JP2006090073A - 補強土壁用壁面材の接続構造とそれに用いられる壁面材 - Google Patents

補強土壁用壁面材の接続構造とそれに用いられる壁面材 Download PDF

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康博 望月
Akihiro Kitamura
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Abstract

【課題】 コンクリート製の壁面材を用いつつ簡易な構成および施工で、強固で安定した補強土壁を構築するために、上下の壁面材同士の接続構造の提供。
【解決手段】 上側の壁面材2の下面には、その厚さ方向中央部に、円弧状に下方へ膨出する凸部7が、壁面材2の幅方向に沿って形成されている。下側の壁面材2の上面には、その厚さ方向中央部に、前記凸部7の円弧よりも緩やかな円弧にて下方へ窪んだ凹部10が、壁面材2の幅方向に沿って形成されている。上下の壁面材2,2は、下側の壁面材2の凹部10に、上側の壁面材2の凸部7を配置して、ゴム板13を介して上下に積み重ねられ、厚さ方向中央部まわりの移動を許容される。後方の隙間には、発泡樹脂14が充填され、さらに不織布15にて覆われる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、垂直または傾斜状の法面を形成し維持するための補強土壁構築具(補強土壁構築部材)に関するものである。特に、その壁面材同士の上下の接続構造(継手構造)と、その接続構造にて上下に積み重ね可能な補強土壁用壁面材に関するものである。なお、補強土壁は、擁壁、土留構造壁、盛土壁などと呼ぶこともできる。
従来、テールアルメ工法やジオテキスタイル工法に代表される補強土壁の構築方法が知られている。これらは、壁面を構成する壁面材と、この壁面材に連結されて盛土内に埋設される補強材とから構成される。そして、壁面材としてコンクリートパネルを用いる工法は、外観上安定感があり、都市部において多く使用されている。
コンクリート部材を壁面材に使用する工法では、上下の壁面材同士は、従来、図4(a)〜(c)に示すような構造にて接続されている。すなわち、同図に示すように、凹凸やホゾを介して接合し、またその接合部に緩衝材XやジベルYを配置することが行われている。
コンクリート製の壁面材を用いた場合、壁面材は剛性が高く変形しないが、その壁面材の後方の盛土は容易に変形し得るものである。そして、特に現地発生土を盛土材として転用した場合、経済的にはメリットはあるが、粘土分が多く含まれるなど圧縮性が大きいと、沈下を起こし易い。さらに、一般的に、基礎地盤の沈下は、盛土の前後方向中央付近で大きく発生し、壁面材付近では小さなものとなる。いずれにしても、盛土部の沈下量に対して壁面部の沈下量は少なく、壁面材には、盛土に埋設される補強材との連結部に、過大な集中応力が作用するおそれがある。
さらに、隣接する壁面材同士は、ボルト結合などによって相互に連結されていない。そのため、盛土が壁面へ向けて移動しようとする際、壁面を外方へ押し出すようにはらませ、壁面材の目地に不揃いを生じさせていた。すなわち、従来の構成では、図5に示すように、上側の壁面材は、その前方下端部まわりに回転するように、前倒れしてはらみ出し、その後方において下方の壁面材から浮き上がった状態で目開きするものであった(図5における符号Z)。
しかも、コンクリート製壁面材の厚さは、通常、14cm〜22cmと厚いので、目開きが生じると、実質的な壁面高さを延伸させ、補強材と壁面材との相対的な位置ズレを増大化するものであった。そのため、前記連結部への過大な応力集中が作用する他、コンクリート部材の角欠けなどの欠損を生じることもあった。
本発明が解決しようとする課題は、コンクリート製の壁面材を用いつつ簡易な構成および施工で、強固で安定した補強土壁を構築することにある。特に、壁面の変位によっても補強材連結部との相対的な位置ズレを少なくし、また壁面材とその補強材との連結部に作用する力を軽減し、また壁面材の欠損を防止することを課題とする。
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、コンクリート製の壁面材を用いた補強土壁における上下の壁面材同士の接続部の構造であって、上下の壁面材同士は、その厚さ方向中央部まわりの移動を許容されて積み重ねられることを特徴とする補強土壁用壁面材の接続構造である。
請求項2に記載の発明は、コンクリート製の壁面材を用いた補強土壁における上下の壁面材同士の接続部の構造であって、上側の壁面材の下端部は、下側の壁面材の上端部に、厚さ方向中央部において前後方向への傾きを許容された状態で支持されて積み重ねられることを特徴とする補強土壁用壁面材の接続構造である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の構成要件に加えて、上側の壁面材の下端部と下側の壁面材の上端部は、厚さ方向中央部に設けられた凹凸部または弾性材のいずれか一方または双方を介して当接されると共に、厚さ方向両端部に隙間を空けて配置され、少なくとも後面側の隙間に、前記弾性材よりも軟らかい材料が詰められることを特徴とする補強土壁用壁面材の接続構造である。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の構成要件に加えて、上下いずれか一端面には、その厚さ方向中央部に、円弧状に外方へ膨出する凸部が、壁面材の幅方向に沿って形成されており、上下いずれか他端面には、その厚さ方向中央部に、前記凸部の円弧よりも緩やかな円弧にて内方へ窪んだ凹部が、壁面材の幅方向に沿って形成されており、上下の壁面材は、一方の壁面材の前記凹部に他方の壁面材の前記凸部を配置して、上下に積み重ねられることを特徴とする補強土壁用壁面材の接続構造である。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成要件に加えて、前記凹部に板状の硬質ゴムが配置され、この硬質ゴムを介して前記凹部に前記凸部が突き合わせられ、上下の壁面材の接続部に、その後方に形成される隙間に発泡樹脂が充填され、この充填部を覆うように、上下の壁面材の後面に不織布が設けられることを特徴とする補強土壁用壁面材の接続構造である。
さらに、請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の構成要件に加えて、上下いずれか一端面に前記凸部が形成され、上下いずれか他端面に前記凹部が形成されたコンクリートパネルからなることを特徴とする補強土壁用壁面材である。
本発明の接続構造によれば、コンクリート製の壁面材を用いつつ簡易な構成および施工で、強固で安定した補強土壁を構築することができる。特に、壁面の変位によっても補強材連結部との相対的な位置ズレを少なくし、また壁面材とその補強材との連結部に作用する力を軽減し、また壁面材の欠損を防止することができる。
以下、本発明の補強土壁用壁面材の接続構造とそれに用いられる壁面材について、実施例に基づき更に詳細に説明する。
図1は、本発明の接続構造の一実施例が適用された補強土壁を示す断面図である。この図に示すように、本実施例の補強土壁は、コンクリート基礎1上に、コンクリート製の壁面材2,2…が積み重ねられ、その壁面材2の後方領域には盛土3が施されて構成される。盛土3内には、補強材としてのチェーン4などが伸長状態で埋設されている。このチェーン4は、一端部が壁面材2に接続され、他端部は、順次層状に締め固められる盛土3にアンカー5にて保持される。そして、補強土壁の最上部には、笠コンクリート6が設けられている。
本実施例の壁面材2は、略矩形板状のコンクリートパネルから構成される。この壁面材2は、上下に積み重ね可能とされる。つまり、下側の壁面材2の上面に、上側の壁面材2の下面を載せて積み重ね可能である。本発明の接続構造は、そのような上下の壁面材2,2同士の接続部に適用される。たとえば、図1において、最下部の一段目の壁面材2Aとその上部の二段目の壁面材2との接続部、あるいは、二段目の壁面材2とその上部の三段目の壁面材2との接続部などに適用される。このようにして、基本的には同一形状の壁面材2が上下に積み重ねられるが、最下段の壁面材2Aは、下面が水平面とされたものが使用され、最上段の壁面材2Bは、上面が水平面とされたものが使用される。
図2は、本実施例の接続構造を示す概略断面図である。この図に示すように、壁面材2には、その下面の厚さ方向中央部に、緩やかな円弧状に下方へ膨出する凸部7が、壁面材2の幅方向に沿って形成されている。さらに、壁面材2の下面には、前記凸部7の基端部に水平面8,8が形成され、前後面との角部が傾斜面9,9に形成されている。
また、壁面材2は、その上面の厚さ方向中央部に、緩やかな円弧状に下方へ窪んだ凹部10が、壁面材2の幅方向に沿って形成されている。この凹部10の円弧は、前記凸部7の円弧よりも緩やかな円弧に形成されている。具体的には、凹部10の円弧の曲率半径は、凸部7の曲率半径の例えば二倍程度に設定される。なお、凸部7および凹部10は、壁面材2の厚さ方向中央線を境に、前後対称(図2において左右対称)形状に形成されている。さらに、壁面材2の上面には、前記凹部10の前後端部に水平面11,11が形成され、前後面との角部が傾斜面12,12に形成されている。
このようにして、本実施例では、上面に前記凹部10が形成されると共に、下面に前記凸部7が形成された壁面材2が使用される。なお、最下段の壁面材2Aは、上面に前記凹部10が形成されているが下面は水平面とされ、最上段の壁面材2Bは、下面に前記凸部7が形成されているが上面は水平面とされたものが使用されることは、前述したとおりである。
さて、本実施例の各壁面材2を上下に積み重ねると、その接続部は図2に示すように、下側の壁面材2の上面の凹部10に、上側の壁面材2の下面の凸部7が載せられて設置される。その際、凹部10には、緩衝材としてのゴム板13を貼り付けるなどして設けておき、そのゴム板13を介して上側の壁面材2を載せるのがよい。このゴム板13は、硬質ゴムからなり、壁面材2の幅方向に沿って前記凹部10に設けられる。
凹部10に凸部7を配置して、壁面材2,2を上下に積み重ねた状態では、上下の壁面材2,2はゴム板13を介して、厚さ方向中央部において当接し、水平面8,11同士は離隔して、厚さ方向両端部には隙間を空けて配置される。壁面材2の後面には盛土3がなされるので、その土砂が壁面材2,2同士の接続部に侵入するのを防止するために、少なくとも後方の隙間には、発泡樹脂14が充填される。さらに、この充填部を覆うように、上下の壁面材2,2の接続部付近には、各壁面材2,2の後面に沿って、透水性を持つ不織布15が貼られる。
このような構成であるから、図2において二点鎖線で示すように、上側の壁面材2は、下側の壁面材2に対し、厚さ方向中央部において前後方向への傾きを許容される。つまり、上側の壁面材2は、その厚さ方向中央部の凸部7の先端部(下端部)まわりに、僅かに前後に回転可能とされる。このようなナックルジョイントによる継手により、コンクリート製の壁面材2がはらみ出しなどの変位をしようとすれば、壁面材2の厚さ方向中央部まわりに滑らかに回転し、壁面高さの延伸が防止される。また、壁面材2の角部の欠損も防止される。なお、スライドジョイント16(壁面材2の後面に設けたブラケット16aに、上下方向に長穴16bを形成し、その長穴16bの上部にチェーン4を連結)などにより、チェーン4の一端部を壁面材2に対し所望時に下方への移動を許容するよう接続しておけば、上記効果を一層高めることができる。
以上、詳述したように、本実施例の接続構造によれば、壁面の変位による補強材連結点との相対的位置ズレが少なくできる。そのため、コンクリート製の壁面材2自体や、その壁面材2と補強材4との連結部に作用する力を軽減できる。また、コンクリート製の壁面材2に作用する鉛直力は、絶えず壁面材2の厚さ方向中央部に作用するので、コンクリート製壁面材2に欠損を生じるのを防止できる。
本発明の補強土壁用壁面材の接続構造は、上記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。図3は、本発明の接続構造の変形例を示す断面図である。なお、基本的には図2の実施例と同様であるから、同等の箇所には同一の符号を付して説明する。
まず同図(a)に示すように、前記凸部7や凹部10の曲率半径の変更や、その凸部7や凹部10の前後の各隙間の大きさを互いに変更したりしてもよい。また、同図(b)に示すように、上下の壁面材2,2の突き合わせ面にそれぞれ凹部10,10を形成し、その凹部10,10に断面円形状の部材(棒材)13を配置して構成してもよい。この棒材13は、硬質ゴムにより形成すればよい。
また、上記実施例では、下側の壁面材2の上面に凹部10を形成し、上側の壁面材2の下面に凸部7を形成したが、これとは逆に、同図(c)に示すように、下側の壁面材2の上面に凸部7を形成し、上側の壁面材2の下面に凹部10を形成してもよい。しかも、同図(c)の例では、凸部7および凹部10の形状を断面円形ではなく、台形状としている。この場合、台形状の凸部7と凹部10とが傾斜面においても直接に接触しないように、上側の壁面材2の下面と下側の壁面材2の上面とを隙間を開けて配置し、凸部7の中央部において硬質ゴム13を介して凹部10を受けている。
さらに、同図(d)では、上下の壁面材2,2の上下両端面は、それぞれ水平面に形成しているが、その幅方向中央部において、硬質ゴム13を配置するなどして、その前後両端部に隙間を開けて配置し、少なくとも後方の隙間に、前記硬質ゴムより軟らかい材料(発泡樹脂など)14で埋めている。
本発明の補強土壁用壁面材の接続構造の一実施例が適用された補強土壁を示す断面図である。 図1における上下の壁面材同士の接続部を拡大して示す概略断面図である。 本発明の補強土壁用壁面材の接続構造の変形例を示す断面図である。 従来のコンクリート製壁面材同士の接続部の構造を示す断面図である。 図4のコンクリート製壁面材同士の接続部を示し、はらみ出しが生じた状態を示す断面図である。
符号の説明
2 壁面材(コンクリートパネル)
3 盛土
4 補強材(チェーン)
7 凸部
10 凹部
13 弾性材,硬質ゴム(ゴム板)
14 発泡樹脂
15 不織布

Claims (6)

  1. コンクリート製の壁面材を用いた補強土壁における上下の壁面材同士の接続部の構造であって、
    上下の壁面材同士は、その厚さ方向中央部まわりの移動を許容されて積み重ねられる
    ことを特徴とする補強土壁用壁面材の接続構造。
  2. コンクリート製の壁面材を用いた補強土壁における上下の壁面材同士の接続部の構造であって、
    上側の壁面材の下端部は、下側の壁面材の上端部に、厚さ方向中央部において前後方向への傾きを許容された状態で支持されて積み重ねられる
    ことを特徴とする補強土壁用壁面材の接続構造。
  3. 上側の壁面材の下端部と下側の壁面材の上端部は、厚さ方向中央部に設けられた凹凸部または弾性材のいずれか一方または双方を介して当接されると共に、厚さ方向両端部に隙間を空けて配置され、
    少なくとも後面側の隙間に、前記弾性材よりも軟らかい材料が詰められる
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の補強土壁用壁面材の接続構造。
  4. 上下いずれか一端面には、その厚さ方向中央部に、円弧状に外方へ膨出する凸部が、壁面材の幅方向に沿って形成されており、
    上下いずれか他端面には、その厚さ方向中央部に、前記凸部の円弧よりも緩やかな円弧にて内方へ窪んだ凹部が、壁面材の幅方向に沿って形成されており、
    上下の壁面材は、一方の壁面材の前記凹部に他方の壁面材の前記凸部を配置して、上下に積み重ねられる
    ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の補強土壁用壁面材の接続構造。
  5. 前記凹部に板状の硬質ゴムが配置され、この硬質ゴムを介して前記凹部に前記凸部が突き合わせられ、
    上下の壁面材の接続部に、その後方に形成される隙間に発泡樹脂が充填され、
    この充填部を覆うように、上下の壁面材の後面に不織布が設けられる
    ことを特徴とする請求項4に記載の補強土壁用壁面材の接続構造。
  6. 上下いずれか一端面に前記凸部が形成され、上下いずれか他端面に前記凹部が形成されたコンクリートパネルからなる
    ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の接続構造にて上下に積み重ね可能な補強土壁用壁面材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013543941A (ja) * 2010-11-26 2013-12-09 テール アルメ アンテルナシオナル 統合された圧縮性を伴う表面エレメント

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