JP2005501109A - 黄斑変性の治療および/または予防用の組成物、その製造方法および眼を治療するためのその使用 - Google Patents
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Abstract
眼を治療するための負に荷電したリン脂質ならびに負に荷電したリン脂質および場合によってはカロチノイドおよび/または抗酸化剤を含有する組成物が開示される。好ましい態様において、カルジオリピンを除く少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含有する組成物を使用して、加齢性黄斑変性を処置する。加齢性黄斑変性の処置用の負に荷電したリン脂質を作製するための方法、ならびに負に荷電したリン脂質および場合によってはカロチノイドおよび/または抗酸化剤を含有する組成物を作製するための方法もまた開示される。
Description
【0001】
発明の背景
本発明は、眼を治療するための、負に荷電したリン脂質、ならびに負に荷電したリン脂質および場合によってはカロチノイドおよび/または抗酸化剤を含有する組成物に関する。好ましい態様において、本発明は、加齢性黄斑変性の治療のための負に荷電したリン脂質の使用に関する。本発明は、負に荷電したリン脂質を製造する方法、ならびに、加齢性黄斑変性の治療用の負に荷電したリン脂質および場合によってはカロチノイドおよび/または抗酸化剤を含有する組成物を製造する方法にも関する。
【0002】
先行技術に見られる課題
加齢性黄斑変性(AMD)は、65才以上の人口の10〜20%が罹患し、工業国の高齢者の重大な視力損傷および/または視力問題の主要原因の1つである(Klein, R.、 Klein, B.E.、およびLinton, K.L. (1992)Ophthalmology 99, 933-943)。患者の約20%が罹患し、光ダイナミック療法によって治療できる湿性黄斑変性と、患者の約80%が罹患している乾性AMDに区別される。乾性AMDは一般に、遅い進行を示し、現在も治療することができない。
【0003】
老年医学に特に重要であるこの疾患の分子的な原因は、充分に研究されていない。最新の研究では、見る過程で眼において自然に形成され、歳を重ねると共に10倍に増加する色素(A2E、N-レチニル-N-レチニリデンエタノールアミン)(Eldrid, G.E., Lasky, M.R.(1993)Nature 361, 724-726;Parish, C.A., Hashimoto, M., Nakanishi, K., Dylon, J., Sparrow, J.(1998)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 14609-14613)が、網膜の色素上皮細胞を引き起こすことが示されている(Suter, M., Reme, C.E., Grimm, C., Wenzel, A., Jeettela, M., Esser, P., Kociok, N., Leist, M.およびRichter, C.(2000)J. Biol. Chem. 275, 39625-39630)。A2Eが乾性AMDに部分的に関与しているという徴候がいくつかある。
【0004】
新しい研究は、A2Eの細胞傷害性が、極めて特異的な作用様式により引き起こされることを示している(Suterら、同書参照):A2Eは、ミトコンドリアにおけるチトクロムcとチトクロムcオキシダーゼとの相互作用を妨害する。ミトコンドリア呼吸鎖が遮断され、従ってエネルギーターンオーバーおよび反応性酸素の放出の減少が生じるので、細胞対して劇的な結果をもたらす。さらに、細胞質へのチトクロムcの放出が生じ、いわゆるアポプトソーム(apoptosome)が形成されて、アポトーシスが生じる、即ち、プログラム化された細胞死が起こる。
【0005】
しかし、最終分析において、斑におけるプログラム化された細胞死、およびそれによる斑の破壊、および高齢患者における視力の減少および/または失明を生じる正確なメカニズムは現在も解明されていない。
【0006】
発明の目的および要旨
従って、眼の病理学的状態、特にAMDを治療する薬剤として使用されうる物質および組成物を提供し、それによってこの疾病の予防、緩和または治癒が可能となることが関連分野で強く望まれている。集団の平均年齢が医学の進歩によって高くなり、従って、全人口に対してますます多くの患者がこの疾患に罹患するので、この種の使用に対する要請が特に高まっている。さらに、おそらくまだ解明されていない他の過程によって生じる網膜の病理学的状態が治療できるようになることも望まれている。これらは、眼および/または網膜の酸化による損傷、ならびに強い薬剤および/または高エネルギー照射の影響による損傷に主として関係している。
【0007】
従って、本発明の1つの目的は、眼の疾患、特に黄斑変性およびAMDの治療を可能にし、および/またはこれらの疾病の予防を可能にする使用を提供することである。さらに、本発明の目的は、一般に黄斑変性、特にAMDの治療に使用され得る物質および/または組成物および医薬調製物を提供することである。さらに、本発明の目的は、本発明の物質および/または組成物を製造する方法を提供することである。
【0008】
これらおよび他の目的は、本発明によって提供される使用、物質および組成物ならびにそれらの製造方法によって達成される。
【0009】
請求項1によれば、本発明は、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく網膜の病理学的状態の治療および/または予防のための組成物であって、カルジオリピンを除く少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる組成物に関する。請求項10によれば、本発明は、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく網膜の病理学的状態の治療および/または予防のための医薬の製造における、かかる組成物の使用に関する。請求項11によれば、本発明は、カルジオリピンを除く少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる組成物が必須成分として使用される、かかる医薬の製造方法に関する。請求項12によれば、本発明は、下記の工程を含む、かかる組成物を製造する方法に関する:a)溶媒中で提供される組成物の乾燥工程、およひb)生理的に許容され得る溶液中での該組成物の再構成。請求項22によれば、本発明は、カルジオリピンを除く少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる組成物が必須成分として使用される、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく網膜の病理学的状態の治療および/または予防用の点眼剤、眼浴剤(eye bath)、眼挿入物または半固形調製物に関する。請求項32によれば、本発明は、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく網膜の病理学的状態の治療および/または予防のための、かかる組成物の使用に関する。請求項41によれば、本発明は、生理的に許容され得る溶液中で眼に投与されるかかる組成物の使用に関する。本発明の有利な態様およびさらなる特徴は、従属請求項に記載されている。
【0010】
好ましい態様において、本発明は、黄斑変性および/または網膜の病理学的状態を治療および予防するための、負に荷電したリン脂質の使用に関する。本発明構成において、「黄斑変性」は、斑の進行性破壊を意味するものと理解される。この破壊および/または変性は加齢性(AMD)であるが、加齢性でない病理学的過程も考えられる。
【0011】
さらに、本発明の使用、物質および組成物および/またはそれらの製造方法の標的となる適応症は、例えば有害な因子または放射線によって誘発され得、薬学的治療を必要とする、眼および網膜の病理学である。この種の因子としては、例えば、強い酸、塩基、ラジカルおよびラジカルプロデューサーならびにさらに刺激性または病原性化学物質が挙げられる。これらの病理学的状態は、若い患者の視力の進行性障害が起こるというように表れることがある。本発明の使用はこの患者群にも特に関係している。さらに、本発明の使用は、その発生が説明のつかない性質のものである網膜上または網膜内の病理学的過程の治療にも関する。従って、本発明のリン脂質(ならびにそれらの混合物および本発明の組成物、下記参照)は、発生の様式が異なる種々の網膜の病理学的状態を治療するために使用されうる。
【0012】
好ましい態様において、本発明は、負に荷電したリン脂質が、ホスファチジルイノシトール(PI)、カルジオリピン(CL、別名:1,3 ジホスファチジルグリセロール、DPG)およびホスファチジルグリセロール(PG)を包含する群から選択される使用に関する。特に好ましい態様において、ホスファチジルグリセロールは、眼および黄斑変性を治療するために使用される。ホスファチジルグリセロール(PG)は、負に荷電したリン脂質である。これは、化学的には、エステル、即ち、アルコールおよび酸が水の脱離を伴い縮合する際に形成される化合物として分類され得る。PGにおいて、アルコール部分は、2つのグリセロール部分によって与えられ、酸部分は1つのリン酸残基と2つの脂肪酸残基(スキームにおいてR1およびR2と示される、図6参照)によって与えられる。天然に存在するPGにおいて、R1およびR2は、それらの長さ(一般に、炭素原子16〜18個の鎖)およびそれらの飽和度(飽和または不飽和)に従って変化する。R1およびR2が天然に存在するPGより短いかまたは長く、飽和または不飽和であってもよい新規かつ特定のPGを合成することができる。かかる合成PGは有用な薬剤となる可能性がある(下記参照)。
【0013】
単数形の「負に荷電したリン脂質」は、同じヘッド基をそれぞれ有する分子種を意味する。「ヘッド基」は、リン酸基に結合した有機残基を意味するものと理解され、これに対して、リン脂質の「アンカー」(膜アンカーの意味)は、脂肪酸によって形成される。しかし、種を形成する同じヘッド基を有するリン脂質は、種々の飽和度を有しうる種々の鎖長の脂肪酸を使用して個々にエステル化され得る。天然に存在する生物学的系(例えば、天然に存在する膜)もこのように構成されるので、これは本発明の構成に好ましい(下記の説明も参照)。
【0014】
上記のリン脂質系は、1つの脂肪酸または数種の脂肪酸だけがエステル化されている故に、例えば、狭い溶融範囲を有する合成リン脂質と比較して、患者の身体の脂質系(例えば、網膜の)にかなり類似している。従って、本発明の好ましい組成物は、網膜の生物学的系に導入されるのに適しており、そこで治癒作用を発揮する。
【0015】
眼および黄斑変性の治療のための負に荷電したリン脂質の使用には、薬学的に許容され得る各リン脂質の調製物が含まれる。後者は、リン脂質が、分解産物、特に酸化によって生じる分解産物を含まない(例えば、単鎖カルボン酸およびアルデヒドを含まない)こと、および/またはこれらの分解産物の濃度ができる限り低いことを主に意味する。医薬品の適切かつ安全な製造に関する規定を含み、本発明の構成において明確に参照される「製造管理および品質管理規則(good manufacturing practice)」のガイドライン(GMPガイドライン)は、本発明の使用に関する手引として有用である。さらに、GMPガイドラインに加えて、対応するEU基準および規定も、使用されるリン脂質の選択および準備の間、ならびに下記に詳しく説明される組成物および混合物の使用、準備および製造の間に遵守されるべきであり、それによって、できる限り薬学的に安全であり、これらの基準に合った製造および使用が保証される。
【0016】
さらに、鎖長に関しては、母集団において存在する個々の負に荷電したリン脂質のそれぞれが、種々の脂肪酸を使用して分子レベルでそれぞれエステル化され得、それによって、負に荷電したリン脂質種の全鎖長について統計的な数値が示されるにすぎないことに注意されるべきである。天然の生成物中で生じる鎖長が、エステル結合によってグリセロールに結合される脂肪酸について好ましく、天然生成物は、例えば、(哺乳動物の)網膜、植物源または魚由来の脂質を包含するものと理解される。この種の、脂肪酸の「混合」構築物の利点は、このようにして得られる膜および/または小胞(下記参照)における脂質分子のより有利な充填密度、およびこのようにして確立された遷移範囲(および/または溶融範囲)である。リン脂質中で生じる脂肪酸の飽和度に関して、エステル化脂肪酸分子のより高い飽和度(即ち、より少ないC−C二重結合の存在)は、膜のより低い流動性およびより高い融点を生じる。このような理由から、本発明の構成に使用されるのに好ましいリン脂質混合物は、哺乳動物の天然の膜中で生じる比率、特に好ましくは哺乳動物の網膜の比率に対応する、単一にまたは多重に不飽和の脂肪酸の比率でエステル化されるのが好ましい。これらの種類の(微小不均質)組成物は、天然に存在するリン脂質組成物に一般的であり、本発明の構成に好ましい。なぜならば、それらは有利な生物学的特性(即ち、生体適合性)ならびに生物学的系(網膜を含む)に好適な融点および/または溶融範囲(結晶と液体脂質相との間の相転移をここでは意味する)を有するからである。この作用は合成の脂質および/または脂質混合物には存在しないことが多く、従って、おそらく、それらは本発明の構成に一般に使用できないと考えられる。いずれにせよ、相転移温度および生体適合性に関するそれらの適性が使用前に検査されるべきである。
【0017】
本発明は、黄斑変性および/または網膜の病理学的状態の治療のための、少なくとも2つの異なる負に荷電したリン脂質を含有する組成物の使用にも関する。2つの負に荷電したリン脂質成分の混合比は、この場合には所望されるように選択されうる。好ましい態様においては、治療される眼および/または網膜の疾病に特に有効であることが示されており、および/または2つの負に荷電したリン脂質の最適な混合を可能にする混合比が選択される。1つのリン脂質(即ち、1つの種)の使用に関して先に記載された原理が、使用される鎖長およびリン脂質中に存在する脂肪酸の飽和度について適用される。
【0018】
特に好ましい態様においては、本発明は、負に荷電したリン脂質が、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールおよびカルジオリピンを包含する群から選択される使用に関する。ホスファチジルグリセロールの使用が特に好適であることが示されており、従って特に好ましい(例示的態様も参照)。
【0019】
本発明は、眼の治療または眼の病理学的状態の予防のための、負に荷電したリン脂質、少なくとも1つのカロチノイドおよび場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する組成物の使用にも関する。さらに、好ましい態様においては、本発明は、黄斑変性および/または網膜の病理学的状態の治療または予防のための、負に荷電したリン脂質、少なくとも1つのカロチノイドおよび場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する組成物の使用に関する。1つ以上のカロチノイドとの混合物として与えられるリン脂質の使用は、本発明に有利であることが示されている。本発明の好ましい態様においては、ルテインおよびゼアキサンチンが使用される。カロチノイドは、それぞれ個々に使用されうるが、ルテインおよびゼアキサンチンの混合物が特に好ましい。1つ以上のカロチノイドの使用が有利である1つの可能性ある理由は、このような方法によって得られる、反応性酸素種および他のラジカルによる酸化および/または酸化分解からの網膜に存在する脂質の保護、ならびにA2Eの病原性作用からの保護効果である。これは、カロチノイドのフィルター効果(それらはブルーライトフィルターを意味する)を使用して説明され得、網膜、および使用されたリン脂質を含む組成物を、高エネルギー照射からの保護を導く。当然、カロチノドおよび場合によっては抗酸化剤は、眼および/または網膜への導入前でさえも使用されたリン脂質を保護する。これによって、使用される組成物の保存安定性が向上する。本発明の使用において、カロチノイド、リン脂質、および場合によっては抗酸化剤は、あらゆる可能な混合比であってよい。
【0020】
さらに、本発明は、負に荷電したリン脂質、少なくとも1つのカロチノイド、および場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する組成物の使用であって、該負に荷電したリン脂質が、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピンおよびホスファチジルグリセロールを包含する群から選択される使用に関する。本発明において、少なくとも1つのカロチノイドと組み合わせたホスファチジルグリセロール(PG)の使用が特に有利であることが示されている。本発明の好ましい態様においては、ルテインおよび/またはゼアキサンチンがカロチノイドとして使用される。
【0021】
さらに有利な態様において、本発明は、眼の治療のための、少なくとも2つの異なる負に荷電したリン脂質、および少なくとも1つのカロチノイド、および場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する組成物の使用に関する。本発明は、黄斑変性および/または網膜の病理学的状態の治療または予防のための、少なくとも2つの異なる負に荷電したリン脂質、少なくとも1つのカロチノイド、および場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する組成物の使用にも関する。抗酸化剤および/または酸化剤が、ユビキノン(補酵素Q10)、ビタミンEおよびアスコルビン酸を包含する群から選択される上記の本発明の使用の態様が好ましく、ユビキノンが特に好ましい。
【0022】
本発明はさらに、組成物が負に荷電したリン脂質に加えて、中性および/または正に荷電したリン脂質を含有する使用に関する。高比率の負に荷電したリン脂質(約15%)、ならびにさらに中性および/または正に荷電したリン脂質を含有する大豆由来のリン脂質混合物であるアゾレクチンは、本発明に好ましい混合物である。本発明において、中性pH(即ち、25℃および生化学的標準条件においてpH7.0)において正味電荷が「0」である全てのリン脂質は、中性リン脂質と称され、即ち、それらのヘッド基が、両性イオンとして全く電荷を有さずに(例えば、ホスファチジルセリン、PS)か、または正および負電荷が互いに相殺するようにのいずれかで存在する。上記の条件下で正味電荷が正である対応するリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、PC)は、正に荷電したリン脂質と称される。負に荷電したリン脂質に関してすでに上記で使用されたものと同じ定義が、鎖長および飽和度に関してここで適用される。一般的に、本発明の負に荷電したリン脂質が光学的に有効であり、眼および/または網膜において充分に寛容されるために、さらなる中性および/または正に荷電したリン脂質の使用が有利であるかまたは必要な場合もあることは当業者に公知である。従って、例えば、専ら負に荷電したヘッド基は互いに反発し、その結果、特に膜構造が不安定になり、それによってさらなる脂質を「マトリックス」として使用しなければならないので、さらなるリン脂質(中性または正に荷電した)の添加は、リポソームおよび/または脂質小胞としての使用を可能にするために頻繁に必要である。膜生化学において使用されることが多いかかる(リン)脂質は、例えば、鶏卵由来のホスファチジルコリン(PC)(「エッグPC」)である。本発明の負に荷電したリン脂質および/または抗酸化剤とPCとの混合物の使用は、ほぼインビボ系に相当し、その使用は、専ら負に荷電したリン脂質の使用に関して有利であることは当業者に明らかである。有利な態様においては、さらなる中性および/または正に荷電したリン脂質は、使用前に負に荷電したリン脂質と混合される。有利な混合比(中性および/または正に荷電したリン脂質:負に荷電したリン脂質)は約2:1であり、好ましくは約1:1であり、1:2〜1:5の混合比が特に好ましくはである。さらに、本発明は、ルテインおよび/またはゼアキサンチンをさらに含有する使用に関する。本発明は、少なくとも1つの負に荷電したリン脂質および少なくとも1つの中性および/または正に荷電したリン脂質を含有する組成物にも関する。
【0023】
さらに、本発明は、負に荷電したリン脂質がホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、ホスファチジルグリセロールおよびアゾレクチンを包含する群から選択される組成物、ならびに、少なくとも1つの負に荷電したリン脂質、少なくとも1つの中性および/または正に荷電したリン脂質、少なくとも1つのカロチノイド、および場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤の混合物を含有する組成物に関する。さらに、本発明は、眼、特に黄斑変性および/または網膜の病理学的状態を治療するための上記組成物の使用に関する。
【0024】
最後に、本発明は上記の組成物の1つを製造する方法にも関し、この方法は下記の工程を含む:
a) 好適な溶媒中に提供される上記の組成物を乾燥させる工程;
b) 生理的に許容され得る溶液中で、組成物を再構成する工程;
c) 場合によって、工程b)の溶液をさらに処理し、それによって脂質小胞および/またはリポソームを形成させる工程。
【0025】
本明細書に記載される本発明の組成物の製造方法は、乾燥工程および再構成工程を本質的に含む方法である。概念「乾燥」(工程a)は、本明細書において、組成物を含有する溶媒を除去することと理解される。乾燥は好ましくは、滅菌条件下で、当分野で既知の方法(例えば、減圧下での溶媒の除去、次に高減圧下での乾燥)を使用して行われる。本発明の好ましい態様において、溶媒の除去は、できるだけ薄い脂質フィルムが、組成物を含有する容器に残存するように行われる(リン脂質の堆積)。できるだけ薄い脂質フィルムは、まだ存在している可能性のある残留溶媒が問題なく(蒸発によって)除去されうるという利点を有し、一方、より厚いフィルムの堆積は、また存在している残留溶媒が所定の時間で除去されることをより困難にするという不都合を有する。緩衝液中での保存および再構成(下記参照)後の混合は溶液の低均質混合を生じるので、場合によってはカロチノイドおよび/または抗酸化剤と組み合わせた種々のリン脂質の混合は、好ましくは、これらの化合物がまだ溶媒中に存在する間に行われる。有機溶媒が溶媒として好適であり、微量の低毒性を有する溶媒(例えば、無水エタノール、臨床純度グレード)が特に好ましい。当然であるが、本発明の製造方法においては、GMPガイドラインおよび/またはEuropean Pharmaceutical Guidelinesに従って操作が行われる配慮が取られ得、高い生理的適合性を有する毒性不純成分を含有しない発熱物質を含まない組成物が得られる。
【0026】
本発明の方法の工程b)においては、生理的に許容され得る溶液中で組成物の再構成が行われる。「再構成」は、リン脂質を含有する組成物を緩衝液に溶解させることを意味するものと理解される。「溶解」または「溶液」はまた、溶液中における脂質の懸濁を意味するものと本発明において理解される。好ましい態様において、これは、脂質フィルムを含有する容器にガラス微小球を添加し、生理的に許容され得る溶液の存在下に脂質フィルム上でガラス微小球を回転させ、次に、懸濁液を凍結し解凍する(「凍結解凍」)(例えば、液体窒素中で凍結し、水浴で解凍する)ことによって行われる。このようにして、本発明の組成物を含有し、場合によっては再構成溶液を封入した大きい多層小胞が形成される。これらの小胞は、短時間の遠心分離(10〜30秒、4000RPM、Heraeus Laboratory Centrifuge)によって、より大きい脂質凝集物から分離されうる。さらに、濾過および/または滅菌濾過される場合もある。さらに限定された小胞集団を得るためには、限定された孔直径を有する膜からの脂質溶液の押出が行われる場合もある(工程c)。本発明の好ましい態様においては、溶液は滅菌膜から10〜20回押し出される、その際に、脂質が凝集し、最終溶液とは反対の膜の側に「巨大小胞」が残るので、最終リン脂質(小胞)溶液が膜の入口側とは反対に位置する側から除去されるように注意する必要がある。脂質溶液および/または懸濁液を押し出すのに好適なデバイスは当業者に公知である(小型押出機、フレンチプレス等)。リポソームおよび/または小胞の作製および使用に加えて、工程b)はまた、「粗」懸濁液としての脂質の再構成を含み、即ち、リポソームまたは小胞の作製に環する技術を使用せずに再構成が行われる。さらに、本発明はまた、生理的に許容され得る溶液中で脂質を再構成するための、弱い界面活性剤の使用も含む。あるいは、工程c)におけるさらなる処理はまた、リポソームおよび/または小胞を生成するための当業者に公知の他の方法、例えばコレート透析法(cholate dialysis method)、ならびに脂質を含有する組成物の精製、均質化および清澄化のためのさらなる方法も含む。
【0027】
さらに、本発明は、眼、特に黄斑変性および/または網膜の病理学的状態の治療のための、上記の方法の1つによって得られる組成物の使用に関する。本発明はまた、点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物としての、上記方法の1つによって得られる組成物の使用にも関する。これに関して、点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物としての使用は、ガイドラインに従った医薬品の製造に関して先に記載された基準が必要であることに注意されるべきである。これに関して、先に記載された所見、および点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物の製造に関して下記に記載される一般原理が参照される。
【0028】
本発明はまた、負に荷電したリン脂質を含有する点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物、ならびに、少なくとも2つの異なる負に荷電したリン脂質を含有する点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物にも関する。本発明における点眼剤は、眼の中または上に適用される水性または油性溶液である。本発明の負に荷電したリン脂質、およびさらなる成分(カロチノイド、抗酸化剤、下記参照)を含有する滅菌および/または無細菌および無病原体溶液または懸濁液が好ましく使用される。
【0029】
本発明における眼浴剤は、眼を浴して洗浄するか、または眼帯を浸す水性溶液である。好ましい態様において、本発明の負に荷電したリン脂質、およびさらなる成分(カロチノイド、抗酸化剤、下記参照)を含有する滅菌および/または無細菌および無病原体溶液または懸濁液が使用される。本発明における眼挿入物は、眼の上および/または中で効果を生じさせるために結膜嚢に導入される好適な大きさおよび形状の固形または半固形調製物によって代表される。好ましい態様において、これは、薬剤および組成物の成分(負に荷電したリン脂質を含む)の結膜嚢への連続放出によって行われ、それによって組成物は治療される部位に拡散および/または流れうる。本発明において、軟膏剤、クリーム剤またはゲル剤が、半固形調製物である。
【0030】
さらに、本発明は、負に荷電したリン脂質および少なくとも1つのカロチノイド、および場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物、ならびに少なくとも2つの異なる負に荷電したリン脂質、少なくとも1つのカロチノイドおよび場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する点眼剤に関する。本発明はまた、上記組成物の少なくとも1つを含有する点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物にも関する。本発明の点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物は、例えば、調製物の張度または粘度を向上する、pH値を調節するかまたは安定化する(緩衝物質)、リン脂質、抗酸化剤またはカロチノイドの溶解度を高める、または調製物を保存する補助成分を含み得る。
【0031】
さらに、本発明は、負に荷電したリン脂質を含有する生理的に許容され得る溶液の患者の眼への適用に特徴を有する眼を治療する方法に関する。本発明においては、カロチノイドと組み合わされたPGの使用が好ましい。生理的に許容され得る溶液としては、滅菌、滅菌濾過および発熱物質を含まない生理食塩水用液が好ましい。「溶液」の概念は、本明細書においては、生理的に許容され得る溶液中の脂質または脂質小胞および/または凝集物の懸濁液も含まれるものと理解される。さらに、半固形調製物、例えば、クリーム、軟膏またはゲルも、本発明の「溶液」として理解される。しかし、生理的に許容され、点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物の使用および製造に好適な代替的溶液も、当業者、特に医師に公知である。「適用」の概念は、本明細書において、眼に溶液を導入するための当業者に公知の方法が適用されることと理解される。これらの方法としては、点眼剤、眼浴剤、眼挿入物、または眼への塗布用の半固形調製物、および/または水溶液、洗浄液および注射剤の適切な部位への投与が挙げられる。
【0032】
本発明は、黄斑変性および/または眼、特に網膜の病理学的状態を治療または予防する方法にも関する。この方法は、当業者に公知の生理的に許容され得る方法、例えば、血管内適用、または経口、鼻腔内および経皮投与を含む血管外適用による、負に荷電したリン脂質の体への投与を特徴とする。
【0033】
本発明はまた、負に荷電したリン脂質を含有する生理的に許容され得る溶液の患者の眼への適用を特徴とする、黄斑変性および/または網膜の病理学的状態を治療または予防する方法にも関する。好ましい態様において、本発明の方法は、網膜の病理学的状態および黄斑変性、特にAMDを治療するために使用される。
【0034】
さらに、本発明は、負に荷電したリン脂質がホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールおよびカルジオリピンを包含する群から選択される方法、生理的に許容され得る溶液が少なくとも2つの異なる負に荷電したリン脂質を含有する方法、および生理的に許容され得る溶液が少なくとも1つのカロチノイドおよび場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤をさらに含有する方法に関する。最後に、本発明は、生理的に許容され得る溶液がさらなる中性および/または正に荷電したリン脂質を含有する方法に関する。本発明は、図、表および実施例を参照して説明される。図および実施例は、限定するものとは理解されず、本発明の使用、組成物および方法をより詳しく説明するために使用される。
【0035】
発明の詳細な説明
1. 使用する材料および方法
A) 材料:
A2Eは、オール-trans-レチナールおよびエタノールアミンから合成し(Parish, C.A., Hashimoto, M., Nakanishi, K., Dillon, J.およびSparrow, J.(1998)Proc. Natl. Acad. Sic. USA 95, 14609-14613)、シリカゲルでのクロマトグラフィーを用いて記載のように精製した(Suter, M., Reme, C.E., Grimm, C., Wenzel, A., Jaeaettela, M., Esser, P., Kociok, N., Leist, M.およびRichter, C.(2000)J. Biol. Chem. 275, 39625-39630)。[3H]-A2E(比活性4.4Ci/mol)は、[1-3H]エタン-1-オール-2-アミンヒドロクロリド(Amersham Schweiz)を使用して合成した。ペルオキシ亜硝酸塩は、記載されているように製造され(Kissner, R., Beckman, J.S.およびKoppenol, W.(1996)Methods Enzymol. 269, 296-302)、Dr. R. Kissner, Institute for Inorgnic Chemistry, ETH Zuerichにより入手することができた。使用した他の化学物質は、可能な最も高い純度を有し、適切な会社から購入することによって得た。
【0036】
チトクロムcオキシダーゼは、Freiらによって記載されているように雌ウィスターネズミのラット肝臓ミトコンドリアから精製した(Frei, B., Winterhalter, K.H.およびRichter, C.(1985)J. Biol. Chem. 260, 7394-7401)。均質化媒体は、210mM マンニトール、70mM ショ糖、10mM トリス-HCl(pH7.4)、0.1mM EDTA、および0.5mg/mL BSAを含有していた。ポリトロンホモジナイーザーを使用して、心臓ミトコンドリアを同様の方法を用いて精製した。チトクロムcオキシダーゼは、AdezおよびCascaranoによって記載されている方法によって精製した(Adez, I.Z.およびCascarano, J.(1977)J. Bioenerg. Biomemb. 9, 237-253)。Triton X-100を使用して可溶化したチトクロムcオキシダーゼを、改質コレート透析法を使用して、種々の寸法の種々に構成されたリン脂質小胞において再構成した(Niggli, V., Siegel, E.およびCarafoli, E.(1982)J. Biol. Chem. 257, 2350-2356)。1mLのリン脂質懸濁液(50mM KCl、10mM HEPES-KOH(pH7.0)、0.1mM K+-EDTA;緩衝液A中に10mg/mL)を、400mMコレート溶液0.2mLに溶解した。精製したチトクロムcオキシダーゼ(40μg)を、コレート-リン脂質混合物0.4mLに添加した。氷上で1時間後、試料を透析管に入れ、1Lの緩衝液Aに対して低温で透析し(24時間)、その間に3回の緩衝液交換を行った。Paracoccus denitrificans由来のチトクロムcオキシダーゼは、Dr. Bernd Ludwig, Biology Center of the University of Frankfurt am Main, Germanyによって懇意により提供された。
【0037】
B) 方法:
チトクロムcオキシダーゼ活性は、酸素消費を確立することによって求めた。この目的のために、Clarke電極(Yellow Spring Instruments, Yellow Spring, OH)を25℃で使用し、連続撹拌下に測定を行った。基質としての0.02mM チトクロムcおよびアスコルビン酸塩とテトラメチル-p-フェニレンジアミン(TMPD)(10mM/1mM)との混合物を含有する40mM K+-ホスフェート、0.005mM EDTA(pH 7.0)、0.1% Tween 20に、可溶化チトクロムcオキシダーゼを懸濁した。再構成チトクロムcオキシダーゼを、100mM KCl、0.01M HEPES-KOH(pH 7.0)および0.1mM EDTAを含有する媒体中のアスコルビン酸塩/TPMD(10mM/0.2mM)で測定した。2μM カルボニルシアニド-3-クロロフェニルヒドラゾンおよび0.8μg バリノマイシン/(mL試験媒体)を使用して、膜プロトン勾配を破壊することによって、最大活性(V max)を測定した。
【0038】
光での照射は、電極より10cm上の高さに取り付けた70ワットの光源を使用して行った。
ペルオキシ亜硝酸塩を使用する脂質の酸化は、20mg DPGを1mLの40mM K+-ホスフェートおよび0.05mM EDTA(pH 7.0)に懸濁し、0.94μmolペルオキシ亜硝酸塩(0.1N NaOH中原溶液94mM)と混合することによって行った。以前に記載されたように、マロンジアルデヒドを、脂質酸化の指数として測定した(Klein, S.D., Walt, H.およびRichter, C(1997)Arch. Biochem. Biophys., 348, 313-319)。
【0039】
チトクロムcオキシダーゼに対するA2Eの結合を下記のように測定した:[3H]-A2E(最終濃度40μM)を、可溶化または再構成したチトクロムcオキシダーゼ、または他のタンパク質に添加した。各場合に使用したタンパク質の量は、約50pmolであった。暗所でまたは光での照射下での20分間のインキュベーション後、10%(最終濃度)のトリクロロ酢酸を添加し、沈殿物をMilliporeフィルターで採収し、溶解させたフィルターを放射活性について調べた。
【0040】
2. 結果
実施例1: A2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼの阻害
A2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼ(COX)の阻害を測定した。COXの活性は、チトクロムcを還元する電子源としてのアスコルビン酸塩およびTPMD(テトラメチル-p-フェニレンジアミン)の存在下での酵素の酸素消費を記録することによって容易に測定できた。COX阻害の程度は、使用した酵素の量およびA2E濃度の両方に依存することが示された。50%阻害を得るのに必要なA2E濃度(即ち、IC50値)は、1μg COX/mLについては3μM、2μg COX/mLについては7μM(図1参照)、および4μg COX/mLについては20μMであった。可溶化チトクロムcオキシダーゼ(c=2μg/mL)の活性は、A2Eの存在および不在下にてクラーク電極で測定した。
【0041】
さらに、A2EによるCOXの不活化の時間依存性を測定した(図2)。実施例2に記載のように、可溶化チトクロムcオキシダーゼ(c=4μg/mL)の酸素消費を、A2Eの存在下に、暗所でおよび/または光に曝露して、クラーク電極で測定した。図2a)は、暗所(線a)および/または光の影響下(線b)での、不活化の時間依存性を示す。図2b)は、暗所での活性測定の前に、20μM A2Eの存在下(三角)またはA2Eの不在下(四角)で、光の影響下での事前のインキュベーションの作用を示す。図2c)は、酸素補給を示す。その実験は、暗所(線a)および/または光の影響下(線b)で行った。ウシ肝臓由来のカタラーゼ5μgを500μMのH2O2と共に、矢印を付けた時点で添加した。図2d)は、光の影響下でのカルジオリピンでの回復期を示す。2つの別の測定値を示す(線aおよびb)。点線矢印を付けた時点で、カルジオリピン300μg/mLを、t=210秒およびt=950秒で添加した。実線矢印の時点で、ウシ肝臓由来のカタラーゼ5μgを500μMのH2O2と共に添加した。A2Eの不在下では、チトクロムcオキシダーゼは、暗所および光の影響下で同様に活性であることに注意すべきである(データ示さず)。
【0042】
暗所では、COXはA2Eによって既に部分的に不活化されている。光の影響下では、COXが徐々に不活化されることを測定することができた(図2aおよび2b)。対照実験は、これは、光およびA2Eによるチトクロムc、アスコルビン酸塩またはTPMDの損傷に関係しないことを示した。完全な消費後のO2の補給は酵素を刺激しなかったので、COXの不活化は、酸素へのその親和性の変化によるものでもなかった(図2c)。むしろ、COXの完全な不活化は、さらに光に曝露することによって、A2Eによって完全に行われた(図2c)。COXの活性は、カルジオリピンを早い段階で添加した場合に部分的に回復しうる(図2d)が、カルジオリピンを遅い段階で添加した場合はそうではなかった。
【0043】
実施例2: A2EによるCOX阻害の特異性、ならびに、使用したリン脂質への可溶化チトクロムcオキシダーゼ阻害の依存性、および負に荷電したリン脂質による阻害の妨害
どの物質が、A2EによってCOXに誘発される不活化を妨害するかまたは弱めるかをさらに調べた。この目的のために、COXのIC50値に対する多くの陽イオン性および脂肪親和性物質の作用を先ず調べた(表 I参照)。
【0044】
【表1】
【0045】
表Iは、陽イオン性および/または脂肪親和性物質の存在下での可溶化COXの活性を示す。可溶化COX(2μg/mL)の酸素消費を、クラーク電極を使用して種々の物質の存在下で測定した(材料および方法参照)。可能な場合は、IC50値、即ち、50%阻害を得るのに必要な濃度を測定した。TPP+=テトラフェニルホスホニウムイオン;MPP+=メチルフェニルピリジニウムイオン。
【0046】
大部分のこれらの化合物を使用した場合に、COXのIC50値は極めて高いか、またはCOXの阻害が存在しない場合さえあることが示された。これは、物質、特にデクアリニウムおよびタモキシフェンはCOXの阻害を生じるが、断然最も低いIC50値(7μM)を有し従ってCOXの高度に特異的な阻害因子と考えられるべきであるA2Eと同様の特異性では作用しないことを示す。
【0047】
さらに、負に荷電したリン脂質カルジオリピン(CL)は、A2EによるCOXの阻害を減少させることが見出された(図3の二番目に高い曲線cも参照)。この場合、PG(300μg/mL)およびA2E(40μM)[曲線b]、CL(300μg/mL)およびA2E(40μM)[曲線c]、A2Eのみ(40μM)[曲線d]の存在下、ならびに付加的物質の不在下(対照:COXのみ)[曲線a]のCOXの酸素消費を、時間に対してグラフで示す。CLと強く相互作用することが知られているポリカチオン(polycations)ルテニウムレッドおよびLa3 +を対照として使用した。
【0048】
実際に、これらの物質を添加した場合、CLの保護作用はもはや存在しないことが示された(表 II参照)。
【0049】
【表2】
【0050】
表IIは、A2E、カルジオリピンおよびポリカチオンの存在下の、可溶化COXの活性を示す。可溶化COX(2μg/mL)の酸素消費を、クラーク電極を使用して種々の物質の存在下で測定した(材料および方法参照)。A2E濃度はいずれの場合も20μMであった。CL=カルジオリピン(ジホスファチジルグリセロール、DPC);RR=ルテニウムレッド。
【0051】
ミトコンドリア中で形成されるペルオキシ亜硝酸塩(有効な酸化剤)を使用して(前)処理した場合も、CLの保護作用は失われた。この種の処理の間に、先ず、脂肪酸の二重結合が酸化的に攻撃され、次に、短鎖カルボン酸が分解産物として形成されると考えられる。この種の処理は、CLの保護特性の消失を生じ、COX阻害の促進さえ生じる。負に荷電したリン脂質の混合物の、A2E誘発COX阻害に対する作用を調べた。この実験には、約15%の酸性(即ち、pH7.0で負に荷電している)リン脂質を含有する大豆由来のリン脂質の混合物であるアゾレクチンを使用した。アゾレクチンの使用は、A2Eの存在下でのCOXの顕著な保護をもまた生じた(表 III)。
【0052】
【表3】
【0053】
表IIIは、種々のリン脂質から形成された小胞において再構成されたCOXの活性を示す。可溶化COXを、種々のリン脂質小胞において再構成した。酵素の活性を、14μMのA2Eの存在下で記載したように(上記参照)、クラーク電極で測定した。PC=ホスファチジルコリン;PE=ホスファチジルエタノールアミン;CL=カルジオリピン(ジホスファチジルグリセロール、DPC)。
【0054】
本発明の枠組みにおいて特に好ましいさらなるリン脂質は、ホスファチジルグリセロール(PG)である。A2Eの存在下のホスファチジルグリセロールのCOX活性における作用を測定した。A2Eだけの存在下で、即ち保護リン脂質が存在しない場合には、COX活性は最も低いことが図3から分かり、これは単位時間当たりのより少ないO2消費から見ることができる(曲線d)。本発明の枠組みにおいて使用するのが有利な(上記参照)カルジオリピンの存在下では、この場合、時間単位当たりのCOXの酸素消費がA2EおよびCLの存在下では既に高く、従って負に荷電したリン脂質が存在しない場合(曲線d参照)より高いCOX活性が存在するので、COXに対する保護作用が示される(曲線c)。対照(COXのみ)は、上記の反応混合物と比較して、高いCOX活性を示す(曲線a)。これは、阻害を誘発しうるA2Eが使用されていないことに相当する。しかし、A2Eに加えて300μg/mlのPGを使用した場合、A2Eの存在下であっても、対照値と比較して阻害が生じないという結果を生じる(曲線b)。むしろ、A2Eの存在下でPGを負に荷電した「保護」リン脂質として使用した場合にCOX活性が僅かに高い場合さえあるが、A2Eに対する明確な阻害作用はもはや見られない。
【0055】
実施例3: 脂質において再構成したチトクロムcオキシダーゼについての、使用したリン脂質に対するA2E誘発阻害の依存性、および負に荷電したリン脂質による阻害の妨害
チトクロムcオキシダーゼを共有する小胞の「天然の」環境を使用して、A2Eによって誘発されるCOX阻害をもまた調べた。デカップラー(decoupler)がない場合には5.5より高い値であった平均呼吸調節指数をこの目的のパラメーターとして使用して、再構成(上記の「方法」参照)を首尾よく行った。従って、小胞の脂質環境におけるCOXの良好な再構成であると考えられる。A2Eを使用した阻害からの保護は、ホスファチジルコリン/ホスファチジルエタノールアミン(PC/PE)を含有する小胞におけるCOXの再構成において得られなかったが、負に荷電したリン脂質を含有する小胞を使用した場合は、保護作用が示された。従って、アゾレクチンを含有する小胞は、A2Eを不活化因子として使用した場合に、再構成COXに関して明確な保護作用を示した(図4参照)。チトクロムcオキシダーゼを、ホスファチジルコリン/ホスファチジルエタノールアミン小胞(四角)またはアゾレクチン小胞(丸)において再構成した。酵素(c=3.8μg/mL)の酸素消費を、クラーク電極で、A2Eの存在および不在下で、例示的態様3に記載したように測定した。PC/PEを小胞環境として使用した場合、55%までのCOX活性の阻害が生じたが、アゾレクチン小胞を再構成COXの環境として使用した場合、約10%阻害の一定値を生じるにすぎないことが示された。さらに、アゾレクチン小胞を使用した場合、暗所かまたは光への曝露下にCOXがA2Eへの感受性を示さないことも示された。これは、PC小胞で再構成されたCOXと対照的であった。この場合、A2EへのCOXの感受性が暗所で示され、光への曝露下に高感受性が示され、これによってCOXの阻害が段階的に導かれた(図5参照)。再構成チトクロムcオキシダーゼ(c=3.8μg/mL)の酸素消費を、30μM A2Eの存在下に、クラーク電極で、例示的態様4に記載のように測定した。ウシ肝臓由来のカタラーゼ5μgを500μMのH2O2と共に、矢印を付けた時点で添加した。点線矢印を付けた時点で、カルジオリピン300μg/mLを添加した。実験を、暗所(電極装置をアルミニウム箔で覆った;線a)、または光の影響下(線b)で行った。A2Eの不在下では、チトクロムcオキシダーゼは、暗所および光の影響下で同様に活性であることに注意すべきである(データ示さず)。
【0056】
増加する量のカルジオリピン(上記参照、負に荷電したリン脂質)をPC/PE含有小胞に添加した場合の、負に荷電したリン脂質による保護作用も観測した(表III参照)。同様に、ホスファチジルイノシトール(PI)、他の負に荷電したリン脂質を小胞に使用した場合も、A2EによるCOXの不活化に対する顕著な保護作用が示された。ラット心臓由来のCOXおよびParacoccus denitrificans由来のCOXを使用した再構成の試みも行った。この場合に、両方の酵素がA2Eに感受性であり、酸性(即ち、pH7.0で負に荷電している)リン脂質によって保護されることも示された。
【0057】
カルジオリピンを使用した場合、A2E誘発アポトーシスからの顕著な保護作用も示された。この作用を調べるために、初期細胞密度4x104細胞/ウェルの培養物中のMCF-7細胞を、3日間および/または5日間にわたって、A2Eの存在および不在下で(濃度はそれぞれ10、30、60μM)、CL(濃度500μg/mL)を使用しておよび使用せずに培養した。A2Eは、用量および時間に依存して、細胞をアポトーシスに導くことが示された。60μMのA2E溶液を使用した場合、99%の細胞が5日後に死亡した。これに対して、本発明の負に荷電したリン脂質を添加した場合(この場合はCL)、細胞の95%が生き残った。これは、本発明のリン脂質および/または組成物が、アポトーシスから細胞を保護することを極めて明確に示している。これらの有利な特性によって、本発明のリン脂質は、網膜の病理学的状態の処置、特にAMDおよび黄斑変性の処置のための医薬として使用されうる。
【0058】
実施例4: COXおよび他のタンパク質へのA2Eの結合;結合の特異性および化学量論
COXとA2Eとの間に分子相互作用が起こるかどうかの仮定を調べるために、A2Eの添加および光での照射の後に、および/または暗所でのA2E曝露の後に、COXの酸沈降を行った(表 IV参照)。
【0059】
【表4】
【0060】
表 IVは、共沈を使用して調べた、種々のタンパク質へのA2Eの結合を示す。[3H]-A2Eを、可溶化COXまたは他のタンパク質に添加した。暗所(装置をアルミニウム箔で覆った)または光への曝露下で20分間インキュベーションした後、10%トリクロロ酢酸(最終濃度)を添加し、沈殿をMilliporeフィルターで回収し、次に、溶媒に溶解させたフィルターの放射活性を調べた。CL=カルジオリピン(ジホスファチジルグリセロール、DPC);Cyt.c=チトクロムc;BSA=ウシ血清アルブミン。
【0061】
明所および/または暗所でのCOXのA2E曝露の時間は、それぞれ20分であった。表 IVからわかるように、A2Eの17および13分子がそれぞれ、記載した条件下でCOXに結合した。結合は、例えば、DPG(負に荷電したリン脂質、上記参照)によってほぼ完全に妨害された。なぜなら、この場合、A2Eの17個の分子ではなく、平均して1個のA2E分子だけがCOXに結合したからである。これによって、本発明の負に荷電したリン脂質はA2E誘発不活化からのCOXの保護が可能であるという実験的所見について、分子レベルでの確認が得られた。COXは生理学的枠組の中でさらに作用することができ、アポプトソームが形成されないので、当然、これは細胞代謝に有利な作用を有する。従って、本発明の負のリン脂質および組成物による網膜の保護作用は、A2Eの攻撃に対するチトクロムcオキシダーゼの遮蔽および/または「保護」によって主として得られるという可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1はA2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼの阻害の濃度依存性を示す。
【図2a】図2はA2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼの阻害の、照度への依存性を示す。図2aは不活化の時間推移を示す。
【図2b】図2はA2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼの阻害の、照度への依存性を示す。図2bは暗所での活性測定の前の、明所での事前のインキュベーションの影響を示す。
【図2c】図2はA2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼの阻害の、照度への依存性を示す。図2cは酸素補給を示す。
【図2d】図2はA2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼの阻害の、照度への依存性を示す。図2dは1,3 DPGによる回復を示す。
【図3】図3は例示的態様2に記載した、チトクロムcオキシダーゼの活性に対する特に好ましいホスファチジルグリセロールの影響を示す。
【図4】図4はA2Eによる再構成チトクロムcオキシダーゼの阻害の、使用したリン脂質への依存性を示す。
【図5】図5はA2Eによる再構成チトクロムcオキシダーゼの阻害の、照度への依存性を示す。
【図6】図6は酸部分が1つのリン酸残基および2つの脂肪酸残基によって構成されている天然に存在するホスファチジルグリセロール(PG)(R1およびR2は通常、炭素16〜18個の鎖を有する)を示す。
発明の背景
本発明は、眼を治療するための、負に荷電したリン脂質、ならびに負に荷電したリン脂質および場合によってはカロチノイドおよび/または抗酸化剤を含有する組成物に関する。好ましい態様において、本発明は、加齢性黄斑変性の治療のための負に荷電したリン脂質の使用に関する。本発明は、負に荷電したリン脂質を製造する方法、ならびに、加齢性黄斑変性の治療用の負に荷電したリン脂質および場合によってはカロチノイドおよび/または抗酸化剤を含有する組成物を製造する方法にも関する。
【0002】
先行技術に見られる課題
加齢性黄斑変性(AMD)は、65才以上の人口の10〜20%が罹患し、工業国の高齢者の重大な視力損傷および/または視力問題の主要原因の1つである(Klein, R.、 Klein, B.E.、およびLinton, K.L. (1992)Ophthalmology 99, 933-943)。患者の約20%が罹患し、光ダイナミック療法によって治療できる湿性黄斑変性と、患者の約80%が罹患している乾性AMDに区別される。乾性AMDは一般に、遅い進行を示し、現在も治療することができない。
【0003】
老年医学に特に重要であるこの疾患の分子的な原因は、充分に研究されていない。最新の研究では、見る過程で眼において自然に形成され、歳を重ねると共に10倍に増加する色素(A2E、N-レチニル-N-レチニリデンエタノールアミン)(Eldrid, G.E., Lasky, M.R.(1993)Nature 361, 724-726;Parish, C.A., Hashimoto, M., Nakanishi, K., Dylon, J., Sparrow, J.(1998)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 14609-14613)が、網膜の色素上皮細胞を引き起こすことが示されている(Suter, M., Reme, C.E., Grimm, C., Wenzel, A., Jeettela, M., Esser, P., Kociok, N., Leist, M.およびRichter, C.(2000)J. Biol. Chem. 275, 39625-39630)。A2Eが乾性AMDに部分的に関与しているという徴候がいくつかある。
【0004】
新しい研究は、A2Eの細胞傷害性が、極めて特異的な作用様式により引き起こされることを示している(Suterら、同書参照):A2Eは、ミトコンドリアにおけるチトクロムcとチトクロムcオキシダーゼとの相互作用を妨害する。ミトコンドリア呼吸鎖が遮断され、従ってエネルギーターンオーバーおよび反応性酸素の放出の減少が生じるので、細胞対して劇的な結果をもたらす。さらに、細胞質へのチトクロムcの放出が生じ、いわゆるアポプトソーム(apoptosome)が形成されて、アポトーシスが生じる、即ち、プログラム化された細胞死が起こる。
【0005】
しかし、最終分析において、斑におけるプログラム化された細胞死、およびそれによる斑の破壊、および高齢患者における視力の減少および/または失明を生じる正確なメカニズムは現在も解明されていない。
【0006】
発明の目的および要旨
従って、眼の病理学的状態、特にAMDを治療する薬剤として使用されうる物質および組成物を提供し、それによってこの疾病の予防、緩和または治癒が可能となることが関連分野で強く望まれている。集団の平均年齢が医学の進歩によって高くなり、従って、全人口に対してますます多くの患者がこの疾患に罹患するので、この種の使用に対する要請が特に高まっている。さらに、おそらくまだ解明されていない他の過程によって生じる網膜の病理学的状態が治療できるようになることも望まれている。これらは、眼および/または網膜の酸化による損傷、ならびに強い薬剤および/または高エネルギー照射の影響による損傷に主として関係している。
【0007】
従って、本発明の1つの目的は、眼の疾患、特に黄斑変性およびAMDの治療を可能にし、および/またはこれらの疾病の予防を可能にする使用を提供することである。さらに、本発明の目的は、一般に黄斑変性、特にAMDの治療に使用され得る物質および/または組成物および医薬調製物を提供することである。さらに、本発明の目的は、本発明の物質および/または組成物を製造する方法を提供することである。
【0008】
これらおよび他の目的は、本発明によって提供される使用、物質および組成物ならびにそれらの製造方法によって達成される。
【0009】
請求項1によれば、本発明は、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく網膜の病理学的状態の治療および/または予防のための組成物であって、カルジオリピンを除く少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる組成物に関する。請求項10によれば、本発明は、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく網膜の病理学的状態の治療および/または予防のための医薬の製造における、かかる組成物の使用に関する。請求項11によれば、本発明は、カルジオリピンを除く少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる組成物が必須成分として使用される、かかる医薬の製造方法に関する。請求項12によれば、本発明は、下記の工程を含む、かかる組成物を製造する方法に関する:a)溶媒中で提供される組成物の乾燥工程、およひb)生理的に許容され得る溶液中での該組成物の再構成。請求項22によれば、本発明は、カルジオリピンを除く少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる組成物が必須成分として使用される、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく網膜の病理学的状態の治療および/または予防用の点眼剤、眼浴剤(eye bath)、眼挿入物または半固形調製物に関する。請求項32によれば、本発明は、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく網膜の病理学的状態の治療および/または予防のための、かかる組成物の使用に関する。請求項41によれば、本発明は、生理的に許容され得る溶液中で眼に投与されるかかる組成物の使用に関する。本発明の有利な態様およびさらなる特徴は、従属請求項に記載されている。
【0010】
好ましい態様において、本発明は、黄斑変性および/または網膜の病理学的状態を治療および予防するための、負に荷電したリン脂質の使用に関する。本発明構成において、「黄斑変性」は、斑の進行性破壊を意味するものと理解される。この破壊および/または変性は加齢性(AMD)であるが、加齢性でない病理学的過程も考えられる。
【0011】
さらに、本発明の使用、物質および組成物および/またはそれらの製造方法の標的となる適応症は、例えば有害な因子または放射線によって誘発され得、薬学的治療を必要とする、眼および網膜の病理学である。この種の因子としては、例えば、強い酸、塩基、ラジカルおよびラジカルプロデューサーならびにさらに刺激性または病原性化学物質が挙げられる。これらの病理学的状態は、若い患者の視力の進行性障害が起こるというように表れることがある。本発明の使用はこの患者群にも特に関係している。さらに、本発明の使用は、その発生が説明のつかない性質のものである網膜上または網膜内の病理学的過程の治療にも関する。従って、本発明のリン脂質(ならびにそれらの混合物および本発明の組成物、下記参照)は、発生の様式が異なる種々の網膜の病理学的状態を治療するために使用されうる。
【0012】
好ましい態様において、本発明は、負に荷電したリン脂質が、ホスファチジルイノシトール(PI)、カルジオリピン(CL、別名:1,3 ジホスファチジルグリセロール、DPG)およびホスファチジルグリセロール(PG)を包含する群から選択される使用に関する。特に好ましい態様において、ホスファチジルグリセロールは、眼および黄斑変性を治療するために使用される。ホスファチジルグリセロール(PG)は、負に荷電したリン脂質である。これは、化学的には、エステル、即ち、アルコールおよび酸が水の脱離を伴い縮合する際に形成される化合物として分類され得る。PGにおいて、アルコール部分は、2つのグリセロール部分によって与えられ、酸部分は1つのリン酸残基と2つの脂肪酸残基(スキームにおいてR1およびR2と示される、図6参照)によって与えられる。天然に存在するPGにおいて、R1およびR2は、それらの長さ(一般に、炭素原子16〜18個の鎖)およびそれらの飽和度(飽和または不飽和)に従って変化する。R1およびR2が天然に存在するPGより短いかまたは長く、飽和または不飽和であってもよい新規かつ特定のPGを合成することができる。かかる合成PGは有用な薬剤となる可能性がある(下記参照)。
【0013】
単数形の「負に荷電したリン脂質」は、同じヘッド基をそれぞれ有する分子種を意味する。「ヘッド基」は、リン酸基に結合した有機残基を意味するものと理解され、これに対して、リン脂質の「アンカー」(膜アンカーの意味)は、脂肪酸によって形成される。しかし、種を形成する同じヘッド基を有するリン脂質は、種々の飽和度を有しうる種々の鎖長の脂肪酸を使用して個々にエステル化され得る。天然に存在する生物学的系(例えば、天然に存在する膜)もこのように構成されるので、これは本発明の構成に好ましい(下記の説明も参照)。
【0014】
上記のリン脂質系は、1つの脂肪酸または数種の脂肪酸だけがエステル化されている故に、例えば、狭い溶融範囲を有する合成リン脂質と比較して、患者の身体の脂質系(例えば、網膜の)にかなり類似している。従って、本発明の好ましい組成物は、網膜の生物学的系に導入されるのに適しており、そこで治癒作用を発揮する。
【0015】
眼および黄斑変性の治療のための負に荷電したリン脂質の使用には、薬学的に許容され得る各リン脂質の調製物が含まれる。後者は、リン脂質が、分解産物、特に酸化によって生じる分解産物を含まない(例えば、単鎖カルボン酸およびアルデヒドを含まない)こと、および/またはこれらの分解産物の濃度ができる限り低いことを主に意味する。医薬品の適切かつ安全な製造に関する規定を含み、本発明の構成において明確に参照される「製造管理および品質管理規則(good manufacturing practice)」のガイドライン(GMPガイドライン)は、本発明の使用に関する手引として有用である。さらに、GMPガイドラインに加えて、対応するEU基準および規定も、使用されるリン脂質の選択および準備の間、ならびに下記に詳しく説明される組成物および混合物の使用、準備および製造の間に遵守されるべきであり、それによって、できる限り薬学的に安全であり、これらの基準に合った製造および使用が保証される。
【0016】
さらに、鎖長に関しては、母集団において存在する個々の負に荷電したリン脂質のそれぞれが、種々の脂肪酸を使用して分子レベルでそれぞれエステル化され得、それによって、負に荷電したリン脂質種の全鎖長について統計的な数値が示されるにすぎないことに注意されるべきである。天然の生成物中で生じる鎖長が、エステル結合によってグリセロールに結合される脂肪酸について好ましく、天然生成物は、例えば、(哺乳動物の)網膜、植物源または魚由来の脂質を包含するものと理解される。この種の、脂肪酸の「混合」構築物の利点は、このようにして得られる膜および/または小胞(下記参照)における脂質分子のより有利な充填密度、およびこのようにして確立された遷移範囲(および/または溶融範囲)である。リン脂質中で生じる脂肪酸の飽和度に関して、エステル化脂肪酸分子のより高い飽和度(即ち、より少ないC−C二重結合の存在)は、膜のより低い流動性およびより高い融点を生じる。このような理由から、本発明の構成に使用されるのに好ましいリン脂質混合物は、哺乳動物の天然の膜中で生じる比率、特に好ましくは哺乳動物の網膜の比率に対応する、単一にまたは多重に不飽和の脂肪酸の比率でエステル化されるのが好ましい。これらの種類の(微小不均質)組成物は、天然に存在するリン脂質組成物に一般的であり、本発明の構成に好ましい。なぜならば、それらは有利な生物学的特性(即ち、生体適合性)ならびに生物学的系(網膜を含む)に好適な融点および/または溶融範囲(結晶と液体脂質相との間の相転移をここでは意味する)を有するからである。この作用は合成の脂質および/または脂質混合物には存在しないことが多く、従って、おそらく、それらは本発明の構成に一般に使用できないと考えられる。いずれにせよ、相転移温度および生体適合性に関するそれらの適性が使用前に検査されるべきである。
【0017】
本発明は、黄斑変性および/または網膜の病理学的状態の治療のための、少なくとも2つの異なる負に荷電したリン脂質を含有する組成物の使用にも関する。2つの負に荷電したリン脂質成分の混合比は、この場合には所望されるように選択されうる。好ましい態様においては、治療される眼および/または網膜の疾病に特に有効であることが示されており、および/または2つの負に荷電したリン脂質の最適な混合を可能にする混合比が選択される。1つのリン脂質(即ち、1つの種)の使用に関して先に記載された原理が、使用される鎖長およびリン脂質中に存在する脂肪酸の飽和度について適用される。
【0018】
特に好ましい態様においては、本発明は、負に荷電したリン脂質が、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールおよびカルジオリピンを包含する群から選択される使用に関する。ホスファチジルグリセロールの使用が特に好適であることが示されており、従って特に好ましい(例示的態様も参照)。
【0019】
本発明は、眼の治療または眼の病理学的状態の予防のための、負に荷電したリン脂質、少なくとも1つのカロチノイドおよび場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する組成物の使用にも関する。さらに、好ましい態様においては、本発明は、黄斑変性および/または網膜の病理学的状態の治療または予防のための、負に荷電したリン脂質、少なくとも1つのカロチノイドおよび場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する組成物の使用に関する。1つ以上のカロチノイドとの混合物として与えられるリン脂質の使用は、本発明に有利であることが示されている。本発明の好ましい態様においては、ルテインおよびゼアキサンチンが使用される。カロチノイドは、それぞれ個々に使用されうるが、ルテインおよびゼアキサンチンの混合物が特に好ましい。1つ以上のカロチノイドの使用が有利である1つの可能性ある理由は、このような方法によって得られる、反応性酸素種および他のラジカルによる酸化および/または酸化分解からの網膜に存在する脂質の保護、ならびにA2Eの病原性作用からの保護効果である。これは、カロチノイドのフィルター効果(それらはブルーライトフィルターを意味する)を使用して説明され得、網膜、および使用されたリン脂質を含む組成物を、高エネルギー照射からの保護を導く。当然、カロチノドおよび場合によっては抗酸化剤は、眼および/または網膜への導入前でさえも使用されたリン脂質を保護する。これによって、使用される組成物の保存安定性が向上する。本発明の使用において、カロチノイド、リン脂質、および場合によっては抗酸化剤は、あらゆる可能な混合比であってよい。
【0020】
さらに、本発明は、負に荷電したリン脂質、少なくとも1つのカロチノイド、および場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する組成物の使用であって、該負に荷電したリン脂質が、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピンおよびホスファチジルグリセロールを包含する群から選択される使用に関する。本発明において、少なくとも1つのカロチノイドと組み合わせたホスファチジルグリセロール(PG)の使用が特に有利であることが示されている。本発明の好ましい態様においては、ルテインおよび/またはゼアキサンチンがカロチノイドとして使用される。
【0021】
さらに有利な態様において、本発明は、眼の治療のための、少なくとも2つの異なる負に荷電したリン脂質、および少なくとも1つのカロチノイド、および場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する組成物の使用に関する。本発明は、黄斑変性および/または網膜の病理学的状態の治療または予防のための、少なくとも2つの異なる負に荷電したリン脂質、少なくとも1つのカロチノイド、および場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する組成物の使用にも関する。抗酸化剤および/または酸化剤が、ユビキノン(補酵素Q10)、ビタミンEおよびアスコルビン酸を包含する群から選択される上記の本発明の使用の態様が好ましく、ユビキノンが特に好ましい。
【0022】
本発明はさらに、組成物が負に荷電したリン脂質に加えて、中性および/または正に荷電したリン脂質を含有する使用に関する。高比率の負に荷電したリン脂質(約15%)、ならびにさらに中性および/または正に荷電したリン脂質を含有する大豆由来のリン脂質混合物であるアゾレクチンは、本発明に好ましい混合物である。本発明において、中性pH(即ち、25℃および生化学的標準条件においてpH7.0)において正味電荷が「0」である全てのリン脂質は、中性リン脂質と称され、即ち、それらのヘッド基が、両性イオンとして全く電荷を有さずに(例えば、ホスファチジルセリン、PS)か、または正および負電荷が互いに相殺するようにのいずれかで存在する。上記の条件下で正味電荷が正である対応するリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、PC)は、正に荷電したリン脂質と称される。負に荷電したリン脂質に関してすでに上記で使用されたものと同じ定義が、鎖長および飽和度に関してここで適用される。一般的に、本発明の負に荷電したリン脂質が光学的に有効であり、眼および/または網膜において充分に寛容されるために、さらなる中性および/または正に荷電したリン脂質の使用が有利であるかまたは必要な場合もあることは当業者に公知である。従って、例えば、専ら負に荷電したヘッド基は互いに反発し、その結果、特に膜構造が不安定になり、それによってさらなる脂質を「マトリックス」として使用しなければならないので、さらなるリン脂質(中性または正に荷電した)の添加は、リポソームおよび/または脂質小胞としての使用を可能にするために頻繁に必要である。膜生化学において使用されることが多いかかる(リン)脂質は、例えば、鶏卵由来のホスファチジルコリン(PC)(「エッグPC」)である。本発明の負に荷電したリン脂質および/または抗酸化剤とPCとの混合物の使用は、ほぼインビボ系に相当し、その使用は、専ら負に荷電したリン脂質の使用に関して有利であることは当業者に明らかである。有利な態様においては、さらなる中性および/または正に荷電したリン脂質は、使用前に負に荷電したリン脂質と混合される。有利な混合比(中性および/または正に荷電したリン脂質:負に荷電したリン脂質)は約2:1であり、好ましくは約1:1であり、1:2〜1:5の混合比が特に好ましくはである。さらに、本発明は、ルテインおよび/またはゼアキサンチンをさらに含有する使用に関する。本発明は、少なくとも1つの負に荷電したリン脂質および少なくとも1つの中性および/または正に荷電したリン脂質を含有する組成物にも関する。
【0023】
さらに、本発明は、負に荷電したリン脂質がホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、ホスファチジルグリセロールおよびアゾレクチンを包含する群から選択される組成物、ならびに、少なくとも1つの負に荷電したリン脂質、少なくとも1つの中性および/または正に荷電したリン脂質、少なくとも1つのカロチノイド、および場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤の混合物を含有する組成物に関する。さらに、本発明は、眼、特に黄斑変性および/または網膜の病理学的状態を治療するための上記組成物の使用に関する。
【0024】
最後に、本発明は上記の組成物の1つを製造する方法にも関し、この方法は下記の工程を含む:
a) 好適な溶媒中に提供される上記の組成物を乾燥させる工程;
b) 生理的に許容され得る溶液中で、組成物を再構成する工程;
c) 場合によって、工程b)の溶液をさらに処理し、それによって脂質小胞および/またはリポソームを形成させる工程。
【0025】
本明細書に記載される本発明の組成物の製造方法は、乾燥工程および再構成工程を本質的に含む方法である。概念「乾燥」(工程a)は、本明細書において、組成物を含有する溶媒を除去することと理解される。乾燥は好ましくは、滅菌条件下で、当分野で既知の方法(例えば、減圧下での溶媒の除去、次に高減圧下での乾燥)を使用して行われる。本発明の好ましい態様において、溶媒の除去は、できるだけ薄い脂質フィルムが、組成物を含有する容器に残存するように行われる(リン脂質の堆積)。できるだけ薄い脂質フィルムは、まだ存在している可能性のある残留溶媒が問題なく(蒸発によって)除去されうるという利点を有し、一方、より厚いフィルムの堆積は、また存在している残留溶媒が所定の時間で除去されることをより困難にするという不都合を有する。緩衝液中での保存および再構成(下記参照)後の混合は溶液の低均質混合を生じるので、場合によってはカロチノイドおよび/または抗酸化剤と組み合わせた種々のリン脂質の混合は、好ましくは、これらの化合物がまだ溶媒中に存在する間に行われる。有機溶媒が溶媒として好適であり、微量の低毒性を有する溶媒(例えば、無水エタノール、臨床純度グレード)が特に好ましい。当然であるが、本発明の製造方法においては、GMPガイドラインおよび/またはEuropean Pharmaceutical Guidelinesに従って操作が行われる配慮が取られ得、高い生理的適合性を有する毒性不純成分を含有しない発熱物質を含まない組成物が得られる。
【0026】
本発明の方法の工程b)においては、生理的に許容され得る溶液中で組成物の再構成が行われる。「再構成」は、リン脂質を含有する組成物を緩衝液に溶解させることを意味するものと理解される。「溶解」または「溶液」はまた、溶液中における脂質の懸濁を意味するものと本発明において理解される。好ましい態様において、これは、脂質フィルムを含有する容器にガラス微小球を添加し、生理的に許容され得る溶液の存在下に脂質フィルム上でガラス微小球を回転させ、次に、懸濁液を凍結し解凍する(「凍結解凍」)(例えば、液体窒素中で凍結し、水浴で解凍する)ことによって行われる。このようにして、本発明の組成物を含有し、場合によっては再構成溶液を封入した大きい多層小胞が形成される。これらの小胞は、短時間の遠心分離(10〜30秒、4000RPM、Heraeus Laboratory Centrifuge)によって、より大きい脂質凝集物から分離されうる。さらに、濾過および/または滅菌濾過される場合もある。さらに限定された小胞集団を得るためには、限定された孔直径を有する膜からの脂質溶液の押出が行われる場合もある(工程c)。本発明の好ましい態様においては、溶液は滅菌膜から10〜20回押し出される、その際に、脂質が凝集し、最終溶液とは反対の膜の側に「巨大小胞」が残るので、最終リン脂質(小胞)溶液が膜の入口側とは反対に位置する側から除去されるように注意する必要がある。脂質溶液および/または懸濁液を押し出すのに好適なデバイスは当業者に公知である(小型押出機、フレンチプレス等)。リポソームおよび/または小胞の作製および使用に加えて、工程b)はまた、「粗」懸濁液としての脂質の再構成を含み、即ち、リポソームまたは小胞の作製に環する技術を使用せずに再構成が行われる。さらに、本発明はまた、生理的に許容され得る溶液中で脂質を再構成するための、弱い界面活性剤の使用も含む。あるいは、工程c)におけるさらなる処理はまた、リポソームおよび/または小胞を生成するための当業者に公知の他の方法、例えばコレート透析法(cholate dialysis method)、ならびに脂質を含有する組成物の精製、均質化および清澄化のためのさらなる方法も含む。
【0027】
さらに、本発明は、眼、特に黄斑変性および/または網膜の病理学的状態の治療のための、上記の方法の1つによって得られる組成物の使用に関する。本発明はまた、点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物としての、上記方法の1つによって得られる組成物の使用にも関する。これに関して、点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物としての使用は、ガイドラインに従った医薬品の製造に関して先に記載された基準が必要であることに注意されるべきである。これに関して、先に記載された所見、および点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物の製造に関して下記に記載される一般原理が参照される。
【0028】
本発明はまた、負に荷電したリン脂質を含有する点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物、ならびに、少なくとも2つの異なる負に荷電したリン脂質を含有する点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物にも関する。本発明における点眼剤は、眼の中または上に適用される水性または油性溶液である。本発明の負に荷電したリン脂質、およびさらなる成分(カロチノイド、抗酸化剤、下記参照)を含有する滅菌および/または無細菌および無病原体溶液または懸濁液が好ましく使用される。
【0029】
本発明における眼浴剤は、眼を浴して洗浄するか、または眼帯を浸す水性溶液である。好ましい態様において、本発明の負に荷電したリン脂質、およびさらなる成分(カロチノイド、抗酸化剤、下記参照)を含有する滅菌および/または無細菌および無病原体溶液または懸濁液が使用される。本発明における眼挿入物は、眼の上および/または中で効果を生じさせるために結膜嚢に導入される好適な大きさおよび形状の固形または半固形調製物によって代表される。好ましい態様において、これは、薬剤および組成物の成分(負に荷電したリン脂質を含む)の結膜嚢への連続放出によって行われ、それによって組成物は治療される部位に拡散および/または流れうる。本発明において、軟膏剤、クリーム剤またはゲル剤が、半固形調製物である。
【0030】
さらに、本発明は、負に荷電したリン脂質および少なくとも1つのカロチノイド、および場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物、ならびに少なくとも2つの異なる負に荷電したリン脂質、少なくとも1つのカロチノイドおよび場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤を含有する点眼剤に関する。本発明はまた、上記組成物の少なくとも1つを含有する点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物にも関する。本発明の点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物は、例えば、調製物の張度または粘度を向上する、pH値を調節するかまたは安定化する(緩衝物質)、リン脂質、抗酸化剤またはカロチノイドの溶解度を高める、または調製物を保存する補助成分を含み得る。
【0031】
さらに、本発明は、負に荷電したリン脂質を含有する生理的に許容され得る溶液の患者の眼への適用に特徴を有する眼を治療する方法に関する。本発明においては、カロチノイドと組み合わされたPGの使用が好ましい。生理的に許容され得る溶液としては、滅菌、滅菌濾過および発熱物質を含まない生理食塩水用液が好ましい。「溶液」の概念は、本明細書においては、生理的に許容され得る溶液中の脂質または脂質小胞および/または凝集物の懸濁液も含まれるものと理解される。さらに、半固形調製物、例えば、クリーム、軟膏またはゲルも、本発明の「溶液」として理解される。しかし、生理的に許容され、点眼剤、眼浴剤、眼挿入物または眼への塗布用の半固形調製物の使用および製造に好適な代替的溶液も、当業者、特に医師に公知である。「適用」の概念は、本明細書において、眼に溶液を導入するための当業者に公知の方法が適用されることと理解される。これらの方法としては、点眼剤、眼浴剤、眼挿入物、または眼への塗布用の半固形調製物、および/または水溶液、洗浄液および注射剤の適切な部位への投与が挙げられる。
【0032】
本発明は、黄斑変性および/または眼、特に網膜の病理学的状態を治療または予防する方法にも関する。この方法は、当業者に公知の生理的に許容され得る方法、例えば、血管内適用、または経口、鼻腔内および経皮投与を含む血管外適用による、負に荷電したリン脂質の体への投与を特徴とする。
【0033】
本発明はまた、負に荷電したリン脂質を含有する生理的に許容され得る溶液の患者の眼への適用を特徴とする、黄斑変性および/または網膜の病理学的状態を治療または予防する方法にも関する。好ましい態様において、本発明の方法は、網膜の病理学的状態および黄斑変性、特にAMDを治療するために使用される。
【0034】
さらに、本発明は、負に荷電したリン脂質がホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールおよびカルジオリピンを包含する群から選択される方法、生理的に許容され得る溶液が少なくとも2つの異なる負に荷電したリン脂質を含有する方法、および生理的に許容され得る溶液が少なくとも1つのカロチノイドおよび場合によっては少なくとも1つの抗酸化剤をさらに含有する方法に関する。最後に、本発明は、生理的に許容され得る溶液がさらなる中性および/または正に荷電したリン脂質を含有する方法に関する。本発明は、図、表および実施例を参照して説明される。図および実施例は、限定するものとは理解されず、本発明の使用、組成物および方法をより詳しく説明するために使用される。
【0035】
発明の詳細な説明
1. 使用する材料および方法
A) 材料:
A2Eは、オール-trans-レチナールおよびエタノールアミンから合成し(Parish, C.A., Hashimoto, M., Nakanishi, K., Dillon, J.およびSparrow, J.(1998)Proc. Natl. Acad. Sic. USA 95, 14609-14613)、シリカゲルでのクロマトグラフィーを用いて記載のように精製した(Suter, M., Reme, C.E., Grimm, C., Wenzel, A., Jaeaettela, M., Esser, P., Kociok, N., Leist, M.およびRichter, C.(2000)J. Biol. Chem. 275, 39625-39630)。[3H]-A2E(比活性4.4Ci/mol)は、[1-3H]エタン-1-オール-2-アミンヒドロクロリド(Amersham Schweiz)を使用して合成した。ペルオキシ亜硝酸塩は、記載されているように製造され(Kissner, R., Beckman, J.S.およびKoppenol, W.(1996)Methods Enzymol. 269, 296-302)、Dr. R. Kissner, Institute for Inorgnic Chemistry, ETH Zuerichにより入手することができた。使用した他の化学物質は、可能な最も高い純度を有し、適切な会社から購入することによって得た。
【0036】
チトクロムcオキシダーゼは、Freiらによって記載されているように雌ウィスターネズミのラット肝臓ミトコンドリアから精製した(Frei, B., Winterhalter, K.H.およびRichter, C.(1985)J. Biol. Chem. 260, 7394-7401)。均質化媒体は、210mM マンニトール、70mM ショ糖、10mM トリス-HCl(pH7.4)、0.1mM EDTA、および0.5mg/mL BSAを含有していた。ポリトロンホモジナイーザーを使用して、心臓ミトコンドリアを同様の方法を用いて精製した。チトクロムcオキシダーゼは、AdezおよびCascaranoによって記載されている方法によって精製した(Adez, I.Z.およびCascarano, J.(1977)J. Bioenerg. Biomemb. 9, 237-253)。Triton X-100を使用して可溶化したチトクロムcオキシダーゼを、改質コレート透析法を使用して、種々の寸法の種々に構成されたリン脂質小胞において再構成した(Niggli, V., Siegel, E.およびCarafoli, E.(1982)J. Biol. Chem. 257, 2350-2356)。1mLのリン脂質懸濁液(50mM KCl、10mM HEPES-KOH(pH7.0)、0.1mM K+-EDTA;緩衝液A中に10mg/mL)を、400mMコレート溶液0.2mLに溶解した。精製したチトクロムcオキシダーゼ(40μg)を、コレート-リン脂質混合物0.4mLに添加した。氷上で1時間後、試料を透析管に入れ、1Lの緩衝液Aに対して低温で透析し(24時間)、その間に3回の緩衝液交換を行った。Paracoccus denitrificans由来のチトクロムcオキシダーゼは、Dr. Bernd Ludwig, Biology Center of the University of Frankfurt am Main, Germanyによって懇意により提供された。
【0037】
B) 方法:
チトクロムcオキシダーゼ活性は、酸素消費を確立することによって求めた。この目的のために、Clarke電極(Yellow Spring Instruments, Yellow Spring, OH)を25℃で使用し、連続撹拌下に測定を行った。基質としての0.02mM チトクロムcおよびアスコルビン酸塩とテトラメチル-p-フェニレンジアミン(TMPD)(10mM/1mM)との混合物を含有する40mM K+-ホスフェート、0.005mM EDTA(pH 7.0)、0.1% Tween 20に、可溶化チトクロムcオキシダーゼを懸濁した。再構成チトクロムcオキシダーゼを、100mM KCl、0.01M HEPES-KOH(pH 7.0)および0.1mM EDTAを含有する媒体中のアスコルビン酸塩/TPMD(10mM/0.2mM)で測定した。2μM カルボニルシアニド-3-クロロフェニルヒドラゾンおよび0.8μg バリノマイシン/(mL試験媒体)を使用して、膜プロトン勾配を破壊することによって、最大活性(V max)を測定した。
【0038】
光での照射は、電極より10cm上の高さに取り付けた70ワットの光源を使用して行った。
ペルオキシ亜硝酸塩を使用する脂質の酸化は、20mg DPGを1mLの40mM K+-ホスフェートおよび0.05mM EDTA(pH 7.0)に懸濁し、0.94μmolペルオキシ亜硝酸塩(0.1N NaOH中原溶液94mM)と混合することによって行った。以前に記載されたように、マロンジアルデヒドを、脂質酸化の指数として測定した(Klein, S.D., Walt, H.およびRichter, C(1997)Arch. Biochem. Biophys., 348, 313-319)。
【0039】
チトクロムcオキシダーゼに対するA2Eの結合を下記のように測定した:[3H]-A2E(最終濃度40μM)を、可溶化または再構成したチトクロムcオキシダーゼ、または他のタンパク質に添加した。各場合に使用したタンパク質の量は、約50pmolであった。暗所でまたは光での照射下での20分間のインキュベーション後、10%(最終濃度)のトリクロロ酢酸を添加し、沈殿物をMilliporeフィルターで採収し、溶解させたフィルターを放射活性について調べた。
【0040】
2. 結果
実施例1: A2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼの阻害
A2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼ(COX)の阻害を測定した。COXの活性は、チトクロムcを還元する電子源としてのアスコルビン酸塩およびTPMD(テトラメチル-p-フェニレンジアミン)の存在下での酵素の酸素消費を記録することによって容易に測定できた。COX阻害の程度は、使用した酵素の量およびA2E濃度の両方に依存することが示された。50%阻害を得るのに必要なA2E濃度(即ち、IC50値)は、1μg COX/mLについては3μM、2μg COX/mLについては7μM(図1参照)、および4μg COX/mLについては20μMであった。可溶化チトクロムcオキシダーゼ(c=2μg/mL)の活性は、A2Eの存在および不在下にてクラーク電極で測定した。
【0041】
さらに、A2EによるCOXの不活化の時間依存性を測定した(図2)。実施例2に記載のように、可溶化チトクロムcオキシダーゼ(c=4μg/mL)の酸素消費を、A2Eの存在下に、暗所でおよび/または光に曝露して、クラーク電極で測定した。図2a)は、暗所(線a)および/または光の影響下(線b)での、不活化の時間依存性を示す。図2b)は、暗所での活性測定の前に、20μM A2Eの存在下(三角)またはA2Eの不在下(四角)で、光の影響下での事前のインキュベーションの作用を示す。図2c)は、酸素補給を示す。その実験は、暗所(線a)および/または光の影響下(線b)で行った。ウシ肝臓由来のカタラーゼ5μgを500μMのH2O2と共に、矢印を付けた時点で添加した。図2d)は、光の影響下でのカルジオリピンでの回復期を示す。2つの別の測定値を示す(線aおよびb)。点線矢印を付けた時点で、カルジオリピン300μg/mLを、t=210秒およびt=950秒で添加した。実線矢印の時点で、ウシ肝臓由来のカタラーゼ5μgを500μMのH2O2と共に添加した。A2Eの不在下では、チトクロムcオキシダーゼは、暗所および光の影響下で同様に活性であることに注意すべきである(データ示さず)。
【0042】
暗所では、COXはA2Eによって既に部分的に不活化されている。光の影響下では、COXが徐々に不活化されることを測定することができた(図2aおよび2b)。対照実験は、これは、光およびA2Eによるチトクロムc、アスコルビン酸塩またはTPMDの損傷に関係しないことを示した。完全な消費後のO2の補給は酵素を刺激しなかったので、COXの不活化は、酸素へのその親和性の変化によるものでもなかった(図2c)。むしろ、COXの完全な不活化は、さらに光に曝露することによって、A2Eによって完全に行われた(図2c)。COXの活性は、カルジオリピンを早い段階で添加した場合に部分的に回復しうる(図2d)が、カルジオリピンを遅い段階で添加した場合はそうではなかった。
【0043】
実施例2: A2EによるCOX阻害の特異性、ならびに、使用したリン脂質への可溶化チトクロムcオキシダーゼ阻害の依存性、および負に荷電したリン脂質による阻害の妨害
どの物質が、A2EによってCOXに誘発される不活化を妨害するかまたは弱めるかをさらに調べた。この目的のために、COXのIC50値に対する多くの陽イオン性および脂肪親和性物質の作用を先ず調べた(表 I参照)。
【0044】
【表1】
【0045】
表Iは、陽イオン性および/または脂肪親和性物質の存在下での可溶化COXの活性を示す。可溶化COX(2μg/mL)の酸素消費を、クラーク電極を使用して種々の物質の存在下で測定した(材料および方法参照)。可能な場合は、IC50値、即ち、50%阻害を得るのに必要な濃度を測定した。TPP+=テトラフェニルホスホニウムイオン;MPP+=メチルフェニルピリジニウムイオン。
【0046】
大部分のこれらの化合物を使用した場合に、COXのIC50値は極めて高いか、またはCOXの阻害が存在しない場合さえあることが示された。これは、物質、特にデクアリニウムおよびタモキシフェンはCOXの阻害を生じるが、断然最も低いIC50値(7μM)を有し従ってCOXの高度に特異的な阻害因子と考えられるべきであるA2Eと同様の特異性では作用しないことを示す。
【0047】
さらに、負に荷電したリン脂質カルジオリピン(CL)は、A2EによるCOXの阻害を減少させることが見出された(図3の二番目に高い曲線cも参照)。この場合、PG(300μg/mL)およびA2E(40μM)[曲線b]、CL(300μg/mL)およびA2E(40μM)[曲線c]、A2Eのみ(40μM)[曲線d]の存在下、ならびに付加的物質の不在下(対照:COXのみ)[曲線a]のCOXの酸素消費を、時間に対してグラフで示す。CLと強く相互作用することが知られているポリカチオン(polycations)ルテニウムレッドおよびLa3 +を対照として使用した。
【0048】
実際に、これらの物質を添加した場合、CLの保護作用はもはや存在しないことが示された(表 II参照)。
【0049】
【表2】
【0050】
表IIは、A2E、カルジオリピンおよびポリカチオンの存在下の、可溶化COXの活性を示す。可溶化COX(2μg/mL)の酸素消費を、クラーク電極を使用して種々の物質の存在下で測定した(材料および方法参照)。A2E濃度はいずれの場合も20μMであった。CL=カルジオリピン(ジホスファチジルグリセロール、DPC);RR=ルテニウムレッド。
【0051】
ミトコンドリア中で形成されるペルオキシ亜硝酸塩(有効な酸化剤)を使用して(前)処理した場合も、CLの保護作用は失われた。この種の処理の間に、先ず、脂肪酸の二重結合が酸化的に攻撃され、次に、短鎖カルボン酸が分解産物として形成されると考えられる。この種の処理は、CLの保護特性の消失を生じ、COX阻害の促進さえ生じる。負に荷電したリン脂質の混合物の、A2E誘発COX阻害に対する作用を調べた。この実験には、約15%の酸性(即ち、pH7.0で負に荷電している)リン脂質を含有する大豆由来のリン脂質の混合物であるアゾレクチンを使用した。アゾレクチンの使用は、A2Eの存在下でのCOXの顕著な保護をもまた生じた(表 III)。
【0052】
【表3】
【0053】
表IIIは、種々のリン脂質から形成された小胞において再構成されたCOXの活性を示す。可溶化COXを、種々のリン脂質小胞において再構成した。酵素の活性を、14μMのA2Eの存在下で記載したように(上記参照)、クラーク電極で測定した。PC=ホスファチジルコリン;PE=ホスファチジルエタノールアミン;CL=カルジオリピン(ジホスファチジルグリセロール、DPC)。
【0054】
本発明の枠組みにおいて特に好ましいさらなるリン脂質は、ホスファチジルグリセロール(PG)である。A2Eの存在下のホスファチジルグリセロールのCOX活性における作用を測定した。A2Eだけの存在下で、即ち保護リン脂質が存在しない場合には、COX活性は最も低いことが図3から分かり、これは単位時間当たりのより少ないO2消費から見ることができる(曲線d)。本発明の枠組みにおいて使用するのが有利な(上記参照)カルジオリピンの存在下では、この場合、時間単位当たりのCOXの酸素消費がA2EおよびCLの存在下では既に高く、従って負に荷電したリン脂質が存在しない場合(曲線d参照)より高いCOX活性が存在するので、COXに対する保護作用が示される(曲線c)。対照(COXのみ)は、上記の反応混合物と比較して、高いCOX活性を示す(曲線a)。これは、阻害を誘発しうるA2Eが使用されていないことに相当する。しかし、A2Eに加えて300μg/mlのPGを使用した場合、A2Eの存在下であっても、対照値と比較して阻害が生じないという結果を生じる(曲線b)。むしろ、A2Eの存在下でPGを負に荷電した「保護」リン脂質として使用した場合にCOX活性が僅かに高い場合さえあるが、A2Eに対する明確な阻害作用はもはや見られない。
【0055】
実施例3: 脂質において再構成したチトクロムcオキシダーゼについての、使用したリン脂質に対するA2E誘発阻害の依存性、および負に荷電したリン脂質による阻害の妨害
チトクロムcオキシダーゼを共有する小胞の「天然の」環境を使用して、A2Eによって誘発されるCOX阻害をもまた調べた。デカップラー(decoupler)がない場合には5.5より高い値であった平均呼吸調節指数をこの目的のパラメーターとして使用して、再構成(上記の「方法」参照)を首尾よく行った。従って、小胞の脂質環境におけるCOXの良好な再構成であると考えられる。A2Eを使用した阻害からの保護は、ホスファチジルコリン/ホスファチジルエタノールアミン(PC/PE)を含有する小胞におけるCOXの再構成において得られなかったが、負に荷電したリン脂質を含有する小胞を使用した場合は、保護作用が示された。従って、アゾレクチンを含有する小胞は、A2Eを不活化因子として使用した場合に、再構成COXに関して明確な保護作用を示した(図4参照)。チトクロムcオキシダーゼを、ホスファチジルコリン/ホスファチジルエタノールアミン小胞(四角)またはアゾレクチン小胞(丸)において再構成した。酵素(c=3.8μg/mL)の酸素消費を、クラーク電極で、A2Eの存在および不在下で、例示的態様3に記載したように測定した。PC/PEを小胞環境として使用した場合、55%までのCOX活性の阻害が生じたが、アゾレクチン小胞を再構成COXの環境として使用した場合、約10%阻害の一定値を生じるにすぎないことが示された。さらに、アゾレクチン小胞を使用した場合、暗所かまたは光への曝露下にCOXがA2Eへの感受性を示さないことも示された。これは、PC小胞で再構成されたCOXと対照的であった。この場合、A2EへのCOXの感受性が暗所で示され、光への曝露下に高感受性が示され、これによってCOXの阻害が段階的に導かれた(図5参照)。再構成チトクロムcオキシダーゼ(c=3.8μg/mL)の酸素消費を、30μM A2Eの存在下に、クラーク電極で、例示的態様4に記載のように測定した。ウシ肝臓由来のカタラーゼ5μgを500μMのH2O2と共に、矢印を付けた時点で添加した。点線矢印を付けた時点で、カルジオリピン300μg/mLを添加した。実験を、暗所(電極装置をアルミニウム箔で覆った;線a)、または光の影響下(線b)で行った。A2Eの不在下では、チトクロムcオキシダーゼは、暗所および光の影響下で同様に活性であることに注意すべきである(データ示さず)。
【0056】
増加する量のカルジオリピン(上記参照、負に荷電したリン脂質)をPC/PE含有小胞に添加した場合の、負に荷電したリン脂質による保護作用も観測した(表III参照)。同様に、ホスファチジルイノシトール(PI)、他の負に荷電したリン脂質を小胞に使用した場合も、A2EによるCOXの不活化に対する顕著な保護作用が示された。ラット心臓由来のCOXおよびParacoccus denitrificans由来のCOXを使用した再構成の試みも行った。この場合に、両方の酵素がA2Eに感受性であり、酸性(即ち、pH7.0で負に荷電している)リン脂質によって保護されることも示された。
【0057】
カルジオリピンを使用した場合、A2E誘発アポトーシスからの顕著な保護作用も示された。この作用を調べるために、初期細胞密度4x104細胞/ウェルの培養物中のMCF-7細胞を、3日間および/または5日間にわたって、A2Eの存在および不在下で(濃度はそれぞれ10、30、60μM)、CL(濃度500μg/mL)を使用しておよび使用せずに培養した。A2Eは、用量および時間に依存して、細胞をアポトーシスに導くことが示された。60μMのA2E溶液を使用した場合、99%の細胞が5日後に死亡した。これに対して、本発明の負に荷電したリン脂質を添加した場合(この場合はCL)、細胞の95%が生き残った。これは、本発明のリン脂質および/または組成物が、アポトーシスから細胞を保護することを極めて明確に示している。これらの有利な特性によって、本発明のリン脂質は、網膜の病理学的状態の処置、特にAMDおよび黄斑変性の処置のための医薬として使用されうる。
【0058】
実施例4: COXおよび他のタンパク質へのA2Eの結合;結合の特異性および化学量論
COXとA2Eとの間に分子相互作用が起こるかどうかの仮定を調べるために、A2Eの添加および光での照射の後に、および/または暗所でのA2E曝露の後に、COXの酸沈降を行った(表 IV参照)。
【0059】
【表4】
【0060】
表 IVは、共沈を使用して調べた、種々のタンパク質へのA2Eの結合を示す。[3H]-A2Eを、可溶化COXまたは他のタンパク質に添加した。暗所(装置をアルミニウム箔で覆った)または光への曝露下で20分間インキュベーションした後、10%トリクロロ酢酸(最終濃度)を添加し、沈殿をMilliporeフィルターで回収し、次に、溶媒に溶解させたフィルターの放射活性を調べた。CL=カルジオリピン(ジホスファチジルグリセロール、DPC);Cyt.c=チトクロムc;BSA=ウシ血清アルブミン。
【0061】
明所および/または暗所でのCOXのA2E曝露の時間は、それぞれ20分であった。表 IVからわかるように、A2Eの17および13分子がそれぞれ、記載した条件下でCOXに結合した。結合は、例えば、DPG(負に荷電したリン脂質、上記参照)によってほぼ完全に妨害された。なぜなら、この場合、A2Eの17個の分子ではなく、平均して1個のA2E分子だけがCOXに結合したからである。これによって、本発明の負に荷電したリン脂質はA2E誘発不活化からのCOXの保護が可能であるという実験的所見について、分子レベルでの確認が得られた。COXは生理学的枠組の中でさらに作用することができ、アポプトソームが形成されないので、当然、これは細胞代謝に有利な作用を有する。従って、本発明の負のリン脂質および組成物による網膜の保護作用は、A2Eの攻撃に対するチトクロムcオキシダーゼの遮蔽および/または「保護」によって主として得られるという可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1はA2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼの阻害の濃度依存性を示す。
【図2a】図2はA2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼの阻害の、照度への依存性を示す。図2aは不活化の時間推移を示す。
【図2b】図2はA2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼの阻害の、照度への依存性を示す。図2bは暗所での活性測定の前の、明所での事前のインキュベーションの影響を示す。
【図2c】図2はA2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼの阻害の、照度への依存性を示す。図2cは酸素補給を示す。
【図2d】図2はA2Eによる可溶化チトクロムcオキシダーゼの阻害の、照度への依存性を示す。図2dは1,3 DPGによる回復を示す。
【図3】図3は例示的態様2に記載した、チトクロムcオキシダーゼの活性に対する特に好ましいホスファチジルグリセロールの影響を示す。
【図4】図4はA2Eによる再構成チトクロムcオキシダーゼの阻害の、使用したリン脂質への依存性を示す。
【図5】図5はA2Eによる再構成チトクロムcオキシダーゼの阻害の、照度への依存性を示す。
【図6】図6は酸部分が1つのリン酸残基および2つの脂肪酸残基によって構成されている天然に存在するホスファチジルグリセロール(PG)(R1およびR2は通常、炭素16〜18個の鎖を有する)を示す。
Claims (42)
- カルジオリピンを除く少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく眼の病理学的状態の処置および/または予防用の組成物。
- ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、およびアゾレクチンから選択される少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる請求項1記載の組成物。
- ホスファチジルグリセロールまたはホスファチジルイノシトールを含んでなる請求項1記載の組成物。
- R1および/またはR2が16個より少ないまたは18個より多い炭素原子を有するホスファチジルグリセロールを含んでなる請求項1記載の組成物。
- ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、アゾレクチン、およびカルジオリピンから選択される少なくとも1つの異なる負に荷電したリン脂質をさらに含んでなる請求項1記載の組成物。
- 少なくとも1つの中性または正に荷電したリン脂質をさらに含んでなる請求項1記載の組成物。
- 少なくとも1つのカロチノイドおよび可能であれば少なくとも1つの抗酸化剤をさらに含んでなる請求項1記載の組成物。
- 少なくとも1つのカロチノイドがルテインおよびゼアキサンチンから選択されるか、またはルテインおよびゼアキサンチンの混合物である請求項7記載の組成物。
- 抗酸化剤がユビキノン、ビタミンE、およびアスコルビン酸を含む群より選択される請求項7記載の組成物。
- 黄斑変性および/または黄斑変性に基づく眼の病理学的状態の処置および/または予防用の医薬の製造のための、カルジオリピンを除く少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる組成物の使用。
- カルジオリピンを除く少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる組成物が必須の成分として使用される、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく眼の病理学的状態の処置および/または予防用の医薬の製造方法。
- a)溶媒中に提供される請求項1記載の組成物を乾燥する工程、および
b)生理学的に許容され得る溶液中での該組成物の再形成工程、
を含む、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく眼の病理学的状態の処置および/または予防用の組成物を生成する方法。 - 工程b)の後に溶液のさらなる処理が実行され、脂質小胞またはリポソームが形成される、請求項12記載の方法。
- 組成物がホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、およびアゾレクチンから選択される少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる、請求項12記載の方法。
- 組成物がホスファチジルグリセロールまたはホスファチジルイノシトールを含んでなる、請求項12記載の方法。
- 組成物が、R1および/またはR2が16個より少ないまたは18個より多い炭素原子を有するホスファチジルグリセロールを含んでなる、請求項12記載の方法。
- 組成物がホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、アゾレクチン、およびカルジオリピンから選択される少なくとも1つの異なる負に荷電したリン脂質をさらに含んでなる請求項12記載の方法。
- 組成物が少なくとも1つの中性または正に荷電したリン脂質をさらに含んでなる請求項12記載の方法。
- 組成物が少なくとも1つのカロチノイドおよび可能であれば少なくとも1つの抗酸化剤をさらに含んでなる請求項12記載の方法。
- 少なくとも1つのカロチノイドがルテインおよびゼアキサンチンから選択されるか、またはルテインおよびゼアキサンチンの混合物である請求項19記載の方法。
- 抗酸化剤がユビキノン、ビタミンE、およびアスコルビン酸を含む群より選択される請求項19記載の方法。
- カルジオリピンを除く少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含む組成物が必須成分として使用される、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく眼の病理学的状態の処置および/または予防用の、請求項11記載の方法により製造された点眼剤、眼浴剤、眼への注入用の組成物、眼挿入物、または半固形調製物。
- 工程b)の後に溶液のさらなる処理が実行され、脂質小胞またはリポソームが形成される、請求項12記載の方法により製造された点眼剤、眼浴剤、眼への注入用の組成物、眼挿入物、または半固形調製物。
- 組成物がホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、およびアゾレクチンから選択される少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる、請求項22記載の点眼剤、眼浴剤、眼への注入用の組成物、眼挿入物、または半固形調製物。
- 組成物がホスファチジルグリセロールまたはホスファチジルイノシトールを含んでなる、請求項22記載の点眼剤、眼浴剤、眼への注入用の組成物、眼挿入物、または半固形調製物。
- 組成物が、R1および/またはR2が16個より少ないまたは18個より多い炭素原子を有するホスファチジルグリセロールを含んでなる、請求項22記載の点眼剤、眼浴剤、眼への注入用の組成物、眼挿入物、または半固形調製物。
- 組成物がホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、アゾレクチン、およびカルジオリピンから選択される少なくとも1つの異なる負に荷電したリン脂質をさらに含んでなる、請求項22記載の点眼剤、眼浴剤、眼への注入用の組成物、眼挿入物、または半固形調製物。
- 組成物が少なくとも1つの中性または正に荷電したリン脂質をさらに含んでなる、請求項22記載の点眼剤、眼浴剤、眼への注入用の組成物、眼挿入物、または半固形調製物。
- 組成物が少なくとも1つのカロチノイドおよび可能であれば少なくとも1つの抗酸化剤をさらに含んでなる、請求項22記載の点眼剤、眼浴剤、眼への注入用の組成物、眼挿入物、または半固形調製物。
- 少なくとも1つのカロチノイドがルテインおよびゼアキサンチンから選択されるか、またはルテインおよびゼアキサンチンの混合物である、請求項22記載の点眼剤、眼浴剤、眼への注入用の組成物、眼挿入物、または半固形調製物。
- 抗酸化剤がユビキノン、ビタミンE、およびアスコルビン酸を含む群より選択される、請求項22記載の点眼剤、眼浴剤、眼への注入用の組成物、眼挿入物、または半固形調製物。
- 黄斑変性および/または黄斑変性に基づく眼の病理学的状態の処置および/または予防のための、カルジオリピンを除く少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる組成物の使用。
- 組成物がホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、およびアゾレクチンから選択される少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含んでなる、請求項32記載の使用。
- 組成物がホスファチジルグリセロールまたはホスファチジルイノシトールを含んでなる、請求項32記載の使用。
- 組成物が、R1および/またはR2が16個より少ないまたは18個より多い炭素原子を有するホスファチジルグリセロールを含んでなる、請求項32記載の使用。
- 組成物がホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、アゾレクチン、およびカルジオリピンから選択される少なくとも1つの異なる負に荷電したリン脂質をさらに含んでなる、請求項32記載の使用。
- 組成物が少なくとも1つの中性または正に荷電したリン脂質をさらに含んでなる、請求項32記載の使用。
- 組成物が少なくとも1つのカロチノイドおよび可能であれば少なくとも1つの抗酸化剤をさらに含んでなる、請求項32記載の使用。
- 少なくとも1つのカロチノイドがルテインおよびゼアキサンチンから選択されるか、またはルテインおよびゼアキサンチンの混合物である、請求項32記載の使用。
- 抗酸化剤がユビキノン、ビタミンE、およびアスコルビン酸を含む群より選択される、請求項32記載の使用。
- 組成物が、点眼剤、眼浴剤、眼への注入剤、眼挿入物、または半固形調製物として、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく眼の病理学的状態の処置および/または予防のために、生理学的に許容され得る溶液中で眼に投与される、請求項32記載の使用。
- 組成物が、黄斑変性および/または黄斑変性に基づく眼の病理学的状態の処置および/または予防のために、脈管内適用または経口、鼻腔内および経皮投与を含む脈管外適用を介して、生理学的に許容され得る溶液中で眼に投与される、請求項32記載の使用。
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