JP2006017289A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 転がり軸受の少なくとも転動体の表面に、微小凹形状のくぼみをランダムに無数に設け、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniを0.4〜1.0μmの範囲内とし、かつ、Sk値を−1.6以下とする。
【選択図】 図1
Description
従来の微小凹部形状のくぼみは面粗さをパラメータRqniで表示したとき、軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)との比の値Rqni(L)/Rqni(C)の値が1.0以下となり(Rqni≧0.10)、あわせて面粗さのパラメータSk値が−1.6以下となるようにしており、これにより相手面が粗面でも仕上げ面のよい面でも長寿命になるようにしているが、低粘度、希薄潤滑下で油膜厚さが極端に薄い場合にはその効果が十分に発揮できない場合がある。
パラメータ算出規格:JIS B 0601:1994(サーフコム JIS 1994)
カットオフ種別:ガウシアン
測定長さ:5λ
カットオフ波長:0.25mm
測定倍率:×10000
測定速度:0.30mm/s
測定箇所:ころ中央部
測定数:2
測定装置:面粗さ測定器サーフコム1400A(東京精密株式会社)
ころの転動面に設ける微小凹形状のくぼみの場合、転動面全体に占めるくぼみの面積率を5〜20%の範囲内とし、くぼみの平均面積は等価円直径3μmφ以下を除いて整理したとき30〜100μm2になっている。Rymaxが0.4〜1.0μmの範囲外で、くぼみの面積率が20%を越え、平均面積が100μm2を越えると、接触有効長さが減少し、長寿命の効果は減少する傾向にある。くぼみの定量的測定を行うには、ころ表面を拡大し、その画像から市販されている画像解析システムにより定量化できる。画像の白い部分は表面平坦部、微小なくぼみは黒い部分として解析する。たとえば、(株)ピアスのLA−525画像解析システムを用いて解析すると、まず原画の濃淡を強調フィルタで明確化し、その後非常に微細な黒い部分である等価円直径3μmφ以下はノイズイレーザで除去する。ノイズイレーザで除去した後に残された微小なくぼみの大きさ、分布、微小なくぼみの面積率を求め、ころ表面を評価するのである。その場合の測定条件はたとえば次のとおりである。
観察視野:826μm×620μm
測定箇所:ころ中央部
測定数:2
図1は転がり軸受の第一の例を示しており、この転がり軸受1は転動体として針状ころ2を外輪3に組み込んだ針状ころ軸受であり、針状ころ2で相手軸4を支持するようになっている。針状ころ表面に、仕上面の異なる表面処理を施した複数種類の針状ころ軸受を製作し、寿命試験を行なった結果について説明する。寿命試験に用いた針状ころ軸受は、図2に示すように、外径Dr=33mm、内径dr=25mm、針状ころ2の直径D=4mm、長さL=25.8mmで、15本の針状ころを用いた保持器5付きの軸受である。試験軸受として針状ころの表面粗さ仕上の異なる3種類を製作した。すなわち、研削後スーパーフィニッシュを施した軸受A(比較例)と、微小凹形状のくぼみをランダムに無数に形成した軸受B(比較例)および軸受C(実施例)とである。各試験軸受の針状ころにおける仕上面状況を図3ないし図5に示す。具体的には、図3は軸受Aの表面粗さ、図4は軸受Bの表面粗さ、図5は軸受Cの表面粗さをそれぞれ示す。また、各試験軸受の表面仕上面の特性値パラメータ一覧を表1に示す。なお、表1中、パラメータSkとは、粗さ曲線の歪み度(スキューネス)を指し(ISO 4287:1997)、凹凸分布の非対称性を知る目安の統計量であり、ガウス分布のような対称な分布ではSk値は0に近くなり、凹凸の凸部を削除した場合は負、逆の場合は正の値をとることになる。Sk値のコントロールは、バレル研摩機の回転速度、加工時間、ワーク投入量、チップの種類と大きさ等を選ぶことにより行える。たとえば、Sk値を幅方向、円周方向とも−1.6以下とすることにより、微小凹形状のくぼみが油溜りとなり、圧縮されても滑り方向、直角方向への油のリークは少なく、油膜形成に優れ、油膜形成状況は良好で、表面損傷を極力抑える効果がある。なお、Rqni(L/C)については、軸受B、Cは1.0以下であり、軸受Aは1.0前後の値である。
軸受ラジアル荷重:2000kgf
回転数:4000rpm
潤滑剤:クリセクオイルH8(試験条件で2cst)
図7に油膜パラメータΛ=0.13の下での寿命試験結果を示す。同図の縦軸がL10寿命(h)を表している。同図から明らかなとおり、軸受Aが78h、軸受Bが82hであったのに対して軸受Cは121hであった。このデータが示すように、実施例である軸受Cは、油膜パラメータΛ=0.13という低粘度、希薄の非常に過酷な潤滑条件下でも長寿命効果を得ることができる。
円すいころの転動面を滑らかな面に仕上げた従来の円すいころ軸受A,B(比較例)と、円すいころの転動面に微小凹形状のくぼみをランダムに無数に形成した軸受C〜E(比較例)ならびに軸受F,G(実施例)について行った寿命試験について説明する(表2参照)。使用した軸受A〜Gはいずれも、外輪の外径が81mm、内輪の内径が45mmの円すいころ軸受である。なお、比較例の軸受A,Bにおけるころの転動面は、研削後にスーパーフィニッシュ(超仕上げ)を施して加工され、くぼみ加工を施してない。比較例の軸受C〜Eならびに実施例の軸受F,Gのころの転動面は、バレル研磨特殊加工によって微小凹形状のくぼみがランダムに無数に形成してある。なお、Rqni(L/C)については、ころ軸受C〜Gは1.0以下であり、ころ軸受A,Bは1.0前後である。
(実施例I)
JIS規格SUJ2材(1.0重量%C−0.25重量%Si−0.4重量%Mn−1.5重量%Cr)を用いて、(1)水素量の測定、(2)結晶粒度の測定、(3)シャルピー衝撃試験、(4)破壊応力値の測定、(5)転動疲労試験の各試験を行なった。表1にその結果を示す。
。二次焼入れは行なわなかった。
水素量は、LECO社製DH−103型水素分析装置により、鋼中の非拡散性水素量を分析した。拡散性水素量は測定してない。このLECO社製DH−103型水素分析装置の仕様を下記に示す。
分析範囲:0.01〜50.00ppm
分析精度:±0.1ppmまたは±3%H(いずれか大なるほう)
分析感度:0.01ppm
検出方式:熱伝導度法
試料重量サイズ:10mg〜35mg(最大:直径12mm×長さ100mm)
加熱炉温度範囲:50℃〜1100℃
試薬:アンハイドロン Mg(ClO4)2、アスカライト NaOH
キャリアガス:窒素ガス、ガスドージングガス:水素ガス、いずれのガスも純度99.99%以上、圧力40psi(2.8kgf/cm2)である。
結晶粒度の測定は、JIS G 0551の鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法に基づいて行なった。
シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242の金属材料のシャルピー衝撃試験方法に基づいて行なった。試験片は、JIS Z 2202に示されたUノッチ試験片(JIS3号試験片)を用いた。
図16は、静圧壊強度試験(破壊応力値の測定)の試験片を示す図である。図中のP方向に荷重を負荷して破壊されるまでの荷重を測定する。その後、得られた破壊荷重を、下記に示す曲がり梁の応力計算式により応力値に換算する。なお、試験片は図16に示す試験片に限られず、他の形状の試験片を用いてもよい。
σ1=(N/A)+{M/(Aρ0)}[1+e1/{κ(ρ0+e1)}]
σ2=(N/A)+{M/(Aρ0)}[1−e2/{κ(ρ0−e2)}]
κ=−(1/A)∫A{η/(ρ0+η)}dA
(5)転動疲労寿命
転動疲労寿命試験の試験条件を表2に示す。また、図17は、転動疲労寿命試験機の概略図である。図17(a)は正面図であり、図17(b)は側面図である。図17(a)および図17(b)において、転動疲労寿命試験片21は、駆動ロール11によって駆動され、ボール13と接触して回転している。ボール13は、3/4インチのボールであり、案内ロール12にガイドされて、転動疲労寿命試験片21との間で高い面圧を及ぼし合いながら転動する。
浸炭窒化処理したままの従来浸炭窒化処理品は、0.72ppmと非常に高い値となっている。これは、浸炭窒化処理の雰囲気に含まれるアンモニア(NH3)が分解して水素
が鋼中に浸入したためと考えられる。これに対し、試料B〜Dは、水素量は0.37〜0.40ppmと半分近くまで減少している。この水素量は普通焼入れ品と同レベルである。
結晶粒度は二次焼入れ温度が、浸炭窒化処理時の焼入れ(一次焼入れ)の温度より低い場合、すなわち試料B〜Dの場合、オーステナイト粒は、結晶粒度番号11〜12と顕著に微細化されている。試料EおよびFならびに従来浸炭窒化処理品および普通焼入れ品のオーステナイト粒は、結晶粒度番号10であり、本発明例の試料B〜Dより粗大な結晶粒となっている。
表4によれば、従来浸炭窒化処理品のシャルピー衝撃値は5.33J/cm2であるの
に比して、本発明例の試料B〜Dのシャルピー衝撃値は6.30〜6.65J/cm2と
高い値が得られている。この中でも、二次焼入れ温度が低い方がシャルピー衝撃値が高くなる傾向を示す。普通焼入れ品のシャルピー衝撃値は6.70J/cm2と高い。
上記破壊応力値は、耐割れ強度に相当する。表4によれば、従来浸炭窒化処理品は2330MPaの破壊応力値となっている。これに比して、試料B〜Dの破壊応力値は2650〜2840MPaと改善された値が得られている。普通焼入れ品の破壊応力値は2770MPaであり、試料B〜Dの改良された耐割れ強度は、オーステナイト結晶粒の微細化と並んで、水素含有率の低減による効果が大きいと推定される。
表4によれば、普通焼入れ品は浸炭窒化層を表層部に有しないことを反映して、転動疲労寿命L10は最も低い。これに比して従来浸炭窒化処理品の転動疲労寿命は3.1倍となる。試料B〜Dの転動疲労寿命は従来浸炭窒化処理品より大幅に向上する。試料E,Fは、従来浸炭窒化処理品とほぼ同等である。
次に実施例IIについて説明する。下記のX材、Y材およびZ材について、一連の試験を
行なった。熱処理用素材には、JIS規格SUJ2材(1.0重量%C−0.25重量%Si−0.4重量%Mn−1.5重量%Cr)を用い、X材〜Z材に共通とした。X材〜Z材の製造履歴は次のとおりである。
X材(比較例):普通焼入れのみ(浸炭窒化処理せず)。
Y材(比較例):浸炭窒化処理後にそのまま焼入れ(従来の浸炭窒化焼入れ)。浸炭窒化処理温度845℃、保持時間150分間。浸炭窒化処理の雰囲気は、RXガス+アンモニアガスとした。
Z材(本発明例):図12の熱処理パターンを施した軸受鋼。浸炭窒化処理温度845℃、保持時間150分間。浸炭窒化処理の雰囲気は、RXガス+アンモニアガスとした。最終焼入れ温度は800℃とした。
転動疲労寿命の試験条件および試験装置は、上述したように、表5および図17に示すとおりである。この転動疲労寿命試験結果を表3に示す。
シャルピー衝撃試験は、Uノッチ試験片を用いて、上述のJISZ2242に準じた方法により行なった。試験結果を表7に示す。
図18は、静的破壊靭性試験の試験片を示す図である。この試験片のノッチ部に、予き裂を約1mm導入した後、3点曲げによる静的荷重を加え、破壊荷重Pを求めた。破壊靭性値(K1c値)の算出には次に示す(I)式を用いた。また、試験結果を表5に示す。
K1c=(PL√a/BW2){5.8−9.2(a/W)+43.6(a/W)2
−75.3(a/W)3+77.5(a/W)4}・・・(I)
静圧壊強度試験片は、上述のように図16に示す形状のものを用いた。図中、P方向に荷重を付加して、静圧壊強度試験を行なった。試験結果を表9に示す。
保持温度130℃、保持時間500時間における経年寸法変化率の測定結果を、表面硬度、残留オーステナイト量(50μm深さ)と併せて表10に示す。
表11に、窒素含有量と異物混入条件下の転動寿命との関係について行なった試験の結果を示す。この試験では図8に示す円すいころ軸受を使用し、実施例1〜5は図12に示す熱処理パターンによって外輪13、内輪14、円すいころ16のすべてを製造している。また、円すいころの表面には表1、表2に示す微小凹形状のくぼみをランダムに無数に形成してある。なお、比較例1は標準焼入れ品、比較例2は標準の浸炭窒化品である。比較例3は本発明実施例と同様の処理を施したものの窒素量のみ過多の場合である。試験条件は次のとおりである。
供試軸受:円すいころ軸受30206(内・外輪、ころ共にJISによる高炭素クロム軸受鋼2種(SUJ2)製)
ラジアル荷重:17.64kN
アキシアル荷重:1.47kN
回転速度:2000rpm
硬質の異物混入1g/L
2 転動体
2a くぼみ
3 外輪
4 相手軸
5 保持器
Claims (4)
- 少なくとも転動体の表面に、微小凹形状のくぼみをランダムに無数に設けた転がり軸受において、
前記くぼみを設けた面におけるくぼみの面積率が5〜20%の範囲内で、かつ、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRymaxが0.4〜1.0の範囲内であり、
前記転がり軸受の外方部材、内方部材および転動体のうち少なくともいずれか一つの部材が、窒素富化層を有し、かつ、前記窒素富化層におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にあることを特徴とする転がり軸受。 - 前記くぼみを設けた面の面粗さをパラメータRqniで表示したとき、軸方向面粗さRqni(L)とRqni(C)との比の値Rqni(L)/Rqni(C)が1.0以下であることを特徴とする請求項1の転がり軸受。
- 前記窒素富化層における窒素含有量が0.1%〜0.7%の範囲であることを特徴とする請求項1の転がり軸受。
- 前記少なくとも一つの部材が軌道輪であって、前記窒素含有量が、研削後の軌道面の表層50μmにおける値であることを特徴とする請求項3の転がり軸受。
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