JP2005314147A - リチウム−マンガン系複合酸化物 - Google Patents

リチウム−マンガン系複合酸化物 Download PDF

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Abstract

【課題】 リチウム−マンガン系複合酸化物について、高温サイクル特性を実現できる新たなリチウム−マンガン系複合酸化物を提供する。
【解決手段】 組成式Li1+xMn2-x4・nLiabcで示される多数の固体粒子からなるリチウム−マンガン系複合酸化物であって、化学分析値から得られる(Mn価数)が、組成式より算出されるMn価数、すなわち、Li元素の価数を+1価、O元素の価数を−2価として前記組成式から算出されるMn価数である「(7−x)/(2−x)」以上であるリチウム−マンガン系複合酸化物を提案する。化学分析値から得られるMn価数が、組成式より算出されるMn価数以上であり、カチオン欠損が生じているため、ヤンテラー歪の影響を軽減することができ、高温サイクル特性に優れた電池を実現することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウム電池の正極活物質として使用するリチウム−マンガン系複合酸化物に関する。
リチウム電池、特にリチウム二次電池は、単位電気量当たりの重量が小さく、エネルギー密度が高いため、ビデオカメラ、ノート型パソコン、携帯電話機などの携帯型電子機器や電気自動車などに搭載する駆動用電源として急速に普及しつつある。
このようなリチウム電池の高いエネルギー密度は主に正極材料の電位に起因している。この種の正極活物質としては、層状構造をもつLiCoO2やLiNiO2のほか、スピネル構造をもつリチウムマンガン酸化物(LiMn24)などのリチウム複合酸化物がある。これらはいずれもリチウムに対し4V以上の電位を有しており、正極活物質として用いることにより高エネルギー密度の電池を実現することができる。
現在、市販されているリチウム電池用正極活物質の大半はLiCoO2が占めているが、Coは極めて高価であるため、原料となるマンガン酸化物が豊富で安価であること及びニッケル酸リチウムの場合のように充電時に熱的安定性がなくなることがない点で、リチウムマンガン酸化物(LiMn24)が注目されている。
しかし、リチウムマンガン酸化物(LiMn24)は、高温においてマンガンが溶出しやすく高温サイクル特性において課題を抱えていた。
かかる課題を解決するため、従来、添加物質として硼素(特許文献1及び特許文献2等)やアルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、コバルト、カルシウム及びマグネシウム等(特許文献3)を使用して正極材料を湿式法で製造し該正極材料の高温特性を改善することが提案されている。
また、特許文献4には、マンガン源と、リチウム源と、M元素源と、硼素源としての硼酸リチウムとを、乾式で混合し焼成することによりLix Mn(2-y)y4・nLi247を得ることを特徴とする製造方法が提案されている。このように硼酸リチウムを添加することにより、リチウム−マンガン骨格のリチウムが溶出しても前記硼酸リチウムで置換されるため構造欠陥が生ずることがなく、サイクル特性を向上させることができる。
特開平4−237970号公報 特開平8−195200号公報 特開平11−240721号公報 特開2001−180938号公報
本発明は、リチウム−マンガン系複合酸化物について、従来とは異なる観点から鋭意研究を進め、その結果得られた知見に基づき、高温サイクル特性を実現できる新たなリチウム−マンガン系複合酸化物を提供せんとするものである。
本発明は、組成式Li1+xMn2-x4・nLiabcで示され、化学分析値から得られる(Mn価数)が、組成式より算出されるMn価数、すなわち、Li元素の価数を+1価、O元素の価数を−2価として前記組成式から算出されるMn価数である「(7−x)/(2−x)」以上であることを特徴とするリチウム−マンガン系複合酸化物を提案する。
上記組成式Li1+xMn2-x4・nLiabcにおいて、「・」は付加化合物であることを意味しており、「Liabc」は水に可溶性の塩として「Li1+xMn2-x4」と共に存在している。本発明のリチウム−マンガン系複合酸化物において、LiabcはLi1+xMn2-x4に固溶した状態では存在しておらず、B元素はスピネル構成元素とはなっていない。また、例えばスピネル焼成後にLiabcを添加してなる混合状態とも異なるものである。
また、組成式Li1+xMn2-x4・nLiabcにおける「Liabc」は各種形態からなるホウ酸リチウムを意味しているが、中でもLi247であるのが好ましい。また、上記組成式におけるnは、0.001≦n≦0.03の範囲にあるのが好ましい。
本発明のリチウム−マンガン系複合酸化物は、組成式Li1+xMn2-x4・nLiabcで示される多数の固体粒子を含有してなり、当該固体粒子は、その内部が組成式Li1+xMn2-x4で示されるスピネル(「Li−Mnスピネル」ともいう)からなり、その表面層にのみB元素が存在するものであるのが好ましい。
ここで、「固体粒子の内部」とは、粒子表面から0.5μmの深さより中心部を意味し、固体粒子の表面層とは、少なくとも粒子表面から0.5μmの深さより表面側、好ましくは最表面、言い換えれば固体粒子を水又は下記酸(硫酸:水:過酸化水素=1:16:3を混合してなる酸)で洗浄した時に「Liabc」が水又は当該酸に溶解して除去される部位を意味する。
なお、特開2001−180938号に開示されたリチウム−マンガン系複合酸化物は、Mnの一部がAl及び/又はMgで置換されたスピネルからなるものであるが、本発明におけるLi−Mnスピネルは、これらの置換金属を含まないスピネルである。
本発明において「リチウム電池」とは、リチウム一次電池、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー電池など、電池内にリチウムを含有する電池を全て包含する。
また、本発明が特定する数値範囲の上限値及び下限値は、特定する数値範囲から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の範囲に含まる意を包含する。
「組成式」とは、イオンからなる物質の成分元素の原子数比を、元素記号を用いて表した式の意である。
本発明のリチウム−マンガン系複合酸化物は、化学分析値から得られるMn価数が、組成式より算出されるMn価数以上であり、カチオン欠損が生じているため、ヤンテラー歪の影響を軽減することができ、高温サイクル特性に優れた電池を実現することができる。
発明の実施の形態
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明のリチウム−マンガン系複合酸化物は、組成式Li1+xMn2-x4・nLiabcで示される多数の固体粒子からなり、Li原料としてのLi化合物、Mn原料としてのMn化合物、及びB原料としてのホウ酸リチウム化合物を適宜割合で混合し、所定温度域で焼成して得ることができる。
(原料)
Li化合物としては、LiOH、Li2CO3、LiNO3、LiOH・H2O、Li2O、その他脂肪酸リチウムやリチウムハロゲン化物等のいずれか或いはこれらから選択される二種類以上の組合せからなる混合物を用いることができる。中でもリチウムの水酸化物塩、炭酸塩、硝酸塩が好ましい。
Mn化合物としては、二酸化マンガン(γ−MnO2、β−MnO2)、四酸化三マンガン、三酸化二マンガン、炭酸マンガン等のいずれか或いはこれらから選択される二種類以上の組合せからなる混合物を用いることができる。中でも、リチウムを構造内に取り込みやすいという観点から二酸化マンガンが好ましい。二酸化マンガンとしては、化学合成二酸化マンガン(CMD),電解二酸化マンガン(EMD)、炭酸マンガン或いは天然二酸化マンガンを用いることができる。
B(ホウ素)原料としてのホウ酸リチウムは、酸化リチウムと酸化硼素の混合物であればよく、メタ硼酸リチウム(LiBO2)、四硼酸リチウム(Li247)、五硼酸リチウム(LiB58)及び過硼酸リチウム(Li225)等の各種形態のものを用いることができるが、なかでも四硼酸リチウム(Li247)が好ましい。
このB元素は、Li−Mnスピネル中には固溶せず、焼成過程においてLi−Mnスピネルの焼結を促進する働きを備えているものと考えられる。
(混合)
原料の混合割合は、Li化合物、Mn化合物、B元素化合物を適宜割合で混合すればよい。この際、B元素化合物の添加量は、組成式Li1+xMn2-x4・nLiabcにおいて、0.001≦n≦0.03、特に0.002≦n≦0.02となるように調整して添加するのが好ましい。
混合方法は、均一に混合できれば、その方法を特に限定するものではない。例えばミキサー等の公知の混合機を用いて各原料を同時又は適当な順序で加えて乾式で攪拌混合すればよい。
上記の如く混合した原料はそのまま焼成してもよいが、必要に応じて所定の大きさに造粒して焼成するようにしてもよい。
造粒方法は、湿式でも乾式でもよく、押し出し造粒、転動造粒、流動造粒、混合造粒、噴霧乾燥造粒、加圧成型造粒、或いはロール等を用いたフレーク造粒でもよい。但し、湿式造粒した場合には、焼成前に充分に乾燥させることが必要である。乾燥方法としては、噴霧熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、フリーズドライなどの公知の乾燥方法によって乾燥させればよい。
(焼成)
上記の如く混合された原料粉は、焼成炉にて、大気雰囲気下で750℃以下、好ましくは600℃より高温で750℃より低温、特に好ましくは650℃以上700℃以下の温度範囲で適宜時間保持するように焼成する。
ホウ酸リチウムを多量に添加し、750℃以下の温度範囲で焼成することにより、カチオン欠損のリチウム−マンガン系複合酸化物を得ることができる。すなわち、ホウ酸リチウムを多量に添加して750℃以下の温度範囲で焼成すれば(化学分析値から求めたMn価数)≧(合成時の組成式から求めたMn価数)の、特に750℃より低温で焼成すれば(化学分析値から求めたMn価数)>(合成時の組成式から求めたMn価数)のリチウム−マンガン系複合酸化物を得ることができる。Mn価数が低く、Mn3+イオンが増加すると、ヤンテラー歪が生じ、充放電による結晶構造の崩壊が起こり易くなる(第3版電池便覧p334〜338参照)のに対し、本発明のリチウム−マンガン系複合酸化物は、化学分析値から得られるMn価数が、組成式より算出されるMn価数以上でカチオン欠損が生じているため、ヤンテラー歪の影響を軽減することができ、電池の充放電試験におけるサイクル維持率が向上する。
なお、600℃以下の温度で焼成すると、650〜750℃で焼成を行った場合と同様、カチオン欠損のリチウム−マンガン系複合酸化物が得られ、高温サイクル特性の向上は得られるが、原料の二酸化マンガンと炭酸リチウムとの反応が不十分となり、固体粒子の表面層だけでないく内部にもB元素が存在することになり、十分な放電容量を得ることができない。
なお、ここでの焼成温度は焼成炉の最高焼成温度における品温を意味する。
焼成時間、すなわち上記焼成温度を保持する時間は0.5〜20時間が好ましく、所定時間保持した後は、降温して室温放置して徐冷するのが好ましい。
焼成炉としては、ロータリーキルン或いは静置炉等を用いることができ、焼成雰囲気は、大気雰囲気下のほか、酸化性雰囲気を採用することも可能である。
なお、本発明のリチウム−マンガン系複合酸化物は、以上に説明した製造方法によって得られるものに限定されるものではない。どのような方法によって製造されたものでも、本発明が特定する特徴を有していれば本発明のリチウム−マンガン系複合酸化物に含まれる。
例えば、ホウ酸リチウム以外の焼成助剤が有効であればそれも用いてもよいし、また、750℃より高温で焼成して本発明が特定するリチウム−マンガン系複合酸化物が得られるのであれば、それも本発明に包含される。
(リチウム−マンガン系複合酸化物)
本発明のリチウム−マンガン系複合酸化物は、詳しくは組成式Li1+xMn2-x4・nLiabcで示される多数の固体粒子からなる粉体(「Li−Mnスピネル粉体」)であって、当該固体粒子は、組成式Li1+xMn2-x4で示されるスピネル(「Li−Mnスピネル」)と付加化合物であるLiabcとからなるものである。好ましくは、固体粒子の内部がLi−Mnスピネルからなり、固体粒子内部にはB元素を含有せず、固体粒子の表面層のみにB元素が存在することを特徴とするものである。
なお、Li−Mnスピネル粉体中に付加化合物として存在するLiabcは、Li−Mnスピネル焼成後に添加されて存在するものではなく、Li−Mnスピネルと同時に焼成されたものである必要がある。Li−Mnスピネル焼成後に添加した場合には電池特性が向上しないことが確かめられている。
また、本発明のリチウム−マンガン系複合酸化物においては、化学分析値から得られるMn価数が、組成式より算出されるMn価数以上であること、すなわち
化学分析値から得られるMn価数≧(7−x)/(2−x)で示されることが重要である。
また、組成式Li1+xMn2-x4・nLiabcにおける「n」は、0.001≦n≦0.03、特に0.002≦n≦0.02であるのが好ましい。
この際、付加化合物として存在するLiabcの定量方法としては、Li−Mnスピネル粉体を、硫酸:水:過酸化水素=1:16:3を混合してなる酸に浸漬して1分間攪拌しながら溶解させ、溶け残ったLi−Mnスピネル分中のLiabc量を付加化合物のLiabc量として算出することができる。
(用途)
上記の如く得られたLi−Mnスピネル粉体は、必要に応じて振動ミルやローラーミルで解砕処理した後、正極材料として用いることができる。
この際、正極材料の比表面積は0.3〜2m2/g、特に0.3〜1m2/g、なかでも特に0.3〜0.7m2/gの範囲にあるのが好ましい。比表面積がこの範囲にあれば、電解液中のMn溶出量が増加することによって高温特性が劣化することが少ない。
上記正極材料に導電材、結着剤、充填材等を配合して混練して合剤(ペースト)とし、これを例えばステンレスメッシュからなる正極集電体に塗布し、ロールプレスした後、減圧下で加熱乾燥させて正極を製造することができる。
また、必要に応じて、上記合剤を円板状等、適宜の形状に加圧成形し、必要に応じて真空下に熱処理するようにして、正極を製造することもできる。
本発明のLi−Mnスピネル粉体は、負極及び電解質の材料を選ばず適用することができ、リチウム一次電池、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー電池などのリチウム電池の正極活物質として、好ましくはリチウムイオン電池、特に非水溶媒系リチウムイオン電池の正極活物質として好適である。例えば、負極にリチウムまたはカーボン等のリチウムを吸蔵、脱蔵できる材料を用い、非水系電解質に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のリチウム塩をエチレンカーボネート−ジメチルカーボネート等の混合溶媒に溶解したものを用いて、非水溶媒系リチウムイオン電池を構成することができる。
このように構成した非水溶媒系リチウムイオン電池は、例えばノート型パソコン、携帯電話、コードレスフォン子機、ビデオムービー、液晶テレビ、電気シェーバー、携帯ラジオ、ヘッドホンステレオ、バックアップ電源、メモリーカード等の電子機器、ペースメーカー、補聴器等の医療機器、電気自動車搭載用の駆動電源に使用することができる。
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明する。
(実施例1)
Li:Mn=1.09:1.91のモル比になるように、電解二酸化マンガン100gと、炭酸リチウム24.1gと、四ホウ酸リチウム1.0g(電解二酸化マンガンに対して0.1wt%)とを、ボールミルで混合して混合原料を得た。
この混合原料を電気炉中650℃で20時間焼成した後、500℃まで20℃/hrで冷却し、500℃から室温まで炉の電源をOFFにして炉冷した。
本条件で得られた焼成粉は二次粒子同士の焼結性が低く、解砕工程を要さずとも分級できるため、得られた焼成粉を、目開き75μmの篩で分級してリチウム−マンガン系複合酸化物を得た。
電池試験の結果、25℃での放電容量は105(mAh/g)であり、60℃でのサイクル維持率(容量維持率)は97.4%であった。化学分析値から求めたMn価数は3.639であった。粒度分析計(日機装社製HRA9320−X100)で測定した中心粒径D50は21μmであった。N2吸着によるBET一点法で求めた比表面積(ユアサアイオニクス社製MONOSORB)は0.8m2/gであった。
(実施例2)
電気炉中での焼成温度を700℃とした以外は、実施例1と同条件でリチウム−マンガン系複合酸化物を得た。
電池試験の結果、25℃での放電容量は108(mAh/g)であり、60℃でのサイクル維持率は96.5%であった。化学分析値から求めたMn価数は3.629であった。粒度分析計(日機装社製HRA9320−X100)で測定した中心粒径D50は21μmであった。N2吸着によるBET一点法で求めた比表面積(ユアサアイオニクス社製MONOSORB)は0.4m2/gであった。
(実施例3)
電気炉中での焼成温度を750℃とした以外は、実施例1と同条件でリチウム−マンガン系複合酸化物を得た。
電池試験の結果、25℃での放電容量は108(mAh/g)であり、60℃でのサイクル維持率は92.7%であった。化学分析値から求めたMn価数は3.619であった。粒度分析計(日機装社製HRA9320−X100)で測定した中心粒径D50は25μmであった。N2吸着によるBET一点法で求めた比表面積(ユアサアイオニクス社製MONOSORB)は0.2m2/gであった。
(実施例4)
電気炉中での焼成温度を600℃とした以外は、実施例1と同条件でリチウム−マンガン系複合酸化物を得た。
電池試験の結果、25℃での放電容量は101(mAh/g)であり、60℃でのサイクル維持率は91.6%であった。化学分析値から求めたMn価数は3.633であった。粒度分析計(日機装社製HRA9320−X100)で測定した中心粒径D50は21μmであった。N2吸着によるBET一点法で求めた比表面積(ユアサアイオニクス社製MONOSORB)は1.2m2/gであった。
(比較例1)
電気炉中での焼成温度を800℃とした以外は、実施例1と同条件でリチウム−マンガン系複合酸化物を得た。
電池試験の結果、25℃での放電容量は110(mAh/g)であり、60℃でのサイクル維持率は89.5%であった。化学分析値から求めたMn価数は3.608であった。粒度分析計(日機装社製HRA9320−X100)で測定した中心粒径D50は27μmであった。N2吸着によるBET一点法で求めた比表面積(ユアサアイオニクス社製MONOSORB)は0.2m2/gであった。
(Mn価数の測定)
[分析値からのMn価数算出]
MnO2(wt%)はJIS K−1467に従って求めた。Total−Mn(wt%)は、得られた焼成粉をHCl中で全溶解し、JIS M−8232のMn分析法に従いTotal−Mn量を測定及び算出した。すなわち、HCl中に溶解したMnをピロリン酸カリウム存在下で電位差滴定することにより、下記計算式より求めた。
計算式:2×(0.63193×(MnO2/T−Mn)+1)
[合成時の組成式からのMn価数算出]
組成式Li1+xMn2-x4より電荷のバランスからMnの価数を計算すると、
(Mn価数)≧(7−x)/(2−x)
となり、Mnの価数は計算式(7−x)/(2−x)から算出することができる。
上記分析値からのMn価数が組成式からのMn価数よりも大きな値をとるとき、カチオン欠損であるとする。
(電池試験)
Li電池の電池評価は次の方法で行った。
(電池評価の方法)
Li電池評価は以下の方法で行った。
正極活物質0.20gとアセチレンブッラク(電気化学工業社製)0.28gおよび及びテフロン(登録商標)バインダー0.12gを正確に計り取り、十分に混合し、プレス成型装置によりディスク状とし、120℃で12時間乾燥させて十分に水分を除去したものを正極合剤とした。
負極はΦ16mm×厚さ0.6mmの金属Liとし、これらの材料を使用して図1に示す2032型コイン電池を作製した。
図1のコイン電池は、耐有機電解液性のステンレンス鋼製の正極ケース11の内側に、同じくステンレス鋼製の集電体13がスポット溶接されている。この集電体13の上面には前記正極合材からなる正極15が圧着されている。この正極15の上面には、電解液を含浸した微孔性のポリプロピレン樹脂製のセパレータ16が配置されている。前記正極ケースの開口部には、下方に金属Liからなる負極14を接合した封口板12がポリプロピレン製のガスケット17をはさんで配置され、これにより電池は密封されている。前記封口板12は負極端子をかね、正極ケースと同様ステンレス製である。
電池の直径は20mm、電池の総高は3.2mmとした。電解液は、エチレンカーボネートと1,3−ジメトキシカーボネートを等体積混合したものを溶媒とし、これに溶質としてLiPF6を1moL/L溶解させたものを用いた。
このようにして準備したコインセルを下記に記述する方法で充放電試験しレート特性を求めた。
充放電範囲は3.0〜4.3V、0.2Cとし、温度は25℃又は60℃とした。充放電サイクルを25回繰り返し、初期の放電容量に対する25サイクルでの容量維持率をサイクル維持率と定義して評価を行った。
(粒子表面の元素分析:Bの存在位置の確認)
粒子最表面のB、バルク中のB、Mn及びOの分析は、オージェ電子分光分析装置(アルバックファイ(株)製:モデル680)で行った。この際、加速電圧は3kV、分析スポット径は1×1μmで測定した。
バルク中分析は、Arスパッタ後の面を分析した。
その最表面からの深さ方向の距離は、SiO2換算によるものである。すなわち、SiO2皮膜を同時間Arスパッタした時のエッチング距離から深さ方向の距離を求めた。
オージェ電子分光法により粒子表面および粒子表面から0.5μmの深さ位置でのB、Mn及びOの存在量を測定し、粒子表面のデータを表1に、又、粒子表面から0.5μmの深さのデータを表2に示す。
Figure 2005314147
Figure 2005314147
本発明のリチウム−マンガン系複合酸化物を正極物質として有するリチウム二次電池を例示する縦断面図。
符号の説明
11 正極ケース
12 封口板
13 集電体
14 負極
15 正極
16 セパレータ
17 ガスケット

Claims (6)

  1. 組成式Li1+xMn2-x4・nLiabcで示され、化学分析値から得られる(Mn価数)が、(7−x)/(2−x)以上であることを特徴とするリチウム−マンガン系複合酸化物。
  2. 組成式Li1+xMn2-x4・nLiabcで示される多数の固体粒子を含有してなり、当該固体粒子は、その内部が組成式Li1+xMn2-x4で示されるスピネルからなり、その表面層にのみB元素が存在することを特徴とする請求項1に記載のリチウム−マンガン系複合酸化物。
  3. Liabcは、Li247であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム−マンガン系複合酸化物。
  4. 組成式におけるnは、0.001≦n≦0.03であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム−マンガン系複合酸化物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のリチウム−マンガン系複合酸化物を正極活物質として用いてなるリチウム電池用電極。
  6. 請求項5に記載された正極活物質を用いて構成されるリチウム電池。



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