JP2006027123A - 液滴吐出ヘッド及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】積層圧電素子の変位を有効に活用して圧力室の変位体積を拡大することで吐出効率の向上を図るとともに、ノズルの高密度配置を実現することができる液滴吐出ヘッド及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明による液滴吐出ヘッド50は、液滴を吐出するノズル51と、前記ノズル51に連通し該ノズル51から吐出させる液が充填される圧力室52と、前記圧力室52の少なくとも一部の面を構成する振動板56と、前記振動板56を隔てて前記圧力室52と反対側に配置されるとともに当該振動板56と接合される積層圧電素子58と、を備え、前記積層圧電素子58の前記振動板56に対する接合側の面のうち少なくとも中央部は非接合状態であり、当該非接合領域よりも外側の周辺部の少なくとも一部が接合されていることを特徴とする。
【選択図】 図4
【解決手段】本発明による液滴吐出ヘッド50は、液滴を吐出するノズル51と、前記ノズル51に連通し該ノズル51から吐出させる液が充填される圧力室52と、前記圧力室52の少なくとも一部の面を構成する振動板56と、前記振動板56を隔てて前記圧力室52と反対側に配置されるとともに当該振動板56と接合される積層圧電素子58と、を備え、前記積層圧電素子58の前記振動板56に対する接合側の面のうち少なくとも中央部は非接合状態であり、当該非接合領域よりも外側の周辺部の少なくとも一部が接合されていることを特徴とする。
【選択図】 図4
Description
本発明は液滴吐出ヘッド及び画像形成装置に係り、特に積層圧電素子を用いて圧力室の容積を変化させてノズルから液滴を吐出させる圧電駆動型の液滴吐出ヘッドの構造及びこれを用いたインクジェット記録装置などの画像形成装置に関する。
特許文献1乃至5には、圧電素子を利用したインクジェットヘッドの吐出効率を向上させる技術について記載されている。特許文献1は、圧力室壁の変位する面積を能動素子(圧電素子)の圧力室側の端面の面積よりも広くする構成を開示している。特許文献2は、積層圧電素子において圧力室と接合される面を凸形状又は凹形状とする構成を開示している。
特許文献3は、振動板のフレーム面よりもピエゾ素子面を凸にする構成によってピエゾ素子面と振動板のダイヤフラムの密着性を向上させ、吐出効率を高める技術を開示している。特許文献4は、圧電素子を接着する加圧板(振動板)の厚みを3段階(最厚層部,厚層部,薄層部)に変化させた三層構造とし、最厚層部に圧電素子を接触させ、その周囲に薄層部を設けた構成を開示している。特許文献5は、振動板が薄肉部と厚肉部とを有し、薄肉部は圧電素子が当接される厚肉部で分断される構造を開示している。
特開平5−338151号公報
特開平6−188472号公報
特開平8−1932号公報
特開平8−25624号公報
特開2003−19793号公報
上記の各特許文献1乃至5に示された技術は、何れも圧電素子のd33変位を有効に活用する手段である。また、圧電素子の配置に対し、その外周に振動板の薄肉部を設けたり、圧電素子の大きさよりも圧力室サイズを大きくする方向の構成であり、高密度化にはあまり有効な手段ではない。また、特許文献2乃至4に開示された構造は、段差加工が複雑であり、製造性が悪い。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、積層圧電素子の変位を有効に活用して振動板の変位量(すなわち圧力室の変位体積)を拡大することによって吐出効率の向上を図るとともに、吐出口(ノズル)の高密度配置を実現することができる液滴吐出ヘッド及びこれを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求項1に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルと、前記ノズルに連通し該ノズルから吐出させる液が充填される圧力室と、前記圧力室の少なくとも一部の面を構成する振動板と、前記振動板を隔てて前記圧力室と反対側に配置されるとともに当該振動板と接合される積層圧電素子と、を備え、前記積層圧電素子の前記振動板に対する接合側の面のうち少なくとも中央部は非接合状態であり、当該非接合領域よりも外側の周辺部の少なくとも一部が接合されていることを特徴とする。
本発明における積層圧電素子は電極層と圧電体層とが交互に積層された構造から成り、この積層圧電素子は振動板に対して直接又は別の部材を介して間接的に接合される。積層圧電素子の電極間に電圧を印加すると、該積層圧電素子は振動板面に対して直交する方向(ここでは便宜上「縦方向」という。)に歪む変位と、振動板面に平行な方向(ここでは便宜上「横方向」という。)に歪む変位とが発生する。
本発明の積層圧電素子は、振動板との接合部となる接合側の面のうち周辺部を接合し、中央部は非接合状態となっている。このような周辺部接合(固定)構造により、積層圧電素子の縦方向の変位が振動板に伝達されて、該振動板が縦方向に変形されることに加え、積層圧電素子の横方向の変位によって振動板が撓み、この撓み変形によって振動板が更に縦方向に変位する。
例えば、積層圧電素子における電極層と圧電体層の積層方向と振動板の法線方向とが略平行の状態で振動板と積層圧電素子が接合された構造において、圧電体が積層方向に分極処理されている場合には、d33効果の変位によって前記振動板を圧力室方向に変位させるとともに、d31効果の変位によって前記振動板を圧力室方向へ撓み変形させることで、これらの変位の組み合わせによって振動板の変位量が拡大される。
或いはまた、積層圧電素子における電極層と圧電体層の積層方向と振動板の法線方向とが略直交する状態で振動板と積層圧電素子が接合された構造において、圧電体が積層方向に分極処理されている場合には、d31効果の変位によって前記振動板を圧力室方向へ変位させるとともに、d33効果の変位によって前記振動板を圧力室方向へ撓み変形させることで、これらの変位の組み合わせによって振動板の変位量が拡大される。
このように、本発明によれば、積層圧電素子の縦方向の変位と横方向の変位を共に振動板に伝達し、これらの複合的な変位作用によって振動板の変位量を増大させている。これにより、吐出効率が向上し、駆動信号の低電圧化、圧力室寸法の小型化、ノズル配列の高密度化を実現できる。また、高粘度液の吐出が可能となる。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の液滴吐出ヘッドの一態様に係り、前記積層圧電素子は、前記接合側の面の縁に沿って縁寄りの周辺部全周に渡って接着剤を介して前記振動板に接合されていることを特徴とする。
積層圧電素子の横方向の変位によって振動板を撓み変形させるように、積層圧電素子を振動板に直接又は間接的に接合させる態様として、積層圧電素子の周辺部を全周に渡って切れ目なく接合する態様、周辺部を破線状に部分的に非接合部を含みながら接合する態様、略四角形の平面形状を有する積層圧電素子の接合面において四隅のみを接合する態様などがある。積層圧電素子の横方向の変位によって振動板を効率よく撓ませるために、積層圧電素子は、中央部の非接合領域を挟んだ少なくとも2箇所で接合し、それら接合箇所の距離が離れていることが好ましい。
請求項2に示したように、積層圧電素子の周辺部全周のみに接着剤を塗布して振動板に接着することにより、接着剤を塗布していない領域が非接合状態となる。これにより、積層圧電素子の縦方向の変位と横方向の変位とを振動板に効率よく伝達することができる。
請求項3に係る発明は、請求項1記載の液滴吐出ヘッドの一態様に係り、前記積層圧電素子は、前記接合側の面において前記非接合領域を成す部分に凹部が形成され、当該凹部の外周部が前記振動板に接合されていることを特徴とする。
積層圧電素子の振動板との接合側の面に非接合領域となる凹部を形成し、積層圧電素子の中央部の剛性を部分的に低下させた構造により、振動板の変位量をより一層拡大することができる。
請求項4に係る発明は、請求項1記載の液滴吐出ヘッドの一態様に係り、前記振動板は、前記積層圧電素子と接合される側の面に凹部が形成され、該凹部によって前記積層圧電素子の中央部が非接合状態となることを特徴とする。
請求項4に示した発明態様によれば、振動板への凹部形成にエッチング等の加工技術を利用できるため、容易に加工可能で製造適性が良好である。
請求項5に係る発明は、請求項1記載の液滴吐出ヘッドの一態様に係り、前記振動板と前記積層圧電素子との間に、前記非接合領域を形成する凹部又は貫通孔を有する中間部材が配置され、該中間部材を介して前記振動板に前記積層圧電素子が接合されていることを特徴とする。
すなわち、請求項5に示した発明態様は、振動板と積層圧電素子との間に中間部材を介在させてこれらを積層接合する構造とし、該中間部材に積層圧電素子との非接合領域を形成するための凹部又は貫通孔を設けている。かかる構造によれば、中間部材への凹部又は貫通穴の加工が容易であり、製造適性が良好である。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5の何れか1項記載の液滴吐出ヘッドの一態様に係り、複数の前記ノズルと、各ノズルに対応した複数の前記圧力室とを備え、前記振動板は各圧力室ごとに個別に分離された構造を有していることを特徴とする。
圧力室ごとに分離された(独立の)振動板を設ける構造は、圧力室ごとに振動板を分離させない構造(複数の圧力室にまたがる大きさの面積を有する振動板を用いる構造、いわゆる一枚板構造)と比較して、振動板の変位が更に拡大され、一層良好な効果が得られる。さらに、圧力室ごとに振動板を分離することで、クロストークも低減する。
請求項7に係る発明は、前記目的を達成する画像形成装置を提供する。すなわち、請求項7に係る画像形成装置は、請求項1乃至6の何れか1項記載の液滴吐出ヘッドを有し、前記ノズルから吐出した液滴によって記録媒体上に画像を形成することを特徴とする。
例えば、当該画像形成装置に適用される液滴吐出ヘッドは、画像データに基づいて積層圧電素子の駆動を制御することでノズルからの吐出を制御し、所望のドット配置を実現する。
液滴吐出ヘッドの構成例として、記録媒体の全幅に対応する長さにわたってインク吐出用の複数のノズルを配列させたノズル列を有するフルライン型のインクジェットヘッドを用いることができる。
この場合、記録媒体の全幅に対応する長さに満たないノズル列を有する比較的短尺の吐出ヘッドブロックを複数個組み合わせ、これらを繋ぎ合わせることで長尺化し、全体として記録媒体の全幅に対応するノズル列を構成する態様がある。
フルライン型のインクジェットヘッドは、通常、記録媒体の相対的な送り方向(相対的搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってインクジェットヘッドを配置する態様もあり得る。
「記録媒体」は、液滴吐出ヘッドの作用によって画像の記録を受ける媒体(被吐出媒体、印字媒体、被画像形成媒体、被記録媒体、受像媒体など呼ばれ得るもの)であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、配線パターン等が形成されるプリント基板、中間転写媒体、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
記録媒体と液滴吐出ヘッドを相対的に移動させる搬送手段は、停止した(固定された)液滴吐出ヘッドに対して記録媒体を搬送する態様、停止した記録媒体に対して液滴吐出ヘッドを移動させる態様、或いは、液滴吐出ヘッドと記録媒体の両方を移動させる態様の何れをも含む。
本発明によれば、積層圧電素子が有する2種類の変位モードによる変位を振動板に効率良く伝達し、これら異種の変位モードの複合的な変位作用によって振動板を変位させる構造にしたので、従来と比較して振動板の変位量を拡大することができる。これにより、吐出効率が向上し、駆動信号の低電圧化、圧力室寸法の小型化、ノズル配列の高密度化を実現できる。また、高粘度液の吐出が可能となる。
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔第1の実施形態;インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッドを用いたインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェットヘッド(以下、ヘッドという。)12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録媒体たる記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1は本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッドを用いたインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェットヘッド(以下、ヘッドという。)12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録媒体たる記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによって記録紙16がベルト33上に吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図8中符号88)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12の各ヘッド12K,12C,12M,12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録紙16の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
ヘッド12K,12C,12M,12Yは、記録紙16の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド12K,12C,12M,12Yが記録紙16の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
吸着ベルト搬送部22により記録紙16を搬送しつつ各ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12K,12C,12M,12Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
図1に示した印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
各色のヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターン又は実技画像が印字検出部24により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部24の後段には後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図3(a) はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b) はその一部の拡大図である。また、図3(c) はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図である。
記録紙16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3(a),(b) に示したように、インク滴の吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状(ノズル面に垂直な方向から見たときの形状、つまり、ノズル面と平行な面に投影させた圧力室の平面形状)が概略正方形となっており(図3(a),(b) 参照)、対角線上の両隅部にノズル51への流出口と供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。
なお、記録紙16の送り方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a) の構成に代えて、図3(c) に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドブロック50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
図4はヘッド50の内部構造(インク室ユニット53の立体的な構造)を模式的に示した図である。同図では、3つのインク室ユニット53が並んでいる様子が描かれている。図4において、符号55はノズル板であり、該ノズル板55に形成されたノズル51から図の上方向に向かって液滴が吐出されるものとして描かれている。
符号52Bは圧力室52の隔壁を構成する隔壁部材であり、符号56は振動板である。振動板56は、隔壁部材52Bを挟んでノズル板55と平行に対向配置され、圧力室52の一面(図4において圧力室52の下面)を構成している。振動板56には、接着剤57を介して積層圧電素子58が接合されている。
積層圧電素子58は、電極材料58Aと圧電材料58Bとが交互に積層された構造を有し、各電極層は不図示の配線手段を介して駆動回路と接続される。積層圧電素子58の分極方向は電極材料58A及び圧電材料58Bの積層方向と平行であり、電極間に駆動電圧を印加することにより、d33モードの変位及びd31モードの変位が発生する。
図中符号59は積層圧電素子58を支持する基板であり、各積層圧電素子58の一端面(振動板56側と反対側の端部)は基板59に接合固定されている。これにより、積層圧電素子58のd33変位を効率よく振動板56へ伝達することができる。
また、振動板56と積層圧電素子58との接合部において接着剤57は、積層圧電素子58の振動板56との接合面のうち、縁寄りの周辺部分にのみに用いられ、中央部は非接合領域58Cとなっている。すなわち、積層圧電素子58は、周辺部分のみが接着剤57によって接着固定され、中央部は非接合状態となっている。
図5(a) は、振動板56と積層圧電素子58との接合部における接着剤57の塗布領域(接合領域)の例を示した平面図である。図において斜線で示した領域は接着剤57が塗布される接合領域58Dであり、斜線以外の領域(白抜きの領域)は非接合領域58Cである。
同図に示したように、接着剤57は積層圧電素子58の縁に沿った周辺部の全周に渡って塗布され、その内側(中央部を含む領域)は接着剤57が塗布されていない非接合領域58Cとなっている。
なお、図5(a) の構成に代えて、図5(b) のように、積層圧電素子58の縁に沿って破線状に接合領域58Dを形成する態様、図5(c) のように、積層圧電素子58の四隅に接合領域58Dを形成する態様など、多様な形態が可能である。
このように、積層圧電素子58の周辺部のみを固着した構造により、積層圧電素子58のd31変位によって振動板56(図4参照)が撓む。つまり、積層圧電素子58のd33変位とd31変位とがともに振動板56の変形に寄与して振動板56を大きく変形させる。これにより、図4で示した圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。
なお、図4には示されていないが、各圧力室52は、図3(a),(b) で説明した供給口54を介してヘッド50内の共通流路(共通液室)と連通されている。共通流路は、インク供給源たるインクタンク(図4中不図示、図7中符号60として記載)と連通しており、インクタンク60から供給されるインクは共通流路を介して各圧力室52に分配供給される。
上述した構造を有するインク室ユニット53を図6に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列(マトリクス配列)させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図6に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)、記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。もちろん、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
〔インク供給系の構成〕
図7はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図7のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図7はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図7のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図7に示したように、インクタンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。図7には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aをキャップ64で覆う。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板表面にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板55(図7中不図示、図5参照)に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。
印字中又は待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ64に向かって予備吐出が行われる。
また、ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッド50への装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。
ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ(本例の場合、積層圧電素子58)が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(アクチュエータの動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かって積層圧電素子58を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーによってノズル板表面の汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル51や圧力室52に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、積層圧電素子58を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、ヘッド50のノズル面50Aに、圧力室52内のインクをポンプ等で吸い込む吸引手段を当接させて、気泡が混入したインク又は増粘インクを吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。
〔制御系の説明〕
図8はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、ROM75、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
図8はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、ROM75、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
ROM75には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、ROM75は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図8において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色のヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データが画像メモリ74に記憶される。
画像メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてディザ法や誤差拡散法などのハーフトーン化技術によってインク色ごとのドットデータに変換される。インクジェット記録装置10では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。すなわち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
ヘッドドライバ84は、画像バッファメモリ82に記憶されたドットデータに基づき、ヘッド50の駆動制御信号を生成する。ヘッドドライバ84で生成された駆動制御信号がヘッド50に加えられることによって、ヘッド50からインクが吐出される。記録紙16の搬送速度に同期してヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録紙16上に画像が形成される。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいてヘッド50に対する各種補正を行う。また、システムコントローラ72は、印字検出部24から得られる情報に基づいて、予備吐出や吸引その他の所定の回復動作を実施する制御を行う。
〔積層圧電素子58の変形に伴う振動板56の変位の説明〕
次に、上記の如く構成されたインクジェット記録装置10における振動板56の動きについて説明する。
次に、上記の如く構成されたインクジェット記録装置10における振動板56の動きについて説明する。
図9は、積層圧電素子58の変形に伴う振動板56の動きを模式的に示した図である。図9(a)は駆動電圧印加前の初期状態を示し、図9(b)は駆動電圧印加によって積層圧電素子58が変形した様子(d33方向に伸び、d31方向に縮んだ様子) を示している。
図9(a)の初期状態における積層圧電素子58の積層方向の厚み(基板59の接合面を基準とする高さ)をh0 、幅方向の大きさをd0 とする。積層圧電素子58の電極間に駆動電圧を印加すると積層圧電素子58は図9(b)のように、d33モードの変位によって積層方向に伸び、厚みがh1 となり(h1 >h0 )、同時に、幅方向についてはd31モードの変位によって縮み、幅がd1 となる(d1 <d0 ) 。
積層方向に平行なd33の変位によって振動板56は図の上方向(図4に示した圧力室52方向)に変位する。この変位に加えて、更に、d31の変位によって振動板56が撓み、図9(b)の上方向(図4に示した圧力室52方向)に湾曲する。このように、d33の変位による振動板56の変位とd31の変位による振動板56の変位とが組み合わされ(d33の縦方向の変位にd31の横方向の撓みによる変位が付加されることによって)、振動板56が大きく変位する。これにより、従来のd33又はd31の何れか一方の変位のみを利用する構造と比較して、より大きな変位を得ることができ、吐出効率の向上を達成できる。
一般に、マトリクス配列によるノズルの高密度化を考慮すると、圧力室や圧電素子のサイズ(平面サイズ)をあまり大きくすることはできないが、本実施形態によれば、積層圧電素子58による圧力室52の変位体積を従来よりも拡大することができるため、比較的小さいサイズの積層圧電素子58によって所要の変位体積を得ることができる。また、限られた圧力室寸法内で比較的高粘度(例えば、10cp以上)のインクを吐出することが可能である。
〔第2の実施形態〕
図10は本発明の第2の実施形態を示す模式図である。図10において図4と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図10は本発明の第2の実施形態を示す模式図である。図10において図4と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図4で説明した構造に代えて、図10に示す構造とすることも可能である。図10に示したヘッド50は、積層圧電素子58の振動板56との接合側端面の略中央部に凹部58Eが形成されており、該凹部58Eの外周の端面(凸状の端面)58Fで振動板56と接合された構造を有している。凹部58Eは、図4で説明した非接合領域58Cを成す部分である。
図10の構成によれば、d31の変位量を一層拡大することができ、振動板56の変位量を更に拡大可能である。
〔第3の実施形態〕
図11は本発明の第3の実施形態を示す模式図である。図11において図4と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。図4で説明した構造に代えて、図11に示す構造とすることも可能である。図11に示したヘッド50は、振動板56の積層圧電素子58との接合面側に凹部56Aが形成されており、該凹部56Aの縁周辺の端面56B部分が積層圧電素子58の周辺部と接合された構造を有している。凹部56Aは、図4で説明した非接合領域58Cを成す部分である。
図11は本発明の第3の実施形態を示す模式図である。図11において図4と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。図4で説明した構造に代えて、図11に示す構造とすることも可能である。図11に示したヘッド50は、振動板56の積層圧電素子58との接合面側に凹部56Aが形成されており、該凹部56Aの縁周辺の端面56B部分が積層圧電素子58の周辺部と接合された構造を有している。凹部56Aは、図4で説明した非接合領域58Cを成す部分である。
図11の構成は、金属などの振動板56側に凹部56Aを形成するため、加工性、精度性が良く、製造に適している。
〔第4の実施形態〕
図12は本発明の第4の実施形態を示す模式図である。図12において図4と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。図4で説明した構造に代えて、図12に示す構造とすることも可能である。
図12は本発明の第4の実施形態を示す模式図である。図12において図4と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。図4で説明した構造に代えて、図12に示す構造とすることも可能である。
図12に示したヘッド50は、振動板56と積層圧電素子58の間に中間部材90を挟んで接合した構造となっている。中間部材90は、各積層圧電素子58の非接合領域58Cを成す部分に貫通孔90Aが形成されており、該貫通孔90Aの外周部90Bで積層圧電素子58の周辺部と接合されている。
振動板56とこれに接合された中間部材90は、これら2層の組み合わせで積層圧電素子58の変形によって変位する振動板として機能する(図11に示した振動板56と類似の機能を果たす)。なお、中間部材90は、振動板56と同じ材質(例えば、ステンレス綱)で形成することも可能である。
図12の中間部材90を用いる構成は、図11と比較して、中間部材90という部品が一つ増えることになるが、中間部材90は貫通孔90Aを形成したプレートであるため、製造性は良い。
図12では貫通孔90Aによって非接合領域58Cを形成したが、貫通孔90Aに代えて、中間部材90に溝(凹部)を設け、該溝によって非接合領域58Cを形成する形態も可能である。
〔第5の実施形態〕
図13は本発明の第5の実施形態を示す模式図である。図13において図4と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。図4で説明した構造に代えて、図13に示す構造とすることも可能である。
図13は本発明の第5の実施形態を示す模式図である。図13において図4と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。図4で説明した構造に代えて、図13に示す構造とすることも可能である。
図13に示したヘッド50は、図11で説明した構成と比較して、振動板56の構成のみが相違する。すなわち、図13のヘッド50は圧力室52ごとに振動板56が分離された構造を有している。各振動板56の積層圧電素子58との接合面側に凹部56Aが形成されており、該凹部56Aの縁周辺の端面56B部分が積層圧電素子58の周辺部と接合されている。凹部56Aは、図4で説明した非接合領域58Cを成す部分である。
図13の構成は、図11で説明した1枚板構造の振動板を用いる構成と比較して、変位拡大効果がより一層大きいという利点がある。
圧力室52ごとに振動板を分離させる構造(分離構造)は図13の例に限定されず、図4、図10、図12で説明した一枚板構造の振動板を分離構造に置換する構成も可能である。
〔本発明の実施条件の一例と従来構造との比較〕
図13で説明した振動板分離構造のヘッドについて、以下に示す実施条件で変位体積を評価した。
(実施条件)積層圧電素子の平面形状:一辺が500μmの正方形、積層圧電素子の積層数:9層、積層圧電素子の下面固定、圧電材料の圧電定数:d33=635pm/V,d31=−287pm/V、印加電圧:30V、振動板厚:50μm、振動板の凹部(薄肉部)の厚み:30μm、接合領域:積層圧電素子の外周部50μm幅の領域(全周)を接着した。
図13で説明した振動板分離構造のヘッドについて、以下に示す実施条件で変位体積を評価した。
(実施条件)積層圧電素子の平面形状:一辺が500μmの正方形、積層圧電素子の積層数:9層、積層圧電素子の下面固定、圧電材料の圧電定数:d33=635pm/V,d31=−287pm/V、印加電圧:30V、振動板厚:50μm、振動板の凹部(薄肉部)の厚み:30μm、接合領域:積層圧電素子の外周部50μm幅の領域(全周)を接着した。
上記の実施条件において、積層圧電素子の1層の厚みを変えて変位体積を調べたグラフを図14に示す。なお、図14には、比較のために従来構造において1層の厚みを変えて変位体積を調べたグラフも示してある。
図14に示したように、積層圧電素子1層あたりの厚みが薄くなるほどd31の効果は増大し、従来構造との変位体積の差が大きくなる。したがって、本発明の実施に際しては、積層圧電素子の1層あたりの厚みが薄いほど(すなわち、電界が高いほど)、より効果が高くなる。
積層圧電素子の1層あたりの厚みを薄くすることで、積層圧電素子全体の厚みが薄くなり、アクチュエータの小型化を達成できる。積層圧電素子の薄型化により、材料コストの低減及び駆動電圧の低電圧化が可能である。また、共振周波数が上がり、高周波吐出が可能になるとともに、積層方向(座屈方向)の強度も向上する。
〔接合領域(固定部)の幅に関する条件〕
図13で説明したように、振動板の中央に凹部(溝)を設け、その外周部に積層圧電素子を接合した構造について、接合部の幅を変えたときの変位体積の変化を調べたグラフを図15に示す。
図13で説明したように、振動板の中央に凹部(溝)を設け、その外周部に積層圧電素子を接合した構造について、接合部の幅を変えたときの変位体積の変化を調べたグラフを図15に示す。
図15の横軸は、積層圧電素子の幅(一辺の長さ)の1/2の値に対する接合部の幅の割合(「固定部比率」という。)を示し、縦軸は、変位体積(積層圧電素子の全面を固定した場合の変位体積を1としたときの相対値)を示す。
なお、図16に示すように、一辺の長さdの正方形の平面形状を有する積層圧電素子58において、外周形状に沿った周辺部の全周を接合部(符号58Dに相当)とし、その接合部幅をuとするとき、固定部比率はu/(d/2)で定義される。
図15には、層厚(1層あたりの厚さ)5μm、一辺が300μmの正方形の平面形状を有する積層圧電素子を用いた結果(グラフ[1] ) 、層厚30μm、一辺が500μmの正方形の平面形状を有する積層圧電素子を用いた結果(グラフ[2] ) 、層厚10μm、一辺が500μmの正方形の平面形状を有する積層圧電素子を用いた結果(グラフ[3] ) が示されている。積層圧電素子に関する上記の各条件以外の実施条件は図13で説明した条件と同じである。
図15から明らかなように、固定部比率は30%以下であることが望ましい。例えば、300μm幅の積層圧電素子については、接合部幅を45μm以下とすることが望ましく、500μm幅の積層圧電素子については、接合部幅を75μm以下とすることが望ましい。
図16では非接合領域の形状が略正方形である場合を例示したが、非接合領域の形状は、正方形に限らず、円、楕円、長方形、6角形その他の多角形など多様な形状が可能である。
また、上述した各実施形態では、積層圧電素子58の積層方向と振動板56とが略直交するように(積層圧電素子58の積層方向と振動板56の法線方向とが略平行になるように)積層圧電素子58を振動板56に接合した構造を述べたが、本発明の実施に際しては、図17に示すとおり、積層圧電素子58の積層方向(図17の横方向)と振動板56とが略平行になるように(積層圧電素子58の積層方向と振動板56の法線方向(図17の縦方向)とが略直交するように)積層圧電素子58を振動板56に接合する構造も可能である。
図17のような接合形態の場合、積層方向に直交するd31の変位によって振動板56が図の上方へ変位するとともに、積層方向に平行なd33の変位によって振動板56が撓む。すなわち、d31効果による振動板56の変位に、d33効果による振動板56の変位が付加されることで振動板56の変位量が拡大される。
上記実施形態では、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッドを用いたインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、短尺の記録ヘッドを往復移動させながら画像記録を行うシャトルヘッドを用いるインクジェット記録装置についても本発明を適用可能である。
また、上述の説明では、画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。例えば、印画紙に非接触で現像液を塗布する写真画像形成装置等についても本発明の液滴吐出ヘッドを適用できる。また、本発明に係る液滴吐出ヘッドの適用範囲は画像形成装置に限定されず、吐出ヘッドを用いて処理液その他各種の液体を被吐出媒体に向けて噴射する各種の装置(塗装装置、塗布装置、配線描画装置など)について本発明を適用することができる。
10…インクジェット記録装置、12…印字部、12K,12C,12M,12Y…ヘッド、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、18…給紙部、22…吸着ベルト搬送部、50…ヘッド、50A…ノズル面、51…ノズル、52…圧力室、56…振動板、56A…凹部、58…積層圧電素子、58A…電極材料、58B…圧電材料、58C…非接合領域、58D…接合領域、58E…凹部、72…システムコントローラ、75…ROM、80…プリント制御部、90…中間部材、90A…貫通孔
Claims (7)
- 液滴を吐出するノズルと、
前記ノズルに連通し該ノズルから吐出させる液が充填される圧力室と、
前記圧力室の少なくとも一部の面を構成する振動板と、
前記振動板を隔てて前記圧力室と反対側に配置されるとともに当該振動板と接合される積層圧電素子と、
を備え、
前記積層圧電素子の前記振動板に対する接合側の面のうち少なくとも中央部は非接合状態であり、当該非接合領域よりも外側の周辺部の少なくとも一部が接合されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 前記積層圧電素子は、前記接合側の面の縁寄りの周辺部全周に渡って接着剤を介して前記振動板に接合されていることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記積層圧電素子は、前記接合側の面において前記非接合領域を成す部分に凹部が形成され、当該凹部の外周部が前記振動板に接合されていることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記振動板は、前記積層圧電素子と接合される側の面に凹部が形成され、該凹部によって前記積層圧電素子の中央部が非接合状態となることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
- 前記振動板と前記積層圧電素子との間に、前記非接合領域を形成する凹部又は貫通孔を有する中間部材が配置され、該中間部材を介して前記振動板に前記積層圧電素子が接合されていることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
- 複数の前記ノズルと、各ノズルに対応した複数の前記圧力室とを備え、
前記振動板は各圧力室ごとに個別に分離された構造を有していることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の液滴吐出ヘッド。 - 請求項1乃至6の何れか1項記載の液滴吐出ヘッドを有し、前記ノズルから吐出した液滴によって記録媒体上に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
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JP2013022809A (ja) * | 2011-07-20 | 2013-02-04 | Seiko Epson Corp | 液体噴射ヘッド、および、液体噴射装置 |
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-
2004
- 2004-07-16 JP JP2004210261A patent/JP2006027123A/ja active Pending
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