JP2006077888A - クラッチハブ - Google Patents

Abstract

【課題】 油溜堰の加工後に、凹状溝を形成することにより、油溜堰の塑性加工によって生じたスプラインの歯型を精度良く修正できると共に、端面まで有効にスプラインが利用すること。
【解決手段】 油通路３１を穿孔したスプライン３０の歯の内周面であって、開口端より所定寸法の位置に、塑性変形によって、油溜堰３２が形成してある。油溜堰３２を形成したスプライン３０の外周面に、塑性加工により、凹状溝３３ａ，３３ｂ（軸方向溝）が形成してある。また、凹状溝３３ａ，３３ｂ（軸方向溝）は、スプライン３０の外周面の山部と、谷部とに形成してある。油溜堰３２の加工後に、凹状溝３３ａ，３３ｂ（軸方向溝）を形成することにより、油溜堰３２の塑性加工によって生じたスプライン３０の歯型を精度良く修正できると共に、端面まで有効にスプライン３０が利用することができる。
【選択図】 図３

Description

本発明は、例えば、車両の湿式多板クラッチ等に用いられるクラッチハブに関する。

一般に、自動車用の自動変速機は、流体継手であるトルクコンバータの他、３速〜５速程度の遊星歯車変速機構を備えており、クラッチやブレーキにより遊星歯車変速機構の構成要素（サンギヤやプラネタリギヤ等）を適宜固定あるいは解放することにより変速が行われる。

自動変速機に内装されるクラッチやブレーキとしては、一部のバンド式ブレーキを除いて、フリクションプレートとセパレータプレートとを交互に配置した湿式多板形型が用いられており、両プレートの圧着（摩擦係合）には、変速制御油圧回路からの圧油が用いられている。また、自動二輪車においては、小さな体積で比較大きなトルク容量を得られることや、円滑な接続が行いやすいこと等から、湿式多板クラッチが動力断続用クラッチとして用いられている。

ところで、特許文献１乃至３に示すように、クラッチハブは、その円筒部を凹凸変形させてスプラインとし、このスプラインに複数のクラッチプレートが軸方向移動可能に係合してあり、シリンダ部材のスプラインに軸方向移動可能に係合したクラッチプレートと前記クラッチプレートとが交互に配列してある。

このクラッチハブを使用した湿式多板クラッチは、シリンダ部材内に設けたピストンが駆動され、両クラッチプレートが摩擦係合するか、又は、両者の摩擦係合が解除されると、クラッチハブを介して入力軸側のトルクを被動側回転部に伝達するか、又は、そのトルク伝達を遮断するようになっている。

クラッチハブのスプラインの歯には、適宜、油通路が穿設してあり、クラッチハブは、その回転による遠心力で歯の裏面に貯留されている油を油通路を通過させて、クラッチプレートの摩擦係合面に導くようになっている。

このクラッチハブは、特許文献１乃至３に示すように、油通路を設けたスプラインの歯の開口端又は近傍側に、油溜堰をプレス成形して、油がクラッチハブの開口側へ流出するのを阻止し、油の大部分が上記の油通路を通過するようにして、摩擦係合面が効果的に潤滑されるように工夫してある。
特開平７−１３３８３０号公報 特開２００１−２３２４３５号公報 特開平５−１４１４４６号公報

しかしながら、上述した油溜堰を塑性変形により加工すると、一般的に、クラッチプレート等の摩擦係合要素対が嵌合するクラッチハブの外径側スプラインの精度が悪化して、クラッチプレート等の摩擦係合要素対の係合又は解除がスムーズに行えないといった虞れがある。

特に、特許文献１に開示した油溜堰のプレス加工では、油溜堰の製造時に、スプラインの歯型の変形が生じ、クラッチプレート等の摩擦係合要素対の係合又は解除時に於ける動きに障害が生じて、変速性や空転ドラグが大きくなるといったことがある。

本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、油溜堰の加工後に、凹状溝を形成することにより、スプラインの歯型を精度良く修正できると共に、端面まで有効にスプラインが利用することができる、クラッチハブを提供することを目的とする。

上記の目的を達成するため、本発明の請求項１に係るクラッチハブは、円筒部の一端に、側壁を備えると共に、当該円筒部を凹凸状に形成して、スプラインとし、当該スプラインの歯に、油通路を穿孔したクラッチハブにおいて、
前記油通路を穿孔した前記スプラインの歯の内周面であって、開口端より所定寸法の位置に、塑性変形によって、油溜堰が形成してあり、
その後、前記油溜堰を形成した前記スプラインの外周面に、凹状溝が形成してあることを特徴とする。

本発明の請求項２に係るクラッチハブは、前記油溜堰は、開口端より塑性変形によるシェービング加工により、形成してあることを特徴とする。

本発明の請求項３に係るクラッチハブは、前記シェービング加工は、一回のプレスにて行うことを特徴とする。

本発明の請求項４に係るクラッチハブは、前記油溜堰は、外形側より塑性加工により加工されたことを特徴とする。

本発明の請求項５に係るクラッチハブは、前記凹状溝の加工は、塑性加工により行ったことを特徴とする。

本発明の請求項６に係るクラッチハブは、前記凹状溝は、前記油溜堰の塑性加工によって生じた前記スプラインの歯型精度の悪化を、塑性変形により矯正できる量であることを特徴とする。

本発明の請求項７に係るクラッチハブは、前記凹状溝は、前記スプラインの外周面の山部及び谷部に形成してあることを特徴とする。

本発明によれば、油溜堰の形成後に、スプラインの外周面に、凹状溝が形成してある。このように、油溜堰の加工後に、凹状溝を形成することにより、油溜堰の塑性加工によって生じたスプラインの歯型を精度良く修正できると共に、端面まで有効にスプラインが利用することができる。

以下、本発明の実施の形態に係るクラッチハブを図面を参照しつつ説明する。

（第１実施の形態）
図１は、本発明の第１実施形態に係る湿式多板クラッチの要部の縦断面図である。

これらの図に示したように、湿式多板クラッチは、入力軸等に接続される円筒状のクラッチケース１と、遊星歯車変速機構の構成要素等に接続されるクラッチハブ２と、クラッチケース１の先端側（図１中の右方）に形成されたシリンダ３に摺動自在に内嵌するピストン４と、を備えている。

図１中で、符号５は、シリンダ３とピストン４との間のシールを行うＯリングを示し、符号６は、図示しない変速制御油圧回路からの圧油が導入される油室を示している。

クラッチケース１には、図１に示すように、複数枚のセパレータプレート１２と、一枚のバッキングプレート１４とが、摺動自在に保持されており、これらセパレータプレート１２とバッキングプレート１４との抜け出しがスナップリング１５により防止されている。

図１中、符号１６は、クラッチケース１の内周面に形成された雌スプラインを示し、符号１７は、ピストン４とセパレータプレート１２との間に介装された皿ばねを示している。

一方、クラッチハブ２には、セパレータプレート１２とバッキングプレート１４との間に介装されるかたちで、複数枚のフリクションプレート１１が摺動自在に保持されている。

図１中、符号２１は、クラッチハブ２の外周面に形成された雄スプラインを示し、符号２２は、クラッチハブ２の内外面を連通する油供給孔を示している。また、符号２３は、リターンスプリングであり、符号２４は、支持金具であり、符号２５は、スナップリングである。

次いで、図２は、クラッチハブに油溜堰を形成した後であって、凹状溝を形成する前の状態を示し、（ａ）は、図１に示したクラッチハブの要部の平面図であり、（ｂ）は、その側面図であり、（ｃ）は、その断面図である。

図２（ａ）（ｂ）（ｃ）に示すように、クラッチハブ２となる円筒部を凹凸状に形成して、スプライン３０とし、このスプライン３０の歯に、油通路３１が穿孔してある。

この油通路３１を穿孔したスプライン３０の歯の内周面であって、開口端より所定寸法の位置に、塑性変形によって、油溜堰３２が形成してある。

また、油溜堰３２は、開口端より塑性変形によるシェービング加工により、形成してある。さらに、このシェービング加工は、一回のプレスにて行っている。

次いで、図３は、クラッチハブに油溜堰を形成した後であって、凹状溝を形成した後の状態を示し、（ａ）は、図１に示したクラッチハブの要部の平面図であり、（ｂ）は、その側面図であり、（ｃ）は、その断面図である。

図４は、図３（ｂ）の拡大断面図である。

図３（ａ）（ｂ）（ｃ）、及び図４に示すように、油溜堰３２を形成したスプライン３０の外周面に、塑性加工により、凹状溝３３ａ，３３ｂ（軸方向溝）が形成してある。

このように、油溜堰３２の加工後に、凹状溝３３ａ，３３ｂ（軸方向溝）を形成することにより、油溜堰３２の塑性加工によって生じたスプライン３０の歯型を精度良く修正できると共に、端面まで有効にスプライン３０が利用することができる。

さらに、凹状溝３３ａ，３３ｂ（軸方向溝）は、図３（ａ）（ｂ）（ｃ）、及び図４に示すように、スプライン３０の外周面の山部と、谷部とに形成してある。

また、好適には、凹状溝３３ａ，３３ｂ（軸方向溝）は、油溜堰３２の塑性加工によって生じたスプライン３０の歯型精度の悪化を、塑性変形により矯正できる量である。

次いで、図５（ａ）は、油溜堰と凹状溝を塑性加工するためのダイの模式的断面図であり、（ｂ）は、（ａ）の丸で囲んだ部分の拡大断面図である。

図５（ａ）に示すように、クラッチハブ２の外径側には、外径側筒状ダイ４１が設けてあり、クラッチハブ２の側壁側には、側壁側ダイ４２が設けてあり、クラッチハブ２の内径側には、内径側ダイ４３が設けてある。図５（ａ）（ｂ）に示すように、クラッチハブ２の軸方向外側には、シェービング治具４５が設けてある。このように、凹状溝３３ａ，３３ｂを塑性加工することにより、油溜堰３２の塑性加工によって生じていたスプライン３０の歯型精度の悪化を修正することができる。また、油溜堰３２は、開口端より塑性変形によるシェービング加工により、形成してあり、このシェービング加工は、一回のプレスにて行っている。

（第２実施の形態）
図６は、本発明の第２実施の形態に係るクラッチハブを示し、クラッチハブに油溜堰を形成した後であって、凹状溝を形成した後の状態であり、（ａ）は、クラッチハブの要部の平面図であり、（ｂ）は、その側面図であり、（ｃ）は、その断面図である。

本実施の形態では、油溜堰３２の形成はスプライン３０の歯の外周面より、塑性加工により、溝５１を形成して行った。

この凹状溝５１は、油溜堰３２の径方向外方に対応する部位に形成してある。このように、油溜堰３２の加工後に、凹状溝３３ａ，３３ｂを形成することにより、油溜堰３２の塑性加工によって生じたスプライン３０の歯型を精度良く修正できると共に、端面まで有効にスプライン３０が利用することができる。

なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。

本発明の第１実施形態に係る湿式多板クラッチの要部の縦断面図である。 クラッチハブに油溜堰を形成した後であって、凹状溝を形成する前の状態を示し、（ａ）は、図１に示したクラッチハブの要部の平面図であり、（ｂ）は、その側面図であり、（ｃ）は、その断面図である。 クラッチハブに油溜堰を形成した後であって、凹状溝を形成した後の状態を示し、（ａ）は、図１に示したクラッチハブの要部の平面図であり、（ｂ）は、その側面図であり、（ｃ）は、その断面図である。 図３（ｂ）の拡大断面図である。 （ａ）は、油溜堰と凹状溝を塑性加工するためのダイの模式的断面図であり、（ｂ）は、（ａ）の丸で囲んだ部分の拡大断面図である。 本発明の第２実施の形態に係るクラッチハブを示し、クラッチハブに油溜堰を形成した後であって、凹状溝を形成した後の状態であり、（ａ）は、クラッチハブの要部の平面図であり、（ｂ）は、その側面図であり、（ｃ）は、その断面図である。

符号の説明

１ クラッチケース
２ クラッチハブ
３ シリンダ
４ ピストン
５ Ｏリング
６ 油室
１１ フリクションプレート
１２ セパレータプレート
１４ バッキングプレート
１５ スナップリング
１６ 雌スプライン
１７ 皿ばね
２１ 雄スプライン
２２ 油供給孔
２３ リターンスプリング
２４ 支持金具
２５ スナップリング
３０ スプライン
３１ 油通路
３２ 油溜堰
３３ａ，３３ｂ 凹状溝（軸方向溝）
４１ 外径側筒状ダイ
４２ 側壁側ダイ
４３ 内径側ダイ
４５ シェービング治具
５１ 凹状溝

Claims (7)

1. 円筒部の一端に、側壁を備えると共に、当該円筒部を凹凸状に形成して、スプラインとし、当該スプラインの歯に、油通路を穿孔したクラッチハブにおいて、
   前記油通路を穿孔した前記スプラインの歯の内周面であって、開口端より所定寸法の位置に、塑性変形によって、油溜堰が形成してあり、
   その後、前記油溜堰を形成した前記スプラインの外周面に、凹状溝が形成してあることを特徴とするクラッチハブ。
2. 前記油溜堰は、開口端より塑性変形によるシェービング加工により、形成してあることを特徴とする請求項１に記載のクラッチハブ。
3. 前記シェービング加工は、一回のプレスにて行うことを特徴とする請求項２に記載のクラッチハブ。
4. 前記油溜堰は、外形側より塑性加工により加工されたことを特徴とする請求項１に記載のクラッチハブ。
5. 前記凹状溝の加工は、塑性加工により行ったことを特徴とする請求項１に記載のクラッチハブ。
6. 前記凹状溝は、前記油溜堰の塑性加工によって生じた前記スプラインの歯型精度の悪化を、塑性変形により矯正できる量であることを特徴とする請求項２乃至５のいずれか１項に記載のクラッチハブ。
7. 前記凹状溝は、前記スプラインの外周面の山部及び谷部に形成してあることを特徴とする請求項５又は６に記載のクラッチハブ。

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