JP2006095770A - 液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高精度で、目詰まりのない供給絞りを備えた液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数の吐出口51と、吐出口のそれぞれと連通する複数の圧力室52と、圧力室52のそれぞれを変形する圧電素子58と、圧力室に液体を供給する共通液室55と、圧電素子58を駆動する回路に接続される共通液室55の液を封止する封止部材102と、圧電素子58を駆動するための配線部材90と、共通液室55と圧力室52を連通するための連通流路が形成される位置の略真上の前記封止部材102の少なくとも一部に、前記連通流路に対応した孔部と、を備え、前記共通液室55を形成した後に、前記孔部に対応した前記連通流路を形成した。
【選択図】図9
【解決手段】複数の吐出口51と、吐出口のそれぞれと連通する複数の圧力室52と、圧力室52のそれぞれを変形する圧電素子58と、圧力室に液体を供給する共通液室55と、圧電素子58を駆動する回路に接続される共通液室55の液を封止する封止部材102と、圧電素子58を駆動するための配線部材90と、共通液室55と圧力室52を連通するための連通流路が形成される位置の略真上の前記封止部材102の少なくとも一部に、前記連通流路に対応した孔部と、を備え、前記共通液室55を形成した後に、前記孔部に対応した前記連通流路を形成した。
【選択図】図9
Description
本発明は液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び画像形成装置に係り、特に、液体吐出ヘッドに備えられる供給絞りの形成技術に関する。
インクジェット方式の画像形成装置には、多数のノズルをマトリクス状に配列させた印字ヘッドを備え、各ノズルから記録媒体に対してインク滴を吐出し、記録媒体上に画像を形成するものがある。また印字ヘッドには、複数のプレート部材を積層して接着剤等で接合することにより組み立てられているものがある。このような印字ヘッドの内部には、各ノズルに連通する圧力室と、インクを貯留し、各圧力室にインクを供給する共通液室との間にインク供給口(インク流路)が設けられており、インク供給口又はその一部に、微細な孔径の供給絞りが形成されている。供給絞りは内部を流れる液体の流体抵抗として機能し、圧力室内から共通液室に対するインクの逆流を低減し、ノズルからのインク吐出を安定にする。
このような画像形成装置において、近年、さらなる高画質化が望まれている。高画質化を実現するためには、印字ヘッドに備えられる各ノズルが一様に形成され、バラツキの少ないことが要求される。ノズル径やノズル位置等が不揃いの場合、ノズルのインク吐出量や吐出速度にバラツキが生じ、記録媒体上に形成されるドットの大きさや着弾位置に差異が現れ、画質低下を招くからである。そこで従来より、ノズルを高精度に加工する技術が開示されている(例えば、特許文献1乃至特許文献4等参照)。
特許文献1には、ノズルプレート(ノズル板)に対して、インクの流入側と吐出側の双方からレーザビームを照射して、ノズルを形成する技術が開示されている。
特許文献2には、印字ヘッドを組み立て後、ノズル形成位置(ノズル面)に対して、ノズル面外側から拡がりつつあるレーザビームを照射して、ノズルを形成する技術が開示されている。
特許文献3には、印字ヘッドを組み立て後、レーザ光源を走査しながら、テレセントリック光学系を通して光を照射することで、複数の逆テーパ状のノズルを同時に加工する技術が開示されている。
特許文献4には、印字ヘッドを組み立て後、レーザ光源と印字ヘッドの間に、複数のマスクとテレセントリック光学系を配置して、印字ヘッドのノズル形成位置(ノズル面)に対して、マスク像に対応する複数のレーザビームを照射して、複数の逆テーパ状のノズルを同時に加工する技術が開示されている。
また画像形成装置の高画質化を実現するために、ノズルを高密度化することが要求される。そこで従来より、ノズルを高密度化する技術が提案されている(特許文献5又は特許文献6等参照)。
特許文献5には、振動板の圧電素子側に共通液室(インク供給部)を設け、振動板の圧力室(圧力発生室)と接しない延在部分に供給絞り(微細供給口)を形成した構造を有する印字ヘッドが開示されている。
特許文献6には、圧力室の天面を構成する振動板に供給絞り(インク供給路)を形成し、振動板に対して圧力室とは反対側に共通液室(リザーバ)を配置した構造の印字ヘッドが開示されている。同文献によれば、振動板(及び振動板上の圧電素子)にエキシマレーザにより孔径3μmの供給絞り(供給口)を形成し、振動板上に絶縁膜とするSiO2膜をスパッタ法により形成している。その後、複数のプレート部材を積層して印字ヘッドを組み立てている。
特開平10−76666号公報
特開平5−330064号公報
特開平10−291318号公報
特開2000−218802号公報
特開2001−179973号公報
特開平9−226114号公報
しかしながら、特許文献1乃至特許文献4では、ノズルを高精度に加工する技術は提案されているが、供給絞りについては考慮されていない。ノズルが高精度に加工されていても、圧力室を介してノズルと連通する供給絞りの加工精度が低い場合、ノズルからインク滴を吐出する際のインクの逆流が安定せず、ノズルのインク吐出量や吐出速度にバラツキが生じる要因となり、記録媒体上に形成されるドットの大きさや着弾位置に差異が現れ、画質低下を招いてしまう。
また特許文献1に開示された技術を供給絞りの加工に適用した場合でも、プレート部材に供給絞りを加工してから印字ヘッドを組み立てるため、各プレート部材を接合する際に位置ズレが生じたり、余剰接着剤によって供給絞りが目詰まりしたりする恐れがある。
また印字ヘッドの外周面(ノズル面)に形成されるノズルと違って、印字ヘッドの内部に供給絞りは形成されるため、特許文献2乃至特許文献4に開示された技術をそのまま供給絞りの加工に適用することは容易でない。
特許文献5には、圧力室の減衰特性(具体的にはインク供給口のレジスタンス)を決定づける供給絞りを振動板に形成することで所定孔径の形成精度を確保し、穴径のバラツキを究極的に少なく抑えることが可能である、と記載されているが、このように振動板に形成される供給絞りを高精度に加工する方法は明らかにされていない。
特許文献6に開示された技術では、印字ヘッドを組み立てる前に、振動板にインク供給路(供給絞り)を形成し、さらに振動板上に絶縁処理を行っている。この絶縁処理の際に、微細な孔径の供給絞りに絶縁処理剤等が混入し、目詰まりを起こしてしまう恐れがある。また印字ヘッドの組み立ての際に余剰接着剤等による目詰まりが発生する恐れもある。
さらに特許文献5及び特許文献6に開示された印字ヘッドのように、振動板に対して圧力室とは反対側に共通液室を設け、振動板に供給絞りを設けた場合、共通液室から圧力室に向かう重力方向にインクが供給されるので、供給絞りに塵埃等の異物が堆積しやすい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、高精度で、目詰まりのない供給絞りを備えた液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び画像形成装置を提供する。
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、液体を吐出する複数の吐出口と、前記複数の吐出口のそれぞれと連通する複数の圧力室と、前記複数の圧力室の前記吐出口が形成される側とは反対側に設けられ、前記複数の圧力室のそれぞれを変形する圧電素子と、前記圧力室の前記吐出口が形成される側とは反対側に設けられ、前記複数の圧力室に液体を供給する共通液室と、前記共通液室の前記圧電素子側とは反対側に設けられ、前記圧電素子を駆動する回路に接続される前記共通液室の液を封止する封止部材と、前記圧電素子が配置される面に対して略垂直方向に、その少なくとも一部が前記共通液室内を立ち上がるように形成され、前記圧電素子を駆動するための配線部材と、前記共通液室と前記圧力室を連通するための連通流路が形成される位置の略真上の前記封止部材の少なくとも一部に、前記連通流路に対応した孔部と、を備え、前記共通液室を形成した後に、前記孔部に対応した前記連通流路を形成したことを特徴とする液体吐出ヘッドを提供する。
本発明によれば、圧電素子の圧力室側とは反対側に共通液室を設け、共通液室の中を貫通するように配線部材を配設することにより、ノズルの高密度化を可能とした液体吐出ヘッドにおいて、共通液室を組み立て後に、孔部を介して、共通液室と圧力室との隔壁(圧力室の天面)に対してレーザビームを照射し、連通流路の少なくとも一部を形成する。これにより、高精度で、目詰まりのない連通流路を備えた液体吐出ヘッドを提供することが可能となる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体吐出ヘッドであって、前記共通液室を形成して、前記共通液室の被膜処理をした後に、前記孔部に対応した前記連通流路の少なくとも一部を形成したことを特徴とする。
請求項2の態様によれば、共通液室を形成して、共通液室の被膜処理を行った後に、孔部を介して、共通液室と圧力室との隔壁(圧力室の天面)に対してレーザビームを照射し、連通流路の少なくとも一部を形成する。従って、液体吐出ヘッドの組み立ての際に生ずる余剰接着剤や絶縁処理剤による連通流路の目詰まりは起こらず、また組み立て後に加工することで高精度な加工が可能である。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の液体吐出ヘッドであって、前記共通液室を形成した後に形成される前記連通流路は、供給絞りであることを特徴とする。
請求項3の態様によれば、高精度で、目詰まりのない供給絞りを備えた液滴吐出ヘッドを提供することが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドであって、前記配線部材は、前記圧電素子又は前記圧電素子の近傍から立ち上がるように形成されていることを特徴とする。
請求項4の態様によれば、吐出口(ノズル)の高密度化が可能となる。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドであって、前記複数の吐出口は2次元的に配列され、前記複数の配線部材は前記圧電素子が配置される面に対して2次元的に配列されていることを特徴とする。
請求項5の態様によれば、さらなる吐出口(ノズル)の高密度化が可能となると共に、配線部材の配置を確保でき、共通液室内の流体抵抗の低減が可能となる。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記共通液室に液体を供給する供給口と、前記共通液室に貯留される液体を排出可能な液体排出口と、前記吐出口の形成される面に設けられ、前記吐出口内の液体に対して、前記吐出口から吐出される液体の飛翔方向と反対方向に圧力を加える押圧手段と、を備え、前記吐出口の直径が、前記連通流路の直径よりも大きく形成されていることを特徴とする液体吐出装置を提供する。
請求項6の態様によれば、異物等が連通流路の共通液室側で目詰まりしても、共通液室内に液体を流し、押圧手段により吐出口内の液体に対して圧力を加えることにより、共通液室の外部にその異物等を排出することができ、連通流路の目詰まりを解消することができる。また供給液室側の異物等が連通流路を通過した場合でも、吐出口の直径は連通流路の直径より大きく形成されているので、その異物等を吐出口から排出することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の液体吐出装置であって、前記共通液室の被膜処理は、前記供給口と前記排出口を用いて、前記共通液室に被膜処理剤を供給及び排出させて行われることを特徴とする。
請求項7の態様によれば、共通液室の中を貫通するようにして設けられている配線部材や共通液室内の壁面等の共通液室内の絶縁処理を容易に行うことができる。また共通液室と圧力室との間の連通路が形成される前に行われるので、被膜処理剤が圧力室に混入するのを防止することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の液体吐出装置であって、前記被膜処理後に、前記供給口と前記排出口を用いて、前記被膜処理剤の乾燥処理を行うことを特徴とする。
請求項8の態様によれば、共通液室に対する被膜処理後に乾燥処理を行うことによって、被膜の定着が早くなる。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド、又は請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の液体吐出装置を備えたことを特徴とする画像形成装置を提供する。
本発明によれば、圧電素子の圧力室側とは反対側に共通液室を設け、共通液室の中を貫通するように配線部材を配設することにより、ノズルの高密度化を可能とした液体吐出ヘッドにおいて、共通液室を組み立て後に、孔部を介して、共通液室と圧力室との隔壁(圧力室の天面)に対してレーザビームを照射し、連通流路の少なくとも一部を形成する。これにより、高精度で、目詰まりのない連通流路を備えた液体吐出ヘッドを提供することが可能となる。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一実施形態の概略を示す全体構成図である。図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26とを備えている。
図1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一実施形態の概略を示す全体構成図である。図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26とを備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(不図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
図2に示すように、印字部12を構成する各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(不図示)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
〔制御系の説明〕
図3はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
図3はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒーター89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒーター89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド12K、12C、12M、12Yのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図3において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの圧電素子(図3中不図示、図6中符号58として記載)を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサー(不図示)を含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供するものである。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対する各種補正を行うようになっている。
〔印字ヘッドの構造〕
次に、印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造について説明する。インク色毎に設けられている各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを表すものとする。
次に、印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造について説明する。インク色毎に設けられている各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを表すものとする。
図4は、印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図5は、図4に示した印字ヘッド50のノズル配列を示す拡大図である。
図4に示すように、印字ヘッド50は、インク滴を吐出するノズル51、インクを吐出する際インクに圧力を付与する圧力室52、圧力室52にインクを供給するインク供給口53を含んで構成される圧力室ユニット54が千鳥状の2次元マトリクス状に配列され、ノズル51の高密度化が図られている。
図4に示す例においては、各圧力室52を上方から見た場合に、その平面形状は略正方形状をしているが、圧力室52の平面形状はこのような正方形に限定されるものではなく、長方形、菱形、楕円等でもよい。圧力室52には、図4に示すように、その対角線の一方の隅部にノズル51が形成され、他方の隅部にインク供給口53が設けられている。
かかる構造を有する多数の圧力室ユニット54を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿って圧力室ユニット54を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
すなわち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン又は1個の帯状を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)、記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットからなるライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
図6は、印字ヘッド50の内部の概略構成の一部を表す斜視透視図である。同図には、4つの圧力室ユニット54が含まれている。
図6に示すように、印字ヘッド50は、ノズル51と、ノズル流路60を介してノズル51と連通する略直方体状の圧力室52と、各圧力室52と連通する共通液室55と、を備えている。
圧力室52の天面は、振動板56によって構成されている。また振動板56上には、各圧力室52に対応するようにして、それぞれ個別電極57を備えた圧電素子58が配置されている。すなわち圧電素子58は、圧力室52のノズル51が形成される側とは反対側の振動板56上に設けられてる。なお図6に示した印字ヘッド50では、振動板56が圧電素子58に対する共通電極となっている。
圧電素子58上には、テーパ付き柱状に形成された配線部材90の下部が接合されている。配線部材90の上部は、ヘッドドライバ84(図3参照)に接続されるフレキシブルケーブル92に接合されている。このような配線部材90は、銅等の導電性部材から構成される。
なお1つの圧電素子58に対して1つの配線部材90が設けられる構成となっているが、このような構成に限定されず、複数の圧電素子58に対して1つの配線部材90が設けられる構成でもよい。この場合、印字ヘッド50に形成される配線部材90の数を削減することができる。
フレキシブルケーブル92の下面には、共通液室55の液を封止するための封止部材102が設けられている。封止部材102は、例えばSUS材等により構成される。封止部材102の上面には、保護フィルム(図6中不図示、図8及び図9中符号103として記載)及び樹脂(図6中不図示、図9中符号104として記載)が設けられている。またヘッドドライバ84は、保護フィルム103又は樹脂104の上部に設けてもよい。
振動板56とフレキシブルケーブル92の間に形成される空間は、共通液室55である。共通液室55は、図4に示した全て圧力室52に渡る領域に1つの大きな空間として形成されており、各圧力室52に供給するインクを貯留する。なお共通液室55はこのような構成に限定されず、いくつかの領域に分かれた複数の空間でもよい。
圧電素子58とフレキシブルケーブル92を接続する配線部材90は、共通液室55に貯留されるインクの中を貫通するように構成される。そのため導電性部材から構成される配線部材90の表面には、絶縁・保護膜98が形成されている。配線部材90は、その形状及び機能からエレキ柱とも呼ばれる。
なお配線部材90の表面以外にも、共通液室55の壁面の一部を構成する振動板56、圧電素子58及びフレキシブルケーブル92のうちインクと接する部分には、絶縁・保護膜98が形成されており、共通液室55のインクを貯留するための封止板としても機能している。
共通液室55と各圧力室52の間には、インク供給口53が形成されており、共通液室55と各圧力室52は連通している。図6に示した印字ヘッド50では、インク供給口53は微細に形成されており、インク供給口53の孔径はノズル51の孔径よりも小さく構成されている。このように微細なインク供給口53(若しくはその一部)は、流体抵抗として機能する供給絞り53Aとなっている。供給絞り53Aは、ノズル51からインク滴を吐出する場合に、圧力室52から共通液室55に対するインクの逆流を低減し、ノズルからのインク吐出を安定にする。
次に、上記のように構成された印字ヘッド50の作用について説明する。
共通液室55に貯留されたインクは、インク供給口53を通って、圧力室52に供給される。ヘッドドライバ84(図3参照)が、圧電素子58に対する駆動信号を送ると、その駆動信号はフレキシブルケーブル92及び配線部材90を通って、個別電極57に供給される。
駆動信号が個別電極57に供給されると、圧電素子58は変形し、圧力室52の天面を構成する振動板56が変形する。そして圧力室52の体積が減少し、圧力室52内に充填されているインクが、ノズル流路60を通って、ノズル51からインク滴として吐出される。
図6に示した印字ヘッド50では、圧力室52のノズル51(吐出口)が形成される側とは反対側に共通液室55が設けられ、さらに共通液室55の中を貫通するようにして、振動板56上の圧電素子58の個別電極57に接続する配線部材90が設けられている。従って、ヘッドドライバ84(図3参照)やそれらに接続するフレキシブルケーブル92等の電気配線用スペースを、共通液室55を挟んで振動板56とは反対側に確保することができるので、ノズル51の高密度化に伴う電気配線の増加に対応することが可能になっている。
また共通液室55は、圧力室52のノズル51(吐出口)が形成される側とは反対側に配置されているため、圧力室52と同じ側に配置される場合と比べて共通液室55を大きく形成することが可能となる。また圧力室52とノズル51間のノズル流路60の長さは、圧力室52と同じ側に共通液室55を設けた場合より短くなる。また共通液室55から圧力室52にインクを導くための複雑な流路が不要となり、共通液室55と圧力室52とを真っ直ぐに連通することができる。これにより、高粘度インクの吐出が可能になり、また吐出後の迅速なリフィル動作ができるようになり高周波駆動が可能となる。
なお上述したような印字ヘッド50の各サイズは、特に限定されるものではないが、一例を示すと、圧力室52は平面形状が300μm×300μmの正方形で、高さが150μm、振動板56及び圧電素子58はそれぞれ厚さが10μm、配線部材90は個別電極57との接合部の直径が100μm、高さは500μm等のように形成される。
〔印字ヘッドの製造方法〕
次に、印字ヘッド50の製造方法について説明する。
次に、印字ヘッド50の製造方法について説明する。
図7は、印字ヘッド50の製造の流れを示したフロー図である。同図に示すように、圧力室ユニット形成工程(S10)、共通液室形成工程(S12)、共通液室被膜処理工程(S14)、連通流路形成工程(S16)が順番に行われ、印字ヘッド50が製造される。以下では、各工程について詳説する。
図8は、図4中8−8断面位置に相当し、供給絞り53A及びノズル51が加工される前の状態を表す断面図である。図9は、供給絞り53A及びノズル51が加工された後の図4中8−8断面図である。
図8に示すように、供給絞り53Aやノズル51の加工されていない複数のプレート部材を積層状に接合し、印字ヘッド50を組み立てる。本工程は、図7に示した圧力室ユニット形成工程(S10)に相当する。
ノズル51を未加工のノズルプレート94の図8中上面に、ノズル流路60が形成された流路プレート97、圧力室52の一部を構成する孔部や溝部が形成された圧力室プレート96、圧力室52の天面を構成し、供給絞り53A(インク供給口53)を未加工の振動板56及び圧電素子58を積層して接着剤等により接合する。なおノズルプレート94と振動板58は、SUS材により構成されている。
これらの接合の際、図8に示すように、ノズルプレート94と流路プレート97の接合部からノズル流路60に対して余剰接着剤106がはみ出したり、振動板56と圧電素子58との接合部周辺に対して余剰接着剤106がはみ出したりして、そのまま固化してしまう場合がある。なお図8中、その他の接合部における余剰接着剤106は図示を省略してある。
続いて共通液室形成工程(図7参照)において、図示は省略するが、SUS材から成る封止部材102に接合されたフレキシケーブル92の下に銅層を形成し、エッチングにより配線部材90を形成する。そして図8に示すように、配線部材90が図8中下方になるように向けて、配線部材90の先端部90aを個別電極57に導電性接着剤や異方性導電膜等により接合する。そして封止部材102及びフレキシケーブル92の上下面を貫通する照射孔100をウェットエッチング等により加工する。なお配線部材90は、フレキシブルケーブル92上にニッケル電鋳して形成してもよい。
照射孔100は、供給絞り53Aが形成される位置の直上の封止部材102及びフレキシケーブル92に形成される。すなわち、印字ヘッド50のノズル面50Aと反対側の非ノズル面50B側からからレーザビーム110を供給絞り53Aの形成位置に照射できるように、照射孔100が形成される。また照射孔100の孔径は十分に小さく、例えば直径100〜200μm程度である。
次に共通液室被膜処理工程(図7参照)として、インク供給タンク(図8中不図示、図20中符号67として記載)から共通液室55に対して絶縁コート用樹脂を流す。なお絶縁コート用樹脂を流す前に、封止部材102の上面に保護フィルム103を貼り付け、照射孔100の開口部100aを保護フィルム103により塞いでおく。共通液室55に流される絶縁コート用樹脂としては、例えば、液体塗料、電着塗料、気化塗料等が用いられる。
これにより、共通液室55の壁面の一部を構成する振動板56、圧電素子58及びフレキシブルケーブル92のうちインクと接する部分に、絶縁・保護膜98が形成される。このとき振動板56と圧電素子58の接合の際に生じた余剰接着剤106の表面にも、絶縁・保護膜98が形成される。
このように共通液室55に絶縁コート用樹脂を流すことによって、配線部材90や圧電素子58等の共通液室55の壁面の一部を構成する部材の絶縁処理を容易に行うことができる。
また共通液室55に絶縁コート用樹脂を流す際には、共通液室55と各圧力室52を連通する供給絞り53A(インク供給口53)は未加工の状態であるので、各圧力室52に絶縁コート用樹脂が混入するのを防止することができる。
次に連通流路形成工程(図7参照)として、印字ヘッド50の非ノズル面50Bから、レーザビーム110を照射孔100に照射して、供給絞り53Aを振動板56に加工する。このとき開口部100aにおける保護フィルム103は、照射されたレーザビーム110によって溶かされる。なお接着力の弱い接着剤で封止部材102に保護フィルム102が貼り付けられている場合には、保護フィルム102を剥がしてから、レーザビーム110を照射し、供給絞り53Aを加工してもよい。
レーザビーム110には、振動板56の材料のアブレーションに適した特性を持つレーザビーム、例えばエキシマレーザ等が用いられる。
なお近年、UV−YAGレーザ等に代表される短波レーザの高出力低価格化やフェムト秒レーザ等の超短パルスレーザの急速な進歩により、このようなレーザは、ポリイミド等の樹脂材料に対して有効であることはもちろんのこと、従来は困難であった金属に対しても加工が可能となっている。本発明は、このようなレーザを適用することも可能であり、特に長尺化及び多ノズル化された印字ヘッド50を金属材料で形成した場合の歩留まり改善や高精度化に対して有効である。
レーザビーム110の形状は、振動板56の供給絞り53Aの形成位置において、照射方向(図8中下方向)に沿って幅狭になる順テーパ状の形状となるように構成されている。
順テーパ状のレーザビーム110が、印字ヘッド50の非ノズル面50B側から照射孔100を介して振動板56に照射されると、レーザビーム110の照射方向に存在する絶縁・保護膜98、余剰接着剤106及び振動板56に、供給絞り53Aがアブレーションにて形成される。供給絞り53Aの形状は、レーザビーム110の形状に依存し、図9に示すように、共通液室55側から圧力室52側に向かって幅狭になるテーパ状となる。
次に、図8に示すように、印字ヘッド50のノズル面50A側からレーザビーム112をノズル51の形成位置に照射して、ノズル51をノズルプレート94に穿孔する。
レーザビーム112には、レーザビーム110と同様に、エキシマレーザ等が用いられる。レーザビーム112の形状は、ノズルプレート94のノズル51の形成位置において、レーザビーム112の照射方向(図8中上方向)に沿って幅広になる逆テーパ状の形状となるように構成されている。このような逆テーパ状のレーザビーム112については、例えば、特許文献2(特開平5−330064)に開示されているように、レーザ光源とノズル面50Aとの間に光学レンズを配置して、ビームウェスト以後の拡がり光が用いられる。
逆テーパ状のレーザビーム112が、印字ヘッド50のノズル面50A側からノズルプレート94のノズル51の形成位置に照射されると、ノズル51がアブレーションにて形成される。ノズル51の形状は、レーザビーム112の形状に依存し、図9に示すように、ノズル面50A側から圧力室52側に向かって幅広になるテーパ状となる。
供給絞り53Aとノズル51を形成後、図9に示すように、保護フィルム103の表面(又は、保護フィルム103が剥がされている場合は封止部材102の表面)をシリコン等の樹脂104でコートする。このとき照射孔100の孔径は十分に小さいので、樹脂104により開口部100aはシールされる。さらに、樹脂104のコート面上にヘッドドライバ84を実装する。
このように印字ヘッド50の組み立て後、すなわち複数のプレート部材を接着剤等により積層して接合し、共通液室55に対する絶縁処理を行った後に、印字ヘッド50のノズル面50A側及び非ノズル面50B側からレーザビームを照射して供給絞り53A及びノズル51を加工することにより、供給絞り53A及びノズル51の高精度化を実現できると共に、余剰接着剤106や絶縁コート用樹脂等による供給絞り53Aやノズル51の目詰まりを防止することができる。
また供給絞り53Aが形成される振動板56と、ノズル51が形成されるノズルプレート94は、共にSUS材により構成されている。このように供給絞り53Aとノズル51がそれぞれ形成されるプレート部材を略同一材質にすることで一層の加工安定化や最適化を図ることができ、また温度変化による印字ヘッド50内の流路の反りも軽減することが可能になる。これらの材質としては、図8及び図9に示したようなSUS材以外に、ポリミイドやNi電鋳等が用いられる。
ここで、図9に示すように、供給絞り53Aの孔径をd1、振動板56の厚さをt1とした場合、供給絞り53Aの流路損失K1は、次式(1)に示す通りとなる。
同様に、ノズル51の孔径をd2、ノズルプレート94の厚さをt2した場合、ノズル51の流路損失K2は、次式(2)に示す通りとなる。
本実施形態における印字ヘッド50では、各圧力室52に連通する供給絞り53A及びノズル51の流路損失K1,K2は、それぞれ次式(3)を満たすように構成されている。
すなわち、各圧力室52において、供給絞り53Aの流路損失K1とノズル51の流路損失K2の比(圧損比)は、概ね1:1となるように構成されている。このような圧損比は、振動板56の厚さt1やノズルプレート94の厚さt2、レーザ出力等の調整により、上述のように均一にすることが可能である。例えば、供給絞り53Aの孔径d1がノズル51の孔径よりも小さい場合で、圧損比を1:1とする場合は、振動板56の厚さt1をノズルプレート94の厚さt2より薄くなるように調整すればよい。
このように各圧力室52間の圧損比を均一にし、圧損バランスを安定させることにより、各ノズル51のインク吐出量は安定し、このような印字ヘッド50を備えたインクジェット記録装置10の高画質化を実現することが可能となっている。なお圧力室52間の圧損バランスを安定させる方法については後述する。
図10は、印字ヘッド50の他の構成例を表し、図4中8−8断面に相当する断面図である。図10に示すように、共通液室55と圧力室52を連通するインク供給口53は、振動板56上に積層された絞りプレート108に形成された微細な供給絞り53Aと、振動板56に形成された通孔53Bとから構成されている。
図10に示した印字ヘッド50では、絞りプレート108とノズルプレート94が同一材質のポリミイドで構成されており、前述のように、加工安定化や最適化を図ることができ、温度変化による印字ヘッド50内の流路の反りも軽減することが可能になっている。
また供給絞り53Aとノズル51は、図8及び図9に示した印字ヘッド50と同様に、各プレート部材を積層して印字ヘッド50を組み立てた後にレーザビームで加工される。そのため供給絞り53Aの目詰まりを防止することができるとと共に、供給絞り53Aやノズル51を高精度に加工することができる。
〔圧力室間の圧損バランスを安定させる方法〕
次に、圧力室52間の圧損バランスを安定させる方法について説明する。
次に、圧力室52間の圧損バランスを安定させる方法について説明する。
図11は、供給絞り53A及びノズル51の加工方法の概略を示した説明図である。図11に示すように、エキシマレーザ等のレーザ発振器120から照射されるレーザビーム122の照射方向(図11中下方向)に対して、レーザ発振器120側から順番に、ビームエクスパンダ124、マスク128、テレセントリックレンズ系132及び印字ヘッド50が配置される。
ビームエクスパンダ124は、レーザビーム122の照射方向後段に配置されるマスク126の形状に対応するように、レーザ発振器120から照射されたレーザビーム122を拡大する。拡大されたレーザビーム(以下、拡大レーザビームという)126は、マスク128に照射される。
図12は、図11に示したマスク126の平面図である。同図に示すように、マスク128には、長手方向に複数の略円状の開口142、142、・・・が配列(以下、この配列を開口列143という)されている。マスク128に照射される拡大レーザビーム126(図11参照)の照射範囲は、図12中破線で囲まれた領域となるように構成されている。
図11において、拡大レーザビーム126が上記のような開口列143を備えたマスク128を通過すると、その開口142の形状に対応する複数のビーム130、130、・・・から成るビーム列131となる。このビーム列131は、光軸に対して平行であり、テレセントリックレンズ系132に照射される。
テレセントリックレンズ系132は、入射する各ビーム130の光軸Pに対する平行性を保つと共に、所定の縮小倍率で各ビーム130を縮小投影し、縮小レーザビーム134、134、・・・から成る縮小レーザビーム列135を出射する。
各縮小レーザビーム134の光軸Pに対する平行性を保つことにより、印字ヘッド50の非ノズル面50B若しくはノズル面50Aに対して略垂直方向にレーザビーム110、112(図8参照)を照射することができ、孔径や孔間ピッチにズレのない高精度な加工が可能となる。
またテレセントリックレンズ系132の縮小倍率は、マスク128の開口列143の形状と、印字ヘッド50に形成する供給絞り53A若しくはノズル51の形状に応じて決定される。
印字ヘッド50に複数の供給絞り53Aを形成する場合、テレセントリックレンズ系132から出射された縮小レーザビーム列135を印字ヘッド50の非ノズル面50Bに照射する。このとき振動板56の供給絞り53Aの形成位置において、縮小レーザビーム列135を構成する各縮小レーザビーム134が照射方向に沿って幅狭となる順テーパ状の形状となるように、供給絞り53Aとの位置や加工中のパルス強度を調整する。
このような縮小レーザビーム列135によって形成された供給絞り53Aの形状は、図9に示したように、共通液室55側から圧力室52側に向かって幅狭になるテーパ状となる。
一方、印字ヘッド50に複数のノズル51を形成する場合、テレセントリックレンズ系132から出射された縮小レーザビーム列135を印字ヘッドのノズル面50Aに照射する。このときノズルプレート94のノズル51の形成位置において、縮小レーザビーム列135を構成する各縮小レーザビーム134が照射方向に沿って幅広となる逆テーパ状の形状となるように、縮小レーザビーム列135とノズルプレート94との位置や加工中のパルス強度を調整する。
図13(a)、(b)は、図11に示した加工方法で、供給絞り53Aの配列が形成された振動板56の平面図である。図13(a)は、最初に供給絞り53Aの配列が加工された状態を表し、図13(b)は、全ての供給絞り53Aがマトリクス状に加工された状態を表す。なお振動板56に形成される供給絞り53Aは、前述したように、印字ヘッド50を組み立て後、印字ヘッド50の非ノズル面50B側からレーザビームを照射して形成されるものである。
図11に示した加工方法により、印字ヘッド50の非ノズル面50Bに対して、縮小レーザビーム列135を印字ヘッド50の長手方向の略斜め方向に照射すると、図13(a)に示すように、振動板56に、長手方向の略斜め方向に配列された複数の供給絞り53Aが一度に形成される。このように配列された複数の供給絞り53Aの形状は、マスク128の開口列143の形状と相似する。
続いて、縮小レーザビーム列135の照射位置を振動板56(印字ヘッド50)の長手方向に若干量平行移動し、最初と同様の縮小レーザビーム列135を照射し、振動板56に長手方向の略斜め方向に配列された複数の供給絞り53Aを形成する。このような操作を数回繰り返すと、図13(b)に示すように、振動板56にマトリクス状に配列された供給絞り53Aが形成される。
なお縮小ビール列135の照射位置を移動せず、印字ヘッド50(振動板56)を長手方向に若干量平行移動することによって、縮小レーザビーム列135の照射位置を相対的に変化させてもよい。
図14は、図11に示した加工方法で供給絞り53A及びノズル51がマトリクス状に加工された印字ヘッド50の平面透視図である。
縮小レーザビーム列135で供給絞り53Aをマトリクス状に加工した状態(図13(b)参照)に続いて、供給絞り53Aの加工に利用した同じ縮小レーザビーム列135を用いて、図14に示すように、ノズル51をマトリクス状に加工する。
図14に示した例では、ノズル51の孔径は供給絞り53Aの孔径よりも大きく形成されている。図11に示したテレセントリックレンズ系132の位置を照射方向に移動したりレーザの強度を調整したりすることにより、同じ縮小レーザビーム列135を用いつつ、ノズル51の孔径を供給絞り53Aの孔径よりも大きくすることができる。
ところで図11において、レーザ発振器120と印字ヘッド50との間には、縮小レーザビーム列135を構成する各縮小レーザビーム134(図11参照)のバラツキ要因が存在する。例えば、レーザ発振器120から照射されるレーザビーム122が均一でなかったり、マスク128に形成される各開口142にバラツキが存在する場合等がある。そして、このような縮小レーザビーム列135によって形成された複数の供給絞り53A又はノズル51には、孔径やピッチ(孔間の中心部間距離)のバラツキが生じてしまう場合がある。
しかしながら本実施形態では、図14に示すように、印字ヘッド50の長手方向の略斜め方向にそれぞれ配列される複数の供給絞り53A及び複数のノズル51は、同じ縮小レーザビーム列135で加工されるので、圧力室52を介して連通する供給絞り53A及びノズル51は同じ縮小レーザビーム134で加工される。そのため圧力室52を介して連通する供給絞り53Aとノズル51の孔径比は、各圧力室52間で略一定に構成されている。特に供給絞り53Aとノズル51とを同一の材質で構成すれば加工条件が安定し、一層の効果が期待できる。
例えば、縮小レーザビーム列135のうち特定の縮小レーザビーム134の径が他の縮小レーザビームに比べて1%大きい場合は、この縮小レーザビーム134によって形成される供給絞り53A及びノズル51の径は、他の供給絞り53A及びノズル51の径に比べて1%程度大きくなってしまうが、供給絞り53Aとノズル51の孔径比は、他の縮小レーザビーム134によって形成される供給絞り53Aとノズル51の孔径比と同じである。
このように縮小レーザビーム列135にバラツキが存在する場合があっても、圧力室52を介して連通する供給絞り53A及びノズル51は同じ縮小レーザビーム134で加工されているので、供給絞り53Aとノズル51の孔径比は各圧力室52間で略一定になり、この結果、各圧力室52の圧損比は略一様となり、圧損バランスが安定する。これにより、ノズル51からのインク吐出量は安定し、このような印字ヘッド50を備えたインクジェット記録装置10の高画質化を実現することができる。
図15は、印字ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図である。図15に示した印字ヘッド50は、複数のノズル51がマトリクス状に配列された短尺ヘッド50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するフルラインヘッドである。
このような印字ヘッド50の場合、短尺ヘッド50’をそれぞれ組み立てて、それらを千鳥状に配列して繋ぎ合わせてフルライン型の印字ヘッド50を構成した後に、供給絞り53A及びノズル51の加工を行うことが好ましい。
短尺ヘッド50’を繋ぎ合わせた印字ヘッド50をX−Yステージ等に載せて、図11に示した加工方法と同様に、縮小レーザビーム列135(図11参照)を各短尺ヘッド50’ごとに照射することにより、各圧力室間の圧損バランスを安定にしつつ、供給絞り53Aやノズル51を高精度に加工できる。
供給絞り53Aやノズル51を加工後、短尺ヘッド50’を繋ぎ合わせる際に位置ズレが生じやすい一方、短尺ヘッド50’を繋ぎ合わせた印字ヘッド50に対してX−Yステージ等で供給絞り53Aやノズル51を加工する場合は正確な位置決めが可能であるからである。例えば、 1μm以下の位置精度で供給絞り53Aやノズル51を加工することができる。
図16は、印字ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図である。図17は、図16に示した印字ヘッド50のノズル配列を示す拡大図である。
図16及び図17に示した印字ヘッド50では、記録紙16の搬送速度に応じて、所定の順序(打滴タイミング)で打滴を行い、記録紙16の主走査方向に1列のドット列を形成するノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 は、ノズル列510を構成する。ノズル列510は、副走査方向に2つに分割されており、ノズル51-11 、51-12 、51-13 から成るノズル列512と、ノズル51-14 、51-15 、51-16 から成るノズル列514により構成される。またノズル列512とノズル列514は、主走査方向のノズル間ピッチPの1/2だけ主走査方向に位相をずらして配置されている。なお、ノズル列510と同一構造のノズル列が主走査方向に配列されている。
このような印字ヘッド50の場合、副走査方向に分割され、主走査方向に位相をずらしたノズル列512、514のようなブロック単位毎に縮小レーザビーム列135(図11参照)を照射して、供給絞り53A及びノズル51を加工することが望ましい。
圧力室52間の圧損バランスを安定にすると共に、以下に説明するように、記録紙16上に形成されるドット群に生じるむらの視認性を低減させることができる。
図16及び図17に示した印字ヘッド50では、ノズル列510を構成するノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を主走査方向に並ぶように投影すると、図17に示すように、ノズル51-11 とノズル51-12 との中間に、ノズル51-14 が配置される。同様に、ノズル51-12 とノズル51-13 との間にノズル51-15 が配置され、ノズル51-13 とノズル列510の主走査方向に隣接するノズル列のノズル51-21 との間に、ノズル51-16 が配置される。
図18は、図16及び図17に示した印字ヘッド50の打滴タイミングの説明図である。ノズル51を表す円内に示した数字は打滴タイミングを示し、タイミングt1 ではノズル51-11 、ノズル51-21 、ノズル51-3、…、から打滴が行われる。次にタイミングt2 ではノズル51-12 、…、から打滴が行われる。更に、タイミングt3 〜タイミングt6 ではノズル51-13 、…、ノズル51-16 、ノズル51-26 、ノズル51-36 、…、の打滴が行われ、タイミングt1 〜タイミングt6 の1サイクルの打滴によって、図18中下方に示したように、主走査方向に1ラインのドット列を形成することができる。
ここで、タイミングt1 〜t3 で行われる打滴では、各タイミングで打滴されたインク滴は記録紙16上で他のインク滴と接触せずに、各打滴によるインク滴が単独でドットを形成する。なお、タイミングt1 〜タイミングt3 で打滴されたインク滴が記録紙16上で干渉しないように主走査方向のノズル間ピッチPが決められる。
一方、タイミングt4 〜タイミングt6 では、打滴されたインク滴が着弾する際に、主走査方向に隣り合う両側の打滴点には既にインク滴が打滴され、記録紙16上に先に着弾しているために、両隣のインク滴と接触するように着弾する。
即ち、タイミングt4 で打滴されたインク滴は、タイミングt1 及びタイミングt2 で打滴されたインク滴の間に着弾し、同様にタイミングt5 で打滴されたインク滴はタイミングt2 及びタイミングt3 で打滴されたインク滴の間に着弾し、タイミングt6 で打滴されたインク滴はタイミングt1 及びタイミングt3 で打滴されたインク滴の間に着弾する。
タイミングt4 〜タイミングt6 で打滴されたインク滴が先に着弾している両隣のインク滴に引き寄せられるので、タイミングt4 〜タイミングt6 で打滴されたインク滴は一方向に寄る現象が起こらず、ノズル51-16 とノズル51-21 のような折り返し位置(ノズル列つなぎ部)に生じるむらの視認性を低減させることができる。
図19は、供給絞り53A及びノズル51の他の加工方法の概略を示した説明図である。図19に示すように、レーザ発振器120から照射されたレーザビーム122の照射方向(図19中下方向)に回折格子136が配置される。そしてレーザビーム122が回折格子136に入射すると、回折格子122の略中心部から複数の放射状レーザビーム138が出射される。
複数の放射状レーザビーム138がテレセントリックレンズ系132に入射すると、光軸Pに対して平行に補正され、所定の倍率で縮小された、図11と同様の縮小レーザビーム列135が出射される。
そして前述と同様に、この縮小レーザビーム列135を、印字ヘッド50の非ノズル面50B及びノズル面50Aにそれぞれ照射して、圧力室52を介して連通する供給絞り53A及びノズル51を同じ縮小レーザビーム134で加工することにより、各圧力室52間の圧損比を一様にすることができ、圧損バランスが安定し、各ノズル51からのインク吐出量を安定させることができる。
〔インク供給系の構成〕
図20は、インクジェット記録装置10のインク供給系の構成を示す概要図である。図20に示すように、インクジェット記録装置10は、インク供給タンク67と印字ヘッド50との間にサブタンク61、ポンプP1、P2、バッファタンク62、63等を備えている。
図20は、インクジェット記録装置10のインク供給系の構成を示す概要図である。図20に示すように、インクジェット記録装置10は、インク供給タンク67と印字ヘッド50との間にサブタンク61、ポンプP1、P2、バッファタンク62、63等を備えている。
インク供給タンク67はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク67の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式などがあるが、使用用途に応じてインク種類を変える場合には後者のカートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコードなどで識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
サブタンク61は、インク供給タンク67から供給されるインクを集め、インク内の気泡を可能な限り除去するものである。サブタンク61に代えて、またはこれと併用して、異物や気泡を除去する不図示のフィルタを設けた構成としてもよい。なお、サブタンク61にはシステムコントローラ72(図3参照)と回路接続された不図示のセンサが設けられ、システムコントローラ72によってインクの有無が検知される。システムコントローラ72によってインクの残りが検出されなくなった場合には、インク供給タンク67内にインクが無くなったと判断される。
バッファタンク62,63は、サブタンク61と印字ヘッド50間において、印字ヘッド50の近傍または印字ヘッド50と一体的に設けられている。これらバッファタンクは、ポンプP1,P2を駆動させることによって共通液室55内の圧力に生じる脈動(内圧変動)を吸収し、印字ヘッド50内の圧力を適切な一定の値に維持するダンパー効果を得るためのものである。
また、印字ヘッド50の近傍には、ノズル51の乾燥防止またはノズル51近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66等から成るメンテナンスユニット65が設けられている。
メンテナンスユニット65は、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や画像形成待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、印字ヘッド50のノズル面50Aをキャップ64で覆う。
図21は、図20に示した印字ヘッド50のインク供給系を表す平面透視図である。図21に示すように、印字ヘッド50に設けられる共通液室55の平面形状は、マトリックス状に配置された圧力室52の全面を覆うように構成されている。また共通液室55は、前述したとおり、各インク供給口53を介して各圧力室52と連通している。
共通液室55の各隅部には主供給口150が形成され、この主供給口150にインク供給用の供給管152が連結される。各主供給口150には、インクの流れに応じて開閉自在なフィルタ158が設けられている。図21中右側の印字ヘッド50の短手方向両端部の供給管152、152は、合流して主流路156Aを構成する。同様に、図21中左側の印字ヘッド50の短手方向両端部の供給管152、152は、合流して主流路156Bを構成する。図20に示すように、主流路156Aは、バッファタンク62に連結され、主流路156Bは、バッファタンク63に連結される。
図22(a)、(b)は、フィルタ158の構成例を示す断面図(図21中21−21断面図)である。図22(a)は、共通液室55からインクが排出される場合のフィルタ158の状態を表し、図22(b)は、共通液室55にインクが供給される場合のフィルタ158の状態を表す。
図22(a)に示すように、共通液室55側からバッファタンク63側の方向(図22(a)中矢印の方向)にインクが流れる場合、フィルタ158は主供給口150を開くように構成される。供給液室55からインクが排出される場合、インクの中に含まれる異物等はフィルタ158により遮られず、共通液室55から確実に排出することができる。
一方、図22(b)に示すように、バッファタンク63側から共通液室55側の方向(図22(b)中矢印の方向)にインクが流れる場合、フィルタ158は主供給口150を閉じるように構成される。共通液室55にインクが供給される場合、インクの中に含まれる異物等はフィルタ158により遮られ、共通液室55内に異物等が混入するのを防止することができる。
なお図21中左下に配置されるフィルタ158は図22と同様の構成であり、図21中右側に配置される2つのフィルタ158は、図22の構成と左右対称の構成となる。
このようにインクの流れに応じて開閉自在なフィルタ158によって、共通液室55内に異物等が混入するのを防止することができると共に、万一、共通液室55内に異物等が混入した場合でも確実にその異物を排出することができる。
図20及び図21に示したインクジェット記録装置10のインク供給系の構成において、インクジェット記録装置10に電源が投入された場合、ポンプP1,P2を共に給液として駆動させ、サブタンク61及びバッファタンク62,63におけるインクが所定の液位となるまでサブタンク61及びバッファタンク62,63にインクを充填する。そして主供給口150を介して供給管152から共通液室55に対してインクが供給され、インクが共通液室55に充填される。このとき主供給口150に設けられたフィルタ158は、図22(b)に示すような主供給口150を閉じた状態となっているので、共通液室55内への異物等の混入が防止される。
また、画像形成中または待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、所定の待機時間以上ノズル51からインク滴が吐出されない状態が続き、印字ヘッド50の回復処理が必要とシステムコントローラ72(図3参照)によって判断された場合には、印字ヘッド50の圧電素子58を駆動させて、ノズル51からその劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)をキャップ64に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)する。
このとき劣化インクを確実に排出するために、ポンプP1,P2の少なくともいずれか一方を駆動させてインクを加圧しつつ供給する。これによって、時間経過による増粘などによってノズル51近傍に発生する劣化インクを確実に排出できる。
また、印字ヘッド50内のインクに気泡が混入した場合、圧電素子58を動作させても、ノズル51からインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50のノズル面50Aにキャップ64を密着させ、ポンプP3を駆動して圧力室52内の気泡が混入したインクを吸引除去する回復処理が行なわれる。当該回収されたインクは回収タンク68に送液され、必要に応じてサブタンク61に戻される。
この吸引動作は、初期のインクの印字ヘッド50への装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行なわれ、粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。
なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には前述した予備吐出を行う態様が好ましい。
また印字ヘッド50内に異物等が混入した場合には、印字ヘッド50のノズル面50Aにキャップ64を密着させ、ポンプP3を加圧動作させて、圧力室52内のインクに対して圧力を加えて、共通液室55の外部に異物等を排出する。
クリーニングブレード66は、たとえばゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構(ワイパー)により印字ヘッド50のノズル面50Aに摺動可能に設けられる。ノズル面50Aにインク液滴または異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル面50Aに摺動させることでノズル面50Aを拭き取り、ノズル面50Aを清浄する。なお、このブレード機構による清掃時には、クリーニングブレード66によるノズル51への異物混入防止のため、清掃後に予備吐出が行われる。
図23は、供給絞り53Aの目詰まりを解消させる方法の概要を示す説明図である。図23に示すように、供給絞り53Aの共通液室55側に塵埃等の異物160が付着して目詰まり状態となった場合、前述した圧電素子58を駆動して劣化インクを予備吐出したり、ノズル面50Aにキャップ64を密着させ、ポンプP3(図20参照)を駆動して圧力室52内のインクを吸引除去したりする方法では、供給絞り53Aの目詰まりを解消できない場合がある。以下では、図20乃至図23を参照しながら、供給絞り53の目詰まりを解消させる方法について説明する。
印字検出部24(図3参照)により画像不良が検出され、予備吐出を行っても画像不良を回復できない場合、ポンプP1を送液に、ポンプP2を吸液になるように駆動して、図23中矢印Aの方向に、共通液室55内のインクを循環させる。なおポンプP1を吸液に、ポンプP2を送液になるように駆動してもよい。
また図23に示すように、印字ヘッド50のノズル面50Aに、キャップ64を密着させる。そしてポンプP3を利用して、キャップ64のノズル51に対応する位置に対して、ノズル51の吐出方向と反対方向(図23中矢印Bの方向)に圧力を加える。
このようにして加えられた圧力は、圧力室52内のインクの中を伝わり、供給絞り53Aの共通液室55側に付着する異物160に対して図23中上方に作用する。このとき共通液室55内のインクは図23中矢印Aの方向に流れるので、異物160は図23中破線矢印の方向に排出される。このとき主供給口150に設けられたフィルタ158は、図22(a)に示すように、主供給口150を開くような状態となっているので、共通液室55から異物160が確実に排出される。
本実施形態では、図22に示すフィルタ158のメッシュサイズをd0とし、また図23に示すように、供給絞り53Aの孔径をd1、ノズル51の孔径をd2とした場合、次式(1)を満足することが望ましい。
d0<d1<d2 ・・・(4)
フィルタ158のメッシュサイズd0を供給絞り53Aの孔径d1よりも小さくすることにより、共通液室55に供給絞り53Aの孔径d1より大きな異物等は混入せず、供給絞り53Aの目詰まりを防止することができる。また万一、供給絞り53Aの孔径d1より大きな異物が混入した場合でも、前述したように、共通液室55内にインクを流しながら、印字ヘッド50のノズル面50Aにキャップ64を密着させ、キャップ64のノズル51に対応する位置に図23中矢印Bの方向に圧力を加えることにより、供給絞り53Aの目詰まりを解消し、共通液室55から確実に異物を排出できる。
フィルタ158のメッシュサイズd0を供給絞り53Aの孔径d1よりも小さくすることにより、共通液室55に供給絞り53Aの孔径d1より大きな異物等は混入せず、供給絞り53Aの目詰まりを防止することができる。また万一、供給絞り53Aの孔径d1より大きな異物が混入した場合でも、前述したように、共通液室55内にインクを流しながら、印字ヘッド50のノズル面50Aにキャップ64を密着させ、キャップ64のノズル51に対応する位置に図23中矢印Bの方向に圧力を加えることにより、供給絞り53Aの目詰まりを解消し、共通液室55から確実に異物を排出できる。
一方、供給絞り53Aの孔径d1よりノズル51の孔径d2を大きくすることにより、供給絞り53Aを通過した異物等をノズル51から確実に排出することができる。
以上、本発明の液体吐出ヘッド及びこれを備えた画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…インクジェット記録装置、50…印字ヘッド、50A…ノズル面、50B…非ノズル面、51…ノズル、60…ノズル流路、52…圧力室、53…インク供給口、53A…供給絞り、55…共通液室、56…振動板(共通電極)、57…個別電極、58…圧電素子、62…バッファタンク、63…バッファタンク、64…キャップ、90…配線部材、91…配線プレート、92…フレキシブルケーブル、94…ノズルプレート、98…絶縁・保護膜、100…照射孔、102…封止部材、106…余剰接着剤、128…マスク、132…テレセントリックレンズ系、158…フィルタ、P1,P2,P3…ポンプ
Claims (9)
- 液体を吐出する複数の吐出口と、
前記複数の吐出口のそれぞれと連通する複数の圧力室と、
前記複数の圧力室の前記吐出口が形成される側とは反対側に設けられ、前記複数の圧力室のそれぞれを変形する圧電素子と、
前記圧力室の前記吐出口が形成される側とは反対側に設けられ、前記複数の圧力室に液体を供給する共通液室と、
前記共通液室の前記圧電素子側とは反対側に設けられ、前記圧電素子を駆動する回路に接続される前記共通液室の液を封止する封止部材と、
前記圧電素子が配置される面に対して略垂直方向に、その少なくとも一部が前記共通液室内を立ち上がるように形成され、前記圧電素子を駆動するための配線部材と、
前記共通液室と前記圧力室を連通するための連通流路が形成される位置の略真上の前記封止部材の少なくとも一部に、前記連通流路に対応した孔部と、を備え、
前記共通液室を形成した後に、前記孔部に対応した前記連通流路を形成したことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 請求項1に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記共通液室を形成して、前記共通液室の被膜処理をした後に、前記孔部に対応した前記連通流路の少なくとも一部を形成したことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 前記共通液室を形成した後に形成される前記連通流路は、供給絞りであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記配線部材は、前記圧電素子又は前記圧電素子の近傍から立ち上がるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記複数の吐出口は2次元的に配列され、前記複数の配線部材は前記圧電素子が配置される面に対して2次元的に配列されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
- 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記共通液室に液体を供給する供給口と、
前記共通液室に貯留される液体を排出可能な液体排出口と、
前記吐出口の形成される面に設けられ、前記吐出口内の液体に対して、前記吐出口から吐出される液体の飛翔方向と反対方向に圧力を加える押圧手段と、を備え、
前記吐出口の直径が、前記連通流路の直径よりも大きく形成されていることを特徴とする液体吐出装置。 - 前記共通液室の被膜処理は、前記供給口と前記排出口を用いて、前記共通液室に被膜処理剤を供給及び排出させて行われることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
- 前記被膜処理後に、前記供給口と前記排出口を用いて、前記被膜処理剤の乾燥処理を行うことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の液体吐出装置。
- 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド、又は請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の液体吐出装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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Cited By (2)
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JP2012245725A (ja) * | 2011-05-30 | 2012-12-13 | Ricoh Co Ltd | 液体吐出ヘッド、ヘッドカートリッジ、及び画像形成装置 |
JP2015136870A (ja) * | 2014-01-23 | 2015-07-30 | ブラザー工業株式会社 | 液体吐出装置、及び、液体吐出装置の製造方法 |
-
2004
- 2004-09-28 JP JP2004282650A patent/JP2006095770A/ja active Pending
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