JP2005503103A - 単一炭素基質からのカロテノイドの製造 - Google Patents
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Abstract
カロテノイド化合物の製造方法が開示されている。この方法は、高収量でカロテノイド化合物を生成するための単一炭素基質を代謝する微生物の使用に依存している。
Description
【0001】
本発明は、2000年9月1日に提出されたUS暫定特許出願第60/229,907号の恩典及び2000年9月1日に提出されたUS暫定特許出願第60/229,858号の恩典を請求するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、分子生物学及び微生物学の分野に関する。より特定的には、本発明は、唯一の炭素供給源として単一炭素基質を代謝する微生物からのカロテノイド化合物の生成を記述している。
【0003】
発明の背景
カロテノイドは、薄黄色からオレンジ乃至、深紅までのピグメントカラーを生成する最も広く分布した構造的に多様なクラスの天然色素の1つである。カロテン生成組織の目を引く例としては、ニンジン、トマト、赤トウガラシ及びスイセン及びマリゴールドがある。カロテノイドは、全ての光合成生体ならびに細菌及び真菌によって合成される。これらの色素は、光合成、栄養及び光酸化損傷に対する保護において重要な機能をもつ。例えば、動物は、カロテノイドを合成する能力をもたないが、その代りこれらの栄養的に重要な化合物をその食物源を通して獲得しなければならない。構造的には、カロテノイドは、イソプレン生合成経路及びその5炭素汎用イソプレン構築ブロック、イソペンテニルピロホスフェート(IPP)から誘導された40−炭素(C40)のテルペノイドである。この生合成経路と、イソペンテニルピロホスフェートの形成を導く上部イソプレン経路及びイソペンテニルピロホスフェートを長いC30及びC40カロテン生成化合物へと変換する下部カロテノイド生合成経路という2つの部分に分割することができる。この経路の両方の部分共が、図1に示されている。
【0004】
その他の数多くのカロテノイド化合物を生成するべく、長いC30及びC40化合物の分子内転換を可能にするさまざまなその他のCrt 遺伝子が知られている。特異的なカロテノイドの独特の吸収特性及び色を決定するのは、炭素バックボーンの不飽和、接合及び異性化である。Armstrong (J. Bact. 176:4795−4802(1994); Annu. Rev. Microbiol 51:629−659(1997)といったいくつかの論評が、カロテノイド色素生合成の遺伝学について論述している。
【0005】
カロテノイド遺伝子の利用可能性に関しては、GenBankといったようなパブリックドメインデータベースが、数多くの生体から単離された配列を収納している。例えば、現在19の異なる生体から単離されたさまざまなcrtE遺伝子に関する26のGen Bank受入れ番号が存在する。比較的遭遇する頻度の少ないcrtZ遺伝子は、6つのGen Bank受入れ番号をもち、各遺伝子が異なる生体から単離されている。同様に広範なカロテノイド遺伝子セレクションが、上述の遺伝子の各々について入手可能である。
【0006】
カロテノイド色素生合成の遺伝学は、Erwinaとして正式に知られているPantoea属のグラム陰性色素性細菌において、きわめて良く研究されてきた。E. herbicola EHO−10(ATCC39368)及び E. uredovora 20D3(ATCC19321)の両方において、crt遺伝子は、crtZ及びcrtEXYIBという2つの遺伝子単位においてクラスタ化されている(米国特許第5,656,472号;同第5,5545,816号;同第5,530,189号;同第5,530,188号;同第5,429,939号)。オペロン構造の類似性にも関わらず、E.uredovora 及び E.herbicolaのDNA配列は、DNA−DNAハイブリダイゼーションによる相同性を全く示していない。(米国特許第5,429,939号)。
【0007】
自然界では600以上の異なるカロテノイドが同定されてきたが、食品着色料、動物飼料、医薬品及び化粧品のために工業的に使用されているのはごくわずかでしかない。現在、工業目的で使用されているカロテノイドの大部分は、化学合成により生成されている。しかしながら、これらの化合物は、化学的に作るのが非常にむずかしい(Neils and Leenheer, Appl. Bacteriol. 70;181−191(1991))。天然カロテノイドは、植物材料の抽出又は微生物合成のいずれかにより得ることができる。現在のところ、商業用カロテノイド生成のために広く用いられているのはわずかな植物にすぎない。しかしながら、これらの植物におけるカロテノイド合成の生産力は比較的低く、結果として得られるカロテノイドは非常に高価である。
【0008】
微生物供給源から一定数のカロテノイドが生成されてきた。例えば、リコペンは、遺伝子工学処理されたE.coli及びCandiautilisから生成されてきた(Farmer W.R. and J.C. Liao,(2001)Biotechnol. Prog. 17:57−61;Wang C.et al.,(2000)Biotechnol Prog.16:922−926;Misawa, N and H.Shimada.(1998)、J.Biotechnol. 59:169−181;Shimada, H.et al. 1998.Appl. Environm. Microbiol.64:2676−2680)。β−カロテンは、E.coli, Candia utilis 及び Pfaffia rhodozymaから生成されてきた(Albrecht, M. et al.,(1999).Biotechnol. Lett. 21:791−795;Miura, Y. et al.,1998.Appl. Environm. Microbiol.64:1226−1229;米国特許第5,691,190号)。ゼアキサンチンは、E.coli及びCandia utilis から生成されてきた(Albrecht, M.et al.,(1999).Biotechnol. Lett. 21:791−795;Miura, Y. et al., 1998.Appl. Environm. Microbiol.64:1226−1229)。アスタキサンチンは、E.coli及び Pfaffia rhodozymaから生成された(米国特許第5,466,599号;同第6,015,684号;同第5,182,208号;同第5,972,642号)。
【0009】
付加的には、カロテノイド生合成経路のさまざまな要素をコードする遺伝子がクローニングされ、さまざまな微生物内で発現されてきた。例えば、Erwinia herbicola から単離されたリコペンシクラーゼ、ゲラニルゲラニルピロホスフェートシンターゼ及びフィトエンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、E.coli内で組換えで発現されてきた(米国特許第5656472号;同第5545816号;同第5530189号;同第5530188号)。同様にして、Erwinia uredovora から単離された、カロテノイド生成物ゲラニルゲラニルピロホスフェート、フィトエン、リコペン、β−カロテン及びゼアキサンチン−ジグルコシドをコードする遺伝子が、E.coli Zymomonas mobilis及びSaccharomyces cerevisiaeの中で発現されてきた(米国特許第5429939号)。同様にして、Flavobacteriumから単離されたカロテノイド生合成遺伝子crtE(1)、crtB(3)、crtI(5)、crtY(7)、及びcrtZは、組換えにより発現された(米国特許第6124113号)。
【0010】
カロテノイドを生成する上述の方法は有用であるものの、これらの方法には、低収量及び高価な供給原料への依存という欠点がある。安価な供給原料から、さらに高い収量のカロテノイドを生成する方法が必要とされている。
【0011】
唯一のエネルギー源として単一炭素基質を利用する一定数の微生物が存在する。これらの基質には、メタン、メタノール、蟻酸塩メチル化アミン及びチオールそして、炭素−炭素結合が全く存在しない一般にかなり安価であるさまざまなその他の遺伝炭素化合物が内含される。これらの生体は、メチロトローフと呼ばれ、ここでは「C1代謝体」と呼ぶ。これらの生体は、エネルギー及びバイオマスの唯一の供給源として炭素−炭素結合が存在しない炭素基質を使用する能力によって特徴づけされる。メチロトローフのサブセットは、唯一のエネルギー源としてメタンを利用する独特の能力をもつメタノトローフである。これらの生体が多数知られてはいるものの、これらの微生物のうち、材料の合成のための工業的プロセスにうまく役立てられたものはほとんどない。単一炭素基質は、費用効果性の高いエネルギー源であるものの、これらの微生物の遺伝子操作がむずかしいこと及びその遺伝子メカニズムについての情報不足のため、主として未変性生成物の合成に対するその使用は制限されてきた。例えば、メタンの生体内変換の商業的応用は、歴史的に、大きく次の3つのカテゴリに入るものであった;すなわち 1)単一細胞タンパク質の生成(Sharpe D.H. Bio Protein Manufacture 1989.応用科学工業技術中のEllis Horwood シリーズ、New York:Halsteid Press)。(Villadsen, John, Recent Trends Chem, React. Eng., [Proc.Int.Chem.React.Eng. Conf.], 2nd(1987), Volume2、320−33、Editor(s):Kulkami, B.D.;Mashelkar, R.A.;Sharma, M.M.Publisher;Wiley East., New Delhi, India;Naguib, M., Proc. OAPEC Symp. Petroprotein, [Pap.](1980), Meeting Date1979、253−77 Publisher:Organ. Arab Pet. Exporting Countries, Kuwait, Kuwait.);2)化学物質の製造アルケンのエポキシ化(米国特許第4348476号);及び3)塩素化された汚染物質の生分解(Tsien et al., Gas, Oil, Coal, Environ. Biotechnol.2,[Pap.Int.IGT Symp. Gas, Oil, Coal, Environ. Biotechnol.], 2nd(1990)、83−104.Editor(s):Akin, Cavit;Smith, Jared. Publisher: lnst. Gas Technol., Chicago, IL;WO 9633821;Merkley et al.,Biorem. Recalcitrant Org., [Pap.lnt. In Situ On−Site Bioreclam, Symp.],3rd(1995)、165−74.Editor(s); Hinchee, Robert E;Anderson, Daniel B;Hoeppel, Ronald E.Publisher:Battelle Press, Columbus, Ohio.:Meyer et al., Microb. Releases(1993)、2(1)、11−22)。ここでさえ、メタン生体内変換の商業的成功は、低い生成物収量、生成物の毒性及びプロセスに付随する生成物を生成するのに必要とされる大量の細胞集団に起因して、アルケンのエポキシ化に制限されていた。
【0012】
メチロトローフ生体の商業的有用性は、Lidstrom及びStirling(Annu. Rev. Microbiol.44:27−58(1990))の中で再考されている。メチロトローフ生体及びその酵素の応用が関与する数多くの研究努力にもかかわらず、商業的成功はほとんど詳細に記録されたことがない(Lidstrom及びStirling, supra, Table3)。大部分のケースにおいて、生体は、その他の充分に開発された宿主系統に比べて利点がほんとどないということが発見されてきた。メタノールは、その他のより伝統的な炭水化物原料に比べ、経済的にも品質的にも利点を提供するべき供給原料として頻繁に引合いに出されるが、これまでのところ、公表された研究の中でこの期待が有意に検証されたことはない。
【0013】
単一炭素代謝体の最も一般的なクラスは、メタノトローフである。メタノトローフ細菌は、唯一の炭素及びエネルギー源としてメタンを使用するその能力により定義づけられる。メタンモノオキシゲナーゼは、メタン活性における第1工程のために必要とされる酵素であり、この反応の生成物はメタノールである(Murrell et al., Arch. Microbiol.(2000)、173(5−6)、325−332)。この反応は、大気温及び大気圧下で起こるが、一方、メタンからメタノールへの化学的変換には、何百度もの温度と高い圧力が必要である(Grigoryan, E.A., Kinet. Catal.(1999)、40(3)、350−363;WO2000007718;米国特許第5,750,821号)。メタンの生体内変換が、潜在的に比類の無い価値あるプロセスであるのは、この周囲条件下でメタンを変換する能力とメタンの豊富さのお陰である。
【0014】
数多くのメタノトローフは、これらの生体がその他の非内因性イソプレノイド化合物を合成できるようにする固有のイソプレノイド経路を含有している。メタノトローフは、エネルギー源として1炭素基質(メタン又はメタノール)を使用できることから、低コストでカロテノイドを生成することが可能である。
【0015】
メチロトローフ生体及びカロテノイドに関する当該分野における現在の知識から、以下のような結論が導かれる。まず第1に、豊富に利用可能なC1源から強大な商業的誘因が生じており、これは、C1生体のための供給原料として使用でき、その他のより伝統的な炭水化物原料に比べて経済的にも品質的にも利点を提供するはずである。第2に、カロテン生成生合成遺伝子を有する生体、これらの遺伝子の機能、及びカロテン生成前駆体分子を生成する上部イソプレン経路に関する豊富な知識が存在している。最後に、それ自体色素性で、かくして必要なカロテノイド生合成経路の部分を有する数多くのメチロトローフ生体が当該技術分野に存在している。
【0016】
これらの利用可能な手段にもかかわらず、当該技術は、大規模な商業的価値のため選択された特異的カロテノイドを作るように遺伝子工学処理されたいかなるC1代謝体も明らかにしていない。より広範囲の化学物質の生成に対するこれらの生体の有用性は、メタノトローフの成長速度が比較的緩慢であること、メタンの代用基質としてメタノールの使用を許容する能力が制限されていること、遺伝子工学処理がむずかしいこと、メタノトローフに存在する多数の炭素同化経路の役割についての知識が乏しいこと、メタンといったような完全に飽和した基質の酵素需要に起因してコストが潜在的に高いこと、などを含めた制限条件によって制約を受ける、などの仮説が立てられている。従って、解決すべき課題は、その炭素及びエネルギー源としてC1化合物を利用する生体を用いて、カロテノイド化合物の微生物製造費用効果性の高い方法を提供することにある。
【0017】
出願人らは、カロテノイド化合物製造の唯一の炭素源として単一炭素基質を使用することのできる微生物を工学処理することによって、上述の課題を解決した。
【0018】
発明の要約
本発明は、(a)(i)適切なレベルのイソペンテニルピロホスフェート;及び
(ii)適切な調節配列の制御下でカロテノイド生合成経路内で酵素をコードする少なくとも1つの単離された核酸分子を含む、形質転換されたC1代謝性宿主細胞を提供する工程;
(b)適切な成長条件下で工程(a)の宿主細胞を有効量のC1炭素基質と接触させ、かくしてカロテノイド化合物を生成させる工程、
を含んで成る、カロテノイド化合物の製造方法に関する。
【0019】
本発明の好ましいC1炭素基質は、メタン、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸、メチル化アミン、メチル化チオール及び二酸化炭素よりなる群から選択される。好ましいC1代謝体は、メチロトローフ及びメタノトローフである。特に好ましいC1代謝体は、ピロホスフェート依存性ホスホフルクトキナーゼ酵素をコードする遺伝子を含む機能的エムデン・マイヤーホフ経路を含むものである。場合により、好ましい宿主は、フルクトースビスホスフェートアルドラーゼ酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子を含むことができる。
【0020】
適切なレベルのイソペンテニルピロホスフェートは、宿主に対し内因性のものであってもよいし、或いは、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(Dxs)、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(Dxr)、2C−メチル−d−エリスリトールシチジリルトランスフェラーゼ(IspD)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ(IspE)、2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼ(IspF)、CTPシンターゼ(PyrG)及びLytBといったような非相同な形で導入された上部経路イソプレノイド遺伝子により提供されてもよい。
【0021】
1つの代替的実施形態においては、本発明は、形質転換されたC1代謝性宿主の中でのカロテノイド生成物の過剰生成方法において:
(a)(i)適切なレベルのイソペンテニルピロホスフェート及び
(ii)適切な調節配列の制御下でカロテノイド生合成経路内で酵素をコードする少なくとも1つの単離された核酸分子及び
(iii)1)D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(Dxs)、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(Dxr)、2C−メチル−d−エリスリトールシチジリルトランスフェラーゼ(IspD)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ(IspE)、2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェ−トシンターゼ(IspF)、CTPシンターゼ(PyrG)及びLytBよりなる群から選択される酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子の多重のコピー、又は
2) 強力なプロモータに操作可能にリンクされたD−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(Dxs)、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(Dxr)、2C−メチル−d−エリスリトールシチジリルトランスフェラーゼ(IspD)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ(IspE)、2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼ(IspF)、CTPシンターゼ(PyrG)及びLytBよりなる群から選択される酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子、のいずれか、
を含む、形質転換されたC1代謝性宿主細胞を提供する工程;
(b)適切な成長条件下で工程(a)の宿主細胞を有効量のC1炭素基質と接触させ、かくしてカロテノイド化合物を過剰生成させる工程、
を含んで成る方法を提供している。
【0022】
配列の記述及び生物寄託物
以下の詳細な説明及び本出願の一部を成す添付の配列説明から本発明をより完全に理解することができる。
【0023】
以下の配列は、37.C.F.R 1,821−1,825(「ヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列の開示を含む特許出願についての必要条件−配列規則」)に適合し、世界知的所有権機構(WIPO)規格ST25(1998)及びEPO及びPCTの配列表必要条件(規則5.2及び49.2(a−bis)及び行政指令の第208節及び補遺C)と一貫性をもつものである。ヌクレオチド及びアミノ酸配列データのために使用される符号及び書式は、37.C.F.R. §1、822の中で記されている規則に適合する。
【0024】
配列表の配列番号1−28は、表1に固定されている通りの全長遺伝子又はタンパク質である。
【0025】
【表1】
【0026】
配列表の配列番号39−40は、HMPSプロモータのための増幅プライマである。
【0027】
配列表の配列番号41−42は、Rhodococcus 由来のcrtO遺伝子のための増幅プライマである。
【0028】
配列表の配列番号43及び44は、Pantoea stewartiiのcrtクラスタを増幅するために使用されるプライマ配列である。
【0029】
配列表の配列番号45−47は、Rhodococcus erythropolis AN12の16s rRNAを増幅するために使用されるライマ配列である。
【0030】
配列表の配列番号48及び49は、crtO遺伝子を増幅するのに使用されるプライマ配列である。
【0031】
配列表の配列番号50〜54は、HMPS遺伝子のためのプロモータ配列及びそのプロモータを増幅するために使用されるプライマである。
【0032】
配列表の配列番号55及び56は、dxs遺伝子を増幅するために使用されるプライマ配列である。
【0033】
配列表の配列番号57及び58は、dxr遺伝子を増幅するために使用されるプライマ配列である。
【0034】
配列表の配列番号59及び60は、LytB遺伝子を増幅するために使用されるプライマ配列である。
【0035】
特許手段上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の条項に基づき、出願人は、以下の生物寄託を行なった。
【0036】
【表2】
【0037】
発明の詳細な説明
当該方法は、さまざまなカロテノイド化合物を生成する能力をもつ組換え型生体の創造にとって有用である。カロテノイド生合成経路に関与するさまざまな酵素をコードする該酸フラグメントが、カロテノイド化合物製造の唯一の炭素源として単一炭素基質を用いる微生物へとクローニングされてきた。
【0038】
カロテノイド化合物は化学的に作るのが非常にむずかしいことから、カロテノイド化合物の微生物による生成には一般的に実用性がある(Nelis 及びLeenheer, Apple. Bacteriol. 70;181−191(1991))。大部分のカロテノイドは、強い色をもち、天然の色素又は染料として考えることができる。さらに、数多くのカロテノイドは、効力の高い酸化防止特性を有し、かくして食物中にこれらを内含することは、健康に良いと考えられている。周知の例は、β−カロテン及びアスタキサンチンである。付加的には、カロテノイドは、水産養殖において必要とされる要素である。サケ及びエビの水産養殖は、これらの生体の価値にとってカロテノイドが非常に重要であることから、本発明の特に有用な利用分野である。(F.Shahidi, J.A.Brown,「海産物及び水産養殖におけるカロテノイド色素:食品における非常に重要な見直し」Science 38(11:1−67(1998))。最後に、カロテノイドは、ステロイド、香味料及び芳香料及び潜在的な電気光学的利用分野をもつ化合物の合成において中間体として有用である。
【0039】
以下の開示は、変換のための適切なC1代謝性微生物の選択及び高収量でのさまざまなカロテノイド化合物の生成についての詳細な説明を提供している。
【0040】
この開示では、数多くの用語及び略号が使用されている。以下にその定義を記す。
【0041】
「エムデン・マイヤーホフ経路」という語は、グルコース及びフルクトースといったようなヘキソースからグリセルアルデヒド3ホスフェート、ジヒドロキシアセトンホスフェート、ホスホフェノールピルビン酸及びピルビン酸塩といったような重要な細胞3炭素中間体への転換のための一連の生化学反応を意味する。これらの反応は、標準的に、ATPの形での生化学的に有用なエネルギーの純収量を伴って進行する。エムデン−マイヤーホフ経路に独特の主要な酵素は、ホスホフルクトキナーゼとフルクトース−1,6−ビスホスフェートアルドラーゼである。
【0042】
「エントナー・ドゥドロフ経路」というのは、グルコース又はフルクトースといったようなヘキトースを生化学的に有用なエネルギーのいかなる純生産も無く重要な3炭素細胞中間体ピルビン酸塩及びグリセルアルデヒド−3ホスフェートへと転換する一連の生化学的反応を意味する。エントナー・ドウドロフ経路に独特の主要な酵素は、6−ホスホグルコネートデヒドラターゼ及びケトデオキシホスホグルコネートアルドラーゼである。
【0043】
経路内の遺伝子の存在に関連する「診断」という語は、その活性をもつ遺伝子が同定されるその経路の存在の証拠を意味する。本発明において、ピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子は、エムデン・マイヤーホフ炭素経路の存在についての「診断」であり、ケトデオキシホスホグルコネートアルドラーゼをコードする遺伝子の存在は、エントナー・ドウドロフ炭素経路の存在についての「診断」である。
【0044】
「収量」という語は、ここでは代謝された炭素基質1グラムあたりに生成される細胞集団の量として定義される。
【0045】
「炭素転換効率」というのは、細胞集団内にどれほどの炭素が同化されるかの尺度であり、CH2O0.5N0.25のバイオマス組成物を仮定して計算される。
【0046】
「C1炭素基質」という語は、炭素−炭素結合が存在しないあらゆる炭素含有分子を意味する。その例としては、メタン、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸、蟻酸塩、メチル化アミン(例、モノ−、ジ、及びトリ−メチルアミン)、メチル化チオール及び二酸化炭素がある。
【0047】
「C1代謝体」という語は、エネルギー及びバイオマスの唯一の供給源として、単一炭素基質を使用する能力をもつ微生物を意味する。C1代謝体は、標準的にはメチロトローフ及び/又はメタノトローフとなる。
【0048】
「メチロトローフ」という語は、炭素−炭素結合を含まない有機化合物を酸化させる能力をもつ生体を意味する。メチロトローフがCH4を酸化することができる場合メチロトローフは同様にメタノトローフでもある。
【0049】
「メタノトローフ」という語は、基質としてメタンを利用する能力をもつ原核生物を意味する。メタンから二酸化炭素への完全酸化は、好気性分解経路によって起こる。本発明において有用なメタノトローフの標準的な例としては、Methylomonas, Methylobacter, Methylococcus及びMethylosinusが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0050】
「高成長メタノトローフ細菌菌株」は、代謝されたC1基質のグラムあたりの細胞集団収量を結果としてもたらす機能的エムデン・マイヤーホフ炭素フラックス経路を有する唯一の炭素及びエネルギー源としてメタン又はメタノールを用いて成長する能力をもつ細菌を意味する。本書に記述されている特異的「高成長メタノトローフ細菌菌株」は、互換性ある形で使用される語である「Methylomonas16a」又は「16a」と呼ばれる。
【0051】
「Methylomonas16a」及び「Methylomonas16a sp」という語は、互換性ある形で用いられ、本発明で使用されるMethylomonas菌株を意味する。
【0052】
「イソプレノイド化合物」は、イソペンテニルピロホスフェート(IPP)で始まる経路を介して誘導され、5、10、15、20、30又は40炭素の長さでありうるイソプレン単位の頭−尾縮合によって形成されるあらゆる化合物を意味する。「イソプレノイド」という語は、標準的に強い光吸収特性をもつイソプレノイド化合物の1クラスを意味する。
【0053】
「上部イソプレン経路」という語は、(1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼをコードする)dxs 遺伝子、(1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼをコードする)dxr 遺伝子(ygbPとしても知られている2C−メチル−D−エリトリトールシチジリルトランスフェラーゼ酵素をコードする)「ispD」遺伝子、(ychBとしても知られている4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼをコードする)「ispE」遺伝子、(ygbBとしても知られている2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼをコードする)「ispF」遺伝子;(CTPシンターゼをコードする)「pyrG」遺伝子;ジホスフェートジメチルアリルの形成に関与する「lytB」遺伝子;及びイソプレノイド経路内での2−C−メチル−D−エリスリトール4−ホスフェートの合成に関与するgcpE遺伝子を含む、イソプレノイド生合成経路に結びつけられた遺伝子及び遺伝子生成物のいずれかを意味する。
【0054】
「Dxs」という語は、dxs遺伝子によってコードされる1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ酵素を意味する。
【0055】
「Dxr」という語は、1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ酵素を意味する。
【0056】
「YgbP」又は「IspD」という語は、ygbP又はispD 遺伝子によってコードされる2C−メチル−D−エリスリトール−シチジリルトランスフェラーゼ酵素を意味する。ygbP又はispDといった遺伝子の名前は、本出願では互換性ある形で使用されている。遺伝子生成物の名前、YgbP又はIspDは、本出願中、互換性ある形で使用される。
【0057】
「YchB」及び「IspE」という語は、ychB又はispE 遺伝子によりコードされる4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ酵素を意味する。ychB又はispEという遺伝子の名前は、本出願では互換性ある形で用いられている。遺伝子生成物の名前、YchB又はIspEは、本出願中、互換性ある形で使用される。
【0058】
「YgbB」及び「IspF」という語は、ygbB又はispF 遺伝子によりコードされる2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼ酵素を意味する。ygbB又はispFという遺伝子の名前は、本出願では互換性ある形で用いられている。遺伝子生成物の名前、YgbB又はIspFは、本出願中、互換性ある形で使用される。
【0059】
「PyrG」という語は、pyrG遺伝子によりコードされるCTPシンターゼ酵素を意味する。
【0060】
「IspA」という語は、IspA遺伝子によりコードされるプレニルトランスフェラーゼファミリーの1つとしてのゲラニルトランスフェラーゼ又はファルネシルジホスフェートシンターゼ酵素を意味する。
【0061】
「LytB」という語は、ISP経路内でのジメチルアリルピロホスフェートの形成において一つの役割を果たし、LytB 遺伝子によりコードされるタンパク質を意味する。
【0062】
「gcpE」という語は、ISP内での2−C−メチル−D−エリスリトール−4−ホスフェートの形成において1つの役割を果たすタンパク質を意味する。(Altincicek et al., J.Bacteriol.(2001)、183(8)、2411−2416;Campos et al.,FEBS Lett.(2001)、488(3)、170−173)。
【0063】
「下部カロテノイド生合成経路」という語は、フィトエン(その合成は、カロテノイドの生合成に独特の第1工程を表わす)の即時合成又は後続反応に関与するイソプレノイト生成経路に結びつけられる以下の遺伝子及び遺伝子生成物のいずれかを意味する。これらの遺伝子及び遺伝子生成物には、(ゲラニルトランスフェラーゼ又はファルネシルジホスフェートシンターゼをコードする)「ispA」遺伝子、(ジアポフィトエンデヒドロゲナーゼをコードする)「ctrN」及び「ctrN1」遺伝子、(ゲラニルゲラニルピロホスフェートシンターゼをコードする)「crtE」遺伝子、(ゼアキサンチングルコシルトランスフェラーゼをコードする)「crtX」遺伝子、(リコペンシクラーゼをコードする)「crtY」遺伝子、(フィトエンデサチュラーゼをコードする)「crt1」遺伝子、(フィトエンシンターゼをコードする)「crtB」遺伝子、(β−カロテンヒドロキシラーゼをコードする)「crtZ」遺伝子及び(β−カロテンケトラーゼをコードする)「crtO」遺伝子が含まれる。さらに「カロテノイド生合成酵素」という語は、CrtE、CrtX、CrtY、Crtl、CrtB、CrtZ及びCrtOを内含する当該経路内の任意かつ全ての酵素を意味する包括的な語である。
【0064】
「IspA」という語は、ispA遺伝子によりコードされ、ゲラニルピロホスフェート(GPP)、ファルネシルピロホスフェート(FPP)、及びゲラニルゲラニルピロホスフェート(GGPP)が形成される3つのプレニルトランスフェラーゼ反応の一シーケンスの触媒としてその活性が作用するタンパク質を意味する。
【0065】
「CrtN1」又は「CrtN、コピー1」は、crtN1遺伝子によってコードされるジアポフィトエンデヒドロゲナーゼ酵素のコピー1を意味する。
【0066】
「CrtN2」又は「CrtN、コピー2」という語は、crtN2 遺伝子によりコードされるジアポフィトエンデヒドロゲナーゼ酵素(Crt)のコピー2を意味する。
【0067】
「CrtE」という語は、トランス−トランス−ファルネシルジホスフェート及びイソペンテニルジホスフェートをピロホスフェート塩及びゲラニルゲラニルジホスフェートへと転換するcrtE 遺伝子によってコードされるゲラニルゲラニルピロホスフェートシンターゼ酵素を意味する。
【0068】
「CrtX」という語は、crtX 遺伝子によりコードされ、ゼアキサンチンをグリコゾル化してゼアキサンチン−β−ジグルコシドを生成するゼアキサンチングルコシルトランスフェラーゼ酵素を意味する。
【0069】
「CrtY」という語は、crtY 遺伝子によりコードされ、リコペンからβ−カロテンへの転換の触媒として作用するリコペンシクラーゼ酵素を意味する。
【0070】
「CrtI」という語は、crtI 遺伝子によりコードされ、4つの2重結合の導入によりフィトフルエン、ゼーターカロテン及びニューロスポレンを仲介としてフィトエンをリコペンに転換するフィトエンデサチュラーゼ酵素を意味する。
【0071】
「CrtB」という語は、プレフィトエンジホスフェートからフィトエンへの反応の触媒として作用する、crtB 遺伝子によりコードされるフィトエンシンターゼ酵素を意味する。
【0072】
「CrtZ」という語は、β−カロテンからゼアキサンチンへのヒドロキシル化反応の触媒として作用するcrtZ 遺伝子によってコードされたβ−カロテンヒドロキシラーゼ酵素を意味する。
【0073】
中間体としてのエチネノン(1つのケトン基)を介したβ−カロテンからカンタキサンチン(2つのケトン基)への転換の触媒として作用する、crtO遺伝子によってコードされるβ−カロテンケトラーゼ酵素を意味する。
【0074】
「カロテノイド化合物」という語は、2つの中央メチル基が、1,6−位置関係にあり残りの非末端メチル基が1,5−位置関係にあるように分子の中央でイソプレノイト単位の配置が逆転させられるような形で接合された8つのイソプレノイト単位から成る炭化水素(カロテン)及びその酸素化誘導体(キサントフィル)の1つのクラスとして定義づけされる。全てのカロテノイドは、(i)水素化、(ii)脱水素化、(iii)環化又は(iv)酸化又はこれらのプロセスのうちの何らかの組合せによって、接合された2重結合の長い中央鎖をもつ非環式C40H56構造(以下の構造式I)から形式的に誘導されうる。
【0075】
【化1】
【0076】
このクラスは同様に、炭素骨格(I)のいくつかの再配置から又はこの構造の一部分の(形式的)除去によって生じるいくつかの化合物をも内含する。
【0077】
便宜上、カロテノイドの構造式は、往々にして短縮された形で次のように記される。
【0078】
【化2】
【0079】
なお式中、破線は、イソプレノイド単位への形式的分割を表わす。
【0080】
本書で使用される「単離された核酸フラグメント」は、場合により、合成、非天然又は改変ヌクレオチド塩基を含有する1本鎖又は2本鎖のRNA又はDNAの重合体である。DNAの重合体の形をした単離された核酸フラグメントは、cDNA、ゲノムDNA又は合成DNAの単数又複数のセグメントで構成され得る。
【0081】
「遺伝子」というのは、コーディング配列に先行する(5´非コーディング配列)及びそれに後続する(3’非コーディング配列)調節配列を内含する特異的タンパク質として発現される能力をもつ核酸フラグメントを意味する。「未変性遺伝子」というのは、それ自体の調節配列と共に天然に見い出される通りの遺伝子を意味する。「キメラ遺伝子」というのは、天然には共に見い出されない調節配列とコーディング配列を含む、未変性遺伝子でないあらゆる遺伝子を意味する。従って、キメラ遺伝子は、異なる供給源から誘導された調節配列及びコーディング配列又は、同じ供給源から誘導されたものの天然に見い出されるものとは異なるやり方で配置されている調節配列及びコーディング配列を含み得る。「内因性遺伝子」は、1つの生体のゲノム内のその天然の場所にある未変性遺伝子を意味する。「外来性遺伝子」は、宿主生体内に通常見い出されないものの遺伝子移入により宿主生体内に導入される遺伝子を意味する。外来性遺伝子は、非未変性生体内に挿入された未変性遺伝子又はキメラ遺伝子を含むことができる。「トランスジーン」は、形質転換手順によりゲノム内に導入された遺伝子である。
【0082】
「コーディング配列」は、特異的アミノ酸配列についてコードするDNA配列を意味する。「適切な調節配列」というのは、コーディング配列の上流側(5’非コーディング配列)、コーディング配列内又はその下流側(3′非コーディング配列)の位置にあり、付随するコーディング配列の転写、RNA処理又は安定性又は翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を意味する。調節配列は、プロモータ、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNA処理部位、エフェクタ結合部位及びステム−ループ構造を内含し得る。
【0083】
「プロモータ」とは、コーディング配列又は機能的RNAの発現を制御する能力をもつDNA配列を意味する。一般に、コーディング配列は、プロモータ配列に対し3′の位置にある。プロモータは、全体が未変性遺伝子から誘導されてもよいし、或いは又、自然に見い出される異なるプロモータから誘導される異なる要素から成るか、さらには合成DNAセグメントを含んで成っていてよい。当業者であれば、異なるプロモータが、異なる組織又は細胞型内で、又は異なる発達段階で、又は異なる環境又は生理条件に応えて、1つの遺伝子の発現を導くことができるということがわかる。大部分の細胞型内で大部分の時に遺伝子を発現させるプロモータは、一般に「構成性プロモータ」と呼ばれる。さらに、大部分のケースで調節配列の正確な境界が完全に定義づけされていないことから、異なる長さのDNAフラグメントが同一のプロモータ活性をもち得るというとが認識されている。
【0084】
「操作可能にリンクされた」という語は、一方の機能がもう他方の機能の影響を受るような形での単一の核酸フラグメント上の核酸配列の会合を意味する。例えば、1つのプロモータは、1つのコーディング配列の発現に影響を及ぼす能力をもつとき(すなわちコーディング配列がプロモータの転写制御下にある)、そのコーディング配列と操作可能にリンクされている。コーディング配列は、センス又はアンチセンス配向で調節配列に操作可能にリンクされ得る。
【0085】
本書で使用される「発現」という語は、本発明の核酸フラグメントから誘導されたセンス(mRNA)又はアンチセンスRNAの転写及び安定した蓄積を意味する。発現は又、1つのポリペプチドへのmRNAの翻訳を意味することもある。
【0086】
「形質転換」という語は、遺伝的に安定した遺伝形質を結果としてもたらす、宿主生体のゲノム内への核酸フラグメントの移入を意味する。形質転換された核酸フラグメントを含む宿主生体は、「遺伝子導入」又は「組換え型」又は「形質転換された」生体と呼ばれる。
【0087】
「プラスミド」、「ベクター」及び「カセット」という語は、細胞の中央代謝の一部を成さない遺伝子を往々にして担持し、通常円形の2本鎖DNAフラグメントの形をしている過剰染色体要素を意味する。かかる要素は、適切な3’未翻訳配列と共に選択された遺伝子生成物のためのDNA配列及びプロモータフラグメントを1つの細胞内に導入する能力をもつユニーク構成の形に一定数のヌクレオチド配列が合体又は組換えされている、任意の供給源から誘導された1本鎖又は2本鎖のDNA又はRNAの線形又は円形の、自律的複製配列、ゲノム組込み配列、ファージ又はヌクレオチド配列でありうる。「形質転換カセット」というのは、特異的宿主細胞の形質転換を容易にする要素を外来性遺伝子に加えて有する、外来性遺伝子を含む特異的ベクターを意味する。「発現カセット」は、外来性遺伝子を含有し、かつ、外来性宿主内でのその遺伝子の増強した発現を可能にする要素を外来性遺伝子に加えて有する特異的ベクターを意味する。
【0088】
当該技術分野において知られている「同一性百分率」という語は、配列を比較することにより決定される通りの2つ以上のポリペプチド配列、又は2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当該技術分野では、「同一性」は同様に、かかる配列のストリング間の一致により決定される通りの、場合によってポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列の関係度をも意味している。「同一性」及び「類似性」は、コンピュータ分子生物学(Lesk, A.M.,ed.) Oxford University Press, NY(1988);バイオコンピュータ計算:情報科学とゲノムプロジェクトSmith, D.W.,ed.) Academic Press, NY(1993);配列データのコンピュータ解析;第1部(Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds.) Humana Press, NJ(1994);分子生物学における配列分析(von Heinje, G., ed.) Academic Press(1987);及び配列分析プライマ(Gribskov, M. and Devereux, J., eds.) Stockton Press, NY(1991)の中で記述されているものを含む(ただしこれに制限されるわけではない)既知の方法によって容易に計算することができる。同一性を決定するための好ましい方法は、テスト対象の配列の間の再考の一致を提供するように設計されている。同一性及び類似性を決定するための方法は、公に入手可能なコンピュータプログラムの中で体系化される。配列アライメント及び百分率同一性計算は、LASERGENE生物情報科学計算パッケージソフトのMegalignプログラムを用いて実施することができる(DNASTAR Inc., Madison, WI) 。デフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=10)と共にClustalの整列方法(Higgins and Sharp(1989)cAB10s.5:151−153)を用いて、配列の多数の整列が実行された。clustal方法を用いた対整列のためのデフォルトパラメータは、KTUPLE1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5及びDIAGONALS SAVED=5であった。
【0089】
適切な核酸フラグメント(本発明の単離されたポリヌクレオチド)は、本書で報告されているアミノ酸配列に対し少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%の同一性をもつポリペプチドをコードする。好ましい核酸フラグメントは、本書で報告されているアミノ酸配列と約85%の同一性をもつアミノ酸配列をコードする。より好ましい核酸フラグメントは、本書で報告されているアミノ酸配列に対し少なくとも約90%の同一性をもつアミノ酸配列をコードする。最も好ましいのは、本書に報告されているアミノ酸配列に対し少なくとも約95%の同一性をもつアミノ酸配列をコードする核酸フラグメントである。適切な核酸フラグメントは、上述の相同性を有するのみならず、標準的に少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも150、さらにより好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも250個のアミノ酸をもつポリペプチドをコードする。
【0090】
核酸分子は、適切な温度及び溶液イオン強度条件下で核酸分子の1本鎖形態が、もう1方の核酸分子にアニールできる場合に、cDNA、ゲノムDNA又はRNAといったようなもう1つの核酸に「ハイブリッド形成可能」である。ハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、周知のものであり、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T.「分子クローニング・実験室マニュアル;第2版 Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor(1989)、特にその中の第11章及び11.1(本書に全体が参考として内含されている)の中で例示されている。温度及びイオン強度条件は、ハイブリダイゼーションの「緊縮性」を決定する。緊縮性条件は、近い関係をもつ生体由来の機能的酵素を複製する遺伝子といったようなきわめて類似性の高いフラグメントに対して遠い関係をもつ生体由来の相同配列といったような中位の類似性をもつフラグメントをスクリーニングするように調整できる。ハイブリダイゼーション後の洗浄が、緊縮性条件を決定する。好ましい条件の1セットでは、15分間室温での6×SSC、0.5%SDSから出発し、次に30分間45℃での2×SSC、0.5%SDSで反復し、次に30分間50℃で0.2×SSC、0.5%SDSで2回反復する一連の洗浄が用いられる。より好ましい緊縮性条件セットでは、より高い温度が使用され、ここで0.2×SSC、0.5%SDS中での最後の2回の30分洗浄の温度が60℃まで上昇させられるという点を除いて、洗浄は以上のものと同一である。きわめて緊縮性の高い条件のもう1つの好ましいセットでは、65℃で0.1×SSC、0.1%×SDSでの2回の最終的洗浄が使用される。緊縮性条件のさらなる好ましいセットには、0.1×SSC、0.1%SDS、65℃、2×SSC、0.1% SDSとそれに続く0.1×SSC、0.1%SDSでの洗浄が含まれる。
【0091】
ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が、相補的配列を含んでいることを必要とするが、ハイブリダイゼーションの緊縮性に応じて塩基間の不整合が可能である。核酸をハイブリッド形成するための適切な緊縮性は、当該技術分野において周知の変数である核酸の長さ及び相補度により左右される。2つのヌクレオチド配列間の類似性又は相同性度が大きくなればなるほど、これらの配列をもつ核酸のハイブリッドについてのTm値は大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの(より高いTmに対応する)相対的安定性は、RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA、の順で減少する。長さがヌクレオチド100個以上のハイブリッドについて、Tmを計算するための方程式が導出されてきた(Sambrook et al., 前出、9.50〜9.51参照)。比較的短かい核酸すなわちオリゴヌクレオチドでのハイブリダイゼーションについては、不整合位置は、より重要となり、オリゴヌクレオチドの長さは、その特異性を決定する(Sambrook et al. 前出、11.7〜11.8参照)。1つの実施形態においては、ハイブリッド形成可能な核酸のための長さは、少なくとも約ヌクレオチド10個;より好ましくは、少なくとも約ヌクレオチド20個であり、最も好ましくは、長さは少なくともヌクレオチド30個である。さらに、熟練者であれば、プローブの長さといったような因子によって必要に応じ温度及び洗浄溶液塩濃度を調整できるということを認識することだろう。
【0092】
「配列分析ソフトウェア」という語は、ヌクレオチド又はアミノ酸配列の分析のために有用であるあらゆるコンピュータアルゴリズム又はソフトウェアプログラムを意味する。「配列分析ソフトウェア」は、市販されているものであっても、又自主的に開発されたものであってもよい。標準的な配列分析ソフトウェアとしては、GCGプログラムパッケージソフト(Wisconsin Package Version 9.0,Genetics Computer Group (GCG),Madison, WI),BLASTP,BLASTN,BLASTX(Altschul et al., J.Mol.Biol. 215:403−410(1990),及びDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228S,Park St.Madison, WI53715USA),及びSmith−Watermanアルゴリズムを包含するFASTAプログラム(W.R.Pearson, Comput. Methods Genome Res.[Proc. Int.Symp.](1994),Meeting Date1992,111−20.Editor(s) :Suhai, Sandor. Publisher:Plenum, New Youk, NY)が内含されるが、これらに制限されるわけではない。本出願においては、分析のために配列分析ソフトウェアが用いられる場合、分析の結果は、相反する規定のないかぎり、基準としたプログラムの「デフォルト値」に基づくことになる。本書で使用されている「デフォルト値」というのは、1回目の初期化時点でソフトウェアと共に当初ロードする値又はパラメータのあらゆるセットを意味することになる。
【0093】
ここで使用される標準的組換え型DNA及び分子クローニング技術は、当該技術分野において周知であり、Sambrook, J., Fritsch, E.F. 及びManiatis, T, 分子クローニング:実験室マニュア ル、第2版 Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY(1989)(以下「Maniatis」と呼ぶ)及び Silhavy, T.J, Bennan, M.L. 及びEnquist, L.W., 遺伝子融合での実験、Cold Spring Harbor Laboratory Cold Press Spring Harbor, NY(1984);及びAusubel, F.M. et al., 分子生物学における現在のプロトコルGreene Publishing Assoc. and Wiley−Interscience出版(1987)によって記述されている。
【0094】
C1代謝性微生物の同定及び単離
本発明は、唯一のエネルギー源として単一炭素基質を使用することのできる微生物内のカロテノイド化合物の生合成に関与する遺伝子の発現を提供する。かかる微生物は、本書では、C1代謝体と呼ばれる。宿主微生物は、カロテノイドの多くについての前駆体であるイソペンテニルピロホスフェート(IPP)を合成する能力をもつ任意のC1代謝体であり得る。
【0095】
さまざまな単一炭素基質を使用することのできる数多くのC1代謝性微生物が当該技術分野において知られている。本発明で有用な単一炭素基質には、メタン、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸、メチル化アミン(例えばモノ−、ジ−、及びトリメチルアミン)、メチル化チオール及び二酸化炭素が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0096】
全てのC1代謝性微生物は一般にメチロトローフとして分類されている。メチロトローフは、炭素−炭素結合を含まない有機化合物を酸化する能力をもつあらゆる生体として定義づけすることができる。メチロトローフのサブセットがメタノトローフであり、これは、メタンを酸化するという特有の能力をもつ。通性メチロトローフは、炭素−炭素結合を含有しない有機化合物を酸化する能力をもつが、エネルギー及びバイオマスのために糖及び複合炭水化物いったようなその他の炭素基質を使用することもできる。真性メチロトローフは、エネルギーの生成のため炭素−炭素結合を含まない有機化合物の使用に制限されている生体であり、真性メタノトローフは、メタンを酸化する能力をもつような真性メチロトローフである。
【0097】
通性メチロトローフ細菌は、多くの環境内で見い出されるが、最も一般的には、土壌、ごみ埋立て地及び廃棄物処理サイトから単離される。数多くの通性メチロトローフは、Proteobacteria のβ及びγ亜群である(Hanson et al., Microb. Growth C1Compounds.,〔Int.Symp.〕, 7th(1993),285−302,Editor(s):Murrell, J. Collin;Kelly, Don P. Publisher:Intercept, Andover, UK;Madigan et al., Brock Biology of Microorganism, 8th editon, Prentice Hall, UpperSaddle River, NJ(1997)。本発明において適切な通性メチロトローフ細菌には、Methylophilus, Methylobacillus, Methylobacterium, Hyphomicrobium, Xanthobacter, Bacillus, Paracoccus, Nocardia, Arthrobacter, Rhodopseudomonas, 及びPseudomonasが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0098】
単一炭素基質を利用する能力は、細菌に制限されるわけではなく、酵母及び真菌にも及ぶ。数多くの酵母属が、エネルギー源としてより複雑な材料に加え単一炭素基質を使用することができる。本発明において有用である特異的メチロトローフ酵母としては、Candida, Hansenula, Pichia, Torulopsis, 及びRhodotorulaが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0099】
メタンを利用する付加的な能力をもつこれらのメチロトローフは、メタノトローフと呼ばれる。本発明において特に有利であるのは、メタンを利用するものの、炭素−炭素結合が欠如した有機化合物を使用することを強いられている真性メタノトローフである。これらの生体の例としては、Methylomonas, Methylobacter, Methylococcus, Methylosinus, Methylocyctis, Methylomicrobium, 及びMethanomonas属が内含されるが、これらに制限されるわけではない。
【0100】
本発明において特に有利であるのは、エネルギー面で有利な炭素フラックス経路をもつ高成長真性メタノトローフである。例えば、出願人らは、それを炭素フラックスの操作にとって特に有用なものにするいくつかの経路特長をもつ特異的メタノトローフ菌株を発見した。このタイプの菌株は、本出願において宿主として役立ちMethylomonas16a(ATCC PTA2402)として知られている。
【0101】
当該菌株は、炭素利用経路の中に複数の異常を含有している。例えば、ゲノム配列データに基づくと、菌株は、ヘキソース代謝の2つの経路のための遺伝子を含有することが示されている。ケト−デオキシホスホグリコネートアルドラーゼ酵素を利用するエントナードウドロフ経路は、この菌株内に存在する。これが真性メタノトローフ内の作動的経路であることは、一般に充分に受容されている。しかしながら、同様に存在しているのは、フルクトースビスホスフェートアルドラーゼ酵素を利用するエムデンマイヤーホフ経路である。この経路が真性メタノトローフ内に存在しないか又はその中で作動状態にないかのいずれかであることは周知である。エネルギー面では、後者の経路は最も有利であり、生物学的に有用なエネルギーのより大きな収量を可能にし、これは究極的には、Methylomonas16a内での細胞集団及びその他の細胞集団依存性生成物のより大きな収量の生成を結果としてもたらす。当該16a菌株内のこの経路の活性は、ATPの減少を測定するマイクロアレイデータ及び生化学的証拠を通して確認されてきた。16a菌株が、エムデンマイヤーホフ及びエントナードウドロフの両方の経路の酵素を有することが示されてきたが、データは、エムデンマイヤーホフ経路酵素がエントナードウドロフ経路酵素よりもさらに強く発現されるということを示唆している。この結果は、驚くべきものであり、メタノトローフ細菌の解凍代謝に関してすでに信じられている理念に反するものである。出願人らは、例えばMethylomonas clara及びMethylosinus sporiumを含め、この特徴をもつその他のメタノトローフ細菌を発見した。この活性は、大部分の細菌系における酵素のための標準的なホスホリル供与体であるATPでの酵素の活性の欠如に起因してメタノトローフにおいては発見されないままである可能性が高い。
【0102】
菌株16a内のエムデンマイヤーホフ経路の特に新規で有用な特長は、主要なホスホフルクトキナーゼ工程がATP依存性ではなくピロホスフェート塩依存性であるという点にある。この特長は、ATPの代りにピロホスフェート塩を使用することにより、経路のエネルギー収量に追加を行なう。菌株に対しエネルギー面の利点を提供する上でのその有意性のため、炭素フラックス経路内でのこの遺伝子は、当該菌株についての診断とみなされている。
【0103】
ピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼ遺伝子配列(配列表の配列番号1)及び演繹されたアミノ酸配列(配列表の配列番号2)を公共データベースに比較すると、最も類似性の高い既知の配列が、Smith−Watermanのアラインメントアルゴリズムを用いて437個のアミノ酸の長さ全体にわたり本書で報告されているアミノ酸配列と約63%の同一性をもつことがわかる(W.R.Pearson, Comput, Methods Genome Res., [Proc. Int. Symp](1994), Meeting Date 1992, 111−20. Editor (s):Suhai, Sandor. Publisher. Plenum, New York, NY)。より好ましいアミノ酸フラグメントは、本書の配列と少なくとも約80%〜90%の同一性をもつ。最も好ましいのは、本書に報告されたアミノ酸フラグメントと少なくとも95%の同一性をもつ核酸フラグメントである。同様にして、当該遺伝子に対応する核酸配列をコードする好ましいピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼは、活性タンパク質をコードしかつ本書に報告されている核酸配列と少なくとも80%の同一性をもつものである。より好ましいピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼ核酸フラグメントは、本書の配列と少なくとも90%の同一性をもつ。最も好ましいのは、本書に報告されている核酸フラグメントと少なくとも95%の同一性をもつピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼ核酸フラグメントである。
【0104】
当該菌株を弁別するさらなる特徴は、リブロース1ホスフェート経路つまりRuMPサイクル内で起こる「開裂」工程を検査したときに明らかになる。この一組の反応サイクルは、メタンを、メタノトローフ細菌内の生体分子に転換する。経路は、3期から成り、各期は一連の酵素的工程である(図2)。第1工程は、ヘキソース又は6炭素糖を形成するべくペントース内にC−1(ホルムアルデヒド)を「固定する」か又は取込むことにある。これは、5炭素糖(ペントース)とホルムアルデヒドの間の縮合反応を介して起こり、ヘキスロース1ホスフェートシンターゼ酵素を触媒する。第2期は、「開裂」と呼ばれ、ヘキソースを2つの3炭素分子へと分割する結果となる。これらの3炭素分子のうちの1つは、RuMP経路を通して再循環し戻され、一方もう1つの3炭素フラグメントは、細胞成長のために利用される。メタノトローフ及びメチロトローフにおいて、RuMP経路は、3つの変異体のうちの1つとして発生する。しかしながら、これらの変異体のうちの2つのみが一般に発見され、FBP/TA(フルクトースビスホスフェート/トランスアルドラーゼ)経路又はKDPG/TA(ケトデオキシホスホグルコン酸/トランスアルドラーゼ)経路として同定されている(Diykhuizen L., G.E.Deuries。「好気性メタノール利用性グラム陰性及びグラム陽性菌の生理学及び生化学」。「メタン及びメタノール利用菌」中(1992年),eds. Colin Murrell及びHoward Dalton;Plenum Press:NY)。
【0105】
当該菌株は、主要中間体としてフルクトースビスホスフェートを介してこの転換を実施する遺伝子が発見されたことから、その「開裂」 のとり扱い方において独特のものである。フルクトースビスホスフェートアルドラーゼ及びトランスアルドラーゼのための遺伝子は、DNAの1片上に共にクラスタ化された状態で発見された。第2に、ケトデオキシホスホグルコン酸中間体が関与するもう一方の変異体のための遺伝子も同様に、一緒にクラスタ化された状態で発見された。利用可能な文献は、これらの生体(メチロトローフ及びメタノトローフ)がKDPG経路のみに依存していること及び、FBP依存性固定経路が通性メチロトローフによって利用されることを教示している(Dijkhuizen et al., 前出)。従って、前者の観察事実は期待されないが、後者の観察事実は期待される。真性メタン利用細菌内にFBP遺伝子が発見されたことは、驚きであると共に有用性を示唆することでもある。FBP経路は、KDPG経路の中で利用されるものよりも低いエネルギー(ATP)が利用されるという事実に起因して、宿主微生物にとってエネルギー上有利である。かくしてFBP経路を利用する生体は、KDPG経路を利用する生体に比べ、エネルギー上の利点及び成長上の利用を有する可能性がある。この利点は同様に、菌株内のエネルギーを要する生成経路のためにも有用であり得る。この経路を使用することにより、メタン利用細菌は、単一細胞タンパク質又はRuMP経路を通して炭素の流れから誘導される任意のその他の生成物のいずれかのための生成プラットフォームとして、その他のメタン利用細菌に比べ1つの利点を有する可能性がある。
【0106】
従って、本発明は、
(a)メタン及びメタノールよりなる群から選択されるC1炭素基質上で成長し、かつ
(b)ピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼ酵素をコードする遺伝子を含む機能的エムデンマイヤーホフ炭素経路を含む、
形質転換されたC1代謝性宿主細胞を提供することを含んで成る、カロテノイド化合物の生成方法を提供する。
【0107】
C1代謝性微生物の単離
本発明のC1代謝性微生物は、汎存しており、多くは単離され特徴づけされている。これらの菌株の単離の一般的スキームには、メタン又はメタノールのいずれかを含有する密封された液体鉱物塩培地内に接種材料を添加することが内含される。体積:気体比には注意を払わなくてはならず、培養は、標準的に25〜55℃の間でインキューベートされる。標準的には、成長が最初に見えたときにそれを平板固定するか又は固体培地上にストリークした場合、さまざまな異なるメチロトローフ細菌を第1の富化から単離することができる。メタノトローフの単離のための方法は、一般的であり、当該技術分野で周知である(例えば、Thomas D.Brock in 「バイオテクノロジー : 産業微生物学教本」、第2版(1989)Sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA; Deshpande, Mukund V., Apple. Biochem. Biotechnol., 36:227(1992);又はHanson, R.S. et al. 原核生物;細菌の生息環境、単離及び同定に関する手引書;Springer−Verlag:Berlin, New York, 1981;第2巻、第118章参照)。
【0108】
上述のように、好ましいC1代謝体は、ピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼの存在により表わされるような活性エムデンマイヤーホフ経路を取込むものである。当該教示は、類示の菌株の一般的同定及び単離を可能にすることになると考えられている。例えば、当該高成長菌株の主要な特徴は、それが唯一の炭素供給源としてメタノールのいずれかのメタンしか用いない真性メタノトローフであり、機能的エムデンマイヤーホフ、特にピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子を有するということにある。メタノトローフを単離する方法は、当該技術分野において一般的でかつ周知である(例えば、Thomas D. Brock(前出)又はDeshpande(前出)を参照のこと)。同様にして、ピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼは、哺乳動物系において充分に特徴づけされてきており、検定方法が充分に開発されてきた(例えばSchliselfeld et al. Clin. Biochem (1996), 29(1), 79−83;Clark et al., J. Mol. Cell. Cardiol. (1980), 12(10), 1053−64を参照のこと)。現代の微生物学者は、当該高成長菌株を同定するためにこれらの技術を使用することができるだろう。
【0109】
カロテノイド生成に関与する遺伝子
カロテノイドの生合成に関与する酵素経路は、ピルビン酸塩及びグリセルアルデヒド−3−ホスフェートのイソペンテニルピロホスフェートへの転換を提供する上部イソプレノイト経路及びフィトエン及びその後に生成された全てのカロテノイドの合成を提供する下部カロテノイド生合成経路という2つの部分で見るのが適切でありうる。上部経路は、数多くのC1代謝性微生物の中で汎存し、これらのケースでは、所望のカロテノイドの生合成のために下部経路を含む遺伝子を導入することしか必要でなくなる。2つの経路の間の主要な境界線は、イソペンテニルピロホスフェート(IPP)の合成に関係する。IPPが天然に存在する場合には、下部カロテノイド経路の要素のみが必要となる。しかしながら、下部経路カロテノイド遺伝子がカロテノイドの製造において有効となるためには、宿主細胞がその細胞内で適切なレベルのIPPを有することが必要となる。IPP合成が宿主細胞にとって提供されない場合、IPPの生成のために必要な遺伝子を導入することが必要となる。これらの経路の各々について、以下で詳述する。
【0110】
上部イソプレノイト経路
IPP生合成は、2つの経路のいずれかを通して起こる。まず第1に、IPPは、周知の酢酸塩/メバロン酸塩経路を通して合成可能である。しかしながら、最近の研究は、メバロン酸塩依存性経路が、全ての生体内では動しないということを実証した。IPP生合成のための1つの代替的メバロン酸塩非依存性経路が、細菌及び緑藻類及び高等植物において特徴づけされてきた。(Horbach et al., FEMS Microbiol. Lett. 111:135−140(1993);Rohmer et al, Biochem. 295:517−524(1993);Schwender et al., Biochem. 316:73−80(1996);Eisenreich et al.,Proc. Natil. Acad. Sci. USA93:6431−6436(1996))。両方のイソプレノイト経路における数多くの工程が知られている(図1)。例えば、IPPの生成を導く代替的経路の初期工程は、Cole et al.(Nature 393:537−544(1998))によりMycobacterium tuberculosisの中で研究されてきた。この経路の第1工程には、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートとして知られている5−炭素化合物を生成するべく2つの3−炭素分子(ピルビン酸塩及びD−グルセルアルデヒド3−ホスフェート)を縮合することが関与している。この反応は、dxs遺伝子によりコードされたDXS酵素によって起こる。次に、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートの異性化及び還元は、2−C−メチル−D−エリスリトール−4−ホスフェートを生成する。異性化及び還元プロセスに関与する酵素の1つは、遺伝子dxrによりコードされるD−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(DXR)である。2−C−メチル−D−エリスリトール−4−ホスフェートは、その後、注釈の無い遺伝子ygbPによりコードされる酵素によるCTP依存性反応において4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトールへと転換される(Cole et al., 前出)。しかしながら最近、ygbP遺伝子は、isp 遺伝子クラスタの一部としてispDと再命名された(Smiss Protein受入れ番号Q46893)。
【0111】
次に、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトールの第2位置の水酸基を、ychB遺伝子によりコードされた酵素によりATP依存性反応においてホスフェート化(phosphorylate)させることができる。この生成物は、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトールをホスフェート化し、結果として4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトール2−ホスフェートをもたらす。ychB遺伝子は、同じくisp遺伝子クラスタの一部として、ispEと再命名された(Swiss Protein受入れ番号P24209)。最後に、ygbB遺伝子の生成物は、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトール2−ホスフェートを、CTP依存的に2C−メチル−D−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートに変換する。この遺伝子は、同じく最近再命名され、isp 遺伝子クラスタに属する。特定的には、ygbB遺伝子のための新しい名称はispFである(Swiss Protein受入れ番号P36663)。
【0112】
2C−メチル−D−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートをさらにIPPに転換して究極的にカロテノイド生合成経路内でカロテノイドを生成することが知られている。ただし、2C−メチル−D−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートからのイソペンテニル−ホスフェートの生成を導く反応は、まだ充分に特徴づけされていない。lytB及びgcpE遺伝子(そして恐らくはその他のもの)によりコードされる酵素は、イソペンテニルピロホスフェート(IPP)及びジメチルアリルピロホスフェート(DMAPP)の形成を導く反応に参与すると考えられている。
【0113】
IPPは、idi 遺伝子によりコードされるIPPイソメラーゼを介してDMAPPに異性化され得るが、この酵素は、生存のために必須ではなく、2−C−メチル−D−エリスリトール4−ホスフェート(MEP)経路を用いるいくつかの細菌の中では不在であり得る。最近の証拠は、MEP経路がIPPの前に分枝し、lytB遺伝子生成物を介してIPP及びDMAPPを別々に生成することを示唆している。ltyBノックアウト突然変異は、IPP及びDMAPPの両方が補足された培地を除き、E.coli内で致命的である。
【0114】
上部経路の要素をコードする遺伝子が、表2に示されているようなさまざまな植物、動物及び細菌供給源から知られている。
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
本発明における上部イソプレン経路のための最も好ましい遺伝子供給源は、Methylomonas 16aある。メタノトローフは天然にピンクの色素をもち、30炭素カロテノイドを生成することから、Methylomonas 16aが本発明にとって特に適している。かくして、生体は、上部イソプレン経路の遺伝子を充分に授かっている。これらの好ましい遺伝子の配列は、以下の配列表の配列番号として提示されている:すなわち、dxs遺伝子(配列表の配列番号5)、dxr遺伝子(配列表の配列番号7)、「ispD」遺伝子(配列表の配列番号9)、「ispE」遺伝子(配列表の配列番号11)、「ispF」遺伝子(配列表の配列番号13)、「pyrG」遺伝子(配列表の配列番号15)、及び「lytB」遺伝子(配列表の配列番号17)。
【0119】
下部カロテノイド生合成経路
フィトエンの形成は、化合物が無色であるにもかかわらず、下部カロテノイド生合成経路を介して生成される、カロテノイド生合成内で唯一の最初の「真の」工程である。フィトエン合成は、IPPからジメチルアリルピロホスフェート塩(DMAPP)への異性化を介して起こる。この反応の後には、3つのプレニルトランスフェラーゼ反応のシーケンスが続く。これらの反応のうち2つは、ispAを触媒とし、ゲラニルピロホスフェート(GPP;10−炭素分子)及びファルネシルピロホスフェート(FPP:15−炭素分子)の生成を導く。
【0120】
遺伝子 crtN1及びN2は、ファルネシルピロホスフェートを、自然に発生する16A. 30−炭素色素へと転換する。
【0121】
GGPPシンセターゼをコードする遺伝子crtEは、発生する可能性のある3番目のプレニルトランスフェラーゼ反応を担当し、フィトエンの合成を導く。この反応はIPPをFPPに付加して20−炭素分子、ゲラニルゲラニルピロホスフェート(GGPP)を生成する。
【0122】
最後に、GGPPの2つの分子の縮合反応が起こり、下部カロテノイド生合成経路の最初の40炭素分子であるフィトエン(PPPP)を形成する。この酵素反応は、フィトエンシンターゼをコードするcrtBを触媒としている。
【0123】
「赤色」スペクトルを付与するリコペンは、(フィトエンデサチュラーゼをコードする)遺伝子crt1を触媒とする、8つの水素原子の除去により4つの逐次的脱水素化反応を通してフィトエンから生成される。この反応における媒介は、フィチオフルエン、ゼータ−カロテン及びニューロスポレンである。
【0124】
リコペンシクラーゼ(crtY)は、リコペンをβ−カロテンに転換する。
【0125】
β−カロテンは、(crtZ遺伝子によりコードされる)β−カロテンヒドロキシラーゼの活性の結果としてのヒドロキシル化反応を介してゼアキサンチンに転換される。B−クリプトキサンチンは、この反応における中間体である。
【0126】
β−カロテンは、crtW遺伝子によってコードされたβ−カロテンケトラーゼによりカンタキサンチンに転換される。エキネノンが、この反応における中間体である。このときカンタキサンチンを、crtZ遺伝子によりコードされるβ−カロテンヒドロキシラーゼにより、アスタキサンチンに転換するとができる。
【0127】
ゼアキサンチンは、ゼアキサンチン−β−ジグルコシドに転換され得る。この反応は、ゼアキサンチングルコシルトランスフェラーゼ(crtX)を触媒とする。
【0128】
ゼアキサンチンは、crtW、crtO又はbktによりコードされるβ−カロテンケトラーゼによりアスタキサンチンに転換され得る。アドニキサンチンがこの反応における中間体である。
【0129】
crtAによりコードされるスフェロイデンモノオキシゲナーゼにより、スフェロイデンをスフェロイデノンに転換することができる。
【0130】
それぞれcrtC、crtD及びcrtF遺伝子によりコードされるヒドロキシニューロスポレンシンターゼ、メトシキニューロスポレンデサチュラーゼ及びヒドロキシニューロスポレン−O−メチルトランスフェラーゼの逐次的作用により、ネロスポレンをスフェロイデンに変換することができ、又、リコペンをスピリロキサンチンに転換することができる。
【0131】
β−カロテンは、crtUによりコードされるb−カロテンデサチュラーゼによりイソレニエラテンに転換され得る。
【0132】
下部カロテノイド生合成経路の要素をコードする遺伝子は、表3に示されているように、さまざまな植物、動物そして細菌供給源から知られている。
【0133】
【表6】
【0134】
【表7】
【0135】
【表8】
【0136】
【表9】
【0137】
【表10】
【0138】
【表11】
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【0141】
本発明における下部カロテノイド生合成経路のための遺伝子の最も好ましい供給源は、さまざまなものに由来している。「ispA」遺伝子(配列表の配列番号19)は、生体が2−C−メチル−D−エリスリトール−4−ホスフェート(MEP)経路を介して呼吸鎖キノン及び30−炭素カロテノイドを生成することから、Methylomonas16aに生得のものである。しかしながら、Methylomonasは所望の40−炭素カロテノイドを合成しない。FPPは、Methylomonas16A内のMEP経路の最終生成物であり、その後sqs、crtN1及びcrtN2 遺伝子生成物の作用によりその天然の30−炭素カロテノイドに転換される。好ましい宿主生体に生得の遺伝子として、ispA遺伝子(配列表の配列番号19)は、本発明の遺伝子の最も好ましい供給源である。
【0142】
crt遺伝子の最も好ましい供給源の大部分は、主としてPanteoa stewartiiにある。これらの好ましい遺伝子の配列は、以下の配列表の配列番号として提示される。crtE 遺伝子(配列表の配列番号25)、crtX 遺伝子(配列表の配列番号27)、crtY(配列表の配列番号29)、crtl遺伝子(配列表の配列番号31)、crtB遺伝子(配列表の配列番号33)及びcrtZ遺伝子(配列表の配列番号35)。さらにRhodococcus erythropolis AN12から単離され配列表の配列番号37として提示されたcrtO 遺伝子は、本発明のためのその他の遺伝子と組合せた形で決まる。
【0143】
表3に提示された遺伝子と本発明の好ましい遺伝子のさまざまな組合せを用いることにより、充分なIPP供給源が宿主生体内で利用可能であることを条件として、本発明の方法を用いて、数えきれないほどの異なるカロテノイド及びカロテノイド誘導体を作ることができる。例えば、遺伝子クラスタcrtEXYIBは、β−カロテンの生成を可能にする。crtZをcrtEXYIBに添加することにより、ゼアキサンチンの生成が可能となり、一方、crtEXYIBZOクラスタはアスタキサンチン及びカンタキサンチンの生成を導く。
【0144】
本発明の有用な生成物が、アンテラキサンチン、アドニキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、カプソルビリン、β−クリプトキサンチン、アルファ−カロテン、ベータ−カロテン、イプシロン−カロテン、エキネノン、ガンマ−カロテン、ゼータ−カロテン、アルファ−クリプトキサンチン、ジアトキサンチン、7,8−ジデヒドロアスタキサンチン、フコキサンチン、フコキサンチノール、イソレニエラテン、ラクツカキサンチン、ルテイン、リコペン、ネオキサンチン、ヌーロスポレン、ヒドロキシネヌーロスポレン、ペリジニン、フィトエン、ロードピン、ロードピングルコシド、シフォナキサンチン、スフェロイデン、スフェロイデノン、スピリロキサンチン、ウリオリド、酢酸ウリオリド、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン−β−ジグルコシド、及びゼアキサンチンを含む(ただしこれに制限されるわけではない)本書に記された通りのあらゆるカロテノイド化合物を内含することになるということが想定されている。さらに本発明は、ヒドロキシ−、メトキシ−、オキソ−、エポキシ−、カルボキシ−又はアルデヒド官能基又はグリコシドエステル又は硫酸塩を作り上げるべくこれらの分子の誘導体化を包含している。
【0145】
組換え型C1代謝性微生物の構築
適切な上部イソプレン経路遺伝子又は、下部カロテノイド生合成経路遺伝子をコードする遺伝子を適切な代謝性宿主の中に導入する方法は、一般的である。C1代謝性宿主内の非相同遺伝子の発現に適した調節配列を含有する微生物発現系及び発現ベクターが知られている。これらのうちのいずれかを用いて、上述のカロテノイド生合成遺伝子のいずれかの発現のためのキメラ遺伝子を構築することができるだろう。これらのキメラ遺伝子を次に、形質転換を介して適切な宿主内に導入し、酵素の高レベルの発現を提供することができる。
【0146】
適切な宿主細胞の形質転換に有用なベクター又はカセットが利用可能である。例えば、制限的な意味なく、デオキシ−キシルロースホスフェートシンターゼといったような内因性プロモータ又はメタノールデヒドロゲナーゼオペロンプロモータ(Springer et al. (1998)FEMS Microbiol Lett 160:119−124)、ポリヒドロキシアルカン酸合成のためのプロモータ(Foellner et al. Appl. Microbiol. Biotechnol. (1993)40:284−291)、又はメチロトローフ内の未変性プラスミドから同定されたプロモータ(EP296484)を含む複数のクラスのプロモータを、C1代謝体の中での当該カロテノイド生合成遺伝子をコードする遺伝子の発現のために使用することができる。これらの未変性プロモータに加えて、例えば、ラクトースオペロンPlacのためのプロモータ(Toyama et al. Microbiology(1997)143:595−602;EP62971)又はPtrcといったハイブリッドプロモータ(Brosius et al. (1984)Gene27:161−172)といった非未変性プロモータも使用することができる。同様に、例えばカナマイシン(Springer et al. (1998)FEMS Microbiol Lett160:119−124;Ueda et al. Appl. Environ. Microbiol.(1991)57:924−926)又はテトラサイクリン(米国特許第4,824,786号)といった抗生物質耐性と結びつけられたプロモータも適している。
【0147】
ひとたび特異的調節要素が選択されたならば、プロモーター遺伝子カセットを、エピソーム発現のためのレプリコン(Brenner et al. Antonie Van Leeuwenhoek(1991)60:43−48;Ueda et al. Appl. Environ. Microbiol.(1991)57:924−926)又は染色体組込み用の相同性領域(Naumov et al. Mol. Genet. Mikrobiol. Virusol. (1986)11:44−48)のいずれかを含有するプラスミド上のC1代謝体内に導入することができる。
【0148】
標準的には、ベクター又はカセットは、関連する遺伝子の転写及び翻訳を誘導する配列、選択可能なマーカー及び自発的複製又は染色体組込みを可能にする配列を含有している。.適切なベクターは、転写開始制御を内に持つ遺伝子の領域5′及び転写終結を制御するDNAフラグメントの領域3′を含んでいる。両方の制御領域が形質転換された宿主細胞と相同な遺伝子から誘導される場合が最も好ましいが、かかる制御領域が、生成宿主として選ばれた特異的種に生得の遺伝子から誘導される必要はない、ということを理解すべきである。
【0149】
特異的カロテノイドの蓄積が望まれる場合には、エネルギー又は炭素のための競合するシンクとして役立ちうる競合経路又は標的経路内でのいくつかの遺伝子の発現を低減又は削除する必要があるかもしれない。代替的には、生成を増強するため、所望のカロテノイド中間体の上流側でさまざまな遺伝子を過剰発現することが有用であり得る。
【0150】
この目的で遺伝子をアップレギュレート及びダウンレギュレートする方法が探究されてきた。分断すべき遺伝子の配列がわかっている場合、遺伝子のダウンレギュレーションの最も有効な方法の1つは、外来性DNAが転写を分断するべき構造遺伝子内に挿入される、ターゲティングされた遺伝子分断である。これは、分断されるべき遺伝子の一部分と高度の相同性をもつ配列によりフランキングされた挿入すべきDNA(往々にして遺伝子マーカー)を含む遺伝子カセットを作り出すことによって行なうことができる。宿主細胞内にカセットを導入すると、結果として、細胞の未変性DNA複製メカニズムを介して、構造遺伝子内に外来性DNAが挿入されることになる。(例えば、Hamilton et al.(1989) J. Bacteriol. 171:4617−4622,Balbas et.al. (1993) Gene 136:211−213,Gueldener et al.(1996)Nucleic Acids Res. 24:2519−2524,及びSmith et al.(1996)Methods Mol. Cell. Biol.5:270−277.を参照のこと)。
【0151】
アンチセンス技術は、標的遺伝子の配列がわかっている場合の遺伝子をダウンレギュレートするもう1つの方法である。これを達成するため、望ましい遺伝子由来の核酸セグメントがクローニングされ、RNAのアンチセンスストランドが転写されるような形でプロモータに操作可能にリンクされる。この構成体は次に宿主細胞内に導入され、RNAのアンチセンスストランドが生成される。アンチセンスRNAは、問題のタンパク質をコードするmRNAの蓄積を防止することにより遺伝子発現を阻害する。当業者であれば、特定の遺伝子の発現を低減させるべく特殊な考慮事項がアンチセンス技術の使用に付随するということがわかるだろう。例えば、アンチセンス遺伝子の適切な発現レベルには、熟練者にとっては既知の異なる調節要素を利用した異なるキメラ遺伝子の使用が必要となる可能性がある。
【0152】
ターゲティングされた遺伝子分断及びアンチセンス技術は、配列がわかっている場合に有効な遺伝子ダウンレギュレーション手段を提供するが、配列に基づかないその他のさほど特異的でない方法も開発されてきた。例えば、細胞をUV照射に露呈し、次に所望の表現型についてスクリーニングすることが可能である。化学作用物質での突然変異誘発も同様に突然変異体を生成するために有効であり、一般に使用される物質としては、HNO2及びNH2OHといったような非複製DNAに影響を及ぼす化学物質ならびに、クレームシフト突然変異をひき起こすことで知られているアクリジン染料といったような複製DNAに影響を及ぼす作用物質が含まれる。当該技術分野では、放射線又は化学的作用物質を用いて突然変異体を作り出すための特異的方法が充分に詳しく報告されている。例えば、Thomas D. Brock,の「バイオテクノロジー:工業微生物学教本」第2版(1989)Sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA., or Deshpande, Mukund V., Appl. Biochem. Biotechnol., 36, 227,(1992)を参照のこと。
【0153】
遺伝子分断のもう1つの非特異的方法は、転位因子つまりトランスポゾンの使用である。トランスポゾンは、DNA内に無作為に挿入するものの、挿入が起こった場所を見極めるため配列ベースで後に取出すことのできる遺伝要素である。In vivoとin vitroの両方の転位方法が知られている。両方の方法共、トランスポザーゼ酵素と組合せた形での転位因子の使用が関与している。転位因子又はトランスポゾンがトランスポザーゼの存在下で核酸フラグメントと接触しているとき、転位因子は、核酸フラグメント内に無作為に挿入することになる。分断された遺伝子は、転位因子の配列に基づいて同定され得ることから、この技術は、無作為突然変異及び遺伝子単離のために有用である。In vitro転位のためのキットが市販されている(例えば酵母Ty1要素に基づく(Perkin Elmer Applied Biosystems, Branchburg, NJ, から入手可能なThe Primer Island Transposition Kit, 細菌トランスポゾンに基づくNew England Biolab, Beverly, MAから入手可能なThe Genome Priming System;及びTn5細菌転位因子に基づく、Epicentre Technologies, Madison, WIから入手可能なthe EZ TN Transposon Insertion Systemsを参照のこと)。
【0154】
本発明においては、テルペノイド経路内の或る種の遺伝子の分断は、特異的カロテノイドの蓄積を増強させることができるが、どの遺伝子を分断すべきかの決定は、経験的に行なわれる必要がある。候補となる遺伝子は、前述のように、イソペンテニルジホスフェートの連続的縮合の触媒として作用し、結果としてさまざまな鎖長(C−5イソプレン単位の倍数)のプレニルジホスフェートを形成する、単数又複数のプレニルトランスフェラーゼを内含し得る。分断のためのその他の遺伝子候補としては、テルペノイドバックボーンプレニルジホスフェートに作用するタンパク質をコードする遺伝子のいずれかが含まれる。
【0155】
同様にして、所望の生成物の上流側におけるいくつかの遺伝子の過剰発現が、その生成物の生成を増大させる効果をもつものと予想されるだろう。例えば、上部イソプレノイト経路D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(Dxs)、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(Dxr)、2C−メチル−d−エリスリトールシチジリルトランスフェラーゼ(IspD)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ(IspE)、2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼ(IspF)、CTPシンターゼ(PyrG)及びLytB内の遺伝子の多くが、多コピー型プラスミド上又は強い非未変性プロモータの影響下で発現され得るだろう。このようにして、所望のカロテノイドのレベルを増強させることができる。
【0156】
カロテノイドの工業的生成
本発明に従ってカロテノイド化合物の商業的生成が望まれる場合には、さまざまな培養方法を応用することができる。例えば、組換え型微生物宿主から過剰発現された特異的遺伝子生成物の大規模生成は、バッチ又は連続培養の両方の方法により行なうことができる。
【0157】
古典的なバッチ培養方法は、培地の組成が培養の開始時点で設定され、培養プロセス中に人工的改変を受けない閉鎖型システムである。かくして、培養プロセスの始めに、培地に、所望の単数又複数の生体が接種され、システムに何も加えずに成長又は代謝活性を発生させることができる。しかしながら標準的には、「バッチ」培養は、炭素供給源の付加に関してバッチ式なのであり、pH及び酵素の濃度といった要因を制御する試みが往々にして行なわれる。バッチシステムにおいては、システムの代謝物及びバイオマス組成は、培養が終了する時点まで恒常的に変化する。バッチ培養内では、細胞は、静的誘導期を通って高成長対数期まで、そして最終的に、成長速度が低減するか又は停止する静止期まで加速される。未処理の場合、静止期にある細胞は、場合によって死滅することになる。一部のシステムでは、対数期にある細胞が、往々にして、最終生成物又は中間体の生成バルクを担当する。その他のシステムでは、静止期又は指数増殖期の生成を得ることができる。
【0158】
標準的バッチシステムの1変形形態がFed−Batchシステムである。Fed−Batch培養プロセスも同様に、本発明において適しており、培養が進むにつれて基質が増分的に添加されるという点を除いて、標準的バッチシステムを含む。Fed−Batchシステムは、代謝物抑制が細胞の代謝を阻害できるとき及び培地内の基質の量を制限することが望ましい場合に有用である。Fed−Batchシステムにおける実際の基質濃度の測定はむずかしく、従って、pH、溶解した酸素及びCO2といった発ガスの部分圧といったような測定可能な要因の変化に基づいて見積られる。バッチ及びFed−Batch培養方法は、当該技術分野において一般的でかつ周知であり、例は、本書に参考として内含されているThomas D.Brockの「バイオテクノロジー:工業的微生物学教本」第2版(1989)Sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA., 又はDeshpande, Mukund V., Appl. Biochem. Biotechnol., 36, 227,(1992)内に見られる。
【0159】
C1代謝体を用いたカロテノイドの商業的生成は、同様に連続培養で達成することができる。連続培養は、規定の培地が連続的に生物反応器に添加され、同時に処理のため等量の条件づけ済み培地が除去される開放型システムである。連続培養は一般に、細胞がまず最初に対数期成長にある恒常な高い液相密度に細胞を維持する。代替的には、連続培養は、炭素及び栄養物が連続的に添加され、貴重な生成物、副生成物又は廃棄産物が細胞集団から連続的に除去される、固定化された細胞を用いて実践可能である。細胞の固定化は、天然の及び/又は合成材料から成る広範な固体支持体を用いて実施可能である。
【0160】
連続的又は半連続的培養は、細胞成長又は最終生成物濃度に影響を及ぼす1つの要因又は任意の数の要因の変調を可能にする。例えば、1つの方法は、炭素供給源又は窒素レベルといったような制限的栄養物を一定速度に維持し、その他全てのパラメータを加減できるようにすることになる。その他のシステムでは、培地の濁度によって測定される細胞濃度が一定に保たれる一方で、成長に影響を及ぼす一定数の要因を連続的に改変できる。連続的システムは、定常状態の成長条件を維持しようとし、従って、培地を引き出すことによる細胞の損失は培地中の細胞成長速度と釣り合わされなくてはならない。連続的培養プロセスのための栄養物及び成長因子の変調方法、ならびに生成物の形成速度を最大にするための技術は、工業的微生物学の技術分野で周知であり、さまざまな方法が、前出のBrockにより詳述されている。
【0161】
本発明における発酵培地は、C1代謝性生体のための適切な炭素基質を含有していなくてはならない。適切な基質としては、主要な生化学中間体への代謝転換が実証されてきた二酸化炭素、メタン又はメタノールといったような1炭素基質が含まれ得るが、これらに制限されるわけではない。1又は2炭素基質に加えて、代謝活性のためのメチルアミン、グルコサミン及びさまざまなアミノ酸といった一定数の他の炭素含有化合物を利用するものとしても、メチロトローフ生体が知られている。例えば、メチロトローフ酵母は、メチルアミン由来の炭素を利用してトレハロース又はグリセロールを形成する(Bellion et al., Microb. Growth C1 Compd., [Int. Symp.], 7th(1993), 415−32. Editor(s):Murrell, J. Collin;Kelly, Don P. Publisher:Intercept, Andover, UK)。同様にしてCandidaのさまざまな種が、アラニン又はオレイン酸を代謝することになる。(Sulter et al. Arcn. Microbiol. 153:485−489(1990))。従って、本発明で利用される炭素供給源は広範な炭素含有基質を包含でき、生体の選択によってのみ制限されることになる、と考えられている。
【0162】
実施例
本発明はさらに、以下の実施例の中で定義されている。これらの実施例は、本発明の実施形態を表わしているものの、単なる例示を目的として示されているにすぎない、ということを理解すべきである。以上の論述及びこれらの例から、当業者であれば、本発明の基本的特徴を確認し、その精神及び範囲から逸脱することなく、それをさまざまな用途及び条件に適合させるため、本発明のさまざまな変更及び修正を行なうことができる。
【0163】
一般的方法
実施例において使用される標準的組換え型DNA及び分子クローニング技術は、当該技術分野において周知のものであり、Sambrook, J., Fritsch, E.F. 及びManiatis, T.「分子クローニング:実験室マニュアル」;Cold Spring Harbor Laboratory Press; Cold Spring Harbor, (1989)(Maniatis)及びT. J. Silhavy, M. L. Bennan, 及びL. W. Enquist, 「遺伝子融合での実験」Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N. Y. (1984)及びAusubel, F. M. et al.,「分子生物学における現行のプロトコル」Greene Publishing Assoc. and Wiley−Interscience(1987)出版によって記述されている。
【0164】
細菌培養の維持及び成長に適した材料及び方法は、当該技術分野において周知である。以下の例で使用するのに適した技術は、統合的細菌学のための方法マニュアル(Phillipp Gerhardt, R.G.E. Murray Ralph N. Costilow, Eugene W. Nester, Willis A. Wood, Noel R Krieg及びG. Briggs.Phillips, eds,)American Society for Microbiology, Washington, DC.(1994))又はThomas D. Brock in「バイオテクノロジー;工業的微生物学教本」第2版Sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA(1989)に記されているように見い出すことができる。細菌細胞の成長及び維持のために使用される全ての試薬、制限酵素及び材料は、特に指定のないかぎりAldrich Chemicals (Milwaukee, WI) DIFCO Laboratories(Detroit, MI), GIBCO/BRL(Gaithersburg, MD), 又はSigma Chemical Company(St. Louis, MO)から得た。
【0165】
遺伝子配列の操作は、Genetics Computer Group Inc.から入手可能なプログラムパッケージソフトを用いて達成した(Wisconsin Package Version 9.0, Genetics Computer Group(GCG), Madison, Wl)。GCGプログラム「Pileup」が用いられる場合、12というギャップ生成デフォルト値及び4というギャップ拡張デフォルト値が使用された。CGC「Gap」又は「Bestfit」プログラムが用いられる場合、50というデフォルトギャップ生成ペナルティ、及び3というデフォルトギャップ拡張ペナルティが使用された。これらの又は任意の何らかのGCGプログラムにおいてGCGプログラムパラメータがプロンプトされなかったあらゆるケースにおいて、デフォルト値が用いられた。
【0166】
略字の意味は以下の通りである。「h」は時間(単複)、「min」は分(単複)、「sec」は秒(単複)、「d」は日(単複)、「mL」はミリリットル、「L」はリットルを意味する。
【0167】
微生物培養、細胞懸濁液の調製、及びMethylomonas16aについての付随する分析
条件が特定的に指定されているのでないかぎり、Methylomonas16aの処置のための実験例全体にわたり、以下の条件が使用された。
【0168】
少なくとも8:1の気体/液体比(すなわち、160mLの合計体積のうち20mLの硝酸塩液体「BTZ−3」培地)を用いて、Methylomonas16aを、血清ストッパ付Wheatonボトル(Wheaton Scientific, Wheaton, IL)の中で標準的に成長させる。培養のための標準気相は、空気中に25%のメタンを含んでいた。これらの条件には成長条件が含まれ、細胞は成長細胞と呼ばれる。全てのケースにおいて、特に指定のないかぎり、培養をLab−Line回転振とう機の中で常時振とうさせながら、30℃で成長させた。
【0169】
Methylomonas16Aのための硝酸塩培地
本書で「定義された培地」又は「BTZ―3」培地とも呼ばれている硝酸塩液体培地は、以下で示されているような(表4及び5)溶液1と混合されたさまざまな塩で占められており、又は特に指定されている場合には、硝酸塩は15mMの塩化アンモニウムと置換された。溶液1は、微量の無機質の100倍濃縮原液のための組成を提供している。
【0170】
【表14】
【0171】
【表15】
【0172】
微生物成長の査定と細胞収獲条件
実験目的で得られた細胞を、最大光学密度(O.D.660〜1.0)まで成長させた。収獲した細胞は、20分間6000rpmでSS−34の回転子を用いてSorval RC−5B遠心分離機内で遠心分離させることによって得た。これらの細胞ペレットを、pH7の50mMのHEPES緩衝液中に再懸濁させた。これらの細胞懸濁液を、洗浄済み休止細胞と呼ぶ。
【0173】
1cmの光路キュベットを用いて、Ultrospec2000UV/Vis分光光度計(Pharmacia Biotech, Cambridge England)内で660nmで培養の光学密度を測定することにより、微生物の成長を査定した。代替的には、上述のように遠心分離によって培地から細胞を収獲し、培地の塩を除去するべく第2の遠心分離と共に精製水で細胞を再懸濁することにより、微生物の成長を査定した。その後、乾燥重量の決定のため乾燥用オーブン内で105℃で一晩、洗浄済み細胞を乾燥させた。
【0174】
本願明細書に援用するEmptage ら(1997, Env. Sci. Technol. 31;732−734)によって記述されている通りにメタン濃度を決定した。
【0175】
硝酸塩及び亜硝酸塩検定
1mLの細胞培養標本を取上げ、0.2ミクロンのAcrodiscフィルタを通してろ過して細胞をとり除く。この工程からのろ液は、分析すべき亜硝酸塩又は硝酸塩を含有する。AS3500のオートサンプラーを用いてDionexイオンクロマトグラフ500システム(Dionex, Sunnyvale CA)上で分析を行なった。使用されたカラムは、AG−ACガードカラムとATCトラップカラムを伴う4mmのIon−Pac ASll−HC分離カラムであった。全てのカラムはDionexより提供されている。
【0176】
移動相は、水酸化カリウムが12分の時間間隔にわたり0〜50mMという水酸化カリウム勾配であった。細胞温度は、1mL/分の流量で35℃であった。
【0177】
カロテノイド含有量のHPLCの分析
1分間の渦巻運動及び次の30分にわたる間欠的渦巻運動により、1mlのアセトンで細胞ペレットを抽出した。10分間14,000×gでの遠心分離により、細胞の破片を除去し、上清を収集し、0.45μMのフィルタに通過させた。研究のために、Beckman Gold Nouveauソフトウェアを伴うBeckman System Gold(R) HPLC(Columbia, MD)を使用した。対応するガードカラム(Hewlett−Packard, SanFernando, CA)を伴う125×4mmのRP8(5μmの粒子)上に、粗抽出物(0.1mL)を投入した。流量は1mL/分であったが、一方使用された溶剤プログラムは、0−11.5分間水40%/メタノール60%; 11.5−20分間メタノール100%;20〜30分間水40%/メタノール60%であった。スペクトルデータを、Beckmanフォトダイオードアレイ検出器で収集した(型式168)。
【0178】
例1
Methylomonas16aの単離と配列決定
単離株を含有する本来の環境標本を、池の堆積物から得た。アンモニウムを窒素供給源として定義された培地内に、空気中25%のメタン下で直接池の堆積物を接種した。メタンが、炭素及びエネルギーの唯一の供給源であった。660nmでの光学密度が安定するまで成長を追跡し、その時点で、1:100の希釈を達成するように新鮮培地に培養を移した。メタンを唯一の炭素及びエネルギー源として連続する3回の移送の後、アンモニアを窒素供給源として成長寒天上に培養を平板固定し、空気中の25%のメタン下でインキュベートした。この要領で数多くのメタノトローフ細菌種が単離された。しかしながら、その急速なコロニー成長、大きなコロニーサイズ、最小培地上で成長する能力及びカロテノイドのための活性生合成経路を表わすピンクの色素沈着のため、Methylomonas16aが生体として選択された。
【0179】
ゲノムDNAを、標準プロトコルに従ってMethylomonas16aから単離した。ゲノムDNA及びライブラリ構造を出版されたプロトコルに従って調製した。 (Fraser ら、Mycoplasma genitaliumの最小遺伝子補体;Science270(5235):397−403(1995))。100mM Na−EDTApH8.0,10mM トリス−HClpH8.0、400mM NaCl、及び50mM MgCl2を含有する溶液中に、細胞ペレットを再懸濁させた。
【0180】
ゲノムDNA調製: 再懸濁の後、細胞を穏やかに10%のSDS中で溶解させ、55℃で30分間インキュベートした。室温でのインキュベーションの後、プロテイナーゼKを100μg/mLまで添加し、懸濁液が清澄するまで37℃でインキュベートした。DNAをトリスで平衡化したフェノールで2回、そしてクロロホルムで2回抽出した。70%のエタノール中でDNAを沈降させ、10mMのトリス−HCl及び1mMのNa−EDTA(TE)、pH7.5を含有する溶液中で再懸濁させた。DNA溶液を、RNAアーゼの混合物で処理し、次に、トリスで平衡化したフェノールで2回、クロロホルムで2回抽出した。この後、エタノール中での沈殿及びTE中での再懸濁を行なった。
【0181】
ライブラリ構築 300mMの酢酸ナトリウム、10mMのトリス−HCl、1mMのNa−EDTA及び30%のグリセロールの溶液中で、染色体DNAを200〜500μg再懸濁させ、Aeromist Downdraft Nebulizerチャンバ(IBI Medical products, Chicago, IL)の中で60秒間、12psiでせん断した。DNAを沈殿させ、再懸濁させ、Bal 31ヌクレアーゼで処理した。サイズ分画の後、画分(2.0kb又は5.0kb)を切取り清浄し、2工程連結手順を用いて、99%以上の単一インサートを伴う高力価ライブラリを生成した。
【0182】
配列決定: 全微生物ゲノムの配列決定のためには、ショットガン配列決定戦略アプローチが採択された。(Fleischmann, R.ら、Haemophilus influenzaeの全ゲノムランダム配列決定及びアセンブリ Rd Science269(5223);496−512(1995))。配列は、ベクター及びインサート特異的プライマの組合せを用いて、染料ターミネータ技術(米国特許第5,366,860号;EP272, 007)を用いABI配列決定装置で生成された。DNA Star (DNA Star Inc.) 又は Wisconsin GCGプログラム(Wisconsin Package Version 9.0, Genetics Computer Group(GCG), Madison, WI)のいずれか、及びCONSEDパッケージ(バージョン7.0)の中で、配列編集を行なった。全ての配列は、両方向で少なくとも2回の包括度を表わしている。
【0183】
例2
Methylomonas由来の細菌遺伝子の同定及び特徴づけ
(全ての非冗長性GenBank CDS翻訳、3次元構造Brookhavenタンパク質データバンク、SWISS−PROTタンパク質配列データべース、EMBL及びDDBJデータベースから誘導された配列を含む)BLAST「nr」データベース内に含まれている配列との類似性について、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool; Altschul, S.F., et al., (1993) J. Mol. Biol. 215:403−410;www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/も参照のこと)サーチを実行することにより、例1からの全ての配列を同定した。National Center for Biotechnology Information(NCBI)によって提供されているBLASTNアルゴリズムを用いて、「nr」データベース内に含まれた全ての公けに利用可能なDNA配列に対する類似性について、配列を分析した。DNA配列を全ての読取り枠内で翻訳し、NCBIにより提供されているBLASTXアルゴリズム(Gish, W. and States, D. J.(1993)Nature Genetics 3:266−272)を用いて「nr」データべース内に含まれている全ての公けに利用可能なタンパク質に対する類似性について比較した。全ての比較は、BLASTNnr又はBLASTXnrアルゴリズムのいずれかを用いて行なった。
【0184】
これらのBLAST比較の結果は、本発明の数多くの重要な遺伝子について下表16に示されている。表16は、各々のMethylomonas 遺伝子が最大の類似性(類似性%、同一性%及び予想値として提示されている)をもつ配列を要約している。この表は、BLASTnrアルゴリズムに基づいたデータを表示しており、値はexpect値内で報告されている。Expect値は、全く偶然にこのサイズのデータベースのサーチ内で予想される、与えられた評点を伴う整合の数を特定して、整合の統計学的意義を推定している。
【0185】
【表16】
【0186】
【表17】
【0187】
【表18】
【0188】
例3
Methylomonas16a内での遺伝子発現のためのマイクロアレイ
Methylomonasの全ての細菌ORFをDNAマイクロアレイのために調製した。以下の例は、マイクロアレイ分析のために利用される特異的プロトコルを示している。
【0189】
DNAマイクロアレイの構築のためのDNA領域の増幅。Methylomonas sp菌株16aのORFを特定する各タンパク質を増幅するために、特異的プライマ対を使用した。鋳型としてゲノムDNA(10〜30ng)を使用した。Hot Start TaqTMDNAポリメラーゼ(Qiagen, Valencia, CA)及びdNTP(Gibco BRL Life Science Technologies, Gaithersberg, MD)の存在下で、PCR反応を実施した。30秒間95℃での変性サイクル35回、30秒間55℃でのアニーリング及び2分間72℃での重合を実施した。PCR反応の品質を1%のアガロースゲル内での電気泳動でチェックした。Qiagenからの高スループットのPCR精製キットにより、DNA標本を精製した。
【0190】
増幅したORFのアレイ化。アレイ化の前に、384ウェルのマイクロタイタープレート内で等体積のDMSO(10μL)及びDNA(10μL)標本を混合した。コーティングされたガラススライド(Telechem, Sunnyvale, CA)上に標本をアレイ化するために、第II世代のDNAスポタ(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)を使用した。各スライド上で、各々のPCR生成物を複製し、アレイ化した。UV光による架橋の後、室温で乾燥器内で真空下でスライドを保管した。
【0191】
RNAの単離。空気中25%のメタン下で、アンモニウム又は硝酸塩(10mM)を窒素供給源として用いて、定義された培地内でMethylomonas16aを培養した。O.D.がA600(対数期)で0.3に達した時点で最小培地培養の標本を収獲した。細胞培養を迅速に収獲し、RLT緩衝液(Qiagen RNeasy Miniキット、Valencia, CA)内でビーズビーター(Bio101, Vista, CA)を用いて破壊した。4℃で14、000×gで3分間遠心分離により破片をペレット化した。このキットと共に供給されたプロトコルを用いて、RNAの単離を完了させた。カラム上のDNAアーゼ処理の後、RNA生成物を50〜100μLのRNAアーゼを含まない水で溶離させた。RNA調製物を−20又は−80℃のいずれかで凍結した状態で保管した。
【0192】
全RNAからの螢光cDNAの合成。25μLの体積となるまで、RNAアーゼを含まない水で、RNA標本(7〜15μg)及びランダムヘキサマープライマ(6μg:Gibco BRL, Gaithersburg, MD)を希釈させた。標本を10分間70℃で変性させ、その後30秒間氷上で冷ました。14μLの標識づけ混合物を添加した後、10分間室温でのインキュベーションによりアニーリングを達成した。標識づけ混合物は5×酵素緩衝液8μL、DTT(0.1M)4μL、及び20×染料混合物2μLを含有していた。染料混合物は、dATP、dGTP、及びdTTP各々2mMずつ、dCTP1mM及びCy3−dCTP又はCy5−dCTP1mMで構成されていた。1〜1.5μLのSuper Script II逆転写酵素(200単位/mL,Life Technologies Inc., Gaitherberg, MD)を添加した後、cDNA合成を2時間42℃で進行させた。反応に対し2μlのNaOH(2,5H)を添加することにより、RNAを除去した。37℃で10分間のインキュベーションの後、pHをHEPES(2M)10μLで調整した。標識づけしたcDNAを次にPCR精製キット(Qiagen, Valencia CA)で精製した。Cy3の取込みについてはA550を又Cy5についてはA550を又Cy5についてはA650を用いて、標識づけ効率を監視した。
【0193】
ゲノムDNAの螢光標識づけ。ほぼ2kbペアフラグメントに対し、ゲノムDNAを噴霧した。15μLの水の中で6μgのランダムヘキサマープライマ(Gibco BRL Life Science Technologies, Gaithersburg, MD)とゲノムDNA(0.5〜1μg)を混合した。混合物を、5分間、沸とう水中に入れることにより変性させ、その後30秒間氷上でアニーリングしてから、室温に移した。その後、2μLの5×Buffer2(Gibco BRL)及び2μlの染料混合物を添加した。染料混合物の成分及び標識づけ手順は、酵素としてDNAポリメラーゼのクレノウフラグメント(5μg/μL, Gibco BRL)が使用されたという点を除いて、RNA標識づけについて上述したものと同じである。2時間37℃でインキュベートした後、標識づけしたDNAプローブをPCR精製キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて精製した。
【0194】
ハイブリダイゼーション及び洗浄。まず最初に、3.5×SSC(Gibco BRL, Gaithersberg, MD)、0.1%SDS(Gibco BRL)、1%ウシ血清アルブミン(BSA, Fraction V. Sigma, St. Louis, MO)を含有する予備ハイブリダイゼーション溶液を用いてインキュベートした。予備ハイブリダイゼーション後、標識づけされたプローブを含有するハイブリダイゼーション溶液(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)をスライドに添加し、カバースリップで覆った。スライドを、42℃のインキュベータに入れて加湿されたチャンバ内に置いた。一晩のハイブリダイゼーションの後、スライドをまず最初に、1×SSC, 0.1%SDS及び0.1×SSC、0.1%SDSを含有する洗浄溶液で、室温で5分間洗浄した。その後、スライドを同じ溶液で10分間65℃で3回洗浄した。洗浄後、スライドを、窒素ガス流で乾燥させた。
【0195】
データ収集と分析。各スライドから生成されたシグナルを、レーザースキャナ(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)で定量した。画像をAway Vision4.0ソフトウェア(Imaging Research, Inc.,Qntario, Canada)で分析した。背景を減算することで、各スポットについての未加工の螢光強度を調整した。これらの読取り値を、さらなる分析のためスプレッドシートにエクスポートした。
【0196】
例4
エムデンマイヤーホフ経路と比較した場合の、エントナードウドロフ経路内の遺伝子発現レベルの比較
この例は、16a菌株内の炭素代謝のためのエムデンマイヤーホフ経路の使用を実証するマイクロアレイの証拠を提示している。
【0197】
図2は、エントナードウドロフ経路及びエムデンマイヤーホフ経路についての遺伝子の相対的発現レベルを示している。各遺伝子の相対的転写活性は、前述のように、DNAマイクロアレイを用いて見積られた(例3:Wei, et al., J. Bact., 183;545−556(2001))。
【0198】
特定的には、Methylomonas16aの4000のORF(読取り枠)を含有する単一のDNAマイクロアレイが、ゲノムDNA及び全RNAから生成されたプローブを用いてハイブリリッド形成された。16aのゲノムDNAを、DNAポリメーラゼのクレノウフラグメント及び螢光染料Cy−5で標識づけし、一方、全RNAを逆転写酵素及びCy−3で標識づけした。ハイブリダイゼーションの後、アレイ内の各スポットについてのCy−3及びCy−5の両方のシグナル強度を定量した。次に、(遺伝子比/全比率の合計)×100という公式に従って、(百分率としての)各写しの画分を計算するために、Cy−3及びCy−5の強度比を使用した。得られた値は、個々の遺伝子のmRNAの相対存在量を反映している。従って、アレイによって表わされている全ての遺伝子の転写活性を、下降順のそのmRNA存在度に基づいて格付けすることができる。各ステップに隣接する図2中の番号は、その酵素の相対的発現レベルを表わす。例えば、mRNA存在度に関して、メタンモノオキシゲナーゼは、生体が炭素供給源としてメタンを用いて成長させられた場合にその遺伝子が最高の転写活性を有していたことから、細胞中で最も発現度の高い酵素であった(格付け#1)(図2)。次に最も発現度の高い酵素は、メタノールデヒドロゲナーゼであった(格付け#2)。ヘキスロース−1ホスフェートシンターゼ遺伝子は、メタン内で成長させられた細胞内の最も発現度の高い遺伝子のうちの1つである。
【0199】
エントナードウドロフ経路の「診断用」とみなされた遺伝子は、6−ホスホグルコナートデヒドラターゼ及び2ケト−3−デオキシ−6−ホスホグルコナートアルドラーゼである。これとは対照的に、ホスホフルクトキナーゼ及びフクルトースビスホスフェートアルドラーゼは、エムデンマイヤーホフ配列の「診断用」である。ホスホフルクトキナーゼの伝令RNA写し(格付け#232)及びフルクトースビスホスフェートアルドラーゼ(格付け#65)は、グルコース6ホスフェートデヒドロゲナーゼ(格付け#717)、6−ホスホグルコナートデヒドラターゼ(格付け#763)又は2−ケト−3−デオキシ−6−グルコナートアルドラーゼのものよりも高い存在量にある。データにより、エムデンマイヤーホフ経路の酵母がエントナードウドロフ経路酵母よりも強く発現されることが示唆されている。この結果は、驚くべきことであり、メタノトローフ細菌の中央代謝についての既存の信念に反するものである。(Dijkhuizen, L., et al. グラム陰極及びグラム陽性菌を利用する好気性メタノールの生理学及び生化学;「メタン及びメタノールの利用菌」中、Biotechnology Handbooks 5,1992編者:Colin,Murrell, Howard Dalton;pp149−157)。
【0200】
例5
ピロホスフェート塩リンクホスホフルクトキナーゼについての直接的酵素証拠
この例は、現行の菌株内のピロホスフェート塩関連ホスホフルクトキナーゼ酵素の存在についての証拠を示し、かくして当該Methylomonas菌株内のエムデンマイヤーホフ経路の機能性を確認している。
【0201】
ホスホフルクトキナーゼ活性は、以下に記述した共役酵素検定を用いることによって、Methylomonas16a内に存在することが示された。検定条件は、下表7に示されている。
【0202】
共役検定反応
ホスホフルクトキナーゼ反応を、共役酵素検定によって測定する。ホスホフルクトキナーゼ反応をフルクトース1,6,ビスホスフェートアルドラーゼとそれに続くトリオースホスフェートイソメラーゼと共役させる。酵素活性を、NADHの消滅によって測定する。
【0203】
特定的には、酵素ホスホフルクトキナーゼは、フルクトース6ホスフェート及びピロホスフェートをフルクトース1,6−ビスホスフェート及びオルトホスフェートに転換する主要な反応の触媒として作用する。フルクトース−1,6−ビスホスフェートは、フルクトース1,6−ビスホスフェートアルドラーゼにより3−ホスホグリセルアルデヒド及びジヒドロキシアセトンホスフェートに分割される。ジヒドロキシアセトンホスフェートは、トリオースホスフェートイソメラーゼによって3−ホスホグリセルアルデヒドに異性化される。グリセロールホスフェートデヒドロゲナーゼプラスNADH及び3−ホスホグリセルアルデヒドはアルコールグリセロール−3−ホスフェートとNADを生み出す。NADHの消滅は、分光光度計(UltraSpec4000、Pharmacia Biotech)を用いて340nmで監視される。
【0204】
【表19】
【0205】
この共役酵素検定は、さらに、以下の表8に示されているように、一定数のその他のメタノトローフ細菌の中で活性を検定するために使用された。表8中のデータは、ホスホリル供与体としてATP又はピロホスフェート塩を用いてホスホフルクトキナーゼ活性についてテストされた既知のATCC菌株を示す。これらの生体は、I型又はX型のリブロース−ホスフェート利用菌株又はII型セリン利用菌のいずれかとして分類された。立証済みの文献では、炭素取込み様式、形態論、GC含有%及び生体内の主要な特異的酵素の有無に基づいて、これらのタイプの分類を行なっている。
【0206】
【表20】
【0207】
以上で提示されているデータからいくつかの結論をひき出すことができる。まず第1に、(ホスホフルクトキナーゼのための標準的ホスホリル供与体である)ATPが基本的に、メタノトローフ細菌内のホスホフルクトキナーゼ反応において有効でないことが明らかである。テストされた全てのメタノトローフにおいて反応を支持するのは無機ピロホスフェート塩のみであることがわかった。第2に、全てのメタノトローフがこの活性を含んでいるわけではない。この活性は基本的に、Methylobacter whittenbury及びMethylococcus capsulatusにおいて不在であった。Methylomonas clara及びMethylosinus sporium内では、中間レベルの活性が発見された。これらのデータは、数多くのメタノトローフ細菌が、これまで報告されたことのないホスホフルクトキナーゼ活性を含有し得るということを示している。このことから、この活性を含有するメタノトローフが、活性のエムデンマイヤーホフ経路を有するということを推論することができる。
【0208】
例6
Pantoea stewartii由来のカロテノイド遺伝子のクローニング
遺伝子のcrtクラスタを含むPCRによりフラグメントを増幅するためPantoea ananatis由来の配列を用いてプライマを設計した。これらの配列は、5′−3′すなわち以下の配列を含んでいた:
ATGACGGTCTGCGCAAAAAAACACG SEQ ID NO:43
GAGAAATTATGTTGTGGATTTGGAATGC SEQ ID NO:44
Pantoea stewartii(ATCC No.8199)から染色体DNAを精製し、以下の条件下でのPCR増幅反応においてPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA)を使用した:94℃、5分;94℃(1分)−60℃(1分)−72℃(10分)のサイクルを25回、及び10分間72℃。ゲル電気泳動法の後、約6.5kbの単一の生成物を観察した。pCR4―TOPO(Invitrogen, Carlsbad, CA)内へのTOPOクローニングのために、フラグメントに付加的な3′アデノシドヌクレオチドを添加するべく、10分間72℃の反応内でTaqポリメラーゼ(Perkin Elmer)を使用した。電気穿孔法によるE.coli DH5α(Life Technologies, Rockville. MD)への形質転換の後、複数のコロニーの色が明黄色に見え、それらがカロテノイド化合物を生成していることを表わしていた。Qiagen(Valencia, CA) miniprepキットを用いてメーカーの指示通りにプラスミドを単離した場合、6.5kbの増幅されたフラグメントを含有するプラスミドを、GPS−1Genome Priming Systemキット(New England Biolabs, Inc., Beverly, MA)を用いてpGPS1.1で転位させた。一定数のこれらの転位したプラスミドをトランスポゾンの各端部から配列決定した。トランスポゾン特異的プライマを用いて染料ターミネータ技術(米国特許第5366860号;EP272007)を使用するABI自動シーケンサ上で、配列を生成した。配列アセンブリは、Sequencherプログラム(Gene Codes Corp., AnnArbor MI)を用いて実施した。
【0209】
例7
Rhodococcus erythropolis crtOのクローニング
当該例は、Rhodococcus erythropolis AN12由来のカロテノイド生合成経路遺伝子の単離、配列決定及び同定について記述している。
【0210】
菌株AN12の単離及び特徴づけ
炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてアニリン上で成長する能力に基づいて、Rhodococcus erythropolisの菌株AN12を単離した。アニリン上で成長した細菌を、富化培養から単離した。125ml入りのネジキャップ式エルレンマイヤーフラスコの中で10mlのS12培地(10mMの硫酸アンモニウム、50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、2mM MgCl2、0.7m MCaCl2、50μM MnCl2、1μM FeCl3、1μM ZCl3、1.72μM CuSO4、2.53μM CoCl2、2.42μM Na2MoO2、及び0.0001%FeSO4)内に活性汚泥1mlを接種することにより、富化培養を樹立した。活性汚泥は、廃水処理施設から得た。富化培養を、培地に直接添加した100ppmのアニリンで補足し、相互振とうしながら25℃でインキュベートした。2〜3日毎に100ppmのアニリンを添加することにより、富化培養を維持した。9.9mlの培養を同体積のS12培地と交換することにより14日毎に培養を希釈した。S12寒天上に富化培養の標本を広げることによって炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてアニリンを利用した細菌を、単離させた。各々のペトリ皿のふたの内部に、アニリン(5μL)を置いた。ペトリ皿をパラフィンで密封し、室温(約25℃)で倒置してインキュベートした。次に炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてアニリンを使用する能力について、代表的な細菌コロニーをテストした。初期単離のために使用されたもとのS21寒天平板から新しいS12寒天平板までコロニーを移し、各ペトリ皿のフタの内部にアニリンと共にこれを供給した。ペトリ皿をパラフィルムで密封し、室温約25℃で倒置してインキュベートした。
【0211】
各単離株の16SrRNA遺伝子をPCRで増幅させ、以下の通りに分析した。各単離株をR2A寒天(Difco Laboratories, Bedford, MA)上で成長させた。培養平板からの複数のコロニーを100μlの水中に懸濁させた。混合物を凍結させ、次に一度解凍した。プライマーHK12(5′−GAGTTTGATCCTGGCTCAG−3′)(配列表の配列番号:45)and HK13(5′−TACCTTGTTACGACTT−3′)(配列表の配列番号:46)を用いて、メーカーの指示(Perkin Elmer)に従って市販キットを使用しPCRにより、16S rRNA遺伝子配列を増幅させた。PCRはPerkin Elmer GeneAmp 9600(Norwalk, CT)内で実施された。94℃で5分間標本をインキュベートし、次に、94℃で3秒、55℃で1分そして72℃で1分間サイクリングさせた。増幅した16S rRNA遺伝子をメーカーの指示に従い市販のキットを用いて精製し(QlAquick PCR Purification Kit, Qiagen, Valencia, CA)、自動ABIシーケンサ上で配列決定した。配列決定反応は、プライマHK12、HK13、及びHK14(5′−GTGGCCAGCAGYMGCGGT−3′)(配列表の配列番号47、なおここでY=C又はT、M=A又はCである)。類似の配列についてのGen BankのBLAST search(Altschul, et al., Nucleic Acids. Res. 25:3389−3402(1997))用の照会配列として、各単離株の16S rRNA遺伝子配列を使用した。
【0212】
菌株AN12の16S rRNA遺伝子を配列決定し、GenBank配列データベース内のその他の16S rRNA配列と比較した。菌株AN12の16S RNA遺伝子配列は、Rhodococcus属に属する高G+Cグラム陽性菌の16S rRNA遺伝子配列と少なくとも98%の類似性をもっていた。
【0213】
配列決定及び配列製造のゲノムRNAの調製
ゲノムDNAの調製。Rhodococcus erythropolis AN12を、25mLのNBYE培地(0.8%の栄養ブロス、0.5%の酵母エキス、0.05%のTween80)中で、中間対数増殖期まで通気しながら37℃で成長させた。細菌細胞を4℃で30分間4000gで遠心分離した。細胞ペレットを、まずは1MのKCl(pH10)を含む50mMのNa2CO320mlで、そして次に50mMのNaOAc(pH5)20mlで一回洗浄した。細胞ペレットを穏やかに、50mMのトリス−10mMのEDTA(pH8)5ml中で再懸濁させ、リソチームを、2mg/MLの最終濃度まで添加した。懸濁液を37℃で2時間インキュベートした。その後、1%の最終濃度まで、ドデシル硫酸ナトリウムを添加し、100μg/mlの最終濃度までプロティナーゼKを添加した。懸濁液を5時間55℃でインキュベートした。懸濁液は清澄になり、清澄なリゼイトを、等体積のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出した。20分間17,000gで遠心分離した後、水相を入念に除去し、新しい試験管に移した。2体積のエタノールを添加し、密封したガラス製パスツールピペットでDNAを穏やかに取り込んだ。70%のエタノールの入った試験管にDNAを浸漬させ、次に空気乾燥させた。空気乾燥の後、RNaseA(100μg/mL)を伴う400μlのTE(10mMのトリス−1mMのEDTA、pH8)内にDNAを再懸濁させ、4℃で保管した。
【0214】
ライブラリ構築。300mMの酢酸ナトリウム、10mMのトリス−HCl、1mMのNa−EDTA、及び30%のグリセロールの溶液中に、200〜500μgの染色体DNAを再懸濁させ、Aeromist Downdraft Nebulizerチャンバ(IBI Medical Products, Chicago, IL)内で60秒間12psiでせん断した。DNAを沈殿させ、再懸濁させ、Bal31ヌクレーゼで処理した(New England Biolabs, Beverly, MA)。0.8%のアガロースゲル電気泳動法によるサイズ分画の後、画分(2.0kb又は5.0kb)を切除し、清浄し、2工程連結手順を用いて、99%以上の単一インサートを伴う高力価ライブラリを生成した。
【0215】
配列決定。全微生物ゲノムの配列決定のため、ショットガン配列決定戦略アプローチを採用した(Fleischmann, Robert et al., Haemophilus influenzaeRdの全ゲノムランダム配列決定及びアセンブリScience, 269:1995)。
【0216】
ベクター及びインサート特異的プライマの組合せを用いて、染料ターミネータ技術(米国特許第5366860号;EP272007)を使用してABI自動シーケンサ上で配列を生成した。配列編集を、DNA Star(DNA Star Inc., Madison, WI)又は、Wisconsin GCGプログラム(Wisconsin Package Version9.0,Genetics Computer Group(GCG),Madison, WI)及びCONSEDパッケージ(バージョン7.0)のいずれかで実施した。全ての配列は、両方向で少なくとも2回の包括度を表わしている。
【0217】
Cut 0の配列分析
2つの異なるフィトエンデヒドロゲナーゼに対する相同性を共有するRhodococcus erythropolis AN12のゲノム配列内で2つのORFを同定した。1つのORFは、Crt Iと呼称され、Streptomyces coelicolor A3(2)由来の推定上のフィトエンデヒドロゲナーゼに対する最高の相同性(45%の同一性、56%の類似性)を有していた。もう1つのORF(もともとCrt 12と呼ばれ、現在はCrt 0と呼ばれている)は、Deinococcus radiodurans由来の確率の高いフィトエンデヒドロゲナーゼDR0093に対する最高の相同性(35%の同一性、50%の類似性;White O.et al Science 286(5444)、1571−1577(1999))を有していた。モチーフ分析によるタンパク質のその後の検査から、crt0がケトラーゼとして機能し得ることがわかった。
【0218】
Rhodococcus Crt0のケトラーゼ活性についてのIn vitro検定
crt0がケトラーゼをコードしたか否かを確認するため、発現されたE. coli内のRhodococcus crt0遺伝子を、in vitroでのケトラーゼ活性の存在について検定した。プライマcrtI2−N:ATGAGCGCATTTCTCGACGCC(配列表の配列番号;48)及びcrt12−C:TCACGACCTGCTCGAACGAC(配列表の配列番号:49)を用いてAN12からcrt0遺伝子を増幅させた。増幅した1599bp全長crt0遺伝子を、pTrc His2−TOPOクローニングベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)内にクローニングさせ、メーカーの指示に従ってTOP10細胞内に形質転換させた。ベクター上のtrcプロモータとの関係において順方向配向でクローニングされたcrt0遺伝子を含有する構成体(pDCQ117と呼ぶ)を、制限分析及び配列決定によって確認した。
【0219】
crt0を発現するE. coli TOP10(pDCQ117)細胞由来の粗製細胞抽出物を用いてin vitro酵素検定を実施した。100μg/mlのアンピシリンを含有する100mlのLB培地に、TOP10(pDCQ117)細胞の1mlの新鮮な一晩の培養を接種した。OD600が0.6に達するまで300rpmでの振とうと共に、37℃で細胞を成長させた。その後、0.1mMのIPTGで細胞を誘発させ、細胞はさらに3時間成長し続けた。遠心分離(4000g、15分)により50mlの培養から収獲した細胞ペレットを凍結させ、一回解凍し、0.25%のTritoxX−100を含む2mlの50mMの氷冷トリス−HCl(pH7.5)中に再懸濁させた。50μlのアセトン中のβ−カロテン基質(Spectrum Laboratory Products, Inc)10μgを懸濁液に添加し、ピペットで移して混合した。混合物を2本の試験管の中に分割し、各試験管に、250mgのジルコニア/シリカビーズ(0.1mm, BioSpec Products, Inc, Bartlesville, OK)を添加した。2分間ビーズビーティングにより細胞を破壊し、Eppendorfマイクロ遠心分離機5414Cの中で2分間10000rpmでの回転により、細胞破片を除去した。組合さった上清(2ml)を、50mlフラスコ内で50mMのトリスpH7.5緩衝液3mlで希釈し、異なる長さの時間150rpmで振とうしながら反応混合物を30℃でインキュベートした。5mlのメタノールを添加し、5mlのジエチルエーテルでの抽出により、反応を停止させた。抽出のため2つの相を分離するべく、500mgのNaClを添加した。上部ジエチルエーテル相中のカロテノイドを収集し、窒素下で乾燥させた。Beckman Gold Nouveau Softwareを伴うBeckman System Gold(R) HPLC(Columbia, MD)を用いて、HLPC分析のためカロテノイドを0.5mlのメタノール内に再度溶解させた。対応するガードカラムを伴う125×4mmのRP8(5μmの粒子)カラム上に、粗製アセトン抽出0.1mlを投入した。流量は1ml/分であり、溶剤プログラムは、0〜11.5分間水40%/メタノール60%、11.5〜20分間メタノール100%、20〜30分間水40%/メタノール60%であった。Beckmanフォトダイオードアレイ検出器(型式168)を用いてスペクトルデータを収集した。
【0220】
16時間反応混合物中で、470nmにおいて3つのピークが同定された。標準と比較した場合、15.8分の保持時間でのピークはβ−カロテンであり、13.8分という保持時間でのピークはカンタキサンチンであることが見極められた。14.8分におけるピークは、わずか1つのケトン基の添加での中間体であるエキネノンである可能性が最も高かった。2時間反応混合物中では、エキネトン中間体は、唯一の反応生成物であり、カンタキサンチンは全く生成されなかった。培養時間をさらに長くすると、より高レベルのエキネノン及びカンタキサンチンに対応するピークの出現が結果としてもたらされた。カンタキサンチンは、2つのケトン基の添加を表わす、この工程での最終生成物である(表9)。ケトラーゼ活性がcrt0遺伝子に特異的であったことを確認するため、基質としてβ−カロテンを使用しない対照細胞の抽出を用いても、検定を行なった。対照反応混合物においては、いかなる生成物ピークも検出されなかった。
【0221】
要約すると、in vitro検定データは、中間体としてのエキネノン(1つのケトン基)を介してβ−カロテンをカンタキサンチン(2つのケトン基)へと変換したケトラーゼをCrt0がコードすることを確認した。Rhodococcus Crt0のこの対称的ケトラーゼ活性は、Synechocystis Crt0の非対称的機能について報告されたものと異なっている。
【0222】
【表21】
【0223】
例8
例6及び7からの全ての配列を、例2の方法に従って、BLAST「nr」データベース内に含まれている配列に対する類似性についてBLASTサーチ(Basic Local Alignment Search Tool; Altschul, S.F., et al., (1993) J. Mol. Biol. 215:403−410;www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/ も参照のこと)を行なうことによって同定した。
【0224】
これらのBLAST比較の結果は、下表10に示されている。この表は、予想値で報告した値と共に、BLAST Xnrアルゴリズムに基づいたデータを表示している。予想値は、全く偶然にこのサイズのデータベースのサーチにおいて予想される整合の数を、与えられた評点と共に特定して、整合の統計的意義を推定している。
【0225】
【表22】
【0226】
【表23】
【0227】
例9
メタン上で成長するMethylomonas16A内のβ−カロテンの発現
Pantoea stewartii由来のcrt EXYIBZ遺伝子を含むcrt遺伝子(例6)を、Methylomonas16a内に導入して、望ましい40炭素カロテノイドの合成を可能にした。
【0228】
crt遺伝子を含むPCRによりフラグメントを増幅させるため、Erwinia uredovora由来の配列を用いてプライマを設計した。これらの配列は、5′−3′すなわち以下の配列を含んでいた:
ATGACGGTCTGCGCAAAAAAACACG SEQ ID 43
GAGAAATTATGTTGTGGATTTGGAATGC SEQ ID 44
【0229】
Pantoea stewartii(ATCC No.8199)から染色体DNAを精製し、以下の条件下でのPCR増幅反応においてPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA)を使用した:94℃、5分;25サイクルについて94℃(1分)−60℃(1分)−72℃(10分)、及び10分間72℃。ゲル電気泳動法の後、約6.5kbの単一の生成物を観察した。pCR4―TOPO(Invitrogen, Carlsbad, CA)内へのTOPOクローニングのために、フラグメントに付加的な3′アデノシドヌクレオチドを添加するべく、10分間72℃の反応内でTaqポリメラーゼ(Perkin Elmer)を使用した。電気穿孔法によるE.coli DH5α(Life Technologies, Rockville. MD)への形質転換の後、複数のコロニーの色が明黄色に見え、それらがカロテノイド化合物を生成していることを表わしていた。
【0230】
Methylomonas16a内への導入のため、pCR4−crt由来のcrt遺伝子クラスタをまず最初に、広宿主域ベクターpBHR1(MOBiTec, LLC, Marco Island, FL)内で唯一のEcoRI部位内にサブクローニングした。EcoRI(New England Biobabs, Beverly, MA)での消化により、pBHR1(500ng)を線形化し、次に子ウシ腸内アルカリ性ホスフェターゼ(Gibco/BRL, Rockville, MD)で脱ホスフェート化した。EcoRIでpCR4−crtを消化し、crt遺伝子クラスタ(crt EXYIB)を含有する6.3kbのEcoRIフラグメントを、0.8%のアガロース(TAE)中のゲル電気泳動法の後に精製した。このDNAフラグメントを、EcoRIで消化したpBHR1に連結し、連結したDNAを用いて、電気泳動法によりE. Coli. DH5αを形質転換した。50μg/mlのカナマイシンを含有するLB培地上で、形質転換体を選択した。
【0231】
いくつかの単離株は、クロラムフェニコール(25μg/ml)に対する感受性があることがわかっており、37℃での一晩のインキュベーションの後、黄色コロニー表現型を実証した。これらの形質転換体由来のプラスミドDNAの分析により、pBHR1クロラムフェニコール耐性遺伝子と同じ配向でクローニングされたcrt遺伝子クラスタの存在が確認され、このプラスミドをpCrt1(図3)と呼称した。これとは対照的に、白色コロニー表現型を実証する形質転換体由来のプラスミドDNAの分析により、pBHR1クロラムフェニコール耐性遺伝子と反対の配向でクローニングされたcrt遺伝子クラスタの存在が確認され、このプラスミドをpCrt2と呼称した。これらの結果は、crt遺伝子クラスタの機能的発現が、pBHR1 catプロモータから導かれるということを示唆した。
【0232】
プラスミドpCrt1を、三親接合交配によりMethylomonas16aの中に移入した。カナマイシン(50μg/mL)を含有するLB培地の中で、一晩、pRK202Bを含有するE. coliヘルパー菌株及びE. coli DH5α供与体菌株を成長させ、LB内で三回洗浄し、もとの培養体積の約60倍の濃度を表わすLBの体積中に再懸濁させた。25%(v/v)のメタンを含む雰囲気内で硝酸塩液体「BTZ−3」培地(General Methods)中で48時間、Methylomonas16a受容体を成長させ、BTZ−3内で3回洗浄し、もとの培養体積の150倍の濃度を表わすBTZ−3の体積内で再懸濁させた。それぞれ1:1:2の比率で0.5%(w/v)の酵母抽出物を含有するBTZ−3寒天平板の表面上で、供与体、ヘルパー及び受容体細胞を組合わせた。接合が起こるようにするため、16〜72時間25%のメタンの中に30℃で平板を維持し、その後、細胞ペーストを収集し、BTZ−3中で再懸濁させた。希釈液を、カナマイシン(50μg/ml)を含むBTZ−3寒天上に平板固定し、最高1週間、25%のメタン中で30℃でインキュベートした。単離のため、カナマイシン(50μg/mL)を伴うBTZ−3寒天上にトランス接合体をストリークさせた。これらのトランス接合体から単離されたプラスミドDNAの分析により、pCrt1の存在が確認された(図3)。
【0233】
カロテノイド組成物の分析のためには、トランス接合体を、カナマイシン(50μg/ml)を含む25mlのBTZ−3の中で培養し、最高1週間唯一の炭素供給源としての25%のメタン中で30℃でインキュベートした。細胞を遠心分離で収獲し、−20℃で凍結させた。解凍後、ペレットを抽出し、「一般的方法」の方法に従ってHPLCによりカロテノイド含有物を分析した。
【0234】
pCrt1を含むMethylomonas16a由来の抽出物のHPCL分析により、β−カロテンの合成が確認された。図3の左側パネルは、β−カロテン標準を用いて得られたHPLC結果を示しており、15.867分で単一のピークが存在している。同様にして、図3の右側パネルは、pCrt1プラスミドを含むMethylomonas16aトランス接合体培養の分析のために得られたHPLCプロフィールを示す。15.750分で類似のピークが、培養中のβ−カロテンを表わしている。
【0235】
例10
メタン上で成長するMethylomonas16A中のZeaxanthin の発現
Methylomonas16a中のゼアキサンチンの合成を可能にするため、pTrc His−crt2由来のcrt遺伝子(上述の通り)を、広宿主範囲ベクターpBHR1(MOBiTec.LLC, Marco Island, FL)のクロラムフェニコール耐性遺伝子内にサブクローニングさせた。その後EcoRI及びScaIでpBHR1(500ng)を消化し、0.8%のアガロース(TAE)中でのゲル電気泳動の後、4876bpのEcoRI−Scal DNAフラグメントを精製した。プラスミドpTrc His−crt2をSsp1及びEcoRIで同時に消化し、E. coli trcプロモータの転写制御下のcrt遺伝子クラスタ(crt EXYIB)を含有する6491bpのSsp1−EcoRI DNAフラグメントを、0.8%のアガロース(TAE)中でのゲル電気泳動の後に精製した。6491bpのSspI−EcoRIフラグメントを、4876bpのEcoRI−ScaI フラグメントに連結し、連結したDNAを用いて電気穿孔法によりE. coli DH5αを形質転換した。50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地上で形質転換体を選択した。複数のカナマイシン耐性単離株が同様にクロラムフェニコール(25μg/ml)に対する感受性をもち、37℃での一晩のICN後、黄色のコロニー色を示した。これらの形質転換体由来のプラスミド−DNAの分析により、E. coli trcプロモータの転写制御下でpBHR1内にクローニングされたcrt遺伝子クラスタの存在が確認された。このpCrt3構成体についてのプラスミド地図は、図4に示されている。p catプロモータは、標識づけされた通りの特異的遺伝子を表わす大きく幅広の矢印とは対照的に、小さい肉太黒色矢印で示されている。
【0236】
pCrt1について上述したとおり(例9)、プラスミドpCrt3を、三親接合交配によりMethylomonas16a内に移入した。このプラスミドを含むトランス接合体は唯一の炭素供給源としてのメタン及びカナマイシン(50μg/mL)を伴うBTZ−3寒天上の成長の後黄色のコロニー色を示した。
【0237】
pCrt3を含むMethylomonas16A由来の抽出物のHPLC分析により、ゼアキサンチン及びそのモノ及びジグルコシドの存在が明らかになった。これらの結果は、図4に示されている。左側のパネルは、Methylomonas16A又はpCrt3を含むMethylomonas16A由来の抽出物のHPLCプロフィールを示している。右側のパネルは、HPLCプロフィール内に表示された個々のピークのUVスペクトルを示し、pCrt3を含むMethylomonas16A内でのゼアキサンチン及びそのモノ及びジ−グルコシドの合成を実証している。これらの結果は、crtEXYIが、trcプロモータから機能的に発現され、一方crtZ遺伝子はMethylomonas 16A内のpBHR1catプロモータから反対側の配向で転写されることを示唆していた。
【0238】
当業者であれば、このプラスミド及び後続するプラスミド由来のcrtXの欠失が、モノ及びジ−グルコシドの形成無くゼアキサンチンの生成を可能にするはずであるということを予想することだろう。さらに、単数又は複数のプロモータから同じ配向でcrtEYIBZ遺伝子が発現されているプラスミドが、転写の干渉の可能性を低減しゼアキサンチンの合成を増強させるものと予想することができる。これは、当業者にとって既知の標準的クローニング技術を用いて容易に可能となる。
【0239】
例11
最適化されたHMPSプロモータを用いた、メタン上で成長するMethylomonas16A中のゼアキサンチンの発見
メタン上のMethylomonas 16aの成長後の遺伝子アレイデータの分析は、ヘキスロース−1ホスフェートシンターゼ(HMPS)が最も発現度の高い遺伝子の1つであることを示唆した。かくして、Methylomonas 16A内のP. stewartiicr遺伝子クラスタ内のものを含め、非相同遺伝子の高レベルの発現を導くためのHMPSプロモータを含むDNA配列を使用することが可能である。HMPS遺伝子から上流側の5′−DNA配列の分析は、Baylor College of Medicineが作成したNNPPニュートラルネットワーク原核生物プロモータ予測プログラムを用いて、両方のDNAストランド内の潜在的転写開始部位を同定した。H6Pシンターゼの順方向ストランドに関する予測は、表11の下に示されている。類似の結果が、逆ストランドについて下表12に示されている。
【0240】
【表24】
【0241】
【表25】
【0242】
これらの配列に基づいて、Methylomonas 16aゲノムDNA由来のHMPSプロモータを含む240bp DNA配列を増幅するためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の中で、以下のプライマを使用した。
5’ CCGAGTACTGAAGCGGGTTTTTGCAGGGAG 3’(SEQ ID NO:39)
5’ GGGCTAGCTGCTCCGATTGTTACAG 3’(SEQ ID NO:40)
【0243】
PCR条件は、以下の通りであった:2分間94℃、続いて94℃で1分、50℃で1分72℃で2分のサイクルを35回、そして最後に72℃で5分の拡充。精製の後、240bpのPCR生成物をpCR2.1(Invitrogen, Carlsbad, CA)に連結させ、電気穿孔法によりE.coli DH5α内へ形質転換した。カナマイシン(50μg/ml)とX−galを含むLB寒天上で白色のコロニー色を示した形質転換体由来のプラスミドDNAの分析は、予想したプラスミドを同定し、これは、PHMPSと呼称された。PHMPSをEcoRIで消化し、HMPSプロモータを含む256bpのDNAフラグメントを1.5%のアガロース(TEA)中でのゲル電気泳動の後に精製した。このDNAフラグメントを、EcoRIで予め消化したpCrt3に連結させ、子ウシ腸内アルカリ性ホスファターゼで脱ホスフェート化した。電気穿孔法によりE.coli DH5αを形質転換するため、連結されたDNAを使用した。カナマイシン(50μg/ml)を含有するLB寒天上で黄色のコロニー色を示した形質転換体由来のプラスミドDNAの分析は、trcプロモータの転写制御下でcrt EXYIBを、又 hmpsプロモータの転写制御下でcrtZ遺伝子を含む、pCrt4と呼称された予想のプラスミドを同定した(図5)。
【0244】
プラスミドpCrt4を、三親接合交配によりMethylomonas16a内に移入した。このプラスミドを含むトランス接合体は唯一の炭素供給源としてのメタン及びカナマイシン(50μg/mL)を伴うBTZ−3寒天上の成長の後黄色のコロニー色を示した。pCrt3を含むMethylomonas16A由来の抽出物のHPLC分析により、ゼアキサンチン及びそのモノ及びジグルコシドの存在が明らかになり、かくしてcrtZ遺伝子の発現が確認された。このデータは図5に示されている。13.38分、12.60分及び11.58分の保持時間でのピークが、それぞれ、ゼアキサンチン、ゼアキサンチンモノグルコシド及びゼアキサンチンジグリコシドの混合物に対応している。
【0245】
例12
メタン上で成長するMethylomonas 16A中のカンタキサンチン及びアスタキサンチンの発現
Methylomonas 16a内のカンタキサンチン及びアスタキサンチンの合成を可能にするため、β−カロテンケトラーゼをコードするRhodococcus erythropolis AN12crt0遺伝子をpcrt4へとクローニングした。適当なSpeI及びNheI制限部位ならびに、おそらくMethylomonas 16a内で認識されたcrtEの上流側に見い出されたリボソーム結合部位を導入するために、以下のプライマを用いて、pDCQ117(例7)由来のPCRによりcrt0遺伝子を増幅した。
5’−AGCAGCTAGCGGAGGAATAAACCATGAGCGCATTTCTC−3 ’(SEQ ID NO:41
5’−GACTAGTCACGACCTGCTCGAACGAC−3 ’(SEQ ID NO:42)
【0246】
PCR条件は、以下の通りであった:95℃で5分間、95℃で30秒、1サイクルにつき0.15℃の減少で45〜60℃の勾配で30秒及び72℃で90秒のサイクルを35回、そして72℃7分間の最終拡充。1.0%のアガロース(TAE)内でゲル電気泳動法の後に、1653bpのPCR生成物を精製し、Spel及びNhel制限エンドヌクレアーゼで同時に消化し、次に、Nhelで予め消化され子ウシ腸内アルカリ性ホスファターゼで脱ホスフェート化されたpCrt4に連結させた。連結したDNAを用いて、電気穿孔法によりE.coli DH5αを形質転換した。
【0247】
カナマイシン(50μg/ml)を含むLB寒天上で黄色のコロニー色を示した形質転換体由来のプラスミドDNAの分析は、pCrt4と呼称された予想プラスミドを同定し、ここで、trcプロモータの転写制御下で、crtEXYB遺伝子がクローニングされ、hmpsプロモータの転写制御下でcrt0及びcrtZ遺伝子がクローニングされた。このプラスミド構成体は、図6に示されている。長時間のICNの後、pert4.1を含む形質転換体が、サーモンピンクのコロニー色を示した。
【0248】
プラスミドpCrt4.1を、三親接合交配により、Methylomonas 16aの中に移入した。このプラスミドを含有するトランス接合体は、唯一の炭素供給源としてのメタン及びカナマイシン(50μg/mL)を伴うBTZ−3寒天上での成長の後オレンジ色のコロニー色を示した。pCrt4.1を含むMethylomonas 16aの抽出物のHPLC分析が、図6中に示されている。これらの結果から、内因性Methylomonas 16a30炭素カロテノイド(保持時間12.717分)ならびにカンタキサンチン(保持時間13.767分)の存在が明らかになった。野生型色素の保持時間は、アスタキサンチンについて予想されたものに非常に近い。このピークの肩の分析により、アスタキサンチンの存在が確認された。
【0249】
この菌株中の野生型16A色素の卓越した形成は、強いhmspプロモータ由来のcrtOZオペロンの高レベル発現によるcrtEXYIBオペロンの転写干渉を示唆していた。さらに、pBHR1ベクタ上のcatプロモータが、hmpsプロモータと協力してcrtOZの発現を導いているかもしれないということが仮説として取上げられた。単数又は複数のプロモータから同じ配向でcrtEYIBZO遺伝子が発現されているプラスミドは、転写干渉の可能性を低減しかくしてカンタキサンチン及びアスタキサンチンの合成を増強するものと予想することができる。
【0250】
例13
上部イソプレノイド経路遺伝子の増幅によるMethylomonas 16Aの未変性カロテノイドの合成の増強
以下のプライマでのPCRを用いることにより、Methylomonas 16aゲノムから未変性イソプレン経路遺伝子 dxs及びdxrを増幅した。
【0251】
Dxsプライマ:
順方向反応:aaggatccgcgtattcgtactc(BamHI部位を含む、配列表の配列番号55)。
【0252】
逆方向反応 ctggatccgatctagaaataggctcgagttgtcgttcagg(BamHI及びXhoI部位を含む、配列表の配列番号56)。
【0253】
Dxrプライマ:
順方向反応:aaggatcctactcgagctgacatcagtgct(BamHI及びXhoI部位を含む、配列表の配列番号57)。
【0254】
逆方向反応:gctctagatgcaaccagaatcg(XbaI部位を含む、配列表の配列番号58)。
【0255】
dxs及びdxr遺伝子の予想されたPCR生成物は、遺伝子の天然のプロモータが確実に存在するように各遺伝子の出発コドンの上流側にそれぞれ323bp及び420bpの配列を内含していた。PCRプログラム(Perkin−Elmer, Norwalk, CT内)は以下の通りであった:変性95℃(900秒);94℃(45秒)、58℃(45秒)、72℃(60秒)のサイクルを35回;最終的伸長72℃(600秒)。反応混合物(合計体積50μl)は以下のものを含有していた:25μlのHot Starマスターミックス(Qiagen, Valencia, CA), 0.75μlのゲノムDNA(約0.1ng)、1.2μlのセンスプライマ(=10pmol)、1.2μlのアンチセンスプライマ(=10pmol)、21.85μl脱イオン水。
【0256】
標準的手順(Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T.分子クローニング:実験室マニュアル、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor(1989))を使用して、pTJS75::lacZ:Tn5Kn, 低コピー、広宿主プラスミド(Schmidhauser and Helinski J. Bacteriology. Vol. 164:446−455(1985))内にdxs及びdxrをクローニングした。
【0257】
DNA単離、濃縮及び精製には、Qiagenキット(Valencia, CA)を使用した。Gibco/BRL(Rockville, MD)又はNEB(Beveily, MA)から、クローニング用酵素を購入した。プラスミドをE.coli内に移入するために、On Shot Top10コンピテント細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)キュベット(0.2cm;Invitrogen)及び標準的設定(Bio−Rad Gene Pulser III (Hercules, CA)を電気穿孔法用に使用した。
【0258】
まず第1に、lacZとpTJS75::lacZ:Tn5KnのTn5Knカセットの間にあったBamHI部位の中にdxsをクローニングした。結果として得られたプラスミドを、LBカナマイシン(Kn、50μg/mL)上で成長するE.coli 形質転換体から単離させた。さらなるクローニングのためには、(制限分析により確認されるような)Kn耐性遺伝子の方向にインサートを含むプラスミドを選択した。XhoI及びXbaI部位を使用することにより、dxsとTn5Knカセットの間でdxr遺伝子をクローニングした。予期したプラスミドを、E.coli 形質転換体から単離した。プラスミド中のdxs及びdxrの存在を、制限分析及び配列決定によって確認した。結果として得たプラスミド pTJS75::dxs:dxr:lacZ:Tn5Knは、図7に示されている。
【0259】
プラスミドpTJS75::dxs:dxr:lacZ:Tn5Knを三親接合により、E.coliからMethylomonas 16a内に移入した。交配の後の汚染するE.coli由来のメタノトローフを単隔する速度を速めるため、受容体として菌株Methylomonas 16aの自然発生的リファンピン(Rif)耐性単離株を使用した。カロテノイド含有量の決定のために6つの別々に単離したカナマイシン耐性Methylomonas 16aトランス接合体を用いた。
【0260】
カロテノイドの決定のために、静止成長期まで週末全体にわたりメタン(25%)下で6つの100mLのトランス接合体培養(BTZ+50μg/mLのKn)を成長させた。各々の2つの培養、つまりプラスミド無しの野生型菌株及びそのRif耐性誘導体が、これらの菌株内に異なるカロテノイド含有量が存在するか否かを見ること及びカロテノイド測定の標準偏差を得ることを目的とする対照として役立った。細胞をスピンダウンさせ、精製水で洗浄し、乾燥重量を決定するため24時間凍結乾燥させた(凍結乾燥機;Virtis, Gardiner, NY)。各培養の乾燥重量を決定した後、細胞を抽出した。まず第1に、0.4mLの水と共に細胞をウェルに入れ、15分間放置した。15分後に、4mLのアセントンを添加し、標本を均質化するべく徹底的に渦巻運動させた。その後、標本を1時間30℃で撹拌した。1時間後、細胞を遠心分離した。上清中にピンクの着色が見られた。上清を収集し、0.3mLの水及び3mLのアセトンを用いてペレットを再び抽出した。第2の抽出からの上清の色は、さらに明るいピンクであった。両方の抽出の上清を組合せ、それらの体積を測定し、分光測光法で分析した。負の対照とトランス接合体標本の間には、スペクトル内のいかなる質的差異もみられなかった。アセトン抽出物の中では、分光測光法により測定された以下の観察が標準的であった(460nmでピークの肩、491及び522nmで最大)(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)。カロテノイド含有量の計算のため、491nmでの吸収を読み取り、バクテリオルベリンのモル減衰係数(188.000)及び552というMW(分子量)を使用した。カロテノイドのMW(552g/mol)を、精製済み標本のMALDI−MSにより決定した(シリカ/Mg吸着とそれに続くシリカカラムクロマトグラフィ、参考:Britton, G., Liaaen−Jensen, S., Pfander, H., Carotenoids Vol. 1a;単離と分析、Birkhauser Verlag, Basel, Boston, Berlin(1995))。
【0261】
Methylomonas 16a細胞からの精製アセトン抽出物は、標準的吸収スペクトルを有する(460nmで屈折、491nm及び522nmで最大)。アセトン抽出物のHPLC分析(0〜10分間水15%/メタノール85%、その後メタノール100%という溶剤プログラムを除いて、「一般的方法」に記述されている通り)は、上述の吸収スペクトルをもつ1つの主要なカロテノイド(約6mLでの正味保持体積)が、野生型及びトランス接合体Methylomonas 16a細胞のピンク着色の原因であることを確認した。抽出物中の他の何れのものも491nmで吸収しないことから、分光光度計(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)を用いてアセトン抽出物中でカロテノイド含有量を直接測定した。
【0262】
バクテリオルベリンのモル減衰係数(188.000)を用いて、数量の計算を行なった。
【0263】
カロテノイドの数量を決定するために、以下の公式を使用した(Lambert−Beerの法則);
Ca=A491nm/(d×ε×v×Mw)
Ca:カロテノイドの量(g)
A491nm:491nm(−)でのアセトン抽出物の吸収
d:キュベット内の光路(1cm)
ε:モル減衰係数(L/(mol×cm))
MW:分子量(g/mol)
v:抽出物の体積(L)
【0264】
カロテノイド含有量を得るためには、計算上のカロテノイド量を対応する細胞乾燥重量で除さなくてはならない。
【0265】
【表26】
【0266】
4つの負の対照の間には、有意な差異は全く存在しなかった。同様にして、6つのトランス接合体の間には有意な差異は全く存在しなかった。ただし、負の対照における平均カロテノイド生成に比べて、トランス接合体内には平均カロテノイド生成の約28%の増大が認められた。
【0267】
構造を確認する目的で、そのC30−カロテノイドが同定されたMethylobacterium rhodinum(旧Pseudomonas rhodos:ATCC No.14821)を基準菌株として使用した。(Kleinig et al., Z. Naturforsch 34c, 181−185(1979);Kleinig及びSchmitt, Z. Naturforsch 37c, 758−760(1982))。Methylobacterium rhodinum及びMethylomonas 16aのけん化した抽出物を、上述のものと同じ条件でHPLC分析により比較した。結果は、以下の通り示されている:
けん化したM. rhodinum;460nmで屈折、487nm、517nmで最大。正味保持体積=1.9mL
けん化したMethylomonas 16a:460nmで屈折、488nm、518nmで最大。正味保持体積=2.0mL
【0268】
例14
上部イソプレノイド経路遺伝子の増幅によるMethylomonas 16A内の遺伝子工学処理されたカロテノイドの合成の増強
前述の例(例13)は、Methylomonas 16a中のdxs及びdxr遺伝子の増幅が、内因性30炭素カロテノイドの含有量を約30%増大させることを実証した。dxs、dxr及びlytBといったようなその他のイソプレノイド経路遺伝子の増幅を用いて、工学処理されたカロテノイド経路内への代謝フラックスを増大させ、かくしてβ−カロテン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン及びアスタキサンチンといったような40炭素カロテノイドの製造を増強させることができる。lytB遺伝子を、サブクローニングのための適切なXhoI制限部位をも導入した以下のプライマを用いてMethylomonas 16a由来のPCRにより増幅させた:
5’−TGGCTCGAGAGTAAAACACTCAAG−3 ’ (SEQ ID NO:59)
5’−TAGCTCGAGTCACGCTTGC−3 ’ (SEQ ID NO:60)
【0269】
PCR条件は、以下の通りであった:95℃で5分間;95℃で30秒1サイクルあたり0.25℃の減少で47〜62℃の勾配で30秒及び72℃で1分のサイクルを35回、そして72℃で7分の最終的拡充。
【0270】
精製の後、XhoIで993bpのPCR生成物を消化させ、先にXhoIで消化され子ウシ腸内アルカリ性ホスファターゼで脱ホスフェート化されたPTJ75;;dxs;dxr;lacZ;Tn5Knに連結した。電気穿孔法により、E.coli DH10Bを形質転換するために、連結させたDNAを用いた。カナマイシン(50μg/ml)を含有するLB寒天上で選択された形質転換体由来のプラスミドDNAの分析は、未変性dxsプロモータの制御下でオペロン内のdxs及びdxr遺伝子の間でlytB遺伝子がサブクローニングされたプラスミドを同定した。このオペロンを、HindIII及びBamHI制御エンドヌクレアーゼでの逐次的消化の後、4891bpのDNAフラグメントとして切除し、T4 DNAポリメラーゼでの処理により平滑末端化し、1.0%のアガロース(TAE)中でのゲル電気泳動の後に精製した。精製したDNAフラグメントを、BstXIでの消化によりcrtZ遺伝子内で予め線形化されたcrt3(例10)に連結させ、T4 DNAポリメラーゼでの処理により平滑末端化し、ウシ腸内アルカリ性ホスファダーゼで脱ホスフェート化した。連結されたDNAを用いて、E.coli DH10Bを電気穿孔法により形質転換し、形質転換体を、カナマイシン(50μg/ml)を含むLB寒天上で選択した。crt3を含有するものに比べより強い黄色のコロニー色を示した形質転換体由来のプラスミド、DNAの分析により、crtEXYIB及びdxs−lytB−dxrの両方のオペロンを含むpcr3.2と呼ばれるプラスミドが同定された(図7)。
【0271】
pcrt3.2を含むE.coliからの抽出物のHPLC分析は、β−カロテンの合成を確認した。三親接合交配によるMethylomonas 16a内へのこのプラスミドの移入により、pcrt3を含有するトランス接合体に比べたβ−カロテンの生成が増強されることになる。
【0272】
例15
Methylomonas 16a内のβ−カロテンの工業的生成光学密度の測定
Methylomonas培養の成長を、Shimazu160UUV/Visデュアルビーム、記録分光光度計を用いて600nmで監視した。基準細胞内でブランクとして水を使用した。1.0未満の吸光度値を維持するべく、脱イオン水で培養標本を適切に希釈した。
【0273】
乾燥細胞重量の決定
真空ろ過により予め秤量した0.2μgのフィルター(GTTP型、Millipore, Bedford, MA)20mLのMethylomonas細胞培養をろ過した。バイオマス標本のろ過の後、フィルタを10mLの脱イオン水で洗浄し、乾燥するまで真空下でろ過した。次にフィルタを24〜48時間、95℃で乾燥用オーブン内に置いた。24時間後に、フィルターを室温まで冷却し、再度秤量した。フィルタ重量を記録した後、フィルタを乾燥用オーブンに戻し、重量損失のさらなる変化が全く記録されなくなるまで、さまざまな時間的間隔でプロセスを反復した。上述の手順により接種に先立ち20mLの発酵培地をろ過することによって、乾燥細胞重量(DCW測定に対する培地の寄与が得られた。乾燥細胞重量を以下の公式により計算する。
【0274】
【数1】
【0275】
アンモニア濃度決定
アンモニア分析用の3mLの培養標本を、発酵装置から取り、10分間10,000×g及び4℃で遠心分離に付した。その後、0.2μmの注射器フィルタ(Gelman Lab., AnnArbor, MI)を通して上清をろ過し、分析するまで−20℃に置いた。発酵ブロス中のアンモニア濃度を、100mAのSRS電流で導電性モードで動作するED40電気化学検出器及びAS3500オートサンプラー、GP40勾配ポンプの備わったDionex System500イオンクロマトグラフ(Dionex, Sunnyvale, CA)を用いて、イオンクロマトグラフィにより決定した。アンモニアの分離を、DionexCG12AガードカラムのついたDionexCS12Aカラムを用いて達成した。カラム及び化学検出セルを35℃に維持した。1mL min―1の流量で流動相として22mMのH2SO4を用いて、イソフラティク溶離条件を利用した。発酵ブロス中のアンモニアの存在を、NH4Cl標準との保持時間比較により確認した。発酵ブロス中のアンモニア濃度を、先に決定されたNH4Cl標準較正曲線との面積計測の比較により決定した。必要な場合、標本を、較正曲線の境界内に来るように脱イオン水で希釈した。
【0276】
二酸化炭素放出速度(CER)の決定
発酵装置からの出口気体流中の二酸化炭素濃度を、TCD検出器及びHP19091P−Q04,32m×32μm×20μmのジビュルベンゼン/スチレン多孔質重合体毛管カラムの備わったHewlett Packard 5890ガスクロマトグラフ(Hewlett Packard, Avondale, PA)を用いて、ガスクロマトグラフィ(GC)により決定した。気体標本を、そのサイドアームブチルゴムストッパで覆われているポリプロピレン「T」から成る標本ポートを通して、出口気体流から抜き出した。Hamilton (Reno, NV)気密性GC注射器でゴムストッパに穿孔することにより、200μLの標本を収集した。出口気体で最低4回注射器の筒部をパージした後、標本を収集した。標本収集の直後に、注射器内の体積を100μLに調整し、割れ目のない射出ポートを通してカラム上に射出した。CO2決定のために用いたクロマトグラフィ条件は、以下の通りであった:射出器温度(100C);オーブン温度(35C);検出器温度(140C);キャリヤガス(ヘリウム);溶離プロフィール(等温);カラムヘッド圧力(15psig)。出口気体流内にがCO2が存在することは、純粋成分CO2標準との保持時間比較により確認された。面積計測を先に決定したCO2標準較正曲線と比較することにより、出口気体流内のCO2濃度を決定した。0.1%(v/v)〜10%(v/v)の濃度範囲内でCO2を含有する標準ガスボンベ(Robert’s Oxygen, Kennett Square, PA)を用いて、較正曲線を生成した。
【0277】
二酸化炭素放出速度を以下の公式から計算した:
【0278】
【数2】
【0279】
上述の等式中、発酵装置からの出口圧力は、大気圧に等しいものと仮定した。個々のメタン及び空気流量の和から、入口気体流量を計算した。Rは、理想気体定数=82.06cm3 atm mol−1k−1である。出口気体流の絶対温度を以下の式から計算した:T(K)=t(℃)+273.15。なお式中Tは、K単位の絶対温度であり、tは℃単位の出口気体温度であり、室温と等しいものと仮定された。
【0280】
高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によるβ−カロテンの抽出と決定
10分間10,000×g及び4℃で、Methylomonas培養15〜30mLを遠心分離した。上清を傾潟し、細胞ぺレットを、−20℃で凍結させた。凍結した細胞ペレットを室温で解凍し、これに対し2.5mLのアセトンを添加した。1分間標本を渦巻運動に付し、10分間10,000×g及び4℃で遠心分離に付す前にさらに30分間これを室温に放置した。アセトン層を傾潟させ、取っておいた。その後、ペレットをさらに2.5mLのアセトンで再度抽出し、遠心分離に付し、2つのアセトンプールを組合わせた。細胞ペレットを目視することによって、全てのβ−カロテンが、2回めの抽出後に細胞から除去されたことがわかった。アセトンプールを次に、N2流の下で1mLまで濃縮し、0.45μmのフィルタを通してろ過し、HPLCにより分析した。
【0281】
型式125の三成分ポンプシステム、型式168のダイオードアレイ検出器及び型式508のオートサンプラーの備わったBeckman System Gold HPLC(Beckman Coulter, Fullerton, CA)を用いて、β−カロテンを含むアセトン標本を分析した。100μLの濃縮アセトン抽出物を、HP Lichro CART 125−4、C8逆相HPLCカラム(Hewlett Packard, Avondale, PA)上に注入した。Beckman Goldソフトウェアを用いてピークを積分した。保持時間及びスペクトル比較により、220〜600nmの波長範囲内のβ−カロテン純粋成分標準とのピーク同一性が確認された。アセトン抽出物中のβ−カロテンの保持時間及びスペクトルプロフィールは、純粋成分β−カロテン標準から得たものと正確に一致した。アセトン抽出物内のβ−カロテン濃度は、以下で記述するような以前に決定された較正曲線との面積計測の比較により数量化された。計量にあたっては、アセトン中のβ−カロテンの最大吸光度波長に対応する450nmの波長を使用した。
【0282】
β−カロテンの逆相分離のためには、メタノール及び水から成る流動相を使用した。β−カロテンの分離は、メタノール100%まで11.5分にわたり線形的に変化するメタノール60%及び水40%の線形勾配を用いて達成した。利用されたクロマトグラフィ条件下で、β−カロテンからα−カロテンの分解を達成することはできなかった。
【0283】
100mLのアセトン中25mgのβ−カロテン(純度96%,Spectrum Chemical Inc., New Brunswick, NJ)を溶解させることにより、原液からβ−カロテン較正曲線を調製した。この原液の適切な希釈液を、アセトン抽出物内で遭遇するβ−カロテン濃度を網羅するように作った。この要領で構築した較正曲線は、検査対象の濃度範囲全体にわたり線形であった。
【0284】
Methylomonas 16aの発酵
2リットルの実用容積をもつ3リットル入りの垂直撹拌型タンク発酵装置(B. Braun Biotch Inc., Allentown, PA)を用いて、窒素制限下のfed−batch発酵として、発酵を実施した。発酵装置には、2つの6枚ブレード付きRushtonタービン及びpH、温度及び溶解酸素プローブ用付属品の備わったステンレス鋼製ヘッドプレート、pH調節剤用入口、液体標本の抜き取り用サンプリングチューブ及び結合器が備わっていた。発酵措置からの出口気体ラインは、メタン、O2及びCO2濃度のGC分析のために出口気体流をサンプリングするための分離したポートを収納していた。発酵装置は、外部熱交換器を用いることで30℃で一定に温度が維持された状態で、温度制御用に被覆されていた。撹拌を870〜885rpmの範囲内で維持した。2.5MのNaOH及び2MのH2SO4の使用を通して6.95で発酵のpHを一定に維持した。
【0285】
発酵中、唯一の炭素及びエネルギー供給源としてメタンを使用した。発酵装置までのメタンの流量を、Brooks (Brooks Instrument, Hatfield, PA)質量流量制御装置を用いて、計測した。空気流量を調節するためには、別の質量流量制御装置を使用した。発酵装置に入る前に、個々のメタン及び空気流を混合し、0.2μmのインラインフィルタ(Millipou, Bedford, MA)を通してろ過し、入口気体流中23%(v/v)のメタン濃度と260mL min−1(0.13v/v/分)の合計気体流量を得た。気体を、多孔管を通して下部Rushtonタービンより3cm下のところで培地に送り出した。発酵のためには、表14内に示された組成の最少塩培地2リットルを使用した。発泡を抑制するため、殺菌に先立ち800ppmという最終濃度まで、シリコーン消泡剤を添加した。接種に先立ち、発酵装置及びその内容物を、121℃及び15psiaで1時間オートクレーブ処理することによって殺菌した。ひとたび培地を冷却したならば、25mgのmL−1カナマイシン原液4mLを発酵培地に添加して、発酵中プラスミド選択圧力を維持した。
【0286】
【表27】
【0287】
プラスミドpCRT1を含有する1mlの凍結Methylomonas 16aを用いて、ブチルラバー製ストッパ及びアルミニウム製クリンプキャップで密封された500mL入りのWheatonボトル内で50μg mL−1のカナマイシンを含有する無菌0.5×最少塩培地の100mLの培養の接種を行なった。25%(v/v)という有効高内の最終メタン濃度を与えるため21ゲージの針が取りつけられた60mLの注射器でラバーストッパに穿孔することにより、培養にメタンを添加した。接種された培地を、制御された環境の回転振とう機内で30℃で約48時間振とうした。細胞成長が飽和に達した時点で、この培養5mLを用いて、上述のとおりに2100mLの培養を接種した。培養の光学密度が0.8に達した時点で、各培養を60mL用いて発酵装置に接種を行なった。
【0288】
生体の成長期の一機能としてカロテノイド生成を監視するため、発酵中に4〜5時間間隔で標本を採取した。培養の特異的成長速度は0.13時−1であった。培養が発酵中に酸素制限を受けた状態となるのを妨げるため、空気又はメタン流量の調整は全く利用しなかった。さらに、細胞成長の不在下におけるβ−カロテン生成を探究するべく、培養がひとたび成長を止めた時点で、通気及びメタン添加を続けた。発酵培地からのアンモニアの消滅及びCERの減少の観察により、光学密度の変化が全く観察されない場合に成長停止が示された。細胞のβ−カロテン含有量、乾燥細胞重量、アンモニアレベル及び二酸化炭素放出速度は、前述の通りに決定した。結果は、下表15中に記されている。
【0289】
【表28】
【0290】
発酵46時間後に、β−カロテン力価は、乾燥重量ベースで7,710ppmの最大力価に達した。この時点の直後に、溶解酸素濃度によりわかるように、発酵装置が酸素制限された状態となるにつれて、β−カロテン力価は実質的に降下した。かくして、高いβ−カロテン力価の維持が、発酵培地内に存在する高い酸素張力により左右されるということが明らかである。おそらくは、発酵中の溶解酸素濃度のより優れた制御を通して、ここで報告されたものよりも高いβ−カロテン力価に達することができると思われる。最大β−カロテン生成力は、620μg gDCW−1hr−1及び886μg L−1 hr−1と計算された。さらに、β−カロテン濃度は、静止期へと細胞が遷移するにつれておよそ4400ppmで安定化することがわかった。β−カロテン力価は、成長関連すると共に、酸素張力により左右されることが明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】上部イソプレン経路及び下部カロテノイド生合成経路を例示している。
【図2】Methylomonas 16a内で発現された通りの、主要炭素経路遺伝子についてのマイクロアレイ発現データを提供している。
【図3】プラスミドpcrt1及びそれを含有するMethylomonas内でのβ−カロテンの合成を確認するHPLCスペクトルを示している。
【図4】プラスミドpcrt3及びそれを含有するMethylomonas内でのゼアキサンチン及びそのモノ及びジ−グルコシドを確認するHPLCスペクトルを示している。
【図5】プラスミドpcrt4及びそれを含有するMethylomonas内でのゼアキサンチン及びそのモノ及びジ−グルコシドの合成を確認するHPLCスペクトルを示している。
【図6】プラスミドpcrt4.1及びそれを含有するMethylomonas内でのカンタキサンチン及びカンタキサンチンの合成を確認するHPLCスペクトルを示している。
【図7】プラスミドpTJS75::dxs:dxi:lacZ:Tn5Kn及びそれを含有するMethylomonas内の未変性カロテノイドの製造を示している。さらに構成体pcrt4.1も示されている。
本発明は、2000年9月1日に提出されたUS暫定特許出願第60/229,907号の恩典及び2000年9月1日に提出されたUS暫定特許出願第60/229,858号の恩典を請求するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、分子生物学及び微生物学の分野に関する。より特定的には、本発明は、唯一の炭素供給源として単一炭素基質を代謝する微生物からのカロテノイド化合物の生成を記述している。
【0003】
発明の背景
カロテノイドは、薄黄色からオレンジ乃至、深紅までのピグメントカラーを生成する最も広く分布した構造的に多様なクラスの天然色素の1つである。カロテン生成組織の目を引く例としては、ニンジン、トマト、赤トウガラシ及びスイセン及びマリゴールドがある。カロテノイドは、全ての光合成生体ならびに細菌及び真菌によって合成される。これらの色素は、光合成、栄養及び光酸化損傷に対する保護において重要な機能をもつ。例えば、動物は、カロテノイドを合成する能力をもたないが、その代りこれらの栄養的に重要な化合物をその食物源を通して獲得しなければならない。構造的には、カロテノイドは、イソプレン生合成経路及びその5炭素汎用イソプレン構築ブロック、イソペンテニルピロホスフェート(IPP)から誘導された40−炭素(C40)のテルペノイドである。この生合成経路と、イソペンテニルピロホスフェートの形成を導く上部イソプレン経路及びイソペンテニルピロホスフェートを長いC30及びC40カロテン生成化合物へと変換する下部カロテノイド生合成経路という2つの部分に分割することができる。この経路の両方の部分共が、図1に示されている。
【0004】
その他の数多くのカロテノイド化合物を生成するべく、長いC30及びC40化合物の分子内転換を可能にするさまざまなその他のCrt 遺伝子が知られている。特異的なカロテノイドの独特の吸収特性及び色を決定するのは、炭素バックボーンの不飽和、接合及び異性化である。Armstrong (J. Bact. 176:4795−4802(1994); Annu. Rev. Microbiol 51:629−659(1997)といったいくつかの論評が、カロテノイド色素生合成の遺伝学について論述している。
【0005】
カロテノイド遺伝子の利用可能性に関しては、GenBankといったようなパブリックドメインデータベースが、数多くの生体から単離された配列を収納している。例えば、現在19の異なる生体から単離されたさまざまなcrtE遺伝子に関する26のGen Bank受入れ番号が存在する。比較的遭遇する頻度の少ないcrtZ遺伝子は、6つのGen Bank受入れ番号をもち、各遺伝子が異なる生体から単離されている。同様に広範なカロテノイド遺伝子セレクションが、上述の遺伝子の各々について入手可能である。
【0006】
カロテノイド色素生合成の遺伝学は、Erwinaとして正式に知られているPantoea属のグラム陰性色素性細菌において、きわめて良く研究されてきた。E. herbicola EHO−10(ATCC39368)及び E. uredovora 20D3(ATCC19321)の両方において、crt遺伝子は、crtZ及びcrtEXYIBという2つの遺伝子単位においてクラスタ化されている(米国特許第5,656,472号;同第5,5545,816号;同第5,530,189号;同第5,530,188号;同第5,429,939号)。オペロン構造の類似性にも関わらず、E.uredovora 及び E.herbicolaのDNA配列は、DNA−DNAハイブリダイゼーションによる相同性を全く示していない。(米国特許第5,429,939号)。
【0007】
自然界では600以上の異なるカロテノイドが同定されてきたが、食品着色料、動物飼料、医薬品及び化粧品のために工業的に使用されているのはごくわずかでしかない。現在、工業目的で使用されているカロテノイドの大部分は、化学合成により生成されている。しかしながら、これらの化合物は、化学的に作るのが非常にむずかしい(Neils and Leenheer, Appl. Bacteriol. 70;181−191(1991))。天然カロテノイドは、植物材料の抽出又は微生物合成のいずれかにより得ることができる。現在のところ、商業用カロテノイド生成のために広く用いられているのはわずかな植物にすぎない。しかしながら、これらの植物におけるカロテノイド合成の生産力は比較的低く、結果として得られるカロテノイドは非常に高価である。
【0008】
微生物供給源から一定数のカロテノイドが生成されてきた。例えば、リコペンは、遺伝子工学処理されたE.coli及びCandiautilisから生成されてきた(Farmer W.R. and J.C. Liao,(2001)Biotechnol. Prog. 17:57−61;Wang C.et al.,(2000)Biotechnol Prog.16:922−926;Misawa, N and H.Shimada.(1998)、J.Biotechnol. 59:169−181;Shimada, H.et al. 1998.Appl. Environm. Microbiol.64:2676−2680)。β−カロテンは、E.coli, Candia utilis 及び Pfaffia rhodozymaから生成されてきた(Albrecht, M. et al.,(1999).Biotechnol. Lett. 21:791−795;Miura, Y. et al.,1998.Appl. Environm. Microbiol.64:1226−1229;米国特許第5,691,190号)。ゼアキサンチンは、E.coli及びCandia utilis から生成されてきた(Albrecht, M.et al.,(1999).Biotechnol. Lett. 21:791−795;Miura, Y. et al., 1998.Appl. Environm. Microbiol.64:1226−1229)。アスタキサンチンは、E.coli及び Pfaffia rhodozymaから生成された(米国特許第5,466,599号;同第6,015,684号;同第5,182,208号;同第5,972,642号)。
【0009】
付加的には、カロテノイド生合成経路のさまざまな要素をコードする遺伝子がクローニングされ、さまざまな微生物内で発現されてきた。例えば、Erwinia herbicola から単離されたリコペンシクラーゼ、ゲラニルゲラニルピロホスフェートシンターゼ及びフィトエンデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が、E.coli内で組換えで発現されてきた(米国特許第5656472号;同第5545816号;同第5530189号;同第5530188号)。同様にして、Erwinia uredovora から単離された、カロテノイド生成物ゲラニルゲラニルピロホスフェート、フィトエン、リコペン、β−カロテン及びゼアキサンチン−ジグルコシドをコードする遺伝子が、E.coli Zymomonas mobilis及びSaccharomyces cerevisiaeの中で発現されてきた(米国特許第5429939号)。同様にして、Flavobacteriumから単離されたカロテノイド生合成遺伝子crtE(1)、crtB(3)、crtI(5)、crtY(7)、及びcrtZは、組換えにより発現された(米国特許第6124113号)。
【0010】
カロテノイドを生成する上述の方法は有用であるものの、これらの方法には、低収量及び高価な供給原料への依存という欠点がある。安価な供給原料から、さらに高い収量のカロテノイドを生成する方法が必要とされている。
【0011】
唯一のエネルギー源として単一炭素基質を利用する一定数の微生物が存在する。これらの基質には、メタン、メタノール、蟻酸塩メチル化アミン及びチオールそして、炭素−炭素結合が全く存在しない一般にかなり安価であるさまざまなその他の遺伝炭素化合物が内含される。これらの生体は、メチロトローフと呼ばれ、ここでは「C1代謝体」と呼ぶ。これらの生体は、エネルギー及びバイオマスの唯一の供給源として炭素−炭素結合が存在しない炭素基質を使用する能力によって特徴づけされる。メチロトローフのサブセットは、唯一のエネルギー源としてメタンを利用する独特の能力をもつメタノトローフである。これらの生体が多数知られてはいるものの、これらの微生物のうち、材料の合成のための工業的プロセスにうまく役立てられたものはほとんどない。単一炭素基質は、費用効果性の高いエネルギー源であるものの、これらの微生物の遺伝子操作がむずかしいこと及びその遺伝子メカニズムについての情報不足のため、主として未変性生成物の合成に対するその使用は制限されてきた。例えば、メタンの生体内変換の商業的応用は、歴史的に、大きく次の3つのカテゴリに入るものであった;すなわち 1)単一細胞タンパク質の生成(Sharpe D.H. Bio Protein Manufacture 1989.応用科学工業技術中のEllis Horwood シリーズ、New York:Halsteid Press)。(Villadsen, John, Recent Trends Chem, React. Eng., [Proc.Int.Chem.React.Eng. Conf.], 2nd(1987), Volume2、320−33、Editor(s):Kulkami, B.D.;Mashelkar, R.A.;Sharma, M.M.Publisher;Wiley East., New Delhi, India;Naguib, M., Proc. OAPEC Symp. Petroprotein, [Pap.](1980), Meeting Date1979、253−77 Publisher:Organ. Arab Pet. Exporting Countries, Kuwait, Kuwait.);2)化学物質の製造アルケンのエポキシ化(米国特許第4348476号);及び3)塩素化された汚染物質の生分解(Tsien et al., Gas, Oil, Coal, Environ. Biotechnol.2,[Pap.Int.IGT Symp. Gas, Oil, Coal, Environ. Biotechnol.], 2nd(1990)、83−104.Editor(s):Akin, Cavit;Smith, Jared. Publisher: lnst. Gas Technol., Chicago, IL;WO 9633821;Merkley et al.,Biorem. Recalcitrant Org., [Pap.lnt. In Situ On−Site Bioreclam, Symp.],3rd(1995)、165−74.Editor(s); Hinchee, Robert E;Anderson, Daniel B;Hoeppel, Ronald E.Publisher:Battelle Press, Columbus, Ohio.:Meyer et al., Microb. Releases(1993)、2(1)、11−22)。ここでさえ、メタン生体内変換の商業的成功は、低い生成物収量、生成物の毒性及びプロセスに付随する生成物を生成するのに必要とされる大量の細胞集団に起因して、アルケンのエポキシ化に制限されていた。
【0012】
メチロトローフ生体の商業的有用性は、Lidstrom及びStirling(Annu. Rev. Microbiol.44:27−58(1990))の中で再考されている。メチロトローフ生体及びその酵素の応用が関与する数多くの研究努力にもかかわらず、商業的成功はほとんど詳細に記録されたことがない(Lidstrom及びStirling, supra, Table3)。大部分のケースにおいて、生体は、その他の充分に開発された宿主系統に比べて利点がほんとどないということが発見されてきた。メタノールは、その他のより伝統的な炭水化物原料に比べ、経済的にも品質的にも利点を提供するべき供給原料として頻繁に引合いに出されるが、これまでのところ、公表された研究の中でこの期待が有意に検証されたことはない。
【0013】
単一炭素代謝体の最も一般的なクラスは、メタノトローフである。メタノトローフ細菌は、唯一の炭素及びエネルギー源としてメタンを使用するその能力により定義づけられる。メタンモノオキシゲナーゼは、メタン活性における第1工程のために必要とされる酵素であり、この反応の生成物はメタノールである(Murrell et al., Arch. Microbiol.(2000)、173(5−6)、325−332)。この反応は、大気温及び大気圧下で起こるが、一方、メタンからメタノールへの化学的変換には、何百度もの温度と高い圧力が必要である(Grigoryan, E.A., Kinet. Catal.(1999)、40(3)、350−363;WO2000007718;米国特許第5,750,821号)。メタンの生体内変換が、潜在的に比類の無い価値あるプロセスであるのは、この周囲条件下でメタンを変換する能力とメタンの豊富さのお陰である。
【0014】
数多くのメタノトローフは、これらの生体がその他の非内因性イソプレノイド化合物を合成できるようにする固有のイソプレノイド経路を含有している。メタノトローフは、エネルギー源として1炭素基質(メタン又はメタノール)を使用できることから、低コストでカロテノイドを生成することが可能である。
【0015】
メチロトローフ生体及びカロテノイドに関する当該分野における現在の知識から、以下のような結論が導かれる。まず第1に、豊富に利用可能なC1源から強大な商業的誘因が生じており、これは、C1生体のための供給原料として使用でき、その他のより伝統的な炭水化物原料に比べて経済的にも品質的にも利点を提供するはずである。第2に、カロテン生成生合成遺伝子を有する生体、これらの遺伝子の機能、及びカロテン生成前駆体分子を生成する上部イソプレン経路に関する豊富な知識が存在している。最後に、それ自体色素性で、かくして必要なカロテノイド生合成経路の部分を有する数多くのメチロトローフ生体が当該技術分野に存在している。
【0016】
これらの利用可能な手段にもかかわらず、当該技術は、大規模な商業的価値のため選択された特異的カロテノイドを作るように遺伝子工学処理されたいかなるC1代謝体も明らかにしていない。より広範囲の化学物質の生成に対するこれらの生体の有用性は、メタノトローフの成長速度が比較的緩慢であること、メタンの代用基質としてメタノールの使用を許容する能力が制限されていること、遺伝子工学処理がむずかしいこと、メタノトローフに存在する多数の炭素同化経路の役割についての知識が乏しいこと、メタンといったような完全に飽和した基質の酵素需要に起因してコストが潜在的に高いこと、などを含めた制限条件によって制約を受ける、などの仮説が立てられている。従って、解決すべき課題は、その炭素及びエネルギー源としてC1化合物を利用する生体を用いて、カロテノイド化合物の微生物製造費用効果性の高い方法を提供することにある。
【0017】
出願人らは、カロテノイド化合物製造の唯一の炭素源として単一炭素基質を使用することのできる微生物を工学処理することによって、上述の課題を解決した。
【0018】
発明の要約
本発明は、(a)(i)適切なレベルのイソペンテニルピロホスフェート;及び
(ii)適切な調節配列の制御下でカロテノイド生合成経路内で酵素をコードする少なくとも1つの単離された核酸分子を含む、形質転換されたC1代謝性宿主細胞を提供する工程;
(b)適切な成長条件下で工程(a)の宿主細胞を有効量のC1炭素基質と接触させ、かくしてカロテノイド化合物を生成させる工程、
を含んで成る、カロテノイド化合物の製造方法に関する。
【0019】
本発明の好ましいC1炭素基質は、メタン、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸、メチル化アミン、メチル化チオール及び二酸化炭素よりなる群から選択される。好ましいC1代謝体は、メチロトローフ及びメタノトローフである。特に好ましいC1代謝体は、ピロホスフェート依存性ホスホフルクトキナーゼ酵素をコードする遺伝子を含む機能的エムデン・マイヤーホフ経路を含むものである。場合により、好ましい宿主は、フルクトースビスホスフェートアルドラーゼ酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子を含むことができる。
【0020】
適切なレベルのイソペンテニルピロホスフェートは、宿主に対し内因性のものであってもよいし、或いは、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(Dxs)、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(Dxr)、2C−メチル−d−エリスリトールシチジリルトランスフェラーゼ(IspD)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ(IspE)、2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼ(IspF)、CTPシンターゼ(PyrG)及びLytBといったような非相同な形で導入された上部経路イソプレノイド遺伝子により提供されてもよい。
【0021】
1つの代替的実施形態においては、本発明は、形質転換されたC1代謝性宿主の中でのカロテノイド生成物の過剰生成方法において:
(a)(i)適切なレベルのイソペンテニルピロホスフェート及び
(ii)適切な調節配列の制御下でカロテノイド生合成経路内で酵素をコードする少なくとも1つの単離された核酸分子及び
(iii)1)D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(Dxs)、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(Dxr)、2C−メチル−d−エリスリトールシチジリルトランスフェラーゼ(IspD)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ(IspE)、2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェ−トシンターゼ(IspF)、CTPシンターゼ(PyrG)及びLytBよりなる群から選択される酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子の多重のコピー、又は
2) 強力なプロモータに操作可能にリンクされたD−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(Dxs)、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(Dxr)、2C−メチル−d−エリスリトールシチジリルトランスフェラーゼ(IspD)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ(IspE)、2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼ(IspF)、CTPシンターゼ(PyrG)及びLytBよりなる群から選択される酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子、のいずれか、
を含む、形質転換されたC1代謝性宿主細胞を提供する工程;
(b)適切な成長条件下で工程(a)の宿主細胞を有効量のC1炭素基質と接触させ、かくしてカロテノイド化合物を過剰生成させる工程、
を含んで成る方法を提供している。
【0022】
配列の記述及び生物寄託物
以下の詳細な説明及び本出願の一部を成す添付の配列説明から本発明をより完全に理解することができる。
【0023】
以下の配列は、37.C.F.R 1,821−1,825(「ヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列の開示を含む特許出願についての必要条件−配列規則」)に適合し、世界知的所有権機構(WIPO)規格ST25(1998)及びEPO及びPCTの配列表必要条件(規則5.2及び49.2(a−bis)及び行政指令の第208節及び補遺C)と一貫性をもつものである。ヌクレオチド及びアミノ酸配列データのために使用される符号及び書式は、37.C.F.R. §1、822の中で記されている規則に適合する。
【0024】
配列表の配列番号1−28は、表1に固定されている通りの全長遺伝子又はタンパク質である。
【0025】
【表1】
【0026】
配列表の配列番号39−40は、HMPSプロモータのための増幅プライマである。
【0027】
配列表の配列番号41−42は、Rhodococcus 由来のcrtO遺伝子のための増幅プライマである。
【0028】
配列表の配列番号43及び44は、Pantoea stewartiiのcrtクラスタを増幅するために使用されるプライマ配列である。
【0029】
配列表の配列番号45−47は、Rhodococcus erythropolis AN12の16s rRNAを増幅するために使用されるライマ配列である。
【0030】
配列表の配列番号48及び49は、crtO遺伝子を増幅するのに使用されるプライマ配列である。
【0031】
配列表の配列番号50〜54は、HMPS遺伝子のためのプロモータ配列及びそのプロモータを増幅するために使用されるプライマである。
【0032】
配列表の配列番号55及び56は、dxs遺伝子を増幅するために使用されるプライマ配列である。
【0033】
配列表の配列番号57及び58は、dxr遺伝子を増幅するために使用されるプライマ配列である。
【0034】
配列表の配列番号59及び60は、LytB遺伝子を増幅するために使用されるプライマ配列である。
【0035】
特許手段上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の条項に基づき、出願人は、以下の生物寄託を行なった。
【0036】
【表2】
【0037】
発明の詳細な説明
当該方法は、さまざまなカロテノイド化合物を生成する能力をもつ組換え型生体の創造にとって有用である。カロテノイド生合成経路に関与するさまざまな酵素をコードする該酸フラグメントが、カロテノイド化合物製造の唯一の炭素源として単一炭素基質を用いる微生物へとクローニングされてきた。
【0038】
カロテノイド化合物は化学的に作るのが非常にむずかしいことから、カロテノイド化合物の微生物による生成には一般的に実用性がある(Nelis 及びLeenheer, Apple. Bacteriol. 70;181−191(1991))。大部分のカロテノイドは、強い色をもち、天然の色素又は染料として考えることができる。さらに、数多くのカロテノイドは、効力の高い酸化防止特性を有し、かくして食物中にこれらを内含することは、健康に良いと考えられている。周知の例は、β−カロテン及びアスタキサンチンである。付加的には、カロテノイドは、水産養殖において必要とされる要素である。サケ及びエビの水産養殖は、これらの生体の価値にとってカロテノイドが非常に重要であることから、本発明の特に有用な利用分野である。(F.Shahidi, J.A.Brown,「海産物及び水産養殖におけるカロテノイド色素:食品における非常に重要な見直し」Science 38(11:1−67(1998))。最後に、カロテノイドは、ステロイド、香味料及び芳香料及び潜在的な電気光学的利用分野をもつ化合物の合成において中間体として有用である。
【0039】
以下の開示は、変換のための適切なC1代謝性微生物の選択及び高収量でのさまざまなカロテノイド化合物の生成についての詳細な説明を提供している。
【0040】
この開示では、数多くの用語及び略号が使用されている。以下にその定義を記す。
【0041】
「エムデン・マイヤーホフ経路」という語は、グルコース及びフルクトースといったようなヘキソースからグリセルアルデヒド3ホスフェート、ジヒドロキシアセトンホスフェート、ホスホフェノールピルビン酸及びピルビン酸塩といったような重要な細胞3炭素中間体への転換のための一連の生化学反応を意味する。これらの反応は、標準的に、ATPの形での生化学的に有用なエネルギーの純収量を伴って進行する。エムデン−マイヤーホフ経路に独特の主要な酵素は、ホスホフルクトキナーゼとフルクトース−1,6−ビスホスフェートアルドラーゼである。
【0042】
「エントナー・ドゥドロフ経路」というのは、グルコース又はフルクトースといったようなヘキトースを生化学的に有用なエネルギーのいかなる純生産も無く重要な3炭素細胞中間体ピルビン酸塩及びグリセルアルデヒド−3ホスフェートへと転換する一連の生化学的反応を意味する。エントナー・ドウドロフ経路に独特の主要な酵素は、6−ホスホグルコネートデヒドラターゼ及びケトデオキシホスホグルコネートアルドラーゼである。
【0043】
経路内の遺伝子の存在に関連する「診断」という語は、その活性をもつ遺伝子が同定されるその経路の存在の証拠を意味する。本発明において、ピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子は、エムデン・マイヤーホフ炭素経路の存在についての「診断」であり、ケトデオキシホスホグルコネートアルドラーゼをコードする遺伝子の存在は、エントナー・ドウドロフ炭素経路の存在についての「診断」である。
【0044】
「収量」という語は、ここでは代謝された炭素基質1グラムあたりに生成される細胞集団の量として定義される。
【0045】
「炭素転換効率」というのは、細胞集団内にどれほどの炭素が同化されるかの尺度であり、CH2O0.5N0.25のバイオマス組成物を仮定して計算される。
【0046】
「C1炭素基質」という語は、炭素−炭素結合が存在しないあらゆる炭素含有分子を意味する。その例としては、メタン、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸、蟻酸塩、メチル化アミン(例、モノ−、ジ、及びトリ−メチルアミン)、メチル化チオール及び二酸化炭素がある。
【0047】
「C1代謝体」という語は、エネルギー及びバイオマスの唯一の供給源として、単一炭素基質を使用する能力をもつ微生物を意味する。C1代謝体は、標準的にはメチロトローフ及び/又はメタノトローフとなる。
【0048】
「メチロトローフ」という語は、炭素−炭素結合を含まない有機化合物を酸化させる能力をもつ生体を意味する。メチロトローフがCH4を酸化することができる場合メチロトローフは同様にメタノトローフでもある。
【0049】
「メタノトローフ」という語は、基質としてメタンを利用する能力をもつ原核生物を意味する。メタンから二酸化炭素への完全酸化は、好気性分解経路によって起こる。本発明において有用なメタノトローフの標準的な例としては、Methylomonas, Methylobacter, Methylococcus及びMethylosinusが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0050】
「高成長メタノトローフ細菌菌株」は、代謝されたC1基質のグラムあたりの細胞集団収量を結果としてもたらす機能的エムデン・マイヤーホフ炭素フラックス経路を有する唯一の炭素及びエネルギー源としてメタン又はメタノールを用いて成長する能力をもつ細菌を意味する。本書に記述されている特異的「高成長メタノトローフ細菌菌株」は、互換性ある形で使用される語である「Methylomonas16a」又は「16a」と呼ばれる。
【0051】
「Methylomonas16a」及び「Methylomonas16a sp」という語は、互換性ある形で用いられ、本発明で使用されるMethylomonas菌株を意味する。
【0052】
「イソプレノイド化合物」は、イソペンテニルピロホスフェート(IPP)で始まる経路を介して誘導され、5、10、15、20、30又は40炭素の長さでありうるイソプレン単位の頭−尾縮合によって形成されるあらゆる化合物を意味する。「イソプレノイド」という語は、標準的に強い光吸収特性をもつイソプレノイド化合物の1クラスを意味する。
【0053】
「上部イソプレン経路」という語は、(1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼをコードする)dxs 遺伝子、(1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼをコードする)dxr 遺伝子(ygbPとしても知られている2C−メチル−D−エリトリトールシチジリルトランスフェラーゼ酵素をコードする)「ispD」遺伝子、(ychBとしても知られている4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼをコードする)「ispE」遺伝子、(ygbBとしても知られている2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼをコードする)「ispF」遺伝子;(CTPシンターゼをコードする)「pyrG」遺伝子;ジホスフェートジメチルアリルの形成に関与する「lytB」遺伝子;及びイソプレノイド経路内での2−C−メチル−D−エリスリトール4−ホスフェートの合成に関与するgcpE遺伝子を含む、イソプレノイド生合成経路に結びつけられた遺伝子及び遺伝子生成物のいずれかを意味する。
【0054】
「Dxs」という語は、dxs遺伝子によってコードされる1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ酵素を意味する。
【0055】
「Dxr」という語は、1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ酵素を意味する。
【0056】
「YgbP」又は「IspD」という語は、ygbP又はispD 遺伝子によってコードされる2C−メチル−D−エリスリトール−シチジリルトランスフェラーゼ酵素を意味する。ygbP又はispDといった遺伝子の名前は、本出願では互換性ある形で使用されている。遺伝子生成物の名前、YgbP又はIspDは、本出願中、互換性ある形で使用される。
【0057】
「YchB」及び「IspE」という語は、ychB又はispE 遺伝子によりコードされる4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ酵素を意味する。ychB又はispEという遺伝子の名前は、本出願では互換性ある形で用いられている。遺伝子生成物の名前、YchB又はIspEは、本出願中、互換性ある形で使用される。
【0058】
「YgbB」及び「IspF」という語は、ygbB又はispF 遺伝子によりコードされる2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼ酵素を意味する。ygbB又はispFという遺伝子の名前は、本出願では互換性ある形で用いられている。遺伝子生成物の名前、YgbB又はIspFは、本出願中、互換性ある形で使用される。
【0059】
「PyrG」という語は、pyrG遺伝子によりコードされるCTPシンターゼ酵素を意味する。
【0060】
「IspA」という語は、IspA遺伝子によりコードされるプレニルトランスフェラーゼファミリーの1つとしてのゲラニルトランスフェラーゼ又はファルネシルジホスフェートシンターゼ酵素を意味する。
【0061】
「LytB」という語は、ISP経路内でのジメチルアリルピロホスフェートの形成において一つの役割を果たし、LytB 遺伝子によりコードされるタンパク質を意味する。
【0062】
「gcpE」という語は、ISP内での2−C−メチル−D−エリスリトール−4−ホスフェートの形成において1つの役割を果たすタンパク質を意味する。(Altincicek et al., J.Bacteriol.(2001)、183(8)、2411−2416;Campos et al.,FEBS Lett.(2001)、488(3)、170−173)。
【0063】
「下部カロテノイド生合成経路」という語は、フィトエン(その合成は、カロテノイドの生合成に独特の第1工程を表わす)の即時合成又は後続反応に関与するイソプレノイト生成経路に結びつけられる以下の遺伝子及び遺伝子生成物のいずれかを意味する。これらの遺伝子及び遺伝子生成物には、(ゲラニルトランスフェラーゼ又はファルネシルジホスフェートシンターゼをコードする)「ispA」遺伝子、(ジアポフィトエンデヒドロゲナーゼをコードする)「ctrN」及び「ctrN1」遺伝子、(ゲラニルゲラニルピロホスフェートシンターゼをコードする)「crtE」遺伝子、(ゼアキサンチングルコシルトランスフェラーゼをコードする)「crtX」遺伝子、(リコペンシクラーゼをコードする)「crtY」遺伝子、(フィトエンデサチュラーゼをコードする)「crt1」遺伝子、(フィトエンシンターゼをコードする)「crtB」遺伝子、(β−カロテンヒドロキシラーゼをコードする)「crtZ」遺伝子及び(β−カロテンケトラーゼをコードする)「crtO」遺伝子が含まれる。さらに「カロテノイド生合成酵素」という語は、CrtE、CrtX、CrtY、Crtl、CrtB、CrtZ及びCrtOを内含する当該経路内の任意かつ全ての酵素を意味する包括的な語である。
【0064】
「IspA」という語は、ispA遺伝子によりコードされ、ゲラニルピロホスフェート(GPP)、ファルネシルピロホスフェート(FPP)、及びゲラニルゲラニルピロホスフェート(GGPP)が形成される3つのプレニルトランスフェラーゼ反応の一シーケンスの触媒としてその活性が作用するタンパク質を意味する。
【0065】
「CrtN1」又は「CrtN、コピー1」は、crtN1遺伝子によってコードされるジアポフィトエンデヒドロゲナーゼ酵素のコピー1を意味する。
【0066】
「CrtN2」又は「CrtN、コピー2」という語は、crtN2 遺伝子によりコードされるジアポフィトエンデヒドロゲナーゼ酵素(Crt)のコピー2を意味する。
【0067】
「CrtE」という語は、トランス−トランス−ファルネシルジホスフェート及びイソペンテニルジホスフェートをピロホスフェート塩及びゲラニルゲラニルジホスフェートへと転換するcrtE 遺伝子によってコードされるゲラニルゲラニルピロホスフェートシンターゼ酵素を意味する。
【0068】
「CrtX」という語は、crtX 遺伝子によりコードされ、ゼアキサンチンをグリコゾル化してゼアキサンチン−β−ジグルコシドを生成するゼアキサンチングルコシルトランスフェラーゼ酵素を意味する。
【0069】
「CrtY」という語は、crtY 遺伝子によりコードされ、リコペンからβ−カロテンへの転換の触媒として作用するリコペンシクラーゼ酵素を意味する。
【0070】
「CrtI」という語は、crtI 遺伝子によりコードされ、4つの2重結合の導入によりフィトフルエン、ゼーターカロテン及びニューロスポレンを仲介としてフィトエンをリコペンに転換するフィトエンデサチュラーゼ酵素を意味する。
【0071】
「CrtB」という語は、プレフィトエンジホスフェートからフィトエンへの反応の触媒として作用する、crtB 遺伝子によりコードされるフィトエンシンターゼ酵素を意味する。
【0072】
「CrtZ」という語は、β−カロテンからゼアキサンチンへのヒドロキシル化反応の触媒として作用するcrtZ 遺伝子によってコードされたβ−カロテンヒドロキシラーゼ酵素を意味する。
【0073】
中間体としてのエチネノン(1つのケトン基)を介したβ−カロテンからカンタキサンチン(2つのケトン基)への転換の触媒として作用する、crtO遺伝子によってコードされるβ−カロテンケトラーゼ酵素を意味する。
【0074】
「カロテノイド化合物」という語は、2つの中央メチル基が、1,6−位置関係にあり残りの非末端メチル基が1,5−位置関係にあるように分子の中央でイソプレノイト単位の配置が逆転させられるような形で接合された8つのイソプレノイト単位から成る炭化水素(カロテン)及びその酸素化誘導体(キサントフィル)の1つのクラスとして定義づけされる。全てのカロテノイドは、(i)水素化、(ii)脱水素化、(iii)環化又は(iv)酸化又はこれらのプロセスのうちの何らかの組合せによって、接合された2重結合の長い中央鎖をもつ非環式C40H56構造(以下の構造式I)から形式的に誘導されうる。
【0075】
【化1】
【0076】
このクラスは同様に、炭素骨格(I)のいくつかの再配置から又はこの構造の一部分の(形式的)除去によって生じるいくつかの化合物をも内含する。
【0077】
便宜上、カロテノイドの構造式は、往々にして短縮された形で次のように記される。
【0078】
【化2】
【0079】
なお式中、破線は、イソプレノイド単位への形式的分割を表わす。
【0080】
本書で使用される「単離された核酸フラグメント」は、場合により、合成、非天然又は改変ヌクレオチド塩基を含有する1本鎖又は2本鎖のRNA又はDNAの重合体である。DNAの重合体の形をした単離された核酸フラグメントは、cDNA、ゲノムDNA又は合成DNAの単数又複数のセグメントで構成され得る。
【0081】
「遺伝子」というのは、コーディング配列に先行する(5´非コーディング配列)及びそれに後続する(3’非コーディング配列)調節配列を内含する特異的タンパク質として発現される能力をもつ核酸フラグメントを意味する。「未変性遺伝子」というのは、それ自体の調節配列と共に天然に見い出される通りの遺伝子を意味する。「キメラ遺伝子」というのは、天然には共に見い出されない調節配列とコーディング配列を含む、未変性遺伝子でないあらゆる遺伝子を意味する。従って、キメラ遺伝子は、異なる供給源から誘導された調節配列及びコーディング配列又は、同じ供給源から誘導されたものの天然に見い出されるものとは異なるやり方で配置されている調節配列及びコーディング配列を含み得る。「内因性遺伝子」は、1つの生体のゲノム内のその天然の場所にある未変性遺伝子を意味する。「外来性遺伝子」は、宿主生体内に通常見い出されないものの遺伝子移入により宿主生体内に導入される遺伝子を意味する。外来性遺伝子は、非未変性生体内に挿入された未変性遺伝子又はキメラ遺伝子を含むことができる。「トランスジーン」は、形質転換手順によりゲノム内に導入された遺伝子である。
【0082】
「コーディング配列」は、特異的アミノ酸配列についてコードするDNA配列を意味する。「適切な調節配列」というのは、コーディング配列の上流側(5’非コーディング配列)、コーディング配列内又はその下流側(3′非コーディング配列)の位置にあり、付随するコーディング配列の転写、RNA処理又は安定性又は翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を意味する。調節配列は、プロモータ、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNA処理部位、エフェクタ結合部位及びステム−ループ構造を内含し得る。
【0083】
「プロモータ」とは、コーディング配列又は機能的RNAの発現を制御する能力をもつDNA配列を意味する。一般に、コーディング配列は、プロモータ配列に対し3′の位置にある。プロモータは、全体が未変性遺伝子から誘導されてもよいし、或いは又、自然に見い出される異なるプロモータから誘導される異なる要素から成るか、さらには合成DNAセグメントを含んで成っていてよい。当業者であれば、異なるプロモータが、異なる組織又は細胞型内で、又は異なる発達段階で、又は異なる環境又は生理条件に応えて、1つの遺伝子の発現を導くことができるということがわかる。大部分の細胞型内で大部分の時に遺伝子を発現させるプロモータは、一般に「構成性プロモータ」と呼ばれる。さらに、大部分のケースで調節配列の正確な境界が完全に定義づけされていないことから、異なる長さのDNAフラグメントが同一のプロモータ活性をもち得るというとが認識されている。
【0084】
「操作可能にリンクされた」という語は、一方の機能がもう他方の機能の影響を受るような形での単一の核酸フラグメント上の核酸配列の会合を意味する。例えば、1つのプロモータは、1つのコーディング配列の発現に影響を及ぼす能力をもつとき(すなわちコーディング配列がプロモータの転写制御下にある)、そのコーディング配列と操作可能にリンクされている。コーディング配列は、センス又はアンチセンス配向で調節配列に操作可能にリンクされ得る。
【0085】
本書で使用される「発現」という語は、本発明の核酸フラグメントから誘導されたセンス(mRNA)又はアンチセンスRNAの転写及び安定した蓄積を意味する。発現は又、1つのポリペプチドへのmRNAの翻訳を意味することもある。
【0086】
「形質転換」という語は、遺伝的に安定した遺伝形質を結果としてもたらす、宿主生体のゲノム内への核酸フラグメントの移入を意味する。形質転換された核酸フラグメントを含む宿主生体は、「遺伝子導入」又は「組換え型」又は「形質転換された」生体と呼ばれる。
【0087】
「プラスミド」、「ベクター」及び「カセット」という語は、細胞の中央代謝の一部を成さない遺伝子を往々にして担持し、通常円形の2本鎖DNAフラグメントの形をしている過剰染色体要素を意味する。かかる要素は、適切な3’未翻訳配列と共に選択された遺伝子生成物のためのDNA配列及びプロモータフラグメントを1つの細胞内に導入する能力をもつユニーク構成の形に一定数のヌクレオチド配列が合体又は組換えされている、任意の供給源から誘導された1本鎖又は2本鎖のDNA又はRNAの線形又は円形の、自律的複製配列、ゲノム組込み配列、ファージ又はヌクレオチド配列でありうる。「形質転換カセット」というのは、特異的宿主細胞の形質転換を容易にする要素を外来性遺伝子に加えて有する、外来性遺伝子を含む特異的ベクターを意味する。「発現カセット」は、外来性遺伝子を含有し、かつ、外来性宿主内でのその遺伝子の増強した発現を可能にする要素を外来性遺伝子に加えて有する特異的ベクターを意味する。
【0088】
当該技術分野において知られている「同一性百分率」という語は、配列を比較することにより決定される通りの2つ以上のポリペプチド配列、又は2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当該技術分野では、「同一性」は同様に、かかる配列のストリング間の一致により決定される通りの、場合によってポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列の関係度をも意味している。「同一性」及び「類似性」は、コンピュータ分子生物学(Lesk, A.M.,ed.) Oxford University Press, NY(1988);バイオコンピュータ計算:情報科学とゲノムプロジェクトSmith, D.W.,ed.) Academic Press, NY(1993);配列データのコンピュータ解析;第1部(Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds.) Humana Press, NJ(1994);分子生物学における配列分析(von Heinje, G., ed.) Academic Press(1987);及び配列分析プライマ(Gribskov, M. and Devereux, J., eds.) Stockton Press, NY(1991)の中で記述されているものを含む(ただしこれに制限されるわけではない)既知の方法によって容易に計算することができる。同一性を決定するための好ましい方法は、テスト対象の配列の間の再考の一致を提供するように設計されている。同一性及び類似性を決定するための方法は、公に入手可能なコンピュータプログラムの中で体系化される。配列アライメント及び百分率同一性計算は、LASERGENE生物情報科学計算パッケージソフトのMegalignプログラムを用いて実施することができる(DNASTAR Inc., Madison, WI) 。デフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=10)と共にClustalの整列方法(Higgins and Sharp(1989)cAB10s.5:151−153)を用いて、配列の多数の整列が実行された。clustal方法を用いた対整列のためのデフォルトパラメータは、KTUPLE1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5及びDIAGONALS SAVED=5であった。
【0089】
適切な核酸フラグメント(本発明の単離されたポリヌクレオチド)は、本書で報告されているアミノ酸配列に対し少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%の同一性をもつポリペプチドをコードする。好ましい核酸フラグメントは、本書で報告されているアミノ酸配列と約85%の同一性をもつアミノ酸配列をコードする。より好ましい核酸フラグメントは、本書で報告されているアミノ酸配列に対し少なくとも約90%の同一性をもつアミノ酸配列をコードする。最も好ましいのは、本書に報告されているアミノ酸配列に対し少なくとも約95%の同一性をもつアミノ酸配列をコードする核酸フラグメントである。適切な核酸フラグメントは、上述の相同性を有するのみならず、標準的に少なくとも50、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも150、さらにより好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも250個のアミノ酸をもつポリペプチドをコードする。
【0090】
核酸分子は、適切な温度及び溶液イオン強度条件下で核酸分子の1本鎖形態が、もう1方の核酸分子にアニールできる場合に、cDNA、ゲノムDNA又はRNAといったようなもう1つの核酸に「ハイブリッド形成可能」である。ハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、周知のものであり、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T.「分子クローニング・実験室マニュアル;第2版 Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor(1989)、特にその中の第11章及び11.1(本書に全体が参考として内含されている)の中で例示されている。温度及びイオン強度条件は、ハイブリダイゼーションの「緊縮性」を決定する。緊縮性条件は、近い関係をもつ生体由来の機能的酵素を複製する遺伝子といったようなきわめて類似性の高いフラグメントに対して遠い関係をもつ生体由来の相同配列といったような中位の類似性をもつフラグメントをスクリーニングするように調整できる。ハイブリダイゼーション後の洗浄が、緊縮性条件を決定する。好ましい条件の1セットでは、15分間室温での6×SSC、0.5%SDSから出発し、次に30分間45℃での2×SSC、0.5%SDSで反復し、次に30分間50℃で0.2×SSC、0.5%SDSで2回反復する一連の洗浄が用いられる。より好ましい緊縮性条件セットでは、より高い温度が使用され、ここで0.2×SSC、0.5%SDS中での最後の2回の30分洗浄の温度が60℃まで上昇させられるという点を除いて、洗浄は以上のものと同一である。きわめて緊縮性の高い条件のもう1つの好ましいセットでは、65℃で0.1×SSC、0.1%×SDSでの2回の最終的洗浄が使用される。緊縮性条件のさらなる好ましいセットには、0.1×SSC、0.1%SDS、65℃、2×SSC、0.1% SDSとそれに続く0.1×SSC、0.1%SDSでの洗浄が含まれる。
【0091】
ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が、相補的配列を含んでいることを必要とするが、ハイブリダイゼーションの緊縮性に応じて塩基間の不整合が可能である。核酸をハイブリッド形成するための適切な緊縮性は、当該技術分野において周知の変数である核酸の長さ及び相補度により左右される。2つのヌクレオチド配列間の類似性又は相同性度が大きくなればなるほど、これらの配列をもつ核酸のハイブリッドについてのTm値は大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの(より高いTmに対応する)相対的安定性は、RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA、の順で減少する。長さがヌクレオチド100個以上のハイブリッドについて、Tmを計算するための方程式が導出されてきた(Sambrook et al., 前出、9.50〜9.51参照)。比較的短かい核酸すなわちオリゴヌクレオチドでのハイブリダイゼーションについては、不整合位置は、より重要となり、オリゴヌクレオチドの長さは、その特異性を決定する(Sambrook et al. 前出、11.7〜11.8参照)。1つの実施形態においては、ハイブリッド形成可能な核酸のための長さは、少なくとも約ヌクレオチド10個;より好ましくは、少なくとも約ヌクレオチド20個であり、最も好ましくは、長さは少なくともヌクレオチド30個である。さらに、熟練者であれば、プローブの長さといったような因子によって必要に応じ温度及び洗浄溶液塩濃度を調整できるということを認識することだろう。
【0092】
「配列分析ソフトウェア」という語は、ヌクレオチド又はアミノ酸配列の分析のために有用であるあらゆるコンピュータアルゴリズム又はソフトウェアプログラムを意味する。「配列分析ソフトウェア」は、市販されているものであっても、又自主的に開発されたものであってもよい。標準的な配列分析ソフトウェアとしては、GCGプログラムパッケージソフト(Wisconsin Package Version 9.0,Genetics Computer Group (GCG),Madison, WI),BLASTP,BLASTN,BLASTX(Altschul et al., J.Mol.Biol. 215:403−410(1990),及びDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228S,Park St.Madison, WI53715USA),及びSmith−Watermanアルゴリズムを包含するFASTAプログラム(W.R.Pearson, Comput. Methods Genome Res.[Proc. Int.Symp.](1994),Meeting Date1992,111−20.Editor(s) :Suhai, Sandor. Publisher:Plenum, New Youk, NY)が内含されるが、これらに制限されるわけではない。本出願においては、分析のために配列分析ソフトウェアが用いられる場合、分析の結果は、相反する規定のないかぎり、基準としたプログラムの「デフォルト値」に基づくことになる。本書で使用されている「デフォルト値」というのは、1回目の初期化時点でソフトウェアと共に当初ロードする値又はパラメータのあらゆるセットを意味することになる。
【0093】
ここで使用される標準的組換え型DNA及び分子クローニング技術は、当該技術分野において周知であり、Sambrook, J., Fritsch, E.F. 及びManiatis, T, 分子クローニング:実験室マニュア ル、第2版 Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY(1989)(以下「Maniatis」と呼ぶ)及び Silhavy, T.J, Bennan, M.L. 及びEnquist, L.W., 遺伝子融合での実験、Cold Spring Harbor Laboratory Cold Press Spring Harbor, NY(1984);及びAusubel, F.M. et al., 分子生物学における現在のプロトコルGreene Publishing Assoc. and Wiley−Interscience出版(1987)によって記述されている。
【0094】
C1代謝性微生物の同定及び単離
本発明は、唯一のエネルギー源として単一炭素基質を使用することのできる微生物内のカロテノイド化合物の生合成に関与する遺伝子の発現を提供する。かかる微生物は、本書では、C1代謝体と呼ばれる。宿主微生物は、カロテノイドの多くについての前駆体であるイソペンテニルピロホスフェート(IPP)を合成する能力をもつ任意のC1代謝体であり得る。
【0095】
さまざまな単一炭素基質を使用することのできる数多くのC1代謝性微生物が当該技術分野において知られている。本発明で有用な単一炭素基質には、メタン、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸、メチル化アミン(例えばモノ−、ジ−、及びトリメチルアミン)、メチル化チオール及び二酸化炭素が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0096】
全てのC1代謝性微生物は一般にメチロトローフとして分類されている。メチロトローフは、炭素−炭素結合を含まない有機化合物を酸化する能力をもつあらゆる生体として定義づけすることができる。メチロトローフのサブセットがメタノトローフであり、これは、メタンを酸化するという特有の能力をもつ。通性メチロトローフは、炭素−炭素結合を含有しない有機化合物を酸化する能力をもつが、エネルギー及びバイオマスのために糖及び複合炭水化物いったようなその他の炭素基質を使用することもできる。真性メチロトローフは、エネルギーの生成のため炭素−炭素結合を含まない有機化合物の使用に制限されている生体であり、真性メタノトローフは、メタンを酸化する能力をもつような真性メチロトローフである。
【0097】
通性メチロトローフ細菌は、多くの環境内で見い出されるが、最も一般的には、土壌、ごみ埋立て地及び廃棄物処理サイトから単離される。数多くの通性メチロトローフは、Proteobacteria のβ及びγ亜群である(Hanson et al., Microb. Growth C1Compounds.,〔Int.Symp.〕, 7th(1993),285−302,Editor(s):Murrell, J. Collin;Kelly, Don P. Publisher:Intercept, Andover, UK;Madigan et al., Brock Biology of Microorganism, 8th editon, Prentice Hall, UpperSaddle River, NJ(1997)。本発明において適切な通性メチロトローフ細菌には、Methylophilus, Methylobacillus, Methylobacterium, Hyphomicrobium, Xanthobacter, Bacillus, Paracoccus, Nocardia, Arthrobacter, Rhodopseudomonas, 及びPseudomonasが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0098】
単一炭素基質を利用する能力は、細菌に制限されるわけではなく、酵母及び真菌にも及ぶ。数多くの酵母属が、エネルギー源としてより複雑な材料に加え単一炭素基質を使用することができる。本発明において有用である特異的メチロトローフ酵母としては、Candida, Hansenula, Pichia, Torulopsis, 及びRhodotorulaが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0099】
メタンを利用する付加的な能力をもつこれらのメチロトローフは、メタノトローフと呼ばれる。本発明において特に有利であるのは、メタンを利用するものの、炭素−炭素結合が欠如した有機化合物を使用することを強いられている真性メタノトローフである。これらの生体の例としては、Methylomonas, Methylobacter, Methylococcus, Methylosinus, Methylocyctis, Methylomicrobium, 及びMethanomonas属が内含されるが、これらに制限されるわけではない。
【0100】
本発明において特に有利であるのは、エネルギー面で有利な炭素フラックス経路をもつ高成長真性メタノトローフである。例えば、出願人らは、それを炭素フラックスの操作にとって特に有用なものにするいくつかの経路特長をもつ特異的メタノトローフ菌株を発見した。このタイプの菌株は、本出願において宿主として役立ちMethylomonas16a(ATCC PTA2402)として知られている。
【0101】
当該菌株は、炭素利用経路の中に複数の異常を含有している。例えば、ゲノム配列データに基づくと、菌株は、ヘキソース代謝の2つの経路のための遺伝子を含有することが示されている。ケト−デオキシホスホグリコネートアルドラーゼ酵素を利用するエントナードウドロフ経路は、この菌株内に存在する。これが真性メタノトローフ内の作動的経路であることは、一般に充分に受容されている。しかしながら、同様に存在しているのは、フルクトースビスホスフェートアルドラーゼ酵素を利用するエムデンマイヤーホフ経路である。この経路が真性メタノトローフ内に存在しないか又はその中で作動状態にないかのいずれかであることは周知である。エネルギー面では、後者の経路は最も有利であり、生物学的に有用なエネルギーのより大きな収量を可能にし、これは究極的には、Methylomonas16a内での細胞集団及びその他の細胞集団依存性生成物のより大きな収量の生成を結果としてもたらす。当該16a菌株内のこの経路の活性は、ATPの減少を測定するマイクロアレイデータ及び生化学的証拠を通して確認されてきた。16a菌株が、エムデンマイヤーホフ及びエントナードウドロフの両方の経路の酵素を有することが示されてきたが、データは、エムデンマイヤーホフ経路酵素がエントナードウドロフ経路酵素よりもさらに強く発現されるということを示唆している。この結果は、驚くべきものであり、メタノトローフ細菌の解凍代謝に関してすでに信じられている理念に反するものである。出願人らは、例えばMethylomonas clara及びMethylosinus sporiumを含め、この特徴をもつその他のメタノトローフ細菌を発見した。この活性は、大部分の細菌系における酵素のための標準的なホスホリル供与体であるATPでの酵素の活性の欠如に起因してメタノトローフにおいては発見されないままである可能性が高い。
【0102】
菌株16a内のエムデンマイヤーホフ経路の特に新規で有用な特長は、主要なホスホフルクトキナーゼ工程がATP依存性ではなくピロホスフェート塩依存性であるという点にある。この特長は、ATPの代りにピロホスフェート塩を使用することにより、経路のエネルギー収量に追加を行なう。菌株に対しエネルギー面の利点を提供する上でのその有意性のため、炭素フラックス経路内でのこの遺伝子は、当該菌株についての診断とみなされている。
【0103】
ピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼ遺伝子配列(配列表の配列番号1)及び演繹されたアミノ酸配列(配列表の配列番号2)を公共データベースに比較すると、最も類似性の高い既知の配列が、Smith−Watermanのアラインメントアルゴリズムを用いて437個のアミノ酸の長さ全体にわたり本書で報告されているアミノ酸配列と約63%の同一性をもつことがわかる(W.R.Pearson, Comput, Methods Genome Res., [Proc. Int. Symp](1994), Meeting Date 1992, 111−20. Editor (s):Suhai, Sandor. Publisher. Plenum, New York, NY)。より好ましいアミノ酸フラグメントは、本書の配列と少なくとも約80%〜90%の同一性をもつ。最も好ましいのは、本書に報告されたアミノ酸フラグメントと少なくとも95%の同一性をもつ核酸フラグメントである。同様にして、当該遺伝子に対応する核酸配列をコードする好ましいピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼは、活性タンパク質をコードしかつ本書に報告されている核酸配列と少なくとも80%の同一性をもつものである。より好ましいピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼ核酸フラグメントは、本書の配列と少なくとも90%の同一性をもつ。最も好ましいのは、本書に報告されている核酸フラグメントと少なくとも95%の同一性をもつピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼ核酸フラグメントである。
【0104】
当該菌株を弁別するさらなる特徴は、リブロース1ホスフェート経路つまりRuMPサイクル内で起こる「開裂」工程を検査したときに明らかになる。この一組の反応サイクルは、メタンを、メタノトローフ細菌内の生体分子に転換する。経路は、3期から成り、各期は一連の酵素的工程である(図2)。第1工程は、ヘキソース又は6炭素糖を形成するべくペントース内にC−1(ホルムアルデヒド)を「固定する」か又は取込むことにある。これは、5炭素糖(ペントース)とホルムアルデヒドの間の縮合反応を介して起こり、ヘキスロース1ホスフェートシンターゼ酵素を触媒する。第2期は、「開裂」と呼ばれ、ヘキソースを2つの3炭素分子へと分割する結果となる。これらの3炭素分子のうちの1つは、RuMP経路を通して再循環し戻され、一方もう1つの3炭素フラグメントは、細胞成長のために利用される。メタノトローフ及びメチロトローフにおいて、RuMP経路は、3つの変異体のうちの1つとして発生する。しかしながら、これらの変異体のうちの2つのみが一般に発見され、FBP/TA(フルクトースビスホスフェート/トランスアルドラーゼ)経路又はKDPG/TA(ケトデオキシホスホグルコン酸/トランスアルドラーゼ)経路として同定されている(Diykhuizen L., G.E.Deuries。「好気性メタノール利用性グラム陰性及びグラム陽性菌の生理学及び生化学」。「メタン及びメタノール利用菌」中(1992年),eds. Colin Murrell及びHoward Dalton;Plenum Press:NY)。
【0105】
当該菌株は、主要中間体としてフルクトースビスホスフェートを介してこの転換を実施する遺伝子が発見されたことから、その「開裂」 のとり扱い方において独特のものである。フルクトースビスホスフェートアルドラーゼ及びトランスアルドラーゼのための遺伝子は、DNAの1片上に共にクラスタ化された状態で発見された。第2に、ケトデオキシホスホグルコン酸中間体が関与するもう一方の変異体のための遺伝子も同様に、一緒にクラスタ化された状態で発見された。利用可能な文献は、これらの生体(メチロトローフ及びメタノトローフ)がKDPG経路のみに依存していること及び、FBP依存性固定経路が通性メチロトローフによって利用されることを教示している(Dijkhuizen et al., 前出)。従って、前者の観察事実は期待されないが、後者の観察事実は期待される。真性メタン利用細菌内にFBP遺伝子が発見されたことは、驚きであると共に有用性を示唆することでもある。FBP経路は、KDPG経路の中で利用されるものよりも低いエネルギー(ATP)が利用されるという事実に起因して、宿主微生物にとってエネルギー上有利である。かくしてFBP経路を利用する生体は、KDPG経路を利用する生体に比べ、エネルギー上の利点及び成長上の利用を有する可能性がある。この利点は同様に、菌株内のエネルギーを要する生成経路のためにも有用であり得る。この経路を使用することにより、メタン利用細菌は、単一細胞タンパク質又はRuMP経路を通して炭素の流れから誘導される任意のその他の生成物のいずれかのための生成プラットフォームとして、その他のメタン利用細菌に比べ1つの利点を有する可能性がある。
【0106】
従って、本発明は、
(a)メタン及びメタノールよりなる群から選択されるC1炭素基質上で成長し、かつ
(b)ピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼ酵素をコードする遺伝子を含む機能的エムデンマイヤーホフ炭素経路を含む、
形質転換されたC1代謝性宿主細胞を提供することを含んで成る、カロテノイド化合物の生成方法を提供する。
【0107】
C1代謝性微生物の単離
本発明のC1代謝性微生物は、汎存しており、多くは単離され特徴づけされている。これらの菌株の単離の一般的スキームには、メタン又はメタノールのいずれかを含有する密封された液体鉱物塩培地内に接種材料を添加することが内含される。体積:気体比には注意を払わなくてはならず、培養は、標準的に25〜55℃の間でインキューベートされる。標準的には、成長が最初に見えたときにそれを平板固定するか又は固体培地上にストリークした場合、さまざまな異なるメチロトローフ細菌を第1の富化から単離することができる。メタノトローフの単離のための方法は、一般的であり、当該技術分野で周知である(例えば、Thomas D.Brock in 「バイオテクノロジー : 産業微生物学教本」、第2版(1989)Sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA; Deshpande, Mukund V., Apple. Biochem. Biotechnol., 36:227(1992);又はHanson, R.S. et al. 原核生物;細菌の生息環境、単離及び同定に関する手引書;Springer−Verlag:Berlin, New York, 1981;第2巻、第118章参照)。
【0108】
上述のように、好ましいC1代謝体は、ピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼの存在により表わされるような活性エムデンマイヤーホフ経路を取込むものである。当該教示は、類示の菌株の一般的同定及び単離を可能にすることになると考えられている。例えば、当該高成長菌株の主要な特徴は、それが唯一の炭素供給源としてメタノールのいずれかのメタンしか用いない真性メタノトローフであり、機能的エムデンマイヤーホフ、特にピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子を有するということにある。メタノトローフを単離する方法は、当該技術分野において一般的でかつ周知である(例えば、Thomas D. Brock(前出)又はDeshpande(前出)を参照のこと)。同様にして、ピロホスフェート塩依存性ホスホフルクトキナーゼは、哺乳動物系において充分に特徴づけされてきており、検定方法が充分に開発されてきた(例えばSchliselfeld et al. Clin. Biochem (1996), 29(1), 79−83;Clark et al., J. Mol. Cell. Cardiol. (1980), 12(10), 1053−64を参照のこと)。現代の微生物学者は、当該高成長菌株を同定するためにこれらの技術を使用することができるだろう。
【0109】
カロテノイド生成に関与する遺伝子
カロテノイドの生合成に関与する酵素経路は、ピルビン酸塩及びグリセルアルデヒド−3−ホスフェートのイソペンテニルピロホスフェートへの転換を提供する上部イソプレノイト経路及びフィトエン及びその後に生成された全てのカロテノイドの合成を提供する下部カロテノイド生合成経路という2つの部分で見るのが適切でありうる。上部経路は、数多くのC1代謝性微生物の中で汎存し、これらのケースでは、所望のカロテノイドの生合成のために下部経路を含む遺伝子を導入することしか必要でなくなる。2つの経路の間の主要な境界線は、イソペンテニルピロホスフェート(IPP)の合成に関係する。IPPが天然に存在する場合には、下部カロテノイド経路の要素のみが必要となる。しかしながら、下部経路カロテノイド遺伝子がカロテノイドの製造において有効となるためには、宿主細胞がその細胞内で適切なレベルのIPPを有することが必要となる。IPP合成が宿主細胞にとって提供されない場合、IPPの生成のために必要な遺伝子を導入することが必要となる。これらの経路の各々について、以下で詳述する。
【0110】
上部イソプレノイト経路
IPP生合成は、2つの経路のいずれかを通して起こる。まず第1に、IPPは、周知の酢酸塩/メバロン酸塩経路を通して合成可能である。しかしながら、最近の研究は、メバロン酸塩依存性経路が、全ての生体内では動しないということを実証した。IPP生合成のための1つの代替的メバロン酸塩非依存性経路が、細菌及び緑藻類及び高等植物において特徴づけされてきた。(Horbach et al., FEMS Microbiol. Lett. 111:135−140(1993);Rohmer et al, Biochem. 295:517−524(1993);Schwender et al., Biochem. 316:73−80(1996);Eisenreich et al.,Proc. Natil. Acad. Sci. USA93:6431−6436(1996))。両方のイソプレノイト経路における数多くの工程が知られている(図1)。例えば、IPPの生成を導く代替的経路の初期工程は、Cole et al.(Nature 393:537−544(1998))によりMycobacterium tuberculosisの中で研究されてきた。この経路の第1工程には、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートとして知られている5−炭素化合物を生成するべく2つの3−炭素分子(ピルビン酸塩及びD−グルセルアルデヒド3−ホスフェート)を縮合することが関与している。この反応は、dxs遺伝子によりコードされたDXS酵素によって起こる。次に、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートの異性化及び還元は、2−C−メチル−D−エリスリトール−4−ホスフェートを生成する。異性化及び還元プロセスに関与する酵素の1つは、遺伝子dxrによりコードされるD−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(DXR)である。2−C−メチル−D−エリスリトール−4−ホスフェートは、その後、注釈の無い遺伝子ygbPによりコードされる酵素によるCTP依存性反応において4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトールへと転換される(Cole et al., 前出)。しかしながら最近、ygbP遺伝子は、isp 遺伝子クラスタの一部としてispDと再命名された(Smiss Protein受入れ番号Q46893)。
【0111】
次に、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトールの第2位置の水酸基を、ychB遺伝子によりコードされた酵素によりATP依存性反応においてホスフェート化(phosphorylate)させることができる。この生成物は、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトールをホスフェート化し、結果として4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトール2−ホスフェートをもたらす。ychB遺伝子は、同じくisp遺伝子クラスタの一部として、ispEと再命名された(Swiss Protein受入れ番号P24209)。最後に、ygbB遺伝子の生成物は、4−ジホスホシチジル−2C−メチル−D−エリスリトール2−ホスフェートを、CTP依存的に2C−メチル−D−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートに変換する。この遺伝子は、同じく最近再命名され、isp 遺伝子クラスタに属する。特定的には、ygbB遺伝子のための新しい名称はispFである(Swiss Protein受入れ番号P36663)。
【0112】
2C−メチル−D−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートをさらにIPPに転換して究極的にカロテノイド生合成経路内でカロテノイドを生成することが知られている。ただし、2C−メチル−D−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートからのイソペンテニル−ホスフェートの生成を導く反応は、まだ充分に特徴づけされていない。lytB及びgcpE遺伝子(そして恐らくはその他のもの)によりコードされる酵素は、イソペンテニルピロホスフェート(IPP)及びジメチルアリルピロホスフェート(DMAPP)の形成を導く反応に参与すると考えられている。
【0113】
IPPは、idi 遺伝子によりコードされるIPPイソメラーゼを介してDMAPPに異性化され得るが、この酵素は、生存のために必須ではなく、2−C−メチル−D−エリスリトール4−ホスフェート(MEP)経路を用いるいくつかの細菌の中では不在であり得る。最近の証拠は、MEP経路がIPPの前に分枝し、lytB遺伝子生成物を介してIPP及びDMAPPを別々に生成することを示唆している。ltyBノックアウト突然変異は、IPP及びDMAPPの両方が補足された培地を除き、E.coli内で致命的である。
【0114】
上部経路の要素をコードする遺伝子が、表2に示されているようなさまざまな植物、動物及び細菌供給源から知られている。
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
本発明における上部イソプレン経路のための最も好ましい遺伝子供給源は、Methylomonas 16aある。メタノトローフは天然にピンクの色素をもち、30炭素カロテノイドを生成することから、Methylomonas 16aが本発明にとって特に適している。かくして、生体は、上部イソプレン経路の遺伝子を充分に授かっている。これらの好ましい遺伝子の配列は、以下の配列表の配列番号として提示されている:すなわち、dxs遺伝子(配列表の配列番号5)、dxr遺伝子(配列表の配列番号7)、「ispD」遺伝子(配列表の配列番号9)、「ispE」遺伝子(配列表の配列番号11)、「ispF」遺伝子(配列表の配列番号13)、「pyrG」遺伝子(配列表の配列番号15)、及び「lytB」遺伝子(配列表の配列番号17)。
【0119】
下部カロテノイド生合成経路
フィトエンの形成は、化合物が無色であるにもかかわらず、下部カロテノイド生合成経路を介して生成される、カロテノイド生合成内で唯一の最初の「真の」工程である。フィトエン合成は、IPPからジメチルアリルピロホスフェート塩(DMAPP)への異性化を介して起こる。この反応の後には、3つのプレニルトランスフェラーゼ反応のシーケンスが続く。これらの反応のうち2つは、ispAを触媒とし、ゲラニルピロホスフェート(GPP;10−炭素分子)及びファルネシルピロホスフェート(FPP:15−炭素分子)の生成を導く。
【0120】
遺伝子 crtN1及びN2は、ファルネシルピロホスフェートを、自然に発生する16A. 30−炭素色素へと転換する。
【0121】
GGPPシンセターゼをコードする遺伝子crtEは、発生する可能性のある3番目のプレニルトランスフェラーゼ反応を担当し、フィトエンの合成を導く。この反応はIPPをFPPに付加して20−炭素分子、ゲラニルゲラニルピロホスフェート(GGPP)を生成する。
【0122】
最後に、GGPPの2つの分子の縮合反応が起こり、下部カロテノイド生合成経路の最初の40炭素分子であるフィトエン(PPPP)を形成する。この酵素反応は、フィトエンシンターゼをコードするcrtBを触媒としている。
【0123】
「赤色」スペクトルを付与するリコペンは、(フィトエンデサチュラーゼをコードする)遺伝子crt1を触媒とする、8つの水素原子の除去により4つの逐次的脱水素化反応を通してフィトエンから生成される。この反応における媒介は、フィチオフルエン、ゼータ−カロテン及びニューロスポレンである。
【0124】
リコペンシクラーゼ(crtY)は、リコペンをβ−カロテンに転換する。
【0125】
β−カロテンは、(crtZ遺伝子によりコードされる)β−カロテンヒドロキシラーゼの活性の結果としてのヒドロキシル化反応を介してゼアキサンチンに転換される。B−クリプトキサンチンは、この反応における中間体である。
【0126】
β−カロテンは、crtW遺伝子によってコードされたβ−カロテンケトラーゼによりカンタキサンチンに転換される。エキネノンが、この反応における中間体である。このときカンタキサンチンを、crtZ遺伝子によりコードされるβ−カロテンヒドロキシラーゼにより、アスタキサンチンに転換するとができる。
【0127】
ゼアキサンチンは、ゼアキサンチン−β−ジグルコシドに転換され得る。この反応は、ゼアキサンチングルコシルトランスフェラーゼ(crtX)を触媒とする。
【0128】
ゼアキサンチンは、crtW、crtO又はbktによりコードされるβ−カロテンケトラーゼによりアスタキサンチンに転換され得る。アドニキサンチンがこの反応における中間体である。
【0129】
crtAによりコードされるスフェロイデンモノオキシゲナーゼにより、スフェロイデンをスフェロイデノンに転換することができる。
【0130】
それぞれcrtC、crtD及びcrtF遺伝子によりコードされるヒドロキシニューロスポレンシンターゼ、メトシキニューロスポレンデサチュラーゼ及びヒドロキシニューロスポレン−O−メチルトランスフェラーゼの逐次的作用により、ネロスポレンをスフェロイデンに変換することができ、又、リコペンをスピリロキサンチンに転換することができる。
【0131】
β−カロテンは、crtUによりコードされるb−カロテンデサチュラーゼによりイソレニエラテンに転換され得る。
【0132】
下部カロテノイド生合成経路の要素をコードする遺伝子は、表3に示されているように、さまざまな植物、動物そして細菌供給源から知られている。
【0133】
【表6】
【0134】
【表7】
【0135】
【表8】
【0136】
【表9】
【0137】
【表10】
【0138】
【表11】
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【0141】
本発明における下部カロテノイド生合成経路のための遺伝子の最も好ましい供給源は、さまざまなものに由来している。「ispA」遺伝子(配列表の配列番号19)は、生体が2−C−メチル−D−エリスリトール−4−ホスフェート(MEP)経路を介して呼吸鎖キノン及び30−炭素カロテノイドを生成することから、Methylomonas16aに生得のものである。しかしながら、Methylomonasは所望の40−炭素カロテノイドを合成しない。FPPは、Methylomonas16A内のMEP経路の最終生成物であり、その後sqs、crtN1及びcrtN2 遺伝子生成物の作用によりその天然の30−炭素カロテノイドに転換される。好ましい宿主生体に生得の遺伝子として、ispA遺伝子(配列表の配列番号19)は、本発明の遺伝子の最も好ましい供給源である。
【0142】
crt遺伝子の最も好ましい供給源の大部分は、主としてPanteoa stewartiiにある。これらの好ましい遺伝子の配列は、以下の配列表の配列番号として提示される。crtE 遺伝子(配列表の配列番号25)、crtX 遺伝子(配列表の配列番号27)、crtY(配列表の配列番号29)、crtl遺伝子(配列表の配列番号31)、crtB遺伝子(配列表の配列番号33)及びcrtZ遺伝子(配列表の配列番号35)。さらにRhodococcus erythropolis AN12から単離され配列表の配列番号37として提示されたcrtO 遺伝子は、本発明のためのその他の遺伝子と組合せた形で決まる。
【0143】
表3に提示された遺伝子と本発明の好ましい遺伝子のさまざまな組合せを用いることにより、充分なIPP供給源が宿主生体内で利用可能であることを条件として、本発明の方法を用いて、数えきれないほどの異なるカロテノイド及びカロテノイド誘導体を作ることができる。例えば、遺伝子クラスタcrtEXYIBは、β−カロテンの生成を可能にする。crtZをcrtEXYIBに添加することにより、ゼアキサンチンの生成が可能となり、一方、crtEXYIBZOクラスタはアスタキサンチン及びカンタキサンチンの生成を導く。
【0144】
本発明の有用な生成物が、アンテラキサンチン、アドニキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、カプソルビリン、β−クリプトキサンチン、アルファ−カロテン、ベータ−カロテン、イプシロン−カロテン、エキネノン、ガンマ−カロテン、ゼータ−カロテン、アルファ−クリプトキサンチン、ジアトキサンチン、7,8−ジデヒドロアスタキサンチン、フコキサンチン、フコキサンチノール、イソレニエラテン、ラクツカキサンチン、ルテイン、リコペン、ネオキサンチン、ヌーロスポレン、ヒドロキシネヌーロスポレン、ペリジニン、フィトエン、ロードピン、ロードピングルコシド、シフォナキサンチン、スフェロイデン、スフェロイデノン、スピリロキサンチン、ウリオリド、酢酸ウリオリド、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン−β−ジグルコシド、及びゼアキサンチンを含む(ただしこれに制限されるわけではない)本書に記された通りのあらゆるカロテノイド化合物を内含することになるということが想定されている。さらに本発明は、ヒドロキシ−、メトキシ−、オキソ−、エポキシ−、カルボキシ−又はアルデヒド官能基又はグリコシドエステル又は硫酸塩を作り上げるべくこれらの分子の誘導体化を包含している。
【0145】
組換え型C1代謝性微生物の構築
適切な上部イソプレン経路遺伝子又は、下部カロテノイド生合成経路遺伝子をコードする遺伝子を適切な代謝性宿主の中に導入する方法は、一般的である。C1代謝性宿主内の非相同遺伝子の発現に適した調節配列を含有する微生物発現系及び発現ベクターが知られている。これらのうちのいずれかを用いて、上述のカロテノイド生合成遺伝子のいずれかの発現のためのキメラ遺伝子を構築することができるだろう。これらのキメラ遺伝子を次に、形質転換を介して適切な宿主内に導入し、酵素の高レベルの発現を提供することができる。
【0146】
適切な宿主細胞の形質転換に有用なベクター又はカセットが利用可能である。例えば、制限的な意味なく、デオキシ−キシルロースホスフェートシンターゼといったような内因性プロモータ又はメタノールデヒドロゲナーゼオペロンプロモータ(Springer et al. (1998)FEMS Microbiol Lett 160:119−124)、ポリヒドロキシアルカン酸合成のためのプロモータ(Foellner et al. Appl. Microbiol. Biotechnol. (1993)40:284−291)、又はメチロトローフ内の未変性プラスミドから同定されたプロモータ(EP296484)を含む複数のクラスのプロモータを、C1代謝体の中での当該カロテノイド生合成遺伝子をコードする遺伝子の発現のために使用することができる。これらの未変性プロモータに加えて、例えば、ラクトースオペロンPlacのためのプロモータ(Toyama et al. Microbiology(1997)143:595−602;EP62971)又はPtrcといったハイブリッドプロモータ(Brosius et al. (1984)Gene27:161−172)といった非未変性プロモータも使用することができる。同様に、例えばカナマイシン(Springer et al. (1998)FEMS Microbiol Lett160:119−124;Ueda et al. Appl. Environ. Microbiol.(1991)57:924−926)又はテトラサイクリン(米国特許第4,824,786号)といった抗生物質耐性と結びつけられたプロモータも適している。
【0147】
ひとたび特異的調節要素が選択されたならば、プロモーター遺伝子カセットを、エピソーム発現のためのレプリコン(Brenner et al. Antonie Van Leeuwenhoek(1991)60:43−48;Ueda et al. Appl. Environ. Microbiol.(1991)57:924−926)又は染色体組込み用の相同性領域(Naumov et al. Mol. Genet. Mikrobiol. Virusol. (1986)11:44−48)のいずれかを含有するプラスミド上のC1代謝体内に導入することができる。
【0148】
標準的には、ベクター又はカセットは、関連する遺伝子の転写及び翻訳を誘導する配列、選択可能なマーカー及び自発的複製又は染色体組込みを可能にする配列を含有している。.適切なベクターは、転写開始制御を内に持つ遺伝子の領域5′及び転写終結を制御するDNAフラグメントの領域3′を含んでいる。両方の制御領域が形質転換された宿主細胞と相同な遺伝子から誘導される場合が最も好ましいが、かかる制御領域が、生成宿主として選ばれた特異的種に生得の遺伝子から誘導される必要はない、ということを理解すべきである。
【0149】
特異的カロテノイドの蓄積が望まれる場合には、エネルギー又は炭素のための競合するシンクとして役立ちうる競合経路又は標的経路内でのいくつかの遺伝子の発現を低減又は削除する必要があるかもしれない。代替的には、生成を増強するため、所望のカロテノイド中間体の上流側でさまざまな遺伝子を過剰発現することが有用であり得る。
【0150】
この目的で遺伝子をアップレギュレート及びダウンレギュレートする方法が探究されてきた。分断すべき遺伝子の配列がわかっている場合、遺伝子のダウンレギュレーションの最も有効な方法の1つは、外来性DNAが転写を分断するべき構造遺伝子内に挿入される、ターゲティングされた遺伝子分断である。これは、分断されるべき遺伝子の一部分と高度の相同性をもつ配列によりフランキングされた挿入すべきDNA(往々にして遺伝子マーカー)を含む遺伝子カセットを作り出すことによって行なうことができる。宿主細胞内にカセットを導入すると、結果として、細胞の未変性DNA複製メカニズムを介して、構造遺伝子内に外来性DNAが挿入されることになる。(例えば、Hamilton et al.(1989) J. Bacteriol. 171:4617−4622,Balbas et.al. (1993) Gene 136:211−213,Gueldener et al.(1996)Nucleic Acids Res. 24:2519−2524,及びSmith et al.(1996)Methods Mol. Cell. Biol.5:270−277.を参照のこと)。
【0151】
アンチセンス技術は、標的遺伝子の配列がわかっている場合の遺伝子をダウンレギュレートするもう1つの方法である。これを達成するため、望ましい遺伝子由来の核酸セグメントがクローニングされ、RNAのアンチセンスストランドが転写されるような形でプロモータに操作可能にリンクされる。この構成体は次に宿主細胞内に導入され、RNAのアンチセンスストランドが生成される。アンチセンスRNAは、問題のタンパク質をコードするmRNAの蓄積を防止することにより遺伝子発現を阻害する。当業者であれば、特定の遺伝子の発現を低減させるべく特殊な考慮事項がアンチセンス技術の使用に付随するということがわかるだろう。例えば、アンチセンス遺伝子の適切な発現レベルには、熟練者にとっては既知の異なる調節要素を利用した異なるキメラ遺伝子の使用が必要となる可能性がある。
【0152】
ターゲティングされた遺伝子分断及びアンチセンス技術は、配列がわかっている場合に有効な遺伝子ダウンレギュレーション手段を提供するが、配列に基づかないその他のさほど特異的でない方法も開発されてきた。例えば、細胞をUV照射に露呈し、次に所望の表現型についてスクリーニングすることが可能である。化学作用物質での突然変異誘発も同様に突然変異体を生成するために有効であり、一般に使用される物質としては、HNO2及びNH2OHといったような非複製DNAに影響を及ぼす化学物質ならびに、クレームシフト突然変異をひき起こすことで知られているアクリジン染料といったような複製DNAに影響を及ぼす作用物質が含まれる。当該技術分野では、放射線又は化学的作用物質を用いて突然変異体を作り出すための特異的方法が充分に詳しく報告されている。例えば、Thomas D. Brock,の「バイオテクノロジー:工業微生物学教本」第2版(1989)Sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA., or Deshpande, Mukund V., Appl. Biochem. Biotechnol., 36, 227,(1992)を参照のこと。
【0153】
遺伝子分断のもう1つの非特異的方法は、転位因子つまりトランスポゾンの使用である。トランスポゾンは、DNA内に無作為に挿入するものの、挿入が起こった場所を見極めるため配列ベースで後に取出すことのできる遺伝要素である。In vivoとin vitroの両方の転位方法が知られている。両方の方法共、トランスポザーゼ酵素と組合せた形での転位因子の使用が関与している。転位因子又はトランスポゾンがトランスポザーゼの存在下で核酸フラグメントと接触しているとき、転位因子は、核酸フラグメント内に無作為に挿入することになる。分断された遺伝子は、転位因子の配列に基づいて同定され得ることから、この技術は、無作為突然変異及び遺伝子単離のために有用である。In vitro転位のためのキットが市販されている(例えば酵母Ty1要素に基づく(Perkin Elmer Applied Biosystems, Branchburg, NJ, から入手可能なThe Primer Island Transposition Kit, 細菌トランスポゾンに基づくNew England Biolab, Beverly, MAから入手可能なThe Genome Priming System;及びTn5細菌転位因子に基づく、Epicentre Technologies, Madison, WIから入手可能なthe EZ TN Transposon Insertion Systemsを参照のこと)。
【0154】
本発明においては、テルペノイド経路内の或る種の遺伝子の分断は、特異的カロテノイドの蓄積を増強させることができるが、どの遺伝子を分断すべきかの決定は、経験的に行なわれる必要がある。候補となる遺伝子は、前述のように、イソペンテニルジホスフェートの連続的縮合の触媒として作用し、結果としてさまざまな鎖長(C−5イソプレン単位の倍数)のプレニルジホスフェートを形成する、単数又複数のプレニルトランスフェラーゼを内含し得る。分断のためのその他の遺伝子候補としては、テルペノイドバックボーンプレニルジホスフェートに作用するタンパク質をコードする遺伝子のいずれかが含まれる。
【0155】
同様にして、所望の生成物の上流側におけるいくつかの遺伝子の過剰発現が、その生成物の生成を増大させる効果をもつものと予想されるだろう。例えば、上部イソプレノイト経路D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(Dxs)、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(Dxr)、2C−メチル−d−エリスリトールシチジリルトランスフェラーゼ(IspD)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ(IspE)、2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼ(IspF)、CTPシンターゼ(PyrG)及びLytB内の遺伝子の多くが、多コピー型プラスミド上又は強い非未変性プロモータの影響下で発現され得るだろう。このようにして、所望のカロテノイドのレベルを増強させることができる。
【0156】
カロテノイドの工業的生成
本発明に従ってカロテノイド化合物の商業的生成が望まれる場合には、さまざまな培養方法を応用することができる。例えば、組換え型微生物宿主から過剰発現された特異的遺伝子生成物の大規模生成は、バッチ又は連続培養の両方の方法により行なうことができる。
【0157】
古典的なバッチ培養方法は、培地の組成が培養の開始時点で設定され、培養プロセス中に人工的改変を受けない閉鎖型システムである。かくして、培養プロセスの始めに、培地に、所望の単数又複数の生体が接種され、システムに何も加えずに成長又は代謝活性を発生させることができる。しかしながら標準的には、「バッチ」培養は、炭素供給源の付加に関してバッチ式なのであり、pH及び酵素の濃度といった要因を制御する試みが往々にして行なわれる。バッチシステムにおいては、システムの代謝物及びバイオマス組成は、培養が終了する時点まで恒常的に変化する。バッチ培養内では、細胞は、静的誘導期を通って高成長対数期まで、そして最終的に、成長速度が低減するか又は停止する静止期まで加速される。未処理の場合、静止期にある細胞は、場合によって死滅することになる。一部のシステムでは、対数期にある細胞が、往々にして、最終生成物又は中間体の生成バルクを担当する。その他のシステムでは、静止期又は指数増殖期の生成を得ることができる。
【0158】
標準的バッチシステムの1変形形態がFed−Batchシステムである。Fed−Batch培養プロセスも同様に、本発明において適しており、培養が進むにつれて基質が増分的に添加されるという点を除いて、標準的バッチシステムを含む。Fed−Batchシステムは、代謝物抑制が細胞の代謝を阻害できるとき及び培地内の基質の量を制限することが望ましい場合に有用である。Fed−Batchシステムにおける実際の基質濃度の測定はむずかしく、従って、pH、溶解した酸素及びCO2といった発ガスの部分圧といったような測定可能な要因の変化に基づいて見積られる。バッチ及びFed−Batch培養方法は、当該技術分野において一般的でかつ周知であり、例は、本書に参考として内含されているThomas D.Brockの「バイオテクノロジー:工業的微生物学教本」第2版(1989)Sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA., 又はDeshpande, Mukund V., Appl. Biochem. Biotechnol., 36, 227,(1992)内に見られる。
【0159】
C1代謝体を用いたカロテノイドの商業的生成は、同様に連続培養で達成することができる。連続培養は、規定の培地が連続的に生物反応器に添加され、同時に処理のため等量の条件づけ済み培地が除去される開放型システムである。連続培養は一般に、細胞がまず最初に対数期成長にある恒常な高い液相密度に細胞を維持する。代替的には、連続培養は、炭素及び栄養物が連続的に添加され、貴重な生成物、副生成物又は廃棄産物が細胞集団から連続的に除去される、固定化された細胞を用いて実践可能である。細胞の固定化は、天然の及び/又は合成材料から成る広範な固体支持体を用いて実施可能である。
【0160】
連続的又は半連続的培養は、細胞成長又は最終生成物濃度に影響を及ぼす1つの要因又は任意の数の要因の変調を可能にする。例えば、1つの方法は、炭素供給源又は窒素レベルといったような制限的栄養物を一定速度に維持し、その他全てのパラメータを加減できるようにすることになる。その他のシステムでは、培地の濁度によって測定される細胞濃度が一定に保たれる一方で、成長に影響を及ぼす一定数の要因を連続的に改変できる。連続的システムは、定常状態の成長条件を維持しようとし、従って、培地を引き出すことによる細胞の損失は培地中の細胞成長速度と釣り合わされなくてはならない。連続的培養プロセスのための栄養物及び成長因子の変調方法、ならびに生成物の形成速度を最大にするための技術は、工業的微生物学の技術分野で周知であり、さまざまな方法が、前出のBrockにより詳述されている。
【0161】
本発明における発酵培地は、C1代謝性生体のための適切な炭素基質を含有していなくてはならない。適切な基質としては、主要な生化学中間体への代謝転換が実証されてきた二酸化炭素、メタン又はメタノールといったような1炭素基質が含まれ得るが、これらに制限されるわけではない。1又は2炭素基質に加えて、代謝活性のためのメチルアミン、グルコサミン及びさまざまなアミノ酸といった一定数の他の炭素含有化合物を利用するものとしても、メチロトローフ生体が知られている。例えば、メチロトローフ酵母は、メチルアミン由来の炭素を利用してトレハロース又はグリセロールを形成する(Bellion et al., Microb. Growth C1 Compd., [Int. Symp.], 7th(1993), 415−32. Editor(s):Murrell, J. Collin;Kelly, Don P. Publisher:Intercept, Andover, UK)。同様にしてCandidaのさまざまな種が、アラニン又はオレイン酸を代謝することになる。(Sulter et al. Arcn. Microbiol. 153:485−489(1990))。従って、本発明で利用される炭素供給源は広範な炭素含有基質を包含でき、生体の選択によってのみ制限されることになる、と考えられている。
【0162】
実施例
本発明はさらに、以下の実施例の中で定義されている。これらの実施例は、本発明の実施形態を表わしているものの、単なる例示を目的として示されているにすぎない、ということを理解すべきである。以上の論述及びこれらの例から、当業者であれば、本発明の基本的特徴を確認し、その精神及び範囲から逸脱することなく、それをさまざまな用途及び条件に適合させるため、本発明のさまざまな変更及び修正を行なうことができる。
【0163】
一般的方法
実施例において使用される標準的組換え型DNA及び分子クローニング技術は、当該技術分野において周知のものであり、Sambrook, J., Fritsch, E.F. 及びManiatis, T.「分子クローニング:実験室マニュアル」;Cold Spring Harbor Laboratory Press; Cold Spring Harbor, (1989)(Maniatis)及びT. J. Silhavy, M. L. Bennan, 及びL. W. Enquist, 「遺伝子融合での実験」Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N. Y. (1984)及びAusubel, F. M. et al.,「分子生物学における現行のプロトコル」Greene Publishing Assoc. and Wiley−Interscience(1987)出版によって記述されている。
【0164】
細菌培養の維持及び成長に適した材料及び方法は、当該技術分野において周知である。以下の例で使用するのに適した技術は、統合的細菌学のための方法マニュアル(Phillipp Gerhardt, R.G.E. Murray Ralph N. Costilow, Eugene W. Nester, Willis A. Wood, Noel R Krieg及びG. Briggs.Phillips, eds,)American Society for Microbiology, Washington, DC.(1994))又はThomas D. Brock in「バイオテクノロジー;工業的微生物学教本」第2版Sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA(1989)に記されているように見い出すことができる。細菌細胞の成長及び維持のために使用される全ての試薬、制限酵素及び材料は、特に指定のないかぎりAldrich Chemicals (Milwaukee, WI) DIFCO Laboratories(Detroit, MI), GIBCO/BRL(Gaithersburg, MD), 又はSigma Chemical Company(St. Louis, MO)から得た。
【0165】
遺伝子配列の操作は、Genetics Computer Group Inc.から入手可能なプログラムパッケージソフトを用いて達成した(Wisconsin Package Version 9.0, Genetics Computer Group(GCG), Madison, Wl)。GCGプログラム「Pileup」が用いられる場合、12というギャップ生成デフォルト値及び4というギャップ拡張デフォルト値が使用された。CGC「Gap」又は「Bestfit」プログラムが用いられる場合、50というデフォルトギャップ生成ペナルティ、及び3というデフォルトギャップ拡張ペナルティが使用された。これらの又は任意の何らかのGCGプログラムにおいてGCGプログラムパラメータがプロンプトされなかったあらゆるケースにおいて、デフォルト値が用いられた。
【0166】
略字の意味は以下の通りである。「h」は時間(単複)、「min」は分(単複)、「sec」は秒(単複)、「d」は日(単複)、「mL」はミリリットル、「L」はリットルを意味する。
【0167】
微生物培養、細胞懸濁液の調製、及びMethylomonas16aについての付随する分析
条件が特定的に指定されているのでないかぎり、Methylomonas16aの処置のための実験例全体にわたり、以下の条件が使用された。
【0168】
少なくとも8:1の気体/液体比(すなわち、160mLの合計体積のうち20mLの硝酸塩液体「BTZ−3」培地)を用いて、Methylomonas16aを、血清ストッパ付Wheatonボトル(Wheaton Scientific, Wheaton, IL)の中で標準的に成長させる。培養のための標準気相は、空気中に25%のメタンを含んでいた。これらの条件には成長条件が含まれ、細胞は成長細胞と呼ばれる。全てのケースにおいて、特に指定のないかぎり、培養をLab−Line回転振とう機の中で常時振とうさせながら、30℃で成長させた。
【0169】
Methylomonas16Aのための硝酸塩培地
本書で「定義された培地」又は「BTZ―3」培地とも呼ばれている硝酸塩液体培地は、以下で示されているような(表4及び5)溶液1と混合されたさまざまな塩で占められており、又は特に指定されている場合には、硝酸塩は15mMの塩化アンモニウムと置換された。溶液1は、微量の無機質の100倍濃縮原液のための組成を提供している。
【0170】
【表14】
【0171】
【表15】
【0172】
微生物成長の査定と細胞収獲条件
実験目的で得られた細胞を、最大光学密度(O.D.660〜1.0)まで成長させた。収獲した細胞は、20分間6000rpmでSS−34の回転子を用いてSorval RC−5B遠心分離機内で遠心分離させることによって得た。これらの細胞ペレットを、pH7の50mMのHEPES緩衝液中に再懸濁させた。これらの細胞懸濁液を、洗浄済み休止細胞と呼ぶ。
【0173】
1cmの光路キュベットを用いて、Ultrospec2000UV/Vis分光光度計(Pharmacia Biotech, Cambridge England)内で660nmで培養の光学密度を測定することにより、微生物の成長を査定した。代替的には、上述のように遠心分離によって培地から細胞を収獲し、培地の塩を除去するべく第2の遠心分離と共に精製水で細胞を再懸濁することにより、微生物の成長を査定した。その後、乾燥重量の決定のため乾燥用オーブン内で105℃で一晩、洗浄済み細胞を乾燥させた。
【0174】
本願明細書に援用するEmptage ら(1997, Env. Sci. Technol. 31;732−734)によって記述されている通りにメタン濃度を決定した。
【0175】
硝酸塩及び亜硝酸塩検定
1mLの細胞培養標本を取上げ、0.2ミクロンのAcrodiscフィルタを通してろ過して細胞をとり除く。この工程からのろ液は、分析すべき亜硝酸塩又は硝酸塩を含有する。AS3500のオートサンプラーを用いてDionexイオンクロマトグラフ500システム(Dionex, Sunnyvale CA)上で分析を行なった。使用されたカラムは、AG−ACガードカラムとATCトラップカラムを伴う4mmのIon−Pac ASll−HC分離カラムであった。全てのカラムはDionexより提供されている。
【0176】
移動相は、水酸化カリウムが12分の時間間隔にわたり0〜50mMという水酸化カリウム勾配であった。細胞温度は、1mL/分の流量で35℃であった。
【0177】
カロテノイド含有量のHPLCの分析
1分間の渦巻運動及び次の30分にわたる間欠的渦巻運動により、1mlのアセトンで細胞ペレットを抽出した。10分間14,000×gでの遠心分離により、細胞の破片を除去し、上清を収集し、0.45μMのフィルタに通過させた。研究のために、Beckman Gold Nouveauソフトウェアを伴うBeckman System Gold(R) HPLC(Columbia, MD)を使用した。対応するガードカラム(Hewlett−Packard, SanFernando, CA)を伴う125×4mmのRP8(5μmの粒子)上に、粗抽出物(0.1mL)を投入した。流量は1mL/分であったが、一方使用された溶剤プログラムは、0−11.5分間水40%/メタノール60%; 11.5−20分間メタノール100%;20〜30分間水40%/メタノール60%であった。スペクトルデータを、Beckmanフォトダイオードアレイ検出器で収集した(型式168)。
【0178】
例1
Methylomonas16aの単離と配列決定
単離株を含有する本来の環境標本を、池の堆積物から得た。アンモニウムを窒素供給源として定義された培地内に、空気中25%のメタン下で直接池の堆積物を接種した。メタンが、炭素及びエネルギーの唯一の供給源であった。660nmでの光学密度が安定するまで成長を追跡し、その時点で、1:100の希釈を達成するように新鮮培地に培養を移した。メタンを唯一の炭素及びエネルギー源として連続する3回の移送の後、アンモニアを窒素供給源として成長寒天上に培養を平板固定し、空気中の25%のメタン下でインキュベートした。この要領で数多くのメタノトローフ細菌種が単離された。しかしながら、その急速なコロニー成長、大きなコロニーサイズ、最小培地上で成長する能力及びカロテノイドのための活性生合成経路を表わすピンクの色素沈着のため、Methylomonas16aが生体として選択された。
【0179】
ゲノムDNAを、標準プロトコルに従ってMethylomonas16aから単離した。ゲノムDNA及びライブラリ構造を出版されたプロトコルに従って調製した。 (Fraser ら、Mycoplasma genitaliumの最小遺伝子補体;Science270(5235):397−403(1995))。100mM Na−EDTApH8.0,10mM トリス−HClpH8.0、400mM NaCl、及び50mM MgCl2を含有する溶液中に、細胞ペレットを再懸濁させた。
【0180】
ゲノムDNA調製: 再懸濁の後、細胞を穏やかに10%のSDS中で溶解させ、55℃で30分間インキュベートした。室温でのインキュベーションの後、プロテイナーゼKを100μg/mLまで添加し、懸濁液が清澄するまで37℃でインキュベートした。DNAをトリスで平衡化したフェノールで2回、そしてクロロホルムで2回抽出した。70%のエタノール中でDNAを沈降させ、10mMのトリス−HCl及び1mMのNa−EDTA(TE)、pH7.5を含有する溶液中で再懸濁させた。DNA溶液を、RNAアーゼの混合物で処理し、次に、トリスで平衡化したフェノールで2回、クロロホルムで2回抽出した。この後、エタノール中での沈殿及びTE中での再懸濁を行なった。
【0181】
ライブラリ構築 300mMの酢酸ナトリウム、10mMのトリス−HCl、1mMのNa−EDTA及び30%のグリセロールの溶液中で、染色体DNAを200〜500μg再懸濁させ、Aeromist Downdraft Nebulizerチャンバ(IBI Medical products, Chicago, IL)の中で60秒間、12psiでせん断した。DNAを沈殿させ、再懸濁させ、Bal 31ヌクレアーゼで処理した。サイズ分画の後、画分(2.0kb又は5.0kb)を切取り清浄し、2工程連結手順を用いて、99%以上の単一インサートを伴う高力価ライブラリを生成した。
【0182】
配列決定: 全微生物ゲノムの配列決定のためには、ショットガン配列決定戦略アプローチが採択された。(Fleischmann, R.ら、Haemophilus influenzaeの全ゲノムランダム配列決定及びアセンブリ Rd Science269(5223);496−512(1995))。配列は、ベクター及びインサート特異的プライマの組合せを用いて、染料ターミネータ技術(米国特許第5,366,860号;EP272, 007)を用いABI配列決定装置で生成された。DNA Star (DNA Star Inc.) 又は Wisconsin GCGプログラム(Wisconsin Package Version 9.0, Genetics Computer Group(GCG), Madison, WI)のいずれか、及びCONSEDパッケージ(バージョン7.0)の中で、配列編集を行なった。全ての配列は、両方向で少なくとも2回の包括度を表わしている。
【0183】
例2
Methylomonas由来の細菌遺伝子の同定及び特徴づけ
(全ての非冗長性GenBank CDS翻訳、3次元構造Brookhavenタンパク質データバンク、SWISS−PROTタンパク質配列データべース、EMBL及びDDBJデータベースから誘導された配列を含む)BLAST「nr」データベース内に含まれている配列との類似性について、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool; Altschul, S.F., et al., (1993) J. Mol. Biol. 215:403−410;www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/も参照のこと)サーチを実行することにより、例1からの全ての配列を同定した。National Center for Biotechnology Information(NCBI)によって提供されているBLASTNアルゴリズムを用いて、「nr」データベース内に含まれた全ての公けに利用可能なDNA配列に対する類似性について、配列を分析した。DNA配列を全ての読取り枠内で翻訳し、NCBIにより提供されているBLASTXアルゴリズム(Gish, W. and States, D. J.(1993)Nature Genetics 3:266−272)を用いて「nr」データべース内に含まれている全ての公けに利用可能なタンパク質に対する類似性について比較した。全ての比較は、BLASTNnr又はBLASTXnrアルゴリズムのいずれかを用いて行なった。
【0184】
これらのBLAST比較の結果は、本発明の数多くの重要な遺伝子について下表16に示されている。表16は、各々のMethylomonas 遺伝子が最大の類似性(類似性%、同一性%及び予想値として提示されている)をもつ配列を要約している。この表は、BLASTnrアルゴリズムに基づいたデータを表示しており、値はexpect値内で報告されている。Expect値は、全く偶然にこのサイズのデータベースのサーチ内で予想される、与えられた評点を伴う整合の数を特定して、整合の統計学的意義を推定している。
【0185】
【表16】
【0186】
【表17】
【0187】
【表18】
【0188】
例3
Methylomonas16a内での遺伝子発現のためのマイクロアレイ
Methylomonasの全ての細菌ORFをDNAマイクロアレイのために調製した。以下の例は、マイクロアレイ分析のために利用される特異的プロトコルを示している。
【0189】
DNAマイクロアレイの構築のためのDNA領域の増幅。Methylomonas sp菌株16aのORFを特定する各タンパク質を増幅するために、特異的プライマ対を使用した。鋳型としてゲノムDNA(10〜30ng)を使用した。Hot Start TaqTMDNAポリメラーゼ(Qiagen, Valencia, CA)及びdNTP(Gibco BRL Life Science Technologies, Gaithersberg, MD)の存在下で、PCR反応を実施した。30秒間95℃での変性サイクル35回、30秒間55℃でのアニーリング及び2分間72℃での重合を実施した。PCR反応の品質を1%のアガロースゲル内での電気泳動でチェックした。Qiagenからの高スループットのPCR精製キットにより、DNA標本を精製した。
【0190】
増幅したORFのアレイ化。アレイ化の前に、384ウェルのマイクロタイタープレート内で等体積のDMSO(10μL)及びDNA(10μL)標本を混合した。コーティングされたガラススライド(Telechem, Sunnyvale, CA)上に標本をアレイ化するために、第II世代のDNAスポタ(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)を使用した。各スライド上で、各々のPCR生成物を複製し、アレイ化した。UV光による架橋の後、室温で乾燥器内で真空下でスライドを保管した。
【0191】
RNAの単離。空気中25%のメタン下で、アンモニウム又は硝酸塩(10mM)を窒素供給源として用いて、定義された培地内でMethylomonas16aを培養した。O.D.がA600(対数期)で0.3に達した時点で最小培地培養の標本を収獲した。細胞培養を迅速に収獲し、RLT緩衝液(Qiagen RNeasy Miniキット、Valencia, CA)内でビーズビーター(Bio101, Vista, CA)を用いて破壊した。4℃で14、000×gで3分間遠心分離により破片をペレット化した。このキットと共に供給されたプロトコルを用いて、RNAの単離を完了させた。カラム上のDNAアーゼ処理の後、RNA生成物を50〜100μLのRNAアーゼを含まない水で溶離させた。RNA調製物を−20又は−80℃のいずれかで凍結した状態で保管した。
【0192】
全RNAからの螢光cDNAの合成。25μLの体積となるまで、RNAアーゼを含まない水で、RNA標本(7〜15μg)及びランダムヘキサマープライマ(6μg:Gibco BRL, Gaithersburg, MD)を希釈させた。標本を10分間70℃で変性させ、その後30秒間氷上で冷ました。14μLの標識づけ混合物を添加した後、10分間室温でのインキュベーションによりアニーリングを達成した。標識づけ混合物は5×酵素緩衝液8μL、DTT(0.1M)4μL、及び20×染料混合物2μLを含有していた。染料混合物は、dATP、dGTP、及びdTTP各々2mMずつ、dCTP1mM及びCy3−dCTP又はCy5−dCTP1mMで構成されていた。1〜1.5μLのSuper Script II逆転写酵素(200単位/mL,Life Technologies Inc., Gaitherberg, MD)を添加した後、cDNA合成を2時間42℃で進行させた。反応に対し2μlのNaOH(2,5H)を添加することにより、RNAを除去した。37℃で10分間のインキュベーションの後、pHをHEPES(2M)10μLで調整した。標識づけしたcDNAを次にPCR精製キット(Qiagen, Valencia CA)で精製した。Cy3の取込みについてはA550を又Cy5についてはA550を又Cy5についてはA650を用いて、標識づけ効率を監視した。
【0193】
ゲノムDNAの螢光標識づけ。ほぼ2kbペアフラグメントに対し、ゲノムDNAを噴霧した。15μLの水の中で6μgのランダムヘキサマープライマ(Gibco BRL Life Science Technologies, Gaithersburg, MD)とゲノムDNA(0.5〜1μg)を混合した。混合物を、5分間、沸とう水中に入れることにより変性させ、その後30秒間氷上でアニーリングしてから、室温に移した。その後、2μLの5×Buffer2(Gibco BRL)及び2μlの染料混合物を添加した。染料混合物の成分及び標識づけ手順は、酵素としてDNAポリメラーゼのクレノウフラグメント(5μg/μL, Gibco BRL)が使用されたという点を除いて、RNA標識づけについて上述したものと同じである。2時間37℃でインキュベートした後、標識づけしたDNAプローブをPCR精製キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて精製した。
【0194】
ハイブリダイゼーション及び洗浄。まず最初に、3.5×SSC(Gibco BRL, Gaithersberg, MD)、0.1%SDS(Gibco BRL)、1%ウシ血清アルブミン(BSA, Fraction V. Sigma, St. Louis, MO)を含有する予備ハイブリダイゼーション溶液を用いてインキュベートした。予備ハイブリダイゼーション後、標識づけされたプローブを含有するハイブリダイゼーション溶液(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)をスライドに添加し、カバースリップで覆った。スライドを、42℃のインキュベータに入れて加湿されたチャンバ内に置いた。一晩のハイブリダイゼーションの後、スライドをまず最初に、1×SSC, 0.1%SDS及び0.1×SSC、0.1%SDSを含有する洗浄溶液で、室温で5分間洗浄した。その後、スライドを同じ溶液で10分間65℃で3回洗浄した。洗浄後、スライドを、窒素ガス流で乾燥させた。
【0195】
データ収集と分析。各スライドから生成されたシグナルを、レーザースキャナ(Molecular Dynamics, Sunnyvale, CA)で定量した。画像をAway Vision4.0ソフトウェア(Imaging Research, Inc.,Qntario, Canada)で分析した。背景を減算することで、各スポットについての未加工の螢光強度を調整した。これらの読取り値を、さらなる分析のためスプレッドシートにエクスポートした。
【0196】
例4
エムデンマイヤーホフ経路と比較した場合の、エントナードウドロフ経路内の遺伝子発現レベルの比較
この例は、16a菌株内の炭素代謝のためのエムデンマイヤーホフ経路の使用を実証するマイクロアレイの証拠を提示している。
【0197】
図2は、エントナードウドロフ経路及びエムデンマイヤーホフ経路についての遺伝子の相対的発現レベルを示している。各遺伝子の相対的転写活性は、前述のように、DNAマイクロアレイを用いて見積られた(例3:Wei, et al., J. Bact., 183;545−556(2001))。
【0198】
特定的には、Methylomonas16aの4000のORF(読取り枠)を含有する単一のDNAマイクロアレイが、ゲノムDNA及び全RNAから生成されたプローブを用いてハイブリリッド形成された。16aのゲノムDNAを、DNAポリメーラゼのクレノウフラグメント及び螢光染料Cy−5で標識づけし、一方、全RNAを逆転写酵素及びCy−3で標識づけした。ハイブリダイゼーションの後、アレイ内の各スポットについてのCy−3及びCy−5の両方のシグナル強度を定量した。次に、(遺伝子比/全比率の合計)×100という公式に従って、(百分率としての)各写しの画分を計算するために、Cy−3及びCy−5の強度比を使用した。得られた値は、個々の遺伝子のmRNAの相対存在量を反映している。従って、アレイによって表わされている全ての遺伝子の転写活性を、下降順のそのmRNA存在度に基づいて格付けすることができる。各ステップに隣接する図2中の番号は、その酵素の相対的発現レベルを表わす。例えば、mRNA存在度に関して、メタンモノオキシゲナーゼは、生体が炭素供給源としてメタンを用いて成長させられた場合にその遺伝子が最高の転写活性を有していたことから、細胞中で最も発現度の高い酵素であった(格付け#1)(図2)。次に最も発現度の高い酵素は、メタノールデヒドロゲナーゼであった(格付け#2)。ヘキスロース−1ホスフェートシンターゼ遺伝子は、メタン内で成長させられた細胞内の最も発現度の高い遺伝子のうちの1つである。
【0199】
エントナードウドロフ経路の「診断用」とみなされた遺伝子は、6−ホスホグルコナートデヒドラターゼ及び2ケト−3−デオキシ−6−ホスホグルコナートアルドラーゼである。これとは対照的に、ホスホフルクトキナーゼ及びフクルトースビスホスフェートアルドラーゼは、エムデンマイヤーホフ配列の「診断用」である。ホスホフルクトキナーゼの伝令RNA写し(格付け#232)及びフルクトースビスホスフェートアルドラーゼ(格付け#65)は、グルコース6ホスフェートデヒドロゲナーゼ(格付け#717)、6−ホスホグルコナートデヒドラターゼ(格付け#763)又は2−ケト−3−デオキシ−6−グルコナートアルドラーゼのものよりも高い存在量にある。データにより、エムデンマイヤーホフ経路の酵母がエントナードウドロフ経路酵母よりも強く発現されることが示唆されている。この結果は、驚くべきことであり、メタノトローフ細菌の中央代謝についての既存の信念に反するものである。(Dijkhuizen, L., et al. グラム陰極及びグラム陽性菌を利用する好気性メタノールの生理学及び生化学;「メタン及びメタノールの利用菌」中、Biotechnology Handbooks 5,1992編者:Colin,Murrell, Howard Dalton;pp149−157)。
【0200】
例5
ピロホスフェート塩リンクホスホフルクトキナーゼについての直接的酵素証拠
この例は、現行の菌株内のピロホスフェート塩関連ホスホフルクトキナーゼ酵素の存在についての証拠を示し、かくして当該Methylomonas菌株内のエムデンマイヤーホフ経路の機能性を確認している。
【0201】
ホスホフルクトキナーゼ活性は、以下に記述した共役酵素検定を用いることによって、Methylomonas16a内に存在することが示された。検定条件は、下表7に示されている。
【0202】
共役検定反応
ホスホフルクトキナーゼ反応を、共役酵素検定によって測定する。ホスホフルクトキナーゼ反応をフルクトース1,6,ビスホスフェートアルドラーゼとそれに続くトリオースホスフェートイソメラーゼと共役させる。酵素活性を、NADHの消滅によって測定する。
【0203】
特定的には、酵素ホスホフルクトキナーゼは、フルクトース6ホスフェート及びピロホスフェートをフルクトース1,6−ビスホスフェート及びオルトホスフェートに転換する主要な反応の触媒として作用する。フルクトース−1,6−ビスホスフェートは、フルクトース1,6−ビスホスフェートアルドラーゼにより3−ホスホグリセルアルデヒド及びジヒドロキシアセトンホスフェートに分割される。ジヒドロキシアセトンホスフェートは、トリオースホスフェートイソメラーゼによって3−ホスホグリセルアルデヒドに異性化される。グリセロールホスフェートデヒドロゲナーゼプラスNADH及び3−ホスホグリセルアルデヒドはアルコールグリセロール−3−ホスフェートとNADを生み出す。NADHの消滅は、分光光度計(UltraSpec4000、Pharmacia Biotech)を用いて340nmで監視される。
【0204】
【表19】
【0205】
この共役酵素検定は、さらに、以下の表8に示されているように、一定数のその他のメタノトローフ細菌の中で活性を検定するために使用された。表8中のデータは、ホスホリル供与体としてATP又はピロホスフェート塩を用いてホスホフルクトキナーゼ活性についてテストされた既知のATCC菌株を示す。これらの生体は、I型又はX型のリブロース−ホスフェート利用菌株又はII型セリン利用菌のいずれかとして分類された。立証済みの文献では、炭素取込み様式、形態論、GC含有%及び生体内の主要な特異的酵素の有無に基づいて、これらのタイプの分類を行なっている。
【0206】
【表20】
【0207】
以上で提示されているデータからいくつかの結論をひき出すことができる。まず第1に、(ホスホフルクトキナーゼのための標準的ホスホリル供与体である)ATPが基本的に、メタノトローフ細菌内のホスホフルクトキナーゼ反応において有効でないことが明らかである。テストされた全てのメタノトローフにおいて反応を支持するのは無機ピロホスフェート塩のみであることがわかった。第2に、全てのメタノトローフがこの活性を含んでいるわけではない。この活性は基本的に、Methylobacter whittenbury及びMethylococcus capsulatusにおいて不在であった。Methylomonas clara及びMethylosinus sporium内では、中間レベルの活性が発見された。これらのデータは、数多くのメタノトローフ細菌が、これまで報告されたことのないホスホフルクトキナーゼ活性を含有し得るということを示している。このことから、この活性を含有するメタノトローフが、活性のエムデンマイヤーホフ経路を有するということを推論することができる。
【0208】
例6
Pantoea stewartii由来のカロテノイド遺伝子のクローニング
遺伝子のcrtクラスタを含むPCRによりフラグメントを増幅するためPantoea ananatis由来の配列を用いてプライマを設計した。これらの配列は、5′−3′すなわち以下の配列を含んでいた:
ATGACGGTCTGCGCAAAAAAACACG SEQ ID NO:43
GAGAAATTATGTTGTGGATTTGGAATGC SEQ ID NO:44
Pantoea stewartii(ATCC No.8199)から染色体DNAを精製し、以下の条件下でのPCR増幅反応においてPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA)を使用した:94℃、5分;94℃(1分)−60℃(1分)−72℃(10分)のサイクルを25回、及び10分間72℃。ゲル電気泳動法の後、約6.5kbの単一の生成物を観察した。pCR4―TOPO(Invitrogen, Carlsbad, CA)内へのTOPOクローニングのために、フラグメントに付加的な3′アデノシドヌクレオチドを添加するべく、10分間72℃の反応内でTaqポリメラーゼ(Perkin Elmer)を使用した。電気穿孔法によるE.coli DH5α(Life Technologies, Rockville. MD)への形質転換の後、複数のコロニーの色が明黄色に見え、それらがカロテノイド化合物を生成していることを表わしていた。Qiagen(Valencia, CA) miniprepキットを用いてメーカーの指示通りにプラスミドを単離した場合、6.5kbの増幅されたフラグメントを含有するプラスミドを、GPS−1Genome Priming Systemキット(New England Biolabs, Inc., Beverly, MA)を用いてpGPS1.1で転位させた。一定数のこれらの転位したプラスミドをトランスポゾンの各端部から配列決定した。トランスポゾン特異的プライマを用いて染料ターミネータ技術(米国特許第5366860号;EP272007)を使用するABI自動シーケンサ上で、配列を生成した。配列アセンブリは、Sequencherプログラム(Gene Codes Corp., AnnArbor MI)を用いて実施した。
【0209】
例7
Rhodococcus erythropolis crtOのクローニング
当該例は、Rhodococcus erythropolis AN12由来のカロテノイド生合成経路遺伝子の単離、配列決定及び同定について記述している。
【0210】
菌株AN12の単離及び特徴づけ
炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてアニリン上で成長する能力に基づいて、Rhodococcus erythropolisの菌株AN12を単離した。アニリン上で成長した細菌を、富化培養から単離した。125ml入りのネジキャップ式エルレンマイヤーフラスコの中で10mlのS12培地(10mMの硫酸アンモニウム、50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、2mM MgCl2、0.7m MCaCl2、50μM MnCl2、1μM FeCl3、1μM ZCl3、1.72μM CuSO4、2.53μM CoCl2、2.42μM Na2MoO2、及び0.0001%FeSO4)内に活性汚泥1mlを接種することにより、富化培養を樹立した。活性汚泥は、廃水処理施設から得た。富化培養を、培地に直接添加した100ppmのアニリンで補足し、相互振とうしながら25℃でインキュベートした。2〜3日毎に100ppmのアニリンを添加することにより、富化培養を維持した。9.9mlの培養を同体積のS12培地と交換することにより14日毎に培養を希釈した。S12寒天上に富化培養の標本を広げることによって炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてアニリンを利用した細菌を、単離させた。各々のペトリ皿のふたの内部に、アニリン(5μL)を置いた。ペトリ皿をパラフィンで密封し、室温(約25℃)で倒置してインキュベートした。次に炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてアニリンを使用する能力について、代表的な細菌コロニーをテストした。初期単離のために使用されたもとのS21寒天平板から新しいS12寒天平板までコロニーを移し、各ペトリ皿のフタの内部にアニリンと共にこれを供給した。ペトリ皿をパラフィルムで密封し、室温約25℃で倒置してインキュベートした。
【0211】
各単離株の16SrRNA遺伝子をPCRで増幅させ、以下の通りに分析した。各単離株をR2A寒天(Difco Laboratories, Bedford, MA)上で成長させた。培養平板からの複数のコロニーを100μlの水中に懸濁させた。混合物を凍結させ、次に一度解凍した。プライマーHK12(5′−GAGTTTGATCCTGGCTCAG−3′)(配列表の配列番号:45)and HK13(5′−TACCTTGTTACGACTT−3′)(配列表の配列番号:46)を用いて、メーカーの指示(Perkin Elmer)に従って市販キットを使用しPCRにより、16S rRNA遺伝子配列を増幅させた。PCRはPerkin Elmer GeneAmp 9600(Norwalk, CT)内で実施された。94℃で5分間標本をインキュベートし、次に、94℃で3秒、55℃で1分そして72℃で1分間サイクリングさせた。増幅した16S rRNA遺伝子をメーカーの指示に従い市販のキットを用いて精製し(QlAquick PCR Purification Kit, Qiagen, Valencia, CA)、自動ABIシーケンサ上で配列決定した。配列決定反応は、プライマHK12、HK13、及びHK14(5′−GTGGCCAGCAGYMGCGGT−3′)(配列表の配列番号47、なおここでY=C又はT、M=A又はCである)。類似の配列についてのGen BankのBLAST search(Altschul, et al., Nucleic Acids. Res. 25:3389−3402(1997))用の照会配列として、各単離株の16S rRNA遺伝子配列を使用した。
【0212】
菌株AN12の16S rRNA遺伝子を配列決定し、GenBank配列データベース内のその他の16S rRNA配列と比較した。菌株AN12の16S RNA遺伝子配列は、Rhodococcus属に属する高G+Cグラム陽性菌の16S rRNA遺伝子配列と少なくとも98%の類似性をもっていた。
【0213】
配列決定及び配列製造のゲノムRNAの調製
ゲノムDNAの調製。Rhodococcus erythropolis AN12を、25mLのNBYE培地(0.8%の栄養ブロス、0.5%の酵母エキス、0.05%のTween80)中で、中間対数増殖期まで通気しながら37℃で成長させた。細菌細胞を4℃で30分間4000gで遠心分離した。細胞ペレットを、まずは1MのKCl(pH10)を含む50mMのNa2CO320mlで、そして次に50mMのNaOAc(pH5)20mlで一回洗浄した。細胞ペレットを穏やかに、50mMのトリス−10mMのEDTA(pH8)5ml中で再懸濁させ、リソチームを、2mg/MLの最終濃度まで添加した。懸濁液を37℃で2時間インキュベートした。その後、1%の最終濃度まで、ドデシル硫酸ナトリウムを添加し、100μg/mlの最終濃度までプロティナーゼKを添加した。懸濁液を5時間55℃でインキュベートした。懸濁液は清澄になり、清澄なリゼイトを、等体積のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出した。20分間17,000gで遠心分離した後、水相を入念に除去し、新しい試験管に移した。2体積のエタノールを添加し、密封したガラス製パスツールピペットでDNAを穏やかに取り込んだ。70%のエタノールの入った試験管にDNAを浸漬させ、次に空気乾燥させた。空気乾燥の後、RNaseA(100μg/mL)を伴う400μlのTE(10mMのトリス−1mMのEDTA、pH8)内にDNAを再懸濁させ、4℃で保管した。
【0214】
ライブラリ構築。300mMの酢酸ナトリウム、10mMのトリス−HCl、1mMのNa−EDTA、及び30%のグリセロールの溶液中に、200〜500μgの染色体DNAを再懸濁させ、Aeromist Downdraft Nebulizerチャンバ(IBI Medical Products, Chicago, IL)内で60秒間12psiでせん断した。DNAを沈殿させ、再懸濁させ、Bal31ヌクレーゼで処理した(New England Biolabs, Beverly, MA)。0.8%のアガロースゲル電気泳動法によるサイズ分画の後、画分(2.0kb又は5.0kb)を切除し、清浄し、2工程連結手順を用いて、99%以上の単一インサートを伴う高力価ライブラリを生成した。
【0215】
配列決定。全微生物ゲノムの配列決定のため、ショットガン配列決定戦略アプローチを採用した(Fleischmann, Robert et al., Haemophilus influenzaeRdの全ゲノムランダム配列決定及びアセンブリScience, 269:1995)。
【0216】
ベクター及びインサート特異的プライマの組合せを用いて、染料ターミネータ技術(米国特許第5366860号;EP272007)を使用してABI自動シーケンサ上で配列を生成した。配列編集を、DNA Star(DNA Star Inc., Madison, WI)又は、Wisconsin GCGプログラム(Wisconsin Package Version9.0,Genetics Computer Group(GCG),Madison, WI)及びCONSEDパッケージ(バージョン7.0)のいずれかで実施した。全ての配列は、両方向で少なくとも2回の包括度を表わしている。
【0217】
Cut 0の配列分析
2つの異なるフィトエンデヒドロゲナーゼに対する相同性を共有するRhodococcus erythropolis AN12のゲノム配列内で2つのORFを同定した。1つのORFは、Crt Iと呼称され、Streptomyces coelicolor A3(2)由来の推定上のフィトエンデヒドロゲナーゼに対する最高の相同性(45%の同一性、56%の類似性)を有していた。もう1つのORF(もともとCrt 12と呼ばれ、現在はCrt 0と呼ばれている)は、Deinococcus radiodurans由来の確率の高いフィトエンデヒドロゲナーゼDR0093に対する最高の相同性(35%の同一性、50%の類似性;White O.et al Science 286(5444)、1571−1577(1999))を有していた。モチーフ分析によるタンパク質のその後の検査から、crt0がケトラーゼとして機能し得ることがわかった。
【0218】
Rhodococcus Crt0のケトラーゼ活性についてのIn vitro検定
crt0がケトラーゼをコードしたか否かを確認するため、発現されたE. coli内のRhodococcus crt0遺伝子を、in vitroでのケトラーゼ活性の存在について検定した。プライマcrtI2−N:ATGAGCGCATTTCTCGACGCC(配列表の配列番号;48)及びcrt12−C:TCACGACCTGCTCGAACGAC(配列表の配列番号:49)を用いてAN12からcrt0遺伝子を増幅させた。増幅した1599bp全長crt0遺伝子を、pTrc His2−TOPOクローニングベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)内にクローニングさせ、メーカーの指示に従ってTOP10細胞内に形質転換させた。ベクター上のtrcプロモータとの関係において順方向配向でクローニングされたcrt0遺伝子を含有する構成体(pDCQ117と呼ぶ)を、制限分析及び配列決定によって確認した。
【0219】
crt0を発現するE. coli TOP10(pDCQ117)細胞由来の粗製細胞抽出物を用いてin vitro酵素検定を実施した。100μg/mlのアンピシリンを含有する100mlのLB培地に、TOP10(pDCQ117)細胞の1mlの新鮮な一晩の培養を接種した。OD600が0.6に達するまで300rpmでの振とうと共に、37℃で細胞を成長させた。その後、0.1mMのIPTGで細胞を誘発させ、細胞はさらに3時間成長し続けた。遠心分離(4000g、15分)により50mlの培養から収獲した細胞ペレットを凍結させ、一回解凍し、0.25%のTritoxX−100を含む2mlの50mMの氷冷トリス−HCl(pH7.5)中に再懸濁させた。50μlのアセトン中のβ−カロテン基質(Spectrum Laboratory Products, Inc)10μgを懸濁液に添加し、ピペットで移して混合した。混合物を2本の試験管の中に分割し、各試験管に、250mgのジルコニア/シリカビーズ(0.1mm, BioSpec Products, Inc, Bartlesville, OK)を添加した。2分間ビーズビーティングにより細胞を破壊し、Eppendorfマイクロ遠心分離機5414Cの中で2分間10000rpmでの回転により、細胞破片を除去した。組合さった上清(2ml)を、50mlフラスコ内で50mMのトリスpH7.5緩衝液3mlで希釈し、異なる長さの時間150rpmで振とうしながら反応混合物を30℃でインキュベートした。5mlのメタノールを添加し、5mlのジエチルエーテルでの抽出により、反応を停止させた。抽出のため2つの相を分離するべく、500mgのNaClを添加した。上部ジエチルエーテル相中のカロテノイドを収集し、窒素下で乾燥させた。Beckman Gold Nouveau Softwareを伴うBeckman System Gold(R) HPLC(Columbia, MD)を用いて、HLPC分析のためカロテノイドを0.5mlのメタノール内に再度溶解させた。対応するガードカラムを伴う125×4mmのRP8(5μmの粒子)カラム上に、粗製アセトン抽出0.1mlを投入した。流量は1ml/分であり、溶剤プログラムは、0〜11.5分間水40%/メタノール60%、11.5〜20分間メタノール100%、20〜30分間水40%/メタノール60%であった。Beckmanフォトダイオードアレイ検出器(型式168)を用いてスペクトルデータを収集した。
【0220】
16時間反応混合物中で、470nmにおいて3つのピークが同定された。標準と比較した場合、15.8分の保持時間でのピークはβ−カロテンであり、13.8分という保持時間でのピークはカンタキサンチンであることが見極められた。14.8分におけるピークは、わずか1つのケトン基の添加での中間体であるエキネノンである可能性が最も高かった。2時間反応混合物中では、エキネトン中間体は、唯一の反応生成物であり、カンタキサンチンは全く生成されなかった。培養時間をさらに長くすると、より高レベルのエキネノン及びカンタキサンチンに対応するピークの出現が結果としてもたらされた。カンタキサンチンは、2つのケトン基の添加を表わす、この工程での最終生成物である(表9)。ケトラーゼ活性がcrt0遺伝子に特異的であったことを確認するため、基質としてβ−カロテンを使用しない対照細胞の抽出を用いても、検定を行なった。対照反応混合物においては、いかなる生成物ピークも検出されなかった。
【0221】
要約すると、in vitro検定データは、中間体としてのエキネノン(1つのケトン基)を介してβ−カロテンをカンタキサンチン(2つのケトン基)へと変換したケトラーゼをCrt0がコードすることを確認した。Rhodococcus Crt0のこの対称的ケトラーゼ活性は、Synechocystis Crt0の非対称的機能について報告されたものと異なっている。
【0222】
【表21】
【0223】
例8
例6及び7からの全ての配列を、例2の方法に従って、BLAST「nr」データベース内に含まれている配列に対する類似性についてBLASTサーチ(Basic Local Alignment Search Tool; Altschul, S.F., et al., (1993) J. Mol. Biol. 215:403−410;www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/ も参照のこと)を行なうことによって同定した。
【0224】
これらのBLAST比較の結果は、下表10に示されている。この表は、予想値で報告した値と共に、BLAST Xnrアルゴリズムに基づいたデータを表示している。予想値は、全く偶然にこのサイズのデータベースのサーチにおいて予想される整合の数を、与えられた評点と共に特定して、整合の統計的意義を推定している。
【0225】
【表22】
【0226】
【表23】
【0227】
例9
メタン上で成長するMethylomonas16A内のβ−カロテンの発現
Pantoea stewartii由来のcrt EXYIBZ遺伝子を含むcrt遺伝子(例6)を、Methylomonas16a内に導入して、望ましい40炭素カロテノイドの合成を可能にした。
【0228】
crt遺伝子を含むPCRによりフラグメントを増幅させるため、Erwinia uredovora由来の配列を用いてプライマを設計した。これらの配列は、5′−3′すなわち以下の配列を含んでいた:
ATGACGGTCTGCGCAAAAAAACACG SEQ ID 43
GAGAAATTATGTTGTGGATTTGGAATGC SEQ ID 44
【0229】
Pantoea stewartii(ATCC No.8199)から染色体DNAを精製し、以下の条件下でのPCR増幅反応においてPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA)を使用した:94℃、5分;25サイクルについて94℃(1分)−60℃(1分)−72℃(10分)、及び10分間72℃。ゲル電気泳動法の後、約6.5kbの単一の生成物を観察した。pCR4―TOPO(Invitrogen, Carlsbad, CA)内へのTOPOクローニングのために、フラグメントに付加的な3′アデノシドヌクレオチドを添加するべく、10分間72℃の反応内でTaqポリメラーゼ(Perkin Elmer)を使用した。電気穿孔法によるE.coli DH5α(Life Technologies, Rockville. MD)への形質転換の後、複数のコロニーの色が明黄色に見え、それらがカロテノイド化合物を生成していることを表わしていた。
【0230】
Methylomonas16a内への導入のため、pCR4−crt由来のcrt遺伝子クラスタをまず最初に、広宿主域ベクターpBHR1(MOBiTec, LLC, Marco Island, FL)内で唯一のEcoRI部位内にサブクローニングした。EcoRI(New England Biobabs, Beverly, MA)での消化により、pBHR1(500ng)を線形化し、次に子ウシ腸内アルカリ性ホスフェターゼ(Gibco/BRL, Rockville, MD)で脱ホスフェート化した。EcoRIでpCR4−crtを消化し、crt遺伝子クラスタ(crt EXYIB)を含有する6.3kbのEcoRIフラグメントを、0.8%のアガロース(TAE)中のゲル電気泳動法の後に精製した。このDNAフラグメントを、EcoRIで消化したpBHR1に連結し、連結したDNAを用いて、電気泳動法によりE. Coli. DH5αを形質転換した。50μg/mlのカナマイシンを含有するLB培地上で、形質転換体を選択した。
【0231】
いくつかの単離株は、クロラムフェニコール(25μg/ml)に対する感受性があることがわかっており、37℃での一晩のインキュベーションの後、黄色コロニー表現型を実証した。これらの形質転換体由来のプラスミドDNAの分析により、pBHR1クロラムフェニコール耐性遺伝子と同じ配向でクローニングされたcrt遺伝子クラスタの存在が確認され、このプラスミドをpCrt1(図3)と呼称した。これとは対照的に、白色コロニー表現型を実証する形質転換体由来のプラスミドDNAの分析により、pBHR1クロラムフェニコール耐性遺伝子と反対の配向でクローニングされたcrt遺伝子クラスタの存在が確認され、このプラスミドをpCrt2と呼称した。これらの結果は、crt遺伝子クラスタの機能的発現が、pBHR1 catプロモータから導かれるということを示唆した。
【0232】
プラスミドpCrt1を、三親接合交配によりMethylomonas16aの中に移入した。カナマイシン(50μg/mL)を含有するLB培地の中で、一晩、pRK202Bを含有するE. coliヘルパー菌株及びE. coli DH5α供与体菌株を成長させ、LB内で三回洗浄し、もとの培養体積の約60倍の濃度を表わすLBの体積中に再懸濁させた。25%(v/v)のメタンを含む雰囲気内で硝酸塩液体「BTZ−3」培地(General Methods)中で48時間、Methylomonas16a受容体を成長させ、BTZ−3内で3回洗浄し、もとの培養体積の150倍の濃度を表わすBTZ−3の体積内で再懸濁させた。それぞれ1:1:2の比率で0.5%(w/v)の酵母抽出物を含有するBTZ−3寒天平板の表面上で、供与体、ヘルパー及び受容体細胞を組合わせた。接合が起こるようにするため、16〜72時間25%のメタンの中に30℃で平板を維持し、その後、細胞ペーストを収集し、BTZ−3中で再懸濁させた。希釈液を、カナマイシン(50μg/ml)を含むBTZ−3寒天上に平板固定し、最高1週間、25%のメタン中で30℃でインキュベートした。単離のため、カナマイシン(50μg/mL)を伴うBTZ−3寒天上にトランス接合体をストリークさせた。これらのトランス接合体から単離されたプラスミドDNAの分析により、pCrt1の存在が確認された(図3)。
【0233】
カロテノイド組成物の分析のためには、トランス接合体を、カナマイシン(50μg/ml)を含む25mlのBTZ−3の中で培養し、最高1週間唯一の炭素供給源としての25%のメタン中で30℃でインキュベートした。細胞を遠心分離で収獲し、−20℃で凍結させた。解凍後、ペレットを抽出し、「一般的方法」の方法に従ってHPLCによりカロテノイド含有物を分析した。
【0234】
pCrt1を含むMethylomonas16a由来の抽出物のHPCL分析により、β−カロテンの合成が確認された。図3の左側パネルは、β−カロテン標準を用いて得られたHPLC結果を示しており、15.867分で単一のピークが存在している。同様にして、図3の右側パネルは、pCrt1プラスミドを含むMethylomonas16aトランス接合体培養の分析のために得られたHPLCプロフィールを示す。15.750分で類似のピークが、培養中のβ−カロテンを表わしている。
【0235】
例10
メタン上で成長するMethylomonas16A中のZeaxanthin の発現
Methylomonas16a中のゼアキサンチンの合成を可能にするため、pTrc His−crt2由来のcrt遺伝子(上述の通り)を、広宿主範囲ベクターpBHR1(MOBiTec.LLC, Marco Island, FL)のクロラムフェニコール耐性遺伝子内にサブクローニングさせた。その後EcoRI及びScaIでpBHR1(500ng)を消化し、0.8%のアガロース(TAE)中でのゲル電気泳動の後、4876bpのEcoRI−Scal DNAフラグメントを精製した。プラスミドpTrc His−crt2をSsp1及びEcoRIで同時に消化し、E. coli trcプロモータの転写制御下のcrt遺伝子クラスタ(crt EXYIB)を含有する6491bpのSsp1−EcoRI DNAフラグメントを、0.8%のアガロース(TAE)中でのゲル電気泳動の後に精製した。6491bpのSspI−EcoRIフラグメントを、4876bpのEcoRI−ScaI フラグメントに連結し、連結したDNAを用いて電気穿孔法によりE. coli DH5αを形質転換した。50μg/mlのカナマイシンを含むLB培地上で形質転換体を選択した。複数のカナマイシン耐性単離株が同様にクロラムフェニコール(25μg/ml)に対する感受性をもち、37℃での一晩のICN後、黄色のコロニー色を示した。これらの形質転換体由来のプラスミド−DNAの分析により、E. coli trcプロモータの転写制御下でpBHR1内にクローニングされたcrt遺伝子クラスタの存在が確認された。このpCrt3構成体についてのプラスミド地図は、図4に示されている。p catプロモータは、標識づけされた通りの特異的遺伝子を表わす大きく幅広の矢印とは対照的に、小さい肉太黒色矢印で示されている。
【0236】
pCrt1について上述したとおり(例9)、プラスミドpCrt3を、三親接合交配によりMethylomonas16a内に移入した。このプラスミドを含むトランス接合体は唯一の炭素供給源としてのメタン及びカナマイシン(50μg/mL)を伴うBTZ−3寒天上の成長の後黄色のコロニー色を示した。
【0237】
pCrt3を含むMethylomonas16A由来の抽出物のHPLC分析により、ゼアキサンチン及びそのモノ及びジグルコシドの存在が明らかになった。これらの結果は、図4に示されている。左側のパネルは、Methylomonas16A又はpCrt3を含むMethylomonas16A由来の抽出物のHPLCプロフィールを示している。右側のパネルは、HPLCプロフィール内に表示された個々のピークのUVスペクトルを示し、pCrt3を含むMethylomonas16A内でのゼアキサンチン及びそのモノ及びジ−グルコシドの合成を実証している。これらの結果は、crtEXYIが、trcプロモータから機能的に発現され、一方crtZ遺伝子はMethylomonas 16A内のpBHR1catプロモータから反対側の配向で転写されることを示唆していた。
【0238】
当業者であれば、このプラスミド及び後続するプラスミド由来のcrtXの欠失が、モノ及びジ−グルコシドの形成無くゼアキサンチンの生成を可能にするはずであるということを予想することだろう。さらに、単数又は複数のプロモータから同じ配向でcrtEYIBZ遺伝子が発現されているプラスミドが、転写の干渉の可能性を低減しゼアキサンチンの合成を増強させるものと予想することができる。これは、当業者にとって既知の標準的クローニング技術を用いて容易に可能となる。
【0239】
例11
最適化されたHMPSプロモータを用いた、メタン上で成長するMethylomonas16A中のゼアキサンチンの発見
メタン上のMethylomonas 16aの成長後の遺伝子アレイデータの分析は、ヘキスロース−1ホスフェートシンターゼ(HMPS)が最も発現度の高い遺伝子の1つであることを示唆した。かくして、Methylomonas 16A内のP. stewartiicr遺伝子クラスタ内のものを含め、非相同遺伝子の高レベルの発現を導くためのHMPSプロモータを含むDNA配列を使用することが可能である。HMPS遺伝子から上流側の5′−DNA配列の分析は、Baylor College of Medicineが作成したNNPPニュートラルネットワーク原核生物プロモータ予測プログラムを用いて、両方のDNAストランド内の潜在的転写開始部位を同定した。H6Pシンターゼの順方向ストランドに関する予測は、表11の下に示されている。類似の結果が、逆ストランドについて下表12に示されている。
【0240】
【表24】
【0241】
【表25】
【0242】
これらの配列に基づいて、Methylomonas 16aゲノムDNA由来のHMPSプロモータを含む240bp DNA配列を増幅するためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の中で、以下のプライマを使用した。
5’ CCGAGTACTGAAGCGGGTTTTTGCAGGGAG 3’(SEQ ID NO:39)
5’ GGGCTAGCTGCTCCGATTGTTACAG 3’(SEQ ID NO:40)
【0243】
PCR条件は、以下の通りであった:2分間94℃、続いて94℃で1分、50℃で1分72℃で2分のサイクルを35回、そして最後に72℃で5分の拡充。精製の後、240bpのPCR生成物をpCR2.1(Invitrogen, Carlsbad, CA)に連結させ、電気穿孔法によりE.coli DH5α内へ形質転換した。カナマイシン(50μg/ml)とX−galを含むLB寒天上で白色のコロニー色を示した形質転換体由来のプラスミドDNAの分析は、予想したプラスミドを同定し、これは、PHMPSと呼称された。PHMPSをEcoRIで消化し、HMPSプロモータを含む256bpのDNAフラグメントを1.5%のアガロース(TEA)中でのゲル電気泳動の後に精製した。このDNAフラグメントを、EcoRIで予め消化したpCrt3に連結させ、子ウシ腸内アルカリ性ホスファターゼで脱ホスフェート化した。電気穿孔法によりE.coli DH5αを形質転換するため、連結されたDNAを使用した。カナマイシン(50μg/ml)を含有するLB寒天上で黄色のコロニー色を示した形質転換体由来のプラスミドDNAの分析は、trcプロモータの転写制御下でcrt EXYIBを、又 hmpsプロモータの転写制御下でcrtZ遺伝子を含む、pCrt4と呼称された予想のプラスミドを同定した(図5)。
【0244】
プラスミドpCrt4を、三親接合交配によりMethylomonas16a内に移入した。このプラスミドを含むトランス接合体は唯一の炭素供給源としてのメタン及びカナマイシン(50μg/mL)を伴うBTZ−3寒天上の成長の後黄色のコロニー色を示した。pCrt3を含むMethylomonas16A由来の抽出物のHPLC分析により、ゼアキサンチン及びそのモノ及びジグルコシドの存在が明らかになり、かくしてcrtZ遺伝子の発現が確認された。このデータは図5に示されている。13.38分、12.60分及び11.58分の保持時間でのピークが、それぞれ、ゼアキサンチン、ゼアキサンチンモノグルコシド及びゼアキサンチンジグリコシドの混合物に対応している。
【0245】
例12
メタン上で成長するMethylomonas 16A中のカンタキサンチン及びアスタキサンチンの発現
Methylomonas 16a内のカンタキサンチン及びアスタキサンチンの合成を可能にするため、β−カロテンケトラーゼをコードするRhodococcus erythropolis AN12crt0遺伝子をpcrt4へとクローニングした。適当なSpeI及びNheI制限部位ならびに、おそらくMethylomonas 16a内で認識されたcrtEの上流側に見い出されたリボソーム結合部位を導入するために、以下のプライマを用いて、pDCQ117(例7)由来のPCRによりcrt0遺伝子を増幅した。
5’−AGCAGCTAGCGGAGGAATAAACCATGAGCGCATTTCTC−3 ’(SEQ ID NO:41
5’−GACTAGTCACGACCTGCTCGAACGAC−3 ’(SEQ ID NO:42)
【0246】
PCR条件は、以下の通りであった:95℃で5分間、95℃で30秒、1サイクルにつき0.15℃の減少で45〜60℃の勾配で30秒及び72℃で90秒のサイクルを35回、そして72℃7分間の最終拡充。1.0%のアガロース(TAE)内でゲル電気泳動法の後に、1653bpのPCR生成物を精製し、Spel及びNhel制限エンドヌクレアーゼで同時に消化し、次に、Nhelで予め消化され子ウシ腸内アルカリ性ホスファターゼで脱ホスフェート化されたpCrt4に連結させた。連結したDNAを用いて、電気穿孔法によりE.coli DH5αを形質転換した。
【0247】
カナマイシン(50μg/ml)を含むLB寒天上で黄色のコロニー色を示した形質転換体由来のプラスミドDNAの分析は、pCrt4と呼称された予想プラスミドを同定し、ここで、trcプロモータの転写制御下で、crtEXYB遺伝子がクローニングされ、hmpsプロモータの転写制御下でcrt0及びcrtZ遺伝子がクローニングされた。このプラスミド構成体は、図6に示されている。長時間のICNの後、pert4.1を含む形質転換体が、サーモンピンクのコロニー色を示した。
【0248】
プラスミドpCrt4.1を、三親接合交配により、Methylomonas 16aの中に移入した。このプラスミドを含有するトランス接合体は、唯一の炭素供給源としてのメタン及びカナマイシン(50μg/mL)を伴うBTZ−3寒天上での成長の後オレンジ色のコロニー色を示した。pCrt4.1を含むMethylomonas 16aの抽出物のHPLC分析が、図6中に示されている。これらの結果から、内因性Methylomonas 16a30炭素カロテノイド(保持時間12.717分)ならびにカンタキサンチン(保持時間13.767分)の存在が明らかになった。野生型色素の保持時間は、アスタキサンチンについて予想されたものに非常に近い。このピークの肩の分析により、アスタキサンチンの存在が確認された。
【0249】
この菌株中の野生型16A色素の卓越した形成は、強いhmspプロモータ由来のcrtOZオペロンの高レベル発現によるcrtEXYIBオペロンの転写干渉を示唆していた。さらに、pBHR1ベクタ上のcatプロモータが、hmpsプロモータと協力してcrtOZの発現を導いているかもしれないということが仮説として取上げられた。単数又は複数のプロモータから同じ配向でcrtEYIBZO遺伝子が発現されているプラスミドは、転写干渉の可能性を低減しかくしてカンタキサンチン及びアスタキサンチンの合成を増強するものと予想することができる。
【0250】
例13
上部イソプレノイド経路遺伝子の増幅によるMethylomonas 16Aの未変性カロテノイドの合成の増強
以下のプライマでのPCRを用いることにより、Methylomonas 16aゲノムから未変性イソプレン経路遺伝子 dxs及びdxrを増幅した。
【0251】
Dxsプライマ:
順方向反応:aaggatccgcgtattcgtactc(BamHI部位を含む、配列表の配列番号55)。
【0252】
逆方向反応 ctggatccgatctagaaataggctcgagttgtcgttcagg(BamHI及びXhoI部位を含む、配列表の配列番号56)。
【0253】
Dxrプライマ:
順方向反応:aaggatcctactcgagctgacatcagtgct(BamHI及びXhoI部位を含む、配列表の配列番号57)。
【0254】
逆方向反応:gctctagatgcaaccagaatcg(XbaI部位を含む、配列表の配列番号58)。
【0255】
dxs及びdxr遺伝子の予想されたPCR生成物は、遺伝子の天然のプロモータが確実に存在するように各遺伝子の出発コドンの上流側にそれぞれ323bp及び420bpの配列を内含していた。PCRプログラム(Perkin−Elmer, Norwalk, CT内)は以下の通りであった:変性95℃(900秒);94℃(45秒)、58℃(45秒)、72℃(60秒)のサイクルを35回;最終的伸長72℃(600秒)。反応混合物(合計体積50μl)は以下のものを含有していた:25μlのHot Starマスターミックス(Qiagen, Valencia, CA), 0.75μlのゲノムDNA(約0.1ng)、1.2μlのセンスプライマ(=10pmol)、1.2μlのアンチセンスプライマ(=10pmol)、21.85μl脱イオン水。
【0256】
標準的手順(Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T.分子クローニング:実験室マニュアル、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor(1989))を使用して、pTJS75::lacZ:Tn5Kn, 低コピー、広宿主プラスミド(Schmidhauser and Helinski J. Bacteriology. Vol. 164:446−455(1985))内にdxs及びdxrをクローニングした。
【0257】
DNA単離、濃縮及び精製には、Qiagenキット(Valencia, CA)を使用した。Gibco/BRL(Rockville, MD)又はNEB(Beveily, MA)から、クローニング用酵素を購入した。プラスミドをE.coli内に移入するために、On Shot Top10コンピテント細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)キュベット(0.2cm;Invitrogen)及び標準的設定(Bio−Rad Gene Pulser III (Hercules, CA)を電気穿孔法用に使用した。
【0258】
まず第1に、lacZとpTJS75::lacZ:Tn5KnのTn5Knカセットの間にあったBamHI部位の中にdxsをクローニングした。結果として得られたプラスミドを、LBカナマイシン(Kn、50μg/mL)上で成長するE.coli 形質転換体から単離させた。さらなるクローニングのためには、(制限分析により確認されるような)Kn耐性遺伝子の方向にインサートを含むプラスミドを選択した。XhoI及びXbaI部位を使用することにより、dxsとTn5Knカセットの間でdxr遺伝子をクローニングした。予期したプラスミドを、E.coli 形質転換体から単離した。プラスミド中のdxs及びdxrの存在を、制限分析及び配列決定によって確認した。結果として得たプラスミド pTJS75::dxs:dxr:lacZ:Tn5Knは、図7に示されている。
【0259】
プラスミドpTJS75::dxs:dxr:lacZ:Tn5Knを三親接合により、E.coliからMethylomonas 16a内に移入した。交配の後の汚染するE.coli由来のメタノトローフを単隔する速度を速めるため、受容体として菌株Methylomonas 16aの自然発生的リファンピン(Rif)耐性単離株を使用した。カロテノイド含有量の決定のために6つの別々に単離したカナマイシン耐性Methylomonas 16aトランス接合体を用いた。
【0260】
カロテノイドの決定のために、静止成長期まで週末全体にわたりメタン(25%)下で6つの100mLのトランス接合体培養(BTZ+50μg/mLのKn)を成長させた。各々の2つの培養、つまりプラスミド無しの野生型菌株及びそのRif耐性誘導体が、これらの菌株内に異なるカロテノイド含有量が存在するか否かを見ること及びカロテノイド測定の標準偏差を得ることを目的とする対照として役立った。細胞をスピンダウンさせ、精製水で洗浄し、乾燥重量を決定するため24時間凍結乾燥させた(凍結乾燥機;Virtis, Gardiner, NY)。各培養の乾燥重量を決定した後、細胞を抽出した。まず第1に、0.4mLの水と共に細胞をウェルに入れ、15分間放置した。15分後に、4mLのアセントンを添加し、標本を均質化するべく徹底的に渦巻運動させた。その後、標本を1時間30℃で撹拌した。1時間後、細胞を遠心分離した。上清中にピンクの着色が見られた。上清を収集し、0.3mLの水及び3mLのアセトンを用いてペレットを再び抽出した。第2の抽出からの上清の色は、さらに明るいピンクであった。両方の抽出の上清を組合せ、それらの体積を測定し、分光測光法で分析した。負の対照とトランス接合体標本の間には、スペクトル内のいかなる質的差異もみられなかった。アセトン抽出物の中では、分光測光法により測定された以下の観察が標準的であった(460nmでピークの肩、491及び522nmで最大)(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)。カロテノイド含有量の計算のため、491nmでの吸収を読み取り、バクテリオルベリンのモル減衰係数(188.000)及び552というMW(分子量)を使用した。カロテノイドのMW(552g/mol)を、精製済み標本のMALDI−MSにより決定した(シリカ/Mg吸着とそれに続くシリカカラムクロマトグラフィ、参考:Britton, G., Liaaen−Jensen, S., Pfander, H., Carotenoids Vol. 1a;単離と分析、Birkhauser Verlag, Basel, Boston, Berlin(1995))。
【0261】
Methylomonas 16a細胞からの精製アセトン抽出物は、標準的吸収スペクトルを有する(460nmで屈折、491nm及び522nmで最大)。アセトン抽出物のHPLC分析(0〜10分間水15%/メタノール85%、その後メタノール100%という溶剤プログラムを除いて、「一般的方法」に記述されている通り)は、上述の吸収スペクトルをもつ1つの主要なカロテノイド(約6mLでの正味保持体積)が、野生型及びトランス接合体Methylomonas 16a細胞のピンク着色の原因であることを確認した。抽出物中の他の何れのものも491nmで吸収しないことから、分光光度計(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)を用いてアセトン抽出物中でカロテノイド含有量を直接測定した。
【0262】
バクテリオルベリンのモル減衰係数(188.000)を用いて、数量の計算を行なった。
【0263】
カロテノイドの数量を決定するために、以下の公式を使用した(Lambert−Beerの法則);
Ca=A491nm/(d×ε×v×Mw)
Ca:カロテノイドの量(g)
A491nm:491nm(−)でのアセトン抽出物の吸収
d:キュベット内の光路(1cm)
ε:モル減衰係数(L/(mol×cm))
MW:分子量(g/mol)
v:抽出物の体積(L)
【0264】
カロテノイド含有量を得るためには、計算上のカロテノイド量を対応する細胞乾燥重量で除さなくてはならない。
【0265】
【表26】
【0266】
4つの負の対照の間には、有意な差異は全く存在しなかった。同様にして、6つのトランス接合体の間には有意な差異は全く存在しなかった。ただし、負の対照における平均カロテノイド生成に比べて、トランス接合体内には平均カロテノイド生成の約28%の増大が認められた。
【0267】
構造を確認する目的で、そのC30−カロテノイドが同定されたMethylobacterium rhodinum(旧Pseudomonas rhodos:ATCC No.14821)を基準菌株として使用した。(Kleinig et al., Z. Naturforsch 34c, 181−185(1979);Kleinig及びSchmitt, Z. Naturforsch 37c, 758−760(1982))。Methylobacterium rhodinum及びMethylomonas 16aのけん化した抽出物を、上述のものと同じ条件でHPLC分析により比較した。結果は、以下の通り示されている:
けん化したM. rhodinum;460nmで屈折、487nm、517nmで最大。正味保持体積=1.9mL
けん化したMethylomonas 16a:460nmで屈折、488nm、518nmで最大。正味保持体積=2.0mL
【0268】
例14
上部イソプレノイド経路遺伝子の増幅によるMethylomonas 16A内の遺伝子工学処理されたカロテノイドの合成の増強
前述の例(例13)は、Methylomonas 16a中のdxs及びdxr遺伝子の増幅が、内因性30炭素カロテノイドの含有量を約30%増大させることを実証した。dxs、dxr及びlytBといったようなその他のイソプレノイド経路遺伝子の増幅を用いて、工学処理されたカロテノイド経路内への代謝フラックスを増大させ、かくしてβ−カロテン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン及びアスタキサンチンといったような40炭素カロテノイドの製造を増強させることができる。lytB遺伝子を、サブクローニングのための適切なXhoI制限部位をも導入した以下のプライマを用いてMethylomonas 16a由来のPCRにより増幅させた:
5’−TGGCTCGAGAGTAAAACACTCAAG−3 ’ (SEQ ID NO:59)
5’−TAGCTCGAGTCACGCTTGC−3 ’ (SEQ ID NO:60)
【0269】
PCR条件は、以下の通りであった:95℃で5分間;95℃で30秒1サイクルあたり0.25℃の減少で47〜62℃の勾配で30秒及び72℃で1分のサイクルを35回、そして72℃で7分の最終的拡充。
【0270】
精製の後、XhoIで993bpのPCR生成物を消化させ、先にXhoIで消化され子ウシ腸内アルカリ性ホスファターゼで脱ホスフェート化されたPTJ75;;dxs;dxr;lacZ;Tn5Knに連結した。電気穿孔法により、E.coli DH10Bを形質転換するために、連結させたDNAを用いた。カナマイシン(50μg/ml)を含有するLB寒天上で選択された形質転換体由来のプラスミドDNAの分析は、未変性dxsプロモータの制御下でオペロン内のdxs及びdxr遺伝子の間でlytB遺伝子がサブクローニングされたプラスミドを同定した。このオペロンを、HindIII及びBamHI制御エンドヌクレアーゼでの逐次的消化の後、4891bpのDNAフラグメントとして切除し、T4 DNAポリメラーゼでの処理により平滑末端化し、1.0%のアガロース(TAE)中でのゲル電気泳動の後に精製した。精製したDNAフラグメントを、BstXIでの消化によりcrtZ遺伝子内で予め線形化されたcrt3(例10)に連結させ、T4 DNAポリメラーゼでの処理により平滑末端化し、ウシ腸内アルカリ性ホスファダーゼで脱ホスフェート化した。連結されたDNAを用いて、E.coli DH10Bを電気穿孔法により形質転換し、形質転換体を、カナマイシン(50μg/ml)を含むLB寒天上で選択した。crt3を含有するものに比べより強い黄色のコロニー色を示した形質転換体由来のプラスミド、DNAの分析により、crtEXYIB及びdxs−lytB−dxrの両方のオペロンを含むpcr3.2と呼ばれるプラスミドが同定された(図7)。
【0271】
pcrt3.2を含むE.coliからの抽出物のHPLC分析は、β−カロテンの合成を確認した。三親接合交配によるMethylomonas 16a内へのこのプラスミドの移入により、pcrt3を含有するトランス接合体に比べたβ−カロテンの生成が増強されることになる。
【0272】
例15
Methylomonas 16a内のβ−カロテンの工業的生成光学密度の測定
Methylomonas培養の成長を、Shimazu160UUV/Visデュアルビーム、記録分光光度計を用いて600nmで監視した。基準細胞内でブランクとして水を使用した。1.0未満の吸光度値を維持するべく、脱イオン水で培養標本を適切に希釈した。
【0273】
乾燥細胞重量の決定
真空ろ過により予め秤量した0.2μgのフィルター(GTTP型、Millipore, Bedford, MA)20mLのMethylomonas細胞培養をろ過した。バイオマス標本のろ過の後、フィルタを10mLの脱イオン水で洗浄し、乾燥するまで真空下でろ過した。次にフィルタを24〜48時間、95℃で乾燥用オーブン内に置いた。24時間後に、フィルターを室温まで冷却し、再度秤量した。フィルタ重量を記録した後、フィルタを乾燥用オーブンに戻し、重量損失のさらなる変化が全く記録されなくなるまで、さまざまな時間的間隔でプロセスを反復した。上述の手順により接種に先立ち20mLの発酵培地をろ過することによって、乾燥細胞重量(DCW測定に対する培地の寄与が得られた。乾燥細胞重量を以下の公式により計算する。
【0274】
【数1】
【0275】
アンモニア濃度決定
アンモニア分析用の3mLの培養標本を、発酵装置から取り、10分間10,000×g及び4℃で遠心分離に付した。その後、0.2μmの注射器フィルタ(Gelman Lab., AnnArbor, MI)を通して上清をろ過し、分析するまで−20℃に置いた。発酵ブロス中のアンモニア濃度を、100mAのSRS電流で導電性モードで動作するED40電気化学検出器及びAS3500オートサンプラー、GP40勾配ポンプの備わったDionex System500イオンクロマトグラフ(Dionex, Sunnyvale, CA)を用いて、イオンクロマトグラフィにより決定した。アンモニアの分離を、DionexCG12AガードカラムのついたDionexCS12Aカラムを用いて達成した。カラム及び化学検出セルを35℃に維持した。1mL min―1の流量で流動相として22mMのH2SO4を用いて、イソフラティク溶離条件を利用した。発酵ブロス中のアンモニアの存在を、NH4Cl標準との保持時間比較により確認した。発酵ブロス中のアンモニア濃度を、先に決定されたNH4Cl標準較正曲線との面積計測の比較により決定した。必要な場合、標本を、較正曲線の境界内に来るように脱イオン水で希釈した。
【0276】
二酸化炭素放出速度(CER)の決定
発酵装置からの出口気体流中の二酸化炭素濃度を、TCD検出器及びHP19091P−Q04,32m×32μm×20μmのジビュルベンゼン/スチレン多孔質重合体毛管カラムの備わったHewlett Packard 5890ガスクロマトグラフ(Hewlett Packard, Avondale, PA)を用いて、ガスクロマトグラフィ(GC)により決定した。気体標本を、そのサイドアームブチルゴムストッパで覆われているポリプロピレン「T」から成る標本ポートを通して、出口気体流から抜き出した。Hamilton (Reno, NV)気密性GC注射器でゴムストッパに穿孔することにより、200μLの標本を収集した。出口気体で最低4回注射器の筒部をパージした後、標本を収集した。標本収集の直後に、注射器内の体積を100μLに調整し、割れ目のない射出ポートを通してカラム上に射出した。CO2決定のために用いたクロマトグラフィ条件は、以下の通りであった:射出器温度(100C);オーブン温度(35C);検出器温度(140C);キャリヤガス(ヘリウム);溶離プロフィール(等温);カラムヘッド圧力(15psig)。出口気体流内にがCO2が存在することは、純粋成分CO2標準との保持時間比較により確認された。面積計測を先に決定したCO2標準較正曲線と比較することにより、出口気体流内のCO2濃度を決定した。0.1%(v/v)〜10%(v/v)の濃度範囲内でCO2を含有する標準ガスボンベ(Robert’s Oxygen, Kennett Square, PA)を用いて、較正曲線を生成した。
【0277】
二酸化炭素放出速度を以下の公式から計算した:
【0278】
【数2】
【0279】
上述の等式中、発酵装置からの出口圧力は、大気圧に等しいものと仮定した。個々のメタン及び空気流量の和から、入口気体流量を計算した。Rは、理想気体定数=82.06cm3 atm mol−1k−1である。出口気体流の絶対温度を以下の式から計算した:T(K)=t(℃)+273.15。なお式中Tは、K単位の絶対温度であり、tは℃単位の出口気体温度であり、室温と等しいものと仮定された。
【0280】
高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によるβ−カロテンの抽出と決定
10分間10,000×g及び4℃で、Methylomonas培養15〜30mLを遠心分離した。上清を傾潟し、細胞ぺレットを、−20℃で凍結させた。凍結した細胞ペレットを室温で解凍し、これに対し2.5mLのアセトンを添加した。1分間標本を渦巻運動に付し、10分間10,000×g及び4℃で遠心分離に付す前にさらに30分間これを室温に放置した。アセトン層を傾潟させ、取っておいた。その後、ペレットをさらに2.5mLのアセトンで再度抽出し、遠心分離に付し、2つのアセトンプールを組合わせた。細胞ペレットを目視することによって、全てのβ−カロテンが、2回めの抽出後に細胞から除去されたことがわかった。アセトンプールを次に、N2流の下で1mLまで濃縮し、0.45μmのフィルタを通してろ過し、HPLCにより分析した。
【0281】
型式125の三成分ポンプシステム、型式168のダイオードアレイ検出器及び型式508のオートサンプラーの備わったBeckman System Gold HPLC(Beckman Coulter, Fullerton, CA)を用いて、β−カロテンを含むアセトン標本を分析した。100μLの濃縮アセトン抽出物を、HP Lichro CART 125−4、C8逆相HPLCカラム(Hewlett Packard, Avondale, PA)上に注入した。Beckman Goldソフトウェアを用いてピークを積分した。保持時間及びスペクトル比較により、220〜600nmの波長範囲内のβ−カロテン純粋成分標準とのピーク同一性が確認された。アセトン抽出物中のβ−カロテンの保持時間及びスペクトルプロフィールは、純粋成分β−カロテン標準から得たものと正確に一致した。アセトン抽出物内のβ−カロテン濃度は、以下で記述するような以前に決定された較正曲線との面積計測の比較により数量化された。計量にあたっては、アセトン中のβ−カロテンの最大吸光度波長に対応する450nmの波長を使用した。
【0282】
β−カロテンの逆相分離のためには、メタノール及び水から成る流動相を使用した。β−カロテンの分離は、メタノール100%まで11.5分にわたり線形的に変化するメタノール60%及び水40%の線形勾配を用いて達成した。利用されたクロマトグラフィ条件下で、β−カロテンからα−カロテンの分解を達成することはできなかった。
【0283】
100mLのアセトン中25mgのβ−カロテン(純度96%,Spectrum Chemical Inc., New Brunswick, NJ)を溶解させることにより、原液からβ−カロテン較正曲線を調製した。この原液の適切な希釈液を、アセトン抽出物内で遭遇するβ−カロテン濃度を網羅するように作った。この要領で構築した較正曲線は、検査対象の濃度範囲全体にわたり線形であった。
【0284】
Methylomonas 16aの発酵
2リットルの実用容積をもつ3リットル入りの垂直撹拌型タンク発酵装置(B. Braun Biotch Inc., Allentown, PA)を用いて、窒素制限下のfed−batch発酵として、発酵を実施した。発酵装置には、2つの6枚ブレード付きRushtonタービン及びpH、温度及び溶解酸素プローブ用付属品の備わったステンレス鋼製ヘッドプレート、pH調節剤用入口、液体標本の抜き取り用サンプリングチューブ及び結合器が備わっていた。発酵措置からの出口気体ラインは、メタン、O2及びCO2濃度のGC分析のために出口気体流をサンプリングするための分離したポートを収納していた。発酵装置は、外部熱交換器を用いることで30℃で一定に温度が維持された状態で、温度制御用に被覆されていた。撹拌を870〜885rpmの範囲内で維持した。2.5MのNaOH及び2MのH2SO4の使用を通して6.95で発酵のpHを一定に維持した。
【0285】
発酵中、唯一の炭素及びエネルギー供給源としてメタンを使用した。発酵装置までのメタンの流量を、Brooks (Brooks Instrument, Hatfield, PA)質量流量制御装置を用いて、計測した。空気流量を調節するためには、別の質量流量制御装置を使用した。発酵装置に入る前に、個々のメタン及び空気流を混合し、0.2μmのインラインフィルタ(Millipou, Bedford, MA)を通してろ過し、入口気体流中23%(v/v)のメタン濃度と260mL min−1(0.13v/v/分)の合計気体流量を得た。気体を、多孔管を通して下部Rushtonタービンより3cm下のところで培地に送り出した。発酵のためには、表14内に示された組成の最少塩培地2リットルを使用した。発泡を抑制するため、殺菌に先立ち800ppmという最終濃度まで、シリコーン消泡剤を添加した。接種に先立ち、発酵装置及びその内容物を、121℃及び15psiaで1時間オートクレーブ処理することによって殺菌した。ひとたび培地を冷却したならば、25mgのmL−1カナマイシン原液4mLを発酵培地に添加して、発酵中プラスミド選択圧力を維持した。
【0286】
【表27】
【0287】
プラスミドpCRT1を含有する1mlの凍結Methylomonas 16aを用いて、ブチルラバー製ストッパ及びアルミニウム製クリンプキャップで密封された500mL入りのWheatonボトル内で50μg mL−1のカナマイシンを含有する無菌0.5×最少塩培地の100mLの培養の接種を行なった。25%(v/v)という有効高内の最終メタン濃度を与えるため21ゲージの針が取りつけられた60mLの注射器でラバーストッパに穿孔することにより、培養にメタンを添加した。接種された培地を、制御された環境の回転振とう機内で30℃で約48時間振とうした。細胞成長が飽和に達した時点で、この培養5mLを用いて、上述のとおりに2100mLの培養を接種した。培養の光学密度が0.8に達した時点で、各培養を60mL用いて発酵装置に接種を行なった。
【0288】
生体の成長期の一機能としてカロテノイド生成を監視するため、発酵中に4〜5時間間隔で標本を採取した。培養の特異的成長速度は0.13時−1であった。培養が発酵中に酸素制限を受けた状態となるのを妨げるため、空気又はメタン流量の調整は全く利用しなかった。さらに、細胞成長の不在下におけるβ−カロテン生成を探究するべく、培養がひとたび成長を止めた時点で、通気及びメタン添加を続けた。発酵培地からのアンモニアの消滅及びCERの減少の観察により、光学密度の変化が全く観察されない場合に成長停止が示された。細胞のβ−カロテン含有量、乾燥細胞重量、アンモニアレベル及び二酸化炭素放出速度は、前述の通りに決定した。結果は、下表15中に記されている。
【0289】
【表28】
【0290】
発酵46時間後に、β−カロテン力価は、乾燥重量ベースで7,710ppmの最大力価に達した。この時点の直後に、溶解酸素濃度によりわかるように、発酵装置が酸素制限された状態となるにつれて、β−カロテン力価は実質的に降下した。かくして、高いβ−カロテン力価の維持が、発酵培地内に存在する高い酸素張力により左右されるということが明らかである。おそらくは、発酵中の溶解酸素濃度のより優れた制御を通して、ここで報告されたものよりも高いβ−カロテン力価に達することができると思われる。最大β−カロテン生成力は、620μg gDCW−1hr−1及び886μg L−1 hr−1と計算された。さらに、β−カロテン濃度は、静止期へと細胞が遷移するにつれておよそ4400ppmで安定化することがわかった。β−カロテン力価は、成長関連すると共に、酸素張力により左右されることが明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】上部イソプレン経路及び下部カロテノイド生合成経路を例示している。
【図2】Methylomonas 16a内で発現された通りの、主要炭素経路遺伝子についてのマイクロアレイ発現データを提供している。
【図3】プラスミドpcrt1及びそれを含有するMethylomonas内でのβ−カロテンの合成を確認するHPLCスペクトルを示している。
【図4】プラスミドpcrt3及びそれを含有するMethylomonas内でのゼアキサンチン及びそのモノ及びジ−グルコシドを確認するHPLCスペクトルを示している。
【図5】プラスミドpcrt4及びそれを含有するMethylomonas内でのゼアキサンチン及びそのモノ及びジ−グルコシドの合成を確認するHPLCスペクトルを示している。
【図6】プラスミドpcrt4.1及びそれを含有するMethylomonas内でのカンタキサンチン及びカンタキサンチンの合成を確認するHPLCスペクトルを示している。
【図7】プラスミドpTJS75::dxs:dxi:lacZ:Tn5Kn及びそれを含有するMethylomonas内の未変性カロテノイドの製造を示している。さらに構成体pcrt4.1も示されている。
Claims (50)
- (a)(i) 適切なレベルのイソペンテニルピロホスフェート;及び
(ii) 適切な調節配列の制御下でカロテノイド生合成経路内で酵素をコードする少なくとも1つの単離された核酸分子
を含む形質転換されたC1代謝性宿主細胞を提供する工程;
(b) 適切な成長条件下で工程(a)の宿主細胞を有効量のC1炭素基質と接触させ、かくしてカロテノイド化合物を生成させる工程、
を含んで成るカロテノイド化合物の製造方法。 - C1炭素基質が、メタン、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸、メチル化アミン、メチル化チオール及び二酸化炭素よりなる群から選択される請求項1に記載の方法。
- C1代謝性宿主細胞が、Methylomonas、 Methylobacter、 Methylococcus、 Methylosinus、 Methylocyctis、 Methylomicrobium、 Methanomonas、 Methylophilus、 Methylobacillus、 Methylobacterium、 Hyphomicrobium、 Xanthobacter、 Bacillus、 Paracoccus、 Nocardia、 Arthrobacter、 Rhodopseudomonas、 Pseudomonas、 Candida、 Hansenula、 Pichia、 Torulopsis、 及び Rhodotorula よりなる群から選択されるメチロトローフである請求項1に記載の方法。
- C1代謝性宿主がメタノトローフである請求項3に記載の方法。
- メタノトローフが、Methylomonas、 Methylobacter、 Methylococcus、 Methylosinus、 Methylocyctis、 Methylomicrobium、 及び Methanomonas よりなる群から選択されるメタノトローフである請求項4に記載の方法。
- C1炭素基質がメタン及びメタノールよりなる群から選択され、C1代謝性宿主細胞が Methylomonas、 Methylobacter、 Methylococcus、 Methylosinus、 Methylocyctis、 Methylomicrobium、 及びMethanomonasよりなる群から選択されるメタノトローフである請求項2に記載の方法。
- メタノトローフが、機能的エムデンマイヤーホフ炭素経路を含む高成長メタノトローフ菌株であり、前記経路が、ピロホスフェート依存性ホスホフルクトキナーゼ酵素をコードする遺伝子を含む請求項6に記載の方法。
- ピロホスフェート依存性ホスホフルクトキナーゼ酵素をコードする遺伝子が、
(a) 配列表の配列番号2に記載されたアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子、
(b) 0.1×SSC、0.1%SDS、65℃のハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリッド形成する、2×SSC、0.1%SDSで、次に0.1×SSC、0.1%SDSで洗浄された単離された核酸分子;
(c) 配列表の配列番号2に記載された配列をもつポリペプチドと比較した時、スミス−ウォーターマンの方法に基づき少なくとも63%の同一性をもつ、少なくとも437個のアミノ酸のポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子;及び
(d) (a)、(b)又は(c)と相補的である単離された核酸分子
よりなる群から選択される請求項7に記載の方法。 - 高成長メタノトローフ細菌菌株が、場合により、フルクトースビスホスフェートアルドラーゼ酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子を含有する請求項7に記載の方法。
- 高成長メタノトローフ細菌菌株が、場合により、機能的エントナー−ドゥドロフ炭素経路を含有する請求項7に記載の方法。
- 高成長メタノトローフ細菌菌株が、場合により、ケト−デオキシホスホグルコネートアルドラーゼをコードする少なくとも1つの遺伝子を含有する請求項8に記載の方法。
- 高成長メタノトローフ細菌菌株がATCC指定ATCC PTA2402をもつメチロモナス16aである請求項9に記載の方法。
- 単離された核酸分子が、ゲラニルゲラニルピロホスフェート(GGPP)シンターゼ、フィトエンシンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ、リコペンシクラーゼ、β―カロテンヒドロキシラーゼ、ゼアキサンチングルコシルトランスフェラーゼ、β―カロテンケトラーゼ、β―カロテンC−4オキシゲナーゼ、β―カロテンデサチュラーゼ、スフェロイデンモノオキシゲナーゼ、カロテンヒドラターゼ、カロテノイド3,4−デサチュラーゼ、1−OH−カロテノイドメチラーゼ、ファルネシルジホスフェートシンターゼ、及びジアポフィトエンデヒドロゲナーゼよりなる群から選択されるカロテノイド生合成酵素をコードする請求項1に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#.AB000835、AB016043、AB019036、AB027705、AB027706、AB016044、AB034249、AB034250、AF020041、AF049658、AF049659、AF139916、AF279807、AF279808、AJ010302、AJ133724、AJ276129、D85029、L25813、L37405、U15778、U44876、X92893、X95596、X98795、及びY15112よりなる群から選択されるゲラニルゲラニルピロホスフェート(GGPP)シンターゼをコードする請求項13に記載の方法。
- ゲラニルゲラニルピロホスフェート(GGPP)シンターゼが配列表の配列番号26に記載されたアミノ酸配列を有する請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#.AB001284、AB032797、AB034704、AB037975、AF009954、AF139916、AF152892、AF218415、AF220218、AJ010302、AJ133724、AJ278287、AJ304825、AJ308385、D58420、L23424、L25812、L37405、M38424、M87280、S71770、U32636、U62808、U87626、U91900、X52291、X60441、X63873、X68017、X69172、及びX78814よりなる群から選択されるフィトエンシンターゼをコードする請求項13に記載の方法。
- フィトエンシンターゼが配列表の配列番号34に記載されたアミノ酸配列を有する請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc #.AB046992、AF039585、AF049356、AF139916、AF218415、AF251014、AF364515、D58420、D83514、L16237、L37405、M64704、M88683、S71770、U37285、U46919、U62808、X55289、X59948、X62574、X68058、X71023、X78271、X78434、X78815、X86783、Y14807、Y15007、Y15112、Y15114、及びZ11165よりなる群から選択されるフィトエンデサチュラーゼをコードする請求項13に記載の方法。
- フィトエンデサチュラーゼが配列表の配列番号32に記載されたアミノ酸配列を有する請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc #.AF139916、AF152246、AF218415、AF272737、AJ133724、AJ250827、AJ276965、D58420、D83513、L40176、M87280、U50738、U50739、U62808、X74599、X81787、X86221、X86452、X95596、及びX98796よりなる群から選択されるリコペンシクラーゼをコードする請求項13に記載の方法。
- リコペンシクラーゼが配列表の配列番号30に記載されたアミノ酸配列を有する請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#.D58420、D58422、D90087、M87280、U62808、Y15112よりなる群から選択されたβ−カロテンヒドロキシラーゼをコードする請求項13に記載の方法。
- β−カロテンヒドロキシラーゼが配列表の配列番号36に記載されたアミノ酸配列を有する請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#.D90087、M87280、及びM90698よりなる群から選択されるゼアキサンチングルコシルトランスフェラーゼをコードする請求項13に記載の方法。
- ゼアキサンチングルコシルトランスフェラーゼが配列表の配列番号28に記載されたアミノ酸配列を有する請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#.AF218415、D45881、D58420、D58422、X86782、及びY15112よりなる群から選択されるβ−カロテンケトラーゼをコードする請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が配列表の配列番号38に記載されたアミノ酸配列をもつβ−カロテンケトラーゼをコードする請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#.X86782及びY15112よりなる群から選択されるβ−カロテンC−4オキシゲナーゼをコードする請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#.AF047490、AF121947、AF139916、AF195507、AF272737、IFO13350、AF372617、AJ133724、AJ224683、D26095、U38550、X89897、Y15115、及びPCC7210よりなる群から選択されるβ−カロテンデサチュラーゼをコードする請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#.AJ010302、Z11165、及びX52291よりなる群から選択されるスフェロイデンモノオキシゲナーゼをコードする請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#.AB034704、AF195122、AJ010302、AF287480、U73944、X52291、Z11165、及びZ21955よりなる群から選択されるカロテンヒドラターゼをコードする請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#.AJ010302、X63204、U73944、X52291、及びZ11165よりなる群から選択されるカロテノイド3,4−デサチュラーゼをコードする請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#.AB034704、AF288602、AJ010302、X52291及びZ11165よりなる群から選択される1−OH−カロテノイドメチラーゼをコードする請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#.AB003187、AB016094、AB021747、AB028044、AB028046、AB028047、AF112881、AF136602、AF384040、D00694、D13293、D85317、X75789、Y12072、Z49786、U80605、X76026、X82542、X82543、AF234168、L46349、L46350、L46367、M89945、NM_002004、U36376、XM_034497、XM_034498、XM_034499、及びXM_034500よりなる群から選択されるファルネシルジホスフェートシンテターゼをコードする請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が配列表の配列番号20に記載されたアミノ酸配列をもつファルネシルジホスフェートシンテターゼをコードする請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素がをコードする単離された核酸分子が、Genbank Acc#. X73889により記述されている通りのジアポフィトエンデヒドロゲナーゼ酵素をコードする請求項13に記載の方法。
- カロテノイド生合成酵素をコードする単離された核酸分子が配列表の配列番号22及び配列番号24よりなる群から選択されるアミノ酸配列をもつジアポフィトエンデヒドロゲナーゼ酵素をコードする請求項13に記載の方法。
- 前記メタノトローフ細菌がMethylomonas16a ATCCPTA2402である請求項1に記載の方法。
- 適切なレベルのイソペンテニルピロホスフェートが、発現異種上部経路イソプレノイド経路遺伝子によって提供される請求項1に記載の方法。
- 前記上部経路イソプレノイド遺伝子が、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(Dxs)、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(Dxr)、2C−メチル−d−エリスリトールシチジリルトランスフェラーゼ(IspD)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ(IspE)、2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼ(IspF)、CTPシンターゼ(PyrG)、LytB及びGcpEよりなる群から選択される請求項39に記載の方法。
- D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(Dxs)をコードする前記遺伝子が、配列表の配列番号6に記載されたポリペプチドをコードする請求項40に記載の方法。
- D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(Dxr)をコードする前記遺伝子が、配列表の配列番号8に記載されたポリペプチドをコードする請求項40に記載の方法。
- 2C−メチル−d−エリスリトール、シチジリルトランスフェラーゼ(IspD)をコードする前記遺伝子が、配列表の配列番号10に記載されたポリペプチドをコードする請求項40に記載の方法。
- 4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ(IspE)をコードする前記遺伝子が、配列表の配列番号12に記載されたポリペプチドをコードする請求項40に記載の方法。
- 2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼ(IspF)をコードする前記遺伝子が、配列表の配列番号14に記載されたポリペプチドをコードする請求項40に記載の方法。
- CTPシンターゼ(PyrG)をコードする前記遺伝子が配列表の配列番号16に記載されたポリペプチドをコードする請求項40に記載の方法。
- ジメチルアリルジホスフェート(LytB)の製造活性をコードする前記遺伝子が配列表の配列番号18に記載されたポリペプチドをコードする請求項40に記載の方法。
- カロテノイド化合物が、アンテラキサンチン、アドニキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、カプソルビリン、β−クリプトキサンチン、アルファ−カロテン、ベータ−カロテン、イプシロン−カロテン、エキネノン、ガンマ−カロテン、ゼータ−カロテン、アルファ−クリプトキサンチン、ジアトキサンチン、7,8−ジデヒドロアスタキサンチン、フコキサンチン、フコキサンチノール、イソレニエラテン、ラクツカキサンチン、ルテイン、リコペン、ネオキサンチン、ニューロスポレン、ヒドロキシニューロスポレン、ペリジニン、フィトエン、ロドピン、ロドピングルコシド、シホナキサンチン、スフェロイデン、スフェロイデノン、スピリロキサンチン、ウリオリド、酢酸ウリオリド、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン−β−ジグルコシド、及びゼアキサンチンよりなる群から選択される請求項1に記載の方法。
- (a)(i) 適切なレベルのイソペンテニルピロホスフェート;及び
(ii) 適切な調節配列の制御下でカロテノイド生合成経路内で酵素をコードする少なくとも1つの単離された核酸分子;及び
(iii) 1) D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(Dxs)、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(Dxr)、2C−メチル−d−エリスリトールシチジリルトランスフェラーゼ(IspD)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ(IspE)、2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼ(IspF)、CTPシンターゼ(PyrG)lytB及びgcpEよりなる群から選択される酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子の多重のコピー、又は
2) 強力なプロモータに操作可能にリンクされた、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(Dxs)、D−1−デオキシキシルロース−5−ホスフェートレダクトイソメラーゼ(Dxr)、2C−メチル−d−エリスリトールシチジリルトランスフェラーゼ(IspD)、4−ジホスホシチジル−2−C−メチルエリスリトールキナーゼ(IspE)、2C−メチル−d−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートシンターゼ(IspF)、CTPシンターゼ(PyrG)、lytB及びgcpEよりなる群から選択される酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子、のいずれか、
を含む形質転換されたC1代謝性宿主細胞を提供する工程;
(b) 工程(a)の宿主細胞を適切な成長条件下で有効量のC1炭素基質と接触させ、かくしてカロテノイド化合物を過剰生成させる工程、
を含んで成る形質転換されたC1代謝性宿主内でのカロテノイド生成物の過剰生成方法。 - (a)(iii)(1)又は(a)(iii)(2)のいずれかの部分の酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が配列表の配列番号6、8、10、12、14、16及び18よりなる群から選択される酵素をコードする請求項49に記載の方法。
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