JP2008246785A - ノズル板及び液体吐出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ノズルの流路抵抗を低減化してリフィルの高速化を実現するとともに、リフィル時の気泡の巻き込みを防止するノズル板及び液体吐出装置を提供する。
【解決手段】ノズル51の内側面51Aには、ノズル51の内側に向かって開いたテーパ形状を有する第1のテーパ部4Aとノズル51の内側に向かって絞られた形状を有する第2テーパ部4Bが形成される。ノズル開口部51Bから第1のテーパ部4Aが形成され、該第1のテーパ部4Aと連続して第2のテーパ部4Bが形成され、このようにして、第1のテーパ部4Aと第2のテーパ部4Bが交互に連続して形成される。ノズル51の内側面51Aには、第1のテーパ部4A及び第2のテーパ部4Bから成る鋸歯状の段差が少なくとも2つ形成される。
【選択図】 図2

Description

本発明はノズル板及び液体吐出装置に係り、特にリフィル動作を高速化することにより高い吐出周波数で液体の吐出が可能なノズル板及び液体吐出装置に関する。
一般に、汎用の画像形成装置として、インクジェットヘッドに備えられた多数のノズルから記録媒体上にインク液滴を吐出して所望の画像を形成するインクジェット記録装置が広く用いられている。インクジェットヘッドの吐出周期を短縮化してインク吐出を高速化するためには、インク液滴を吐出した後に速やかにインクを充填(リフィル)し、次のインク吐出に備える必要がある。
一方、近年は高画質化のためにノズル開口径が小さくなる傾向にあり、例えば、直径が20μmのノズルを備えたインクジェットヘッドが実用化されているが、ノズル開口径が小さくなるとノズルの流路抵抗が増加してしまい、リフィルにかかる時間が長くなり、吐出周期を短縮できないという問題が生じている。
このようなリフィルにかかる時間が長くなるという問題を解決するために、ノズルの開口径を吐出側(ノズル開口部側)から液室側(ノズルの内部側)に向かって大きくなるように形成されたテーパ形状のノズルが提案されている。上述したノズルのテーパ形状を広角化する(吐出側の開口径と液室側の開口径の差がより大きくなる形状にする)ことで、ノズルの流路抵抗を低減化して液面形状の表面張力を増加させ、リフィル速度の向上を図る技術が提案されている。
特許文献1に記載された発明では、ノズルのテーパ面に径の変化角度が不連続に変化する不連続点が1つ存在し、テーパ形状自体の角度が小さくてもインク流入側の径とインク吐出側の径との差が大きくなって、安価で且つ優れたインク液滴吐出性能が実現されている。
特許文献2に記載された発明では、ノズル形状が2層以上の形状を持つとともに隣接する相のノズル形状は異なるように構成され、飛翔粒子の方向性、安定性の確保及び速度向上を達成するとともに駆動電圧の低減が実現されている。
特開2002−137381号公報 特開平7−60973号公報
しかしながら、テーパ形状を広角化すると、吐出前にノズル内に液面を引き込んだ時に液面が球面状態となってしまい(図12参照)、ノズル内に気泡が混入しやすくなってしまう。即ち、ストレート形状のノズルは開口部の径が最も大きく(ノズルの全長において開口部の径と同一径)、気泡が抜けやすい構造であり、気泡を巻き込む可能性が低いといえるが(図13参照)、図12に示すテーパ形状のノズル151は、気泡ポケット100(液柱102の周囲部に形成される液面の凹部形状)がノズル151の内部に向かって広がってしまい、吐出完了後にこの気泡ポケット100が閉じて気泡となりノズル151の内部に残存してしまう。
特許文献1に記載された発明では、テーパ形状の角度が小さいとノズルの流路抵抗を低減化することができず、リフィルの高速化を実現することが困難であり、一方、テーパ形状を広角化すると上述したようにノズル内部への気泡の巻き込みが懸念される。
特許文献2に記載された発明では、ノズル開口部の近傍がストレート形状となっているので、ノズルの流路抵抗を低減化することができず、リフィルの高速化を実現することが困難である。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ノズルの流路抵抗を低減化してリフィルの高速化を実現するとともに、リフィル時の気泡の巻き込みを防止するノズル板及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るノズル板は、液体を吐出するノズルが形成されたノズル板であって、前記ノズルは、液体吐出面側から前記ノズルの内側に向かって開いた形状を有する第1の面と前記液体吐出面側から前記ノズルの内側に向かって絞られた形状を有する第2の面が液体吐出面側から前記第1の面、前記第2の面の順に連続して設けられた構造を2つ以上有し、前記第1の面の前記液体吐出方向の長さaと、前記第2の面の前記液体吐出方向の長さbと、の関係は、次式、a>b>0を満たすことを特徴とする。
本発明によれば、ノズルの内側面を液体吐出方向と直交する面に対して非対称な鋸歯形状とすることで、ノズル内のインクの表面張力が上昇し、リフィルの高速化が見込まれるとともに、リフィル時におけるノズルの内部への気泡混入が防止される。
また、第1の面にメニスカス面が存在する時間が第2の面にメニスカス面が存在する時間より大きくなり(即ち、メニスカスと液体吐出面(水平面)とのなす角が上下非対称となり)、その結果、メニスカスと液体吐出面とのなす角が大きくなる時間が増えるためリフィルが高速化される。
ノズルの液体吐出方向の長さlと、前記第1の面の垂直方向の長さaと、前記第2の面の垂直方向の長さb、との関係は、次式、l≧2×(a+b)を満たす態様が好ましい。
前記ノズルの内側面の液体吐出方向と平行な面を断面とする断面形状における第1の面及び第2の面は、直線でもよいし曲線でもよい。
また、上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明に係るノズル板は、液体を吐出するノズルが形成されたノズル板であって、前記ノズルは、液体吐出面側から前記ノズルの内側に向かって開いた形状を有する第1の面と、前記液体吐出方向と直交し、前記液体吐出面に形成された開口を前記液体吐出方向に投影した位置に開口が形成される第2の面が液体吐出面側から前記第1の面、前記第2の面の順に連続して設けられた構造を2つ以上有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、第2の面の液体吐出方向の長さbをb=0とすると、内側面が液体吐出方向に非対称鋸歯形状を有するノズルの流路抵抗を最小にすることができ、リフィル高速化の点において好ましい。
第2の面に形成される開口は、液体吐出面に形成される開口を液体吐出方向と平行にノズルの内側に投影した開口とする態様が好ましい。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載のノズル板の一態様に係り、前記ノズルの内側面は、前記液体吐出面に形成された開口から前記第1の面が形成されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、液体吐出面から液体吐出方向と平行方向に形成されるストレート形状の部分を持たないので、ノズルの流路抵抗が低減化される。
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3記載のノズル板の一態様に係り、前記ノズルの前記液体吐出方向と平行な面を断面とする断面形状において、前記第1の面の前記液体吐出面側の端部を結んだ線及び前記第1の面の前記液体吐出面と反対側の端部を結んだ線は、前記液体吐出方向と平行であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、平均のノズル径が一定になるので、ノズル内へ気泡が混入しにくくなる。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載のノズル板の一態様に係り、前記第1の面の前記液体吐出面側の端部における前記ノズルの半径rと、前記第1の面の前記液体吐出面と反対側の端部における前記ノズルの半径rと、の関係は、次式r/r≦1.2を満たすことを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、第1の面と第2の面から構成される段差部(液体吐出側が第1の面、ノズル内部側が第2の面となるノズル径の最大位置を含む凹んだ空間)への気泡残留を防ぐとともにリフィル時間を短縮できる。
段差部が大きすぎると(r/rが大きくなると)、リフィルの時にメニスカス面が段差部を飛び越えて次の段差部に到達してしまい、段差部の奥に気泡が入り込んでしまうので、段差の大きさ(r/r)は1.2以下とすることで段差部の奥の方へ気泡が入り込むことを防止できる。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載のノズル板の一態様に係り、前記ノズル内に形成されるメニスカス面と前記液体吐出面とのなす角θは、次式0<θ<90°を満たすことを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、ストレート形状を有するノズルと比較するとメニスカス面と水平面とのなす角θは擬似的に大きくなるので、液体の表面張力による発生圧力が大きくなり、リフィルが高速化される。
また、上記目的を達成するために、請求項7に記載の発明に係る液体吐出装置は、請求項1乃至6のうち何れか1項に記載のノズル板と、前記ノズルから吐出される液体に吐出力を付与する吐出力付与手段と、を具備する液体吐出ヘッドと、前記ノズル内のメニスカス面を静定状態から前記ノズルの内部に引き込んだ後に前記メニスカス面を前記ノズルの外側へ押し出し、更に、前記メニスカス面を前記ノズルの外側へ押し出した後に再び前記メニスカス面を前記ノズルの内部方向に引き込むように前記吐出力付与手段を制御する吐出制御手段と、を備えたことを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、引き−押し−引き方式によってノズルから液体を吐出する場合において、リフィルを高速化することができるとともに、リフィル時のノズル内部への気泡の巻き込みを回避でき、高速且つ安定した好ましい液体吐出を実現することができる。
本発明によれば、ノズルの内側面を液体吐出方向に非対称な鋸歯形状とすることで、ノズル内のインクの表面張力が上昇し、リフィルの高速化が見込まれるとともに、リフィル時におけるノズルの内部への気泡混入が防止される。
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔ヘッドの構造〕
図1は、本発明に係るノズル板1を用いた液体吐出ヘッド(以下、ヘッドと記載する。)50の立体構造を示す断面図である。
図1に示すヘッド50は、ノズル51となる開口が形成されたノズル板1と、ノズル51に対応して設けられる圧力室52及び供給口54を介して圧力室52と連通する共通流路55が形成される流路プレート2と、圧力室52の天井面を形成する振動板56と、下部電極(図1に示すヘッド50では振動板56と兼用)を備えるとともに、下部電極と反対側の面に個別(上部)電極57を備えた圧電素子58と、を順に積層した構造を有している。
圧電素子58の個別電極57に駆動電圧(駆動信号)を印加することによって圧電素子58及び振動板56が変形すると、圧力室52に収容される液体がノズル51から吐出される。ノズル51から液体が吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しい液体が圧力室52に供給される。
図1に示すヘッド50が液体を吐出させるために、圧電素子58の上部電極57と下部電極(振動板56)間に印加される駆動電圧には、Pull-Push-Pull方式(引き−押し−引き方式)が適用される。
Pull-Push-Pull方式の駆動電圧を圧電素子58に印加すると、第1の引き電圧(Pull電圧)印加時には、静定状態の圧電素子58は圧力室52を静定状態よりも拡張する方向に動作し、その後、押し電圧(Push電圧)を印加すると拡張した圧力室52を縮小する方向に動作する。このように圧電素子58を動作させると、圧力室52内の液体が液柱状となってノズル51の外部に押し出される。
更に、第2の引き電圧(Pull電圧)を印加すると、圧電素子58は押し電圧の印加終了よりも圧力室52を拡張させるように動作して、ノズル51の外部に押し出された液柱状の液体をノズル51の内部に引き込むことで、ノズル51の外部の液柱の一部が引きちぎられ液滴となって吐出される。
また、第2の引き電圧印加時には、吐出された液滴と同量の液体が共通流路55から供給口54を介して圧力室52に充填され、その後、メニスカス面が所定の位置に静定すると次の吐出が可能になる。
図2は、図1のノズル51(図1中、符号3で示す部分)を拡大して図示した拡大図である。図2に示すように、液体吐出方向(図2中下から上に向かう方向)と平行な面を断面とする断面形状において、ノズル51の内側面51Aは、上下方向に非対称な鋸歯状(液体吐出方向と直交する面に対して液体吐出方向の形状及び反対方向の形状が非対称な鋸歯状)となっている。即ち、ノズル板1の外側面(ヘッド50の最外面)であるとともに液室プレート2が接合される面と反対側の面である液体吐出面1Aには、半径rの開口部51Bが形成されるとともに、開口部51Bからノズル51の内側へ半径がrからr(但し、r<r)まで連続的に変化する、ノズル51の内側に向かって開いたテーパ形状を有する第1のテーパ部4Aと、第1のテーパ部4Aの開口部51Bと反対側の端部からノズル51の内側へ半径がrからrまで連続的に変化する、ノズル51の内側に向かって絞られたテーパ形状を有する第2のテーパ部4Bが形成されている。
更に、ノズル51の内側に向かって、1段目の第2のテーパ部4Bのノズル51の内側には第1のテーパ部4Aが形成され、更にまた、2段目の第1のテーパ部4Aのノズル51の内側には2段目の第2のテーパ部4Bが形成されている。
図2に示す態様では、半径rを有するノズル51の開口部51Bからノズル51の内側に向かって第1のテーパ部4Aが形成され、半径rを有する第1のテーパ部のノズル開口部51Bと反対側の端部には、半径rを有する第2のテーパ部4Bの一方の端部が接合される。更に、該第2のテーパ部4Bの半径rを有する他方の端部には、2段目の第1のテーパ部4Aの半径r側の端部が接合され、以降、2段目の第2のテーパ部4B、3段目の第1のテーパ部4A、…、のように第1のテーパ部4Aと第2のテーパ部4Bが連続して交互に形成される。
言い換えると、ノズル51の内側面51Aは、液体吐出面1A側から第1のテーパ部4Aと第2のテーパ部4Bから成る非対称の鋸状の段差が形成されるとともに、該段差が2つ以上形成された形状を有している。
本例に示すノズル51は、最大半径となる鋸歯形状の頂点を結んだ線と、最小半径となる鋸歯形状の頂点を結んだ線と、は、ノズル51の形成方向(即ち、液体吐出方向)と平行となるように、第1のテーパ部4Aと第2のテーパ部4Bから成る非対称の鋸状の段差が形成されている。また、図2に示す断面図において、ノズル51の内側面はノズル51の中心を通る液体吐出方向に平行な線に対して線対称形状(即ち、非螺旋形状)となっている。
図2に示すノズル51の内径(ノズル51の最小半径)rとノズル51の外径(ノズル51の最大半径)rとの具体例を挙げると、r=20μm、r=24μmとする態様がある。即ち、ノズル51の内径rとノズル51の外径rとの関係は、次式(1)を満たす態様が好ましい。
/r≦1.2 …(1)
即ち、ノズル51の外径rはノズル51の内径rによりも20%以内の範囲で大きく形成される態様が好ましい。
図2では、ノズル51の開口部51Bからノズル51の内側に向かって第1のテーパ部4A、第2のテーパ部4Bの順に上下方向に非対称な鋸歯形状を形成したが、ノズル51の開口部51Bからノズル51の内側に向かって第2のテーパ部4B、第1のテーパ部4Aの順に上下方向に非対称な鋸歯形状を形成してもよい。
また、図2には、ノズル51の内側面51Aの形状として、第1のテーパ部4A及び第2のテーパ部4Bの断面(ノズル板1をノズル51の形成方向に切断した断面)形状が略直線状の鋸歯形状を例示したが、第1のテーパ部4A及び第2のテーパ部4Bの断面形状が曲線状となる波型形状を適用してもよい。
図3(a)は、図2に示す内側面形状を有するノズル51内にメニスカス面5がクリップされた状態を表す概念図である。図3(a)に示すように、第1のテーパ部4Aでメニスカスがクリップされると、図3(b)に示すストレート形状のノズル51’と比較して、メニスカス面5と水平面6(図2に示す液体吐出面1Aと平行な面)とのなす角θが擬似的に大きくなるために、図3(b)に示すストレート形状のノズル251よりも液体の表面張力による発生圧力Pが大きくなり、図3(b)に示すストレート形状のノズル251と比較してリフィルが高速化される。
なお、液体の表面張力による発生圧力Pnは、次式(2)で表される。なお、式(2)中、σは液体の表面張力、r(r≦r≦r)はメニスカスのクリップ位置におけるノズルの半径である。
Pn=(2×σ×sinθ)/r …(2)
即ち、図3(a)に示す上下方向に非対称な鋸歯状の形状のノズル51のメニスカス面5と水平面6とのなす角θと、図3(b)に示すストレート形状のノズル251のメニスカス面5と水平面6とのなす角θ’は、次式(3)の関係を満たすので、上下方向に非対称な鋸歯状の形状を有するノズル51では、ストレート形状のノズル251に比べて(2)式で表される液体の表面張力が大きくなることでメニスカス面の戻り(静定)が早くなり、リフィルを高速化することができる。
θ>θ’ …(3)
また、図12に示す段差のないテーパ形状のノズル151と比較して、図3(a)に示す上下方向に非対称な鋸歯状の形状のノズル51は平均のノズル径が一定となり、図4に示すように気泡ポケット100がノズル51の内部に向かって広がらない凹状態(凹形状)となり、リフィル時におけるノズル51の内部への気泡混入が制御され、ノズル51内部への気泡混入が防止される。
また、メニスカス面5と水平面6とのなす角θは、次式(4)
の条件を満足する。
0<θ<90° …(4)
図12に示すような段差のないテーパ形状を有するノズル151では、メニスカス静定時にメニスカス面5と水平面6とのなす角θが90°以上になり、気泡の巻き込み効果が低下してしまうので、メニスカス面5と水平面6とのなす角θが式(4)の条件を満足するようにノズル51の内側面51Aには第1テーパ部4A及び第2テーパ部4Bが形成される。
上記(4)式に示す条件を満たすためには、ノズル51の内側面に対する液体の接触角が90°未満であることが必要である。この条件は、本発明に関わらず一般的なインクジェットヘッドにおけるノズルの条件である。
また、上記(4)式に示す条件を満たすためには、水平面6と第1のテーパ部4Aとのなす角γと、第1のテーパ部4Aに対するインクの接触角λとの関係が、次式(4’)を満たすことが必要となる。
90°<γ+λ<180° …(4’)
即ち、使用し得るすべての種類のインクにおいて、上記(4)式及び(4’)式を満たすようにノズル51は構成される。
なお、メニスカス面5は、ノズル51の開口部51B(図2参照)近傍(ノズル51の開口部51Bを一方の端部とする1段目の第1のテーパ部4A)にクリップされ、1段目の段差(第1のテーパ部と第2テーパ部の接合部)を超えないことを基本とするが、仮に、段差を超えた場合にも、第1のテーパ部4Aでクリップされる。
メニスカス面の引き込み速度が所定の速度を超えて、第1の段差がメニスカス面をクリップする力を超えた場合には、メニスカス面が段差を超えてしまうことがあり得るので、第1のテーパ部4Aでメニスカス面をクリップさせるためには、メニスカス面の引込速度はメニスカス面を引く強さとメニスカス面を引く時間の長さで決まるので、メニスカス面の引く強さを抑えるか、もしくは時間を短くするように構成する。
図5は、図2に示すノズル51の内側面51Aの一部を更に拡大し、第1のテーパ部4Aと第2のテーパ部4Bから成る鋸状の段差を図示した拡大図である。
図5に示すように、第1テーパ部4Aのノズル51の形成方向(垂直方向、ノズル板1の厚みの方向)の長さaと、第2のテーパ部4Bのノズル51の形成方向の長さbは、次式(5)の関係を満たしている。
a>b≧0 …(5)
なお、図6に示すように、第2のテーパ部4Bを液体吐出面1Aと平行とする(b=0とする)態様も好ましい。第2のテーパ部4Bのノズル51の形成方向の長さbが相対的に大きくなると、リフィルにかかる時間が長くなるという関係があるので、リフィル時間の短縮化の観点では、第2のテーパ部4Bのノズル51の形成方向の長さbは0であることが好ましい。
第1テーパ部4Aのノズル51の形成方向の長さaと、第2のテーパ部4Bのノズル51の形成方向の長さbの一例を挙げると、a=7μm、b=3μmが挙げられる。
一方、b>0とすることで、第1のテーパ部4Aと第2のテーパ部4Bから構成される段差部4C(図5参照)の奥の方に気泡が残りにくくなるので、段差部4Cに気泡を侵入させないという観点では、b>0とする態様が好ましい。
また、第1テーパ部4Aのノズル51の形成方向(垂直方向、ノズル板1の厚みの方向)の長さaと、第2のテーパ部4Bのノズル51の形成方向の長さbは、ノズル51の流路長(ノズル板1におけるノズル51の流路長、即ち、ノズル板の厚み)をlとすると、次式(6)の関係を満たしている。
l≧2×(a+b) …(6)
即ち、式(6)は、鋸歯状の段差が2段以上含まれていることを示している。
上記の如く構成されたノズル板1を備えたヘッド50によれば、ノズル51の内側面を上下方向に非対称な鋸歯形状とすることで、メニスカスの表面張力が上昇し、リフィルが高速化(リフィル時間が短縮)される。また、ノズル51の平均半径が一定となるために、図12に示すテーパ形状を有するノズル151に比べて気泡が混入しにくい。
〔ノズル板の製造方法〕
ノズル板1の製造方法の一例を挙げると、第1のテーパ部4Aが形成された第1のプレートと、第2のテーパ部4Bが形成された第2のプレートとを、それぞれ電鋳法などの薄膜形成方法を用いて複数作成し、これらを交互に接合してノズル板1を製造する方法が挙げられる。
〔装置の全体構成〕
次に、本発明に係るノズル板1を用いたヘッド(インクジェットヘッド)50を搭載した装置の一例として、記録媒体上に吐出したカラーインクにより所望のカラー画像を形成するインクジェット記録装置(画像形成装置)の全体構成を説明する。図7は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。
同図に示すように、このインクジェット記録装置10は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェットヘッド(以下、ヘッドという。)12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録媒体たる記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、各ヘッド12K,12C,12M,12Yのインク吐出面(ノズル形成面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
なお、図7に示すヘッド12K,12C,12M,12Yは、図1に示すヘッド50と同等のものであり、ここでいうインクは図4等に図示した液体と同等のものである。
インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するインク供給タンクを有し、各色のインクは所要のインク流路を介してヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。
また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。なお、図7に示すインク貯蔵/装填部14を含むインク供給系の詳細は後述する。
図7では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図7のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図7に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによって記録紙16がベルト33上に吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図7中不図示、図11に符号88で図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図7上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図7の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が染み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12の各ヘッド12K,12C,12M,12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録紙16の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図8参照)。
ヘッド12K,12C,12M,12Yは、記録紙16の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド12K,12C,12M,12Yが記録紙16の搬送方向(以下、紙送り方向と記載)延在するように固定設置される。
吸着ベルト搬送部22により記録紙16を搬送しつつ各ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12K,12C,12M,12Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。更に、記録紙16に処理液とインクとを付着させた後に、記録紙16上でインク色材を凝集又は不溶化させて、記録紙16上でインク溶媒とインク色材とを分離させる2液系のインクジェット記録装置では、処理液を記録紙16に付着させる手段としてインクジェットヘッドを備えてもよい。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他吐出異常をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたR受光素子列と、緑(G)の色フィルタが設けられたG受光素子列と、青(B)の色フィルタが設けられたB受光素子列と、から成る色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色のヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッド12K,12C,12M,12Yの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドットの着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部24の後段には後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
加熱・加圧部44によって記録紙16を押圧すると、多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
図9(a)は、ヘッド12K,12C,12M,12Y(ヘッド12K,12C,12M,12Yは同一構造を有するので、以下、ヘッド50と記載する。)の構造例を示す平面透視図であり、図9(b)はその一部の拡大図である。また、図9(c)はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図である。
記録紙16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図9(a),(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録紙16の送り方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図9(a)の構成に代えて、図9(c)に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドブロック50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55(図1参照)と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインク供給タンク(図9(a)〜(c)中不図示、図10中符号60として記載)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは図1の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
かかる構造を有するインク室ユニット53を図9(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度αを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度αの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosαとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録紙16の幅方向の長さに満たない短尺のヘッドを記録紙16の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録紙16を幅方向と直交する方向に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録紙16の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録紙16の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
〔インク供給系の構成〕
図10は、インクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インク供給タンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図7で説明したインク貯蔵/装填部14に含まれる。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図10に示したように、インク供給タンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図10には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(圧電素子58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電素子58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
また、ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、圧電素子58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構(ワイパー)によりヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。なお、該ブレード機構によりインク吐出面の汚れを清掃した際に、該ブレードによってノズル51内に異物が混入することを防止するために予備吐出が行われる。
〔制御系の説明〕
図11はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。
画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
画像メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、画像メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバである。図11には、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号88で図示されている。例えば、図11に示すモータ88には、図7のローラ31(32)を駆動するモータや、図10のキャップ64を移動させる移動機構のモータ、図10のクリーニングブレード66を移動させる移動機構のモータなどが含まれている。
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって、図7に示す加熱ファン40の熱源たるヒータや、後乾燥部42のヒータなどを含むヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる画像データに基づいてヘッド50の圧電素子58に印加される駆動信号(駆動電圧)を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子58に印加して圧電素子58駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図11に示すヘッドドライバ84には、ヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図7で説明したようにラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいてヘッド50に対する各種補正やヘッド50のメンテナンスを行う。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データが画像メモリ74に記憶される。
画像メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてインク色ごとのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをKCMYの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
なお、本発明の適用として、インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はインクジェット記録装置(インクジェットヘッド)に限定されず、薬液、処理液、水など液体を吐出する液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置に広く適用することが可能である。
本発明に係るノズル板を用いたヘッドの断面図 図1に示すノズルの拡大図 図2に示すノズル内側面の拡大図 本発明の効果を説明する図 上下非対称の鋸歯形状の詳細構造を説明する図 図2〜図5に示す上下非対称の鋸歯形状の他の態様を説明する図 本発明に係るノズル板を用いたヘッドが搭載される装置(インクジェット記録装置)の全体構成図 図7に示すインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図 図7に示すヘッドの構造例を示す平面透視図 図7に示すインクジェット記録装置のインク供給系の構成を示す概要図 図7に示すインクジェット記録装置の制御系の構成を示す概要図 従来技術に係るテーパ形状を有するノズルの断面図 従来技術に係るストレート形状を有するノズルの断面図
符号の説明
1…ノズル板、4A…第1のテーパ部、4B…第2のテーパ部、10…インクジェット記録装置、12K,12C,12M,12Y,50…ヘッド、51…ノズル、52…圧力室

Claims (7)

  1. 液体を吐出するノズルが形成されたノズル板であって、
    前記ノズルは、液体吐出面側から前記ノズルの内側に向かって開いた形状を有する第1の面と前記液体吐出面側から前記ノズルの内側に向かって絞られた形状を有する第2の面が液体吐出面側から前記第1の面、前記第2の面の順に連続して設けられた構造を2つ以上有し、
    前記第1の面の前記液体吐出方向の長さaと、前記第2の面の前記液体吐出方向の長さbと、の関係は、次式、
    a>b>0
    を満たすことを特徴とするノズル板。
  2. 液体を吐出するノズルが形成されたノズル板であって、
    前記ノズルは、液体吐出面側から前記ノズルの内側に向かって開いた形状を有する第1の面と、前記液体吐出方向と直交し、前記液体吐出面に形成された開口を前記液体吐出方向に投影した位置に開口が形成される第2の面が液体吐出面側から前記第1の面、前記第2の面の順に連続して設けられた構造を2つ以上有することを特徴とするノズル板。
  3. 前記ノズルの内側面は、前記液体吐出面に形成された開口から前記第1の面が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のノズル板。
  4. 前記ノズルの前記液体吐出方向と平行な面を断面とする断面形状において、前記第1の面の前記液体吐出面側の端部を結んだ線及び前記第1の面の前記液体吐出面と反対側の端部を結んだ線は、前記液体吐出方向と平行であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のノズル板。
  5. 前記第1の面の前記液体吐出面側の端部における前記ノズルの半径rと、前記第1の面の前記液体吐出面と反対側の端部における前記ノズルの半径rと、の関係は、次式
    /r≦1.2
    を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載のノズル板。
  6. 前記ノズル内に形成されるメニスカス面と前記液体吐出面とのなす角θは、次式
    0<θ<90°
    を満たすことを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載のノズル板。
  7. 請求項1乃至6のうち何れか1項に記載のノズル板と、
    前記ノズルから吐出される液体に吐出力を付与する吐出力付与手段と、
    を具備する液体吐出ヘッドと、
    前記ノズル内のメニスカス面を静定状態から前記ノズルの内部に引き込んだ後に前記メニスカス面を前記ノズルの外側へ押し出し、更に、前記メニスカス面を前記ノズルの外側へ押し出した後に再び前記メニスカス面を前記ノズルの内部方向に引き込むように前記吐出力付与手段を制御する吐出制御手段と、
    を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
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