JP2006106290A - 防眩性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 高精細表示装置であっても、外光の映り込みを高度に防止でき、かつ呆けのないシャープな画像を表示できる防眩性フィルムを提供する。
【解決手段】 防眩層と、この防眩層の少なくとも一方の面に形成された低屈折率の樹脂層とで構成された防眩性フィルムであって、散乱光プロファイルにおける出射角0°の光強度(I0)に対する出射角30°の散乱光強度(I30)の比(I30/I0)が、0.00001〜0.001%の範囲にある防眩性フィルムを調製する。前記防眩層は、少なくとも1つのポリマーと少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体とで構成された層であって、前記ポリマー及び前駆体のうち少なくとも2つの成分が、液相相分離しているとともに、前記前駆体が硬化していてもよい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、各種ディスプレイ(液晶ディスプレイなど)に用いられる防眩性フィルムに関する。
一般に、液晶表示装置は、偏光板と液晶セルとで構成されている。液晶表示装置の表示品位における欠点は、視野角と外光の映り込みである。視野角に関しては、現在主流であるTN(ツイステッド・ネマチック)モードのTFT(薄膜トランジスタ)液晶表示装置としては、特開平8−50206号公報(特許文献1)、特開平7−191217号公報(特許文献2)および欧州特許0911656A2号明細書(特許文献3)に記載されているように、光学補償フイルムを偏光板と液晶セルとの間に挿入し、極めて広視野角の液晶表示装置が実現されている。しかし、これらの液晶表示装置は、パネルの下方向の階調反転が生じるという問題が残っている。
この問題に対して、特許第2822983号公報(特許文献4)には光拡散手段を、特開2001−33783号公報(特許文献5)には光軸変換板を、そして特開2001−56461号公報(特許文献6)には出射光を拡散する光学手段を、視認側表面に設けることで著しく表示品位が改善されることが提案されている。しかし、これらの具体的な手段は高度に制御されたレンズ構造、あるいは回折構造を有する光拡散手段であり、高価、かつ大量生産が非常に困難である。
特開平6−18706号公報(特許文献7)及び特開平10−20103号公報(特許文献8)には、透明基材フィルムの表面に、フィラー(例えば、二酸化ケイ素(シリカ)など)を含む樹脂を塗工して形成した安価でかつ大量生産可能な防眩性フィルムが開示されている。しかし、これらの防眩性フィルムを用いても、表示品位の向上は不充分であった。
近年では、液晶表示装置は、画素が細かい高精細モニター用途に用いられることが多くなっている。しかし、防眩性フィルムを高精細モニターで使用すると、画像の呆けが生じやすいという別の大きな問題にも直面している。
一方、外光の映り込みに関しては、反射防止フイルムが一般に用いられる。反射防止フイルムは、外光の反射によるコントラストの低下や、像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するディスプレイの最表面に配置される。しかし、従来の反射防止フイルムには上述のような視野角の問題を解決しうるものではなく、外光の映り込みに優れ、かつ視野角の問題を解決できるような反射防止フイルムが望まれている。
これを解決するような防眩性フィルムとして、特開2000−227508号公報(特許文献9)には、表面微細凹凸構造の紫外線硬化樹脂皮膜からなり、垂直方向Aとそれより2度傾斜した方向Bにおける透過光の強度比がA/Bに基づいて、1.8〜4.0である拡散特性を示す光拡散層が開示されている。
さらに、特開2003−270409号公報(特許文献10)には、透明基材および光拡散層を有する光拡散フィルムであって、光拡散層が、0.01乃至0.2%の範囲に、ゴニオフォトメーターの散乱光プロファイルの出射角0°の光強度に対する30°の散乱光強度を有する拡散フィルムが開示されている。
しかし、これらの光拡散層や拡散フィルムであっても、近年、要求されている画像のシャープさは満足なレベルにない。
特開平8−50206号公報 特開平7−191217号公報 欧州特許0911656A2号明細書 特許第2822983号公報 特開2001−33783号公報 特開2001−56461号公報 特開平6−18706号公報 特開平10−20103号公報 特開2000−227508号公報(請求項1、段落番号[0010]) 特開2003−270409号公報(請求項1)
従って、本発明の目的は、高精細表示装置であっても、外光の映り込みを高度に防止でき、かつ呆けのないシャープな画像を表示できる防眩性フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、防眩性を有するとともに、白っぽさや白浮き(白滲み)が低減されたコントラストの高い画像を表示できる防眩層及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、大型ディスプレイであっても、黒表示の映像における白浮きを抑制でき、黒色が引き締まったコントラスト感の強い画像を表示できる防眩層及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、少なくとも1つのポリマーと少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体とを均一に溶解した溶液から溶媒を蒸発させてシートを製造する方法において、適当な条件で液相相分離させ、その後前記前駆体を硬化させると、特定の透過散乱強度を示す防眩層が形成できること、この防眩層(防眩性ハードコート層)と低屈折率の樹脂層(低屈折率層)とを積層すると、高精細表示装置であっても、外光の映り込みを高度に防止でき、かつ呆けのないシャープな画像を表示できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の防眩性フィルムは、防眩層と、この防眩層の少なくとも一方の面に形成された低屈折率の樹脂層とで構成された防眩性フィルムであって、散乱光プロファイルにおける出射角0°の光強度(I0)に対する出射角30°の散乱光強度(I30)の比(I30/I0)が、0.00001〜0.001%の範囲にある。さらに、この防眩性フィルムは、散乱光プロファイルにおける出射角0°の光強度(I0)に対する出射角10°の散乱光強度(I30)の比(I10/I0)が、0.0001〜0.1%の範囲にあってもよい。前記防眩性フィルムは、全ヘイズが1〜30%程度であり、内部ヘイズが0〜1%程度であり、かつ波長450〜650nmの領域での5°入射における平均反射率が0.001〜2.5%程度であってもよい。前記防眩層は、少なくとも1つのポリマーと少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体とで構成された層であって、前記ポリマー及び前駆体のうち少なくとも2つの成分が、液相相分離しているとともに、前記前駆体が硬化していてもよい。前記防眩性フィルムは、透明支持体上に、防眩層及び低屈折率の樹脂層が順次形成されていてもよい。
なお、明細書中において、「低反射防眩層」は、防眩層と低屈折率層との積層構造を意味し、「防眩層」は、防眩層単独を意味する。
本発明では、特定の防眩層と低屈折率層とを組み合わせて、フィルムに特定の光散乱特性を付与しているので、高精細表示装置であっても、外光の映り込みを高度に防止でき、かつ呆けのないシャープな画像を表示できる。また、防眩性を有するとともに、白っぽさや白浮き(白滲み)が低減されたコントラストの高い画像を表示できる。さらに、大型ディスプレイであっても、黒表示の映像における白浮きを抑制でき、黒色が引き締まったコントラスト感の強い画像を表示できる。
[防眩性フィルム(防眩性反射防止フィルム)]
防眩性フィルムは、少なくとも防眩層及び低屈折率の樹脂層(低屈折率層)で構成されている。
(防眩層)
前記防眩層は相分離構造を有しており、この相分離構造は、液相からの相分離(湿式相分離)により形成されている。すなわち、ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とで構成された本発明の樹脂組成物を用い、この樹脂組成物の液相(又は均一溶液やその塗布層)から、溶媒を乾燥などにより蒸発又は除去する過程で、濃度の濃縮に伴って、相分離が生じ、相間距離が比較的規則的な相分離構造を形成できる。より具体的には、前記湿式相分離は、通常、少なくとも1つのポリマーと少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む混合液又は樹脂組成物(均一溶液)を支持体にコーティングし、塗布層から溶媒を蒸発させることにより行うことができる。また、相分離の方法は、スピノーダル分解や核生成など、特に限定されないが、より均一な凹凸構造を形成し易い点から、スピノーダル分解が特に好ましい。さらに、前記防眩層は、乾燥の過程で細胞状回転対流の発生により、塗膜表面が隆起されて、表面に規則的又は周期的な凹凸形状が形成されていてもよい。
前記支持体として剥離性支持体を用いる場合には、低屈折率層を防眩層に積層した後、支持体を防眩層から剥離したり、支持体から防眩層を剥離した後、低屈折率層を前記防眩層に積層したりすることにより防眩層及び低屈折率層で構成された積層構造の防眩性フィルムを得ることができる。また、支持体として非剥離性支持体(好ましくは透明支持体)を用いることにより、支持体と防眩層と低屈折率層とで構成された積層構造の防眩性フィルムを得ることができる。
(1)ポリマー成分
ポリマー成分としては、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが例示できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
スチレン系樹脂には、スチレン系単量体の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体など)、スチレン系単量体と他の重合性単量体[(メタ)アクリル系単量体、無水マレイン酸、マレイミド系単量体、ジエン類など]との共重合体などが含まれる。スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体など]、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。好ましいスチレン系樹脂には、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのスチレンとメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体など]、AS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体などが含まれる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体などが使用できる。(メタ)アクリル系単量体には、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1-10アルキル;(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;トリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが例示できる。共重合性単量体には、前記スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが例示できる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。好ましい(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1-6アルキル、特にメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%程度)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
有機酸ビニルエステル系樹脂としては、ビニルエステル系単量体の単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニルなど)、ビニルエステル系単量体と共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)又はそれらの誘導体が挙げられる。ビニルエステル系樹脂の誘導体には、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール樹脂などが含まれる。
ビニルエーテル系樹脂としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルt−ブチルエーテルなどのビニルC1-10アルキルエーテルの単独又は共重合体、ビニルC1-10アルキルエーテルと共重合性単量体との共重合体(ビニルアルキルエーテル−無水マレイン酸共重合体など)が挙げられる。
ハロゲン含有樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
オレフィン系樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィンの単独重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの共重合体が挙げられる。脂環式オレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなど)の単独又は共重合体(例えば、立体的に剛直なトリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する重合体など)、前記環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−ノルボルネン共重合体、プロピレン−ノルボルネン共重合体など)などが例示できる。脂環式オレフィン系樹脂は、例えば、商品名「アートン(ARTON)」、商品名「ゼオネックス(ZEONEX)」などとして入手できる。
ポリカーボネート系樹脂には、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートなどが含まれる。
ポリエステル系樹脂には、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を用いた芳香族ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2-4アルキレンテレフタレートやポリC2-4アルキレンナフタレートなどのホモポリエステル、C2-4アルキレンアリレート単位(C2-4アルキレンテレフタレート及び/又はC2-4アルキレンナフタレート単位)を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルなど]が例示できる。コポリエステルとしては、ポリC2-4アルキレンアリレートの構成単位のうち、C2-4アルキレングリコールの一部を、ポリオキシC2-4アルキレングリコール、C6-10アルキレングリコール、脂環式ジオール(シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなど)、芳香環を有するジオール(9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、ビスフェノールA、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)などで置換したコポリエステル、芳香族ジカルボン酸の一部を、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族C6-12ジカルボン酸などで置換したコポリエステルが含まれる。ポリエステル系樹脂には、ポリアリレート系樹脂、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸を用いた脂肪族ポリエステル、ε−カプロラクトンなどのラクトンの単独又は共重合体も含まれる。好ましいポリエステル系樹脂は、通常、非結晶性コポリエステル(例えば、C2-4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などのように非結晶性である。
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸など)とジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン)とから得られるポリアミドなどが挙げられる。ポリアミド系樹脂は、ε−カプロラクタムなどのラクタムの単独又は共重合体であってもよく、ホモポリアミドに限らずコポリアミドであってもよい。
セルロース誘導体のうちセルロースエステル類としては、例えば、脂肪族有機酸エステル(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのC1-6有機酸エステルなど)、芳香族有機酸エステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエートなどのC7-12芳香族カルボン酸エステル)、無機酸エステル類(例えば、リン酸セルロース、硫酸セルロースなど)が例示でき、酢酸・硝酸セルロースエステルなどの混合酸エステルであってもよい。セルロース誘導体には、セルロースカーバメート類(例えば、セルロースフェニルカーバメートなど)、セルロースエーテル類(例えば、シアノエチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2-4アルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1-6アルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース又はその塩、ベンジルセルロース、アセチルアルキルセルロースなど)も含まれる。
好ましい熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及びゴム又はエラストマーなどが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、通常、非結晶性であり、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶な樹脂が使用される。特に、成形性又は製膜性、透明性や耐候性の高い樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類など)などが好ましい。特に、本発明においては、熱可塑性樹脂として、セルロース誘導体が好ましい。セルロース誘導体は、半合成高分子であり、他の樹脂や硬化性樹脂前駆体と溶解挙動が異なるため、非常に良好な相分離性を有する。
前記ポリマー(熱可塑性樹脂)として、硬化反応に関与する官能基(硬化性前駆体と反応可能な官能基)を有するポリマーを用いることもできる。このようなポリマーは、官能基を主鎖に有していてもよく、側鎖に有していてもよい。前記官能基は、共重合や共縮合などにより主鎖に導入されてもよいが、通常、側鎖に導入される。このような官能基としては、縮合性又は反応性官能基(例えば、ヒドロキシル基、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基又はイミノ基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基など)、重合性官能基(例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、アリルなどのC2-6アルケニル基、エチニル、プロピニル、ブチニルなどのC2-6アルキニル基、ビニリデンなどのC2-6アルケニリデン基、又はこれらの重合性官能基を有する官能基((メタ)アクリロイル基など)など)などが挙げられる。これらの官能基のうち、重合性官能基が好ましい。
重合性官能基を側鎖に有する熱可塑性樹脂は、例えば、反応性基(前記縮合性又は反応性官能基の項で例示の官能基と同様の基など)を有する熱可塑性樹脂(i)と、この熱可塑性樹脂の反応性基に対する反応性基と、重合性官能基とを有する化合物(重合性化合物)(ii)とを反応させ、化合物(ii)が有する重合性官能基を熱可塑性樹脂に導入することにより製造できる。
前記反応性基を有する熱可塑性樹脂(i)としては、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する熱可塑性樹脂[例えば、(メタ)アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体などの(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体など)、末端カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂など]、ヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂[例えば、(メタ)アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル共重合体など)、末端ヒドロキシル基を有するポリエステル系樹脂又はポリウレタン系樹脂、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2-4アルキルセルロースなど)、ポリアミド系樹脂(N−メチロールアクリルアミド共重合体など)など]、アミノ基を有する熱可塑性樹脂(例えば、末端アミノ基を有するポリアミド系樹脂など)、エポキシ基を有する熱可塑性樹脂(例えば、エポキシ基(グリシジル基など)を有する(メタ)アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂など)などが例示できる。また、前記反応性基を有する熱可塑性樹脂(i)としては、スチレン系樹脂やオレフィン系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂に、共重合やグラフト重合により、前記反応性基を導入した樹脂を用いてもよい。これらの熱可塑性樹脂(i)のうち、反応性基としてカルボキシル基又はその酸無水物基、ヒドロキシル基やグリシジル基(特にカルボキシル基又はその酸無水物基)を有する熱可塑性樹脂が好ましい。なお、前記(メタ)アクリル系樹脂のうち、前記共重合体は、(メタ)アクリル酸を50モル%以上含有するのが好ましい。前記熱可塑性樹脂(i)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
重合性化合物(ii)の反応性基としては、熱可塑性樹脂(i)の反応性基に対して反応性の基、例えば、前記ポリマーの官能基の項で例示した縮合性又は反応性官能基と同様の官能基などが挙げられる。
前記重合性化合物(ii)としては、エポキシ基を有する重合性化合物[例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート(グリシジル(メタ)アクリレート、1,2−エポキシブチル(メタ)アクリレートなどのエポキシC3-8アルキル(メタ)アクリレート;エポキシシクロヘキセニル(メタ)アクリレートなどのエポキシシクロC5-8アルケニル(メタ)アクリレートなど)、アリルグリシジルエーテルなど]、ヒドロキシル基を有する化合物[ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2-4アルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのC2-6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]、アミノ基を有する重合性化合物[例えば、アミノ基含有(メタ)アクリレート(アミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノC1-4アルキル(メタ)アクリレートなど);アルケニルアミン(アリルアミンなどのC3-6アルケニルアミンなど);アミノスチレン類(4−アミノスチレンやジアミノスチレンなどのアミノスチレン類など)など]、イソシアネート基を有する重合性化合物[例えば、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレートやビニルイソシアネートなど]、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する重合性化合物[例えば、(メタ)アクリル酸や無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物など]が例示できる。これらの重合性化合物(ii)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
なお、熱可塑性樹脂(i)の反応性基と重合性化合物(ii)の反応性基との組合せとしては、例えば、以下の組合せなどが挙げられる。
(i-1)熱可塑性樹脂(i)の反応性基:カルボキシル基又はその酸無水物基
重合性化合物(ii)の反応性基:エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基
(i-2)熱可塑性樹脂(i)の反応性基:ヒドロキシル基
重合性化合物(ii)の反応性基:カルボキシル基又はその酸無水物基、イソシアネート基
(i-3)熱可塑性樹脂(i)の反応性基:アミノ基
重合性化合物(ii)の反応性基:カルボキシル又はその酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基
(i-4)熱可塑性樹脂(i)の反応性基:エポキシ基
重合性化合物(ii)の反応性基:カルボキシル基又はその酸無水物基、アミノ基。
重合性化合物(ii)のうち、特に、エポキシ基含有重合性化合物(エポキシ基含有(メタ)アクリレートなど)が好ましい。
前記官能基含有ポリマー、例えば、(メタ)アクリル系樹脂のカルボキシル基の一部に重合性不飽和基を導入したポリマーは、例えば、「サイクロマーP」などとしてダイセル化学工業(株)から入手できる。なお、サイクロマーPは、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートのエポキシ基を反応させて、側鎖に光重合性不飽和基を導入した(メタ)アクリル系ポリマーである。
熱可塑性樹脂に対する硬化反応に関与する官能基(特に重合性基)の導入量は、熱可塑性樹脂1kgに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.01〜5モル、さらに好ましくは0.02〜3モル程度である。
これらのポリマーは適当に組み合わせて使用できる。すなわち、ポリマーは複数のポリマーで構成されていてもよい。複数のポリマーは、液相スピノーダル分解により、相分離可能であってもよい。また、複数のポリマーは、互いに非相溶であってもよい。複数のポリマーを組み合わせる場合、第1の樹脂と第2の樹脂との組み合わせは特に制限されないが、加工温度付近で互いに非相溶な複数のポリマー、例えば、互いに非相溶な2つのポリマーとして適当に組み合わせて使用できる。例えば、第1のポリマーがセルロース誘導体(例えば、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル類)である場合、第2のポリマーは、スチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体など)、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(前記ポリC2-4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などであってもよい。また、例えば、第1のポリマーがスチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体など)である場合、第2のポリマーは、セルロース誘導体(例えば、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル類)、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなど)、脂環式オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(前記ポリC2-4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などであってもよい。複数の樹脂の組合せにおいて、少なくともセルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2-4脂肪族カルボン酸エステル類)を用いてもよい。
なお、複数のポリマーは、溶媒を蒸発させるための乾燥過程でポリマー同士が相分離せず、防眩層として機能する複数のポリマーの相分離性は、双方の成分に対する良溶媒を用いて均一溶液を調製し、溶媒を徐々に蒸発させる過程で、残存固形分が白濁するか否かを目視にて確認することにより簡便に判定できる。
なお、スピノーダル分解により生成された相分離構造は、活性光線(紫外線、電子線など)や熱などにより最終的に硬化し、硬化樹脂を形成する。最終的な硬化により防眩層は、ハードコート層を形成する。そのため、防眩層に耐擦傷性を付与でき、耐久性を向上できる。
硬化後の耐擦傷性の観点から、複数のポリマーのうち、少なくとも一つのポリマー、例えば、互いに非相溶なポリマーのうち一方のポリマー(第1の樹脂と第2の樹脂とを組み合わせる場合、特に両方のポリマー)が硬化性樹脂前駆体と反応可能な官能基を側鎖に有するポリマーであるのが好ましい。
第1のポリマーと第2のポリマーとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10程度の範囲から選択でき、通常、20/80〜80/20程度、特に30/70〜70/30程度である。特に、第1のポリマーにセルロース誘導体を用いる場合、第1のポリマーと第2のポリマーとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=1/99〜30/70、好ましくは5/95〜28/72、さらに好ましくは10/90〜27/73(特に、15/85〜25/75)程度である。セルロース誘導体の割合がこの範囲にあると、ヘイズが低く、透過像鮮明度も抑制された防眩性フィルムを形成できる。
なお、相分離構造を形成するためのポリマーとしては、前記非相溶な2つのポリマー以外にも、前記熱可塑性樹脂や他のポリマーが含まれていてもよい。
ポリマーのガラス転移温度は、例えば、−100℃〜250℃、好ましくは−50℃〜230℃、さらに好ましくは0〜200℃程度(例えば、50〜180℃程度)の範囲から選択できる。
なお、表面硬度の観点から、ガラス転移温度は、50℃以上(例えば、70〜200℃程度)、好ましくは100℃以上(例えば、100〜170℃程度)であるのが有利である。ポリマーの重量平均分子量は、例えば、1,000,000以下、好ましくは1,000〜500,000程度の範囲から選択できる。
(2)硬化性樹脂前駆体
硬化性樹脂前駆体としては、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基を有する化合物であり、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋して樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能な種々の硬化性化合物が使用できる。
前記樹脂前駆体としては、例えば、熱硬化性化合物又は樹脂[エポキシ基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、シラノール基、重合性基(ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基など)などを有する低分子量化合物(又はプレポリマー、例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの低分子量樹脂など)]、活性光線(紫外線など)により硬化可能な光硬化性化合物(光硬化性モノマー、オリゴマー、プレポリマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示でき、光硬化性化合物は、EB(電子線)硬化性化合物などであってもよい。なお、光硬化性モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい光硬化性樹脂などの光硬化性化合物を、単に「光硬化性樹脂」という場合がある。硬化性樹脂前駆体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記光硬化性化合物は、通常、光硬化性基、例えば、重合性基(ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基など)や感光性基(シンナモイル基など)を有しており、特に重合性基を有する光硬化性化合物(例えば、単量体、オリゴマー(又は樹脂、特に低分子量樹脂))が好ましい。光硬化性化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
重合性基を有する光硬化性化合物のうち、単量体としては、例えば、単官能性単量体[(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(メチル(メタ)アクリレートなどのC1-6アルキル(メタ)アクリレートなど)、シクロアルキル(メタ)アクリレート、橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなど)、グリシジル(メタ)アクリレート;酢酸ビニルなどのビニルエステル、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体など]、少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する多官能性単量体[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの3〜6程度の重合性不飽和結合を有する多官能性単量体]が例示できる。
重合性基を有する光硬化性化合物のうち、オリゴマー又は樹脂としては、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレートなどが例示できる。
好ましい硬化性樹脂前駆体は、短時間で硬化できる光硬化性化合物、例えば、紫外線硬化性化合物(モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい樹脂など)、EB硬化性化合物である。特に、実用的に有利な樹脂前駆体は、紫外線硬化性モノマー、紫外線硬化性樹脂である。さらに、耐擦傷性などの耐性を向上させるため、光硬化性樹脂は、分子中に2以上(好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4程度)の重合性不飽和結合を有する化合物であるのが好ましい。
硬化性樹脂前駆体の分子量としては、ポリマーとの相溶性を考慮して5000以下(例えば、170〜5000)、好ましくは2000以下(例えば、170〜2000)、さらに好ましくは1000以下(例えば、170〜1000)程度である。
硬化性樹脂前駆体は、その種類に応じて、硬化剤と組み合わせて用いてもよい。例えば、熱硬化性樹脂前駆体は、アミン類、多価カルボン酸類などの硬化剤と組み合わせて用いてもよく、光硬化性樹脂前駆体は光重合開始剤と組み合わせて用いてもよい。
前記光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。
光硬化剤などの硬化剤の含有量は、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部(特に1〜5重量部)程度であり、3〜8重量部程度であってもよい。
さらに、硬化性樹脂前駆体は硬化促進剤や架橋剤を含んでいてもよい。例えば、光硬化性樹脂前駆体は、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステルなど)、ホスフィン系光重合促進剤などと組み合わせてもよい。
本発明において、少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体のうち、少なくとも2つの成分が、加工温度付近で互いに相分離する組み合わせで使用するのが好ましい。相分離する組み合わせとしては、例えば、(a)複数のポリマー同士が互いに非相溶で相分離する組み合わせ、(b)ポリマーと硬化性樹脂前駆体とが非相溶で相分離する組み合わせや、(c)複数の硬化性樹脂前駆体同士が互いに非相溶で相分離する組み合わせなどが挙げられる。これらの組み合わせのうち、通常、(a)複数のポリマー同士の組み合わせや、(b)ポリマーと硬化性樹脂前駆体との組み合わせであり、特に(a)複数のポリマー同士の組み合わせが好ましい。相分離させる両者の相溶性が高い場合、溶媒を蒸発させるための乾燥過程で両者が有効に相分離せず、防眩層としての機能が低下する。
なお、熱可塑性樹脂と硬化性樹脂前駆体(又は硬化樹脂)とは、通常、互いに非相溶である。ポリマーと硬化性樹脂前駆体とが非相溶で相分離する場合に、ポリマーとして複数のポリマーを用いてもよい。複数のポリマーを用いる場合、少なくとも1つのポリマーが樹脂前駆体(又は硬化樹脂)に対して非相溶であればよく、他のポリマーは前記樹脂前駆体と相溶してもよい。
また、互いに非相溶な2つの熱可塑性樹脂と、硬化性化合物(特に複数の硬化性官能基を有するモノマー又はオリゴマー)との組み合わせであってもよい。さらに、硬化後の耐擦傷性の観点から、前記非相溶な熱可塑性樹脂のうち一方のポリマー(特に両方のポリマー)が硬化反応に関与する官能基(前記硬化性樹脂前駆体の硬化に関与する官能基)を有する熱可塑性樹脂であってもよい。
ポリマーを互いに非相溶な複数のポリマーで構成して相分離する場合、硬化性樹脂前駆体は、非相溶な複数のポリマーのうち、少なくとも1つのポリマーと加工温度付近で互いに相溶する組合せで使用される。すなわち、互いに非相溶な複数のポリマーを、例えば、第1の樹脂と第2の樹脂とで構成する場合、硬化性樹脂前駆体は、第1の樹脂及び第2の樹脂のうち少なくともいずれか一方の樹脂と相溶すればよく、両方のポリマー成分と相溶してもよい。両方のポリマー成分に相溶する場合、第1の樹脂及び硬化性樹脂前駆体を主成分とした混合物と、第2の樹脂及び硬化性樹脂前駆体を主成分とした混合物との少なくとも二相に相分離してもよい。
選択した複数のポリマーの相溶性が高い場合、溶媒を蒸発させるための乾燥過程でポリマー同士が有効に相分離せず、防眩層としての機能が低下する。
硬化性モノマーと互いに非相溶な複数のポリマーとは、少なくとも1成分のポリマーと硬化性モノマーとが加工温度付近で互いに相溶する組合せで使用される。すなわち、互いに非相溶な複数のポリマーを、例えば、ポリマーAとポリマーBとで構成する場合、硬化性モノマーは少なくともポリマーA又はポリマーBのどちらかと相溶すればよく、好ましくは、両方のポリマー成分と相溶してもよい。両方のポリマー成分に相溶する場合、ポリマーA及び硬化性モノマーを主成分とした混合物と、ポリマーB及び硬化性モノマーを主成分とした混合物との少なくとも二相に相分離する。
なお、複数のポリマー相分離性、及びポリマーと硬化性モノマーとの相分離性は、それぞれ双方の成分に対する良溶媒を用いて均一溶液を調製し、溶媒を徐々に蒸発させる過程で、残存固形分が白濁するか否かを目視にて確認することにより簡便に判定できる。
さらに、通常、ポリマーと、樹脂前駆体の硬化により生成した硬化又は架橋樹脂とは互いに屈折率が異なる。また、複数のポリマー(第1の樹脂と第2の樹脂)の屈折率も互いに異なる。ポリマーと硬化又は架橋樹脂との屈折率の差、複数のポリマー(第1の樹脂と第2の樹脂)の屈折率の差は、例えば、0.001〜0.2、好ましくは0.05〜0.15程度であってもよい。
相分離の中でも、スピノーダル分解において、相分離の進行に伴って共連続相構造を形成し、さらに相分離が進行すると、連続相が自らの表面張力により非連続化し、液滴相構造(球状、真球状、円盤状や楕円体状などの独立相の海島構造)となる。従って、相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(上記共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成できる。本発明において、防眩層の相分離構造は、海島構造(液滴相構造、又は一方の相が独立または孤立した相構造)、共連続相構造(又は網目構造)であってもよく、共連続相構造と液滴相構造とが混在した中間的構造であってもよい。これらの相分離構造により溶媒乾燥後には防眩層の表面に微細な凹凸を形成できる。
このように、相分離によって表面に凹凸形状を形成した防眩層は、微粒子を分散して表面凹凸形状を形成する方法と異なり、層の内部で散乱を引き起こすような微粒子を防眩層内に含まない。このため、層の内部におけるヘイズ(層の内部で散乱を引き起こす内部ヘイズ)は低く、例えば、0〜1%程度であり、好ましくは0〜0.8%(例えば、0.01〜0.8%)、さらに好ましくは0〜0.5%(例えば、0.1〜0.5%)程度である。なお、内部ヘイズは、防眩層の表面凹凸を平坦化するように上から樹脂層をコートするか、透明粘着層を介して平滑な透明フィルムと防眩層の表面凹凸を貼り合わせて、ヘイズを測定することにより測定できる。
前記相分離構造において、表面凹凸構造を形成し、かつ表面硬度を高める点からは、少なくとも島状ドメインを有する液滴相構造であるのが有利である。なお、ポリマーと前記前駆体(又は硬化樹脂)とで構成された相分離構造が海島構造である場合、ポリマー成分が海相を形成してもよいが、表面硬度の観点から、ポリマー成分が島状ドメインを形成するのが好ましい。なお、島状ドメインの形成により、乾燥後には防眩層の表面に微細な凹凸を形成できる。
さらに、前記相分離構造のドメイン間の平均距離は、通常、微粒子を分散して凹凸形状を形成した場合に比べて、実質的に規則性又は周期性を有している。例えば、ドメインの平均相間距離は、例えば、30〜300μm、好ましくは40〜250μm、さらに好ましくは50〜200μm程度であってもよい。
ポリマーと硬化性樹脂前駆体との割合(重量比)は、特に制限されず、例えば、前者/後者=5/95〜95/5程度の範囲から選択でき、表面硬度の観点から、好ましくは5/95〜60/40程度であり、さらに好ましくは10/90〜50/50、特に10/90〜40/60程度である。特に、ポリマーの全部又は一部にセルロース誘導体を用いる場合、ポリマーと硬化性樹脂前駆体との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=10/90〜80/20、好ましくは20/80〜70/30、さらに好ましくは30/70〜50/50程度である。
防眩性フィルムにおいて、防眩層の厚みは、例えば、0.3〜20μm程度、好ましくは1〜15μm(例えば、1〜10μm)程度であってもよく、通常、2〜10μm(特に3〜7μm)程度である。なお、支持体と積層して用いない場合には、防眩層の厚みは、例えば、1〜100μm、好ましくは3〜50μm程度の範囲から選択してもよい。
(低屈折率層)
低屈折率層は、低屈折率樹脂で構成されている。低屈折率層を前記防眩層の少なくとも一方の面に積層することにより、光学部材などにおいて、低屈折率層を最表面となるように配設した場合などに、外部からの光(外部光源など)が、防眩性フィルムの表面で反射するのを有効に防止できる。
低屈折率樹脂の屈折率は、例えば、1.30〜1.49、好ましくは1.36〜1.49、さらに好ましくは1.38〜1.48程度である。
低屈折率樹脂としては、例えば、メチルペンテン樹脂、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などのフッ素樹脂などが挙げられる。また、低屈折率層は、通常、フッ素含有化合物を含有するのが好ましく、フッ素含有化合物を用いると、低屈折率層の屈折率を所望に応じて低減できる。
前記フッ素含有化合物としては、フッ素原子と、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基(架橋性基又は重合性基などの硬化性基など)とを有し、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋してフッ素含有樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能なフッ素含有樹脂前駆体が挙げられる。
このようなフッ素含有樹脂前駆体としては、例えば、フッ素原子含有熱硬化性化合物又は樹脂[フッ素原子とともに、反応性基(エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基など)、重合性基(ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基など)などを有する低分子量化合物]、活性光線(紫外線など)により硬化可能なフッ素原子含有光硬化性化合物又は樹脂(光硬化性フッ素含有モノマー又はオリゴマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示できる。
前記熱硬化性化合物又は樹脂としては、例えば、少なくともフッ素含有モノマーを用いて得られる低分子量樹脂、例えば、構成モノマーとしてのポリオール成分の一部又は全部に代えてフッ素含有ポリオール(特にジオール)を用いて得られるエポキシ系フッ素含有樹脂;同様に、ポリオール及び/又はポリカルボン酸成分の一部又は全部に代えて、フッ素原子含有ポリオール及び/又はフッ素原子含有ポリカルボン酸成分を用いて得られる不飽和ポリエステル系フッ素含有樹脂;ポリオール及び/又はポリイソシアネート成分の一部又は全部に代えて、フッ素原子含有ポリオール及び/又はポリイソシアネート成分を用いて得られるウレタン系フッ素含有樹脂などが例示できる。これらの熱硬化性化合物又は樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記光硬化性化合物には、例えば、単量体、オリゴマー(又は樹脂、特に低分子量樹脂)が含まれ、単量体としては、例えば、前記防眩層の項で例示の単官能性単量体及び多官能性単量体に対応するフッ素原子含有単量体[(メタ)アクリル酸のフッ化アルキルエステルなどのフッ素原子含有(メタ)アクリル系単量体、フルオロオレフィン類などのビニル系単量体などの単官能性単量体;1−フルオロ−1,2−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチレンなどのフッ化アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレートなど]が例示できる。また、オリゴマー又は樹脂としては、前記防眩層の項で例示のオリゴマー又は樹脂に対応するフッ素原子含有オリゴマー又は樹脂などが使用できる。これらの光硬化性化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
フッ素含有樹脂の硬化性前駆体は、例えば、溶液(コート液)状の形態で入手でき、このようなコート液は、例えば、日本合成ゴム(株)製「TT1006A」及び「JN7215」や、大日本インキ化学工業(株)製「ディフェンサTR−330」、日産化学工業(株)製「LR−202B」などとして入手できる。
低屈折率層の厚みは、例えば、0.05〜2μm、好ましくは0.1〜1μm(例えば、0.1〜0.5μm)、さらに好ましくは0.1〜0.3μm程度である。
前記のように、防眩性フィルムは、防眩層及び低屈折率層で構成してもよく、支持体と、この支持体上に順次形成された防眩層及び低屈折率層とで構成してもよい。支持体としては、光透過性を有する支持体、例えば、合成樹脂フィルムなどの透明支持体が使用される。また、光透過性を有する支持体は、光学部材を形成するための透明ポリマーフィルムで構成されていてもよい。
一般に、低屈折率層を防眩層の表面にコートすると、コート前の防眩層単独に比べ、ヘイズは1〜10%程度下がり、透過鮮明度は1〜10%程度上がる傾向がある。このため、最終的な低反射防眩層のヘイズおよび透過鮮明度を、後述する範囲に調整するためには、予め防眩層単独のヘイズは高めになるように調製し、防眩層単独の透過鮮明度は、低めになるように調製する必要がある。
(透明支持体)
透明支持体(又は基材シート)としては、ガラス、セラミックスの他、樹脂シートが例示できる。透明支持体を構成する樹脂としては、前記防眩層と同様の樹脂が使用できる。好ましい透明支持体としては、透明性ポリマーフィルム、例えば、セルロース誘導体[セルローストリアセテート(TAC)、セルロースジアセテートなどのセルロースアセテートなど]、ポリエステル系樹脂[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリレート系樹脂など]、ポリスルホン系樹脂[ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)など]、ポリエーテルケトン系樹脂[ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など]、ポリカーボネート系樹脂(PC)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、環状ポリオレフィン系樹脂[アートン(ARTON)、ゼオネックス(ZEONEX)など]、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニリデンなど)、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレンなど)、酢酸ビニル又はビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールなど)などで形成されたフィルムが挙げられる。透明支持体は1軸又は2軸延伸されていてもよいが、光学的に等方性であるのが好ましい。好ましい透明支持体は、低複屈折率の支持シート又はフィルムである。光学的に等方性の透明支持体には、未延伸シート又はフィルムが例示でき、例えば、ポリエステル(PET、PBTなど)、セルロースエステル類、特にセルロースアセテート類(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートC3-4有機酸エステル)などで形成されたシート又はフィルムが例示できる。二次元的構造の支持体の厚みは、例えば、5〜2000μm、好ましくは15〜1000μm、さらに好ましくは20〜500μm程度の範囲から選択できる。
[防眩性フィルム及び光学部材]
前記低反射防眩層は、防眩性が高いだけでなく光散乱性も高い。特に、透過光を等方的に透過して散乱させながら、特定の角度範囲での散乱強度を大きくできる。さらに、透過像の鮮明性も高い。また、低屈折率層の表面では、外光反射を効率よく防止できる。そのため、本発明の防眩性フィルムは、光学部材等の用途に適しており、前記支持体を、種々の光学部材を形成するための透明ポリマーフィルムで構成することもできる。透明ポリマーフィルムと組み合わせて得られた防眩性フィルムは、そのまま光学部材として用いてもよく、光学要素(例えば、偏光板、位相差板、導光板などの光路内に配設される種々の光学要素)と組み合わせて光学部材を形成してもよい。すなわち、光学要素の少なくとも一方の光路面に前記防眩性フィルムを配設又は積層してもよい。例えば、前記位相差板の少なくとも一方の面に防眩性フィルムを積層してもよく、導光板の出射面に防眩性フィルムを配設又は積層してもよい。
低反射防眩層に耐擦傷性が付与されている防眩性フィルムは、保護フィルムとしても機能させることができる。そのため、本発明の防眩性フィルムは、偏光板の2枚の保護フィルムのうち少なくとも一方の保護フィルムに代えて、防眩性フィルムを用いた積層体(光学部材)、すなわち、偏光板の少なくとも一方の面に防眩性フィルムが積層された積層体(光学部材)として利用するのに適している。
本発明の防眩性フィルムにおいて、防眩層の表面には、前記相分離構造に対応した微細な凹凸構造が大量に形成されている。そのため、表面反射による外景の映り込みを抑制しつつ、ギラツキも抑制でき、防眩性を高めることができる。さらにこのような防眩層の上に低屈折率層をオーバーコートするので、微細な凹凸(例えば、高低差が約1μm以下の凹凸)を覆い、その結果、表面の低屈折率化による反射率低下と相まって表示の白浮きを低減することが出来る。なお、表示の白浮きは、例えば、透明の粘着剤を介して防眩性フィルムを黒色板に貼り合わせ、目視にて評価できる。
本発明の防眩性フィルムは、所望の視認特性を達成するため(特に、画像のシャープ性を向上させるため)、散乱光プロファイルにおける出射角0°の光強度(I0)に対する出射角30°の散乱光強度(I30)の比(I30/I0)が、0.00001〜0.001%の範囲に調整されている。前記光散乱強度比I30/I0は、好ましくは0.00003〜0.0009%、さらに好ましくは0.00005〜0.0008%(特に0.00007〜0.0005%)程度である。
さらに、画像のシャープ性を向上する点から、散乱光プロファイルにおける出射角0°の光強度(I0)に対する出射角10°の散乱光強度(I30)の比(I10/I0)は、例えば、0.0001〜0.1%、好ましくは0.0003〜0.008%、さらに好ましくは0.0005〜0.005%程度である。
散乱光プロファイルは、防眩性フイルムについて、ゴニオフォトメーター、例えば、市販の自動変角光度計(GP−200型、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定できる。例えば、防眩性フィルムを透過した光の角度分布は、図1に示すように、He−Neレーザなどのレーザ光源1と、ゴニオメーターに設置した光受光器4を備えた測定装置を用いて測定できる。なお、この例では、レーザ光源1からのレーザ光をNDフィルタ2を介して試料3に照射し、試料からの散乱光を、レーザ光の光路に対して散乱角度θで変角可能であり、かつ光電子増幅管を備えた検出器(光受光器)4により検出し、散乱強度と散乱角度θとの関係を測定している。このような装置として、レーザ光散乱自動測定装置(日本科学エンジニアリング(株)製)を利用できる。
画像のシャープ性には、ヘイズ値の調整も重要である。ヘイズのうち、フィルムの内部におけるヘイズ(フィルムの内部で散乱を引き起こす内部ヘイズ)は、例えば、1%以下(0〜1%)、好ましくは0〜0.8%(例えば、0.01〜0.8%)、さらに好ましくは0〜0.5%(例えば、0.1〜0.5%)程度である。内部へイズは画像のシャープ性を損なう(画像がボケる)ため、高すぎると好ましくない。内部ヘイズを制御する方法としては、粒径が0.5〜2μm程度の粒子を分散させてもよいが、フィルム表面に凹凸形状を形成することにより、内部ヘイズを調整する方法が好ましい。
内部ヘイズとは別に、視認性の観点から、フィルム表面におけるヘイズ(表面ヘイズ)を適度な値とするため、フィルムの表面に凹凸形状を形成するのが好ましい。本発明では、前記内部ヘイズと、表面ヘイズとが存在する状態で、全ヘイズ値を1〜30%程度に調整するのが好ましい。防眩性を向上する点から、全ヘイズは、例えば、1〜30%、好ましくは2〜25%、さらに好ましくは2〜20%(例えば、3〜15%)、特に3〜10%(例えば、5〜10%)程度である。
本発明の防眩性フィルムの全光線透過率は、例えば、70〜100%、好ましくは80〜100%、さらに好ましくは85〜100%(例えば、85〜95%)、特に90〜100%(例えば、92〜99%)程度である。
ヘーズ及び全光線透過率は、JIS K7105に準拠して、日本電色工業(株)製、NDH−300Aヘーズメーターを用いて測定できる。
さらに、本発明の防眩性フィルムは、5度入射における鏡面反射率が、450〜650nmの波長領域における平均値として、2.5%以下(例えば、0.001〜2.5%)、好ましくは2%以下(例えば、0.01〜2%)程度である。
なお、特開2004−126495号公報には、本発明と同様に、少なくとも1つのポリマーと少なくとも一つの硬化性樹脂前駆体とを均一に溶解した溶液から溶媒を蒸発させてシートを製造する方法において、適当な条件でスピノーダル分解させ、その後前記前駆体を硬化させることにより防眩層を作製する方法が開示されている。この文献では、防眩層単独で構成され、特定のヘイズ値や透過像鮮明度を有する防眩性フィルムが開示されているものの、特定の透過散乱特性を有する防眩性フィルム及びその製造方法について具体的に開示されていない。
[防眩性フィルムの製造方法]
(防眩層の製造方法)
このような透過散乱特性を有する防眩性フィルムは、ポリマーの種類や割合を選択することにより調製することができる。例えば、まず、安定した液液相分離を行うポリマーとしてセルロース誘導体(特にセルロースアセテートプロピオネートなどの脂肪族C1-6有機酸エステル)を用いること、さらに、そのセルロース誘導体の配合比を、防眩層を形成する固形分のうちの5〜10重量%(好ましくは6〜10重量%、さらに好ましくは7〜10重量%)に抑制し、液液相分離による防眩層を形成し、低屈折率層をコートすることにより調製できる。特に、セルロース誘導体の配合において、硬化反応に関与する官能基を有するポリマー(エポキシ基を有する(メタ)アクリル系樹脂など)や硬化性樹脂前駆体(多官能性(メタ)アクリル系単量体など)などの硬化性成分と、セルロース誘導体(特に、セルロースアセテートプロピオネートなどの脂肪族C1-6有機酸エステル)との割合(重量比)が、例えば、硬化性成分/セルロース誘導体=90/10〜95/5、好ましくは90/10〜94/6、さらに好ましくは90/10〜93/7程度であるのが好ましい。なお、その機構については未解明であるが、セルロース誘導体の配合比を調節することにより、防眩層の表面形状が制御され、例えば、出射角30°の方向へ散乱するような表面の凹凸形状が消失すると推定される。
相分離の中でも、湿式スピノーダル分解において、溶媒は、前記ポリマー及び硬化性樹脂前駆体の種類及び溶解性に応じて選択でき、少なくとも固形分(複数のポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、メトキシプロパノール、ブトキシエタノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、アルキレングリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。また、溶媒は混合溶媒であってもよい。
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む液相(又は液状組成物)から、前記溶媒の蒸発に伴うスピノーダル分解により、相分離構造を形成し、前記硬化性樹脂前駆体を硬化させて防眩層を形成し、この防眩層上に、低屈折率層を形成することによりを製造できる。
前記相分離構造は、通常、前記ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む混合液(特に均一溶液などの液状組成物)を剥離性又は非剥離性の支持体に塗布又は流延し、塗膜から溶媒を蒸発させることにより、形成できる。得られた相分離構造は、規則的又は周期的な平均相間距離を有している。
防眩層は、相分離構造を形成後、少なくとも前記硬化性樹脂前駆体を熱や活性光線などを利用して硬化させることにより形成できる。好ましい態様では、前記混合液として、前記熱可塑性樹脂と、光硬化性化合物と、光重合開始剤と、前記熱可塑性樹脂および光硬化性化合物を可溶な溶媒とを含む組成物が使用でき、スピノーダル分解により形成された相分離構造の光硬化成分を光照射により硬化することにより防眩層が形成される。また、他の好ましい態様では、前記混合液として、前記互いに非相溶な複数のポリマーと、光硬化性化合物と、光重合開始剤と、溶媒とを含む組成物が使用でき、スピノーダル分解により形成された相分離構造の光硬化成分を光照射により硬化することにより防眩層が形成される。
混合液中の溶質(ポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)の濃度は、相分離が生じる範囲及び流延性やコーティング性などを損なわない範囲で選択でき、例えば、1〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは15〜40重量%(特に20〜40重量%)程度である。
なお、透明支持体に前記混合液を塗布すると、溶媒の種類によっては透明支持体が溶解又は膨潤する場合がある。例えば、トリアセチルセルロースフィルムに、複数の樹脂を含有する塗布液(均一溶液)を塗布すると、溶媒の種類によって、トリアセチルセルロースフィルムの塗布面が溶出、侵食若しくは膨潤する場合がある。このような場合、透明支持体(トリアセチルセルロースフィルムなど)の塗布面に予め耐溶剤性コーティング剤を塗布し、光学的に等方性の耐溶剤性コーティング層を形成していてもよい。このようなコーティング層は、例えば、AS樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)などの熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、紫外線硬化型樹脂などの硬化性樹脂などを用いて形成できる。
また、混合液又は塗布液を透明支持体に塗布する場合、透明支持体の種類に応じて、透明支持体を溶解・侵食若しくは膨潤しない溶媒を選択してもよい。例えば、透明支持体としてトリアセチルセルロースフィルムを用いる場合、混合液又は塗布液の溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、トルエンなどを用いると、フィルムの性質を損なうことなく、防眩層を形成できる。
前記混合液を流延又は塗布した後、溶媒を蒸発させることにより、スピノーダル分解による相分離を誘起することができる。溶媒蒸発の温度(相分離温度)は、特に制限されないが、溶媒の沸点と蒸発させる温度との差を、例えば、120℃以内、好ましくは100℃以内(例えば、70℃以内)、さらに好ましくは60℃以内(例えば、50℃以内)の範囲で選択するのが好ましい。また、溶媒の沸点よりも低い温度(例えば、溶媒の沸点よりも1〜120℃、好ましくは5〜50℃、特に10〜50℃程度低い温度)で溶媒を蒸発させてもよい。溶媒の蒸発は、通常、乾燥、例えば、溶媒の沸点に応じて、30〜200℃、(例えば、30〜100℃)、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは40〜80℃程度の温度で乾燥させることによリ行うことができる。
このような溶媒の蒸発を伴うスピノーダル分解により、相分離構造のドメイン間の平均距離に規則性又は周期性を付与できる。そして、スピノーダル分解により形成された相分離構造は、前駆体を硬化させることにより直ちに固定化できる。前駆体の硬化は、硬化性樹脂前駆体の種類に応じて、加熱、光照射など、あるいはこれらの方法の組合せにより行うことができる。加熱温度は、前記相分離構造を有する限り、適当な範囲、例えば、50〜150℃程度から選択でき、前記層分離温度と同様の温度範囲から選択してもよい。
光照射は、光硬化成分などの種類に応じて選択でき、通常、紫外線、電子線などが利用できる。汎用的な露光源は、通常、紫外線照射装置である。なお、光照射は、必要であれば、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
(低屈折率層の製造方法)
低屈折率層の形成方法は、特に制限されず、前記防眩層上に、少なくとも前記樹脂系材料で構成された層を形成できればよいが、通常、前記防眩層上に、低屈折率成分を含む塗工液を塗布又は流延し、熱又は活性光線などにより塗膜を硬化させることにより低屈折率層を形成できる。
前記塗工液は、低屈折率成分(フッ素含有化合物など)の他に、通常、有機溶媒[例えば、低屈折率樹脂の種類に応じて、前記防眩層の項で例示の溶媒と同様の有機溶媒]の他、反応性稀釈剤(多官能(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系モノマーなど)などを含んでいてもよい。このような溶媒は、塗膜に伴って、蒸発除去してもよく、溶媒が反応性稀釈剤である場合には、フッ素含有樹脂前駆体の硬化に伴って、重合により、硬化させてもよい。前記塗工液は、さらに、硬化剤[有機過酸化物などの熱重合開始剤;光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンなどのケトン系重合開始剤など)など]を含んでいてもよい。また、前記塗工液は、架橋剤などを含んでいてもよい。
低屈折率層用塗工液中の固形分(低屈折率成分、硬化反応可能な化合物、その他添加剤)の濃度は、コーティング性などを損なわない範囲で選択でき、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%程度である。
[表示装置]
本発明の防眩性フィルムは、外光の映り込みを高度に防止でき、かつ呆けのないシャープな画像を表示できるため、テレビジョン(TV)、パーソナルコンピュータなどに含まれる各種画像表示装置に利用でき、画像表示装置のディスプレイの最表層に用いるのが好ましい。画像表示装置としては、例えば、液晶表示(LCD)装置、プラズマディスプレイパネル、タッチパネル付き表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、陰極管表示装置などが挙げられる。これらの表示装置は、前記防眩性フィルムや光学部材(特に偏光板と防眩性フィルムとの積層体など)を光学要素として備えている。特に、高精細表示装置であっても、外光の映り込みを高度に防止でき、かつ呆けのないシャープな画像を表示できるため、液晶表示装置に好ましく使用できる。
なお、液晶表示装置は、外部光を利用して、液晶セルを備えた表示ユニットを照明する反射型液晶表示装置であってもよく、表示ユニットを照明するためのバックライトユニットを備えた透過型液晶表示装置であってもよい。前記反射型液晶表示装置では、外部からの入射光を、表示ユニットを介して取り込み、表示ユニットを透過した透過光を反射部材により反射して表示ユニットを照明できる。反射型液晶表示装置では、前記反射部材から前方の光路内に前記防眩性フィルムや光学部材(特に偏光板と防眩性フィルムとの積層体)を配設できる。例えば、反射部材と表示ユニットとの間、表示ユニットの前面などに前記防眩性フィルムや光学部材を配設又は積層できる。
透過型液晶表示装置において、バックライトユニットは、光源(冷陰極管などの管状光源,発光ダイオードなどの点状光源など)からの光を一方の側部から入射させて前面の出射面から出射させるための導光板(例えば、断面楔形状の導光板)を備えていてもよい。また、必要であれば、導光板の前面側にはプリズムシートを配設してもよい。なお、通常、導光板の裏面には、光源からの光を出射面側へ反射させるための反射部材が配設されている。このような透過型液晶表示装置では、通常、光源から前方の光路内に前記防眩性フィルムや光学部材を配設又は積層できる。例えば、導光板と表示ユニットとの間、表示ユニットの前面などに前記防眩性フィルムや光学部材を配設又は積層できる。
さらに、液晶表示装置としては、具体的には、例えば、TN、VA(Viewing Angle)、OCB(Optically Compensatory Bend)、IPS(In Plane Switching)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードなどの液晶表示装置が挙げられる。これらの液晶表示装置は、液晶セルと、その両側に配置された二枚の偏光板とで構成されている。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。このような液晶表示装置において、光学異方性層は、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置される。
液晶セルは、VAモード、OCBモード、またはTNモードであるのが好ましい。VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)、および(4)SURVAIVAL(サバイバル)モードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)などが含まれる。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB) 液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
本発明は、防眩性と光散乱性が必要とされる種々の用途、例えば、前記光学部材や、液晶表示装置(特に高精細又は高精彩表示装置)などの表示装置の光学要素として有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂[(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートを付加させた化合物;ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP(ACA)320M、固形分49.6重量%]5.04重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75000;イーストマン社製、CAP−482−20)0.9重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセル・ユ−シービー(株)製、DPHA)6.4重量部、光開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア184)0.2重量部をメチルエチルケトン(MEK)20重量部、シクロヘキサノン5重量部に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#24を用いてトリアセチルセルロースフィルム上に流延した後、70℃の防爆オーブン内で2分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成させた。そして、コート層に、メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製)からの紫外線を約30秒間照射することによりUV硬化処理し、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。低屈折率層として、熱硬化性含フッ素化合物塗工液(日産化学(株)製、LR−202B、固形分1重量%)をワイヤーバー#5を用いて塗布し、乾燥後、90℃で5分間熱硬化させた。
実施例2
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂[(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートを付加させた化合物;ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP(ACA)320M、固形分49.6重量%]5.54重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75000;イーストマン社製、CAP−482−20)0.8重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセル・ユ−シービー(株)製、EB220)6.45重量部、光開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア184)0.2重量部をMEK25重量部、1−メチル−2−プロパノール3重量部に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#26を用いてトリアセチルセルロースフィルム上に流延した後、室温中で10秒間整地した後、80℃の防爆オーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成させた。そして、コート層に、メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製)からの紫外線を約30秒間照射することによりUV硬化処理し、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。低屈折率層として、熱硬化性含フッ素化合物塗工液(日産化学(株)製、LR202B、固形分1重量%)をワイヤーバー#5を用いて塗布し、乾燥後、90℃で5分間熱硬化させた。
比較例1
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂[(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートを付加させた化合物;ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP(ACA)320M、固形分49.6重量%]5.65重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75000;イーストマン社製、CAP−482−20)1.2重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセル・ユ−シービー(株)製、DPHA)6重量部、光開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア184)0.53重量部をテトラヒドロフラン37.15重量部に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー#24を用いてトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フイルム(株)製、TD−80)上に流延した後、80℃の防爆オーブン内で3分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約7μmのコート層を形成させた。そして、コート層に、メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製)からの紫外線を約30秒間照射することによりUV硬化処理し、ハードコート性および表面凹凸構造を有する防眩層を形成した。低屈折率層として、熱硬化性含フッ素化合物塗工液(日産化学(株)製、LR202B、固形分1重量%)をワイヤーバー#5を用いて塗布し、乾燥後、90℃で5分間熱硬化させた。
比較例2
多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセル・ユーシービー(株)製、DPHA)20重量部、透明微粒子として平均粒径3μmの架橋スチレンビーズ1.2重量部、光開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア184)1重量部をテトラヒドロフラン/トルエン=7/3(重量比)の混合溶媒30重量部に混合した分散液を調製した。この分散液を乾燥厚みが7μmとなるように塗工し、メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製)からの紫外線を約30秒間照射し、UV硬化処理した。低屈折率層として、熱硬化性含フッ素化合物塗工液(日産化学(株)製、LR202B、固形分1重量%)をワイヤーバー#5を用いて塗布し、乾燥後、90℃で5分間熱硬化させた。
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた防眩性フィルムを透過型光学顕微鏡により観察したところ、実施例1〜2及び比較例1のコート層は液滴状相分離構造を有していた。
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた防眩性フィルムの全光線透過率、ヘイズ及び内部ヘイズを測定した結果を表1に示す。
なお、内部ヘイズについては、実施例1〜2および比較例1〜2で得られた防眩性フィルムの凹凸面に、透明粘着層(厚み:50μm)を介してトリアセチルセルロースフィルムを貼り合せ、通常のヘイズを測定するようにして、内部へイズを測定した。結果を表に示す。
実施例1〜2および比較例1〜2で得られた防眩性フィルムの透過散乱特性を、変角光度計測定装置(村上色彩技術研究所(株)製、GP−200)を用いて測定し、出斜角0°、2°、10°、30°の透過散乱光強度を測定し、散乱強度比を求めた。
反射光の映り込み、白浮き(黒表示の沈み)、画像のコントラスト、透過画像のシャープ性(ボケの少なさ)は、実施例及び比較例で得られた低反射防眩層を、それぞれ、正面輝度450cd/m2、コントラスト400対1、20型、解像度60ppiのVA(垂直配向)型LCDパネルの表面に実装し、以下の基準で目視評価した。
(映り込み)
○:映り込みがない
△:わずかな映り込みがある
×:映り込みが激しい。
(白浮き)
◎:黒表示が鮮明に見える
○:黒表示がやや白味がかって見える
△:黒表示が白味がかって見える
×:黒表示が白く見える。
(画像のコントラスト)
◎:鮮明に見える
○:ほぼ鮮明に見える
△:見える
×:見えにくい。
(画像のシャープ性)
◎:非常にシャープである
○:おおむねシャープである
△:多少、画素のボケが認められる
×:画像、画素がボケており、シャープさに欠ける。
Figure 2006106290
表1の結果から明らかなように、実施例1及び2の防眩性フィルムは、相分離による均一な凹凸構造のために良好な反射光特性を有するだけでなく、内部へイズが少なく、かつ、透過散乱光強度が制御されているために、ボケのないシャープな画質を実現できる。これに対して、比較例1のフィルムは、映り込みが激しく、画像のシャープ性も低い。また、比較例2のフィルムは、白浮きが見られ、画像のコントラストも低く、画像がぼけている。
図1は、光透過散乱特性(透過散乱光の角度分布)を測定するための装置を示す概略図である。
符号の説明
1・・・白色平行光光源
2・・・NDフィルター
3・・・試料
4・・・検出器

Claims (5)

  1. 防眩層と、この防眩層の少なくとも一方の面に形成された低屈折率の樹脂層とで構成された防眩性フィルムであって、散乱光プロファイルにおける出射角0°の光強度(I0)に対する出射角30°の散乱光強度(I30)の比(I30/I0)が、0.00001〜0.001%の範囲にある防眩性フィルム。
  2. 散乱光プロファイルにおける出射角0°の光強度(I0)に対する出射角10°の散乱光強度(I10)の比(I10/I0)が、0.0001〜0.1%の範囲にある請求項1記載の防眩性フィルム。
  3. 全ヘイズが1〜30%であり、内部ヘイズが0〜1%であり、かつ波長450〜650nmの領域での5°入射における平均反射率が0.001〜2.5%である請求項1記載の防眩性フィルム。
  4. 防眩層が、少なくとも1つのポリマーと少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体とで構成された層であって、前記ポリマー及び前駆体のうち少なくとも2つの成分が、液相相分離しているとともに、前記前駆体が硬化している請求項1記載の防眩性フィルム。
  5. 透明支持体上に、防眩層及び低屈折率の樹脂層が順次形成されている請求項1記載の防眩性フィルム。
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