JP2006104334A - 封止用エポキシ樹脂成形材料及び電子部品装置 - Google Patents

封止用エポキシ樹脂成形材料及び電子部品装置 Download PDF

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Yoshinori Endo
由則 遠藤
Masanobu Fujii
昌信 藤井
Haruaki To
晴昭 陶
Hisanori Watanabe
尚紀 渡辺
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Abstract

【課題】低成形収縮性、低吸湿性、高温低弾性性等の硬化物特性や、流動性、パッケージ外観を含む連続成形性に優れた封止用エポキシ樹脂成形材料、及びこの封止用エポキシ樹脂成形材料で封止した素子を備えた電子部品装置を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、(B)下記一般式(II)で表される化合物を含む硬化剤、(C)離型剤、及び(D)無機充填剤を含有する封止用エポキシ樹脂成形材料。
【化1】
Figure 2006104334

【化2】
Figure 2006104334

(一般式(I)で、nは0又は1〜10の整数を表す。一般式(II)で、繰り返し単位(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の少なくともいずれかを含み、かつ(a)及び/又は(c)及び/又は(e)を含む。j、m、n、o、pはそれぞれ0〜5の整数で、合計は2〜20。一般式(I)、(II)で、炭素環上の任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよい。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、低成形収縮性、低吸水性、高温時低弾性性等に優れ、流動性やパッケージ外観等を含む連続成形性にも優れる封止用エポキシ樹脂成形材料、及びこの封止用エポキシ樹脂成形材料で封止した素子を備えた電子部品装置に関する。
従来から、トランジスタ、IC、LSI等の電子部品装置の素子封止の分野では生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性などの諸特性にバランスがとれているためである。
近年は電子部品装置の小型・軽量化、高性能・高機能化を図るために素子の高密度実装化、配線の微細化、多層化、多ピン化、素子のパッケージに対する占有面積増大化等が進んでいる。これに伴い、電子部品装置は、DIP(Dual Inline Package)、PGA(Pin Grid Array)等の従来のピン挿入型のパッケージから、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等の表面実装型のパッケージへ主流が移行し、小型薄型化したTSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)、より一層の高密度化、多機能化したCSP(Chip Size Package)、マルチチップパッケージ、ウエハレベルCSP、積層パッケージ等が開発されている。
BGA、CSP等のいわゆる片面モールドパッケージの増加は、基板と封止用エポキシ樹脂成形材料の線膨張係数のミスマッチに起因するパッケージ反りの問題を発生させることとなり、これに伴う実装時、ダイシング時の不具合の問題を大きくクローズアップさせることとなっている。
また、半田バスやIRリフロー、VPSリフロー等のリフロー装置などを用いてパッケージの配線版への実装を行う表面実装方法は、パッケージを直接半田付け温度(リフロー温度)の高温にさらす結果となっており、パッケージの吸湿に伴う封止用エポキシ樹脂成形材料と半導体内部部材間の剥離や、これに伴うパッケージクラックの問題を引き起こすこととなった。
パッケージ反りの問題に対しては、封止用エポキシ樹脂成形材料を低成形収縮化する(例えば特許文献1参照。)、同じく室温弾性率を下げる(例えば特許文献2参照。)等の手法が有効であること、実装時の剥離やパッケージクラックの問題に対しては、封止用エポキシ樹脂成形材料とインサート品との接着性を上げる、低吸湿化する、高温時弾性率を下げる等の手法が有効であることが従来からの検討より判っている。
特開2003−342447号公報 特開2003−212969号公報
パッケージの成形収縮率、吸水率を下げる為には無機充填剤量を増やす等の手法があるが、無機充填剤の増量は室温・高温弾性率の上昇を招く等の問題を発生させ、室温弾性率を低下させる為に液状シリコーン、固形シリコーンゴム、PMMA等の固形ゴムを添加すると、信頼性や流動性の低下を招く等の可能性がある。
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、低成形収縮性や低吸水性を実現しながら高温時の低弾性性にも優れ、流動性や連続成形性、パッケージ外観にも優れる封止用エポキシ樹脂成形材料、及びこれにより封止した素子を備えた電子部品装置を提供しようとするものである。
発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、封止用エポキシ樹脂成形材料に、特定の構造を有するエポキシ樹脂と特定の構造を有する硬化剤とを併用することで上記の目的を達成しうることを見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明は
(1) (A)下記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、(B)下記一般式(II)で表される化合物を含む硬化剤、(C)離型剤、及び(D)無機充填剤を含有する封止用エポキシ樹脂成形材料、
Figure 2006104334
(一般式(I)で、炭素環上の任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよく、nは0又は1〜10の整数を表す。)
Figure 2006104334
(一般式(II)で、炭素環上の任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよく、繰り返し単位(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の少なくともいずれかを含み、かつ、(a)及び/又は(c)及び/又は(e)を含む。j、m、n、o、pはそれぞれ0から5までの整数で、合計は2〜20。)
(2) (A)成分として、150℃のICI粘度が0.2Pa・s以下のエポキシ樹脂を含む前記(1)に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料、
(3) (B)成分として、下記一般式(III)で表される硬化剤をさらに含む前記(1)又は(2)に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料、
Figure 2006104334
(一般式(III)で、nは0又は1〜10の整数を示し、A及びB中のベンゼン環及びナフタレン環上の任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよい。)
(4) (C)成分が酸化型ポリオレフィン及び(E)下記一般式(IV)で表される化合物の1種又は2種以上であり、(A)成分の一部又は全部と予め予備混合された混合物である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料、
Figure 2006104334
(一般式(IV)で、Rは水素原子又は脂肪族炭化水素基を表し、Rは水素原子、又は飽和炭化水素基、又は不飽和炭化水素基を表し、R、Rは飽和炭化水素基、又は不飽和炭化水素基を表し、互いに同じでも異なっていても良い。R〜R10は水素原子又は飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。pは正の整数を、q、r、sは0又は正の整数を表す。ただし、q=r=s=0を除く。)
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料により封止された素子を備えた電子部品装置、
に関する。
本発明になる封止用エポキシ樹脂成形材料は、低成形収縮性、低吸湿性、高温低弾性性等の硬化物特性や、流動性、パッケージ外観を含む連続成形性にも優れ、この封止用エポキシ樹脂成形材料を用いてIC、LSI等の電子部品を封止すれば、耐熱衝撃性、パッケージ反り性等に優れた電子部品装置を得ることができ、その工業的価値は大である。
本発明では、特に低成形収縮性の観点から、(A)エポキシ樹脂として、下記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂を単独、又は併用して用いることが必要である。
Figure 2006104334
(一般式(I)で、炭素環上の任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよく、nは0又は1〜10の整数を示す。)
本発明の、特に低成形収縮性に関する効果を得る為には、一般式(I)で表されるエポキシ樹脂を(A)成分の30重量%以上とすることが好ましく、40重量%以上とすることがより好ましく、50重量%以上とすることが特に好ましい。30重量%未満では、低成形収縮性の点で不充分となる可能性がある。一般式(I)で表されるエポキシ樹脂としては、HP−7200(大日本インキ化学工業株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
本発明では、(A)エポキシ樹脂に、一般式(I)で表されるエポキシ樹脂の他に、150℃におけるICI粘度が0.2Pa・s以下のエポキシ樹脂を併用すると、特に流動性や高温弾性率の低下の点で好ましい。ここで、ICI粘度とは、ICIコーンプレート回転粘度計での測定値をいう。
150℃におけるICI粘度が0.2Pa・s以下のエポキシ樹脂として、下記一般式(V)〜(VII)で表される化合物等を例示することができる。なお、一般式(I)で表されるエポキシ樹脂の粘度が0.2Pa・s以下であってもよく、その場合、一般式(I)で表されるエポキシ樹脂を単独で用いても良いし、一般式(V)〜(VII)等で例示されるエポキシ樹脂を併用して用いても良い。
Figure 2006104334
(一般式(V)で、R1〜R8は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
Figure 2006104334
(一般式(VI)で、R1〜R10は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0又は1〜3の整数を示す。)
Figure 2006104334
(一般式(VII)で、R1〜R8は水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜10の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
上記一般式(V)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、たとえば、4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル又は4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3´,5,5´−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと4,4´−ビフェノール又は4,4´−(3,3´,5,5´−テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3´,5,5´−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。このような樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名YX-4000H等が市販品として入手可能である。
上記一般式(VI)で示されるビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、R、R、R及びRがメチル基で、R、R、R、R、R及びR10が水素原子であり、n=0を主成分とするYSLV−80XY(新日鐵化学株式会社製商品名)が市販品として入手可能である。
上記一般式(VII)で示される硫黄含有型エポキシ樹脂としては、例えば、R、Rがメチル基で、R、Rがtert−ブチル基で、R、R、R及びRが水素原子であり、n=0を主成分とするYSLV−120TE(新日鐵化学株式会社製商品名)が市販品として入手可能である。
150℃におけるICI粘度が0.2Pa・s以下であるエポキシ樹脂の配合量は、(A)成分の10重量%以上とすることが好ましく、20重量%以上とすることがより好ましく、25重量%以上とすることが特に好ましい。
本発明では、上記以外にも、本発明の効果を損なわない範囲において、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されるエポキシ樹脂を併用することができる。併用可能なエポキシ樹脂として、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂やナフトール・アラルキル樹脂、ビフェニル・アラルキル樹脂等のエポキシ化物、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、及びこれらのエポキシ樹脂をシリコーン、アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン系ゴム、ポリアミド系樹脂等により変性したエポキシ樹脂などが挙げられる。
本発明では、特に低成形収縮性の点から、(B)硬化剤として、一般式(II)で表される化合物を単独、又は併用して用いることが必要である。
Figure 2006104334
(一般式(II)で、炭素環上の任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよく、繰り返し単位(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の少なくともいずれかを含み、かつ、(a)、(c)及び(e)の少なくともいずれかを含む。j、m、n、o、pはそれぞれ0から5までの整数で、合計は2〜20である。)
低成形収縮性を実現する為には、一般式(II)で表される化合物が繰り返し単位(a)〜(e)の少なくともいずれかを含み、かつ、(a)及び/又は(c)及び/又は(e)を含むことが必要であり、中でも(e)を含んでいることが好ましい。充分な低成形収縮化を実現する為には、(a)及び/又は(c)及び/又は(e)が5mol%以上含まれることが好ましく、10mol%以上含まれることがより好ましく、15mol%以上含まれることが特に好ましい。(a)及び/又は(c)及び/又は(e)が5mol%未満であると、充分な低成形収縮化の実現が困難となる可能性がある。
一般式(II)でj、m、n、o、pはそれぞれ0〜5、その合計は2〜20であり、その数平均分子量が200〜1000であることが好ましい。なお、ここで数平均分子量とは、以下により測定した値を指す。
測定装置:日立製作所製高速液体クロマトグラフィL6000
データ解析装置:C‐R4A
GPCカラム:東ソー株式会社製G2000HXL+G3000HXL
溶媒:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2%
流速:1.0ml/min
標準物質:ポリスチレン
j、m、n、o、pの合計が20を超えると樹脂粘度が上がり、封止用エポキシ樹脂成形材料の流動性に悪影響を与える可能性がある。
本発明の効果を得る為には、一般式(II)で表される化合物の配合量を(B)成分の50重量%以上とすることが好ましく、60重量%以上とすることがより好ましく、70重量%以上とすることが特に好ましい。
本発明では、特に高温時の低弾性化を実現する為に、一般式(II)で表される硬化剤の他に下記一般式(III)で表される硬化剤を併用すると効果的である。
Figure 2006104334
(一般式(III)で、nは0又は1〜10の整数を示し、A及びB中のベンゼン環及びナフタレン環上の任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよい。)
上記一般式(III)で示される樹脂としては、下記一般式(VIII)で表されるフェノール・アラルキル樹脂(市販品として三井化学株式会社製商品名XLC等が入手可能。)、下記一般式(IX)で表されるビフェニル・アラルキル樹脂(市販品として明和化成株式会社製商品名MEH−7851等が入手可能。)、下記一般式(X)、一般式(XI)で表されるナフトール・アラルキル樹脂等(市販品として新日鐵化学株式会社製商品名SN−475、新日鐵化学株式会社製商品名SN−170等がそれぞれ入手可能。)等が挙げられる。
Figure 2006104334
(一般式(VIII)で、nは0又は1〜10の整数を示す。)

Figure 2006104334
(一般式(IX)で、nは0又は1〜10の整数を示す。)
Figure 2006104334
(一般式(X)で、nは0又は1〜10の整数を示す。)
Figure 2006104334
(一般式(XI)で、nは0又は1〜10の整数を示す。)
高温時の低弾性化の為には、上記一般式(VIII)〜(XI)で表される硬化剤の中でも、一般式(VIII)で表されるフェノール・アラルキル樹脂、又は一般式(IX)で表されるビフェニル・アラルキル樹脂を用いることがより好ましく、その配合量を(B)成分の20重量%以上とすることが特に好ましい。また、上記一般式(VIII)〜(XI)で示される化合物中の、ベンゼン環及びナフタレン環上の任意の水素原子を炭化水素基で置換した化合物も一般式(III)で表される化合物に含まれる。
本発明では、本発明の効果を損なわない範囲において、上記一般式(II)、一般式(III)で表される硬化剤の他に、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されている硬化剤を併用することができる。併用可能な硬化剤として、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂などが挙げられる。
(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分の硬化剤との当量比、すなわち、エポキシ樹脂中のエポキシ基数/硬化剤中の水酸基数の比は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために0.5〜2の範囲に設定されることが好ましく、0.6〜1.5がより好ましい。成形性や信頼性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料を得るためには0.8〜1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
本発明では、良好な連続成形性とパッケージ外観との両立の為に、(C)離型剤が必要である。本発明における離型剤は、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に用いられているステアリン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸系ワックス、ステアリン酸エステル、モンタン酸エステル等の高級脂肪酸エステル系ワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類等、従来公知のものを特に制限なく用いることができるが、良好な金型離型性を実現する為には酸化型のポリオレフィンを用いることが好ましい。本発明においてポリオレフィンとは、エチレン重合体、プロピレン重合体、エチレン/プロピレン共重合体等を主成分とした化合物である。
酸化型ポリオレフィンの酸価は5〜50mgKOH/gであることが好ましく、10〜40mgKOH/gであることがより好ましく、15〜30mgKOH/gであることが特に好ましい。酸価が5mgKOH/g未満であると接着性やパッケージ外観が、酸価が50mgKOH/gを超えると金型離型性が、それぞれ不利となる可能性がある。
(C)成分の酸化型ポリオレフィンは又、150℃におけるICI粘度が2.0Pa・s以下であることが好ましく、1.0Pa・s以下であることがより好ましい。2.0Pa・sを超えると、封止用エポキシ樹脂成形材料の流動性に悪影響を与えたり、ベース樹脂との流動性の相異が大きくなり、樹脂流動起因によるパッケージ汚れを誘発し易くなる。
本発明の効果、特に良好なパッケージ外観を得る為には、(C)離型剤に、さらに(E)成分として、下記一般式(IV)で表される化合物の一種又は二種以上を添加することが好ましい。
Figure 2006104334
(一般式(IV)で、Rは水素原子又は脂肪族炭化水素基を表し、Rは水素原子、又は飽和炭化水素基、又は不飽和炭化水素基を表し、R、Rは飽和炭化水素基、又は不飽和炭化水素基を表し、互いに同じでも異なっていても良い。R〜R10は水素原子又は飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。pは正の整数を、q、r、sは0又は正の整数を表す。ただし、q=r=s=0を除く。)
上記一般式(IV)で表される化合物は、一般式(IV)に記載した通りの順番の重合形態に限定されず、また、ブロック共重合物に限定もされない。また、Rは一般式(IV)中の単量体部分の二つの炭素原子のどちらと結合していても良いし、Rは式中の単量体部分の二つの酸素原子のどちらと結合していても良い。一般式(IV)のp〜s、及びそれらの構成比は、酸化型ポリオレフィンに応じて決定されることが好ましい。
(E)成分は、主として(A)成分と酸化型ポリオレフィンの分散剤として働くものである。一般式(IV)で表される化合物の構造は酸化型ポリオレフィンに応じて適宜選択されることが望ましいが、Rが炭素数10〜40のアルキル基、R〜Rが炭素数5〜30のアルキル基であることが好ましく、Rが炭素数15〜30のアルキル基、R〜Rが炭素数8〜25のアルキル基であることがより好ましく、Rが炭素数18〜25のアルキル基、R〜Rが炭素数10〜20のアルキル基であることが特に好ましい。R〜R10は水素原子又は炭化水素基を表し、R〜R10のうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、全てが水素原子であることがより好ましい。一般式(IV)で表される化合物として、構造の異なる2種以上の化合物を用いても構わない。
一般式(IV)で表される化合物の構造の選択の仕方として、例えば以下のような例を挙げることが可能である。すなわち、酸化型ポリオレフィンの重量平均分子量が7000未満である場合には、一般式(IV)のうち、q>(r+s)、かつ1/3<p/(q+r+s)<3/1である化合物を用いることが好ましく、r又はsのどちらか一方が0、かつ1/2<p/(q+r+s)<2/1である化合物を用いることがより好ましく、r=s=0、かつp/(q+r+s)が1前後であることが特に好ましい。一方、酸化型ポリオレフィンの重量平均分子量が7000以上である場合には、一般式(IV)でq≦(r+s)、かつ1/2<p/(q+r+s)<2/1である化合物を用いることが好ましく、q=s=0、かつp/(q+r+s)が1前後である化合物を用いることがより好ましい。
また、酸化型ポリオレフィンの重量平均分子量が7000以上の場合には、q=s=0、かつp/(q+r+s)が1前後である化合物と、r=s=0、かつ p/(q+r+s)が1前後である化合物を併用して用いることも効果的である。これら2種類の化合物を併用する場合、両者を合わせたqと(r+s)との比率は、5:1〜1:5が好ましく、3:1〜1:3が更に好ましく、2:1〜1:2が特に好ましい。なお、本発明での酸化型ポリオレフィンの重量平均分子量は高温GPCによる測定値であり、測定方法は以下のとおりである。
測定器:Waters社製高温GPC
(溶媒:ジクロロベンゼン
温度:140℃、
標準物質:ポリスチレン)
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製商品名PLgel MIXED‐B
10μm(7.5mm×300mm)×2本
流量:1.0ml/分(試料濃度:0.3wt/vol%)
(注入量:100μl)
一般式(IV)で表される化合物を製造する方法には、特に制限はないが、例えば、予めα−オレフィンと無水マレイン酸との共重合物を作製し、次いで一価のアルコールで無水マレイン酸部分をエステル化する方法、水で前記共重合物の無水マレイン酸部分を開環する方法が挙げられる。α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合物を一価のアルコールでエステル化する方法としては、特に制限はなく、共重合物に一価アルコールを付加反応させる等の一般的手法を挙げることができる。また、無水マレイン酸は誘導体であってもよい。
α−オレフィンとしては、特に制限はないが、例えば、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−トリコセン、1−テトラコセン、1−ペンタコセン、1−ヘキサコセン、1−ヘプタコセン等の直鎖型α−オレフィン、3−メチル−1−ブテン、3,4−ジメチル−ペンテン、3−メチル−1−ノネン、3,4−ジメチル−オクテン、3−エチル−1−ドデセン、4−メチル−5−エチル−1−オクタデセン、3,4,5−トリエチル−1−1−エイコセン等の分岐型α−オレフィンなどが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、無水マレイン酸の他、無水マレイン酸誘導体としては、メチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物等、下記一般式(XII)で表される化合物を挙げることができ、やはり単独で用いても2種以上を組み合わせても良い。
Figure 2006104334
(一般式(XII)で、R、Rはアルキル基、又はアリール基を表し、互いに同じでも異なっていても良い。)
α−オレフィンと無水マレイン酸及びその誘導体の少なくとも一方(以下、「無水マレイン酸類」という。)との共重合物は、特に制限はないが、例えば、下記一般式(XIII)で示される化合物、下記一般式(XIV)で示される化合物等が挙げられる。
市販品としては、1−エイコセン、1−ドコセン及び1−テトラコセンを原料として用いたニッサンエレクトールD121(日本油脂株式会社製商品名)が入手可能である。
Figure 2006104334
上記一般式(XIII)及び(XIV)中のRは、水素原子又は一価の脂肪族炭化水素基を示し、nは1以上の整数である。mは、α−オレフィンと無水マレイン酸の共重合比を示し、特に制限はないが、α−オレフィンをXモル、無水マレイン酸をYモルとした場合、X/Y、すなわち、mは1/5〜5/1が好ましい。1/3〜3/1程度がより好ましく、1/2〜2/1が特に好ましい。
α−オレフィンと無水マレイン酸類との共重合物の製造方法としては、特に制限はなく、原材料を反応させる等の一般的な共重合方法を用いることができる。反応には、α−オレフィンと無水マレイン酸類が溶解可能な有機溶剤等を用いてもよい。有機溶剤としては特に制限はないが、トルエンが好ましく、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、アミン系溶剤等も使用できる。反応温度は、使用する有機溶剤の種類によっても異なるが、反応性、生産性の観点から、50〜200℃とすることが好ましく、80〜120℃がより好ましい。反応時間は、共重合物が得られれば特に制限はないが、生産性の観点から1〜30時間とするのが好ましく、より好ましくは2〜15時間、さらに好ましくは4〜10時間である。反応終了後、必要に応じて、加熱減圧下等で未反応成分、溶剤等を除去することができる。その条件は、温度を100〜220℃、より好ましくは120〜180℃、圧力を13.3×10Pa以下、より好ましくは8×10Pa以下、時間を0.5〜10時間とすることが好ましい。また、反応には、必要に応じてアミン系触媒、酸触媒等の反応触媒を加えてもよい。反応系のpHは、1〜10程度とするのが好ましい。
前記無水マレイン酸部分のエステル化に用いられる一価のアルコールとしては、特に制限はないが、例えば、アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール等の直鎖型又は分岐型の脂肪族飽和アルコール、ヘキセノール、2−ヘキセン−1−オール、1−ヘキセン−3−オール、ペンテノール、2−メチル−1−ペンテノール等の直鎖型又は分岐型の脂肪族不飽和アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の脂環式アルコール、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール等の芳香族アルコール、フルフリルアルコール等の複素環式アルコールなどが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(E)成分の分子量は金型・パッケージ汚れ防止及び成形性の観点から、70000以下であることが好ましく、10000〜50000がより好ましく、20000〜40000がさらに好ましい。ここで、(E)成分の分子量とは常温GPCにより測定された重量平均分子量を指す。
本発明での常温GPCによる重量平均分子量の測定方法は以下のとおりである。
測定器:島津製作所製LC−6C
カラム:shodex KF‐802.5+KF‐804+KF‐806
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
温度:室温(25℃)
標準物質:ポリスチレン
流量:1.0ml/分(試料濃度 約0.2wt/vol%)
注入量:200μl
本発明では、(C)離型剤、例えば酸化型ポリオレフィンと(E)成分、及び(A)成分の一部又は全部を予め予備混合して用いるとより一層効果的である。予備混合の比率は、(A)成分のエポキシ樹脂と酸化型ポリオレフィン(以下、(C1)成分とする。)との重量比率を50/1〜1/5程度とすることが好ましく、20/1〜1/3程度とすることがより好ましく、10/1〜1/2程度とすることが特に好ましい。また、酸化型ポリオレフィンと(E)成分との重量比率については、(C1)/(E)=10/1〜1/5とすることが好ましく、5/1〜1/3とすることがより好ましく、3/1〜1/2とすることが特に好ましい。
予備混合の条件としては、(A)成分のエポキシ樹脂と(C1)成分とを50〜200℃/0.5〜8時間程度攪拌混合後に(E)成分を添加、さらに5分〜8時間程度の攪拌混合を行うことが好ましく、(A)成分と(C1)成分を100〜180℃/1〜6時間程度攪拌混合後に(E)成分を添加し、さらに10分〜6時間攪拌混合することがより好ましく、(A)成分と(C1)成分を150〜170℃/1〜6時間程度攪拌混合後に(E)成分を添加し、さらに10分〜4時間攪拌混合することが特に好ましい。予備混合の具体的方法として、例えば、エポキシ樹脂と酸化型ポリオレフィンとを重量比で2/1に混合後170℃で4時間ほど攪拌混合、酸化型ポリオレフィンの半分量の(E)成分を添加し、さらに15分攪拌混合する等の方法を挙げることが可能である。また、この予備混合は、(C)離型剤が上記二成分である場合だけでなく、例えば(C1)成分のみの場合でも効果的である。
(C)成分の配合量は、酸化型ポリオレフィンを用いる場合、酸化型ポリオレフィンの添加量が成形材料全体の0.03〜5重量%程度となることが好ましく、0.05〜3重量%程度となることがより好ましく、0.1〜2重量%となることが特に好ましい。0.03重量%未満だと金型離型性の効果が、5重量%を超えるとパッケージ汚れに対する効果が、それぞれ不充分となる可能性がある。
本発明では、低吸湿性、線膨張係数低減、及び強度向上等の為に(D)成分、無機充填剤を配合することが必要である。無機充填剤を例示すれば、溶融シリカ、結晶シリカ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられ、熱伝導性の向上の為に、アルミナ、窒化アルミ等を配合しても良いし、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等、難燃効果を有する金属水酸化物等を配合することも可能である。また、これら以外の無機充填剤を配合しても構わないし、異なる無機充填剤種を2種以上併用することも可能である。
流動性、線膨張係数低減の観点からは、結晶シリカ、溶融シリカを使用することが好ましく、溶融シリカを使用することがより好ましく、流動性の観点からは球状溶融シリカを使用することが特に好ましい。
無機充填剤の配合量は、成形材料全体の70〜95重量%とすることが好ましく、75〜92重量%とすることがより好ましく、80〜90重量%とすることが特に好ましい。70重量%未満だと成形収縮率、吸湿性の点で、95重量%を超えると流動性の点で、それぞれ不利となる可能性がある。
本発明では、(A)〜(D)成分以外にも、その必要に応じて、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用される硬化促進剤を特に制限なく用いることができる。使用可能な硬化促進剤としては、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物及びこれらの誘導体、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン、及びこれらの有機ホスフィンに無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物等の有機リン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられるが、これら以外の硬化促進剤を併用しても構わない。
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではないが、エポキシ樹脂(A)に対して0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。0.1重量%未満では短時間での硬化性に劣る傾向があり、10重量%を超えると硬化速度が速すぎて未充填等により良好な成形品を得にくい傾向がある。
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、IC等の半導体素子の耐湿性、高温放置特性を向上させる観点から陰イオン交換体を添加することもできる。陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイトや、アンチモン、ビスマス、ジルコニウム、チタン、スズ、マグネシウム、アルミニウムから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、下記一般式(XV)で示されるハイドロタルサイト及びビスマスの含水酸化物が好ましい。
(化18)
Mg1−XAl(OH)(COX/2・mHO ……(XV)
(0<X≦0.5、mは正の数)
陰イオン交換体の配合量は、ハロゲンイオン等のイオン性不純物を捕捉できる十分な量であれば特に制限はないが、(A)成分のエポキシ樹脂に対して0.1〜30重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましく、2〜5重量%がさらに好ましい。配合量が0.1重量%未満ではイオン性不純物の捕捉が不十分になる傾向があり、30重量%を超えた場合それ以下に比べて効果に大差がないため経済的に不利である。
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、樹脂成分と無機充填剤との接着性を高めるために、必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することができる。これらは単独で用いても、2種以上を併用して用いても構わない。
上記カップリング剤の配合量は、無機充填剤に対して0.05〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2.5重量%がより好ましい。0.05重量%未満では耐湿性が低下する傾向があり、5重量%を超えるとパッケージの成形性が低下する傾向がある。
さらに、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の着色剤、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジン等及びこれらの誘導体、アントラニル酸、没食子酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アミノフェノール、キノリン等及びこれらの誘導体、脂肪族酸アミド化合物、ジチオカルバミン酸塩、チアジアゾール誘導体等の接着促進剤などを必要に応じて配合することができる。
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、各種原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、ニーダ、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると使いやすい。
また、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、各種有機溶剤に溶かして液状封止用エポキシ樹脂成形材料として使用することもでき、この液状封止用エポキシ樹脂成形材料を板又はフィルム上に薄く塗布し、樹脂の硬化反応が余り進まないような条件で有機溶剤を飛散させることによって得られるシートあるいはフィルム状の封止用エポキシ樹脂成形材料として使用することもできる。
本発明で得られる封止用エポキシ樹脂成形材料により素子を封止して得られる電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止した、電子部品装置などが挙げられる。このような電子部品装置としては、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いてトランスファ成形などにより封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、配線板接続用の端子を形成した有機基板に素子を搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などが挙げられる。また、プリント回路板にも本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は有効に使用できる。
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。封止用エポキシ樹脂成形材料が常温で液状又はペースト状の場合は、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられる。
また、素子を直接樹脂封止する一般的な封止方法ばかりではなく、素子に直接電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料が接触しない形態である中空パッケージの方式もあり、中空パッケージ用の封止用エポキシ樹脂成形材料としても好適に使用できる。
(実施例1〜4、及び比較例1〜5)
(A)成分のエポキシ樹脂として、エポキシ当量265、融点60℃、下記一般式(I)で表されるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1、大日本インキ化学工業株式会社商品名HP−7200)、エポキシ当量192、融点106℃、150℃のICI粘度が0.01Pa・sのビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2、ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名エピコートYX−4000H)、エポキシ当量195、融点68℃、150℃のICI粘度が0.01Pa・sのビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂3、東都化成株式会社製商品名YSLV−80XY)、エポキシ当量205、軟化点68℃、150℃のICI粘度が0.3Pa・sのオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂4、大日本インキ化学工業株式会社商品名EPICLON N500P-2)を用意した。
(B)成分の硬化剤として下記一般式(II)で、(b)が30mol%、(d)が50mol%、(e)が20mol%、数平均分子量が450、水酸基当量が170である硬化剤(硬化剤1)、下記一般式(III)で表される水酸基当量175、軟化点70℃のフェノール・アラルキル樹脂(硬化剤2、三井化学株式会社製商品名ミレックスXL−225)、水酸基当量140、軟化点110℃のナフトールノボラック型フェノール樹脂(硬化剤3、日本火薬株式会社製商品名カヤハードNHN)を用意した。
(C)成分として前記エポキシ樹脂YX−4000H及び150℃のICI粘度が0.05Pa・s、重量平均分子量が5000の酸化型ポリエチレン(三井化学株式会社製商品名ハイワックス4202E)を2/1の比率で予備混合した離型剤1、前記YX−4000Hとハイワックス4202E、及び(E)成分として下記一般式(IV)でr=s=0、p/q=1/1、R5、が水素、Rが炭素数18、20、22の飽和炭化水素基の混合物である化合物(日本油脂株式会社製商品名ニッサンエレクトールD121)を4/2/1の比率で予備混合した離型剤2を用意した。
(D)成分として平均粒径17μmの球状シリカ、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンとベンゾキノンとの付加反応物、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシシラン)、着色剤としてカーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名MA−100)、難燃剤として三酸化アンチモン及びエポキシ当量375、軟化点80℃、臭素含量48重量%のビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(住友化学工業株式会社製商品名ESB−400T)を用意した。
これらを、それぞれ表1及び表2に示す重量部で配合し、混練温度80℃、混練時間10分の条件でロール混練を行い、実施例及び比較例の封止用エポキシ樹脂成形材料を作製した。なお、(C)成分の離型剤1はYX‐4000Hとハイワックス4202Eを170℃/4時間の攪拌混合を行うことで、離型剤2はYX‐4000Hと酸ハイワックス4202Eを170℃/4時間の攪拌混合を行った後(E)成分を添加、さらに170℃/15分間の攪拌混合を行うことにより得た。また、硬化剤1の分子量は以下により測定した値を用いた。
測定装置:日立製作所製高速液体クロマトグラフィL6000
データ解析装置:C‐R4A
GPCカラム:東ソー株式会社製G2000HXL+G3000HXL
溶媒:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2%
流速:1.0ml/min
標準物質:ポリスチレン
Figure 2006104334
(一般式(I)で、炭素環上の任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよく、nは0、又は1〜10の整数を表す。)
Figure 2006104334
(一般式(II)で、炭素環上の任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよく、繰り返し単位(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の少なくともいずれかを含み、かつ、(a)及び/又は(c)及び/又は(e)を含む。j、m、n、o、pはそれぞれ0から5までの整数で、合計は2〜20。)
Figure 2006104334
(一般式(III)で、nは0又は1〜10の整数を示し、A及びB中のベンゼン環及びナフタレン環上の任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよい。)
Figure 2006104334
(一般式(IV)で、Rは水素原子又は脂肪族炭化水素基を表し、Rは水素原子、又は飽和炭化水素基、又は不飽和炭化水素基を表し、R、Rは飽和炭化水素基、又は不飽和炭化水素基を表し、互いに同じでも異なっていても良い。R〜R10は水素原子又は飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。pは正の整数を、q、r、sは0又は正の整数を表す。ただし、q=r=s=0を除く。)
Figure 2006104334
Figure 2006104334
作製した実施例及び比較例の封止用エポキシ樹脂成形材料を、次の各試験により評価した。評価結果を表3及び表4に示す。
なお、封止用エポキシ樹脂成形材料の成形は、特記しないものはトランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は175℃で6時間行った。
(1)スパイラルフロー(流動性の指標)
EMMI−1−66に順じてスパイラルフロー測定用金型を用いて、封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。
(2)成形収縮率
L127×W12.7×t6.4mmの板状試験片が作製可能な金型を用いて試験片を2ヶ作製し、後硬化後、長さ方向(L方向)の寸法を室温(25℃)で0.01mmの単位まで測定した。2ヶの試験片の平均値をN(mmt)とし、以下の式より成形収縮率を求めた。
(成形収縮率)(%)=(127-N)/127×100
(3)吸水率
φ50mm×3.0mmtの試験片が作製可能な金型を用いて試験片を作製し、後硬化後、試験片重量(W1)を0.1mg単位まで測定した。その後、試験片を121℃/100%RH(2気圧下)の環境下に20時間放置し、放置後の室温(25℃)重量(W2)を測定、以下の式より吸水率を求めた。
(吸水率)(%)=(W2−W1)/W1×100
(4)曲げ弾性率
L127×w12.7×t4.0mmの板上試験片が作製可能な金型を用いて試験片を2ケ作製し、後硬化後の試験片について、3点曲げ法により210℃における曲げ弾性率を求めた。曲げ弾性率の値は、4本の試験片の平均値とし、以下の式より曲げ弾性率を求めた。
(弾性率)(GPa)=Lv3/4Wt3・F/Y
Lv:支点間距離
W:試験片の幅
t:試験片の厚さ
F/Y:荷重-たわみ曲線の直線部分の勾配
(5)連続成形性、パッケージ外観(LQFP)
封止用エポキシ樹脂成形材料をTOWAプレス(藤和精機株式会社製Yシリーズ、LQFP144p用 パッケージ厚み1.4mm)を用いて、180℃、6.9MPa、60秒の条件で200ショットの連続成形を行い、50ショット毎にサンプリングした成形品を目視により観察することで、パッケージ汚れの有無と程度を確認した。パッケージ汚れについては、上記のようにサンプリングしたパッケージを観察し、ゲート口からの汚れの広がりの有無と程度から、次のように評価した。
◎:汚れなし
○:汚れの広がりがパッケージ表面の10面積%以下
△:汚れの広がりがパッケージ表面の10面積%超〜20面積%以下
併せて、連続成形時のカル付着、パッケージ付着の有無を確認した。
Figure 2006104334
Figure 2006104334
本発明の(A)成分として一般式(I)で表されるエポキシ樹脂を含まない比較例1、2は成形収縮率に劣り、(B)成分として一般式(II)で表される硬化剤を含まない比較例3、4は流動性に劣る。また、これら両者とも含まない比較例5は高温曲げ弾性率に劣る。
これに対し、本発明の(A)〜(D)成分すべてを含む実施例1〜4は、低成形収縮性、低吸水性、高温での低曲げ弾性性に優れ、流動性、連続成形性にも優れることがわかる。

Claims (5)

  1. (A)下記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、(B)下記一般式(II)で表される化合物を含む硬化剤、(C)離型剤、及び(D)無機充填剤を含有する封止用エポキシ樹脂成形材料。
    Figure 2006104334
    (一般式(I)で、炭素環上の任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよく、nは0又は1〜10の整数を表す。)
    Figure 2006104334
    (一般式(II)で、炭素環上任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよく、繰り返し単位(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の少なくともいずれかを含み、かつ、(a)、(c)及び(e)の少なくともいずれかを含む。j、m、n、o、pはそれぞれ0から5までの整数で、合計は2〜20。)
  2. (A)成分として、150℃のICI粘度が0.2Pa・s以下のエポキシ樹脂を含む請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
  3. (B)成分として、下記一般式(III)で表される硬化剤をさらに含む請求項1又は請求項2に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
    Figure 2006104334
    (一般式(III)で、nは0又は1〜10の整数を示し、A及びB中のベンゼン環及びナフタレン環上の任意の水素原子は炭化水素基で置換されていてもよい。)
  4. (C)成分が酸化型ポリオレフィン及び(E)下記一般式(IV)で表される化合物の1種又は2種以上であり、(A)成分の一部又は全部と予め予備混合された混合物である請求項1〜3のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
    Figure 2006104334
    (一般式(IV)で、Rは水素原子又は脂肪族炭化水素基を表し、Rは水素原子、又は飽和炭化水素基、又は不飽和炭化水素基を表し、R、Rは飽和炭化水素基、又は不飽和炭化水素基を表し、互いに同じでも異なっていても良い。R〜R10は水素原子又は飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、互いに同じでも異なっていてもよい。pは正の整数を、q、r、sは0又は正の整数を表す。ただし、q=r=s=0を除く。)
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料により封止された素子を備えた電子部品装置。
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