JP2005317492A - 燃料電池、電極−電解質膜接合体、触媒層付き電極基材、それらの製造方法及び転写シート - Google Patents

燃料電池、電極−電解質膜接合体、触媒層付き電極基材、それらの製造方法及び転写シート Download PDF

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Abstract

【課題】 ガス濃度の低下に応じて触媒層の活性成分の利用率を低下させるのを防止して触媒層の無駄を少なくすることができる燃料電池、電極−電解質膜接合体、それらの製造方法及びそれらに用いられる転写シートを提供することにある。
【解決手段】 電極−電解質膜接合体は、イオン伝導性電解質膜に接合される触媒層の厚みを、一定方向に向けて増大又は減少するように変化させたことを特徴とする。電極−電解質膜接合体製造用の転写シートは、触媒層を、転写基材上に設け、触媒層の厚みを一定方向に向けて増大又は減少するように変化させたことを特徴とする。触媒層−電解質膜接合体の製造方法は、前記転写シートを、触媒層が電解質膜に対面するように配置し、加熱プレスを施して転写シートの触媒質を電解質膜に転写することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池、電極−電解質膜接合体、触媒層付き電極基材、それらの製造方法及び転写シートに関するものである。
燃料電池は、電解質膜の両面に触媒層を配置し、水素等の燃料ガスと空気等の酸化ガスの電気化学反応により発電するシステムである。燃料電池は、発電時に発生するのは水のみであり、従来の内燃機関と異なり、二酸化炭素等の環境負荷ガスを発生しない為、次世代のクリーンエネルギーシステムとして注目されている。
固体高分子形燃料電池は、電解質膜層として水素イオン伝導性高分子電解質膜が用いられ、その両面に触媒層を配置して触媒層−電解質膜接合体が形成され、該触媒層−電解質膜接合体の両面に電極基材を接合して電極−電解質膜接合体が形成され、更にこれをセパレータで挟むことによって固体高分子形燃料電池が構成される。
ところで、燃料電池は、反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)はガス供給口から流入し、ガス流路を流れた後にガス排出口から排出されるが、反応ガスの未反応ガス濃度は、下流側に行くほど発電反応によって低下するので、触媒層の活性成分の利用率はガス排出口に近づくほど低下することとなる。
しかしながら、従来の燃料電池の触媒層は厚みが均一な板状に形成され、下流側に行くほど断面積を減少させるようにはなっていなかったので、反応ガスの濃度が低下することによって、触媒層のうち下流側の部位では活性成分の利用率が低くなり、高価な白金微粒子等が利用されず無駄になるという問題があった(例えば、特許文献1)。
特開2000−90944号公報
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところはガス濃度の低下に応じて触媒層の活性成分の利用率を低下させるのを防止して触媒層の無駄を少なくすることができる燃料電池、電極−電解質膜接合体、それらの製造方法及びそれらに用いられる転写シートを提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねて完成されたものである。
1.本発明は、固体高分子形燃料電池に用いられる電極−電解質膜接合体において、イオン伝導性電解質膜に接合される触媒層の厚みを、一定方向に向けて増大又は減少するように変化させたことを特徴とする電極−電解質膜接合体を提供する。
すなわち、該触媒層の活性成分の利用率を低下させないように、触媒層の厚みを変化させた電極−電解質膜接合体を提供する。
2.前記固体高分子形燃料電池は、ガス供給口から流入する反応ガスにて電池反応を行うものであり、イオン伝導性電解質膜に接合される触媒層の厚みを、前記反応ガスの上流側から下流側に行くほど減少させたことを特徴とする請求項1に記載の電極−電解質膜接合体を提供する。
3.一定方向に向けて厚みが増大又は減少するように形成された触媒層を、該触媒層の厚み差を吸収するための厚み吸収層を介して電極基材に積層したことを特徴とする触媒層付き電極基材を提供する。
4.一定方向に向けて厚みが増大又は減少するように形成された触媒層が積層された電極基材の製造方法であって、電極基材に厚み吸収層を積層し、該厚み吸収層の表面に触媒ペーストを塗布することにより前記触媒層を形成することを特徴とする触媒層付き電極基材の製造方法を提供する。
5.一定方向に向けて厚みが増大又は減少するように形成された触媒層を、該触媒層の厚み差を吸収するための厚み吸収層を介して電極基材に積層し、
プレスを施すことにより、前記触媒質を前記厚み吸収層に食い込ませて該触媒層の表面を平滑にすることを特徴とする触媒層付き電極基材の製造方法を提供する。
6.一定方向に向けて厚みが増大又は減少するように形成された触媒層と、電極基材との間に、触媒層の厚み差を吸収するための厚み吸収層を介在させ、前記触媒層の厚み差に相当する部分を前記厚み吸収層に食い込ませることにより、前記電解質膜と接触する側の前記触媒層の表面を平坦化させたことを特徴とする電極−電解質膜接合体を提供する。
7.前記1又は2又は6の電極−電解質膜接合体を組み込んだことを特徴とする燃料電池を提供する。
8.電極−電解質膜接合体を構成する触媒層を、転写基材上に設けた電極−電解質膜接合体製造用の転写シートであって、触媒層の厚みを、一定方向に向けて増大又は減少するように変化させたことを特徴とする電極−電解質膜接合体製造用の転写シート。
9.イオン伝導性電解質膜に接合される触媒層の厚みを、前記反応ガスの上流側から下流側に行くほど減少させたことを特徴とする前記8に記載の電極−電解質膜接合体製造用の転写シート。
10.本発明は、前記8又は9の転写シートを、前記触媒層が電解質膜に対面するように配置し、加熱プレスを施して前記転写シートの前記触媒質を電解質膜に転写することを特徴とする触媒層−電解質膜接合体の製造方法を提供する。
11.前記転写シートを前記電解質膜の両面に配置することを特徴とする前記10に記載の触媒層−電解質膜接合体の製造方法を提供する。
12.プレスを施すことにより、前記触媒質を前記電解質膜に食い込ませて触媒層に生じている厚み差を前記電解質膜に吸収させることを特徴とする前記10又は11に記載の触媒層−電解質膜接合体の製造方法を提供する。
13.前記10から12のいずれかの方法により製造された触媒層−電解質膜接合体の両面に電極基材を配置し、プレスを施して前記電極基材を前記電解質膜に接合することを特徴とする電極−電解質膜接合体の製造方法を提供する。
14.前記3の触媒層付き電極基材を、前記触媒層が電解質膜と対面するように該電解質膜の両面に配設し、プレスを施すことにより、前記触媒層付き電極基材と前記電解質膜とを接合すると共に、前記触媒層の厚み差の部分を前記厚み吸収層に食い込ませることにより、前記電解質膜と接触する側の前記触媒層の表面を平坦化させることを特徴とする電極−電解質膜接合体の製造方法。
15.前記13又は14に記載の方法により電極−電解質膜接合体を製造し、該電極−電解質膜接合体を用いて燃料電池を得ることを特徴とする燃料電池の製造方法を提供する。
本発明の燃料電池、電極−電解質膜接合体及びそれらの製造方法によれば、イオン伝導性電解質膜に接合される触媒層の厚みを、利用される形態に応じて変化させることにより高価な触媒層の無駄を少なくできる。また、前記反応ガスの上流側から下流側に行くほど減少させることにより、該触媒層の活性成分の利用率を低下させないようにしたので、触媒層の必要な触媒材料の量を適正化によって材料費を大幅に節減でき、特に、高価な触媒層の活性成分を節約できるので、燃料電池の製造コストの面で有利になり、しかも、触媒層の各部位での触媒性能を最大に設定することができるので、電池性能を長時間保つことができる。
また、本発明は触媒層の材料や成分濃度を変えることなく、厚みを変えるだけで、触媒層の白金微粒子等の活性成分を効率的に利用することができるので、製造工程が複雑化することがない等の利点がある。
また、前記触媒層の断面積が異なることにより前記触媒質の各部位に生じる厚み差の分を、プレスによって前記電解質膜に食い込ませれば、燃料電池の薄肉化が可能になる。
また、触媒層と、電極基材との間に、触媒層の厚み差を吸収するための厚み吸収層を介在させれば、ガス拡散電極への触媒のしみこみを抑えることができる。また、前記触媒層の厚み差に相当する部分を前記厚み吸収層に食い込ませて前記電解質膜と接触する側の前記触媒層の表面を平坦化させれば、触媒層と電解質膜との密着性を向上させて触媒層−電解質膜間のプロトン伝導性を向上させることができ、さらに、触媒層厚み差を厚み吸収層で吸収させ燃料電池の薄肉化が可能になる。
本発明の電極−電解質膜接合体製造用の転写シートは、活性成分の利用率が各部位でほぼ一定になるように断面積が前記反応ガスの上流側から下流側に行くほど減少した触媒層を、転写基材上に設けたので、プレスを施して触媒層を電解質膜に転写することにより、前記触媒質の各部位に生じる厚み差の分を、電解質膜に食い込ませる工程を容易に実施することができる。
電極−電解質膜接合体製造用の転写シート
図1及び図2のように電極−電解質膜接合体製造用の転写シート1は、転写基材2上に触媒層3を形成して成る。
触媒層3の厚みは、反応ガスの上流側から下流側に行くほど小さくなり、触媒層3の幅Hは全長にわたって同じ寸法となるように設定され、これにより、触媒層3は、反応ガスの下流側に向けて下り階段状にしてその断面積が下流側に行くほど段階的に減少するようになっている。
触媒層3の断面積の減少割合は、反応ガス濃度が低下しても触媒層3の活性成分の利用率が触媒層3の各部位で低下しないでほぼ一定にするという基準により決定される。なお、触媒層3は同一材料で形成され、成分濃度が一定になるように設定されている。
なお、触媒層3を下流側に向けて傾斜させて漸次その断面積を減少させても良い。
図1のようにガス供給口に最も近いところに位置する触媒層3は最大厚を有し、その厚みDmaxは通常10−200μm程度、好ましくは10−100μm程度、より好ましくは15−50μm程度が良い。また、ガス排出口に最も近いところに位置する触媒層3は最小厚を有し、その厚みDminはDmaxの10−90%程度である。なお、図中の矢印は反応ガスの流れ方向を示す。
転写基材2としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラ−ト、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエ−テルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエ−テル・エ−テルケトン、ポリエ−テルイミド、ポリアリレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等の高分子フィルムをあげることができる。
また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパ−フルオロアルキルビニルエ−テル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性樹脂を用いることもできる。
さらに転写基材2は、高分子フィルム以外にア−ト紙、コ−ト紙、軽量コ−ト紙等の塗工紙、ノ−ト用紙、コピ−用紙などの非塗工紙であっても良い。
転写基材2の厚さは、取り扱い性および経済性の観点から通常6〜100μm程度、好ましくは6〜30μm、より好ましくは6〜15μm程度とするのが良い。
従って、転写基材2としては安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレ−ト等がより好ましい。
触媒層3は公知の白金含有の触媒層3(カソード触媒層及びアノード触媒層)である。触媒層3は、触媒粒子を担持させた炭素粒子および水素イオン伝導性高分子電解質を含有する。触媒粒子としては、例えば、白金、白金化合物が挙げられる。白金化合物としては、例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる郡より選ばれる少なくとも一種の金属と白金との合金が挙げられる。
カソード触媒層に含まれる触媒は、通常、白金であり、アノード触媒層に含まれる触媒は、通常、前記金属と白金との合金である。
水素イオン伝導性高分子電解質としては、例えば、パ−フルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC−H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このような水素イオン伝導性高分子電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」、旭硝子(株)製の「Flemion」、旭化成(株)製の「Aciplex」、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」等が挙げられる。
転写基材2上に触媒層3を形成させるに当たっては、触媒粒子を担持させた炭素粒子および水素イオン伝導性高分子電解質を適当な溶剤に混合、分散してペ−スト状にしておき、形成される触媒層3が所望の膜厚になるように、このペ−ストを公知の方法に従い、必要に応じて離型層を介して転写基材2上に塗布するのが良い。
溶剤としては、例えば、各種アルコ−ル類、各種エ−テル類、各種ジアルキルスルホキシド類、水またはこれらの混合物等が挙げられる。
これら溶剤の中でも、アルコール類が好ましい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素数1〜4の一価アルコール、各種の多価アルコール等が挙げられる。
ペ−ストの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ダイコ−タ−、グラビアコ−タ−、スプレ−、スクリ−ン印刷などの一般的にパタ−ニングコ−トできる方法を適用すればよい。
ペ−ストを塗布した後、乾燥することにより、触媒層3が形成される。乾燥温度は、通常40〜100℃程度、好ましくは60〜80℃程度である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは30分〜1時間程度である。
転写基材2上に、厚みの異なる触媒層3を形成する方法としては、例えば、ダイコート方式やスプレー方式にて断続的にペーストの塗出量や塗出時間、ラインスピード等を変えてパターニングコートを行ったり、グラビア版において版深がパターン化されたものを使用し、グラビアコート方式にて塗工量の異なるものを作成したり、スクリーン・グラビアコートにて厚みを厚くしたい部分について重ね塗りを行う方法等がある。
図3に示す触媒層3は、反応ガスが同図の矢印のように蛇行して流れる場合に対応させて、その断面積の大きさを変化させたものである。なお、反応ガスの流れ方向は、後述のセパレータ9等に形成される反応ガスの流路溝10によって制御される(図9)。
図3のようにガス供給口に最も近い触媒層3の厚みDmaxは通常10−200μm程度、好ましくは10−100μm程度、より好ましくは15−50μm程度が良い。またガス排出口に最も近い触媒層3の厚みDminはDmaxの10−90%程度である。なお、図中の矢印は反応ガスの流れ方向を示す。
触媒層−電解質膜接合体
触媒層−電解質膜接合体4は、図1及び図2に示す転写シート1を触媒層3が電解質膜5に対面するように配置し(図8)、転写シート1の背面側から加熱プレスを施して触媒層3を電解質膜5に転写した後(図9)、転写シート1の転写基材2を剥離することにより製造される(図10)。なお、触媒層3は、転写の際にプレスにより電解質膜5に食い込むことにより触媒層−電解質膜接合体4の外側面の平坦性が確保される。
また、この作業を電解質膜5の両面について行うことにより、触媒層3が電解質膜5の両面に積層された触媒層−電解質膜接合体4が製造される(図11)。
作業性を考慮すると、触媒層3を電解質膜5の両面に同時に積層するのがよい。この場合には、例えば、転写シート1の触媒層3が電解質膜5に対面するように、電解質膜5の両面に転写シート1を配置し、転写シート1の背面側から該転写シート1に加熱プレスを施して触媒層3を電解質膜5に転写し、転写シート1の転写基材2を剥離することにより触媒層−電解質膜接合体4が製造される。
加熱プレスの加圧レベルは、転写不良を避けるために、通常0.5〜20Mpa程度、好ましくは1〜10Mpa程度がよい。また、この加圧操作の際に、転写不良を避けるために加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、電解質膜5の破損、変性等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは150℃以下がよい。
使用される電解質膜5は公知のものであり、膜厚は通常20〜250μm程度、好ましくは20〜80μm程度である。
電解質膜5は、例えば、基材上に水素イオン伝導性高分子電解質を含有する溶液を塗布し、乾燥することにより形成される。
水素イオン伝導性高分子電解質としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC−H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このような水素イオン伝導性高分子電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」、旭硝子(株)製の「Flemion」、旭化成(株)製の「Aciplex」、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」等が挙げられる。
水素イオン伝導性高分子電解質含有溶液中に含まれる水素イオン伝導性高分子電解質の濃度は、通常5〜60重量%程度、好ましくは20〜40重量%程度である。
なお、触媒層−電解質膜接合体4は前記のように転写シート1に触媒層3を形成し、これを電解質に転写して製造する方法の他に、触媒層3を電解質に直接形成して製造することもできる。
図4及び図5は、厚さが異なる複数の触媒ブロック30,31・・・から触媒層3を形成し、転写基材2上の触媒ブロックを、各触媒ブロック毎に電解質膜5に加熱プレスにより転写して加熱プレスによりし、まず、図4(a)(b)のように厚みの小さい触媒ブロック30を電解質膜5に転写した後、図5(a)(b)のようにそれよりも厚みの大きい触媒ブロック31を電解質膜5に転写していく。なお、複数の触媒ブロック30,31・・・の転写順序は特に限定されない。
図6及び図7は、厚さがほぼ等しく、縦寸法及び/又は横寸法が異なる複数の触媒ブロック300,301・・・から触媒層3を形成し、まず、図6(a)(b)のように転写基材2上の触媒ブロック300を電解質膜5に加熱プレスにより転写した後、図7(a)(b)のように触媒ブロック300の上に加熱プレスにより触媒ブロック301・・・を積み重ねることにより触媒層−電解質膜接合体4を製造する方法を示している。また、必要に応じて2層目以降は転写直前に触媒層形成用ペーストを薄く塗った後、転写して重ねて形成することも可能である。
なお、最終的に触媒層3が電解質膜5上に形成されるのであれば、触媒ブロックの寸法などは、特に限定されるものではなく、また、図4及び図5に示した方法と図6及び図7に示した方法を組み合わせても良い。図4乃至図7に示した方法によれば、触媒層3を電解質膜5に食い込ませる必要はない。
電極−電解質膜接合体
電極−電解質膜接合体6は、触媒層−電解質膜接合体4の両面に、電極基材7をそれぞれ配置して加圧を施すことにより製造される(図12)。
電極基材7としては、公知であり、燃料極、空気極を構成する各種の電極基材7を使用できる。
電極基材7は、燃料である水素ガス及び酸化剤ガスである酸素ガスを効率よく触媒層3に供給するため、多孔質の導電性基材からなっている。多孔質の導電性基材としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス等が挙げられる。
電極の厚さは、ガス拡散の観点から、50〜400μm程度が好ましく、75〜275μm程度がより好ましい。
燃料電池
図13に示す燃料電池8は、次のようにして製造される。
(1)上述のように基材上に触媒層3を形成して電極−電解質膜接合体製造用の転写シート1を得る工程(図1及び図2)、
(2)前記(1)工程で得られる転写シート1の触媒層3が電解質膜面に対面するように転写シート1を配置し(図8)、加熱プレスを施して触媒層3と電解質膜5を接合し(図9)、転写シート1の基材を触媒層3から剥離することにより触媒層−電解質膜接合体4(図10及び図11)を得る工程、
(3)前記(2)工程で得られる触媒層−電解質膜接合体4の両面に電極基材7を配置し、プレスを施すことにより電極−電解質膜接合体6(図12)を得る工程、
(4)前記(3)工程で得られる電極−電解質膜接合体6にセパレータ9を固定して燃料電池8(図13)を得る工程、を経て製造される。
なお、図3に示す転写シート1を用いても、同様に本発明の燃料電池が製造される。
次に、厚み吸収層11を有する触媒層付き電極基材12、電極−電解質膜接合体6A及び燃料電池について説明する。
触媒層付き電極基材
図14及び図15のように触媒層付き電極基材12は、白金含有の触媒層3Aを、該触媒層3Aの厚み差を吸収するための厚み吸収層11を介してガス拡散電極(電極基材)7Aに積層して成る。なお、121はガス供給付近、122はガス拡散電極7Aとしては、公知のガス拡散電極7Aを使用できる。ガス拡散電極7Aは燃料である水素ガスと酸化剤ガスである酸素ガスを効率よく触媒層3Aに供給するため、導電性のある多孔質基材からなる。例えば、東レ(株)製カーボンペーパーTGPシリーズ、SOシリーズ、E−TEK社製カーボンクロスなどである。また、導電性向上のためにカーボンブラックなどの導電性粒子や炭素繊維などの導電性繊維を添加することもできる。これらの目付として厚み50μm〜400μmが好ましく、75〜275μmがより好ましい。また重量は10〜220g/m2が好ましく、20〜120g/m2がより好ましい。
厚み吸収層11は、ガス拡散電極7Aへの触媒のしみこみを抑え、触媒層3A表面を平滑にして触媒層−電解質膜間のプロトン伝導性を向上させ、さらに、触媒層3Aの厚み差を厚み吸収層11で吸収させるためのものである。その構成材としては、オイルファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラックが電子導電性、粒径の点から好ましい。オイルファーネスブラックとしてはキャボット社製バルカンシリーズ、ブラックパールズシリーズ、ライオン社製ケッチェンブラックシリーズが挙げられ、アセチレンブラックとしては電気化学工業社製デンカブラックがあげられる。この炭素材アセチレンブラック、界面活性材、例えばナカライテスク(株)製TRITON X−114、PTFE樹脂溶液例えば、ダイキン工業(株)製 ポリフロンPTFE、蒸留水、発泡剤例えば、例えば日本フィライト社製EXPANCEL551DU、松本油脂株式会社製マツモトスフィアーF等を加え充分混合し厚み吸収層用ペーストを作成し、スクリーン印刷にて、ガス拡散用電極とするカーボンペーパー例えば東レ(株)製、TGP−H−090に塗布、乾燥して厚み吸収層11を作成する。
ペーストの塗布方法については、触媒ペーストの粘度や固形分などに応じた塗布方法が選択でき、特に限定されるものではないが、例えば、ナイフコータ、バーコーター、スプレー、ディップコータ、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷、インクジェット法などの一般的な方法によりガス拡散電極7A上に塗布される。
厚み吸収層11の厚みは3〜200μm程度、好ましくは3〜100μm程度、より好ましくは3〜50μm程度である。
本発明において製造される白金含有の触媒層3Aは、少なくとも白金触媒粒子を担持させた炭素粒子とフッ素イオン交換樹脂を含む水素イオン伝導性電解質を必須の成分とする触媒層形成用ペーストからなる。白金触媒粒子を担持させた炭素粒子とフッ素イオン交換樹脂を含む水素イオン伝導性電解質は、アルコール類、エーテル類、ジアルキルスルホキシド類及び水から選ばれる少なくとも一つの溶媒に混合・分散し触媒ペーストを作成する。
触媒層用ペーストの塗布方法については、触媒層用ペーストの粘度や固形分などに応じた塗布方法が選択でき、特に限定されるものではないが、例えば、ナイフコータ、バーコーター、スプレー、ディップコータ、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷、インクジェット法などの一般的な方法により厚み吸収層11上に塗布される。
触媒層3Aの厚みは、図1〜図3に示したものと同様に、反応ガスの上流から下流側にいくほど小さくなり、触媒層3Aは反応ガスの下流側に向かって下り階段状にして厚みが減少するようになっている。触媒層3Aの断面積の減少割合は反応ガス濃度が低下しても触媒層3Aの活性成分利用率が触媒層3Aの各部位で低下しないでほぼ一定にするという基準により決定される。ガス供給口に最も近いところに位置する触媒層3Aは最大厚を有し、その厚みは通常10〜200μm程度、好ましくは10〜100μm程度、より好ましくは15〜50μm程度がよい。また、ガス排出口に最も近いところに位置する触媒層3Aは最小厚を有し、その厚みは最大厚みの10〜90%程度である。
触媒層付ガス拡散電極の製造方法
本発明の触媒層付ガス拡散用電極の製造方法は、少なくとも多孔質のガス拡散電極7A上に、厚み吸収層用ペーストを塗布して厚み吸収層11を形成する工程と、厚み吸収層11に上に白金含有触媒層形成用ペーストを塗布して白金含有触媒層3Aを形成する工程とからなる。また、プレスを施すことにより、触媒質3Aを厚み吸収層11に食い込ませて該触媒層3Aの表面を平滑にしても良い(図14(c))。また、図4及び図5のようにして触媒層3Aを形成する場合には、各触媒ブロック毎に厚み吸収層11に食い込ませることができる。
電極−電解質膜接合体
電極−電解質膜接合体6Aは、触媒層付き電極基材12を、触媒層3Aが電解質膜5Aと対面するように電解質膜5Aの両面に配設し(図16)、電極の背面から加熱プレスを施すことにより、触媒層付き電極基材12と電解質膜5Aとを接合して製造される(図17)。プレスにより触媒層3Aの厚み差の部分を厚み吸収層11に食い込ませることにより、電解質膜5Aと接触する側の触媒層3Aの表面を平坦化させることにより、触媒層3Aと電解質膜5Aとの密着性を向上させる。
なお、加熱プレスを施すことにより電解質膜5Aにも触媒層3Aが食い込むが、厚み吸収層11の存在により電解質膜5Aへの触媒層3Aの食い込み量を低減させて電解質膜5Aが局部的に薄肉化するのを防止でき、厚み差の大きい触媒層3Aにも対応することができる。
燃料電池
燃料電池は、上述のようにして製造される電極−電解質膜接合体6Aに図外のセパレータを固定して製造される。
本発明の転写シートの実施態様を示す斜視図である。 同実施態様の断面図である。 本発明の転写シートの他の実施態様を示す斜視図である。 本発明の触媒層−電解質膜接合体の製造方法を示す断面図である。 本発明の触媒層−電解質膜接合体の製造方法を示す断面図である。 本発明の触媒層−電解質膜接合体の製造方法を示す断面図である。 本発明の触媒層−電解質膜接合体の製造方法を示す断面図である。 本発明の触媒層−電解質膜接合体の実施形態の製造工程を示す断面図である。 本発明の触媒層−電解質膜接合体の実施形態の製造工程を示す断面図である。 本発明の触媒層−電解質膜接合体の実施形態を示す断面図である。 本発明の触媒層−電解質膜接合体の実施形態を示す断面図である。 本発明の電極−電解質接合体の実施形態を示す断面図である。 本発明の燃料電池の実施形態を示す断面図である。 (a)は本発明の触媒層付き電極基材の実施形態を示す平面図、(b)は(a)のX−X断面図、(c)は同実施形態の断面図である。 (a)は本発明の触媒層付き電極基材の他の実施形態を示す平面図、(b)は(a)のY−Y断面図である。 電極−電解質膜接合体の実施形態の製造工程を示す断面図である。 電極−電解質膜接合体の実施形態の製造工程を示す断面図である。
符号の説明
1 転写シート
2 転写基材
3 触媒層
4 触媒層−電解質膜接合体
5 電解質膜
6 電極−電解質膜接合体
7 電極基材
8 燃料電池
9 セパレータ
10 流路溝
11 厚み吸収層

Claims (15)

  1. 固体高分子形燃料電池に用いられる電極−電解質膜接合体において、
    イオン伝導性電解質膜に接合される触媒層の厚みを、一定方向に向けて増大又は減少するように変化させたことを特徴とする電極−電解質膜接合体。
  2. 前記固体高分子形燃料電池は、ガス供給口から流入する反応ガスにて電池反応を行うものであり、イオン伝導性電解質膜に接合される触媒層の厚みを、前記反応ガスの上流側から下流側に行くほど減少させたことを特徴とする請求項1に記載の電極−電解質膜接合体。
  3. 一定方向に向けて厚みが増大又は減少するように形成された触媒層を、該触媒層の厚み差を吸収するための厚み吸収層を介して電極基材に積層したことを特徴とする触媒層付き電極基材。
  4. 一定方向に向けて厚みが増大又は減少するように形成された触媒層が積層された電極基材の製造方法であって、
    前記電極基材に前記触媒層の厚み差を吸収するための厚み吸収層を積層し、該厚み吸収層の表面に触媒ペーストを塗布することにより前記触媒層を形成することを特徴とする触媒層付き電極基材の製造方法。
  5. 一定方向に向けて厚みが増大又は減少するように形成された触媒層を、該触媒層の厚み差を吸収するための厚み吸収層を介して電極基材に積層し、
    プレスを施すことにより、前記触媒質を前記厚み吸収層に食い込ませて該触媒層の表面を平滑にすることを特徴とする触媒層付き電極基材の製造方法。
  6. 一定方向に向けて厚みが増大又は減少するように形成された触媒層と、電極基材との間に、触媒層の厚み差を吸収するための厚み吸収層を介在させ、前記触媒層の厚み差に相当する部分を前記厚み吸収層に食い込ませることにより、前記電解質膜と接触する側の前記触媒層の表面を平坦化させたことを特徴とする電極−電解質膜接合体。
  7. 請求項1又は2又は6の電極−電解質膜接合体を組み込んだことを特徴とする燃料電池。
  8. 電極−電解質膜接合体を構成する触媒層を、転写基材上に設けた電極−電解質膜接合体製造用の転写シートであって、触媒層の厚みを、一定方向に向けて増大又は減少するように変化させたことを特徴とする電極−電解質膜接合体製造用の転写シート。
  9. イオン伝導性電解質膜に接合される触媒層の厚みを、前記反応ガスの上流側から下流側に行くほど減少させたことを特徴とする請求項8に記載の電極−電解質膜接合体製造用の転写シート。
  10. 請求項8又は9の転写シートを、前記触媒層が電解質膜に対面するように配置し、加熱プレスを施して前記転写シートの前記触媒質を電解質膜に転写することを特徴とする触媒層−電解質膜接合体の製造方法。
  11. 前記転写シートを前記電解質膜の両面に配置することを特徴とする請求項10に記載の触媒層−電解質膜接合体の製造方法。
  12. プレスを施すことにより、前記触媒質を前記電解質膜に食い込ませて触媒層に生じている厚み差を前記電解質膜に吸収させることを特徴とする請求項10又は11に記載の触媒層−電解質膜接合体の製造方法。
  13. 請求項10から12のいずれかの方法により製造された触媒層−電解質膜接合体の両面に電極基材を配置し、プレスを施して前記電極基材を前記電解質膜に接合することを特徴とする電極−電解質膜接合体の製造方法。
  14. 請求項3の触媒層付き電極基材を、前記触媒層が電解質膜と対面するように該電解質膜の両面に配設し、
    プレスを施すことにより、前記触媒層付き電極基材と前記電解質膜とを接合すると共に、前記触媒層の厚み差の部分を前記厚み吸収層に食い込ませることにより、前記電解質膜と接触する側の前記触媒層の表面を平坦化させることを特徴とする電極−電解質膜接合体の製造方法。
  15. 請求項13又は14に記載の方法により電極−電解質膜接合体を製造し、該電極−電解質膜接合体を用いて燃料電池を得ることを特徴とする燃料電池の製造方法。
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