JP5574971B2 - 水系美爪料及び美爪料内蔵塗布具 - Google Patents

水系美爪料及び美爪料内蔵塗布具 Download PDF

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Description

本発明は、爪の上に美麗な線及び模様を描くための水系美爪料及び美爪料内蔵塗布具に関する。
従来より美爪料は、その目的や特徴から有機溶剤系と水系に大別されている。有機溶剤系の美爪料は、塗布性及び速乾性に優れるが、爪や皮膚が荒れるという問題等がある。これに対して、水系美爪料は、身体への影響も少なく、近年数多くの水系美爪料が開発されてきている。
従来の水系美爪料としては、例えば、1)アニオン性アクリル樹脂中に粉体を混練してなる混練組成物を含有する水系美爪料(例えば、特許文献1参照)、2)ポリオキシエチレン鎖を有するシリル化剤で親水化処理した粉体とアクリル系ポリマーエマルジョンとを配合することを特徴とする水系美爪料(例えば、特許文献2参照)、3)ガラスフレークに少なくとも1種の着色剤を単一層で被覆した光輝性真珠光沢顔料及び水性ポリマーエマルジョンを含有する水系美爪料(例えば、特許文献3参照)、4)薄片状基材の上に屈折率の異なる二種以上の光学的透過性材料を複層被覆したパール顔料及び水性ポリマーエマルジョンを含有する水系美爪料(例えば、特許文献4参照)などが知られている。
しかしながら、これらの特許文献1〜4に記載の各水系美爪料は、化粧料の粘性が高く、爪の上に美麗な線及び模様を描けないといった課題がある。また、光を反射させて光輝性を得る真珠光沢顔料やパール顔料等は、通常の有機顔料や無機顔料よりもその粒径は大きく、主に平板状顔料から構成されるものであるため、これらの平板状顔料を含有する水系美爪料の粘性を低くすると、平板状顔料が沈降して再度攪拌してもうまく粒子が均一にならず、ハードケイクを形成するなどの課題がある。
更に、従来の水系美爪料では、粘性を低くすると、爪の上で、美麗な線及び模様を描こうとすると、細い描線の場合、はじきが目立ち、美麗な線及び模様が描けないといった課題がある。
また、爪の上で、美麗な線及び模様を描くための塗布具として、美爪料で従来用いられている、繊維を束ねたブラシでは、爪全体に塗布するには適しているが、線等を描く場合には、化粧料が、こぼれたりして不具合があった。更に、繊維束をバインダー等で固めた、いわゆるペン芯等では、平板状顔料が、ペン芯内で、目詰まりの発生があり、美麗な線を描けないといった課題等がある。
一方、本願出願人は、アイメイクアップに好適な液体化粧料として、少なくともマイカ又は雲母チタンもしくはその表面処理物を含み基本的に無機物からなるパール顔料を5〜25重量%と、キサンタンガム等のアニオン性高分子化合物を0.2〜2.0重量%含有し、非ニュートン粘性指数(n)が、0.16≦n≦0.28の範囲にあり、所定のずり速度において、特定の粘度範囲とした液体化粧料を出願している(例えば、特許文献5参照)。
この液体化粧料は、本願発明の近接技術を開示するものであるが、アイメイクアップなどの肌に用いるものであるため、爪に塗布するものとはその用途は全く相違するものであり、かつ、粘度も高く、明らかに異なる粘度範囲となるものであり、しかも、粘性の低い水系美爪料にあってはキサンタンガム等を用いても平板状顔料の安定化、再分散性等は良好に発揮することができないという課題がある。
他方、有機高分子、油脂、ロウ、鉱物油、無機物質、植物から選ばれる1種以上の粒子が、円形度係数0.98〜0.40にあって、形状係数2が0.98〜0.50にあり、粒径50〜2000μmにある顆粒を配合することを特徴とする化粧料組成物、並びに、水不溶性の1次粒子に結晶セルロースなどの結合剤を用いて造粒した顆粒が、円形度係数0.98〜0.40にあって、形状係数2が0.98〜0.50にあり、粒径が50〜2000μmとなる顆粒である、洗浄剤、マッサージ用剤、クレンジング用剤などに用いるのに有効な化粧料組成物が知られている(例えば、特許文献6参照)。
この顆粒配合化粧料組成物には、製造例3(段落0082)に結晶セルロースの利用が開示されているが、結晶セルロースは結合剤としての例示であり、本願発明とは技術思想(その目的、構成及び作用効果)等が相違するものである。
特開平9−71521号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開平9−110642号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2004−244321号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2006−160683号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2000−247833号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2000−159628号公報(特許請求の範囲、製造零等)
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、爪の上で、美麗な線及び模様を描くための塗布具において、好適な水系美爪料として経時沈降安定性に優れ、平板状顔料が沈降してもハードケイクを生じ難く、攪拌することで容易に再分散可能であり、使用性に優れ、爪の上で、美麗な線及び模様を簡単に描くことができ、仕上がり性に優れた水系美爪料及び美爪料内蔵塗布具を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、少なくとも、液体貯蔵部と、塗布体とを備え、毛細管力によって前記液体貯蔵部から前記塗布体へ液体が輸送される塗布具の、前記液体貯蔵部に収容される水系美爪料において、該水系美爪料として、少なくとも、水と、水溶性樹脂と、平板状顔料と、エマルジョン樹脂と、保湿剤と、防菌剤とを含み、かつ表面張力を特定値以下とし、更に結晶セルロースを含み、温度25℃での所定のずり速度において粘度を特定の範囲とすることにより、上記目的の水系美爪料及び美爪料内蔵塗布具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(9)に存する。
(1) 少なくとも、液体貯蔵部と、塗布体とを備え、毛細管力によって前記液体貯蔵部から前記塗布体へ液体が輸送される塗布具の、前記液体貯蔵部に収容され、
少なくとも、水と、水溶性樹脂と、平板状顔料と、エマルジョン樹脂と、保湿剤と、防菌剤とを含む水系美爪料であって、かつ表面張力が33dyn/cm以下であって、
更に結晶セルロースを含み、温度25℃でのコーンプレート型粘度計による粘度測定において粘度が以下の条件(A)を満足することを特徴とする水系美爪料。
(A) ずり速度(s−1) 粘度(mPa・s)
3.83 30〜150
19.15 10〜50
38.30 10〜40
76.60 10〜40
383.00 5〜20
(2) 下記式(I)のnの値が0.5〜0.7の範囲にあることを特徴とする上記(1)に記載の水系美爪料。
S=μD ………(I)
〔式(I)中、Sは剪断応力(Pa)、μは粘性率(粘度:Pa・s)、Dは剪断速度(s−1)、nは非ニュートン粘性指数である。〕
(3) 前記水溶性樹脂が0.008〜2.0質量%、前記平板状顔料が1.0〜20.0質量%、前記エマルジョン樹脂が固形分で4.5〜13.5質量%、前記防菌剤の合計が0.01〜10.0質量%であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の水系美爪料。
(4) 前記結晶セルロースが0.5〜10質量%であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の水系美爪料。
(5) 前記保湿剤が8〜15質量%であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の水系美爪料。
(6) 前記水系美爪料には、更に、ポリジメチルシロキサンを少なくとも含むことを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の水系美爪料。
(7) 前記(1)〜(6)の何れか一つに記載の水系美爪料が内蔵される液体貯蔵部と、塗布体とを備え、毛細管力によって前記液体貯蔵部から前記塗布体へと水系美爪料が輸送される塗布具であって、上記塗布体は毛細管力を備えた塗布体であることを特徴とする美爪料内蔵塗布具。
(8) 毛細管力を備えた塗布体が、管状の内筒を備え、塗布先が円錐状かつ放射線状にスリットを備えたことを特徴とする上記(7)に記載の美爪料内蔵塗布具。
(9) 前記液体貯蔵部から、前記塗布体に至る、前記水系美爪料の流路内に連続気泡多孔質体を設けたことを特徴とする上記(7)又は(8)に記載の美爪料内蔵塗布具。
本発明によれば、経時沈降安定性に優れ、平板状顔料が沈降してもハードケイクを生じ難く、攪拌することで容易に再分散可能であり、使用性に優れ、爪の上で、美麗な線及び模様を簡単に描くことができ、仕上がり性に優れた水系美爪料及び美爪料内蔵塗布具が提供される。
本発明の美爪料内蔵塗布具の実施形態の一例を示す部分縦断面図と左側面図である。 (a)塗布体の一例を示す側面図、(b)は(a)のI−I線断面図である。 本発明の美爪料内蔵塗布具の実施形態の他例を示す部分縦断面図と左側面図である。
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の水系美爪料は、少なくとも、液体貯蔵部と、塗布体とを備え、毛細管力によって前記液体貯蔵部から前記塗布体へ液体が輸送される塗布具の、前記液体貯蔵部に収容され、少なくとも、水と、水溶性樹脂と、平板状顔料と、エマルジョン樹脂と、保湿剤と、防菌剤とを含む水系美爪料であって、かつ表面張力が33dyn/cm以下であって、更に結晶セルロースを含み、温度25℃でのコーンプレート型粘度計による粘度測定において粘度が以下の条件(A)を満足することを特徴とするものである。
(A) ずり速度(s−1) 粘度(mPa・s)
3.83 30〜150
19.15 10〜50
38.30 10〜40
76.60 10〜40
383.00 5〜20
更に、本発明の水系美爪料は、下記式(I)のnの値が0.5〜0.7の範囲にあることが好ましい。
S=μD ………(I)
〔式(I)中、Sは剪断応力(Pa)、μは粘性率(粘度:Pa・s)、Dは剪断速度(s−1)、nは非ニュートン粘性指数である。〕
本発明に用いる平板状顔料としては、例えば、マイカ、雲母チタン、カルミン被膜雲母チタン、カルミン・紺青被膜雲母チタン、黒酸化鉄被膜雲母チタン、黒酸化鉄・カルミン被膜雲母チタン、黒酸化鉄・紺青被膜雲母チタン、青被膜雲母チタン、ベンガラ被膜雲母、ベンガラ被膜雲母チタン、ベンガラ・カルミン被膜雲母チタン、ベンガラ・黒酸化鉄被膜雲母チタン、ベンガラ・紺青被膜雲母チタン、ベンガラ・黒酸化鉄・紺青被膜雲母チタンなど、また、ガラスフレーク又は塊状フレークを母材とした上に、金属もしくは金属酸化物をコートした光輝性顔料などが挙げられるが、これらの平板上顔料はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの平板状顔料の含有量は、良好な描線、塗布性能、使用特性を得るために、水系美爪料全量中に、1〜20質量%とすることが好ましく、更に好ましくは、5〜15質量%が望ましい。
この平板状顔料の含有量が1質量%未満では、光輝感、塗布色が薄く、美麗でなく、一方、20質量%を超えて多くなると、粘性が高くなり、美麗な描線が描けなくなり、また、塗布体からの流出が少なくなったり、目詰まりを発生しやすくなる。
本発明に用いる水溶性樹脂は、皮膜形成剤、分散安定剤として機能するものであり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらのアルキルエステル又は誘導体の中の1種又は2種以上から選択されるものからなる共重合体が挙げられ、更に詳しくは、組成中に酸基があり中和によって水に溶解できるものが良い。
特に好ましいものは、tert−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸の共重合体が望ましい。なお、中和には、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリエタノールアミン、L−アルギニン、アンモニア水、水酸化ナトリウム等を用いることができ、特に好ましいものは、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールである。
これらの水溶性樹脂の含有量は、水系美爪料全量中に、0.008〜2.0質量%とすることが好ましく、更に好ましくは、0.1〜1.5質量%が望ましい。
この水溶性樹脂の含有量が0.008質量%未満では、沈降安定性や再分散性が悪く、仕上がりも美麗でなくなり、一方、2質量%を超えて多くなると、粘度が高くなり、美麗な描線が描けなくなる。
本発明に用いるエマルジョン樹脂は、皮膜形成剤、分散安定剤として機能するものであり、具体的には、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸又はメタクリル酸の中の2種以上のモノマーからなる共重合体のエマルジョン(アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン)や、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸または、メタクリル酸の中の1種以上の成分とスチレンからなる共重合体のエマルジョン(アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルジョン)などが挙げられる。
これらのエマルジョン樹脂の含有量は、固形分で、水系美爪料全量中に、4.5〜13.5質量%とすることが好ましく、更に好ましくは、6.5〜11.5質量%が望ましい。
このエマルジョン樹脂の含有量が固形分で、4.5%未満では、顔料の再分散性が悪くなり、また描線の固着性が悪くなり、一方、13.5質量%を超えて多くなると、描線の仕上がりが悪くなり、また塗布部が乾燥して塗布不能となる恐れがある。
本発明に用いる防菌剤としては、パラベン類、デヒドロ酢酸ナトリウム、フェノキシエタノールなどが挙げられる。なお、本発明の防菌剤には防腐剤を含むものであり、防腐剤であるパラベン類としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル等を用いることができる。
これらの防菌剤の合計含有量は、水系美爪料全量中に、0.01〜10.0質量%とすることが好ましく、更に好ましくは、0.1〜5.0質量%が望ましい。
この防菌剤の含有量が固形分で、0.01質量%未満では、微生物の繁殖を抑えることが難しく、一方、10.0質量%を超えて多くなると、防腐剤の溶解不良、配合制限を越えてしまう、といった問題がある。
本発明に用いる結晶セルロースは、顔料分散剤、増粘剤として機能するものであり、具体的には、セルロースを酸加水分解又はアルカリ酸化分解して得られる実質的に一定の重合度を有するセルロース結晶子集合物であり、従来の増粘多糖類等の水溶液と異なり、セルロース結晶体が水中で分散粒子となる特性を有するものである。
用いることができる結晶セルロースとしては、例えば、一次粒子の微細なセルロース結晶体の表面を水溶性高分子等を用いてコーティング処理したコロイダルグルードからなるものが挙げられ、具体例としては、セオラスRC−591、RC−N81、RC−591NF、CL−611、セオラスクリーム〔以上、旭化成(株)製〕などが挙げられる。
これらの結晶セルロースの含有量は、水系美爪料全量中に、好ましくは、0.5〜10質量%、更に好ましくは、1.0〜5.0質量%の範囲で使用される。
この結晶セルロースの含有量が0.5質量%未満であると、平板状顔料の沈降を抑えることができず、すぐに分離してしまい、一方、10質量%を越えると、増粘しすぎて本発明の容器の吐出機構では吐出ができず、好ましくない。
本発明の水系美爪料には、仕上がりの向上の目的で、保湿剤を含有するものである。
用いることができる保湿剤としては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ペンチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の水に可溶なグリコール類が挙げられる。
これらの保湿剤の含有量は、水系美爪料全量中に、1〜20質量%、好ましくは、8〜15質量%の範囲で使用される。
この保湿剤(水に可溶なグルコール類)の含有量が1質量%未満であると、理由は定かでないが、下地との馴染みが悪く、剥がれたり仕上がりが美麗ではなくなり、一方、20質量%を越えると、乾燥までの時間が長くなり、取り扱いに不便さを伴う。
本発明の水系美爪料には、上記成分の他、消泡剤として、ポリジメチルシロキサンを含有することが好ましい。
ポリジメチルシロキサンは、末端がトリメチルシロキシ単位でブロックされメチル化された線状シロキサンポリマーの混合物からなるシリコーン油であり、市販品として、KS−66(信越シリコーン社製)などを用いることができる。
これらのポリジメチルシロキサンの含有量は、水系美爪料全量中に、好ましくは、0.0001〜0.01質量%、更に好ましくは、0.0005〜0.001質量%の範囲で使用される。
このポリジメチルシロキサンの含有量が0.0001質量%未満であると、ジメチコンを含有せしめる効果が少なく、一方、0.01質量%を越えると、仕上がりが悪くなる。
本発明の水系美爪料は、上記各成分が含有されると共に、残部は水(精製水、イオン交換水、蒸留水等)で調製され、その表面張力(25℃)は、爪の上で細い描線等を描いた場合に、はじきが目立たないように、33dyn/cm以下、好ましくは、25〜33dyn/cmに調整されたものが望ましい。
この表面張力が33dyn/cmを越えるものであると、爪の上で、はじきが起ることがあり、好ましくない。
本発明において、水系美爪料の表面張力を上記特性値以下に調整する成分としては、例えば、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(市販品ではNIKKOL OTP−75)などを用いることができる。
本発明の水系美爪料は、温度25℃でのコーンプレート型粘度計による粘度測定において粘度が以下の条件(A)を満足することが必要である。
(A) ずり速度(s−1) 粘度(mPa・s)
3.83 30〜150
19.15 10〜50
38.30 10〜40
76.60 10〜40
383.00 5〜20
上記所定のずり速度において、上記粘度範囲から外れる美爪料は、製品としての使用性が悪く、さらに仕上がりも悪くなるため、好ましくない。
なお、上記条件(A)を満足させるためには、水系美爪料に含有せしめる結晶セルロース、水溶性樹脂、平板状顔料などを上記各含有量の範囲で好適に組み合わせることにより調製することができる。
また、本発明の水系美爪料は、下記式(I)中のnの値が0.5〜0.7の範囲にあることが好ましい。
S=μD ………(I)
〔式(I)中、Sは剪断応力(Pa)、μは粘性率(粘度:Pa・s)、Dは剪断速度(s−1)、nは非ニュートン粘性指数である。〕
このnの値が0.5未満の場合には、塗布具内部から、水系美爪料の流出が起きない可能性があり、好ましくない。また、このnの値が0.7を超える場合には、塗布具の塗布体からの美爪料のタレ落ち、あるいは、美爪料の塗布後、乾燥前に爪の上で流動が起きる可能性があり、やはり好ましくない。
本発明の水系美爪料には、上記各成分の他、キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸、及びそれらの一ナトリウム塩、二ナトリウム塩、三ナトリウム塩等を添加しても良く、また、上記ポリジメチルシロキサン以外の消泡剤、酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料、有機顔料、界面活性剤、水溶性有機溶剤などを分散系に支障をもたらさず、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有せしめることができる。
本発明の水系美爪料は、上述した各成分を上記各範囲の含有量等で混合分散機、例えば、ビーズミル、ホモミキサー、ディスパー、アトライター、ボールミル、サンドグラインダー等で混合分散することで調製される。
このように構成される本発明の水系美爪料は、少なくとも、液体貯蔵部と、塗布体とを備え、毛細管力によって前記液体貯蔵部から前記塗布体へ液体が輸送される塗布具の前記液体貯蔵部に収容されるものである。
本発明の美爪料内蔵塗布具としては、例えば、図1に示すように、上記構成の水系美爪料が内蔵される液体貯蔵部11と、毛細管力を有する塗布体20とを備え、毛細管力によって前記液体貯蔵部11から前記塗布体20へと水系美爪料Hが輸送される塗布具Aを用いることができる。
この塗布具Aを詳述すると、塗布具本体10の内部が液体貯蔵部11となるものであり、塗布具本体10の前方に、弁座12、弁棒13、コイルバネからなるスプリング部材14、バネ受け15を有する弁機構16が設けられると共に、上記塗布体20は塗布具本体10の前方に取り付けられる先軸部材17内に摺動可能に保持されるものである。なお、図示符号18はSUS製の攪拌ボールであり、30はキャップ体である。
毛細管力を備えた塗布体20としては、例えば、図2(a)及び(b)に示すように、管状の内筒21を備え、塗布先25が円錐状かつ放射線状にスリットを備えたものが望ましい。塗布体20を詳述すると、塗布体20の後端部22は弁棒13の先端に当接するものであり、管状の内筒21は断面放射状内部溝の水系美爪料が通過する美爪料通路23を軸線方向に連続して有するものである。この塗布体20は、ポリアセタール樹脂等の合成樹脂から構成されるものであり、水系美爪料を塗布体20内の通路23に導入する孔23a,23bを後端部22と塗布体側面部24とに形成するものである。図示符号26a,26bは、水系美爪料を塗布体20内の通路23に導入する先端側面と後端側面である。
この塗布体20を押圧すると、弁機構16が開口し、水系美爪料Hが塗布体20の通路23に導入されて、円錐状かつ放射線状にスリットを備えた塗布先25に供給されて使用に供されるものとなる。
本発明の美爪料内蔵塗布具の使用態様としては、図1に示す塗布具Aの塗布体20を押圧すると、液体貯蔵部11から本発明の水系美爪料Hが塗布体20へ輸送されるので、爪の上に直接線や模様を描くか、または、予め爪の上に塗布したニトロセルロース、樹脂、酢酸エステル類等からなる、ネイルエナメルの塗膜の上に描き、その後、透明のネイルエナメルを重ねて仕上げることにより完成する。
このように構成される本発明の水系美爪料では、少なくとも、水と、水溶性樹脂と、平板状顔料と、エマルジョン樹脂と、保湿剤と、防菌剤とを含むものであって、かつ表面張力が33dyn/cm以下で、更に結晶セルロースを含み、温度25℃での所定のずり速度において、特定の粘度の範囲とすることにより、水中に安定に平板状顔料を分散させ、所定の物性を有するように調整してあるので、平板状顔料の沈降があってもハードケイクを生じ難く、軽く攪拌することで容易に再分散可能であり、使用性に優れ、曲面である爪の上で、美麗な線及び模様を簡単に描くことができ、仕上がり性に優れた水系美爪料が提供されるものとなる。
従来の水系美爪料では、爪の上で、美麗な線及び模様を描こうとすると、細い描線の場合、はじきが目立ったり、逆に比較的広い面を塗布しようとするとタレ落ちが発生して、美麗な線及び模様が描けないといった課題があったが、本発明では、表面張力が33dyn/cm以下で、更に結晶セルロースを含み、温度25℃での所定のずり速度において、特定の粘度の範囲とすることにより、剪断減粘性を有するので、爪への塗布時には粘度が下がり、細い描線の場合であっても爪の上ではじきがなく、タレ落ちも無く、容易に美麗な線及び模様を描くことができる塗布性能に極めて優れた水系美爪料とすることができる。
また、本発明の美爪料内蔵塗布具では、上記特性の水系美爪料が内蔵される液体貯蔵部と、塗布体とを備え、毛細管力によって前記液体貯蔵部から前記塗布体へと水系美爪料が輸送されるものであって、上記塗布体は毛細管力を備えた塗布体とすることにより、使用性に優れ、爪の上で、美麗な線及び模様を簡単に描くことができ、仕上がり性に優れた美爪料内蔵塗布具が提供されるものとなる。
更に、毛細管力を備えた塗布体20を、管状の内筒21を備え、塗布先25が円錐状かつ放射線状にスリットを備えた構造とすることにより、更に使用性に優れ、爪の上で、更に美麗な線及び模様を簡単に描くことができ、仕上がり性にきわめて優れた美爪料内蔵塗布具とすることができる。ところで、前記の毛細管力を備えた塗布体20は、管状の内筒21を備え、塗布先25が円錐状かつ放射線状にスリットを備えた構造とする他に、前記水系美爪料の流入する開口部を複数設けた構造とすることもできる。通常は前記塗布先の反対側の端の開口部のみ(本実施形態では導入孔23a,23b)であるが、更に塗布体側面を切削等により管状の内筒側面の一部を開放して開口部を形成させることも可能である。このような構成とすることにより、前記の平板状顔料等による目詰まり発生時における流路確保が可能である他、水の蒸発等により前記水系美爪料の粘度上昇が発生する等の事故が起きた場合にも、滞りなく前記水系美爪料が流入することができる。
また、図3に示すように、前記液体貯蔵部11から、前記塗布体20に至る、前記水系美爪料の流路内に、更に連続気泡多孔質体(例えば、スポンジ素材)19を設けた美爪料内蔵塗布具Bとしてもよいものである。
本実施形態の美爪料内蔵塗布具Bでは、連続気泡多孔質体(例えば、スポンジ素材)19を塗布体20の後方と弁棒13の周囲に設けたものである。この構造の美爪料内蔵塗布具Bとすることにより、上記特性の水系美爪料を円滑に効率よく塗布体まで供給することができるものとなる。そして、例えば、図1における弁機構16の必要以上の開放が原因で、前記水系美爪料の過剰量が流出した場合、前記連続気泡多孔質体19によって、その過剰量を一時的に保持することが可能となり、前記塗布体20からのボタ落ちを防止できるものである。
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〜13及び比較例1〜7〕
下記表1及び表2に示す配合処方で、ホモミキサーあるいはディスパーで混合分散して、各水系美爪料(配合単位:質量%、全量100質量%)を調製した。
得られた各水系美爪料について、下記評価方法等により、所定のずり速度における粘度測定、n値(非ニュートン粘性指数)の算出法、表面張力の測定、並びに、使用性、沈降安定性、再分散性、仕上がり性について評価した。
〔粘度の測定方法〕
得られた各水系美爪料について、温度25℃で、コーンプレート型粘度計(TV−30型粘度計のうち、ELD型粘度計またはEMD型粘度計、それぞれ標準コーンプレート、トキメック社製)を用いて所定のずり速度における粘度を測定した(比較例5のみ、EHD型粘度計(同前)による測定)。
〔n値(非ニュートン粘性指数)の算出法〕
まず、ニュートニアンの液体に適用される下記式(II)から、それぞれの剪断速度(上記ずり速度)における剪断応力Sを求めた。
S=μD ………(II)
〔式(II)中の代数は式(I)と同じである。〕
これに上記式(I)から、それぞれの実施例及び比較例において、剪断応力Sと、剪断速度Dとの対応の一覧を用いて、べき乗回帰計算を行い、非ニュートン粘性指数n値を算出した。
(表面張力の測定方法)
得られた各水系美爪料について、温度25℃で、全自動表面張力計(CBVP−Z、協和界面張力社製)を用いて表面張力を測定した。
(使用性の評価方法)
得られた各水系美爪料を図3に示す塗布具に充填し、爪の上に線を描き、描き具合、描線濃度を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:描きやすく、充分な濃度がある。
△:多少のかすれ、滲みがあるが、実用域と判断される。
×:かすれ、滲みがあり、不満と感じる。
(沈降安定性の評価方法)
各水系美爪料をねじ口試験管に取り、密栓して25℃で1ケ月静置し、液の分離の有無を肉眼で観察し、液容量に対する色材層容量の割合(%)を(色材層高さ/充填液高さ)×100で求め、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:40%以上。
△:20%以上、40%未満。
×:20%未満。
(再分散性の評価方法)
各水系美爪料を図3に示す塗布具に充填し、50℃で1ケ月静置させる。これを手で振り、撹拌ボールの動きを観察し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:1〜3回の振りで撹拌ボールが動く。
△:4〜9回の振りで撹拌ボールが動く。
×:撹拌ボールが動くまで10回以上振らなければいけない。
(仕上がり性の評価方法)
各水系美爪料を図3に示す塗布具に充填し、爪の上に線を描き、仕上がり性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:美麗ではじきのない描線が描けている。
△:やや劣るが思い通りに描線が描ける。
×:描線がきたない、平滑でない、はじきが目立つ、など。
Figure 0005574971
Figure 0005574971
上記表1及び2中の*1〜*4は、以下のとおりである。
*1:セオラスRC−N81、旭化成ケミカルズ社製
*2:ヨドゾールGH800F、日本エヌエスシー社製、固形分45質量%
*3:Luvimer 100P、BASF社製
*4:KS−66、信越シリコーン社製
上記表1及び2の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜13は、本発明の範囲外となる比較例1〜7に較べ、使用性、沈降安定性、再分散性及び仕上がり性に優れた水系美爪料であることが判明した。
比較例を個別的に見ると、比較例1は、水溶性樹脂を含有しない場合であり、比較例2及び5〜6、並びに、増粘剤としてキサンタンガムを用いた比較例7は、温度25℃でのELD型粘度計またはEMD型粘度による粘度測定において所定のずり速度における粘度範囲が本発明の範囲から外れる場合であり、比較例3は表面張力が本発明の外れる場合であり、更に、比較例4は、保湿剤を含有しない場合であり、これらの場合は、目的の本発明の効果を達成できないことが判った。
爪の上で、美麗な線及び模様を簡単に描くことができ、仕上がり性、使用性に優れているので、水系美爪料及びこの美爪料を内蔵した塗布具に好適に用いることができる。
A 美爪料内蔵塗布具
H 水系美爪料
10 塗布具本体
11 液体貯蔵部
16 弁機構
17 先軸部材
18 攪拌ボール
20 塗布体
25 塗布先(塗布部)
30 キャップ体

Claims (9)

  1. 少なくとも、液体貯蔵部と、弁機構と、前記液体貯蔵部内に撹拌ボールと、放射線状スリットを備えた塗布体とを備え、前記塗布体の押圧により前記弁機構が開口し、液体が前記塗布体へ供給され、前記放射線状スリットの毛細管力によって前記液体貯蔵部から前記塗布体の塗布先へ液体が輸送される塗布具の、前記液体貯蔵部に収容され、
    少なくとも、水と、tert−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メタクリル酸の共重合体からなる水溶性樹脂と、下記a群から選ばれる平板状顔料と、エマルジョン樹脂と、保湿剤と、防菌剤とを含む水系美爪料であって、かつ表面張力が33dyn/cm以下であり、
    更に結晶セルロースを含み、温度25℃でのコーンプレート型粘度計による粘度測定において粘度が以下の条件(A)を満足することを特徴とする水系美爪料。
    (A) ずり速度(s-1) 粘度(mPa・s)
    3.83 30〜150
    19.15 10〜50
    38.30 10〜40
    76.60 10〜40
    383.00 5〜20
    a群:マイカ、雲母チタン、カルミン被膜雲母チタン、カルミン・紺青被膜雲母チタン、黒酸化鉄被膜雲母チタン、黒酸化鉄・カルミン被膜雲母チタン、黒酸化鉄・紺青被膜雲母チタン、青被膜雲母チタン、ベンガラ被膜雲母、ベンガラ被膜雲母チタン、ベンガラ・カルミン被膜雲母チタン、ベンガラ・黒酸化鉄被膜雲母チタン、ベンガラ・紺青被膜雲母チタン、ベンガラ・黒酸化鉄・紺青被膜雲母チタン、ガラスフレーク又は塊状フレークを母材とした上に金属もしくは金属酸化物をコートした光輝性顔料、ベンガラ被覆シリカ
  2. 下記式(I)のnの値が0.5〜0.7の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の水系美爪料。
    S=μDn ………(I)
    〔式(I)中、Sは剪断応力(Pa)、μは粘性率(粘度:Pa・s)、Dは剪断速度(s-1)、nは非ニュートン粘性指数である。〕
  3. 前記水溶性樹脂が0.008〜2.0質量%、前記平板状顔料が1.0〜20.0質量%、前記エマルジョン樹脂が固形分で4.5〜13.5質量%、前記防菌剤の合計が0.01〜10.0質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水系美爪料。
  4. 前記結晶セルロースが0.5〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の水系美爪料。
  5. 前記保湿剤が8〜15質量%であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の水系美爪料。
  6. 前記水系美爪料には、更に、ポリジメチルシロキサンを少なくとも含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の水系美爪料。
  7. 請求項1〜6の何れか一つに記載の水系美爪料が内蔵される液体貯蔵部と、弁機構と、前記液体貯蔵部内に撹拌ボールと、放射線状スリットを備えた塗布体とを備え、前記塗布体の押圧により前記弁機構が開口し、液体が前記塗布体へ供給され、前記放射線状スリットの毛細管力によって前記液体貯蔵部から前記塗布体の塗布先へと水系美爪料が輸送される塗布具であって、上記塗布体の後端前記弁機構の先端に当接することを特徴とする美爪料内蔵塗布具。
  8. 毛細管力を備えた塗布体が、管状の内筒を備え、塗布先が円錐状かつ放射線状にスリットを備えたことを特徴とする請求項7に記載の美爪料内蔵塗布具。
  9. 前記液体貯蔵部から、前記塗布体に至る、前記水系美爪料の流路内に連続気泡多孔質体を設けたことを特徴とする請求項7又は8に記載の美爪料内蔵塗布具。
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