JP2006076991A - アリールエチニルフタル酸誘導体及び該誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
末端封止剤等求められる機能性材料に対する性能が向上した新規な化合物及びフェニルエチニルフタル酸無水物の高純度かつ高収率な製造方法の開発が強く望まれている。
また、アリールエチニルフタル酸誘導体の1種である含フッ素アリールエチニルフタル酸、含フッ素アリールエチニルフタル酸のアルカリ金属塩、及び含フッ素アリールエチニルフタル酸無水物は、ごく少数しか報告されておらず(例えば、非特許文献1参照。)、樹脂材料を目的の性質にするための原料としては、選択の幅が狭かった。
本発明者らは上記の事情に鑑み鋭意研究した結果、フタル酸ジエステル構造を有する新規な化合物の合成に成功し、またそれらを用いたアリールエチニルフタル酸無水物の製造方法を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
<1> 下記一般式(1)で表されるアリールエチニルフタル酸ジエステル化合物。
一般式(3)において、R1及びR2は、各々独立に炭素数1〜8のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
本発明の一般式(1)で表されるアリールエチニルフタル酸ジエステル化合物について詳細に説明する。
R3は一般式(1)中のQ1で表されるアリール基上に存在しうる置換基として説明したものと同一であり、好ましい範囲も同一である。R3の好ましい具体例は、フッ素原子、トリフロロメチル、tert−ブチル、tert−ブトキシ、フェニル、フェノキシ、シアノである。nは0〜5の整数を表し、nが2以上の場合複数個存在するR3は互いに異なっていてもよい。また、これらが互いに連結して環(好ましくは、炭素環又は複素環)を形成していてもよい。好ましいnは0〜2、より好ましくは0又は1である。
アリールエチニルフタル酸ジエステル化合物を抽出する有機溶剤としてはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、メトキシベンゼン等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤、ヘキサン、へプタンに代表される脂肪族炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等が挙げられるが、工業的規模での大量製造適性、入手の容易さ等の観点からエステル系溶剤、脂肪族炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤が好ましい。好ましく使用される有機溶剤の具体的としては、トルエン、キシレン(o−体、m−体、p−体あるいはこれらの任意の割合の混合物のいずれであってもよい)、メシチレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン(クメン)、クロロベンゼン、ヘキサン、へプタン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等が挙げられるが、これらの中でもトルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、へプタン、酢酸エチル、酢酸n−ブチルがより好ましく、トルエン、ヘキサン、へプタン、酢酸エチルがさらに好ましい溶剤である。
本発明の製造方法は、本発明の一般式(3)で表されるアリールエチニルフタル酸ジエステルを加水分解して一般式(4)で表されるアリールエチニルフタル酸化合物に変換し、これを閉環して一般式(5)で表されるアリールエチニルフタル酸無水物を製造する製造方法である。
エステル化合物を加水分解する方法は、本発明においてはアルカリ加水分解が好ましい。
アルカリ加水分解で使用する塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、有機塩基等が挙げられるが、好ましい塩基はアルカリ金属水酸化物である。アルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムが挙げられるが、水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムの使用が好ましい。これらはフレーク状、ペレット状のものを使用してもよいし、任意の濃度の溶液(例えば25質量%水酸化ナトリウム水溶液、48質量%水酸化カリウム水溶液)として使用してもよい。工業スケールでの製造を考慮すると、溶液状態で使用するのが簡便である。加水分解工程において使用するアルカリ金属水酸化物の使用量は本発明の一般式(3)で表されるアリールエチニルフタル酸ジエステル化合物に対して2.0〜10倍モルの範囲が好ましく、より好ましくは2.0〜5.0倍モル、さらに好ましくは2.1〜3.0倍モルである。
吸着剤処理の時間は仕込み量、温度により異なるが0.5〜12時間の範囲が好ましい。
また吸着剤処理の工程で終夜放置することも可能である。使用した吸着剤は通常の固液分離により容易に除去することができる。この際、セライト、ラジオライト、粉末セルロース等の濾過補助剤を使用してもよい。
酸の種類としては水溶液中のpKaが4以下の酸が好ましく、2.5以下の酸がより好ましい。このような酸としては、有機酸(メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、クエン酸等のカルボン酸類)、鉱酸(すなわち無機酸であって、ハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等)が挙げられる。このうち鉱酸が好ましい。具体的に好ましい酸は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、クエン酸又はギ酸であり、より好ましくは塩酸、硫酸、又はメタンスルホン酸であり、さらに好ましくは塩酸又は硫酸である。
塩から酸への変換により、一般式(4)で表されるアリールエチニルフタル酸化合物が析出するので、通常の固液分離を行って目的物を単離することができる。
以下、閉環方法について詳細に説明する。
該反応剤としては、無水酢酸、無水コハク酸、アセチルクロライド、クロルスルホン酸、塩化チオニル、オキシ塩化リン、及び酢酸プロペニルなどが挙げられる。中でも無水酢酸、アセチルクロライド、クロルスルホン酸、及びオキシ塩化リンが好ましく、無水酢酸及びオキシ塩化リンがより好ましい。
これらの具体的な例としては、デカン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどが挙げられる。中でもトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテルが好ましく、より好ましくはトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトンが挙げられる。
このような溶剤としては、炭化水素系溶剤(芳香族及び脂肪族を含む)、ハロゲン系溶剤(芳香族及び脂肪族を含む)、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤などが挙げられ、中でも芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤が好ましく、より好ましくは芳香族炭化水素系溶剤、及びエステル系溶剤である。
これらは具体的には、デカン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、アニソール、及び1,2−ジメトキシエタンなどが挙げられるが、中でもトルエン、キシレン、酢酸ブチル、炭酸ジエチル、アニソール、及び1,2−ジメトキシエタンが好ましく、より好ましくはトルエン、キシレン、酢酸ブチル、及び炭酸ジエチルである。
以下に、一般式(5A)で表される含フッ素アリールエチニルフタル酸無水物を説明する。
またR31〜R35の5個の基のうち、フッ素原子である基の数が1〜4個である場合が好ましく、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1又は2個、最も好ましくは1個の場合である。
なお、本発明においてはR31〜R35の5個の基が水素原子とフッ素原子のみから選択される場合、すなわち上記(1)の場合が好ましい。
上記一般式(5A)で表される含フッ素アリールエチニルフタル酸無水物は、下記一般式(4A)で表される含フッ素アリールエチニルフタル酸又はその塩を閉環することによって合成することができる。閉環の方法は、上述の一般式(4)で表される化合物から一般式(5)で表される化合物への閉環で説明した方法を適用することができる。
一般式(4A)において、R31〜R35の好ましい組み合わせは、一般式(5A)における場合と同じである。
好ましくは、M1とM2とが同一の場合であり、水素原子、ナトリウム原子又はカリウム原子から選択され、より好ましくは水素原子又はナトリウム原子であり、最も好ましくはM1とM2とがともに水素原子の場合である。
本発明においては以下の化合物が好ましい。
上記一般式(4A)で表される含フッ素アリールエチニルフタル酸又はその塩は、どのような方法で合成されてもよい。
本発明においては、前記一般式(3)で表される化合物、具体的には下記一般式(3A)で表される含フッ素アリールエチニルフタル酸ジエステルを加水分解することによって合成する製造方法が好ましい。加水分解の方法は、上述の一般式(3)で表される化合物から一般式(4)で表される化合物を合成する方法において説明した加水分解の方法を適用することができる。
R1a及びR1bにおけるアルキル基は炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はt−ブチル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
具体例としては、前記No.16、18〜21に対応するジメチルエステルとジエチルエステルを挙げることができる。
ここで、一般式(4A)で表される含フッ素アリールエチニルフタル酸又はその塩の合成方法は、前述の一般式(4)で表されるアリールエチニルフタル酸化合物における合成方法と基本的には同じであるが、含フッ素アリールエチニルフタル酸塩(M1、M2が金属原子)においては、化合物の取り出しを行なう場合、以下の方法が好ましい。
本発明の含フッ素アリールエチニルフタル酸塩を析出させるために添加する電解質又は水溶性を有する有機溶媒としては、例えば、塩化ナトリウムあるいはその水溶液、塩化カリウムあるいはその水溶液、塩化カルシウムあるいはその水溶液、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、エチレングリコール、及びグリセリンなどが挙げられるが、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、及びエチレングリコールであり、中でもメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びアセトンがより好ましい。
具体的には、上記のようにして得られた含フッ素アリールエチニルフタル酸塩の結晶あるいは溶液を原料にして酸を添加して得ることができ、前述の一般式(4)で表されるアリールエチニルフタル酸において記載した方法がそのまま適用され、好ましい方法も同様である。
300ml入りの3つ口フラスコに窒素気流下、4−ブロモフタル酸ジメチルエステル24.6g、エチニルベンゼン11.03g、トリフェニルホスフィン71mg、trans−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)20mg、ヨウ化第一銅171mgを入れ、攪拌しながらトリエチルアミンを60mlを注加した。反応混合物を100℃で加温しながら12時間加熱還流し、室温に冷却の後反応液を濾過して生成した塩及び触媒を除去し、トルエン60mlで洗浄した。濾液及び洗浄液をあわせて濃縮し、4−フェニルエチニルフタル酸ジエチルエステルの粗結晶25.1gを得た。
この粗結晶を2−プロパノール/n−ヘキサン(50ml/100ml)からなる混合溶媒系から再結晶させ、4−フェニルエチニルフタル酸ジエチルエステルを22.9g得た。収率86.4%。
1H−NMR δ(TMS:CDCl3):3.92ppm(s,3H)、3.93ppm(s,3H)、7.36−7.39ppm(m,3H)、7.52−7.56ppm(m,2H)、7.66ppm(q,1H)、7.75ppm(d,1H)、7.85ppm(d,1H)
IR νmax(KBr):1269(s),1604(m),1724(s),2210(w),2950(w),3003(w)cm-1
MS:m+/z=295
融点:76.9℃〜77.4℃
エチニルベンゼンの代わりに3,4−ジフルオロエチニルベンゼン11.9gを用いて合成例1に記載の方法にほぼ従って合成を行い、4−(3,4−ジフルオロフェニルエチニル)フタル酸ジメチルエステルの結晶を得た。収率は、68.6%であった。また、MS:m+/z=331,融点:96.0℃〜96.7℃であった。
4−フェニルエチニルフタル酸ジメチル(33.6g)を水、メタノールからなる混合媒体に懸濁し、攪拌しながら25質量%水酸化ナトリウム水溶液(40g)を滴下した。反応混合物を60℃で3時間攪拌し、反応終了を確認した後、内温30℃まで冷却し、活性炭1gを添加してそのままの温度で30分攪拌した。濾過して活性炭を除去し、水洗後、濾液及び洗浄液を合わせ、トルエン及び酢酸エチルを添加した。この2層系反応混合物に濃塩酸(28g)を滴下し、反応混合物を室温で30分攪拌後、静置し、4−フェニルエチニルフタル酸を含有する有機層を分取した。有機層を部分的に濃縮後、無水酢酸(17g)を加え、反応混合物を4時間加熱還流した。反応終了後、冷却することにより4−フェニルエチニルフタル酸無水物が結晶として析出した。これを濾過、洗浄、乾燥して26.6gの4−フェニルエチニルフタル酸無水物を淡黄緑色結晶として得た。収率は、4−フェニルエチニルフタル酸ジメチルエステルを基準にして、94%であった。得られた物質の物性は、以下に示す通りであった。
融点:152.1〜152.3℃
IR νmax(KBr) 3070(w),2200(m),1775(w),1770(s),1755(vs),1620(s),1495(m),1340(m),1240(vs),940(m),900(vs)cm-1
濁度:0.1ppm(100mg試料/25ml酢酸エチル溶液)
可視吸収:0.015(400nm),0.004(450nm)(100mg試料/25ml酢酸エチル溶液)
GC純度:99.9%以上(GC測定条件は、カラム:DB−5MS、0.53mm×30m,キャリアーガス:ヘリウム、70kPa,検出:FID,カラム温度:100℃→300℃(昇温10℃/分)で行った。)
4−フェニルエチニルフタル酸ジメチル(33.6g)を水、メタノールからなる混合媒体に懸濁し、攪拌しながら25質量%水酸化ナトリウム水溶液(40g)を滴下した。反応混合物を60℃で3時間攪拌、反応終了を確認後、内温30℃まで冷却し、活性炭1gを添加してそのままの温度で30分攪拌した。濾過して活性炭を除去し、水洗後、濾液及び洗浄液を合わせ、濃塩酸(28g)を滴下した。反応混合物を室温で30分攪拌した後、析出した結晶を濾過して集め、洗浄、乾燥し、4−フェニルエチニルフタル酸を無色結晶(融点:211.0〜211.6℃)として得た。
得られた結晶全量をトルエンに懸濁し、無水酢酸(17g)を加えて反応混合物を4時間加熱還流した。反応終了後、冷却することにより4−フェニルエチニルフタル酸無水物を結晶として析出した。これを濾過、洗浄、乾燥して26.3gの4−フェニルエチニルフタル酸無水物を淡黄緑色結晶として得た。収率は、4−フェニルエチニルフタル酸ジメチルエステルを基準にして、93%であった。得られた物質の物性は、以下に示す通りであった。
・融点:152.1〜152.2℃
・IR:実施例3に記載のものと一致した。
・濁度:0.1ppm(条件は実施例3に記載の条件と同一)
・可視吸収:0.015(400nm),0.003(450nm)(条件は実施例3に記載の条件と同一)
・GC純度:99.9%以上(測定条件は、実施例3と同一)
(比較例1)
特許文献3に記載の方法に従い、4−ブロモフタル酸無水物とフェニルアセチレンから4−フェニルエチニルフタル酸無水物を合成した。得られた4−フェニルエチニルフタル酸無水物は黄褐色結晶性粉末であった。収率は、79.1%であった。
物性値は以下の通りであった(測定条件は、実施例3と同一)。
・融点:149.1〜149.8℃
・濁度:8.1ppm
・可視吸収:0.058(400nm),0.015(450nm)
・GC純度:97.5%
(比較例2)
特許文献2(特開平11−180970号公報)の実施例1に記載の方法に従い、4−ブロモフタル酸無水物とフェニルアセチレンから4−フェニルエチニルフタル酸無水物を合成した。得られた4−フェニルエチニルフタル酸無水物は淡黄色結晶性粉末であった。物性値は以下の通りであった(測定条件は実施例3と同一)。収率は、82.3%であった。
・融点:151.1〜151.8℃
・濁度:10.5ppm
・可視吸収:0.050(400nm),0.022(450nm)
・GC純度:98.7%
(比較例3)
非特許文献2(Polymer,1994年,第35巻,4858頁)に記載の方法に従い、4−ブロモフタル酸無水物とフェニルアセチレンから4−フェニルエチニルフタル酸無水物を合成した。得られた4−フェニルエチニルフタル酸無水物は淡黄色結晶性粉末であった。物性値は以下の通りであった(測定条件は実施例3と同一)。収率は、70.6%であった。
・融点:150.5〜151.1℃
・濁度:12.1ppm
・可視吸収:0.049(400nm),0.023(450nm)
・GC純度:98.8%
非特許文献2に記載の方法に従い、実施例3及び比較例1〜3で得られた各4−フェニルエチニルフタル酸無水物、3,4'−オキシジアニリン、及び4,4'−オキシジフタル酸無水物のN−メチルピロリドン溶液から、平均分子量約9,000のアミド酸オリゴマー溶液を調製し、得られたアミド酸オリゴマーを遠心分離後、塗布、乾燥、及び順に100℃・225℃・350℃で各1時間熱処理を行う過程を経て、イミドオリゴマー架橋物のフィルムを得た。また一方で、アミド酸オリゴマーのN−メチルピロリドン溶液にトルエンを加え、共沸脱水工程、冷却、濾過、順に水・メタノールで洗浄、及び乾燥工程を経て、イミドオリゴマーを単離した。
実施例3及び比較例1〜3で得られた各4−フェニルエチニルフタル酸無水物に対応する上記記載の方法によって調製されたフィルムのTg及び23℃での力学特性をアメリカ材料試験協会(ASTM)D882項の方法にて、またイミドオリゴマーの5質量%減量に至る温度を熱天秤にて測定した。これらの結果を以下に示す。
100mlの3つ口フラスコに室温・窒素気流下、4−ブロモフタル酸ジメチルエステル10.9g、3−フルオロエチニルベンゼン5.8g、トリフェニルホスフィン28mg、tarns−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)7.6mg、ヨウ化第一銅6.2mgを入れ、撹拌しながらトリエチルアミンを20mlを注加した。反応混合物を120℃で加温し、還流を開始してから3時間加熱還流し、70℃に冷却後、反応液を濾過して生成した塩及び触媒を除去し、トルエン20mlで洗浄した。
濾液及び洗浄液をあわせて濃縮し、4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸ジメチルエステルを含む油状物14.2gを得た。この油状物に2−プロパノール/ヘキサン(20ml/400ml)からなる混合溶媒系から再結晶し、4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸ジメチルエステルを9.93g得た。収率79.5%であった。
1H−NMR δ(TMS,CDCl3):3.92ppm(s,3H)、3.93ppm(s,3H)、7.05−7.12ppm(m,1H)、7.21−7.25ppm(m,1H)、7.30−7.38ppm(m,2H)、7.66ppm(dd,1H)、7.75ppm(d,1H)、7.85ppm(d,1H)
500mlの三口フラスコ内に4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸ジメチルエステル109.3gと水175mlを加えて懸濁し、攪拌しながら25%水酸化ナトリウム水溶液(123g)を滴下した。反応混合物を75℃で3時間攪拌、反応終了を確認した後、内温を30℃まで冷却し、活性炭5gを添加してそのままの温度で30分攪拌した。セライトを濾過助剤に用いて濾過して活性炭を除去し、水洗後、濾液及び洗浄液を合わせ、攪拌しながら2−プロパノール500mlを30分かけて滴下して4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸二ナトリウム塩を析出させた。氷水浴中で2時間攪拌の後、濾過、洗浄、乾燥して103.4gの4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸二ナトリウム塩を白色結晶として得た。収率90.0%であった。
IR νmax(KBr) 3422(m),2362(w),2341(m),1633(w),1576(vs),1481(m),1420(s),1369(m),1148(w),870(m),835(m),806(m) cm-1
500mlの三口フラスコ内に4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸ジメチルエステル109.3gと水175mlを加えて懸濁し、攪拌しながら25%水酸化ナトリウム水溶液(123g)を滴下した。反応混合物を75℃で3時間攪拌、反応終了を確認後、内温を30℃まで冷却し、活性炭5gを添加してそのままの温度で30分攪拌した。次にセライトを濾過助剤に用いて濾過して活性炭を除去し、水洗後、濾液及び洗浄液を合わせ、酢酸エチル600mlを添加した後、攪拌しながら濃塩酸を86.3g添加してそのまま加温した。一旦析出した4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸は溶解し、攪拌を停止して2層分離した溶液より、水層を除去した。この酢酸エチル溶液を減圧濃縮により留去して114.2gの4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸粗結晶を得た。この粗結晶に2−プロパノール250mlを加えて1lの三口フラスコに入れ、攪拌しながら内温50℃まで昇温させ、蒸留水500mlを添加した。この懸濁液を内温20℃まで3時間かけて冷却し、内温が20℃に到達後1時間攪拌を続けた後、濾過、洗浄、及び乾燥を経て、93.8gの4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸を得た。
・融点:194.4℃(熱により脱水して4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸無水物に変化)
・1H−NMR δ(TMS,ジメチルスルホキシド−d6):7.30−7.36ppm(m,1H)、7.48ppm(s,1H)、7.50−7.52ppm(m,2H)、7.60ppm(s,2H)、7.84ppm(s,1H)
・IR νmax(KBr):2885(m),2364(w),1706(vs), 1681(vs),1485(m),1404(m),1279(s),1207(s),920(m),864(m),842(m),791(s),683(m) cm-1
500mlの三口フラスコ内に4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸ジメチルエステル109.3gと水175mlを加えて懸濁し、攪拌しながら25%水酸化ナトリウム水溶液(123g)を滴下した。反応混合物を75℃で3時間攪拌、反応終了を確認後、内温を30℃まで冷却し、活性炭5gを添加してそのままの温度で30分攪拌した。次にセライトを濾過助剤に用いて濾過して活性炭を除去し、水洗後、濾液及び洗浄液を合わせ、メチルエチルケトン400mlを添加した後、攪拌しながら濃塩酸を86.3g添加してそのまま加温した。一旦析出した4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸は溶解し、攪拌を停止して2層分離した溶液より、水層を除去した。有機層を部分的に濃縮した後無水酢酸80.1gを加え、反応混合物を4時間加熱還流した。反応終了後冷却すると4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸無水物が結晶として析出したのでこれを濾過、洗浄、乾燥して80.2gの4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸無水物を微黄色結晶として得た。4−フェニルエチニルフタル酸ジメチルエステルを基準にして収率は86.1%であった。
・融点:142.8〜142.9℃
・1H−NMR δ(TMS,CDCl3):7.11−7.18ppm(m,1H)、7.26−7.29ppm(s,1H)、7.36−7.40ppm(m,2H)、8.00ppm(s,2H)、8.13ppm(s,1H)
・IR νmax(KBr) 3065(w),2352(w),2212(w),1850(s),1778(vs),1611(s),1576(m),1427(m),1327(m),1327(m),1250(vs),920(s),885(m),737(s) cm-1
・濁度:0.1ppm(測定条件は実施例3に記載の条件と同一)
・GC純度:99.9%以上(GC測定条件は、カラム:J&W Scientific社製DB−5MS、0.53mm×30m、キャリアーガス:ヘリウム70kPa,スプリット比1:40、検出:FID、カラム温度:100℃→300℃(昇温10℃/分)で行った。)
500mlの三つ口フラスコに4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸85.3g、トルエン200ml、無水酢酸45.9gを順に加え、攪拌しながら120℃で加温した。この懸濁液の内温が114℃で還流が始まるのを確認し、還流状態を1時間維持して反応させた。反応により原料が溶解した液を3時間かけて3℃まで冷却して生成物の結晶を析出させた。析出物を濾過、洗浄、乾燥して、4−(3−フルオロフェニルエチニル)フタル酸無水物の極めて薄い淡黄色の結晶を70.2g得た。
得られた物質の物性は、以下に示す通りであった。
・融点:142.9℃
・NMR及びIR:いずれも実施例9で得られたものと一致した。
・濁度:0.4ppm(測定条件は実施例3に記載の条件と同一)
・GC純度:99.9%以上(測定条件は実施例9に記載の条件と同一)
1l入りの3つ口フラスコに窒素気流下、4−ブロモフタル酸ジメチルエステル136.54g、4−エチニルトルエン69.7g、トリフェニルホスフイン354mg、trans−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)94.8mg、ヨウ化第一銅771mgを加え、攪拌しながらトリエチルアミン101.2gを注加した。反応混合物を110℃で加温しながら6時間加熱還流し、内温を60℃に冷却後反応液を濾過して生成した塩及び触媒を除去し、トルエン200mlで洗浄した。濾液及び洗浄液をあわせて濃縮し、4−(4−メチルフェニルエチニル)フタル酸ジメチルエステルの粗結晶25.1gを得た。この粗結晶を2−プロパノール/n−ヘキサン=1/2(v/v)からなる混合溶媒系から再結晶させ、4−(4−メチルフェニルエチニル)フタル酸ジメチルエステルを133.8g得た。収率86.8%。
・融点:62.0℃〜62.6℃
・1H−NMR δ(TMS,CDCl3):2.38ppm(s,3H)、3.92ppm(s,3H)、3.93ppm(s,3H)、7.18ppm(d,2H)、7.43ppm(d,2H)、7.64ppm(dd,1H)、7.74ppm(d,1H)、7.83ppm(d,1H)
4−(4−メチルフェニルエチニル)フタル酸ジメチルエステル123.6gを水200gに懸濁し、攪拌しながら25質量%水酸化ナトリウム水溶液141gを滴下した。反応混合物を65℃で2時間攪拌し、反応終了を確認後、内温30℃まで冷却し、活性炭10gを添加してそのままの温度で30分攪拌した。濾過して活性炭を除去し、水洗後、濾液及び洗浄液を合わせ、35.5質量%濃塩酸98.6gを滴下した。反応混合物にメチルエチルケトン500mlを添加して60℃で30分攪拌して静置し、水層を除去して濃縮して4−(4−メチルフェニルエチニル)フタル酸の粗結晶111gを得た。これを2−プロパノール/蒸留水=1/4(v/v)からなる混合溶媒系から再結晶させ、4−(4−メチルフェニルエチニル)フタル酸の無色結晶95.63gを得た。得られた結晶のうち84gをトルエンに懸濁し、無水酢酸46gを加えて反応混合物を2時間加熱還流した。反応終了後、冷却することにより4−(4−メチルフェニルエチニル)フタル酸無水物が結晶として析出した。これを濾過、洗浄、乾燥して71.6gの4−(4−メチルフェニルエチニル)フタル酸無水物を淡黄緑色結晶として得た。
収率は、4−(4−メチルフェニルエチニル)フタル酸ジメチルエステルを基準にして、77.6%であった。
・融点:180.8〜180.9℃
・1H−NMR δ(TMS,CDCl3):2.40ppm(s,3H)、7.20ppm(d,2H)、7.45ppm(dd,2H)、7.96ppm(s,1H)、7.96ppm(s,1H)、8.07ppm(t,1H)
・IR:νmax(KBr) 2920(w),2214(m),1840(s),1776(vs),1611(m),1508(w),1321(m),1246(s),930(m),889(s),818(s),737(s),671(m),523(m) cm-1
・濁度:0.0ppm(測定条件は実施例3の条件と同一)
・可視吸収:0.153(400nm),0.001(450nm)(測定条件は実施例3に記載の条件と同一)
・GC純度:99.9%(測定条件は実施例3の条件と同一)
Claims (13)
- 前記一般式(2)におけるR1及びR2が、各々独立に炭素数1〜8のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、Q1が置換又は無置換のアリール基であることを特徴とする請求項1に記載のアリールエチニルフタル酸ジエステル化合物。
- 下記一般式(3)で表されるアリールエチニルフタル酸ジエステル化合物を加水分解して得た下記一般式(4)で表されるアリールエチニルフタル酸化合物を閉環することを特徴とする下記一般式(5)で表されるアリールエチニルフタル酸無水物の製造方法。
一般式(3)において、R1及びR2は、各々独立に炭素数1〜8のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。〕 - 前記加水分解がアルカリ加水分解であり、前記一般式(3)で表されるアリールエチニルフタル酸ジエステル化合物を加水分解し得られた反応混合物に対し吸着剤処理を行った後に酸を添加し、前記一般式(4)で表されるアリールエチニルフタル酸化合物を得ることを特徴とする請求項4に記載の前記一般式(5)で表されるアリールエチニルフタル酸無水物の製造方法。
- 前記吸着剤処理が、活性炭を使用する吸着剤処理であることを特徴とする請求項5に記載の前記一般式(5)で表されるアリールエチニルフタル酸無水物の製造方法。
- 前記一般式(5A)において、(1)R31〜R35のいずれか1つがフッ素原子で、フッ素原子でないR31〜R35が全て水素原子である、(2)R31がトリフルオロメチル基で、R32〜R35の全てが水素原子である、又は(3)R32がトリフルオロメチル基で、R31、R33、R34、及びR35は、全て水素原子である、ことを特徴とする請求項7に記載の含フッ素アリールエチニルフタル酸無水物。
- 前記一般式(4A)において、(1)R31〜R35のいずれか1つがフッ素原子で、フッ素原子でないR31〜R35が全て水素原子である、(2)R31がトリフルオロメチル基で、R32〜R35の全てが水素原子である、又は(3)R32がトリフルオロメチル基で、R31、R33、R34、及びR35は、全て水素原子であることを特徴とする請求項9に記載の含フッ素アリールエチニルフタル酸又はその塩。
- 下記一般式(3A)で表される含フッ素アリールエチニルフタル酸ジエステル化合物を加水分解する工程を含むことを特徴とする下記一般式(4A)で表される含フッ素アリールエチニルフタル酸又はその塩の製造方法。
- 請求項12に記載の製造方法によって得られた前記一般式(4A)で表される含フッ素アリールエチニルフタル酸又はその塩を用いることを特徴とする請求項11に記載の含フッ素アリールエチニルフタル酸無水物の製造方法。
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