JP2006032084A - 自動車用電線 - Google Patents

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Abstract

【課題】引張強度の向上と細径化を両立させた自動車用電線を提供すること。
【解決手段】ステンレス鋼からなる単一の中心素線の周囲に、前記中心素線を包囲するように銅又は銅合金からなる7本以上の周辺素線を一重にかつ互いに密着配置してなる圧縮された導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆層を有する自動車用電線であって、前記中心素線の径寸法が、前記周辺素線の径寸法より大きく、前記導体の断面積が、0.13〜0.16mm であり、かつ、前記絶縁被覆層に、難燃剤が絶縁ポリマー100重量部に対して160重量部以上含有されていることを特徴とする自動車用電線。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車用電線に関し、特に、引張強度の向上と細径化の要求に応えることができる自動車用電線に関する。
自動車においては、電装品等への電気的接続のために多数の電線を束ねたワイヤハーネスが使用されている。このワイヤハーネスに用いられる電線の中には、複数本の素線を撚り合わせた撚線構造の導体を有するものがある。この種の電線で典型的なものの導体(素線集合体)を図1に示す。図中1が導体であり、単一の中心素線2の周りに6本の周辺素線3を一重にかつ互いに密着配置して撚り合わせた撚線構造となっている。従来、このような撚線構造の導体を構成する中心素線2及び周辺素線3には、いずれも銅又は銅合金が使用されているのが一般的であった。また、中心素線2及び周辺素線3の径寸法は、いずれも同径のものが使用されていた。さらに、導体の断面積としては、公称断面積0.35mm程度の電線が一般的であった。
一方、近年、自動車用電線には、引張強度の向上と細径化に対する要求がますます高まっている。しかし、前記の図1の電線の場合、引張強度を向上させるには、導体径を太くする必要があり、細径化の要求と両立させることができなかった。
本発明は、前記の実情の下に、同じ導体径の場合においては、高い引張強度が得られ、導体径を小さくした場合でも、従来の自動車用電線の引張強度が維持でき、さらに導体の細径化の程度によっては、従来以上の引張強度が得られる自動車用電線を提供することをその課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、中心素線にステンレス鋼を用いることにより、引張強度の向上が実現できること、中心素線の径寸法を周辺素線の径寸法より大きくすることにより、より引張強度を向上させながら細径化できること、中心素線に銅または銅合金より導電率の低いステンレス鋼を中心素線として用いても絶縁被覆層中の難燃剤の量を適切な範囲にすることにより、発熱問題を防止させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
請求項1に記載の発明は、
ステンレス鋼からなる単一の中心素線の周囲に、前記中心素線を包囲するように銅又は銅合金からなる7本以上の周辺素線を一重にかつ互いに密着配置してなる圧縮された導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆層を有する自動車用電線であって、
前記中心素線の径寸法が、前記周辺素線の径寸法より大きく、
前記導体の断面積が、0.13〜0.16mm であり、
かつ、前記絶縁被覆層に、難燃剤が絶縁ポリマー100重量部に対して160重量部以上含有されていることを特徴とする自動車用電線である。
前記発明においては、中心素線として、ステンレス鋼が用いられているため、従来の銅又は銅合金が用いられた電線より高い引張強度を得ることができる。
また、中心素線、周辺素線よりなる導体として圧縮された導体が用いられているため、導体の細径化を効率的に実現することができる。
また、導体の断面積は、小さ過ぎると、中心素線にステンレス鋼を用いても、充分な引張強度が得られず、大き過ぎると、細径化の要求に応えることができず、さらに、屈曲性を低下させる原因となる。このような観点から導体の断面積は、0.13〜0.16mmが好ましい。
また、中心素線の径が周辺素線の径より大きくされているため、導体の断面積0.13〜0.16mmの電線に対しても満足できる引張強度を得ることができる。
一方、中心素線に銅や銅合金より熱伝導率の低いステンレス鋼が用いられているため、熱が逃げにくい問題点がある。実験の結果、導体径が小さくなると、絶縁被覆層中に必要な難燃剤の量が急激に増加することが分かった。これは、導体径が小さくなると、被覆層厚を同一とした場合、絶縁被覆層の単位体積当りの表面積が大きくなり、酸素の供給が増えるためと考えられる。前記の難燃剤の量の範囲は、この知見に基づいて定めたものであり、導体の断面積が0.13〜0.16mmの場合には、前記範囲、即ち、絶縁被覆層に難燃剤が絶縁ポリマー100重量部に対して160重量部以上含有されていれば、信頼性のある被覆電線が得られる。
また、前記発明においては、周辺素線を中心素線の周囲に一重のみ配置させているため、周辺素線を中心素線に対して安定して配置させることができる。
引張強度、衝撃荷重および屈曲性を考慮しながら、導体の細径化を最も推し進めた場合、実用的に最適な導体の断面積は、公称断面積において0.13mmである。
請求項2に記載の発明は、この好ましい態様に該当するものであり、
前記導体の断面積が、公称断面積において0.13mm であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用電線である。
本発明の自動車用電線は、今日の自動車用電線に求められる細径化と引張強度向上の要求を実用上の限界に近い範囲において満足させており、さらに難燃性についても配慮した自動車用電線である。
図2は、本発明による自動車用電線の一構成例における導体の圧縮前、圧縮後、絶縁被覆後の状態を断面図で示すもので、周辺素線が8本の例である。また、図3は周辺素線が7本の例で導体の圧縮前の状態を示す断面図である。
図3において、21は圧縮前の導体(素線の集合形態)で、ステンレス鋼からなる単一の中心素線22の周囲に、銅又は銅合金からなる7本の周辺素線23が一重に周方向に密着配置され、撚り合わされ撚線構造となっており、中心素線22の径寸法は周辺素線23の径寸法より大きく設定されている。このような素線の集合形態を例えば圧縮ダイス等を用いて中心方向に圧縮して圧縮導体とする。そして、この圧縮導体の周りに直接又はシールド層を介して絶縁被覆を設けて、自動車用電線とする。
図1の通常の自動車用電線では、中心素線の周りに同径の周辺素線を6本一重に密着配置した構成をとるが、本発明の自動車用電線では、中心素線の径寸法を周辺素線の径寸法より大きく設定する関係から、周辺素線の本数を7本以上に設定する。周辺素線の本数は7本以上であれば適宜の数に設定できるが、生産性の観点からは、7〜10本がより好ましく、8本が特に好ましい。
本発明の自動車用電線の中心素線に使用されるステンレス鋼としては、各種のものが使用可能であるが、特に引張強度が大きいSUS304、SUS316(いずれも日本工業規格)等が好ましい。
また、周辺素線に使用される銅又は銅合金は、通常電線に使用される各種のタイプのものが使用できるが、導電性、引張強度、伸び等の観点から純銅、Cu−Ni−Si合金、Cu−Sn合金、Cu−Cr−Zr合金等が好ましい。
本発明の自動車用電線は、ワイヤハーネス用電線として用いることを考慮した場合、導体に求められる引張破断荷重は62.5N以上、電線接続時の端子固着力は50N以上であることが好ましい。
次に、難燃剤の量の適正な範囲を求めるため、導体断面積と必要とされる難燃剤の量との関係を求めた。
はじめに、図1に示される従来の電線について、導体断面積と必要な難燃剤の量との関係を調べた。
実験においては、断面積0.14〜0.51mm 、引張強度230MPaの純銅を用い、水酸化マグネシウムを難燃剤として添加したオレフィン系ポリマーの絶縁被覆層を0.2mm厚被覆した電線を用いた。
また、必要な難燃剤の量は、ISO(国際標準化機構)規格6722に準拠して、以下の難燃性試験に基づき定めた。
即ち、図5に示すように、長さ600mm以上の試験品4を無風状態の槽に45°の角度に傾斜させて固定し、上端から500mm±5mmの部分にブンゼンバーナー5により15秒間接炎した後、70秒以内に消炎するために必要な難燃剤の量を求めた。
実験の結果を、表1および図4に示す。なお、表1における難燃剤率は、オレフィン系ポリマーに対する難燃剤の重量%を示す。
Figure 2006032084
図4より分かる通り、同じ構造、材質の導体においても、導体径が小さいほど必要とする難燃剤の量が多くなり、導体径が小さくなる程、その変化率が大きい。
次に、上記の知見に基づき、本発明の電線の構造において必要な難燃剤の量を調べた。
実験においては、中心素線として、断面積0.0343mm 、引張破断強度940MPaのSUS304を、周辺素線として、断面積0.1057mm 、引張破断強度230MPaの純銅を用い、水酸化マグネシウムを難燃剤として添加したオレフィン系ポリマーの絶縁被覆層を0.2mm厚被覆した電線を用いた。
実験結果は、導体断面積0.14mm における必要な難燃剤率は160wt%、導体引張破断荷重は63N、端子固着力は50.4Nであった。
また、導体断面積を変えて、前記同様の実験を行った結果、本発明においては、中心素線にステンレス鋼を用いているため、従来の電線以上の難燃剤が必要であること、具体的には、本発明における導体断面積の電線においても、難燃剤が絶縁ポリマー100重量部に対して、160重量部以上必要であることが分かった。
以下に本発明の実施例および参考例を示す。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施例に対して種々の変更を加えることが可能である。
(実施例1)
圧縮前の中心素線として断面積0.0314mm、引張破断強度957MPaのSUS304を用いるとともに、圧縮前の周辺素線として断面積0.1321mm、引張破断強度240MPaの純銅を用い、中心素線に周辺素線を7本一重に密着配置した後、ダイスにより圧縮を行い、断面積0.14mmの導体を得、その後、ポリオレフィンコンパウンドを絶縁被覆材として用い、オレフィン系ポリマー100重量部に対して、水酸化マグネシウム160重量部を添加し、押し出し成形で被覆して本発明による自動車用電線を得た。得られた電線の引張破断荷重は59Nであり、端子固着力は47Nであった。また、難燃性の試験の結果は、規格内であった。
(実施例2)
圧縮前の中心素線として断面積0.0398mm、引張破断強度949MPaのSUS304を用いるとともに、圧縮前の周辺素線として断面積0.1231mm、引張破断強度245MPaの純銅を用い、中心素線に周辺素線を8本一重に密着配置した後、ダイスにより圧縮を行い、断面積0.14mmの導体を得、その後、ポリオレフィンコンパウンドを絶縁被覆材として用い、オレフィン系ポリマー100重量部に対して、水酸化マグネシウム160重量部を添加し、押し出し成形で被覆して本発明による自動車用電線を得た。得られた電線の引張破断荷重は65Nであり、端子固着力は52Nであった。また、難燃性の試験の結果は、規格内であった。
(参考例)
圧縮前の中心素線として断面積0.0241mm、引張破断強度235MPaの純銅を用いるとともに、圧縮前の周辺素線として断面積0.1443mm、引張破断強度245MPaの純銅を用い、中心素線に周辺素線を7本一重に密着配置した後、ダイスにより圧縮を行い、断面積0.14mmの導体を得、その後、ポリオレフィンコンパウンドを絶縁被覆材として用い、オレフィン系ポリマー100重量部に対して、水酸化マグネシウム140重量部を添加し、押し出し成形で被覆して本発明による自動車用電線を得た。得られた電線の引張破断荷重は34Nであり、端子固着力は27Nであった。また、難燃性の試験の結果は、規格内であった。
従来の撚線構造(非圧縮導体)の自動車用電線導体の断面図である。 本発明による自動車用電線導体の構成例における圧縮前、圧縮後および絶縁被覆後の状態を示す断面図である。 本発明による自動車用電線導体の圧縮前の状態を示す断面図である。 導体断面積と難燃剤率の関係を示すグラフ図。 難燃性試験の説明図。
符号の説明
1、21 導体
2、22 中心素線
3、23 周辺素線
4 試験品
5 ブンゼンバーナー

Claims (2)

  1. ステンレス鋼からなる単一の中心素線の周囲に、前記中心素線を包囲するように銅又は銅合金からなる7本以上の周辺素線を一重にかつ互いに密着配置してなる圧縮された導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁被覆層を有する自動車用電線であって、
    前記中心素線の径寸法が、前記周辺素線の径寸法より大きく、
    前記導体の断面積が、0.13〜0.16mm であり、
    かつ、前記絶縁被覆層に、難燃剤が絶縁ポリマー100重量部に対して160重量部以上含有されていることを特徴とする自動車用電線。
  2. 前記導体の断面積が、公称断面積において0.13mm であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用電線。
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