JP2005326407A - キャピラリー電気泳動によりタンパク質を分離する改良方法とキャピラリー電気泳動用バッファー組成物 - Google Patents

キャピラリー電気泳動によりタンパク質を分離する改良方法とキャピラリー電気泳動用バッファー組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】
リポタンパク質成分を含むタンパク質成分を含有する試料を分析するためのアルカリ性pHでの自由溶液キャピラリー電気泳動方法の改良および改良されたキャピラリー電気泳動用バッファー組成物を提供する。
【解決手段】
分析用バッファーを含むキャピラリー管中に試料を導入する少なくとも一の工程を含み、上記分析用バッファーがリポタンパク質成分と疎水的相互作用をして電気泳動移動度を変更可能な少なくとも一のアニオン性界面活性剤系添加剤を更に含有させる。 本発明はまたキャピラリー電気泳動用の組成物とタンパク質成分を分析するためのキットにも関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、試料中にリポタンパク質が存在する場合において、キャピラリー電気泳動法によりタンパク質及びペプチドを分離する方法並びに上記分離に使用される添加剤を含有するバッファー組成物に関する。
分析目的、特に診断目的での血清などの生物学的液体中のタンパク質の量の分析は知られ、通常は、ゲル電気泳動とキャピラリー電気泳動の双方を使用する電気泳動法によってタンパク質は分離される。キャピラリー電気泳動法の利点の一つは、分析に必要とされる生物学的液体が非常に少量でよいという点にある。更に、この方法を使用した分離は、分離中に試料を過度に加熱しないで高電圧を使用できるならば、非常に迅速にできる。
血清タンパク質を分離する場合、キャピラリー電気泳動は一般的にアルカリ性バッファーを用いて実施される。通常、得られるタンパク質特性(プロファイル)はタンパク質成分に対応する5ないし6の画分、つまり、アルブミン画分、α-及びα-画分、β-画分又はβ-及びβ-画分、及びγ-グロブリン画分を含んでいる。これらの画分の各々が一又は複数の血清タンパク質を含んでいる。
このような分離は、キャピラリー電気泳動及び分析用バッファー、米国再発行特許第36011号、特に欧州特許出願公開第0518475号、同第1229325号又は同第1258724号に記載されたもののような技術を使用して実施することができる。
しかしながら、血清タンパク質の分離はしばしば満足できないものであった。
実際、「タンパク質成分」なる用語はここではタンパク質成分、つまり、α-;α-;β-又はβ-及びβ-;及びγ-グロブリン画分だけでなく、リポタンパク質成分、主として「高密度リポタンパク質」、「低密度リポタンパク質」及び「超低密度リポタンパク質」に対してHDL、LDL及びVLDLとも呼ばれているα-リポタンパク質、β-リポタンパク質及びプレ-β-リポタンパク質をも意味する。α-及びα-グロブリン及びβ-グロブリンに対応する特性ゾーンに出現する主としてβ-リポタンパク質及びプレ-β-リポタンパク質のようなリポタンパク質のために、特性はしばしば不正確である。
しかして、本出願人は、分析用バッファーに添加剤としてアニオン性界面活性剤を使用すると分離を改善することができ、特に電気泳動特性のα-及びα-及びβ-グロブリン領域において純粋な特性を得ることができることを実証した。上記添加剤は、一又は複数のリポタンパク質成分、特にリポタンパク質の疎水性残基と疎水的相互作用をなし得るアニオン性界面活性剤から選択される。添加剤はリポタンパク質成分又は成分群に一又は複数の負の電荷を供給しうる。添加剤は電気泳動移動度を、他のタンパク質成分のものに対して変更し、特に低減しうる。
本発明に使用される上記添加剤の濃度が低い場合、つまり他の用途の場合に添加剤に用いられる濃度に対して添加剤の濃度が低い場合、キャピラリー電気泳動で得られる特性は、特にα-及びα-画分に関して、実施例から明らかなように、肩は別にして、非常に弱いピークを提示することがある。これは、特に高脂血血清の特性の活用に対しては非常に興味深いことであり、正常脂血試料の分析に対してもある程度の興味を等しくもたらす。
よって、本発明は、リポタンパク質成分又は成分群を含むタンパク質成分を含有する試料を分析するためのアルカリ性pHでの自由溶液キャピラリー電気泳動方法に関し、試料は分析用バッファーを含むキャピラリー管中に導入され、上記分析用バッファーは一(又は複数)のリポタンパク質成分(群)と疎水的相互作用可能な少なくとも一のアニオン性界面活性剤系添加剤を更に含有する。上記添加剤は上記リポタンパク質成分又は成分群に一又は複数の負電荷を供給可能であり、よって電気泳動移動度を他の非脂血タンパク質成分の移動度に対して変更する。
一般に、上記工程には、移動によるタンパク質成分の分離と、成分の検出が続く。
本発明はまた分析用バッファー中に少なくともアルブミン及びα-、α-、及びβ-グロブリン画分並びにリポタンパク質を含む試料のタンパク質成分を、電気泳動によって分離する方法にも関し、分析用バッファーは、リポタンパク質と疎水的相互作用をなし得る少なくとも一のアニオン性界面活性剤系添加剤を更に含有する。
本発明はまた液体試料のタンパク質成分をアルカリ性pHでの自由溶液キャピラリー電気泳動法によって電気泳動分離する方法であって、上記成分を含む試料が、リポタンパク質と特異的に相互作用をなし得る添加剤を更に含有する分析用バッファーを含むキャピラリーを通過させられ;添加剤が、C10からC20のアルキル鎖のような疎水性部分と、9を越えるpHで強い負電荷を供給するアニオン部分を含むアニオン性界面活性剤でありうる方法にも関する。
アニオン性界面活性剤系の添加剤は、アルブミン又は他の非脂質タンパク質成分との相互作用が弱いままで、特にリポタンパク質に集中するように(ここでは「リポタンパク質特異的」と呼ぶ)、バッファー中で低濃度で使用される。そのようなリポタンパク質特異的相互作用に対しては、アニオン性タイプの界面活性剤添加剤を低濃度で使用することが好ましい。各アニオン性界面活性剤に対しては、上記濃度は、一部はリポタンパク質に対するその親和性に、一部はアルブミン又は他の非脂質タンパク質成分に対するその親和性に依存する。よって、最適な濃度は各界面活性剤によって異なる。濃度はバッファー中、1mM未満のオーダー、例えば0.001mMから0.2mMのオーダー、好ましくは0.01mMより多く0.1mM未満、例えば0.01mMから0.09mMの範囲であってよい。
本出願人は、特にSDSに対して、約0.05mMの濃度がリポタンパク質成分の十分なシフトに関与せず、0.2mMを超える濃度で、特性が変わる(0.25mMでβ画分の減少とα画分の変形、及び0.5mMの濃度で、完全に変わった特性さえ得られる)。
従って、リポタンパク質と特異的な疎水的相互作用をなし得る本発明のキャピラリー電気泳動分析用バッファー用の添加剤として使用される化合物は、MECC(ミセル動電キャピラリークロマトグラフィー)に使用されるもののようなアニオン性界面活性剤でありうるが、臨界ミセル濃度よりも実質的に低い濃度でである。本発明において、上記化合物は上に示した自由溶液CEにおいて使用され、リポタンパク質には、上記リポタンパク質の疎水性残基と上記化合物の疎水性部分の疎水的相互作用によって負の電荷が供給され、上記リポタンパク質の移動度を他のタンパク質の移動度に対して遅くする結果になる。一つの結果は、α-、α-、及びβ画分の分離の改善であり、リポタンパク質はそれらが通常移動する領域、つまりα-、α-、及びβ領域を越えて移動する。それらはまた欧州特許出願公開第1229325号に記載された濃度よりも低い濃度で使用される。
更に、本発明は、許容可能な担体(支持体)中に、少なくとも一のバッファーと、リポタンパク質をそれらが通常移動する領域を越えて、特に画分α-、α-、及びβ画分を越えて移動させることが可能な上述のアニオン性界面活性剤系添加剤を含有するキャピラリー電気泳動用の電解質組成物に関する。
実施例に示されるように、本発明の添加剤の使用により、リポタンパク質をその通常の領域を越えて移動させることによりα-、α-、及びβ画分の大いに改善された分離が可能になる。よって、通常のバッファーを用いて実施される分析と比較すると、血清タンパク質の定量分析の速度と精度を改善することができる。添加剤はβ-リポタンパク質及びプレ-β-リポタンパク質に富む生物学的試料の分析に特に有利である。
最後に、本発明は、少なくとも一の分析用バッファーと、リポタンパク質をそれが通常移動する領域を越えて、特にα、α及びβ画分の領域を越えて移動させ得る、及び/又はC10からC20のアルキル鎖等の疎水性部分と、9を越えるpHで強い負電荷を供給するアニオン性部分を含むアニオン性界面活性剤系添加剤;及び/又はキャピラリー洗浄用の一又は複数の溶液、及び/又は希釈セグメント及び/又は分析する試料のための一又は複数の希釈剤を含む、生物学的試料中のタンパク質成分を分析するためのキットに関する。このキットでは、バッファーと添加剤と希釈剤は即時混合のために別個に保存してもよいし、又はそれらは混合物として保存されてもよい。上記キットは分析を実施するための指示書を含んでいてもよい。
本発明の更なる特徴及び利点は次の詳細な説明と実施例並びに添付図から明らかになるであろう。
キャピラリー電気泳動(CE)を実施するための条件は当該分野で知られている。それらは通常キャピラリーを洗浄溶液で洗浄し、分析用バッファーで洗浄し、場合によっては試料を一又は複数回希釈し、試料を注入し、移動させ検出することからなりうる。上記工程は自動機器を使用して実施することができる。
キャピラリー電気泳動を実施するための条件は、例えばCapillarys(セビア)自動機器を用いて実施するのに適した条件である。
アルカリ性pHで強い負の電荷を供給するアニオン極とリポタンパク質の疎水性部分と相互作用をなすことが可能な疎水性部分を含む化合物は、本発明に係るバッファーの添加剤として使用することができる。
疎水性アルキル鎖は、少なくとも10の炭素原子、特に10から20の炭素原子の少なくとも一の線形部分を有する、分岐していてもしていなくともよい少なくとも一のC10からC24のアルキル鎖からなりうる。当業者には直ぐに分かるように、上記疎水性部分はその疎水性を本質的に変えない残基又は官能基を含んでいてもよい。
アニオン極は次のリストからの一又は複数の基又は化学官能基によって構成されうる:スルホネート、カルボキシレート、サルフェート及びホスフェート。
特に、次のものを挙げることができる:C10−C24アルキルモノ-、ジ-、又はトリ-サルフェート、C10−C24アルキルモノ-、ジ-、又はトリ-スルホネート、C10−C24アルキルモノ-、ジ-、又はトリ-カルボキシレート、C10−C24アルキルモノ-、ジ-、又はトリ-ホスフェート、及びC10−C24アルキルカルボキシ-スルホネート、-サルフェート及び-ホスフェート、特にC10からC24のアルキルサルフェート等のアニオン性界面活性剤。
上記のジ-又はトリ-カルボキシレート、ジ-又はトリ-スルホネート、ジ-又はトリ-サルフェート及びジ-又はトリ-ホスフェート及びカルボキシ-スルホネート、-サルフェート及び-ホスフェートはよって10から24の炭素原子を含むアルキル鎖上での一又は複数のカルボキシレート、スルフェート、スルホネート、又はホスフェート官能基の組合せである。
上に引用したものの中で好適なアニオン性界面活性剤はC10−C24モノアルキルサルフェート、特にC10からC20のアルキルサルフェート、中でもC10からC16のアルキルサルフェートである。
上記化合物はそれ自体は公知であり商業的に入手できる。それらは酸の形態又は塩の形態、特にアルカリ金属塩の形態であり得る。
ドデシルサルフェートが特に好ましく、より正確にはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。
上記の名称において、アルキル基は好ましくは線形である。
上述のアニオン性界面活性剤系添加剤はまた混合物として使用することもできる。
更に、アニオン性界面活性剤系添加剤は、有利には欧州特許出願公開第1229325号に記載されたようにα-グロブリンとアルブミンの間の距離を改善することによってアルブミンと相互作用することが知られている他の添加剤の存在下で使用することができる。
アルブミンと相互作用する欧州特許出願公開第1229325号に挙げられている好適な添加剤はCからC10のアルキルスルホネートであり、これらCからC10のアルキルスルホネートのうち、オクタンスルホネートが特に好ましいが、それは、それがα-グロブリンとアルブミンの間の分離のため特性の明確さを実質的に改善するからである。
「本発明に係る試料」という用語は、例えば適切な希釈溶液又は分析用バッファーで前もって希釈されているか、又は純粋な、分析される生物学的試料を意味する。
健常な又は病気に罹っている患者の任意の液体生物学的試料を分析することができる。よって、ヒトの液体生物学的試料は正常な又は異常な血清、並びに、溶血血液、血漿、尿又は脳脊髄液でありうる。ヒトの生物学的試料に加えて、動物由来の試料もまた分析することができる。試料はまた合成タンパク質であってもよく、その場合、本発明の方法は例えば生産コントロールを標的とすることができる。
本発明の添加剤は血清の分析とヒト試料中の血清タンパク質の分離に特に使用される。
血清試料では、分離される血清タンパク質はアルブミン及びα-;α-;β(又はβ-及びβ-);及びγ-グロブリン画分、及びα-リポタンパク質、β-リポタンパク質及びプレ-β-リポタンパク質、特にβ-リポタンパク質及びプレ-β-リポタンパク質である。上記命名は上記クラスの全てのサブタイプのタンパク質成分を含む。
分析用バッファーは所望の分離と電気泳動一般、特にキャピラリー電気泳動に適した任意の既知の分析用バッファーでありうる。挙げることができる例は、ボレート、ホスフェート及びカーボネートバッファー、アミノ酸系バッファー及び生物学的バッファーである。特に、CapillarysB1B2+バッファー(セビア)を用いることができる。
挙げることができる生物学的バッファーは、ビス-TRIS(2-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)、ADA(N-[2-アセトアミド]-2-イミノ二酢酸)、ACES(2-[2-アセトアミノ]-2-アミノエタンスルホン酸)、PIPES(1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸)、MOPSO(3-[N-モルホリノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、ビス-TRIS PROPANE(1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノプロパン])、BES(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]-2-アミノエタンスルホン酸)、MOPS(3-[N-モルホリノ]プロパンスルホン酸)、TES(2-[2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチルアミノ]エタンスルホン酸)、HEPES(N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン)酸)、DIPSO(3-N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン)酸)、MOBS(4-N-モルホリノブタンスルホン酸)、TAPSO(3[N-トリス-ヒドロキシメチル-メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TRIS(2-アミノ-2-[ヒドロキシメチル]-1,3-プロパンジオール)、HEPPSO(N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N'-[2-ヒドロキシプロパンスルホン]酸)、POPSO(ピペラジン-N,N'-ビス[2-ヒドロキシプロパンスルホン]酸)、TEA(トリエタノールアミン)、EPPS(N-[2-ヒドロキシエチル]-ピペラジン-N'-[3-プロパンスルホン]酸)、TRICINE(N-トリス[ヒドロキシメチル]メチルグリシン)、GLY-GLY(ジグリシン)、BICINE(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]-グリシン)、HEPBS(N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N'-[4-ブタンスルホン]酸)、TAPS(N-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン]酸)、AMPD(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール)、TABS(N-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-4-アミノブタンスルホン酸)、AMPSO(3-[(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、CHES(2-(N-シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)、CAPSO(3-[シクロヘキシルアミノ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸)、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)、CAPS(3-シクロヘキシルアミノ-1-プロパンスルホン酸)又はCABS(4-[シクロヘキシルアミノ]-1-ブタンスルホン酸)、好ましくはAMPD、TABS、AMPSO、CHES、CAPSO、AMP、CAPS又はCABSとして知られているバッファーである。
アルカリ性pHでのキャピラリー電気泳動法において、分析用バッファーのpHは8から12の範囲、好ましくは9から11の範囲、より好ましくは約10の値である。
本発明の分析用バッファーはまたpHを調節する少なくとも一の化合物を含んでいてもよい。使用することができるpH調節剤の例は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化フランシウム、アルキル部分に1から8の炭素原子を含む水酸化モノ-、ジ-、トリ-又はテトラ-アルキルアンモニウムから選択される化合物である。
本発明によれば、分析用バッファーは通常の条件下で通常の濃度、つまり10から500mM、好ましくは20から400mMのオーダーの濃度で使用される。
本発明の添加剤は上述の濃度で使用され、これはそのアルブミンとの相互作用の点において欧州特許出願公開第1229325号に記載された濃度と比較すると低い。一般に、濃度は、0.001から0.2mM、好ましくは0.01mMから0.09mMのオーダーにあり、SDSの場合は、アルブミン又は他の非脂質タンパク質成分との相互作用を余りに大きくするもの、つまり特性を余りに大きく乱すものよりも少ない。
アルブミンと相互作用することが知られているより特定の添加剤は、分析用バッファー中のその臨界ミセル濃度を越えないでではあるが、0.1mMから500mMの濃度で使用される。この臨界ミセル濃度値は界面活性剤である添加剤の場合に有効である。
オクタンスルホネートが使用される場合、バッファー中のその濃度は1から10mM、好ましくは2.5から5mMのオーダーである。
SDSの存在下でのその使用は、特にアルブミン領域においてピーク移動に対するSDSの作用を無効にしうる。
更に、バッファーはイオン強度を増加させることができる一又は複数の添加剤を含みうる。
挙げることができる電解質のイオン強度を増加させることができるバッファーの上記添加剤の例は、アルカリ金属の塩化物、硫酸塩、スルホン酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩、フッ化物及びリン酸塩並びにその混合物から選択される化合物である。これらの中で、アルカリ金属の塩化物、硫酸塩又はスルホン酸塩とその混合物が好ましい。
より好ましくは、硫酸塩が使用される。好ましくは、ナトリウム、リチウム又はカリウム塩が選択される。上に挙げた添加剤の中で、硫酸ナトリウム及び/又はリチウムが好ましい。
本発明のバッファー組成物は、分析用バッファー組成物に対して通常の方法、すなわち希釈される固体形態又は液体形態の成分を許容可能な担体に加えることによって調製される。担体は、通常は、蒸留されていても又は脱塩されていてもよい水である。
キャピラリーに使用される材料はキャピラリー電気泳動において通常のものである。よって、溶融シリカキャピラリーを使用することができる。その内径は5から2000μmとすることができる。好ましくは、200μm未満、より好ましくは100μm未満の内径を持つキャピラリーを使用することができる。好ましくは、未処理の内面を持つキャピラリーが使用される。当業者であれば、キャピラリーの性質とそのサイズを分析要件に適合させることができるであろう。
方法と装置
A)キャピラリー電気泳動
内径25ミクロンの溶融シリコンキャピラリーを装備したCE装置を使用して臨床試料のキャピラリー電気泳動を実施した。検出は200nmで実施した。試料をCapillarys装置(セビア)の試料トレイに配し、流体駆動注入によって自動的に注入した。試料の分離を約400V/cmの電場を印加することによって5分以内で実施した。0.25Mの水酸化ナトリウムと次に分析用バッファーを使用して各分析前にキャピラリーを洗浄した。
分析用バッファー:
使用した化学薬品は分析用等級のものとした。
5.1gの水酸化ナトリウム(モル質量:40.0g/mol)と共に、1リットルの脱塩水中に9.3gのホウ酸(モル質量:61.83g/mol)を溶解させることによって、150mMのボレートバッファーを調製した。最終濃度は150mMでpHは10.0であった。
B)臨床試料:
CEに対しては、分析用バッファー中でヒト血清を1/5まで希釈した。
実施例1(比較例)
ボレート分析用バッファーを上述のようにして調製した。
高脂血症のヒト血清(トリグリセリド:5.73g/l)に対して上述の方法を使用して電気泳動を実施した。
図1から分かるように、得られた電気泳動図は、左から右に、それぞれアルブミン、α、α、β、β及びγ-グロブリン画分に帰す6つの連続ピークを有している。
Figure 2005326407
実施例2
実施例1の分析用バッファーに0.07mMの濃度でSDSを添加した。
実施例1に記載されたようにして電気泳動を実施した。
図2から分かるように、得られた電気泳動図は、左から右に、それぞれアルブミン、α、α、β、β及びγ-グロブリン画分に帰す6つの連続ピークを有している。実施例1と比較すると、二つの画分間の分離が改善されていることが分かる。α-1ピーク(プレβ-リポタンパク質に相当)上の肩として矢印が付されたピークは特性から除去された。
Figure 2005326407
実施例3
正常脂血ヒト血清(トリグリセリド:1.10g/l)の電気泳動を、0.00;0.05;0.07及び0.25mMの濃度でバッファーにSDSを添加して前の実施例と同じようにして実施した。
得られたこれらの電気泳動図は、左から右に、それぞれアルブミン画分及びα-、α-、β-、β-及びγ-グロブリン画分に帰す6つの連続ピークを示す。以下の表は得られた結果を表す。
Figure 2005326407
実施例4
高脂血ヒト血清(トリグリセリド:5.63g/l)を用いて実施例3と同じ方法を使用する。得られたこれらの電気泳動図は、左から右に、それぞれアルブミン画分及びα-、α-、β-、β-及びγ-グロブリン画分に帰す6つの連続ピークを示す。以下の表は得られた結果を表す。
Figure 2005326407
欧州特許出願公開第1229325号に従うバッファーを使用してキャピラリー電気泳動によって分析されたヒト血清の電気泳動図を示す。 同じバッファーであるが本発明のアニオン性界面活性剤を含有するキャピラリー電気泳動によって分析された同血清の電気泳動図を示す。 図3A、3B、3C及び3Dは、0;0.05;0.07及び0.25mMのSDSがそれぞれ添加された同じバッファーを使用したECによる同じ正常脂血血清の電気泳動図を表す。 図4A、4B、4C及び4Dは、0;0.05;0.07及び0.25mMのSDSがそれぞれ添加された同じバッファーを使用したECによる同じ高脂血血清の電気泳動図を表す。

Claims (28)

  1. 一又は複数のリポタンパク質成分を含むタンパク質成分を含有する試料を分析するためのアルカリ性pHでの自由溶液キャピラリー電気泳動方法において、分析用バッファーを含むキャピラリー管中に試料を導入する少なくとも一の工程を含み、上記分析用バッファーがリポタンパク質と疎水的相互作用をして電気泳動移動度を他のタンパク質成分の移動度に対して変更可能な少なくとも一のアニオン性界面活性剤系添加剤を更に含有し、バッファー中の添加剤の濃度が0.001mMから0.2mMの範囲にある方法。
  2. 移動によって成分を分離し、上記成分を検出することを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 試料が生物学的試料であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 試料が血清、溶血血液、血漿、尿又は脳脊髄液の試料である、請求項1ないし3の何れか一項に記載の方法。
  5. 試料が血清成分であることを特徴とする、請求項1ないし4の何れか一項に記載の方法。
  6. 成分が、アルブミン、α-、α-、β-又は(β-及びβ-)、γ-グロブリン画分であり、リポタンパク質成分がα-リポタンパク質、β-リポタンパク質及び/又はプレ-β-リポタンパク質であることを特徴とする、請求項1ないし5の何れか一項に記載の方法。
  7. 上記添加剤が9を越えるpHでアニオン極と疎水性部分を含むことを特徴とする、請求項1ないし6の何れか一項に記載の方法。
  8. 上記添加剤が、少なくとも10の炭素原子を含む線形部分を有する、分岐していてもしていなくともよい少なくとも一のC10からC24のアルキル鎖からなる疎水性部分と、スルホネート、カルボキシレート、サルフェート及びホスフェートから選択される一又は複数の基によって構成されるアニオン極を含むことを特徴とする、請求項1ないし7の何れか一項に記載の方法。
  9. 上記添加剤が、C10−C24アルキルモノ-、ジ-、又はトリ-サルフェート、C10−C24アルキルモノ-、ジ-、又はトリ-スルホネート、C10−C24アルキルモノ-、ジ-、又はトリ-カルボキシレート、C10−C24アルキルモノ-、ジ-、又はトリ-ホスフェート、及びC10−C24アルキルカルボキシ-スルホネート、-サルフェート及び-ホスフェート、特にC10からC24のアルキルサルフェート等のアニオン性界面活性剤から選択されることを特徴とする、請求項1ないし8の何れか一項に記載の方法。
  10. 添加剤が、C10からC20のアルキルサルフェートであることを特徴とする、請求項1ないし9の何れか一項に記載の方法。
  11. 添加剤がドデシル硫酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項1ないし10の何れか一項に記載の方法。
  12. バッファー中の添加剤の濃度が0.01mMから0.09mMの範囲にあることを特徴とする、請求項1ないし11の何れか一項に記載の方法。
  13. バッファー中の添加剤の濃度が0.07mMのオーダーであることを特徴とする、請求項1ないし12の何れか一項に記載の方法。
  14. バッファーがオクタンスルホネート系添加剤を1mMから10mM、好ましくは2.5から5mMの範囲の濃度で上記バッファー中に更に含有することを特徴とする、請求項1ないし13の何れか一項に記載の方法。
  15. 上記分析用バッファーのpHが9から11の範囲にあることを特徴とする、請求項1ないし14の何れか一項に記載の方法。
  16. キャピラリーが溶融シリカから形成されていることを特徴とする、請求項1ないし15の何れか一項に記載の方法。
  17. 分析用バッファーが少なくとも一のpH調節剤を更に含有することを特徴とする、請求項1ないし16の何れか一項に記載の方法。
  18. pH調節剤が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化フランシウム、アルキル部分に1から8の炭素原子を含む水酸化モノ-、ジ-、トリ-又はテトラ-アルキルアンモニウムから選択されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
  19. リポタンパク質とバッファー中のα-、α-、β-グロブリン画分を含む試料のタンパク質成分とリポタンパク質を電気泳動法によって分離する方法であって、上記成分を含む試料がリポタンパク質と疎水的相互作用をなし得る少なくとも一の添加剤を更に含有する分析用バッファーを含むキャピラリーを通過させられ、バッファー中の添加剤の濃度が0.001mMから0.2mMの範囲にある方法。
  20. 液体試料のタンパク質成分をアルカリ性pHでの自由溶液キャピラリー電気泳動法によって電気泳動分離する方法であって、上記成分を含む試料が、リポタンパク質と疎水的相互作用をなし得、少なくとも一の添加剤を更に含有する分析用バッファーを含むキャピラリーを通過させられ、添加剤が、9を越えるpHで負に荷電したアニオン極と少なくとも一のC10からC20のアルキル鎖を含む疎水性部分を含む化合物であり、バッファー中の添加剤の濃度が0.001mMから0.2mMの範囲にある方法。
  21. 分析用バッファーが硫酸ナトリウム又は硫酸リチウムを更に含有することを特徴とする、請求項1ないし20の何れか一項に記載の方法。
  22. 少なくとも一のバッファーと、適した担体中にリポタンパク質と疎水的相互作用をなし得る少なくとも一の添加剤をまた含有し、バッファー中の添加剤の濃度が0.001mMから0.2mMの範囲にあることを特徴とする、キャピラリー電気泳動用の電解質組成物。
  23. 少なくとも一の分析用バッファーと、10の炭素原子を含む少なくとも一の線形鎖を有する、分岐していてもしていなくともよい少なくとも一のC10からC24のアルキル鎖からなる疎水性部分と、スルホネート、カルボキシレート、サルフェート及びホスフェートから選択される一又は複数の基によって構成されるアニオン極を含む少なくとも一の添加剤を含有し、バッファー中の添加剤の濃度が0.001mMから0.2mMの範囲にあることを特徴とする、キャピラリー電気泳動用の組成物。
  24. 上記添加剤が、C10−C24アルキルモノ-、ジ-、又はトリ-サルフェート、C10−C24アルキルモノ-、ジ-、又はトリ-スルホネート、C10−C24アルキルモノ-、ジ-、又はトリ-カルボキシレート、C10−C24アルキルモノ-、ジ-、又はトリ-ホスフェート、及びC10−C24アルキルカルボキシモノ-、ジ-、又はトリ-スルホネート、サルフェート及びホスフェート、特にC10からC24のアルキルサルフェート等のアニオン性界面活性剤から選択されることを特徴とする、請求項22又は23に記載のキャピラリー電気泳動用の組成物。
  25. 上記添加剤が、C10からC24のアルキルサルフェートアニオン性界面活性剤及びその混合物から選択されることを特徴とする、請求項22ないし24の何れか一項に記載の組成物。
  26. 上記添加剤が、C10からC16のアルキルサルフェートであることを特徴とする、請求項22ないし25の何れか一項に記載の組成物。
  27. 添加剤がドデシル硫酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項22ないし26の何れか一項に記載の組成物。
  28. 少なくとも一の分析用バッファー、及びリポタンパク質をそれが通常移動する領域を越えて、特にα、α及びβ画分の領域を越えて移動させ得る、及び/又はC10からC20のアルキル鎖等の疎水性部分と、9を越えるpHで強い負電荷を供給するアニオン性部分を含むアニオン性界面活性剤系添加剤;及び/又はキャピラリー洗浄用の溶液、及び/又は一又は複数の適切な希釈剤及び/又は希釈セグメントを含み、バッファー中の添加剤の濃度が、場合によってはバッファーと添加剤を混合した後に、0.001mMから0.2mMの範囲にある、生物学的試料中のタンパク質成分を分析するためのキット。
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