JP2005344262A - メタ型芳香族ポリアミド繊維 - Google Patents

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康則 立岡
Masatsugu Furukawa
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Abstract

【課題】顔料を多量に配合した場合においても、難燃性の低下が少ないメタ型芳香族ポリアミド繊維を提供すること。
【解決手段】全繰返し単位の85モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるメタ型芳香族ポリアミドから構成される繊維であって、該繊維中には、環状ホスホン酸エステル化合物が3.0〜8.0重量%含有されている。
【選択図】なし

Description

本発明は難燃性に優れたメタ型芳香族ポリアミド繊維に関するものであり、更に詳しくは、顔料を多量に配合した場合においても、難燃性の低下が少ないメタ型芳香族ポリアミド繊維に関するものである。
メタ型芳香族ポリアミド繊維は、分子骨格が主として芳香族環から構成されているため、優れた耐熱性と寸法安定性とを有しており、この特性を活かして、産業用途や耐熱性、防炎性、耐炎性が重視される用途に好適に使用されている。特に、最近では、その耐熱性と防炎性を生かした寝具、衣料、インテリア分野への用途が急速に広がりつつある。
ところで、これらの分野においては、着色した繊維を使用するのが一般的であるが、メタ型芳香族ポリアミド繊維は優れた物性を有する反面、ポリマー分子鎖が剛直な為に通常の方法ではその染色が困難であるという問題点を有している。従って、この染色の問題点を解決するために種々の改良方法が提案されている。
例えば、特公昭52−43930号公報には、繊維の多孔化により染料に対する親和性を向上させた芳香族ポリアミド繊維が開示されているが、紫外線に対する褪色が著しく、耐光堅牢性が劣るばかりか、多孔性の為、機械的物性も劣るという問題があった。
また、米国特許第3674402号公報には塩基性染料とベンジルアルコール、アセトフェノンなどの染色助剤を用いて染色する方法が開示されているが、耐光性の低い塩基性染料を使用するため、得られた染色繊維は耐光堅牢性が劣るという問題があった。
また、特開2000−328450号公報には、アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩及び縮合型ハロゲン化燐酸エステルを添加する方法が提案されているが、該方法では染色性が不十分で、淡色にしか染まらないという問題があった。
さらに、特開昭50−59522号公報には耐光性の良好な有機顔料をメタ型芳香族ポリアミド繊維に含有させた着色繊維が提案されているが、特にネービー色の様な濃色の場合、顔料を多量に配合する必要がある為、難燃性が著しく低下すると言う問題点があった。
特公昭52−43930号公報 米国特許第3674402号公報 特開2000−328450号公報 特開昭50−59522号公報
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解決し、顔料を多量に配合した場合においても、難燃性の低下が少ないメタ型芳香族ポリアミド繊維を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、メタ型芳香族ポリアミド繊維に環状ホスホン酸エステル化合物を含有させるとき、所望のメタ型芳香族ポリアミド繊維が得られることを究明し、本発明に到達した。
かくして本発明によれば、全繰返し単位の85モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるメタ型芳香族ポリアミドから構成される繊維であって、該繊維中には、下記一般式で示される環状ホスホン酸エステル化合物が3.0〜8.0重量%含有されていることを特徴とするメタ型芳香族ポリアミド繊維が提供される。
Figure 2005344262
上記式中、Rは低級アルキル基、Rは低級アルキレン基、Rは−CH、−C、−C、又は−(CHCHO)Hを表し、またnは2〜5の整数、xは0〜1の整数を表す。
本発明によれば、顔料を多量に配合した場合においても、難燃性の低下が少ないメタ型芳香族ポリアミド繊維が提供されるので、顔料により、自由な色相に着色することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するメタ型芳香族ポリアミドは、主骨格を構成する芳香族環がアミド結合によりメタ型に結合されてなるものであるが、ポリマーの全繰り返し単位の85モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるものを対象とし、特にポリメタフェニレンイソフタルアミドホモポリマーが好ましい。
全繰り返し単位の15モル%以下、好ましくは5モル%以下で共重合し得る第3成分としては、ジアミン成分として、例えばパラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラキシリレンジアミン、ビフェニレンジアミン、3,3’−ジクロルベンジン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ナフタレンジアミン等芳香族ジアミンが、また酸成分として、例えばテレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
また、これらの芳香族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸は、その芳香族環の水素原子の一部がハロゲン原子やメチル基等のアルキル基によって置換されてもよい。
なお、ポリマーの全末端の20%以上が、アニリン等の一価のジアミンもしくは、一価のカルボン酸成分で封鎖されている場合には、特に高温下に長時間保持しても繊維の強力低下が小さくなるので好ましい。
このようなメタ型芳香族ポリアミドは、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとを、例えば従来公知の界面重合させる方法や溶液重合させる方法等により製造することができる。ポリマーの重合度としては、N−メチル−2ピロリドンを溶媒として30℃で測定した固有粘度(IV)が0.8〜3.0好ましくは1.0〜2.0、特に好ましくは1.3〜1.9の範囲にあるものが好ましい。
上記のメタ型芳香族ポリアミドに含有させる環状ホスホン酸エステル化合物、としては下記一般式で示される化合物が挙げられる。
Figure 2005344262
上記一般式で表される環状ホスホン酸エステル化合物の具体例としては、下記式に示される化合物などが挙げられるが、さらにR1、R2、R、nを変更した化合物も、勿論、本発明に適用され得る。
Figure 2005344262
Figure 2005344262
上記環状ホスホン酸エステルの、メタ型芳香族ポリアミド繊維への添加量は3.0〜8.0重量%の範囲が選択される。該添加量が、8重量%を越える場合は、メタ型芳香族ポリアミド繊維の耐熱性が損なわれ、一方、該添加量が3重量%未満の場合は難燃性が十分ではない。
本発明において使用する着色剤としては、たとえば、CI Pigment Yellow93、CI Pigment Brown23、CI Pigment Red144に代表される不溶性アゾ染料、CI Vat Yellow1(CI 70600)、CI Vat Orange7(CI 71105)、CI Vat Red23(CI 71130)、CI Pigment Red123(CI 71140)、CI Vat Violet1(CI 60010)、CI Vat Blue4(CI 69800)に代表されるスレン系顔料、CI Pimgmt Blue15(CI 74160)、Poly−bromo−phtalocyanineに代表されるフタロシアニン系顔料、CI Pigment Red122、CI Pigment Violet19(CI 46500)に代表されるキナクリドン系顔料、CI Pigment Violet23に代表されるジオキサジン系顔料、CI Pigment Yellow 110、CI Pigment Orange42、CI Pigment Red180で代表されるイソインドリノン系顔料等を挙げることができる。
これらの顔料の中では、300℃15分の熱履歴で変色しないものが特に好ましく、スレン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系顔料が好ましく用いられる。
また、前記の顔料に、他の顔料を混合して使用することはさしつかえないが、顔料の耐光堅牢性を考慮すると、混合する他の顔料の量は20重量%未満、好ましくは10重量%以下である。
これらの顔料のメタ型芳香族ポリアミド繊維中の含有量は0.1重量%程度の淡色から10重量%を越えるような濃色まで所望の色相まで適宜含有させることができる。
又、これらの顔料とメタ型芳香族ポリアミドとの混合方法は、溶媒中にメタ型芳香族ポリアミドを混合、溶解し、それに顔料あるいは顔料溶液を加える方法、あるいは顔料とメタ型芳香族ポリアミドの溶液とを混合する方法、あるいは顔料とメタ型芳香族ポリアミドの混合物を溶媒に溶解する方法等がある。
そして得られた、メタ型芳香族ポリアミドと環状ホスホン酸エステルと着色剤の混合溶液(紡糸ドープ)を従来公知の成形方法によって繊維化すればよい。
例えば典型的な成形方法の一例をあげると、メタ型芳香族ポリアミドのN−メチル2ピロリドン溶液に該環状ホスホン酸エステルと顔料を加えて着色紡糸液を調製する。この紡糸液をノズルにより塩化カルシウムを主成分とする無機物水溶液中に押し出し、凝固させ水洗後沸騰水中で延伸し、続いて300〜370℃の熱版上でさらに延伸し、オイリングを行い繊維とする。該繊維を、短繊維の形状で使用する場合には、さらに前記のようにして得られた繊維に捲縮を付与し、所定の長さにカットして紡績糸等にする。
本発明に使用する繊維の形態は、原綿、トウ、糸、織編物、不織布等が使用され、製品のいずれの形態のものでも使用する事が出来る。
以下、実施例を挙げて本発明の構成および効果をさらに詳細に説明する。尚、実施例における各物性は以下の方法により求めたものである。
(1)固有粘度(IV)
ポリマーをNMP(N−メチル−2ピロリドン)に溶解させ、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
(2)環状ホスホン酸エステルの含有量
濃度既知の環状ホスホン酸エステル化合物の標準サンプルから蛍光X線分析により検量線を作成して、該環状ホスホン酸エステル化合物の含有率(重量%)を求めた。
(3)難燃性
JISL K7201のLOI測定法に準拠して、LOI値を求めた。
(4)洗濯耐久性
JIS L1091法に準拠し、洗濯温度85℃で50回洗濯(L50)を実施後、難燃剤の含有率及びLOI値を求めた。
[実施例1〜2]
固有粘度が1.35dl/gのポリ−m−フェニレンイソフタルアミド30gをN一メチル−2ピロリドン110gに溶解したドープに、明成化学(株)製環状ホスホン酸エステル化合物[K19A]の含有量が表1記載の割合となるように混合溶解し、減圧脱泡して紡糸ドープとした。
得られた紡糸ドープを85℃に加温し、孔径0.07mm、孔数200の紡糸口金から凝固浴中に押し出して湿式紡糸した。凝固浴の組成は、塩化カルシウムが40重量%、NMPが5重量%、残りは水55重量%であり、該凝固浴の温度は85℃であった。この吐出糸条は、該凝固浴中を約10cm走行させ、6.2m/分の速度で引き出した。次いで、引出し糸条を水洗し、95℃の温水で2.3倍に延伸し、200℃の加熱ロールを通して乾燥した後、さらに320℃の熱板上で1.5倍に延伸し延伸糸を得た。
得られた延伸糸は、クリンパーを通して捲縮を付与した後、カーターでカットして2.2dtex×51mmの短繊維となし、次いで該繊維を常法にしたがって綿番手30/−の紡績糸となし、該紡績糸を経糸及び緯糸に使用して目付200g/mの平織物を織成した。
得られた織物を常法にしたがって精練、乾燥、熱セットした。得られた織物の環状ホスホン酸エステル(難燃剤)の含有量及び織物のLOIの測定結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、着色剤としてCI Pigment Red144(赤色有機顔料)を2重量%メタ型芳香族ポリアミドドープに添加した他は実施例1と同様に実施した。
得られた織物の環状ホスホン酸エステル(難燃剤)の含有量及び織物のLOIの測定結果を表1に示す。
[比較例1]
固有粘度が1.35dl/gのポリ−m−フェニレンイソフタルアミド30gをN−メチル−2ピロリドン110gに溶解し、紡糸ドープとした。得られた紡糸ドープを85℃に加温し、孔径0.07mm、孔数200の紡糸口金から実施例1と同条件で湿式紡糸、水洗、温水延伸、乾燥、熱板上で延伸し延伸糸を得た。得られた延伸糸を用いて実施例1と同様に紡績糸を作成し、該紡績糸を経糸及び緯糸に使用して目付200g/mの平織物を織成した。
得られた織物を、実施例1と同様に精練、乾燥、熱セットした後、明成化学(株)製環状ホスホン酸エステル化合物[K19A]の10%溶液を作成し、絞り率60%でパッディング処理した後、100℃で5分間乾燥後、200℃で1分間熱処理した。得られた織物の環状ホスホン酸エステル(難燃剤)の含有量及び織物のLOIの測定結果を表1に示す。
[比較例2]
経糸及び緯糸にポリエステル繊維製紡績糸(20/2)を配して、経密度55本/インチ、緯密度44本/インチ、目付260g/mの平織物を得た後、該織物を常法により精練し、染料(スミカロンネービーブルー 0.5%owf用いて130℃で45分間高圧染色した。
得られた織物を比較例1と同様に、明成化学(株)製環状ホスホン酸エステル化合物[K19A]の10%溶液で処理した。
得られた織物の環状ホスホン酸エステル(難燃剤)の含有量及び織物のLOIの測定結果を表1に示す。
Figure 2005344262
本発明によれば、顔料を多量に配合した場合においても、難燃性の低下が少ないメタ型芳香族ポリアミド繊維が提供されるので、顔料により、自由な色相に着色することができ、消防服、炉前服、機能中心の工業用資材、更に機能性と審美性、耐光堅牢度性の要求されるカーテン、椅子張り、カーペット、内装材料等のインテリア類、パジャマ、シーツ、毛布、ふとん等の寝装具類、航空機、車両、船舶、高層建築物等の内装材料等の分野で有効に使用できる。さらに、非ハロゲン系の環状ホスホン酸エステル化合物を難燃剤として使用しているので、例え燃焼しても有毒ガスの発生が無く、また高温洗濯時に該環状ホスホン酸エステルの溶出が殆どないので、難燃性や風合いの劣化が少ないといった特徴も有している。

Claims (2)

  1. 全繰返し単位の85モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるメタ型芳香族ポリアミドから構成される繊維であって、該繊維中には、下記一般式で示される環状ホスホン酸エステル化合物が3.0〜8.0重量%含有されていることを特徴とするメタ型芳香族ポリアミド繊維。
    Figure 2005344262
    上記式中、Rは低級アルキル基、Rは低級アルキレン基、Rは−CH、−C、−C、又は−(CHCHO)Hを表し、またnは2〜5の整数、xは0〜1の整数を表す。
  2. 環状ホスホン酸エステル化合物が、メタ型芳香族ポリアミドドープに混合されてなる請求項1記載のメタ型芳香族ポリアミド繊維。
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