JP2005343111A - 成形用金型、リング状樹脂部品及びリング状樹脂部品の製造方法 - Google Patents

成形用金型、リング状樹脂部品及びリング状樹脂部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ウェルドマークを抑制して寸法精度が高い成形品を低いコストで供給する成形用金型、リング状樹脂部品及びリング状樹脂部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 ウォームホイール製造用の成形用金型80は、固定側型板81と可動側型板82と、ウォームホイールの形状に対応した空間であるリング状のキャビティ83とを備えている。成形材料の流路の一部としてゲートランド89およびフィルムゲート88を有する。フィルムゲート88の厚さG1は、ゲートランドの厚さG2よりも小さい。ピンゲート87から供給された成形材料は、ゲートランド89内に充填された後にフィルムゲート88からキャビティ83内に注入される。
【選択図】 図2

Description

本発明は、キャビティに溶融樹脂を注入して成形品を成形するための成形用金型、当該成形用金型で成形されたリング状樹脂部品及び、その製造方法であるリング状樹脂部品の製造方法に関するものである。
例えば画像形成装置における駆動系(動力伝達系)の一部を、金属製歯車の代わりにプラスチック歯車で構成して、低騒音化、軽量化及びコスト低減化などを図る場合がある。このようなプラスチック製品は、一般的に、加熱溶融した樹脂材(溶融樹脂)を金型のキャビティ内に射出注入した後に冷却して固化させる射出成形により製造される。
ここで、溶融樹脂をキャビティに射出注入するために金型に設けるゲートには、いろいろな種類がある。例えば、ピンゲート(ピンポイントゲート)は、複数個取りができ、また、ゲート部が自動的に切断されるので、ゲート後処理が容易という点で優れている。すなわち、射出成形後に金型を開く動作でゲート部が引きちぎられ、ゲートと成形品が分離されるので、後工程で切断する手間を省くことができる。ピンゲートのゲート径を小さくすればするほどゲート部が引きちぎれ易くなる。
ところが、ピンゲートのゲート径を小さくすると流路抵抗が増すため、ゲートを複数個所に設ける必要がある。複数個所にピンゲートを設けた場合には、各ピンゲートから注入された溶融樹脂が互いに接近する方向に流動し、その後それらの流頭同士がキャビティ内で衝突するため、当該キャビティ内で得られる樹脂製品に、溶融樹脂が合流した合わせ目で筋状に見えるウェルドマーク(以下、ウェルドラインともいう)が発生することがある。ウェルドマークが発生すると、樹脂製品の外観上好ましくないだけでなく、ウェルドマークの発生位置の曲げ強度や衝撃強度が、ウェルドマークの発生していない部分に比して低下するといった不都合や、樹脂製品の部品精度にばらつきが生じてしまうといった不都合もある。とりわけ、プラスチック歯車等の駆動部品については、ギヤ精度が出ず、求められる真円度のレベルに達することが困難であると考えられる。
そこで、高い精度が求められる樹脂製品例えばCD(コンパクトディスク)を製造する技術として、射出成形用金型の円盤形状中心部に設けたゲートから円盤状キャビティ内に樹脂を流して製造するダイレクトフィルムゲートを用いる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、成形後には樹脂部品の中央をカットパンチで打ち抜いてゲートカットを行って製品となる。
特開平9−164564号公報(第3〜4頁、図1〜図4)
上述したダイレクトフィルムゲートは、残留ひずみを抑えて変形を防止するために有効であり、この技術をプラスチック歯車等の駆動部品に適用すると、ウェルドマークの発生を防止しつつ、高い精度の製品を製造することができる。
しかしながら、駆動部品の内径穴についてゲートバリを取り除く処理を要し、かつ、1回の射出成形で複数個を成形するいわゆる複数個取りができない等によって生産コストが高くなるといった欠点がある。
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ウェルドマーク発生の抑制、高精度の確保及び低コストを実現可能な成形用金型等を提供することにある。
かかる目的のもと、本発明が適用される成形用金型は、互いに開閉し型締め時に相互間に、外形が略円形状の断面を有するキャビティを形成する複数の型体と、複数の型体のいずれか1つに、キャビティにおける略円形状の円周方向の全周にわたって設けられ、キャビティ内に溶融樹脂を絞って注入するためのフィルムゲートと、キャビティ内に注入される溶融樹脂を供給するピンゲートと、フィルムゲートとピンゲートとの間で溶融樹脂の流路の一部を構成し、フィルムゲートの流路隙間よりも大きな流路隙間を有するゲートランドとを含む。
複数の型体で形成されるキャビティにより成形される樹脂部品は、キャビティの断面における中心部に貫通穴を有するリング形状であることを特徴とすることができる。また、ゲートランドは、フィルムゲートに沿って全周にわたって設けられていることを特徴とすることができる。
他の観点から捉えると、本発明が適用されるリング状樹脂部品は、成形用金型で成形されたリング状樹脂部品であって、成形用金型によって形成されたキャビティにより成形されたリング状の本体部と、キャビティ内に溶融樹脂を絞って注入するためのフィルムゲートにより本体部の一端面に全周にわたって延在するように成形されたリブ状のフィルムゲート部分と、フィルムゲートからキャビティ内に注入される溶融樹脂が充填されるゲートランドにより成形され、フィルムゲート部分よりも厚肉のゲートランド部分とを含む。
ゲートランド部分がフィルムゲート部分に沿って全周にわたって設けられていることを特徴とすることができる。このようにすると、部品の強度を高めることができる。
また、本体部とフィルムゲート部分とゲートランド部分の各内周面を、中心軸に沿って延びる貫通穴にて構成したことを特徴とすることができる。このような貫通穴にすると、後加工しなくてもシャフトに嵌合させることができる。
また、本体部は、ギヤが形成される素形部分を外周面に有することを特徴とすることができる。また、ゲートランド部分に、組み付けするシャフトと係止する係止部が形成されていることを特徴とすることができる。
更に本発明を別の観点から捉えると、本発明が適用されるリング状樹脂部品の製造方法は、略円柱形状の中心部に軸方向に延びる貫通穴を有するリング状樹脂部品を製造する方法であって、リング状樹脂部品を成形するための空間であるキャビティ内に溶融樹脂を注入する流路の一部を構成する充填領域に溶融樹脂が充填され、充填領域における流路隙間よりも狭い流路隙間がリング状樹脂部品における円周方向の全周にわたって設けられた絞り部を経由して、充填領域に充填された溶融樹脂がキャビティ内に注入されることを特徴とするものである。
キャビティにより成形されたリング状樹脂部品から、充填領域により成形された部分と絞り部により成形された部分とを除去することを特徴とすることができる。
本発明によれば、成形用金型において例えば複数個取りすることが可能となり、ウェルドマーク発生の抑制、高精度の確保及び低コストを実現することができるので、成形品の高い品質を維持しつつコストの低減を実現することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本実施の形態では、画像形成装置の感光体ドラム駆動機構70におけるウォームギヤ72(72Y,72M,72C,72K)に適用した場合を説明する。
まず、感光体ドラム駆動機構70について説明する。
図1は、本実施の形態が適用される感光体ドラム駆動機構70を説明するための図である。画像形成装置としてのタンデム型のデジタルカラープリンタは、各色の階調データに対応して画像形成を行う複数の画像形成ユニットを備えている。各画像形成ユニットには、トナー像を担持させる像担持体としての感光体ドラムがそれぞれ設けられている。各感光体ドラムは、互いに並列となるように配置されており、すべての感光体ドラムを同じ回転速度で回転駆動させるために、各感光体ドラムの駆動軸71を統一し、単一の駆動源により各感光体ドラムを駆動するように構成されている。
図1に示すように、本実施の形態が適用される感光体ドラム駆動機構70は、画像形成装置本体の背面側に設けられており、構成部材として、各感光体ドラムの回転時の軸となる各ドラム回転軸61(61Y,61M,61C,61K)に対して直交する方向に、剛性を確保するための金属材料で形成される1本の駆動軸71が設けられている。この駆動軸71には、各感光体ドラムに対向する位置に、樹脂材料で形成され、螺旋状のネジ山を有する4個のウォームギヤ72(72Y,72M,72C,72K)が取り付けられている。金属材料からなる駆動軸71としては、例えば、低炭素鋼であるSUM(硫黄快削鋼)やSUS(ステンレス鋼)が用いられる。また、ウォームギヤ72(72Y,72M,72C,72K)は、樹脂材料としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリアセタール(POM)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、スーパーエンプラポリフェニレンサルファイド(PPS)等、およびこれらの複合材等を含めることができる。ウォームギヤ72(72Y,72M,72C,72K)に対向して、各感光体ドラムの各ドラム回転軸61(61Y,61M,61C,61K)にはウォームホイール62(62Y,62M,62C,62K)(ヘリカルギヤ)が取り付けられる。この各ウォームギヤ72(72Y,72M,72C,72K)と各ウォームホイール62(62Y,62M,62C,62K)とを噛み合わせることで、駆動軸71の回動によって、全てのドラム回転軸61(61Y,61M,61C,61K)を同時に回動させることができる。
また、感光体ドラム駆動機構70は、各感光体ドラムを駆動するための共通の駆動源(単一駆動源)である駆動モータ73と、駆動モータ73に駆動連結され、駆動モータ73からの駆動力を駆動軸71に伝達するギヤ類74と、少なくとも2点から駆動軸71を支える軸受け75とを備えている。また、駆動軸71の回転ムラを抑制した状態で駆動軸71を保持するための球体76と、この球体76の落下を防止した状態にて本体1等のフレーム(図示せず)に固定される球体受け板77とが、駆動軸71の両端に設けられている。
今、駆動モータ73が駆動すると、ギヤ類74を介して、軸受け75に支えられている駆動軸71が回転する。この駆動軸71の回転により、駆動軸71に固定されている4つの樹脂製ウォームギヤ72(72Y,72M,72C,72K)が同方向に同時に回転する。この4つのウォームギヤ72(72Y,72M,72C,72K)の回転によって、螺旋状のネジ山が回転し、4つの感光体ドラムのドラム回転軸61(61Y,61M,61C,61K)に取り付けられたウォームホイール62(62Y,62M,62C,62K)が、駆動軸71の軸方向と直交する方向に、同時に同方向に回転する。
ここで、ウォームギヤ72(72Y,72M,72C,72K)の高精度化はもとより、ウォームギヤ72(72Y,72M,72C,72K)と噛合するヘリカルギヤすなわちウォームホイール62(62Y,62M,62C,62K)の高精度化も求められている。ウォームホイール62(62Y,62M,62C,62K)の精度を高めることにより、ウォームホイール62(62Y,62M,62C,62K)の回転ムラを抑制してモーションクオリティを向上させることが可能となる。ここにいうウォームホイール62(62Y,62M,62C,62K)の精度とは、真円度や歯形精度(例えば、歯形誤差、歯すじ誤差、歯溝のふれ、ピッチ誤差等)等をいう。ウォームホイール62(62Y,62M,62C,62K)の高精度化は、後述する製造方法(成形用金型)により低コストで実現することができる。
尚、この感光体ドラム駆動機構70は、螺旋状のネジ山を有するウォームギヤ72(72Y,72M,72C,72K)とウォームホイール62(62Y,62M,62C,62K)との組み合わせによって感光体ドラムを回動させているが、感光体ドラムと接触する部材が連れ回る場合には、これらの駆動手段を兼ねている。例えば、中間転写体方式の場合には中間転写ベルトの駆動手段として機能させることができ、また、記録用紙を直接搬送する装置の場合では、記録用紙の搬送体における駆動手段としての機能を兼ねることができる。
次に、ウォームホイール62(62Y,62M,62C,62K)を製造する成形用金型について説明する。
図2は、ウォームホイール62の製造に用いる成形用金型80の構造を示す断面図であり、図3は、成形用金型80内における溶融樹脂の流れを説明するための図である。なお、図2において後述するキャビティ83とフィルムゲート88とゲートランド89を斜線で示している。
図2に示すように、成形用金型80は、固定側型板81と可動側型板82とを備えている。固定側型板81と可動側型板82とにより成形用金型80の内部に、成形品のための空間であるキャビティ83が形成される。固定側型板81と可動側型板82との型合わせ面がパーティングライン84である。可動側型板82には、成形品に軸穴を形成するためのコアピン85が設けられている。また、可動側型板82には、ウォームホイール62のヘリカルギヤ歯面83aが最外の内周面に設けられている。これによって、キャビティ83は、ウォームホイール62のヘリカルギヤ歯面83aと円柱形状の中心部に軸方向に延びる貫通穴とを有するリング形状を成形できるように形成されている。
なお、可動側型板82を固定側型板81に対して接離加圧するための機構や、成形品離型のためのモールドベースやエジェクターピンなどの図示を省略している。また、成形品の厚さをなるべく揃えるために、キャビティ83には肉抜き部分83cが設けられている。
固定側型板81には、キャビティ83内に注入する成形材料(溶融樹脂)を供給するためのピンゲート87が1つ設けられている。このピンゲート87とキャビティ83との間における成形材料の流路に、フィルムゲート88(絞り部)とゲートランド89(充填領域、リングタブ)とが隣接して設けられている。フィルムゲート88およびゲートランド89は、固定側型板81と可動側型板82とコアピン85とスライドコア86a,86bとにより画定されている。スライドコア86a,86bは、成形品の離型時に比較的大きなアンダーカット部分83dを抜くために可動側型板82の開閉に連動して固定側型板81に対してスライドする部品であり、型開きのときにはスライドコア86aが図面における上方に、スライドコア86bは図面における下方に移動する。なお、スライドコア86a,86bを駆動する手段として、油圧方式を用いてもよく、また、電動方式を用いてもよい。
フィルムゲート88は、キャビティ83内に成形材料を注入するためにキャビティ83に開口しているもので、固定側型板81にキャビティ83の円周方向の全周にわたって設けられている。フィルムゲート88では、成形材料の流路隙間G1が絞られていて、その流路隙間G1は、全周にわたって同一寸法である。
また、ゲートランド89は、成形材料の流路におけるフィルムゲート88の上流側(同図における右側)に位置し、フィルムゲート88に沿って全周にわたって設けられている。ゲートランド89は、フィルムゲート88の流路隙間G1(以下、フィルムゲートの厚さともいう)よりも大きな流路隙間G2を有する。
このように構成された成形用金型80において、成形材料はピンゲート87(第1のゲート)からゲートランド89およびフィルムゲート88(第2のゲート)を経てキャビティ83へ注入されて充填される。一般的に流路隙間が小さいと成形材料に対する流動抵抗が大きく、流路隙間が大きいと流動抵抗が小さいことから、ピンゲート87から供給された成形材料は、まずゲートランド89に注入されて充填された後に、フィルムゲート88を通過して成形用金型80内のキャビティ83に注入される。
フィルムゲート88を通過するときにはゲートランド89内に成形材料が既に充填されているので、図3に示すように、フィルムゲート88からキャビティ83内に流れ込む成形材料は、円周方向外側に延びる複数の矢印Aの方向すなわち概ね放射状に流動し、成形材料の流れがぶつからないようになる。このため、成形品におけるウェルドラインの発生を防止することができ、高い強度の部品を成形することができる。
また、ピンゲート87を用いていることから、いわゆるゲート後処理が不要となり、また、複数個取りが可能なように成形用金型80を構成することができるので、コストの低減を容易に実現することができる。また、フィルムゲート88を設けていることから、円周方向に関して圧力がアンバランスな状態になることを防げるので、高精度で、高い真円度をもつ部品を成形することができる。
なお、本実施形態ではピンゲート87を1個所に設けているが、成形材料がフィルムゲート88を通過するときに放射状に流動させればウェルドラインの発生を防止することができることから、複数個のピンゲート87からゲートランド89に成形材料を供給することも考えられる。
ここで、フィルムゲート88の厚さG1として例えば0.3mm、ゲートランド89の厚さG2として例えば2mmに構成することができる。また、フィルムゲート88の長さL(軸方向長さ)として例えば3mmに構成することができる。
ところで、後述するように、フィルムゲート88の厚さG1として採るべき値は、成形材料によって異なることが実験によりわかった。
ポリプラスチックス株式会社製のPOM(ポリアセタール)樹脂、同社製のPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、および旭化成株式会社製のPA(ポリアミド)樹脂66のそれぞれについてグレードおよびフィルムゲート88の厚さG1を変えて実験した結果を表1〜表3に示す。
Figure 2005343111
Figure 2005343111
Figure 2005343111
各表において、フィルムゲート88を通過せずに充填できなかった場合に××、ウェルドラインが発生した場合に×、ウェルドラインが発生せずに充填できた場合に○の記号を付している。
表1〜表3によれば、フィルムゲート88の厚さG1はナチュラル材で0.2〜0.4mm、ミネラル、ガラス繊維、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂)、ウィスカーなどを含む複合剤においては0.3〜0.5mmが適し、含有量が40%を超えるものは0.5〜0.6mmが適していると言える。
なお、ギヤの成形材料として、上記のものの他に、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)を使用することもできる。また、これらの樹脂に摺動性や耐磨耗性を向上させた複合樹脂であっても良い。
ここで、例えば、ピンゲート87を1つ設ける場合には、ピンゲート87の位置関係でフィルムゲート88におけるピンゲート87側とその反対側とで成形材料の充填に偏り(充填時間の差)が生じ、ピンゲート87の反対側の充填が遅れるといった事態の発生が考えられる。さらには、温度等の条件によってはその偏りが大きくなる可能性があるとも考えられる。このような偏りが大きくなると、成形材料がフィルムゲート88から放射状にキャビティ83内に注入されずに、キャビティ83内で成形材料が回り込むという現象が生じ、その結果として成形品にウェルドラインが生じる可能性が高い。
したがって、成形品を製造するときには、成形材料がフィルムゲート88を通過してからキャビティ83内においてどのように流動するかの解析を、フィルムゲート88の厚さG1、成形材料、樹脂温度、金型温度又は射出時間等を変えながら行うことも重要であると言える。
なお、ウェルドラインが成形品の内部に形成されると、その部分の強度が低下するが、ウェルドラインが表面上に形成された場合には、外見上はともかくとして強度等に大きな影響はないと考えられることから、ウェルドラインが発生する場合であってもその発生個所についてまで考慮する必要がある。
次に、ウォームホイール62(62Y,62M,62C,62K)の構造について説明する。
図4は、図2の成形用金型80により成形された樹脂部品90の形状を示す断面図であり、断面部分を斜線で示している。樹脂部品90は、成形用金型80のキャビティ83(図2参照)により成形され、外周面91aにヘリカルギヤが形成されているリング状の本体部91と、成形用金型80のフィルムゲート88により成形されたフィルムゲート部分92と、成形用金型80のゲートランド89により成形されたゲートランド部分93と、樹脂部品90の中心部に軸方向に同径で延びる貫通穴94と、キャビティ83の肉抜き部分83cに対応して成形された凹部95とを有する。成形用金型80により成形された樹脂部品90は、フィルムゲート部分92およびゲートランド部分93が一体化されたもので、これによってウォームホイール62(62Y,62M,62C,62K)(図1参照)が製造される。
なお、図示はしないが、所望形状の成形用金型内に、金属製のシャフト(丸型シャフト等)を挿入し、この成形用金型に樹脂を充填して、シャフトの周囲に略円筒形状の素形部分を形成した後に、このシャフトの両端を支持し、樹脂の素形部分に切削加工による歯切り加工で、ウォームホイール62のギヤ形状を形成するように構成することもできる。この場合に、歯切り加工の代わりに、上述した実施の形態のように、ウォームのギヤ歯面を成形用金型による成形で形成することもできる。
ウォームホイール62の製造に際しては、フィルムゲート部分92およびゲートランド部分93を、除去せずにあえて残したままにしている。すなわち、フィルムゲート部分92およびゲートランド部分93を積極的に部品の一部として利用している。このような利用態様は、例えば樹脂ベアリング等の部品にも適用することができる。当然ながら、このような利用態様は、例えば隣接する部品との干渉がない等の部品の使用環境が許されることが前提となる。
このような利用態様により、次のような効果が考えられる。
(1)フィルムゲート部分92およびゲートランド部分93は、本体部91の一端面91bに円周方向の全周にわたって設けられたリブと見ることができ、本体部91の強度向上に寄与する。
(2)フィルムゲート部分92およびゲートランド部分93は、本体部91から軸方向に延在していることから、貫通穴94に図示しないシャフトを嵌合させて部品として使用するとき等には、軸方向に関する嵌合長さを確保することができ、両者をより強固に嵌合することができる。
この場合に、フィルムゲート部分92よりも厚さの厚いゲートランド部分93に、例えば図示しないキー溝などの係止部を設けることにより、ウォームホイール62と図示しないシャフトとの嵌合状態をより強固にすることが低コストかつ容易に実現できる。また、ゲートランド部分93に図示しない位置決め部を設けると、ウォームホイール62と図示しないシャフトとの位置決めを低コストで行うことができる。
(3)成形用金型80の構造が複雑化するのを防ぐことができる。すなわち、金型内において成形品の一部を切断(剪断)する図示しない摺動コマを設け、成形後の一連の型開き動作で切断してしまうことが可能である(例えば、特開平9−164564号公報参照)。しかしながら、このような摺動コマを金型に設けると、金型側と摺動コマ側との間に所定のクリアランスが必要となる。金型の製造には高い精度(ミクロン単位)が求められることもあり、摺動コマを設けると金型構造が複雑化し、金型の製造コストが高くなる。これに対し、摺動コマを設けないときにはそのような制約がなく、金型構造を簡便にすることができる。
本実施形態のウォームホイール62は、本体部91の外径が例えば60mm以下であり、貫通穴94の内径は例えば8mm、ゲートランド部分93の外径は例えば15mmである。
本実施形態のウォームホイール62には、同径の貫通穴94を設けているが、内径が異なる穴を設けて段付き穴とすることも考えられる。また、本実施形態では、中心軸に貫通穴94を設けたウォームホイール62について説明したが、本発明はこれに限られず、中心穴を有しない部品についても適用することができる。すなわち、本発明は、外形が略円形状の断面を有する部品であれば適用することができる。
図4に示すフィルムゲート部分92およびゲートランド部分93を樹脂部品90の本体部91に残したままでは部品の使用環境が許されない場合等には、成形後に本体部91からフィルムゲート部分92およびゲートランド部分93を除去した状態に加工する。
本実施の形態が適用される感光体ドラム駆動機構を説明するための図である。 ウォームホイールの製造に用いる成形用金型の構造を示す断面図である。 成形用金型内における溶融樹脂の流れを説明するための図である。 成形用金型により成形された樹脂部品の形状を示す断面図である。
符号の説明
72(72Y,72M,72C,72K)…ウォームギヤ、80…成形用金型、81…固定側型板、82…可動側型板、83…キャビティ、83a…ヘリカルギヤ歯面、83b…貫通穴、83c…肉抜き部分、85…コアピン、86a,86b…スライドコア、87…ピンゲート、88…フィルムゲート、89…ゲートランド、90…樹脂部品、91…本体部、92…フィルムゲート部分、93…ゲートランド部分、94…貫通穴

Claims (10)

  1. 互いに開閉し型締め時に相互間に、外形が略円形状の断面を有するキャビティを形成する複数の型体と、
    前記複数の型体のいずれか1つに、前記キャビティにおける略円形状の円周方向の全周にわたって設けられ、当該キャビティ内に溶融樹脂を絞って注入するためのフィルムゲートと、
    前記キャビティ内に注入される溶融樹脂を供給するピンゲートと、
    前記フィルムゲートと前記ピンゲートとの間で溶融樹脂の流路の一部を構成し、当該フィルムゲートの流路隙間よりも大きな流路隙間を有するゲートランドと
    を含む成形用金型。
  2. 前記複数の型体で形成されるキャビティにより成形される樹脂部品は、当該キャビティの前記断面における中心部に貫通穴を有するリング形状であることを特徴とする請求項1に記載の成形用金型。
  3. 前記ゲートランドは、前記フィルムゲートに沿って全周にわたって設けられていることを特徴とする請求項1に記載の成形用金型。
  4. 成形用金型で成形されたリング状樹脂部品であって、
    前記成形用金型によって形成されたキャビティにより成形されたリング状の本体部と、
    前記キャビティ内に溶融樹脂を絞って注入するためのフィルムゲートにより前記本体部の一端面に全周にわたって延在するように成形されたリブ状のフィルムゲート部分と、
    前記フィルムゲートから前記キャビティ内に注入される溶融樹脂が充填されるゲートランドにより成形され、前記フィルムゲート部分よりも厚肉のゲートランド部分と
    を含むリング状樹脂部品。
  5. 前記ゲートランド部分が前記フィルムゲート部分に沿って全周にわたって設けられていることを特徴とする請求項4に記載のリング状樹脂部品。
  6. 前記本体部と前記フィルムゲート部分と前記ゲートランド部分の各内周面を、中心軸に沿って延びる貫通穴にて構成したことを特徴とする請求項5に記載のリング状樹脂部品。
  7. 前記本体部は、ギヤが形成される素形部分を外周面に有することを特徴とする請求項4に記載のリング状樹脂部品。
  8. 前記ゲートランド部分に、組み付けするシャフトと係止する係止部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のリング状樹脂部品。
  9. 略円柱形状の中心部に軸方向に延びる貫通穴を有するリング状樹脂部品を製造する方法であって、
    前記リング状樹脂部品を成形するための空間であるキャビティ内に溶融樹脂を注入する流路の一部を構成する充填領域に溶融樹脂が充填され、
    前記充填領域における流路隙間よりも狭い流路隙間が前記リング状樹脂部品における円周方向の全周にわたって設けられた絞り部を経由して、当該充填領域に充填された溶融樹脂が前記キャビティ内に注入されることを特徴とするリング状樹脂部品の製造方法。
  10. 前記キャビティにより成形されたリング状樹脂部品から、前記充填領域により成形された部分と前記絞り部により成形された部分とを除去することを特徴とする請求項9に記載のリング状樹脂部品の製造方法。
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