本発明を扇形状の希土類焼結磁石に適用した場合、この希土類焼結磁石は、ハードディスクドライブのヘッドを駆動するためのボイスコイルモータに組み込まれて好適である。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
実施例では、以下のようにしてリング状のNd−Fe−B系焼結磁石を作製した。先ず、原料合金を水素粉砕し、さらに微粉砕し、Nd30重量%、Dy3重量%、B1重量%、Al0.5重量%、Co0.5重量%、残部Feなる組成の原料合金粉末を得た。
次に、得られた原料合金粉末を成形工程に供した。成形工程では、図3に示すような成形空間の外周が略12角形状の金型を備える成形装置を用いて磁場中成形を行なった。金型の成形空間の外形は直径11.5mmの円が内接する正12角形、内径は7.8mm、高さは40mmとした。この金型の成形空間に原料合金粉末を充填した。原料合金粉末の充填は、金型上面に配置したフィーダーボックスにより行った。フィーダーボックスを往復移動させるとともに、徐々に下型を下げ、原料合金粉末を成形空間に引き込むことにより、充填密度を制御した。実施例では、充填密度を2.05g/cmとした。なお、充填密度は、成形後に測定した成形体の重量と金型の成形空間の体積とから求めた。
次に、金型に組み込まれたコイルに3000A、持続時間0.2m秒の条件にて電流を1回流し、パルス磁場を印加した。次に、成型空間に充填した原料合金粉末を150MPaの圧力で上下方向から圧縮し、成形した。これにより、外周面に12の磁極を有し極異方配向された成形体を得た。
得られた成形体を焼結した後、焼結体の加工を施した。焼結体の外周面をセンタレス加工機を用いて研削し外径9.1mmに加工した。次に内周面を内周自動研削機を用いて研削し、内径6.8mmに加工した。更に、バーチカル加工機を用いて焼結体を厚さ7.5mmに研削した。
次に成形体の極異方配向の方向に略一致するように着磁を行った。以上のようにして、外径9.1mm、内径6.8mm、厚さ7.5mmであり、外周面に12の磁極を有するリング状の希土類焼結磁石を作製した。
また、原料合金粉末の充填密度を1.63g/cm、1.81g/cm、1.93g/cm、2.13g/cm、2.18g/cm、2.26g/cm、2.40g/cmと変化させたこと以外は、前述の方法と同様にして希土類焼結磁石を作製した。
以上のように作製した各希土類焼結磁石の磁気特性を評価し、また、各希土類焼結磁石の外観を検査した。希土類焼結磁石の磁気特性は、総磁束により評価した。総磁束の測定の際には、先ず、着磁コイルに使用したヨークと同一寸法のヨークを準備し、この各磁極にそれぞれ30周のコイルを巻いて、これらのコイルを直列に接続したものをサーチコイルとして用意する。次に、このサーチコイルを磁束計(フラックスメータ)に接続して、測定準備した。総磁束の測定は、サーチコイルのヨークの中の中央部に測定する磁石を挿入し、その後磁石をヨークから引き抜いて遠方に移動させたときにサーチコイルに発生する誘起電圧を磁束計(フラックスメータ)で検出、積分して求めた。なお、各充填密度につき希土類焼結磁石を5個ずつ作製して総磁束を測定し、測定値の平均を各充填密度の総磁束値とした。磁気特性の測定結果を表1及び図4に示す。
また、各充填密度につき5個ずつ作製した希土類焼結磁石の全てに対して、外観検査を行った。目視及び倍率5倍の実体顕微鏡を用いて希土類焼結磁石を観察し、割れ又はクラックの有無を検査した。その結果を表1に併せて示す。
Figure 2006108591
図4に示すように、充填密度を1.8g/cm〜2.3g/cmの範囲内としたとき、総磁束は4.90mWbT以上の高い値を示し、良好な結果が得られた。また、充填密度を1.63g/cm又は2.40g/cmとした場合、総磁束は4.90mWbTを下回り、磁気特性の低下がみられた。図4に示すように、充填密度が低すぎると磁気特性が低下する傾向はパルス磁場に特有なものと考えられる。また、図4より、充填密度を2.0g/cm〜2.2g/cmの範囲内とすることにより、極めて高い磁気特性(総磁束4.95mWbT以上)を得られることがわかった。
なお、従来、充填密度を2.3g/cm未満とすると磁石が割れ易くなるとされていたが、充填密度1.8g/cm〜2.3g/cmの範囲内のものを含め、本実験で検討したいずれの希土類焼結磁石において焼結後の割れやクラックは確認されず、高い歩留まりで希土類焼結磁石を作製できることがわかった。
本発明を適用したリング状磁石の一例を示す平面図である。 図1に示すリング状磁石の縦断面図である。 本発明で用いる成形用金型の横断面図である。 原料合金粉末の充填密度と磁気特性との関係を示す特性図である。
符号の説明
1 リング状磁石、11 型枠、12 スリーブ、13 コアロッド、14 成形空間、15 溝、16 コイル

Claims (13)

  1. R(Rは希土類元素の少なくとも1種である。ただし希土類元素はYを含む概念である。)、T(Tは遷移金属元素の少なくとも1種である。)及びBを主成分とする原料合金粉末を成形して成形体を得、前記成形体を焼結する希土類焼結磁石の製造方法であって、
    充填密度を1.8g/cm〜2.3g/cmとして金型内に充填した前記原料合金粉末にパルス磁場を少なくとも1回印加した後、前記原料合金粉末を圧縮することにより、前記成形を行うことを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法。
  2. 前記希土類焼結磁石の平面形状がリング状であることを特徴とする請求項1記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  3. 前記パルス磁場の印加により前記成形体を極異方配向させることを特徴とする請求項1又は2記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  4. 外径7mm以上11mm以下であることを特徴とする請求項2又は3記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  5. 内径5mm以上8mm以下であることを特徴とする請求項4記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  6. 前記成形体の外周形状が、磁極に対応する位置を頂点とする略多角形状であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  7. R(Rは希土類元素の少なくとも1種である。ただし希土類元素はYを含む概念である。)、T(Tは遷移金属元素の少なくとも1種である。)及びBを主成分とする原料合金粉末を充填密度が1.8g/cm〜2.3g/cmとなるように金型内に充填した状態でパルス磁場を少なくとも1回印加した後、圧縮することにより成形体を成形し、前記成形体を焼結してなることを特徴とする希土類焼結磁石。
  8. 前記希土類焼結磁石の平面形状がリング状であることを特徴とする請求項7記載の希土類焼結磁石。
  9. 前記成形体が前記パルス磁場の印加により極異方配向されることを特徴とする請求項7又は8記載の希土類焼結磁石。
  10. 外径7mm以上11mm以下であることを特徴とする請求項8又は9記載の希土類焼結磁石。
  11. 内径5mm以上8mm以下であることを特徴とする請求項10記載の希土類焼結磁石。
  12. ハードディスクドライブのスピンドルモータに用いられることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項記載の希土類焼結磁石。
  13. 前記ハードディスクドライブが1インチ規格以下であることを特徴とする請求項12記載の希土類焼結磁石。
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