JP2006015069A - 隠しスライドファスナー用スライダーと隠しスライドファスナー - Google Patents

隠しスライドファスナー用スライダーと隠しスライドファスナー Download PDF

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Abstract

【課題】縫い目はもちろん縫製糸が取着製品の表面に表出せずデザイン性に優れ、スライドファスナーの開閉操作性にも優れた隠しスライドファスナー用のスライダーと同スライダーを適用した耐久性ある隠しスライドファスナーとを提供する。
【解決手段】左右一対のファスナーテープ(11)の対向する側縁部をU字状に折り返して2重とされた各折返し側縁部(15)の裏面側の折返し片(15a) にファスナーエレメント(14)が連続的に取り付けられた隠しスライドファスナー(10)の各ファスナーエレメント列(12)を噛合・分離させるスライダー(20)である。スライダー(20)は、連結柱(25)で連結された上下翼板(23,24) を有するとともに、下翼板(24)の左右側縁に直交して上翼板(23)に接近するフランジ(27)を有している。前記上下翼板(23,24) の間には、2重に折り返された前記各折返し側縁部(15)と前記各ファスナーエレメント列(12)とが同時に挿通案内される案内通路(28)を有している。
【選択図】図2

Description

この発明は、隠しタイプのスライドファスナー用に好適なスライダーと、そのスライダーを装着した隠しスライドファスナーに関する。
従来のスライドファスナーの代表的なタイプは、通常タイプと隠しタイプの2種類に大別される。通常のタイプのスライドファスナー100は、図8に示すように2枚のファスナーテープ101の対向するエレメント取付縁部の表面又は表裏面を跨いで多数のファスナーエレメント102がそれぞれ取り付けられて左右のファスナーストリンガー103を構成している。この左右のファスナーストリンガー103の各ファスナーエレメント102が前記ファスナーテープ101のエレメント取付縁部とともにスライダー104の案内通路に挿通される。スライダー104は、スライダー胴体105と同スライダー胴体105に取り付けられた引手106とを有している。
前記スライダー胴体105は、上下翼板105a,105bと同上下翼板105a,105bを連結する連結柱105cとを備えている。この連結柱105cは上下翼板105a,105bを連結するとともに、上下翼板105a,105bの間の空間を左右のファスナーストリンガー103の多数のファスナーエレメント102からなる左右の各ファスナーエレメント列107を分離して挿通する左右の肩口と、同ファスナーエレメント列107を噛合状態で挿通する1つの後口とが連通するY字状のエレメント案内通路を画成している。上下翼板105a,105bの各左右側縁には、同上下翼板105a,105bに直交して互いが接近する上下フランジ105a−1,105b−1を有しており、この上下フランジ105a−1,105b−1間の間隙に上記ファスナーテープ101をスライダー胴体105の内外にわたって挿通させる。
すなわち、この通常タイプのスライドファスナー100では、スライダー胴体105のエレメント案内通路をファスナーテープ101の同一平面上に配されたファスナーエレメント列107がファスナーテープ101を折り返すことなく挿通されてされている。そのため、スライドファスナー100の開閉時のいずれにあっても、ファスナーエレメント102が外部に露呈することになる。また、同時にファスナーテープ101に対するファスナーエレメント列107の、例えば縫製糸108も外部に露呈する。
一方で、近年になってデザイン的観点から、ファスナーエレメントが表面側から見えない隠しスライドファスナーを用いる要望が高まっており、この隠しスライドファスナーが衣服や靴等にも多く用いられるようになっている。一般的な隠しスライドファスナーの一例が、例えば特許第3439605号公報(特許文献1)に開示されている。この特許文献1にあっても同様であるが、隠しタイプのスライドファスナー200は、図9に示すように、一般的に2枚のファスナーテープ201の対向するエレメント取付縁部を長さ方向に沿ってU字状に折り返して折返し側縁部201aを成形し、その折返し側縁部201aの折返し片201a−1の下面側に多数のファスナーエレメント202が縫製により取り付けられて左右のファスナーストリンガー203を構成する。
この左右のファスナーストリンガー203の各ファスナーエレメント列204が、ファスナーテープ201の前記折返し片201a−1とともにスライダー205の案内通路に挿通される。このとき、各ファスナーテープ201の前記折返し片201a−1とファスナーエレメント列204以外のテープ部分はスライダー胴体206の表面側を被覆する。そのため、この種の隠しスライドファスナーに適用されるスライダー205の胴体206は、通常、下翼板206bの左右中央部に肩口から後口にかけて延在する案内柱206cを設けるとともに、下翼板206bの左右側縁に沿って立ち上がる立上り部分206d−1と、その上端縁から互いに接近して水平に延びる水平部分206d−2とを有する逆L字断面のエレメント案内フランジ206dが設けられている。
また、前記案内柱206cの上面には引手取付部206c−1が突設され、同引手取付部206c−1には引手207が前後に回動自在に取り付けられている。この引手取付部206c−1は左右ファスナーストリンガー203の対向するテープ折返し部の間から上方に突出する。そのため、ファスナーエレメント列204も、その縫製糸もファスナーテープの裏面側に隠れて外部から視えず、同スライドファスナー200を閉鎖したときには同ファスナー200の取着製品の開閉部は単なるシーム線が表出するに過ぎず、外観上スッキリと見せることができる。
しかしながら、このような複雑な構成を有する隠しスライドファスナーに代えて、例えば米国特許第5,008,986号明細書(特許文献2)により提案された隠しタイプのスライドファスナーが知られている。この特許文献1では、上記図8に示した通常のスライドファスナーにあって、スライダーの上下翼板の構造を変えないまま、ファスナーテープの上面側に取り付けたファスナーエレメント列を下面側に取り付けている。しかし、単にファスナーエレメント列をファスナーテープの下面側に取り付けるだけだと、ファスナーテープの相対する端縁間に隙間ができて、その隙間からは相変わらずファスナーエレメント列が外から視えてしまう。
そこで同文献1では、更に前記ファスナーテープの端縁を通常の位置よりもファスナーエレメントの噛合頭部側に延出させて、スライドファスナーの開閉時、特に閉鎖時には前記ファスナーテープの対向端縁同志が互いに押圧して密接させ、ファスナーエレメント列を外部から視えないようにしている。また、ファスナーテープに防水性を与えれておけば、前述のようにファスナーテープの対向端縁同志が互いに押圧して密接するため、端縁間の隙間からはファスナーエレメントを介して水分が内側に浸入しなくなり、特に靴や防水性外衣などに適した構造となる。
特許第3439605号公報 米国特許第5,008,986号明細書
しかしながら、前記特許文献2によればファスナーエレメント列はファスナーテープの下面ではあるが、ファスナーテープが折り返されないままに縫着糸により縫着されているため、その縫製糸自体は表面に露呈する。例えば各種スポーツ用の靴のように激しい当たりが繰り返される製品に特許文献2に開示された隠しタイプのスライドファスナーが適用される場合、前述のように縫着糸が外部に表出していると、同縫製糸に外力が直接作用し、或いは周辺の用具などが縫着糸に引っ掛かり、切断しやすくなる。また、例えば防水性衣服に同スライドファスナーが適用された場合には、その縫い目が直接外部に露呈しているため、同縫い目を通して水分が内側に浸入し、期待するほどの防水効果が得にくい。
一方、図10に示したような一般的な構造をもつ隠しスライドファスナー用のスライダー205の場合、これを特に靴類などのような身体に密着する装身具に適用しようとすると、ファスナーテープ201のU字状断面をもつ折返し側縁部201aの折返し部分の内面が、スライダー205の下翼板206bの左右端縁から立ち上がる逆L字状フランジ部206dの水平部分206d−2の端縁に強く密着して摺動されることになり、摺動抵抗が大きくなって、その部分で磨耗が促進され耐寿命性にも影響を与えかねない。更に、この一般的な構造をもつ隠しスライドファスナー200にあっては、ファスナーテープ201にテープ巾方向の引っ張り力が加わると、逆L字状フランジ部206dの水平部分206d−2の端縁によって折返し側縁部201aのテープ主体部に続く部分が強く引っ張られて、下翼板206bと案内柱206cと逆L字状フランジ部206dとの間に存在するファスナーエレメント202が斜めに立ち上がりやすくなり、安定した姿勢を維持できなくなりる。その結果、ファスナーエレメント202の噛合に影響を与えかねず、或いはU字状に折り返された折返し側縁部201aが開く方向に変形して、見栄えを悪くしてしまう恐れもある。
本発明は、こうした従来の隠しスライドファスナー用スライダーの特有の構造に基づく様々な課題を解決すべくなされたものであり、その具体的な目的は縫い目はもちろん縫製糸が取着製品の表面に表出せずデザイン性に優れ、、同時にスライドファスナーの開閉操作性にも優れた隠しスライドファスナー用のスライダーと同スライダーを適用した耐久性ある隠しスライドファスナーとを提供することにある。
かかる目的は、本発明に係る隠しスライドファスナー用スライダーの基本構成である、左右一対のファスナーテープの対向する側縁部をU字状に折り返して2重とされた各折返し側縁部の裏面側の折返し片にファスナーエレメントが連続的に取り付けられた隠しスライドファスナーの各ファスナーエレメント列を噛合・分離させるスライダーであって、連結柱で連結された上翼板及び下翼板を有し、前記下翼板の左右側縁に直交して前記上翼板に接近するフランジを有し、前記上翼板と下翼板との間には、前記ファスナーテープの2重に折り返された各折返し側縁部と前記各ファスナーエレメント列とが挿通案内される案内通路を有してなることを特徴とする隠しスライドファスナー用スライダーにより達成される。
また、前記スライダーを装着した本発明に係る隠しスライドファスナーの基本構成は、側縁に沿ってU字状に折り返され2重とされた折返し側縁部と同側縁部を除くテープ主体部とからなる左右一対のファスナーテープ、同ファスナーテープの前記折返し側縁部の各折返し片に沿って取り付けられた左右のファスナーエレメント列、及び同ファスナーエメント列に沿って摺動し、左右のファスナーエレメント列の噛合・分離を行うスライダーを備えた隠しスライドファスナーであって、前記スライダーが連結柱で連結された上翼板及び下翼板を有し、同下翼板の各左右側縁に直交して上翼板に接近するフランジを有してなり、前記上翼板と下翼板との間には、前記ファスナーテープの2重に折り返された前記各折返し側縁部とその折返し片に取付けられた各ファスナーエレメント列とが挿通案内される案内通路を形成してなることを特徴としている。
本発明の上記スライダーにあっては、前記上翼板及び下翼板の左右側縁における上下方向の間隙は上記折返し側縁部以外のファスナーテープ主体部だけが挿通できる寸法に設定されている。また本発明のスライダーにあって、上記連結柱の左右側面の上部に沿って上翼板との間に配され、上翼板から下翼板に向けて突出する突条が設けられ、同突条の下端面と下翼板との間に上記ファスナーエレメント列を噛合・分離可能な姿勢で案内するエレメント案内空間が形成され、前記突条の側面と前記エレメント案内空間と前記上翼板とにより囲まれる空間は、各ファスナーテープの前記折返し側縁部がファスナーエレメント列の噛合・分離可能な姿勢を保持して収容案内するテープ側縁部案内空間を構成することが好ましい。更に好ましい態様によれば、前記突条の下端面を、前記エレメント案内通路の内方側から外方側へ向けて上向き傾斜する傾斜面に形成する。また、前記上翼板の左右下面にはスライダーの前後方向に延在し、前記連結柱から外側に向けて下向き傾斜して膨出する膨出条を設けることもできる。
作用効果
本発明による隠しスライドファスナーのスライダーによれば、上下翼板の間の連結柱を挟んだ左右の案内通路に、ファスナーテープの折返し側縁部が2重に折り返された状態で、その折返し片に取り付けられたファスナーエレメントとともに収容されるため、従来のように逆L字状フランジ部の水平部分の端縁によって折返し側縁部の折返し部分に局部的な密着摺動力が加わらず、また仮りに左右のファスナーテープに左右方向への強い引っ張り力が加わってもファスナーエレメントが斜めに立ち上がることがなく、ファスナーテープの折返し部分も開くことがない。そのため、スライダーの摺動操作が円滑になされると同時にファスナーエレメントを確実に噛合・分離させることができ、またテープの耐久性も増加し、本発明の隠しスライドファスナーを装着した製品の外観上の見栄えにも影響を与えることがなくなる。
本発明において、上記連結柱の左右側面に沿って上翼板から下翼板に向けて突出する突条を設けると、同突条の下端面と下翼板との間に上記ファスナーエレメント列を案内するエレメント案内空間と、前記突条の側面、前記エレメント案内空間及び前記上翼板により囲まれる空間を各ファスナーテープの前記折返し側縁部を収容案内するテープ側縁部案内空間とに画成することができ、エレメント案内通路内でファスナーエレメントが不用意に立ち上がることもなくなる。従って、ファスナーエレメント列はエレメント案内空間を案内されて摺動する一方で、各ファスナーテープのU字状の前記折返し側縁部はファスナーエレメントとは独立してテープ側縁部案内空間を摺動案内されるため、両者の摺動姿勢が一定に維持され、ファスナーエレメントの噛合・分離が円滑になされる。
更に前記突条の下端面を、前記エレメント案内通路の内方側から外方側へ向けて上向き傾斜する傾斜面に形成しておけば、テープ側縁部案内空間を摺動案内されるファスナーテープのU字状の前記折返し側縁部の形態も安定化する。また、ファスナーエレメントが立ち上がろうとして突条の下端面に当接しても、この下端が傾斜面に形成されているため、ファスナーエレメントに傷を負わせることがない。
また、前記上翼板の左右下面に、スライダーの前後方向に延在し、前記連結柱から外側に向けて下向き傾斜して膨出する膨出条を設ける場合には、左右のファスナーテープに対して左右方向の力、つまり隠しスライドファスナー用チェーンに横引き力が加わって、ファスナーエレメントが傾こうとすると、ファスナーテープが膨出条と面接触して、ファスナーテープとの間の摩擦抵抗を大きくし、ファスナーエレメントの傾斜姿勢をし難くすることができる。このとき、ファスナーテープは膨出条の傾斜する下面に沿って面接触するためファスナーテープを傷つけることもない。
上記スライダーにあって、前記下翼板のフランジと上翼板との間の間隙を上記折返し側縁部を除くファスナーテープ主体部が挿通可能な寸法に設定すると、スライダーの内部に収容されたファスナーテープの折返し側縁部とファスナーエレメントとの収容形態を変えることなく、スライダーを円滑に摺動させることができるようになる。
以下、本発明の隠しスライドファスナー用スライダーの好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明のスライダー20を装着した隠しスライドファスナー10の一部を示す平面図である。この図から理解できるように同スライドファスナー10は一見すると、スライダー20の上翼板21がファスナーテープ11の表面側に表出し、同上翼板21には引手22が設けられているため、通常タイプのスライドファスナーの様相を呈している。しかるに詳細に観察すると、ファスナーエレメント列12が噛合して左右のファスナーストリンガー18が閉じられた状態では、前記ファスナーエレメント列12がスライドファスナー10の表面から全く見えない状態となっていることが分かる。この点から、同図に示されたスライドファスナー10は隠しタイプであることが察せられる。
図1に示す本実施形態に係る隠しスライドファスナー10の基本構造について、図2〜図6を参照しながら詳しく説明する。
図2は図1のII-II 線に沿った矢視断面図である。本実施例の隠しスライドファスナー10にあって、スライダー内部で噛合状態にあるファスナーエレメント14をスライダー20の後口側から見た部分断面を示している。
同図において、左右一対のファスナーテープ11の対向側縁部は、双方ともに下側に2つ折りにされており、本明細書ではこの2つ折りされた部分を折返し側縁部15と称している。すなわち、この折返し側縁部15は、テープ主体部16から延在し、U字状に下側に折り返された折返し片15aを含む2重に重なった部分の全体を総称している。ファスナーテープ11の一側縁部が前述のように折り返されたのち、熱セットなどによってその形態が永久的に固定される。この折返し側縁部15の前記折返し片15aの下面にファスナーエレメント列12が縫着糸17によって二重環縫いされて縫着一体化し、左右のファスナーストリンガー18を構成する。このとき、本実施形態の隠しスライドファスナー10のファスナーテープにあっても、従来と同様に、前記折返し側縁部15のテープ主体部16から延在するテープ部分は折返し片15aから浮き上がった状態にあり、前記縫着糸17による縫着がなされていない。なお、図2に示す符号19はファスナーエレメント列12のコイル内に挿通された芯紐である。
前記折返し片15aの下面に縫着された本実施形態におけるファスナーエレメント14は、熱可塑性樹脂からなる一本の線条(モノフィラメント)をコイル状に成形するとともに、その各コイル部分の一部に噛合頭部14aを直線状に配して成形された連続状のファスナーエレメント列12から構成されている。すなわち、各ファスナーエレメント14を構成するコイル部分は、前記噛合頭部14aと同噛合頭部14aの上下からほぼ水平に延びる上下脚部14bと隣接するファスナーエレメント14の上下脚部14bを連結する連結部14cとからなる。
一方、前述の構成をもつ左右のファスナーストリンガー18の前記ファスナーエレメント列12を挿通案内して、対向する各ファスナーエレメント14の噛合・分離操作を行う本発明の特徴部をなす本実施形態による上記スライダー20は、図2〜図5に示すように、スライダー胴体21と引手22とを備えている。スライダー胴体21は上翼板23、下翼板24、及び上下翼板23,24を中央部で連結する連結柱25を有している。前記上翼板23及び下翼板24の各左右側端には、同上翼板23及び下翼板24と直交する方向で互いに接近するように延出し、それぞれが左右一対となった上下のフランジ26,27が形成されている。その上下フランジ26,27間には間隙が設けられており、この間隙の寸法は上記ファスナーテープ11のテープ主体部16だけが挿通するに十分な寸法に設定される。なお、本実施形態では上下翼板23,24の左右側縁に、それぞれ上下フランジ26,27を形成しているが、上翼板23にフランジ26を形成することなく、下翼板にだけフランジ27を形成することもでき、その場合には下翼板24の下部フランジ27と上翼板との間の間隙をテープ主体部16だけが挿通できるに十分な間隙に設定する。
前記連結柱25と、上下翼板23,24と、上下左右の各側フランジ26,27との間には、肩口から後口に向けて分れている通路が合流して単一の通路となるY字状の案内通路28が形成されている。本実施形態にあって、最も重要な点は上翼板23の存在と前記案内通路28の高さとにある。本発明のスライダー構造及び前記案内通路28と、図9に示した従来の隠しスライドファスナー用スライダー205の構造及びエレメント案内通路とを比較すると、その差は明らかであり、本発明のスライダー20では図8に示した通常タイプのスライドファスナー用スライダー100と同様に平面的に連続する平板状の上翼板23が設けられており、図8に示した通常タイプのスライドファスナー用スライダーのエレメント案内通路と比較しても、或いは図9に示した一般的な隠しスライドファスナー用のスライダー205と比較しても、本発明における上記案内通路28の高さ寸法いずれも大きく設定されている点に大きな差異がある。
つまり、図8に示した通常タイプのスライドファスナー用スライダー105及び図9に示した従来の一般的な隠しスライドファスナー用のスライダー205では、ファスナーエレメントの案内通路には、ファスナーエレメント列104,204と単一枚からなるファスナーテープ101,201とが挿通案内されるだけの高さに設定されているのに対して、本実施例における隠しスライドファスナー用のスライダー20は、図2に最も具体的に例示するとおり、ファスナーエレメント14の案内通路28には、ファスナーエレメント列12とファスナーテープ11が折り返されて2重となった折返し側縁部15aとが挿通案内される高さに設定されている点で大きな差異がある。
図示例では、更に上記上翼板23の下面と連結柱25の左右側面との隅部には、左右のファスナーエレメント列12が分離した状態で移動する上記スライダー20の肩口側から左右のファスナーエレメント列12が噛合した状態で移動する後口側に向けて、連結柱25の肩口側の途中から後口側端部まで左右側面に沿って延びるとともに、左右外方に向けて突出する突条25aが形成されている。前記上翼板23には、前記連結柱25の後口側の端面から後口に向けて先細り状のランド部29が形成されており、前記突条25aの先端は前記ランド部29の基端に連続して接続されている。更に、この左右の突条25aの各下面は、図5に示すように左右方向に向けてそれぞれ上向き傾斜する傾斜面25a−1とされている。また本実施形態にあっては、更に図4及び図5に示すように、上翼板23の左右側縁部の下面には、それぞれ外側に向けて下向きに傾斜して膨出する膨出条23aがスライダー20の前後方向に延在している。
一方、前記上翼板23の上面には、左右一対の引手保持柱30が突設され、その左右の引手保持柱30間に、引手22の軸部22aが枢支されている。この軸部22aの中央には周面にカム面22bが形成され、引手22の回動により後述する停止爪付きスプリング31の爪部31aを上下に移動させて、スライダー20内で噛合する左右ファスナーストリンガー18の一方のファスナーエレメント列12に係合離脱して、スライダー20の摺動を不能にし、或いは摺動を可能にする。そのため、上記ランド部29の中央部には前記爪部31aが挿通可能な爪部挿通孔29aが形成されている。前記停止爪付きスプリング31は、図6に示すように2段の階段状に屈曲形成された板バネ片から構成され、前記爪部31aはその上段の先端から下方に向けて略直角に屈曲して突設されている。
前記停止爪付きスプリング31をスライダー20に装着するため、図6に示すように、上記上翼板23の上面の上記左右一対の引手保持柱30の前後に、それぞれ前柱32と後柱33とが形成されるとともに、前記後柱33の前端部から上記連結柱25の前端部にかけて前記停止爪付きスプリング31を収容するためのスプリング収容溝34が形成されている。この収容溝34の後端部には、後柱33の前端面を含んで上記爪部挿通孔29aが貫通して形成されるとともに、前記スプリング収容溝34の前端部にも前記停止爪付きスプリング31の前記爪部31aとは反対側の基端部31bが係着するスプリング係着孔25bが前記連結柱25を貫通して形成されている。前記後柱33は上記左右一対の前記引手保持柱30の後面に隣接して、その中央に立設され、前記前柱32は前記引手保持柱30の前面に隣接して、前記停止爪付きスプリング31を挟んで立設され、前記連結柱25の上方に延在する左右一対の立壁部を含んでいる。
かかる引手22及び停止爪付きスプリング31の装着構造は、例えば実公昭63−1854号公報に開示された装着構造と実質的に変わるところがないため、詳しくは同公報を参照されたい。
以上の構成を備えた本実施形態による隠しスライドファスナー10によれば、上下翼板23,24の間に連結柱25を挟んで形成されたY字状の案内通路28は、ファスナーテープ11の折返し側縁部15とファスナーエレメント列12が十分に案内移動できる高さと幅とを有しているため、同案内通路内28内にファスナーテープ11の折返し側縁部15とファスナーエレメント列12を挿通させた状態で、しかもファスナーテープ11のテープ主体部16を上下翼板23,24の間に形成された間隙に挿通された状態で前後に摺動する。そのため、本実施形態による隠しスライドファスナー10は、その表面に上翼板23の上面が露呈し、一見すると通常一般のスライドファスナーと見間違う。しかるに、左右のファスナーストリンガー18について見ると、図1及び図8に示すとおり、左右のファスナーテープ11の相対する端縁部には、その表面に縫着糸17が一切表出せず、極めて見栄えに優れたものとなる。特に、過酷な条件下で使われるスポーツ靴やスポーツウェアなどの装身具や衣料に装着されると、本実施形態の隠しスライドファスナー10を閉鎖したとき、そのファスナーストリンガー18の突き合わせ部分が確実に密着して、確実な防水性が得られるようになる。
いま、本実施形態の隠しスライダー20を左右のファスナーストリンガー18上で、その長さ方向の前後に摺動させるには、図6に仮想線で示すように、引手22を上方に回動させると、軸部22aも回動してカム面22bにより停止爪付きスプリング31が基端部31bを中心に上方に回動して停止爪付きスプリング31を持ち上げ、上翼板23に形成されている爪部挿通孔29aから上下翼板23,24の間に形成されている案内通路18へと突出している爪部31aを同爪部挿通孔29aの内部へと引き込み、長さ方向に隣接する図示せぬファスナーエレメント間に浸入して係合していた爪部31aの係合を外し、スライダー20の摺動を可能にする。引手22を、図6に実線で示すように、上翼板23の上面に平行になるように倒伏させると、軸部22aのカム面22bにより停止爪付きスプリング31が原形に復し、爪部31aは前記爪部挿通孔29aから上下翼板23,24の間の案内通路28へと突出して、長さ方向に隣接する図示せぬファスナーエレメント間に浸入して係合し、スライダー20の摺動を不能にする。
本実施形態にあっては、スライダー20が肩口(前部)方向に移動すると、上下翼板23,24間に形成された案内通路28に沿って一緒に挿通されたファスナーエレメント列12及び左右の折返し側縁部15の左右ファスナーエレメント列12は後口側へと相対的に移動し、分離状態にあるファスナーストリンガー18はランド部29を通過するとき噛合して、スライドファスナー10は閉鎖される。反対にスライダー20を後口(後部)方向に移動すると、上下翼板23,24間に形成された案内通路28に沿って一緒に挿通されたファスナーエレメント列12及び左右の折返し側縁部15の噛合状態にある左右ファスナーエレメント列12は、後口側から肩口側へと相対的に移動する間に連結柱25により噛合が解除され左右のファスナーストリンガー18に分離され、スライドファスナー10を開く。
図2は、スライダー20の後口側から見た隠しスライドファスナーの断面図であるが、同図から理解できるように、左右のファスナーエレメント列12は噛合状態にある。また、同時に左右のファスナーテープ11の折返し側縁部15はテープ本体16と折返し片15aとが2重に重なった状態で上下翼板23,24の間の案内通路28に挿通されて、その折返し端同士がしっかりと密着している。一方、図7は前述と同様に左右のファスナーテープ11の折返し側縁部15はテープ本体16と折返し片15aとが2重に重なった状態で上下翼板23,24の間の案内通路28に挿通されているが、左右のファスナーエレメント列12は噛合状態にはない状態を示している。
すなわち、図7はファスナーエレメント列12がスライダー20の連結柱25の側面を相対的に移動しているときの状態を示している。スライドファスナーの左右のファスナーテープ11はそれぞれ左右方向に向けて引っ張られる、いわゆる横引きがなされることが多い。その結果、特に本発明のような隠しスライドファスナー10にあっては、ファスナーエレメント14は、左右のファスナーテープ11の緯引き力によって、案内通路28内で係合頭部14aが立ち上がり大きく傾斜することが多くなる。このようにファスナーエレメント14が立ち上がってしまうと、特にランド部29を通過しながら互いに噛合しようとする左右のファスナーエレメント14の噛合頭部14cの姿勢が大きく変わってしまい、上手く噛合できなくなることが多い。
本実施形態では、こうした不具合を回避するため、図7に示すように連結柱25の上部側面にランド部29まで続く突条25aを突出させている。しかも、この突条25aの下面は外側に向けて上り傾斜する傾斜面25a−1を形成している。この傾斜面25a−1の存在により、ファスナーテープ11の緯引きにより生じる強力な力にも滑らかな姿勢移動がなされるようになり、ファスナーエレメント14を傷付けることもなくなる。更に本実施形態では、上翼板23の前記突条25aと対応する位置にあって、その下面の途中から側縁にかけて膨出条23aを下向き傾斜させてフランジ26の肩口側端まで下方に膨出させている。
この膨出部23aの存在により、ファスナーテープ11に緯引き力が作用してファスナーエレメント14が立ち上がろうとするとき、前記膨出部23aの膨出傾斜面23a−1にファスナーテープ11の折返し側縁部15が沿うようにして当接し、その面接触による摩擦抵抗が増加し、ファスナーエレメント14のそれ以上の傾きを抑制する。その結果、スライダー20の摺動操作が円滑になされると同時にファスナーエレメント14を確実に噛合・分離させることができ、また従来の隠しスライドファスナーのようにファスナーテープの折返し端の内面が逆L字状フランジの水平部分の端縁に摺接することがなくなり、ファスナーテープの耐久性をも増加させることができるようになる。
なお本実施形態にあって、前記上翼板23と下翼板24の各フランジ26,27間の間隙を、上記折返し側縁部15を除くファスナーテープ主体部16が挿通可能な寸法に設定している。そきため、スライダー20の案内通路28を移動するファスナーテープ11の折返し側縁部15とファスナーエレメント列12との収容形態を大きく変えることがなくなり、スライダーを更に円滑に摺動させることができるようになる。
また上述のように突条25aを設けることにより、同突条25aの下端傾斜面25a−1と下翼板24との間に上記ファスナーエレメント列12を案内するエレメント案内空間と、前記突条25aの側面、前記エレメント案内空間及び前記上翼板23によって囲まれる空間を、各ファスナーテープ11の前記折返し側縁部15を収容案内するテープ側縁部案内空間とに画成している。その結果、ファスナーエレメント列12は案内通路28の下部に存在する上記エレメント案内空間を案内されて摺動する一方で、左右のファスナーテープ11の前記折返し側縁部15はファスナーエレメント列12が移動する前記エレメント案内空間の上方に独立して画成される前記テープ側縁部案内空間を摺動案内される。
図10及び図11は、従来のスライダー付き隠しスライドファスナーを装着した靴2の一例と、本発明のスライダー付き隠しスライドファスナーを装着した靴1の一例とを示している。図10に示す靴2は、その甲部分に上記特許文献2に開示された従来のスライダー205を取り付けた隠しスライドファスナー200を装着している。また、図11に示す靴1は本発明のスライダー20を取り付けた隠しスライドファスナー10を装着している。
これらの図からも理解できるように、本発明の隠しスライドファスナー10を装着した靴1では、隠しスライドファスナー10のエレメント縫着糸17が外部に全く表出せず、そのため縫目を通して水などが内部に浸入しないばかりでなく、記述したとおり左右のファスナーテープの折返し側縁部の端縁同士が密着するため、その左右端縁間の隙間からも水などが浸入することがなくなり、全体としての防水性能が向上する。これに対して、従来の靴2では、その表面にファスナーエレメントの縫着糸17が表出するため、その縫目から水が浸入しやすく、ファスナーエレメントの隙間を通して靴2の内部まで水が浸透するばかりでなく、縫着線が他数本にわたって作られるためファッション的にくどくなる。
本発明の隠しスライドファスナーの一部上面図である。 図1におけるII-II 線に沿った矢視断面図である。 本発明の好適な実施形態をである隠しスライドファスナー用スライダーを上方斜めから見た斜視図である。 同スライダーを下方から見た斜視図である。 同スライダーを肩口側から見た正面図である。 図5におけるVI-VI 線に沿った矢視断面図である。 本実施形態によるスライドファスナーの半部断面図である。 従来の通常タイプのスライドファスナーにおけるスライダー装着部の横断面図である。 従来の隠しタイプのスライドファスナーにおけるスライダー装着部の横断面図である。 本発明のスライダー付き隠しスライドファスナーを装着した靴の外観を示す斜視図である。 従来のスライダー付き隠しスライドファスナーを装着した靴の外観を示す斜視図である。
符号の説明
1,2 靴
10 隠しスライドファスナー
11 ファスナーテープ
12 ファスナーエレメント列
14 ファスナーエレメント
14a 噛合頭部
14b 上下脚部
14c 連結部
15 折返し側縁部
15a 折返し片
16 テープ主体部
17 縫着糸
18 ファスナーストリンガー
19 芯紐
20 スライダー
21 スライダー胴体
22 引手
22a 軸部
22b カム面
23 上翼板
23a 膨出部
23a−1 斜面
24 下翼板
25 連結柱
25a 突条
25a−1 傾斜面
25b スプリング係着孔
26 上部フランジ
27 下部フランジ
28 案内通路
29 ランド部
29a 爪部挿通孔
30 引手保持柱
31 停止爪付きスプリング
31a 爪部
31b 基端部
32 前柱
33 後柱
34 スプリング収容溝

Claims (7)

  1. 左右一対のファスナーテープ(11)の対向する側縁部をU字状に折り返して2重とされた各折返し側縁部(15)の裏面側の折返し片(15a) にファスナーエレメント(14)が連続的に取り付けられた隠しスライドファスナー(10)の各ファスナーエレメント列(12)を噛合・分離させるスライダーであって、
    連結柱(25)で連結された上翼板(23)及び下翼板(24)を有し、
    前記下翼板(24)の各左右側縁に直交して前記上翼板(23)に向けて接近する下フランジ(27)を有し、
    前記上翼板(23)と下翼板(24)との間には、前記ファスナーテープ(11)の2重に折り返された各折返し側縁部(15)と前記各ファスナーエレメント列(12)とを噛合・分離可能な姿勢で挿通案内する案内通路を有してなる、
    ことを特徴とする隠しスライドファスナー用スライダー。
  2. 前記連結柱(25)の左右側面の上部に沿って上翼板(23)との間に配され、上翼板(23)から下翼板(24)に向けて突出する突条(25a) が設けられてなる請求項1記載のスライダー。
  3. 前記突条(25a) の下端面と下翼板(24)との間に上記ファスナーエレメント列(12)を噛合・分離可能な姿勢で案内するエレメント案内空間が形成され、
    前記突条(25a) の側面と前記エレメント案内空間と前記上翼板(23)とにより囲まれる空間は、各ファスナーテープ(11)の前記折返し側縁部(15)がファスナーエレメント列(12)の噛合・分離可能な姿勢を保持して収容案内するテープ側縁部案内空間を構成してなる請求項2記載のスライダー。
  4. 前記突条(25a) の下端面は、前記エレメント案内通路の内方側から外方側へ向けて上向き傾斜する傾斜面(25a-1) に形成されてなる請求項2記載のスライダー。
  5. 前記上翼板(23)の左右下面にはスライダーの前後方向に延在し、前記連結柱(25)から外側に向けて下向き傾斜して膨出する膨出条が設けられてなる請求項1記載のスライダー。
  6. 前記上翼板(23)及び下翼板(24)の左右側縁における上下方向の間隙は上記折返し側縁部(15)以外のファスナーテープ主体部(16)だけが挿通できる寸法に設定されてなる請求項1記載のスライダー。
  7. 側縁に沿ってU字状に折り返され2重とされた折返し側縁部(15)と同側縁部(15)を除くテープ主体部(16)とからなる左右一対のファスナーテープ(11)、同ファスナーテープ(11)の前記折返し側縁部(15)の各折返し片(15a) に沿って取り付けられた左右のファスナーエレメント列(12)、及び同ファスナーエメント列(12)に沿って摺動し、左右のファスナーエレメント列(12)の噛合・分離を行うスライダーを備えた隠しスライドファスナー(10)であって、
    前記スライダーが連結柱で連結された上翼板(23)及び下翼板(24)を有し、
    前記下翼板(24)の左右側縁に直交して前記上翼板(23)に接近するフランジを有してなり、
    前記上翼板(23)と下翼板(24)との間には、前記ファスナーテープの2重に折り返された前記各折返し側縁部(15)とその折返し片(15a) に取り付けられた各ファスナーエレメント列(12)とを噛合・分離可能な姿勢で挿通案内する案内通路が形成されてなる、
    ことを特徴とする隠しスライドファスナー。
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