JP2006066713A - 半導体装置の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 大気中に曝すことなく不純物元素の混入を防ぎ、かつフラットバンド電圧のバラツキを抑えるための半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 大気に曝すことなく半導体膜(105)を酸素プラズマ(106)で表面処理する第1工程(D)、第1工程に続き大気に曝すことなく、表面処理された半導体膜(105)上にゲート絶縁膜(107)を形成する第2工程(E)を備えたことを特徴とする。大気に曝さず酸素プラズマ処理をすることにより、フラットバンド電圧を実質0Vにし、フラットバンド電圧のバラツキを抑え、フラットバンド電圧のシフトを防止することができるようになった。
【選択図】 図1

Description

本発明は半導体装置の製造方法に関し、より具体的には薄膜トランジスタの製造方法に関する。
従来の薄膜トランジスタの形成方法として、例えば、特開平11−307775号公報には、所定形状の多結晶シリコン薄膜を水素プラズマ処理し、続けて大気に曝すことなくゲート絶縁膜の堆積を行うことにより、多結晶シリコン薄膜中の欠陥を減少することとした製造方法があった(特許文献1)。
特開平11−307775号公報(段落0008等)
しかしながら、実際にこのような製造プロセスで形成された薄膜トランジスタでは、回路動作上、下地保護膜やゲート絶縁膜内の固定電荷等が影響するフラットバンド電圧のシフトが問題となっていた。フラットバンド電圧がシフトすると薄膜トランジスタのしきい値が変動し、薄膜トランジスタ間で動作特性にバラツキが生じていた。
また水素プラズマ処理で結合するSi−H結合は熱に弱く、高温で容易に切断されてしまうため、製造プロセスの温度が限られてしまう。プロセス温度が低いと、結晶性が低かったり、ソース・ドレイン領域の不純物の活性化が不十分だったりして作成された薄膜トランジスタの特性や信頼性が低くなる可能性があった。
そこで、本発明は、フラットバンド電圧のバラツキが少なく、信頼性が高く、更に高性能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の半導体装置の製造方法は、大気に曝すことなく半導体膜を酸素プラズマで表面処理する第1工程と、第1工程に続き大気に曝すことなく、表面処理された半導体膜上にゲート絶縁膜を形成する第2工程と、を備えたことを特徴とする。
出願人は、半導体膜上に絶縁膜を形成する場合の条件を変更して比較する実験をした。条件としては、何もしないで絶縁膜を形成した場合、半導体膜表面を水素プラズマしてから大気に曝すことなく絶縁膜を形成した場合、及び半導体膜表面を酸素プラズマしてから大気に曝すことなく絶縁膜を形成した場合で比較した。実験の結果、半導体膜表面を酸素プラズマしてから大気に曝すことなく絶縁膜形成した場合に、フラットバンド電圧が実質0Vとなりバラツキが少なく、フラットバンド電圧のシフトも抑えられることを発見した。上記プロセスによれば、第1工程において酸素プラズマで表面処理されてから、第2工程において大気に曝すことなくゲート絶縁膜が形成されるので、フラットバンド電圧の問題を悉く解消する絶縁膜が形成される。
本発明の半導体装置の製造方法では、さらに基板面に半導体膜を形成する第3工程と、半導体膜中の水素量を低減する脱水素処理を行う第4工程と、脱水素処理によって活性化した半導体膜表面の結合手を終端させて不活性化する第5工程と、不活性化した当該半導体膜にエネルギーを供給して当該半導体膜を結晶化させる第6工程と、を第1工程の前にさらに備える。
上記プロセスを行うことによって、結晶化工程において不純物が半導体膜に多量に混入することを防止することができる。第3工程で形成された半導体膜には多量の水素が混入している。この半導体層にレーザ照射等によって結晶化を行うと、半導体膜がアブレーションを起こす。そこで結晶化前に脱水素処理が必要となる。しかしながらこの脱水素処理は、半導体膜中だけでなく表面の水素も脱離してしまう。これによって、半導体膜表面が活性となり不純物が付着しやすい状態になる。そこで、脱水素処理後、再び表面の結合手を終端させてから結晶化を行うことで不純物の混入が防止できる。
ここで、第6工程から第1工程への移行は、大気に曝すことなく行われることが好ましい。また、第3工程乃至第6工程へ至る工程間の少なくともいずれかの移行も、大気に曝すことなく行われることは好ましい。このような措置をすれば、大気成分であるハイドロカーボンや水等の不純物が半導体膜に混入することを防止することができる。これによって、不純物による特性のバラツキ、低下を抑え、高性能な半導体装置を製造することができる。
ここで、各工程間の温度差は、50℃以下に維持されることが好ましい。チャンバ間の温度差が50℃より大きいと、基板温度を均一化するために時間がかかるからである。
ここで第4工程は、半導体膜の表面を水素プラズマまたは水素を含む雰囲気中に曝す工程であることが好ましい。このプロセスによれば、半導体層表面の結合手を効果的に終端させて不活性化させることができる。
以下の本発明の実施形態は、大気に曝すことなく半導体膜を酸素プラズマで表面処理し、さらに引き続き大気に曝すことなく、表面処理された半導体膜にゲート絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法に関する。
また、本実施形態は、上記半導体膜の形成を、基板面に半導体膜を形成し、半導体膜表面から不純物を除去する脱水素処理を行い、脱水素処理によって活性化した半導体膜表面の結合手を終端させて不活性化し、不活性化した当該半導体膜にエネルギーを供給して当該半導体膜を結晶化させて行うことも特徴とする。
図4及び図5を参照して、本発明の意義を説明する。図4は製造条件に応じたフラットバンド電圧を示す図であり、図5は製造条件に応じた界面準位密度を示す図である。
本願出願人は、本発明をするにあたって、半導体膜上に絶縁膜を形成する場合の条件を変更して比較する実験をした。次のA、B、及びCのように条件を変更し実験した。
条件A: 特に何もしないで通常の方法で絶縁膜(SiO2)を形成するもの;
条件B: 半導体膜表面を水素プラズマしてから大気に曝すことなく絶縁膜(SiO2)を形成するもの;及び
条件C:半導体膜表面を酸素プラズマしてから大気に曝すことなく絶縁膜(SiO2)を形成するもの。
図4に示すように、実験の結果、条件Aのもと単純に絶縁膜を堆積したサンプルでは、フラットバンド電圧Vfbがおよそ−1Vを示していた。条件Bに従って水素プラズマ処理後に大気に曝すことなく絶縁膜を堆積したサンプルでは、フラットバンド電圧Vfbがおよそ−3Vを示していた。これに対し、条件Cのもと、酸素プラズマ処理後に大気に曝すことなく絶縁膜を堆積したサンプルでは、フラットバンド電圧Vfbが実質0Vを示し、さらにバラツキも少ないことが確認された。このことから、条件Cに従って薄膜トランジスタを作製した場合にはフラットバンド電圧のシフトが抑えられることが推測できる。
図5に示すように、界面準位密度Ditについても、上記条件A、B、及びCで実験を行った。条件Cで、酸素プラズマ処理後に大気に曝すことなく絶縁膜を形成した場合に最も界面準位密度Ditが低くなることが確認された。すなわち、条件Cで絶縁膜を形成した場合に良好な界面が形成され、そのような絶縁膜をゲート絶縁膜として備える薄膜トランジスタの性能が向上することが推測される。本発明はこのような、実験と推測に従ってされた。
図1に、本実施形態における半導体装置の製造方法の製造工程断面図を示す。図1に示すように、本実施形態の製造方法は、基板面に半導体膜を形成する本発明の第3工程(図1(A))、半導体膜中の水素量を低減する脱水素処理を行う本発明の第4工程(図1(A))、脱水素処理によって活性化した半導体膜表面の結合手を終端させて不活性化する本発明の第5工程(図1(B))、不活性化した当該半導体膜にエネルギーを供給して当該半導体膜を結晶化させる本発明の第6工程(図1(C))、さらに大気に曝すことなく半導体膜を酸素プラズマで表面処理する本発明の第1工程(図1(D))、さらに引き続き大気に曝すことなく、表面処理された半導体膜にゲート絶縁膜を形成する第2工程(図1(E))、及び半導体装置の形成工程(図1(F)(G))を備えている。まず、これら各工程を実施する処理装置の概要から説明する。
図3に、本実施形態のプロセスで使用する装置の構成を示す。一連のプロセスで使用する処理装置は、レーザ処理室(チャンバ)300、酸素プラズマ処理室301、及びゲート絶縁膜形成室302からなり、各チャンバは基板を減圧雰囲気(真空)下で搬送し、大気に曝すことを防止できるように連結されている。なお、酸素プラズマ処理室301をゲート絶縁膜形成室302と兼用にしてもよい。また、半導体膜形成を行うCVD処理室、及び、半導体膜から不純物を除去する脱水素処理室、及び活性化した半導体膜表面の結合手を終端し不活性化させる終端化処理(水素プラズマ)室は図示していない。これらのいずれの処理チャンバも互いに気密状態で連結され、真空連続で処理することにより、基板を大気に曝すことを防止するように構成されている。これはハイドロカーボンや水等の不純物が半導体膜に混入することを防止するためである。
ここで、各処理チャンバ間の温度差は、50℃以下に維持されることが好ましい。チャンバ間の温度差が50℃より大きいと、基板温度を均一化するために時間がかかるからである。
また、レーザ処理室300における最高温度は350℃以下になるよう制御される。350℃より高い温度になると、終端化処理された半導体膜表面のSi−H結合が切れてしまい、半導体膜表面が活性化され、チャンバ内にわずかに残留している大気成分が表面に付着し、結晶化時に多結晶化した半導体膜内に取り込まれてしまうからである。
図2を参照して、この温度条件によって生ずる不都合を説明する。図2(A)に示すように、正しく終端化処理された半導体膜表面のシリコン原子の結合手は水素で終端されている。しかし、図2(B)に示すように、レーザ処理室における温度が350℃より高くなると、水素とシリコン原子との結合が切断され、水素が放出されてしまう。水素が放出された後のシリコン原子の結合手は活性化して、容易に不純物と結合しやすい状態となる。図2(C)に示すように、このときチャンバ内に極僅かでも大気が残留していると、ハイドロカーボンや酸素が付着してしまう。この状態でレーザが照射されるとこれら不純物が半導体膜内部に入り込んでしまい、半導体装置の性能を劣化させる原因となるのである。
次に工程ごとに具体的に説明する。
図1(A)に示すように、薄膜半導体装置を形成するための基板100(例えばガラス基板)上に、絶縁性物質である下地保護膜101を形成する。その上に、半導体装置である薄膜トランジスタの能動層となる真性シリコン膜等の半導体膜102を形成する。これらの層の形成には、CVD装置を用いる。
図1(B)に示すように、第3工程として、半導体膜102表面や内部に存在する多量の水素を放出させるため脱水素処理を行う。この工程は、基板100を脱水素処理室に搬送して行われる。形成直後のアモルファスシリコン層内には多量の水素元素が存在している。この水素元素は、結晶化の際のアブレーションを引き起こす原因となるため、アモルファスシリコン層内の水素元素は1atm.%程度まで低減させる必要がある。
ここで脱水素処理室の温度は、ある程度、基板100を高温化、例えば400℃以上として実施する。脱水素処理は、半導体膜102の表面の結合子に結合した水素や不純物を、結合子を切断して放出したり、半導体膜102の内部に入り込んでいる水素を放出させたりするため、Si−H結合が切断されるような温度で実施することが好ましいからである。
図1(B)に示すように、第4工程として、脱水素処理された半導体膜102に終端化処理をする。脱水素処理された半導体膜102表面には、多数のダングリングボンドが存在し、不純物が付着しやすい状態である。この工程では、大気に曝されることを防止した状態で、基板100を終端化処理室に送り、水素プラズマを供給して、これらダングリングを水素で終端させる。この終端化処理によって、半導体膜102の表面のダングリングボンドに水素が結合し、不活性な状態となる。また、水素プラズマの代わりに水素ガスを供給してもよい。
ここで終端化処理室の温度は、前工程から好ましくは50℃以内の温度差、それを超える場合でもなるべく小さな温度差とすることが好ましい。温度差がありすぎると基板全体が均一な温度になるまでの待ち時間が必要となり、スループットを悪化させるからである。このため、前工程である脱水素処理では基板温度を高温化、例えば400℃以上とする必要があるので、水素プラズマ処理の温度は、例えば350℃以下であって300℃以上とするよう制御する。このような温度であれば、Si−H結合を維持しながらもスループットも悪化させない。また、水素プラズマ処理は、30秒以内に実施するようにする。それ以上の長い時間水素プラズマを供給すると、水素原子が半導体膜内部に入り込んでしまい、レーザ照射時にアブレーションを起こす可能性があるからである。
図1(C)に示すように、第5工程として、基板100をレーザ処理室300に搬送し、レーザ照射104を行って、半導体膜102の表面を結晶化させる。レーザ照射Lは、例えば所定の強度のレーザ光のパルスを一定の間隔で照射し、レーザ光と基板100との相対位置を動かし、半導体膜102の全体をアモルファス状態から多結晶化させる。このレーザ結晶化工程によって、半導体膜102が結晶化され、多結晶半導体膜105となる。
ここでレーザ処理室の温度は、前工程である終端化処理の温度から好ましくは50℃以内の温度差とする。温度差がありすぎると基板全体が均一な温度になるまでの待ち時間が必要となり、スループットを悪化させるからである。このため、250℃から300℃の程度の範囲でレーザ結晶化を実施する。
図1(D)に示すように、第1工程として、基板100を酸素プラズマ処理室301に減圧環境下で搬送し、酸素プラズマを多結晶半導体膜105に供給する。酸素プラズマ処理をすることにより、フラットバンド電圧を実質0Vにし、また、界面準位密度を低くすることができる。その作用効果については、図4〜5で示したとおりである。酸素プラズマ処理の温度は、前工程であるレーザ照射の温度から好ましくは50℃以内の温度差とする。温度差がありすぎると基板全体が均一な温度になるまでの待ち時間が必要となり、スループットを悪化させるからである。また、この酸素プラズマは水素プラズマ処理と同一の室で行うこともできる。
図1(E)に示すように、第2工程として、基板をゲート絶縁膜形成室302に減圧環境下で搬送し、酸素プラズマ処理された多結晶半導体膜105上に第1ゲート絶縁膜107を形成する。第1ゲート絶縁膜107の形成方法は、公知の絶縁膜形成技術、例えば、CVD法、スパッタ法等を用いることが可能である。ゲート絶縁膜形成室の温度は、前工程である酸素プラズマ処理の温度から好ましくは50℃以内の温度差とする。温度差がありすぎると基板全体が均一な温度になるまでの待ち時間が必要となり、スループットを悪化させるからである。また、このゲート絶縁膜形成は酸素プラズマ処理と同一の室で行うこともできる。
以上の工程で形成された第1ゲート絶縁膜は、フラットバンド電圧が実質0Vで、半導体装置ごとのバラツキが少なく、従ってフラットバンド電圧のシフトが生じないものとなっている。さらに半導体装置としての構造を形成していく。
図1(F)に示すように、多結晶半導体膜105を素子分離するためにエッチングを行ない、第2ゲート絶縁膜108を形成する。当該第2ゲート絶縁膜108も公知の絶縁膜形成技術を適用する。続いて、ゲート電極109となる薄膜を公知の金属薄膜形成技術、例えばPVD法やCVD法などで形成する。通常はゲート電極とゲート配線は同一材料にて同一工程で作られるため、この材質は電気抵抗が低く、350℃程度の熱工程に対して安定であることが望まれる。次に、ゲート電極となる薄膜に対し堆積後パターニングを行い、ゲート電極109を形成する。
さらに、多結晶半導体膜105に不純物イオン注入を行ってソース・ドレイン領域110を形成する。ゲート電極109をイオン注入のマスクとして行う自己整合的なドーピングである。
最後に、図1(G)に示すように、第2ゲート絶縁膜108及びゲート電極109上に層間絶縁膜111を形成し、ソース・ドレイン取り出し電極112を公知の金属薄膜形成方法、例えばPVD法やスパッタ法などで形成して半導体装置である薄膜トランジスタを完成させる。
次に本実施形態に対応する実施例1を説明する。図1の薄膜トランジスタの製造工程断面図に沿って説明する。
第3工程(半導体膜形成)(図1(A))では、基板100の一例として、300mm×300mmの正方形状汎用無アルカリガラス基板を用いた。本例では基板温度を430℃として平行平板プラズマCVD法にて、下地保護膜101である酸化珪素膜を500nm程度堆積した。次に、後に薄膜トランジスタの能動層となる真性シリコン膜等の半導体膜102を堆積した。本例では下地保護膜101の堆積と連続して平行平板プラズマCVD法にて同一室内で堆積する。下地保護膜101を堆積した後、まず真空引きとAr封入を二回繰り返し、室内をArにて置換し、下地保護膜の形成時に使用したO2等のガスを室内より排出した。次に原料ガスであるシラン(SiH4)を100sccm流し、430℃の堆積温度で60秒間の処理を行なうことで非晶質シリコン膜である半導体膜102をおよそ50nm堆積した。
次に、第4工程(脱水素処理)(図1(A))として、水素を除去するために、脱水素処理室に基板100を真空中(減圧環境下)にて搬送し、450℃で10分間基板加熱を行った。これによって半導体膜102の表面や内部の水素が放出され、水素含有量が1atm.%程度となり、レーザ結晶化が可能となった。
次に、第5工程(終端化処理)(図1(B))として、脱水素処理室から水素プラズマを実施する終端化処理室に基板100を真空中(減圧環境下)にて搬送する。まず基板100を終端化処理室にセットし、この室内に水素ガスを導入する。99.999%の水素ガス103をマスフローコントローラから導入して、ガス流量を1000sccmとした。終端化処理室内の圧力は1torrに調整した。終端化処理室内のガス圧力が安定してからRF放電を開始し、アモルファスシリコン表面を水素で終端させた。基板の温度は350℃として、投入したRF放電のパワーは0.05W/cm2とした。発生させた活性種により、10秒の処理時間でアモルファスシリコン膜の表面が十分不活性化されていることが確認された。
次に、第6工程(レーザ結晶化処理)(図1(C))として、終端化処理室からレーザ処理室300に基板100を真空中(減圧環境下)にて搬送した。レーザ処理室300では、水素プラズマ処理によってシリコン表面に結合した水素が再び放出されないように、基板温度を300℃に維持した。レーザ照射104としては、本例ではキセノン・クロライド(XeCl)のエキシマレーザ(波長:308nm)を照射した。レーザパルスの強度半値幅(時間に対する半値幅)は25nsである。レーザ照射面積は長さ150mm×幅0.4mmのライン状で、照射面でのエネルギー密度は420mJ/cm2とした。このレーザ光を96.25%ずつ重ねつつ(つまり照射するごとに15μmずつ)相対的にずらしながら照射を繰り返した。このレーザ照射によって、結晶化した多結晶半導体膜105中に不純物が混入することを抑えることができた。
次に、第1工程(酸素プラズマ処理)(図1(D))として、基板100を減圧環境下で酸素プラズマ処理室301に搬送し、酸素プラズマ処理を実施した。本例では水素プラズマ処理を実施した終端化処理室と同一のチャンバを使用した。酸素プラズマ処理は、99.999%の酸素ガス106をマスフローコントローラから導入して、ガス流量を1000sccmとした。酸素プラズマ処理室301内の圧力は1torrに調整した。酸素プラズマ処理室301内のガス圧力が安定してからRF放電を開始し、多結晶半導体膜105中の捕獲準位の終端を行った。基板の温度は350℃として、投入したRF放電のパワーは0.15W/cm2とした。処理時間は、300秒から600秒程度で良好な界面が形成できることが判明した。
次に、第2工程(ゲート絶縁膜形成)(図1(E))として、減圧雰囲気下で、ゲート絶縁膜形成室302に搬送し、第1ゲート絶縁膜107を形成した。本例では、TEOSガスと酸素ガスによって二酸化珪素膜(SiO)をゲート絶縁膜107として形成した。基板温度は350℃とし、平行平板型プラズマCVD法によって行った。素子分離処理後に再び第2ゲート絶縁膜108を形成するので、第1ゲート絶縁膜107は10nmから30nm程度とできるだけ薄く形成することが好ましい。
次に、図1(F)に示すように、第1ゲート絶縁膜107と多結晶半導体膜105を素子分離するためのエッチングを行なった。続いて第2ゲート絶縁膜108を堆積した。形成条件を第1ゲート絶縁膜107と同様にして、第2ゲート絶縁膜108を90nm堆積させた。
次に、ゲート電極109となる薄膜をPVD法やCVD法などで堆積した。通常はゲート電極とゲート配線は同一材料にて同一工程で作られるため、この材質は電気抵抗が低く、350℃程度の熱工程に対して安定であることが望まれる。本例では膜厚が600nmのタンタル薄膜をスパッタ法により堆積した。タンタル薄膜を堆積する際の基板温度は180℃であり、スパッタガスとして窒素ガスを6.7%含むアルゴンガスを用いた。このように堆積したタンタル薄膜は結晶構造がα構造となっており、その比抵抗はおよそ40μΩcmであった。ゲート電極となる薄膜に対し堆積後パターニングを行い、ゲート電極109とした。
引き続いて多結晶半導体膜105に不純物イオン注入を行ってソース・ドレイン領域110を形成した。ゲート電極109がイオン注入のマスクとなっているため、イオン注入されなかった多結晶半導体膜105はチャネル領域となる。つまりゲート電極109の下のみに形成される自己整合構造となる。イオン・ドーピング法の原料ガスとしては水素中に希釈された濃度0.1%程度から10%程度のホスフィン(PH3)やジボラン(B26)等の注入不純物の水素化物を用いる。本例ではNMOS形成を目的として、イオン・ドーピング装置を用いて、水素中に希釈された濃度5%のホスフィン(PH3)を加速電圧100keVで注入した。PH3 +やH2 +イオンを含む全イオン注入量は1×1016cm-2であった。
次に、図1(G)に示すように、第2ゲート絶縁膜108及びゲート電極109上に層間絶縁膜111を堆積し、ソース・ドレイン領域110上にコンタクトホールを開孔し、ソース・ドレイン取り出し電極112と配線をPVD法やスパッタ法などで形成して薄膜トランジスタを完成させた。
本実施形態によれば、ゲート絶縁膜形成前の半導体膜への酸素プラズマ処理を、大気に曝さない条件で実施したので、薄膜トランジスタのフラットバンド電圧を実質0Vにし、トランジスタ間のバラツキも少なく、フラットバンド電圧のシフトを抑えることができた。
また本実施形態によれば、半導体膜への不純物の混入が防止されているので、信頼性の高い薄膜トランジスタを提供できる。
実施形態(実施例1)における半導体膜の製造工程を説明する工程図 温度条件によって生ずる不純物の取り込みの説明図 プロセス間の装置移動の説明図 製造条件に応じたフラットバンド電圧を示す図 製造条件に応じた界面準位密度を示す図
符号の説明
100 基板、101 下地保護膜、102 半導体膜、103 水素ガス、104 レーザ照射、105 多結晶半導体膜、106 酸素ガス、107 第1ゲート絶縁膜、108 第2ゲート絶縁膜、109 ゲート電極、110 ソース・ドレイン領域、111 層間絶縁膜、112 電極、L レーザ照射、Vfb フラットバンド電圧

Claims (6)

  1. 大気に曝すことなく半導体膜を酸素プラズマで表面処理する第1工程と、
    前記第1工程に続き大気に曝すことなく、表面処理された前記半導体膜上にゲート絶縁膜を形成する第2工程と、を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
  2. 基板面に前記半導体膜を形成する第3工程と、
    前記半導体膜中の水素量を低減する脱水素処理を行う第4工程と、
    前記脱水素処理によって活性化した前記半導体膜表面の結合手を終端させて不活性化する第5工程と、
    不活性化した当該半導体膜にエネルギーを供給して当該半導体膜を結晶化させる第6工程と、を前記第1工程の前にさらに備えた、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
  3. 前記第6工程から前記第1工程への移行は、大気に曝すことなく行われる、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
  4. 前記第3工程乃至前記第6工程へ至る工程間の少なくともいずれかの移行は、大気に曝すことなく行われる、請求項2または3に記載の半導体装置の製造方法。
  5. 各前記工程間の温度差は、50℃以下に維持される、請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
  6. 前記第4工程は、
    前記半導体膜の表面を水素プラズマまたは水素を含む雰囲気中に曝す工程であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。


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JP2010114431A (ja) * 2008-10-10 2010-05-20 Semiconductor Energy Lab Co Ltd Soi基板の作製方法
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