JP2005510632A - 銀−錫合金電着用電解槽 - Google Patents

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Abstract

本発明は、pH1.5以下の溶剤としての水の他に、水溶性の銀化合物、水溶性の錫化合物および有機錯化剤を含む銀−錫合金電着用電解槽に関する。任意の組成を有する緊密な銀−錫合金の均質な析出を可能にする安定な電解槽を得るために、錯化剤として、スルフィド基およびアミノ基を有する脂肪族錯化剤が使用され、しかも上記官能基が種々の炭素原子に結合している。

Description

本発明は銀−錫合金電着用電解槽に関する。
銀−錫合金の電着は電解槽として第一に安定な水性電解液が必要である。このため、多くの陰イオンに溶解しにくい沈殿物を作り電解槽の早期の交換を必要とする特に溶媒された銀イオンの望ましくない沈殿を防ぐことが必要である。
溶液の永続的な安定性の他に、両金属の標準電位の著しい相違に関する他の難点が生じる。析出電位の大きな相違によって、付着力の小さいこけ状または木状の黒い層の形で、不都合な樹枝状の析出が生じる。それぞれの要求に応じる付着力を有する電極材料上に緊密な層を得るために、錫および銀をできるだけ同時に析出させることが必要である。しかしながら、そのためには析出電位をできるだけ同じにすることが前提になる。例えば錯化剤により銀イオンを錯化することによってかかる析出電位を同じにすることができる。
欧州特許第0666342号明細書には、水溶性の銀化合物、水溶性の錫化合物および錯化剤を含む電解槽が記載されている。錯化剤はメルカプトアルカンカルボン酸、メルカプトアルカンスルホン酸またはこれら化合物の塩である。しかしながら、銀がメルカプトアルカン酸と錯化することによって、析出電位は互いに十分に接近することができないので、滑らかな半固体状の層の作成は、任意の合金組成ではなく特定の合金組成だけを用いて可能になる。
米国特許第6099713号明細書には、銀イオンおよび錫イオン、芳香族メルカプト化合物ならびに脂肪族チオ尿素を含む錫−銀合金析出用電解槽が記載されている。チオ尿素は2つのアミノ基および1つのスルフィド基を持ち、これらの官能基は1個の炭素原子に結合している。銀がチオ尿素と錯化すると、4員キレート環が形成される。しかしながら、錫の析出電位と銀の析出電位とは銀−チオ尿素錯体によって同様に十分に接近させることができないので、この電解槽を基礎にしても、任意の組成および所望の品質を持つ合金層は得られない。
欧州特許第0854206号明細書には、銀イオンを錯化させるための錯化剤として芳香族チオール化合物またはスルフィド化合物および錫イオンや銀イオンを持つ電解槽が開示されている。開示された芳香族錯化剤は芳香族化合物中に結合した窒素原子の他に遊離アミノ基も有している。ここに開示されている化合物のいくつかにおいては遊離アミノ基が炭素原子に結合しており、この炭素原子にはスルフィド基に結合している炭素原子が隣接している。しかしながら、この配位子の、少なくとも6個の炭素原子を有する強固な芳香族化合物またはアリル基によって、広く容積の大きい銀錯体が形成される。この銀錯体は電解槽中の濃度の増大につれて電着時に金属表面上に阻止性薄膜を形成し、その薄膜上に合金が析出される。従って、金属イオンまたは電解液内に追加的に含まれる他のイオン(例えば通常の添加物)はその阻止性薄膜によって金属表面に到達するのを阻止される。これらの立体的な阻止が望ましくない樹枝状析出を形成する原因になる。
本発明の課題は、調整可能な組成の緊密な錫−銀合金の均一な析出を可能にする安定な電解槽を供給することにある。
この課題は、pH1.5以下の溶剤としての水の他に、水溶性の銀化合物、水溶性の錫化合物および有機錯化剤を含み、錯化剤が脂肪族錯化剤であり、しかも種々の炭素原子に結合しているスルフィド基およびアミノ基を有している電解槽によって解決される。
本発明はアミノ基およびスルフィド基をもつ多数の歯状の錯化剤が少なくとも5員の安定なキレート錯体を形成し、このキレート錯体がその高い安定性に基づいて同じ組成の4員キレート環に比べて錫の析出電位と銀の析出電位とを所望のように接近させるという認識に基づいている。驚くべきことに、錫−銀合金の電着の品質の低下が全くないだけでなく、錯化剤の分子構造の中でしばしば有害性を発するアリル残基を完全になくすことが明らかになった。むしろ、錯化剤のフレキシブルな配置により、更に電極表面の阻止に関連する従来技術の別の欠点が克服され、その結果調整可能な合金組成を持つ層がほぼ同じ品質で可能になる。本発明の錯化剤は製造コストが安価であり、更に製造工程で芳香族物質の使用をなくすことが可能となる。
本発明の優れた実施態様によれば、スルフィド基およびアミノ基は隣接する炭素原子に結合している。このようにして、中心原子として銀イオンを含み特に高い安定性を有する5員キレート環が形成される。本発明のこの実施態様により、錫の析出電位と銀の析出電位とを十分に近づけることが可能になる。
更に、本発明の範囲では、6員またはそれ以上のキレート環を形成することも可能であり、上述した官能基のそれぞれ1つに結合されている炭素原子間に1つの他の炭素原子あるいは複数の架橋炭素原子が接合される。
多くの電極表面上に望ましくない層が形成される危険性をさらに減少させるために、錯化剤の大きさを制限すると有利である。本発明の他の変形例によれば、錯化剤は7個より少ない炭素原子を有している。
スルフィド残基はスルフィド架橋を形成するが、しかしながらこのスルフィド架橋は本発明においては銀の錯化に基本的に影響しない。従って、本発明では、スルフィド架橋を有する錯化剤、換言すればジスルフィド化合物である錯化剤が同様に使用される。
錯化剤はシステアミン、システイン、シスタミンまたはシスチンの群からなる化合物であると好ましい。
銀イオン濃度は銀原子に関して0.1〜20g/lの範囲にあると有利である。
本発明の有利な実施態様において、錫イオン濃度は錫原子に関して1〜50g/lである。しかしながら、電解槽の沈殿物に関しては、水溶性の金属化合物の濃度の他に酸、添加剤およびその類似物のような必要な添加物質にも関係する、電解液中に溶解した金属塩、酸および有機化合物の全濃度が、飽和現象のために望ましくない沈殿を生じる予め設定された最大値または限界値を超えないように考慮することは有効である。
本発明により使用された錯化剤の物質量は錯化されるべき銀の物質量に依存している。その際、錯化剤の粒子量は溶解した銀の粒子量と少なくとも同じでなければならない。従って、錯化剤は溶解した銀イオンに対して過剰に使用されるので、錯化剤の粒子濃度は銀イオンの粒子濃度より大きいと有利である。銀イオンの物質量に対する錯化剤の物質量の比が1.5であると好ましい。このために使用された錯化剤の量は通常0.1〜50g/lの間で変えられる。
本発明の他の変形例によれば、錫化合物として錫(II)ハロゲン化物、錫(IV)ハロゲン化物、アルカリ金属錫酸塩、錫アルカンスルホネート、あるいはアンモニウム錫酸塩、硫酸錫(II)、酸化錫(SnO)が挙げられる。更に、クエン酸錫またはシュウ酸錫の使用も可能である。
銀化合物はハロゲン化銀、銀アルカンスルホネートまたは銀ジアミン錯体の群からなる化合物であると好ましい。更に当然に、水溶性の銀化合物として、硝酸銀、硫酸銀および酸化銀(Ag2O)の使用も適している。
電解槽のpHの調整は例えばメチルスルホン酸、エチルスルホン酸、ヒドロキシプロピルスルホン酸、フエノールスルホン酸またはベンジルスルホン酸のようなアルカンスルホン酸を用いて行なわれると好ましい。pH1.5以下の調整に使用されるべきアルカンスルホン酸の量は通常50〜550g/lの間で変えられる。
本発明の有利な実施態様において、銀メチルスルホネートおよび錫メチルスルホネートの他にメチルスルホン酸が使用される。
本発明の範囲において、電解槽には、上述した成分の他に、公知の添加剤や添加物を通常の添加量で添加することもまた可能である。特に、艶出し剤、湿潤剤および伝導塩が使用される。伝導塩としては例えばホウ酸、カルボン酸およびヒドロキシ酸が用いられる。カルボン酸としては特に蟻酸、酢酸およびシュウ酸が使用される。ヒドロキシ酸としては例えばクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グルカール酸またはグルクロン酸が用いられる。上述の化合物の塩または混合物もまた用いられる。
公知の艶出し剤としては例えばヘキサメチレンテトラミン、トリエタノールアミン、アセトフエノン、ホルマリン等がある。例えば“Shipley Rhonal Soldron ON”の名称で知られている艶出し剤が市販されている。
本発明の電解槽において、錫−銀合金の望ましい析出が1〜10A/dm2の電流密度で行なわれると好ましい。電解槽温度は40℃を超えない方が良く、室温、特に25℃であると好ましい。
本発明の実施例が下記に示される。
実施例1
pH1以下の電解槽が以下の組成で製作された。
錫メチルスルホネート:26g/l(錫原子に関して10g/lのSn2+に相当)
銀メチルスルホネート:3.4g/l(銀原子に関して1.8g/lのAg+に相当)
システアミン(2−アミノエタンチオール)(分子式C27NS):2.0g/l
メチルスルホン酸(98%)(分子式HSO3CH3):125ml/l
市販の湿潤剤“SolderON BTD Carrier(商標)”(ShipleyRonal社):20ml
市販の艶出し剤“SolderON BTD Additive(商標)”(ShipleyRonal社):20ml

電解槽温度25℃および電流密度1A/dm2で、92重量%の錫含有量および8重量%の銀含有量を有する半固体状および半光沢の錫−銀合金層が得られた。
実施例2
pH1以下の電解槽が以下の組成で製作された。
錫メチルスルホネート:130g/l(錫原子に関して50g/lのSn2+に相当)
銀メチルスルホネート:6g/l(銀原子に関して3.2g/lのAg+に相当)
L−システイン(分子式C37NO2S):5.4g/l
メチルスルホン酸(98%)(分子式HSO3CH3):350ml/l
市販の湿潤剤“SolderON BTD Carrier(商標)”(ShipleyRonal社):20ml
市販の艶出し剤“SolderON BTD Additive(商標)”(ShipleyRonal社):20ml

電解槽温度25℃および電流密度5A/dm2で、97重量%の錫含有量および3重量%の銀含有量を有する半固体状かつ半光沢の錫−銀合金層が析出された。
実施例3
pH1以下の電解槽が以下の組成で製作された。
錫メチルスルホネート:65g/l(錫原子に関して25g/lのSn2+に相当)
銀メチルスルホネート:6g/l(銀原子に関して3.2g/lのAg+に相当)
L−システイン(分子式C37NO2S):5.4g/l
メチルスルホン酸(98%)(分子式HSO3CH3):350ml/l
市販の湿潤剤“SolderON SC Primary(商標)”(ShipleyRonal社):50ml
市販の湿潤剤“SolderON SC Secondary(商標)”(ShipleyRonal社):5ml

電解槽温度25℃および電流密度3A/dm2で、94重量%の錫含有量および6重量%の銀含有量を有する半固体状かつつや消し状の錫−銀合金層が析出された。
実施例4
pH1以下の電解槽が以下の組成で製作された。
錫メチルスルホネート:1.3g/l(錫原子に関して0.5g/lのSn2+に相当)
銀メチルスルホネート:9.4g/l(銀原子に関して5.0g/lのAg+に相当)
L−システイン(分子式C37NO2S):10.1g/l
メチルスルホン酸(98%)(分子式HSO3CH3):350ml/l

電解槽温度25℃および電流密度1.6A/dm2で、25重量%の錫含有量および75重量%の銀含有量を有する半固体状かつ光沢のある錫―銀合金層が析出された。

Claims (13)

  1. pH1.5以下の溶剤としての水の他に、水溶性の銀化合物、水溶性の錫化合物および有機錯化剤を含み、錯化剤が脂肪族錯化剤であり、しかも種々の炭素原子に結合しているスルフィド基およびアミノ基を有していることを特徴とする銀−錫合金電着用電解槽。
  2. スルフィド基およびアミノ基は隣接する炭素原子に結合している請求項1記載の電解槽。
  3. 錯化剤は7個より少ない炭素原子を有している請求項1又は2記載の電解槽。
  4. 錯化剤はジスルフィド架橋を有している請求項1乃至3の1つに記載の電解槽。
  5. 錯化剤はシステアミン、システイン、シスタミンまたはシスチンの群からなる化合物である請求項1乃至3の1つに記載の電解槽。
  6. 銀イオン濃度は銀に関して0.1〜20g/lである請求項1乃至5の1つに記載の電解槽。
  7. 錫イオン濃度は錫に関して1〜50g/lである請求項1乃至6の1つに記載の電解槽。
  8. 錯化剤の粒子濃度は銀の粒子濃度より大きい請求項1乃至7の1つに記載の電解槽。
  9. 錫化合物は錫(II)ハロゲン化物、錫(IV)ハロゲン化物、アルカリ金属錫酸塩、錫アルカンスルホネートの群から選択されるか、またはアンモニウム錫酸塩、硫酸錫(II)または酸化錫(SnO)、クエン酸錫またはシュウ酸錫である請求項1乃至8の1つに記載の電解槽。
  10. 銀化合物は硝酸銀、硫酸銀、酸化銀(Ag2O)、ハロゲン化銀、銀アルカンスルホネートまたは銀ジアミン錯体である請求項1乃至9の1つに記載の電解槽。
  11. pH値を調整するために使用された酸がアルカンスルホン酸である請求項1乃至10の1つに記載の電解槽。
  12. 艶出し剤、湿潤剤および伝導塩が添加剤の形で含まれている請求項1乃至11の1つに記載の電解槽。
  13. 錫−銀合金の作成のために使用される請求項1乃至12の1つに記載の電解槽。
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