以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
まず、この発明の実施形態による画像形成装置及びクリーニング装置について説明する。図1にこの実施形態によるクリーニング装置を示し、図2にこの実施形態による画像形成装置を示す。
全体構成
図2示すように、この実施形態による画像形成装置1は、電子写真方式のカラー複写機である。この画像形成装置1においては、コンピュータ(図示せず)などから供給された画像信号に基づいて、記録用紙などの記録媒体Sに画像を形成するように構成されている。
この実施形態による画像形成装置1においては、有機感光体(OPC)などの感光材料がアルミニウムなどのシリンダー状である支持体の外周面に塗布されて、感光ドラム2が構成されている。
感光ドラム2においては、まず、210mm/sの周速度で回転駆動するとともに、接触帯電手段としての帯電ローラ3により、暗部電位VDとして約−700Vの電位が一様に帯電される。
次に、この感光ドラム2に対して、レーザ発振器4により、画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザービーム5が走査露光される。これにより、感光ドラム2上に明部電位VLとして約−200Vの静電潜像が形成される。このようにして形成された静電潜像は、回転現像装置6によって、現像剤としてのトナーにより現像され、可視化される。
ここで、この回転現像装置6は、第1色目のトナーとしてのイエロートナーが内包された第1の現像装置6yと、第2色目のトナーとしてのマゼンタトナーが内包された第2の現像装置6mと、第3色目のトナーとしてのシアントナーが内包された第3の現像装置6cと、第4色目のトナーとしてのブラックトナーが内包された第4の現像装置6kとが一体化されて構成されている。
そして、これらの現像装置により形成される静電潜像のうちの、第1の静電潜像は、第1の現像装置6yによって現像され、可視像化される。なお、現像方法としては、ジャンピング現像法、二成分現像法などが用いられる。
また、現像方法としては、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることも多い。ここで、この第1の実施形態においては、非磁性トナーによる二成分現像法が用いられる。
可視像化された第1色目のトナー像は、回転駆動される第2の感光ドラムとしての中間転写体7と対向する第1の転写部位7aにおいて、中間転写体7の表面に静電転写され、一次転写される。
中間転写体7は、導電弾性層と離型性を有する表層とから形成される。この中間転写体7は、搬送可能な最大記録媒体の長さよりも若干長い周長を有する。
また、中間転写体7は、感光ドラム2に対して所定の押圧力をもって圧接されつつ、感光ドラム2の回転方向に対して逆方向、すなわち接触部位では同方向に、感光ドラム2の周速度とほぼ等しい周速度で回転駆動される。
また、高圧電源7cによって、この中間転写体7のシリンダー部に、トナーの帯電極性と逆極性の電圧、所謂一次転写バイアスが印加されることにより、中間転写体7の表面にトナー像が一次転写される。
その後、一次転写の終了した感光ドラム2の表面に残留したトナーはクリーニング装置8によって除去される。
続いて、それぞれの色について順次工程が繰り返され、中間転写体7上に4色のトナー像が転写され、重畳される。
カセット9には記録用紙などの記録媒体Sが積載されている。そして、ピックアップローラ10により、このカセット9から記録媒体Sが一枚ずつ分離給送される。
分離給送された記録媒体Sは、レジストローラ対11によって斜行を矯正された後、転写部位7bに到達する。ここで、中間転写体7の表面に対して離間状態の転写ベルト12が所定の押圧力で中間転写体7表面に圧接、回転駆動される。なお、転写ベルト12は、バイアスローラ12a、テンションローラ12bによって張架されている。また、バイアスローラ12aには、高圧電源12cによってトナーの帯電極性とは逆極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されている。
これにより、第2の転写部位7bに向けて、所定のタイミングで搬送された記録媒体Sの表面に、中間転写体7上のトナー像が一括して転写され、二次転写が行われる。
その後、この記録媒体Sは、定着手段としての定着機14に給送され、加熱及び加圧によって画像が定着される。続いて、記録媒体Sは、排出ローラ対15によって機外に排出される。
一方で、二次転写が終了した後に中間転写体7の表面に残留したトナーは、所定のタイミングで中間転写体7表面に当接状態となる中間転写体クリーニング装置13により除去される。
感光ドラム
次に、この発明の実施形態による感光体ドラムについて、以下に説明する。
HU(ユニバーサル硬さ値)、及び弾性変形率は、圧子に連続的に荷重をかけ、荷重下での押し込み深さを直読し連続的硬さを求められる微小硬さ測定装置フィシャースコープH100V(Fischer社製)を用いて測定した。圧子は対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を使用した。荷重の条件は最終荷重6mNまで段階的に(各点0.1sの保持時間で273点)測定した。なお、測定は25℃、湿度50%RHの環境下で行った。
出力チャートの概略を図4に示す。縦軸は荷重(mN)で横軸は押し込み深さh(μm)であり、段階的に荷重を増加させ6mNまで荷重をかけ、その後同様に段階的に荷重を減少させた結果である。
HU(ユニバーサル硬さ値:以下HUと呼ぶ)は、6mNで押し込んだときの同荷重下での押し込み深さから下記式(1)によって規定される。
弾性変形率は圧子が膜に対して行った仕事量(エネルギー)、すなわち圧子の膜に対する荷重の増減によるエネルギーの変化より求めたものであり、下記式(2)からその値は求まる。全仕事量Wt(nW)は図3中のA−B−D−Aで囲まれる面積で表され、弾性変形の仕事量Wo(nW)はC−B−D−Cで囲まれる面積で表される。
弾性変形率We=Wo/Wt ×100(%) (2)
前述の如く、有機電子写真感光体に求められる性能として機械的劣化に対する耐久性の向上が挙げられる。一般的に膜の硬度は外部応力に対する変形量が小さいほど高く、電子写真感光体も当然の如く鉛筆硬度やビッカース硬度が高いものが機械的劣化に対する耐久性が向上すると考えられている。しかしながら、これらの測定により得られる硬度が高いものが必ずしも耐久性の向上を望めたわけではなく、HUと弾性変形率の値が、ある範囲の場合に感光体表面層の機械的劣化が起り難くなる。
すなわち、ビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて硬度試験を行い、最大荷重6mNで押し込んだときのHUが150N/mm2以上220N/mm2以下であり、かつ、弾性変形率が50%以上65%以下である電子写真感光体を用いることによって飛躍的に向上した。また、更なる特性の向上にはHU値が160N/mm2以上200N/mm2以下であることがより好ましい。
HUと弾性変形率を切り離してとらえることはできないが例えばHUが220N/mm2を超えるものであるとき、弾性変形率が50%未満であるとクリーニングブレードや帯電ローラに挟まれた紙粉やトナーが感光体の弾性力が不足しているが故に、弾性変形率が65%より大きいと弾性変形率は高くても弾性変形量は小さくなってしまうが故に、結果として局部的に大きな圧力が作用し、深い傷が発生してしまう。よって、HUが高いものが必ずしも感光体として最適ではないと考えられる。
また、HUが150N/mm2未満で弾性変形率が65%を超えるものの場合、例え弾性変形率が高くても塑性変形量も大きくなってしまいクリーニングブレードや帯電ローラに挟まれた紙粉やトナーが擦られることで削れたり細かい傷が発生したりしてしまう。
本発明において用いられる感光体ドラムは、少なくとも表面層が重合または架橋して硬化された化合物を含有した電子写真感光体からなる。なお、この硬化手段としては、熱、可視光や紫外線などの光、更に放射線を用いることができる。
したがって、この第1の実施形態において、感光体の表面層を形成する方法としては、表面層用として用いられる、重合または架橋により硬化可能な化合物を、融解または含有している塗布溶液を用い、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティングなどにより塗布した後、この塗布された化合物を硬化手段により硬化する方法が採用される。
これらのうち、感光体を効率よく大量生産する方法としては、浸漬コーティング法がもっとも好ましく、この第1の実施形態においても浸漬コーティング法を採用することが可能である。
また、この実施形態による感光体ドラムの構成は、外径が例えば約60mmの導電性支持体上に、電荷発生物質と電荷輸送物質の双方を同一の層に含有する層構成の単層型か、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有合する電荷輸送層を、順次または逆順に積層した構成の積層型のいずれかである。さらに、感光層上に表面保護層を形成することも可能である。
また、この発明の実施形態においては、少なくとも感光体の表面層が、熱や可視光、紫外線などの光、さらに放射線により重合または架橋し硬化させることができる化合物を含有していればよい。そして、好ましくは、感光体としての特性、特に残留電位などの電気的特性及び耐久性の観点から、電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層した機能分離型の感光体構成、または、この機能分離型の感光体構成で積層された感光層上に、さらに表面保護層を形成した構成とするのが好ましい。
この実施形態においては、表面層における、重合または架橋における化合物の硬化方法としては、感光体特性の劣化が少なく、残留電位の上昇が発生せず、十分な硬度を示すことができることから、好適には、放射線が用いられる。
放射線による重合は重合開始剤を特に必要とせず、非常に高純度な3次元マトリックスの表面層を作成することができ、良好な電子写真特性を示す感光体を得ることができるから好ましい。
この重合または架橋を発生させる際に使用する放射線としては、電子線またはガンマ線が望ましい。これらのうちの電子線を使用する場合、加速器として、スキャニング型、エレクトロンカーテン型、ブロードビーム型、パルス型及びラミナー型などのあらゆる形式を使用することが可能である。
また、電子線を照射する場合においては、この第1の実施形態による感光体における電気特性及び耐久性能を発現するために、照射条件としては、加速電圧を250kV以下とするのが好ましく、150kV以下がより好ましい。また、照射線量を、10kJ/kg以上1000kJ/kg以下の範囲内にするのが好ましく、50kJ/kg以上200kJ/kg以下の範囲内とするのがより好ましい。
加速電圧が上述の範囲の上限より大きいと、感光体特性に対する電子線照射による損傷、いわゆるダメージが増加する傾向にある。また、照射線量が上述の範囲の下限より少ないと、硬化が不十分となりやすい。また、線量が多い場合には感光体特性の劣化が生じやすいため、この観点から、線量は、上述の範囲内から選択するのが望ましい。
さらに、表面層をより硬化させるために、電子線による重合反応時に加熱するとよい。加熱するタイミングとしては、ラジカルが存在する間に感光体が一定の温度になっていればよいため、電子線照射前、照射後、何れの段階で加熱してもよい。加熱温度は、感光体の温度が室温から250℃となるように調節すればよい。より好ましくは50℃から150℃である。温度が上記より高い場合には電子写真感光体の材料に劣化が生じるからである。加熱する時間は、その温度にもよるが、おおよそ数秒から数十分程度でよい。照射及び加熱時の雰囲気は、大気中、窒素及びヘリウム等の不活性ガス中、真空中の何れの場合であっても構わない。酸素によるラジカルの影響を抑制できるという点で、不活性ガス中或いは真空中が好ましい。
また、重合または架橋が生じて硬化可能な表面層用の化合物としては、反応性の高さ、反応速度の速さ、及び硬化後に達成される硬度の高さの観点から、分子内に不飽和重合性官能基を含むものが好ましい。
さらに、不飽和重合性官能基を分子内に有する分子の中でも、特に、アクリル基、メタクリル基及びスチレン基を有する化合物が好ましい。
また、この第1の実施形態による不飽和重合性官能基を有する化合物とは、その構成単位の繰り返しの状態により、モノマーとオリゴマーとに大別される。モノマーとは、不飽和重合性官能基を有する構造単位の繰り返しがなく、比較的分子量の小さいものを示す。他方、オリゴマーとは、不飽和重合性官能基を有する構造単位の繰り返し数が2〜20程度の重合体である。また、ポリマーまたはオリゴマーの末端のみに不飽和重合性官能基が結合した、いわゆるマクロノマーを、この第1の実施形態による表層用の硬化性化合物として使用することも可能である。
また、この実施形態による不飽和重合性官能基を有する化合物は、表面層として必要とされる電荷輸送機能を満足させるために、化合物が電荷輸送化合物を採用することが、より好ましい。この電荷輸送化合物の中でも、正孔輸送機能を持った不飽和重合性化合物であることがさらに好ましい。
次に、この発明の実施形態による電子写真感光体の感光層について説明する。
すなわち、電子写真感光体の支持体としては、導電性を有するものであればよく、具体的には、例えばアルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレスなどの金属や、これらの合金を、ドラムまたはシート状に形成したもの、アルミニウム及び銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム及び酸化錫などをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独または結着樹脂とともに塗布することにより導電層を設けた金属、または、プラスチックフィルムや紙などを挙げることができる。
また、この発明の実施形態においては、導電性支持体の表面上には、バリアー機能と接着機能とを有する下引き層を設けることができる。
下引き層は、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体の保護、支持体上の欠陥の被覆、支持体からの電荷注入性改良、または感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される層である。
この下引き層の材料としては、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド、N−メトキシメチル化6ナイロン、共重合ナイロン、ニカワ及びゼラチンなどを使用することができる。これらの材料は、それぞれに適合した溶剤に溶解されて支持体表面に塗布される。そして、この下引き層の膜厚は、好適には、0.1〜2μmである。
この発明の感光体が機能分離型の感光体である場合は電荷発生層及び電荷輸送層を積層する。電荷発生層に用いる電荷発生物質としては、セレン−テルル(Se−Te)、ピリリウム、チアピリリウム系染料、または、各種の中心金属及び結晶系、具体的には、例えばα、β、γ、ε及びX型などの結晶型を有するフタロシアニン系化合物、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、クナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、キノシアニン及びアモルファスシリコンなどを挙げることができる。
また、機能分離型感光体の場合、電荷発生層は、電荷発生物質を0.3〜4倍量の結着樹脂及び溶剤とともに、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター及びロールミルなどの手段によって良好に分散し、分散液を塗布し、乾燥させて形成されるか、または電荷発生物質の蒸着膜など、単独組成の膜として形成される。ここで、この電荷発生層の膜厚は、典型的には、5μm以下であり、好適には、0.1〜2μmである。
また、結着樹脂を用いる場合の例は、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンなどのビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
この実施形態による不飽和重合性官能基を有する正孔輸送性化合物は、上述した電荷発生層上に電荷輸送層として用いることができる。または、電荷発生層上に、電荷輸送層と結着樹脂とからなる電荷輸送層を形成した後に、表面保護層として用いることもできる。
そして、正孔輸送性化合物を表面保護層として用いた場合、その下層にあたる電荷輸送層は適当な電荷輸送物質、例えばポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリスチルアントラセンなどの複素環や縮合多環芳香族を有する高分子化合物や、ピラゾリン、イミダゾール、オキサドール、トリアゾール、またはカルバゾールなどの複素環化合物、トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの低分子化合物などを、上述の電荷発生層用樹脂から選択可能で適当な結着樹脂とともに溶剤に分散または溶解した溶液を、上述の公知の方法によって塗布し、乾燥させて形成することができる。
この場合の電荷輸送物質と結着樹脂との比率は、両者の全質量を100とした場合に、電荷輸送物質の質量が30〜100の範囲内にあることが望ましく、更には50〜100の範囲で適宜選択するのが好ましい。
電荷輸送層における電荷輸送物質の質量が、これらの範囲より小さいと、電荷輸送能が低下し、感度低下や残留電位の上昇などの問題点が発生する。この場合にも感光層の厚みは、5〜30μmの範囲である。また、このときの感光層の膜厚とは、電荷発生層、電荷輸送層及び表面保護層におけるそれぞれの膜厚を合計したものである。
いずれの場合も、表面層の形成方法は、正孔輸送性化合物を含有する溶液を塗布後、重合または硬化反応させるのが一般的である。なお、あらかじめ正孔輸送性化合物を含む溶液を反応させることにより硬化物を得た後、再度溶剤中に分散または溶解させたものなどを用いて、表面層を形成することも可能である。
また、上述の溶液を塗布する方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法及びスピンコーティングなどが知られている。そして、効率性/生産性の観点から、溶液を塗布する方法としては、浸漬コーティング法が望ましい。なお、蒸着やプラズマ処理などの、その他公知の成膜方法を適宜選択することが可能である。
また、この発明の実施形態による表面保護層中においては、導電性粒子を混入させることも可能である。この導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラックなどを挙げることができる。
これらの導電性粒子としての金属は、具体的には、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、ステンレス及び銀を挙げることができ、さらに、導電性粒子としては、これらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したものなどを挙げることができる。
また、導電性粒子としての金属酸化物は、具体的には、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウムなどを挙げることができる。
また、これらの金属酸化物は、それぞれ単独で用いたり、2種類以上を組み合わせて用いたりすることが可能である。なお、2種以上を組み合わせる場合には、単に混合することも可能であり、固溶体や融着を施すことも可能である。
また、この発明の実施形態において用いられる導電性粒子の平均粒径は、保護層の透明性の観点から、0.3μm以下にすることが好ましく、より好適には、0.1μm以下にすることが望ましい。さらに、この第1の実施形態においては、上述した導電性粒子の材料において、透明性などの観点から金属酸化物を用いることが特に好ましい。
表面保護層中における導電性金属酸化物粒子の割合は、直接的に表面保護層の抵抗を決定する要因の1つである。したがって、保護層の比抵抗は、108〜1013Ωm(1010〜1015Ωcm)の範囲にすることが望ましい。
また、この実施形態においては、表面層中にはフッ素原子含有樹脂粒子を含有することも可能である。このフッ素原子含有樹脂粒子としては、4フッ化チレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂、及びこれらの共重合体の中から少なくとも1種類以上を適宜選択するのが好ましい。
そして、上述のフッ素原子含有樹脂粒子としては、特に、4フッ化エチレン樹脂及びフッ化ビニリデン樹脂が好ましい。なお、樹脂粒子の分子量や粒径は、適宜選択することが可能であり、必ずしも上述の分子量や粒径に限定されるものではない。
表面層中におけるフッ素原子含有樹脂の割合は、表面層の全質量に対して、典型的には、5〜40質量%であり、好適には、10〜30質量%である。これは、フッ素原子含有樹脂粒子の割合が、40質量%より多いと表面層の機械的強度が低下し易くなり、5質量%より少ないと表面層の表面の離型性、表面層の耐摩耗性や耐傷性が不十分になる可能性があるためである。
この発明の実施形態においては、分散性、結着性及び耐候性をより向上させるために、表面層中に、ラジカル補足剤や酸化防止剤などの添加物を加えることも可能である。また、この第1の実施形態において表面保護層の膜厚は、好適には、0.2〜10μmの範囲であり、より好適には、0.5〜6μmの範囲である。
帯電
次に、この実施形態による帯電手段としての帯電ローラについて説明する。すなわち、この実施形態における帯電手段である可撓性の接触帯電部材としての帯電ローラ3(図2)は、芯金上にゴムまたは発泡体の中抵抗層を設けることにより形成される。
この中抵抗層は、例えばウレタンなどの樹脂、例えばカーボンブラックなどの導電性粒子、硫化剤または発泡剤などにより処方され、芯金の上にローラ状に形成された後、表面が研磨されている。
ここで、接触帯電部材である帯電ローラ3は、電極として機能することが重要である。すなわち、弾性を持たせて被帯電体との十分な接触状態を確保するとともに、移動する被帯電体を充電するために、十分に低い抵抗である必要がある。
他方、被帯電体にピンホールなどの低耐圧欠陥部位が存在した場合に電圧のリークを防止する必要がある。被帯電体として電子写真感光体を用いた場合、十分な帯電性と耐リークを得るには、104〜107Ω程度の抵抗が望ましく、この第1の実施形態においては、106Ωの抵抗を用いる。
また、帯電ローラ3の硬度に関しては、低すぎると形状が安定しないために被帯電体との接触性が悪くなり、高すぎると被帯電体との間に帯電ニップ部を確保することが困難になるのみならず、被帯電体表面に対するミクロな接触性が悪くなる。したがって、帯電ローラ3の硬度としては、アスカーC硬度において、25度以上60度以下が好ましい範囲であり、この第1の実施形態においては例えば50度とする。
帯電ローラ3の材質としては、弾性発泡体に限定するものではなく、弾性体の材料として、EPDM、ウレタン、NBR、シリコーンゴムや、IRなどに抵抗調整のためにカーボンブラックや金属酸化物などの導電性物質を分散したゴム材、または、これらの物質を発泡させたものを挙げることができる。なお、導電性物質を分散させることなく、イオン導電性の材料を用いて抵抗調整をすることも可能である。
帯電ローラ3は、被帯電体としての感光ドラム2に対して、弾性に抗した押圧力を19.6N(2kgf)で圧接させて配設する。なお、この第1の実施形態においては、幅数mmの帯電部が形成されている。
帯電ローラ3の抵抗値は、次のように測定する。
すなわち、プリンタの感光ドラム2をアルミニウム製のドラムと入れ替える。その後、アルミニウム製ドラムと帯電ローラ3の芯金との間に100Vの電圧を加える。そして、このときに流れる電流値を測定することにより、帯電ローラ3の抵抗値を求める。
このようにして求められた、この実施形態による帯電ローラ3の抵抗値は、5×106Ωであった。なお、この抵抗の測定は、温度を25℃とし、湿度を60%の環境下で行った。
また、上述の帯電ローラ3は、感光ドラム2の回転に伴って、従動して回転する。この帯電ローラ3には、帯電用高圧電源から周波数2kHz、総電流1800μAの定電流(その時のVppは約1.4kVpp)で制御され、重畳されるDCバイアスによって感光体電位が決定される。
現像剤
この実施形態による画像形成装置に用いられる現像剤は、重合法や粉砕法により生成される非磁性トナーと、樹脂磁性キャリアとの混合物である2成分現像剤である。
また、この現像剤のT/D比(質量%)は9%である。また、樹脂磁性キャリアとしては、(4π)-1×106A/m(1kOe)の磁気中における磁化の強さが、4π×10-2Wb/m2(100emu/cm3)であり、かつ個数平均粒径が40μmであって、さらに比抵抗が1011Ωm(1013Ωcm)のものが用いられる。
本発明のトナーは、フロー式粒子像分析装置による平均円形度が0.950〜0.990であることで耐久によるトナーの流動性悪化を軽減するために好ましい。
平均円形度が0.950に満たない場合は、トナーは不定形に近づくため耐久での流動性悪化が起り易くなり、また転写効率も悪化するため好ましくない。また平均円形度が0.990を超えると感光体のクリーニング不良の発生確率が増大する。
本発明において、平均円形度は東亜医用電子株式会社製 フロー式粒子像分析装置 FPIA−1000にて測定した。
測定は、フィルターを通して微細なごみを取り除き、その結果として10-3cm3の水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上159.21μm未満)の粒子数が20個以下の水中にノニオン型界面活性剤(和光純薬社製コンタミノンN)を数滴加えた水溶液10ml中に、トナー5mgを加え、超音波分散機としてSTM社製UH−50で分散処理を行って調製した試料分散液を用いて、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒度分布を測定する。
測定の概略は以下のとおりである。
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラがフローセルに対して相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果それぞれの粒子はフローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一面積を有する円の直径を円相当径として算出する。
約1分間で、1200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定できる。
平均円形度は、上記フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定された粒子の円形度を下式より求め、測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子の投影像の周囲長) … (11)
本発明における平均円形度とは、トナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.000を示し、トナー形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
また、本発明の上記円形度を満足するトナーは、その重量平均粒径が4.0〜7.0μmの範囲にあることが好ましい。
トナーの重量平均粒径は、コールターマルチサイザーII(コールター社製)を用い測定した。コールターマルチサイザーIIに個数分布、体積分布を出力するインターフェース(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続し、電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布を算出した。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準(各チャンネルの代表値をチャンネル毎の代表値とする)の重量平均粒径を求めた。
本発明のトナーの製造方法は特に限定されないが、平均円形度を0.950〜0.990にするためには、懸濁重合法、機械式粉砕法、球形化処理等によって製造されるのが好ましく、特に懸濁重合法が好ましい。
さらに、トナーは、凝集度が5乃至40%、好ましくは5乃至30%である。凝集度が40%よりも大きいと、クリーニングニップ内においてクリーニングブレードで掻き取られたトナーが高温高湿環境等で凝集を起こし、融着に発展する危険性が増大するからである。
また、逆に凝集度が5%より小さくなると流動性が高すぎて、クリーニングにおけるすり抜けが厳しくなるからである。
なお、トナー凝集度の測定には、下記に説明する細川ミクロン製パウダーテスターPT−D型を用いて測定した。パウダーテスター振動台の上に、上から順に60meshふるい、100meshふるい及び200meshふるいをセットしてトナー5.0gを静かに60meshふるいにのせ、振幅0.5mm、周波数50Hzの振動する状態で15秒振動させた。なお、測定は23℃/60%RHの環境下で行い、測定に用いたトナーはこの環境下で十分にエージングさせたものを用いる。
そして、各ふるい上のトナーの質量を測定して、以下の式でトナー凝集度を計算した。
凝集度1=(60meshふるい上のトナー質量/2.0)×100
凝集度2=(100meshふるい上のトナー質量/2.0)×(3/5)×100
凝集度3=(200meshふるい上のトナー質量/2.0)×(1/5)×100
凝集度=凝集度1+凝集度2+凝集度3
以下、本発明で使用される懸濁重合法によるトナーの製造方法について説明する。
まず重合性単量体中に、低軟化点物質、極性樹脂、着色剤、荷電制御剤、重合開始剤、その他の添加剤を加え、ホモジナイザー、超音波分散機等によって均一に溶解または分散せしめた単量体系を、分散安定剤を含有する水相中に通常の撹拌機またはホモジナイザー、ホモミキサー等により分散せしめる。この際、好ましくは単量体液滴が所望の現像剤粒子のサイズを有するように、撹拌速度、時間を調整し造粒する。
トナーの粒度分布制御や粒径の制御は、造粒時の系のpH調整、難水溶性の無機塩や保護コロイド作用をする分散剤の種類や添加量を変える方法や、機械的装置条件、例えばローターの周速、パス回数、撹拌羽根形状等の撹拌条件や、容器形状または水溶液中での固形分濃度等を制御することにより行える。
次に、本発明で使用される粉砕法によるトナーの製造方法について説明する。
本発明に使用される粉砕法トナーは、結着樹脂、離型剤、荷電制御剤、着色剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により十分混合してから、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練して、樹脂類を互いに相溶せしめた中に荷電制御剤、着色剤を分散または溶解せしめ、冷却固化後、機械的に所望の粒度に微粉砕し、さらに分級によって粒度分布をシャープにする。あるいは、冷却固化後、ジェット気流下でターゲットに衝突させて得られた微粉砕物を、熱または機械的衝撃力によって球形化する。
さらに本発明においては、現像性や転写性、クリーニング性や耐久性を向上させるためにさらに次の無機粉体を添加することもできる。マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、セリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、クロム、マンガン、ストロンチウム、錫、アンチモン等の金属酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の複合金属酸化物;硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム等の金属塩;カオリン等の粘土鉱物;アパタイト等のリン酸化合物;炭化珪素、窒化珪素等の珪素化合物;カーボンブラックやグラファイト等の炭素粉末が挙げられる。
同様の目的で以下の有機粒子や複合粒子を添加することもできる。ポリアミド樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、ウレタン粒子、メラミン−ホルムアルデヒド粒子、アクリル粒子等の樹脂粒子;ゴム、ワックス、脂肪酸系化合物、樹脂等と金属、金属酸化物、塩、カーボンブラック等の無機粒子とからなる複合粒子;ポリ弗化エチレン、ポリ弗化ビニリデン等のフッ素樹脂;弗化カーボン等のフッ素化合物;ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩;脂肪酸、脂肪酸エステル等の脂肪酸誘導体;硫化モリブデン、アミノ酸及びアミノ酸誘導体等が挙げられる。
なお、以上現像剤については2成分現像剤として説明してきたが、1成分現像方式で現像を行ってもよい。
クリーニング装置
次に、このクリーニング装置について説明する。図1は、この実施形態によるクリーニング装置を示す。
図1示すように、この実施形態によるクリーニング装置8は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード8a、トナー捕集シート8b、ブレード支持板金8c等を有して構成されている。
クリーニングブレード8aは、平板形状をしており、その厚みはt(mm)であり、その上部をブレード支持板金8cに保持され、自由長L(mm)がブレード支持板金8cから突き出している。クリーニングブレード8aは、感光ドラム2上の点Bで感光ドラム2に接しており、ブレード支持板金8aの延長線と感光ドラム2が交差する点でのブレード支持板金8cの延長線と感光ドラム2上の接線とのなす角をクリーニング弾性部材の前記像担持体に対する設定角θと定義し、θは15°から40°が好ましく、更には20°から30°が好ましい。θが15°を下回るとトナーのすり抜けが発生し易くなり、40°を上回ると鳴きやクリーニングブレード8aの反転等が発生し易くなるからである。
クリーニングブレード8aは、120mN/cm以上490mN/cm以下の線圧で感光ドラム9に当接されている。120mN/cm未満の線圧では、トナーのすり抜けが発生し、490mN/cmを超える線圧では、クリーニングブレード8aの反転が発生するためである。
クリーニングブレード8aは、ウレタンゴムを主体とした弾性ブレードであり、その弾性変形率Wr(%)は前述した感光体の弾性変形率Weの測定方法と同じ測定方法で測定したものである。従来、クリーニングブレードの弾性を示す指標としては、反発弾性率(JIS−K6301)があるが、これはブレード全体のゴム弾性としての指標であり、ブレード全体の挙動(例えば鳴き等)との対応はつき易いが、クリーニングニップ部でのエッジのスティックスリップやそれに伴う粒子の抜け等を考える場合には、微小な弾性を測定する弾性変形率との対応がより望ましい。
動摩擦係数、動摩擦偏差
本発明における動摩擦偏差係数や摩擦係数といった摩擦特性の測定は、下記のような装置、方法で行った。
図4に摩擦特性評価装置の概要を示す。
試料である感光体20を、駆動系(不図示)により、矢印R11方向に所定の面速度(周速度)で回転駆動する。感光体20の周囲には、クリーニング部材21を所定の当接角αで固定したホルダー22、帯電器23、露光系24、現像器25が適宜な角度で配置される。
ホルダー22は、バランスアーム26により、無負荷の状態で水平にて感光体20に当接するように調整される。さらにホルダー22は、上皿27を有し、ここに当接圧用の負荷を加える。さらに、ホルダー22には荷重変換器28が設置され、同図の左右方向にかかる力を検出する。さらに、荷重変換器28は動歪みアンプ(新東科学製HEIDON 3K−84A)を介して、オシロスコープ、コンピュータ等29へと接続される。
まず、感光体表面が実機使用状態に近づけるため、前述したCローラを感光体表面に接触させて回転させると同時にCローラに実機同等の帯電バイアスを印加して5分間回転させて感光体表面をエージングする。その後、長さ50mmの弾性クリーニング部材21に負荷を載せ、当接圧を調節した後、弾性ブレードの感光体への当接角度や、当接面が感光体に傾きや感光体から浮いていることがないようにブレードを調整し、感光体と弾性ブレードとの当接面に実機使用上で用いるトナーを弾性ブレードの長さ全体に均一に介在するように感光体上に前述したトナーを載せた後に弾性ブレードを感光体20に当接させる。更に、駆動系(不図示)より、感光体20を所定の速度(画像形成で用いるプロセススピード)で5秒間、回転させ、回転開始時、及び回転までの荷重変換器14にかかる力を摩擦力として動歪みアンプ、オシロスコープ等29の機器により検出する。
図5(A)に、検出された摩擦力の例を示す。横軸に時間、縦軸に摩擦力を取っている。抗力、すなわち負荷を持ってクリーニング部材21が感光体20に当接された状態で、感光体20とクリーニング部材21が所定の相対速度で駆動されるとき、駆動開始時の直前には、摩擦力は最大の最大静止摩擦力となる。そして、その後の定常回転時(定常駆動時)には、ほぼ一定の範囲でばらつく摩擦力となる。ここで定常回転での平均値を動摩擦力という。
感光体20とクリーニング部21の表面粗さ、凝着等の表面状態により、定常回転時において、必ずしも摩擦力は動摩擦力に安定しておらず、微少な変動を伴う。この定常回転時、すなわち動摩擦力が作用するときのその摩擦力のばらつきとして、動摩擦力の標準偏差(動摩擦偏差)を算出した。
さらに、抗力としてホルダー21に付随の上皿27の負荷を変化させ、最大静止摩擦力、動摩擦力、及び動摩擦偏差の、負荷依存性を評価する。クリーニング部材21としてブレード状の部材を使用し、その当接部の長さ当たりの当接圧と、摩擦係数や最大静止摩擦力、動摩擦力、動摩擦偏差の相関の一例を図5(B)に示す。最大静止摩擦力、動摩擦力、動摩擦偏差の傾きを、それぞれ静止摩擦係数、動摩擦係数、動摩擦偏差係数とする。
前述のように、動摩擦偏差係数はクリーニング部材21の当接部の摩擦の変動を意味し、この動摩擦偏差係数が小さいということは、クリーニング部材21と感光体20との当接部が、クリーニング部材21のバタツキや引っかかりなどの無い、スムーズな摺擦がなされていることを示す。
また、摩擦係数は、前述のように、クリーニング性や耐久性や設計上のラチチュードに関わる特性である。
摩擦評価装置を使用する環境は、温度25℃、相対湿度50%を基準とする。
なお、摩擦評価装置の形態は、本実験例のものに制限されるものではなく、上述の原理を実現できるものであれば任意のものを使用することができる。摩擦力の評価用に周知のピエゾ素子の歪みゲージなどを使用してもよいし、また、例えばクリーニング部材21を周知の画像形成装置に組み込んで実験を行うようにしてもよい。
感光ドラムとトナーとクリーニングブレード関係
本発明では、高画質、高安定性のために、ユニバーサル硬度HUが150N/mm2以上220N/mm2以下であり、かつ、弾性変形率が50%以上65%以下である電子写真感光体を用いており、他方、クリーニングブレードは、上述したようにウレタンゴムを主成分としておりゴムとしての弾性を有し、この弾性を有するクリーニングブレードが感光ドラム表面に対してそのエッジ部をカウンター方向にして当接し、転写残トナー等をクリーニングしている。また、感光ドラム上に形成された静電潜像に対する再現性を向上させるため、重量平均粒径が4.0〜7.0μm、平均円形度が0.950〜0.990、凝集度が5〜40%のトナーを使用している。
通常、上記のようなドラムを使いこなそうとする場合、特にAC+DCの接触帯電にて帯電する帯電ローラを使用し、且つ、クリーニングブレード単体でクリーニングを達成しようとすると、感光ドラム2が殆ど摩耗しないためクリーニングブレードが振動したり、反転し易く、更に他方、上記のように粒径が小さく、円形度が高く、凝集度の低いトナーを使いこなす場合は、クリーニングブレードからのトナーのすり抜けが厳しい。
そこで、感光ドラムとクリーニングブレード両者において弾性特性を有していること、及び粒径が小さく、球形度が高く、凝集性の高いトナーを介したときの摩擦特性に着目し、これらの関係や、クリーニングブレードのゴムとしても特性を、ゴム物性だけではなく、その使う上での条件を検討することにより、安定したクリーニングができるようになった。
以下、実施例に沿って説明する。
感光ドラム2としては、以下のようにして作成した。60φのアルミニウムシリンダーを硬度試験用と実機テスト用とを用意する。導電層用の塗料を以下の手順で調製した。10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部(質量部、以下同様)、フェノール樹脂25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、平均分子量3000)0.002部をφ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散して調製した。この塗料をシリンダー上に浸漬コーティング法で塗布し、140℃で30分乾燥して、膜厚が20μmの導電層を形成した。
次に、N−メトキシメチル化ナイロン5部をメタノール95部中に溶解し、中間層用塗料を調製した。この塗料を前記の導電層上に浸漬コーティング法で塗布し、100℃で20分間乾燥して、膜厚が0.6μmの中間層を形成した。
次に、CuKαのX線回折におけるブラック角2θ±0.2の9.0度、14.2度、23.9度及び27.1度に強いピ−クを有するオキシチタニウムフタロシアニンを3部、ポリビニルブチラ−ル(商品名エスレックBM2、積水化学(株)製)3部及びシクロヘキサノン35部をφ1mmガラスビ−ズを用いたサンドミル装置で2時間分散して、その後に酢酸エチル60部を加えて電荷発生層用塗料を調製した。この塗料を前記の中間層の上に浸漬コーティング法で塗布して50℃で10分間乾燥し、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
電荷発生層を形成した後、下記構造式(4)のスチリル化合物を10部
及び下記構造式(5)の繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂10部を
(Mv≒20000)
モノクロロベンゼン50部及びジクロロメタン30部の混合溶媒中に溶解し、電荷輸送層用塗布液を調製した。この塗布液を前記の電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、120℃で1時間乾燥することによって膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
次いで、構造式(3)の正孔輸送性化合物60部をモノクロロベンゼン50部及びジクロロメタン50部の混合溶媒中に溶解し保護層用塗料を調製した。この保護層用塗料には、フッ素原子含有樹脂粒子として4フッ化エチレン樹脂を保護層の全質量に対して30%含有させた。
この塗布液を前記の電荷輸送層上に浸漬コーティング法で塗布し、酸素濃度10ppmの雰囲気下で加速電圧150kV、照射線量50KGyの条件で電子線を照射した。その後引き続いて、同雰囲気下で感光体の温度が100℃になる条件で10分加熱処理を行い、更に硬化度を上げるため、空気中で140℃になる条件下で1時間加熱処理を行い、膜厚5μmの保護層を形成し、電子写真感光体を得た。
硬度試験用の感光体を25℃、湿度50%の環境下に24時間放置した後、前述した微小硬さ測定装置フィシャースコープH100V(Fischer社製)を用いて、HU及び弾性変形率を求めると、HU(ユニバーサル硬さ値)が190N/mm2、We(弾性変形率)が50%であった。
次に、ここで使用したトナーについて説明する。
重量平均粒径が6.1μm、平均円形度が0.985、凝集度10%の重合トナーを用いてクリーニング性を評価した。このように平均円形度が高い重合トナーは凝集度が小さく、非常にすり抜け易い特性を示す。
そして、重量平均粒径が4.0μmより小さくなると、粉体としての取り扱いが非常に困難になり、すり抜け等が悪化してきてしまう。他方、重量平均粒径が7.0μmを超えると、クリーニングニップ部に形成されている外添剤やトナーの微紛成分で形成され、クリーニング安定性を確保している阻止層に供給されるトナーの微紛成分が減少するため、クリーニングが不安定になりやすくなることがある。
また、平均円形度が0.950未満では、転写効率(特に多重転写や二次転写)が低下し始め、逆に0.990を超えると、トナー自身が非常に良く転がるためクリーニングでのすり抜け等が厳しくなる。
また、この系で使用するクリーニングブレードとしては、ウレタンゴムを主成分とする板状で、自由長Lが5mm、厚みtが2mmのクリーニングブレードを数種類用意し、前述した摩擦評価装置でその摩擦特性を調べた結果の代表例が図6である。
図6から、動摩擦偏差の大小、及び、クリーニングブレードの実機設定圧200mN/cm(本実施例で使用される画像形成装置における値)での動摩擦偏差の設定圧に対する傾きの変化等が見受けられる。
そこで、これらの動摩擦偏差の特性が、実際のクリーニング特性とどのように対応するかを調べるため、前述した画像形成装置を用いて、高温高湿環境下(30℃、80%)と低温低湿環境下(15℃、10%)で文字写真混合チャートで5000枚の画像形成評価を行った結果と、図6の結果を併記したのが表1(A)〜(C)である。
表1(A)より、ブレードA、Bについは、実機評価にてブレード鳴きやブレード捲れが発生してしまっていることが分かる。これは、設定圧での動摩擦偏差が130〜150mN/cmと大きくなっているため、ブレードと感光体との回転当接時に動摩擦の大きな変動、つまり、ブレードの振動、ビビリ、鳴きが発生していると考えられる。これに対して、ブレードC、Dでは設定圧での動摩擦偏差が110から120mN/cmでは、ブレード鳴きは発生していない。同様なことが、ブレードDからJにも言える。ここから、設定圧での動摩擦偏差は120mN/cm以下が好ましいことが分かる。
また、ブレードC、Dにおいては動摩擦偏差が約110から120mN/cmとほぼ同じであるが、ブレードCは当接圧に対して動摩擦偏差がリニアに増加しているのに対して、ブレードDでは、設定圧近辺で急激に動摩擦偏差が立ち上がっている。これに呼応して、実機評価においてブレードCでは特に問題が無いのに対して、ブレードDではブレード捲れが発生している。これは、実際のクリーニング条件下では、感光体上の転写残やカブリトナーの偏在や、感光体の偏心における当接圧の変動などにより絶えず、クリーニングブレードと感光体当接圧や状態が常に変化しており、例えばブレードDのように当接圧近辺において、当接圧が変動(特に増加)した場合、急激に動摩擦が増大して、その変化にクリーニングブレードが追従しきれずに捲れに至ると考えられる。
このことから、ブレード捲れに対応する指標として設定圧の前後10%の間における動摩擦偏差係数の大きさを規定すると対応が取りやすく、例えばブレードCでは、当接圧の前後10%の間における動摩擦偏差係数は0.8であるのに対して、ブレードDでは1.6と大きくなっていおり、このような場合に、上記のように捲れが発生すると考えられる。
表1(A)のデータを設定圧±10%での動摩擦偏差係数に着目して、データを整理し直したのが表1(B)であるが、これより、動摩擦偏差係数が1.5以下でブレード捲れが発生しないことが分かる。
また、ブレードEやFのように、動摩擦偏差が40から50と低く、また、動摩擦偏差係数が0.2以下と小さい場合は、ブレード摩擦が小さく、且つその変動も小さくてクリーニングに好ましそうであるが、本発明にあるように、高硬度表面を有する感光体と粒径が小さく、球形で、流動性が高いトナーをクリーニングする場合には、ブレード鳴きや捲れは発生しないが、ブレードと感光体の摩擦が小さすぎて、すり抜けが発生してしまっている。
これは、動摩擦の変動が少ないことを示し、所謂、ブレードの振動等によるすり抜けではなく、寧ろ感光体とクリーニングブレードとの当接状態が弱いため、トナーを塞き止める摩擦力が発生していないことを示している。ブレードの当接圧としては、全てのブレードにおいて同じ設定にしているが、ブレードの変形等による撓みが発生して、実質的なクリーニングニップ部でのミクロな当接圧が不足していると見られる。
同様に、表1(A)のデータをブレードの弾性変形率Wrを基準にデータを並べ替えたのが、表1(C)である。
ブレードEとFの弾性変形率Wrが73%、85%と他のブレードより低いことに対応して動摩擦偏差係数も小さくなり、上述したようにすり抜けが発生しており、すり抜けを抑えるには、ブレードの弾性変形率Wrを90%以上とすれば良いことが分かる。但し、ブレードIのように、ブレードの弾性変形率Wrが96%と高くても、動摩擦偏差係数が前述した値を下回るとき、すり抜けが発生している。これはブレードの弾性変形率Wrのみですり抜けを規定できないことを示している。
以上のことから、トナーをすり抜けないように塞き止めるには、ブレードの弾性変形率Wr及び動摩擦偏差係数が寄与しており、動摩擦偏差係数を0.3以上にし、且つ、ブレードの弾性変形率Wrを90%以上にする必要がある。
また、ブレードの振動、ビビリ、鳴き等を防止するには、設定圧での動摩擦偏差を120mN/cm以下にすればよいことが分かる。更に、ブレードの捲れを防止するには、設定圧±10%での動摩擦偏差係数を1.5以下にすれば良いことが分かる。
以上のように、高硬度で高弾性な感光ドラムを、AC+DCバイアスを使用して帯電ローラで接触帯電させ、粒径が小さく、球形で、流動性の高いトナーをクリーニングするとういう、クリーニングにとって困難な条件下でも、設定圧での動摩擦偏差の大きさの上限を120mN/cmに、そして、設定圧の前後10%内での動摩擦偏差係数の範囲を0.3〜1.5に、ブレードの弾性変形率Wrを90%以上に設定することによりブレードのビビリ、振動や捲れ、トナーのすり抜け等の発生しない安定したクリーニングを達成することができた。