JP2005354777A - モータ駆動回路、電子機器およびモータ駆動方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】VCO7からのCLK信号に基づいて生成した三相駆動信号U,V,Wによりロータ101を回転させたときに、三相コイル102に誘起される誘起電圧をモニタし、ロータ位相の電気位相に対する位相ずれを検出する。その結果、電気位相に対しロータ位相が遅れているときは当該位相遅れ量に応じた時間だけアクティブとなるアップ信号f_upでチャージポンプ回路5を駆動し、ロータ位相がより進んでいるときは当該位相進み量に対応した時間だけアクティブとなるダウン信号f_downでチャージポンプ回路5を駆動する。このモータ駆動回路1では、VCO制御端子T_cpの電圧を、検出した位相ずれ情報に応じて平滑フィルタを介することなく直接、かつ瞬時に動的に変化させる。
【選択図】図1
Description
この三相のブラシレスモータを駆動する回路は、ホール素子等の回転検出素子を用いずに、駆動コイルに発生する誘起電圧(逆起電力またはEMF(electromotive force)とも言われる)を利用し、駆動コイルに通電される駆動電流(通電)を切り換えるようになっている。この種の一般的なセンサレスモータの駆動回路は、励磁コイルの誘起電圧を検出し、極性が反転するタイミングに対してある遅延量を与えて通電切り換えを行っている。
アナログ方式のモータ駆動回路では、CRの時定数を利用して、位相の遅延量や、スパイク電圧の除去および起動パルスの生成を行っている。またデジタル方式のモータ駆動回路では、マイクロプロセッサ等を使用しアナログ式と同等な機能処理を行っている。したがって、回路規模が大きな装置ではデジタル方式が使用可能であるが、回路を小規模にしなければならない用途では、マイクロプロセッサ等をコストや実装面積の点で使用できないために、必然的にデジタル式ではなくアナログ式を採用せざるを得ない。
そのため、振動モータのコイルを固定し、永久磁石をロータとするブラシレス化が検討されている。ブラシレスモータは、ブラシがないため信頼性が高く、モータ構造を磁気面対向型とすれば、とくに薄型化に有利である。電子機器全体を設計する側からブラシレスモータを見たとき、駆動回路をモータのモジュールに内蔵させたい要求が生じる。ただし当然ながら、このとき現在のブラシ付きコアレスモータと同等な動作機能が求められる。
特許文献1は、その目的の一つがブラシレスDCモータのセンサレス駆動を簡易な回路で行うためのモータ駆動回路およびモータ駆動方法を提供することである。
その目的を達成するために特許文献1では、発振周波数を決定するVCOの周波数出力位相をEMF位相と合致させるように位相ループを形成していて、これが、いわゆるPLL回路となっている。ロータの回転位相と駆動回路位相を合わせ込むことが、PLL回路部の目標である。
一般的にロータの回転速度変動は、その動作が機械時定数(数ms〜数100ms)に依存するため、電気信号時定数と比較し緩やかである。そのためループフィルタのカットオフ周波数も低い値に設定する必要があり、定数となるコンデンサの容量値が大きな値となりやすい。
好適に、前記発振制御部は、前記位相ずれ情報に応じて、電気位相に対してロータ位相が遅れているときは前記制御端子を充電し、ロータ位相が進んでいるときは放電する充放電回路と、制御端子に接続され、充放電回路による制御端子の充電時または放電時の電流変化を制御端子の電圧変化に変換する変換素子とを含み、前記制御規制部は、前記充放電回路の1回の最大充電時間が1回の最大放電時間より短くなるように、当該充放電回路の充放電時間を規制する。
あるいは好適に、前記位相ずれ検出部は、前記位相ずれの情報が前記電気位相に対して前記ロータ位相が遅れていることを示すときは第1信号を出力し、位相ずれの情報が電気位相に対してロータ位相が進んでいることを示すときは第2信号を出力するセレクタを有し、前記制御規制部は、前記第1信号のアクティブ状態の最大持続時間を、前記第2信号のアクティブ状態の最大持続時間より短く設定し、前記発振制御部は、前記セレクタから入力される第1または第2信号のアクティブ状態の持続時間だけ前記制御端子の電圧を変化させる。
好適に、前記位相ずれ情報に応じて、電気位相に対してロータ位相が遅れているときは前記制御端子を充電し、ロータ位相が進んでいるときは放電し、充放および放電に際し、回の最大充電時間が1回の最大放電時間より短くなるように充放電時間を規制し、制御端子の充電時または放電時の電流変化を制御端子の電圧変化に変換する。
あるいは好適に、前記位相ずれの情報が前記電気位相に対して前記ロータ位相が遅れていることを示すときは第1信号を出力し、位相ずれの情報が電気位相に対してロータ位相が進んでいることを示すときは第2信号を出力し、前記第1信号のアクティブ状態の最大持続時間を、前記第2信号のアクティブ状態の最大持続時間より短くし、前記第1または第2信号のアクティブ状態の持続時間だけ前記制御端子の電圧を変化させる。
図1に、本発明の実施の形態にかかるセンサレスの三相ブラシレス直流モータと、そのモータ駆動回路を示す。
この3つのコイルをスター結線し、その接続中点を、当該モータ駆動回路1の中点電位COM用の端子T_COMに接続している。また、3つのコイル、すなわちU相コイル102U、V相コイル102VおよびW相コイル102Wの反接続中点側の端を、当該モータ駆動回路1の駆動信号供給用の端子TU、TV、TWにそれぞれ接続している。
外付け電気部品としては、チャージポンプ電流設定用抵抗器R_Iref、チャージポンプ用コンデンサC_cp、チャージポンプ用抵抗器R_cp、デカップリングコンデンサC_DCを有する。これら4つの外付け電気部品とモータ駆動IC2、および、上記モータ100を1つのプリント基板に実装してモジュール化している。
また、電源電圧Vccの内部供給線とモータ駆動IC2の制御端子T_cpとの間に、チャージポンプ用コンデンサC_cpとチャージポンプ用抵抗器R_cpを直列に接続している。さらに、モータ駆動IC2の基準電流I_refの供給端子T_Irefと接地電圧GNDの内部供給線との間にチャージポンプ電流設定用抵抗器R_Irefを接続している。これらのコンデンサおよび抵抗器の役割については後述する。
ロジック部4は、さらに、駆動パルス生成部41、最大制御時間T_lateとT_earlyにより制御信号のパルス幅を規制する規制信号生成部43、および、セレクタ44を有する。
図1においてVCO7、駆動パルス生成部41、プリアンプ8および出力部9が駆動系回路を構成し、かつ、本発明の「駆動信号生成部」の一実施例を構成する。他の各部が制御系回路を構成するが、その詳細については後述する。
本例のVCOは、電源電圧Vccを基準とし、制御端子T_cpの電位が電源電圧Vccより下がるほど、出力するクロック信号CLK_vcoの周波数を上げる動作をする。
出力部9は、三相駆動信号U,V,Wの出力用に6つのバイポーラトランジスタ91H,91L,92H,92L,93H,93Lを有する。その内訳は、ハイサイドスィッチとしてPNPトランジスタ91H,92H,93Hが3つ、ローサイドスィッチとしてNPNトランジスタ91L,92L,93Lが3つである。駆動パルスUpがベースに印加されるトランジスタ91Hと、駆動パルスUnがベースに印加されるトランジスタ91Lとを電源電圧Vccと接地電圧GND間に直列接続し、その接続中点からU相の駆動信号Uを出力するようになっている。同様に、駆動パルスVpが印加されるトランジスタ92Hと、駆動パルスVnが印加されるトランジスタ91Lとを直列接続し、その接続中点からV相の駆動信号Vを出力し、駆動パルスWpが印加されるトランジスタ93Hと、駆動パルスWnが印加される93Lとを直列接続し、その接続中点からW相の駆動信号Wを出力する。
直流のモータ100を駆動する三相の駆動信号U,V,Wは、基本的にはハイレベルとローレベルを有する2値のパルス波形であるが、本例ではレベル推移時に±30°のウエイト期間を設けている。また、三相の駆動信号U,V,Wは約120°の位相差を有している。そのため三相コイルは任意の時刻で常に、ハイレベル印加、ローレベル印加、ウエイトの状態となる。
駆動パルスUp,Vp,Wp,Un,Vn,Wnのそれぞれは、パルス幅が電気角で120°、周期が360°でデューティ比が1/3の波形を有する。
このうち出力部9のハイサイド側を駆動する3つの駆動パルスUp,Vp,Wpは、互いに120°の位相差を有している。また、各相の駆動パルス対、すなわちUpとUn、VpとVn、WpとWnは、互いに60°の位相差を有している。
この分周過程で生成される信号を図2(B)に示す。図において、信号QAが第1分周後の信号、信号QBが第2分周後の信号、信号QCが第3分周後の信号、信号QDが第4分周後の信号である。第4分周信号QDは、クロック信号CLK_vcoの16倍の周期を有するクロック信号となる。
その後、駆動パルス生成部41は、このパルス信号y0〜y5をデコードし、図2(G)に示す駆動パルスUp〜Wnを生成する。
相出力駆動情報は、図2(F)に示すように、「y0」、「y1」、「y2」、「y3」、「y4」または「y5」のいずれかの値をとる。この相出力駆動情報は、駆動出力相の制御とEMFの相および極性の選択を行うための信号となる。つまり、相出力駆動情報(図2(F))に応じて、プリアンプ8の6種の入力信号Up、Vp、Wp、Un、Vn、Wnが決定される。これにより、U相の駆動信号U、V相の駆動信号V、W相の駆動信号Wが出力部9で発生する。
ここで「U+」とは、U相立ち上がり側(+側)のEMFコンパレータ出力を選択することを表す。また、「V−」とは、V相立ち下がり側(−側)のEMFコンパレータ出力を選択することを表す。
これにより、コンパレータ3Uの出力信号(U_det信号)は、U相のEMF信号EMF_Uが駆動コイルの中点電圧COMより高いときはハイレベルをとり、低いときはローレベルをとる。他の2つの相でも同じである。
上記EMFセレクタ制御信号(図3(B))は、立ち上がりを検出しているか、立下りを検出しているかを相ごとに示す情報である。
制御系回路は、駆動パルス生成部41を除くロジック部4内の回路、ロータ位相検出部3、チャージポンプ回路5、チャージポンプ電流設定器6、および、端子T_cpおよびT_Irefに接続されている外付け部品から構成される。
このうちチャージポンプ回路5、チャージポンプ電流設定器6、および、端子T_cpおよびT_Irefに接続されている外付け部品は、本発明の「発振制御部」の実施例を構成する。
なお、とくに規制信号生成部43、セレクタ44および位相比較部42は物理的な回路ブロックとして分けて構成する必要は必ずしもなく、ロジック部4の機能として備えていればよい。
第1の機能は、ロータ位相検出部3により各ロータ位相の極性変化点を検出し、この各ロータ位相の極性変化点と、駆動パルス生成部41から得られる駆動位相の極性変化点とを比較し、ロータ位相の駆動位相に対する位相ずれを検出する機能である。
ロータ位相の極性の基準を与えるために、コンパレータ3U,3V,3Wの一方入力のそれぞれを、スター結線されたコイル102の中点電位COMを入力する端子T_COMに接続している。
時間変化するEMFをモニタするために、コンパレータ3Uの他方入力を、U相コイル102UのEMF信号(以下、「EMF_U」と表記)を供給する端子TUに接続している。同様に、コンパレータ3Vの他方入力を、V相コイル102VのEMF信号(以下、「EMF_V」と表記)を供給する端子TVに接続し、さらに、コンパレータ3Wの他方入力を、W相コイル102WのEMF信号(以下、「EMF_W」と表記)を供給する端子TWに接続している。
各コンパレータ3U〜3Wからは、EMFの極性が「+」のときはハイレベル、「−」のときはローレベルをとるコンパレータ出力信号U_det,V_det,W_detが出力される。
ここで位相比較部42は、U相に関し、U相駆動信号Uが立ち上がる期間の時間中心をU相の極性が負から正に変化する点と見なして、その駆動(電気)位相の極性変化点を、コンパレータ3Uの出力信号U_detが示すロータ位相の負から正への極性変化点と位相比較する「U+比較」の機能と、U相駆動信号Uが立ち下がる期間の時間中心をU相の極性が正から負に変化する点と見なして、その駆動(電気)位相の極性変化点を、コンパレータ3Uの出力信号U_detが示すロータ位相の正から負への極性変化点と位相比較する「U−比較」の機能とを有する。
位相比較部42は、V相やW相についても同じようにして、「V+比較」と「V−比較」の機能、「W+比較」と「W−比較」の機能を有する。図1に示す位相比較部42に、これらの機能が示されている。
制御規制の好適な与え方としては、規制信号生成部43で、たとえば、T_lateの幅の規制信号M_late、T_earlyの幅の規制信号M_earlyを生成し、それらの規制信号と規制対象の信号とのアンド(論理積)をとる。このとき位相比較部42などに内蔵されているアンドゲートを利用すると、特別にアンドゲートを設ける必要がなく回路規模を抑制する観点から望ましい。
図4では規制制御部43を、2つの2入力アンドゲート43Aと43B、インバータ43Cおよび3入力ナンドゲート43Dにより構成している。
位相進み側の最大パルス幅T_earlyを電気角30°相当とするには、図2(B)に示す第3分周信号QCと第4分周信号QDとの論理積をとるためアンドゲート43Aの入力に信号QCとQDを与え、その出力から規制信号M_earlyを出力する。規制信号M_earlyの周期は電気角60°相当となる。
この第4分周信号QDをインバータ43Cにより反転して、2入力アンドゲート43Bの一方入力に与え、第3分周信号QCはナンドゲート43Dの第1入力に与える。このときナンドゲート43Dの第2入力に第2分周信号QBを、第3入力に第1分周信号QAを与え、ナンドゲート43Dの出力をアンドゲート43Bの他方入力に与える。このアンドゲート43Bからは、周期が電気角60°相当でパルス幅が第1分周信号QAと同じ約7.5°相当と短い規制信号M_Lateが出力される。
なお、この回路構成は一例であり、得たい規制最大時間(規制信号のパルス幅)に応じて任意に変更可能である。
図5(B)に示す回路は、図5(A)に示すように、セレクタ44と位相比較部42を一つの回路ブロックとして構成してある。
この回路は、3入力アンドゲート45uと45dから各々が構成されている6つのアンドゲート対45と、3つのインバータ46u,46v,46wと、2つの6入力のノアゲート47uと47dとを有する。
アンドゲート45uの第2入力に、コンパレータ出力信号U_det,V_det,W_detの何れかが入力される。より詳細には、第1入力に信号y2またはy5が入力されるアンドゲート45uの第2入力にコンパレータ出力信号U_detが入力され、同様に、第1入力に信号y1またはy4が入力されるアンドゲート45uの第2入力にコンパレータ出力信号V_detが入力され、第1入力に信号y0またはy3が入力されるアンドゲート45uの第2入力にコンパレータ出力信号W_detが入力される。
規制信号生成部43で生成した規制信号M_earlyが、アンドゲート45uの第3入力に入力される。
アンドゲート45uの第2入力に、コンパレータ出力信号U_det,V_det,W_detのインバータ46u〜46wによる反転信号の何れかが入力される。より詳細には、第1入力に信号y2またはy5が入力されるアンドゲート45dの第2入力にコンパレータ出力信号U_detの反転信号が入力され、同様に、第1入力に信号y1またはy4が入力されるアンドゲート45dの第2入力にコンパレータ出力信号V_detの反転信号が入力され、第1入力に信号y0またはy3が入力されるアンドゲート45dの第2入力にコンパレータ出力信号W_detの反転信号が入力される。
規制信号生成部43で生成した規制信号M_lateが、アンドゲート45dの第3入力に入力される。
したがって、ノアゲート47uからは、EMF極性が「+」のときで、必要に応じてパルス幅規制を受けた信号の反転信号(ローアクティブ信号)が、アップ信号f_upとして出力される。また、ノアゲート47dからは、EMF極性が「−」のときで、必要に応じてパルス幅規制を受けた信号の反転信号(ローアクティブ信号)が、ダウン信号f_downとして出力される。
チャージポンプ電流設定器6は、入力した電流を基に、チャージポンプ回路5の基準電流I_ref1およびI_ref2を生成する。
チャージポンプ回路5は、チャージポンプ電流設定器6がチャージポンプ電流設定用抵抗器R_Irefに応じて生成したチャージポンプ電流I_ref1とI_ref2を、ノアゲート47u(図5(B))から出力されるアップ信号f_up、あるいは、ノアゲート47d(図5(B))から出力されるダウン信号f_downによって制御するものである。
ここでアップ信号f_upとダウン信号f_downは、通常は「H」レベルを有し、アクティブにされると「L」レベルに推移する。
図6に示すチャージポンプ回路5は、抵抗付きのいわゆるディジタルトランジスタDP1,DQ1およびDQ2と、通常のトランジスタP1,P2,Q1およびQ2と、抵抗R1,R2,R3およびR4とから構成されている。トランジスタDP1,P1およびP2は、PNPバイポーラトランジスタから構成され、トランジスタDQ1,DQ2,Q1およびQ2は、NPNバイポーラトランジスタから構成されている。
アップ信号f_upがLレベルに推移してアクティブにされると、ディジタルトランジスタDQ2がオフ状態となりトランジスタQ1、Q2がオン状態となる。
このとき電流源I_ref1と同等の電流が、チャージポンプ用抵抗器R_cpから制御端子T_cp、トランジスタQ2を通って接地電圧GNDに流れる。
ダウン信号f_downがLレベルに推移してアクティブにされると、ディジタルトランジスタDQ1、DP1がオフ状態となりトランジスタP1、P2がオン状態となる。このとき電流源I_ref2と同等の電流が、制御端子T_cpからチャージポンプ用抵抗器R_cpの方向に流れる。
これに対し、本発明が適用された本実施の形態では、平滑フィルタを介することなく直接、VCO制御電圧を上げ下げする。より詳細には、アップ信号f_upまたはダウン信号f_downがアクティブにされるとチャージポンプ回路5の電流の向きが瞬時に切り替わり、これに対応して瞬時にVCO制御電圧が上昇または下降することから、レスポンスが非常に早い。
ここで本例におけるチャージポンプ用コンデンサC_cpは、チャージポンプ動作の定数で積分要素となる。また、チャージポンプ用抵抗器R_cpはチャージポンプ動作の定数で瞬時要素となり、すなわち電流を電圧値に変化する変換素子の役割を果たす。これらの値は、チャージポンプ用コンデンサC_cpの値が、たとえば0.22μF、チャージポンプ用抵抗器R_cpの値が、たとえば68kΩと小さい素子ですむ。
例1を図7(B1)〜図7(B5)に示し、例2を図7(C1)〜図7(C5)に示し、例3を図7(C1)〜図7(C5)に示し、例4を図7(D1)〜図7(D5)に示す。
本例では規制信号M_earlyのパルス幅T_earlyを、駆動電気角相当で−15[deg]から0[deg]とした。また、規制信号M_lateのパルス幅T_lateを、同じく0[deg]から26.25[deg]とした。繰り返すが、T_late側パルス幅をT_early側パルス幅よりも広く設定すること、これが本実施の形態での大きな特徴の一つである。
説明のため、相出力駆動情報(図2(F))は「y5」の位置に固定したが、全ての相出力駆動状態である「y0」〜「y5」にて同等な動作を行う。したがって対象位相範囲は、図7(A2)に示すように駆動電気角で−30[deg]〜+30[deg]となる。
このときアップ信号f_up(図7(B2))は、規制信号M_early信号のパルス幅T_earlyで位相制限を受けて、Lレベルのアクティブ時間が制限される。また、このときのダウン信号f_downはHレベルを保持する(図7(B3))。さらに、チャージポンプ電流(図7(B4))は、規制信号M_earlyのパルス幅T_early分だけ、チャージポンプ用抵抗器R_cpから制御端子T_cpに向かって流れる。制御端子T_cpの電圧(図7(B5))に示すLレベルは、チャージポンプ電流(図7(B4))が流れている期間では、δVCP瞬時補正分の電位低下になる。この値は、チャージポンプ電流(図7(B4))とチャージポンプ用抵抗器R_cpの積である。チャージポンプ電流(図7(B4))が流れ終えた後には、制御端子T_cpの電圧はδVCP積分補正分の電位低下になる。このδVCP積分補正分の値は、チャージポンプ電流値(図7(B4))とアップ信号f_upのアクティブ時間の積(チャージポンプ用コンデンサC_cpの電荷変動分)をチャージポンプ用コンデンサC_cpの容量値で除した値となる。
以上の結果、VCO7は、制御端子T_cpの電圧の変化により、出力する周波数が高くなる。
例2ではチャージポンプ電流が流れている期間が例1よりも短くなっているため(図7(C4))、制御端子T_cpの電圧のδVCP積分補正分の電位低下は、例1よりも小さくなる(図7(C5))。
このとき、アップ信号f_upもダウン信号f_down信号もアクティブにされないので(図7(D2)および図7(D3))、制御端子T_cpの電圧は一定値を保つ(図7(D5))。
このときダウン信号f_down(図7(E3))は、規制信号M_late信号のパルス幅T_lateで位相制限を受けて、Lレベルのアクティブ時間が制限される。また、このときのアップ信号f_upはHレベルを保持する(図7(E2))。チャージポンプ電流が出力される向きは、これまでの例1および例2とは逆に、制御端子T_cpからチャージポンプ用抵抗器R_cp側へ向かう向きとなる。本例では、制御端子T_cpの電圧は上がるため(図7(E5))、VCO7が出力する周波数は低くなる。
ただし、前述したVCO7の構成により、VCO7が起動時などの低い周波数で動作している場合には、VCO7に下限周波数を設けているため、これより低い周波数にはならない。
駆動パルス生成部41の分周比において、モータのロータ着磁極数Pが8極ならば、モータの回転数NとVCO7の出力周波数F_vcoの関係は次式となる。
[数2]
N[rpm]=F_vco[Hz]/6.4 …(2)
δVcpが0[V]、つまり制御端子T_cpの電圧がVcc電圧と同レベルのときも、VCO7は発振を停止せず約2.56[kHz]で発振を継続していることが分かる。この下限発振周波数は、モータ回転数Nで換算すると約400rpmである。
このとき用いたモータ100は、三相ブラシレスモータで、ロータ極数Pが8極、定格電圧3V、起動電流0.1A、ロータイナーシャ3×10−8[kg・m2]、トルク定数2×10−3[N・m/A]のものである。
チャージポンプ電流は1.5μA、チャージポンプ用コンデンサC_cpは0.022μF、チャージポンプ用抵抗器R_cpは68kΩである。チャージポンプ用抵抗器R_cpにチャージポンプ電流が流れたときに発生する電圧は102mVになる。VCO7によって、この電圧は約3984rpmの回転数変位に換算される。
モータ起動周波数は420rpmとし、VCOゲインは約250kHz/V(回転数ゲインに換算すると約39062.5rpm/V)である。VCOの最大発振周波数は、回転数に換算して約22,500rpmである。
定格電圧3Vにおけるモータの定格回転数は約12000rpmであるので、VCOの性能は十分である。
図9は、定常状態での動作波形である。
波形は上から、U相駆動信号U(U相端子電圧)、V相駆動信号V(V相端子電圧)およびW相駆動信号W(W相端子電圧)である。各波形の名称に縦軸と横軸のスケールを示す。たとえばU相端子電圧は縦軸の一目盛りが2V、横軸の一目盛りが2msであり、これを(2V/2ms)と表記している。この表記法は、図9の他の波形および図10〜図13でも同じである。通電ルールは120°通電型で全波駆動型である。これは、今までの動作説明の内容に等しい。
U、V、Wの各相電圧が、Hレベル出力でもなくLレベル出力でもない無通電期間のときに、EMF波形を見ることができる。各相ともにEMF位相、つまりロータ位相が駆動位相と等しい状態にて、モータが運転していることが認められる。
定常状態であるためロータ位相と駆動回路位相が一致しており、アップ信号f_upの電圧、ダウン信号f_downの電圧ともにアクティブ状態になる期間が少なく、制御端子T_cpの電圧には小さなAC信号成分しか見られない。
波形は上から、U相端子電圧、f_up電圧、f_down電圧、CP端子電圧である。
この図から起動時および加速時の動作波形を時間拡大したものが、図12および図13である。
起動直後では制御端子T_cpの電圧(CP端子電圧)はVcc電圧と等しいので、VCO7は下限として設定された発振周波数を出力していて、モータはこの起動回転数にて起動を開始する。モータが起動を開始するとロータの回転運動によりEMFが発生する。U相無通電時にEMF波形が見える。EMF位相からロータ位相を検出し、駆動回路位相を比較した結果得られるアップ信号f_up、ダウン信号f_downによってチャージポンプ電流が変化し、制御端子T_cpの電圧を変化させている。
起動直後の位相判定において、ロータ位相が駆動回路位相よりも遅れていてダウン信号f_downがLレベルにアクティブにされても、VCO7は起動回転数を下回る周波数は出力していない。このため起動中にモータが停止することはない。
図12の波形例では、起動直後から約40msの期間は加速に適したロータ位相になるまで、モータは殆ど加速することなく起動回転数のままロータが回転している。起動直後から約40msを過ぎた期間からモータは加速を開始している。
モータ起動回転数、約420rpmのときにアップ信号f_upがアクティブにされると、前述したチャージポンプ用抵抗器R_cpにチャージポンプ電流が流れ約3984rpmの回転数変位となる。ただし、ロータの回転運動はモータの駆動トルクおよびロータのイナーシャによる加速能力に制限されてしまうので、駆動回路の回転数変位に同期追従はされない。
dN=60・τ/(J・2π)・dt …(3)
起動回転数、約420rpmのときでロータ極数が8極とすると、電気角の360°相当は約35.7msになる。アップ信号f_upがアクティブにされる期間は、最大で電気角15°相当なので、この期間は約1.5msである。
つまり、モータが起動回転数のような低い回転数域で回転動作しているときには、アップ信号f_upがアクティブになることはロータの加速運動に寄与するよりも、駆動回路周波数を瞬時に上げることで速やかに相出力駆動の動作フェーズを移行させ、加速に適切な駆動位相に進める働きをする。
図13から、EMFの位相と駆動回路位相が一致しながら加速している様子が分かる。
動作点を安定化するためには、動作点近傍にてループゲインが存在しなければならない。つまり動作点であるモータの定格回転数を越える周波数域においてまで、VCOゲインがゼロであってはならない。
1つ目はモータ100である。U、V、Wの各相コイル102U,102V,102Wが駆動されることでロータ101が回転し、各相の無通電時にEMFを発生する。
2つ目はモータ駆動回路1のうち、ロータ位相検出部3からチャージポンプ回路5までの位相差を判定しアップ信号f_upおよびダウン信号f_downを生成する制御系回路である。この制御系回路は、駆動回路位相を判定するため駆動パルス生成部41より回路位相情報を得ているが、当該制御系回路内でこれらの信号によるフィードバックループは形成していない。
3つ目はモータ駆動回路1のうち、VCO7から出力部9までの駆動系回路である。
各構成要素がオープンであることの利点は大きい。すなわち、異常発振などのリスクがなく、回路設計や回路検査が容易であることが利点の一つである。また、T_early位相幅やチャージポンプ電流などの動作パラメータを、回路安定化のトレードオフなどがないので、その動作目的のためだけに最適に設定することができるという利点がある。
第1に、起動が確実で、安定したモータの回転動作を得るセンサレスモータ駆動回路が提供できる。このときVCO7の制御端子T_cpの電圧をその時々の位相遅れや位相進みの情報に応じて直接、瞬時に駆動するため、レスポンスが早い。
第2に、IC化に適した簡単な回路であるため、IC回路規模の最小化が図れる。
第3に、駆動回路内部にフィードバックループを持たないため安定した回路である。その結果、回路設計や回路検査が容易である。
図1の例ではモータ駆動IC2以外に、電源用のデカップリングコンデンサC_DCを含み、4点の外付け電気部品点数としたが、このうち2点の抵抗はモータ駆動IC2内部に取り込むことが可能であるので、外付け電気部品点数は2点まで削減できる。
また、外付け電気部品の定数は、駆動回路の動作に依存しない独立した値である。モータの磁気特性と機械的時定数に対応すればよいだけなので定数の最適化が容易であり、しかも定数に対して比較的広い許容範囲を持つ。
電源電圧V_cc=3V、起動電流0.1A、イナーシャ3×10−8[kg・m2]、トルク定数2×10−3[N・m/A]のモータ100を用いた場合、必要な動作波形を得るための定数として、たとえば、チャージポンプ用抵抗器R_cpの抵抗値が68kΩ、チャージポンプ用コンデンサC_cpの容量値が0.022μFと小さいものですむ。よって、これら外付け部品が占める実装面積は極めて小さいという利点がある。
ただし、駆動対象が変更されると、その変更に適合してモータ駆動回路1の構成および動作も変更する必要がある。つまり、コンパレータ数、位相比較数および出力回路の構成を駆動相数に応じて変更し、また、駆動相数および着磁数に応じて出力部を駆動する信号を生成するための構成、たとえばクロックのカウント数や出力デコード信号の位相差を変化させる必要がある。ただし、駆動相数および着磁数が異なっても、それらを問わない基本的な構成や動作に関して上記説明が類推適用できる。
とくに図示しないが、モータ100のロータ回転軸に偏心部材が取り付けられ、当該モータ100、偏心部材およびモータ駆動回路1が同一のモジュール基板に、振動モータモジュールとして実装してある。振動モータモジュールは、たとえば携帯電話端末などの電子機器に内蔵され、着信時の報知手段として利用される。なお、本発明の電子機器は携帯電話端末に限らないが、本発明の適用によって小型で制御性がよく、かつ、消費電力の低減が可能なことから、本発明は、携帯型電子機器に好適に適用できる。
Claims (11)
- ロータと、当該ロータに対向する複数のコイルとを備えているセンサレスのブラシレス直流モータを駆動するモータ駆動回路であって、
制御端子に印加される電圧に応じた周波数で発振しクロック信号を生成する電圧制御型の可変周波数発振回路を内蔵し、当該可変周波数発振回路からのクロック信号に基づいて、当該クロック信号の周波数で規定される周期を有し位相差が順次異なる複数の駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
複数の駆動信号を前記複数のコイルに供給してロータを回転させたときに、複数のコイルに誘起される誘起電圧をモニタし、当該誘起電圧から得られるロータ位相の、前記駆動信号から得られる電気位相に対する位相ずれを検出する位相ずれ検出部と、
前記位相ずれ検出部から出力される位相ずれ情報を入力し、当該位相ずれ情報が電気位相に対するロータ位相の遅れを示すときは当該位相遅れ量に応じた時間だけ前記制御端子の電圧を変化させ、ロータ位相の進みを示すときは当該位相進み量に対応した時間だけ、前記位相遅れの場合と逆の向きに前記制御端子の電圧を変化させる発振制御部と、
を有するモータ駆動回路。 - 前記発振制御部が前記制御端子の電圧を制御して前記可変周波数発振回路の発振周波数を上げるときの最大制御時間が、当該電圧を制御して発振周波数を下げる時の最大制御時間より短くなるように、各制御時間の上限を規制する制御規制部を
さらに有する請求項1に記載のモータ駆動回路。 - 前記発振制御部は、
前記位相ずれ情報に応じて、電気位相に対してロータ位相が遅れているときは前記制御端子を充電し、ロータ位相が進んでいるときは放電する充放電回路と、
制御端子に接続され、充放電回路による制御端子の充電時または放電時の電流変化を制御端子の電圧変化に変換する変換素子とを含み、
前記制御規制部は、前記充放電回路の1回の最大充電時間が1回の最大放電時間より短くなるように、当該充放電回路の充放電時間を規制する
請求項2に記載のモータ駆動回路。 - 前記位相ずれ検出部は、前記位相ずれの情報が前記電気位相に対して前記ロータ位相が遅れていることを示すときは第1信号を出力し、位相ずれの情報が電気位相に対してロータ位相が進んでいることを示すときは第2信号を出力するセレクタを有し、
前記制御規制部は、前記第1信号のアクティブ状態の最大持続時間を、前記第2信号のアクティブ状態の最大持続時間より短く設定し、
前記発振制御部は、前記セレクタから入力される第1または第2信号のアクティブ状態の持続時間だけ前記制御端子の電圧を変化させる
請求項2に記載のモータ駆動回路。 - 前記駆動信号生成部は、ロータが停止時から確実に起動する起動周波数を下限周波数とする起動制御回路を有する
請求項1に記載のモータ駆動回路。 - ロータ、および、当該ロータに対向する複数のコイルを備えているセンサレスのブラシレス直流モータと、
当該ブラシレス直流モータを駆動するモータ駆動回路と、をモジュール化して内蔵している電子機器であって、
前記モータ駆動回路が、
制御端子に印加される電圧に応じた周波数で発振しクロック信号を生成する電圧制御型の可変周波数発振回路を内蔵し、当該可変周波数発振回路からのクロック信号に基づいて、当該クロック信号の周波数で規定される周期を有し位相差が順次異なる複数の駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
複数の駆動信号を前記複数のコイルに供給してロータを回転させたときに、複数のコイルに誘起される誘起電圧をモニタし、当該誘起電圧から得られるロータ位相の、前記駆動信号から得られる電気位相に対する位相ずれを検出する位相ずれ検出部と、
前記位相ずれ検出部から出力される位相ずれ情報を入力し、当該位相ずれ情報が電気位相に対するロータ位相の遅れを示すときは当該位相遅れ量に応じた時間だけ前記制御端子の電圧を変化させ、ロータ位相の進みを示すときは当該位相進み量に対応した時間だけ、前記位相遅れの場合と逆の向きに前記制御端子の電圧を変化させる発振制御部と、
を有する電子機器。 - ロータと、当該ロータに対向する複数のコイルとを備えているセンサレスのブラシレス直流モータを駆動するモータ駆動方法であって、
制御端子に印加される電圧に応じた周波数で発振器を発振させて、当該発振器の発振周波数に応じた周波数のクロック信号を生成し、
クロック信号の周波数で規定される周期を有し位相差が順次異なる複数の駆動信号を当該クロック信号に基づいて生成し、
複数の駆動信号を前記複数のコイルに供給してロータを回転させたときに、複数のコイルに誘起される誘起電圧をモニタし、当該誘起電圧から得られるロータ位相の、前記駆動信号から得られる電気位相に対する位相ずれを検出し、
前記位相ずれ情報を入力し、当該位相ずれ情報が電気位相に対するロータ位相の遅れを示すときは当該位相遅れ量に応じた時間だけ前記制御端子の電圧を変化させ、ロータ位相の進みを示すときは当該位相進み量に対応した時間だけ、前記位相遅れの場合と逆の向きに前記制御端子の電圧を変化させることによって、前記クロック信号の生成時の発振周波数を前記位相ずれ情報の時間変化に対応して制御する
モータ駆動方法。 - 前記制御端子の電圧を制御して前記可変周波数発振回路の発振周波数を上げるときの最大制御時間が、当該電圧を制御して発振周波数を下げる時の最大制御時間より短くなるように、制御時間の上限を規制する
請求項7に記載のモータ駆動方法。 - 前記位相ずれ情報に応じて、電気位相に対してロータ位相が遅れているときは前記制御端子を充電し、ロータ位相が進んでいるときは放電し、
充放および放電に際し、回の最大充電時間が1回の最大放電時間より短くなるように充放電時間を規制し、
制御端子の充電時または放電時の電流変化を制御端子の電圧変化に変換する
請求項8に記載のモータ駆動方法。 - 前記位相ずれの情報が前記電気位相に対して前記ロータ位相が遅れていることを示すときは第1信号を出力し、位相ずれの情報が電気位相に対してロータ位相が進んでいることを示すときは第2信号を出力し、
前記第1信号のアクティブ状態の最大持続時間を、前記第2信号のアクティブ状態の最大持続時間より短くし、
前記第1または第2信号のアクティブ状態の持続時間だけ前記制御端子の電圧を変化させる
請求項8に記載のモータ駆動方法。 - 前記クロック信号の生成時に、ロータが停止時から確実に起動する起動周波数を下限とする下限周波数の制御を行う
請求項7に記載のモータ駆動方法。
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