JP2006032081A - 自動車用電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】同じ引張強度の向上と細径化を両立させた自動車用電線を提供すること。
【解決手段】ステンレス鋼からなる単一の中心素線の周囲に、前記中心素線を包囲するように銅又は銅合金からなる7本以上の周辺素線を一重にかつ互いに密着配置してなる圧縮された導体を有する自動車用電線であって、前記中心素線の径寸法が、前記周辺素線の径寸法より大きく、前記導体の断面積が、0.10〜0.30mm2であり、かつ、前記導体の圧縮前の断面積から、圧縮後の断面積への圧縮率が、5〜20%であることを特徴とする自動車用電線。
【選択図】図2
【解決手段】ステンレス鋼からなる単一の中心素線の周囲に、前記中心素線を包囲するように銅又は銅合金からなる7本以上の周辺素線を一重にかつ互いに密着配置してなる圧縮された導体を有する自動車用電線であって、前記中心素線の径寸法が、前記周辺素線の径寸法より大きく、前記導体の断面積が、0.10〜0.30mm2であり、かつ、前記導体の圧縮前の断面積から、圧縮後の断面積への圧縮率が、5〜20%であることを特徴とする自動車用電線。
【選択図】図2
Description
本発明は、自動車用電線に関し、特に、引張強度の向上と細径化の要求に応えることができる自動車用電線に関する。
自動車においては、電装品等への電気的接続のために多数の電線を束ねたワイヤハーネスが使用されている。このワイヤハーネスに用いられる電線の中には、複数本の素線を撚り合わせた撚線構造の導体を有するものがある。この種の電線で典型的なものの導体(素線集合体)を図1に示す。図中1が導体であり、単一の中心素線2の周りに6本の周辺素線3を一重にかつ互いに密着配置して撚り合わせた撚線構造となっている。従来、このような撚線構造の導体を構成する中心素線2及び周辺素線3には、いずれも銅又は銅合金が使用されているのが一般的であった。また、中心素線2及び周辺素線3の径寸法は、いずれも同径のものが使用されていた。さらに、導体の断面積としては、自動車室内において用いられる場合は、公称断面積0.35mm2程度、エンジンルーム内において用いられる場合は、公称断面積0.50mm2程度の電線が一般的であった。
一方、近年、自動車用電線には、引張強度の向上と細径化に対する要求がますます高まっている。しかし、前記の図1の電線の場合、引張強度を向上させるには、導体径を太くする必要があり、細径化の要求と両立させることができなかった。
本発明は、前記の実情の下に、同じ導体径の場合においては、高い引張強度が得られ、導体径を小さくした場合でも、従来の自動車用電線の引張強度が維持でき、さらに導体の細径化の程度によっては、従来以上の引張強度が得られる自動車用電線を提供することをその課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、中心素線にステンレス鋼を用いることにより、引張強度の向上が実現できること、中心素線の径寸法を周辺素線の径寸法より大きくすることにより、より引張強度を向上させながら細径化できること、導体としては圧縮導体を用い、圧縮導体の圧縮前の断面積から圧縮後の断面積への圧縮率を適切な範囲にすることにより、より細径化に応えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
請求項1に記載の発明は、
ステンレス鋼からなる単一の中心素線の周囲に、前記中心素線を包囲するように銅又は銅合金からなる7本以上の周辺素線を一重にかつ互いに密着配置してなる圧縮された導体を有する自動車用電線であって、
前記中心素線の径寸法が、前記周辺素線の径寸法より大きく、
前記導体の断面積が、0.10〜0.30mm2であり、
かつ、前記導体の圧縮前の断面積から、圧縮後の断面積への圧縮率が、5〜20%であることを特徴とする自動車用電線である。
ステンレス鋼からなる単一の中心素線の周囲に、前記中心素線を包囲するように銅又は銅合金からなる7本以上の周辺素線を一重にかつ互いに密着配置してなる圧縮された導体を有する自動車用電線であって、
前記中心素線の径寸法が、前記周辺素線の径寸法より大きく、
前記導体の断面積が、0.10〜0.30mm2であり、
かつ、前記導体の圧縮前の断面積から、圧縮後の断面積への圧縮率が、5〜20%であることを特徴とする自動車用電線である。
前記発明においては、中心素線として、ステンレス鋼が用いられているため、従来の銅又は銅合金が用いられた電線より高い引張強度を得ることができる。
また、中心素線、周辺素線よりなる導体として圧縮された導体が用いられているため、導体の細径化を効率的に実現することができる。
また、導体の断面積は、小さ過ぎると、中心素線にステンレス鋼を用いても、充分な引張強度が得られず、大き過ぎると、細径化の要求に応えることができず、さらに、屈曲性を低下させる原因となる。このような観点から導体の断面積は、0.10〜0.30mm2が好ましい。
また、中心素線の径が周辺素線の径より大きくされているため、導体の断面積0.10〜0.30mm2の電線に対しても満足できる引張強度を得ることができる。
次に、導体の引張強度の向上と細径化を満足させられることができても、中心素線にステンレス鋼を用いているため新たな問題点があることが分かった。
即ち、電線に過大な応力がかかった場合において、導電率が高い銅又は銅合金からなる周辺素線が、導電率の低いステンレス鋼からなる中心素線より先に破断した場合、導電率の低い中心素線が発熱し、安全性の確保が困難になる。このため、過大な応力がかかった場合でも、中心素線が周辺素線より先に破断する必要があることが分かった。
そして、これに対応するためには、導体の圧縮前の断面積から圧縮後の断面積への圧縮率が重要であるとの知見を得、実験により、前記範囲、即ち、圧縮率を5%以上にする必要があることが分かった。
これにより、前記導体断面積の範囲において、所定の引張強度を得ながら、導体に大きな応力がかかった場合でも、導体破断前に中心素線が周辺素線より先に破断し、発熱問題が生じることなく信頼性の高い電線を得ることができる。
一方、圧縮率を大きくし過ぎると、衝撃破断荷重が小さくなる。自動車用電線においては、前記の導体の断面積の範囲においては、圧縮率を20%以下にすることにより、必要とされる衝撃破断荷重の5N以上を実現させることができることが分かった。なお、導体の圧縮は、圧縮ダイスによる圧縮が好ましい。
前記発明においては、周辺素線を中心素線の周囲に一重のみ配置させているため、周辺素線を中心素線に対して安定して配置させることができる。
限界ぎりぎりまで導体の細径化を行なうと、大きな衝撃荷重に耐えることができなく、一方、細径化を充分進めない場合には、今日の自動車における高度の電子化に対応できる配線本数を満たすことが出来ない。これらを考慮した場合、実用上好ましい導体断面積は、0.13〜0.25mm2である。この場合の導体の圧縮率としては、5〜20%が適切な値である。
請求項2に記載の発明は、この好ましい態様に該当するものであり、
前記導体の断面積が、0.13〜0.25mm2であり、
かつ、前記圧縮率が、5〜20%であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用電線である。
前記導体の断面積が、0.13〜0.25mm2であり、
かつ、前記圧縮率が、5〜20%であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用電線である。
引張強度、衝撃荷重および屈曲性を考慮しながら、導体の細径化を最も推し進めた場合、自動車室内において用いられる場合の実用的に最適な導体の断面積は、公称断面積において0.13mm2である。そして、この場合の圧縮率としては、5〜20%が最適な値である。
請求項3に記載の発明は、この好ましい態様に該当するものであり、
前記導体の断面積が、公称断面積において0.13mm2であり、
かつ、前記圧縮率が、5〜20%であり、さらに自動車室内において用いられることを特徴とする請求項1に記載の自動車用電線である。
前記導体の断面積が、公称断面積において0.13mm2であり、
かつ、前記圧縮率が、5〜20%であり、さらに自動車室内において用いられることを特徴とする請求項1に記載の自動車用電線である。
引張強度、衝撃荷重および屈曲性を考慮しながら、導体の細径化を最も推し進めた場合、エンジンルーム内において用いられる場合の実用的に最適な導体の断面積は、公称断面積において0.22mm2である。そして、この場合の圧縮率としては、5〜20%が最適な値である。
請求項4に記載の発明は、この好ましい態様に該当するものであり、
前記導体の断面積が、公称断面積において0.22mm2であり、
かつ、前記圧縮率が、5〜20%であり、さらにエンジンルーム内において用いられることを特徴とする請求項1に記載の自動車用電線である。
前記導体の断面積が、公称断面積において0.22mm2であり、
かつ、前記圧縮率が、5〜20%であり、さらにエンジンルーム内において用いられることを特徴とする請求項1に記載の自動車用電線である。
本発明の自動車用電線は、今日の自動車用電線に求められる細径化と引張強度向上の要求を実用上の限界に近い範囲において満足させた自動車用電線である。
図2は、本発明による自動車用電線の一構成例における導体の圧縮前、圧縮後、絶縁被覆後の状態を断面図で示すもので、周辺素線が8本の例である。また、図3は周辺素線が7本の例で導体の圧縮前の状態を示す断面図である。
図3において、21は圧縮前の導体(素線の集合形態)で、ステンレス鋼からなる単一の中心素線22の周囲に、銅又は銅合金からなる7本の周辺素線23が一重に周方向に密着配置され、撚り合わされ撚線構造となっており、中心素線22の径寸法は周辺素線23の径寸法より大きく設定されている。このような素線の集合形態を例えば圧縮ダイス等を用いて中心方向に圧縮して圧縮導体とする。そして、この圧縮導体の周りに直接又はシールド層を介して絶縁被覆を設けて、自動車用電線とする。
図1の通常の自動車用電線では、中心素線の周りに同径の周辺素線を6本一重に密着配置した構成をとるが、本発明の自動車用電線では、中心素線の径寸法を周辺素線の径寸法より大きく設定する関係から、周辺素線の本数を7本以上に設定する。周辺素線の本数は7本以上であれば適宜の数に設定できるが、生産性の観点からは、7〜10本がより好ましく、8本が特に好ましい。
本発明の自動車用電線の中心素線に使用されるステンレス鋼としては、各種のものが使用可能であるが、特に引張強度が大きいSUS304、SUS316(いずれも日本工業規格)等が好ましい。
また、周辺素線に使用される銅又は銅合金は、通常電線に使用される各種のタイプのものが使用できるが、導電性、引張強度、伸び等の観点から純銅、Cu−Ni−Si合金、Cu−Sn合金、Cu−Cr−Zr合金等が好ましい。
本発明の自動車用電線は、ワイヤハーネス用電線として用いることを考慮した場合、導体に求められる引張破断荷重は62.5N以上、電線接続時の端子固着力は50N以上であることが好ましい。
次に、所定の引張強度を確保しながら、導体に大きな応力がかかった場合でも、導体破断前に中心素線が周辺素線より先に破断し、発熱問題が生じることなく信頼性の高い電線を得るために、導体の圧縮前の断面積から圧縮後の断面積への圧縮率を5%以上にすることについて説明する。
はじめに、中心素線に用いるステンレス鋼線について、圧縮率と引張強度の変化率の関係を求めた。線径、材質を変えて行なったが、いずれも同じ傾向を示した。図4に直径0.225mmのSUS304を用いた場合の実験結果を示す。
図4より、圧縮率の増加に伴い、引張強度の変化率が、図4の領域においては、比例して増加していることが分かった。
次に、ステンレス鋼線について、圧縮率と破断伸びの変化率の関係を求めた。線径、材質を変えて行なったが、いずれも同じ傾向を示した。図5に直径0.225mmのSUS304を用いた場合の実験結果を示す。図5においては、試料200mmについての、破断するまでの引張距離を破断伸びとして表わした。
図5より、圧縮率の増加に伴い、破断伸びの変化率が低下すること、さらに圧縮率が大きいほど圧縮率の変化による破断伸び変化率が小さいことが分かった。
以上の知見を背景に、圧縮率の変化に伴うステンレス鋼線の破断荷重と引張距離の関係を求めた。結果を図6に示す。図6においては、圧縮率を加工硬化率として示した。また、横軸の引張距離は試料200mmについての引張距離を示す。
図6より、圧縮率(加工硬化率)が5%の場合、引張距離40mmにおいて、周辺素線として用いる銅は破断していないが、ステンレス鋼線が破断していることが分かる。このことにより、少なくとも圧縮率を5%とすることにより、発熱問題、即ち、周辺素線が先に破断し、中心素線のみが残留して、発熱が生じるという問題を防止することができることが分かる。
次に、衝撃破断荷重の面から圧縮率を20%以下にすることについて説明する。
まず、導体の破断荷重と引張距離の関係を求めた。
実験は、圧縮後の直径0.210mmのSUS304ステンレス鋼線を中心素線として、圧縮後の直径0.133mmの純銅8本を周辺素線として用い、本発明の構造と同様の構造の導体を作製して試料とした。試料について、加工硬化率(圧縮率)5%、10%、15%、20%で加工硬化させ、加工硬化後の試料について、チャック距離200mm、引張速度100mm/minの条件で、導体の破断荷重を測定した。なお、本実験においては、中心素線の破断をもって、導体の破断として測定した。結果を図7に示す。
実験は、圧縮後の直径0.210mmのSUS304ステンレス鋼線を中心素線として、圧縮後の直径0.133mmの純銅8本を周辺素線として用い、本発明の構造と同様の構造の導体を作製して試料とした。試料について、加工硬化率(圧縮率)5%、10%、15%、20%で加工硬化させ、加工硬化後の試料について、チャック距離200mm、引張速度100mm/minの条件で、導体の破断荷重を測定した。なお、本実験においては、中心素線の破断をもって、導体の破断として測定した。結果を図7に示す。
次に、図7の結果に基づいて、SSチャートにより、破断エネルギーを求め、この結果について衝撃破断荷重を求めた。得られた結果を表1に示す。
自動車用電線において必要とされる衝撃破断荷重は5Nとされている。このため、表1より圧縮率を少なくとも20%以下にすることにより、衝撃破断荷重を満足させることができることが分かる。
自動車用電線としての最終製品には、導体の周りに絶縁被覆が設けられるが、その絶縁被覆としては、従来使用されているポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(発泡系を含む)、ハロゲンフリー材、テトラフロロエチレン等の各種樹脂材料を用いることができる。絶縁被覆の厚さは導体の仕上外径に応じて適宜設定される。
また、シールド層を設ける場合には、従来公知のシールド効果を有する各種材料が使用できる。
また、シールド層を設ける場合には、従来公知のシールド効果を有する各種材料が使用できる。
以下に本発明の実施例を示す。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施例に対して種々の変更を加えることが可能である。
(実施例1)
圧縮前の中心素線として断面積0.0314mm2、引張破断強度957MPaのSUS304を用いるとともに、圧縮前の周辺素線として断面積0.1321mm2、引張破断強度240MPaの純銅を用い、周辺素線を7本一重に密着配置した後、ダイスにより圧縮率10%で圧縮を行い、断面積0.14mm2の導体を得、その後、ハロゲンフリー材(オレフイン系)を被覆材として用い、押し出し成形で絶縁被覆して本発明による自動車用電線を得た。得られた電線の引張破断荷重は68Nであり、導体の破断荷重は59N、衝撃破断荷重は11Nであった。
圧縮前の中心素線として断面積0.0314mm2、引張破断強度957MPaのSUS304を用いるとともに、圧縮前の周辺素線として断面積0.1321mm2、引張破断強度240MPaの純銅を用い、周辺素線を7本一重に密着配置した後、ダイスにより圧縮率10%で圧縮を行い、断面積0.14mm2の導体を得、その後、ハロゲンフリー材(オレフイン系)を被覆材として用い、押し出し成形で絶縁被覆して本発明による自動車用電線を得た。得られた電線の引張破断荷重は68Nであり、導体の破断荷重は59N、衝撃破断荷重は11Nであった。
(実施例2)
圧縮前の中心素線として断面積0.0398mm2、引張破断強度949MPaのSUS304を用いるとともに、圧縮前の周辺素線として断面積0.1231mm2、引張破断強度245MPaの純銅を用い、周辺素線を8本一重に密着配置した後、ダイスにより圧縮率10%で圧縮を行い、断面積0.14mm2の導体を得、その後、ハロゲンフリー材(オレフイン系)を被覆材として用い、押し出し成形で絶縁被覆して本発明による自動車用電線を得た。得られた電線の引張破断荷重は74Nであり、導体の破断荷重は65N、衝撃破断荷重は13Nであった。
圧縮前の中心素線として断面積0.0398mm2、引張破断強度949MPaのSUS304を用いるとともに、圧縮前の周辺素線として断面積0.1231mm2、引張破断強度245MPaの純銅を用い、周辺素線を8本一重に密着配置した後、ダイスにより圧縮率10%で圧縮を行い、断面積0.14mm2の導体を得、その後、ハロゲンフリー材(オレフイン系)を被覆材として用い、押し出し成形で絶縁被覆して本発明による自動車用電線を得た。得られた電線の引張破断荷重は74Nであり、導体の破断荷重は65N、衝撃破断荷重は13Nであった。
1、21 導体
2、22 中心素線
3、23 周辺素線
2、22 中心素線
3、23 周辺素線
Claims (4)
- ステンレス鋼からなる単一の中心素線の周囲に、前記中心素線を包囲するように銅又は銅合金からなる7本以上の周辺素線を一重にかつ互いに密着配置してなる圧縮された導体を有する自動車用電線であって、
前記中心素線の径寸法が、前記周辺素線の径寸法より大きく、
前記導体の断面積が、0.10〜0.30mm2であり、
かつ、前記導体の圧縮前の断面積から、圧縮後の断面積への圧縮率が、5〜20%であることを特徴とする自動車用電線。 - 前記導体の断面積が、0.13〜0.25mm2であり、
かつ、前記圧縮率が、5〜20%であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用電線。 - 前記導体の断面積が、公称断面積において0.13mm2であり、
かつ、前記圧縮率が、5〜20%であり、さらに自動車室内において用いられることを特徴とする請求項1に記載の自動車用電線。 - 前記導体の断面積が、公称断面積において0.22mm2であり、
かつ、前記圧縮率が、5〜20%であり、さらにエンジンルーム内において用いられることを特徴とする請求項1に記載の自動車用電線。
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