JP2006067834A - 釣り具用表面処理剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 釣り人が釣り具の外表面に塗布することにより、優れた撥水性を有する、透明性に優れた撥水性膜を容易に形成することの可能な釣り具用表面処理剤を提供すること。
【解決手段】 釣り具の外表面に塗布して透明撥水性膜を形成可能な釣り具用表面処理剤であって、粒径0.01μm以上、0.1μm未満の撥水性微粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を含むことを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、釣り具用表面処理剤に係り、特に、優れた撥水性を有する透明撥水性膜を容易に形成することの可能な撥水剤、及びこの撥水剤により形成された透明撥水性膜を容易に除去することの可能な剥離剤に関する。
雨天の際に釣竿、特に外ガイドロッドを使用すると、竿外面が濡れてしまうため、釣り糸が竿外面にべた付いて、糸放出性が低下してしまう。糸放出性が低下した釣竿は、取扱いが厄介であり、釣り人に大きなストレスを与えてしまう。
従来、竿管の内面に、弗素樹脂粒子を混入した撥水性樹脂層を形成した中通し釣竿が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような撥水性樹脂層は、粒径の大きな弗素樹脂粒子を混入しているため、白色を呈しており、外ガイドロッドの外面に形成すると、竿外面の模様や色彩が隠蔽されて、美感が損なわれてしまう。そのため、このような撥水性樹脂層を外ガイドロッドの外面に適用することが出来なかった。
また、外ガイドロッドの外面に撥水性樹脂層が形成され、糸放出性の良好な外ガイドロッドが得られたとしても、使用により撥水性樹脂層が剥離してしまい、撥水性が劣化して、糸放出性が低下してしまう。そこで、剥離した撥水性樹脂層を釣り人が自ら繰り返し形成出来ることが望まれるが、そのような撥水性樹脂層の形成には、設備を要するか、又は人手による場合には熟練を要し、釣り人が自ら形成することは困難であった。
なお、中通し釣竿の竿管の内面では、長期の使用により撥水性樹脂層が剥離したとしても、釣り人自らが撥水剤を塗布して撥水性樹脂層を形成することは出来ないが、外ガイドロッドの外面への撥水剤の塗布は可能である。しかし、従来の釣竿用の撥水剤では、上述したように、透明性に難点があるとともに、釣り人自らが均一に塗布することは困難であった。
特開2001−120118号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、釣り人が釣り具の外表面に塗布することにより、優れた撥水性を有する、透明性に優れた撥水性膜を容易に形成することの可能な釣り具用表面処理剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、釣り具の外表面に塗布して透明撥水性膜を形成可能な釣り具用表面処理剤であって、粒径0.01μm以上、0.1μm未満の撥水性微粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を含むことを特徴とする釣り具用表面処理剤を提供する。
以上のように構成される釣り具用表面処理剤では、撥水性微粒子の粒径が0.01μm以上、0.1μm未満と非常に微細であるため、釣り具の外表面への塗布により形成された撥水性膜は、透明性に優れており、竿外面の模様や色彩が撥水性膜により隠されて、美感が損なわれることがない。
なお、撥水性微粒子の粒径が0.01μm未満では、取扱いが困難となり、また、0.1μm以上では、透明性が低下してしまう。好ましい撥水性微粒子の粒径は、0.01〜0.02μm、更に好ましくは0.01〜0.012μmである。
撥水性微粒子としては、シリカ粒子が好ましい。シリカ粒子は、バインダーに使用する樹脂との濡れ性を調整することにより膜になった際の透明性に優れている上、上記粒径の微細なものを容易に安価に入手することが出来るという利点を有する。
本発明の一態様に係る釣り具用表面処理剤において、撥水性微粒子に加え、粒径1〜8μmの撥水性粗粒子を更に含むことが望ましい。このように撥水性粗粒子を加えることにより、より複雑な表面形状を作り出し、凹部への空気の取り込みにより、より撥水性を促進することが出来る。また、撥水性粗粒子が存在することにより、撥水性微粒子が沈殿し、凝集した場合の再分散性を向上させることが出来る。
本発明の一態様に係る釣り具用表面処理剤の好ましい組成は、バインダー樹脂及び溶剤の合計量100重量部に対し、撥水性微粒子を0.05〜20重量部、撥水性粗粒子を0.01〜10重量%含むものである。
本発明の他の態様は、上述した釣り具用表面処理剤により釣り具の外表面に形成された透明撥水性膜を除去するための表面処理剤であって、環状構造を有するポリメチルシロキサン、アルコール系溶剤、シリコーンオイル、及び水を含むことを特徴とする釣り具用表面処理剤を提供する。
このような処理剤、即ち剥離剤によると、上述した釣り具用表面処理剤により釣り具の外表面に形成された透明撥水性膜に塗り、擦ることで、上記透明撥水性膜を溶解し、容易に剥離することが出来る。
このような透明撥水性膜の剥離のための処理剤の好ましい組成は、10〜25重量%の環状構造を有するポリメチルシロキサン、5〜10重量%のアルコール系溶剤、3〜7重量%のシリコーンオイル、及び残部水からなるものである。このような組成を有する処理剤は、水を主成分とするものであり、安全性に極めて優れている。
本発明の更に他の態様は、上述した、透明撥水性膜の形成のための釣り具用表面処理剤を収容する容器であって、1〜5mmの孔径のノズルを備えることを特徴とする容器を提供する。
このような釣り具用表面処理剤を収容する容器は、1〜5mmの孔径のノズルを備えることにより、効率よく塗布作業を行うことが可能である。
本発明によると、釣り人が釣り具の外表面に塗布することにより、優れた撥水性を有する、透明性に優れた撥水性膜を容易に形成することの可能な釣り具用表面処理剤が提供される。また、このようにして形成された撥水性膜を容易に除去することの可能な釣り具用表面処理剤が提供される。
以下、発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る釣り具用表面処理剤は、粒径0.01μm以上、0.1μm未満の撥水性微粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を含むことを特徴とする撥水塗布剤である。ここで、粒径とは、一次粒径、二次粒径を含むものとする。
本実施形態に係る撥水塗布剤に使用可能な撥水性微粒子としては、臨界表面張力が低いものが好ましく、そのようなものとして、シリカ等の無機系微粒子、フッ素樹脂粉末、シリコーンパウダー等を挙げることが出来る。特に、透明性に優れている上、粒径の微細なものを容易に安価に入手することが出来る点から、シリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子としては、表面が疎水処理されているものがよい。
本実施形態に係る撥水塗布剤に使用可能なバインダー樹脂としては、シロキサン結合を含む樹脂系で、シリコーンやアクリルシリコーン、またはフッ素原子を含む樹脂系を挙げることが出来る。これらの樹脂の硬化物で、表面エネルギーが30mN/m(水の接触角で100°以上のもの)以下のものを使用すると、高い撥水性の塗膜が得られやすいので、好ましい。
なお、バインダー樹脂は、使用する撥水性微粒子よりも表面張力が高いものであるのが好ましい。これは、釣り具の素地に対する濡れ性により、粒子よりも素地近傍に樹脂層が形成されやすいため、微粒子が塗膜表面に集まりやすく、その結果、塗膜表面に浮き出た粒子の表面を樹脂が覆いにくくなるため、微粒子が露出し、撥水性を効率的に発現しやすくなるためである。
このように、使用する撥水性微粒子よりも高い表面張力を有するバインダー樹脂を用いることにより、塗布し、乾燥することにより形成された撥水性膜は、表面に微細な0.05〜1μmの凹凸が得られやすくなる。撥水性膜の表面に水滴が接触した際に、撥水性膜の最も外側(山の頂上)の撥水性微粒子と撥水性膜の最も深い谷間との距離が大きくなり(約1〜3μ)、その高低差により水に接触した場合に空気を抱き込むことができ、撥水性が大きくなるのである。単に表面が平滑な撥水性膜を形成した場合よりも、この凹凸が作用し、確実に撥水性が高まる。
なお、高低差が大きいことにより、凸部の頂上部に物が接触したり、竿同士が擦れる等により撥水性微粒子が離脱しても、下部の撥水性微粒子が露出し、撥水性を維持することが出来る。
撥水塗布剤に使用可能な溶剤としては、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状構造のポリメチルシロキサンを用いることが出来る。このような溶剤は、揮発性を有することと、バインダー樹脂との相溶性が良好であることにより、塗布時の撥水塗布剤の延びが良好であり、そのため塗布に設備や熟練を要することなく、一般の釣り人によっても容易に撥水塗布剤を均一に塗布することを可能とする。
このような溶剤は、塗布後は揮発し、撥水有効成分だけを残すという効果があるが、水やエタノールに比べ蒸発潜熱が小さいため、揮発時に結露しにくく、撥水性が結露によって低下することが防止されるという利点がある。
本実施形態に係る撥水塗布剤には、以上説明した各成分以外に、メチルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のシリコーンオイルを、塗布時の伸びの向上、液が手に付着したときのべたつきの軽減を目的に、配合してもよい。また、このようなシリコーンオイルは表面張力が低いので、薄く、均一な皮膜を形成することを可能とするという効果もある。
更にそれ以外に、メタノール、エタノールなどのアルコール類やトルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン系溶剤等をバインダー樹脂と合わせて希釈用として使用することも可能である。
本実施形態に係る撥水塗布剤には、撥水性微粒子に加え、撥水性微粒子よりも粒径の大きい、粒径1〜8μm、平均粒径2μmの撥水性粗粒子を加えることが望ましい。撥水性粗粒子の材質は、撥水性微粒子と同様のものでも、異なるものでもよい。このように撥水性粗粒子を加えることにより、より複雑な表面形状を作り出し、凹部への空気の取り込みにより、より撥水性を促進することが出来る。
また、撥水性粗粒子が存在することにより、撥水性微粒子が沈殿し、凝集した場合の再分散性を向上することが出来ることは、上述した通りである。工場で塗布する場合と異なり、一般の釣り人が使用することを考慮すると、この様に粒径の大きく、質量の大きい粒子を配合して再分散性をよくしておくことは重要である。本発明者の実験によると、例え半年間静置した処理剤であっても、100回程度振ることにより、撥水性微粒子の再分散が可能であることが分かっている。
本実施形態に係る撥水塗布剤において、撥水性微粒子の量は、バインダー樹脂及び溶剤の合計量100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは2〜8重量部、最も好ましくは5〜6重量部であり、撥水性粗粒子の量は、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは2〜3重量%である。
撥水性微粒子及び撥水性粗粒子の量が上記下限未満であると、塗膜が薄くなりすぎて、膜の撥水性の耐久性が低くなり、また塗りムラが多く、塗りにくく、均一な撥水性を得ることが困難となる。
一方、撥水性微粒子又は撥水性粗粒子の量が上記上限を超えると、膜の透明性が低下し、塗布後の外観が汚くなる。また、塗布時の塗りムラも生じ易くなり、良好な撥水性が得にくくなる。
以上説明した本実施形態に係る撥水塗布剤の粘度は、3〜12mPa・sであるのが好ましい。撥水塗布剤の粘度が3mPa・s未満では、塗膜が薄くなりすぎて塗りむらが多くなり、また膜の撥水性の耐久性が低くなってしまい、12mPa・sを超えると、塗布時に液ののびが悪く、塗りむらが多くなり、膜が厚くなる部分が生じ、撥水性が低下し、透明性も低下し、好ましくない。
本実施形態に係る撥水塗布剤は、例えば、図4に示すようなPET容器に収容され、溶剤が揮発しないように蓋をされて密封される。なお、この容器には、予め撹拌用の、ステンレス等からなる球を入れておくことが望ましい。
容器から撥水塗布剤を取り出す際には、蓋をあけ、容器を振って、容器頂部のノズル(図示せず)から撥水塗布剤を吐出する。この場合、ノズルの孔径は1〜5mmである必要がある。ノズルの孔径が1mm未満では、撥水性微粒子又は撥水性粗粒子とバインダー樹脂とによりノズルが閉塞してしまう。また、ノズルの孔径が5mmを越えると、一振りで出てくる量が多すぎてしまい、手が汚れたり、塗布作業をする場所が汚れたり、液が無駄になったりする。
本発明者による実験の結果、塗布作業性に優れ、目詰まりのない、好ましいノズルの孔径は2〜4mmであり、理想的には3mmがよい。
また、撥水塗布剤を収容する容器は、ノズルにスポンジが付いているような、被塗布部に直接塗るタイプとすることも出来る。このようなタイプのものは、作業性がよく、手を汚すことがない。ただし、円柱状の竿管に塗る場合には、被塗布部との接触面積が狭いため、多少塗布時間が余分に掛かってしまう。
図1は、本発明の一実施形態に係る撥水塗布剤を塗布される釣竿の一例として、外ガイドロッドを示す。この釣竿は、#1〜#5Bまでの5本継の磯上物竿であり、各竿管の外周には、釣り糸を竿管外側に沿って案内するための複数の固定ガイド6及び遊動ガイド7が取り付けられている。元竿管である竿管#5Bの端部には、一端が尻栓8で閉塞されたグリップ部9が設けられ、それに隣接するパイプ状リールシート10には、リール11が着脱自在に取り付けられている。
固定ガイド6は、予め所定の位置に固定されており、遊動ガイド7は、竿管が隣接する大径の竿管内に収納出来るように移動可能であり、使用時に各竿管を振り出した際に、釣り人が所定の位置に固定するものである。
図1に示す釣竿において、リール11から送り出された釣糸は、各竿管に設けられた固定ガイド6及び遊動ガイド7を介して穂先竿管#1の先端から外方に送り出されるようになっている。
本発明の一実施形態に係る撥水塗布剤の図1に示す外ガイドロッドの外周への塗布は、次のように行われる。即ち、まず、容器をよく振って撥水性粒子を分散させる。次に、撥水塗布剤を収容する容器の蓋を開けて、容器を下に向けて振り、撥水塗布剤を手に持つ脱脂綿に含ませる。次いで、この脱脂綿を竿表面に接触させて、手で竿表面を滑らせるように塗布する。
本発明の一実施形態に係る撥水塗布剤は、液の伸びがよいため、脱脂綿が引っかからずに塗ることが出来るとともに、溶剤が速やかに(20℃で2分以内に)蒸発し、艶消し状に均一な撥水性膜が形成される。塗布表面の艶消し状態を観察することによって、塗りムラを判別することが出来るので、釣り人がきれいに塗れたか否かを自分で判断することが可能である。なお、塗布表面の艶消し状態を60°の光沢度計で測定したところ、5〜30程度の値を示した。
また、きれいに塗るようにするにはどの程度、脱脂綿に撥水塗布剤を含ませたらよいか、どの程度の力で竿に押し当てればよいか、どの程度の速度で竿表面に脱脂綿を滑らせればよいか、などを容易に体得できるようになる。更に、艶消し状になった撥水性膜は、下地の模様や塗装色を遮蔽することがないので、外観的にも元の竿のデザインを活かした状態を維持することが出来る。
なお、撥水塗布剤には撥水性微粒子が含まれている為、遊動ガイド7の固定位置や節の合わせ部に影響をあたえる可能性がある。即ち、遊動ガイド7の固定位置に撥水塗布剤が塗られると、微粒子の凝集体により遊動ガイド7が正規の位置まで挿入固定することが出来ずに手前で止まってしまう。この状態で実釣すると、竿を振る振動や糸の絡みなどの外力により、遊動ガイド7が固定状態から遊動状態になってしまう。また、合わせ部も同様に、微粒子の凝集体の影響で正規の位置まで引き出せず、実釣時に節落ちしてしまうという危険性もある。
しかし、本発明の一実施形態に係る撥水塗布剤は、塗布する者が必要に応じて塗布範囲を決定できることから、遊動ガイド7の固定位置や、合わせ部周辺等の塗布しない領域を容易に選択することができる。
図2は、本発明の一実施形態に係る撥水塗布剤を塗布された竿管本体20の外周面の構造を示す断面図である。図2に示すように、竿管本体20の外周面には、バインダー樹脂21により固着された撥水性微粒子23を含む撥水性膜22が形成されている。撥水性膜22は、「微細な凹凸」とともに、それよりも深さの小さい「微小な凹凸」をも有する、複合的な凹凸表面を有することが好ましい。
撥水性膜22の膜厚は、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μm、最も好ましくは1〜3μmがよい。このような膜厚により、撥水性膜22が理想的な構造(ひび割れず、連続的であり、多くの凹凸がある状態)になり、優れた撥水性(水の接触角が140°以上、特に150°以上の超撥水性である)が発現する。また、このような膜厚は、ある程度の耐摩耗性が得られるとともに、竿の出し入れを二回程度行っても撥水性を維持することができ、一本の磯竿(5.3m)で塗膜重量が3グラム以下であり、それによって持ち重りや振り調子が悪化しないような値である。
撥水性膜22の膜厚が10μmを超えると、撥水性膜22にヒビが割れてしまい、割れた部位は下地が露出し、水滴が付着しやすくなり、べた付きが発生し易くなる。一方、撥水性膜22の膜厚が0.5μ未満では、塗りムラが生じ、連続的な撥水性膜にならずに、1〜3μmの隙間(撥水剤のない部分)が生じてしまう。
このように隙間が生ずると、隙間の部分に水滴が付着しやすくなり、糸のべた付きが発生してしまう。雨の中の磯釣りの実釣を開始して2〜3時間で、ガイドとガイドの間で糸の竿管表面へのべた付きが発生しはじめる。特に、元上(五本継ぎならば4番)とその前節は、投入時に糸が叩き付けられ、撥水性膜が摩耗しやすいため、早期にべた付きが発生する。また、仕掛けを交換する際などに、竿に巻き付いた道糸を解く際にも、糸で竿の表面が擦れて、撥水性を低下させ、べた付きが生じやすくなる。
撥水性膜22の撥水性としては、水の接触角が140°以上であれば効果があることが分かった。ガイドに糸を通した状態で竿を水没させて糸を竿管表面にべた付かせ、その糸を引っ張った時に生じる抵抗値を測定したところ、その際の抵抗値が、0.07N以上であると雨の日には使用することが困難であった。通常市販されている竿は、この程度の性能であり、すなわち、水の接触角で90〜100°程度のものである。また、0.05N程度の抵抗であれば、ある程度は雨の日でも使えるが、磯釣りに使う道糸は通常はナイロン製のものであり、使用していると吸水してしまう。その状態では、0.05N程度の抵抗の竿でも糸がべた付き、釣り人にストレスを与えてしまうことが分かった。即ち、この竿は、表面にフッ素やシリコーン系などの塗装を施してあり、接触角が100〜115°程度のものである。
上記の様な、140°またはそれ以上の接触角を有する表面の撥水性を有する竿の場合は、雨の日でも、波しぶきをかぶる条件で使用しても、糸のべた付きが殆ど無く、釣り人のストレスが大幅に軽減することができる。この場合の引っ張り抵抗は、0.005〜0.01N程度になる。
本発明の一実施形態に係る撥水塗布により形成された撥水性膜は、含まれる撥水性微粒子が極めて微細であるため、透明性に優れており、そのため、下地の竿管の模様や色彩を隠蔽することがなく、竿管の美観を損なうことがないという大きな効果を奏する。
図3は、本発明の他の実施形態に係る、撥水性微粒子に加え、撥水性微粒子よりも粒径の大きい、粒径1〜8μm、平均粒径2μmの撥水性粗粒子を含む撥水塗布剤を塗布された竿管本体20の外周面の構造を示す断面図である。このような撥水塗布剤を竿管本体20の外周面に塗布すると、図3に示すように、竿管本体20の外周面には、撥水性微粒子23の層の上部に撥水性粗粒子24が突出して存在している撥水性膜25が得られる。
このような撥水性膜25では、上述したように、より複雑な表面形状が得られ、凹部への空気の取り込みにより、より撥水性を促進することが出来る。
以上説明した、竿管本体20の外周面に形成された撥水性膜は、一般的には摩耗に弱く、岩などに擦れると簡単に塗膜構造が破壊し、撥水性が低下してしまう。また、竿の出し入れでの摩耗や、遊動ガイドとの摩耗なども考えられる。
更に、撥水性膜の外面にコマセなどの汚れが付着したり、汚れた手で触れたりすることによっても撥水性は低下してしまうことが実釣実験により分かった。
これに対し、本発明に係る撥水塗布剤は、釣り人が自ら容易に塗布することが出来るので、磨耗や汚れにより撥水性が低下するたびに、繰り返し撥水性膜を形成することが可能である。
ただし、このように撥水塗布剤を塗布する際には、竿管本体20の外周面に撥水性膜が残留していてはならず、除去されていなければならない。
次に、本発明の他の態様に係る、上述した撥水性膜を除去するための剥離剤について説明する。
本発明の他の態様に係る剥離剤は、環状構造を有するポリメチルシロキサン、アルコール系溶剤、シリコーンオイル、及び水を含むことを特徴とする。
環状構造を有するポリメチルシロキサンとしては、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を挙げることが出来る。アルコール系溶剤としては、メタノール、及びエタノール等を挙げることが出来る。シリコーンオイルとしては、メチルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、及びデカメチルテトラシロキサン等を用いることが出来る。
なお、上記成分以外に、場合によってはトルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤や、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン系溶剤等の、バインダー樹脂に対して溶解力を有する溶剤を使用してもよい。
このような剥離剤の好ましい組成は、10〜25重量%の環状構造を有するポリメチルシロキサン、5〜10重量%のアルコール系溶剤、3〜7重量%のシリコーンオイル、及び残部水からなるものであり、このような組成は、水を主成分とするものであり、安全性に極めて優れている。
以上説明した剥離剤は、図5に示すような容器に収容される。この容器は、撥水塗布剤と間違えないように、撥水塗布剤を収容する容器とは異なる色又は形状であることが好ましく、また、密閉性を考慮して、PET容器又は1mm以上の肉厚を有する厚手のPE容器であることが好ましい。
剥離剤は、ティッシュペーパーなどに取り出し、撥水性膜の上に塗り、擦ることで撥水性膜を溶解し、剥離する。即ち、本発明の他の態様に係る剥離剤は、本発明の一態様に係る撥水塗布剤により形成された撥水性膜を、極めて容易に除去することが可能である。また、剥離後に仕上げ拭きをすることにより、元の竿表面の状態に戻すことができるので、意匠的にも、撥水塗布剤が未使用の、外観が影響されない状態にしておくことが容易である。
このような剥離剤は、塗布した際にタレ落ちない程度の粘性を有することが望ましく、そのような粘度は、100〜200Pa・sである。
以上説明した撥水塗布剤及び剥離剤は、それぞれ異なる容器に収容して、セットにし、釣竿に付属させることが出来る。このような付属セットによると、撥水処理がされていない釣竿の場合には、釣竿の使用の前には撥水塗布剤を自ら釣竿に塗布して、撥水性膜を形成し、釣竿の使用後に磨耗や汚れにより撥水性が劣化した場合には、剥離剤を用いて残留する撥水性膜を除去した上で、再び撥水塗布剤を釣竿に塗布することが出来る。
また、撥水処理がされている釣竿の場合には、釣竿の使用後に磨耗や汚れにより撥水性が劣化した場合には、剥離剤を用いて残留する撥水性膜を除去した上で、撥水塗布剤を釣竿に塗布することが出来る。
以上、本発明の表面処理剤を、竿管の外表面に適用する場合について説明したが、本発明は竿管に限らず、例えば、竿掛、リール、玉ノ柄、ルアー、エギ、毛鉤、魚探のような釣具に適用することが出来る。
本発明の一実施形態に係る撥水塗布剤を塗布される釣竿の一例として、外ガイドロッドを示す図。 本発明の一実施形態に係る撥水塗布剤を塗布された竿管本体の外周面の構造を示す断面図。 本発明の他の実施形態に係る撥水塗布剤を塗布された竿管本体の外周面の構造を示す断面図。 本発明の一実施形態に係る撥水塗布剤を収容する容器を示す図。 本発明の他の態様に係る剥離剤を収容する容器を示す図。
符号の説明
#1,#2,#3,#4,#5B・・・竿管、6・・・固定ガイド、7・・・遊動ガイド、8・・・尻栓、9・・・グリップ部、10・・・パイプ状リールシート、11・・・リール、20・・・竿管本体、21・・・バインダー樹脂、22,25・・・撥水性膜、23・・・撥水性微粒子、24・・・撥水性粗粒子。

Claims (8)

  1. 釣り具の外表面に塗布して透明撥水性膜を形成可能な釣り具用表面処理剤であって、粒径0.01μm以上、0.1μm未満の撥水性微粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を含むことを特徴とする釣り具用表面処理剤。
  2. 前記撥水性微粒子はシリカ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の釣り具用表面処理剤。
  3. 前記撥水性微粒子の粒径は、0.01〜0.02μmであることを特徴とする請求項1に記載の釣り具用表面処理剤。
  4. 粒径1〜8μmの撥水性粗粒子を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の釣り具用表面処理剤。
  5. 前記バインダー樹脂及び溶剤の合計量100重量部に対し、撥水性微粒子を0.05〜20重量部、撥水性粗粒子を0.01〜10重量%含むことを特徴とする請求項4に記載の釣り具用表面処理剤。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の釣り具用表面処理剤により釣り具の外表面に形成された透明撥水性膜を除去するための表面処理剤であって、環状構造を有するポリメチルシロキサン、アルコール系溶剤、シリコーンオイル、及び水を含むことを特徴とする釣り具用表面処理剤。
  7. 10〜25重量%の環状構造を有するポリメチルシロキサン、5〜10重量%のアルコール系溶剤、3〜7重量%のシリコーンオイル、及び残部水からなることを特徴とする請求項6に記載の釣り具用表面処理剤。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の釣り具用表面処理剤を収容する容器であって、1〜5mmの孔径のノズルを備えることを特徴とする容器。
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