JP2005511034A - 非対称なカロテノイド類の産生方法 - Google Patents

非対称なカロテノイド類の産生方法 Download PDF

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Abstract

ロドコッカス(Rhodococcus)およびデイノコッカス(Deinococcus)から、少なくとも1つのψ−末端基を有する非環式カロテノイド類を、単一のβ−イオノン環末端基を含有する対応する非対称なカロテノイドに変換することができる特定のリコペンβ−シクラーゼをコードする遺伝子を単離した。これらの遺伝子は新規である。本発明の遺伝子を発現する形質転換された宿主細胞および非環式カロテノイド基質の対応する非対称なカロテノイドへの生体変換のための方法も提供する。

Description

本出願は、2001年11月20日に出願された米国仮出願第60/331,830号明細書の利益を主張する。
本発明は、微生物学の分野にある。より具体的には、本発明は、単環式カロテノイド類の微生物産生の方法に関する。
カロテノイド類は、自然界全体に偏在し、全ての酸素発生光合成生物体によって、ならびにいくつかの従属栄養増殖細菌および真菌において合成される色素である。カロテノイド類は、花、野菜、昆虫、魚および鳥に色を提供する。カロテノイドの色は、茶および紫のバリエーションを伴う黄〜赤の範囲である。ビタミンAの前駆体として、カロテノイド類はヒトの食事の基本成分であり、ヒトの健康において重要な役割を果たす。カロテノイド類の産業上の用途をいくらか挙げると、製薬、補助食品、動物飼料添加物および化粧品の着色料が含まれる。
動物はカロテノイドをデノボで合成することはできないため、動物は食餌手段によってそれらを入手しなければならない。従って、植物または細菌におけるカロテノイド産生および組成を操作することによって、カロテノイドの新規または改善された供給源を提供することができる。
カロテノイド類は、異なる多くの形態および化学構造で生じる。天然に存在するほとんどのカロテノイド類は、8個のCイソプレン単位(IPP)の連続縮合から誘導されるC40メチル分岐炭化水素骨格を含有する疎水性テトラテルペノイド類である。さらに、より長いまたはより短い骨格を有する新規のカロテノイド類は、いくつかの種の非光合成細菌に認められる。用語「カロテノイド」には、カロテン類およびキサントフィル類の両方が含まれる。「カロテン」は、炭化水素のカロテノイドを指す。ヒドロキシ−、メトキシ−、オキソ−、エポキシ−、カルボキシ−、またはアルデヒド官能基の形態で、あるいはグリコシド類、グリコシドエステル類、または硫酸塩内に1個もしくはそれ以上の酸素原子を含有するカロテン誘導体は、ひとまとめにして「キサントフィル類」として公知である。さらに、カロテノイド類は、炭化水素骨格の末端が環化されているかどうかに依存して、脂肪族もしくは環式構造を生じる非環式、単環式、または二環式であるとして記載されている(非特許文献1)。
カロテノイドの生合成は、イソプレノイド経路から開始し、Cイソプレン単位であるイソペンテニルピロリン酸(IPP)を作製する。IPPは、その異性体であるジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)により縮合されて、C10ゲラニルピロリン酸(GPP)となり、C15ファルネシルピロリン酸(FPP)にまで伸長された。FPP合成は、カロテン原性および非カロテン原性細菌の両方において一般的である。カロテノイド経路における以後の酵素は、FPP前駆体からカロテノイド色素を作製し、2つのカテゴリー:カロテン骨格合成酵素および以後の修飾酵素に分けることができる。骨格合成酵素には、ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ(CrtE)、フィトエンシンターゼ(CrtB)、フィトエンデヒドロゲナーゼ(CrtI)およびリコペンシクラーゼ(CrtY/L)などが含まれる。修飾酵素には、ケトラーゼ、ヒドロキシラーゼ、デヒロドラターゼ、グリコシラーゼなどが含まれる。
リコペンシクラーゼは、リコペン(ψ,ψ−カロテン)、非環式非対称カロテノイドからの環式カロテノイドの形成を触媒することを担う酵素のクラスである。リコペンシクラーゼは、リコペン上に認められるψ−末端基からのイオノン環の形成を触媒する(図1)。
2つのタイプのリコペンシクラーゼ(β−シクラーゼおよびε−シクラーゼ)が報告されている(非特許文献2)。先に記載されている全てのリコペンβ−シクラーゼは、リコペン(ψ,ψ−カロテン)などの非環式カロテノイド類上に認められるψ−末端基からのβ−イオノン環の形成を触媒し、通常、βカロテンなどの非対称な二環式生成物を生じる。通常、植物に認められるリコペンε−シクラーゼは、ψ−末端基からのε−イオノン環の形成を触媒する。ほとんどのリコペンε−シクラーゼは、非対称な単環式δ−カロテン(ψ,ε−カロテン)の形成を触媒する。レタス由来のリコペンε−シクラーゼは、二環式ε−カロテン(ε,ε−カロテン)の形成を触媒する(非特許文献3)。β−イオノンおよびε−イオノン環構造間の差異は、6員環内の二重結合の位置に基づく。
既知のリコペンβ−シクラーゼは、リコペンに対して対称的に機能し、単環式γ−カロテン中間体を介して対称的な二環式β−カロテンを作製する。パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)から単離されるリコペンβ−シクラーゼは、中間体としてのγ−カロテンに関与する2段階反応を介して二環式β−カロテンを産生することが報告された(非特許文献4)。
単環式カロテノイド類は、時々、二環式カロテノイド類の合成中の混合物の部分として存在する。低い活性を有するβ−シクラーゼ変異体またはβ−シクラーゼの部分阻害を使用するような特定の方法を使用して、混合物中の単環式カロテノイド類を富化し得る。β−シクラーゼから誘導されるカロテノイド類の混合物から単環式カロテノイド類を単離および精製するには、しばしば、時間および供給源における顕著な投資が必要とされる。選択的に単環式カロテノイド類を産生することが証明されている原核生物のリコペンβ−シクラーゼは認められていない。
単環式β−シクラーゼ経路は、酵素阻害実験によって、酵母ファフィア・ロドザイマ(Phaffia rhodozyma)に存在することが提唱されている(非特許文献5)。しかし、ファフィア(Phaffia)において産生される単環式カロテノイド類は、全カロテノイド混合物の少ない方の成分(<20%)であり、単環式カロテノイド類の産生に選択的である酵素は教示されなかった。
植物のリコペンε−シクラーゼは、主に単環式カロテノイド類を作製し、ε−イオノン構造のみを作製することが示されている(非特許文献2および特許文献1)。
カロテノイド色素生合成の遺伝学については周知である(非特許文献6;非特許文献7)。この経路については、以前はエルウィニア(Erwinia)として公知であったパントエア(Pantoea)属のグラム陰性色素性細菌において極めて良好に研究されている。E.ヘルビコラ(E.herbicola)EHO−10(ATCC39368)およびE.ウレドボラ(E.uredovora)20D3(ATCC19321)の両方では、crt遺伝子は、2つのオペロン、crtZおよびcrtEXYIBにおいてクラスター化される(特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6)。オペロン構造に類似性があるにもかかわらず、E.ウレドボラ(E.uredovora)およびE.ヘルビコラ(E.herbicola)crt遺伝子のDNA配列は、DNA−DNAハイブリダイゼーションによる相同性を示さない(特許文献6)。
カロテノイド生合成経路に関与する遺伝子はいくつかの生物体において公知であるが、ロドコッカス(Rhodococcus)およびデイノコックス(Deinococcus)におけるカロテノイド生合成に関与する遺伝子については、現存する文献には記載がない。ロドコッカス(Rhodococcus)のいくらかの株に由来するカロテノイド色素の分析的特徴付けが行われた(非特許文献8)。しかし、該分析的特徴付けでは、報告された「γ−カロテノイド様」化合物を担う酵素の特徴付けは試みられなかった。
米国特許第5,744,341号明細書 米国特許第5,656,472号明細書 米国特許第5,5545,816号明細書 米国特許第5,530,189号明細書 米国特許第5,530,188号明細書 米国特許第5,429,939号明細書 アームストロング,G(Armstrong,G)Comprehensive Natural Products Chemistry、エルセビル・プレス(Elsevier Press)、第2巻、321〜352頁(1999) カニングハム(Cunningham)ら、Plant Cell.8:1613−1626(1996) カニングハム(Cunningham)ら、PNAS,98:2905−2910,(2000) シュヌル(Schnurr)ら、Biochem J.315:869−874(1996) アン(An)ら、J.Biosci.Bioeng.88(2):189−193(1999) アームストロング,G(Armstrong,G)ら、J.Bact.176:4795−4802(1994) Annu.Rev.Microbiol.51:629−659(1997) イチヤマ(Ichiyama)ら、Microbiol.Immunol.33:503−508(1989)
従って、解決すべき問題は、単一のβ−イオノン環を含有する非対称なカロテノイドの選択的産生に有用な方法および材料を提供することである。本出願人らは、有意な二環式カロテノイド合成を伴わずに単環式(β−イオノン環)カロテノイド類を選択的に産生するポリペプチドをコードする、ロドコッカス(Rhodococcus)およびデイノコックス(Deinococcus)の両方から単離される、新規のリコペンβ−シクラーゼ(crtL)をコードする遺伝子を単離および特徴付けすることによって、前記問題を解決した。
発明の概要
本発明は、
a)少なくとも1つのψ−末端基を有する非環式カロテノイド類を産生する宿主細胞であって、
(i)配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子;
(ii)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、そして2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(i)とハイブリダイズする単離された核酸分子;ならびに
(iii)スミス−ウォーターマン法のアラインメントに基づいて、配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも70%同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子、
よりなる群から選択されるリコペンβ−シクラーゼを発現する宿主細胞を準備すること;
b)非対称なカロテノイド類が産生される条件下で(a)の宿主細胞を増殖させること;ならびに
c)場合により、前記非対称なカロテノイド類を回収すること、
を含んでなる非対称なカロテノイド化合物の産生方法を提供する。
好適な実施態様では、本発明の宿主細胞は、ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ酵素をコードする少なくとも1コピーの遺伝子;フィトエンシンターゼ酵素をコードする少なくとも1コピーの遺伝子;およびフィトエンデヒドロゲナーゼ酵素をコードする少なくとも1コピーの遺伝子を含んでなる。
代替的実施態様では、非環式カロテノイドは内因的に生体触媒に添加することができる。従って、本発明は、
a)(i)配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子;
(ii)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、そして2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(i)とハイブリダイズする単離された核酸分子;ならびに
(iii)スミス−ウォーターマン法のアラインメントに基づいて、配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも70%同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子、
よりなる群から選択されるリコペンβ−シクラーゼを発現する宿主細胞を準備すること;
b)(a)の宿主細胞と少なくとも1つのψ−末端基を含んでなる非環式カロテノイドとを接触させること;
c)非対称なカロテノイド類が産生される条件下で(b)の宿主細胞を増殖させること;ならびに
d)場合により、前記非対称なカロテノイド類を回収すること、
を含んでなる非対称なカロテノイド化合物の産生方法を提供する。
さらに、本発明は、
(a)少なくとも1つのψ−末端基を有する非環式カロテノイド類を産生する宿主細胞を準備すること;
(b)(a)の宿主細胞に:
(i)配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子;
(ii)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、そして2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(i)とハイブリダイズする単離された核酸分子;ならびに
(iii)スミス−ウォーターマン法のアラインメントに基づいて、配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも70%同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子、
よりなる群から選択されるリコペンβ−シクラーゼ遺伝子を導入すること;
(c)リコペンβ−シクラーゼ遺伝子が発現され、非対称なカロテノイド生合成が調節される条件下で(b)の宿主細胞を増殖させること、
を含んでなる生物体における非対称なカロテノイド生合成を調節する方法を提供する。
さらに、本発明は、
(a)ゲノムライブラリーを、
(i)配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子;
(ii)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、そして2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(i)とハイブリダイズする単離された核酸分子;ならびに
(iii)スミス−ウォーターマン法のアラインメントに基づいて、配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも70%同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子、
よりなる群から選択される核酸分子の一部でプロービングすること;
(b)(a)の単離された核酸分子とハイブリダイズするDNAクローンを同定すること;ならびに
(c)工程(b)において同定されるクローンを含んでなるゲノムフラグメントをシークエンシングすること、
を含んでなり、シークエンシングされるゲノムフラグメントはカロテノイド生合成酵素をコードしている、
少なくとも1つのψ−末端基を有する非環式カロテノイド類からの非対称なカロテノイド類の産生を触媒するリコペンβ−シクラーゼをコードする遺伝子の同定方法を提供する。
同様に、本発明は、
(a)
(i)配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子;
(ii)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、そして2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(i)とハイブリダイズする単離された核酸分子;ならびに
(iii)スミス−ウォーターマン法のアラインメントに基づいて、配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも70%同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子、
よりなる群から選択される配列の一部に対応する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーを合成すること;ならびに
(b)工程(a)のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、クローニングベクターに存在する挿入物を増幅すること、
を含んでなり、増幅される挿入物はカロテノイド生合成酵素をコードするアミノ酸配列の一部をコードしている、
少なくとも1つのψ−末端基を有する非環式カロテノイド類からの非対称なカロテノイド類の産生を触媒するリコペンβ−シクラーゼをコードする遺伝子の同定方法を提供する。
配列の説明
本発明は、本出願の一部をなす下記の詳細な説明および添付の配列の説明からさらに完全に理解することができる。
以下の配列は、米国特許法施行規則第1.821〜1.825条(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件−配列規則」)に従い、そして世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)ならびにEPOおよびPCTの配列表の要件(規則5.2および49.5(aの2)、ならびに実施細則第208号および付属書C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに使用した記号および形式は、米国特許法施行規則第1.822に記載の規則に従う。

配列番号1は、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12株由来のcrtL遺伝子をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号2は、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12株由来のcrtL遺伝子の推定アミノ酸配列である。
配列番号3は、デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)R1株(ATCC13939)由来のcrtL遺伝子をコードするヌクレオチド配列である。
配列番号4は、デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)R1株(ATCC13939)由来のcrtL遺伝子の推定アミノ酸配列である。
配列番号5〜6は、パントエア・ステワルチ(Pantoea stewartii)(ATCC8199)由来のcrtEXYIB遺伝子クラスターを増幅するために使用されるプライマー配列である。
配列番号7〜9は、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12株由来の16s rRNAの増幅および/またはシークエンシング中に使用されるプライマー配列である。
配列番号10は、AN12wtY−Fと命名されるロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12株リコペンシクラーゼcrtL遺伝子のPCR増幅のために使用される2つのプライマーのうちの第1のプライマーである。
配列番号11は、AN12wtY−Rと命名されるロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12株リコペンシクラーゼcrtL遺伝子のPCR増幅のために使用される2つのプライマーのうちの第2のプライマーである。
配列番号12は、crtY_F(デイノ(Deino))と命名されるデイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)R1株(ATCC13939)リコペンシクラーゼcrtL遺伝子のPCR増幅のために使用される2つのプライマーのうちの第1のプライマーである。
配列番号13は、crtY_R(デイノ(Deino))と命名されるデイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)R1株(ATCC13939)リコペンシクラーゼcrtL遺伝子のPCR増幅のために使用される2つのプライマーのうちの第2のプライマーである。
配列番号14は、crtY_Fと命名されるパントエア・ステワルチ(Pantoea stewartii)(ATCC8199)リコペンシクラーゼcrtY遺伝子のPCR増幅のために使用される2つのプライマーのうちの第1のプライマーである。
配列番号15は、crtY_Rと命名されるパントエア・ステワルチ(Pantoea stewartii)(ATCC8199)リコペンシクラーゼcrtY遺伝子のPCR増幅のために使用される2つのプライマーのうちの第2のプライマーである。
発明の詳細な記述
本発明は、単一のβ−イオノン環末端基を含有する非対称な単環式カロテノイド類を産生するための生物学的方法を提供する。該方法は、少なくとも1つのψ−末端基を有する非環式カロテノイド類を産生することが可能な宿主細胞を用い、ここで、宿主細胞は、非環式カロテノイド類を、対応する非対称なカロテノイド類に変換することが可能な特定のリコペンβ−シクラーゼを発現する。
本明細書に記載の遺伝子、関連遺伝子産物、および方法によって、単一のβ−イオノン環を有する非対称な環式カロテノイド類を選択的に生成することができる。商業的アプリケーションの潜在的領域として、製薬、補助食品、動物飼料添加物、色素、および光起電デバイスなどの電気光学アプリケーションが挙げられるが、これらに限定されない。独特なリコペンβ−シクラーゼ(ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12株またはデイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)R1株(ATCC13939)由来のCrtL)は、単環式(β−イオノン環)カロテノイドγ−カロテン、上記のいくつかのアプリケーションに対してより所望される産物の形成を触媒する。
本開示では、多数の用語および略語が使用される。以下の定義が提供される。
「オープンリーディングフレーム」はORFと略称される。
「ポリメラーゼ連鎖反応」はPCRと省略される。
本明細書において使用される「単離された核酸フラグメント」は、一本鎖もしくは二本鎖であるRNAまたはDNAのポリマーであり、場合により、合成、非天然または改変されたヌクレオチド塩基を含む。DNAのポリマーの形態で単離された核酸フラグメントは、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つもしくはそれ以上のセグメントからなり得る。
用語「イソプレノイド」または「テルペノイド」は、カロテノイド類およびキサントフィル類などの10炭素テルペノイド類およびそれらの誘導体を含むイソプレノイド経路から誘導される化合物および任意の分子を指す。
用語「ψ−末端基」は、リコペン内において四角枠で囲まれた非環式構造(図1)で示されるC15として規定される。
用語「β−イオノン環」または「β−イオノン基」は、γ−カロテンまたはβ−カロテン内において四角枠で囲まれた環式構造(図1)で示されるC15として規定される。
用語「ε−イオノン環」または「ε−イオノン基」は、δ−カロテンまたはε−カロテン内において丸枠で囲まれた環構造で示されるC15として規定される。(図1)
用語「パントエア・ステワルチ亜種ステワルチ(Pantoea stewartii subsp. stewartii)」は、「パントエア・ステワルチ(Pantoea stewartii)」と略称され、エルウィニア・ステワルチ(Erwinia stewartii)と交換可能に使用される(メルガエルト(Mergaert)ら、Int J. Syst. Bacteriol. 43:162−173(1993))。
用語「パントエア・アナナタス(Pantoea ananatas)」は、エルウィニア・ウレドボラ(Erwinia uredovora)と交換可能に使用される(メルガエルト(Mergaert)ら、Int J. Syst. Bacteriol. 43:162−173(1993))。
用語「リコペンβ−シクラーゼ」または「β−シクラーゼ」は交換可能に使用され、非環式ψ−末端基からのβ−イオノン環環式末端基の形成を触媒する酵素を指す。
用語「リコペンε−シクラーゼ」または「ε−シクラーゼ」は交換可能に使用され、非環式ψ−末端基からのε−イオノン環環式末端基の形成を触媒する酵素を指す。
用語「ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12」または「AN12」は交換可能に使用され、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12株を指す。
用語「デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)R1株(ATCC13939)」または「デイノコッカス(Deinococcus)R1」または「ATCC13939」は交換可能に使用され、デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)R1(ATCC13939)株を指す。
用語「パントエア(Pantoea)crtEXYIBクラスター」は、パントエア・ステワルチ(Pantoea stewartii)ATCC8199から増幅されるカロテノイド合成遺伝子crtEXYIBを含有する遺伝子クラスターを指す。遺伝子クラスターは、遺伝子crtE、crtX、crtY、crtI、およびcrtBを含有する。クラスターはまた、crtB遺伝子に隣接し、反対方向で組織化されるcrtZ遺伝子を含有する。
用語「CrtE」は、crtE遺伝子によってコードされ、トランス−トランス−ファルネシル二リン酸+イソペンテニル二リン酸をピロリン酸+ゲラニルゲラニル二リン酸に変換するゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ酵素を指す。
用語「CrtY」は、crtY遺伝子によってコードされ、リコペンをβ−カロテンに変換するリコペンシクラーゼ酵素を指す。
用語「CrtI」は、crtI遺伝子によってコードされ、4個の二重結合の導入によるフィトフルエン、ζ−カロテンおよびニューロスポレンの媒介を介して、フィトエンをリコペンに変換するフィトエンデヒドロゲナーゼ酵素を指す。
用語「CrtB」は、crtB遺伝子によってコードされ、プレフィトエン二リン酸(ゲラニルゲラニルピロリン酸)からフィトエンへの反応を触媒するフィトエンシンターゼ酵素を指す。
用語「CrtX」は、crtX遺伝子によってコードされ、ゼアキサンチンをゼアキサンチン−β−ジグルコシドに変換するゼアキサンチングルコシルトランスフェラーゼ酵素を指す。
用語「CrtZ」は、crtZ遺伝子によってコードされ、β−カロテンからゼアキサンチンへの水酸化反応を触媒するβ−カロテンヒドロキシラーゼ酵素を指す。
用語「カロテノイド生合成酵素」は、パントエア(Pantoea)crtEXYIBクラスターによってコードされる酵素のいずれかまたは全てを指す包括的用語である。酵素には、CrtE、CrtY、CrtI、CrtB、およびCrtXが含まれる。
核酸分子は、温度および溶液イオン強度の適切な条件下で一本鎖形態の核酸分子が他の核酸分子にアニールすることができる場合に、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAなどのもう1つの核酸分子に「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は周知であり、サンブルックJ.(Sambrook,J.)、フリッシュE.F.(Fritsch,E.F.)およびマニアティスT.(Maniatis,T.)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)(1989)、特に、第11章および該第11章に掲載の表11.1(全体が参考として本明細書に援用される)において例示されている。温度およびイオン強度の条件はハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。ストリンジェンシー条件を調整して、遠い関係の生物体由来の相同配列などの中等度に類似のフラグメントから、近い関係の生物体由来の機能的酵素を複製する遺伝子などの、高度に類似のフラグメントをスクリーニングすることができる。ハイブリダイゼーション後の洗浄はストリンジェンシー条件を決定する。例えば、ストリンジェンシー条件の一般的な組は、0.1×SSC、0.1%SDS、65℃でのハイブリダイゼーション、そして2×SSC、0.1%SDS、続いて0.1×SSC、0.1%SDSで洗浄されることからなる。
1組の好適な条件は、6×SSC、0.5%SDS、室温、15分間で開始し、次いで、2×SSC、0.5%SDS、45℃、30分間で反復し、次いで、0.2×SSC、0.5%SDS、50℃、30分間を2回反復する一連の洗浄を使用する。より好適な組のストリンジェントな条件は、より高い温度を使用し、ここで洗浄は、0.2×SSC、0.5%SDSによる最後の2回の30分間の洗浄の温度を60℃にまで上昇させたことを除いて、上記の洗浄と同一である。もう1つの好適な組の高度にストリンジェントな条件は、0.1×SSC、0.1%SDS、65℃で最後の2回の洗浄を行う。
ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補的な配列を含有することを必要とするが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに依存して、塩基間にミスマッチの可能性が存在する。核酸にハイブリダイズするのに適切なストリンジェンシーは、核酸の長さおよび相補性の程度(当業者に周知の変数)に依存する。核酸ハイブリダイゼーションの相対的安定性(より高いTmに相当する)は、次の順で減少する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。長さが100ヌクレオチドを超えるハイブリダイズについては、Tmを算出するための式が導入されている(サンブルック(Sambrook)ら、上掲、9.50−9.51を参照のこと)。より短い核酸、即ちオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置がより重要となり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(サンブルック(Sambrook)ら、上掲、11.7−11.8を参照のこと)。1つの実施態様において、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは少なくとも約10ヌクレオチドである。好ましくは、ハイブリダイズ可能な核酸の最小の長さは少なくとも約15ヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも約20ヌクレオチドであり、および最も好ましくは、長さは少なくとも30ヌクレオチドである。さらに、当業者は、必要であれば、プローブの長さなどの因子に従って、温度および洗浄溶液の塩濃度を調整することができることを認識するであろう。
アミノ酸またはヌクレオチド配列の「実質的な部分」もしくは「部分」は、当業者による配列の人的評価、もしくはBLAST(基本的局所整列検索ツール(BasicLocal Alignment Search Tool);アルトシュル(Altschul)らJ.Mol.Biol.215:403−410(1993);www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/もまた参照されたい)のようなアルゴリズムを使用するコンピュータに基づく配列比較および同定のいずれかにより、ポリペプチドまたは遺伝子を推定で同定するのに十分な程度のポリペプチドのアミノ酸あるいは遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなる。一般に、あるポリペプチドまたは核酸配列を、既知のタンパク質または遺伝子に対して相同として推定で同定するためには、10もしくはそれ以上の連続するアミノ酸または30もしくはそれ以上のヌクレオチドの配列が必要である。さらに、ヌクレオチド配列に関しては、遺伝子の同定(例えばサザンハイブリダイゼーション)および単離(例えば、細菌コロニーもしくはバクテリオファージのプラークのインサイチュハイブリダイゼーション)の配列に依存する方法では、20〜30の連続するヌクレオチドを含んでなる遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを使用することができる。加えて、プライマーを含んでなる特定の核酸フラグメントを得るために、12〜15塩基の短いオリゴヌクレオチドをPCRでの増幅プライマーとして使用することができる。従って、ヌクレオチド配列の「実質的な部分」は、該配列を含んでなる核酸フラグメントを、特異的に同定および/または単離するのに十分な配列を含んでなる。本明細書は、1種もしくはそれ以上の特定の微生物タンパク質をコードする部分的もしくは完全なアミノ酸およびヌクレオチド配列を教示する。本明細書に報告されるような配列の恩恵を有する当業者は、今や、当業者に既知の目的のために、開示される配列の全部もしくは実質的な部分を使用してよい。
用語「相補的」は、相互にハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するために使用される。例えば、DNAについて、アデノシンはチミンに相補的であり、そしてシトシンはグアニンに相補的である。
当該分野において公知である用語「パーセント同一性」は、2つもしくはそれ以上のポリペプチド配列または2つもしくはそれ以上のポリヌクレオチド配列間の関係であり、配列を比較することによって決定される。当該分野において、場合により「同一性」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関係の程度をも意味し、そのような配列のストリング間の一致によって決定される。「同一性」および「類似性」は、以下に記載される方法を含むがこれらに限定されない公知の方法によって容易に算出することができる:Computational Molecular Biology(レスクA.M.(Lesk,A.M.)編)オックスフォード大学出版(Oxford University Press)、ニューヨーク州(NY)(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(スミス,D.W.(Smith,D.W.)編)アカデミック出版(Academic Press)、ニューヨーク州(NY)(1993);Computer Analysis of Sequence Data,Part I(グリフィン,A.M.(Griffin,A.M.)、およびグリフィン,H.G.(Griffin,H.G.)編)フマナ出版(Humana Press)、ニュージャージー州(NJ)(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(フォン・ヘインジ,G(von Heinje,G.)編)アカデミック出版(Academic Press)(1987);ならびにSequence Analysis Primer(グリブスコフ,M.(Gribskov,M.)およびデベルウクス,J(Devereux,J.)編)ストックトン出版(Stockton Press)、ニューヨーク州(NY)(1991)。同一性を決定するための好適な方法は、試験される配列間の最良の一致を与えるように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにコード化されている。配列のアラインメントおよびパーセント同一性の計算は、レーザージーン(LASERGENE)生物情報科学コンピュータ計算ソフトウェアパッケージ(DNAスター社(DNASTAR Inc.)、ウィスコンシン州、マディソン(Madison, WI))のメガライン(Megalign)プログラムを使用して実施してもよい。配列のマルチプルアラインメントは、デフォルトのパラメータ(ギャップ・ペナルティ(GAP PENALTY)=10、ギャップ長ペナルティ(GAP LENGTH PENALTY)=10)を用い、アラインメントのクラスタル(Clustal)法(ヒギンス(Higgins)ら、CABIOS.5:151−153(1989))を使用して実施した。クラスタル(Clustal)法を使用する、ペアワイズアラインメントのためのデフォルトのパラメータは、Kタプル(KTUPLE)1、ギャップ・ペナルティ(GAP PENALTY)=3、ウィンドウ(WINDOW)=5およびダイアゴナルズ・セイブド(DIAGONALS SAVED)=5であった。
「コドンの縮重」は、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列に影響を与えることなくヌクレオチド配列の変動を可能にする遺伝暗号中の性状を指す。従って、本発明は、配列番号に記載の本微生物ペプチドをコードするアミノ酸配列の全部または実質的な部分をコードするいかなる核酸フラグメントにも関する。当業者は、ある所定のアミノ酸を特定するヌクレオチドコドンの使用における特定の宿主細胞により表される「コドンの偏り」を十分認識している。従って、ある宿主細胞中での改良された発現のための遺伝子を合成する場合、コドンの使用頻度が該宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に近づくような遺伝子を設計することが望ましい。
「合成遺伝子」は、当業者に既知の手順を使用して化学的に合成されるオリゴヌクレオチド基礎単位から集成することが可能である。これらの基礎単位は連結およびアニーリングされて遺伝子セグメントを形成し、次いで、遺伝子全体を構築するように酵素的に集成される。DNAの配列に関するところの「化学的に合成される」は、成分ヌクレオチドがインビトロで集成されたことを意味する。DNAの人的な化学合成は、十分に確立された手順を使用して達成することができるか、または、多数の商業的に入手可能な機械の1つを使用して自動化学合成を実施することが可能である。従って、遺伝子は、宿主細胞のコドンの偏りに反映するヌクレオチド配列の至適化に基づいた最適な遺伝子発現を適応させることが可能である。当業者は、コドンの使用を宿主に好まれるコドンに偏らせる場合、成功裏の遺伝子発現の見込みを認識する。好ましいコドンの決定は、配列情報が入手可能である宿主細胞由来の遺伝子の調査に基づくことが可能である。
「遺伝子」は、コーディング配列の前(5’非コーディング配列)および後(3’非コーディング配列)に調節配列を含む特定のタンパク質を発現する核酸フラグメントを指す。「生来の遺伝子」は、それ自体の調節配列と共に天然に見出されるような遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」は、天然には一緒に見出されない調節およびコーディング配列を含んでなる生来の遺伝子ではないあらゆる遺伝子を指す。従って、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する調節配列およびコーディング配列、または同じ起源から由来するが、しかし天然に見出されるものとは異なる様式で配列される調節配列およびコーディング配列を含んでなることができる。「内因性遺伝子」は、生物体のゲノム内の天然の位置にある生来の遺伝子を指す。「外来」遺伝子は、宿主生物体内に通常は見出されない遺伝子を指すが、しかしこれは遺伝子導入により宿主生物体内に導入される。外来遺伝子は、非生来の生物体内に挿入された生来の遺伝子、またはキメラ遺伝子を含んでなることができる。「導入遺伝子」は、形質転換手順によりゲノム中に導入されている遺伝子である。
「コーディング配列」は特定のアミノ配列をコードするDNA配列を指す。「適切な調節配列」は、コーディング配列の上流(5’非コーディング配列)、内、または下流(3’非コーディング配列)に位置し、転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または関連するコーディング配列の翻訳に影響するヌクレオチド配列を指す。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステム−ループ構造を含んでもよい。
「プロモーター」は、コーディング配列または機能的RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コーディング配列はプロモーター配列に対し3’側に配置される。プロモーターはそっくりそのまま生来の遺伝子に由来してよいか、または、天然に見出される多様なプロモーター由来の多様なエレメントから構成されてよいか、または合成DNAセグメントさえ含んでなることができる。多様なプロモーターは、多様な組織もしくは細胞型において、または発生の多様な段階で、または多様な環境もしくは生理学的条件に応答して、遺伝子の発現を指令することができることが、当業者に理解される。大部分の時間で大部分の細胞型において遺伝子を発現させるプロモーターは普遍的に「構成プロモーター」と称される。大部分の場合で調節配列の正確な境界が完全に規定されていないため、多様な長さのDNAフラグメントが同一のプロモーター活性を有することができることがさらに認識される。
「3’非コーディング配列」は、コーディング配列の下流に配置されるDNA配列を指し、かつ、ポリアデニル化認識配列、およびmRNAのプロセシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことが可能な調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸領域(tract)の付加に影響を及ぼすことを特徴とする。
「RNA転写物」はDNA配列のRNAポリメラーゼに触媒される転写から生じる産物を指す。RNA転写物がDNA配列の完全な相補的コピーである場合、それは一次転写物と称され、あるいは、それは一次転写物の転写後プロセシング由来のRNA配列であることができ、そして成熟RNAと称される。「メッセンジャーRNA(mRNA)」は、イントロンを含まずかつ細胞によりタンパク質に翻訳される可能性があるRNAを指す。「cDNA」は、mRNAに相補的でありかつこれに由来する二本鎖DNAを指す。「センス」RNAは、mRNAを含み、そして、従って細胞によりタンパク質に翻訳される可能性があるRNA転写物を指す。「アンチセンスRNA」は、標的の一次転写物もしくはmRNAの全部または一部に相補的でありかつ標的遺伝子の発現を阻止するRNA転写物を指す(米国特許第5,107,065号明細書;WO9928508)。アンチセンスRNAの相補性は、特異的な遺伝子転写物のいずれかの部分、すなわち5’非コーディング配列、3’非コーディング配列、またはコーディング配列であることができる。「機能的RNA」は、アンチセンスRNA、リボザイムRNAまたは翻訳されていないがしかし細胞の過程に対する影響をなお有する他のRNAを指す。
用語「操作可能に連結している」は、一方の機能が他方により影響を受ける単一核酸フラグメント上の核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターがコーディング配列の発現に影響することができる(即ち、コーディング配列がプロモーターの転写制御下にある)場合、プロモーターはコーディング配列に操作可能に連結されている。コーディング配列はセンスまたはアンチセンスの配向で調節配列に操作可能に連結されることができる。
本明細書において使用される用語「発現」は、本発明の核酸フラグメントに由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指すことができる。
「形質転換」は、遺伝的に安定に遺伝する核酸フラグメントの宿主生物体のゲノムへの伝達を指す。形質転換された核酸フラグメントを含有する宿主生物体は、「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換された」生物体と称される。
用語「プラスミド」、「ベクター」および「カセット」は、しばしば細胞の中心的代謝の部分ではない遺伝子を担持する染色体外エレメントを指し、通常は、環状二本鎖DNA分子フラグメントの形態である。そのようなエレメントは、任意の起源から誘導される一本鎖または二本鎖DNAあるいはRNAの自律的反復配列、ゲノム組込み配列、ファージもしくはヌクレオチド配列で、線状あるいは環状であってもよく、ここで、プロモーターフラグメントおよび適切な3’非翻訳配列を伴う選択された遺伝子産物に対するDNA配列を細胞に導入することが可能である独特な構築物に、多くのヌクレオチド配列が接続または組換えられている。「形質転換カセット」は、外来遺伝子を含有し、該外来遺伝子に加えて、特定の宿主細胞の形質転換を可能にするエレメントを有する特定のベクターを指す。「発現カセット」は、外来遺伝子を含有し、該外来遺伝子に加えて外来宿主における遺伝子の発現の増強を可能にするエレメントを有する特定のベクターを指す。
用語「改変された生物活性」は、微生物のヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質に伴う活性を指し、該活性はアッセイ方法によって測定することができ、ここで、該方法は生来の微生物の配列に伴う活性よりも大きいかまたは小さい。「増強された生物活性」は、生来の配列に伴う活性よりも大きい改変された活性を指す。「低減された生物活性」は、生来の配列に伴う活性よりも小さい改変された活性である。
用語「配列解析ソフトウェア」は、ヌクレオチドもしくはアミノ酸配列の解析に有用なあらゆるコンピュータアルゴリズム、またはソフトウェアプログラムを指す。「配列解析ソフトウェア」は、市販されていてもよく、また独立して開発してもよい。典型的な配列解析ソフトウェアとして、GCGプログラムソフトウェアパッケージ(ウィスコンシン・パッケージ・バージョン9.0(Wisconsin Package Version9.0)、ジェネティクス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group)(GCG)、ウィスコンシン州、マディソン(Madison,WI))、ブラストP(BLASTP)、ブラストN(BLASTN)、ブラストX(BLASTX)(アルトシュル(Altschul)ら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、およびDNAスター(DNASTAR)(DNAスター社(DNASTAR,Inc.)米国53715ウィスコンシン州、S.パーク・セントマディソン1228(1228 S.Park St.Madison,WI53715USA)、およびスミス−ウォーターマン(Smith−Waterman)アルゴリズムを組み入れたファスタ(FASTA)プログラム(W.R.ピアソン(W.R.Pearson)、Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994)、開催年1992、111−20.編者:スハイ,サンドル(Suhai,Sandor).出版社:プレヌム(Plenum)、ニューヨーク州、ニューヨーク(New York,NY))が挙げられるが、これらに限定されない。本出願に従い、配列解析ソフトウェアが解析のために使用される場合、解析結果は、他に特定しない限り参照したプログラムの「デフォルト値」に基づくことが理解される。本明細書において使用される「デフォルト値」は、最初に初期化した場合に本来ソフトウェアにロードされる任意の組の値、またはパラメータを意味する。
ここで使用した標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該分野において周知であり、サンブルック,J.(Sambrook,J.)、フリッシュE.F.(Fritsch,E.F.)およびマニアティス,T.(Maniatis,T.)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor,NY)(1989)(以後、マニアティス(Maniatis))ならびにシルハビー,T.J.(Silhavy,T.J.)、ベンナン,M.L.(Bennan,M.L.)、およびエンクイスト,L.W.(Enquist,L.W.)、Experiments with Gene Fusions、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor,NY)(1984)ならびにグリーン・パブリッシング・アソシエーション・アンド・ウィレイ−インターサイエンス(Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience)から出版されたアウスベル,F.M.(Ausubel,F.M.)ら、Current Protocols in Molecular Biologyにより記載されている。
本発明は、非環式カロテノイド類上に見出されるψ−末端基からの単環式カロテノイド類(β−イオノン環末端基)の形成を選択的に触媒するロドコッカス(Rhodococcus)およびデイノコッカス(Deinococcus)由来のCrtL酵素を使用する非対称な単環式カロテノイド類を産生するための方法を提供する。
本発明は、非環式カロテノイドであるリコペンから単環式(β−イオノン環)カロテノイド類(即ち、γ−カロテン)のみを特異的に産生するロドコッカス(Rhodococcus)(配列番号1〜2)およびデイノコッカス(Deinococcus)(配列番号3〜4)由来の単離されたリコペンβ−シクラーゼ(CrtL)を提供する。さらに、本発明は、本発明のコードされる酵素の新規の機能性を使用して単環式カロテノイド類を産生するための方法を提供する。
ブラスト(BLAST)解析によって示されるように、ロドコッカス(Rhodococcus)から単離されるリコペンβ−シクラーゼポリペプチドは、デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)由来の推定カロテノイドリコペンβ−シクラーゼDR0801(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)IDAAF10377.1)および植物由来の他のCrtL型のリコペンβ−シクラーゼに対して相同性(31%同一性、45%類似性、E−値=2e−37)を共有した。ロドコッカス(Rhodococcus)およびデイノコッカス(Deinococcus)由来のCrtLとは異なり、光合成細菌(カニングハム(Cunningham)ら、Plant Cell.6:1107−1121(1994))および植物(ハグエニー(Hugueney)ら、Plant J.8:417−424(1995))由来のCrtL型リコペンβ−シクラーゼは、二重環化またはカロテノイド基質を触媒し、リコペンを二環式β−カロテンに変換することが示されている。
スミス−ウォーターマン(Smith−Waterman)アラインメントアルゴリズム(W.R.ピアソン(W.R.Pearson)、Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994)、開催年1992、111−20.編者:スハイ,サンドル(Suhai,Sandor).出版社:プレヌム(Plenum)、ニューヨーク州、ニューヨーク(New York,NY))を使用して、ロドコッカス(Rhodococcus)またはデイノコッカス(Deinococcus)から単離されるCrtL型リコペンβ−シクラーゼを公的データベースと比較すると、最も類似する既知の配列は、本明細書において報告する410アミノ酸にわたる長さのアミノ酸配列に対し約31%同一であることが示される。好適なアミノ酸フラグメントは本明細書に記載の配列に少なくとも約70%〜80%同一である。本明細書に記載の配列に少なくとも80〜90%同一である核酸フラグメントはより好適である。本明細書において報告するアミノ酸フラグメントに少なくとも95%同一である核酸フラグメントが最も好適である。同様に、本ORFに対応する核酸配列をコードする好適なロドコッカス(Rhodococcus)またはデイノコッカス(Deinococcus)CrtL型リコペンβ−シクラーゼは、活性なタンパク質をコードする配列であり、本明細書において報告する核酸配列に少なくとも80%同一である。より好適なCrtL型リコペンβ−シクラーゼ核酸フラグメントは、本明細書に記載の配列に少なくとも90%同一である。本明細書において報告する核酸フラグメントに少なくとも95%同一であるCrtL型リコペンβ−シクラーゼ核酸フラグメントが最も好適である。
適切な核酸フラグメントは、上記の相同性を有するだけでなく、少なくとも50アミノ酸、好ましくは少なくとも100アミノ酸、より好ましくは少なくとも150アミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも200アミノ酸、最も好ましくは少なくとも250アミノ酸を有するポリペプチドを典型的にコードする。
相同物の単離
本発明の方法を使用ことにより、単環式カロテノイド類の形成を選択的に触媒する独特な特性を有するロドコッカス(Rhodococcus)およびデイノコッカス(Deinococcus)から単離されるリコペンβ−シクラーゼ酵素(CrtL)を使用して、単一のβ−イオノン環末端基を含有する単環式カロテノイド類(即ち、γ−カロテンおよびその誘導体)を産生することができる。本発明の方法において使用されるCrtL酵素を使用して、同一もしくは他の微生物種から相同的タンパク質をコードする遺伝子を単離することができる。配列依存性プロトコールを使用する相同遺伝子の単離については当該分野において公知である。配列依存性プロトコールの例としては、核酸ハイブリダイゼーション法、および核酸増幅技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ムリス(Mullis)ら、米国特許第4,683,202号明細書、リガーゼ連鎖反応(LCR)、タボル(Tabor)ら、PNAS 82:1074,(1985))またはストランド置換増幅(SDA,ウォーカー(Walker)ら、PNAS 89:392(1992))の多様な使用によって例示されるように、DNAおよびRNA増幅の方法が挙げられるが、これらに限定されない。
例えば、本発明において使用される酵素に類似のタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子は、本核酸フラグメントの全部または一部を、DNAハイブリダイゼーションプローブとして使用し、当業者に周知の方法論を使用して任意の所望される細菌由来のライブラリーをスクリーニングすることによって、直接単離し得る。本核酸配列に基づく特定のオリゴヌクレオチドプローブは、当該分野において既知の方法(マニアティス(Maniatis))により設計および合成することができる。さらに、配列全体は、ランダムプライマーDNA標識、ニックトランスレーション、もしくは末端標識技術のような当業者に既知の方法によりDNAプローブを、または利用可能なインビトロ転写系を使用してRNAプローブを合成するのに直接使用することができる。加えて、本配列の一部または完全長を増幅するための特異的プライマーを、設計かつ使用することができる。生じる増幅産物は増幅反応の間に直接標識することができるか、または増幅反応後に標識することができ、そして適切なストリンジェンシー条件下で、完全長のDNAフラグメントを単離するためのプローブとして使用することができる。
典型的に、PCR型増幅技術において、プライマーは、異なる配列を有し、相互に相補的ではない。所望される試験条件に依存して、プライマーの配列は、標的核酸の効率的かつ正確な複製を提供するために設計するべきである。PCRプライマーの設計方法は一般的であり、当該分野において周知である。(テイン(Thein)およびワレイス(Wallace)、“The use of oligonucleotide as specific hybridization probes in the Diagnosis of Genetic Disorders”, in Human Genetic Diseases: A Practical Approach、K.E.デイビス(K.E.Davis)編、(1986)33〜50頁、IRLプレス(IRL Press)、バージニア州、ヘルンドン(Herndon, Virginia);ホワイト,B.A.(White,B.A.)(編)、Methods in Molecular Biologyのリキリック,W.(Rychlik,W.)(1993)、第15巻、31〜39頁、PCR Protocols:Current Methods and Applications、ヒューマニアプレス社(Humania Press,Inc.)、ニュージャージー州、トトワ(Totowa,NJ))。
一般に、本配列の2個の短いセグメントをポリメラーゼ連鎖反応プロトコルで使用し、DNAまたはRNAからの相同遺伝子をコードするより長い核酸フラグメントを増幅することができる。ポリメラーゼ連鎖反応はまた、クローニングされた核酸フラグメントのライブラリー上で実施してもよく、ここで、一方のプライマーの配列は本核酸フラグメントから誘導され、そして他方のプライマーの配列は、微生物の遺伝子をコードするmRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸領域の存在を利用する。
あるいは、第2のプライマー配列はクローニングベクター由来の配列に基づくことができる。例えば、当業者は、PCRを使用して転写物の単一点と3’または5’末端との間の領域のコピーを増幅することにより、cDNAを生じさせるRACEプロトコル(フローマン(Frohman)ら、PNAS 85:8998(1988))に従うことが可能である。本配列から3’および5’方向に配向されたプライマーを設計することが可能である。商業的に入手可能な3’RACEまたは5’RACE系(ギブコBRL(GibcoBRL)−ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、メリーランド州ロックビル(Rockville,MD))を使用して、特異的な3’または5’cDNAフラグメントを単離することができる(オオハラ(Ohara)ら、PNAS USA86:5673(1989);ロー(Loh)ら、Science 243:217(1989))。
あるいは、開示された配列は、相同物の同定のためのハイブリダイゼーション試薬として用いることもできる。核酸ハイブリダイゼーション試験の基本構成成分には、プローブ、目的の遺伝子または遺伝子フラグメントを含有することが疑われるサンプル、および特異的ハイブリダイゼーション方法が含まれる。本発明において使用されるCrtLリコペンβ−シクラーゼをコードするcrtL遺伝子の同定のために使用されるプローブは、典型的に、検出しようとする核酸配列に相補的な一本鎖核酸配列である。プローブは、検出しようとする核酸配列に「ハイブリダイズ可能」である。プローブの長さは5塩基〜1万塩基に変動することができ、実施しようとする特定の試験に依存する。典型的に、約15塩基〜約30塩基のプローブの長さが適切である。プローブ分子のただ一部でも検出しようとする核酸配列に相補的である必要がある。さらに、プローブと標的配列との間の相補性は完全である必要はない。ハイブリダイゼーションは、不完全な相補的分子の間でも生じ、その結果、ハイブリダイズされた領域内の塩基の特定の画分は、適切な相補的塩基と対を形成しない。
ハイブリダイゼーション方法は良好に規定されている。典型的に、プローブおよびサンプルは、核酸ハイブリダイゼーションを可能にする条件下で混合されなければならない。これには、適切な濃度および温度条件下、無機または有機塩の存在下でプローブとサンプルとを接触させることを要する。プローブおよびサンプル核酸は、プローブとサンプル核酸との間に可能な任意のハイブリダイゼーションが生じ得るのに十分に長い時間だけ接触させなければならない。混合物中のプローブまたは標的の濃度は、ハイブリダイゼーションが生じるのに必要な時間を決定する。プローブまたは標的の濃度が高いほど、ハイブリダイゼーションのインキュベーションに必要な時間は短い。場合により、カオトロピック剤を添加してもよい。カオトロピック剤は、ヌクレアーゼ活性を阻害することによって核酸を安定化する。さらに、カオトロピック剤は、室温で短いオリゴヌクレオチドプローブの高感度かつストリンジェントなハイブリダイゼーションを可能にする(バン・ネス(Van Ness)およびチェン(Chen)Nucl.Acids Res.19:5143−5151(1991))。適切なカオトロピック剤としては、特に、塩化グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、チオシアン酸ナトリウム、テトラクロロ酢酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、テトラ酢酸ルビジウム、ヨウ化カリウム、およびトリフルオロ酢酸セシウムが挙げられる。典型的に、カオトロピック剤は、約3Mの最終濃度で存在する。所望であれば、ハイブリダイゼーション混合物に典型的に30〜50%(v/v)でホルムアミドを添加することができる。
様々なハイブリダイゼーション溶液を用いることができる。典型的にこれらは、約20〜60%容量、好ましくは30%の極性有機溶媒を含んでなる。一般的なハイブリダイゼーション溶液は、約30〜50%v/vホルムアミド、約0.15〜1M塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tris−HCl、PIPESまたはHEPESなどの約0.05〜0.1Mの緩衝液(約6〜9のpH範囲)、ドデシル硫酸ナトリウムなどの約0.05〜0.2%の界面活性剤、または0.5〜20mM EDTA、フィコール(FICOLL)(ファルマシア バイオテック(Pharmacia Biotech),ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI))(約300〜500キロダルトン)、ポリビリルピロリドン(約250〜500kD)、および血清アルブミンを用いる。また、典型的なハイブリダイゼーション溶液には、約0.1〜5mg/mLの非標識キャリア核酸、フラグメント化した核酸DNA、例えばウシ胸腺もしくはサケ精子DNA、または酵母RNAおよび場合により約0.5〜2%wt./vol.グリシンも含まれる。また、ポリエチレングリコールなどの様々な極性水溶性または膨潤性薬剤、ポリアクリレートまたはポリメチルアクリレートなどのアニオン性ポリマー、および硫酸デキストランなどのアニオン性多糖性ポリマーを含む排除体積剤などの他の添加物も含まれ得る。
核酸ハイブリダイゼーションは、様々なアッセイ形式に適応可能である。最も適切な形式の1つはサンドイッチアッセイ形式である。サンドイッチアッセイは、非変性条件下でのハイブリダイゼーションに特に適応可能である。サンドイッチ型アッセイの主な構成成分は固相支持体である。固相支持体は、標識されていない、配列の一方の部分に相補的である固定化された核酸プローブを吸着するかまたは共有結合している。
非対称なカロテノイド類の微生物産生
本発明の非対称なカロテノイド類は、微生物宿主細胞を使用して産生させることができる。宿主細胞は、非環式カロテノイド類基質を対応する非対称なカロテノイドに変換する能力を有するリコペンβ−シクラーゼを好適に発現する。1つの実施態様では、宿主細胞は、非環式カロテノイド類を内因的に産生する能力を有することができる。もう1つの実施態様では、非環式カロテノイド基質は、宿主細胞に外因的に添加することができる。
開示された遺伝子および核酸フラグメントの発現のための好適な異種宿主細胞は、真菌または細菌ファミリー内において広範に見出すことができ、広範な範囲の温度、pH値、および溶媒耐性で増殖する微生物宿主を含んでなることができる。例えば、細菌、酵母、および糸状菌のいずれかは、本発明の核酸フラグメントの発現に適切な宿主であろうと考えられる。細胞の供給材料にかかわらず、転写、翻訳およびタンパク質の生合成装置は同じであるため、細胞バイオマスの作製に使用される炭素供給材料にかかわらず、機能的遺伝子が発現される。大規模微生物増殖および機能的遺伝子発現は、広範な単純あるいは複雑な炭水化物、有機酸およびアルコール、メタンなどの飽和炭化水素または光合成もしくは化学合成独立栄養宿主の場合の二酸化炭素を利用することができる。しかし、機能的遺伝子は、窒素、リン、イオウ、酸素、炭素または小さな無機イオンを含む任意の微量栄養素の形態および量を含み得る特定の増殖条件によって、調節、抑制または低下させることができる。さらに、機能的遺伝子の調節は、培養物に添加され、典型的に栄養またはエネルギー源とはみなされない特定の調節分子の存在もしくは非存在よって達成することができる。増殖速度もまた、遺伝子の発現において重要な調節因子であり得る。宿主株の例としては、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピヒア(Pichia)、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)などの細菌、真菌もしくは酵母種、またはサルモネラ(Salmonella)、バチルス(Bacillus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ザイモモナス(Zymomonas)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、エリスロバクター(Erythrobacter)、クロロビウム(Chlorobium)、クロマチウム(Chromatium)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、サイトファーガ(Cytophaga)、ロドバクター(Rhodobactor)、ロドコッカス(Rhodococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、コリネバクテリア(Corynebacteria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、デイノコッカス(Deinococcus)、エシェリヒア(Escherichia)、エルウィニア(Erwinia)、パントエア(Pantoea)、シュードモナス(Pseudomonas)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、メチロモナス(Methylomonas)、メチロバクター(Methylobacter)、メチロコッカス(Methylococcus)、メチロジーナス(Methylosinus)、メチロミクロビウム(Methylomicrobium)、メチロシスチス(Methylocystis)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、シネコシスチス(Synechocystis)、シネココッカス(Synechococcus)、アナベナ(Anabaena)、チオバチルス(Thiobacillus)、メタノバクテリウム(Methanobacterium)、クレブシエラ(Klebsiella)およびミクソコッカス(Myxococcus)などの細菌種が挙げられるが、これらに限定されない。
異種タンパク質の高レベル発現を指令する調節配列を含有する微生物発現系および発現ベクターは当業者に周知である。これらのいずれかを使用して、本発明のβ−シクラーゼの発現のためのキメラ遺伝子を構築することができる。次いで、これらのキメラ遺伝子を、形質転換によって適切な微生物に導入し、高レベルの酵素発現を提供することができる。
適切な宿主細胞の形質転換に有用なベクターまたはカセットは、当該分野において周知である。典型的にベクターまたはカセットは、関連遺伝子の転写および翻訳を指令する配列、選択マーカー、および自己複製もしくは染色体組込みを可能にする配列を含有する。適切なベクターは、転写開始の制御を有する遺伝子の5’側領域および転写の終了を制御するDNAフラグメントの3’側領域を含んでなる。両方の制御領域が形質転換された宿主細胞に相同な遺伝子に由来する場合が最も好ましいが、そのような制御領域は、産生宿主として選択される特定種に生来である遺伝子に由来する必要はないことを理解すべきである。
所望の宿主細胞において、本ORFの発現を駆動するのに有用である、開始制御領域またはプロモーターは多数あり、かつ当業者に馴染みである。事実上、これらの遺伝子を駆動することができるいかなるプロモーターも本発明に適し、これらはCYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス属(Saccharomyces)での発現に有用);AOX1(ピヒア属(Pichia)での発現に有用);ならびにlac、ara、tet、trp、lP、lP、T7、tac、およびtrc(大腸菌(Escherichia coli)での発現に有用)ならびにamy、apr、nprプロモーターおよびバチルス(Bacillus)での発現に有用な様々なファージプロモーターを含むが、これらに制限されない。
終了制御領域もまた、好適な宿主に生来の様々な遺伝子由来であり得る。場合により、終了部位は必要ではないが、しかし、含まれている場合が最も好ましい。
従って、例えば、適切なプロモーターの制御下で本細菌酵素をコードするキメラ遺伝子を導入することによって、環式カロテノイド産生の増加または改変が実証されることが予想される。天然の宿主細胞および異種宿主の両方において、本遺伝子を発現することが有用であると考えられる。本発明のcrtL遺伝子を生来の宿主に導入すると、現存のカロテノイド産生のレベルが改変されるであろう。さらに、本遺伝子を非生来の宿主細菌に導入してもよく、ここで、現存のカロテノイド経路を操作することができる。
本発明によって産生させることができる特定の単環式カロテノイド類として、γ−カロテン、β−ゼアカロテン、3−ヒドロキシ−β−ゼアカロテン、4−ケト−γ−カロテン、トルレン、3−ヒドロキシ−3’,4’−ジデヒドロ−β,ψ−カロテン−4−オン(HDCO)、3,3’−ジヒドロキシ−β−ψ−カロテン−4,4’−ジオン(DCD)、クロロバクテン、ルビキサンチン(3−ヒドロキシ−γ−カロテン)、4−ケト−ルビキサンチン、4−ケト−トルレン、フレキシキサンチン(1’,2’−ジヒドロ−1’−ヒドロキシ−3−ヒドロキシ−4−ケト−トルレン)、ミクソバクトン、α−カロテン、およびルテインが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のCrtL酵素に対して特に好適な基質は、リコペンまたはニューロスポレンなどの非環式カロテノイド類上のψ−末端基である。従って、好適な非環式カロテノイド基質として、リコペン、ニューロスポレン、ジデヒドロリコペン、リコキサンチン(16−ヒドロキシリコペン)、1−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロニューロスポレン、1−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロリコペン、1,2−ジヒドロ−3,4−デヒドロ−1−ヒドロキシリコペン、およびδ−カロテンが挙げられるが、これらに限定されない。
多くの適切な宿主細胞は、カロテノイド生合成経路の様々なエレメントを含有し、適切な非環式カロテノイド基質を内因的に産生する能力を有する。基質の産生に必要な遺伝子機構が存在しない場合、場合により基質の産生に必要な遺伝子を含有するように宿主細胞を操作してもよい。一般に、3つの遺伝子のみが必要である。ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ酵素をコードする少なくとも1コピーの遺伝子;フィトエンシンターゼ酵素をコードする少なくとも1コピーの遺伝子;およびフィトエンデヒドロゲナーゼ酵素をコードする少なくとも1コピーの遺伝子。カロテノイド生合成経路のこれらのエレメントは、様々な生物体から単離されており、それらの配列は当該分野において入手可能である。例えば、これらの遺伝子は、以下のチャートに示されるような公的データベースにおいて項目に挙げられている。
Figure 2005511034
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あるいは、基質が宿主細胞によって内因的に合成されない場合、基質を外因的に添加することが可能である。本実施態様では、適切なカロテノイド基質を穏やかな界面活性剤(例えば、DMSO)で可溶化してもよく、またリン脂質小胞と混合してもよい。細胞への輸送を支援するために、場合により、トルエンなどの適切な溶媒によって、細胞の浸透性を上げてもよい。カロテノイド基質のインビトロ生体変換のこのタイプの方法は当該分野における基盤を有し、これについては例えば、ハンデル(Hundle)ら、FEBS,315:329−334(1993)およびブラムレイ(Bramley)ら、Phytochemistry,26:1935−1939(1987)を参照のこと。
経路の調節
本方法において使用される本発明の酵素の配列に関する知識は、カロテノイド生合成経路を有する任意の生物体、特にメタノトロフにおける前記経路を操作するのに有用である。遺伝子経路を操作する方法は一般的であり、当該分野において周知である。特定の経路において選択された遺伝子を、様々な方法でアップレギュレートまたはダウンレギュレートすることができる。さらに、遺伝子中断および類似の技術によって、生物体における競合経路を消失または昇華することができる。
一旦、重要な遺伝子経路が同定され、配列が決定されると、特定の遺伝子をアップレギュレートし、経路の出力を増加することができる。例えば、標的化された遺伝子のさらなるコピーを、pBR322などのマルチコピープラスミド上で宿主細胞に導入することができる。あるいは、標的遺伝子は、非生来のプロモーターの制御下にあるように修飾することができる。細胞周期の特定のポイントまたは発酵進行中に経路が作動することを所望する場合、調節型または誘導性プロモーターを使用して、標的遺伝子の生来のプロモーターを置き換えることができる。同様に、場合によって、生来または内因性のプロモーターを修飾して、遺伝子発現を増大させてもよい。例えば、内因性プロモーターは、変異、欠失、および/または置換によって、インビボで変更することができる(キメエック(Kmiec)米国特許第5,565,350号明細書;ザーリング(Zarling)ら、PCT/US/93/03868を参照のこと)。
あるいは、標的経路またはエネルギーもしくは炭素の競合取り込み(competing sink)として役割を果たし得る競合経路において特定の遺伝子の発現を減少または消失する必要性が生じることがある。この目的のための遺伝子をダウンレギュレーションする方法が探査されている。中断しようとする遺伝子の配列が既知である場合、遺伝子ダウンレギュレーションのための最も有効な方法の1つは、標的化された遺伝子中断であり、ここで、転写を中断するように外来DNAが構造遺伝子に挿入される。このことは、中断しようとする遺伝子の部分に高度な相同性を有する配列に隣接する挿入すべきDNA(しばしば、遺伝子マーカーである)を含んでなる遺伝子カセットを作製することによって生じることができる。カセットを宿主細胞に導入することによって、細胞の生来のDNA複製機構を介して外来DNAが構造遺伝子に挿入される。(例えば、ハミルトン(Hamilton)ら、J.Bacteriol.171:4617−4622(1989);バルバス(Balbas)ら、Gene 136:211−213(1993);グエルデナー(Gueldener)ら、Nucleic Acids Res.24:2519−2524(1996);およびスミス(Smith)ら、Methods Mol.Cell.Biol.5:270−277(1996)を参照のこと。)
アンチセンス技術は、標的遺伝子の配列が既知である場合の遺伝子のダウンレギュレーションのもう1つの方法である。これを達成するために、所望の遺伝子由来の核酸セグメントをクローニングし、RNAのアンチセンス鎖が転写されるようにプロモーターに操作可能に連結する。次いで、この構築物を宿主細胞に導入し、RNAのアンチセンス鎖を産生させる。アンチセンスRNAは、目的のタンパク質をコードするmRNAの蓄積を妨害することによって、遺伝子の発現を阻害する。当業者であれば、特定の遺伝子の発現を減少するためにアンチセンス技術の使用が特に考慮されることを知っているであろう。例えば、アンチセンス遺伝子を適切なレベルで発現させるには、当業者に既知の異なる調節エレメントを利用して異なるキメラ遺伝子を使用することが必要であり得る。
標的化された遺伝子中断およびアンチセンス技術は、配列が既知である遺伝子をダウンレギュレートするための効果的な手段を提供するが、この他にも配列には基づかないそれほど特異的ではない方法論も開発されている。例えば、細胞をUV放射に暴露させ、次いで、所望の表現型についてスクリーニングしてもよい。化学薬剤による変異誘発も変異を作製するのに有効であり、通常使用される物質には、HNOおよびNHOHなどの非複製DNAに影響を及ぼす化学物質、ならびにフレームシフト変異が顕著であるアクリジン色素などの複製中のDNAに影響を及ぼす薬剤が含まれる。照射または化学薬剤を使用して変異を作製するための特定の方法については、当該分野において良好に記載されている(例えば、トーマスD.ブロック(Thomas D.Brock)Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology、第2版(1989)シナウエル・アソシエート社(Sinauer Associates, Inc.)、マサチューセッツ州サンダーランド(Sunderland,MA.)またはデスパンデ・ムクンドV.(Deshpande, Mukund V.)、Appl.Biochem.Biotechnol.,36:227,(1992)を参照のこと)。
遺伝子中断のためのもう1つの非特異的方法は、転位因子またはトランスポゾンの使用である。トランスポゾンは、DNAに無作為に挿入するが、配列に基づいて後で回収され、挿入が生じた場所を決定することができる遺伝子エレメントである。インビボおよびインビトロ両方での転位方法が公知である。両方法ともトランスポザーゼ酵素と組み合わせた転位因子の使用を要する。転位因子またはトランスポゾンをトランスポザーゼの存在下で核酸フラグメントと接触させると、転位因子は核酸フラグメントに無作為に挿入する。中断された遺伝子は転位因子の配列に基づいて同定することができるため、該技術は無作為変異および遺伝子の単離に有用である。インビトロ転位のためのキットが市販されている(例えば、ザ・プライマー・アイランド・トランスポジション・キット(The Primer Island Transposition Kit)、パーキン・エルマー・アプライド・バイオシステムズ(Perkin Elmer Applied Biosystems)、ニュージャージー州、ブランチブルグ(Branchburg,NJ)より市販、酵母Ty1エレメントに基づく;ザ・ゲノム・プライミング・システム(The Genome Priming System)、ニュー・イングランド・バイオラブス(New England Biolabs)、マサチューセッツ州、ベヴァリー(Beverly,MA)より市販;細菌トランスポゾンTn7に基づく;およびザ・EZ::TNトランスポゾン・インサーション・システムズ(the EZ::TN Transposon Insertion Systems)、エピセンター・テクノロジーズ(Epicentre Technologies)、ウィスコンシン州、マディソン(Madison,WI)より市販、Tn5細菌転位因子に基づく;を参照のこと)。
産業的産生
本発明のcrtL遺伝子を使用するβ−イオノン環に基づく単環式、従って、非対称なカロテノイド類の商業的産生を所望する場合、多様な培養方法論を適用することができる。例えば、組換え微生物宿主から過剰発現される特定の遺伝子産物の大規模産生は、バッチまたは連続培養方法論のいずれかによって行うことができる。
古典的なバッチ培養方法は閉鎖系であり、ここで、培地の組成は培養の開始時に設定され、培養プロセス中に人工的に変更されることはない。従って、培養プロセスの開始時に、培地に所望の生物体または複数の生物体を接種し、増殖および代謝活動を可能にして、系には何も添加しない。しかし、典型的に、「バッチ」培養は、炭素源の添加についてのバッチ処理であり、しばしばpHおよび酸素濃度などの因子を制御することが試みられる。バッチ系では、系の代謝物およびバイオマス組成は、培養が終了する時点まで一定に変化する。バッチ培養細胞は静的対数期を穏やかに通過して高対数増殖期に達し、最終的に、増殖速度が減少または停止する定常期に達する。処理を行わなければ、定常期の細胞は最終的に死滅する。対数期の細胞は、いくつかの系においてしばしば、最終産物または中間体の産生の大部分を担う。定常または指数後期産生は他の系で得ることができる。
標準的なバッチ系の1つのバリエーションは流加培養系である。流加培養プロセスも本発明に適切であり、培養の進行に伴って基質を徐々に増量しながら添加することを除いて、典型的なバッチ系を含んでなる。異化代謝産物抑制が細胞の代謝を阻害し易い場合、および培地中の基質量を制限することを所望する場合、流加培養系は有用である。流加培養系における実際の基質濃度の測定は困難であるため、pH、溶存酸素およびCOなどの排気体分圧などの測定可能な因子の変化に基づいて見積もられる。バッチおよび流加培養方法は当該分野において一般的かつ周知であり、その例はトーマスD.ブロック(Thomas D.Brock)Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology、第2版(1989)シナウエル・アソシエート社(Sinauer Associates, Inc.)、マサチューセッツ州サンダーランド(Sunderland,MA.)またはデスパンデ・ムクンドV.(Deshpande,Mukund V.)、Appl.Biochem.Biotechnol.,36,227,(1992)(本明細書において参考として援用される)に見出すことができる。
単環式カロテノイド類の商業的産生は、連続培養によっても達成することができる。連続培養は開放系であり、規定された培養培地を連続的にバイオリアクターに添加し、同時に等量の順化培地を処理のために取り出す。一般に、連続培養は細胞を一定の高液体相密度で維持し、ここで、細胞は主に対数増殖期にある。あるいは、連続培養を固定化された細胞によって実施してもよく、ここで、炭素および栄養物が連続的に添加され、有益な産物、副産物または不要産物が細胞塊から連続的に取り出される。細胞の固定化は、天然および/または合成材料からなる広範な固相支持体を使用して実施することができる。
連続または半連続培養によって、細胞増殖または最終産物の濃度に影響を及ぼす1つの因子またはいくつかの因子を変調することが可能である。例えば、1つの方法は、炭素源などの制限されている栄養物または窒素レベルを一定速度で維持し、他のすべてのパラメータを中位にすることが可能である。他の系では、培地の濁度によって測定される細胞濃度を一定に保ちながら、増殖に影響を及ぼす多くの因子を連続的に変更することができる。連続系は定常状態の増殖条件を維持しようとし、従って、培地を取り出すことによって失われる細胞は培養物中の細胞増殖速度に対して均衡を保たなければならない。連続培養プロセスの栄養および増殖因子を変調するための方法ならびに生成物の形成速度を最大にするための技術は、産業微生物学の分野において周知であり、様々な方法がBrock、上掲によって詳述されている。
本発明の発酵培地は、適切な炭素基質を含有しなければならない。適当な基質として、グルコースおよびフルクトースなどの単糖類、ラクトースまたはスクロースなどのオリゴ糖類、デンプンまたはセルロースなどの多糖類、またはこれらの混合物、ならびにチーズ乳漿浸透液(cheese whey permeate)、コーンステープリカー(cornsteep liquor)、テンサイモラス、およびオオムギモルトなどの再生可能な原料からの未精製混合物を挙げることができるが、これらに限定はされない。さらに、炭素基質はまた、重要な生化学中間体への代謝返還が実証されている二酸化炭素、メタンまたはメタノールなどの単炭素基質であってもよい。炭素1個および2個の基質に加えて、メチロトロフィック生物体は、代謝活性のために、メチルアミン、グルコサミンおよび種々のアミノ酸などの多数の他の炭素含有化合物を利用することも公知である。例えば、メチロトロフィック酵母は、メチルアミンからの炭素をトレハロースまたはグリセロールの形成のために利用することが公知である(ベリヨン(Bellion)ら、Microb.Growth C1 Compd.,[国際シンポジウム(Int.Symp)],第7回(1993)、415−32.編集者:ムレルJ.コリン(Murrell,J.Collin);ケリー・ドンP.(Kelly,Don P.)、発行者:インターセプト(Intercept)、英国、アンドベル(Andover,UK))。同様に、カンジダ(Candida)の様々な種は、アラニンまたはオレイン酸を代謝する(スルター(Sulter)ら、Arch.Microbiol.153:485−489(1990))。従って、本発明で利用される炭素の供給源は多様な炭素含有基質を包含することができ、生物体の選択によってのみ制限されると考えられる。
組換え発現−植物
植物および藻類もカロテノイド類を産生することが公知である。本発明の核酸フラグメントを使用して、微生物タンパク質を発現する能力を有するトランスジェニック植物を作製することができる。好適な植物宿主は、高産生レベルの本タンパク質を支持するあらゆる種類である。適切な緑色植物としては、ダイズ、ナタネ(ブラシカ・ナプス(Brassica napus)、B.カンペストリス(B.campestris))、トウガラシ、ヒマワリ(ヘリナンタス・アヌス(Helianthus annus))、ワタ(ゴシピウム・ヒルスタム(Gossypium hirsutum))、トウモロコシ、タバコ(ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum))、アルファルファ(メディカゴ・サティバ(Medicago sativa))、コムギ(トリチカム(Triticum)種)、オオムギ(ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare))、オートムギ(アベナ・サティバL(Avena sativa,L))、モロコシ(ソルガム・ビコロル(Sorghum bicolor))、コメ(オリザ・サティバ(Oryza sativa))、シロイヌナズナ、アブラナ科の野菜(ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、アメリカボウフウなど)、メロン、ニンジン、セロリ、パセリ、トマト、ジャガイモ、イチゴ、ピーナツ、ブドウ、草の実作物、テンサイ、サトウキビ、マメ、エンドウ、ライムギ、アマ、広葉樹木、針葉樹木、および飼草が挙げられるが、これらに限定されない。藻類の種としては、スピルリナ(Spirulina)、ハエモタコッカス(Haemotacoccus)、およびドゥナリエラ(Dunalliela)などの商業的に重要な宿主が挙げられるが、これらに限定されない。カロテノイド化合物の産生は、最初に、発生の所望の段階で所望の組織におけるある遺伝子の発現を指図することが可能なプロモーターにコーディング領域が操作可能に連結されている、本発明のキメラ遺伝子を構築することにより達成することができる。便宜的理由上、キメラ遺伝子は、同一の遺伝子由来のプロモーター配列および翻訳リーダー配列を含んでなることができる。転写終止シグナルをコードする3’の非コーディング配列もまた提供することができる。本キメラ遺伝子はまた、遺伝子発現を助長するために、1個もしくはそれ以上のイントロン含んでなることもできる。
コーディング領域の発現を含むことが可能ないかなるプロモーターおよびいかなるターミネーターのいかなる組み合わせも、キメラ遺伝子配列に使用することができる。プロモーターおよびターミネーターのいくつかの適切な例として、ノパリンシンターゼ(nos)、オクトピンシンターゼ(ocs)およびカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)遺伝子由来のプロモーターおよびターミネーターが挙げられる。使用することができる効率的な植物プロモーターの1つのタイプは、高レベル植物プロモーターである。本発明の遺伝子配列と操作可能に連結されているそのようなプロモーターは、本発明の遺伝子産物の発現を促進することが可能であるべきである。本発明において使用することができる高レベル植物プロモーターとしては、ダイズ由来の例のリブロース1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼの小さいサブユニット(ss)のプロモーター(ベリー−ロウ(Berry−Lowe)ら、J.Molecular and App. Gen.,1:483−498 1982)、およびクロロフィルa/b結合タンパク質のプロモーターが挙げられる。これらの2つのプロモーターは、植物細胞において光誘導性であることが既知である(例えば、Genetic Engineering of Plants,an Agricultural Perspective、A.キャシュモア(A.Cashmore)、ニューヨーク州、プレヌム(Plenum,NY)(1983)、29〜38頁;コルジG.(Coruzzi,G.)ら、The Journal of Biological Chemistry,258:1399(1983)、およびダンスムイルP.(Dunsmuir,P.)ら、Journal of Molecular and Applied Genetics,2:285(1983)を参照のこと)。
次いで、本キメラ遺伝子を含んでなるプラスミドベクターを構築することができる。プラスミドベクターの選択は宿主植物を形質転換するのに使用されるであろう方法に依存する。当業者であれば、キメラ遺伝子を含有する宿主細胞を首尾よく形質転換し、選択し、そして増殖させるためにプラスミドベクターに存在しなければならない遺伝子エレメントを十分に知っている。また当業者であれば、異なる独立の形質転換事象が異なるレベルおよびパターンの発現をもたらすこと(ジョーンズ(Jones)ら、EMBO J.4:2411−2418(1985);デアルメイダ(De Almeida)ら、Mol.Gen.Genetics 218:78−86(1989))、そして従って、複数の事象が、所望の発現レベルおよびパターンを表す株を得るためにスクリーニングされなければならないことも認識するであろう。こうしたスクリーニングは、DNAブロットのサザン分析(サザン(Southern)、J.Mol.Biol.98:503,(1975))、mRNA発現のノーザン分析(クロックゼクJ.(Kroczek,J.)Chromatogr.Biomed.Appl.,618(1−2)133−145(1993))、タンパク質発現のウェスタン分析、または表現型分析により成し遂げられ得る。
アプリケーションによっては、本タンパク質を異なる細胞区画に向かわせることが有用である。従って、輸送配列(キーグストラ,K(Keegstra,K)Cell 56:247−253(1989))、シグナル配列もしくは小胞体局在化をコードする配列(クリスピールズ,J(Chrispeels,J)Ann.Rev.Plant Phys.Plant Mol.Biol.42:21−53(1991))または核局在化シグナル(ライクヘル,N(Raikhel,N)Plant Phys.100:1627−1632(1992))のような適切な細胞内ターゲッティング配列が付加されおよび/または既に存在するターゲッティング配列を除去した酵素をコードするようにコーディング配列を改変することにより、上述されたキメラ遺伝子をさらに補うことができるということが予見される。引用された参考文献はこれらのそれぞれの例を与えるが、該一覧は全てを掲載しているわけではなく、そして、本発明において有用である有用性を有するより多くのターゲッティングシグナルが将来発見されてもよい。
好適な実施態様の記述
本出願人らは、非環式カロテノイドであるリコペンから単環式(β−イオノン環)カロテノイド類(即ち、γ−カロテン)のみを特異的に産生するロドコッカス(Rhodococcus)(配列番号1〜2)およびデイノコッカス(Deinococcus)(配列番号3〜4)からリコペンβ−シクラーゼ(CrtL)を単離した。これらの遺伝子は、対応する単環式カロテノイド類の産生方法において使用される。
ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12株を含有する環境サンプルは、ごみ処理施設から入手した。1mlの活性汚泥を10mlのS12培地に直接接種した。アニリンを唯一の炭素およびエネルギー源として使用した。培養は、100ppmのアニリンを2〜3日ごとに添加することによって、維持した。培養物を、14日ごとに希釈(1:100希釈)した。唯一の炭素およびエネルギー源としてアニリンを利用する細菌をさらに単離し、S12寒天上で精製した。アニリン(5μl)は、各ペトリ皿の蓋の内側に配置した(実施例1)。
ロドコッカス(Rhodococcus)AN12株の16s rRNA遺伝子をシークエンシングし、ジェンバンク(GenBank)(登録商標)の配列データベースで他の16s rRNA配列と比較した場合、AN12株の16s rRNA遺伝子は、高G+Cグラム陽性ロドコッカス(Rhodococcus)属の16s rRNA遺伝子配列に対し少なくとも98%類似性であることが見出された(実施例1)。
ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12株は、天然に着色されている。この株からカロテノイド色素を単離し、フォトダイオードアレイ検出器を有するHPLCによって分析した(実施例3)。観察されたピークのスペクトルは、γ−カロテンおよびその誘導体のうちの1つのスペクトル、4−ケト−γ−カロテンと一致した。測定された2つの主要なカロテノイドの分子量分析は、γ−カロテンおよび4−ケト−γ−カロテンの分子量分析と一致した。先に報告された細菌リコペンβ−シクラーゼは、γ−カロテン中間体を介するリコペンからの二環式β−カロテンおよびその誘導体の形成を触媒することが示されている。単離されたカロテノイド類の分析データは、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12株由来のCrtLリコペンβ−シクラーゼが単環式γ−カロテン様カロテノイド類のみを選択的に産生したことを示唆した。
リコペンシクラーゼ活性をアッセイするためのレポーター株として、大腸菌(E.coli)のリコペン蓄積株を構築した(実施例4)。簡単に説明すると、最初に、パントエア・ステワルチ(Pantoea stewartii)由来の遺伝子クラスターcrtEXYIBを大腸菌(E.coli)にクローニングし、次いで、クラスターのcrtY遺伝子にトランスポゾンを挿入することによって、リコペン蓄積大腸菌(E.coli)株を作製した。クラスターは、カロテノイド類の合成に必要な多くの遺伝子を含有し、β−カロテンが、野生型クラスター(crtY遺伝子中にトランスポゾン挿入物が存在しない)を有する形質転換された大腸菌(E.coli)において正常に産生された。crtZ遺伝子(β−カロテンヒドロキシラーゼ)は遺伝子クラスターに含まれたことに留意すべきである。しかし、crtZ遺伝子(反対方向でかつcrtB遺伝子に隣接して組織化される)を発現するためのプロモーターは存在しなかったため、ゼアキサンチンは産生されず、従って、ゼアキサンチングルコシルトランスフェラーゼ酵素(遺伝子クラスター内に位置するcrtX遺伝子によってコードされる)は、その反応のための基質を有さなかった。
インビトロトランスポゾン変異誘発は、野生型遺伝子クラスターを含有するプラスミドによって実施した。挿入変異を含有する一連のプラスミド構築物を作製し、宿主大腸菌(E.coli)MG1655株に形質転換した。産生されるコロニーの色に基づいて、様々な表現型の変異体を観察した。異なる株によって産生されるカロテノイド類をHPLCによって分析した。crtY遺伝子においてトランスポゾン挿入を含有するピンクの変異体はリコペンを蓄積した。クラスター内のcrtY遺伝子は、二環式カロテノイド類の形成を触媒する酵素であるリコペンβ−シクラーゼをコードした。トランスポゾン挿入は機能的CrtY酵素の合成を中断し、従って、環式カロテノイド類の合成を阻止し、非環式前駆体であるリコペンを蓄積した(図2)。リコペン蓄積株をMG1655(pDCQ51)と命名し、リコペンシクラーゼ活性をアッセイするためのレポーター株として使用した。
パントエア・ステワルチ(Pantoea stewartii)は、古典的な細菌性CrtY型のリコペンβ−シクラーゼを有し、リコペンを二環式β−カロテンに変換することが示されているエルウィニア・ウレドボラ(Erwinia uredovora)のcrtY(ミサワ(Misawa)ら、J.Bacteriol.172:6704−6712(1990))に相同である。ブラスト(BLAST)解析によって示されるように、ロドコッカス(Rhodococcus)由来のリコペンβ−シクラーゼは、デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)由来の推定カロテノイドリコペンβ−シクラーゼDR0801(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)IDAAF10377.1)および植物由来の他のCrtL型のリコペンβ−シクラーゼに対して相同性(31%同一性、45%類似性、E−値=2e−37)を共有した(実施例2)。ロドコッカス(Rhodococcus)およびデイノコッカス(Deinococcus)由来のCrtLとは異なり、光合成細菌(カニングハム(Cunningham)ら、Plant Cell.6:1107−1121(1994))および植物(ハグエニー(Hugueney)ら、Plant J.8:417−424(1995))から単離されるCrtL型リコペンβ−シクラーゼは、リコペンを二環式β−カロテンに変換するCrtY酵素と類似の様式で、カロテノイド基質の二重環化またはカロテノイド基質を触媒することが示されている。
もう1つの実施態様では、適合性発現ベクターを使用して、パントエア・ステワルチ(Pantoea stewartii)(ATCC8199)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12、およびデイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)R1(ATCC13939)からのリコペンシクラーゼ遺伝子を、大腸菌(E.coli)レポーター株中で前向きおよび後ろ向きの配向のいずれかで個々に異種的に発現させた(実施例5)。制限分析およびシークエンシングによって、6つのプラスミド構築物を確認した。後ろ向きの配向でシクラーゼ遺伝子を含有する全ての形質転換体の色はピンク色であり、細胞はなおリコペンを蓄積していることを示した。パントエア・ステワルチ(Pantoea stewartii)リコペンβ−シクラーゼ酵素CrtY(前向きの配向)を発現する形質転換体の色は黄色であり、細胞はもはやリコペンを蓄積していないことを示した。ロドコッカス(Rhodococcus)およびデイノコッカス(Deinococcus)リコペンシクラーゼ遺伝子crtL(前向きの配向)を含有する形質転換体ではオレンジ色が出現し、細胞はもはやリコペンを蓄積せず、産生されるカロテン類はcrtY遺伝子を含有するものとは異なることを示した。
異なるリコペンシクラーゼを発現する6つの大腸菌(E.coli)株から産生されるカロテノイド類をHPLCで分析した(実施例6)。リコペン蓄積株(宿主のみ)、すべての後ろ向き配向構築物株、および真正リコペン標準は、全て、ピーク保持時間および同一の吸収スペクトルを有し、コントロールは機能的リコペンシクラーゼ酵素を含有しなかった(表1)。前向き配向でパントエア(Pantoea)crtY遺伝子を含有する株は、類似の保持時間およびβ−カロテン標準と同一の吸収スペクトルを有するカロテノイドを含有した。このデータは、crtY遺伝子がリコペンを二環式β−カロテンに変換し、これは既知の細菌性β−シクラーゼに典型的であることを示した。ロドコッカス(Rhodococcus)およびデイノコッカス(Deinococcus)のいずれかのcrtL遺伝子を前向き配向で含有する株は、γ−カロテン(β−イオノン環を含有する単環式カロテノイド)を示す保持時間および吸収スペクトルを有するカロテノイドを含有した。crtL発現を伴うこれらの2つの株では、β−カロテンは産生されなかった。データは、使用したロドコッカス(Rhodococcus)またはデイノコッカス(Deinococcus)株由来のCrtL酵素は、パントエア(Pantoea)crtYによって産生されるβ−カロテンとは対照的に、リコペンから単環式γ−カロテノイドのみを選択的に産生した。
単環式カロテノイド類の形成を選択的に触媒するCrtL酵素を使用して、多様な新規または稀な非対称単環式カロテノイド類を作製することができる。リコペンに加えて、ψ−末端基を含有する非環式カロテノイド様化合物は、新規または稀なカロテノイド類の基質として作用すると予想することができる。
上記の方法を使用して、様々な発現系において前記化合物を産生させることができる。記載のような独特な機能性を有するCrtL酵素をコードする遺伝子は、植物発現系などの他の発現系で発現させることができる。従って、そのような発現系において産生される単環式カロテノイド類は、生物体の栄養的、薬理学的、または外観的価値を改変する。
あるいは、先に記載のcrtL遺伝子のうちの1つのアンチセンス鎖を適切なベクターに挿入し、続いて、宿主のゲノムDNAに組み入れることができる。アンチセンス鎖は、機能的crtL遺伝子を含有する前記生物体において産生されるカロテノイド類のプロフィールを阻害および制御する。
CrtL酵素の独特な機能性を使用して、リコペンからγ−カロテン様化合物を選択的に作製することができる。本明細書に記載の方法および構築物を使用して、様々な発現系において、単環式(従って、非対称な)γ−カロテン様カロテノイド類を選択的に産生させることができる。
本発明を以下の実施例でさらに規定する。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示している一方で、具体的説明のみとして示されることを理解すべきである。当業者であれば、上記の考察およびこれらの実施例から本発明の不可欠の特徴を確かめることが可能であり、また、その技術思想および範囲から逸脱することなく、それを多様な用途および条件に適合させるように本発明の多様な変更および改変をなすことが可能である。
一般的方法
実施例において使用した標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該分野において周知であり、サンブルック,J.(Sambrook,J.)、フリッシュ,E.F.(Fritsch,E.F.)およびマニアティス,T.(Maniatis,T.)Molecular Cloning:A Laboratory Manual;コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)(1989)(マニアティス(Maniatis))ならびにT.J.シルハビー(T.J.Silhavy)、M.L.ベンナン(M.L.Bennan)、およびL.W.エンクイスト(L.W.Enquist)、Experiments with Gene Fusions、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor,NY)(1984)ならびにグリーン・パブリッシング・アソシエーション・アンド・ウィレイ−インターサイエンス(Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience)から出版されたアウスベル,F.M.(Ausubel,F.M.)ら、Current Protocols in Molecular Biology(1987)により記載されている。
細菌培養の維持または増殖に適切な材料および方法は当該分野において周知である。以下の実施例での使用に適切な技術は、Manual of Methods for General Bacteriology(フィリップ・ゲルハルト(Phillipp Gerhardt)、R.G.E.ムレイ(R.G.E.Murray)、ラルフN.コスチロウ(Ralph N.Costilow)、オイゲンW.ネスター(Eugene W.Nester)、ウィリスA.ウッド(Willis A.Wood)、ノエルR.クリーク(Noel R.Krieg)およびG.ブリッグス・フィリップス(G.Briggs Phillips)編)、アメリカン・ソサイエティ・フォア・マイクロバイオロジー(American Society for Microbiology)、ワシントンDC(Washington,DC.)(1994))またはトーマスD.ブロック(Thomas D.Brock)Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology、第2版、シナウエル・アソシエーツ社(Sinauer Associates,Inc.)、マサチューセッツ州サンダーランド(Sunderland,MA)(1989)に記載の通りに見ることができる。すべての試薬、制限酵素ならびに細菌細胞の増殖および維持のために使用した材料は、他に特定しない限りアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー(Milwaukee,WI))、ディフコ・ラボラトリーズ(DIFCO Laboratories)(ミシガン州、デトロイト(Detroit,MI))、ギブコBRL−ライフ・テクノロジーズ(GibcoBRL−Life Technologies)(メリーランド州、ロックビル(Rockville,MD))、またはシグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))より入手した。
遺伝子配列の操作は、ジェネティクス・コンピュータ・グループ・インク(Genetics Computer Group Inc.)から入手可能なプログラム一式(ウィスコンシン・パッケージ・バージョン9.0、ジェネティクス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group)(GCG)、ウィスコンシン州マディソン)を使用して成し遂げられた。ここで、GCGプログラム「Pileup」を使用する場合、12のギャップ作成デフォルト値、および4のギャプ伸長デフォルト値を使用した。CGC「Gap」または「Bestfit」プログラムを使用する場合、50のデフォルトギャプ作成ペナルティおよび3のデフォルトギャプ伸長ペナルティを使用した。スミス−ウォーターマンアルゴリズム(W.R.Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994),Meeting Date 1992,111−20.編者:スハイ(Suhai)、サンドル(Sandor).出版社:プラヌム(Plenum)、ニューヨーク州、ニューヨーク(New York,NY))を組み入れたFASTAプログラムを使用して、マルチプルアライメントを作成した。プログラムのパラメータが付記されていない場合は、これらまたは他の任意のプログラムにおいて、デフォルト値を使用した。
略語の意味は次のようである:「h」は時間(単数および複数)を意味し、「min」は分(単数および複数)を意味し、「sec」は秒(単数および複数)を意味し、「d」は日(単数および複数)を意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味する。
実施例1
AN12株の単離および特徴付け
実施例1は、唯一の炭素およびエネルギー源としてアニリン上で増殖し得ることに基づく、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)のAN12株の単離について説明する。16S rRNA遺伝子配列の解析は、AN12株が、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する高G+Cグラム陽性細菌に関連することを示した。
アニリン上で増殖した細菌を、集積培養から単離した。集積培養は、125mlスクリューキャプ付き三角フラスコ(Erlenmeyer flask)中、10mlのS12培地(10mM硫酸アンモニウム、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、2mM MgCl、0.7mMCaCl、50μM MnCl、1μM FeCl、1μM ZnCl、1.72μM CuSO、2.53μM CoCl、2.42μM NaMoO、および0.0001%FeSO)に1mlの活性汚泥を接種することによって樹立した。活性汚泥は、ごみ処理施設から入手した。集積培養に、100ppmのアニリンを培養培地に直接添加して補充し、25℃、往復振盪でインキュベートした。集積培養は、100ppmのアニリンを2〜3日ごとに添加することによって、維持した。培養物を、14日ごとに、9.9mlの培養物を同容量のS12培地で置き換えることによって希釈した。集積培養のサンプルをS12寒天上に拡げることによって、唯一の炭素およびエネルギー源としてアニリンを利用する細菌を単離した。アニリン(5μL)は、各ペトリ皿の蓋の内側に配置した。ペトリ皿をパラフィルムで密閉し、倒置して室温(約25℃)でインキュベートした。次いで、代表的な細菌コロニーを、唯一の炭素およびエネルギー源としてアニリンを使用する能力について試験した。最初の単離に使用した本来のS12寒天プレートから新たなS12寒天プレートにコロニーを移し、各ペトリ皿の蓋の内側にアニリンを供給した。ペトリ皿をパラフィルムで密閉し、倒置して室温(約25℃)でインキュベートした。
各単離体の16S rRNA遺伝子をPCRで増幅し、以下のように解析した。各単離体は、R2A寒天(ディフコ・レブズ(DIFCO Labs)))上で増殖させた。培養プレート由来のいくつかのコロニーを100μlの水に懸濁した。混合物を凍結し、次いで融解した。市販のキットを使用して、製造者(パーキン・エルマー(Perkin Elmer)、マサチューセッツ州ボストン(Boston,MA))の指示に従い、PCRにより、プライマーHK12(5’−GAGTTTGATCCTGGCTCAG−3’)(配列番号7)およびHK13(5’−TACCTTGTTACGACTT−3’)(配列番号8)で16S rRNA遺伝子配列を増幅した。PCRは、パーキン・エルマー・ジーンアンプ(登録商標)9600(Perkin Elmer GeneAmp 9600)(コネチカット州、ノルウォーク(Norwalk,CT))で実施した。サンプルは、94℃で5分間、インキュベートし、次いで94℃で30秒間、55℃で1分間、および72℃で1分間を35回サイクル行った。増幅された16S rRNA遺伝子は、市販のキットを使用し、製造者(QIAクイックPCR精製キット(QIAquick PCR Purification Kit)、キアゲン(Qiagen)、カリフォルニア州バレンシア(Valencia,CA))の指示に従って精製し、自動化されたABIシークエンサー(アップライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)、カリフォルニア州フォスター市(Foster City,CA))上で配列を決定した。シークエンシング反応は、プライマーHK12、HK13、およびHK14(5’−GTGCCAGCAGYMGCGGT−3’)(配列番号9、ここで、Y=CまたはT、M=AまたはC)で開始した。類似配列についてのジェンバンク(GenBank)(登録商標)のBLAST検索(アルトシュル(Altschul)ら、Nucleic Acids Res.25:3389−3402(1997))に対する照会配列として、各単離体の16S rRNA遺伝子配列を使用した。
AN12株の16S rRNA遺伝子をシークエンシングし、ジェンバンク(GenBank)(登録商標)の配列データベースの他の16S rRNA配列と比較した。AN12株由来の16S rRNA遺伝子配列は、ロドコッカス(Rhodococcus)属に属する高G+Cグラム陽性細菌の16S rRNA遺伝子配列に対し少なくとも98%類似性であった。
実施例2
ロドコッカス(Rhodococcus)およびデイノコッカス(Deinococcus)由来のリコペンシクラーゼの同定
crtLのORFを、BLAST「nr」データベース(全部の非冗長(nr)ジェンバンク(GenBank)(登録商標)CDS翻訳、三次元構造ブルックヘイブンタンパク質データバンク(BrookhavenProtein Data Bank)由来の配列、スイスプロット(SWISS−PROT)タンパク質配列データベース、EMBLおよびDDBJデータベースを含んで成る)中に含有される配列に対する類似性についてBLAST(基礎局部整列検索ツール(BasicLocal Alignment Search Tool);アルトシュル(Altschul)らJ.Mol.Biol.215:403−410(1993);www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/も参照のこと)検索を実施することにより同定した。ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12のゲノム配列を、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)により提供されるBLASTNアルゴリズムを使用して「nr」データベース中に含有される公的に利用可能な全部のDNA配列に対する類似性について解析した。DNA配列を全部のリーディングフレームで翻訳し、そして、NCBIにより提供されるBLASTXアルゴリズム(アルトシュル(Altschul)ら、Nucleic Acid Res.25:3389〜3402(1997))を使用して、「nr」データベース中に含有される公的に利用可能な全部のタンパク質配列に対する類似性について比較した。
BLAST比較の結果は、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12株由来のリコペンβ−シクラーゼ(配列番号1および2)は、デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)R1株由来の推定カロテノイドリコペンβ−シクラーゼDR0801(ジェンバンク(GenBank)(登録商標)IDAAF10377.1)(31%同一性、45%類似性、E−値=2e−37)および植物由来の他のCrtL型のリコペンβ−シクラーゼに対して相同性を共有した。デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)R1株(配列番号3および4)をデータベースから回収し、リコペンβ−シクラーゼ活性について解析した。
実施例3
ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12は単環式カロテノイド類を産生する
ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12株は天然に着色されている。該株のカロテノイド色素を抽出し、HPLCにより分析した。AN12細胞を、NBYE(0.8%栄養ブロス+0.5%酵母エキス)中100ml中で26℃で1晩、浸透しながら定常期まで増殖させた。細胞を4000gで15分間遠心分離し、細胞ペレットを10mlのアセトンに再懸濁した。室温で一定に振盪することにより、アセトン中にカロテノイド類を抽出した。1時間後、細胞を、上記と同じ条件で遠心分離し、上清を回収した。抽出を再度繰り返し、両抽出物の上清を合わせて、窒素下で乾燥した。乾燥材料を0.5mlのメタノールに再溶解し、エッペンドルフ(Eppendorf)マイクロ遠心管5415C((ブリンクマン・インスツルメンツ社(Brinkmann Instruments,Inc.)、ニューヨーク州、ウエストバリー(Westbury,NY))中、16,000gで2分間の遠心分離より、不溶性材料を取り出した。0.1mlの抽出したサンプルをHPLC分析のために使用した。
ベックマン・ゴールド・ノイビー・ソフトウェア(Beckman Gold Nouveau Software)(メリーランド州コロンビア(Columbia,MD))が有するベックマン・システム・ゴールド(Beckman System Gold)(登録商標)HPLCを研究のために使用した。0.1mlの抽出物を、対応する保護カラムを有する125×4mmRP8(5μm粒子)カラム(ヒューレット・パッカード(Hewlett−Packard)、カリフォルニア州サンフェルナンド(San Fernando,CA))に充填した。流速は1ml/分であった。以下の溶媒プログラムを使用した:0〜11.5分、40%水/60%メタノール〜100%メタノール、11.5〜20分、100%メタノール、20〜30分、40%水/60%メタノール。ベックマン(Beckman)フォトダイオードアレイ検出器(モデル168)によりスペクトルデータを回収した。
450nmでモニターした場合、ロドコッカス(Rhodococcus)AN12株は、14.6分の溶出時間で主要なHPLCピークを示した。主要ピークの吸収極大は465nmであった。主要ピークの吸収は、ピーク高の比%III/IIを0として、切り上げた形状を有した。%III/IIは、スペクトルの細密な構造を記述する。最も長い波長吸収のピーク高をIIIと命名し、中央の吸収バンドのピーク高をIIと命名した。2つのピークの間の最小値をベースラインとした。小さい方のピークもまた、15.6分の溶出時間で存在した。小さなピークの吸収極大は435nm、458nm、および486nmである。吸収ピーク高の比%III/IIは0.45であった。カロテノイド類の大きい方または小さい方のスペクトルは、β−カロテン(449、474nm)またはエキネノン(459nm)またはカンタキサンチン(474nm)などのβ−カロテン誘導体のスペクトルとは異なった。その代わり、小さい方のピークのカロテノイドのスペクトルは、γ−カロテンのスペクトル(435〜440nm、460nm、489nm)と良好に一致し、大きいピークのカロテノイドのスペクトルは4−ケト−γ−カロテンのスペクトル(465nm)と良好に一致した。さらに、LC/MSによって550ダルトンおよび536ダルトンと決定されたAN12の大きい方および小さい方のカロテノイドの分子量もまた、4−ケト−γ−カロテンおよびγ−カロテンの分子量と一致する。これらの結果は、γ−カロテン様カロテノイド類を産生するいくつかのロドコッカス(Rhodococcus)株に関する報告と一致する(イチヤマ(Ichiyama)ら、Microbiol.Immunol.33:503−508(1989))。ガンマ−カロテン様カロテノイド類はただ1個のβ−イオノン環を含有するが、これに対してβ−カロテン誘導体は2個のβ−イオノン環を含有する。AN12のCrtLβ−シクラーゼは、リコペン基質の1つの末端のみを非対称に環化して、γ−カロテン様カロテノイド類を産生するのであって、両末端を対照的に環化してβ−カロテン誘導体を産生するのではないようである。
実施例4
リコペン蓄積大腸菌(E.coli)株の構築
ロドコッカス(Rhodococcus)リコペンβ−シクラーゼCrtLの単環化活性を確認するために、リコペンを蓄積する大腸菌(E.coli)株においてロドコッカス(Rhodococcus)crtL遺伝子を発現させた(図2)。パントエア(Pantoea)crtEXYIBクラスターのcrtY遺伝子へのトランスポゾン挿入によって、リコペン蓄積大腸菌(E.coli)株を構築した。
以下の方法によって、パントエア・ステワルチ(Pantoea stewartii)(ATCC8199)からcrtEXYIBクラスターを増幅した。エルウィニア・ウレドボラ(Erwinia uredovora)由来の配列を使用してプライマーを設計し、crt遺伝子を含有するPCRによりフラグメントを増幅した。これらの配列は:
5’−ATGACGGTCTGCGCAAAAAAACACG−3’(配列番号5)
5’−GAGAAATTATGTTGTGGATTTGGAATGC−3’(配列番号6)
を含んだ。
染色体DNAをパントエア・ステワルチ(Pantoea stewartii)(ATCC no.8199)から精製し、Pfuターボ(Pfu Turbo)(登録商標)ポリメラーゼ(ストラタジーン(Stratagene)、カリフォルニア州ラ・ジョラ(La Jolla,CA))を次の条件下でPCR増幅反応に使用した:94℃で5分間の初期期間、続いて、94℃で1分間、60℃で1分間、および72℃で10分間の25サイクル。最後のサイクル後に、72℃で10分間の伸長期間がある。ゲル電気泳動後に6.3kbの単一産物が観察された。Taqポリメラーゼ(パーキン・エルマー(Perkin Elmer))を10分間、72℃の反応に使用し、pCR(登録商標)4−TOPO(登録商標)(インビトロゲン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))へのTOPO(登録商標)のためのフラグメントにさらなる3’アデノシンヌクレオチドを付加した。エレクトロポレーションによる大腸菌(E.coli)DH5α(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)、メリーランド州ロックビル(Rockville,MD))への形質転換後、いくらかのコロニーは茶黄色の外観を呈し、該大腸菌がカロテノイド化合物を産生することを示した。crt遺伝子クラスター(crtEXYIB)を含有する6.3kbのEcoRIフラグメントを広範な宿主範囲のベクターpBHR1(モビテックLLC(MoBiTec,LLC)、フロリダ州マルコ・アイランド(Marco Island,FL))にクローニングし、pBHR−crt1を形成させた。野生型crtEXYIB遺伝子クラスターを含有するpBHR−crt1を有する大腸菌(E.coli)株は、β−カロテンを産生した。pBHR1上のクロラムフェニコール耐性遺伝子プロモーターが、crt遺伝子の機能的発現を指令したようである。
製造者の指示に従い、EZ::TNTM<TET−1>挿入キット(エピセンター・テクノロジーズ(Epicentre Technologies)、ウィスコンシン州マディソン(Madison,WI))を使用して、pBHR−crt1のインビトロトランスポゾン突然変異誘発を実施した。3つの色の挿入変異体(白色、黄色、ピンク色)が観察された。ピンク色の変異体は、crtY遺伝子にトランスポゾンの挿入を有し、その結果、リコペンを蓄積したようであった。EZ::TNTM挿入キット由来のトランスポゾン特異的プライマーFP−1およびRP−1を使用するシークエンシングによって、ピンク色の変異体の1つのトランスポゾン挿入を確認した。プラスミドはpBHR−crt1のcrtY遺伝子にこの挿入を担持し、pDCQ51と命名した。プラスミドpDCQ51を、MG1655大腸菌(E.coli)株に形質転換した。該株中のカロテノイド含有物を、先に記載のようにHPLCで分析した。MG1655(pDCQ51)細胞はリコペンを蓄積したが、これに対してトランスポゾンの挿入を何ら伴わないMG1655(pBHR−crt1)株ではβ−カロテンが産生された。このことは、pDCQ51上のcrtY挿入によってリコペンの環化が阻止されたことと一致する。その後、MG1655(pDCQ51)はリコペンシクラーゼ活性をアッセイするためのレポーター株として使用する。
実施例5
大腸菌(E.coli)におけるリコペンシクラーゼの発現
pTrcHis2−TOPO(登録商標)発現ベクター(インビトロゲン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))を使用して、パントエア・ステワルチ(Pantoea stewartii)(ATCC8199)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12およびデイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)R1(ATCC13939)由来のリコペンシクラーゼ遺伝子を大腸菌(E.coli)において個々に発現させた。リコペンシクラーゼ発現のためのpTrcHis2ベクターは、パントエア(Pantoea)crt遺伝子を含有するpBHR1に基づくレポータープラスミドpDCQ51に適合性であった。リコペンを蓄積する大腸菌(E.coli)株におけるこれらのcrtL遺伝子の異種発現によって、ロドコッカス(Rhodococcus)CrtLおよび相同デイノコッカス(Deinococcus)CrtL(DR0801)を特徴付けた。プライマーAN12wtY_F(5’−ATGAGCACACTCGACTCCTCC−3’)(配列番号10)およびAN12wtY_R(5’−TCACCGGAAAAACGGCGC−3’)(配列番号11)を使用して、ロドコッカス(Rhodococcus)AN12リコペンシクラーゼcrtL遺伝子をPCR増幅した。プライマーcrtY_F(デイノ(Deino))(5’−ATGGCGCCTTTTTCCCCCGCGA−3’)(配列番号12)およびcrtY_R(デイノ(Deino))(5’−TCAAATCTTCAGCCCCGCAGCG−3’)(配列番号13)を使用して、デイノコッカス(Deinococcus)リコペンシクラーゼcrtL遺伝子をPCR増幅した。また、プライマーcrtY_F(5’−ATGCAACCGCACTATGATCT−3’)(配列番号14)およびcrtY_R(5’−TCAACGATGAGTCGTCATAATT−3’)(配列番号15)を使用して、パントエア(Pantoea)リコペンシクラーゼcrtY遺伝子をPCR増幅した。1149bpのパントエア(Pantoea)crtYをpTrcHis2発現ベクターにクローニングして、プラスミドpDCQ118(前向き配向)およびpDCQ120(後ろ向き配向)を得た。1131bpのロドコッカス(Rhodococcus)crtLをpTrcHis2発現ベクターにクローニングして、プラスミドpDCQ119(前向き配向)およびpDCQ121(後ろ向き配向)を得た。1233bpのデイノコッカス(Deinococcus)crtLをpTrcHis2発現ベクターにクローニングして、プラスミドpDCQ128(前向き配向)およびpDCQ129(後ろ向き配向)を得た。6つの全てのプラスミドを制限分析およびシークエンシングによって確認した。その後、該プラスミドを、リコペンを産生するMG1655(pDCQ51)細胞にエレクトロポレートした。後ろ向き配向でシクラーゼ遺伝子を含有するクローンの形質転換体は、MG1655(pDCQ51)宿主細胞と同じピンク色であり、リコペン基質がなおこれらの細胞に存在したことを示した。前向き配向でシクラーゼ遺伝子を含有するクローンの形質転換体は、もはやピンク色を呈さず、発現されたリコペンシクラーゼによって、リコペン基質が生成物に変換されたことを示唆した。興味深いことに、pDCQ119(ロドコッカス(Rhodococcus)crtL)およびpDCQ128(デイノコッカス(Deinococcus)crtL)は、pDCQ118(パントエア(Pantoea)crtY)の黄色の形質転換体とは異なるオレンジ色を示し、ロドコッカス(Rhodococcus)またはデイノコッカス(Deinococcus)CrtLは、パントエア(Pantoea)CrtYより産生されるβ−カロテンとしてのリコペン基質とは異なるカロテノイド類を産生したことを示唆した。
実施例6
リコペンシクラーゼを発現する大腸菌(E.coli)株から産生されるカロテノイド類の分析
異なるリコペンシクラーゼを発現する上記の6つの大腸菌(E.coli)株から産生されるカロテノイド類を、HPLCによって分析した(表1)。個々の株を、100μg/mlアンピシリンおよび25μg/mlカナマイシンを有する50mlのLB培地中、37℃で1晩、増殖させた。細胞を4000g、15分間で回収し、細胞ペレットを10mlのアセトンに再懸濁した。室温で一定に1時間振盪することにより、アセトン中にカロテノイド類を抽出した。細胞を、遠心分離し、抽出をもう1度繰り返した。アセトン抽出物を合わせて、窒素下で乾燥した。乾燥材料を1mlのメタノールに再溶解し、0.2μmアクロディスク(Acrodisc)(登録商標)HPLC用シリンジフィルター(ゲルマン−パル・ライフ・サイエンシズ(Gelman−Pall Life Sciences)、ミシガン州アン・アルボル(Ann Arbor,MI))を通過させることによって不溶性材料を取り出した。実施例1と同じ方法を使用して、0.1mlの抽出したサンプルをHPLC分析のために使用した。
pDCQ51を、単独かまたは後ろ向き配向でクローニングされたさらなるリコペンβ−シクラーゼと共に含有するピンク色の株から抽出されたカロテノイド類は、シグマ(Sigma)(ミズーリ州セントルイス(St Louis,MO))製のリコペン化合物の標準品と同じ溶出時間、吸収スペクトルでカロテノイドを呈示した。前向き配向でパントエア(Pantoea)crtYを含有するpDCQ118を有する黄色の株から抽出されたカロテノイドは、β−カロテンの標準品と一致するカロテノイドを呈示した(図3)。このことから、リコペンβ−シクラーゼとしてのCrtYがリコペンをβ−カロテンに変換する機能が確認され、pDCQ151リコペンを産生するプラスミドとpTrcHis2に基づくシクラーゼ発現プラスミドとのインビボ相補アッセイ系が検証された。ロドコッカス(Rhodococcus)(pDCQ119)またはデイノコッカス(Deinococcus)(pDCQ128)のいずれかのリコペンシクラーゼcrtLを含有するオレンジ色の株から抽出されたカロテノイド類は、リコペンまたはβ−カロテンとは異なるカロテノイドを呈示した。このピークの保持時間(15.5分)および吸収スペクトル(437nm、459nm、486nm)は、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12の小さい方のピークのカロテノイドと良好に一致したが、該ピークはγ−カロテンであるようである(実施例1)。pDCQ119またはpDCQ128を含有するこれらの2つのCrtL発現株では、β−カロテンは検出されなかった。これらのデータは、パントエア(Pantoea)CrtYとは異なり、ロドコッカス(Rhodococcus)またはデイノコッカス(Deinococcus)由来のリコペンβ−シクラーゼCrtLは、リコペンを単環式γ−カロテンに変換したことを示唆した(図4)。CrtLの単環化活性はまた、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)AN12がγ−カロテン誘導体を産生する理由を説明することができる。
Figure 2005511034
非環式末端基(ψ基)または環式末端基(β−イオノン環またはε−イオノン環)のカロテノイド構造を図示する。 異種発現系MG1655(pDCQ51)とpDCQ118またはpDCQ119とにおけるリコペンシクラーゼのインビボ相補性を図示する。 HPLC溶出プロフィールおよびMG1655(pDCQ51)単独由来のカロテノイド類およびロドコッカス(Rhodococcus)CrtLまたはパントエア(Pantoea)CrtY発現によるカロテノイド類の吸収スペクトルを図示する。 同じ非環式基質であるリコペンを使用して、パントエア(Pantoea)リコペンβ−シクラーゼCrtYおよびロドコッカス(Rhodococcus)またはデイノコッカス(Deinococcus)リコペンβ−シクラーゼCrtLによって触媒される異なる酵素反応を図示する。
【配列表】
Figure 2005511034
Figure 2005511034
Figure 2005511034
Figure 2005511034
Figure 2005511034
Figure 2005511034

Claims (20)

  1. a)少なくとも1つのψ−末端基を有する非環式カロテノイド類を産生する宿主細胞であって、
    (i)配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子;
    (ii)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、そして2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(i)とハイブリダイズする単離された核酸分子;ならびに
    (iii)スミス−ウォーターマン法のアラインメントに基づいて、配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも70%同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子、
    よりなる群から選択されるリコペンβ−シクラーゼを発現する宿主細胞を準備すること;
    b)非対称なカロテノイド類が産生される条件下で(a)の宿主細胞を増殖させること;ならびに
    c)場合により、前記非対称なカロテノイド類を回収すること、
    を含んでなる非対称なカロテノイド化合物の産生方法。
  2. 少なくとも1つのψ−末端基を有する非環式カロテノイドが、リコペン、ニューロスポレン、ジデヒドロリコペン、リコキサンチン(16−ヒドロキシリコペン)、1−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロニューロスポレン、1−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロリコペン、1,2−ジヒドロ−3,4−デヒドロ−1−ヒドロキシリコペン、およびδ−カロテンよりなる群から選択される請求項1に記載の方法。
  3. 非対称なカロテノイド化合物が、γ−カロテン、β−ゼアカロテン、3−ヒドロキシ−β−ゼアカロテン、4−ケト−γ−カロテン、トルレン、3−ヒドロキシ−3’,4’−ジデヒドロ−β,ψ−カロテン−4−オン(HDCO)、3,3’−ジヒドロキシ−β−ψ−カロテン−4,4’−ジオン(DCD)、クロロバクテン、ルビキサンチン(3−ヒドロキシ−γ−カロテン)、4−ケト−ルビキサンチン、4−ケト−トルレン、フレキシキサンチン(1’,2’−ジヒドロ−1’−ヒドロキシ−3−ヒドロキシ−4−ケト−トルレン)、ミクソバクトン、α−カロテン、およびルテインよりなる群から選択される請求項1に記載の方法。
  4. 宿主細胞が、細菌、酵母、糸状菌、藻類、および緑色植物よりなる群から選択される請求項1に記載の方法。
  5. 宿主細胞が、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピヒア(Pichia)、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、サルモネラ(Salmonella)、バチルス(Bacillus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ザイモモナス(Zymomonas)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、エリスロバクター(Erythrobacter)、クロロビウム(Chlorobium)、クロマチウム(Chromatium)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、サイトファーガ(Cytophaga)、ロドバクター(Rhodobactor)、ロドコッカス(Rhodococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、コリネバクテリア(Corynecbacteria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、デイノコッカス(Deinococcus)、エシェリヒア(Eshcerichia)、エルウィニア(Erwinia)、パントエア(Pantoea)、シュードモナス(Pseudomonas)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、メチロモナス(Methylomonas)、メチロバクター(Methylobacter)、メチロコッカス(Methyloccocus)、メチロジーナス(Methylsinus)、メチロミクロビウム(Methylomicrobium)、メチロシスチス(Methylocystis)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、シネコシスチス(Synechocystis)、シネココッカス(Synechococcus)、アナベナ(Anabaena)、チオバチルス(Thiobacillus)、メタノバクテリウム(Methanobacterium)、クレブシエラ(Klebsiella)およびミクソコッカス(Myxococcus)よりなる群から選択される請求項4に記載の方法。
  6. 宿主細胞が、スピルリナ(Spirulina)、ハエモタコッカス(Haemotacoccus)、およびドゥナリエラ(Dunalliela)よりなる群から選択される請求項4に記載の方法。
  7. 宿主細胞が、ダイズ、ナタネ、ヒマワリ、ワタ、トウモロコシ、タバコ、アルファルファ、コムギ、オオムギ、オートムギ、モロコシ、コメ、シロイヌナズナ、アブラナ科の野菜、メロン、ニンジン、セロリ、パセリ、トマト、ジャガイモ、イチゴ、ピーナツ、ブドウ、草の実作物、テンサイ、サトウキビ、マメ、エンドウ、ライムギ、アマ、広葉樹木、針葉樹木、および飼草からなる群より選択される請求項4に記載の方法。
  8. 非環式カロテノイド類を産生する宿主細胞が:
    (i)ゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ酵素をコードする少なくとも1コピーの遺伝子;
    (ii)フィトエンシンターゼ酵素をコードする少なくとも1コピーの遺伝子;および
    (iii)フィトエンデヒドロゲナーゼ酵素をコードする少なくとも1コピーの遺伝子
    を含んでなる請求項1に記載の方法。
  9. a)(i)配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子;
    (ii)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、そして2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(i)とハイブリダイズする単離された核酸分子;ならびに
    (iii)スミス−ウォーターマン法のアラインメントに基づいて、配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも70%同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子、
    よりなる群から選択されるリコペンβ−シクラーゼを発現する宿主細胞を準備すること;
    b)(a)の宿主細胞と少なくとも1つのψ−末端基を含んでなる非環式カロテノイドとを接触させること;
    c)非対称なカロテノイド類が産生される条件下で(b)の宿主細胞を増殖させること;ならびに
    d)場合により、前記非対称なカロテノイド類を回収すること、
    を含んでなる非対称なカロテノイド化合物の産生方法。
  10. 非環式カロテノイドが、リコペン、ニューロスポレン、ジデヒドロリコペン、リコキサンチン(16−ヒドロキシリコペン)、1−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロニューロスポレン、1−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロリコペン、1,2−ジヒドロ−3,4−デヒドロ−1−ヒドロキシリコペン、およびδ−カロテンよりなる群から選択される請求項9に記載の方法。
  11. 非対称なカロテノイドが、γ−カロテン、β−ゼアカロテン、3−ヒドロキシ−β−ゼアカロテン、4−ケト−γ−カロテン、トルレン、3−ヒドロキシ−3’,4’−ジデヒドロ−β,ψ−カロテン−4−オン(HDCO)、3,3’−ジヒドロキシ−β−ψ−カロテン−4,4’−ジオン(DCD)、クロロバクテン、ルビキサンチン(3−ヒドロキシ−γ−カロテン)、4−ケト−ルビキサンチン、4−ケト−トルレン、フレキシキサンチン(1’,2’−ジヒドロ−1’−ヒドロキシ−3−ヒドロキシ−4−ケト−トルレン)、ミクソバクトン、α−カロテン、およびルテインよりなる群から選択される請求項9に記載の方法。
  12. (a)少なくとも1つのψ−末端基を有する非環式カロテノイド類を産生する宿主細胞を準備すること;
    (b)(a)の宿主細胞に:
    (i)配列番号および配列番号4よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子;
    (ii)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、そして2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(i)とハイブリダイズする単離された核酸分子;ならびに
    (iii)スミス−ウォーターマン法のアラインメントに基づいて、配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも70%同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子、
    よりなる群から選択されるリコペンβ−シクラーゼ遺伝子を導入すること;
    (c)リコペンβ−シクラーゼ遺伝子が発現され、非対称なカロテノイド生合成が調節される条件下で(b)の宿主細胞を増殖させること、
    を含んでなる生物体における非対称なカロテノイド生合成を調節する方法。
  13. リコペンβ−シクラーゼ遺伝子をアップレギュレートする請求項12に記載の方法。
  14. 前記リコペンβ−シクラーゼ遺伝子をマルチコピー型プラスミド上で過剰発現させる請求項13に記載の方法。
  15. 前記リコペンβ−シクラーゼ遺伝子を誘導性または調節型プロモーターに操作可能に連結する請求項13に記載の方法。
  16. 前記リコペンβ−シクラーゼ遺伝子をダウンレギュレートさせる請求項13に記載の方法。
  17. 前記リコペンβ−シクラーゼ遺伝子をアンチセンス配向で発現させる請求項12に記載の方法。
  18. 前記リコペンβ−シクラーゼをコーディング領域への外来DNAの挿入によって中断する請求項12に記載の方法。
  19. (a)ゲノムライブラリーを、
    (i)配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子;
    (ii)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、そして2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(i)とハイブリダイズする単離された核酸分子;ならびに
    (iii)スミス−ウォーターマン法のアラインメントに基づいて、配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも70%同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子、
    よりなる群から選択される核酸分子の一部で、プロービングすること;
    (b)(a)の単離された核酸分子とハイブリダイズするDNAクローンを同定すること;ならびに
    (c)工程(b)において同定されるクローンを含んでなるゲノムフラグメントをシークエンシングすること、
    を含んでなり、シークエンシングされるゲノムフラグメントはカロテノイド生合成酵素をコードしている、
    少なくとも1つのψ−末端基を有する非環式カロテノイド類からの非対称なカロテノイド類の産生を触媒するリコペンβ−シクラーゼをコードする遺伝子の同定方法。
  20. (a)(i)配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子;
    (ii)0.1×SSC、0.1%SDSで65℃、そして2×SSC、0.1%SDSで洗浄後、0.1×SSC、0.1%SDSのハイブリダイゼーション条件下で(i)とハイブリダイズする単離された核酸分子;ならびに
    (iii)スミス−ウォーターマン法のアラインメントに基づいて、配列番号2および配列番号4よりなる群から選択されるポリペプチドに少なくとも70%同一性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子、
    よりなる群から選択される配列の一部に対応する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーを合成すること;ならびに
    (b)工程(a)のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、クローニングベクター中に存在する挿入物を増幅すること、
    を含んでなり、増幅される挿入物はカロテノイド生合成酵素をコードするアミノ酸配列の一部をコードしている、
    少なくとも1つのψ−末端基を有する非環式カロテノイド類からの非対称なカロテノイド類の産生を触媒するリコペンβ−シクラーゼをコードする遺伝子の同定方法。
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