JP4143295B2 - 9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、9,9−二置換−2,3,6,7−テトラメチルキサンテンの酸素酸化および無水物化を経て9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物(以下、単に「二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物」ともいう。)は、半導体関連分野においてポリイミドの合成原料として非常に有用な化合物として知られており、液晶関連分野等でも使用されている。
従来、二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造方法として、9,9−二置換−2,3,6,7−テトラメチルキサンテン(以下、単に「二置換キサンテンテトラメチルキサンテン」ともいう。)を、過マンガン酸カリウムを用いて酸化し、9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸(以下、単に「二置換キサンテンテトラカルボン酸」ともいう。)を単離した後に、酸無水物溶媒中で無水物化して二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を得る方法が知られている。例えば、Macromolecules 1994,27,1136−1146および特開2001−163870号公報には、二置換テトラメチルキサンテンを過マンガン酸カリウム酸化法で酸化し、二置換キサンテンテトラカルボン酸を単離した後、無水酢酸中で無水物化を行い、二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を製造する方法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この過マンガン酸カリウム酸化法には、過マンガン酸カリウムの使用量が多く、重金属廃棄物が大量に排出されるという問題点があり、工業的に実施するには困難である。また、過マンガン酸カリウム酸化法以外の製造方法を用いて、二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を合成した例は報告されておらず、過マンガン酸カリウムを使用しない二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造方法が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造における上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、二置換テトラメチルキサンテンを酸化するに際し、低級脂肪族カルボン酸溶媒中、または、低級脂肪族カルボン酸と、水、低級脂肪族カルボン酸無水物および有機溶剤からなる群から選ばれる少なくとも一つとの混合溶媒中で、コバルト化合物およびマンガン化合物から選ばれる1以上の重金属化合物と臭素化合物とを含む触媒の存在下、酸素含有ガスにより酸化し、二置換キサンテンテトラカルボン酸を単離することなく、低級脂肪族カルボン酸無水物を途中添加することで、二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を高収率で、かつ、廃棄物も少なく、工業的に実施可能な方法で製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明は、下記式(1)で表される9,9−二置換−2,3,6,7−テトラメチルキサンテンを、低級脂肪族カルボン酸溶媒中、または、低級脂肪族カルボン酸と、水、低級脂肪族カルボン酸無水物および有機溶剤からなる群から選ばれる少なくとも一つとの混合溶媒中で、コバルト化合物およびマンガン化合物から選ばれる1以上の重金属化合物と臭素化合物とを含む触媒の存在下、酸素含有ガスにより酸化させ、9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸とし、更に、反応相に低級脂肪族カルボン酸無水物を添加し、無水物化を行って下記式(2)で表される9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物を得る、9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造方法を提供する。換言すると、本発明は、二置換テトラメチルキサンテンから酸素酸化を経由し、二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を製造する方法である。
【0006】
【化2】
【0007】
(上記式(1)および(2)中、R1 およびR2 は、それぞれ独立して、フェニル基、または、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜3個のアルキル基を表す。)
【0008】
前記式(1)および(2)中、R1 およびR2 が、いずれもメチル基であるのは、本発明の好適な態様の一つである。
【0009】
前記9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸の生成率が0. 5〜90%となった時点で、前記低級脂肪族カルボン酸無水物を添加するのが好ましい。
【0010】
前記重金属化合物が酢酸塩であり、かつ、前記臭素化合物が臭化水素、臭化ナトリウム、臭化カリウムおよび臭化アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも一つであるのが好ましい。
【0011】
前記反応相より前記9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物を分離して得られる母液、または、該母液より回収した低級脂肪族カルボン酸、低級脂肪族カルボン酸無水物および有機溶剤からなる群から選ばれる少なくとも一つを、前記混合溶媒の原料として再使用するのが好ましい。
【0012】
更に、得られた9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物を、水、無機酸溶液および有機酸溶液からなる群から選ばれる少なくとも一つを含有する洗浄液で洗浄して精製するのは、本発明の好適な態様の一つである。
【0013】
また、更に、得られた9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物を昇華させて精製するのも、本発明の好適な態様の一つである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、原料として使用される化合物は、上記式(1)で表される二置換テトラメチルキサンテンである。上記式(1)中、R1 およびR2 は、それぞれ独立して、フェニル基、または、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜3個のアルキル基を表す。
上記式(1)で表される二置換テトラメチルキサンテンの具体例としては、下記の各化合物が挙げられる。
【0015】
【化3】
【0016】
中でも、前記式(1)および(2)中、R1 およびR2 が、いずれもメチル基であるものを用いるのは、本発明の好適な態様の一つである。
【0017】
これらの各化合物は、J.Org.Chem.1997,62,1058−1063、特開平9−3056号公報およびMacromolecules 1994,27,1136−1146に報告されているように、既知の方法で容易に得ることが可能である。
【0018】
本発明においては、反応溶媒として、低級脂肪族カルボン酸、または、低級脂肪族カルボン酸と、水、低級脂肪族カルボン酸無水物および有機溶剤からなる群から選ばれる少なくとも一つとの混合溶媒が用いられる。
反応溶媒に用いられる低級脂肪族カルボン酸は、炭素数1〜5個の脂肪族カルボン酸であるのが好ましい。好ましい低級脂肪族カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸が挙げられる。中でも、反応が速やかに進行することから、酢酸、プロピオン酸が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
低級脂肪族カルボン酸の使用量は、二置換テトラメチルキサンテンに対して、通常、1〜50質量倍であり、好ましくは3〜25質量倍である。使用量が少なすぎると、反応速度が低下し、副生成物が生成し、また、使用量が多すぎると、反応速度が低下する。
【0019】
反応溶媒に用いられる低級脂肪族カルボン酸無水物は、炭素数2〜8個の低級脂肪族カルボン酸無水物であるのが好ましい。好ましい低級脂肪族カルボン酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸が挙げられる。中でも、反応が速やかに進行することから、無水酢酸、無水プロピオン酸が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
低級脂肪族カルボン酸無水物の使用量は、反応溶媒として用いられるものと後から反応相に添加されるものとの合計で、二置換テトラメチルキサンテンに対して、通常、1〜50mol倍であり、好ましくは3〜25mol倍である。使用量が少なすぎると、反応が途中で停止し、また、使用量が多すぎると、反応速度が低下する。
【0020】
反応溶媒に用いられる有機溶剤は、特に限定されないが、例えば、アセトン、トルエン、塩化メチレン、ヘキサン、炭素数1〜5個の低級脂肪族アルコール、メチルエチルケトンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶剤の使用量は、二置換テトラメチルキサンテンに対して、通常、50質量倍以下であり、好ましくは25質量倍以下である。使用量が多すぎると、反応速度が著しく低下する。
【0021】
反応溶媒に用いられる水の使用量は、二置換テトラメチルキサンテンに対して、通常、50質量倍以下であり、好ましくは25質量倍以下である。使用量が多すぎると、反応速度が著しく低下する。
【0022】
混合溶媒の組成比は、特に限定されないが、使用する全溶媒量に対して、低級脂肪族カルボン酸以外の溶媒が40質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましい。
【0023】
本発明においては、触媒として、コバルト化合物およびマンガン化合物から選ばれる1以上の重金属化合物と臭素化合物とを含む触媒が用いられる。
重金属化合物としては、1種以上のコバルト化合物のみを用いてもよく、1種以上のマンガン化合物のみを単独で用いてもよく、1種以上のマンガン化合物と1種以上のコバルト化合物とを混合して用いてもよい。
好ましい重金属化合物としては、例えば、Co(OAc)2 、Mn(OAc)2 、Co(OAc)2 ・4H2 O、Mn(OAc)2 ・4H2 O、CoCl2 、MnCl2 、CoCl2 ・6H2 O、MnCl2 ・4H2 O、CoCO3 、MnCO3 が挙げられる。中でも、反応が速やかに進行することから、酢酸塩を用いるのが好ましい。即ち、Co(OAc)2 およびMn(OAc)2 の一方または両方を用いるのが好ましい。
【0024】
重金属化合物の使用量は、二置換テトラメチルキサンテンに対して、0. 01〜10mol倍であるのが好ましく、0. 05〜5mol倍であるのがより好ましい。重金属化合物の使用量が少なすぎると、反応が進行せず、また、使用量が多すぎると副生成物が生成する。
【0025】
重金属化合物として、コバルト化合物とマンガン化合物とを混合して用いる場合においては、その混合比は、コバルト化合物およびマンガン化合物の合計に対して、コバルト化合物が20〜90mol%であるのが好ましく、30〜70%であるのがより好ましい。
【0026】
臭素化合物としては、特に限定されないが、臭化水素、臭化ナトリウム、臭化カリウムおよび臭化アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも一つが挙げられる。中でも、反応が速やかに進行することから、特に臭化水素、臭化ナトリウムが好ましい。
【0027】
臭素化合物の使用量は、二置換テトラメチルキサンテンに対して、0. 01〜10mol倍であるのが好ましく、0. 05〜5mol倍であるのがより好ましい。臭素化合物の使用量が少なすぎると、反応が進行せず、また、使用量が多すぎると、反応容器の腐食が激しくなる。
【0028】
重金属化合物と臭素化合物との混合比は、臭素化合物に対する重金属化合物のモル比が、0. 01〜10であるのが好ましく、0. 05〜4であるのがより好ましい。
【0029】
本発明においては、二置換テトラメチルキサンテンの酸化を行うために、酸素含有ガスが用いられる。
酸素含有ガスとしては、酸素ガスを単独で用いてもよく、酸素を窒素、アルゴン等の不活性ガスと混合して用いてもよく、空気を用いてもよいが、反応の進行速度が速いことから、酸素ガスを単独で使用するのが好ましい。酸素ガスを単独で使用する場合、実質的に酸素ガスのみを含有するガスであれば多少の不純物を含有してもよく、酸素ガス濃度が100%である必要はない。
【0030】
本発明において後から反応相に添加される低級脂肪族カルボン酸無水物は、上述した反応開始時から反応溶媒として用いられる低級脂肪族カルボン酸無水物と同様である。
後から反応相に添加される低級脂肪族カルボン酸無水物の使用量(反応溶媒に低級脂肪族カルボン酸無水物を用いる場合、反応溶媒として用いられるものと後から反応相に添加されるものとの合計)は、1〜50mol倍であるのが好ましく、5〜25mol倍であるのがより好ましい。使用量が少なすぎると、反応が途中で停止し、また、使用量が多すぎると、反応速度が低下する。
低級脂肪族カルボン酸無水物は、一度に添加してもよく、複数回に分けて添加してもよい。添加回数は、1〜6回であるのが好ましく、1〜4回であるのがより好ましい。
【0031】
本発明の9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造方法においては、まず、上記二置換テトラメチルキサンテンを、上記混合溶媒中で、上記触媒の存在下、上記酸素含有ガスにより酸化させ、二置換キサンテンテトラカルボン酸とする。そして、更に、反応相に低級脂肪族カルボン酸無水物を添加し、無水物化を行って二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を得る。
ここで、反応相に低級脂肪族カルボン酸無水物を添加するタイミングは、酸化反応が開始して二置換キサンテンテトラカルボン酸が生成し始めた後であれば特に限定されないが、二置換キサンテンテトラカルボン酸の生成率が0. 5〜90mol%となった時点で、上記低級脂肪族カルボン酸無水物を添加するのが好ましい。このタイミングで添加すると、高収率で二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を得ることが可能である。
【0032】
酸化反応および無水物化反応の温度は、それぞれ50〜180℃であるのが好ましく、80〜150℃であるのがより好ましい。これらの反応温度が低すぎると、反応速度が著しく低下し、また、高すぎると途中で反応が停止する。また、反応容器内の圧力は、常圧から50kg/cm2 (約4.90×103 kPa)までであるのが好ましく、常圧から10kg/cm2 (約9.81×102 kPa)までであるのがより好ましい。
【0033】
本発明に用いられる反応容器は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
また、反応容器へ酸素含有ガスを導入する方法は、特に限定されないが、ガス導入管の先を反応液面より上に設置して導入する方法、または、ガス導入管の先を反応液中に浸せきさせて導入する方法を用いるのが好ましい。
【0034】
上述したように、本発明により二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を製造した後、反応後の混合物をかくはんしながら放置し、もしくは、冷却して、または、そのまま放置し、もしくは、冷却して、好ましくは−15〜50℃、より好ましくは−5〜35℃とし、二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を結晶化させた後、ろ過または遠心分離を行うことにより、反応混合物から二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を分離することができる。
【0035】
このようにして分離して得られた二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物は、そのまま使用することも可能である。また、更に精製することにより、より高純度化させることも可能である。
二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物の結晶の精製方法は、特に限定されない。例えば、得られた二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を、水、無機酸溶液および有機酸溶液からなる群から選ばれる少なくとも一つを含有する洗浄液で洗浄して精製する方法、得られた二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を昇華させて精製する方法が好適に例示される。これらの方法によれば、二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物の結晶に含有される有機物、金属等が除去され、より高純度の二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物が得られる。
【0036】
一方、反応後の混合物から二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物結晶を分離して得られる母液は、上記混合溶媒の原料として再使用することが可能である。この場合、混合溶媒の成分を添加して用いてもよいし、母液をそのまま反応溶媒として用いもよい。
また、前記母液から、低級脂肪族カルボン酸、低級脂肪族カルボン酸無水物および有機溶剤からなる群から選ばれる少なくとも一つを回収し、混合溶媒の原料として再使用することも可能である。回収の方法としては、例えば、蒸留が挙げられる。
これらの方法のように、反応後の混合物から得られる母液を再使用すると、コストを低く抑えることができる点で好ましい。また、母液には未反応物も残存しているため、収率を高くすることもできる。
【0037】
【実施例】
つぎに、実施例によって本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
還流冷却管、ガス吹込み管、温度計およびかくはん機を装着した500mL容のガラス製四つ口フラスコに、9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラメチルキサンテン13. 3g、酢酸コバルト4水塩1. 24g、酢酸マンガン4水塩1. 22g、臭化ナトリウム1. 04gおよびプロピオン酸100mLを仕込み、ガス導入管の先を反応液中に浸せきさせて、酸素ガスを30mL/minで系内にバブリング導入した。温度100℃で反応を行い、5時間後、無水プロピオン酸40mLを添加し、その後反応温度を130℃まで昇温させた。更に、19. 5時間反応を行った後に、再度無水プロピオン酸40mLを添加した。1. 5時間後、加熱を停止し、得られた反応生成物を0〜5℃に冷却し、減圧ろ過分離し、プロピオン酸20mLで結晶を洗浄した。得られた結晶を減圧乾燥し、9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物結晶を15. 0g得た(収率85. 8mol%)。
【0039】
(実施例2)
実施例1において、結晶を分離した母液からプロピオン酸を蒸留で回収し、回収したプロピオン酸を使用した以外は、実施例1と同様にして反応を行い、9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物結晶を13. 7g得た(収率78. 1mol%)。
【0040】
(実施例3)
実施例1において、四つ口フラスコに仕込んだプロピオン酸100mLの代わりに酢酸250mLを用い、かつ、反応開始後2回添加した無水プロピオン酸40mLの代わりに無水酢酸60mLを用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行い、9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物結晶を11. 5g得た(収率65. 8mol%)。
【0041】
(実施例4)
実施例1において、臭化ナトリウム1.04gの代わりに濃度47質量%の臭化水素酸(臭化水素水溶液)を1. 72g用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行い、9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物結晶を15. 0g得た(収率85. 8mol%)。
【0042】
(実施例5)
実施例1で合成した9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物の昇華精製を以下のようにして行った。
ガラス製の昇華精製装置に9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物結晶4. 81g(0. 014mol)を仕込み、0. 15〜0. 22mmHgの減圧下、350〜400℃の温度下で昇華精製を行い、9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物結晶3. 40gを得た(精製の収率70. 7mol%)。
昇華前の結晶は黄色であったが、昇華後の結晶は淡黄色となった。また、DSC(示差走査熱量測定)を行ったところ、昇華前においては、分解開始温度375. 0℃、ピーク温度383. 9℃であったが、昇華後においては、分解開始温度387. 0℃、ピーク温度392. 1℃となった。
【0043】
(実施例6)
実施例2で合成した9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物の洗浄による精製を以下のようにして行った。
還流冷却管、ガス吹込み管、温度計およびかくはん機を装着した100mL容のガラス製四つ口フラスコに、9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物結晶11. 25g(0. 032mol)および濃度1mol/Lの塩酸(塩化水素水溶液)45gを仕込み、50℃で2時間かくはんした。得られた反応生成物を0〜5℃に冷却し、減圧ろ過分離し、水45gで結晶を洗浄した。この操作を3回繰り返した。減圧ろ過で得られた結晶とイオン交換水45gとを再度フラスコに仕込み、50℃で2時間かくはんした。そのまま0〜5℃に冷却し、減圧ろ過で結晶を分離し、その結晶をイオン交換水で洗浄した。得られた結晶を減圧乾燥し、9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物結晶9. 98gを得た(精製の収率88. 7mol%)。
洗浄前の結晶は淡黄色であったが、洗浄後の結晶は灰白色となった。また、DSCを行ったところ、洗浄前においては、分解開始温度382.6℃、ピーク温度386.5℃であったが、洗浄後においては、分解開始温度387. 6℃、ピーク温度390.7℃となった。
【0044】
(比較例1)
還流冷却管、ガス吹込み管、温度計およびかくはん機を装着した500mL容のガラス製四つ口フラスコに、9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラメチルキサンテン5.00g、ピリジン25gおよび水50gを仕込み、昇温した。還流が始まったことを確認した後、過マンガン酸カリウム塩50.82gを40分間かけて添加した。更に2時間反応させた後、熱時ろ過で二酸化マンガンの結晶を除去し、熱水で洗浄した。得られた母液を0〜5℃に冷却し、pH1以下になるまで濃塩酸を1時間かけて滴下した。このとき、白い結晶が析出した。そのまま1時間かくはんした後、結晶を減圧ろ過分離し、100gの水で結晶を洗浄した。得られた結晶を減圧乾燥し、9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸を6.02g得た(収率82.9mol%)。
還流冷却管、ガス吹込み管、温度計およびかくはん機を装着した100mL容のガラス製四つ口フラスコに、合成した9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸4.55gおよび無水酢酸68mLを仕込み、還流下で1時間反応させた。0〜5℃の冷却下で更に1時間かくはんした後、結晶を減圧ろ過分離し、20mLの無水酢酸で結晶を洗浄した。得られた結晶を減圧乾燥し、9,9−ジメチル−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物結晶を2.33g得た(収率56.4mol%)。
【0045】
【発明の効果】
本発明の9,9−二置換−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物の製造方法は、二置換テトラメチルキサンテンを、酸素を酸化剤として用いて酸化した初めての例である。また、本発明によれば、ワンポットで酸化反応と無水物化反応を行うことが可能であり、従来の過マンガン酸カリウム酸化法と比べて、格段に簡便に行うことができる。したがって、本発明によれば、工業的規模で安全かつ温和な条件下で、かつ、高収率で、二置換キサンテンテトラカルボン酸二無水物を製造することができる。
Claims (7)
- 下記式(1)で表される9,9−二置換−2,3,6,7−テトラメチルキサンテンを、低級脂肪族カルボン酸溶媒中、または、低級脂肪族カルボン酸と、水、低級脂肪族カルボン酸無水物および有機溶剤からなる群から選ばれる少なくとも一つとの混合溶媒中で、コバルト化合物およびマンガン化合物から選ばれる1以上の重金属化合物と臭素化合物とを含む触媒の存在下、酸素含有ガスにより酸化させ、9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸とし、更に、反応相に低級脂肪族カルボン酸無水物を添加し、無水物化を行って下記式(2)で表される9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物を得る、9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造方法。
- 前記式(1)および(2)中、R1 およびR2 が、いずれもメチル基である請求項1に記載の9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造方法。
- 前記9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸の生成率が0. 5〜90%となった時点で、前記低級脂肪族カルボン酸無水物を添加する請求項1または2に記載の9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造方法。
- 前記重金属化合物が酢酸塩であり、かつ、前記臭素化合物が臭化水素、臭化ナトリウム、臭化カリウムおよび臭化アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜3のいずれかに記載の9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造方法。
- 前記反応相より前記9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物を分離して得られる母液、または、該母液より回収した低級脂肪族カルボン酸、低級脂肪族カルボン酸無水物および有機溶剤からなる群から選ばれる少なくとも一つを、前記混合溶媒の原料として再使用する請求項1〜4のいずれかに記載の9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造方法。
- 更に、得られた9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物を、水、無機酸溶液および有機酸溶液からなる群から選ばれる少なくとも一つを含有する洗浄液で洗浄して精製する、請求項1〜5のいずれかに記載の9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造方法。
- 更に、得られた9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物を昇華させて精製する、請求項1〜5のいずれかに記載の9,9−二置換−2,3,6,7−キサンテンテトラカルボン酸二無水物の製造方法。
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