JP2023023305A - 難燃性布帛および繊維製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】難燃性だけでなく耐摩耗性にも優れ、好ましくは耐ピリング性にも優れた難燃性布帛および繊維製品を提供する。【解決手段】難燃剤を含みかつ破断伸度が40%以上であるメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いて紡績糸を得て、該紡績糸を用いて難燃性布帛および繊維製品を得る。【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性だけでなく耐摩耗性にも優れ、好ましくは耐ピリング性にも優れた難燃性布帛および繊維製品に関する。
芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとから製造される全芳香族ポリアミドは耐熱性および難燃性に優れている。また、全芳香族ポリアミドはアミド系極性溶媒に可溶であり、全芳香族ポリアミドを該溶媒に溶解した重合体溶液から乾式紡糸、湿式紡糸、半乾半湿式紡糸等の方法により繊維となし得る。
全芳香族ポリアミドのうち、ポリメタフェニレンイソフタルアミドで代表されるメタ型全芳香族ポリアミド(「メタ系アラミド」と称されることもある)からなる繊維は、耐熱・難燃性繊維として特に有用なものであり、フィルター、電子部品等の産業用途や、耐熱性、防炎性、耐炎性が重視される防護衣等の防災安全衣料用途等に用いられている。最近では、産業用途のみならず、寝具、衣料、インテリア等の審美性や視覚性が求められる分野への用途が、急速に広がりつつある。
これらの分野においてメタ型全芳香族ポリアミド繊維の難燃性は、火災防止、人命保護の観点からもより高く安定したものが求められている。
そこで、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の難燃性を改善するため、ポリマーに有機リン化合物、含リンフェノール樹脂、ハロゲン化合物等を添加する方法が提案されている。また、ハロゲン原子含有の有機リン化合物を配合して難燃性を改善する方法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、難燃剤を含むメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いた布帛は、摩耗性が低いという問題があった。
特開昭53-122817号公報
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、難燃性だけでなく耐摩耗性にも優れ、好ましくは耐ピリング性にも優れた難燃性布帛および繊維製品を提供することにある。
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、布帛を構成する繊維を巧みに工夫することにより難燃性だけでなく、耐摩耗性にも優れた難燃性布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む紡績糸を含む難燃性布帛であって、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維が難燃剤を含み、かつ前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維の破断伸度が40%以上であることを特徴とする難燃性布帛。」が提供される。
その際、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維の破断強度が3.0~4.0cN/dtexの範囲であることが好ましい。また、破断強度と破断伸度が下記式の関係であることが好ましい。
Y=-20X+120±10
ただし、X:破断強度、Y:破断伸度である。
また、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維が前記紡績糸に紡績糸重量対比20重量%以上含まれることが好ましい。また、ISO12947-2(マーチンデール)に規定される摩耗試験において、生地を構成する糸が2本切れるまでの回数が20000回以上であることが好ましい。また、JIS L 1076 A法に規定されるピリング試験において、試験時間10時間後の判定が4級以上であることが好ましい。また、ISO15025 B法に規定される燃焼試験において、炭化長が50mm以下であることが好ましい。
また、本発明によれば、前記の難燃性布帛を用いてなる、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品が提供される。
本発明によれば、難燃性だけでなく、耐摩耗性と耐ピリング性に優れた布帛が得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の難燃性布帛は、難燃剤を含みかつ破断伸度が40%以上(好ましくは40~60%)であるメタ型全芳香族ポリアミド繊維(メタ系アラミド繊維)を含む紡績糸を含む。
ここで、かかるメタ型全芳香族ポリアミド繊維において、燃焼時限界酸素指数LOIが30以上であることが好ましい。また、かかるメタ型全芳香族ポリアミド繊維が難燃剤を含まない場合、布帛の難燃性が低下するおそれがあるため好ましくない。
また、前記破断伸度が40%未満であると、繊維中のポリアミド分子の配向度が増加するため、フィブリル化が起こりやすく、良好な耐摩耗性が得られないおそれがある。破断伸度はより大きい方が好ましいが、一方で、破断伸度が60%を超えると、摩耗時に発生するピルが脱落しにくく、良好なピリング性が得られないおそれがある。
ここで、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その繰返し単位の85モル%以上がm-フェニレンイソフタルアミドであるポリマーからなる繊維である。かかるメタ系アラミド(全芳香族ポリアミド)は、15モル%未満の範囲内で第3成分を含んだ共重合体であっても差しつかえない。
このようなメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、従来から公知の界面重合法により製造することができ、そのポリマーの重合度としては、0.5g/100mlの濃度のN-メチル-2-ピロリドン溶液で測定した固有粘度(I.V.)が1.3~1.9dl/gの範囲のものが好ましく用いられる。
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維に含有させる難燃剤としては、リン系難燃剤が好ましい。
また、上記メタ型全芳香族ポリアミドにはアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩が含有されていてもよい。アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩としては、ヘキシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ヘキシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラフェニルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルテトラデシルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩等の化合物が好ましく例示される。なかでもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、またはドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩は、入手しやすく、熱的安定性も良好なうえ、N-メチル-2-ピロリドンに対する溶解度も高いため特に好ましく例示される。
上記アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩の含有割合は、十分な染色性の改良効果を得るために、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドに対して2.5モル%以上(好ましくは3.0~7.0モル%)であるものが好ましい。
また、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドとアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を混合する方法としては、溶媒中にポリ-m-フェニレンイソフタルアミドを混合、溶解し、それにアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を溶媒に溶解する方法などが用いられそのいずれを用いてもよい。このようにして得られたドープは、従来から公知の方法により繊維に形成される。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維に用いるポリマーは、染着性や耐変褪色性を向上させる等目的で、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1~10mol%となるように共重合させることも可能である。
-(NH-Ar1-NH-CO-Ar1-CO)- ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位または平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
また、第3成分として共重合させることも可能であり、式(2)、(3)に示した芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、p-フェニレンジアミン、クロロフェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、アセチルフェニレンジアミン、アミノアニシジン、ベンジジン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノアゾベンゼン等が挙げられる。式(4)、(5)に示すような芳香族ジカルボン酸ジクロライドの具体例としては、例えば、テレフタル酸クロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’-ビフェニルジカルボン酸クロライド、5-クロルイソフタル酸クロライド、5-メトキシイソフタル酸クロライド、ビス(クロロカルボニルフェニル)エーテルなどが挙げられる。
N-Ar2-NH ・・・式(2)
N-Ar2-Y-Ar2-NH ・・・式(3)
XOC-Ar3-COX ・・・式(4)
XOC-Ar3-Y-Ar3-COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の結晶化度は、染料の吸尽性がよく、より少ない染料でまたは染色条件が弱くても狙いの色に調整し易いという点で、5~35%であることが好ましい。さらには、染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点および実用上必要な寸法安定性も確保できる点で15~25%であることがより好ましい。
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の残存溶媒量は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の優れた難燃性能を損なわない点および染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点で、0.1重量%以下であることが好ましい。
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維は以下の方法により製造することができ、特に後述する方法により、結晶化度や残存溶媒量を上記範囲とすることができる。
メタ型全芳香族ポリアミドポリマーの重合方法としては、特に限定されず、例えば特公昭35-14399号公報、米国特許第3360595号公報、特公昭47-10863号公報などに記載された溶液重合法、界面重合法を用いてもよい。
紡糸溶液としては、とくに限定する必要はないが、上記溶液重合や界面重合などで得られた、芳香族コポリアミドポリマーと難燃剤を含むアミド系溶媒溶液を用いてもよいし、上記重合溶液から該ポリマーを単離し、これをアミド系溶媒に溶解したものを用いてもよい。
ここで用いられるアミド系溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを例示することができるが、とくにN,N-ジメチルアセトアミドが好ましい。
上記の通り得られた共重合芳香族ポリアミドポリマー溶液は、さらにアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含むことにより安定化され、より高濃度、低温での使用が可能となり好ましい。好ましくはアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩がポリマー溶液の全重量に対して1重量%以下(より好ましくは0.1重量%以下)である。
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液であり難燃剤を含む。)を凝固液中に紡出して凝固させる。
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が1000~30000個、紡糸孔径が0.05~0.2mmのステイプルファイバー(短繊維)用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、20~90℃の範囲が適当である。
繊維を得るために用いる凝固浴としては、実質的に無機塩を含まない、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45~60重量%の水溶液を、浴液の温度10~50℃の範囲で用いる。アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が45重量%未満ではスキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となるおそれがある。一方、アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が60重量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このためやはり、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となるおそれがある。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1~30秒の範囲が適当である。
引続き、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45~60重量%の水溶液であり、浴液の温度を10~50℃の範囲とした可塑延伸浴中にて、3~4倍の延伸倍率で延伸を行う。延伸後、10~30℃のNMPの濃度が20~40重量%の水溶液、続いて50~70℃の温水浴を通して十分に洗浄を行う。この延伸倍率を変更することにより、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の破断伸度を変えることができる。
洗浄後の繊維は、温度270~290℃にて乾熱処理を施し、上記の結晶化度および残存溶媒量の範囲を満たすメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、繊維の形態としては、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし短繊維でもよい。特に、他の繊維と混紡する上で繊維長25~200mmの短繊維が好ましい。また、単繊維繊度としては1~5dtexの範囲が好ましい。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維の市販品としては、コーネックス(登録商標)、コーネックス(登録商標)ネオ、ノーメックス(登録商標)などが例示される。
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維の破断強度が3.0~4.0cN/dtex(より好ましくは3.2~3.8cN/dtex)の範囲であることが好ましい。破断強度が3.0cN/dtex未満であると、耐摩耗性が良好でない。破断強度は大きいほど摩耗性向上には好ましい特性値である。一方、破断強度が4.0cN/dtexを超えると、破断伸度を40%以上とすることが困難であるため本発明の目的を達成できないおそれがある。
また、難燃性だけでなく、優れた耐摩耗性と耐ピリング性を有するためには、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維の破断強度と破断伸度が下記式の関係であることが好ましい。Yが-20X+120±10より小さい場合は、摩耗性が低下するおそれがある。また、Yが-20X+120±10より大きい場合は、ピリング性が低下するおそれがある。
Y=-20X+120±10 (ここで、X:破断強度、Y:破断伸度)
Yが-20X+110より小さい場合、または-20X+130より大きい場合は、摩耗性とピリング性を両立することができないおそれがある。
本発明の難燃性布帛は前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む紡績糸を含む。その際、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維が前記紡績糸に紡績糸重量対比20重量%以上(より好ましくは90重量%以上)含まれることが好ましい。
本発明において、布帛は前記メタ型全芳香族アラミド繊維だけで構成されていてもよいが、さらに、パラ型全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズチアゾール(PBTZ)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリスルホンアミド(PSA)繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維、ポリアリレート(PAr)繊維、メラミン繊維、フェノール繊維、フッ素系繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維などの難燃繊維や、セルロース繊維(好ましくは難燃レーヨン繊維)、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、コットン繊維、獣毛繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維、ポリカーボネート繊維、導電繊維などが含まれていてもよい。ここで、これらの繊維は混紡されていることが好ましい。
本発明において、布帛の製造方法は特に限定するものではなく、公知のいかなる方法でも用いる可能である。例えば、上記繊維の紡績糸を混綿して紡績糸を得た後、単糸または双糸にてレピア織機などを用いて、綾織、平織などの組織に製織することが好ましい。
かくして得られた布帛は、難燃性だけでなく、優れた耐摩耗性と、さらに好ましくは耐ピリング性をも有する。
かかる耐摩耗性としては、ISO12947-2(マーチンデール)に規定される摩耗試験において、生地を構成する糸が2本切れるまでの回数が20000回以上であることが好ましい。また、JIS L 1076に規定されるピリング試験において、試験時間10時間後の判定が4級以上であることが好ましい。また、ISO15025 B法に規定される燃焼試験において、炭化長が50mm以下であることが好ましい。
次に、本発明の繊維製品は、前記の難燃性布帛を用いてなる、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品である。かかる繊維製品は前記の難燃性布帛を用いているので、難燃性だけでなく、耐摩耗性と、さらに好ましくは耐ピリング性にも優れている。
次に本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(1)破断強度、破断伸度
引張試験機(インストロン社製、型式:5565)を用いて、JIS-L-1015に基づき、以下の条件で測定した。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g/dtex)
引張速度 :20mm/分
(2)耐摩耗性
ISO12947-2(マーチンデール)に規定される摩耗試験を行った。
(3)ピリング性
JIS L 1076 A法に規定されるピリング試験を実施した。
(4)炭化長
ISO15025 B法に規定される燃焼試験を実施した。炭化長は,火炎にさらされたときの試験片の縁辺から試験片の縦方向に形成された引裂端までの炭化部の中心を通る距離とする。
[実施例1]
溶液重合により合成し水洗精製した重量平均分子量47万のメタ系アラミド重合体粉末および塩化カルシウム粉末を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。この際、ポリマー溶液に対してメタ系アラミド重合体の質量濃度が25%、塩化カルシウムが2.5%になるよう調整した。そこへ難燃剤としてトリス(クロロプロピル)ホスフェートをポリマー成分に対しリン含有量として、0.47重量%となるよう添加した。
このポリマー溶液を80℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数100の吐出孔が円形の紡糸口金から80℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが35重量%、NMPが3重量%、残りの水が62重量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)120cmにて糸速7.5m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
この凝固糸条を第1~第2水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は250秒とした。なお、第1~第2水性洗浄浴温度はそれぞれ20、30℃の水を用いた。次に、この洗浄糸条を90℃の沸水中にて2.4倍に延伸し、引続き90℃の温水中に40秒浸漬し、洗浄した。
次に表面温度170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度340℃の熱板にて1.4倍に延伸し、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は繊度2.3dtex、破断強度3.6cN/dtex、破断伸度52.0%であった。
上記メタ型全芳香族ポリアミド繊維とパラフェニレンテレフタラミド繊維(帝人社製「トワロン(登録商標)」)とを混合比率が95:5となる割合で混合した紡績糸(英国式番手:36/2)を得た。
次いで、織物密度が経100本/インチ(2.54cm)、緯55本/インチ(2.54cm)の2/1綾織を製織し、目付け210g/mの織物を得た。マーチンデールに基づく摩耗性は20000回以上、ピリング性は4級であった、炭化長はタテ44mm、ヨコ43mmであった。
[実施例2]
浸漬長(有効凝固浴長)120cmにて糸速6.3m/分で通過させ、熱板にて1.7倍に延伸する以外は実施例1と同様に実施した。
得られた繊維は繊度2.3dtex、破断強度4.11cN/dtex、破断伸度42.6%であった。
上記メタ型全芳香族ポリアミド繊維とパラフェニレンテレフタラミド繊維(帝人社製「トワロン(登録商標)」)とを混合比率が95:5となる割合で混合した紡績糸(英国式番手:36/2)を得た。
次いで、織物密度が経100本/インチ(2.54cm)、緯55本/インチ(2.54cm)の2/1綾織を製織し、目付け210g/mの織物を得た。マーチンデールに基づく摩耗性は20000回未満、ピリング性は4級、炭化長はタテ46mm、ヨコ42mmであった。
[比較例1]
難燃剤を含まないこと以外は実施例2と同様に実施し、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は繊度2.3dtex、破断強度4.62cN/dtex、破断伸度43.9%であった。
上記メタ型全芳香族ポリアミド繊維とパラフェニレンテレフタラミド繊維(帝人社製「トワロン(登録商標)」)とを混合比率が95:5となる割合で混合した紡績糸(英国式番手:36/2)を得た。
次いで、織物密度が経100本/インチ(2.54cm)、緯55本/インチ(2.54cm)の2/1綾織を製織し、目付け210g/mの織物を得た。マーチンデールに基づく摩耗性は20000回以上、ピリング性は4級、炭化長はタテ57mm、ヨコ53mmであった。
[比較例2]
溶液重合により合成し水洗精製した重量平均分子量47万のメタ系アラミド重合体粉末および塩化カルシウム粉末を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。この際、ポリマー溶液に対してメタアラミド重合体の質量濃度が25%、塩化カルシウムが2.5%になるよう調整した。そこへ難燃剤としてトリス(クロロプロピル)ホスフェートをポリマー成分に対しリン含有量として、0.47重量%となるよう添加した。
このポリマー溶液を80℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数100の吐出孔が円形の紡糸口金から80℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが35重量%、NMPが3重量%、残りの水が62重量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)120cmにて糸速5.5m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
この凝固糸条を第1~第2水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は250秒とした。なお、第1~第2水性洗浄浴温度はそれぞれ20、30℃の水を用いた。次に、この洗浄糸条を90℃の沸水中にて2.8倍に延伸し、引続き90℃の温水中に40秒浸漬し、洗浄した。
次に表面温度170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度340℃の熱板にて1.7倍に延伸し、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は繊度2.3dtex、破断強度4.7cN/dtex、破断伸度32.3%であった。
上記メタ型全芳香族ポリアミド繊維とパラフェニレンテレフタラミド繊維(帝人社製「トワロン(登録商標)」)とを混合比率が95:5となる割合で混合した紡績糸(英国式番手:36/2)を得た。
次いで、織物密度が経100本/インチ(2.54cm)、緯55本/インチ(2.54cm)の2/1綾織を製織し、目付け210g/mの織物を得た。マーチンデールに基づく摩耗性は20000回未満、ピリング性は4級、炭化長はタテ45mm、ヨコ42mmであった。
本発明によれば、難燃性だけでなく、耐摩耗性と、さらに好ましくは耐ピリング性をも兼ね備えた難燃布帛および繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。

Claims (8)

  1. メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む紡績糸を含む難燃性布帛であって、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維が難燃剤を含み、かつ前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維の破断伸度が40%以上であることを特徴とする難燃性布帛。
  2. 前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維の破断強度が3.0~4.0cN/dtexの範囲である、請求項1に記載の難燃性布帛。
  3. 前記破断強度と破断伸度が下記式の関係である、請求項2に記載の難燃性布帛。
    Y=-20X+120±10
    ただし、X:破断強度、Y:破断伸度である。
  4. 前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維が前記紡績糸に紡績糸重量対比20重量%以上含まれる、請求項1~3のいずれかに記載の難燃性布帛。
  5. ISO12947-2(マーチンデール)に規定される摩耗試験において、生地を構成する糸が2本切れるまでの回数が20000回以上である、請求項1~4のいずれかに記載の難燃性布帛。
  6. JIS L 1076 A法に規定されるピリング試験において、試験時間10時間後の判定が4級以上である、請求項1~5のいずれかに記載の難燃性布帛。
  7. ISO15025 B法に規定される燃焼試験において炭化長が50mm以下である、請求項1~6のいずれかに記載の難燃性布帛。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載された布帛を用いてなる、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
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