JP2006071998A - 定着ベルト、定着装置および画像形成装置 - Google Patents

定着ベルト、定着装置および画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】抵抗加熱方式の定着ベルトと比べてウォームアップタイムが短縮できると共に、従来の電磁誘導加熱方式の定着ベルトと比べて機械的ストレスによる金属発熱層のクラック等による耐久性の低下を抑制して長期に渡って安定した発熱特性が維持できる定着ベルトを提供すること。
【解決手段】 磁界が印加された際に発生する渦電流により発熱する金属発熱層を含み、記録媒体の表面に形成された未定着トナー像を加熱押圧することにより定着する定着ベルトにおいて、前記金属発熱層の前記記録媒体が位置する側と反対側の面に設けられた耐熱性樹脂からなる保護層と、前記金属発熱層の前記記録媒体が位置する側の面に設けられた金属保護層とを含み、且つ、前記金属発熱層と前記金属保護層とが下式(1)を満たすことを特徴とする定着ベルト。
・式(1) ρA>ρB
〔但し、式(1)中、ρAは、前記金属保護層の固有抵抗(Ω・cm)を表し、ρBは前記金属発熱層の固有抵抗(Ω・cm)を表す。〕
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子写真方式を利用した複写機やプリンター等における、電磁誘導加熱方式の定着装置用の定着ベルト、これを用いた定着装置、および、この定着装置を用いた画像形成装置に関する。
従来、電子写真方式の複写機やプリンター等の画像形成装置では、用紙等の記録媒体上に形成されたトナー像を記録媒体上に定着し、永久画像にするための工程を定着工程と呼んでいる。前記定着工程では、従来、圧力定着、オーブン定着、溶剤定着、熱圧力定着法等の方式が利用されているが、これらの方式の中でも熱を有効に伝えられ、未定着トナー像をより強固に定着させられ、かつ比較的安全であるため、熱圧力定着法がもっとも一般的である。
熱圧力定着法は、未定着トナー像が形成された記録媒体を、加熱された2本のロールあるいはベルトにより構成されたニップ内を通過させ、ニップ通過時にロールあるいはベルトによって加熱され溶融状態となった未定着トナー像を、ニップに加わる圧力により記録媒体に押圧することにより記録媒体表面に定着させる方法である。この時、未定着トナー像に熱を伝えるために、ハロゲンヒーター等の加熱手段により、定着部材(ロールまたはベルト)を加熱している。
定着部材を加熱する方法として、例えば、定着部材がロール(定着ロール)である場合には、一般的には、ロールの内部に設けたハロゲンヒーターの輻射熱によりロール内から加熱する方法が用いられてきた。この方法ではロール内からの加熱であるため、本来加熱したいロール表面が定着可能な状態まで加熱されるのに時間がかかってしまう。そのため、ユーザーがコピーあるいはプリントを行う際に、待ち時間が発生してしまっていた。また、待ち時間を少しでも短くするため、待機中に定着ロール表面を定着温度以下の高温状態に加熱しつづけることが一般的に行われていたが、不使用時にも加熱しているため消費電力が大きくなり、近年の地球温暖化防止等の省エネに対する要求を満足していなかった。
そこで、省エネに対応した定着方法として薄膜フィルムと固定ヒーターを用いた定着装置が提案されている(例えば、特許文献1,2等参照)。このような技術開発をきっかけに、定着部材として膜厚の薄いベルトを使い、その内面に面状の抵抗発熱体を配置して、加熱する方法が広く用いられるようになった。この方法では、ロールを中央から加熱する方法に比べて、断熱層である空気層を介さなくてよい上に、ロールの芯軸を加熱する必要がないため、ロール中央から加熱する方法にくらべて定着が可能となる時間を短縮することができる。
しかし、上述のベルトと面状の抵抗発熱体を用いた定着法では、ヒーターである面状抵抗発熱体自身が熱容量を持っており、十分に定着が可能となる時間がユーザーにとって待ち時間が感じられないほどの短縮させることが難しい。加えて、面状の抵抗発熱体の軸方向の温度均一化も困難であることから、十分な省エネ化・高画質化がなされたとはいえないのが現状である。
一方、近年、電磁誘導加熱方式により定着部材を加熱する方法が検討されている(例えば、特許文献3,4等参照)。この電磁誘導加熱方式による定着方法について以下にその発熱原理を説明する。
電磁誘導加熱方式を利用した定着装置(誘導加熱定着装置)では、定着部材や、加圧部材のほかに、コイルが用いられる。このコイルは定着部材の内部あるいは外部の定着部材に近接した位置に設置され、高周波電源と電気的に接続される。また、定着部材としては、金属発熱層を有する構成であれば、ロール形状であろうがベルト形状であろうが形状に関わり無く、どちらでも誘導加熱は可能である。
このような定着装置による定着は以下のように行われる。まず、高周波電源により高周波の交流電流をコイルに流す。このとき、コイルには電流の向きに応じたコイルが巻回された面に直行する向きに磁束が発生する。この磁束は、コイルに近接して設置された定着部材の金属発熱層を横切ることとなり、定着部材の金属発熱層には、この磁束を打ち消す方向に磁界を発生するような渦電流が発生する。金属発熱層は、この層を構成する金属材料と層の厚さで決まる抵抗値を持っているため、発生した渦電流による電気エネルギーは熱エネルギーに変換される。
この時の金属発熱層の発熱により定着部材表面が加熱されるため、定着部材と加圧部材との成すニップを、未定着トナー像が形成された記録媒体が通過すると、未定着トナー像が記録媒体に加熱圧着され、定着される。
この方法では、本来加熱したい定着部材の表面を効果的、かつ、高熱効率で加熱することができるため、定着可能となるまでの時間(以下、「ウォームアップタイム」と称す場合がある)を極限まで短縮できる可能性がある。前述したように、誘導加熱定着装置では、定着部材としてロールを用いたロールタイプと、ベルトを用いたベルトタイプとがあり、いずれの場合でも定着部材に近接した位置に配置したコイルに高周波電流を流すことで、定着部材の金属発熱層に誘導起電力を生じさせ、渦電流が流れることで加熱される。
定着部材がロールタイプの場合、金属発熱層としてはロールを構成する芯金を利用することができ、コイルによって渦電流が発生し加熱されるような材質・厚さの芯金を選択することで定着可能温度まで加熱が可能である。しかし、ロールタイプでは加熱されるのが芯金であることから、従来の加熱方式と比べて、定着部材表面と芯金との間に空気層が無いため定着可能な温度に達するのは速い。しかし、芯金自体に剛性が必要とされるため、数mm程度の厚さが必要とされる。
その結果、金属発熱層の機能を兼ねる芯金の熱容量は大きくならざるを得なく、加熱するのには時間がかかるため、ウォームアップタイムを十分に短縮できない。
一方、定着部材がベルトタイプである場合には、金属発熱層を基材とした定着ベルトを用いる定着方法と、耐熱性樹脂からなる基材上に金属発熱層を設けた構成の定着ベルトを用いる方法とがある。金属発熱層が基材を兼ねる定着ベルトの場合、基材としてある程度の強度が必要であるため、基材の機能も兼ねる金属発熱層の厚さは数十μm〜200μm程度は必要である。このためロールタイプの定着部材ほどではないが、基材の熱容量が大きくなってしまうため、定着ベルト表面が加熱されるのに時間が必要となってしまう。
また、加圧部材とこの定着ベルトでニップを形成するために、定着ベルト内部の加圧部材と対向する位置に、ニップに押圧力を加える押圧部材を配置しなければならない。この押圧部材は通常加圧部材と均一な圧力でニップを形成し、かつニップ幅を確保するためにゴムパッドを用いるケースが多い。しかしながら、このゴムパッドと金属からなる基材との摺動性が悪いため、パッドを激しく劣化させてしまう場合があった。
一方、耐熱性樹脂からなる基材上に金属発熱層を設けたタイプの定着ベルトの場合、基材に使われる耐熱性樹脂としては、ポリイミドやポリアミドイミドなどのようなエンジニアリングプラスチックで、200℃以上の耐熱性があり、強度がある程度以上のものが使われている。基材が耐熱性樹脂からなる定着ベルトの場合は耐熱性樹脂からなる基材により強度が確保されているため、金属発熱層は発熱性能が十分に確保できるのであれば、その膜厚を薄くすることができる。そのため金属発熱層が基材の機能も兼ねる定着ベルトと比較して、ウォームアップタイムの短縮が可能となる。また基材が耐熱性樹脂からなるため、ニップを形成するために定着ベルトの内面に設けられるゴムパッドとの摺動性も良好である。
耐熱性樹脂からなる基材上に設けられる金属発熱層は、基材上に均一な膜厚で形成される必要がある。この金属発熱層の膜厚は、この層を構成する金属の種類にもより一概には言えないが、低抵抗な金属であるほど薄くすることができ、加えて定着可能な温度に達する時間が短くすることが可能となる。一般的には、金・銀・銅・アルミニウムなどの金属が金属発熱層を構成する材料として用いられる場合が多い。
これら金属の薄膜を耐熱性樹脂からなる基材上に形成する方法としては、めっき法・蒸着法・スパッタリング等の金属薄膜形成方法が挙げられる。金属薄膜は金属種によって適切な膜厚が存在することは前に述べた通りだが、その膜厚が薄いほど定着ベルトそのものの剛直性が緩和され、よりフレキシブルになるため適切なニップを形成しやすく、そのため良好な定着画質が得られる。また薄いほど金属発熱層の持つ熱容量を低くできるため、ウォームアップタイムを短縮できるという利点もある。したがって、金属発熱層の形成に際しては、膜厚が薄くても十分に発熱するような低抵抗金属を選択し、この金属をなるべく薄く、かつ、均一に成膜することが必要となる。
しかしながら、上述の金属発熱層を耐熱性樹脂からなる基材上に形成した定着ベルトにでは、金属発熱層の耐久性に欠けているのが現状である。
特に、金属発熱層の熱容量を小さくしウォームアップタイムを短縮でき、さらに定着ベルト自体のフレキシブル性を向上させることで良好な画質を得るためには、金属発熱層の膜厚が薄ければ薄いほど好ましいが、その反面、金属発熱層の膜としての強度は低下してしまう。
また定着部材は、記録媒体上の未定着トナー像を溶融すると同時に、圧力をかけて記録媒体により強固に固着させるため、この定着ベルトに対向する位置に設けられた加圧部材(加圧ロール・加圧パッド・加圧ベルト等)との間にニップ荷重が印加して使われる。このとき、金属発熱層が薄い場合、定着に必要なニップ荷重によって、クラックや亀裂といったディフェクトを生じるケースがあった。 またニップ荷重が低い場合においても、定着ベルトがニップ内を何度も通過し、繰り返し屈曲ストレスを受けることにより金属発熱層がクラック・亀裂等のディフェクトを生じることがある。
このような定着部材において、金属発熱層にクラック・亀裂等のディフェクトが生じると、金属発熱層の抵抗が上昇したり、あるいは、金属発熱層内で電気的に絶縁状態になるため、発熱特性が低下することになる。また、発生したクラックが亀裂までにはいたらず、溝状のディフェクトになっていたとすると、局所的に膜厚が薄い部分ができた状態になり、その結果、溝部では異常発熱を起こしてしまう。この異常発熱は、定着ベルトの表面を被覆する離型層が焼けたり、溶けたりして、定着部材としての耐久性を著しく低下させる原因ともなっていた。
そこで、基材を構成する耐熱性樹脂としてポリイミド樹脂を用い、基材の形成に際しこのポリイミド樹脂のイミド化率を制御することにより、基材に柔軟性を付与し、この基材上に設けられる金属発熱層への機械的なストレスを低減する技術が提案されている(特許文献5参照)。
しかし、ニップにおけるストレスによっては金属発熱層が受ける機械的ストレスは、基材に柔軟性を付与しただけでは十分に緩和できないため、金属発熱層の耐久性劣化を十分に解決できるには至っていない。
特開昭63−313182号公報 特開平4−44074号公報 特開平11−352804号公報 特開2000−188177号公報 特開2001−341231号公報
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、抵抗加熱方式の定着ベルトと比べてウォームアップタイムが短縮できると共に、従来の電磁誘導加熱方式の定着ベルトと比べて機械的ストレスによる金属発熱層のクラック等による耐久性の低下を抑制して長期に渡って安定した発熱特性が維持できる定着ベルト、これを用いた定着装置、および、この定着装置を用いた画像形成装置を提供することを課題とする。
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1>
磁界が印加された際に発生する渦電流により発熱する金属発熱層を含み、記録媒体の表面に形成された未定着トナー像を加熱押圧することにより定着する定着ベルトにおいて、
前記金属発熱層の前記記録媒体が位置する側と反対側の面に設けられた耐熱性樹脂からなる保護層と、前記金属発熱層の前記記録媒体が位置する側の面に設けられた金属保護層とを含み、且つ、前記金属発熱層と前記金属保護層とが下式(1)を満たすことを特徴とする定着ベルトである。
・式(1) ρA>ρB
〔但し、式(1)中、ρAは、前記金属保護層の固有抵抗(Ω・cm)を表し、ρBは前記金属発熱層の固有抵抗(Ω・cm)を表す。〕
<2>
前記金属保護層の固有抵抗ρAが、前記金属発熱層の固有抵抗ρBの2倍以上であることを特徴とする<1>に記載の定着ベルトである。
<3> 前記耐熱樹脂からなる保護層の厚さが10μm〜100μmの範囲内であることを特徴とする<1>または<2>に記載の定着ベルトである。
<4> 前記金属発熱層の厚さが3μm〜20μmの範囲内であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1つに記載の定着ベルトである。
<5> 前記金属保護層の厚さが1μm〜10μmの範囲内であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1つに記載の定着ベルトである。
<6> 前記金属発熱層が銅を主成分とする金属からなることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1つに記載の定着ベルトである。
<7> 前記金属保護層がニッケルを主成分とする金属からなることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1つに記載の定着ベルトである。
<8> 前記耐熱樹脂からなる保護層がポリイミド樹脂を含むことを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1つに記載の定着ベルトである。
<9> 前記金属保護層の前記金属発熱層が設けられた側と反対側の面に離型層が設けられたことを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1つに記載の定着ベルトである。
<10> 前記離型層がフッ素樹脂を含むことを特徴とする<9>に記載の定着ベルトである。
<11> 前記金属保護層と離型層との間に弾性層を設けたことを特徴とする<9>に記載の定着ベルトである。
<12>
磁界が印加された際に発生する渦電流により発熱する金属発熱層を含む定着ベルトと、該定着ベルトに当接してニップを形成し回転する加圧部材と、前記定着ベルトの前記加圧部材が設けられた側と反対側の面を押圧する押圧部材と、交番電流を流すことにより前記金属発熱層に磁界を印加する励磁コイルとを含む定着装置において、
前記定着ベルトが、<1>〜<11>のいずれか1つに記載の定着ベルトであることを特徴とする定着装置である。
<13>
像担持体と、該像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電させた前記像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を現像剤により現像し未定着トナー像を形成する現像手段と、前記未定着トナー像を被転写体に転写する転写手段と、前記未定着トナー像を記録媒体に加熱定着する定着手段とを少なくとも備えた画像形成装置において、
前記定着手段が、<12>に記載の定着装置であることを特徴とする画像形成装置である。
以上に説明したように本発明によれば、抵抗加熱方式の定着ベルトと比べてウォームアップタイムが短縮できると共に、従来の電磁誘導加熱方式の定着ベルトと比べて機械的ストレスによる金属発熱層のクラック等による耐久性の低下を抑制して長期に渡って安定した発熱特性が維持できる定着ベルト、これを用いた定着装置、および、この定着装置を用いた画像形成装置を提供することができる。
<定着ベルト>
本発明の定着ベルトは、磁界が印加された際に発生する渦電流により発熱する金属発熱層を含み、記録媒体の表面に形成された未定着トナー像を加熱押圧することにより定着する定着ベルトにおいて、前記金属発熱層の前記記録媒体が位置する側と反対側の面に設けられた耐熱性樹脂からなる保護層と、前記金属発熱層の前記記録媒体が位置する側の面に設けられた金属保護層とを含み、且つ、前記金属発熱層と前記金属保護層とが下式(1)を満たすことを特徴とする。
・式(1) ρA>ρB
但し、上記式(1)中、ρAは、前記金属保護層の固有抵抗(Ω・cm)を表し、ρBは前記金属発熱層の固有抵抗(Ω・cm)を表す。
従って、本発明の定着ベルトは、抵抗加熱方式の定着ベルトと比べてウォームアップタイムが短縮できると共に、従来の電磁誘導加熱方式の定着ベルトと比べて機械的ストレスによる金属発熱層のクラック等による耐久性の低下を抑制して長期に渡って安定した発熱特性を維持することができる。
本発明の定着ベルトは、金属発熱層の記録媒体が位置する側と反対側の面に耐熱性樹脂からなる保護層(以下、「基材」あるいは「耐熱樹脂保護層」と称す場合がある)を設けている。このため、金属発熱層が基材の機能を兼ねるような場合と比べると、基材の断熱効果により金属発熱層で発生した熱の定着ベルト内面(記録媒体と接触しない側の面)側への流失が少なくなるため、ウォームアップタイムをより短縮することができる。さらに定着ベルトの内面に設けられるゴムパッドのような押圧部材との摺動抵抗を抑制することができるため、押圧部材の損傷を抑えてその寿命を延ばすことができる。
さらに、本発明の定着ベルトは、金属発熱層の記録媒体が位置する側の面に金属保護層を設けている。このため、金属発熱層は、定着ベルトが繰り返し回転を行うことによってニップ内で変形を繰り返すことによる機械的ストレスが、金属保護層により緩和されるため、長期に渡って使用しても金属発熱層でのクラック等の機械的ディフェクトの発生が抑制され、発熱特性を安定して維持することができる。
このような金属保護層を設けない場合には、金属発熱層は、その両面に引っ張り力あるいは圧縮力を強く受けるために、クラック等の機械的ディフェクトが発生し易く、長期に渡って使用した場合には、金属発熱層の電気特性や発熱特性が劣化してしまう。
また、このような金属保護層は、本来ならば金属発熱層自体に求められる機械的耐久性を肩代わりするため、本発明の定着ベルトでは、従来よりも金属発熱層の厚みをより薄くすることができる。このため、金属発熱層自体の熱容量を抑制でき、ウォームアップタイムをより短縮することができる。
また、定着ベルトの外面(記録媒体と当接する側の面)には、フッ素樹脂等の表面エネルギーの低い樹脂材料から構成される離型層等を設けることがあるが、このような離型層は、金属材料と比較すると熱伝導率が低い上に、強度にも劣る。しかしながら、本発明の定着ベルトにおいては離型層を設けるような場合において、この離型層の厚みを、より熱伝導率が高く強度にも優れた金属保護層の厚みで置き換えることで、定着ベルト全体の強度を向上させることができる上に、ウォームアップタイムもより短縮することができる。
なお、2つの抵抗の異なる第1の金属層と第2の金属層とが互いに接して設けられている場合において、これらの金属層に磁界を印加した場合には、抵抗のより低い側の金属層に渦電流が発生し、この渦電流が発生した側の金属層が発熱する。
従って、金属保護層の膜厚をtA(μm)とし、金属発熱層の膜厚をtB(μm)とした場合に、2つの金属層の抵抗値ρA/tA、ρB/tB(Ω)は、下式(2)を満たす必要がある。
・式(2) ρA/tA>ρB/tB
しかし、このような関係を満たしていたとしても、金属発熱層を構成する材料自体が低抵抗でなければ、金属発熱層に印加された磁場エネルギーを熱エネルギーに効率的に転換できず、エネルギーロスが大きくなったり、ウォームアップタイムを短縮することができないため、本発明の定着ベルトでは、上述の式(2)に加えて、式(1)も同時に満たす必要がある。
このような関係を満たさない場合には、金属発熱層に磁界が印加されても発熱せず、金属保護層が発熱層として機能する。このためウォームアップタイムが長くなり本発明の効果を奏さなくなる場合がある。
なお、金属保護層の固有抵抗ρAは、金属発熱層の固有抵抗ρBの1倍を超えることが必要であり、2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましい。金属保護層の固有抵抗ρAは、金属発熱層の固有抵抗ρBの1倍未満である場合にはウォームアップタイムが長くなり本発明の効果を奏さなくなる。また、1倍を超え2倍未満の場合では、ウォームアップタイムを確実に短縮することができるが、2倍を超える場合と比べるとやや不充分な場合がある。
また、金属保護層の固有抵抗ρAは、金属発熱層の固有抵抗ρBよりも大きければ大きい程好ましいが、材料選択肢が狭まる等の実用上の観点からは、金属保護層の固有抵抗ρAは、金属発熱層の固有抵抗ρBの20倍以下であることが好ましい。
ここで、固有抵抗の値は、JIS C 2525 「金属抵抗材料の導体抵抗および体積抵抗率試験方法」に準拠し、ダイアインスツルメンツ社製抵抗率計ロレスタGP MPC−T600型を用いて、4端子4探針法により測定した。
−定着ベルトの構成−
本発明の定着ベルトは、定着ベルトの内面側から外面側へと、耐熱樹脂保護層(基材)、金属発熱層、金属保護層がこの順に設けられた構成であれば特に限定されないが、定着時に未定着トナー像が定着ベルトの外面に固着するのを防ぐために金属保護層の外面側に離型層を設けることが好ましい。また、カラー画像の高画質化や、白黒画像の形成速度向上のために、金属保護層と離型層との間に弾性層を設けてもよい。以下に、本発明の定着ベルトを構成する各層についてより詳細に説明する。
[耐熱樹脂保護層]
本発明の定着ベルトにおける耐熱樹脂保護層は、後述する電磁誘導加熱方式の定着装置に本発明の定着ベルトを用いて繰り返し周動搬送した場合に、定着時に耐熱樹脂保護層に隣接して設けられた金属発熱層が発熱した状態でも物性低下がなく、高強度を維持できる必要がある。このため、耐熱樹脂保護層は耐熱性樹脂から主に構成される。
耐熱性樹脂の代わりに金属フィルムを用いた場合は、定着ベルトの内面と接触する押圧部材と金属フィルムとの摺動性を確保することが困難であるため、押圧部材を損傷してしまい、長期に渡って安定して画像を形成できないためである。
従って、押圧部材と接する側の保護層としてより摺動性の高い耐熱性樹脂から構成される耐熱樹脂保護層を設けることで、押圧部材との摺動抵抗がなく、押圧部材の寿命を延長させることができる。また耐熱性樹脂には断熱効果があるため、金属発熱層で発生した熱を押圧部材へ逃がすことなく効率よく使うことができる。
用いることができる耐熱性樹脂としては、ポリイミド、芳香族ポリアミド、サーモトロピック液晶ポリマー等の液晶材料など、高耐熱・高強度樹脂等が挙げられるが、この中でもポリイミドが好ましい。また耐熱性樹脂中に断熱効果のあるフィラーを加えたり、耐熱性樹脂を発泡させることにより断熱効果をさらに向上させてもよい。
耐熱性樹脂保護層の好ましい厚さは、定着ベルトの長期に渡る繰り返しの周動搬送を可能とする剛性と柔軟性とを両立させる観点から、10〜100μmの範囲内が好ましく、30μm〜80μmの範囲内がより好ましい。
耐熱性樹脂保護層の厚みが10μm未満では剛性が弱く、周動搬送中に皺になったり、両端のエッジ部分に亀裂が生じてしまう場合がある。逆に100μmを超えると、柔軟性を確保できない場合があることや熱容量が増加するためウォームアップ時間が長くなる場合がある。
[金属発熱層]
本発明の定着ベルトにおいて、金属発熱層は、磁界が印加された際にこの層内に発生する渦電流により発熱する機能を有するものであり、電磁誘導作用を生ずる金属が用いられる。かかる金属としては、例えばニッケル、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、クロム、錫、亜鉛などの単一もしくは2種類以上の合金のどちらでも選択可能である。この中でも銅、金、銀は固有抵抗が低いため、銅、金、銀およびこれらの合金が好ましく、コスト及び加工性から特に銅あるいは銅を主成分(当該主成分とは重量比で50%以上を意味し、以下も同様である)とする合金が好ましい。
前記金属発熱層の厚さは、熱容量の点から薄いほうが好ましいが、厚さが3μm未満になると、抵抗値が高くなることにより、十分な渦電流が発生し難くなり発熱が不足し、ウォームアップ時間が長くなるか、或いは、定着可能な温度まで加熱することができなくなる場合がある。また、前記金属発熱層の厚さが20μmを超えると、十分な発熱は得られるものの、金属発熱層自体の熱容量が大きくなってしまうことからウォームアップ時間が長くなってしまう場合がある。
従って、金属発熱層の厚さは3〜20μmの範囲であることが好ましく、5〜15μmの範囲であることがより好ましい。但し、金属発熱層の膜厚は、金属保護層の膜厚との関係において、既述した式(2)の関係を満たすように選択する必要がある。
[金属保護層]
金属保護層は、金属発熱層に加わる機械的ストレスを緩和してクラック等のディフェクトを抑制し金属発熱層を保護するために、十分な強度が確保できる厚みを有していることが好ましい。このため、金属保護層の膜厚は少なくとも1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。
膜厚が1μm未満の場合には、金属発熱層を十分に保護することができず、金属発熱層にクラック等のディフェクトが発生し、発熱特性が低下する等の問題を招いてしまう場合がある。
従って、金属保護層は強度を確保する点からは厚い方が好ましいが膜厚が厚くなるに伴い熱容量も増加してしまい、結果的にウォームアップ時間が長くなってしまう場合がある。このため、金属保護層の膜厚は10μm以下であることが好ましく、7μm未満であることがより好ましい。
なお、金属保護層を構成する材料は、既述した式(1)の関係を満たすのであれば、上述した金属発熱層用の材料として例示した金属材料を選択することができ、具体的にはニッケル、クロム、錫、亜鉛、あるいは、これらの金属を主成分とする合金を用いることが好ましい。
また、金属発熱層が銅あるいは銅を主成分とする合金からなる場合には、金属保護層はニッケルあるいはニッケルを主成分とする合金からなることが好ましい。
[離型層]
本発明の定着ベルトは、記録媒体と当接する側の面が、定着時に溶融状態の未定着トナー像と固着するのを防ぐために、フッ素系化合物のような低表面エネルギー材料を主成分として構成される離型層から構成されていることが好ましい。
離型層に用いられるフッ素系化合物としては、例えば、フッ素ゴムや、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、「PFA」という)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(以下、「FEP」という)等のフッ素樹脂などを用いることができるが、特に限定されるものではない。
また、この離型層の厚さは、10〜100μmの範囲内であることが好ましく、20〜50μmの範囲内であることがより好ましい。離型層の厚さが10μm未満であると、記録媒体のエッジでの繰り返し擦擦により離型層が摩滅する場合がある。一方、離型層の厚さが100μmを超えると表面の柔軟性がなくなり、その結果トナーを押しつぶす力が働き定着画像の粒状性が損なわれる場合がある。また、熱容量も大きくなるため、ウォームアップ時間が長くなったりする場合がある。
[弾性層]
本発明の定着ベルトでは、金属保護層と離型層との間に、更に弾性層を設けてもよい。特に、カラー画像を形成する場合に、弾性層を設けることが好ましい。
これはカラー画像を形成する場合には、記録媒体上に黒・マゼンタ・イエロー・シアンの4色のカラートナー像が積層された状態で定着する必要があるためである。すなわち、積層されたこれら4色のカラートナー像に均一に一定以上の熱量を与えることで4色が十分に溶融しあって鮮明なカラー画像を得るため、弾性層がない定着ベルトを使うと、積層されたトナーを押しつぶしてしまう場合がある。このため、記録媒体に近い(つまり積層された下層にある)カラートナー像に対しては十分な熱が与えられないために、定着により得られるカラー画像の発色性が低下してしまう場合があるためである。
また、白黒画像を形成する場合でも、特に高速化に対応するためには弾性層を設けることが好ましい。これは弾性層を設けることで弾性層がニップ領域内で変形し、低荷重でも十分なニップ幅が得られるために、高速であってもトナー像への熱の受け渡しができて定着が可能となるからである。
なお、弾性層を構成する材料としては、公知の弾性材料を用いることができ、このような弾性材料としては、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴムのような耐熱性のゴムを用いることが好ましい。
このような耐熱性のゴムとしては、例えば、東レダウコーニングシリコーン社製の液状シリコンゴムSE6744や、DuPont Dow elastmers社製のバイトンB−202等が挙げられる。
−定着ベルトの製造方法−
本発明の定着ベルトの製造方法としては、公知の方法を利用することができる。なお、金属発熱層や金属保護層は膜厚が薄く、これらの層単体での取り扱いが難しいため、耐熱樹脂保護層上に、金属発熱層と金属保護層とをこの順に形成することが好ましい。また、必要に応じて金属保護層上にさらに、離型層、あるいは、弾性層と離型層とを順に形成することができる。
なお、金属保護層上に、離型層、あるいは、弾性層と離型層とを塗布法により形成する場合には、これらの層を塗布形成する前に、金属保護層表面や弾性層表面に必要に応じて適切なプライマー材料による前処理を行うことが好ましい。このような前処理を行うことにより各層間の接着性をより向上させることができる。
なお、金属保護層上に離型層、あるいは、弾性層と離型層とを塗布法により積層形成する場合には、塗布形成された塗膜を加熱処理するプロセスを経て離型層や弾性層が形成される。
このような塗膜の加熱処理に際して、金属保護層が酸化しやすい金属から構成される場合には、金属保護層表面が酸化して、金属保護層表面に形成される層との密着性が低下してしまう場合がある。このような場合には、塗膜の加熱処理を不活性ガス(窒素ガス・アルゴンガス等)雰囲気下で行うことが好ましい。
<定着装置および画像形成装置>
次に、本発明の定着ベルトを用いた定着装置、および、この定着装置を用いた画像形成装置について説明する。
−定着装置−
本発明の定着ベルトは、公知の電磁誘導加熱方式の定着装置(電磁誘導加熱定着装置)の定着ベルトに用いることができる。このような本発明の定着ベルトをもちいた定着装置は、長期に渡って使用しても定着ベルトの発熱特性が低下しないため、安定して高画質を得ることができると共に、待機電力が少なくて済むために省エネルギーである。なお、本発明の定着ベルトを用いた定着装置は以下のような構成であることが好ましい。
すなわち、本発明の定着装置は、磁界が印加された際に発生する渦電流により発熱する金属発熱層を含む本発明の定着ベルトと、該定着ベルトに当接してニップを形成し回転する加圧部材と、前記定着ベルトの前記加圧部材が設けられた側と反対側の面を押圧する押圧部材と、交番電流を流すことにより前記金属発熱層に磁界を印加する励磁コイルとを少なくとも含む構成を有していることが好ましい。
このような定着装置における定着は、未定着トナー像が形成された記録媒体を、定着ベルトと加圧部材との間に形成されたニップに、未定着トナー像が加熱された定着ベルトと当接するように挿通させて行われる。この際、記録媒体がニップを通過する際に、未定着トナー像が溶融した状態で押圧され記録媒体表面に定着される。
次に、このような定着装置の具体例について、図面を用いてより詳細に説明する。
図1は本発明の定着ベルトを用いた電磁誘導加熱定着装置の一例を示す概略断面図である。図1において、10は、本発明の定着ベルトである。この定着ベルト10に接するように加圧部材11(この図では加圧ロール)が配され、定着ベルト10と加圧部材11との間にニップを形成している。加圧部材11は、基材11a上にシリコーンゴム等による弾性体層11bが形成され、さらにその上層にフッ素系化合物による離型層11cが形成された構成を有する。
定着ベルト10の内側には、加圧部材11と対向する位置に、定着ベルト10の内面を押圧し、局所的にニップ圧を高める押圧部材13が設けられている。この押圧部材13は、定着ベルト10の内面に接してニップを押圧するニップヘッド13bと、このニップヘッド13bを保持するシリコーンゴム等からなるニップパッド13cと、ニップパッド13cを支持する支持体13aとから構成されている。
さらに、定着ベルト10を中心として加圧部材11と対向する位置に、電磁誘導コイル(励磁コイル)12aを内蔵した電磁誘導加熱装置12が設けられている。電磁誘導加熱装置12は、電磁誘導コイルに交流電流を印加することにより、発生する磁場を励磁回路で変化させ、定着ベルト10の金属発熱層に渦電流を発生させるものである。この渦電流が金属発熱層の電気抵抗によって熱(ジュール熱)に変換され、結果的に定着ベルト10の表面が発熱する。
尚、電磁誘導加熱装置12は、加熱定着ベルト10内のニップ領域に対して回転方向Bの上流に設置されていてもよい。
次に、図1に示す電磁誘導加熱定着装置による定着について説明する。まず、不図示の駆動装置により加圧部材11が矢印C方向に回転し、それにつれて定着ベルト10も矢印B方向に従動回転する。ここで、未定着トナー像14が形成された記録媒体15は矢印A方向に、定着装置のニップ部に挿通される。この際、未定着トナー像14は溶融状態で記録媒体15表面に押圧され、記録媒体15表面に定着される。
尚、図1に示した例では、駆動方法はベルト駆動(ロールが従動)であったが、ロール駆動(ベルトが従動)であってもよい。
なお、図1に示す定着装置に用いる定着ベルト10としては、例えば、図2にような構成を有するものが利用できる。図2は本発明の定着ベルトの構成例を示す模式断面図である。
図2に示す定着ベルト10は、耐熱樹脂保護層10aの外周面上に、電磁誘導作用により自己発熱する導電部材からなる金属発熱層10bと、金属保護層10cと、弾性層10dと、フッ素系化合物を含む離型層10cとが順に形成された構成を有している。
次に、電磁誘導作用による金属発熱層10bの発熱原理を以下に説明する。
まず、不図示の励磁回路により電磁誘導コイル12aに交流電流が印加されると、電磁誘導コイル12aの周囲に磁束が生成消滅を繰り返す。この磁束が定着ベルト10の金属発熱層10bを横切るとき、その磁束の変化を妨げる磁界を生じるように金属発熱層10b中に渦電流が発生する。この渦電流と金属発熱層10bの固有抵抗によってジュール熱が発生する。
前記渦電流は、表皮効果のためにほとんど金属発熱層10bの電磁誘導加熱装置12側の面に集中して流れ、金属発熱層10bの表皮抵抗Rsに比例した電力で発熱を生じる。ここで、角周波数をω、透磁率をμ、固有抵抗をρとすると、表皮深さδは下式(3)で示される。
・式(3) δ=(2ρ/ωμ)1/2
さらに、表皮抵抗RSは下式(4)で示される。
・式(4) Rs=ρ/δ=(ωμρ/2)1/2
また、定着ベルト10の金属発熱層10bに発生する電力Pは、定着ベルト10中を流れる電流をIhとすると、次式で表わされる。
・式(5) P∝Rs∫|Ih|2dS
したがって、表皮抵抗Rsを大きくするか、あるいは電流Ihを大きくすれば電力Pを増すことができ、発熱量を増すことが可能となる。ここで表皮深さδ(m)は、励磁回路の周波数f(Hz)と、比透磁率μrと、固有抵抗ρ(Ω・m)により下式(6)で表わされる。
・式(6) δ=503(ρ/(fμr))1/2
これは電磁誘導で使われる電磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強度は1/e以下になっており、逆に言うとほとんどのエネルギーはこの深さまで吸収されている。
ここで、金属発熱層10bの厚みは、上記式で表わされる表皮深さより厚く(3〜100μm)することが好ましい。金属発熱層16bの厚みが3μmよりも小さいと、ほとんどの電磁エネルギーが吸収しきれないため効率が悪くなる場合があるためである。
−画像形成装置−
次に、本発明の定着装置を用いた画像形成装置について説明する。本発明の画像形成装置は、電子写真方式を利用した公知の画像形成装置において、定着装置として本発明の定着装置を用いるものであれば特に限定されないが、以下のような構成を有していることが好ましい。
すなわち、本発明の画像形成装置は像担持体と、該像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電させた前記像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を現像剤により現像し未定着トナー像を形成する現像手段と、前記未定着トナー像を被転写体に転写する転写手段と、前記未定着トナー像を記録媒体に加熱定着する定着手段(本発明の定着装置)とを少なくとも備えた構成を有することが好ましい。また、必要に応じて公知の他の機構や部材を備えていてもよい。
このような本発明の画像形成装置は、長期に渡って使用しても定着ベルトの発熱特性が低下しないため、安定して高画質を得ることができると共に、待機電力が少なくて済むために省エネルギーである。
以下、本発明の実施例を説明する。但し、実施例で用いた本発明の定着ベルトの作製方法は以下の例のみに限定されるわけではない。
(実施例1)
−定着ベルトの作製−
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚60μm、外径30mmの無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面にアルカリエッチング処理を行い、洗浄し、外周面に無電解銅めっき処理を行って銅層を0.5μm形成した。次にこの無電解銅めっき膜を電極として、この上に電解めっき処理により膜厚10μmの銅層を形成した。続いて、この銅層上に電解めっき処理により膜厚6μmのニッケル層を形成した。さらに、このニッケル層上に、フッ素樹脂(PFA)ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、その後380℃の炉内に1時間放置して、フッ素樹脂塗膜を焼成することによ膜厚30μmのPFA層を形成し、定着ベルトを得た。
−定着装置−
なお、実施例1の定着ベルトの評価には、定着ベルト、加圧ロール、励磁コイル(電磁誘導コイル)、および、定着ベルトと加圧ロールを圧接するための押圧部材を有する電磁誘導加熱定着装置(主要部が図1に示す構成を有する定着装置)に装着して評価を行った。以下に、この定着装置の詳細について説明する。
押圧部材は、定着ベルトの内径と略同一の外径部と、この外径部より大きな外形部と、定着ベルトの両端部にはめ込んで定着ベルトの軸方向への移動を規制するためのエッジガイドと、定着ベルトの内径より小さな径をもち加圧用ゴムパッド取り付け部を有するフォルダと、加圧用ゴムパッドとからなるものである。
なお、この定着装置の組み立てに際しては、押圧部材、定着ベルト、加圧ロールは以下のように配置した。
まず、押圧部材を、フォルダのパッド取り付け部に加圧用ゴムパッドを固定した後に、定着ベルトの内周側に挿入したうえで、定着ベルトの両端部に押圧部材のエッジガイドを装着させた。続いて、押圧部材を内周側に設けた定着ベルトの外周面の周方向の一部分を加圧ロールと接触させて、加圧ロールの軸と押圧部材との間に荷重をかけることで、押圧部材のゴムパッドと加圧ロールとが、定着ベルトを介して圧接させニップを形成させた(なお、加圧ロールのかわりに2本もしくはそれ以上のシャフトやローラに張った加圧ベルトを用いて、定着ベルトに圧接させてニップを形成してもよい)。
なお、エッジガイド、フォルダを構成する材料としては、交流電流による誘導起電力の発生がなく、定着温度領域での耐熱性を有する樹脂(PPS等)を用いた。
また、この定着装置に用いた励磁コイルは、互いに絶縁されたφ0.5mmの銅線を16本束ねたリッツ線を用いて、これを定着ベルトの幅より長く、定着ベルトの円周方向長さの1/6〜1/4を覆う程度の幅を持つように巻回すると共に、定着ベルトの曲率に倣うような曲率を持たせることで、励磁コイルと定着ベルトとのギャップが均一になるように形成した。なお、励磁コイルと定着ベルトとのギャップが2mmになるように定着ベルトの外周面上に固定した。
定着に際しては、この励磁コイルに、励磁回路により交流電流を流すことにより、励磁コイルの周囲に磁界を発生させる。従って、発生した磁界が定着ベルトの金属発熱層を横切る際に、電磁誘導により横切った磁界を打ち消す方向の磁界を発生させるような渦電流が金属発熱層内に発生する。これにより、このときの渦電流値と金属発熱層の持つ抵抗に応じた発熱が得られる。
加圧ロールは外径16mmの中実シャフト上に、弾性層として膜厚12mmの発泡シリコーンゴム層を設け、さらにこの層を、膜厚30μmのPFAチューブを被覆したものである。
この加圧ロールは、具体的には以下のようにして作製した。まず、PFAチューブの内周面に接着用プライマーを塗布した外径50mm、長さ340mm、厚さ30μmのフッ素樹脂チューブと、中実シャフトとを成形金型内にセットした。続いて、フッ素樹脂チューブと中実シャフトと間に液状発泡シリコーンゴムを層厚が2mmとなるように注入後、加熱処理(150℃×2hrs)によりシリコーンゴムを加硫、発泡させて弾性層を形成することにより加圧ロールを作製した。
この加圧ロールはギアを介してモーターと接続されており、加圧ロールを駆動することにより定着ベルトを従動させて、記録媒体を搬送するようにした。
−評価方法−
評価方法は、上述の電磁誘導加熱定着装置において、富士ゼロックス社製J紙を用いた20万枚の通紙テストを行い評価した。
評価項目は、発熱特性として、ウォームアップタイム(但し、到達すべき定着可能温度は180℃に設定した)および定着ベルト内温度分布と、定着ベルトの電気特性である力率の20万枚通紙前後での変化とである。ここで、力率とは励磁コイルに高周波電流を流したときの定着ベルトに設けた金属発熱層に渦電流が発生した結果、励磁コイルに流している電流及び電圧の位相差θを測定したときの、cosθの値を意味する。位相差θが0に近いほど力率は高くなり、より発熱しやすい状態であるといえる。
なお、ウォームアップタイム、定着ベルト内温度分布、力率の具体的な測定・評価方法は以下の通りである。
<ウォームアップタイム>
電磁誘導コイルに通電したときの、定着ベルト表面温度を非接触式の赤外線放射温度計(キーエンス社製)により測定し、通電開始から表面温度が180℃になるまでの時間をウォームアップタイムとした。
<定着ベルト内温度分布>
電磁誘導コイルに通電したときの、定着ベルト表面温度を非接触式の赤外線放射温度計(キーエンス社製)により測定し、表面温度が180℃に達した時点での定着ベルト面内の温度分布を検出し評価した。
なお、以下の説明で、定着ベルト内の温度分布が“均一”であるとは、定着ベルト面内の温度分布の差(最大値−最小値)が10℃以内であることを意味する。
<力率>
電磁誘導装置の励磁コイル以外の部分を横河電機社製インピーダンスメーターWT1600FCに変え、20KHzの高周波電流を励磁コイルに流した時の、電流及び電圧の位相差θを測定し、力率(cosθ)を算出した。なお、力率の評価は、通紙テスト前の力率を1.0としたときの通紙後の力率を相対評価した。
−評価結果−
この電磁誘導加熱定着装置に、実施例1で得られた定着ベルトを用いて20万枚の通紙テストを行ったところ、通紙テスト前の力率を1.0としたときに通紙後力率は1.0で変化がなかった。また通紙前後のウォームアップタイムはともに7秒で変化はなく、通紙後の温度分布は均一なままだった。
(実施例2)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚20μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面に実施例1と同様の方法でアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に膜厚10μmの銅層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚2μmのニッケル層を形成した。その後、このニッケル層上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、380℃の炉内で1時間かけて焼成を行った。フッ素樹脂層の厚さは30μmだった。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、20万枚の通紙テストを行ったところ、通紙テスト前の力率を1.0としたときに通紙後力率は0.96でほぼ変化がなかった。また通紙前後のウォームアップタイムはともに4秒で変化はなく、通紙後の温度分布は均一なままだった。
(実施例3)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚90μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面に実施例1と同様の方法でアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に膜厚10μmの銅層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚9μmのニッケル層を形成した。その後、ニッケル層上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、380℃の炉内で1時間かけて焼成を行った。フッ素樹脂層の厚さは30μmだった。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、20万枚の通紙テストを行ったところ、通紙テスト前の力率を1.0としたときに通紙後力率は1.0で変化がなかった。また通紙前後のウォームアップタイムはともに9秒で変化はなく、通紙後の温度分布は均一なままだった。
(実施例4)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚40μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面に実施例1と同様の方法でアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に膜厚12μmの銅層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚4μmのニッケル層を形成した。その後、ニッケル層上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、380℃の炉内で1時間かけて焼成を行った。フッ素樹脂層の厚さは30μmだった。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、20万枚の通紙テストを行ったところ、通紙テスト前の力率を1.0としたときに通紙後力率は0.98でほぼ変化がなかった。また通紙前後のウォームアップタイムはともに6秒で変化はなく、通紙後の温度分布は均一なままだった。
(実施例5)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚70μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面に実施例1と同様の方法でアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に膜厚8μmの銅層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚7μmのニッケル層を形成した。その後、ニッケル層上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、380℃の炉内で1時間かけて焼成を行った。フッ素樹脂層の厚さは30μmだった。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、20万枚の通紙テストを行ったところ、通紙テスト前の力率を1.0としたときに通紙後力率は1.0で変化がなかった。また通紙前後のウォームアップタイムはともに9秒で変化はなく、通紙後の温度分布は均一なままだった。
(実施例6)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚30μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面に実施例1と同様の方法でアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に膜厚5μmの銅層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚3μmのニッケル層を形成した。その後、ニッケル層上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、380℃の炉内で1時間かけて焼成を行った。フッ素樹脂層の厚さは30μmだった。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、20万枚の通紙テストを行ったところ、通紙テスト前の力率を1.0としたときに通紙後力率は0.97でほぼ変化がなかった。また通紙前後のウォームアップタイムはともに15秒で変化はなく、通紙後の温度分布は均一なままだった。
(実施例7)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚80μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面に実施例1と同様の方法でアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に膜厚15μmの銅層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚8μmのニッケル層を形成した。その後、ニッケル層上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、380℃の炉内で1時間かけて焼成を行った。フッ素樹脂層の厚さは30μmだった。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、20万枚の通紙テストを行ったところ、通紙テスト前の力率を1.0としたときに通紙後力率は1.0で変化がなかった。また通紙前後のウォームアップタイムはともに10秒で変化はなく、通紙後の温度分布は均一なままだった。
(実施例8)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚50μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面に実施例1と同様の方法でアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に膜厚10μmの銅層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚5μmのニッケル層を形成した。
さらに、このニッケル層上に塗布したプライマー(東レダウコーニング社製、DY39−111)を介して弾性層として膜厚200μmの液状シリコンゴムを塗布し、加硫処理を行った。続いて弾性層の表面に、耐熱性プライマー(テフロン(登録商標)プライマー「855−021(デュポン(株)製)」水性塗料)を塗布後、さらにPFAディスパージョン「500CL(デュポン(株)製)」水性塗料)を塗布し、380℃にて焼成して厚さ30μmの離型層を形成した。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、20万枚の通紙テストを行ったところ、通紙テスト前の力率を1.0としたときに通紙後力率は0.99でほぼ変化がなかった。また通紙前後のウォームアップタイムはともに10秒で変化はなく、通紙後の温度分布は均一なままだった。またカラー画像での画質を確認したところ良好な画質であった。
(比較例1)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚20μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面に実施例1と同様の方法でアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に膜厚10μmの銅層を形成した。その後、銅層上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、窒素パージした380℃の炉内で1時間かけて焼成を行った。フッ素樹脂層の厚さは30μmだった。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、通紙テストを行ったところ、力率は通紙枚数8万枚を経過した頃から低下し始め、端部の温度上昇が不十分となり面内の温度差が大きくなった結果、11万枚目以降定着ベルト端部の温度不足によってコールドオフセットが発生した。最終的に20万枚通紙テストを行ったが、テストの前の力率を1.0としたときに通紙後の力率は0.70に低下した。またウォームアップタイムは通紙前が6秒だったのに対して、通紙後には20秒まで遅くなった。
(比較例2)
電鋳法により作製した膜厚50μm、外径30mmのニッケル無端状ベルトの外周面に、実施例1と同様の方法で膜厚10μmの銅層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚6μmのニッケル層を形成した。その後、ニッケル層上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、380℃の炉内で1時間かけて焼成を行った。フッ素樹脂層の厚さは30μmだった。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、通紙テストを行ったところ、通紙枚数5万枚を経過すると押圧部材との擦れからベルトの従動性が悪くなり、通紙枚数6万枚で回転検知機能の動作により励磁コイルへの電源供給が止まってしまった。この時点での力率の低下はなく、ウォームアップタイムも9秒で変化はなかったが使用不可能となった。
(実施例9)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚5μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面に実施例1と同様の方法でアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に膜厚10μmの銅層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚6μmのニッケル層を形成した。その後、ニッケル層上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、380℃の炉内で1時間かけて焼成を行った。フッ素樹脂層の厚さは30μmだった。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、通紙テストを行ったところ、通紙枚数11万枚でエッジガイド(定着ベルトの軸方向への移動を規制する部材)との接触により定着ベルトの端部に折れが発生した。
端部の折れは定着ベルトの強度が不足していたためであったが、11万枚までの通紙には耐えることができ、実用上は十分な耐久性を有していることがわかった。
また、通紙前および11万枚後のウォームアップタイムはそれぞれ、4秒および4秒であり、力率はそれぞれ1.0および0.96であり、温度分布もそれぞれ均一であった。
(実施例10)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚120μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面に実施例1と同様の方法でアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に膜厚10μmの銅層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚6μmのニッケル層を形成した。その後、ニッケル層上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、380℃の炉内で1時間かけて焼成を行った。フッ素樹脂層の厚さは30μmだった。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、20万枚の通紙テストを行ったところ、通紙テスト前の力率を1.0としたときに通紙後力率は0.97でほぼ変化がなかった。また通紙前後のウォームアップタイムはともに11秒で変化はなく、通紙後の温度分布は均一なままだった。
しかし、トナーが定着ベルト表面に付着するオフセット現象が発生していた。これは定着ベルト全体の剛直性が大きくなりすぎて、用紙の剥離方向とベルト円周の接線方向がなす角度が小さくなってしまい、トナーとの離型性が低下して発生したものである。またカラー画像での発色性も損なわれていた。これはトナーをベルトが包み込む効果が充分に得られなくなったためである。
(実施例11)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚60μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面に実施例1と同様の方法でアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に膜厚22μmの銅層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚6μmのニッケル層を形成した。その後、ニッケル層上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、380℃の炉内で1時間かけて焼成を行った。フッ素樹脂層の厚さは30μmだった。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、20万枚の通紙テストを行ったところ、通紙テスト前の力率を1.0としたときに通紙後力率は1.0で変化がなかった。また通紙前後のウォームアップタイムはともに11秒で変化はなく、通紙後の温度分布は均一なままだった。
なお、カラー画像の形成に際してはトナーが定着ベルト表面に付着するオフセット現象が多少発生していた。これは定着ベルト全体の剛直性が大きくなりすぎて、用紙の剥離方向とベルト円周の接線方向がなす角度が小さくなってしまい、トナーとの離型性が低下して発生したものである。しかし、白黒画像の形成に際してはオフセットは発生しなかった。またカラー画像での発色性も多少損なわれていた。これはトナーをベルトが包み込む効果が充分に得られなくなったためである。
(実施例12)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚60μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面に実施例1と同様の方法でアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に膜厚10μmの銅層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚12μmのニッケル層を形成した。その後、ニッケル層上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、380℃の炉内で1時間かけて焼成を行った。フッ素樹脂層の厚さは30μmだった。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、20万枚の通紙テストを行ったところ、通紙テスト前の力率を1.0としたときに通紙後力率は0.97でほぼ変化がなかった。また通紙前後のウォームアップタイムはともに10秒で変化はなく、通紙後の温度分布は均一なままだった。
しかしトナーが定着ベルト表面に付着するオフセット現象が多少発生していた。これは定着ベルト全体の剛直性が大きくなりすぎて、用紙の剥離方向とベルト円周の接線方向がなす角度が小さくなってしまい、トナーとの離型性が低下して発生したものである。しかし、白黒画像の形成に際してはオフセットは発生しなかった。またカラー画像での発色性も損なわれていた。これはトナーをベルトが包み込む効果が充分に得られなくなったためである。
(比較例3)
耐熱樹脂保護層としてポリイミド樹脂(商品名:Uワニス−S、宇部興産製)を用いて膜厚60μm、外径30mmのポリイミド無端状ベルトを作製した。次に、この無端状ベルトの外周面にアルカリエッチング処理、洗浄を行った後に無電解ニッケルめっき処理を行ってニッケル層を0.5μm形成した。次にこの無電解ニッケルめっき膜を電極として、この上に電解めっき処理により膜厚10μmのニッケル層を形成した。続いて、この上に電解めっき処理により膜厚5μmの銅層を形成した。この上に、フッ素樹脂(PFA)ディスパージョン塗料(商品名:EN−710CL、三井デュポンフロロケミカル社製)を塗布し、その後窒素パージした380℃の炉内に1時間放置して、フッ素樹脂膜を焼成することにより定着ベルトを作製した。形成されたPFA層の膜厚は30μmとした。
なお、ここでニッケルの固有抵抗ρは6.84×10-6Ω・cmであり、銅の固有抵抗ρは1.67×10-6Ω・cmである。
こうして作製された定着ベルトを実施例1で用いた電磁誘導加熱定着装置に装着し、通紙テストを行なおうとしたが所定の温度(トナーを溶融する温度)に30秒かかっても到達しなかった。
以上のウォームアップタイム、定着ベルト内の温度分布、および、力率に関する評価結果をまとめたものを表1に示す。
Figure 2006071998
本発明の定着ベルトを用いた電磁誘導加熱定着装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の定着ベルトの構成例を示す模式断面図である。
符号の説明
10…定着ベルト
10a…耐熱樹脂保護層
10b…金属発熱層
10c…金属保護層
10d…弾性層
10e…離型層
11…加圧部材
11a…基材
11b…弾性体層
11c…離型層
12…電磁誘導装置
12a…電磁誘導コイル
13…押圧部材
14…未定着トナー像
15…記録媒体

Claims (4)

  1. 磁界が印加された際に発生する渦電流により発熱する金属発熱層を含み、記録媒体の表面に形成された未定着トナー像を加熱押圧することにより定着する定着ベルトにおいて、
    前記金属発熱層の前記記録媒体が位置する側と反対側の面に設けられた耐熱性樹脂からなる保護層と、前記金属発熱層の前記記録媒体が位置する側の面に設けられた金属保護層とを含み、且つ、前記金属発熱層と前記金属保護層とが下式(1)を満たすことを特徴とする定着ベルト。
    ・式(1) ρA>ρB
    〔但し、式(1)中、ρAは、前記金属保護層の固有抵抗(Ω・cm)を表し、ρBは前記金属発熱層の固有抵抗(Ω・cm)を表す。〕
  2. 前記金属保護層の固有抵抗ρAが、前記金属発熱層の固有抵抗ρBの2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の定着ベルト。
  3. 磁界が印加された際に発生する渦電流により発熱する金属発熱層を含む定着ベルトと、該定着ベルトに当接してニップを形成し回転する加圧部材と、前記定着ベルトの前記加圧部材が設けられた側と反対側の面を押圧する押圧部材と、交番電流を流すことにより前記金属発熱層に磁界を印加する励磁コイルとを含む定着装置において、
    前記定着ベルトが、請求項1または2に記載の定着ベルトであることを特徴とする定着装置。
  4. 像担持体と、該像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電させた前記像担持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を現像剤により現像し未定着トナー像を形成する現像手段と、前記未定着トナー像を被転写体に転写する転写手段と、前記未定着トナー像を記録媒体に加熱定着する定着手段とを少なくとも備えた画像形成装置において、
    前記定着手段が、請求項3に記載の定着装置であることを特徴とする画像形成装置。
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